特許第6409780号(P6409780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6409780重合性液晶化合物、液晶性重合体、液晶性組成物、及び単層塗布型水平配向フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409780
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】重合性液晶化合物、液晶性重合体、液晶性組成物、及び単層塗布型水平配向フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/10 20060101AFI20181015BHJP
   C07D 307/58 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   C08F20/10
   C07D307/58CSP
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-540457(P2015-540457)
(86)(22)【出願日】2014年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2014075240
(87)【国際公開番号】WO2015050020
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2017年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-208844(P2013-208844)
(32)【優先日】2013年10月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻葉汀 ダニエルアントニオ
(72)【発明者】
【氏名】後藤 耕平
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/002511(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/002512(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/133078(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表されることを特徴とする重合性液晶化合物。
【化1】
(式中、pは2〜9の整数を表す。)
【請求項2】
下記式[2a]及び[2b]で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする液晶性重合体。
【化2】
[式中、Xは下記式[3]又は[4]で表される基であり、
【化3】
(式中、R1は水素原子又はメチル基である。破線は結合手である。)
Mは下記式[5]で表される基であり、
【化4】
(式中、s1及びs2は、それぞれ独立に1又は2である。G1は単結合、−COO−又は−OCO−であり、R2は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。破線は結合手である。)
m及びnは、それぞれ0≦m<100、0<n≦100、かつ、m+n≦100を満たす数であり、
p及びqは、それぞれ独立に2〜9の整数である。]
【請求項3】
請求項2記載の重合体と有機溶媒とを含有する液晶性組成物。
【請求項4】
請求項3記載の液晶性組成物を基板に塗布し、次いで偏光を照射し、硬化させることにより得られる単層塗布型水平配向フィルム。
【請求項5】
上記偏光が、直線偏光紫外線である請求項4記載の単層塗布型水平配向フィルム。
【請求項6】
請求項4又は5記載の単層塗布型水平配向フィルムを備える光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶化合物、液晶性重合体、該重合体を含む組成物、及び単層塗布型水平配向フィルムに関する。詳しくは、表示装置や記録材料等の用途に好適な光学特性を有する材料、特に、液晶ディスプレイ用の偏光板及び位相差板等の光学補償フィルムに好適に利用できる重合性液晶化合物、液晶性重合体、該重合体を含む組成物、及び該組成物から得られる単層塗布型水平配向フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示品位の向上や軽量化等の要求から、偏光板や位相差板等の光学補償フィルムとして、内部の分子配向構造が制御された高分子フィルムの要求が高まっている。この要求に応えるべく、重合性液晶化合物が有する光学異方性を利用したフィルムの開発がなされている。
ここで用いられる重合性液晶化合物は、一般に、重合性基と液晶構造部位(スペーサ部とメソゲン部とを有する構造部位)とを有する液晶化合物であり、この重合性基としてアクリル基が広く用いられている。
【0003】
このような重合性液晶化合物は、一般的に、紫外線等の放射線を照射して重合する方法で重合体(フィルム)とされる。
例えば、アクリル基を有する特定の重合性液晶化合物を支持体間に担持し、この化合物を液晶状態に保持しつつ放射線を照射して重合体を得る方法(特許文献1)や、アクリル基を有する2種類の重合性液晶化合物の混合物又はこの混合物にカイラル液晶を混合した組成物に光重合開始剤を添加し、紫外線を照射して重合体を得る方法(特許文献2)が知られている。
【0004】
