(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂をシート状にした第1樹脂シート上に、前記の裁断された複数の繊維束をシート状に散布してシート状繊維束群を形成する散布工程と、前記シート状繊維束群上に、前記樹脂をシート状にした第2樹脂シートを貼り合わせて加圧し、前記シート状繊維束群に樹脂を含浸させてシートモールディングコンパウンドを得る貼合含浸工程を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシートモールディングコンパウンドの製造方法。
前記裁断機の後に、前記シート状繊維束群上に、前記樹脂をシート状にした第2樹脂シートを貼り合せて加圧し、前記シート状繊維束群に樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料とする含浸部を備える、請求項6又は7に記載のシートモールディングコンパウンドの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2のように開繊後の繊維束を裁断してシート状繊維束群を形成し、前記シート状繊維束群に樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料(SMC)とする方法では、繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が生じ、充分な強度が得られないことがある。
【0007】
本発明は、繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が生じることが抑制され、充分な強度を有する繊維強化樹脂材料が得られる繊維強化樹脂材料の製造方法、及び繊維強化樹脂材料の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する繊維強化樹脂材料の製造方法及び繊維強化樹脂材料の製造装置を提供する。
[1] 長尺の繊維束を開繊により幅方向に拡幅し、扁平な状態とする開繊工程と、
開繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットする熱セット工程を有する、繊維強化樹脂材料の製造方法。
[2] 前記繊維束として樹脂が付着した繊維束を用いる、[1]に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
[3] 前記繊維束としてサイズ剤が付着した繊維束を用いる、[1]に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
[4] 前記開繊工程と前記熱セット工程の間に、開繊後の繊維束を分繊により幅方向に分割する分繊工程をさらに有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
[5] 複数の繊維束と樹脂を含有する繊維強化樹脂材料を製造する方法であって、前記熱セット工程後に、前記繊維束を連続的に裁断する工程を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
[6] 樹脂をシート状にした第1樹脂シート上に、前記の裁断された複数の繊維束をシート状に散布してシート状繊維束群を形成する散布工程と、前記シート状繊維束群上に、前記樹脂をシート状にした第2樹脂シートを貼り合わせて加圧し、前記シート状繊維束群に樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料を得る貼合含浸工程を有する、[5]に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
[7] 複数の繊維束と樹脂を含有する繊維強化樹脂材料を製造する装置であって、
長尺の繊維束を開繊により幅方向に拡幅し、扁平な状態とする開繊部と、開繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットする熱セット部と、
を備えている、繊維強化樹脂材料の製造装置。
[8] 前記開繊部と前記熱セット部の間に、開繊後の繊維束を分繊により幅方向に分割する分繊部をさらに備える、[7]に記載の繊維強化樹脂材料の製造装置。
[9] 前記熱セット部の後に、熱セット後の繊維束を連続的に裁断し、前記樹脂をシート状にした第1樹脂シート上に、裁断された複数の繊維束をシート状に散布してシート状繊維束群を形成する裁断機を備える、[7]又は[8]に記載の繊維強化樹脂材料の製造装置。
[10] 前記裁断機の後に、前記シート状繊維束群上に、前記樹脂をシート状にした第2樹脂シートを貼り合せて加圧し、前記シート状繊維束群に樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料とする含浸部を備える、[7]〜[9]のいずれかに記載の繊維強化樹脂材料の製造装置。
[11] 長尺の繊維束を連続的に裁断し、裁断された複数の繊維束で形成したシート状繊維束群に樹脂を含浸して繊維強化樹脂材料を製造する方法において、下記撓み試験で測定される撓み量Hが15mm未満の繊維束を裁断する、繊維強化樹脂材料の製造方法。
(撓み試験)
