【文献】
よくある質問 アルマードの通販化粧品 卵殻膜コム,Internet Archive: Wayback Machine [online],2014年 9月10日,[retrieved on 2017.10.10], Retrieved from the Internet,URL,https://web.archive.org/web/20140910005905/http://www.treviode.net/pages/faq.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(c)を、陽イオン交換樹脂を用いて、陽イオン交換樹脂処理後の加水分解卵殻膜を含有する水溶液のpHが4.5〜5.5で且つ当該水溶液中の塩の濃度が2質量%以下になるように行う、請求項3〜5のいずれか1項に記載の加水分解卵殻膜粉末の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の加水分解卵殻膜粉末は、pHが3〜6であり、pHが3.5〜6であることが好ましく、pHが4〜5.5であることがより好ましく、pHが4.5〜5.5であることが更に好ましい。
ここで、本明細書における「加水分解卵殻膜粉末のpH」とは、加水分解卵殻膜粉末の1gを純水10mLに溶解して、温度25℃で、ガラス電極法方式によるpH測定装置を用いて測定したpH値をいう。
【0017】
加水分解卵殻膜粉末のpHが前記した特定の弱酸性のpH範囲内であることによって、当該加水分解卵殻膜粉末を用いて化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品などを製造したときに、それらのpHを弱酸性領域に簡単に調整することができる。特に、化粧品や医薬部外品では、当該加水分解卵殻膜粉末を多量に配合しても、化粧品や医薬部外品のpHを人の皮膚のpHと同じか近似した4〜6の範囲に簡単に調整でき、加水分解卵殻膜の多量配合によって、加水分解卵殻膜の有する優れた特性を十分に且つ効果的に発揮させることができる。
加水分解卵殻膜粉末のpHが3未満であると、加水分解卵殻膜粉末を用いて得られる化粧品、医薬部外品、医薬品、飲品などの製品の酸性度が強くなり易く、しかも酸味も感じ、食品以外の用途に用いる場合にはpH調整剤を多く使用することが必要になる。一方、加水分解卵殻膜粉末のpHが6よりも大きいと、加水分解卵殻膜粉末を用いて弱酸性の製品(化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品など)を製造しにくくなり、特に多量の加水分解卵殻膜粉末の配合が困難になる。
【0018】
本発明の加水分解卵殻膜粉末を構成する加水分解卵殻膜の分子量は特に制限されず、加水分解卵殻膜粉末の用途、使用形態などに応じて調整することができる。
一般的には、本発明の加水分解卵殻膜粉末を構成する加水分解卵殻膜は、水に対する溶解性、皮膚からの吸収性、体内での消化吸収性、味、臭いなどの点から、その重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがより好ましく、10,000〜35,000であることが更に好ましい。
加水分解卵殻膜の分子量が小さすぎると、苦味、異臭などが生じ易くなる。一方、加水分解卵殻膜の分子量が大きすぎると、水に溶けなくなったり、溶けにくくなり、加水分解した意味が失われてしまう。
ここで、本明細書でいう「加水分解卵殻膜の分子量」とは、高速液体クロマトグラフによるゲルパーミエーションクロマトフラフィー(GPC)法によって測定した重量平均分子量をいう。
【0019】
本発明の加水分解卵殻膜粉末は、塩分の含有量が2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、0.5〜1.5質量%であることが更に好ましく、0.8〜1.2質量%であることが一層好ましい。塩分の含有量の少ない加水分解卵殻膜粉末は、純度が高くなり、化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品などの種々の用途により有効に用いることができる。但し、加水分解卵殻膜粉末の塩分含有量を0質量%にするためには、脱塩処理に多くの手間および時間を要するので、加水分解卵殻膜粉末の塩分含有量を0質量%にする必要はなく、多少の塩分を含有していても加水分解卵殻膜の優れた作用効果は十分に発揮される。
