(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
カメラは一般に1つ以上の被写体を含むシーンを撮像するのに用いられる。残念なことに、画像によってはぶれてしまうことがある。例えば、そのシーンの中で、カメラの露出時間中にカメラが移動したり、および/または被写体が移動したりすると、画像がぶれることがある。さらに、撮像時にカメラが適切に合焦されていないと、画像がぶれることがある。
【0003】
ぶれを修正するために用いられるデコンボリューション方法は、非常に複雑かつ遅い傾向があり(ただし、非常に低品質の画像を生成するもっとも簡単な方法を除く)、ぶれ修正が施された画像は強いアーチファクトを多数含む傾向があり、これは多くの場合、画像中のエッジのまわりのリンギング状のアーチファクトである。また、ノイズを強く増幅する傾向がある。デコンボリューションを施された画像中のリンギング・アーチファクトとノイズ増幅を低減するのに役立つ技術は、細密なテクスチャ部分を減少させてしまう傾向がある。従って、得られる画像は不自然な、ポスタライズされた外観を呈する。その理由は、画像中の多くの領域が不自然に滑らかであり、かつテクスチャがぼけているとともに乱雑であるように見えるからである。
【0004】
ぶれが空間的に十分に均一である場合、ぶれて撮像された画像は、鮮明潜像をある点像分布関数(「PSF」)+ノイズを用いた畳み込み(コンボリューション)としてモデル化することができる。
【数1】
式1および本明細書中全体において、(i)「B」はぶれ画像を表し、(ii)「L」は鮮明潜像を表し、(iii)「K」はPSFカーネルを表し、(iv)「N」はノイズ(量子化誤差、圧縮アーチファクト等を含む)を表す。
【0005】
ノンブラインド・デコンボリューション問題は、PSFカーネルKが既知の場合に限って鮮明潜像Lを復元するものである。あるいは、ブラインド・デコンボリューション問題は、PSFカーネルKと鮮明潜像Lとの両方を復元するものである。ブラインド・デコンボリューション問題とノンブラインド・デコンボリューション問題は、ともに正確に解決することが困難である。その理由は、それらの問題は、たちが悪く、対応する光学的伝達関数(「OTF」)、PSFのフーリエ変換におけるゼロ値および近ゼロ値のために、若干の情報が復元不能に失われてしまうからである。
【0006】
また、多くのぶれ画像は、鮮明潜像Lを復元する問題をさらに複雑にする領域を含む。例えば、ぶれ画像B中のセンサー・ピクセルが飽和点に達する極端に明るい領域Bは、決定されたPSFカーネルKと得られる鮮明潜像Lとに悪影響を及ぼすことがある。
【0007】
デコンボリューション問題を解決する常識的なアプローチには、この問題を最適化問題として再構成し、適切なコスト関数を最小化してデコンボリューション問題に対する解決法を見出すことが含まれる。
【0008】
デコンボリューションに用いられる比較的一般的なタイプのコスト関数は、正規化された最小二乗コスト関数である。典型的には、正規化最小二乗コスト関数は、(i)1つ以上の忠実度項であって、最小値をぶれ過程の式(1)のモデル化と一致させる項、および(ii)1つ以上の正規化項であって、解決法をより安定にし、解決法についての事前情報、例えば散在性を強化するのに役立つ項のみからなる。
【0009】
鮮明潜像費用関数の一般化の一例は、次式(2)である。
【数2】
式(2)および本明細書中の他のすべての式において、(i)下付文字pは忠実度項のノルムを示し、(ii)上付文字pは忠実度項の次数を示し、(iii)下付文字qは正規化項のノルムを示し、(iv)上付文字qは正規化項の次数を示し、D
xおよびD
yは、それぞれ、xおよびy方向における導関数を計算するのに用いるコンボリューション・カーネルを示す。式2は、pが2に等しい場合の正規化された最小二乗コスト関数である。式(2)中の第1番目の項、|| K
* L − B ||
pp、は、小さいノイズ項を用いて解が式(1)のぶれモデルを満足するようにさせる忠実度項である。さらに、式(2)において、||( D
x * L )||
qq および ||( D
y * L ) ||
qqは、鮮明潜像であると考えることができる配列についての事前情報を注入するのに役立つ正規化項である。自然画像の導関数は散在する傾向があり、ほとんどの点において、導関数はゼロに近く、比較的に小数の点(エッジ点)においてのみこの値が大きい。正規化項はこの性質を強化するのに役立つ。式(2)において、ωは、正規化重み、すなわち忠実度項と正規化項との間の適切なバランスを達成するのに役立つ選定された定数である。この例は非常に単純なコスト関数を表すものである。多くの場合、より複雑なコスト関数が用いられる。例えば、1次または高次の導関数を含むより多くの忠実度項および正規化項を有するコスト関数が用いられる。
【0010】
画像導関数がガウス事前分布に従うものと仮定した場合、コスト関数における正規化項に対する次数(上付文字)およびノルム(下付き文字)は2に等しく(q=2)(「ガウス事前」または「2−ノルム」ともいう)、このコスト関数はしばしばガウス事前コスト関数と呼ばれる。残念なことに、ガウス事前コスト関数から得られる鮮明潜像は、多くの場合、高コントラストエッジの近傍において強いリンギング・アーチファクトを含む。
【0011】
得られる鮮明潜像を改善するために一または複数の正規化項において他の次数およびノルムの試行がなされている。例えば、画像導関数がラプラス事前分布に従うものと仮定した場合、コスト関数において得られる正規化項の次数とノルムは1に等しく(q=1)(「ラプラス事前分布」または「1−ノルム」ともいう)、また画像導関数が超ラプラス事前分布に従うものと仮定した場合、コスト関数において得られる正規化項の次数とノルムは1未満である(q<1)(「超ラプラス事前」または「q−疑似ノルム」ともいう)。ラプラスまたは超ラプラス事前コスト関数を用いると、リンギング・アーチファクトは低減されるものの、画像の細密なテクスチャは多くの場合に復元されず、画像が不自然に見える。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、画像装置10(例えば、デジタルカメラ)およびコンピュータ12(ボックスとして図示)の簡略図である。画像装置10および/またはコンピュータ12はシステムと呼ぶことができる。既知のように、画像(
図1には示さない)の撮像の際の画像装置10の移動、および/または被写体(
図1には図示しない)の移動により画像がぶれることがある。加えて、あるいは択一的に、画像中のぶれは他の物、例えば撮像時の適切に合焦されていない画像装置10によって引き起こされることがある。
【0044】