また、液晶配向膜を必要としない重合性液晶化合物や重合体を用いた配向フィルム(特許文献3、4)、光架橋部位を含有した重合体を用いた配向フィルム(特許文献5、6)等、様々な単層塗布型配向フィルムが報告されてきた。しかし、これらのフィルムに用いる重合体は、溶解性が低く、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン、クロロホルム、クロロベンゼン等の溶解力に優れた溶媒を使う必要があるため、これらの溶液から得られたフィルムの屈折率異方性(Δn)、ヘイズ値等の特性が悪化することがあるという問題があった。
また、簡単なプロセスによって低ヘイズ値を示す配向フィルムを得ることができる材料はこれまでに見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−70407号公報
【特許文献2】特開平9−208957号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第1090325号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/031243号
【特許文献5】特開2008−164925号公報
【特許文献6】特開平11−189665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、より簡単なプロセスで低ヘイズ値を示す単層塗布型水平配向フィルム作製を可能とする重合性液晶化合物、液晶性重合体、該液晶性重合体を含む液晶性組成物、及び該組成物から得られる単層塗布型水平配向フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、γ−ブチロラクトン骨格を主鎖に含有するとともに、ラクトン環のγ位から延びる側鎖上にケイ皮酸構造を有する液晶性重合体を用いることで、低露光量の偏光紫外線露光後に安定なネットワーク構造が形成されるためか、液晶配向膜を使用することなく、Δnを有する水平配向フィルムが得られること、低いヘイズ値を示す水平配向フィルムを低温条件下で作製可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記重合性液晶化合物、液晶性重合体、液晶性組成物、及び単層塗布型水平配向フィルムを提供する。
1.下記式[1]で表されることを特徴とする重合性液晶化合物。
【化1】
(式中、pは2〜9の整数を表す。)
2.下記式[2a]及び[2b]で表される繰り返し単位を含有することを特徴とする液晶性重合体。
【化2】
[式中、Xは下記式[3]又は[4]で表される基であり、
【化3】
(式中、R1は水素原子又はメチル基である。破線は結合手である。)
Mは下記式[5]で表される基であり、
【化4】
(式中、s1及びs2は、それぞれ独立に1又は2である。G1は単結合、−COO−又は−OCO−であり、R2は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。破線は結合手である。)
m及びnは、それぞれ0≦m<100、0<n≦100、かつ、m+n≦100を満たす数であり、
p及びqは、それぞれ独立に2〜9の整数である。]
3.2の重合体と有機溶媒とを含有する液晶性組成物。
4.3の液晶性組成物を基板に塗布し、次いで偏光を照射し、硬化させることにより得られる単層塗布型水平配向フィルム。
5.上記偏光が、直線偏光紫外線である4の単層塗布型水平配向フィルム。
6.4又は5の単層塗布型水平配向フィルムを備える光学部材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶性重合体は、γ−ブチロラクトン骨格を主鎖に含有する。そのため、この重合体を含有する組成物を塗布し、室温にて低露光量の直線偏光を照射し、ポストベークを行うプロセスにより、低ヘイズ値を示す単層塗布型水平配向フィルムを作製することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[重合性液晶化合物]
本発明の重合性液晶化合物は、下記式[1]で表される。
【化5】
【0011】
式中、pは2〜9の整数を表すが、3〜6が好ましい。
【0012】
式[1]で表される重合性液晶化合物の合成方法については、後述する。
【0013】
[液晶性重合体]
本発明の液晶性重合体は、下記式[2a]及び[2b]で表される繰り返し単位を含有する。
【化6】
【0014】
式[2a]中、Xは下記式[3]又は[4]で表される基である。
【化7】
(式中、R1は水素原子又はメチル基である。破線は結合手である。)
【0015】
式[2a]中、Mは下記式[5]で表される基である。
【化8】
(式中、s1及びs2は、それぞれ独立に1又は2である。G1は単結合、−COO−又は−OCO−であり、R2は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。破線は結合手である。)
【0016】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられるが、本発明においては、フッ素原子が好ましい。
【0017】
アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その炭素数も特に限定されない。上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。これらのうち、直鎖状の炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、特にメチル基、エチル基等が好ましい。
【0018】
アルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その炭素数も特に限定されない。上記アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、直鎖状の炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基等が好ましい。