裁断する繊維束から長さ150mmの試験片を切り出し、前記試験片における長さ方向の第1末端から100mmの位置から第2末端までの部分を平面上に設置する。前記試験片における前記第1末端から100mmの部分を自由状態として、その状態における前記第1末端の下端と前記平面との距離を撓み量H(mm)とする。
[12] 長尺の繊維束を開繊により幅方向に拡幅して扁平な状態とし、開繊後の繊維束を連続的に裁断する、[11]に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
[13] 前記の開繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットしてから裁断する、[12]に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
[14] 前記の開繊後の繊維束を分繊により幅方向に分割してから裁断する、[12]又[13]に記載の繊維強化樹脂材料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法によれば、繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が生じることが抑制され、充分な強度を有する繊維強化樹脂材料が得られる。
繊維強化樹脂材料の製造装置を用いれば、繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が生じることが抑制され、充分な強度を有する繊維強化樹脂材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、開繊した後に扁平な状態で熱セットした長尺の繊維束を連続的に裁断し、裁断された複数の繊維束で形成したシート状繊維束群に樹脂を含浸して繊維強化樹脂材料(SMC)を製造する方法において、後述の撓み試験で測定される撓み量Hが15mm未満の繊維束を裁断することを特徴とする方法である。
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明の繊維強化樹脂材料の製造装置及び繊維強化樹脂材料の製造方法の一例について、
図1及び
図2に基づいて説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、必要に応じてこのXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。
【0013】
(繊維強化樹脂材料の製造装置)
本実施形態の繊維強化樹脂材料の製造装置100(以下、単に「製造装置100」という。)は、
図1に示すように、開繊部50と、分繊部52と、熱セット部54と、第1のキャリアシート供給部11と、第1の搬送部20と、第1の塗工部12と、裁断機13と、第2のキャリアシート供給部14と、第2の搬送部28と、第2の塗工部15と、含浸部16と、を備えている。
【0014】
開繊部50は、ボビンB1から引き出された長尺の繊維束f1を開繊により幅方向(Y方向)に拡幅し、扁平な状態とする部分である。開繊部50は、X軸方向に間隔を空けて並んで設けられた複数の開繊バー17を備えている。複数の開繊バー17では、繊維束f1が各開繊バー17の上下を順にジグザグに通過するようになっている。この際に、各開繊バー17による加熱、擦過、揺動などの手段により繊維束f1が幅方向に拡幅される。繊維束f1が開繊されることで、扁平な状態の繊維束f2とされる。
【0015】
分繊部52は、開繊後の繊維束を分繊により幅方向(Y方向)に分割する部分である。分繊部52は、開繊部50の後段に配置されており、複数の回転刃18を備えている。複数の回転刃18は、開繊された繊維束f2の幅方向(Y軸方向)に所定の間隔で並んで配置されている。また、各回転刃18には、複数の刃物18aが周方向に連なって並んで設けられている。回転刃18を回転させながら繊維束f2を通過させることで、繊維束f2に複数の刃物18aが間欠的に突き刺さり、繊維束f2が幅方向に分割されて複数の繊維束f3となる。ただし、分繊された複数の繊維束f3は、完全に分繊された状態となっていてもよく、部分的に未分繊の状態(結合した状態)となっていてもよい。
【0016】
熱セット部54は、開繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットする部分である。熱セット部54は、分繊部52の後段に配置されている。この例では、開繊部50と熱セット部54の間に分繊部52が配置されているため、開繊され、さらに分繊された繊維束f3を熱セット部54で加熱して扁平な状態で熱セットするようになっている。熱セット部54は、複数のガイドロール55と、加熱手段56と、複数のゴデットロール19とを備えている。
【0017】
熱セット部54では、分繊部52において分繊された繊維束f3が複数のガイドロール55によってX方向に搬送され、加熱手段56によって加熱されて扁平な状態で熱セットされるようになっている。また、熱セット後の繊維束f3が複数のゴデットロール19によって裁断機13へと案内されるようになっている。熱セット部54で繊維束f3が熱セットされることで、後工程まで繊維束f3が扁平な状態に維持されるようになる。
【0018】
第1のキャリアシート供給部11は、第1の原反ロールR1から引き出された長尺の第1のキャリアシートC1を第1の搬送部20へと供給する。第1の搬送部20は、一対のプーリ21a,21bの間に無端ベルト22を掛け合わせたコンベア23を備えている。コンベア23では、一対のプーリ21a,21bを同一方向に回転させることによって無端ベルト22を周回させ、無端ベルト22の面上において第1のキャリアシートC1をX軸方向の右側に向けて搬送する。
