特許第6410092号(P6410092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6410092接着シート、物品ならびに物品の製造方法
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  • 特許6410092-接着シート、物品ならびに物品の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6410092
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】接着シート、物品ならびに物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20180101AFI20181015BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20181015BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20181015BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J175/14
   C09J175/04
   B32B27/40
【請求項の数】9
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-203966(P2014-203966)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-74750(P2016-74750A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100159293
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 真
(72)【発明者】
【氏名】古川 智
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】綱島 まり子
(72)【発明者】
【氏名】岩窪 昌幸
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−121978(JP,A)
【文献】 特開2011−194813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a40)が1.0×10Pa以上であり、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a70)が1.0×10Pa未満である活性エネルギー線硬化型熱可塑性ポリウレタン層(A)の少なくとも一方の面に、直接または他の層を介して、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’b40)が1.0×10Pa以上であり、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’b70)が1.0×10Pa以上であるポリウレタン層(B)を有することを特徴とする接着シート。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリウレタン層(A)が、重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(a1)を含有する層である請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(a1)が、ポリカーボネートポリオールを含むポリオール(a1−1)とポリイソシアネート(a1−2)とを反応させて得られるイソシアネート基または水酸基を有するポリウレタン(a1’)、及び、前記水酸基またはイソシアネート基と反応しうる官能基を有する(メタ)アクリル単量体を反応させて得られたものである請求項2に記載の接着シート。
【請求項4】
前記ポリウレタン層(B)が、重合性不飽和二重結合を有するポリウレタンを含有する組成物をラジカル重合させることによって形成された硬化ポリウレタン層である請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリウレタン層(A)の厚さが5μm〜150μmの範囲であり、かつ、前記ポリウレタン層(B)の厚さが5μm〜150μmの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着シートによって、段差部を有する被着体(c1)、及び、その他の被着体(c2)が貼り合わされた構成を有することを特徴とする物品。
【請求項7】
前記被着体(c1)が段差部を有する板状剛体であり、前記被着体(c2)が樹脂フィルムであって、前記被着体(c1)の段差部を有する面に、前記接着シートを構成するポリウレタン層(B)が貼付されたものである請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記被着体(c1)が段差部を有する板状剛体であり、前記被着体(c2)が板状剛体であって、前記被着体(c1)の段差部を有する面に、前記接着シートを構成する熱可塑性ポリウレタン層(A)が貼付されたものである請求項6に記載の物品。
【請求項9】
前記段差部を有する被着体(c1)が、透明部材の一部に加飾層が設けられた部材である請求項6に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用途をはじめとする様々な用途で使用可能な接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子手帳や携帯電話等の小型電子端末に設けられる画像表示装置としては、一般に、画像表示モジュールの上部または下部に、前記画像表示モジュールを保護すること等を目的として透明な画像表示パネルが積層されたものが知られている。
【0003】
前記画像表示パネルには、通常、意匠性の付与や遮光性の付与を目的として加飾層が設けられている場合が多い。
【0004】
しかし、前記加飾層が設けられた箇所には、画像表示パネルの表面に対してわずかな段差が形成されるため、前記画像表示パネルを、接着シート等を用いて前記画像表示モジュールに固定した場合に、前記接着シートがその段差部に追従することができず、前記接着シートと前記段差部との界面に気泡が含まれてしまう場合があった。
【0005】
前記段差部に対して追従可能で、前記界面に気泡を含みにくい接着シートとしては、例えばアルコキシ(メタ)アクリレートと架橋性官能基を有するモノマーとを特定量含むモノマーを共重合させて得られる酸性基を実質的に有しない特定の重量平均分子量を有する主アクリル系ポリマーと、水素結合性官能基を有し、酸性基を実質的に有しない低分子量(メタ)アクリル系ポリマーと、イソシアネート架橋剤とを特定割合で含有する粘着剤を用いて形成された厚さ10〜1000μmの粘着剤層を有する粘着シートが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、前記小型電子端末等のデザインの多様化に伴って、前記加飾層が厚膜化する傾向にあるなかで、前記接着シートでは、前記厚膜の加飾層によって形成される段差部に対して十分に追従できず、前記段差部と接着シートとの界面に気泡を含んでしまう場合があった。また、被着体の一方が柔軟な光学フィルム等である場合に、前記加飾層等の段差部に起因した接着シートの歪みが、被着体である光学フィルム等の歪みを引き起こし、その結果、表示される画像等の歪み等を引き起こす場合があった。
【0007】
段差追従性に優れた接着シートとしては、一般に、比較的柔軟な接着剤層を有するシートを使用することが好適と考えられている。
【0008】
しかし、単に柔軟性に優れた接着シートでは、依然として、ごく微細な気泡が前記界面や接着剤層中に残存してしまう場合があった。
【0009】
また、柔軟な接着シートは、それを離型紙等を介してロール等に巻き取った状態で保管等した場合、前記粘着剤層の一部がロールの端部等から押し出されてしまうため、前記巻取りを解く際の取り扱いが簡便でない場合があった。また、前記粘着剤層の一部がロール等の端部等から押し出された接着シートは、前記段差部に対する追従性の点で十分でなく、その界面や接着剤層中に気泡が残存してしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−001769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、段差部を有する被着体の表面に貼付した場合であっても、前記段差部と接着剤層との界面、及び、前記接着剤層中に微小な気泡が残存することがなく、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても接着剤成分がロールの端部から押し出されることを防止可能な接着シートを提供することである。
また、本発明が解決しようとする課題は、例えば被着体が柔軟なフィルム等であっても、前記段差部に起因した被着体の歪みを引き起こさないレベルの追従性を備えた接着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記特定の貯蔵弾性率を有する熱可塑性ポリウレタン層(A)と、前記特定の貯蔵弾性率を有するポリウレタン層(B)とが積層された接着シートを使用することによって、前記課題を解決できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a40)が1.0×10Pa以上であり、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a70)が1.0×10Pa未満である活性エネルギー線硬化型熱可塑性ポリウレタン層(A)の少なくとも一方の面に、直接または他の層を介して、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’b40)が1.0×10Pa以上であり、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’b70)が1.0×10Pa以上であるポリウレタン層(B)を有することを特徴とする接着シートに関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の接着シートは、段差部を有する被着体の表面に貼付した場合であっても、前記段差部と接着剤層との界面、及び、前記接着剤層中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても接着剤成分がロールの端部から押し出されることを防止可能なことから、例えば液晶表示装置、タッチパネルモジュール、有機EL表示装置等の製造場面で好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の接着シートの実施態様の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の接着シートは、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a40)が1.0×10Pa以上であり、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a70)が1.0×10Pa未満である活性エネルギー線硬化型熱可塑性ポリウレタン層(A)の少なくとも一方の面に、直接または他の層を介して、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’b40)が1.0×10Pa以上であり、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’b70)が1.0×10Pa以上であるポリウレタン層(B)を有することを特徴とする。前記熱可塑性ポリウレタン層(A)と前記ポリウレタン層(B)とは、接着剤層を構成するものである。