概説として、ある実施の形態においては、本発明はぶれ画像の鮮明潜像を推定し、ぶれ画像をぶれ修正するための多数の多重位相アルゴリズムを対象とする。言い換えると、本発明は1つ以上の多重位相ノンブラインド画像デコンボリューション方法であって、効率的にリンギング・アーチファクトとノイズを抑制し、画像テクスチャを復元する方法を対象とする。ある実施の形態においては、提案された方法は、下記の特徴の1つ以上を用いることによってぶれ修正された画像の品質を顕著に向上している。すなわち、(i)異なる適合性正規化(L1ラプラスまたは超ラプラス)事前正規化およびL2ガウスおよび空間事前正規化の結合された正規化を用いる多重位相デコンボリューション、(ii)忠実度項中に空間マスクを用いるハイライトおよび非ハイライト領域の個別デコンボリューション、および/または(iii)ぶれ修正された輝度チャンネルを用いて色度チャンネル用の適合性正規化マスクを生成する輝度および色度チャンネルの個別デコンボリューションの特徴を用いる。その結果、ここに提供される提案された多重位相アプローチは高品質のぶれ修正された画像を生成する。
【0045】
一実施の形態では、ここに提供されるように、撮像装置10は、撮像する撮像システム13と、ぶれ画像のカメラ内処理のためにデコンボリューションを行うための1つ以上のアルゴリズムを用いる制御システム14とを備えていてもよい。選択的に、コンピュータ12はぶれ画像のデコンボリューションのための1つ以上のアルゴリズムを用いる制御システム16を備えていてもよい。いずれにしても、制御システム14、16は、ぶれ画像からぶれ修正された鮮明潜像を提供する。各制御システム14、16は1つ以上のプロセッサと回路を備えていてもよい。さらに、制御システム14、16のいずれか一方が、本明細書においてぶれ画像をぶれ修正すると述べられている1つ以上の方法を用いるソフトウエアを備えていてもよい。
【0046】
ここに述べられた方法は、ぶれ修正された画像の品質を顕著に向上するのに役立つ。得られたぶれ修正された画像は比較的少数のリンギング・アーチファクトとノイズ、およびより精細なテクスチャを含む。さらに、ある実施の形態では、より難しい画像をうまく扱うことが可能である。その理由は、クリップされたハイライト領域の周りの色付きリンギング・アーチファクトおよび強度のリンギング・アーチファクトが顕著に減少するからである。
【0047】
図2は、多重位相画像コンボリューション方法の第1の実施の形態を示す。一実施の形態において、多重位相画像コンボリューション方法は既知のまたは推定された点像分布関数を用いたノンブラインド・コンボリューション方法に用いることができる。
図2の工程中の若干の工程の順序を入れ替えたり、同時に実行したりしてもよく、および/またはこれらの工程中の若干の工程を選択自由にしてもよい。本実施の形態において、多重位相画像デコンボリューション方法は2位相方法として提示される。ブロック200において、ぶれ画像がアルゴリズムにより読み取られる。次いで、ぶれ画像の位相1処理がブロック202において実行されて主エッジを復元し、リンギング抑制を強調した主エッジが再構築される。次ぎに、位相2処理がブロック204において実行され、テクスチャが復元される。位相2処理が完了すると、出力された鮮明潜像がブロック205において得られる。本明細書において述べられているように、この2位相方法のおかげで、得られたぶれ修正された画像はリンギング・アーチファクトが比較的に少なく、テクスチャがより精細である。
【0048】
図2を参照すると、ブロック204において、適合性位相1正規化マスクN
1が生成され、ブロック206において、位相1正規化重みω
1が選択される。適合性正規化マスクN
1は粗くてもよく、ぶれ画像から計算することができる。正規化重みω
1は所望の量の正規化が達成されるように選択される。適切な正規化重みω
1の非限定的な例は、1e−1、1e−2、1e−3または1e−4であり、その値はPSFその他の要因の正確さによって決まる。次いで、ブロック208において、位相1鮮明潜像コスト関数が最小化される。本明細書において述べられているように、ある実施の形態では、位相1鮮明潜像コスト関数はラプラス事前または超ラプラス事前および位相1適合性正規化マスクN
1を用いる。
【0049】
本明細書において述べられているように、位相1鮮明潜像コスト関数は複数回最小化可能であり、それぞれの最小化の次の最小化は前回よりも向上された正規化マスクN
1と、低減された正規化(より小さい正規化重みω
1)を用いて実行される。議論を分かり易くするために、位相1鮮明潜像コスト関数の第1の最小化を副位相1A処理、位相1鮮明潜像コスト関数の第2の最小化を副位相1B処理と呼んでもよい。
【0050】
ある場合は、副位相1Aおよび副位相1B処理は主エッジを正確に再構築するのに必要とされるものの全てである。選択的に、追加の処理をしてエッジの復元をよくすることが望まれる場合は、位相1鮮明潜像コスト関数の第3の最小化を副位相1C処理およびそれに続く最小化を副位相1D、1E、等と呼んでもよい。
【0051】
一般に、副位相1Aの間、位相1コスト関数は、変数分割と交互最小化を約6−10回反復することにより最小化することができる。副位相1A処理の間は、画像の復元は粗く、リンギングの抑制が強調され、副位相1A鮮明潜像はわずかにぶれた画像であり、リンギングはごくわずかである。
【0052】
副位相1A処理が完了すると、ブロック210において、最小化の回数が評価されて所望回数の最小化が実行されたか否かが決定される。最小化の所望回数が2である場合、答えは否であり、副位相1B処理が開始される。副位相1B処理では、ブロック212において、位相1正規化マスクN
1が更新・向上され、ブロック214において、位相1正規化重みω
1を減少させることにより正規化が低減される。例えば、副位相1Bにおいて、位相1正規化マスクN
1をぶれ画像と位相1A鮮明潜像との両方から計算することができる。さらに、非限定的な例として、位相1正規化重みω
1は、各次の副位相に対して約1、2、5、7または10回少なくしてもよい。
【0053】
次ぎに、ブロック208において、位相1鮮明潜像コスト関数は、向上されたマスクN
1および低減された正規化を用いて再び最小化される。一般に、副位相1Bの間は、位相1コスト関数は、変数分割と交互最小化を約6−10回反復することにより最小化することができる。副位相1B処理後、リンギングの抑制を強調したより正確な復元画像が得られる。
【0054】
副位相1B処理後、ブロック210において、最小化の回数を評価して所望回数の最小化が実行されたか否かが決定される。選択的に、所望回数が3以上の場合、更新された位相1正規化マスクN
1と、さらに低減された位相1正規化重みω
1とを用いて副位相1C処理が実行される。このループは、所望のレベルのエッジが復元されるまで繰り返すことができる。
【0055】