ここで、本明細書における「加水分解卵殻膜粉末の塩分」とは、卵殻膜の加水分解に用いたアルカリ水溶液中のアルカリイオンと、アルカリ水溶液中で加水分解して得られる加水分解卵殻膜を含有する水溶液のpHを低下させるために加えられる有機酸から形成される有機酸のアルカリ塩の含有量をいう。
加水分解卵殻膜粉末の塩分量は、以下の実施例に記載する方法で求められる。
【0020】
本発明の加水分解卵殻膜粉末の粒度は特に制限されないが、加水分解卵殻膜粉末の製造の容易性、水への溶解性、化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品などの製造に用いる際の取り扱い性などの点から、一般的には、レーザー回折式粒度分布装置を測定した体積平均粒子径D50(メディアン径)が300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0021】
pHが3〜6である本発明の加水分解卵殻膜粉末は、
(a)卵殻膜をアルカリ水溶液中で加水分解する工程;
(b)工程(a)で生成する加水分解卵殻膜を含有するアルカリ水溶液に、有機酸を添加して、液のpHを4〜7に調整する工程;
(c)工程(b)で生成する加水分解卵殻膜を含有するpHが4〜7の水溶液のpHを3〜6に低下させる工程;および、
(d)工程(c)で得られる加水分解卵殻膜を含有する水溶液から加水分解卵殻膜を粉末状で回収する工程;
を有する本発明の製造方法によって円滑に製造される。
【0022】
以下に上記した本発明の製造方法について、具体的に説明する。
本発明では、工程(a)において、卵殻膜をアルカリ水溶液中で加水分解して加水分解卵殻膜を含有する水溶液を調製する。
加水分解卵殻膜の製造原料である卵殻膜としては、レーザー回折式粒度分布装置を測定した体積平均粒子径D50(メディアン径)が6μm以下の卵殻膜粉末が好ましく用いられる。
体積平均粒子径D50が6μm以下の卵殻膜粉末を用いてアルカリ水溶液中で加水分解を行うことによって、加水分解卵殻膜の加水分解が短時間で速やかに行われ、しかも分子量の揃った加水分解卵殻膜が得られる。
体積平均粒子径D50(メディアン径)が6μm以下の卵殻膜粉末は、限定されるものではないが、例えば、体積平均粒子径D50が6μmより大きな市販の卵殻膜粉末(例えば、キューピー株式会社製「EM−パウダー300」、体積平均粒子径D50=35μmなど)を、ジェットミルなどの粉砕装置を用いて、その体積平均粒子径D50が6μm以下になるまで粉砕することによって得ることができる。
体積平均粒子径D50が6μm以下の卵殻膜粉末の製法については、本出願人の出願に係る特許文献5にも記載されている。
【0023】
工程(a)では、卵殻膜をそのまま直接アルカリ水溶液に添加して加水分解を行ってもよいが、卵殻膜を酸水溶液で前処理して卵殻膜中に含まれるカルシウム塩などを除去しておくと、卵殻膜がアルカリ水溶液に速やかに溶解するようになり、アルカリ水溶液による卵殻膜の加水分解が迅速に且つ円滑に行われるようになる。
前処理に用いる酸水溶液としては、0.5〜2規定の塩酸などが好ましく用いられ、当該塩酸水溶液中に卵殻膜を10〜30℃で約1〜3時間程度浸漬するとよい。
【0024】
さらに、工程(a)では、滅菌処理を施してない卵殻膜を加水分解用の原料として直接用いてもよいし、または滅菌処理した卵殻膜を用いてもよい。そのうちでも、滅菌処理した卵殻膜を用いることが好ましい。その際に、滅菌処理を、水中で煮沸することによって行うと、最終的に得られる加水分解卵殻膜粉末の安全性および衛生性が向上するだけでなく、煮沸処理に用いた熱湯をそのまま次の卵殻膜の加水分解処理用の水媒体として利用でき、便利であると共に経済的である。
卵殻膜の煮沸処理は、卵殻膜1質量部(乾物換算)に、水を好ましくは8〜16質量部、より好ましくは10〜15質量部の割合で加えて、温度70〜100℃、特に80〜95℃で行うことが望ましい。
【0025】
工程(a)における卵殻膜の加水分解は、卵殻膜を水に分散させて卵殻膜の分散液を調製し、当該分散液にアルカリを添加してアルカリ水溶液にし、加熱下に行う。