【0017】
前記接着シートであれば、段差部を有する被着体の表面に貼付した場合であっても、前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることを防止することができる。
また、本発明の接着シートは、活性エネルギー線硬化型熱可塑性ポリウレタン層(A)とポリウレタン層(B)との屈折率の差に由来すると考えられる線状痕の発生を防止することができる。なお、前記線状痕は、段差部を有する被着体(c1)と接着シートとを貼り合わせた際に、前記段差部と接着シートとの界面付近に現れる線状の薄白色の痕を指す。前記線状痕は、例えば接着シートを画像表示装置等の製造場面で使用した場合に、その外観不良の原因となりうるものである。
【0018】
本発明の接着シートとしては、例えば前記熱可塑ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)が順に積層されたものが挙げられる。前記熱可塑ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)は、それぞれ単一の層であってもよく、同一または異なる2以上の層が積層したものであってもよい。
また、本発明の接着シートとしては、例えば前記ポリウレタン層(B)/熱可塑ポリウレタン層(A)/ポリウレタン層(B)の順に積層されたものを使用することもできる。
【0019】
また、本発明の接着シートとしては、前記ポリウレタン層(B)の表面に、予め、後述する段差部を有する被着体(C)が貼付されていてもよい。
【0020】
はじめに、本発明の接着シートを構成する熱可塑ポリウレタン層(A)について説明する。
【0021】
前記熱可塑ポリウレタン層(A)としては、段差部を有する被着体(C)の表面に前記接着シートを貼付した場合に、前記段差部とポリウレタン層(B)との界面、及び、前記ポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることを防止可能な接着シートを得るうえで、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a40)が1.0×10Pa以上であり、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a70)が1.0×10Pa未満であるものを使用する。
【0022】
前記熱可塑ポリウレタン層(A)としては、前記貯蔵弾性率(G’a40)が1.0×10Pa〜1.0×10の範囲であり、かつ、貯蔵弾性率(G’a70)が1.0×10Pa〜1.0×10Pa未満の範囲であるものを使用することが好ましく、前記貯蔵弾性率(G’a40)が1.0×10Pa〜1.0×10の範囲であり、かつ、貯蔵弾性率(G’a70)が1.0×10Pa〜1.0×10Pa未満の範囲であるものを使用することが、前記段差部とポリウレタン(B)との界面、及び、前記ポリウレタン(B)中に微小な気泡が残存することを抑制でき、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることを防止できるためより好ましい。
【0023】
なお、上記40℃における貯蔵弾性率(G’a40)及び70℃における貯蔵弾性率(G’a70)は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用い、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、温度40℃または70℃、及び、周波数1Hzでの貯蔵弾性率と損失弾性率とを測定することによって得ることができる。なお、上記測定で使用する試験片としては、前記熱可塑ポリウレタン層(A)を厚さ1mm及び直径8mmの大きさからなる円状に裁断したものを使用する。
【0024】
前記貯蔵弾性率(G’a40)及び前記貯蔵弾性率(G’a70)は、前記熱可塑ポリウレタン層(A)を構成する成分として、例えばポリウレタン(a1)を含有するものを使用することによって、所定の範囲内に適宜調整することができる。具体的には、前記貯蔵弾性率は、例えば前記ポリウレタン(a1)を構成するポリオール(a1−1)の組成や数平均分子量等を適宜選択することによって、所定の範囲に調整しやすい。
また、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)は、活性エネルギー線が照射される前であれば良好な熱可塑性を有し、前記活性エネルギー線が照射された後には硬化し、硬化ポリウレタン層を形成するものである。
【0025】
前記硬化ポリウレタン層としては、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a’40)が1.0×10Pa以上で、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a’70)が1.0×10Pa以上である硬化ポリウレタン層(A’)であることが、後述する被着体(C)の表面に貼付された接着シートの表面の硬度を損なうことなく、前記接着シートと前記被着体(C)との経時的な剥がれ等を引き起こさないレベルの接着性を付与するうえで好ましい。
【0026】
前記硬化ポリウレタン層(A’)の前記貯蔵弾性率(G’a’40)は、1.0×10Pa〜1.0×10Paで、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a’70)が1.0×10Pa〜1.0×10Paであることが好ましい。
【0027】
また、前記熱可塑ポリウレタン層(A)としては、例えば、重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(a1)を含有する層であることが、活性エネルギー線が照射される前の良好な熱可塑性と、前記活性エネルギー線が照射された際の硬化性とを両立するうえで好ましい。
前記熱可塑ポリウレタン層(A)は、例えば、離型ライナー等の表面に、活性エネルギー線硬化型の熱可塑性ポリウレタンを含有する接着剤組成物を塗工し乾燥等することによって形成することができる。
【0028】
前記接着剤組成物としては、例えば重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(a1)を含有する接着剤組成物を使用することができる。
【0029】
前記ポリウレタン(a1)としては、例えば活性エネルギー線を照射されることによって、前記重合性不飽和二重結合に起因したラジカル重合を進行させ硬化物(硬化ポリウレタン層(A’))を形成できるものを使用することが好ましい。
【0030】
前記ポリウレタン(a1)としては、例えばポリオール(a1−1)とポリイソシアネート(a1−2)とを反応させることによって得られたイソシアネート基または水酸基を有するポリウレタン(a1’)と、前記水酸基またはイソシアネート基と反応しうる官能基を有する(メタ)アクリル単量体とを反応させることによって得られるものを使用することができる。
【0031】
前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリオール(a1−1)としては、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等を使用することができる。なかでも、前記ポリオール(a1−1)としては、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールを単独または2種以上組み合わせ使用することが好ましく、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオールを組み合わせ使用することが、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と硬化ポリウレタン層(B)との界面、及び、前記硬化ポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った際の熱可塑ポリウレタン層(A)やポリウレタン層(B)の一部のはみだしをより一層防止できるため、好ましい。
【0032】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステル及び/又はホスゲンと、後述する低分子ポリオールとを反応させて得られるものを使用することができる。
【0033】
前記炭酸エステルとしては、例えばメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等を使用することができる。
【0034】
また、前記炭酸エステルやホスゲンと反応しうる低分子ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール等を使用することができる。
【0035】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、脂肪族ポリカーボネートポリオールまたは脂環式ポリカーボネートポリオールを使用することが好ましい。
【0036】
脂肪族ポリカーボネートポリオールとしては、前記接着シートに、例えば光学用途に使用可能なレベルの透明性を付与するうえで、ジアルキルカーボネートと、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールとを反応させて得られるものを使用することが好ましい。
【0037】
脂環式ポリカーボネートポリオールとしては、前記接着シートに、例えば光学用途に使用可能なレベルの透明性を付与し、かつ優れた初期凝集力を付与するうえで、例えばジアルキルカーボネートと、シクロヘキサンジメタノール及びその誘導体からなる群より選ばれる1種以上を含むポリオールとを反応させて得られるものを使用することが好ましい。