位相2処理が開始されると、ブロック216において適合性位相2正規化マスクN
2が生成され、ブロック218において位相2正規化重みω
2が選択されて、所望レベルの正規化が達成される。例えば、位相2において、ぶれ画像と、位相1処理の最終結果(位相1鮮明潜像)とから位相2正規化マスクN
2を計算することができる。次いで、ブロック220において、位相2鮮明潜像コスト関数が最小化される。本明細書において述べられているように、ある実施の形態では、位相2鮮明潜像コスト関数は、位相2正規化マスクN
2、ガウス事前を用いて画像テクスチャを修復かつ復元し、空間事前を用いて強いリンギング・アーチファクトの導入を阻止することが可能である。位相2コスト関数は、変数分割および交互最小化(一般に、例えば、約3回反復)により最小化することが可能である。
【0056】
位相2コスト関数の最小化を終了した後、得られた鮮明潜像がブロック205において出力される。選択的に、位相2コスト関数の最小化は、各次の工程では前回よりも向上された位相2正規化マスクN
2を用いて、1回以上(多少、位相1と同様に)反復することができる。
【0057】
本発明では、(i)位相1において、アルゴリズムはぶれ画像をぶれ修正するが、リンギング・アーチファクトとノイズを効率よく抑制し、(ii)位相2において、アルゴリズムは画像テクスチャを復元する。この設計を用いると、この多段アルゴリズムはリンギングをほとんど含まず、ノイズがごく少なく、自然なテクスチャを有するぶれ修正された画像を生成することができる。さらに、ある実施の形態では、この方法は非常に迅速である。これは変数分割および交互最小化を用いてコスト関数を最小化することができるからである。
【0058】
上述の2位相アルゴリズムは、副位相1Aおよび副位相1B(ともにラプラスまたは超ラプラス事前を用いる)が2つの別個の位相であると考えられる3位相アルゴリズムであってもよい。
【0059】
非限定的な一実施の形態として、位相1鮮明潜像コスト関数(副位相1A、1B、等の処理に用いられている)はノンブラインド・デコンボリューションに対して次の形をとることができる。
【数3】
【0060】
式3において、および本明細書を通して、(i)c(L)は鮮明潜像推定コスト関数であり、(ii)Lは鮮明潜像であり、(iii)KはPSFカーネルであり、(iv)Bはぶれ画像であり、(v)D
xおよびD
yは1次偏微分作用素であり、(vi)「α
1」は第1忠実度重みパラメータ、「α
2」は第2忠実度重みパラメータであり、忠実度項同士の間の適切なバランスを設定して忠実度項同士の間の最良の折衷を図るのに役立つものであり、(vii)ω
1は平坦領域に対する第1正規化重みであり、(viii)下付文字pは忠実度項に対するノルムを示し、上付文字pは忠実度項の次数を示し、(ix)下付文字qは正規化項に対するノルムを示し、上付文字qは正規化項に対する次数を示し、(x)N
1は位相1処理用の第1位相正規化空間マスクである。本明細書において述べられているように、位相1処理において、ラプラス事前が仮定されている場合、qは1に等しく(q=1)、超ラプラス事前が仮定されている場合、qは1未満(q<1)である。
【0061】
式3に対して他の忠実度項も使用可能である。例えば、1つだけ忠実度項を使用することが可能である(α
2=0)。しかしながら、ある実施の形態では、1次の導関数を含む複数の忠実度項を含み、それらにより重みをかける(第2忠実度重みパラメータは第1忠実度重みパラメータよりも大きい(α
2>>α
1))と良い結果が得られる。ある実施の形態では、導関数を含まない忠実度項が存在することが必要である(α
1>0)。その理由は、さもないと、正規化項はすべて導関数を含み、Lを更新するために用いられる閉じた式(closed form formula)の分母に0が存在することになるからである。非限定的な一実施の懈怠では、第1忠実度重みパラメータα
1を0.001(α
1=0.001)に等しく設定し、(ii)第2忠実度重みパラメータα
2を1に等しく(α
2=1)設定することができる。しかしながら、他の値も用いることができる。この設計を用いると、式(3)のコスト関数は、導関数を有する忠実度項に主として依存することになる。画像導関数を持つ1つ以上の忠実度項を用いるとリンギングを低減するのに役立つ。
【0062】
式(3)は、2に等しい(q=2)忠実度の次数とノルムを用い、ラプラス事前(q=1)を仮定して、次のように書き直すことができる。
【数4】
【0063】
非限定的な一実施の形態では、式(4)は変数分割および交互最小化により最小化することができる。場合によっては、リンギングを抑制するために、ほぼ6〜10回反復することが必要である。ある実施の形態では、式(4)のコスト関数を最小化するために、補助変数W
xおよびW
yを有する下記の関数を生成してもよい。
【数5】
【0064】
式(5)において、補助配列W
xは正規化項中の偏導関数D
y*Lを、補助配列W
yは正規化項中の偏導関数D
y*Lをそれぞれ置き換え、(ii)2つのペナルティ項||W
x−D
x*L||
22および||W
y−D
y*L)||
22が存在し、それぞれ強制的にW
X≒D
X*LおよびW
y≒Dy*Lとし、(iii)βは、ペナルティ項の影響をバランスするのに役立てるために追加されたペナルティ重みである。式(5)は、W
x、W
yおよびLをそれぞれ交互に最小化することにより反復的に最小化することが可能である。これらすべての場合において、容易に評価可能な閉じた式が少なくとも存在する。ある実施の形態において、交互にW
x、W
y、およびLを繰り返し最小化する際にペナルティ重みβを増加させることが共通して行われる。非限定的な一実施の形態では、ペナルティ重みβ=1を第1回目の反復において用いることができ、後続の各回の反復においてペナルティ重みβをある倍率(非限定的な一実施例では、例えば、倍率2)で増加させることができる。
【0065】
下記の最小化式をW
xおよびW
yに対して用いることができる。
【数6】
【数7】
【数8】
式(8)において、sthrは軟判定しきい値関数(配列の各要素に適用される)である。
【0066】
本明細書に述べられているように、式(5)の鮮明潜像コスト関数の最小値に対する閉じた式は下記の通りである。
【数9】
式(9)において、Fはフーリエ変換作用素であり、Dは下記の値を有する。
【数10】
【0067】
位相1正規化空間マスクN
1(および位相2に対するN
2)は、ノイズとリンギングを抑制するのに使用できる正規化項中の個々のピクセルに対する個々の重みの配列である。非限定的な一例として、正規化空間マスク中のピクセルは0と1の間の任意の値を持つことができる。選択的に、正規化空間マスクはピクセルが0または1のいずれかの値を有する二値マスクであってもよい。マスクによる乗算は点別に行われる。
【0068】
