(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表皮付き連続気泡発泡体が、ノニオン系界面活性剤と熱可塑性エラストマーを含んだ樹脂組成物に、常温常圧で気体である物質を超臨界状態で含浸させた後、圧力を解放して発泡させたことを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルエアロゲルコンポジット。
前記シリカ含有エアロゲルが、シリコンアルコキシドもしくはその誘導体、の加水分解によるゾルゲル反応から生成されるシリカエアロゲルであることを特徴とする、請求項5に記載のフレキシブルエアロゲルコンポジット。
スコット型揉み試験機を用いたもみ試験による試験前後の粉落ち率が、5%以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のフレキシブルエアロゲルコンポジット。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境問題の温暖化防止対策の重要性から省エネルギー化が望まれている。また、日本国内の運輸・民生(家庭・業務)、産業分野で消費されるエネルギーのうち大半が使われない未利用熱として環境中に排出されているといわれており、この未利用熱問題は、日本国内のみならず、世界的な課題となっている。
【0003】
真空断熱材(VIP)は、熱伝導率が低く、限られたスペースで断熱性能を発揮している。しかし、VIPは切削加工ができないことや、針などで穴が開いてしまうと断熱性能を満たさなくなること、VIPが硬質パネルのため、柔軟性に欠け形状追従性がないなどの問題があった。
【0004】
最近では、エアロゲルなどの微粒子、低密度多孔体を断熱材として用いる検討もされている。シリカエアロゲルのように、細孔直径が100nm以下になると気体の平均自由工程程度以下となり、気体分子同士の衝突(対流による熱伝達)がなくなるために、熱伝導率の気体成分の影響を無視することができるため、熱伝導率が低い。
【0005】
しかし、シリカエアロゲルは極めて脆く、単体でのハンドリングが非常に困難である問題があり、産業界にはなかなか受け入れられなかった。そこで、グラスファイバーに担持させたものや、特許文献1のように連泡発泡体をシリカエアロゲルの担持体として用いたり、特許文献2のようにウレタンエマルジョンをバインダーとしたシリカエアロゲルとの複合化などが考案されていた。これらの技術によって、ハンドリング性は大きく改善されたが、粉落ち、柔軟性などの課題が残っている。
【0006】
特許文献1では、連泡発泡体にシリカエアロゲル前駆体となるゾル状物を真空含浸させ発泡体に充填しゾル-ゲル転移により発泡体内部にシリカエアロゲルを生成させた後、超臨界流体を用いてゲルを乾燥させ、さらに少なくとも一部を保護層で覆うことが特徴として提案されている。
【0007】
具体的には、特許文献1記載の実施例2では、化学品によって発泡された気泡径500μmのポリプロピレン(以下、PPという。)フォーム中にシリカエアロゲルを内包させ、さらに酸化インジウム/錫(ITO)を真空蒸着によって表面に500nmの薄膜を形成して表面摺動性を付与し、作業性の向上を図っている。しかし、PPフォームは生成するシリカエアロゲルとの密着性が悪くPPフォームの500μmの気泡に微粒子状のシリカエアロゲルを担持することは困難である。さらに、ITOのような熱伝導率の高い材料を蒸着させることは断熱性能の低下につながるため好ましくないし、真空蒸着を施す工数も増えることから製造面でも好ましいものとはいえない。
【0008】
特許文献1記載の実施例3では担持体に硬質ウレタンフォームを用いて、表面保護に架橋性シリコーンを塗布後、熱処理をする提案が示されている。この方法では、塗布する厚み、塗布剤の熱伝導率によって断熱材の性能が低下する。表面保護を設けるための作業工数が多い。
【0009】
特許文献2では、水分散系ポリウレタンエマルジョンをバインダー成分とし、シリカエアロゲル粒子を含有させ複合させることで粉落ちのない断熱材が提案されている。しかし、熱伝導率が高く、上記特許文献1同様に基材のバインダー成分が、シリカエアロゲルの断熱性能を阻害している。
【0010】
特許文献3では、発泡体とシリカエアロゲル複合物において、柔軟性を付与するため、発泡体の気泡内部にシリカエアロゲルを完全充填せず、あえて気泡内部に空隙を残すことが提案されている。成形性や柔軟性が改善されても得られる特許文献3の複合物の断熱性能は、シリカエアロゲルを完全充填したものに比べて劣る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のことから、本発明は、特に断熱性能が高く、粉落ちが少なく、かつ、薄く折り曲げられる柔軟性に優れたエアロゲルコンポジット及びその製造方法を提供することを目的とする。なお以下、このようなエアロゲルコンポジットをフレキシブルエアロゲルコンポジットと総称する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来のシリカエアロゲルを用いた断熱シートは、使用時に粉落ちが生じる、柔軟性がなく形状追従性が好ましくないなどの課題があった。発泡体にシリカエアロゲルを内包した後に、熱ラミフィルムなどで表面を包むことで粉落ち対策はできるが、それでは、工数が増えるため作業効率が低下することや、封止に用いる材料の熱伝導率が影響して、断熱シート自体の断熱性が低下する恐れがある。
【0014】
