(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
各種のガス、液化ガス等を収容するための合成樹脂製の圧力容器として、ライナ体と、該ライナ体の外側面を覆うFRP層とを有する構成が種々提案されている。
【0003】
圧力容器には、ガス出入口を構成する口金が設けられている。この口金は、多くの場合、金属製である。
【0004】
特許文献1には、ライナ体がブロー成形により形成され、このライナ体の内側面に対し口金に含まれるフランジ部が重なる構成の圧力容器が開示されている。
図10,11は、特許文献1の圧力容器の断面図及び製造工程を説明する図である。
【0005】
図10の通り、特許文献1の開示する圧力容器5は、ブロー成形されたライナ体1と、該ライナ体1の外側面を覆うFRP層2とによって構成される容器本体部分と、この容器本体部分に設けられる口金3とを有する。口金3は、ガス出入口3aを有した円筒部3bと、該円筒部3bの容器内側端(
図10の下端)側からライナ体1の内側の面に沿って広がって形成されるフランジ部3cとを有している。口金3とライナ体1との間に接着樹脂層4が介在している。また、特許文献1は、この接着樹脂層4が、ポリエチレン系熱可塑性樹脂で形成され、ライナ体1と口金3との接着強度を高めることを開示している。
【0006】
特許文献1は圧力容器5を製造する方法として以下に示す方法を開示している。まず、
図11に示すように、口金3を支持ロッド6によって支持して一対のライナ体成形用金型7間に配置し、ブロー成形機のダイス8からパリソン9を口金3の外周囲に円筒形状に垂下させる。次いで一対の金型7を型締めする。この型締めにより柔らかい状態のパリソン9が口金3の外側面に押し付けられる。パリソン9の熱により、口金3の外面に設けられる接着樹脂4が溶融し、パリソン9と口金3とが接着される。パリソン9内に空気を吹き込み、パリソン9を膨張させて金型7の内面に押し付けてライナ体1を成形する。脱型後、ライナ体1の外側面を、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた、カーボンファイバー糸もしくは束、ガラス繊維糸あるいは束等の繊維糸、束、またはマット等により被覆し、硬化させてFRP(CFRP、GFRP等)層2を形成する。
【0007】
この特許文献1に開示される圧力容器5は、口金3を一対の金型7の間に配置して型締め後、パリソン9内をブローすることにより成形されるため、製造が容易である。この点において、口金をライナ体の外側面に配置したり、口金とライナ体をスピン溶着させたりして製造される公知の合成樹脂製圧力容器に比べて製造コストを低くすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示される圧力容器5は、口金3は金属又は樹脂で形成される。口金3を全体として金属としたのでは、口金3の重量が大きくなる。また、金属製口金と樹脂製ライナ体との付着力が不足し、両者の界面のガスシール性が低くなるおそれがある。
【0010】
一方、口金3全体を樹脂で形成した場合、強度及び剛性が不足することがある。
特に、口金3の全体を樹脂で形成した場合、フランジ部3cの剛性が低くなる。そのため、金型7を型締めしてパリソン9を口金3の外側面に押し付けたときに、フランジ部3cが容器内方へたわんでしまい、パリソン9がフランジ部3cに十分に押し付けられず、ライナ体1と口金フランジ部3cとの接着強度が不足し、両者の界面のガスシール性が低くなるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、ブロー成形されたライナ体及び該ライナ体の外側面を覆うFRP層を有し、ライナ体の内側面に口金のフランジ部が重なる圧力容器において、ライナ体と口金フランジ部との結合強度が高く、両者の界面におけるガスシール性能に優れた圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る圧力容器は、ブロー成形によって形成されるライナ体と、前記ライナ体の外側面を覆うFRP層と、前記ライナ体と前記FRP層とを貫通する筒状部と前記筒状部の一端から前記筒状部の径方向外向きに張り出す環状の金属フランジ部とを有し、かつ金属で形成される口金本体と、前記口金本体のうち少なくとも前記筒状部の外周面及び前記金属フランジ部全体を覆い、前記金属フランジ部から径方向外向きに張り出す環状の樹脂フランジ部を有し、前記ライナ体の内側面と被着し、合成樹脂で形成されるモールド体とを有する口金と、を備え、前記樹脂フランジ部は上側面、外周端面、及び下側面を有し、前記外周端面は、前記樹脂フランジ部の径方向外向きの端部に設けられており、前記ライナ体の一部が前記樹脂フランジ部の前記外周端面に沿って盛り上がった盛り上がり部分が前記外周端面の一部を覆い、前記ライナ体が前記上側面、及び前記外周端面の一部を連続して覆っている。
【0013】
なお、本発明において、樹脂フランジ部の上側面とは、樹脂フランジ部のうち容器外方を向く面であり、樹脂フランジ部の下側面とは、樹脂フランジ部のうち容器内方を向く面である。