【0019】
第1の塗工部12は、第1の搬送部20におけるプーリ21a側の直上に位置しており、樹脂を含むペーストPを供給するコータ24を備えている。第1のキャリアシートC1がコータ24を通過することで、第1のキャリアシートC1の面上にペーストPが所定の厚みで塗工され、第1樹脂シートS1が形成される。第1樹脂シートS1は、第1のキャリアシートC1の搬送に伴って走行する。
【0020】
裁断機13は、第1の塗工部12よりも搬送方向の後段において、第1のキャリアシートC1の上方に位置している。裁断機13は、複数のゴデットロール19で案内された熱セット後の繊維束f3を所定の長さに連続的に裁断するものであり、ガイドロール25と、ピンチロール26と、カッターロール27とを備えている。ガイドロール25は、供給された繊維束f3を回転しながら下方に向けて案内する。ピンチロール26は、ガイドロール25との間で繊維束f3を挟み込みながら、ガイドロール25とは逆向きに回転する。これにより、ボビンB1から繊維束f1が引き出される。カッターロール27は、回転しながら繊維束f3を所定の長さとなるように裁断する。裁断機13により所定の長さに裁断された繊維束f4は落下して第1樹脂シートS1の上に散布され、シート状繊維束群Fが形成される。
【0021】
第2のキャリアシート供給部14は、第2の原反ロールR2から引き出された長尺の第2のキャリアシートC2を第2の搬送部28へと供給する。第2の搬送部28は、コンベア23により搬送される第1のキャリアシートC1の上方に位置しており、複数のガイドロール29を備えている。第2の搬送部28は、第2のキャリアシート供給部14から供給された第2のキャリアシートC2を、第1のキャリアシートC1とは反対方向(X軸方向の左側)に搬送した後、搬送方向を複数のガイドロール29によって第1のキャリアシートC1と同じ方向に反転させる。
【0022】
第2の塗工部15は、第1のキャリアシートC1とは反対方向に搬送されている第2のキャリアシートC2の直上に位置し、樹脂を含むペーストPを供給するコータ30を備えている。第2のキャリアシートC2がコータ30を通過することで、第2のキャリアシートC2の面上にペーストPが所定の厚みで塗工され、第2樹脂シートS2が形成されるようになっている。第2樹脂シートS2は、第2のキャリアシートC2の搬送に伴って走行する。
【0023】
含浸部16は、シート状繊維束群F上に第2樹脂シートS2を貼り合せて加圧し、シート状繊維束群Fに樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料とする部分である。含浸部16は、第1の搬送部20における裁断機13よりも後段に位置し、貼合機構31と、加圧機構32とを備えている。貼合機構31は、コンベア23のプーリ21bの上方に位置し、複数の貼合ロール33を備えている。複数の貼合ロール33は、第2樹脂シートS2が形成された第2のキャリアシートC2の背面に接触した状態で搬送方向に並んで配置されている。また、複数の貼合ロール33は、第1のキャリアシートC1に対して第2のキャリアシートC2が徐々に接近するように配置されている。
【0024】
貼合機構31では、第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2とが、その間に第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2を挟み込んだ状態で重ね合わされながら搬送される。ここで、第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2を挟み込んだ状態で第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2が貼合されたものを貼合シートS3という。
【0025】
加圧機構32は、貼合機構31の後段に位置し、一対のプーリ34a,34bの間に無端ベルト35aを掛け合わせた下側コンベア36Aと、一対のプーリ34c,34dの間に無端ベルト35bを掛け合わせた上側コンベア36Bとを備えている。下側コンベア36Aと上側コンベア36Bとは、互いの無端ベルト35a,35bを突き合わせた状態で、互いに対向して配置されている。
【0026】
加圧機構32では、下側コンベア36Aの一対のプーリ34a,34bが同一方向に回転されることによって無端ベルト35aが周回される。また、加圧機構32では、上側コンベア36Bの一対のプーリ34c,34dを同一方向に回転させることによって、無端ベルト35bが無端ベルト35aと同じ速さで逆向きに周回される。これにより、無端ベルト35a,35bの間に挟み込まれた貼合シートS3がX軸方向の右側に搬送される。
【0027】
加圧機構32には、さらに複数の下側ロール37aと、複数の上側ロール37bとが設けられている。複数の下側ロール37aは、無端ベルト35aの突合せ部分の背面に接触した状態で搬送方向に並んで配置されている。同様に、複数の上側ロール37bは、無端ベルト35bの突き合わせ部分の背面に接触した状態で搬送方向に並んで配置されている。また、複数の下側ロール37aと複数の上側ロール37bとは、貼合シートS3の搬送方向に沿って互い違いに並んで配置されている。