そこで、本発明者らは、表皮付き連続気泡発泡体の裁断した端面からシリカエアロゲルの原料を導入し発泡体の表皮層を除することなく、発泡体内部でシリカエアロゲルを調製することで表面粉落ちが大きく改善できることを見出した。
【0015】
すなわち、本発明(1)は、
連続気泡を有する発泡体層と、該発泡体層の表面に形成された通気性のない表皮層とを有する表皮付き連続気泡発泡体において、
前記連続気泡間の連通貫通孔の平均径が10μm以下であり、
前記表皮付き連続気泡発泡体の空隙率が75〜99%であり、
前記連続気泡の内部に、エアロゲルが充填されていることを特徴とするフレキシブルエアロゲルコンポジットである。
該発泡体層の表面に形成された通気性のない表皮層は、連続気泡発泡体層のすべて全面を意味するだけでなく、該表面の一部を覆うものであってもよい。
本発明(2)は、前記表皮付き連続気泡発泡体が、ノニオン系界面活性剤と熱可塑性エラストマーを含んだ樹脂組成物に、常温常圧で気体である物質を超臨界状態で含浸させた後、圧力を解放して発泡させたことを特徴とする、前記発明(1)に記載のフレキシブルエアロゲルコンポジットである。
本発明(3)は、前記発泡体層と前記表皮層が、接着又は融着工程を経ずに一体化していることを特徴とする、前記発明(1)又は(2)のいずれかに記載のフレキシブルエアロゲルコンポジットである。
本発明(4)は、前記表皮付き連続気泡発泡体が、ポリオレフィン系樹脂発泡体であることを特徴とする、前記発明(1)〜(3)のいずれかに記載のフレキシブルエアロゲルコンポジットである。
本発明(5)は、前記エアロゲルが、シリカを含有するシリカ含有エアロゲルであることを特徴とする、前記発明(1)〜(4)のいずれかに記載のフレキシブルエアロゲルコンポジットである。
本発明(6)は、前記シリカ含有エアロゲルが、シリコンアルコキシドもしくはその誘導体、の加水分解によるゾルゲル反応から生成されるシリカエアロゲルであることを特徴とする、前記発明(5)に記載のフレキシブルエアロゲルコンポジットである。
本発明(7)は、常温常圧における熱伝導率が、0.020W/m・K以下であることを特徴とする、前記発明(1)〜(6)のいずれかに記載のフレキシブルエアロゲルコンポジットである。
本発明(8)は、スコット型揉み試験機を用いた揉み試験前後の粉落ち率が、5%以下であることを特徴とする、前記発明(1)〜(7)のいずれかに記載のフレキシブルエアロゲルコンポジットである。
本発明(9)は、
連続気泡を有する発泡体層と、該発泡体層に形成された通気性のない表皮層とを有する表皮付き連続気泡発泡体を形成する工程と、
前記表皮付き連続気泡発泡体を密閉容器に収めて、該密閉容器内を真空引きした状態で、シリコンアルコキシドもしくはその誘導体を該密閉容器内に満たし、前記発泡体層の前記連続気泡の露出する厚み方向の断面部から該シリコンアルコキシドもしくはその誘導体を前記連続気泡内部へ導入し、該シリコンアルコキシドもしくはその誘導体の加水分解によるゾルゲル反応により該連続気泡内部にシリカエアロゲルが充填される工程と、を有することを特徴とする、フレキシブルエアロゲルコンポジットの製造方法である。
本発明(10)は、前記表皮付き連続気泡発泡体を形成する工程が、ノニオン系界面活性剤と熱可塑性エラストマーを含んだ樹脂組成物に、常温常圧で気体である物質を超臨界状態で含浸させた後、圧力を解放して発泡させる工程を有することを特徴とする、前記発明(9)に記載のフレキシブルエアロゲルコンポジットの製造方法である。
本発明(11)は、
前記表皮付き連続気泡発泡体を形成する工程が、押出し成形によって表皮付き連続気泡発泡体シートを形成する工程と、該シートを所定形状に裁断する工程と、を有し、
前記発泡体層と前記表皮層とを接着又は融着する工程を有さないことを特徴とする、前記発明(9)又は(10)に記載のフレキシブルエアロゲルコンポジットの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特に断熱性能が高く、粉落ちが少なく、かつ、薄く折り曲げられる柔軟性に優れ、今まで断熱材の設置が難しかった省スペースの空間にも設置をすることができるフレキシブルエアロゲルコンポジット及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための一形態を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は当該一形態に何ら限定されるものではない。以下、本形態に係るフレキシブルエアロゲルコンポジットの構成及び製造方法、フレキシブルエアロゲルコンポジットの評価方法及び性状を順に説明する。
【0019】
≪フレキシブルエアロゲルコンポジットの構成及び製造方法≫
<全体の構成>
本発明に係るフレキシブルエアロゲルコンポジットは、連続気泡を有する発泡体層と、該発泡体層の表面に形成された通気性のない表皮層とを有する表皮付き連続気泡発泡体において、前記連続気泡間の連通貫通孔の平均径が10μm以下であり、前記表皮付き連続気泡発泡体の空隙率が75〜99%であり、前記連続気泡の内部に、エアロゲルが充填されていることを特徴とするフレキシブルエアロゲルコンポジットである。
【0020】
<各部の構成及び製造方法>
〔表皮付き連続気泡発泡体〕
(表皮付き連続気泡発泡体の構成)
