(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主孔の内周面に沿う部分が、該内周面とバーナタイル外面との中間の中間部よりも嵩密度が大きい高嵩密度部となっていることを特徴とする請求項1に記載のバーナタイル。
前記バーナタイルの主孔の軸心から放射方向において最も厚みが小さくなる断面において、バーナタイルの厚みをT0とし、内套部の平均厚みをT1とした場合、T1/T0の百分比は20〜70%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバーナタイル。
前記内套部を構成する前記無機繊維製板体として、主孔の軸心線と垂直な断面が三角形又は台形である板体と、該断面が長方形である板体とが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバーナタイル。
前記バーナタイルは、無機繊維と、該無機繊維を結着する無機バインダーが酸化して生じたバインダー由来物とを含んでおり、前記主孔の内周面に沿う部分の単位体積当りのバインダー由来物量が前記中間領域の単位体積当りのバインダー由来物量よりも多いことを特徴とする請求項9又は10に記載のバーナタイル。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下の記載は、本発明の実施形態の代表例であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
【0035】
第2発明のバーナタイルの一例について
図1〜5を参照して説明する。
図1〜4に示す通り、バーナタイル1は、無機繊維成形体よりなる本体部2と、この本体部2を貫通する主孔3を有する。主孔3にバーナの先端側が挿入される。主孔3の口径は、
図2の右方向に向って次第に大きくなるテーパ形状となっているが、これに限定されない。
【0036】
図4の通り、本体部2のうち主孔3の内周面3fに沿う部分が嵩密度の高い高嵩密度部4となっている。このバーナタイル1は、無機繊維集合体をバーナタイル形状に成形した後、無機バインダーを付着させ、その後、乾燥した後、焼成する工程を経て製造されたものである。無機バインダーを主孔内周面3fに沿う部分に多く付着させることにより、内周面3fに沿って高嵩密度部4が形成される。
【0037】
この実施の形態では、
図4,5の通り、本体部2を主孔3の軸心に対して放射方向に3等分し、最も主孔2側の1/3の領域を内周領域2aとし、最も外側の1/3の領域を外周領域2cとし、領域2a,2c間の1/3の領域を中間領域2bとし、内周領域2aのうち、主孔内周面3fから厚み方向に距離d=5mmまでの範囲の嵩密度をDiとし、中間領域2bの嵩密度をDmとした場合、DiはDmよりも大きい。
【0038】
Diの範囲は、Dmより大きければ特段の制限はないが、通常0.3g/cm
3以上、好ましくは0.4g/cm
3以上であり、一方、3.0g/cm
3以下、好ましくは2.0g/cm
3以下、より好ましくは1.0g/cm
3以下、特に好ましくは0.8g/cm
3以下である。
【0039】
Dmの範囲は、Diより小さければ特段の制限はないが、通常0.1g/cm
3以上、好ましくは0.15g/cm
3以上、特に好ましくは0.2g/cm
3以上であり、一方、2.0g/cm
3以下、好ましくは1.0g/cm
3以下、より好ましくは0.5g/cm
3以下、特に好ましくは0.3g/cm
3以下である。
【0040】
中間領域2bに、嵩密度が互いに異なる複数の無機バインダー担持無機繊維集合体層を有することが好ましく、より好ましくは、0.10g/cm3〜0.18g/cm
3無機バインダー担持無機繊維集合体層と嵩密度が0.19〜0.25g/cm
3である無機バインダー担持無機繊維集合体層の積層構造を有し、特に好ましくは、上記積層構造を繰り返し有するものである。
【0041】
そして、Di−Dmは好ましくは0.05g/cm
3以上、より好ましくは0.10g/cm
3以上、さらに好ましくは0.15g/cm
3以上である。また、Di−Dmは好ましくは3.0g/cm
3以下、より好ましくは2.0g/cm
3以下、さらに好ましくは1.0g/cm
3以下である。Dm/Diは0.1〜0.9特に0.2〜0.8であることが好ましい。
【0042】
図5では、嵩密度は内周面3f側から外面に向って直線的に低くなっているが、これに限定されない。例えば、
図14のように内周側から中間領域にかけて比較的急激に嵩密度が減少し、中間領域から外面にかけて嵩密度がなだらかに低下してもよい。
【0043】
本発明のバーナタイルでは、
図15のように外面付近において嵩密度が再び高くなってもよい。このように外面付近の嵩密度を高くすると、バーナタイルの外面に触れたときの外面の変形が小さくなり、バーナタイルの取り扱いが容易となる。外周領域2cのうち、外周面3gから厚み方向に距離h=5mmまでの範囲の嵩密度をDoとした場合、Doの範囲に特段の制限はないが、通常0.1g/cm
3以上、好ましくは0.3g/cm
3以上であり、一方、3.0g/cm
3以下、好ましくは2.0g/cm
3以下、より好ましくは1.0g/cm
3以下、特に好ましくは0.5g/cm
3以下である。
【0044】
このバーナタイル1は、主孔内周面3fに沿って高嵩密度部4が設けられているので、耐風食性に優れる。また、このバーナタイル1は、中間領域3bの嵩密度が小さいので、軽量であると共に、耐熱衝撃性に優れる。
【0045】
複数の嵩密度が異なる無機バインダー担持無機繊維集合体層からなる巻層無機繊維成形体を有することで、均一な熱伝導性を満たす点で好ましく、また耐風食性と衝撃緩和性の両方を向上させることができる点で好ましい。
【0046】
図18a,
図18bに示すバーナタイル100のように、嵩密度が0.25g/cm
3より大きい無機バインダー担持無機繊維集合体層101と、嵩密度が0.19〜0.25g/cm
3である無機バインダー担持無機繊維集合体層102を有することが好ましく、嵩密度が0.10g/cm
3〜0.18g/cm
3である無機バインダー担持無機繊維集合体層103を有することがより好ましい。無機繊維成形体に無機バインダーが含有されることにより、耐火性、耐熱性、耐風食性及び耐熱衝撃性が向上する点で好ましい。
【0047】
次に、このバーナタイル1の製造方法の一例について
図6〜10を参照して説明する。
図6aはバーナタイル1の成形に用いられるコア型9の軸心線方向の断面図であり、
図6bのVIa−VIa線断面図である。
図6bは
図6aのVIb−VIb線矢視図である。
【0048】
このコア型9は、フロントパーツ10と、該フロントパーツ10に組み付けられたリアパーツ20とを有する。フロントパーツ10は、筒状であり、多数の小孔を有したパンチングプレートによって製作されている。フロントパーツ10は、フロント側に向って拡径するテーパ部11と、該テーパ部11のフロント側に連なる円筒部12と、該円筒部12の先端面において求心方向に設けられた複数本(この実施の形態では3本)のスポーク13と、各スポーク13の求心方向先端側が連なるボス14と、該ボス14に貫設されたボルト挿通孔15と、該円筒部12の外周に設けられたフランジ16と、テーパ部11のリア側から内周側に張り出した内向き鍔部17とを有する。
【0049】
リアパーツ20は、筒状であり、多数の小孔を有したパンチングプレートによって製作されている。リアパーツ20は、小径の第1円筒部21と、該第1円筒部21のリア側に連なった大径の第2円筒部22と、該第2円筒部22のリア側の外周に設けられたフランジ23と、第1円筒部21のフロント側から求心方向に設けられた複数本のスポーク24と、各スポーク24の求心方向先端側が連なるボス25と、該ボス25からフロントパーツ10の軸心を通るように立設された長ボルト26とを有する。
【0050】
リアパーツ20の第1円筒部21をフロントパーツ10の内向き鍔部17に当接させ、長ボルト26の先端をボルト挿通孔15に通し、該長ボルト26の先端にナット27を螺合させて締め込むことにより、フロントパーツ10とリアパーツ20とが組み付けられて一体化し、略筒状のコア型9が構成される。各パーツ10,20は金属又は合成樹脂特に金属にて構成されることが好ましい。
【0051】
このコア型9の外周面にガラスクロス等よりなる離型シート(図示略)を巻いた後、フロントパーツ10の外周に第1の無機繊維積層体30を巻く。テーパ部11には扇形に裁断された無機繊維積層体を巻き、その後テーパ辺に沿って軸方向に3分割した長方形の帯状の無機繊維積層体を巻き、円筒部12には長方形の帯状の無機繊維積層体を巻き、さらにテーパ部11および円筒部12を覆う態様で帯状の無機繊維積層体を巻くことにより、
図7,8のように、無機繊維積層体30の巻回体の外周面がフロントパーツ10の軸心線に対して同軸状の円筒面となるようにすることが好ましい。
【0052】
次に、