正規化空間マスクを生成する方法としては多数の方法が可能である。非限定的な一例を挙げると、位相1における正規化空間マスクN
1の評価は少なくとも2回実行され、(i)第1回目(副位相1A処理用)はぶれた原画増から計算された粗いマスクを用いて、(ii)第2回目(副位相1B処理用)は副位相1A処理後に得られた鮮明潜像Lとぶれ画像Bとを用いて計算されるより細密なマスクを用いて行われる。
【0069】
例えば、副位相1A処理のためには、正規化空間マスクN1はぶれた原画像中の平坦領域におけるピクセルに対してより高い重みを持つことができ、ぶれた原画像のエッジ領域におけるピクセルに対してより低い重みを持つことができる。例えば、ハイパスフィルターをぶれた原画像に用いて平坦領域のピクセルとエッジ領域におけるピクセルを特定することができる。
図3Aは、ピクセルごとに異なる値を有する副位相1A正規化空間マスクN
1 300の一部分の簡略説明図である。
【0070】
さらに、副位相1Bに対して、正規化空間マスクN
1をぶれた画像と、副位相1A処理から得られた鮮明潜像Lとの両方を用いて計算することができる。一実施の形態では、副位相1B処理用の正規化空間マスクN
1は平坦領域におけるピクセルに対してより高い重みを持ち、エッジ領域におけるピクセルに対してより低い重みを持つ。例えば、ハイパスフィルタをぶれた原画像と副位相1A処理から得られた鮮明潜像Lの両方に用いて平坦領域におけるピクセルと、エッジ領域におけるピクセルとを特定することができる。このように、副位相1B処理において用いた正規化空間マスクN
1は副位相1A処理において用いた正規化空間マスクN
1よりもより正確である。
図3Bは、ピクセル毎に異なる値を持つ副位相1B正規化空間マスクN
1 302の一部分の簡略説明図である。
【0071】
ある実施の形態では、副位相1Bコスト関数は副位相1Aコスト関数(例えば式3)と同じである。ただし、より弱い正規化が用いられている(正規化重みω
1がより小さい値)とともに、第1位相空間マスクN
1が改善されている点が異なる。非限定的な一例として、副位相1Bのより弱い正規化を用いると、正規化重みω
1の値は、位相1Aの対応する値よりも約5、10、15または20倍弱い値にすることができる。
【0072】
加えて、本明細書において述べられているように、位相1は、同じコスト関数(例えば、式3)を持つ副位相1C処理(またはそれ以上の処理、例えば副位相1D、副位相1E等の処理)を備え、後続の各副位相処理はより弱い正規化(より小さい正規化重みω
1)を含み、および/または前回の処理工程からの鮮明潜像に基づいた改善された正規化マスクN
1を含む。
【0073】
位相1は比較的にきれいな、リンギングとノイズのない画像を生成するが、それらの画像はテクスチャを欠いている。対照的に、位相2はテクスチャの復元に重点を置いている。それを行うために、ある実施の形態では、位相2アルゴリズムは、(i)ラプラスまたは超ラプラス事前ほどテクスチャを抑制しないガウス事前(q=2)を仮定し、(ii)ガウス事前正規化項中の位相2正規化空間マスクN
2を仮定し、(iii)位相1の結果に基づく第2事前を仮定して、リンギングを抑制する。適切な位相2鮮明潜像コスト関数の非限定的な一例は下記の形をしている。
【数11】
【0074】
式(11)において、(i)ω
2は平坦領域に対する位相2正規化重みであり、(ii)N
2は位相2処理に対する位相2正規化空間マスクであり、(iii)L
phase1は位相1処理(例えば副位相1Bの出力)の終点において評価された鮮明潜像を示し、(iv)||L−L
phase1||
22は空間事前であり、(v)σは空間事前用の正規化重みであり、空間事前のための適切な重みを提供する。式(11)において、(i)この式の正規化項の次数とノルム(q=2)に平方が用いられているのは、ガウス事前の仮定はテクスチャの復元によりよいからであり、(ii)空間事前がリンギングとノイズを抑制するのに用いられる。
【0075】
位相2処理について、変数分割手法を用いて効率よく式(11)のコスト関数の分割と交互最小化することができる。この例では、ガウス事前が仮定されているけれども、正規化項中の空間マスクN
2は少なくとも閉じた式を誘導することが不可能である。式(11)から誘導された位相2用の新しいコスト関数は下記の形をとることができる。
【数12】
【0076】
式(12)において、非限定的な一実施の形態において、第1回目の反復においてペナルティ重みβ=1を用いることができ、ペナルティ重みβをある倍率(例えば、非限定的な一例においては、倍率2)で増加させることができる。非限定的な一例として、適切な正規化重みσはほぼ1e−2と1e−3の間であってもよい。しかしながら、βとσは他の値を用いてもよい。
【0077】
式(12)のコスト関数は、L、W
xおよびW
yについて変数分割および交互最小化することにより最小化することができる。ほとんどの場合、反復回数を多くすることは不必要であるようだ。L、W
xおよびW
y並びにコスト関数を更新する式は、分割後、下記のように表現することができる。
【数13】
【数14】
【0078】
本明細書において述べられているように、少なくとも式(12)の鮮明潜像コスト関数の閉じた式が下記のように存在する。
【数15】
ここで、Dは式(10)に記載のものと同じである。
【0079】
位相2において、正規化空間マスクN
2は、これを再び用いてノイズとリンギングを抑制することができ、ぶれ画像と位相1処理の終わり(例えば、副位相1Bの終わり)に推定された鮮明潜像の両方から計算することができる。一実施の形態において、正規化空間マスクN
2は平坦領域のピクセルに対してより高い重みを持ち、エッジ領域のピクセルに対してはより低い重みを持つ。例えば、高域フィルタをぶれた原画像と位相1処理の結果の両方に用いて平坦領域のピクセルとエッジ領域のピクセルを同定することができる。位相2処理において用いられる空間マスクN2は、位相1処理において用いられる最終空間マスクN
1よりも精確であることが必要である。
図3Cはピクセル毎に異なる値を示す位相2正規化空間マスクN
2 304の一部分の簡略説明図である。
【0080】
図4Aは、ぶれ画像400の説明図である。
図4Bは、
図4Aのぶれ画像400の副位相1A処理後の鮮明潜像402の説明図である。副位相1A処理後、リンギングの抑制を強く強調した画像復元がなされ、副位相1A鮮明潜像402はリンギングの非常に少ないわずかにぶれた画像である。
図4Cは、
図4Aのぶれ画像400の副位相1B処理後の鮮明潜像404の説明図である。副位相1B処理は、リンギングまたはノイズの非常に少ない鮮明潜像404を生成するが、この画像は細密なテクスチャを欠く(ポスタライズされているように見える)。
図4Dは