【0028】
加圧機構32では、無端ベルト35a,35bの間を貼合シートS3が通過する間に、第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2との間に挟み込まれた第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2を複数の下側ロール37a及び複数の上側ロール37bにより加圧する。このとき、第1樹脂シートS1及び第2樹脂シートS2の樹脂がシート状繊維束群Fに含浸される。これにより、繊維強化樹脂材料(SMC)の原反Rが得られる。原反Rは、所定の長さに切断して成形に使用することができる。なお、第1のキャリアシートC1及び第2のキャリアシートC2は、SMCの成形前にSMCから剥離される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の製造装置100においては、開繊及び分繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットする熱セット部54が備えられている。熱セット部54によって開繊及び分繊後の繊維束が扁平な状態で熱セットされることにより、熱セットを行わない場合に比べて、前記繊維束を裁断してシート状繊維束群を形成した際に、繊維束の扁平性が維持されるとともに繊維束の折り畳まれも少なく、各繊維束間にできる隙間がより小さくなる。これにより、樹脂を含浸して得られる繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が形成されることが抑制されるため、充分な強度を有する繊維強化樹脂材料が得られる。
【0030】
(繊維強化樹脂材料の製造方法)
製造装置100を用いる繊維強化樹脂材料の製造方法は、下記の開繊工程、分繊工程、熱セット工程、散布工程及び貼合含浸工程を有する。
開繊工程:長尺の繊維束を開繊により幅方向に拡幅し、扁平な状態とする工程。
分繊工程:開繊後の繊維束を分繊により幅方向に分割する工程。
熱セット工程:開繊及び分繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットする工程。
散布工程:熱セット後の繊維束を連続的に裁断し、樹脂をシート状にした第1樹脂シート上に、裁断された複数の繊維束をシート状に散布してシート状繊維束群を形成する工程。
貼合含浸工程:前記シート状繊維束群上に、樹脂をシート状にした第2樹脂シートを貼り合わせて加圧し、前記シート状繊維束群に樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料を得る貼合含浸工程。
【0031】
<開繊工程>
ボビンB1から長尺の繊維束f1を引き出し、開繊部50において、繊維束f1を各開繊バー17の上下に順にジグザグに通過させ、開繊により幅方向に拡幅して扁平な状態の繊維束f2とする。
【0032】
繊維束としては、炭素繊維束が好ましい。なお、繊維束としては、ガラス繊維束を用いてもよい。繊維束としては、特に限定されず、例えば、繊維数が3,000本以上の繊維束を用いることができ、繊維数が12,000本以上の繊維束を好適に使用することもできる。繊維束には、通常、各繊維の収束性を高める目的でサイズ剤が付与されている。サイズ剤としては、特に限定されず、公知のサイズ剤を使用することができる。
【0033】
<分繊工程>
分繊部52において、複数の回転刃18を回転させながら繊維束f2を通過させ、複数の刃物18aを間欠的に突き刺し、繊維束f2を幅方向に分割して複数の繊維束f3とする。
【0034】
<熱セット工程>
熱セット部54において、開繊及び分繊後の繊維束f3を複数のガイドロール55によりX方向に搬送しつつ、加熱手段56によって加熱し、扁平な状態で熱セットする。次いで、熱セット後の繊維束f3を複数のゴデットロール19により裁断機13へと案内する。
ガラス繊維や炭素繊維などの長尺の強化繊維は、通常、サイズ剤によってトウ形態が保持されているが、上記の開繊工程にて、サイズ剤で結着された繊維同士が部分的に離れ、トウの収束性が低下するため、上記繊維束f2及びf3の形状保持性が低下する。しかし、開繊後の繊維束を熱セットすることにより、繊維束に付与されたサイズ剤が溶融して再び繊維同士を結着した状態で固化するため、上記繊維束f2及びf3の形状保持性が回復し、開繊後の繊維束の剛直性が高まり、折り畳まれや撓みにくくなる。
【0035】
熱セットにおける加熱温度は、繊維束に付与されたサイズ剤が溶融するように、サイズ剤の種類に応じて適宜設定すればよく、85〜180℃が好ましく、90〜150℃がより好ましい。加熱温度が下限値以上であれば、熱セットの効果が得られやすい。加熱温度が上限値以下であれば、サイズ剤の揮発が抑制される傾向にあるため、熱セットの効果が得られやすい。また、繊維束に付着したサイズ剤の粘度が例えば1.5Pa・s以下となるように、繊維束を加熱し、サイズ剤を溶融させることによって、熱セットの効果を得ることができる。
熱セットにおける加熱時間は、繊維束に付与されたサイズ剤が溶融するように適宜設定すればよく、1〜15秒が好ましく、5〜15秒がより好ましい。
【0036】
<散布工程>
第1のキャリアシート供給部11により、第1の原反ロールR1から長尺の第1のキャリアシートC1を引き出して第1の搬送部20へと供給し、第1の塗工部12によりペーストPを所定の厚みで塗工して第1樹脂シートS1を形成する。第1の搬送部20によって第1のキャリアシートC1を搬送することにより、第1のキャリアシートC1上の第1樹脂シートS1を走行させる。