図8のように、リアパーツ20の外周と無機繊維積層体30の巻回体の外周に無機繊維よりなる第2の無機繊維積層体31を巻く。第2の無機繊維積層体31は、先端側が細幅部31aとなっており、それに引き続く部分が中幅部31bとなっており、該中幅部31bに引き続く部分が全幅部31cとなっている。
【0053】
無機繊維積層体30は、密度の異なる2種以上の無機繊維ブランケットを重ね合わせたものであってもよい。
【0054】
細幅部31aの幅は、リアパーツ20の第1円筒部21の軸方向長さと同一であり、中幅部31bの幅は、第1円筒部21及び第2円筒部22の軸方向長さと同じである。全幅部31cの幅は、フランジ16,23間の距離と同じである。
【0055】
細幅部31aを第1円筒部21に巻き付けると、その巻回径が第2円筒部22の直径とほぼ等しくなる。そこで、この細幅部31aの巻回体の外周と第2円筒部22の外周とに跨がって中幅部31bを巻回する。中幅部31bのすべてが巻き付けられると、その巻回径は第1の無機繊維積層体30の巻回体の巻回径とほぼ等しくなる。そこで、中幅部31bの巻回体の外周面と無機繊維積層体30の巻回体の外周面とに跨がって、全幅部31cを巻回して
図9,10に示す巻回体32を形成する。
【0056】
この巻回体32の外周に多孔性の接着シート(図示せず)を巻き付け、巻回体32を保形することが好ましい。この巻回体32を有したコア型9のフランジ16,23にエンドプレート50,40をボルト(図示略)によって取り付ける。エンドプレート40,50は、それぞれ正方形状の板状であり、4辺の外周縁にそれぞれリブ41,51が立設されている。各リブ41,51にそれぞれ小孔42,52がプレート板面と平行方向に貫設されている。エンドプレート50には、コア型9の円筒部12の内径と略等径の円形透口53が設けられている。
【0057】
コア型9にエンドプレート40,50を取り付けた後、巻回体32を水平な作業台上に軸心方向が水平となるように配置する。この巻回体32に対し、上方から賦形板を押し当てる。賦形板は、長方形の囲枠形状のフレームと、該フレームに張設されたメッシュとを有する。メッシュの代わりにパンチングプレートを用いてもよい。
【0058】
賦形板は長辺方向が巻回体32の軸心線と平行方向となるように水平に配置され、巻回体32に上方から押し付けられる。巻回体32を規定厚みまで押し縮めた後、エンドプレート40,50と賦形板とを連結する。
【0059】
巻回体32の外周面の残りの3方向に対しても同様に賦形板を押し当て、エンドプレート40,50に連結する。巻回体32をこのように4枚の賦形板で4方向から押し縮めることにより、四角柱形状の無機繊維製押縮体が形成される。
【0060】
この押縮体を無機質ゾルを含んだバインダー液中に浸漬する。この場合、押縮体の軸心線方向を上下方向とし、透口53付きのエンドプレート50が下方となるように押縮体をバインダー液中に浸漬することが好ましい。バインダー液は、コア型9のフロントパーツ10及びリアパーツ20の小孔を通って押縮体の内周面から押縮体の内部に浸透すると共に、賦形板を透過して押縮体の外周面から押縮体の内部に浸透する。また、バインダー液は、賦形板やエンドプレート40,50で覆われていない露呈面から直接に押縮体の内部に浸透する。
【0061】
押縮体の少なくとも内周側と外周側とにバインダー液が浸透した後、押縮体をバインダー液から引き上げる。なお、浸漬時間を短目とし、バインダー液が押縮体の内周側と外周側にのみ浸透し、中間領域にはバインダー液が全く又は少ししか浸透しない状態で押縮体をバインダー液から引き上げることが好ましい。このようにすることで、中間領域2bの嵩密度が低くなり、軽量化によりハンドリング性が向上するとともに、原料であるアルミナゾル使用料を低減することができ、製造コストを低減することができる。
【0062】
バインダー液から引き上げた押縮体のコア型9内を吸引する。そうすると、押縮体の露呈面や賦形板のメッシュを通して空気が押縮体の内部に吸い込まれ、押縮体に保持されていたバインダー液の一部がコア型9の内孔内に吸い出され、排出される。
【0063】
所定時間バインダー液の吸引排出を行った後、押縮体を乾燥器(図示略)内へ移し、好ましくは100℃以上の温度にて乾燥させる。その後、押縮体を乾燥器から取り出し、放冷後、賦形板を取り外し、さらにコア型9を脱型する。この際、巻回体32に巻いた接着シート及びコア型9に巻いた離型シートも除去する。
【0064】
このようにして乾燥及び脱型した押縮体を焼成炉(図示略)に移し、焼成し、無機バインダーを無機繊維に焼き付ける。これにより、バーナタイル素体が得られる。バーナタイル素体には、コア型9の脱型によりバーナ配置用の主孔3が形成される。その後、バーナタイル素体から、はみ出し部分(バリ)を切除すると共に、バーナタイル素体を規格寸法になるように整形加工し、また必要に応じパイロットバーナ孔やサイトホールを穿孔し、バーナタイル1とする。整形加工としては、例えばバンドソーなど高速の剪断装置を使用し、バーナとの接続部形状を加工する。
【0065】
バーナタイルに対してパイロットバーナ孔やサイトホールを設ける場合には、角度や位置のセットされた箱状のガイドに上記バーナタイルを装填し、コルクボーラなどにより孔あけ加工を施すのが好ましいが、これに限定されない。
【0066】
このようにして製造されたバーナタイル1にあっては、押縮体内に浸透したバインダー液の余剰分を内孔側に吸引して排出するので、押縮体の内周側の付着残留バインダー量が多く、しかもバインダー付着量は内孔側ほど徐々に多くなるので、バーナタイル1の主孔3の内周面に沿って高嵩密度部4が形成される。この高嵩密度部4は、嵩密度が高いため、耐風食性に優れる。このバーナタイル1は、無機繊維と無機バインダーとで構成されており、耐火性、耐熱性、耐熱衝撃性に優れ、昇温時の予備加熱が不要である。また、中間領域2bの嵩密度が小さいので、軽量でハンドリング性に優れる。
【0067】
上記製造方法によれば、バーナタイルが複雑な形状を有していても、容易に製造することができる。
【0068】
図11は、バーナ及びこのバーナタイル1を備えた炉80の炉壁の縦断面図である。炉80の鉄皮85に設けられたバーナ設置口81の炉内側にバーナタイル1が配置されている。バーナ82のバーナチップ83がバーナタイル1の主孔3内に差し込まれている。バーナタイル1の周囲にはアルミナ繊維等の耐火断熱繊維成形体84が配置されている。バーナタイル1にはパイロットバーナ孔86が設けられている。バーナ82から空気及び燃料を噴出させて点火することにより、燃焼ガスGが主孔3から炉内に向って噴出する。主孔3の内周面に沿って高嵩密度部4が形成されているので、高流速でガスGを噴出させても、主孔3の内周面の風食が防止される。
【0069】
上記バーナタイル1の形状は本発明のバーナタイルの一例であり、本発明のバーナタイルはこれ以外の形状とされてもよい。
図12,13はその他のバーナタイルの形状の一例を示す。
図12のバーナタイル1Aでは、主孔3Aは炉内側において等径円筒状である。また
図13のバーナタイル1Bでは、主孔3Bは炉内側において半球殻形状となっている。図示は省略するが、主孔は一端側から他端側に向って拡径するテーパ状であってもよい。
【0070】
上記実施の形態では無機繊維積層体を巻回することによりバーナタイルを製造しているが、
図16のバーナタイル1Cのように、板状の無機繊維積層体90を積層して立方体又は直方体形状とし、これに穿孔して主孔3を形成することによりバーナタイルを製造してもよい。また、
図17のように、長細い長方形板状の無機繊維積層体91を交互に積層して、直方体形状とし、これに穿孔して主孔3を形成することによりバーナタイルを製造してもよい。バーナタイルの製造工程の簡便さ、及び製造されたバーナタイルの耐久性向上の点から、無機繊維積層体を巻回する態様が好ましい。無機繊維積層体を巻回する態様において、バーナタイル1の外形を四角柱形状とする際の外圧によりニードル無機繊維集合体が変形し、結果ニードル無機繊維集合体間で隙間が生じる傾向がある。しかし、本発明によれば、嵩密度が相対的に低いニードル無機繊維集合体と相対的に高いニードル無機繊維集合体が積層した構造を有することで、嵩密度が相対的に高いニードル無機繊維集合体が変形したことにより生じる隙間を、嵩密度が相対的に低いニードル無機繊維集合体が適度に変形することで、隙間が埋まることで、結果的に層間に隙間が生じないバーナタイルができる点で好ましい。上記点においては、嵩密度が相対的に低いニードル無機繊維集合体と相対的に高いニードル無機繊維集合体が積層した構造を連続的に有することがより好ましい。
【0071】
第1発明のバーナタイルの一例について
図19〜21を参照して説明する。このバーナタイル1Eは、炉内外方向に貫通する主孔3Eを有する。主孔3Eに炉外側からバーナの先端側が挿入される。主孔3Eの口径は、
図21の左側の炉外側よりも右側の炉内側の方が大径となっているが、これに限定されない。