水の量は、卵殻膜1質量部(乾物換算)に対して、10〜15質量倍が好ましい。
卵殻膜を水中で煮沸滅菌する上記した煮沸処理を行う場合には、煮沸処理後の、卵殻膜を含有する高温の水分散液にアルカリを直接添加して卵殻膜の加水分解を行うことが望ましく、それによって処理時間の短縮化などを図ることができる。
【0026】
前記した特許文献1、2および4に記載されている従来技術では、卵殻膜のアルカリによる加水分解を、アルカリ性含水メタノール溶液などのようなアルカリ性含水有機溶媒溶液を用いて行っている。
それに対して、本発明では、卵殻膜の加水分解を、有機溶媒を含まないアルカリ水溶液中で行う。
卵殻膜の加水分解を、有機溶媒を含まないアルカリ水溶液中で行うことによって、有機溶媒の使用が不要になり、更に加水分解卵殻膜粉末の製造途中において有機溶媒を除去するための工程が不要になり、しかも最終的に得られる加水分解卵殻膜粉末中に有機溶媒が残留するという問題を回避することができる。
特に、原料である卵殻膜として体積平均粒子径D50が6μm以下の卵殻膜粉末を用いる場合には、有機溶媒を含まないアルカリ水溶液を用いても、目的とする分子量を有する分子量の揃った加水分解卵殻膜を短時間で円滑に製造することができる。
【0027】
卵殻膜の加水分解に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水溶液を挙げることができ、そのうちでも水酸化ナトリウムの水溶液が入手性、低コストなどの点から好ましく用いられる。
卵殻膜を加水分解する際のアルカリ水溶液のpHは、10〜14が好ましく、12〜14が好ましい。アルカリ水溶液のpHが低すぎると、卵殻膜の加水分解が円滑に行われにくくなる。
【0028】
卵殻膜に対するアルカリ水溶液の使用割合は、卵殻膜1質量部(乾物換算)に対して、8〜16質量部が好ましく、10〜15質量部がより好ましい。
卵殻膜の加水分解時のアルカリ水溶液の温度は、70〜97℃が好ましく、80〜95℃がより好ましく、85〜92℃が更に好ましい。
卵殻膜の加水分解は、最終的に得られる加水分解卵殻膜粉末を構成する加水分解卵殻膜の重量平均分子量が、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは5,000〜50,000、更に好ましくは10,000〜35,000となるようにして行うのがよい。
一般的には、上記したpHおよび加熱温度下で、3〜10時間程、特に4〜7時間加水分解を行うことによって、前記した分子量を有する加水分解卵殻膜を含むアルカリ性水溶液が生成する。
【0029】
次いで、工程(b)において、上記の工程(a)で生成する加水分解卵殻膜を含有するアルカリ水溶液(以下「加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液」ということがある)に有機酸を添加して、液のpHを4〜7、好ましくは4.2〜6.8、より好ましくは4.5〜6.6に調整する。
工程(b)で用いる有機酸としては、クエン酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、グルコン酸、フィチン酸、酢酸などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
pHが3〜6である本発明の加水分解卵殻膜粉末には、工程(b)で用いた有機酸が残留しており、当該残留している有機酸によって加水分解卵殻膜粉末のpHが3〜6の酸性になっている。
工程(b)で用いる有機酸としては、安全性、入手容易性、低コストなどの観点に加えて、渋みや刺激がなくて、穏やかで爽快な酸味を有する点から、クエン酸が好ましく用いられる。クエン酸は、無水物、一水和物のいずれを用いてもよい。
工程(b)において有機酸の代わりに塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸を用いた場合には、最終的に得られる加水分解卵殻膜粉末に塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が残留し、安全性、刺激性、臭いなどの点で劣るようになる。