前記モールド体は、前記口金本体のうち少なくとも前記筒状部の外周面全体及び前記金属フランジ部全体を覆っていてもよい。
【0014】
前記モールド体は、前記金属フランジ部の下側面から前記筒状部の内周面まで連続して覆っていてもよい。
【0015】
前記金属フランジ部に、前記金属フランジ部の上側面と下側面とを連通する貫通孔が設けられ、前記貫通孔に前記モールド体が充填されていてもよい。
【0016】
前記モールド体は射出成形で形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様に係る圧力容器では、口金は、前記ライナ体と前記FRP層とを貫通する筒状部と前記筒状部の一端から前記筒状部の径方向外向きに張り出す環状の金属フランジ部とを有し、かつ金属で形成される口金本体と、口金本体のうち少なくとも前記筒状部の外周面及び前記金属フランジ部全体を覆う合成樹脂製のモールド体とを有する。従って、金属のみで形成される口金に比べて軽量であり、また樹脂のみで形成される口金に比べて強度及び剛性が高い。
そのため、圧力容器のブロー成形時に口金をパリソンに強く押し付けることにより両者を強固に付着させ、口金とライナ体(パリソン)との間のガスシール性を高くすることができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る圧力容器では、ライナ体の内側面と被着する面はモールド体で構成されるため、樹脂製ライナ体とモールド体との付着強度が高い。これによって口金とライナ体との間のガスシール性が高くなる。
【0019】
本発明の一態様に係る圧力容器では、樹脂フランジ部の外周端面と上側面との交差角θが鋭角である。そのため、口金とパリソンとを押し付けたときに、パリソンが口金周縁部で盛り上り、この盛り上った部分が該外周端面の一部を覆う。これにより、口金とライナ体(パリソン)との間のガスシール性が高くなる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る圧力容器では、口金のフランジ部(樹脂フランジ部)の外周部が外周端面を有しているため口金の外周端部の強度及び剛性が高い。従ってパリソンと口金とを押し付けたときに口金の外周端部が容器内方に撓むことが防止される。従って、パリソンと口金との付着強度が高くなり、口金とライナ体との間のガスシール性が高くなる。
【0021】
本発明の一態様に係る圧力容器では、モールド体が、口金本体のうち少なくとも前記筒状部の外周面及び前記金属フランジ部全体を覆う。この場合、口金のフランジ部内に金属フランジ部が存在するので、該口金フランジ部の強度及び剛性が高くなる。
【0022】
本発明の一態様に係る圧力容器では、モールド体が、さらに、金属フランジ部の下側面から前記筒状部の内周面まで連続して覆う。これにより、モールド体と金属製口金本体との一体性を高めることができる。
なお、本発明において、金属フランジ部の下側面とは、金属フランジ部のうち容器内方を向く面である。
【0023】
本発明の一態様に係る圧力容器では、口金本体が、前記ライナ体と前記FRP層とを貫通する筒状部と、この筒状部の一端から前記筒状部の径方向外向きに張り出す環状の金属フランジ部とを有している。さらに、金属フランジ部に、金属フランジ部の外側面と内側面とを連通する貫通孔が設けられ、その貫通孔にモールド体が充填される。それにより、金属フランジ部の外側面のモールド体と内側面のモールド体とが連結され、金属製の口金本体とモールド体との一体性を高めることができる。
【0024】
本発明の一態様に係る圧力容器では、モールド体を射出成形で形成することにより、モールド体を容易に且つ低コストにて成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1〜4に本発明の第1実施形態にかかる圧力容器及びその製造方法を示す。
図2に示す圧力容器10は、ブロー成形されたライナ体11と、ライナ体11の外側面を覆うFRP層12と、ライナ体11の内側面と被着するフランジ部21を備えた口金20とを有する。
【0028】
口金20は、
図1にも示すように、前記ライナ体11と前記FRP層12とを貫通し、ガス出入口31を有した金属製の口金本体30と、該口金本体30の外周囲を覆う合成樹脂製のモールド体40とを有する。なお、口金20のトップエンド部(容器外側エンド部)23の外形は、スパナ等の工具を掛けることができるように六角形状となっている。
【0029】
口金本体30は、前記ガス出入口31を形成し、圧力容器10の内外を筒軸心方向に貫通した筒状部32と、該筒状部32の容器内部の端(下端)から筒状部32の径方向外向きに張り出す環状の金属フランジ部33とを有している。
【0030】
モールド体40は、該筒状部32の外周面、該金属フランジ部33の上側面(ライナー体と対向する面)、金属フランジ部33の先端、及び金属フランジ部33の下側面(前記上側面と反対側の面)を連続して覆っている。本実施形態では、モールド体40は、口金本体30の筒状部32の上端面(容器外側の端面)を覆っており、さらに、金属フランジ部33の下側面からガス出入口31の縁部を介して前記ガス出入口31の内周面までを連続的に覆う内周面部47を有している。