なお、上記アルキル基、アルコキシ基において、その水素原子の一部又は全部がフッ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0019】
2として特に好ましくは、水素原子、フッ素原子、シアノ基、メチル基、メトキシ基等である。
【0020】
1としては−COO−又は−OCO−が好ましい。
【0021】
式[2a]及び[2b]中、m及びnは、各繰り返し単位の含有率(mol%)を表し、それぞれ0≦m<100、0<n≦100、かつ、m+n≦100を満たす数であるが、Δnの向上や重合体の溶解性の向上等の点から、それぞれ0<m≦90、10≦n<100を満たす数であることが好ましく、0<m≦50、50≦n<100を満たす数であることがより好ましい。
【0022】
また、式[2a]及び[2b]中、p及びqは、それぞれ独立に2〜9の整数であるが、3〜6が好ましく、特にqとしては5又は6がより好ましい。
【0023】
本発明の液晶性重合体は、重量平均分子量(Mw)が3,000〜200,000であることが好ましく、4,000〜150,000であることがより好ましく、5,000〜100,000であることが更に好ましい。Mwが200,000を超えると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、Mwが3,000未満であると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性及び耐熱性が低下する場合がある。
なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0024】
また、本発明の液晶性重合体は、本発明の効果を損なわない限り、式[2a]及び[2b]以外の他の繰り返し単位を含んでもよい。上記他の繰り返し単位を与える重合性化合物としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物等が挙げられる。
【0025】
上記他の繰り返し単位の含有率は、全繰り返し単位中、0〜10mol%が好ましい。上記他の繰り返し単位の含有率が大きすぎると、本発明の重合体の特性、例えば液晶性等の特性が低下する場合がある。
【0026】
なお、本発明の液晶性重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。
【0027】
[液晶性重合体の合成]
本発明の液晶性重合体は、式[1]で表される重合性液晶化合物及び式[6]で表される重合性化合物を重合させることで得られる。
【化9】
[式中、R2、G1、p、q、s1及びs2は上記と同じ。X'は下記式[7]又は[8]で表される重合性基である。
【化10】
(式中、R1は上記と同じ。)]
【0028】
式[1]で表される重合性液晶化合物及び式[6]で表される重合性化合物は、有機合成化学における手法を組み合わせることによって合成することができ、その合成法は特に限定されない。
【0029】
例えば、Talaga等(P. Talaga, M. Schaeffer, C. Benezra and J. L. Stampf, Synthesis, 530 (1990))が提案する手法を用いて合成することができる。この手法は、下記合成スキームA1で表されるように、SnCl2を用いて2−(ブロモメチル)アクリル酸と、アルデヒド又はケトンとを反応させる方法である。なお、2−(ブロモメチル)アクリル酸は、Ramarajan等が提案する方法で得ることができる(K. Ramarajan, K. Kamalingam, D. J. O'Donnell and K. D. Berlin, Organic Synthesis, vol. 61, pp. 56-59 (1983))。
【0030】
【化11】
(式中、R'は1価の有機基を表す。Amberlyst(登録商標)15は、ロームアンドハース社製イオン交換樹脂である。THFはテトラヒドロフランを表す。Etはエチル基を表す。)
【0031】
また、SnCl2を用いた2−(ブロモメチル)アクリル酸の反応では、アルデヒド又はケトンの代わりに対応するアセタール又はケタールとの反応により、α−メチレン−γ−ブチロラクトン構造を得ることもできる。アセタール又はケタールとしては、ジメチルアセタール基、ジエチルアセタール基、1,3−ジオキサン基、1,3−ジオキソラン基等を有する化合物が挙げられる。下記合成スキームA2に、アセタール又はケタールを用いた場合の合成法及び保護基を示す。
【0032】
【化12】
(式中、R'は上記と同じ。)
【0033】
上記合成スキームA1又はA2の手法を応用した下記合成スキームBの手法により、式[1]で表される化合物を合成することができる。
【0034】
【化13】
(式中、pは上記と同じ。)
【0035】
式[6]で表される重合性化合物は、例えば、下記方法にて製造される。
【0036】
1が−COO−の場合、下記スキームで表されるように、式[9]で表される安息香酸誘導体とフェノール誘導体とを、溶媒中、縮合剤の存在下で縮合させることにより製造される。
【化14】
(式中、R2、X'、q、s1及びs2は上記と同じ。DCCはN,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミドを、DMAPはN,N−ジメチル−4−アミノピリジンを表す。)
【0037】
1が−OCO−の場合、下記スキームで表されるように、式[10]で表されるフェノール誘導体と安息香酸誘導体とを、溶媒中、縮合剤の存在下で縮合させることにより製造される。
【化15】
(式中、R2、X'、q、s1及びs2は上記と同じ。)