【0030】
有機酸が常温で固体である場合は、加水分解卵殻膜を含有するアルカリ水溶液に有機酸をそのまま直接添加してもよいし、または有機酸を水に溶かして有機酸水溶液にしてから加水分解卵殻膜を含有するアルカリ水溶液に添加してもよい。
工程(a)で得られる加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液に固体状の有機酸(有機酸粉末など)を添加する場合は、アルカリ水溶液の温度が高いうちに添加すると、有機酸をアルカリ水溶液中に速やかに溶解させることができる。
また、有機酸が液体である場合には、そのままアルカリ水溶液に添加することができる。
【0031】
工程(b)における有機酸の添加量は、有機酸の添加によって、加水分解卵殻膜を含有する水溶液(以下「加水分解卵殻膜含有水溶液」ということがある)のpHが4〜7になる量とする。
有機酸の実際の添加量は、工程(a)で生成する加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液のpH、有機酸の酸性度(酸強度)などによって異なる。
例えば、工程(a)で生成する加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液のpHが12〜14であって、それにクエン酸を添加する場合は、加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液1質量部に対して、クエン酸(固体として)を0.2〜1.5質量部の割合で添加することによって、加水分解卵殻膜を含有する水溶液のpHを4〜7にすることができる。
【0032】
次いで、工程(c)において、前記した工程(b)で得られる、pHが4〜7の加水分解卵殻膜含有水溶液のpHをpH3〜6、好ましくは3.5〜6、より好ましくは4〜5.5、更に好ましくは4.5〜5.5に低下させる。
工程(b)で得られるpH4〜7の加水分解卵殻膜含有水溶液に更に有機酸を添加することによって当該水溶液のpHを3〜6に低下させることができるが、そのようにすると最終的に得られる加水分解卵殻膜粉末中の塩(有機酸のアルカリ塩)の含有量が高くなり、加水分解卵殻膜粉末の純度が低下することがある。
そのため、工程(c)では、工程(b)で得られるpH4〜7の加水分解卵殻膜含有水溶液のpH3〜6へのpH低下と共に、加水分解卵殻膜含有水溶液からの脱塩を同時に行うことが望ましい。
【0033】
工程(c)において、pHが4〜7である加水分解卵殻膜含有水溶液のpH3〜6へのpH低下と脱塩を同時に行う場合は、簡便性、経済性などの点から、陽イオン交換樹脂を用いる処理方法が好ましく採用される。
工程(b)で得られるpH4〜7の加水分解卵殻膜含有水溶液を、陽イオン交換樹脂を用いて処理することによって、加水分解卵殻膜含有水溶液中のアルカリイオン(ナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオンなど)が、陽イオン交換樹脂中の水素イオンとのイオン交換によって陽イオン交換樹脂に取り込まれて、加水分解卵殻膜含有水溶液から取り除かれ、その一方で陽イオン交換樹脂から水素イオンが加水分解卵殻膜含有水溶液中に放出される。その結果、加水分解卵殻膜含有水溶液のpHが低下するとともに、加水分解卵殻膜含有水溶液に含まれていた有機酸塩(例えばクエン酸ナトリウムなどのような有機酸のアルカリ金属塩など)の含有量が低下して脱塩がなされる。
【0034】
工程(c)は、加水分解卵殻膜含有水溶液中の塩分濃度が2質量%以下になるようにして行うことが好ましく、1.5質量%以下になるようにして行うことがより好ましく、0.5〜1.5質量%になるようにして行うことが更に好ましく、0.8〜1.2質量%になるようにして行うことが一層好ましい。
但し、加水分解卵殻膜含有水溶液中の塩分含有量を0質量%にするには、脱塩処理に多大の手間および時間を要し、しかも最終的に得られる加水分解卵殻膜粉末に多少の塩分が含まれていても加水分解卵殻膜の作用効果上で問題はないので、加水分解卵殻膜含有水溶液中の塩分含有量を0質量%にする必要はない。
【0035】