【0038】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、前記所定範囲内の貯蔵弾性率を備えた接着シートを形成し、その結果、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(c1)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することを抑制し、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った際の熱可塑ポリウレタン層(A)やポリウレタン層(B)の一部のはみだしをより一層防止できる接着シートを得るうえで、500〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、500〜3000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。
【0039】
前記ポリカーボネートポリオールは、前記ポリオール(a1−1)の全量に対して30質量%〜90質量%の範囲で使用することが好ましく、40質量%〜70質量%の範囲で使用することが、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することを抑制し、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った際の熱可塑ポリウレタン層(A)やポリウレタン層(B)の一部のはみだしをより一層防止できるため好ましい。
【0040】
また、前記ポリオール(a1−1)としては、ポリエーテルポリオールを使用することもできる。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0041】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0042】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0043】
前記ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族ポリエーテルポリオールや脂環式構造を有するポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0044】
前記ポリエーテルポリオールとしては、特に、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフランを開環重合して得られるポリテトラメチレングリコール、テトラヒドロフランとアルキル置換テトラヒドロフランとを反応させて得られるポリテトラメチレングリコール誘導体、ネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランとを共重合させたポリテトラメチレングリコール誘導体等を使用することができる。なかでも、前記ポリエーテルポリオールとしては、前記接着シートを光学用途に使用可能なレベルの優れた透明性を損なうことなく、良好な柔軟性、耐久性(特に耐加水分解性)等を付与するうえで、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリテトラメチレングリコール誘導体(PTXG)を使用することが好ましい。
【0045】
また、前記ポリオール(a1−1)としては、前記したもののほかに、その他のポリオールを使用することができる。前記その他のポリオールとしては、例えばアクリルポリオール等が挙げられる。
【0046】
前記ポリオール(a1−1)としては、500〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、500〜3000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが、保型性、塗布作業性、初期凝集力等に優れた接着シートを得るうえでより好ましい。
【0047】
前記ポリエーテルポリオールは、前記ポリオール(a1−1)の全量に対して10質量%〜90質量%の範囲で使用することが好ましく、20質量%〜70質量%の範囲で使用することが、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部とポリウレタン層(B)との界面、及び、前記ポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することを抑制し、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った際の熱可塑ポリウレタン層(A)やポリウレタン層(B)の一部のはみだしをより一層防止できるため好ましい。
【0048】
また、前記(a1−1)に使用可能な前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるもの、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0049】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、概ね分子量が50〜500程度である、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族アルキレングリコールや、シクロヘキサンジメタノール等を使用することができる。
【0050】
また、前記ポリエステルポリオールの製造に使用可能な前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、及びそれらの無水物またはエステル化物等を使用することができる。
【0051】
前記ポリエステルポリオールとしては、前記所定範囲内の貯蔵弾性率を備えた接着シートを得、その結果、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることを防止可能な接着シートを得るうえで、脂肪族ポリエステルポリオールを使用することが好ましく、直鎖脂肪族ポリエステルポリオールを使用することがより好ましい。前記直鎖脂肪族ポリエステルポリオールは、側鎖にアルキル基を有さないポリエステルポリオールを指す。
【0052】
前記ポリエステルポリオールとしては、前記脂肪族アルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸とを反応させて得られるものが挙げられ、例えばポリプロピレングリコールとアジピン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールを使用することが好ましい。
【0053】
前記ポリエステルポリオールとしては、前記所定範囲内の貯蔵弾性率を備えた接着シートを形成でき、その結果、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることをより一層防止可能な接着シートを得るうえで、1000〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0054】
前記ポリエステルポリオールは、前記ポリオール(a1−1)の全量に対して10質量%〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、20質量%〜40質量%の範囲で使用することが、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることをより一層防止できるため、好ましい。
【0055】
特に、前記ポリエステルポリオールとして、例えば、1,2−エタンジオールまたは1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールと、アジピン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用する場合には、1100〜2900の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用する場合には、1100〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが、良好な透明性を保持し、かつ、段差部を有する被着体の表面に貼付した場合であっても、前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることをより一層防止可能な接着シートを得るうえで特に好ましい。
また、前記ポリエステルポリオールとして、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用する場合には、1000〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが、前記段差部と粘着剤層との界面、及び、前記粘着剤層中に微小な気泡が残存することなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分がロールの端部から押し出されることをより一層防止可能な接着シートを得るうえで好ましい。
【0056】
前記ポリカーボネートポリオール及び前記ポリエステルポリオールは、前記ポリオール(a1−1)100質量部に対して、合計20質量部以上を含有するものを使用することが好ましく、50質量部以上を含有するものを使用することが、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(c1)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることを防止できるため、好ましい。
【0057】
前記ポリカーボネートポリオールと前記ポリエステルポリオールとを組み合わせ使用する際には、[ポリカーボネートポリオール/ポリエステルポリオール](質量比)は、1.5〜7.0の範囲であることが、前記所定範囲内の貯蔵弾性率を備えた接着シートを形成でき、その結果、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることを防止できるため、好ましい。なお、前記数平均分子量は、下記条件にて測定した値である。
【0058】
〔数平均分子量の測定方法〕
本発明に記載の数平均分子量の測定は、ポリスチレン換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)により、下記条件にて測定した値である。
【0059】
樹脂試料溶液;0.4質量%テトラヒドロフラン(THF)溶液
測定装置型番;HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム ;TSKgel(東ソー株式会社製)
溶離液 ;テトラヒドロフラン(THF)
【0060】
前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリイソシアネート(a1−2)としては、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等を使用することができ、脂環式ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0061】
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0062】