【0038】
式[9]及び[10]で表される化合物は、X'が式[7]で表される基の場合は、SYNTHON Chemicals社又はみどり化学(株)から市販品として入手可能である。
【0039】
また、式[9]及び[10]で表される化合物は、X'が式[8]で表される基の場合は、上記合成スキームA1又はA2の手法を応用した下記合成スキームC又はDの手法により、合成することができる。
【0040】
【化16】
(式中、q及びs1は上記と同じ。Meはメチル基を表す。PCCはピリジニウムクロロクロマートを表す。)
【0041】
【化17】
(式中、q及びs1は上記と同じ。)
【0042】
本発明の液晶性重合体を合成する方法としては、特に限定されず、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を採用し得る。これらのうち、特にラジカル重合が好ましく、具体的には、溶媒中、上記重合性化合物を重合開始剤の存在下で加熱し、重合させればよい。
【0043】
重合開始剤としては、従来公知のものから適宜選択して用いることができる。例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0044】
重合開始剤の使用量は、重合性化合物1molに対して、0.01〜0.05mol程度が好ましい。
反応温度は、0℃から使用する溶媒の沸点までで適宜設定すればよいが、20〜100℃程度が好ましい。反応時間は、0.1〜30時間程度が好ましい。
【0045】
重合反応に用いられる溶媒としては、特に限定されず、上記重合反応で一般的に使用されている各種溶媒から適宜選択して用いればよい。具体的には、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、i−ペンタノール、t−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、アニソール等の脂肪族又は芳香族炭化水素;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の脂肪酸;ニトロプロパン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0046】
本発明の液晶性重合体が式[2a]及び[2b]以外の他の繰り返し単位を含む場合は、その合成方法としては、上記重合の際に、上記他の繰り返し単位を与える重合性化合物を共存させて重合すればよい。
【0047】
[液晶性組成物]
本発明の液晶性組成物は、上記液晶性重合体の少なくとも1種と有機溶媒とを混合することにより得られる。
【0048】
有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル;3−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等のアルコキシエステル;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジグリコールジアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のジグリコールモノアルキルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート等のグリコールモノアルキルエーテルエステル;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン等を挙げることができる。これらの有機溶媒は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0049】
これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、シクロヘキサノン等が好ましい。
有機溶媒の使用量は、組成物中、60〜95質量%程度とすることが好適である。
【0050】
また、本発明の液晶性組成物には、基板との親和性を向上させる目的で、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらのうち、基板との親和性改善効果の高いフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0051】
フッ素系界面活性剤の具体例としては(以下、商品名)、エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株))、メガファック(登録商標)F171、F173、R−30(DIC(株)製)、FLUORAD(登録商標)FC430、FC431(スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710(旭硝子(株)製)、サーフロン(登録商標)S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、界面活性剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもでき、その添加量は重合体100質量部に対して5質量部以下が好ましい。
【0052】
更に、本発明の液晶性組成物には、基板との密着性を向上させる目的で密着促進剤を添加してもよい。
【0053】