工程(c)の陽イオン交換樹脂による処理は、一般に、加水分解卵殻膜含有水溶液を陽イオン交換樹脂を充填したカラムに通すことによって行われる。
工程(c)で使用する陽イオン交換樹脂の種類は特に制限されず、加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液中のアルカリイオンを除去し、その一方で加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液中に水素イオンを放出し得る陽イオン交換樹脂であれば強酸性陽イオン交換樹脂および弱酸性陽イオン交換樹脂のいずれもが使用できる。そのうちでも、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく用いられる。好ましく用い得る強酸性陽イオン交換樹脂としては、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体などのようなスチレン系重合体を母体とし、当該母体にイオン交換基としてスルホン酸基(−SO
3H)が結合した強酸性陽イオン交換樹脂を挙げることができる。
強酸性陽イオン交換樹脂の具体的な商品名としては、オルガノ株式会社製の「アンバーライト(登録商標)IR120B」、「アンバーライト(登録商標)200CT」、「アンバーライト(登録商標)IR124」、三菱化学株式会社製「ダイヤイオン(登録商標)」などを挙げることができ、これらのいずれを用いてもよい。
陽イオン交換樹脂による処理条件は、加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液中の加水分解卵殻膜の濃度、加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液のpH、陽イオン交換樹脂の種類などに応じて設定、調節すればよい。
【0036】
次いで、工程(c)で得られる加水分解卵殻膜を含有するpH3〜6の加水分解卵殻膜含有水溶液から加水分解卵殻膜を粉末状で回収する。
加水分解卵殻膜粉末は、pH3〜6の加水分解卵殻膜含有水溶液からそのまま直接回収してもよい。しかし、工程(c)で得られるpH3〜6の加水分解卵殻膜含有水溶液を、濃縮、濾過による夾雑物の除去、加熱滅菌などの処理に施した後に粉末化すると、純度、安全性、衛生性などに優れる加水分解卵殻膜粉末を円滑に得ることができる。
その際に、粉末化の前に、濃縮、濾過および加熱滅菌の全てを行ってもまたは1つまたは2つだけを行ってもよいが、濃縮、濾過および加熱滅菌の全てを行うことが望ましく、それによって、純度、安全性、衛生性などに一層優れる加水分解卵殻膜粉末を一層円滑に得ることができる。
【0037】
粉末化する前に加水分解卵殻膜含有水溶液の濃縮を行う場合は、60〜100℃、特に70〜90℃の温度で、水溶液中の固形分含有量が5〜15質量%、特に7〜10質量%程度になるようにして行うことが好ましい。
また、粉末化する前に濾過処理を行う場合は、ポアサイズが0.2〜10μm、特に0.4〜1μmのフィルターを用いて加水分解卵殻膜含有水溶液を濾過することによって、加水分解卵殻膜含有水溶液中に含まれる水不溶性の夾雑物を円滑に除去することができる。
粉末化する前に加熱滅菌処理を行う場合は、加水分解卵殻膜含有水溶液を85〜100℃、特に85〜95℃の温度で加熱滅菌することによって、安全性および衛生性に優れる加水分解卵殻膜粉末を得ることができる。加熱滅菌処理を行う場合は、粉末化の直前(濃縮や濾過処理を行った後)に行うことが好ましい。
【0038】
加水分解卵殻膜含有水溶液からの加水分解卵殻膜粉末の回収は、化粧品、医薬品、食品などの技術分野において、溶質を含む溶液から溶質を粉末状で回収するために従来から採用されている粉末化方法のいずれも採用でき、具体例としては、噴霧乾燥方法、凍結乾燥方法、温風棚式乾燥方法などを挙げることができる。
そのうちでも、本発明では、噴霧乾燥方法が、加水分解卵殻膜の損傷を防ぎながら粒度の揃った粉末を得ることができ、しかも他の方法に比べて低コストで且つスピーディーであることから好ましく採用される。
噴霧乾燥は、気体の吹き出し口温度が160〜200℃、特に170〜190℃である気体雰囲気中(空気中や、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中)に、加水分解卵殻膜含有水溶液を噴霧することによって行うことが好ましい。