本発明に係るフレキシブルエアロゲルコンポジットの基材として用いられる連続気泡発泡体は、連続気泡を有する発泡体層と、該発泡体層の表面に形成された通気性のない表皮層とを有する表皮付き連続気泡発泡体であり、連続気泡間の連通貫通孔の平均径が10μm以下である。この表皮付き連続気泡発泡体としては、連続気泡構造の切断面が露出しない表皮層をそなえた連続気泡構造を有する材料であれば特に限定されない。具体的には、ポリオレフィンとエチレン−プロピレンゴムとアミノ基含有ノニオン系界面活性剤とを含有する組成物に、常温常圧で気体である物質を、高温、高圧下における超臨界状態で含浸した後に、圧力を解放して発泡することで得られる。このアミノ基含有ノニオン系界面活性剤は、代表的にはポリオキシエチレンアルキルアミンまたはその不飽和誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアルキレンジアミンまたはその不飽和誘導体が挙げられ、単独でも混合物として用いてもよい。ポリオキシエチレンアルキルアミンまたはその不飽和誘導体は、5〜15個のオキシエチレン単位からなるポリオキシエチレン(POE)鎖と、アルキル基および/または相当する不飽和炭化水素基とを分子中に有する界面活性剤であり、POEドデシルアミン、POEミリスチルアミン、POEパルミチルアミン、POEステアリルアミン、POEオレイルアミン;およびヤシ油、牛脂のような天然油脂に由来する炭化水素基を有する混合POE炭化水素アミンが例示される。ポリオキシエチレンアルキルアルキレンジアミンまたはその不飽和誘導体としては、POEステアリルプロピレンジアミン、POE牛脂炭化水素プロピレンジアミンが例示される。
また、ポリオレフィンおよびスチレン系熱可塑性エラストマー(ただし、エチレン−プロピレンゴムを除く)とノニオン系界面活性剤とを含有する組成物に、常温常圧で気体である物質を、高温、高圧下における超臨界状態で含浸した後に、圧力を解放して発泡することで得られる。このノニオン系界面活性剤は、アルキルポリエーテルアミン及び脂肪酸グリセリルの中から選ばれた1種または2種の化合物である。
【0021】
本形態に係るフレキシブルエアロゲルコンポジットの基材として用いられる連続気泡発泡体は、超臨界発泡成形技術によって得られる連続気泡発泡体であり、エラストマー成分もしくはゴム成分を添加し、特定の界面活性剤を添加することで、連続気泡発泡体を得ている。そして、押出し成形したままの表皮層を残したまま、所定形状に裁断することによって、裁断面には、連続気泡構造の気泡が露出する。この露出した気泡から、エアロゲルの原料溶液が含浸注入される。この含浸注入には、真空注入技術を用いることで、表皮層を残したまま、裁断面に露出した連続気泡を介して連続気泡発泡体に効率よく含浸注入できる。その後、上記原料溶液をゲル化して湿潤ゲルとし、この湿潤ゲルから溶媒を除去して、エアロゲルが充填されたフレキシブルエアロゲルコンポジットを得る。表皮層があることで、発泡体の表面にエアロゲルが露出しないので、粉落ちがない効果を有する。以上のことから、発泡体内部にエアロゲルを充填しやすくなる。もっとも、前記発泡体層の表面に形成された通気性のない表皮層の一部を剥いで、連続気泡構造の気泡を表面に露出させ、この露出した連続気泡からエアロゲルの原料溶液を含浸注入してもよい。
【0022】
本形態で用いることができる連続気泡発泡体の一例は、
(A)(A1)ポリオレフィン(ただし、エチレン−プロピレンゴムを除く) (A)の50〜95重量%;及び
(A2)エチレン−プロピレンゴム及び/又はスチレン系熱可塑性エラストマー (A)の5〜50重量%
を含むポリマー組成物に、該ポリマー組成物100重量部あたり、(B)ノニオン系界面
活性剤0.2〜10重量部を含有させて、常温・常圧で気体である物質を、超臨界状態で含浸させた後に、圧力を解放して、発泡させた、連続気泡発泡体である。
【0023】
・(A)成分
本形態で用いられる(A)成分は、(A1)ポリオレフィン(ただし、エチレン−プロピレンゴムを除く)50〜95重量%、好ましくは60〜90重量%、さらに好ましくは65〜85重量%、及び(A2)エチレン−プロピレンゴム及び/又はスチレン系熱可塑性エラストマー5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜35重量%を含むポリマー組成物である。(A1)の割合が95重量%を越え、(A2)の割合が5重量%未満では、発泡体が充分な柔軟性を得にくいばかりか、高発泡体を得にくい問題がある。一方、(A1)の割合が50重量%未満で、(A2)の割合が50重量%を越えると、やはり高発泡体を得にくいうえ、得られる発泡体の収縮が大きくなる問題がある。
【0024】
(A1)ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、及びこれら相互のポリマーブレンドが例示される。ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのいずれでもよく、ポリプロピレンは、アタクチック、イソタクチック、シンジオタクチック、ランダムなどのいずれでもよい。また、発泡に適するとされる主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレン(HMS−PP)や高分子量成分を含んで分子量分布の広いポリプロピレンなどの伸張粘度が高いポリプロピレンを使用しても良い。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよく、熱可塑性樹脂でも熱可塑性エラストマーでもよい。これらのうち、得られる発泡体に耐熱性を付与でき、また得られる発泡体の柔軟性を維持できることから、ランダム系ポリプロピレンが好ましい。ガス抜けがなく、発泡が容易なことから、(A1)成分のメルトフローレートは、230℃、2.16kgfにおいて0.1〜5g/10minが好ましく、0.3〜2g/10minがさらに好ましい。(JIS K 7210:1999準拠)なお、エチレン−プロピレン共重合体には、硬化してゴム状弾性体となるエチレン−プロピレン共重合体(EPR)があるが、これは(A2)成分に包含されるので(A1)からは除外され、(A1)としては、樹脂状のエチレン−プロピレン共重合体が包含される。また、本形態の連続気泡発泡体の性質を損ねない範囲で、他の熱可塑性ポリマーが存在してもよい。