【0037】
ペーストPに含まれる樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。ペーストPには、炭酸カルシウムなどの充填剤や、低収縮化剤、離型剤、硬化開始剤、増粘剤などを配合してもよい。
【0038】
複数のゴデットロール19によって案内されてきた繊維束f3を裁断機13において所定の長さとなるように連続的に裁断し、裁断された繊維束f4を第1樹脂シートS1の上に落下させて散布する。これにより、走行する第1樹脂シートS1上に、各繊維束f4がランダムな繊維配向で散布されたシート状繊維束群Fが連続的に形成される。
本実施形態では、裁断機13において、以下の撓み試験で測定される撓み量Hが15mm未満の繊維束f3を裁断する。繊維束f3の撓み量Hが15mm未満であることで、裁断された繊維束f4の扁平性が維持されやすく、散布された繊維束f4が折り畳まれにくくなる。これにより、シート状繊維束群F中の各繊維束f4間にできる隙間がより小さくなり、樹脂を含浸して得られる繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が形成されることが抑制される。そのため、充分な強度を有する繊維強化樹脂材料が得られる。
【0039】
(撓み試験)
図2に示すように、裁断する繊維束f3から、長さ150mmの試験片600を切り出し、試験片600における長さ方向の第1末端600aから100mmの位置PIから第2末端600bまでの部分を平面400上に設置する。そして、試験片600における第1末端600aから100mmの部分を自由状態とする。試験片600における第1末端600aから100mmの部分が撓んで垂れるため、その状態における第1末端600aの下端と平面400との距離を撓み量H(mm)とする。
本発明では、裁断する繊維束の撓み試験で測定される撓み量Hは、15mm未満であり、0〜14mmが好ましく、5〜13mmがより好ましい。撓み量Hが下限値以上であれば、強度の高い繊維強化樹脂材料がより得られる。撓み量Hが小さいほど、シート状繊維束群を形成する際に散布される裁断後の繊維束が折り畳まれにくくなり、強度の高い繊維強化樹脂材料がより得られやすくなる。
【0040】
裁断する繊維束の撓み量Hは、繊維束に使用するサイズ剤の種類や、開繊条件、熱セット条件を調節することにより調節できる。具体的には、結着強度のより高いサイズ剤を使用したり、開繊後の繊維束の厚みを厚くしたり、熱セットの加熱温度を高くして充分にサイズ剤を溶融して繊維同士を再結着させたりすることで、撓み量Hが小さくなる。
【0041】
<貼合含浸工程>
第2のキャリアシート供給部14により、第2の原反ロールR2から長尺の第2のキャリアシートC2を引き出して第2の搬送部28へと供給する。第2の塗工部15により、第2のキャリアシートC2の面上にペーストPを所定の厚みで塗工し、第2樹脂シートS2を形成する。
【0042】
第2のキャリアシートC2を搬送することで第2樹脂シートS2を走行させ、含浸部16において、貼合機構31によりシート状繊維束群F上に第2樹脂シートS2を貼り合わせる。そして、加圧機構32により第1樹脂シートS1、シート状繊維束群F及び第2樹脂シートS2を加圧し、第1樹脂シートS1及び第2樹脂シートS2の樹脂をシート状繊維束群Fに含浸させる。これにより、繊維強化樹脂材料が第1のキャリアシートC1と第2のキャリアシートC2で挟持された原反Rが得られる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の繊維強化樹脂材料の製造方法においては、開繊及び分繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットする。開繊及び分繊後の繊維束が扁平な状態で熱セットされることにより、熱セットを行わない場合に比べて、前記繊維束が扁平な状態で維持されやすくなる。また、本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法においては、撓み量Hが15mm未満の繊維束を裁断してシート状繊維束群を形成し、前記シート状繊維束群に樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料を製造する。そのため、シート状繊維束群を形成する際に散布される裁断後の繊維束がシート状繊維束群を形成する際に、扁平な状態が維持されるとともに折り畳まれも少なく、各繊維束間にできる隙間をより小さくすることができる。これにより、樹脂を含浸して得られる繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が形成されることが抑制されるため、充分な強度を有する繊維強化樹脂材料が得られる。
【0044】
[第2実施形態]
本発明の強化繊維樹脂材料の製造装置及び強化繊維樹脂材料の製造方法は、前記した製造装置100及び製造装置100を用いる方法には限定されない。例えば、第1実施形態では、開繊、分繊及び熱セットを行った後の繊維束をゴデットロールで裁断機へと案内していたが、開繊後の繊維束をゴデットロールで案内して分繊及び熱セットを行ってもよい。開繊後の繊維束をゴデットロールで案内して分繊を行う態様は、開繊後の繊維束を分繊した後にゴデットロールで案内する態様に比べて、分繊時に繊維束に毛羽立ちが生じてもロールへの巻き付きによる不具合が生じにくい点で有利である。また、分繊された繊維束同士がゴデットロールで案内される際に再度密着することを抑制しやすい。