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、前記したなかでも、前記ポリオール(a1−1)との良好な反応性を有し、かつ、耐熱性や透明性(光線透過性)等に優れた接着シートを得るうえで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサンを使用することが好ましい。
【0063】
前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)とを反応させイソシアネート基を有するポリウレタン(a1’)を製造する方法としては、例えば反応容器に仕込んだ前記ポリオール(a1−1)を、常圧または減圧条件下で加熱することにより水分を除去した後、前記ポリイソシアネート(a1−2)を一括または分割して供給し反応させる方法が挙げられる。
【0064】
前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)との反応条件(温度、時間等)は、安全、品質、コストなど諸条件を考慮して適宜設定すればよく、特に限定しないが、例えば反応温度は、好ましくは60℃〜120℃の範囲である。
【0065】
前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)とを反応させる際には、必要に応じて、触媒として、例えば、三級アミン触媒や有機金属系触媒等を使用することができる。
【0066】
また、前記反応は、無溶剤の環境下で行っても、有機溶剤存在下で行ってもよい。
【0067】
前記有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。前記有機溶剤は、前記ポリウレタン(a1’)の製造途中または、前記ポリウレタン(a1’)を製造した後、減圧加熱、常圧乾燥等の適切な方法により除去してもよい。
【0068】
前記方法で得られたイソシアネート基または水酸基を有するポリウレタン(a1’)としては、40℃以上の軟化温度を有するものを使用することが好ましく、50℃以上の軟化温度を有するものを使用することがより好ましい。なお、前記軟化温度とは、JIS K 2207に準拠して測定した値を指す。前記軟化温度の上限は、100℃以下であることが好適である。
【0069】
本発明で使用するポリウレタン(a1)は、前記方法で得られたイソシアネート基または水酸基を有するポリウレタン(a1’)、及び、前記水酸基またはイソシアネート基と反応しうる官能基を有する(メタ)アクリル単量体を反応させることによって製造することができる。具体的には、前記ポリウレタン(a1)は、前記方法で得たポリウレタン(a1’)またはその有機溶剤溶液と、前記(メタ)アクリル単量体とを混合し反応させることによって製造することができる。
【0070】
前記(メタ)アクリル単量体としては、イソシアネート基と反応しうる官能基として、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等を有する(メタ)アクリル単量体を使用することができ、水酸基、アミノ基を有する(メタ)アクリル単量体を使用することが好ましい。
【0071】
前記(メタ)アクリル単量体としては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物、グリシドールジ(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方または両方を指す。
【0072】
なかでも、前記(メタ)アクリル単量体としては、例えば赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線、太陽光等の活性エネルギー線を照射することによって速硬化性し、かつ、最終的に得られる接着シートの機械的強度をより一層向上するうえで2−ヒドロキシエチルアクリレートを使用することが好ましい。
また、前記ポリウレタン(a1)が有していてもよい水酸基と反応しうる官能基としては、イソシアネート基が挙げられる。
前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等を使用することができる。
【0073】
前記ポリウレタン(a1)は、光照射や加熱によってラジカル重合を進行させる(メタ)アクリロイル基を有するものである。前記ポリウレタン(a1)の(メタ)アクリロイル基当量としては、5,000〜100,000g/eq.の範囲であることが好ましく、10,000〜80,000g/eq.の範囲がより好ましい。なお、前記(メタ)アクリロイル基当量は、前記ポリオール(a1−1)とポリイソシアネート(a1−2)と(メタ)アクリル化合物との合計質量を、前記ポリウレタン(a1)中に存在する(メタ)アクリル基の当量で除した値を示す。これにより、適度な柔軟性と、速硬化性、基材への塗布後の保型性、機械的強度、耐久性(特に耐加水分解性)、基材への密着性(特に金属に対する密着性)などに優れた接着シートを得ることができる。
【0074】
前記ポリウレタン(a1’)と前記(メタ)アクリル単量体とを反応させる際には、必要に応じて、ウレタン化触媒を使用することができる。前記ウレタン化触媒は、前記ウレタン化反応の任意の段階で、適宜加えることができる。前記ウレタン化反応は、イソシアネート基含有量(%)が実質的に一定になるまで行うことが好ましい。
【0075】
前記ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の含窒素化合物、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸第一錫等の有機金属塩、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等を使用することができる。
【0076】
前記(メタ)アクリル単量体として水酸基を有する(メタ)アクリル単量体を使用する場合、前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)と前記(メタ)アクリル単量体との反応は、前記ポリオール(a1−1)が有する水酸基及び前記(メタ)アクリル単量体が有する水酸基の合計量と、前記ポリイソシアネート(a1−2)が有するイソシアネート基との当量割合[イソシアネート基/水酸基の合計量]=0.75〜1の範囲で行うことが、得られるポリウレタン(a1)の分子量を制御する上で好ましく、0.79〜0.995の範囲であることがより好ましい。
【0077】
また、前記(メタ)アクリル単量体としてイソシアネートを有する(メタ)アクリル単量体を使用する場合、前記ポリオール(a1−1)が有する水酸基と、前記ポリイソシアネート(a1−2)及び前記(メタ)アクリル単量体が有するイソシアネート基の合計量との当量割合[イソシアネート基/水酸基の合計量]=0.75〜1の範囲で行うことが、得られるポリウレタン(a1)の分子量を制御する上で好ましく、0.79〜0.995の範囲であることがより好ましい。
【0078】
前記方法で得られた重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(a1)としては、前記所定範囲内の貯蔵弾性率を備えた接着シートを形成し、その結果、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることをより一層防止できる接着シートを得るうえで、5000〜100000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、10000〜60000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0079】
前記方法で得られた重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(a1)を含有する接着剤組成物は、前記活性エネルギー線が照射されることによって(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和二重結合のラジカル重合が進行し硬化する。前記ポリウレタン(a1)として、イソシアネート基を有するものを使用する場合、前記イソシアネート基は、前記ラジカル重合とは別に、
水(湿気)による湿気硬化反応する場合がある。
【0080】
前記ポリウレタン(a1)を含有する接着剤組成物としては、ラジカル重合開始剤を含有するものを使用することができる。
【0081】
前記ラジカル重合開始剤としては、公知のものが使用でき、例えば、光重合開始剤、過酸化物などが挙げられ、良好な生産性等を維持するうえで、光重合開始剤が好ましい。
【0082】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン等のアルキルフェノン光重合開始剤、カンファーキノン光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド光重合開始剤、チタノセン光重合開始剤等の従来公知のものを使用できる。
【0083】
前記光重合開始剤の市販品としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンや、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(例えば、BASF社製のダロキュア1173)、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(例えば、BASF社製のイルガキュア184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(例えば、BASF社製のイルガキュア2959)、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン(例えば、BASF社製のイルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート(例えば、ストウファー社製のバイキュア55)、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン、クオンタキュアー(インターナショナル・バイオ−シンセティクス社製)、カイアキュアーMBP(日本化薬株式会社製)、エサキュアーBO(フラテリ・ランベルティ社製)、トリゴナル14(アクゾ社製)、イルガキュア(BASF社製)、ダロキュアー(同社製)、スピードキュアー(同社製)、ダロキュアー1173とFi−4との混合物(イーストマン社製)等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0084】
前記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって速やかに硬化させることのできるイルガキュア184、イルガキュア651等を使用することが好ましい。
【0085】