密着促進剤としては、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン等のクロロシラン化合物;トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物;ヘキサメチルジシラザン、N,N'−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等のシラザン化合物;ビニルトリクロロシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(N−ピペリジニル)プロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン等の複素環式化合物;1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア等の尿素化合物;チオ尿素化合物等が挙げられる。
【0054】
密着促進剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いることもでき、その添加量は重合体100質量部に対して1質量部以下が好ましい。
【0055】
[単層塗布型水平配向フィルム]
以上説明した本発明の液晶性組成物を基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属、例えば、アルミニウム、モリブデン、クロム等が被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)やフィルム(例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の上に、バーコート、スピンコート、フローコート、ロールコート、スリットコート、スリットコートに続いたスピンコート、インクジェット法、印刷法等の方法によって塗布して塗膜を形成し、その後、ホットプレート又はオーブン等で加熱乾燥することにより、膜を形成することができる。
【0056】
加熱乾燥の条件としては、例えば、40〜100℃及び0.1〜60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。上記加熱温度及び加熱時間は、好ましくは40〜80℃、0.1〜2分間である。
【0057】
このようにして形成された膜に対して、直線偏光照射を行い、ポストベークを行うことにより、単層塗布型水平配向フィルムが得られる。
直線偏光の照射方法としては、通常150〜450nmの波長の紫外線〜可視光線が用いられ、室温又は加熱した状態で、直線偏光を照射することによって行われる。照射線量は、用いる光によって異なるが、概ね1〜500mJ/cm2が好ましい。
【0058】
また、ポストベークは、ホットプレート又はオーブン等で加熱すればよく、その温度及び時間は、好ましくは90〜200℃、2〜20分間であり、より好ましくは90〜150℃、5〜20分間である。
【0059】
本発明の単層塗布型水平配向フィルムの膜厚は、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮し適宜選択することができ、例えば、0.1〜3μmが好適である。
【0060】
このようにして得られた本発明の単層塗布型水平配向フィルムは、表示装置や記録材料等の用途に好適な光学特性を有する材料であり、特に、液晶ディスプレイ用の偏光板及び位相差板等の光学補償フィルムとして好適である。
【実施例】
【0061】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各物性の測定方法及び測定条件は、以下のとおりである。
[1]1H−NMR
化合物を重水素化クロロホルム(CDCl3)に溶解し、核磁気共鳴装置(300MHz、ジオール社製)を用いて1H−NMRを測定した。
[2]平均分子量測定
昭和電工(株)製Shodex GPC-101(溶媒:テトラヒドロフラン、検量線:標準ポリスチレン)を用いて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。
[3]ヘイズ値
(有)東京電色製Spectral Haze Meter(TC-1800H)を用いてフィルムのヘイズ値を測定した。
[4]フィルムのリタデーション値(Δnd)
リタデーション測定装置(RETS-100、大塚電子(株)製)を用いて波長550nmのΔndを測定した。
[5]偏光顕微鏡観察
液晶相の同定は、ホットステージ(MATS-2002S、(株)東海ヒット製)上で試料を加熱し、偏光顕微鏡(E600-Pol、(株)ニコン製)にて観察して行った。
【0062】
[合成例1]重合性化合物(M2)の合成
【化18】
【0063】
4−(6−アクリロイルオキシ−1−ヘキシルオキシ)安息香酸(SYNTHON Chemicals社製)29.2g(100mmol)、4−ヒドロキシビフェニル17.0g(100mmol)、DMAP0.6g及び少量のBHTを室温にて攪拌下、塩化メチレン200mLに懸濁させ、それに塩化メチレン100mLにDCC24.0g(116mmol)を溶解させた溶液を加えて終夜攪拌した。析出したDCCウレアをろ別し、そのろ液を0.5mol/L塩酸150mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液150mL、飽和食塩水150mLにて順次2回ずつ洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、エタノールによる再結晶で精製し、目的の重合性化合物(M2)39.6gを得た(収率89%)。NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3) δ: 1.57(m, 4H), 1.70(m, 2H), 1.86(m, 2H), 4.00(m, 2H), 4.19(m, 2H), 5.82(m, 1H), 6.12(m, 1H), 6.39(m, 1H), 6.97(d, 2H), 7.29(m, 2H), 7.36(m, 1H), 7.47(m, 2H), 7.62(m, 4H), 8.18(m, 2H).