【0025】
(A2)のエチレンープロピレンゴムとしては、硬化してゴム状弾性体となる、エチレンとプロピレンの共重合体であるEPR(EPM)と;エチレン、プロピレン及び少量の非共役ジエンの共重合体であるEPDMが包含される。非共役ジエンとしては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及び1,4−ヘキサジエンが例示され、本発明においては、そのいずれを用いたものでもよい。
【0026】
また、(A2)のスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、炭化水素鎖からなるポリマーの一端又は両端にスチレンが結合したブロックコポリマーであればよく、例えば、スチレンとブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどとのブロックコポリマー、あるいはそれらのブロックコポリマーをさらに水素添加したものが挙げられ、例えば、スチレンブタジエンスチレンブロックコポリマー(SBS)、及びSBSを水素添加したスチレンエチレンブチレンスチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレンイソプレンスチレンブロックコポリマー(SIS)、及びSISを水素添加したスチレンエチレンプロピレンスチレンブロックコポリマー(SEPS)、スチレンイソプレンブタジエンイソプレンスチレンブロックコポリマー、及びそれを水素添加したスチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンビニルイソプレンスチレンブロックコポリマー、及びその水素添加物、スチレンイソブチレンスチレンブロックコポリマー、スチレンブタジエンブロックコポリマー、及びその水素添加物、スチレンイソブチレンブロックコポリマー、及びその水素添加物などが挙げられ、単独で用いてもよいが、混合して用いることもできる。
【0027】
上記(A2)成分については、その平均分子量は、高い方が好ましい。また、プロセスオイルなどで油展して用いてもよい。(A2)成分は、架橋反応を行わずにそのまま用いられる。
【0028】
・(B)成分
(B)ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)アルキルエーテルなどのアルキルポリエーテル類、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)脂肪酸エステルなどの脂肪酸ポリエーテルエステル類、ジポリオキシエチレン(ジポリオキシプロピレン)アルキルアミン、例えばジ(ジオキシエチレン)ステアリルアミンなど、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)ジアルキルアミン、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)アルキルアルキレンジアミンなどのアルキルポリエーテルアミン類、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)ソルビタンエステル、ソルビタンアルキルエステルなどのソルビタンエステル類、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸(ポリ)グリセリル、例えばステアリン酸モノグリセリル、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)脂肪酸グリセリルなどのアルキルグリセリルポリエーテル又はエステル類、脂肪酸(ジ)エタノールアミドなどのアルカノールアミド類や、それら複数の混合物などが挙げられる。上記アルキル、脂肪酸、及びアルキレンの炭素数は、ポリオレフィン系ポリマー組成物との相溶性の点から、10以上の炭素数が好ましく、例えばC12(ラウリル又はラウリレートなど)、C18(ステアリル又はステアレートなど)、C22(ベヘニル又はベヘニレートなど)などが挙げられる。また、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのオキシアルキルの繰返し単位数は、1〜20が好ましく、更には10以下である。ポリグリセリルの繰り返し単位数も、1〜20が好ましく、更には10以下である。更には、アルキルポリエーテルアミン、脂肪酸グリセリル、脂肪酸(ジ)エタノールアミドから選ばれた1種又は混合物が好ましく使用でき、またステアリルアルコールなどの高級アルコールなどを添加してもよい。
【0029】
(B)成分の配合量は、(A)ポリマー組成物100重量部当たり0.2〜10重量部が必要であり、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。(B)成分が0.2重量部未満では、必要な連続気泡化が得られず、通気性の低い発泡体しか得られない。一方、10重量部を越えると、破泡が進行しすぎて、発泡体が収縮する。