また、前記ラジカル重合開始剤に使用可能な過酸化物としては、例えばケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、パーオキシエステル等の従来公知の過酸化物を使用できる。これらは単独使用でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、80〜120℃の高温条件下での硬化では、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートが好ましく、特にパーオキシジカーボネートが好ましい。前記パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、市販品では、パーロイルTCP(日本油脂株式会社製)等が挙げられる。なかでも、過酸化物としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって速やかに硬化させることのできるパーロイルTCPを使用することが好ましい。
【0086】
前記ラジカル重合開始剤は、前記ポリウレタン(a1)100質量部に対して0.1質量部〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.2質量部〜15質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0087】
また、前記ポリウレタン(a1)を含有する接着剤組成物としては、必要に応じて溶媒を含有するものを使用することができる。
【0088】
前記溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン、3−ペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤を、単独または2以上組み合わせ使用することができる。
【0089】
また、前記接着剤組成物としては、必要に応じて公知の多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものを使用することができる。
【0090】
なお、本発明でいう「多官能」とは、重合性不飽和二重結合を分子中に2個以上有することを指す。
【0091】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート、ソルビトール等の糖アルコールの(メタ)アクリレートエステル等の、重合性不飽和二重結合を2個〜4個有するもの等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0092】
前記多官能(メタ)アクリレート化合物の配合量は、前記ポリウレタン(a1)の100質量部に対して、好ましくは1質量部〜30質量部の範囲であり、より好ましくは5質量部〜20質量部の範囲である。
【0093】
前記接着剤組成物としては、上記ポリウレタン(a1)の他に、必要に応じて添加剤を含有するものを使用することができる。
【0094】
前記添加剤としては、シランカップリング剤、リン酸系添加剤、アクリレート系添加剤、粘着付与剤等を使用することができる。特にガラスとの反応性に富むシランカップリング剤を使用することが、ガラス等からなる被着体に対する接着性に優れた接着シートを得ることができるため好ましく、上記ポリウレタン(a1)と反応しうる活性エネルギー線硬化型シランカップリング剤を使用することがより好ましい。
【0095】
前記接着剤組成物は、前記シランカップリング剤、リン酸系添加剤、アクリレート系添加剤、粘着付与剤等を、前記ポリウレタン(a1)の全量に対して合計0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜5質量部の範囲がより好ましく、0.05〜1質量部の範囲で含有するものを使用することが、被着体に対する優れた密着性と、優れた透明性とを両立できるため好ましい。
【0096】
前記接着剤組成物としては、上記以外に、必要に応じて、光安定剤、老化防止剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填材、着色剤、界面活性剤等の添加剤を含有するものを使用することができる。
【0097】
次に、本発明の接着シートを構成するポリウレタン層(B)について説明する。
【0098】
前記ポリウレタン層(B)としては、段差部を有する被着体(C)の表面に貼付した場合であっても、前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることを防止するうえで、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’b40)が1.0×10Pa以上であり、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’b70)が1.0×10Pa以上であるものを使用する。
【0099】
前記ポリウレタン層(B)としては、前記貯蔵弾性率(G’b40)1.0×10Pa〜1.0×10の範囲であり、かつ、貯蔵弾性率(G’b70)が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲であるものを使用することが、前記被着体(c1)の段差部を有する面に貼付した場合であっても、密着性に優れ、前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分が、ロールの端部から押し出されることを防止可能な接着シートを得るうえで好ましい。
【0100】
なお、上記40℃における貯蔵弾性率(G’b40)及び70℃における貯蔵弾性率(G’b70)は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、温度40℃または70℃、及び、周波数1Hzでの貯蔵弾性率と損失弾性率とを測定することによって得ることができる。なお、上記測定で使用する試験片としては、前記ポリウレタン層(B)を厚さ1mm及び直径8mmの大きさからなる円状に裁断したものを使用する。
【0101】
前記ポリウレタン層(B)としては、前記所定の貯蔵弾性率を有するフィルムまたはシート状のものを使用することができる。具体的には、前記ポリウレタン層(B)としては、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)を形成可能なものとして例示した、重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(a1)等の活性エネルギー線硬化型熱可塑性ポリウレタンを含有する接着剤組成物を硬化させることによって得られたものを使用することができる。
【0102】
前記ポリウレタン層(B)としては、例えば活性エネルギー線硬化型の熱可塑性ポリウレタンを含有する接着剤組成物を、離型フィルム等の表面に塗布及び乾燥した後、活性エネルギー線を照射し、硬化させることによって形成された硬化ポリウレタン層を使用することが好ましい。
前記活性ネルギー線硬化型の熱可塑性ポリウレタンを含有する接着剤組成物としては、例えば前記活性ネルギー線硬化型の熱可塑性ポリウレタン層(A)を形成する際に使用可能なものとして例示したものと同様のものを使用することができる。前記ポリウレタン層(B)の形成に使用可能な活性エネルギー線硬化型熱可塑性ポリウレタンとしては、前記ポリウレタン層(A)の形成に使用するそれと、同一の組成のものを使用してもよく、また異なる組成のものを組み合わせ使用してもよいが、前記線状痕の発生を防止するうえで、実質的に同一の組成のポリウレタンを使用することが好ましい。
【0103】
本発明の接着シートは、例えば離型ライナーの片面に、前記接着剤組成物を塗布し、必要に応じて乾燥等することによって前記熱可塑ポリウレタン層(A)を形成する工程[1]、他の離型ライナーの片面に前記接着剤組成物を塗布及び乾燥した後、活性エネルギー線を照射することによって硬化したポリウレタン層(B)を形成する工程[2]、及び、前記熱可塑ポリウレタン層(A)と前記ポリウレタン層(B)とを積層する工程[3]等を経ることによって製造することができる。
前記方法で得られた接着シートは、熱可塑性で、実質的に未硬化であるポリウレタン層(A)と、活性エネルギー線を照射されたことでラジカル重合したポリウレタン層(B)との積層体を構成する。
【0104】
離型ライナーの表面に前記接着剤組成物を塗布する方法としては、例えばコンマコーターやリップコーターを用いて塗布する方法が挙げられる。前記乾燥は、例えば60℃〜90℃程度の温度に設定した乾燥機等を用いて行うことができる。
【0105】
前記方法で得られた本発明の接着シートとしては、10μm〜300μmの厚さのものを使用することが好ましく、25μm〜200μmの厚さのものを使用することがより好ましい。前記範囲の厚さを有する接着シートは、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分のはみだしを防止するうえで好ましい。
【0106】
また、本発明の接着シートは、前記したような薄型であっても、前記優れた効果を奏することができ、また、被着体に由来する表面硬度を維持できることから、例えば薄型化の求められる画像表示装置等を製造する際に好適に使用することができる。
【0107】
また、前記接着シートとしては、それを構成する前記熱可塑ポリウレタン層(A)の厚さが5μm〜150μmの範囲であるものを使用することが好ましく、10μm〜100μmの範囲であるものを使用することがより好ましく、20μm〜100μmの範囲であるものを使用することが、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持でき、前記被着体(C)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分のはみだしをより防止するうえでさらに好ましい。
【0108】
また、前記接着シートとしては、それを構成する前記ポリウレタン層(B)の厚さが5μm〜150μmの範囲であるものを使用することが好ましく、10μm〜100μmの範囲であるものを使用することがより好ましく、20μm〜100μmの範囲であるものを使用することが、前記被着体(c1)の段差部を有する表面に対してより一層優れた追従性を備えることで前記段差部と熱可塑性ポリウレタン層(A)またはポリウレタン層(B)との界面、及び、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存することがなく、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、かつ、ロール等に巻き取った場合であっても、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)を構成する成分の一部のはみだしをより一層防止するうえでさらに好ましい。
【0109】
前記接着シートとしては、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)の厚さと前記ポリウレタン層(B)の厚さとの割合[熱可塑性ポリウレタン層層(A)の厚さ/ポリウレタン層(B)の厚さ]が8/2〜2/8の範囲にあるものを使用することが好ましく、5.5/4.5〜4.5/5.5の厚さで使用することが、前記段差部に起因した被着体の歪みを防止し、活性エネルギー線硬化型熱可塑性ポリウレタン層(A)とポリウレタン層(B)との屈折率の差に由来すると考えられる線状痕の発生を防止できるため特に好ましい。