図4Aのぶれ画像400の位相2処理後の最終鮮明潜像406の説明図である。位相2処理後に生成された鮮明潜像406はテクスチャを復元してより自然に見える復元画像を実現する。このように、本明細書に述べられているように、多重位相アルゴリズムはリンギング・アーチファクトとノイズはほとんど無いが、良好なテクスチャを含む高品質のぶれ修正された画像を得るのに役立つ。
【0081】
図4Eは、
図4Aのぶれた画像400の真性PSF408の説明図である。真性PSF408が知られるのは、実験が設定され、ぶれ画像400が真性PSF408を用いて人為的にぶれさせられた場合のみである。
【0082】
図4Fは
図4Aのぶれ画像400の推定PSF410の説明図である。推定PSF410は、ブラインドデコンボリューション・アルゴリズムを用いて推定することができる。次いで、本明細書中に記載されたノンブラインド・デコンボリューション方法の一つにおいてPSF410を用いて最終鮮明潜像の全体を得ることができる。
【0083】
なお、上述の位相1Aおよび位相2コスト関数はそれぞれ非限定的な例であり、位相1Aおよび位相2コスト関数に大幅な修正を施すことが可能である。例えば、位相1Aおよび位相2コスト関数を修正して(i)忠実度項中にラプラスノルムを仮定する(p=1)ことができ、(ii)忠実度項中に超ラプラス(疑似ノルム)を仮定する(p<1)ことができ、および/または(iii)忠実度項中に空間マスクを使用することができる。そのようなコスト関数は、上述のものと同様の変数分割アルゴリズムを用いて最小化することができる。使用可能な変数分割手法の別の非限定的な一例が、Sroubek and Milanfarの論文(F.Sroubek,P.Milanfar:Robust Multichannel Blind Deconvolution via Fast Alternating Minimization,IEEE Trans Im.Proc,2012)に記載されている。この論文の内容は、認められる限りにおいて、引用により本明細書において参照される。
【0084】
上述のように、位相1鮮明潜像コスト関数および位相2鮮明潜像コスト関数は上述のものよりもより一般的に表現することができる。例えば、式(3)の位相1コスト関数は下記のように、より一般的に表現することができる。
【数16】
選択的に、式(16)のコスト関数用の正規化項は1ノルム階調度に対して||N
1|gradL|||
11と表現することができる。
【0085】
さらに、式(11)の位相2コスト関数は下記のようにより一般的に表現することができる。
【数17】
【0086】
式(16)および(17)中に用いられている正確な(exact)忠実度項は変動可能である。一実施の形態において、忠実度項は下記のように表現することができる。
【数18】
式(18)において、α
0、α
l、α
2、α
11、α
12およびα
22は忠実度項重みである。忠実度項重みはゼロ(0)または他の重みを選択することができる。その結果、式(18)において、このコスト関数は導関数有りの場合と、導関数なしの場合の両方に適用できる。式(16)および(17)中のコスト関数は、上述のものと同様の変数分割アルゴリズムを用いて最小化することができる。例えば、これらの式は上述の式(6,7,9および13,14,15)とほとんど同じであるが、α
1+α
2Dは、いずれもα
0+α
1conj(F(D
x))F(D
x)+α
2conj(F(D
y))F(D
y)+α
11Conj(F(D
xx))F(D
xx)+α
12conj(F(D
xy))F(D
xy)+α
22conj(F(D
yy))F(D
yy)により置き換えられる。
【0087】
デコンボリューションは線形ぶれモデルからのどんな逸脱にも非常に影響を受けやすい。実際の画像は、センサーの飽和によりクリップされたハイライトをしばしば含んでいる。クリッピングは非線形度が強く、従来の線形ぶれモデルに反する。これらのハイライトはぶれ修正された画像中に多くのリンギング・アーチファクトを生じさせる傾向がある高コントラストのエッジを有する。上述の多重位相アルゴリズムはバーンアウトしたハイライトその他の異常を取り扱う能力を持たない。しかしながら、本明細書において述べられているように、本発明のある実施の形態において、忠実度重みパラメータ第1忠実度項空間マスクMを位相1および位相2コスト関数の1つ以上の忠実度項に加えてこれらの異常の特別の処置を可能にすることができる。
【0088】
本明細書において述べられているように、式16の位相1コスト関数を下記のように書き直して忠実度項空間マスクMを含めることができる。
【数19】
【0089】
さらに、式17の位相2コスト関数を下記のように書き直して忠実度項空間マスクMを含めることができる。
【数20】
【0090】
式19および20において、Mはあるピクセル、例えば、異常ピクセルの特別の処理を可能にする適合性忠実度空間マスクである。例えば、忠実度空間マスクMを用いて処理されている画像の領域を、クリップされたハイライトを含まない領域に限定する(例えば異常から十分に遠い領域に処理を制限する)ことができる。この設計を用いると、ハイライト領域を別個に、そしてクリップされたハイライトを含まない領域からのものとは異なるパラメータを用いてぶれ修正することができる。
【0091】
図5Aは、ぶれ画像500中のバーンアウトしたハイライトその他の異常を処理する能力を持つ多重位相画像デコンボリューション方法を説明する。
図5Aのステップのいくつかの順序は入れ替えること、同時に行うこと、および/または選択的にすることが可能である。この実施の形態において、多重位相デコンボリューション方法は、異常(例えば、ハイライト)用の特別の処理を含む4位相ノンブラインド画像デコンボリューション方法であると考えることができる。
【0092】
さらに詳しくは、この実施の形態において、4位相ノンブラインド画像デコンボリューション方法は、(1)位相1処理502、(ii)位相2処理504、(iii)位相3処理506、および(iv)位相4処理508に分割することができる。この実施の形態において、(i)位相1処理502は上述の位相1処理202と同様であり、
図2に図示されているが、位相1コスト関数は忠実度空間マスクMを含み、(ii)位相2処理504は上述し
図2に示した位相2処理204と同様であるが、位相2コスト関数は忠実度空間マスクMを含み、(iii)位相3処理506は上述し
図2に示した位相1処理202と同様であり、(iv)位相4処理508は上述し
図2に示した位相2処理204と同様である。
【0093】
