【実施例】
【0061】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各物性の測定方法及び測定条件は、以下のとおりである。
[1]
1H−NMR
化合物を重水素化クロロホルム(CDCl
3)に溶解し、核磁気共鳴装置(300MHz、ジオール社製)を用いて
1H−NMRを測定した。
[2]平均分子量測定
昭和電工(株)製Shodex GPC-101(溶媒:テトラヒドロフラン、検量線:標準ポリスチレン)を用いて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。
[3]ヘイズ値
(有)東京電色製Spectral Haze Meter(TC-1800H)を用いてフィルムのヘイズ値を測定した。
[4]フィルムのリタデーション値(Δnd)
リタデーション測定装置(RETS-100、大塚電子(株)製)を用いて波長550nmのΔndを測定した。
[5]偏光顕微鏡観察
液晶相の同定は、ホットステージ(MATS-2002S、(株)東海ヒット製)上で試料を加熱し、偏光顕微鏡(E600-Pol、(株)ニコン製)にて観察して行った。
【0062】
[合成例1]重合性化合物(M2)の合成
【化18】
【0063】
4−(6−アクリロイルオキシ−1−ヘキシルオキシ)安息香酸(SYNTHON Chemicals社製)29.2g(100mmol)、4−ヒドロキシビフェニル17.0g(100mmol)、DMAP0.6g及び少量のBHTを室温にて攪拌下、塩化メチレン200mLに懸濁させ、それに塩化メチレン100mLにDCC24.0g(116mmol)を溶解させた溶液を加えて終夜攪拌した。析出したDCCウレアをろ別し、そのろ液を0.5mol/L塩酸150mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液150mL、飽和食塩水150mLにて順次2回ずつ洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、エタノールによる再結晶で精製し、目的の重合性化合物(M2)39.6gを得た(収率89%)。NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3) δ: 1.57(m, 4H), 1.70(m, 2H), 1.86(m, 2H), 4.00(m, 2H), 4.19(m, 2H), 5.82(m, 1H), 6.12(m, 1H), 6.39(m, 1H), 6.97(d, 2H), 7.29(m, 2H), 7.36(m, 1H), 7.47(m, 2H), 7.62(m, 4H), 8.18(m, 2H).
【0064】
[合成例2]重合性化合物(M3)の合成
(1)中間体化合物(P2)の合成
【化19】
【0065】
冷却管付き500mLナスフラスコに、ビフェノール18.6g(100mmol)、2−(4−ブロモ−1−ブチル)−1,3−ジオキソラン10.0g(48mmol)、炭酸カリウム13.8g(100mmol)及びアセトン200mLを加えて混合物とし、64℃で24時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液を純水500mLに注ぎ、白色固体を得た。この固体をメタノールと混合し、ろ過を行い、溶媒を留去したところ、白色固体を得た。次に、この固体をクロロホルムと混合し、ろ過を行い、溶媒を留去して、白色固体7.2gを得た。この固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この白色固体が中間体化合物(P2)であることが確認された(収率48%)。
1H-NMR (CDCl
3) δ: 1.62(m, 2H), 1.76(m, 2H), 1.87(m, 2H), 3.85(m, 2H), 4.00(m, 4H), 4.90(m, 1H), 6.87(m, 4H), 7.42(m, 4H).
【0066】
(2)中間体化合物(Q2)の合成
【化20】
【0067】
次に、冷却管付き300mLナスフラスコに、中間体化合物(P2)7.2g(23mmol)、2−(ブロモメチル)アクリル酸4.1g(25mmol)、THF60mL、塩化スズ(II)4.7g(25mmol)及び10質量%HCl水溶液19mLを加えて混合物とし、70℃で5時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を純水200mLに注ぎ、白色固体6.1gを得た。この固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この白色固体が中間体化合物(Q2)であることが確認された(収率78%)。
1H-NMR (CDCl
3) δ: 1.60-1.95(m, 6H), 2.64(m, 1H), 3.11(s, 1H), 4.02(t, 2H), 4.60(m, 1H), 4.82(s, 1H), 5.64(s, 1H), 6.24(s, 1H), 6.88(d, 2H), 6.94(d, 2H), 7.44(m, 4H).
【0068】
(3)重合性化合物(M3)の合成
【化21】
【0069】
中間体化合物(Q2)3.4g(10mmol)、4−メトキシケイ皮酸1.8g(10mmol)、DMAP0.08g及び少量のBHTを室温にて攪拌下、塩化メチレン30mLに懸濁させ、それに塩化メチレン15mLにDCC2.6g(13mmol)を溶解させた溶液を加えて終夜攪拌した。析出したDCCウレアをろ別し、そのろ液を、0.5mol/L塩酸50mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mL、飽和食塩水50mLにて順次2回ずつ洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、エタノールによる再結晶で精製し、目的の重合性化合物(M3)4.3gを得た(収率86%)。NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3) δ: 1.60-1.90(m, 6H), 2.63(m, 1H), 3.09(m, 1H), 3.87(s, 3H), 4.03(m, 2H), 4.57(m, 1H), 5.64(m, 1H), 6.24 (d, 1H), 6.54 (d, 1H), 6.95(m, 4H), 7.26(m, 2H), 7.44(m, 2H), 7.57(m, 4H), 7.86(d, 1H).