これによって、加水分解卵殻膜粉末が得られる。
【0039】
上記で得られる加水分解卵殻膜粉末は、そのまま製品としてもよいが、篩などを用いて分級処理することによって、粒度の揃った加水分解卵殻膜粉末にすることができる。
また、マグネット処理を行うことによって、加水分解卵殻膜粉末中に含まれる(含まれる可能性のある)金属異物を除去することができる。
上記した一連の処理を行うことによって、pHが3〜6である本発明の加水分解卵殻膜粉末が得られる。
これにより得られる本発明の加水分解卵殻膜粉末の粒度は特に制限されないが、上記したように、一般的には、体積平均粒子径(D50)が300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0040】
本発明の加水分解卵殻膜粉末は、化粧品、医薬部外品、医薬品、飲食品などの用途に有効に用いることができ、美肌化、皮膚再生、育毛、発毛促進、脱毛防止、生体内に生成した活性酸素を低減または消去、活性酸素によって傷んだ赤血球の正常状態への回復、ヘモグロビンの増加、繊維芽細胞の接着・増殖、悪酔いの予防、肩凝りの解消、食欲増進、疲労の除去、生体の活性化、健康増進、健康の維持などの優れた効果を発揮する。
【実施例】
【0041】
以下に実施例によって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されない。
以下の例において、卵殻膜粉末および加水分解卵殻膜粉末の体積平均粒子径(D50)、アルカリ水溶液および加水分解卵殻膜含有水溶液のpH、加水分解卵殻膜粉末のpH、加水分解卵殻膜粉末の塩分(クエン酸ナトリウム)の含有量、並びに加水分解卵殻膜粉末を形成している加水分解卵殻膜の重量平均分子量は、以下の方法で測定した。
【0042】
(1)卵殻膜および加水分解卵殻膜粉末の体積平均粒子径(D50):
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業製「LMS−2000e」)を使用して、卵殻膜(卵殻膜粉末)および加水分解卵殻膜粉末の体積平均粒子径(D50)(μm)を測定した。
【0043】
(2)アルカリ水溶液および加水分解卵殻膜含有水溶液のpH:
ガラス電極法方式によるpH測定装置(株式会社堀場製作所製「Twin pH B−212」)のpH測定端子をアルカリ水溶液または加水分解卵殻膜含有水溶液中に浸漬して液のpHを測定した。
【0044】
(3)加水分解卵殻膜粉末のpH:
加水分解卵殻膜粉末の1gを純水10mLに溶解して得られた加水分解卵殻膜含有水溶液のpHを、温度25℃で、ガラス電極法方式によるpH測定装置(株式会社堀場製作所製「Twin pH B−212」)を使用して測定し、そのpH値を加水分解卵殻膜粉末のpHとした。
【0045】
(4)加水分解卵殻膜粉末の塩分の含有量:
加水分解卵殻膜粉末の1gを純水に溶解して全量を100mLの加水分解卵殻膜含有水溶液にし、当該水溶液中の塩分(クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは塩化ナトリウム)の濃度C
0(質量%)を株式会社アタゴ製のデジタル塩分計「ES−421」を用いて測定し、下記の数式から、加水分解卵殻膜粉末の塩分含有量(質量%)を求めた。
加水分解卵殻膜粉末の塩分含有量(質量%)=(C
0/1)×100
【0046】
(5)加水分解卵殻膜の重量平均分子量:
株式会社島津製作所製の高速液体クロマトグラフ「LC20A」を使用してゲルパーミエーションクロマトフラフィー(GPC)法によって測定した。
【0047】
《実施例1》
(1) 卵殻膜粉末[キューピー株式会社製「EMパウダー」、体積平均粒子径(D50)=35μm]をジェットミル(株式会社セイシン企業製「シングルトラックジェットミルFS−4」)を使用して、目開き20μmの篩を通過する粒度の粉末の割合が90質量%になるまで粉砕し、体積平均粒子径(D50)が5.8μmの卵殻膜粉末を調製した。
(2) 上記(1)で得られた体積平均粒子径(D50)が5.8μmの卵殻膜粉末500gを、1規定の塩酸水溶液2000mL中に25℃で約2時間浸漬した後、卵殻膜粉末よりなる沈澱物を濾過して回収した(上澄の塩酸水溶液は廃棄)。