【0030】
・その他の成分
本発明においては、(A1)、(A2)、(B)成分、及び場合によって任意に配合する成分を、高分子材料の混合に適した混合手段によって混合して、発泡性組成物を調製する。この際、任意に配合する成分として、得られる発泡体に適切な性質を与え、又は発泡体の作製や加工を容易にするために、この発泡性組成物に、使用目的に応じて、流動パラフィン、炭化水素系プロセスオイル、高級脂肪酸グリセリンエステル、高級脂肪酸アミドのような滑剤;リン酸エステル、リン酸メラミン又はリン酸ピペラジン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、炭酸亜鉛、塩素化パラフィン、ヘキサクロロシクロペンタジエンのような難燃剤;芳香族アミン類、ベンゾイミダゾール類、ジチオカルバミン酸塩類、フェノール化合物、亜リン酸エステル類のような老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンのような酸化防止剤;導電性カーボンブラック、銅粉、ニッケル粉、酸化スズのような導電材;カーボンブラック、有機顔料、染料、それらを含有するマスターバッチのような着色剤;ならびにシリカ、アルミナ、酸化チタン及び上記の各種添加剤のうち充填剤の機能を有するもののような充填剤などを配合することができる。
【0031】
・気体
前記発泡性組成物に超臨界状態で含浸させる、常温・常圧で気体である物質としては、この超臨界状態で発泡性組成物中のポリマーに浸透するものであればよく、窒素、ヘリウム、二酸化炭素、プロパン、ブタンなど、及びそれらの混合ガスが例示され、取扱いが容易で、安全性が高く、作業環境が優れていることから、二酸化炭素及び窒素が好ましく、二酸化炭素が特に好ましい。
【0032】
(連続気泡発泡体の製造方法)
本形態においては、下記の条件で、常温・常圧で気体である物質を発泡性組成物中のポリマーに含浸させた後、圧力を解放することで連続気泡となるように発泡させる。圧力を、減少速度を通常10〜30MPa/sで減少させることにより、連続気泡となるように発泡させることができる。発泡工程において連続気泡発泡体が直接に得られるので、後工程で機械的応力により独立気泡を破泡させて連続気泡化させる工程の必要はない。
【0033】
・含浸温度
常温・常圧で気体である物質を発泡性組成物に含浸させる温度は、効率的に機能性の発泡体が得られることから、該物質を超臨界状態にさせる温度であり、示差走査熱量計による測定によって得られた発泡性組成物中のポリマーの結晶化ピーク温度より20〜40℃高い温度であることが、特に好ましい。ここで、超臨界状態とは、気体状態と液体状態との中間の性質を示す状態である。
【0034】
・含浸圧力
また、含浸圧力は、含浸が完全に行われ、また微細なセルを得るために、含浸された常温・常圧で気体である物質を超臨界状態にするように、8〜15MPaが好ましく、特にガス抜けしにくくするために、10〜15MPaがより好ましい。
【0035】
・含浸時間
常温・常圧で気体である物質を発泡性組成物に含浸させる時間は、必要な含浸量及び含浸温度・圧力によって異なるが、通常3〜30分、好ましくは5〜20分である。
【0036】
・発泡倍率
本形態では発泡性組成物を連続気泡となるように発泡させる際、発泡倍率を10倍以上とすることが好ましい。10倍未満であると、得られる発泡体に優れた柔軟性を付与できない問題が生じる。本発明の発泡体は、さらに柔軟にするために、12倍以上、特に15倍以上の発泡倍率が好ましい。なお、発泡倍率の上限は特に制限されないが、機械強度の点から、100倍以下、好ましくは80倍以下、より好ましくは50倍以下である。
【0037】
・成形方法
前記の10倍以上の発泡倍率となるような発泡とともに、押出成形で成形して、表皮付き連続気泡発泡体の成形体を得ることができる。押出機としては、単軸タンデム型押出機を用い、場合によっては二軸押出機と組み合わせて用いてもよい。押出成形よって、接着又は融着工程を経ずに、発泡体層と表皮層とが一体化している表皮付き連続気泡発泡体を得ることができる。接着又は融着工程を経ないことから、封止に用いる材料の熱伝導率が影響して、断熱性を低下する恐れがなく、また、工数を増やさないために作業効率が低下しない。
【0038】
押出成形について述べる。本願発明の押出成形装置は、熱可塑性樹脂を含む成形材料を溶融する装置と、前記溶融時に、溶融する成形材料に常温常圧で気体の材料を超臨界状態で混入混合する装置と、常温常圧で気体の材料が混合された溶融状態の前記成形材料を加熱、圧縮しダイから押出す押出装置を備えている。上記混入混合する装置は、押出機の長手方向途中のバレルにもうけられた受け口に、超臨界状態の常温常圧で気体の材料が混入されるように設置される。
【0039】
すなわち、スクリューにより溶融押出される高分子材料に、受口から超臨界二酸化炭素を供給し、混合することにより単一相溶液とし、次いで、この単一相溶液を均一に分散する高分子材料の流体流とし、次いで、気泡の成長を抑制しつつ、高分子材料と非常に小さい気泡との液体混合物の状態で、高い温度でダイに通過させることにより、押出発泡成形する。
【0040】