【0110】
本発明の接着シートとしては、前記画像表示装置等の製造に使用する場合には、波長380nm〜780nmの光の透過率が85%以上、ヘイズが2.0以下であるものを使用することが好ましく、波長380nm〜780nmの光の透過率が90%以上、ヘイズが1.5以下であるものを使用することが、ディスプレイを画像表示部の透明性を維持するうえで好ましい。
【0111】
また、本発明の接着シートとしては、前記画像表示装置等の製造に使用する場合には、温度60℃、相対湿度90%RHの環境下に500時間放置した後の、波長380nm〜780nmの光の透過率が85%以上、ヘイズが2.0以下であるものを使用することが好ましく、波長380nm〜780nmの光の透過率が90%以上、ヘイズが1.5以下であるものを使用することが、ディスプレイ等の画像表示部の良好な透明性を維持するうえで好ましい。
【0112】
次に、本発明の接着シートを貼付できる被着体について説明する。
【0113】
本発明の接着シートは、各種被着体の表面に貼付することができるが、特に、その表面に段差部を有する被着体(c1)の、段差部表面に対して好適に貼付し使用することができる。具体的には、本発明の接着シートは、2以上の段差部を有する被着体(c1)、前記被着体(c1)と段差部を有しないその他被着体(c2)等の接着に使用することができる。
【0114】
前記被着体(c1)としては、例えば透明部材等の表面の一部に、加飾層等に起因した段差部を有する被着体が挙げられる。
【0115】
前記被着体(c1)を構成する透明部材としては、例えば、ガラス板等の板状剛体からなるもの、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、二酸化ケイ素等の比較的柔軟な樹脂フィルムを使用することができる。なかでも、前記透明部材としては、ガラス基材等の板状剛体を使用することが、高い透明性と表面硬度とを両立するうえで好ましい。
【0116】
前記被着体(c1)としては、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)や前記ポリウレタン層(B)との密着性をより一層向上させることを目的とし、サンドブラスト法や溶剤処理法等による表面凹凸化処理、または、コロナ放電処理法、クロム酸処理法、火炎処理法、熱風処理法、オゾン処理法、紫外線照射処理法等による表面酸化処理等が施されたものを使用することができる。
【0117】
前記被着体(c1)としては、具体的には意匠性や遮光性等を付与することを目的とした加飾層を備えた画像表示パネル等が挙げられる。
【0118】
前記被着体(c1)としては、38μm〜1000μmの厚さのものを使用することが好ましく、50μm〜700μmの厚さのものを使用することがより好ましく、100μm〜500μmの厚さのものを使用することが、画像表示装置をはじめとする物品の薄型化を図るうえでさらに好ましい。
【0119】
前記前記被着体(c1)としては、その表面の傷や打痕等の外観欠点を防ぐことを目的として、その片面または両面にハードコート層を有する、いわゆるハードコートフィルムを使用することが好ましい。
【0120】
前記ハードコートフィルムとしては、それを構成するハードコート層の表面の鉛筆硬度がH以上、好ましくは2H以上であるものを使用することができる。なお、前記ハードコート層の鉛筆硬度は、前記ハードコートフィルムの表面をJIS K 5600−5−4(1999)に準拠して測定した値を指す。
【0121】
また、前記被着体(c1)としては、透明導電膜が挙げられる。透明導電膜としては、フィルムまたはシートの少なくとも片面の表層に導電層を有するものを使用することができ、前記フィルムまたはシートの表層に導電物質が蒸着やコーティングにより設けられたものが挙げられる。なかでも、前記透明導電膜としては、導電物質が蒸着により形成された導電層を有する透明導電膜を使用することが好ましい。
【0122】
前記導電物質としては、例えば酸化インジウムスズ、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化ガリウム、酸化チタン等を使用することができ、透明性、導電性に優れる酸化インジウムスズを使用することが好ましい。
【0123】
前記透明部材の一部に設けられる加飾層は、一般的な印刷法により印刷することによって設けた層が挙げられる。前記印刷法としては、例えば、シルク印刷法、スクリーン印刷法、熱転写印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0124】
上記加飾層は、透明部材に各種の意匠性を付与するものであれば特に制限されず、例えば、画像表示パネルとして使用する際の画像表示部の周囲に視認される文字や図形、あるいは、画像表示部に額縁状に設けられる黒色の縁取り状の加飾層などが挙げられる。
【0125】
上記加飾層の厚さは、2μm〜100μmの範囲であることが好ましく、5μm〜75μmの範囲であることがより好ましく、10μm〜60μmの範囲であることが、加飾層の色抜けや印刷不良を抑制し、好適な意匠性を付与しやすく、前記画像表示装置等の物品の薄型化を図ることができる。
【0126】
前記透明部材の一部に加飾層が設けられた基材であるハードコートフィルムや、透明導電膜が形成されたタッチパネル部材等の画像表示パネルは、各種画像表示モジュールの表面に、本発明の接着シートを用いて貼付することができる。
【0127】
前記画像表示モジュールとしては、液晶ディスプレイモジュール、有機ELモジュール等を使用することができる。
また、前記その他の被着体(c2)としては、加飾層等の段差部を有しないこと以外は被着体(c1)と同様のものを使用することができる。前記被着体(c2)としては、具体的には、画像表示装置等を構成するタッチパネルやLCDモジュール等の部材が挙げられる。
本発明の接着シートを用い、段差部を有する被着体(c1)、及び、その他の被着体(c2)が貼り合わされた構成を有することを物品としては、例えば画像表示装置、タッチパネル装置等が挙げられる。
前記物品を製造する際、前記被着体(c1)として段差部を有する板状剛体を使用し、かつ、前記被着体(c2)として樹脂フィルム等の柔軟なフィルム状物をする場合には、前記接着シートを構成するポリウレタン層(B)が前記被着体(c1)の段差部を有する表面に貼付されることが、接着界面への気泡の混入を防止し、かつ前記段差部に起因した被着体の歪みを防止しするうえで好ましい。一方、前記被着体(c1)として段差部を有する板状剛体を使用し、かつ、前記被着体(c2)として板状剛体を使用する場合には、前記接着シートを構成する熱可塑性ポリウレタン層(A)が前記被着体(c1)の段差部を有する表面に貼付されることが、接着界面への気泡の混入などを防止するうえで好ましい。
前記物品は、例えば前記接着シートを構成する前記ポリウレタン層(B)と、段差部を有する被着体(c1)である板状剛体の表面とを圧着し、次に、前記熱可塑性ポリウレタン層(A)と、その他の被着体(c2)である樹脂フィルムの表面とを圧着し、次に、活性エネルギー線を照射し前記熱可塑性ポリウレタン層(A)を硬化させることによって、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a’40)が1.0×10Pa以上で、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a’70)が1.0×10Pa以上である硬化ポリウレタン層(A’)を形成することによって製造することができる。これにより、前記段差部とポリウレタン層(B)との界面、及び、前記ポリウレタン層(B)中に微小な気泡が残存せず、前記段差部に起因した被着体の歪みを効果的に防止することができる。
前記方法で得られる物品としては、具体的には、ガラスパネルとタッチパネルまたはLCDモジュールとが前記接着シートによって貼付された画像表示装置、タッチパネル装置等が挙げられる。
また、前記物品は、前記接着シートを構成する前記活性エネルギー線硬化型熱可塑性ポリウレタン層(A)と、段差部を有する被着体(c1)である板状剛体の表面とを圧着し、次に、前記ポリウレタン層(B)と、その他の被着体(c2)である板状剛体の表面とを圧着し、次に、活性エネルギー線を照射し前記熱可塑性ポリウレタン層(A)を硬化させることによって、温度40℃及び周波数1.0Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a’40)が1.0×10Pa以上で、かつ、温度70℃及び周波数1Hzで測定した貯蔵弾性率(G’a’70)が1.0×10Pa以上である硬化ポリウレタン層(A’)を形成することによって製造することができる。これにより、前記段差部と硬化ポリウレタン層(A’)との界面、及び、前記硬化ポリウレタン層(A’)中に微小な気泡が残存することをより効果的に防止することができる。
前記方法で得られる物品としては、具体的には、ガラスパネルとタッチパネルまたはLCDモジュールとが前記接着シートによって貼付された画像表示装置、タッチパネル装置等が挙げられる。
【0128】
前記接着方法としては、例えば前記被着体(c1)を含む2以上の被着体を、前記接着シートを介して積層し、活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。その際、前記被着体の一部が透明である場合には、前記被着体等の表面等から活性エネルギー線を照射することができる。
【0129】
前記活性エネルギー線は、前記接着シートを構成する熱可塑ポリウレタン層(A)を硬化させることによって硬化ポリウレタン層(A’)を形成するために使用する。
【0130】
前記活性エネルギー線としては、紫外線を用いることが好ましい。前記紫外線は、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。また、必要に応じて熱をエネルギー源として併用し、活性エネルギー線を照射した後、加熱してもよい。
【0131】
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。また、活性エネルギー線を閃光的に照射することのできるキセノン−フラッシュランプは、前記基材への熱の影響を最小限に抑えることができるため好ましい。
【0132】
上記活性エネルギー線の照射装置としては、前記したもののほかに、殺菌灯、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、走査型、カーテン型電子線加速器等を使用することができる。
【実施例】
【0133】
<接着剤組成物a>