(3) 上記(2)で回収した卵殻膜粉末の沈澱物の全量を精製水6000gに入れ、90℃で30分間煮・滅菌して卵殻膜の水分散液を調製した。
(4) 上記(3)で得られた卵殻膜の水分散液に、食添用の水酸化ナトリウム1,000gを添加して90℃で溶解させてpHを13に調整し、90℃で5時間加熱して、加水分解卵殻膜含有アルカリ水溶液を調製した。
(5) 上記(4)で得られた加水分解卵殻膜含有水溶液(温度30℃)にクエン酸1,500gを加えて溶解させて、水溶液のpHを6.5に調整した。
【0048】
(6) 上記(5)で得られたpH6.5の加水分解卵殻膜含有水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂[オルガノ株式会社製「アンバーライト(登録商標)IR120BNA」]を充填したカラム(カラム内径=300mm、陽イオン交換樹脂の充填量=25,000g)に、液温30℃、流速1,000mL/分の条件下で通過させて加水分解卵殻膜含有水溶液中のナトリウムイオンを除去した。
これにより得られた加水分解卵殻膜含有水溶液のpHを上記した方法で測定したところ5.2であった。
(7) 上記(6)で得られた脱塩後の加水分解卵殻膜含有水溶液を90℃に加熱して水溶液中の固形分含有量が10質量%になるまで濃縮した後、32メッシュのステンレス製の平織金網の受け皿で濾過し、次いで濾液(濾過後の加水分解卵殻膜含有水溶液)を容器に入れて90℃で30分間加熱滅菌処理した。
【0049】
(8) 上記(7)で得られた加熱滅菌処理後の加水分解卵殻膜含有水溶液を窒素ガス雰囲気中で、噴霧乾燥装置(大川原化工機株式会社製「L−8」)を使用して約180℃で噴霧乾燥して、加水分解卵殻膜粉末を得た。
(9) 上記(8)で得られた加水分解卵殻膜粉末をシフター(晃栄産業株式会社製「佐藤式60メッシュ」)を使用して篩分けした後、マグネット処理(磁場強さ=12000ガウス)を行って金属異物を除去して、加水分解卵殻膜粉末を得た。
これにより得られた加水分解卵殻膜粉末の体積平均粒子径(D50)は61μmであり、pHは5.1であった。
また、当該加水分解卵殻膜の塩分含有量は1.0質量%であり、当該加水分解卵殻膜粉末を形成している加水分解卵殻膜の重量分子量は30,700であった。
【0050】
《比較例1》
(1) 卵殻膜[キューピー株式会社製「EMパウダー」、体積平均粒子径(D50)=35μm]500gを1規定の塩酸水溶液2000mL中に25℃で約2時間浸漬した後、卵殻膜粉末よりなる沈澱物を濾過して回収した(上澄の塩酸水溶液は廃棄)。
(2) 上記(1)で回収した卵殻膜粉末の沈澱物の全量を精製水6000gに入れ、90℃で30分間煮・滅菌して卵殻膜の水分散液を調製した。
(3) 上記(2)で得られた卵殻膜の水分散液に、食添用の水酸化ナトリウム1,000gを添加して90℃で溶解させてpHを13に調整し、90℃で5時間加熱して、加水分解卵殻膜を含有する水溶液を調製した。
(4) 上記(3)で得られた加水分解卵殻膜含有水溶液(温度30℃)に、酢酸を加えて水溶液のpHを7.5に調整した。
(5) 上記(4)で得られたpH7.5の加水分解卵殻膜含有水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂[オルガノ株式会社製「アンバーライト(登録商標)IR120BNA」]を充填したカラム(カラム内径=300mm、陽イオン交換樹脂の充填量=25,000g)に、液温30℃、流速1,000〜2,000mL/分の条件下で通過させて加水分解卵殻膜含有水溶液中のナトリウムイオンを除去した。
これにより得られた加水分解卵殻膜含有水溶液のpHを上記した方法で測定したところ6.5であった。
(6) 上記(5)で得られた脱塩後の加水分解卵殻膜含有水溶液を90℃に加熱して水溶液中の固形分含有量が10質量%になるまで濃縮した後、32メッシュのステンレス製の平織金網の受け皿で濾過し、次いで濾液(濾過後の加水分解卵殻膜含有水溶液)を容器に入れて90℃で30分間加熱滅菌処理した。