図1に示すように、連続気泡を有する発泡体層の表面に、通気性のない表皮層が形成される。押出し成形機により、発泡体層の表面がダイを介して押出されることにより通気性のない表皮層が形成される。押出される溶融樹脂は、ダイとの界面を有しせん断がかかることで樹脂に溶融含浸されているガスは膨張することなくガス抜けする。結果、ダイとの界面に位置する溶融樹脂は、無発泡から低密度の層となる気泡のない表皮層を形成する。
【0041】
表皮層の厚さは、高い断熱性を確保するためにエアロゲルが粉落ちしない程度に薄くすることが好ましい。表皮層が厚いと発泡樹脂の断熱性能が、フレキシブルエアロゲルコンポジットの断熱性能に影響する。表皮層の厚みは、1〜50μm、3〜40μmがより好ましく、5〜30μmがさらに好ましい。また、一体に成形される前記表皮層および前記連続気泡を有する発泡体層の全厚みは、0.8〜2.5mm、1.0〜2.2mmがより好ましく、1.5〜2.1mmが、さらに好ましい。
【0042】
・裁断
裁断、表皮層の一部除去などを行って、得られた表皮付き連続気泡発泡体を所定のサイズに加工することができる。裁断面には、連続気泡構造の気泡が露出する。この露出した気泡から、エアロゲルの原料溶液が注入含浸され、エアロゲルが充填される。
【0043】
株式会社キーエンス社製マイクロスコープ(VHX-D-510)を用いて、裁断した断面の露出した気泡サイズを確認することができる。気泡サイズは、フレキシブルエアロゲルコンポジットの厚み方向に多くの気泡が存在するほうが、エアロゲルの脱落防止に有利なことから、細かいほうが好ましい。具体的には、80〜300μmの範囲であることが好ましく、90μm〜250μmの範囲であることがより好ましく、150μm〜200μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0044】
・連通貫通孔の平均径
西華産業販売の細孔径分布測定器(パームポロメータ)を用いて、発泡体の連通貫通孔の平均径を測定する。
【0045】
連通貫通孔の平均径は、ゲルの原料溶液を含浸注入させるためには大きいほうが好ましいが、エアロゲルの粉落ちを抑えるためには小さいほうが好ましい。連通貫通孔の平均径は、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましい。連通貫通孔の平均径が10μmを超える場合には、裁断面もしくはフレキシブルエアロゲルコンポジットを屈曲した場合に、エアロゲルの脱落のおそれが考えられる。
【0046】
・空隙率
表皮付き連続気泡発泡体の空隙率は、発泡後の表皮付き連続気泡発泡体の密度を未発泡の原料樹脂の密度で割り、1からこの除数を引き、百分率とすることによって算出する。密度の測定は、JIS K7222に準拠する。空隙率は、エアロゲルの充填量を増やすために高いほうが好ましい。空隙率が低く発泡体樹脂の空間に占める割合が多いほど、発泡体樹脂の断熱性能に与える影響が大きくなり、断熱性能の低下となる。空隙率は75〜99%であることが好ましく、80〜99%であることが好ましく、85〜99%であることが好ましい。
【0047】
空隙率が75%未満の場合には、発泡体樹脂が与える断熱性への影響が大きくなり、熱伝導率が高く低い評価となる。
【0048】
以上の製造方法により、発泡倍率が10倍以上、連続気泡間の連通貫通孔の平均径が10μm以下であり、高発泡で、柔軟性に優れた表皮付き連続気泡発泡体が得られる。
【0049】
〔エアロゲル〕
(エアロゲルの構成)
本形態に係るエアロゲルは、低密度の乾燥ゲルであれば、特に限定されない。超臨界乾燥法を用いて得られたエアロゲルだけでなく、通常の乾燥過程によるキセロゲル、凍結乾燥によるクライオゲルなども含む。
【0050】
エアロゲルとしては、任意の好適なエアロゲル成分を使用することができる。例えば、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲル、およびそれらの混合物から選択することができる。本形態に係るエアロゲルは、シリカ(SiO
2)を含有するシリカエアロゲルを好適に用いることができる。
【0051】
(エアロゲルの充填方法)
エアロゲルの充填方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0052】
エアロゲルの充填量は、高いほうが好ましい。本願発明において、充填量が高くても柔軟性が保たれるのは、発泡樹脂成分にスチレンエラストマー等のゴム成分が含まれているためである。
【0053】
本形態に係るエアロゲルの充填方法として、シリカエアロゲルを例として説明する。表皮付き連続気泡発泡体を密閉容器に収めて、該密閉容器内を真空引きした状態で、シリコンアルコキシドもしくはその誘導体を該密閉容器内に満たし、表皮付き連続気泡発泡体の発泡体層の表皮層のない部分からシリコンアルコキシドもしくはその誘導体を連続気泡内部へ導入し、シリコンアルコキシドもしくはその誘導体の加水分解によるゾルゲル反応により該連続気泡内部にシリカエアロゲルが充填される。表皮層があることで、発泡体内部にエアロゲルを充填しやすくなる。
【0054】
シリコンアルコキシドは、任意のものを使用することができ、好ましくはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランを挙げることができる。また、シリコンアルコキシドの誘導体は、任意のものを使用することができ、好ましくはテトラメトキシシランオリゴマーなどを挙げることができる。
【0055】