反応容器に、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;2,000)を44.1質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートポリオール(数平均分子量900)を40.8質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2質量部、2,6−ジ−ターシャリーブチル−クレゾールを0.3質量部、p−メトキシフェノール0.05質量部を添加した。
【0134】
反応容器内の温度を40℃に調整した後、イソホロンジイソシアネート14.9質量部を前記反応容器に添加した。
【0135】
次に、前記反応容器にジオクチルスズジネオデカネート0.1質量部を添加し、1時間かけて80℃まで昇温させ、全てのイソシアネート基が消失していることを確認後、冷却することによって重量平均分子量35000(有効数字2桁に四捨五入。以下、同じ。)の重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−1)を得た。
【0136】
次に、攪拌機、還流冷却管及び温度計を備え、80℃に調整された反応容器に、前記重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−1)100質量部と、酢酸エチル67質量部とを供給し混合した。次に、前記混合物にイルガキュア 184(BASF株式会社製)0.3質量部を供給し攪拌することにより、接着剤組成物aを得た。
【0137】
<接着剤組成物b>
反応容器に、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;2,000)を50.7質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートポリオール(数平均分子量900)を33.8質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2質量部、2,6−ジ−ターシャリーブチル−クレゾールを0.3質量部、p−メトキシフェノール0.05質量部を添加した。
【0138】
反応容器内の温度を40℃に調整した後、イソホロンジイソシアネート14.7質量部を前記反応容器に添加した。
【0139】
次に、前記反応容器にジオクチルスズジネオデカネート0.1質量部を添加し、1時間かけて80℃まで昇温させ、全てのイソシアネート基が消失していることを確認後、冷却することによって重量平均分子量40000の重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−2)を得た。
【0140】
次に、攪拌機、還流冷却管及び温度計を備え、80℃に調整された反応容器に、前記重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−2)100質量部と、酢酸エチル67質量部とを供給し混合した。次に、前記混合物にイルガキュア 184(BASF株式会社製)0.3質量部を供給し攪拌することにより、接着剤組成物bを得た。
【0141】
<接着剤組成物c>
反応容器に、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;2,000)を46.4質量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを反応させて得られたポリカーボネートポリオール(数平均分子量900)を38.1質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.8質量部、2,6−ジ−ターシャリーブチル−クレゾールを0.3質量部、p−メトキシフェノール0.05質量部を添加した。
【0142】
反応容器内の温度を40℃に調整した後、イソホロンジイソシアネート14.7質量部を前記反応容器に添加した。
【0143】
次に、前記反応容器にジオクチルスズジネオデカネート0.1質量部を添加し、1時間かけて80℃まで昇温させ、全てのイソシアネート基が消失していることを確認後、冷却することによって重量平均分子量25000の重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−3)を得た。
【0144】
次に、攪拌機、還流冷却管及び温度計を備え、80℃に調整された反応容器に、前記重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−3)100質量部と、酢酸エチル67質量部とを供給し混合した。次に、前記混合物にイルガキュア 184(BASF株式会社製)0.3質量部を供給し攪拌することにより、接着剤組成物cを得た。
【0145】
<比較接着剤組成物d>
攪拌機を備えた500mLの反応容器に、数平均分子量が2,000のポリエステルポリオール((株)クラレ製 P−2010、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタンジオールのエステル化物)を138g、2−ヒドロキシエチルアクリレートを16.2g、希釈剤としてイソボルニルアクリレートを185g、触媒としてジブチルスズジラウレートを185mg、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを92.7mg仕込み、5容量%の酸素を含む窒素の雰囲気下、攪拌しながら液温が70℃になるまで加温した。
【0146】
前記混合液にイソホロンジイソシアネート31.1gを徐々に添加し、9時間反応させた。前記イソホロンジイソシアネートのイソシアネート基がすべて消費されたことを確認し、ウレタンアクリレートを得た。
【0147】
前記ウレタンアクリレート100質量部と、イルガキュア 819(チバスペシャリティ株式会社製)1質量部とを混合攪拌し、比較接着剤組成物dを得た。
【0148】
<比較接着剤組成物e>
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メトキシエチルアクリレート75質量部、n−ブチルアクリレート24質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1質量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.4部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量35万のアクリル共重合体を得、前記アクリル共重合体と酢酸エチルとを混合することによって不揮発分30質量%の比較接着剤組成物eを得た。
【0149】
(実施例1)
上記接着剤組成物a100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(以下「#38剥離フィルム」)上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#38剥離フィルムの表面に未硬化接着シートを作製した。
【0150】
次に、前記接着剤組成物a100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム(以下「#75剥離フィルム」)上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製し、活性エネルギー線を照射することにより硬化接着シートを作製した。
前記で得た硬化接着シートと前記未硬化接着シートとを貼り合わせることによって接着シートを作製した。
【0151】
(実施例2)
上記接着剤組成物b100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#38剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#38剥離フィルムの表面に未硬化接着シートを作製した。
【0152】
次に、前記接着剤組成物b100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製し、活性エネルギー線を照射することにより硬化接着シートを作製した。
前記で得た硬化接着シートと前記未硬化接着シートとを貼り合わせることによって接着シートを作製した。
【0153】
(実施例3)
上記接着剤組成物c100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#38剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#38剥離フィルムの表面に未硬化接着シートを作製した。
【0154】
次に、前記接着剤組成物c100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製し、活性エネルギー線を照射することにより硬化接着シートを作製した。
前記で得た硬化接着シートと前記未硬化接着シートとを貼り合わせることによって接着シートを作製した。
【0155】
(実施例4)
上記接着剤組成物a100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#38剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#38剥離フィルムの表面に未硬化接着シートを作製した。
【0156】
次に、前記接着剤組成物b100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製し、活性エネルギー線を照射することにより硬化接着シートを作製した。
前記で得た硬化接着シートと前記未硬化接着シートとを貼り合わせることによって接着シートを作製した。
【0157】
(実施例5)
上記接着剤組成物a100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#38剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#38剥離フィルムの表面に未硬化接着シートを作製した。
【0158】
次に、前記接着剤組成物c100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製し、活性エネルギー線を照射することにより硬化接着シートを作製した。
前記で得た硬化接着シートと前記未硬化接着シートとを貼り合わせることによって接着シートを作製した。
【0159】
(実施例6)
上記接着剤組成物a100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#38剥離フィルム上に乾燥後の厚さが35μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#38剥離フィルムの表面に未硬化接着シートを作製した。
【0160】
次に、前記接着剤組成物c100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが15μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製し、活性エネルギー線を照射することにより硬化接着シートを作製した。