【0045】
(強化繊維樹脂材料の製造装置)
具体的には、本発明の強化繊維樹脂材料の製造装置としては、例えば、
図3に例示した強化繊維樹脂材料の製造装置200(以下、単に「製造装置200」という。)であってもよい。
図3における
図1と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。製造装置200は、分繊部52及び熱セット部54の代わりに分繊部52A及び熱セット部54Aを備える以外は製造装置100と同じである。
【0046】
分繊部52Aは、回転刃18の前段に複数のゴデットロール19を備える以外は分繊部52と同じである。熱セット部54Aは、後段に複数のゴデットロール19を備えない以外は熱セット部54と同じである。製造装置200においては、ボビンB1から引き出した繊維束f1を開繊部50で開繊し、開繊後の繊維束f2を分繊部52Aにおいて複数のゴデットロール19で回転刃18へと案内して分繊を行った後、分繊後の繊維束f3を熱セット部54Aで熱セットして裁断機13へと供給するようになっている。このように、製造装置200の態様は、複数のゴデットロール19の位置が、加熱手段56と裁断機13の間から開繊部50と回転刃18の間に変わった以外は、製造装置100の態様と同じである。
【0047】
本実施形態の製造装置200においても、開繊及び分繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットする熱セット部54Aが備えられている。熱セット部54Aによって開繊及び分繊後の繊維束が扁平な状態で熱セットされることにより、熱セットを行わない場合に比べて、前記繊維束を裁断してシート状繊維束群を形成した際に各繊維束間にできる隙間がより小さくなる。これにより、樹脂を含浸して得られる繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が形成されることが抑制されるため、充分な強度を有する繊維強化樹脂材料が得られる。
【0048】
(繊維強化樹脂材料の製造方法)
製造装置200を用いる繊維強化樹脂材料の製造方法は、製造装置100を用いる繊維強化樹脂材料の製造方法と同様に、開繊工程、分繊工程、熱セット工程、散布工程及び貼合含浸工程を有する。
【0049】
<開繊工程>
開繊工程は、第1実施形態と同様に行える。
【0050】
<分繊工程>
分繊部52Aにおいて、開繊後の繊維束f2を複数のゴデットロール19により複数の回転刃18へと案内し、複数の回転刃18を回転させながら繊維束f2を通過させて複数の刃物18aを間欠的に突き刺し、繊維束f2を幅方向に分割して複数の繊維束f3とする。
【0051】
<熱セット工程>
熱セット部54Aにおいて、開繊及び分繊後の繊維束f3を複数のガイドロール55によりX方向に搬送しつつ、加熱手段56によって加熱し、扁平な状態で熱セットし、裁断機13へと供給する。
【0052】
<散布工程、貼合含浸工程>
散布工程及び貼合含浸工程は、第1実施形態と同様に行える。
【0053】
本実施形態の繊維強化樹脂材料の製造方法においても、開繊及び分繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットする。これにより、熱セットを行わない場合に比べて、前記繊維束を裁断してシート状繊維束群を形成した際に、繊維束の扁平性が維持されるとともに折り畳まれも少なく各繊維束間にできる隙間をより小さくすることができる。そのため、樹脂を含浸して得られる繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が形成されることが抑制されることで、充分な強度を有する繊維強化樹脂材料が得られる。
【0054】
[第3実施形態]
第1実施形態及び第2実施形態においては熱セット後の繊維束をそのまま裁断機へと供給していたが、本発明においては、熱セット後の繊維束を一旦回収するようにしてもよい。
なお、本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、前記した製造装置100や製造装置200を用いる方法には限定されない。例えば、製造装置100や製造装置200を用いる製造方法では開繊した繊維束をそのまま裁断機へと供給していたが、本発明においては、開繊した繊維束を裁断前に一旦回収してもよい。
【0055】
(繊維強化樹脂材料の製造装置)
具体的には、本発明の強化繊維樹脂材料の製造装置としては、例えば、
図4及び
図5に例示した強化繊維樹脂材料の製造装置300(以下、単に「製造装置300」という。)であってもよい。
図4及び
図5における
図1と同じ部分は同符号を付して説明を省略する。製造装置300は、第1製造装置1と第2製造装置2とを備えている。
【0056】
第1製造装置1は、開繊部50と、分繊部52と、熱セット部54と、回収部58とをこの順に備えている。回収部58は、分繊後の繊維束f3をボビンB2に巻き取ることができるようになっている。
【0057】