シリコンアルコキシドもしくはその誘導体の加水分解には、水と、水に相溶性を有し、シリコンアルコキシドもしくはその誘導体を溶解する溶媒を用いることが好ましい。該溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールやアセトン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0056】
シリコンアルコキシドもしくはその誘導体を効率良く加水分解するためには、反応系に予め触媒を添加しておくことが好ましい。該触媒としては、例えば、塩酸、クエン酸、硝酸、硫酸、フッ化アンモニウム等の酸性触媒、及び、アンモニア、ピペリジン等の塩基性触媒が挙げられる。
【0057】
本形態においては、シリコンアルコキシドもしくはその誘導体が加水分解してゲル化した後に、ゲル中の水や未反応物を除去する工程を有してもよい。この工程で用いられる溶媒は、前記溶媒と同様に、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールやアセトン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0058】
本形態においては、親水性を持つシラノール基に対して反応する官能基と疎水基を有する疎水化処理剤によって、シリカエアロゲル表面のOH基を疎水化する工程を有してもよい。該疎水化処理剤は、シラノール基に対して反応する官能基と疎水基を有するものを用いる。シラノール基に対して反応する官能基としては、例えば、ハロゲン、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、アルコキシル基、及び水酸基が挙げられる。疎水基としては、例えばアルキル基、フェニル基、及びそれらのフッ化物等が挙げられる。疎水化処理剤は、上記官能基及び疎水基を、それぞれ1種のみを有してもよいし、2種以上を有してもよい。例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン等の有機シラン化合物が挙げられ、これ以外にも、酢酸、蟻酸、コハク酸等のカルボン酸や、メチルクロリド等のハロゲン化アルキル等の有機化合物が挙げられる。疎水化処理剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0059】
上記工程後に、超臨界乾燥する工程を有する。超臨界乾燥する方法としては、例えば、液化二酸化炭素中で、80℃、20MPa程度の条件で浸漬して、溶媒の全部又は一部を、この溶媒より臨界点の低い二酸化炭素に置換した後、二酸化炭素の単独、又は、二酸化炭素と溶媒の混合物を分散媒とし、この分散媒の超臨界状態で疎水化処理剤を注入してゲル状化合物内に拡散せしめ、ゲル状化合物と反応させ、その後分散媒を除去する方法が挙げられる。
【0060】
以下に、本形態に係るエアロゲルの充填方法の一例を詳述する。エタノールで洗浄し、十分乾燥させた表皮付き連続気泡発泡体をセパラブルフラスコ内に収め、セパラブルフラスコ内を真空脱気して1時間放置する。
【0061】
テトラメトキシシラン(以下TMOS):メタノール:水:触媒(アンモニア)をモル比1:7.2:4:0.01で混合したゾル溶液をセパラブルフラスコ内に徐々に導入して発泡体を完全にゾル溶液内に含浸させ、そのままゲル化まで2−3時間放置する。ゲル化後、表面に乾燥防止目的のためメタノールを張り、1日熟成させる。
【0062】
乾燥しないように注意しながら、ゲルを内包した発泡体をセパラブルフラスコから取り出し、十分量のエタノールに含浸させ、ゲル内部の残存TMOSや未反応の水を除去するために数回エタノールを交換させる。
【0063】
シランカップリング剤(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(以下HMDS))の20%エタノール溶液に上記ゲルを1日含浸し、シリカゼリー表面のOH基を疎水化する。80℃20MPaの条件下で二酸化炭素を用いて超臨界乾燥させてフレキシブルエアロゲルコンポジットを得る。
【0064】
≪フレキシブルエアロゲルコンポジットの評価方法及び性状≫
<評価方法>
【0065】
(断熱性能)
断熱性能は、熱伝導率を測定することで評価する。測定は、英弘精機株式会社製の熱流束計(HC-072)を用いて、上板温度を15℃とし、下板温度を35℃として熱伝導率を測定する。環境温度は、特にこだわらず常温、常圧とする。試験時に用いるサンプルの厚みは5mm以上とし、5mmに試験サンプル厚みが満たない場合には、試験サンプルを積層して熱伝導率を測定し、断熱性能の評価を実施する。
【0066】
熱伝導率が、0.020W/m・K以下であることが好ましく、0.018W/m・K以下であることがより好ましく、0.016W/m・K以下であることがさらに好ましい。
【0067】
(粉落ち)
株式会社東洋精機製作所製スコット型揉み試験機を用いて、揉み試験前後の重量差から脱落したエアロゲルの粉落ち率算出し、粉落ちを評価する。試験の方法は、JIS K6404−6:ゴム引布・プラスチック引布試験方法−第 6 部:もみ試験を参考にする。本願発明では、試験前後の重量変化から粉落ち率を測定する。
具体的には、試験片は10mm×50mm、厚みは任意とし、試験片間隔を20mm、ストローク間隔40mm、圧縮荷重200gfとして1200回(往復速度120回/分)揉んだ前後の試験片重量から粉落ち率を算出する。粉落ち率(%)は(試験前重量(g)−試験後重量(g))/試験前重量(g)×100で計算する。粉落ち率が大きいほど、エアロゲルの脱落が多いことを示す。
【0068】