【0072】
このバーナタイル1Eは、内套部120と、該内套部120を取り巻く外套部130とを有する。内套部120は、主孔3Eのうち炉内側を取り巻いている。外套部130は、主孔3Eのうち炉外側を取り巻くと共に、内套部120の外周側を取り巻いている。
図21の通り、内套部120は、先端側(炉内側)の外径が基端側の外径よりも若干小さくなっている。これにより、内套部120が炉内側に移動することが防止される。
【0073】
内套部120は、主孔3Eの軸心と垂直な断面が三角形又は台形の第1の板体121と、主孔3Eの軸心と垂直な断面が長方形の第2の板体122とを交互に積層したものである。断面三角形又は台形の第1の板体121については、三角形の頂点側又は台形の短辺側が主孔3Eの内周面に臨むように配置する。断面長方形の第2の板体122については、長方形の一方の短辺が主孔3Eの内周面に臨むように配置する。また、板体121,122は、各々の長手方向を主孔3Eの軸心方向とする。板体121,122を主孔3Eの周方向に交互に配列することにより、主孔3Eを取り巻く板体121,122の積層体よりなる取巻体が構成される。この取巻体において、各板体121,122の板面は主孔3Eに対して略放射方向となっている。
【0074】
外套部130は、マット状の無機繊維成形体(ブランケット)131を主孔3Eの後部及び内套部120の外周を複数回周回させることにより形成されている。前述の通り、この実施の形態では、バーナタイル1Eの炉外側では主孔3Eの内周面は外套部130によって構成されている。内套部120は、バーナタイル1Eの炉内側の先端面から炉内外方向の途中まで配置されている。
図21の通り、炉内外方向のバーナタイル1Eの全長をL
0とし、内套部120の長さをL
1とした場合、L
1/L
0の百分比は15〜70%特に20〜60%であることが好ましい。
【0075】
外套部130は、後述の通り、無機繊維成形体(ブランケット)をコア型に巻回することにより形成される。内套部120を炉内側にのみ配置し、主孔3Eの内周面のうち炉外側を外套部130で形成した場合、炉外側の主孔内周面の形状精度を高くすることができる。そして、この結果、バーナノズルを主孔3Eと高精度で同軸配置することができる。
【0076】
この実施の形態では、バーナタイル1Eの外形は直方体形状となっている。
図21の通り、主孔3Eの軸心から放射方向において最も厚みが小さくなる断面において、バーナタイル1Eの厚みをT
0とし、内套部120の平均厚みをT
1とした場合、T
1/T
0の百分比は20〜70%特に30〜60%であることが好ましい。
【0077】
この実施の形態でも、
図4と同様に、主孔3Eの内周面3fに沿う部分が嵩密度の高い高嵩密度部4となっている。後述の通り、このバーナタイル1Eは、無機繊維ブランケット製板状体121,122及びブランケット131を用いてバーナタイル形状の成形体を成形した後、無機バインダーを付着させ、その後、乾燥した後、焼成する工程を経て製造されたものである。無機バインダーを主孔内周面3fに沿う部分に多く付着させることにより、内周面3fに沿って高嵩密度部4が形成される。
【0078】
この実施の形態に係るバーナタイル1E及びこのバーナタイル1Eを備えた炉壁の縦断面図は、
図11と同一である。
【0079】
このバーナタイル1Eにあっては、燃焼ガスGと接する主孔内周面が、無機繊維製板体121,122を、各々の板面を放射方向として積層した内套部120によって構成されており、また、内套部120と外套部130との界面が主孔3Eの内周面から離隔している。そのため、長期間にわたってバーナを作動させ、板体121,122を構成する無機繊維の結晶化が進行しても、内套部120と外套部130との結合面の健全性が保たれ、板体121,122の脱落が防止される。また、バーナ火炎は進行方向に対して偏心することがあり局部加熱が起こることがあるが、内壁を構成する無機繊維は円周方向に分割されており、さらに無機繊維の収縮方向には圧縮がなされている為、脱落が防止される。
【0080】
また、内套部120を構成する板体121,122同士の重ね合わせ面が放射方向に延在しているが、内套部120の外周を無機繊維積層体を複数回周回させた外套部130が取り巻いているため、板体121,22の重ね合わせ面からの伝熱が外套部130で遮断され、バーナタイル1Eの断熱性が良好である。主孔3Eの内周面に沿って高嵩密度部4が形成されているので、高流速でガスGを噴出させても、主孔3Eの内周面の風食が防止される。
【0081】
この実施の形態では、主孔3Eの炉外側の内周面が真円度の高い円筒状となっているので、バーナチップ83を主孔3Eと高精度に同軸状に設置することができる。
【0082】
上記バーナタイル1Eの形状は第3発明のバーナタイルの一例であり、第3発明のバーナタイルはこれ以外の形状とされてもよい。例えば、図示は省略するが、主孔は一端側から他端側に向って拡径するテーパ状であってもよい。
【0083】
次に、このバーナタイル1Eの製造方法の一例について
図22a〜26を参照して説明する。
図22aはバーナタイル1Eの成形に用いられるコア型109の軸心線方向の断面図であり、
図22bのXXIIa−XXIIa線断面図である。
図22bは
図22aのXXIIb−XXIIb線矢視図である。
【0084】
このコア型109は、フロントパーツ110と、該フロントパーツ110に組み付けられたリアパーツ111とを有する。フロントパーツ110は、筒状であり、多数の小孔を有したパンチングプレートによって製作されている。フロントパーツ110は、円筒部112と、該円筒部112の先端面において求心方向に設けられた複数本(この実施の形態では3本)のスポーク113と、各スポーク113の求心方向先端側が連なるボス114と、該ボス114に貫設されたボルト挿通孔115と、該円筒部112の先端側の外周に設けられたフランジ116と、円筒部112の後端側から内周側に張り出した内向き鍔部117とを有する。
【0085】
リアパーツ111は、筒状であり、多数の小孔を有したパンチングプレートによって製作されている。リアパーツ111は、小径の第1円筒部111aと、該第1円筒部111aのリア側に連なった大径の第2円筒部111bと、該第2円筒部111bのリア側の外周に設けられたフランジ111cと、第1円筒部111aのフロント側から求心方向に設けられた複数本のスポーク111dと、各スポーク111dの求心方向先端側が連なるボス111eと、該ボス111eからフロントパーツ110の軸心を通るように立設された長ボルト111fとを有する。
【0086】
リアパーツ111の第1円筒部111aをフロントパーツ110の内向き鍔部117に当接させ、長ボルト111fの先端をボルト挿通孔115に通し、該長ボルト111fの先端にナット118を螺合させて締め込むことにより、フロントパーツ110とリアパーツ111とが組み付けられて一体化し、略筒状のコア型109が構成される。各パーツ110,111は金属又は合成樹脂特に金属にて構成されることが好ましい。
【0087】
このコア型109の外周面にガラスクロス等よりなる離型シート(図示略)を巻いた後、
図24の通り、フロントパーツ110の外周に、無機繊維ブランケット製の板体121,122を、それぞれ板面がコア型109の軸心に対し放射方向となるようにして、周方向に板体121,122が交互に積層されるように配置し、フロントパーツ110を取り巻く。
【0088】
板体121,122を配置する際に、該板体121,122を圧縮することが好ましい。これにより、主孔3Eの真円度が高くなり、かつ板体121,122間に隙間が生じないようになる。
【0089】
板体121,122を圧縮する手段は、特段の制限はないが、締め付けベルトなどの補助器具を用い、所定の圧縮率に締め付けた後、包帯またはテープ類で固定する(図示略)ことで達成できる。前記の圧縮率は、耐風食性など求められる物性から10%以上とすることが好ましく、また、圧縮による繊維の圧壊を防止するために、50%以下とすることが好ましい。
【0090】
次に、
図24のように、リアパーツ111の外周と無機繊維板体121,122の取巻体の外周に無機繊維積層体(ブランケット)131を巻く。無機繊維積層体131は、先端側が細幅部131aとなっており、それに引き続く部分が中幅部131bとなっており、該中幅部131bに引き続く部分が全幅部131cとなっている。
【0091】
無機繊維積層体131は、密度の異なる2種以上の無機繊維ブランケットを重ね合わせたものであってもよい。
【0092】
細幅部131aの幅は、リアパーツ111の第1円筒部111aの軸方向長さと同一であり、中幅部131bの幅は、リアパーツ111の軸方向長さと同じである。全幅部131cの幅は、フランジ116,111c間の距離と同じである。
【0093】