この設計を用いると、(i)4位相方法の位相1処理502を用いて非異常領域におけるエッジを復元することができ、(ii)4位相方法のの位相2処理504を用いて非異常領域におけるテクスチャを復元することができ、(iii)4位相方法の位相3処理508を用いて異常領域におけるエッジを復元することができ、(iv)4位相方法の位相4処理508を用いて異常領域におけるテクスチャを復元することができる。このように、この実施の形態では、(i)位相1処理502および位相2処理504を用いて非異常領域を復元し、(ii)位相3処理506および位相4処理508を用いて異常領域を復元する。
【0094】
図5Aを参照すると、ブロック500において、ぶれ画像がアルゴリズムにより読み込まれる。次いで、ブロック510において、ぶれ画像が検査され、異常ピクセル(領域)と非異常ピクセル(領域)が特定される。一実施の形態では、異常領域はハイライトされた領域(センサが飽和した領域)であり、非異常領域はハイライトされない領域である。例えば、特定の輝度閾値を超える輝度値を有するぶれ画像中のピクセルを異常ピクセルとラベルすることができ、該特定の輝度閾値を下回る輝度値を有するピクセルを非異常ピクセルとラベルすることができる。ある実施の形態では、異常ピクセルの近傍のピクセルも異常ピクセルとラベルすることができる。
【0095】
異常領域と非異常領域が特定された後、これらの領域の個別処理を開始することができる。ブロック512において、適合性忠実度空間マスクMが生成される。非限定的な一例として、忠実度空間マスクMは0または1のいずれかの値を有する二値マスクであってもよい。この例では、忠実度空間マスクM
1は異常ピクセルとラベルされたピクセルに対して0の値を持ち、非異常ピクセルとラベルされたピクセルに対して1の値を持つことができる。この例では、(i)、異常ピクセルとその近傍のピクセルは0の値を付与され、(ii)残余のピクセルは1の値を付与されるようにすることができる。
【0096】
選択的に、忠実度空間マスクMのピクセルは0と1の間の値を持つことができる。この例では、(1)異常ピクセルとその近傍のピクセルに0の値を付与することができ、(ii)異常ピクセルから十分に隔たったピクセルに1の値が付与され、(iii)残余のピクセルは異常ピクセルからどの程度隔たっているかに依存する0と1の間の値を持つ。このようにすると遷移が滑らかになる。
図5Bは、忠実度空間マスクM550の一部分の簡略説明図である。
【0097】
再び
図5Aを参照すると、次ぎにブロック502において、位相1処理が行われ、非異常領域において主エッジがリンギング抑制を強く強調して復元される。ここでの位相1処理502は、
図2を参照して上述した位相1処理202と同様であるが、位相1コスト関数は忠実度項中に忠実度空間マスクMを含み、これに加えて適合性正規化空間マスクN
1およびラプラスまたは超ラプラス事前正規化を含む。この実施の形態では、忠実度空間マスクMを用いて異常から十分に隔たった領域にデコンボリューションを制限し、それにより異常の周りのリンギングを抑制する。
図2に記載の実施の形態と同様に、位相1処理502は副位相1A、1B、1C等を含むことができ、各後続の副位相は正規化が低減され、適合性正規化空間マスクが改善されている。
【0098】
非異常領域の位相1処理が完了した後、ブロック504において非異常領域の位相2処理504が実行されてテクスチャが復元される。ここでの位相2処理504は
図2を参照して上述した位相2処理と同様であるが、位相2コスト関数は、忠実度項中に忠実度空間マスクMを含み、これに加えて、適合性空間マスクN
2、ガウス事前正規化および空間事前正規化を含む。位相2処理504において、忠実度空間マスクMがコスト関数の忠実度項中に用いられてデコンボリューションを異常から十分隔たった領域に制限する。これを用いて異常の周りのリンギングを抑制することができ、異常領域はより強い正規化を得ることができる。
【0099】
その結果、位相2鮮明潜像は比較的に少数のリンギング・アーチファクトとノイズを含み、より多数の精細なテクスチャを含む。異常領域の位相2処理504から生成された位相2鮮明潜像を用いて最終鮮明潜像516を生成する。
【0100】
次に、ブロック506において、位相3処理が実行されて異常領域において主エッジがリンギング抑制に強く強調して復元される。ここでの位相3処理506は
図2を参照して上述した位相1処理202と同様であるが、(i)より強い正規化を用いてリンギングを抑制し、(ii)位相3処理に用いられる忠実度空間マスクM(「位相3忠実度空間マスクM
3」)は異常領域が復元されるように変化させる必要がある。例えば、位相3処理コスト関数は(i)忠実度空間マスクM
3を完全にスキップし、画像を完全に復元するか、または(ii)1−位相1忠実度空間マスクMを位相3忠実度空間マスクM
3として用い(M
3=1−M)、異常領域に復元を限定する。
図2に記載された実施の形態と同様に、位相3処理506は副位相3A、3B、3C等を含んでいてもよく、各後続の副位相は低減された正規化と改善された適合性正規化空間マスクとを有する。
【0101】
異常領域の位相3処理が完了後、位相4処理を実行してブロック508における異常領域にテクスチャを復元し、位相4鮮明潜像を生成する。ここでの位相4処理508は、
図2を参照して上述した位相2処理と同様であるが、(i)より強い正規化を用いてリンギングを抑制し、(ii)位相4処理に用いられる忠実度空間マスクM(「位相4忠実度空間マスクM
4」)は異常が復元されるように変化させる必要がある。例えば、位相4処理コスト関数は、(i)忠実度空間マスクM
4を完全にスキップし、画像を完全に復元するか、または(ii)1−位相2忠実度空間マスクMを位相4忠実度空間マスクM
4として用い(M
4=1−M)、異常領域に復元を限定する。
【0102】
次に、ブロック514において、位相2鮮明潜像を位相4鮮明潜像と合成して出力鮮明潜像518を作成する。例えば、位相4鮮明潜像の異常領域を位相2鮮明潜像の非異常領域と合成して出力鮮明潜像516を生成する。この設計により、本明細書において述べられている多重位相方法を用いてハイライト領域を非ハイライト領域からの異なるパラメータを用いて個別にぶれ修正することができる。
【0103】
一実施の形態では、最終出力(鮮明潜像L)は下記のように表現することができる。
【数21】
式(21)において、(i)M
Blendはブレンド・マスクであり、(ii)L
Phase2は、位相2処理後の鮮明潜像であり、(iii)L
Phase4は位相4処理後の鮮明潜像である。一実施の形態では、ブレンド・マスクM
Blendは位相1処理502および位相2処理504において用いられている忠実度空間マスクMと同じである。この設計を用いると、マスクMが二値でない場合、異常領域から十分隔たった領域のピクセルは位相2処理504の結果を付与され、異常領域のピクセルは位相4処理508の結果を付与され、両者の間に滑らかな混合がなされている。
【0104】