第2製造装置2は、第1のキャリアシート供給部11と、第1の搬送部20と、第1の塗工部12と、裁断機13と、第2のキャリアシート供給部14と、第2の搬送部28と、第2の塗工部15と、含浸部16と、を備えている。第2製造装置2では、裁断機13の前段に、ボビンB2に巻き取って回収した回収物から引き出した繊維束f3を裁断機13へと案内するガイドロール38が設けられている。第2製造装置2においては、ボビンB2に巻き取って回収した回収物から引き出した繊維束f3を裁断機13へと供給し、所定の長さに連続的に裁断するようになっている。
【0058】
本実施形態の第2製造装置では、Y方向において複数の回収物を設置し、それら回収物から繊維束を引き出して裁断機へと案内するようにしてもよい。この場合には、それらの回収物を同一のロールに設置して引き出すよりも、それぞれ個別のロールに設置して引き出すようにすることが好ましい。この例では、Y方向において、繊維束f3を回収した複数のボビンB2を設置する場合、それらボビンB2を個別のロールにそれぞれ設置して繊維束f3を引き出すことが好ましい。これにより、それぞれの回収物における繊維束の長さが異なっていても、それぞれの個別ロールにおいて交換作業等が容易に行える。
【0059】
本実施形態の製造装置300においても、開繊及び分繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットする熱セット部54が備えられているため、シート状繊維束群を形成した際に、繊維束の扁平性が維持されるとともに折り畳まれも少なく、各繊維束間にできる隙間がより小さくなる。これにより、樹脂を含浸して得られる繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が形成されることが抑制されるため、充分な強度を有する繊維強化樹脂材料が得られる。
【0060】
また、熱セット後の繊維束を一旦回収する回収部と、前記回収部で回収した回収物から引き出した繊維束を裁断機へと供給するため、裁断機及び含浸部における工程速度が開繊部の工程速度と関係なく制御できる。そのため、繊維束の開繊操作が律速となって散布部及び含浸部の工程速度が低下することも抑制できる。
【0061】
(繊維強化樹脂材料の製造方法)
製造装置300を用いる繊維強化樹脂材料の製造方法は、下記の開繊工程、分繊工程、熱セット工程、回収工程、散布工程及び貼合含浸工程を有する。
開繊工程:長尺の繊維束f1を開繊して幅方向に拡幅し、扁平な状態の繊維束f2とする工程。
分繊工程:開繊後の繊維束f2を分繊により幅方向に分割し、繊維束f3とする工程。
熱セット工程:繊維束f3を加熱して扁平な状態で熱セットする工程。
回収工程:熱セット後の繊維束f3をボビンB2に巻き取って一旦回収し、回収物を得る工程。
散布工程:前記回収物から熱セット後の繊維束f3を引き出して連続的に裁断し、樹脂をシート状にした第1樹脂シートS1上に、裁断された複数の繊維束f4をシート状に散布してシート状繊維束群Fを形成する工程。
貼合含浸工程:前記シート状繊維束群F上に、樹脂をシート状にした第2樹脂シートS2を貼り合わせて加圧し、前記シート状繊維束群Fに樹脂を含浸させて繊維強化樹脂材料を得る。
【0062】
<開繊工程、分繊工程、熱セット工程及び回収工程>
開繊工程、分繊工程及び熱セット工程は、第1製造装置1において、第1実施形態と同様に行える。熱セット後の繊維束f3は複数のゴデットロール19によりボビンB2へと案内し、巻き取って回収する。
【0063】
<散布工程>
第2製造装置2において、ボビンB2から分繊後の長尺の繊維束f3を引き出し、裁断機13において所定の長さとなるように連続的に裁断する以外は、第1実施形態の散布工程と同様に行える。
【0064】
<貼合含浸工程>
貼合含浸工程は、第2製造装置2において、第1実施形態と同様に行える。
【0065】
本実施形態の繊維強化樹脂材料の製造方法においても、開繊及び分繊後の繊維束を加熱して扁平な状態で熱セットし、撓み量Hが15mm未満の繊維束を裁断することができ、シート状繊維束群を形成する際に散布される裁断後の繊維束が折り畳まれにくくなる。これにより、シート状繊維束群中の各繊維束間の隙間をより小さくすることができるため、繊維強化樹脂材料中に樹脂リッチな部分が形成されて強度が低下することを抑制できる。
【0066】
[他の実施形態]
本発明の繊維強化樹脂材料の製造装置は、第1〜第3実施形態には限定されない。例えば、本発明の繊維強化樹脂材料の製造装置は、
図6に示されるような分繊部を備えない製造装置であってもよい。また、本発明の繊維強化樹脂材料の製造装置が回収部を備える場合、巻き取りには限定されず、振り込みなどの公知の回収手段を利用する回収部を採用してもよい。
同様に、本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、分繊工程を有しない方法であってもよい。また、本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法が回収工程を有する場合、繊維束を回収する方法は、巻き取りには限定されず、振り込みなどの公知の回収方法を採用してもよい。開繊した繊維束を裁断前に一旦巻き取って回収する場合、開繊後の繊維束を回収し、回収物から引き出した繊維束を分繊してから裁断してもよい。
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、製造装置100、製造装置200、及び製造装置300以外の製造装置を用いる方法であってもよい。例えば、開繊後に分繊を行う場合、開繊と分繊の間に熱セットを行ってもよい。ただし、開繊後に分繊を行う場合は分繊後に熱セットを行うことが好ましい。