細幅部131aを第1円筒部111aに巻き付けると、その巻回径が第2円筒部111bの直径とほぼ等しくなる。そこで、この細幅部131aの巻回体の外周と第2円筒部111bの外周とに跨がって中幅部131bを巻回する。中幅部131bのすべてが巻き付けられると、その巻回径は板体121,122の取巻体の外径とほぼ等しくなる。そこで、中幅部131bの巻回体の外周面と板体121,122の取巻体の外周面とに跨がって、全幅部131cを巻回して
図7,8に示す巻回体132を形成する。
【0094】
この巻回体132の外周に多孔性の接着シート(図示せず)を巻き付け、巻回体132を保形することが好ましい。この巻回体132を有したコア型109のフランジ116,111cにエンドプレート50,40をボルト(図示略)によって取り付ける。前述の実施の形態と同様に、エンドプレート40,50は、それぞれ正方形状の板状であり、4辺の外周縁にそれぞれリブ41,51が立設されている。各リブ41,51にそれぞれ小孔42,52がプレート板面と平行方向に貫設されている。エンドプレート50には、コア型109の第2円筒部111bの内径と略等径の円形透口53が設けられている。
【0095】
コア型109にエンドプレート40,50を取り付けた後、巻回体132を水平な作業台上に軸心方向が水平となるように配置する。この巻回体132に対し、上方から賦形板を押し当てる。賦形板は、長方形の囲枠形状のフレームと、該フレームに張設されたメッシュとを有する。メッシュの代わりにパンチングプレートを用いてもよい。
【0096】
賦形板は長辺方向が巻回体132の軸心線と平行方向となるように水平に配置され、巻回体132に上方から押し付けられる。巻回体132を規定厚みまで押し縮めた後、エンドプレート40,50と賦形板とを連結する。
【0097】
巻回体132の外周面の残りの3方向に対しても同様に賦形板を押し当て、エンドプレート40,50に連結する。巻回体132をこのように4枚の賦形板で4方向から押し縮めることにより、四角柱形状の無機繊維製押縮体が形成される。
【0098】
この押縮体を無機質ゾルを含んだバインダー液中に浸漬する。この場合、押縮体の軸心線方向を上下方向とし、透口53付きのエンドプレート50が下方となるように押縮体をバインダー液中に浸漬することが好ましい。バインダー液は、コア型109のフロントパーツ110及びリアパーツ20の小孔を通って押縮体の内周面から押縮体の内部に浸透すると共に、賦形板を透過して押縮体の外周面から押縮体の内部に浸透する。また、バインダー液は、賦形板やエンドプレート40,50で覆われていない露呈面から直接に押縮体の内部に浸透する。
【0099】
押縮体の少なくとも内周側と外周側とにバインダー液が浸透した後、押縮体をバインダー液から引き上げる。浸漬時間は、押縮体の大きさ及び構造又はバインダー液の組成等に応じて、適宜調整できるが、押縮体をバインダー液に浸透させた後押縮体から空泡が目視にて確認できなくなる程度まで行うことが好ましい。なお、浸漬時間を短目とし、バインダー液が押縮体の内周側と外周側にのみ浸透し、中間領域にはバインダー液が全く又は少ししか浸透しない状態で押縮体をバインダー液から引き上げてもよい。このようにすることで、後述の中間領域1bの嵩密度が低くなり、軽量化によりハンドリング性が向上する。また、原料であるアルミナゾル使用量を減少させることができ、製造コストを低減することができる。
【0100】
バインダー液から引き上げた押縮体のコア型109内を吸引する。そうすると、押縮体の露呈面や賦形板のメッシュを通して空気が押縮体の内部に吸い込まれ、押縮体に保持されていたバインダー液の一部がコア型109の内孔内に吸い出され、排出される。
【0101】
所定時間バインダー液の吸引排出を行った後、押縮体を乾燥器(図示略)内へ移し、好ましくは100℃以上の温度にて乾燥させる。その後、押縮体を乾燥器から取り出し、放冷後、賦形板を取り外し、さらにコア型109を脱型する。この際、巻回体132に巻いた接着シート及びコア型109に巻いた離型シートも除去する。
【0102】
このようにして乾燥及び脱型した押縮体を焼成炉(図示略)に移し、焼成し、無機バインダーを無機繊維に焼き付ける。これにより、バーナタイル素体が得られる。バーナタイル素体には、コア型109の脱型によりバーナ配置用の主孔3Eが形成される。その後、バーナタイル素体から、はみ出し部分(バリ)を切除すると共に、バーナタイル素体を規格寸法になるように整形加工し、また必要に応じパイロットバーナ孔やサイトホールを穿孔し、バーナタイル1Eとする。整形加工としては、例えばバンドソーなど高速の剪断装置を使用し、バーナとの接続部形状を加工する。
【0103】
バーナタイルに対してパイロットバーナ孔やサイトホールを設ける場合には、角度や位置のセットされた箱状のガイドに上記バーナタイルを装填し、コルクボーラなどにより孔あけ加工を施すのが好ましいが、これに限定されない。
【0104】
このようにして製造されたバーナタイル1Eにあっては、押縮体内に浸透したバインダー液の余剰分を内孔側に吸引して排出するので、押縮体の内周側の付着残留バインダー量が多く、しかもバインダー付着量は内孔側ほど徐々に多くなるので、バーナタイル1Eの主孔3Eの内周面に沿って高嵩密度部4(
図4)が形成される。この高嵩密度部4は、嵩密度が高いため、耐風食性に優れる。このバーナタイル1Eは、無機繊維と無機バインダーとで構成されており、耐火性、耐熱性、耐熱衝撃性に優れ、昇温時の予備加熱が不要である。また、中間領域1bの嵩密度が小さいので、軽量でハンドリング性に優れる。
【0105】
上記製造方法によれば、バーナタイルが複雑な形状を有していても、容易に製造することができる。また、主孔3Eの内周面のうち炉外側を構成する外套部130は、コア型109の形状通りに成形されたものであるので、真円度の高い円筒形となっている。
【0106】
この実施の形態でも、
図4,5と同様に、バーナタイル1Eを主孔3Eの軸心に対して放射方向に3等分し、最も主孔3E側の1/3の領域を内周領域1aとし、最も外側の1/3の領域を外周領域1cとし、領域1a,1c間の1/3の領域を中間領域1bとし、内周領域1aのうち、主孔内周面3fから厚み方向に距離d=5mmまでの範囲の嵩密度をDiとし、中間領域1bの嵩密度をDmとした場合、DiはDmよりも大きい。
【0107】
Di、Dm、Di−Dm及びDi/Dmの好適な範囲は、前記実施の形態と同様である。
【0108】
このバーナタイル1Eでも、中間領域1bに、嵩密度が互いに異なる複数の無機バインダー担持無機繊維集合体層を有することが好ましい。
【0109】
このバーナタイル1Eでも、
図5と同様に、嵩密度は内周面3f側から外面に向って直線的に低くなっていてもよく、
図14のように内周側から中間領域にかけて比較的急激に嵩密度が減少し、中間領域から外面にかけて嵩密度がなだらかに低下してもよい。
【0110】
このバーナタイル1Eでも、
図15のように外面付近において嵩密度が再び高くなってもよい。このように外面付近の嵩密度を高くすると、バーナタイルの外面に触れたときの外面の変形が小さくなり、バーナタイルの取り扱いが容易となる。外周領域1cのうち、外周面1gから厚み方向に距離h=5mmまでの範囲の嵩密度をDoとした場合、Doの好ましい範囲はバーナタイル1と同様である。
【0111】
このバーナタイル1Eは、主孔内周面3fに沿って高嵩密度部4が設けられているので、耐風食性に優れる。また、このバーナタイル1Eは、中間領域1bの嵩密度が小さいので、軽量であると共に、耐熱衝撃性に優れる。
【0112】
複数の嵩密度が異なる無機バインダー担持無機繊維集合体層からなる巻層無機繊維成形体を有することで、均一な熱伝導性を満たす点で好ましく、また耐風食性と衝撃緩和性の両方を向上させることができる点で好ましい。
【0113】
上記実施の形態において、バーナタイル1,1Eの外形を四角柱形状とする際の外圧によりニードル無機繊維集合体(ブランケット)が変形し、この結果ニードル無機繊維集合体間で隙間が生じる傾向がある。しかし、本発明によれば、嵩密度が相対的に低いニードル無機繊維集合体と相対的に高いニードル無機繊維集合体が積層した構造を有することで、嵩密度が相対的に高いニードル無機繊維集合体が変形したことにより生じる隙間を、嵩密度が相対的に低いニードル無機繊維集合体が適度に変形することで、隙間が埋まることで、結果的に層間に隙間が生じないバーナタイルができる点で好ましい。上記点においては、嵩密度が相対的に低いニードル無機繊維集合体と相対的に高いニードル無機繊維集合体が積層した構造を連続的に有することがより好ましい。
【0114】
上記実施の形態では、バーナタイル1,1Eの外形は四角柱形状であるが、バーナタイルの外形は円柱形状や六角柱などの多角柱形状であってもよい。
【0115】
円柱形状のバーナタイルは、二分円筒形状(二ツ割り形状)の2枚の賦形板を用いて略円筒形の押縮体を成形する工程を経て製造されることが好ましく、四分円筒形状(四ツ割り形状)の4枚の賦形板を用いて略円筒形の押縮体を成形する工程を経て製造されることも好ましい。六角柱形状のバーナタイルは、6枚の賦形板で巻回体を6方向から押し縮めて押縮体を成形する工程を経て製造されることが好ましい。