(7) 上記(6)で得られた加熱滅菌処理後の加水分解卵殻膜含有水溶液を、実施例1の(8)と同様にして噴霧乾燥して、加水分解卵殻膜粉末を得た。
(8) 上記(7)で得られた加水分解卵殻膜粉末を、実施例1の(9)と同様にして、シフター処理およびマグネット処理して、加水分解卵殻膜粉末を得た。
これにより得られた加水分解卵殻膜粉末の体積平均粒子径(D50)は70μmであり、pHは6.5であった。
また、当該加水分解卵殻膜の塩分含有量は0.4質量%であり、当該加水分解卵殻膜粉末を形成している加水分解卵殻膜の重量分子量は51,000であった。
【0051】
《比較例2》
(1) 卵殻膜[キューピー株式会社製「EMパウダー」、体積平均粒子径(D50)=35μm]500gを0.5規定の塩酸水溶液2000mL中に25℃で約2時間浸漬した後、卵殻膜粉末よりなる沈澱物を濾過して回収した(上澄の塩酸水溶液は廃棄)。
(2) 上記(1)で回収した卵殻膜粉末の沈澱物の全量を精製水6000gに入れ、90℃で30分間煮・滅菌して卵殻膜の水分散液を調製した。
(3) 上記(2)で得られた卵殻膜の水分散液に、食添用の水酸化ナトリウム1,000gを添加して90℃で溶解させてpHを13に調整し、90℃で5時間加熱して、加水分解卵殻膜を含有する水溶液を調製した。
(4) 上記(3)で得られた加水分解卵殻膜含有水溶液(温度30℃)に、塩酸を加えて水溶液のpHを3.5に調整した。
(5) 上記(4)で得られたpH3.5の加水分解卵殻膜含有水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂[オルガノ株式会社製「アンバーライト(登録商標)IR120BNA」]を充填したカラム(カラム内径=300mm、陽イオン交換樹脂の充填量=25,000g)に、液温30℃、流速1,000〜2,000m/分の条件下で通過させて加水分解卵殻膜含有水溶液中のナトリウムイオンを除去した。
これにより得られた加水分解卵殻膜含有水溶液のpHを上記した方法で測定したところ2.7であった。
(6) 上記(5)で得られた脱塩後の加水分解卵殻膜含有水溶液を90℃に加熱して水溶液中の固形分含有量が10質量%になるまで濃縮した後、32メッシュのステンレス製の平織金網の受け皿で濾過し、次いで濾液(濾過後の加水分解卵殻膜含有水溶液)を容器に入れて90℃で30分間加熱滅菌処理した。
(7) 上記(6)で得られた加熱滅菌処理後の加水分解卵殻膜含有水溶液を、実施例1の(8)と同様にして噴霧乾燥して、加水分解卵殻膜粉末を得た。
(8) 上記(7)で得られた加水分解卵殻膜粉末を、実施例1の(9)と同様にして、シフター処理およびマグネット処理して、加水分解卵殻膜粉末を得た。
これにより得られた加水分解卵殻膜粉末の体積平均粒子径(D50)は93μmであり、pHは2.7であった。
また、当該加水分解卵殻膜の塩分含有量は2.1質量%であり、当該加水分解卵殻膜粉末を形成している加水分解卵殻膜の重量分子量は54,000であった。
【0052】
《製造例1》
実施例1、比較例1および比較例2で得られた加水分解卵殻膜粉末を用いて、下記の表1に示す成分配合を有するスキンローションα(実施例1の加水分解卵殻膜粉末を使用したもの)、スキンローションβ(比較例1の加水分解卵殻膜粉末を使用したもの)およびスキンローションγ(比較例2の加水分解卵殻膜粉末を使用したもの)をそれぞれ製造した。
【0053】
【表1】
【0054】
《試験例1》
(1) 年齢が25歳から30歳までの被験者15名を、各組の平均年齢が27〜28歳になるようにして5名ずつ3組に分けた。
(2) 第1組の被験者5名には、スキンローションαを、朝晩の2回、2週間にわたって洗顔後に適量を顔に塗布してもらい、第2組の被験者5名には、スキンローションβを、朝晩の2回、2週間にわたって洗顔後に適量を顔に塗布してもらい、第3組の被験者5名には、スキンローションγを、朝晩の2回、2週間にわたって洗顔後に適量を顔に塗布してもらった。なお、この間、被験者15名には、他のスキンローションや、乳液、クリームの使用を停止してもらった。
(3) 2週間後に、それぞれの被験者の顔の皮膚の状態を、下記の表2に示す評価基準にしたがって評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】