スコット型揉み試験機を用いた揉み試験前後の粉落ち率が、5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0069】
<性状>
本発明に係るフレキシブルエアロゲルコンポジットは、断熱性能が高く、粉落ちが少なく、柔軟性に優れている。
【0070】
<用途>
本発明に係るフレキシブルエアロゲルコンポジットは、断熱性能が高く、粉落ちが少なく、柔軟性、形状追従性に優れていることから、プラント配管に巻きつけて使用する断熱材、熱電素子に貼り付けて熱の拡散を防ぎ発電効果をあげる断熱材、各種電池の筐体等に断熱材を組付け電池性能を安定させる断熱材および各種車両で生じる廃熱を利用するための装置に用いられる断熱材への使用が見込まれれる。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
ランダム型ポリプロピレン53重量部に低密度ポリエチレン10重量部、EPDM(エチレン含量29.5%、ジエン含量5%)30重量部、ポリオキシエチレンステアリルアミン1.5重量部、湿式シリカ5重量部、フェノール系酸化防止剤0.2重量部とを、溶融混練させ、超臨界状態で二酸化炭素を含浸させた後、圧力を解放して発泡させて、押出し成形によって表皮付き連続気泡発泡体が得られた。
【0072】
上記製造の条件は、含浸温度が180℃であり、含浸圧力が15MPaであり、含浸時間が30分であり、発泡倍率が20である。得られた表皮層付き連続気泡発泡体の表皮層の厚さは約25μmであり、連通貫通孔の平均径は、4〜8μmである。気泡のサイズは、150〜200μmで分布していることを観察した。得られた表皮付連続気泡発泡体の空隙率は、約95%である。
【0073】
得られた表皮付連続気泡発泡体(厚み2mm)を表皮層がついたまま、セパラブルフラスコに収納できる大きさに裁断し、平積で5枚積層した上に、軽く錘の目的でステンレスの板を乗せ、セパラブルフラスコ内を真空状態にした。真空引き後、上記ゾル溶液を導入し、裁断した端面から発泡体内部へTMOS他ゾル溶液を導入し、上記工程の下、フレキシブルエアロゲルコンポジットを得た。
【0074】
(実施例2)
ランダム型ポリプロピレン53重量部に低密度ポリエチレン10重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)30重量部、ポリオキシエチレンステアリルアミン1.5重量部、湿式シリカ5重量部、フェノール系酸化防止剤0.2重量部とを、溶融混練させ、超臨界状態で二酸化炭素を含浸させた後、圧力を解放させて得られる表皮付連続気泡発泡体(厚み2mm)を得た。その後、実施例1と同様の工程を行い、フレキシブルエアロゲルコンポジットを得た。
【0075】
(比較例1)
連続気泡発泡体の表皮層をスライス加工して除し連続気泡構造を表面に露出させた。発泡体厚みを1.0mmとした以外は、実施例1と同じである。
【0076】
(比較例2)
除膜加工した軟質スラブストックポリウレタン樹脂発泡体{ブリヂストン社製のポリウレタン(エバーライトSF HR30)}を担持体として、実施例1と同じ方法でシリカエアロゲルのゾルゲル転移を行い、シリカエアロゲルを発泡体内に内包したポリウレタンフォームを用いた断熱シートを得た。ポリウレタンフォームの連通貫通孔の平均径は、約1000μmである。ポリウレタンフォームの空隙率は、96%である。
【0077】
(比較例3)
ストライダー社製のメラミンフォームを担持体として実施例1と同じ方法でシリカエアロゲルのゾルゲル転移を行い、シリカエアロゲルを発泡体内に内包したメラミンフォームを用いた断熱シートを得た。メラミンフォームの空隙率は、93%である。
【0078】
(比較例4)
イノアックコーポレーション社製の抽出法によって成形されたオレフィン系多孔体(商品名:MAPS、品番:ST−30)を担持体として実施例1と同じ方法でシリカエアロゲルのゾルゲル転移を行い、シリカエアロゲルを発泡体内に内包したメラミンフォームを用いた断熱シートを得た。このオレフィン系多孔体のセル径は、55μm、空隙率は、70%であった。
【0079】
(実施例、比較例の評価)
得られた実施例及び比較例について、前述の熱伝導率、粉落ち率の測定を行った。結果を表1に示す。また、柔軟性の評価に関して、下記の測定を行った。
【0080】
(柔軟性の評価)
図2に示すように、縦横100mm、全厚み10.25mmの平板治具(20)の中央に、幅1mmの間隔を開けて幅0.5mm、高さ0.25mmの断面視凸形状の段差(20a)を5本平行に設けた。
図3に示すように、これら段差のある面を上面として、上記治具の上に試験片(10)をかぶせ、さらに荷重をかけるために、縦横100mm、厚み10mmの別の平板(21)を乗せ、この別の平板治具(21)に荷重を均一にかけることで、上記段差の立壁と平面がつくる空間に試験片(10)が埋め込まれるのを目視評価した。厚さ2mmの試験片に対して、50%圧縮を行った。
【0081】
評価として、上記段差の両側面の空間に、試験片が埋め込まれていれば○、溝底左右角部に空隙(段差の立壁から0.15mm以上の空隙(R))が、少なくとも1つ以上あれば△、溝底面に試験片が接触していなければ×とした。目視の判断には、株式会社キーエンス製、光学顕微鏡VHX−1000を用いた。
【0082】
表1に示すように、実施例1、2は断熱性能が高く、粉落ちが少なく、追従性に優れていることがわかる。尚、比較例3の粉落ち試験に関しては、数回で材料破壊してしまい、評価が不可能であった。
【0083】
【表1】