【0116】
四角柱形状のバーナタイルに切削加工を施すことにより六角柱形状や八角柱形状のバーナタイルを製造してもよい。
【0117】
上記実施の形態では、押縮体をバインダー液に浸漬するようにしているが、バインダー液を噴霧、塗布などによって押縮体の内周面側と外周面側とに含浸させてもよい。バインダー液は、無機繊維マットや押縮体とする前の巻回体に対し含浸されてもよい。
【0118】
第1発明のバーナタイルの別の一例について
図27を参照して説明する。このバーナタイル1Fは、主孔の炉内側の内周面に沿う筒状体と、該筒状体が着脱可能に嵌め込まれた本体とで構成されており、該筒状体が本体から炉内側に抜け出すことを防止するための抜け出し防止手段を備えている。
【0119】
このバーナタイル1Fは、バーナタイル1Eと同様に、内套部150(筒状体)と、該内套部150が差し込まれた外套部160(本体)とを有する。
【0120】
内套部150(筒状体)は、主孔3Eの軸心と垂直な断面が三角形又は台形の第1の板体121と、主孔の軸心と垂直な断面が長方形の第2の板体122とを交互に積層して円筒状に保形し、バインダー液を含浸させ、乾燥及び焼成することにより製造されたものである。内套部150の後端側の外周面からの凸部152が放射方向に突設されている。この凸部は板体121及び122の少なくとも一つと一体となっている。なお、凸部、軸心線と平行方向に延在する溝及びキー溝はそれぞれ複数設けられてもよい。
【0121】
前記バーナタイル1Eと同様に、断面三角形又は台形の第1の板体121については、三角形の頂点側又は台形の短辺側が主孔の内周面に臨むように配置する。断面長方形の第2の板体122については、長方形の一方の短辺が主孔の内周面に臨むように配置する。また、板体121,122は、各々の長手方向を主孔の軸心方向とする。板体121,122を主孔の周方向に交互に配列することにより、主孔を取り巻く板体121,122の積層体よりなる取巻体が構成される。この取巻体において、各板体121,122の板面は主孔に対して略放射方向となっている。
【0122】
外套部160(本体)は、内套部150が差し込まれる内孔161を有する。この内孔161の内周面に、内孔161の軸心線と平行方向に延在する溝162が設けられている。溝162の最奥部は、内孔161の周方向に延出したキー溝162aとなっている。
【0123】
この外套部160を製造するには、無機繊維成形体(ブランケット)を
図22aと同様のコア型に巻回した後、
図25のようにエンドプレート40,50を該コア型に取り付ける。そして、4枚の賦形板で4方向から押し縮めることにより、外面が四角柱形状となった押縮体とする。この押縮体にバインダー液を含浸させた後、乾燥し、脱型し、焼成する。次いで、外套部160の内周面に切削加工を施すことにより溝162及びキー溝162aを形成する。また、上記溝162及びキー溝162aは、金型に同寸法の凸部を設けておくことにより、外套部成型時に形成するようにしてもよい。
【0124】
凸部152を溝162に係合させて内套部150を外套部160の内孔161し、次いで内套部150を周方向に回して凸部152をキー溝162aに係合させる。次いで、溝162に無機繊維積層体の充填物を充填する。これによりバーナタイル1Fが構成される。この場合、内套部150を外套部160に挿入するのに先立って、内套部150の外周に無機繊維積層体シート151を巻き付け、内套部150の外周と外套部160の内孔161の隙間に無機繊維積層体シート151を介在させることが好ましい。これにより、無機繊維積層体シート151の復元力(反発力)により、内套部150が外套部160の内孔161内に保持されやすくなる。なお、無機繊維積層体シート151を巻きつけた後、高温で消失する束縛用ロープ(図示省略)で束縛してもよい。
【0125】
なお、前記バインダー液を含浸させる際に主孔の内周面側でバインダー付着量が多くなるようにし、主孔の内周面に沿って高嵩密度を形成する。
【0126】
このバーナタイル1Fは、内套部150が外套部160に対し着脱可能であるので、内套部150が劣化した際に内套部150のみを取り出して補修したり、新品の内套部150と交換したりすることができる。
【0127】
図28,29は、筒状体を本体に着脱可能な形態を適用したバーナタイル1Gを示している。筒状体170は、バーナタイル1Gの主孔3の炉内側の内周面を構成している。本体180は、この筒状体170が差し込まれる内孔181を有する。この内孔181の内周面に、内孔181の軸心線方向に延在する溝182が設けられている。溝182の長手方向の途中と最奥部に、内孔181の周方向に延在したキー溝182a,182bが設けられている。筒状体170の外周面には、筒状体170の軸心線方向に間隔をあけて2個の凸部171,172が突設されている。
【0128】
凸部171,172を溝182に係合させて筒状体170を内孔181に挿入した後、筒状体170を周方向に回して凸部171,172をキー溝182a,182bに係合させ、次いで溝182に無機繊維積層体の充填物を充填することによりバーナタイル1Gが構成される。
【0129】
このバーナタイル1Gにおいても、筒状体170を本体180から取り出して補修したり交換したりすることができる。
【0130】
なお、この実施の形態では、筒状体170は炉内側ほど大径となるテーパ形状を有しており、炉内側へ移動し易い。そのため、それぞれ2個の凸部171,172及びキー溝182a,182bを設けて係合させることにより、筒状体170が炉内方向に移動することを阻止している。ただし、凸部及びキー溝の数は1個であってもよく、3個以上であってもよい。また、軸心線と平行方向に延在する溝は複数設けられてもよい。
【0131】
溝182及びキー溝182a,182bは切削加工により形成することができる。また、上記溝182びキー溝182a、182bは、金型に同寸法の凸部を設けておくことにより、外套部成型時に形成してもよい。
【0132】
凸部171,172付きの筒状体170を製作するには、
図30のように、外周面に周回凸条部173を有する筒状体を製作しておき、この周回凸条部173に切削加工を施して凸部171,172を形成すればよい。
【0133】
図31のように、凹穴174を筒状体170の外周面に設け、この凹穴174に無機繊維製のピース175を嵌め込むことによっても凸部付き筒状体170を製作することができる。
【0134】
図32のように、幅広部176aと細幅部176bとを有する無機繊維製の帯状シート176の幅広部176aを筒状体170の外面に無機接着剤で貼り付け、細幅部176bをジグザグに折り畳んで無機接着剤で幅広部176aに重ねて接着することによっても凸部付き筒状体170を製作することができる。
【0135】
これらのバーナタイル1F,1Gでも、前記バーナタイル1,1Eと同様に、バーナタイルを主孔の軸心に対して放射方向に3等分し、最も主孔側の1/3の領域を内周領域1aとし、最も外側の1/3の領域を外周領域1cとし、領域1a,1c間の1/3の領域を中間領域1bとし、内周領域1aのうち、主孔内周面3fから厚み方向に距離d=5mmまでの範囲の嵩密度をDiとし、中間領域1bの嵩密度をDmとした場合、DiはDmよりも大きい。
【0136】
[無機繊維積層体の好ましい形態]
無機繊維の板体121,122及び積層体30, 31,131は、特開2011−208344に基づいて製造されたものが好ましいが、これに限定されない。無機繊維積層体は、アルミナ重量分率が65重量%以上である無機繊維についてニードリング処理が施されたニードルブランケットなどのニードル無機繊維集合体よりなることが好ましく、特に2種以上のニードル無機繊維集合体を積層したものであることが好ましい。
【0137】
ニードル無機繊維集合体を構成する無機繊維としては、アルミナ重量分率が65重量%以上のアルミナ質繊維が好ましく、具体的にはアルミナ/シリカ、これらを含むジルコニア、スピネル、チタニア等の単独、又は複合繊維が挙げられるが、特に好ましいのは耐熱性、繊維強度(靭性)、安全性の点で、アルミナ/シリカ系繊維、特に多結晶質アルミナ/シリカ系繊維である。
【0138】
アルミナ/シリカ系繊維のアルミナ/シリカの組成比(重量比)は65〜98/35〜2のムライト組成、又はハイアルミナ組成と呼ばれる範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは70〜95/30〜5、特に好ましくは70〜74/30〜26の範囲である。
【0139】
ニードルブランケットを構成する無機繊維の80重量%以上、好ましくは90重量%以上、特に好ましくはその全量が上記ムライト組成の多結晶アルミナ/シリカ系繊維であることが好ましい。
【0140】