【0031】
また、口金本体30の内周面における筒軸心線方向の中間部分に、口金本体30の径方向内側に向かって凸条35が環状に設けられている。モールド体40の内周面部47は、凸条35よりも容器内側(筒状部32の下端側)のガス出入口31の内周面を覆っている。凸条35よりも容器外側のガス出入口31の内周面には雌螺子36が形成されており、ガス供給・取出用のバルブ等がねじ込んで取り付け可能とされている。
【0032】
モールド体40は、金属フランジ部33よりも金属フランジ部33の径方向外向きに張り出す環状の樹脂フランジ部42を備えている。樹脂フランジ部42は上側面、外周端面43、及び下側面で形成され、所定の厚みを有する。樹脂フランジ部42の上側面は、金属フランジ部33の上側面を覆う上面部41の上面と同一面になるように形成される。外周端面43は、樹脂フランジ部42の径方向外向きの端部に設けられている。この外周端面43の高さHは1〜30mm特に3〜20mmであることが好ましい。ここで、外周端面43の高さHとは、樹脂フランジ部42の上側面(上面部41の上面)と外周端面43の下端(外周端面43と樹脂フランジ部42の下側面との端部での接線)との距離をいう。
【0033】
この外周端面43と樹脂フランジ部42の上側面(上面部41の上面)との交差角度θは好ましくは10°〜85°、中でも好ましくは20〜60°、特に好ましくは20°〜45°である。
【0034】
樹脂フランジ部42の成形時におけるヒケを防止するために、樹脂フランジ部42の下側面には凹条44が環状に設けられている。
なお、本発明の圧力容器は本実施形態のように樹脂フランジの下側面に凹条が設けられている構成に限定されず、樹脂フランジの下側面に凹条が設けられていなくてもよい。
【0035】
モールド体40は、口金本体30の下端面からガス出入口31の角縁を介してモールド体内周面部47まで連続的に形成されている。
【0036】
この実施形態では、前述の通りモールド体40は、口金本体30の筒状部32の外周面から上端面まで覆っている。この上端面部分を構成するモールド体トップ部49の内周角縁に、Oリング等のシールリング装着用段差部46が設けられている。
【0037】
モールド体40は、射出成形により形成されることが好ましい。この場合、口金本体30を射出成形用金型内に配置し、モールド体40をインサート成形することにより口金20が製造される。
【0038】
この口金20を用いて圧力容器10を製造するには、
図4の通り、ブロー成形用の一対の金型51の間に口金20を支持棒52に支持されるように配置し、サーキュラダイ54から円筒状のパリソン55を押し出し、パリソン55で口金20を包囲する。
【0039】
その後、金型51,51を型締めし、パリソン55を口金20の外側面に押し付ける。次いで、パリソン55内に空気等のガスを吹き込んでパリソン55を膨張させて金型51,51の内面に押し付けることでライナ体11をブロー成形する。冷却後、口金20付きライナ体11を脱型し、その後、ライナ体11の外周面にフィラメントワインディング法またはテープワインディング法等によってFRP層を形成する。
なお。ブロー成形に際しては、口金20を室温以上に予熱しておくことが好ましい。
【0040】
なお、ライナ体11のブロー成形時にブロー金型51,51を型締めしてパリソン55と口金20の外側面とを押し付けた場合、この口金20のフランジ部21の基端側には金属フランジ部33が存在する。従って、圧力容器10の強度及び剛性が高くなる。この金属フランジ部33よりも外側に張り出す樹脂フランジ部42は、肉厚がHと大きいため、強度及び剛性が高い。そのため、パリソン55とフランジ部21とを押し付けたときに、樹脂フランジ部42が容器内方に撓むことがなく、パリソン55がフランジ部21の上面全体に強固に押し付けられ、両者が密着する。
【0041】
パリソン55がフランジ部21に押し付けられたときに、フランジ部21がパリソン55にめり込み、パリソン55から形成されるライナ体11の一部が、
図3のように樹脂フランジ部42の外周端面43に沿って盛り上がり、この盛り上がり部分11tが外周端面43の一部を覆う。これにより、モールド体40の樹脂フランジ部42とライナ体11との界面に圧力容器10内からガスが侵入することが防止され、該界面のガスシール性が向上する。
また、樹脂フランジ部42の上側面と外周端面43との交差角度θが鋭角であるので、硬化した盛り上り部分11tと樹脂フランジ部42の上側に形成されるライナ体11との間で樹脂フランジ部42の先端の鋭角部が挟み込まれた構造となる。従って、樹脂フランジ部42とライナ体11との結合強度が増大する。
【0042】