【0064】
[合成例2]重合性化合物(M3)の合成
(1)中間体化合物(P2)の合成
【化19】
【0065】
冷却管付き500mLナスフラスコに、ビフェノール18.6g(100mmol)、2−(4−ブロモ−1−ブチル)−1,3−ジオキソラン10.0g(48mmol)、炭酸カリウム13.8g(100mmol)及びアセトン200mLを加えて混合物とし、64℃で24時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液を純水500mLに注ぎ、白色固体を得た。この固体をメタノールと混合し、ろ過を行い、溶媒を留去したところ、白色固体を得た。次に、この固体をクロロホルムと混合し、ろ過を行い、溶媒を留去して、白色固体7.2gを得た。この固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この白色固体が中間体化合物(P2)であることが確認された(収率48%)。
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.62(m, 2H), 1.76(m, 2H), 1.87(m, 2H), 3.85(m, 2H), 4.00(m, 4H), 4.90(m, 1H), 6.87(m, 4H), 7.42(m, 4H).
【0066】
(2)中間体化合物(Q2)の合成
【化20】
【0067】
次に、冷却管付き300mLナスフラスコに、中間体化合物(P2)7.2g(23mmol)、2−(ブロモメチル)アクリル酸4.1g(25mmol)、THF60mL、塩化スズ(II)4.7g(25mmol)及び10質量%HCl水溶液19mLを加えて混合物とし、70℃で5時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を純水200mLに注ぎ、白色固体6.1gを得た。この固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この白色固体が中間体化合物(Q2)であることが確認された(収率78%)。
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.60-1.95(m, 6H), 2.64(m, 1H), 3.11(s, 1H), 4.02(t, 2H), 4.60(m, 1H), 4.82(s, 1H), 5.64(s, 1H), 6.24(s, 1H), 6.88(d, 2H), 6.94(d, 2H), 7.44(m, 4H).
【0068】
(3)重合性化合物(M3)の合成
【化21】
【0069】
中間体化合物(Q2)3.4g(10mmol)、4−メトキシケイ皮酸1.8g(10mmol)、DMAP0.08g及び少量のBHTを室温にて攪拌下、塩化メチレン30mLに懸濁させ、それに塩化メチレン15mLにDCC2.6g(13mmol)を溶解させた溶液を加えて終夜攪拌した。析出したDCCウレアをろ別し、そのろ液を、0.5mol/L塩酸50mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mL、飽和食塩水50mLにて順次2回ずつ洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し、エタノールによる再結晶で精製し、目的の重合性化合物(M3)4.3gを得た(収率86%)。NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3) δ: 1.60-1.90(m, 6H), 2.63(m, 1H), 3.09(m, 1H), 3.87(s, 3H), 4.03(m, 2H), 4.57(m, 1H), 5.64(m, 1H), 6.24 (d, 1H), 6.54 (d, 1H), 6.95(m, 4H), 7.26(m, 2H), 7.44(m, 2H), 7.57(m, 4H), 7.86(d, 1H).
【0070】
[実施例1]重合性液晶化合物(M1)の合成
(1)中間体化合物(P1)の合成
【化22】
【0071】
冷却管付き100mLナスフラスコに、メチル4−ヒドロキシシナメート3.6g(20.0mmol)、2−(4−ブロモ−1−ブチル)−1,3−ジオキソラン4.2g(20.0mmol)、炭酸カリウム5.5g(40mmol)及びアセトン50mLを加えて混合物とし、64℃で24時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液を純水500mLに注ぎ、白色固体6.0gを得た。この固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この白色固体が中間体化合物(P1)であることが確認された(収率98%)。
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.62(m, 2H), 1.76(m, 2H), 1.87(m, 2H), 3.79(s, 3H), 3.85(m, 2H), 4.00(m, 4H), 4.90(m, 1H), 6.29(d, 1H), 6.90(d, 2H), 7.45(d, 2H), 7.64(d, 1H).