前記板体121,122及び積層体30, 31,131を構成する無機繊維積層体としては、後述するニードル無機繊維集合体A,B,C,Dの少なくとも1つにて構成されることが好ましく、無機繊維積層体31,131はニードル無機繊維集合体B,Cの少なくとも1つにて構成されることが好ましい。本願の効果を奏する範囲においては、アルミナ重量65%未満である無機繊維からなるニードルブランケットを有していてもよい。
【0141】
[ニードル無機繊維集合体A]
ニードル無機繊維集合体Aのニードル痕密度は、1.0打/cm
2以上であり、好ましくは1.5打/cm
2以上であり、一方、5.0打/cm
2未満であり、好ましくは3.0打/cm
2以下である。ニードル無機繊維集合体Aのニードル痕密度がこの範囲にあることにより、巻回体132の形状変形性能が良好であり、好ましい。
【0142】
ニードル無機繊維集合体Aの嵩密度は、0.02〜0.10g/cm
3であることが好ましく、0.04〜0.08g/cm
3であることがより好ましい。嵩密度がこの範囲にあることにより、巻回体132を賦形する工程のハンドリング性が良好であり、好ましい。
【0143】
ニードル無機繊維集合体Aの面密度は、800〜1400g/m
2、特に900〜1300g/m
2、とりわけ1000〜1200g/m
2であることが好ましい。ニードル無機繊維集合体Aの面密度がこの範囲にあることにより、巻回体132を賦形する工程のハンドリング性が良好であり、好ましい。
【0144】
ニードル無機繊維集合体Aの厚さは、特に制限はないが、通常厚さ35〜60mm程度が好ましい。
【0145】
[ニードル無機繊維集合体B]
ニードル無機繊維集合体Bのニードル痕密度は、5.0打/cm
2より多く、好ましくは6.0打/cm
2以上であり、一方、10.0打/cm
2以下であり、好ましくは9.0打/cm
2以下である。ニードル痕密度がこの範囲にあることにより、バーナタイルの形状保持性能およびバーナタイルの形状変形性能が良好であり、好ましい。
【0146】
ニードル無機繊維集合体Bの嵩密度は、0.06〜0.16g/cm
3であることが好ましく、0.08〜0.14g/cm
3であることがより好ましい。ニードル無機繊維集合体Bの嵩密度がこの範囲にあることにより、バーナタイルの形状保持性能が良好であり、好ましい。
【0147】
ニードル無機繊維集合体Bの面密度は、2200〜3600g/m
2、特に2300〜3500g/m
2、とりわけ2400〜3200g/m
2であることが好ましい。面密度がこの範囲にあることにより、バーナタイルの形状保持性能が良好であり、好ましい。
【0148】
ニードル無機繊維集合体Bの厚さは特に制限はないが、通常20〜30mm程度が好ましい。
【0149】
[ニードル無機繊維集合体C]
ニードル無機繊維集合体Cのニードル痕密度は、10.0打/cm
2より多く、好ましくは12.0打/cm
2以上であり、一方、17.0打/cm
2以下であり、好ましくは16.0打/cm
2以下である。ニードル痕密度がこの範囲にあることにより、バーナタイルの耐風食性が良好となり、好ましい。
【0150】
ニードル無機繊維集合体Cの嵩密度は、0.120〜0.175g/cm
3であることが好ましく、0.135〜0.19g/cm
3であることがより好ましい。嵩密度がこの範囲にあることにより、バーナタイルの耐風食性が良好となり、好ましい。
【0151】
ニードル無機繊維集合体Cの面密度は、1000〜2000g/m
2、特に1200〜1800g/m
2、とりわけ1400〜1600g/m
2であることが好ましい。面密度がこの範囲にあることにより、バーナタイルの耐風食性が良好となり、好ましい。
【0152】
ニードル無機繊維集合体Cの厚さは特に制限はないが、通常厚さ8.0〜12.0mm程度が好ましい。
【0153】
[ニードル無機繊維集合体D]
ニードル無機繊維集合体Dのニードル痕密度および嵩密度は、ニードル無機繊維集合体Dと同様である。
【0154】
また、面密度は1200〜2000g/m
2、特に1300〜1900g/m
2、とりわけ1400〜1800g/m
2であることが好ましい。面密度がこの範囲にあることにより、放射状のバーナタイル内筒を板体121,122により形成した際、円周外側の形状保持性能が良好である点で、好ましい。
【0155】
ニードル無機繊維集合体Dの厚さは特に制限はないが、通常8〜15mm程度が好ましい。
【0156】
第2発明のバーナタイルにおいて、ニードル無機繊維集合体C/ニードル無機繊維集合体A/ニードル無機繊維集合体Bの3層構造の積層マットをコア型9に巻くか、又はニードル無機繊維集合体A,B,Cを個別にコア型9に巻くことにより第1の無機繊維積層体30の巻回体を構成することが好ましい。第2の無機繊維積層体31を巻く場合、ニードル無機繊維集合体A/ニードル無機繊維集合体Bの2層構造の積層体を巻いてもよく、ニードル無機繊維集合体A,Bを個別に巻いてもよい。1枚のニードル無機繊維集合体を個別に巻く場合、複雑な形状のコア型にも容易に巻き付けることができる。
【0157】
第1発明のバーナタイルにおいて、板体121,122はニードル無機繊維集合体B又はDにて構成されることが好ましい。板体121,122の取巻体に無機繊維積層体131を爆場合、ニードル無機繊維集合体A/ニードル無機繊維集合体Bの2層構造の積層マットを板体121,122の取巻体に巻くか、又はニードル無機繊維集合体A,Bを個別に板体121,122の取巻体ことにより無機繊維積層体131の巻回体を構成することが好ましい。
【0158】
<無機バインダー>
無機バインダー液を構成する無機バインダーとしては、特段の制限はなく、無機質ゾルおよび金属塩、またはその混合物など焼成後に酸化物を形成するものであればよい。以下、具体例を挙げて記述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0159】
無機質ゾルとしては、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル又はマグネシアゾル、カルシアゾルなどが挙げられる。また、金属塩としては上記金属種の蟻酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、リンゴ酸などの有機酸塩、また、硝酸などの鉱酸塩が挙げられる。なかでも、アルミナゾルは熱膨張係数値が無機繊維集合体と近い点で好ましい。無機バインダーとして複数の無機質ゾルを用いてもよい。
【0160】
無機バインダー液の濃度は、固形分として6〜14重量%、中でも8〜11重量%であることが好ましい。また、バインダー液の粘度を5〜200cpに調製することが好ましい。
【0161】
巻回体32,132中の最外層および最内層における無機バインダーの添着率が、厚み方向における最外層と最内層との中点における添着率と比較してそれぞれ1.0倍以上2.0倍以下、及び1.5倍以上10.0倍以下であることがバーナタイル外郭形状保持の点で好ましい。この比率は特に好ましくは、それぞれ1.1倍以上1.9倍以下、及び3.0倍以上8.0倍以下である。
【0162】
ここで、無機バインダーの添着率とは、下記式の通り、無機繊維の重量に対する無機バインダー固形分の重量を百分率で表した割合をいう。
(添着率)=(無機バインダー固形分重量)/(無機繊維集合体重量)×100
無機繊維に対する無機バインダーの添着率の測定方法としては焼成法が挙げられ、具体的には公知文献(国際公開第2013/035645号)に記載の方法により測定することができる。
【0163】
なお、本発明の効果を損なわない限り、バインダー液に分散剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0164】
<離型シート>
離型シートとしては、特段の制限はないが、フッ素樹脂等よりなる合成樹脂シート、ガラスクロスなどが挙げられる。
【0165】
<乾燥条件>
乾燥条件としては、特段の制限はないが、具体的には、最外層を60℃〜200℃の熱風を接触させる方法、又は100℃〜200℃の雰囲気下で、2〜5時間程度静置させる方法が挙げられる。このようにすると、最外側の無機質ゾルの添着量を増加させることができ、好ましい。吸引脱水工程と乾燥工程とを同時に行ってもよく、このようにすれば作業効率が向上する。
【0166】
<焼成条件>
押縮体を焼成することにより、無機質ゾルに含まれる揮発性の分散剤の除去や、水などにより濡れた際の無機質ゾルの再溶解、再溶解に伴う無機繊維成形体構造の崩れを防ぐ事が出来る。本発明においては、有機分が完全に消失し、アルミナゾル等の無機バインダーのコランダム化が為される空気などの酸素含有雰囲気中にて600℃〜1200℃で焼成することが好ましい。
【0167】
<後加工>
必要に応じて、本発明に係るバーナタイルに対して後加工を行なってもよい。例えば、バリ1aをNTカッターなどにより切落としたり、バーナタイル外面を整形して規格形状とする。
【実施例】
【0168】