【0070】
[実施例1]重合性液晶化合物(M1)の合成
(1)中間体化合物(P1)の合成
【化22】
【0071】
冷却管付き100mLナスフラスコに、メチル4−ヒドロキシシナメート3.6g(20.0mmol)、2−(4−ブロモ−1−ブチル)−1,3−ジオキソラン4.2g(20.0mmol)、炭酸カリウム5.5g(40mmol)及びアセトン50mLを加えて混合物とし、64℃で24時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液を純水500mLに注ぎ、白色固体6.0gを得た。この固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この白色固体が中間体化合物(P1)であることが確認された(収率98%)。
1H-NMR (CDCl
3) δ: 1.62(m, 2H), 1.76(m, 2H), 1.87(m, 2H), 3.79(s, 3H), 3.85(m, 2H), 4.00(m, 4H), 4.90(m, 1H), 6.29(d, 1H), 6.90(d, 2H), 7.45(d, 2H), 7.64(d, 1H).
【0072】
(2)中間体化合物(Q1)の合成
【化23】
次に、冷却管付き200mLナスフラスコに、中間体化合物(P1)6.0g(20mmol)、2−(ブロモメチル)アクリル酸3.3g(20mmol)、THF55.0mL、塩化スズ(II)4.3g(23mmol)及び10質量%HCl水溶液17.0mLを加えて混合物とし、70℃で20時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を減圧ろ過して純水40mLと混合し、そこにクロロホルム50mLを加えて抽出した。抽出は3回行った。
抽出後の有機層に、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、減圧濾過した後の溶液から溶媒を留去し、粘稠性液体4.3gを得た。この粘稠性液体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この粘稠性液体が中間体化合物(Q1)であることが確認された(収率65%)。
1H-NMR (CDCl
3) δ: 1.5-1.9(m, 6H), 2.63(m, 1H), 3.07(s, 1H), 3.80(s, 3H), 4.03(t, 2H), 4.58(m, 1H), 5.64(m, 1H), 6.23(m, 1H), 6.30(d, 1H), 6.90(d, 2H), 7.45(d, 2H), 7.64(d, 1H).
【0073】
(3)重合性液晶化合物(M1)の合成
【化24】
【0074】
冷却管付き200mLナスフラスコに、エタノール60mL、中間体化合物(Q1)4.3g(13mmol)及び10質量%水酸化ナトリウム水溶液15mLを加えて混合物とし、85℃で5時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、500mLのビーカーに水300mLと反応液を加えて、30分間室温で攪拌した後、10質量%HCl水溶液15mLを滴下した後、ろ過して白色固体を得た。
次に、冷却管付き50mLナスフラスコに、得られた白色固体、10質量%HCl水溶液15mL及びテトラヒドロフラン60.0mLを加えて混合物とし、70℃で5時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を純水500mLに注ぎ、白色固体を得た。この白色固体を再結晶(ヘキサン/テトラヒドロフラン=2/1)で精製した後、白色固体3.0gを得た。この固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この白色固体が、目的の重合性液晶化合物(M1)であることが確認された(収率73%)。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 1.45(m, 2H), 1.53(m, 2H), 1.74(m, 2H), 2.62(m, 1H), 3.12(m, 1H), 4.04(m, 2H), 4.60(m, 1H), 5.70(s, 1H), 6.03(s, 1H), 6.97(d, 2H), 7.52(d, 1H), 7.63(d, 2H), 12.22(s, 1H).