【0072】
(2)中間体化合物(Q1)の合成
【化23】
次に、冷却管付き200mLナスフラスコに、中間体化合物(P1)6.0g(20mmol)、2−(ブロモメチル)アクリル酸3.3g(20mmol)、THF55.0mL、塩化スズ(II)4.3g(23mmol)及び10質量%HCl水溶液17.0mLを加えて混合物とし、70℃で20時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を減圧ろ過して純水40mLと混合し、そこにクロロホルム50mLを加えて抽出した。抽出は3回行った。
抽出後の有機層に、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、減圧濾過した後の溶液から溶媒を留去し、粘稠性液体4.3gを得た。この粘稠性液体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この粘稠性液体が中間体化合物(Q1)であることが確認された(収率65%)。
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.5-1.9(m, 6H), 2.63(m, 1H), 3.07(s, 1H), 3.80(s, 3H), 4.03(t, 2H), 4.58(m, 1H), 5.64(m, 1H), 6.23(m, 1H), 6.30(d, 1H), 6.90(d, 2H), 7.45(d, 2H), 7.64(d, 1H).
【0073】
(3)重合性液晶化合物(M1)の合成
【化24】
【0074】
冷却管付き200mLナスフラスコに、エタノール60mL、中間体化合物(Q1)4.3g(13mmol)及び10質量%水酸化ナトリウム水溶液15mLを加えて混合物とし、85℃で5時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、500mLのビーカーに水300mLと反応液を加えて、30分間室温で攪拌した後、10質量%HCl水溶液15mLを滴下した後、ろ過して白色固体を得た。
次に、冷却管付き50mLナスフラスコに、得られた白色固体、10質量%HCl水溶液15mL及びテトラヒドロフラン60.0mLを加えて混合物とし、70℃で5時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を純水500mLに注ぎ、白色固体を得た。この白色固体を再結晶(ヘキサン/テトラヒドロフラン=2/1)で精製した後、白色固体3.0gを得た。この固体をNMRで測定した結果を以下に示す。この結果から、この白色固体が、目的の重合性液晶化合物(M1)であることが確認された(収率73%)。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 1.45(m, 2H), 1.53(m, 2H), 1.74(m, 2H), 2.62(m, 1H), 3.12(m, 1H), 4.04(m, 2H), 4.60(m, 1H), 5.70(s, 1H), 6.03(s, 1H), 6.97(d, 2H), 7.52(d, 1H), 7.63(d, 2H), 12.22(s, 1H).
【0075】
なお、重合性液晶化合物(M1)の液晶相を観察した結果、昇温時、85℃でネマチック相へ相転移した(113℃で熱重合)。
【0076】
[実施例2]重合体(1)の合成
【化25】
【0077】
冷却管を備えたフラスコに、実施例1で得られた重合性液晶化合物(M1)0.64g(2.0mmol)、NMP6.0g及びAIBN4mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を300mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(1)0.35gを得た(収率55%)。
得られた重合体(1)のMnは18,640、Mwは35,975であった(Mw/Mn=1.93)。
【0078】
[実施例3]重合体(2)の合成
【化26】
【0079】
冷却管を備えたフラスコに、実施例1で得られた重合性液晶化合物(M1)0.50g(1.6mmol)、合成例1で得られた重合性化合物(M2)0.36g(0.8mmol)、NMP9.0g及びAIBN4mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を600mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(2)0.65gを得た(収率76%)。
得られた重合体(2)のMnは10,162、Mwは30,786であった(Mw/Mn=3.0)。
【0080】
[実施例4]重合体(3)の合成
【化27】
【0081】
冷却管を備えたフラスコに、実施例1で得られた重合性液晶化合物(M1)0.32g(1.0mmol)、合成例1で得られた重合性化合物(M2)0.44g(1.0mmol)、NMP8.0g及びAIBN3mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を600mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(3)0.6gを得た(収率79%)。