前記で得た硬化接着シートと前記未硬化接着シートとを貼り合わせることによって接着シートを作製した。
【0161】
(実施例7)
上記接着剤組成物a100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#38剥離フィルム上に乾燥後の厚さが15μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#38剥離フィルムの表面に未硬化接着シートを作製した。
【0162】
次に、前記接着剤組成物c100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが35μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製し、活性エネルギー線を照射することにより硬化接着シートを作製した。前記硬化接着シートを前記未硬化接着シートに貼り合わせることにより接着シートを作製した。
【0163】
(比較例1)
上記比較接着剤組成物d100質量部を、#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製した。
【0164】
次に、前記比較接着シートの片面に、#38剥離フィルムを貼り合わせることにより接着シートを作製した。
【0165】
(比較例2)
上記比較接着剤組成物e100質量部を、#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製した。
【0166】
次に、前記接着シートの片面に、#38剥離フィルムを貼り合わせることにより接着シートを作製した。
【0167】
(比較例3)
上記比較接着剤組成物d100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#38剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#38剥離フィルムの表面に接着シートを作製した。
【0168】
次に、前記接着剤組成物a100質量部を、シリコーン化合物で片面を剥離処理した#75剥離フィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#75剥離フィルムの表面に接着シートを作製し、活性エネルギー線を照射することにより硬化接着シートを作製した。
前記で得た硬化接着シートと前記接着シートとを貼り合わせることによって接着シートを作製した。
【0169】
[耐つぶれ性の評価方法(接着シートに力が加わった場合に接着剤層に含まれる成分が押し出されるか否かを評価する方法)]
実施例及び比較例で得た接着シートを5cm×5cmに裁断し、#38剥離フィルムを剥がしたものを、厚さ50μmの剥離フィルム(以下「#50剥離フィルム」)7cm×7cmの中央部に貼り合わせた。
【0170】
次に、#75剥離フィルムを剥がし、さらにその上に#50剥離フィルム7cm×7cmを貼り合わせた。
【0171】
前記貼り合わせたものの上部から、単位面積当たり0.4kg/cmの圧力を加えた状態で40℃で60分間放置した。
【0172】
次に、放置前の接着シートの面積(5cm×5cm=25cm)に対する、放置後の接着シートの面積の割合を、下記基準で評価した。
【0173】
◎:放置前の接着シートの面積に対する、放置後の接着シートの面積の割合が100%以上101%未満であった。
【0174】
○:放置前の接着シートの面積に対する、放置後の接着シートの面積の割合が101%以上103%未満であった。
【0175】
△:放置前の接着シートの面積に対する、放置後の接着シートの面積の割合が103%以上105%未満であった。
【0176】
×:放置前の接着シートの面積に対する、放置後の接着シートの面積の割合が105%以上であった。
【0177】
(段差追従性の評価方法)
縦4cm及び横5cmのガラス板の額縁部に、厚さ20μm及び幅4mmの加飾層(黒色)を有するパネルを用意した。
【0178】
前記耐つぶれ性の評価試験で使用した接着シート等を構成する未硬化接着剤層側の#50剥離フィルムを除去し、その表面に縦4cm、横5cm及び厚さ140μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付した。また、比較例1及び3の接着シートについては、比較接着剤組成物dを用いて形成された一方の接着剤層側の#50剥離フィルムを除去し、その表面に縦4cm、横5cm及び厚さ140μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付した。また、比較例2の接着シートについては、比較接着剤組成物eを用いて形成された一方の接着剤層側の#50剥離フィルムを除去し、その表面に縦4cm、横5cm及び厚さ140μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼付した。
【0179】
次に、前記接着シートを構成する硬化接着剤層側の#50離型フィルムを除去し、その接着剤層の面に、前記パネルの表面(加飾層を有する側の面)を貼付した。また、比較例1及び2の接着シートについては、比較接着剤組成物dまたは比較接着剤組成物eを用いて形成された他方の接着剤層側の#50剥離フィルムを除去し、その表面に、前記パネルの表面(加飾層を有する側の面)を貼付した。
【0180】
次に、5気圧及び80℃の環境下に20分間放置した後、無電極ランプ(フュージョンランプHバルブ)を用いて紫外線を1000mJ/cm照射することによって貼付物を得た。
【0181】
前記照射後、前記加飾層に起因する段差部と、接着シートを構成する接着剤層との界面及びその周辺を、パネル板側から光学顕微鏡を用いて観察し、下記基準で評価した。
【0182】
<気泡の有無による評価>
◎:前記段差部と接着剤層との界面に微細な気泡が全くなかった。
○:前記段差部と接着剤層との界面に、ごくわずかに微細な気泡があったが、実用上問題ないレベルであった。
△:前記段差部と接着剤層との界面にわずかに気泡があった。
×:前記段差部と接着剤層との界面及び前記界面以外の範囲に気泡があった。
【0183】
<被着体の歪みによる評価>
◎:前記段差部における接着シートの歪みに起因した上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの歪みや凹凸の形成が全くみられなかった。
○:前記段差部における接着シートの歪みがわずかにあったものの、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの歪みや凹凸の形成がほとんどみられず、実用上問題ないレベルであった。
△:前記段差部における接着シートの歪みがあり、前記歪みに起因したポリエチレンテレフタレートフィルムの歪みや凹凸の形成が確認された。
×:前記段差部における接着シートの著しい歪みがあり、前記歪みに起因したポリエチレンテレフタレートフィルムの著しい歪みや凹凸の形成が確認された。
【0184】
(線状痕による評価)
前記(段差追従性の評価方法)で使用した貼付物と同様のものを作製し、その加飾層に起因する段差部と、接着シートを構成する接着剤層との界面及びその周辺を、パネル板側から光学顕微鏡を用いて観察することで、線状痕の有無を下記基準で評価した。
◎:前記段差部と接着剤層との界面に薄白色の線状痕が全くなかった。
○:前記段差部と接着剤層との界面に、ごくわずかに線状痕があったが、実用上問題ないレベルであった。
△:前記段差部と接着剤層との界面にわずかに線状痕があり、若干の外観の低下が確認された。
×:前記段差部と接着剤層との界面に線状痕があり、若干の外観の低下が確認された。
また、比較例3の接着シートについては、比較接着剤組成物aを用いて形成された接着剤層側の#50剥離フィルムを除去し、その接着剤層の面に、前記パネルの表面(加飾層を有する側の面)を貼付した。
【0185】
[板状剛体と、段差部を有する板状剛体との貼り合わせ]
実施例1及び比較例1で得た粘着シートを用い、板状剛体と段差部を有する板状剛体とを貼り合わせた際の段差追従性等を評価した。
具体的には、前記耐つぶれ性の評価試験で使用した接着シート等を構成する未硬化接着剤層側の#50剥離フィルムを除去し、その表面に、縦4cm及び横5cmのガラス板の額縁部に厚さ10μm及び幅4mmの加飾層(黒色層)からなる段差部を有するパネルを貼付した。また、比較例1の接着シートについては、比較接着剤組成物dを用いて形成された一方の接着剤層側の#50剥離フィルムを除去し、その表面に、縦4cm及び横5cmのガラス板の額縁部に厚さ10μm及び幅4mmの加飾層(黒色層)からなる段差部を有するパネルを貼付した。
【0186】
次に、前記接着シートを構成する硬化接着剤層側の#50離型フィルムを除去し、その接着剤層の面に、前記加飾層からなる段差部を有しない表面が平滑なガラス板を貼付した。また、比較例1の接着シートについては、比較接着剤組成物dを用いて形成された他方の接着剤層側の#50剥離フィルムを除去し、その表面に、前記加飾層からなる段差部を有しない表面が平滑なガラス板を貼付した。
【0187】
次に、5気圧及び80℃の環境下に20分間放置した後、無電極ランプ(フュージョンランプHバルブ)を用いて紫外線を1000mJ/cm照射することによって貼付物を得た。
【0188】
前記照射後、前記加飾層に起因する段差部と、接着シートを構成する接着剤層との界面及びその周辺を、パネル板側から光学顕微鏡を用いて観察し、その段差追従性(気泡の有無)を上記基準で評価した。また、前期貼付物の線状痕の有無についても、上記と同様の方法で評価した。
【0189】
[貯蔵弾性率の測定方法]
前記接着シート等を構成する熱可塑ポリウレタン層(A)及びポリウレタン層(B)の各温度における貯蔵弾性率は、粘弾性試験機(レオメトリックス社製、商品名:アレス2KSTD)を用いて、同試験機の測定部である平行円盤の間に試験片を挟み込み、温度40℃または70℃、及び、周波数1Hzでの貯蔵弾性率(G’)を測定し求めた。上記測定で使用する試験片としては、前記接着シート等を厚さ1mmで直径8mmの大きさからなる円状に裁断したものを使用した。
【0190】
【表1】
【0191】
【表2】
【0192】
【表3】
【0193】
【表4】
【0194】
表2のとおり、実施例1〜7の接着シートは、良好な耐つぶれ性を有し、加飾層の段差に対して良好な追従性を有するものであった。特に、熱可塑性ポリウレタン層(A)とポリウレタン層(B)との形成に同一の接着剤組成物を使用することによって、気泡なく段差部追従し、接着シートの皺のような歪みの発生を防止し、かつ薄白色の線状痕を効果的に防止することができた。一方、比較例1〜4の接着シートは、加飾層の段差に対して気泡が生じたり、薄白色の線状痕が発生した。また、板状剛体と、段差部を有する板状剛体とを実施例1または比較例1で得た接着シートを用いて貼り合わせた結果、実施例1では接着界面に気泡等が見られなかったものの、比較例1で得た接着シートを用いた場合には、接着界面に気泡を確認することができた。
【符号の説明】
【0195】
1 ガラス基材
2 加飾層
3 接着シート
4 タッチセンサーパネルを構成するガラスパネル
図1