【0075】
なお、重合性液晶化合物(M1)の液晶相を観察した結果、昇温時、85℃でネマチック相へ相転移した(113℃で熱重合)。
【0076】
[実施例2]重合体(1)の合成
【化25】
【0077】
冷却管を備えたフラスコに、実施例1で得られた重合性液晶化合物(M1)0.64g(2.0mmol)、NMP6.0g及びAIBN4mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を300mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(1)0.35gを得た(収率55%)。
得られた重合体(1)のMnは18,640、Mwは35,975であった(Mw/Mn=1.93)。
【0078】
[実施例3]重合体(2)の合成
【化26】
【0079】
冷却管を備えたフラスコに、実施例1で得られた重合性液晶化合物(M1)0.50g(1.6mmol)、合成例1で得られた重合性化合物(M2)0.36g(0.8mmol)、NMP9.0g及びAIBN4mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を600mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(2)0.65gを得た(収率76%)。
得られた重合体(2)のMnは10,162、Mwは30,786であった(Mw/Mn=3.0)。
【0080】
[実施例4]重合体(3)の合成
【化27】
【0081】
冷却管を備えたフラスコに、実施例1で得られた重合性液晶化合物(M1)0.32g(1.0mmol)、合成例1で得られた重合性化合物(M2)0.44g(1.0mmol)、NMP8.0g及びAIBN3mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を600mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(3)0.6gを得た(収率79%)。
得られた重合体(3)のMnは3,271、Mwは4,907であった(Mw/Mn=1.5)。
【0082】
[実施例5]重合体(4)の合成
【化28】
【0083】
冷却管を備えたフラスコに、実施例1で得られた重合性液晶化合物(M1)0.30g(0.95mmol)、合成例1で得られた重合性化合物(M2)0.98g(2.2mmol)、NMP12.0g及びAIBN5mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を600mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(4)1.1gを得た(収率86%)。
得られた重合体(4)のMnは7,539、Mwは16,586であった(Mw/Mn=2.2)。
【0084】
[比較例1]重合体(5)の合成
【化29】
【0085】
冷却管を備えたフラスコに、合成例1で得られた重合性化合物(M2)0.62g(1.4mmol)、合成例2で得られた重合性化合物(M3)0.30g(0.6mmol)、NMP8.3g及びAIBN17mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を200mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(5)0.65gを得た(収率71%)。
得られた重合体(5)のMnは10,975、Mwは19,206であった(Mw/Mn=1.75)。
【0086】
[組成物の調製及びフィルム作製・評価]
上記実施例、比較例で得られた重合体を用いて組成物を調製し、下記条件にしたがってフィルムを作製し、その特性を検討した。
フィルム作製条件:
スピンコート:300rpm/5sec、1000rpm/20sec
プリベーク:55℃/30sec(ホットプレート)
露光:直線偏光紫外線、垂直照射、波長313nm
【0087】
[実施例6]
重合体(2)150mg及びR−30(DIC(株)製界面活性剤、以下同じ。)0.3mgをシクロヘキサノン850mgに溶解し、重合体(2)の溶液を得た。
この溶液を、ガラス基板にスピンコートにより塗布し、プリベークした後、室温まで放冷した。このとき、基板上の得られた膜は透明であった。
次に、ガラス基板に形成された塗膜を照射線量5mJ/cm
2で露光した後、140℃/15分(ホットプレート上)ポストベークした。得られたフィルムは、膜厚は1.0μmであり、偏光顕微鏡でそれを観察したところ、フィルムが基板面に対して水平配向していることを確認した。そして、そのΔndは36nmであり、ヘイズ値は0.07%であった。
【0088】
[実施例7]
重合体(3)150mg及びR−30 0.3mgをシクロヘキサノン850mgに溶解し、重合体(3)の溶液を得た。
この溶液を、ガラス基板にスピンコートにより塗布し、プリベークした後、室温まで放冷した。このとき、基板上の得られた膜は透明であった。
次に、ガラス基板に形成された塗膜を照射線量5mJ/cm
2で露光した後、110℃/15分(ホットプレート上)ポストベークした。得られたフィルムは、膜厚は0.8μmであり、偏光顕微鏡でそれを観察したところ、フィルムが基板面に対して水平配向していることを確認した。そして、そのΔndは58nmであり、ヘイズ値は0.06%であった。
【0089】
[実施例8]
重合体(4)150mg及びR−30 0.3mgをシクロヘキサノン850mgに溶解し、重合体(4)の溶液を得た。
この溶液を、ガラス基板にスピンコートにより塗布し、プリベークした後、室温まで放冷した。このとき、基板上の得られた膜は透明であった。
次に、ガラス基板に形成された塗膜を照射線量5mJ/cm
2で露光した後、110℃/15分(ホットプレート上)ポストベークした。得られたフィルムは、膜厚は0.8μmであり、偏光顕微鏡でそれを観察したところ、フィルムが基板面に対して水平配向していることを確認した。そして、そのΔndは33nmであり、ヘイズ値は0.34%であった。
【0090】
[比較例2]
重合体(5)150mg及びR−30 0.3mgをシクロヘキサノン850mgに溶解し、重合体(5)の溶液を得た。
この溶液を、ガラス基板にスピンコートにより塗布し、プリベークした後、室温まで放冷した。このとき、基板上の得られた膜は透明であった。
次に、ガラス基板に形成された塗膜を照射線量500mJ/cm
2で露光した後、100℃/10分(ホットプレート上)ポストベークした。得られたフィルムは、膜厚は0.8μmであり、偏光顕微鏡でそれを観察したところ、フィルムが基板面に対して水平配向していることを確認した。そして、そのΔndは62nmであり、ヘイズ値は2.1%であった。
【0091】
以上の結果をまとめて、下記表1に示す。
【0092】
【表1】