この実施の形態では、ぶれ画像中に異常領域が存在しない場合(ブロック510において異常が同定されない場合)、位相3および4処理506、508をスキップすることが可能であり、最終出力鮮明潜像516は位相2鮮明潜像である。
【0105】
さらに、ユーザーは、異常が検出されたか否かにかかわらず、(i)位相3および4処理506、508をスキップすること、および(ii)位相2鮮明潜像を最終出力鮮明潜像516として用いることを選択することも可能である。さらに、位相3および4処理506、508をスキップすることはアルゴリズムの速度を改善する。
【0106】
非異常領域の位相1処理502用の適切な位相1コスト関数の非限定的な一例は下記の通りである。
【数22】
【0107】
非限定的な一実施例では、忠実度重みパラメータα
1は0.001に等しく設定することができ(α
1=0.001)、忠実度重みパラメータα
2は1に等しく設定することができる(α
2=1)。その結果、コスト関数はリンギングを低減する一助となる導関数を有する忠実度項に主に依存する。式(22)において、Mは適合性忠実度空間マスクであり、N
1は適合性正規化空間マスクであり、ω
1は平坦化領域における正規化重みである。
【0108】
式(22)のコスト関数は変数分割および交互最小化により最小化することができる。ある場合は、リンギングを抑制するためにほぼ6−8回の反復が必要である。分割後の式(22)のコスト関数は下記のように表現することができる。
【0110】
非限定的な一実施例では、第1回の反復においてペナルティ重みγ=β=1を用い、倍率√2(γについて)で増加し、各反復においてそれぞれ(βについて)2倍にする。
【0111】
最小化式は下記の通りである。
【数24】
【数25】
【数26】
【0112】
さらに、少なくとも式(23)の鮮明潜像コスト関数用の閉じた式が下記のように存在する。
【数27】
式(26)において、Dは式(10)と同じ値を有する。
【0113】
非異常領域の位相2処理504用の適切な位相2コスト関数の非限定的な一例は下記の通りである。
【0115】
式(28)の位相2コスト関数は変数分割および交互最小化により最小化することができる。ある場合は、3以下の回数の反復が必要のようだ。式(28)のコスト関数は、分割後、下記のように表現することができる。
【数29】
【0116】
非限定的な一実施の形態では、ペナルティ重みγ=β=1が第1の反復において用いられ、倍率√2で増加され(αについて)、各反復においてそれぞれ2で増加される(βについて)。
【0117】
以下の最小化式を用いることができる。
【数30】
【数31】
【数32】
【0118】
さらに、少なくとも下記の式(29)の鮮明潜像コスト関数用の閉じた式が存在する。
【数33】
式(33)において、Dは式(10)のものと同じ値を有する。
【0119】
異常領域の位相3処理506用の位相3コスト関数の非限定的な一例は下記の通りである。
【数34】
式(34)は本明細書中に述べられている式(4)と同じである。この位相3コスト関数では、忠実度空間マスクM
3は用いられていない。式(34)の位相3コスト関数は繰り返して最小化することができ、式(34)の位相3コスト関数は反復的に最小化可能であり、一つの可能性は、式6、7および9に記載されているような変数分割と交互最小化を含む。適合性正規化空間マスクN
1は位相2鮮明潜像を用いて計算することができる。ハイライト領域における復元はより多くの正規化を用いるので、より粗雑である。
【0120】
位相4処理508では、若干のテクスチャが異常中およびその周りに復元される。異常領域の位相4処理508用の適切な位相4コスト関数の非限定的な一例は、下記の通りである。
【0121】
ぶれ画像BとPSFカーネルKが与えられると、位相4コスト関数を下記のように表現することができる。
【数35】
式(35)は上述の式(11)と幾分似ている。この位相4コスト関数では、忠実度空間マスクM
4は用いない。式(35)の位相4コスト関数は反復的に最小化可能であり、1つの可能性は、式13−15と幾分似ている変数分割と交互最小化を含む。一実施の形態では、少なくとも下記のような閉じた式が存在する。
【数36】
【0122】
式(35)の位相4コスト関数は各反復においてLとL
Phase3との間の差を制限することにより鮮明潜像を後処理する選択肢を含む。このアイデアはリンギングを低減するが、ある場合には、悪いポスタリゼーションを引き起こす。従って、この選択肢はデフォールトではオフに切り替えられている。
【0123】
図6Aはハイライト(異常)領域610(白で示す)と非ハイライト(非異常)領域612の簡略説明図である。
図6Bは位相2鮮明潜像602の簡略図である。位相2処理の終了時、異常領域の復元は生じなかった。
【0124】
図6Cは位相2鮮明潜像602(
図6Bに示す)を位相4鮮明潜像と結合することにより生成された最終鮮明潜像604の簡略説明図である。最終鮮明潜像604は異常領域の復元を含む。
【0125】
図6Bおよび6Cを参照すると、位相2処理の結果は、リンギングは非常に少ないが、異常空間は適切に復元されておらず、異常の周りの領域はぶれたままである。位相4処理は異常の周りの異常形状と若干のテクスチャを復元するのに役立つ。
【0126】
さらに別の実施形態では、本発明は、輝度−色度色空間における異常処理を伴う多重位相ノンブラインド・デコンボリューション方法を対象とする。本明細書において述べられているように、ぶれ修正した画像は、一般に、線形画像形成とぶれモデルからの逸脱、PSFの不正確その他の要因により引き起こされたリンギング・アーチファクトが強い。したがって、リンギング・アーチファクトは排除するのが非常に難しい。さらに、本明細書において述べられているように、RGB(赤、青、緑色空間)の各色チャンネルに個別にぶれ修正が適用されると、リンギング・アーチファクトは強い色を持つことがある。したがって、着色アーチファクトがより目立ち、かつ不快である。
【0127】
一実施の形態では、本発明は輝度(輝度成分)を色度(色成分)から分離する若干の色空間においてぶれ修正を実行することにより着色アーチファクトを低減する。この実施の形態では、ヒトの視覚系が色度の鮮明さに対して感受性が劣るので、正規化は色度チャンネルについて向上して着色リンギングを低減することが可能である。さらに、ぶれ修正された輝度チャンネルを用いて残余の色度チャンネルの適合性正規化マスクを生成することが可能である。
【0128】
さらに、ある実施の形態では、位相の数を色度チャンネルに対して減少させてもよい。これにより、アルゴリズムがスピードアップされる。
【0129】
図7は、主としてYCbCr色空間において実行される多重位相ノンブラインド・画像デコンボリューション方法用のアルゴリズムのフローチャートである。ステップ700において、ぶれ画像はシステムに入力され、原画像データが読み込まれ、原画像データのモザイク除去がなされ、画像が輝度チャンネルと色度チャンネルとを含む色空間(例えば、YCbCr色空間)に変換される。一実施の形態では、上述し、