本実施形態の圧力容器10にあっては、口金20が金属のみで形成される場合に比べて軽量であり、また上述の通り樹脂フランジ部42も含めて強度及び剛性が高く、ライナ体11とモールド体40とが強固に密着している。従って、ライナ体11とモールド体40との結合強度が高く、ライナ体11とモールド体40との間の界面のガスシール性が良好である。また、ライナ体11が外周端面43の一部を覆う盛り上り部11tを有しているため、ライナ体11と樹脂フランジ部42との間の界面が盛り上り部11tで覆われる。よって、圧力容器10は界面ガスシール性に優れる。
【0043】
この圧力容器10にあっては、モールド体40が口金本体30(金属フランジ部33)の下側面からさらにガス出入口31(筒状部32)の内周面にまでを連続的に覆う内周面部47を有している。この場合、モールド体40と口金本体30との一体性が高く、またモールド体40と口金本体30との界面のガスシール性に優れる。
【0044】
本発明の圧力容器に用いられるその他の実施形態に係る圧力容器に用いられる口金を
図5〜9に示す。
【0045】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係る圧力容器に用いられる口金20Aを示す。
図5に示す口金20Aは、口金本体30の上端面を覆うモールド体トップ部49の上側に設けられ、黄銅などで形成される金属リング60を備える。なお、この実施の形態では、モールド体トップ部49の上面は平面であり、金属リング60の内周面の内側かつモールド体トップ部49の上面にOリング等のシールリング設置部61が形成されている。
【0046】
また、本実施形態では、上述の第1実施形態で示したガス出入口31の内周面の凸条35が設けられていない。モールド体40には、ガス出入口31の内周面を覆う内周面部47が設けられていない。その他の構成は上記口金20と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
なお、本実施形態のように内周面部47が設けられていない構成は、他の実施形態にも適宜適用可能である。また、本実施形態に上述の第1実施形態で示した内周面部47を含む構成も適宜適用可能である。
【0047】
なお、金属リング60はインサート成形によってモールド体40と一体とされてもよく、接着剤によってモールド体トップ部49に接着されてもよい。
【0048】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態に係る圧力容器に用いられる口金20Bを示す。
図6に示す口金20Bは、口金本体30の上端面を覆うモールド体トップ部49の上面に環状に設けられる凸条48と、この凸条48の外周側に設けられる金属リング60とを有する。また、凸条48の内周側にシールリング設置部61が設けられている。その他の構成は第2実施形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0049】
[第4実施形態]
図7は、本発明の第4実施形態に係る圧力容器に用いられる口金20Cを示す。
図7に示す口金20Cは、上述の第1〜3実施形態で示したモールド体トップ部49が設けられていない。この場合、Oリングはガス出入口31に差し込まれるバルブの先端部外周面に装着され、モールド体内周面部47に摺動自在に接するように設けられる。その他の構成は上記口金20と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0050】
[第5実施形態]
図8は、本発明の第5実施形態に係る圧力容器に用いられる口金20Dを示す。
図8に示す口金20Dは、モールド体40の上面部41に形成された凹凸41aを有する。これにより、モールド体40とライナ体11との付着強度をさらに高くすることができる。その他の構成は上記口金20と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0051】
[第6実施形態]
図9は、本発明の第6実施形態に係る圧力容器に用いられる口金20Eを示す。
図9に示す口金20Eは、断面形状が三角形状のモールド体40の最外周部(樹脂フランジ部42)を有する。すなわち、上記の各口金20,20A〜20Dでは、外周端面43の下端と凹条44との間が若干離隔しているが、
図9の口金20Eでは、外周端面43の下端が凹条44の入口の角縁に達している。その他の構成は上記口金20と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0052】
本発明の上記第1〜6実施形態では、上記各口金20,20A〜20Eにおいて、金属フランジ部33に、該金属フランジ部の上側面と下側面とを連通する貫通孔65(
図9に破線にて示す。)が設けられる。また、該貫通孔65に前記モールド体40が充填され、この貫通孔65内に充填されるモールド体40によってモールド体上面部41と金属フランジ部33の下面側のモールド体とを連結してもよい。
【0053】
図示は省略するが、本発明では、口金本体30の筒状部32の外周面はモールド体40で覆われなくてもよい。
【0054】