以下に、実施例により本発明の実施形態を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。なお、本実施例に記載の項目は以下の方法によって測定した。
【0169】
[主孔内周面に臨む高嵩密度部の嵩密度]
主孔内壁の最表面から火炎方向と垂直方向に5mmの厚み位置かつ火炎方向に平行の開口部最前部10mmの円周を4分割して、測定サンプルを切り出し、各サンプルの重量を測定する。その後、タフダイン(クボタシーアイ株式会社)塗布により表面を疎水性とし、メスシリンダ内の水中に投入し、水液面位置の上昇から体積を測定する。上記重量をこの体積で除算することにより高嵩密度部の嵩密度を算出した。
【0170】
[中間領域及び外周領域の嵩密度]
測定手順は次の通りである。
1) バーナタイルから所定サイズ(幅20mm×長さ50mm×厚さ5mm)のサンプルを切出す。
2) サンプル表面にタフダイン(クボタシーアイ株式会社)を塗布する。(表面に孔が無い様に、表面が平滑になるまで、場合によっては複数回塗布する。)
3) サンプルを十分に乾燥させる。
4) 乾燥後のサンプルの重量を測る。
5) 水を入れたメスシリンダに上記サンプルを投入し、体積増加を目盛りから読み取る。
6) 測定重量[g]を測定体積[mL]で割ることで嵩密度[g/mL]を求める。
【0171】
[バーナ燃焼試験1]
下記仕様のバーナを用い、5分間の燃焼、消火を10回繰り返した。次いで、試験炉内で炉内温度1400℃で32時間燃焼させた。
【0172】
バーナ仕様:
1.四角型(254mm四角×298mm)2.円筒型(φ300mm×218mm)
容量:1.500000kcal/h、2.600000kcal/h
燃料:13A都市ガス
空気温度:1.400℃ 2.400℃
燃焼空気比:1.0〜1.1
【0173】
[同心円精度]
燃焼試験前後のバーナタイルについて、主孔の炉内側の開口径を内パスにより測定し、半径の変化の有無を確認する。
【0174】
[内壁剥離有無]
燃焼試験前後のバーナタイルについて、主孔内周面を目視にて観察し、剥離の有無を観察する。
【0175】
[割裂有無]
圧縮空気を移送できる配管の先端にバーナタイルを火炎開口部が上向きとなる様に設置し、主孔のフロント側(炉内側)開口部を密度0.17.0g/cm
3の無機繊維成形体にて塞いだ。その後、0.1MPaの圧縮空気をバーナタイル内に下部から送風し、バーナタイル外表面に洗剤泡を塗布し、気泡膨張の有無を目視にて観察し、割裂の有無を確認する。
【0176】
[目地開き有無]
焼成工程前後のバーナタイルにおいて、主孔のフロント側(炉内側)開口部を正面に位置させた際の目地開きの有無を目視にて観察する。
【0177】
[実施例1]
図6に示す形状のコア型9を用いてバーナタイル1を製造した。コア型9の各部分の寸法は次の通りである。
フロントパーツ10の軸方向長さ:192mm
フロントパーツ10の最大内径:122mm
フロントパーツ10の最小内径:85mm
リアパーツ20の軸方向長さ:106mm
リアパーツ20の最大内径:85mm
リアパーツ20の最小内径:61mm
【0178】
[製造手順]
厚さ50mm、ニードル痕密度 3.0打/cm
2であるアルミナ繊維ニードルブランケット(三菱樹脂株式会社 MAFTEC(登録商標)。以下ニードルブランケットA))を320mm幅、2000mm長さに、また、厚さ25mm、ニードル痕密度 6.0打/cm
2であるアルミナ繊維ニードルブランケット(三菱樹脂株式会社 MAFTEC(登録商標) 8P25T 以下ニードルブランケットB)を320mm幅2500mm長さに切出した。また、内抜き型を用いて、厚さ10mm、ニードル痕密度 12.0打/cm
2であるアルミナ繊維ニードルブランケット(三菱樹脂株式会社 MAFTEC(登録商標)。以下ニードルブランケットC)を中心角度55度、半径520mmの半円から、中心角55度、半径363mmの半円をくり抜いた扇形に切出した。同様の操作で中心角度65度、半径565mmの半円から、中心角65度、半径408mmの半円をくり抜いた扇形を切出した。
【0179】
コア型9に離型シートとして厚さ0.5mmのガラスクロス(中興化成株式会社製:チューコーフロー(登録商標)Gタイプファブリック)を1周巻いた。その後、最も過酷な風速に晒されることが予想される部分にはニードルブランケットCの扇形を対応するコア型部分(フロントパーツ10)に巻付けて第1の無機繊維積層体30を形成した。その後、ニードルブランケットAをニードルブランケットBの上に重ね合せて第2の無機繊維積層体31を形成し、
図8のように巻付け、直径330mm、長さ320mmの巻回体32を製作した。
【0180】
図9のようにこの巻回体32の両端面にエンドプレート40,50を取り付けた後、巻回体32に賦形板を押し付け、エンドプレート40,50に連結し、一辺が254mmの正方形の柱状の押縮体とした。
【0181】
この押縮体を固形分濃度8重量%のアルミナゾル(日産化学株式会社 アルミナゾル200)に30分間浸漬させた後引き上げ、−17.5〜−22.5kPaの負圧にて45分間脱液した。その後、押縮体をボックスで囲み、吸引を継続しながら、ボックス内に100〜140℃の温風を4時間導入し、乾燥させた。乾燥後、賦形板を取り外すと共に、コア型9を脱型した。次いで空気雰囲気で、1000℃にて3時間焼成した。焼成後のバーナタイル素体の4隅のバリをカッターで切り落とした後、バンドソーにて外形を254×254×298mmに整形した。また、パイロットバーナ孔及びサイトホールをバーナタイル設置用の前板を利用し、コルクボーラーにて穿設し、表1に示すバーナタイルを製造した。
【0182】
このバーナタイルの特性の測定結果を表1に示す。表1の風食試験の欄の○は該当列深さの侵食が観察される層が存在することを表し、×は同侵食が観察されないことを表す。
【0183】
[実施例2]
実施例1において、厚み10.0mmのニードルブランケットCの代わりに厚みを12.5mmとしたニードルブランケットCを用いたこと以外は実施例1と同様にして、表1に示すバーナタイルを製造した。
【0184】
[実施例3(円筒形バーナタイル)]
前記ニードルブランケットAを190mm幅600mm長さに、前記ニードルブランケットBを240mm幅2500mm長さに切り出し、切出した。また、内抜き型を用いてニードルブランケットCを中心角度250度、半径112mmの半円から、中心角250度、半径51mmの半円をくり抜いた扇形を切出した。同様の操作でニードルブランケットCから中心角度65度、半径461mmの半円から、中心角65度、半径331mmの半円をくり抜いた扇形を切出した。切出したニードルブランケットを実施例1と同様の順番で巻付けた。また、賦形板として半円形状のもの2枚を用いた。それ以外は実施例1と同様にして表1に示すバーナタイルを製造した。
【0185】
[実施例4(円筒形バーナタイル)]
実施例3と同様の方法で、軸心からφ100mmまで成形し、その後ニードルブランケットBをφ300mmまで巻付け、外周部の厚さ50mm分にのみアルミナゾルを塗布(ドロップワイズ法)で含浸した後、乾燥した。それ以外は実施例3と同様にして表1に示すバーナタイルを製造した。
【0186】
[実施例5]
実施例1においてニードルブランケットAを使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして表1に示すバーナタイルを製造した。
【0187】
[実施例6]
実施例1においてニードルブランケットBの代わりに、溶融法で製造されたセラミックファイバーブランケット(アルミナ/シリカ重量比=48/52)を用いたこと以外は実施例1と同様にして表1に示すバーナタイルを製造した。
【0188】
[比較例1]
実施例1において無機質ゾル(アルミナゾル)を含浸しなかったこと以外は実施例1と同様にして表1に示すバーナタイルを製造した。
【0189】
[比較例2]
従来公知のシリカ−アルミナ系キャスタブルを使用し、型枠へ流し込み成形をして、表1に示すバーナタイルを製造した。
【0190】
【表1】
【0191】
表1の通り、実施例に係るバーナタイルはいずれも耐風食性、耐熱衝撃性に優れる。
なかでも、特定の3種のブランケットを用いた実施例1〜4に係るバーナタイルは、耐風食性、耐熱衝撃性、低熱収縮率、製品外観成型性に優れるものである。まず、セルフニードリングにより強固な構造となっているニードルブランケットCを最内壁に設置することで耐風食性が向上する。また、半バルク体であるニードルブランケットAを層間に挟みこむことで、繊維集合体の反発力が小さくなり、即ち、成型性が向上する。さらに、繊維中ムライト結晶の結晶化を進行させたニードルブランケットAおよびBを成型体マトリックスとすることで、加熱した際に、熱収縮を起こしにくい構成となっている。
【0192】
[実施例7]
図24に示す形状のコア型109を用いてバーナタイル1Eを製造した。コア型109の各部分の寸法は次の通りである。