得られた重合体(3)のMnは3,271、Mwは4,907であった(Mw/Mn=1.5)。
【0082】
[実施例5]重合体(4)の合成
【化28】
【0083】
冷却管を備えたフラスコに、実施例1で得られた重合性液晶化合物(M1)0.30g(0.95mmol)、合成例1で得られた重合性化合物(M2)0.98g(2.2mmol)、NMP12.0g及びAIBN5mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を600mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(4)1.1gを得た(収率86%)。
得られた重合体(4)のMnは7,539、Mwは16,586であった(Mw/Mn=2.2)。
【0084】
[比較例1]重合体(5)の合成
【化29】
【0085】
冷却管を備えたフラスコに、合成例1で得られた重合性化合物(M2)0.62g(1.4mmol)、合成例2で得られた重合性化合物(M3)0.30g(0.6mmol)、NMP8.3g及びAIBN17mgを仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、60℃で20時間攪拌して反応した。得られた反応溶液を200mLのメタノールに投入し、白色粉末を沈殿した。この白色粉末をろ過した後、室温で真空乾燥を行い、重合体(5)0.65gを得た(収率71%)。
得られた重合体(5)のMnは10,975、Mwは19,206であった(Mw/Mn=1.75)。
【0086】
[組成物の調製及びフィルム作製・評価]
上記実施例、比較例で得られた重合体を用いて組成物を調製し、下記条件にしたがってフィルムを作製し、その特性を検討した。
フィルム作製条件:
スピンコート:300rpm/5sec、1000rpm/20sec
プリベーク:55℃/30sec(ホットプレート)
露光:直線偏光紫外線、垂直照射、波長313nm
【0087】
[実施例6]
重合体(2)150mg及びR−30(DIC(株)製界面活性剤、以下同じ。)0.3mgをシクロヘキサノン850mgに溶解し、重合体(2)の溶液を得た。
この溶液を、ガラス基板にスピンコートにより塗布し、プリベークした後、室温まで放冷した。このとき、基板上の得られた膜は透明であった。
次に、ガラス基板に形成された塗膜を照射線量5mJ/cm2で露光した後、140℃/15分(ホットプレート上)ポストベークした。得られたフィルムは、膜厚は1.0μmであり、偏光顕微鏡でそれを観察したところ、フィルムが基板面に対して水平配向していることを確認した。そして、そのΔndは36nmであり、ヘイズ値は0.07%であった。
【0088】
[実施例7]
重合体(3)150mg及びR−30 0.3mgをシクロヘキサノン850mgに溶解し、重合体(3)の溶液を得た。
この溶液を、ガラス基板にスピンコートにより塗布し、プリベークした後、室温まで放冷した。このとき、基板上の得られた膜は透明であった。
次に、ガラス基板に形成された塗膜を照射線量5mJ/cm2で露光した後、110℃/15分(ホットプレート上)ポストベークした。得られたフィルムは、膜厚は0.8μmであり、偏光顕微鏡でそれを観察したところ、フィルムが基板面に対して水平配向していることを確認した。そして、そのΔndは58nmであり、ヘイズ値は0.06%であった。
【0089】
[実施例8]
重合体(4)150mg及びR−30 0.3mgをシクロヘキサノン850mgに溶解し、重合体(4)の溶液を得た。
この溶液を、ガラス基板にスピンコートにより塗布し、プリベークした後、室温まで放冷した。このとき、基板上の得られた膜は透明であった。
次に、ガラス基板に形成された塗膜を照射線量5mJ/cm2で露光した後、110℃/15分(ホットプレート上)ポストベークした。得られたフィルムは、膜厚は0.8μmであり、偏光顕微鏡でそれを観察したところ、フィルムが基板面に対して水平配向していることを確認した。そして、そのΔndは33nmであり、ヘイズ値は0.34%であった。
【0090】
[比較例2]
重合体(5)150mg及びR−30 0.3mgをシクロヘキサノン850mgに溶解し、重合体(5)の溶液を得た。
この溶液を、ガラス基板にスピンコートにより塗布し、プリベークした後、室温まで放冷した。このとき、基板上の得られた膜は透明であった。
次に、ガラス基板に形成された塗膜を照射線量500mJ/cm2で露光した後、100℃/10分(ホットプレート上)ポストベークした。得られたフィルムは、膜厚は0.8μmであり、偏光顕微鏡でそれを観察したところ、フィルムが基板面に対して水平配向していることを確認した。そして、そのΔndは62nmであり、ヘイズ値は2.1%であった。
【0091】
以上の結果をまとめて、下記表1に示す。
【0092】
【表1】