本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、開繊後に分繊を行わない方法であってもよい。
また、本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法においては、裁断する繊維束の撓み量Hが熱セットを行わなくても15mm未満である場合には、熱セットを行わなくてもよい。
さらに、本発明の繊維強化樹脂材料の製造方法は、裁断する繊維束の撓み量Hが15mm未満であれば、開繊、分繊及び熱セットをいずれも行わない方法であってもよい。例えば、
図6に例示した繊維強化樹脂材料の製造装置500(以下、「製造装置500」という。)を用いる方法であってもよい。
【0067】
製造装置500は、開繊部50、分繊部52及び熱セット部54の代わりに、繊維束供給部60を備えている以外は、製造装置100と同じである。繊維束供給部60は、長尺の繊維束f’を複数のボビン61から引き出しながら、複数のガイドロール62を介して裁断機13に向けて供給するようになっている。
【0068】
製造装置500を用いる製造方法においても、繊維束f’の撓み量Hが15mm未満であれば、シート状繊維束群を形成する際に散布される裁断後の繊維束f4が折り畳まれにくくなる。そのため、得られる繊維強化樹脂材料には樹脂リッチな部分が形成されにくく、充分な強度が得られる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[原料]
本実施例に使用した原料を以下に示す。
(繊維束)
α−1:炭素繊維束(商品名「TR 50S15L−KL」、引張強度:4,900MPa、フィラメント数:15,000本、幅:7.5mm、厚み:0.1mm、三菱レイヨン社製)。
α−2:炭素繊維束(商品名「TRW40 50L−KN」、引張強度:4,120MPa、フィラメント数:50,000本、幅:12.5mm、厚み:0.2mm、三菱レイヨン社製)。
【0070】
(ペースト)
P−1:樹脂であるエポキシアクリレート樹脂(製品名:ネオポール8051、日本ユピカ社製)100質量部に対して、硬化剤として、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンの75%溶液(製品名パーヘキサC−75(EB)、日本油脂社製)0.5質量部と、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートの74%溶液(製品名:カヤカルボンBIC−75、化薬アクゾ社製)0.5質量部とを添加し、内部離型剤として、リン酸エステル系誘導体組成物(製品名:MOLD WIZ INT−EQ−6、アクセルプラスチックリサーチラトリー社製)0.35質量部を添加し、増粘剤として、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(製品名:コスモネートLL、三井化学社製)15.5質量部を添加し、安定剤として、1,4−ベンゾキノン0.02質量部配合された樹脂組成物。
【0071】
[撓み試験]
各例において、製造装置100における裁断機13の直前の繊維束から長さ150mmの試験片を切り出し、前記試験片における長さ方向の第1末端から100mmの位置から第2末端までの部分を平面上に設置した。前記試験片における第1末端から100mmの部分を自由状態として、その状態における第1末端の下端と平面との距離を撓み量H(mm)として測定した。
【0072】
[実施例1]
図1に例示した製造装置100を用いて繊維強化樹脂材料を製造した。
繊維束として繊維束α−1、ペーストPとしてペーストP−1を用いた。開繊は、繊維束の幅が7.5mm、厚みが0.1mmとなるように行った。熱セット条件は、加熱温度を170℃、加熱時間を6秒とした。熱セット後で裁断される前の繊維束から試験片を切り出し、撓み試験を実施したところ、撓み量Hは8.1mmであった。
【0073】
[実施例2]
開繊条件を調節し、裁断する繊維束の厚み及び撓み量Hを表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂材料を製造した。
【0074】
[実施例3、4]
繊維束α−1の代わりに繊維束α−2を使用し、さらに開繊条件を調節し、裁断する繊維束の厚み及び撓み量Hを表1に示すとおりにした以外は、実施例1と同様にして繊維強化樹脂材料を製造した。
【0075】
[比較例1]
比較例1では、繊維束として繊維束α−1として熱セット温度を25℃にする以外は実施例2と同様の開繊条件を調整して繊維強化樹脂材料を製造した。
【0076】
[比較例2]
比較例2では、繊維束として繊維束α−2として熱セット温度を25℃にする以外は実施例4と同様の開繊条件を調整して繊維強化樹脂材料を製造した。
【0077】
各例で使用した繊維束の種類、熱セットの加熱温度、裁断する繊維束の厚み及び撓み量Hの結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、裁断する繊維束の撓み量Hが15mm未満である実施例1〜4の繊維強化樹脂材料は、撓み量Hが15mm以上である比較例1〜2の繊維強化樹脂材料に比べて、強度が高い繊維強化樹脂材料が得られる。