図5に図示された4位相アプローチである多重位相アプローチは輝度チャンネル701Lに、次いで2つの色度チャンネル701Cに対して実行される。Cb色度チャンネルまたはCr色度チャンネルのいずれかを第1または第2の色度チャンネルと呼ぶことができる。
【0130】
さらに詳しくは、ぶれ画像はブロック701Lに入力され、輝度チャンネルの処理が開始する。ブロック710において、ぶれ画像は検査されて異常ピクセル(領域)と非異常ピクセル(領域)とが同定される(ブロック510と同様に)。ブロック712Lにおいて、適合性忠実度空間マスクMが生成される(ブロック512と同様に)。
【0131】
ブロック702Lにおいて、位相1処理が輝度チャンネルに対して実行されて非異常領域の主エッジがリンギングを強く抑制して復元される(ブロック502と同様に)。位相1処理702Lは、忠実度項中の忠実度空間マスクMとこれに加えて適合性正規化空間マスクN
1およびラプラスまたは超ラプラス事前正規化を含む位相1コスト関数を含む。位相1処理702Lは副位相1A、1B、1C等を含むことができ、各後続の副位相は低減された正規化と、改善された適合性正規化空間マスクを有する。
【0132】
次に、ブロック704Lにおいて、輝度チャンネルに対する非異常領域の位相2処理が実行されてテクスチャを復元し(ブロック504と同様に)、位相2輝度鮮明潜像(L
Ph2_Lum)を生成する。位相2処理は忠実度項中の忠実度空間マスクMを有する位相2コスト関数と、これに加えて適合性正規化空間マスクN
2、ガウス事前正規化および空間事前正規化とを含む。
【0133】
引き続き、ブロック706Lにおいて、位相3処理が輝度チャンネルに対して実行されて異常領域においてリンギング抑制を強調した主エッジを復元する(ブロック506と同様に)。位相3処理706Lは副位相3A、3B、3C等を含むことができ、各後続の副位相は低減された正規化と改善された適合性正規化空間マスクを有する。
【0134】
次に、ブロック708Lにおいて、位相4処理が輝度チャンネルに対して実行されて異常領域にテクスチャを復元し、位相4輝度鮮明潜像(L
Ph4_Lum)を生成する(ブロック508と同様に)。
【0135】
次に、ブロック714Lにおいて、
図8Aを参照すると、位相2輝度鮮明潜像(L
Ph2_Lum)810を位相4輝度鮮明潜像(L
Ph4_Lum)812と合成して輝度チャンネル鮮明潜像(L
Lum) 814を生成する。例えば、位相4鮮明潜像の異常領域を位相2鮮明潜像の非異常領域と結合して輝度チャンネル鮮明潜像(L
Lum)814を生成する。
【0136】
戻って
図7を参照すると、ブロック701Cにおいて、2つの色度チャンネルの処理701Cが開始する。ブロック715において、輝度チャンネル鮮明潜像(L
Lum)814を用いて適合性正規化空間マスクN
1が更新/生成される。
【0137】
ブロック702Cにおいて、位相1処理が各色度チャンネルに対して実行されて非異常領域における主エッジがリンギング抑制を強調して復元される。各色度チャンネルに対して、位相1処理702Lは忠実度項中に忠実度空間マスクMを含む位相1コスト関数と、これに加えて適合性正規化空間マスクN
1とラプラスまたは超ラプラス事前正規化とを含む位相1コスト関数を用いることを含んでいてもよい。各色度チャンネルについて、位相1処理702Cは副位相1A、1B、1C等を含んでいてもよく、各後続副位相は低減された正規化と改善された適合性正規化空間マスクとを有する。
【0138】
次に、ブロック704Cにおいて、非異常領域の位相2処理が2つの色度チャンネルに対して実行されてテクスチャが復元され(ブロック504と同様に)、(i)位相2Cb色度鮮明潜像(L
Ph2_cbchr)と、(ii)位相2Cr色度鮮明潜像(L
Ph2_crchr)とを生成する。各色度チャンネルについて、位相2処理は忠実度項中に忠実度空間マスクMと、これに加えて適合性正規化空間マスクN
1、ガウス事前正規化および空間事前正規化を有する位相2コスト関数を使用することを含んでいてもよい。
【0139】
引き続き、ブロック706Cにおいて、2つの色度チャンネルに対して位相3処理を実行して異常領域においてリンギング抑制を強調した主エッジを復元する(ブロック506と同様に)。各色度チャンネルについて、位相3処理706Cは副位相3A、3B、3C等を含んでいてもよく、各後続副位相は低減された正規化と改善された適合性正規化空間マスクとを有する。
【0140】
次に、ブロック708Cにおいて、各色度チャンネルに対して位相4処理を実行して異常領域においてリンギング抑制を強調した主エッジを復元し、(i)位相4Cb色度鮮明潜像(L
Ph4_cbchr)と、(ii)位相4Cr色度鮮明潜像(L
Ph4_crchr)とを生成する。
【0141】
次に、ブロック714Cにおいて、(i)
図8Bを参照すると、位相2Cb色度鮮明潜像(L
Ph2_cbchr)816が位相4Cb色度鮮明潜像(L
Ph4_Cbchr)818と合成されてCb色度チャンネル鮮明潜像(L
Cbchr)820を生成し、(ii)
図8Cを参照すると、位相2Cr色度鮮明潜像(L
Ph2_crchr)822が位相4 Cr鮮明潜像(L
Ph4_crchr)824と合成されてCr色度チャンネル鮮明潜像(L
Crchr)826を生成する。例えば、位相2Cb色度鮮明潜像(L
Ph2_Cbchr)816の非異常領域は位相4Cb色度鮮明潜像(L
Ph4_Cbchr)818の異常領域と結合してCb色度チャンネル鮮明潜像(L
Cbchr)820を生成することができる。同様に、位相2Cr色度鮮明潜像(L
Ph2_Crchr)822の非異常領域が位相4Cr色度鮮明潜像(L
Ph4_Crchr)824の異常領域と結合してCr色度チャンネル鮮明潜像(L
Crchr)826を生成することができる。
【0142】
引き続き、ブロック720において、最終処理が行われる。このブロックでは、
図8Dを参照すると、輝度チャンネル鮮明潜像(L
Lum)814、Cb色度チャンネル鮮明潜像(L
Cbchr)820、およびCr色度チャンネル鮮明潜像(L
Crchr)826をRGB色空間に変換し、γおよびコントラスト曲線を適用し、かつ他の操作(例えば、鮮明化)を実行して、最終鮮明画像(L
Final)828を生成することができる。最後に、ブロック716において、最終鮮明潜像(L
Final)828が出力される。
【0143】
本発明はここに詳細に開示されているが、本発明の現在好適であると考えられる実施の形態の単なる例示であること、添付の請求項に記載された以外に個々に示された構成または設計の詳細については何ら限定されないことが了解される。