【0193】
フロントパーツ10の軸方向長さ:276mm
フロントパーツ10の最大内径:140mm
フロントパーツ10の最小内径:140mm
リアパーツ20の軸方向長さ:237mm
リアパーツ20の最大内径:118mm
リアパーツ20の最小内径:71mm
【0194】
[製造手順]
厚さ50mm、ニードル痕密度 3.0打/cm
2であるアルミナ繊維ニードルブランケット(三菱樹脂株式会社 MAFTEC(登録商標)。以下ニードルブランケットA))を320mm幅、2500mm長さに、また、厚さ25mm、ニードル痕密度 6.0打/cm
2であるアルミナ繊維ニードルブランケット(三菱樹脂株式会社 MAFTEC(登録商標) 8P25T 以下ニードルブランケットB)を533mm幅3200mm長さに切出した。
【0195】
コア型に離型シートとして厚さ0.5mmのガラスクロス(中興化成株式会社製:チューコーフロー(登録商標)Gタイプファブリック)を1周巻いた。その後、最も過酷な風速に晒されることが予想される部分には、短冊状にしたブランケットB及び三角錐状に切出した、厚さ12.5mm、ニードル痕密度 6.0打/cm
2であるアルミナ繊維ニードルブランケット(三菱樹脂株式会社 MAFTEC(登録商標) 8P12.5T 以下ニードルブランケットD)を一対ずつ固定したモジュールを放射状に23対配置した。放射状に配置したモジュールは締結用ロープ等の補助道具を用いて圧縮率25%となるように圧縮し、内套部を形成した。
その後、ニードルブランケットAをニードルブランケットBの上に重ね合せて第2の無機繊維積層体131を形成し、
図24のように、上記で得られた内套部の外側に巻付け、直径460mm、長さ533mmの巻回体132を製作した。
【0196】
図25のようにこの巻回体132の両端面にエンドプレート40,50を取り付けた後、巻回体132に賦形板を押し付け、エンドプレート40,50に連結し、一辺が323mmの正方形の柱状の押縮体とした。
【0197】
この押縮体を固形分濃度8重量%のアルミナゾル(日産化学株式会社 アルミナゾル200)に3時間浸漬させた後引き上げ、−25.0〜−30.0kPaの負圧にて100分間脱液した。その後、押縮体をボックスで囲み、吸引を継続しながら、ボックス内に100〜140℃の温風を12時間導入し、乾燥させた。乾燥後、賦形板を取り外すと共に、コア型109を脱型した。次いで空気雰囲気で、1000℃にて3時間焼成した。焼成後のバーナタイル素体の4隅のバリをカッターで切り落とした後、バンドソーにて外形を323mm×323mm×513mmに整形した。また、パイロットバーナ孔及びサイトホールをバーナタイル設置用の前板を利用し、コルクボーラーにて穿設し、表2に示すバーナタイルを製造した。得られたバーナタイルについて、物性試験(落球衝撃試験、耐熱衝撃性試験)、バーナ燃焼試験1及びバーナ燃焼試験2(各試験後の内壁剥離有無及び割裂有無)を行なった。結果を表2に示す。なお、物性試験及びバーナ燃焼試験2は以下の条件で行なった。
【0198】
[落球衝撃特性]
重量550gの鋼球を1mの高さから、製品側面中央部に垂直に落下させ、外観(破壊)状態を観察した。
【0199】
[耐熱衝撃性試験]
作成したバーナタイルから、炉心の軸線を通る平面に沿って所定の大きさに切出したサンプルを、1500℃に加熱された電気炉内に15分間静置する。その後、電気炉より取出し、空気中で15分間静置する。この操作を10回繰り返した後、目視にて、剥離や亀裂など外観状態を観察した。10mm以上の深さまたは幅の亀裂、及び、剥離が見られた状態を○、見られない状態を×とした。
【0200】
[バーナ燃焼試験2]
下記仕様のバーナを用い、5分間の燃焼、消火を10回繰り返した。次いで、試験炉内で、炉内温度1350℃、720時間燃焼させた。
バーナ仕様:
型式:四角型(323mm四角×513mm )
容量:850000kcal/h
燃料:13A都市ガス
空気温度:400℃
燃焼空気比:1.0〜1.1
【0201】
なお、バーナ燃焼試験1及び2の後の評価(内壁観察)は以下の様に行なった。
燃焼試験前後のバーナタイルについて、主孔内周面を目視にて観察し、剥離の有無を観察する。目視にて認識できる深さ方向の局部的な侵食、または、広がり方向の脱落が認められない場合、内壁状態は良好と判断し、そうでない場合は、不良と判断した。
【0202】
[比較例3]
従来公知のシリカ−アルミナ系キャスタブルを使用し、型枠へ流し込み成形をして内筒を製作した。その後、上記内筒にブランケットAを巻付け、ついで上下左右前後面をバキュームフォーム成型体で囲うことで、表2に示すバーナタイルを製造した。上記で得られたバーナタイルについて、実施例7と同様に物性試験及びバーナ燃焼試験の評価を行なった。表2に結果を示す。
【0203】
[比較例4]
ブランケットBを300mmの正方形に12枚切出し、各正方形ブランケットB間にアルミナゾルを塗布・接着させることでモジュールを製作した。一方、ブランケットBにアルミナゾルを浸漬し、その後乾燥させることで上記正方形と同寸法の無機繊維成型体を2枚製作した。その後、上記モジュールと上記無機繊維成型体間にアルミナゾルを塗布し、無機繊維成型体を上下から挟みこみ、さらに20%圧縮することにより無機繊維ブロックを製作した。上記無機繊維ブロックにフライス盤により実施例7と同寸法の燃焼用内筒を形成することで表2に示すバーナタイルを製造した。上記で得られたバーナタイルについて、実施例7と同様に物性試験及びバーナ燃焼試験の評価を行なった。表2に結果を示す。
【0204】
[比較例5]
コア型109を用いてバーナタイルを製造した。
コア型109の各部分の寸法は次の通りである。
【0205】
フロントパーツ10の軸方向長さ:276mm
フロントパーツ10の最大内径:140mm
フロントパーツ10の最小内径:140mm
リアパーツ20の軸方向長さ:237mm
リアパーツ20の最大内径:118mm
リアパーツ20の最小内径:71mm
【0206】
[製造手順]
コア型に離型シートとして厚さ0.5mmのガラスクロス(中興化成株式会社製:チューコーフロー(登録商標)Gタイプファブリック)を1周巻いた。その後、最も過酷な風速に晒されることが予想される部分には、短冊状にした厚さ25mm、ニードル痕密度 6.0打/cm
2であるアルミナ繊維ニードルブランケット(三菱樹脂株式会社 MAFTEC(登録商標) 8P25T 以下ニードルブランケットB)を放射状に34対配置した。放射状配置したモジュールは締結用ロープ等の補助道具を用いて圧縮率25%となるように圧縮し、内套部を形成した。
【0207】
次いで、ニードルブランケットBを161.5mm幅513mm長さに8枚切出した。上記8枚のニードルブランケットを厚み161.5mmとなる様に圧縮・固定し、ブロックを製作した。該ブロックは4対製作し、各ブロックを隣り合うブロックの積層方向が垂直になる様に配置することで、形成される一辺が323mmの正方形の柱状ブロックを得た。前記柱状ブロックの中心を、前記内套部が納まる様に加工し、加工後、内套部の外側から柱状ブロックを形成する前記の4対のブロックを外側から固定することで、前記内套部を構造内に有する一辺が323mmの正方形の柱状ブロックを得た。パイロットバーナ孔及びサイトホールをバーナタイル設置用の前板を利用し、コルクボーラーにて穿設し、表2に示すバーナタイルを製造した。得られたバーナタイルについて、物性試験(落球衝撃試験、耐熱衝撃性試験)、バーナ燃焼試験1及びバーナ燃焼試験2(各試験後の内壁剥離有無及び割裂有無)を行なった。結果を表2に示す。
【0208】
[比較例6]
比較例4において、形成された燃焼用内筒の表面約5mm分にのみアルミナゾルを塗布(刷毛塗り法)で含浸する工程を追加した以外は、比較例4と同様に行い、表2に示すバーナタイルを製造した。得られたバーナタイルについて、物性試験(落球衝撃試験、耐熱衝撃性試験)、バーナ燃焼試験1及びバーナ燃焼試験2(各試験後の内壁剥離有無及び割裂有無)を行なった。結果を表2に示す。
【0209】
【表2】
【0210】
表2の通り、実施例に係るバーナタイルはいずれも耐風食性、耐熱衝撃性に優れる。
なかでも、主孔を取り囲む内套部と、該内套部の外周を取り囲む外套部とを有し、該内套部では、無機繊維製板体が、板面を主孔に対し略放射方向として積層され、さらには所定の圧縮率で充填されており、該外套部では、無機繊維ブランケットが該内套部の外周を複数回周回である実施例7に係るバーナタイルは、耐風食性、耐熱衝撃性、低熱収縮率、製品外観成型性に優れるものであることが判る。
【0211】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2014年2月12日付で出願された日本特許出願2014−024487及び2015年1月7日付で出願された日本特許出願2015−001634に基づいており、その全体が引用により援用される。