口金本体30とモールド体との付着性を高めるために、口金本体30の表面をサンドブラスト、ショットブラスト、切削処理などによって粗面化してもよく、また種々の表面処理を施してもよい。
【0055】
なお、ライナ体11の材料としては、圧力容器10に充填された高圧ガスを収納して、漏洩しないガスバリア性を有する高密度ポリエチレン系樹脂、架橋ポリエチレン、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、またはポリイミド樹脂等のエンジニアリングプラスチック等が挙げられるが、ライナ体11の材料は、上述した材料に限定されない。
【0056】
ライナ体11は、上記熱可塑性樹脂の単層体、複層体、または複合材料などから構成されていても良い。例えば、高密度ポリエチレン系樹脂層内に、エンジニアリングプラスチック、エチレン―ビニルアルコール共重合体(EVOH)もしくはポリビニルアルコール(PVA)樹脂などのガスバリア性樹脂、エラストマー、金属部材、または無機充填剤が分散された複合材料で形成されていても良いし、ライナ体11の構造として、少なくとも熱可塑性樹脂層/接着層/バリア層を含む多層構造を有する積層体が用いられてもよい。
【0057】
上述のエンジニアリングプラスチックとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12などの各種ポリアミド(PA)樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)もしくはポリブチレンテレフタラート(PBT)などの各種ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合(AS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、または芳香族ポリエステル樹脂(液晶樹脂)などが挙げられる。
【0058】
無機充填剤としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、または雲母などが挙げられるが、中でも平均粒径が0.5〜10μmの板状晶構造を持つ微粉末タルクまたは微粉末雲母が好適である。
【0059】
また、積層構造の合成樹脂製ライナー材の材料及び構造としては、上記の高密度ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂層/接着層/バリア層の3種3層構造、熱可塑性樹脂層/接着層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層の3種5層構造の積層体、もしくは熱可塑性樹脂層/リグラインド層/接着層/バリア層/接着層/熱可塑性樹脂層の4種6層構造などの三層以上の積層体、または熱可塑性層/接着層の2種2層などで形成される積層体が挙げられる。
【0060】
前記バリア層に好適に使用される材料としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等が挙げられる。
【0061】
FRP層12を形成するためのフィラメントワインディング法またはテープワインディング法等の捲回方法は、ヘリカル巻、フープ巻、レーベル巻などのいずれでもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。また、捲回方法としては、具体的には例えば、補強繊維(束)に対して捲回工程時に樹脂を添着させながら捲回する方法、または予め樹脂を含浸させた補強繊維(束)(プリプレグ)を捲回する方法が挙げられる。また、織物などのような連続した補強材に熱硬化性樹脂を含浸させて成形するプリプレグ法等、他の方法でFRP層を形成しても良い。
【0062】
FRP層を形成するための補強繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、有機高弾性率繊維(例えばアラミド繊維、超高強力ポリエステル繊維)、金属繊維、またはセラミック繊維などが挙げられ、これらは1種類で用いることも2種類以上を併用することもできる。
【0063】
FRP層を形成するための樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂ポリイミド樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性又は光硬化性樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドなどのエンジニアリングプラスチック、ポリプロピレン、またはポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0064】
口金本体30を構成する金属としては、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、またはこれらの合金(例えば黄銅)などが挙げられるが、これに限定されない。
【0065】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。