(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
[光電変換素子および色素増感太陽電池]
本発明の光電変換素子は、導電性支持体と、電解質を含む感光体層と、電解質を含む電荷移動体層と、対極(対向電極)とを有する。感光体層と電荷移動体層と対極とがこの順で導電性支持体上に設けられている。
【0016】
本発明の光電変換素子において、その感光体層を形成する半導体微粒子の少なくとも一部は、増感色素として後述する式(1)で表される金属錯体色素を担持している。ここで、金属錯体色素が半導体微粒子の表面に担持される態様は、半導体微粒子の表面に吸着する態様、半導体微粒子の表面に堆積する態様、および、これらが混在した態様等を包含する。吸着は、化学吸着と物理吸着とを含み、化学吸着が好ましい。
半導体微粒子は、後述する式(1)の金属錯体色素と併せて、他の金属錯体色素を担持していてもよい。
【0017】
また、感光体層は電解質を含む。感光体層に含まれる電解質は、電荷移動体層が有する電解質と同種でも異種であってもよいが、同種であることが好ましい。
【0018】
本発明の光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する上記各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。また、必要により上記各層以外の層を有してもよい。
【0019】
本発明の色素増感太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いてなる。
以下、本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池の好ましい実施形態について説明する。
【0020】
図1に示されるシステム100は、本発明の第1態様の光電変換素子10を、外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したものである。
光電変換素子10は、導電性支持体1と、色素(金属錯体色素)21が担持されることにより増感された半導体微粒子22、および、半導体微粒子22間に電解質を含む感光体層2と、正孔輸送層である電荷移動体層3と、対極4とからなる。
光電変換素子10において、受光電極5は、導電性支持体1および感光体層2を有し、作用電極として機能する。
【0021】
光電変換素子10を応用したシステム100において、感光体層2に入射した光は、金属錯体色素21を励起する。励起された金属錯体色素21はエネルギーの高い電子を有しており、この電子が金属錯体色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき金属錯体色素21は酸化体となっている。導電性支持体1に到達した電子が外部回路6で仕事をしながら、対極4、電荷移動体層3を経由して金属錯体色素21の酸化体に到達し、この酸化体を還元することで、システム100が太陽電池として機能する。
【0022】
図2に示される色素増感太陽電池20は、本発明の第2態様の光電変換素子により構成されている。
色素増感太陽電池20となる光電変換素子は、
図1に示す光電変換素子に対して、導電性支持体41および感光体層42の構成、および、スペーサーSを有する点で異なるが、それらの点以外は
図1に示す光電変換素子10と同様に構成されている。すなわち、導電性支持体41は、基板44と、基板44の表面に成膜された透明導電膜43とからなる2層構造を有している。また、感光体層42は、半導体層45と、半導体層45に隣接して成膜された光散乱層46とからなる2層構造を有している。導電性支持体41と対極48との間にはスペーサーSが設けられている。色素増感太陽電池20において、40は受光電極であり、47は電荷移動体層である。
【0023】
色素増感太陽電池20は、光電変換素子10を応用したシステム100と同様に、感光体層42に光が入射することにより、太陽電池として機能する。
【0024】
本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。
【0025】
本発明において、光電変換素子または色素増感太陽電池に用いられる材料および各部材は常法により調製することができる。例えば、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,084,365号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2001−185244号公報、特開2001−210390号公報、特開2003−217688号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
【0026】
<式(1)で表される金属錯体色素>
本発明に用いる金属錯体色素は下記式(1)で表されるルテニウム錯体色素である。下記式(1)で表される金属錯体色素を光電変換素子の増感色素として用いることで、光電変換素子のJscを高めて優れた光電変換性能を発現させることができる。その作用機構は明らかではないが、以下のように推定される。
式(1)の金属錯体色素が有するアミノ基は、環構成原子数8以上の傘高いアリール基またはヘテロアリール基を有するために、アリール基ないしヘテロアリール基同士の立体障害が生じて捩れた構造をとる。結果、このアミノ基を有する配位子を介した非効率な会合が抑制されるとともに、アリール基またはヘテロアリール基同士の分子間相互作用が高まり、色素が半導体表面に効率的且つ高密度に吸着できるものと考えられる。さらに、捩れたアリール基またはヘテロアリール基は、捩れているがゆえに、色素中の共役系との相互作用は比較的少なく、色素間の非効率な電子移動は起こりづらいと考えられる。つまり、色素間の非効率な電子移動を抑制できるために、優れたJscないし光電変換効率を実現できるものと推定される。上記のように、色素に捩れた構造を導入することにより共役系を断ち切り、Jscないしは光電変換効率を向上させるという発想は、吸光係数を高めるべく共役系を伸長させることにより光電変換効率を向上させるという、従来の技術的方向性とは全く異なる。
【0028】
式(1)中、Ar
1およびAr
2は、環構成原子数が6〜30のアリール基または環構成原子数が5〜30のヘテロアリール基を表す。但し、Ar
1およびAr
2のうち少なくとも1つは環構成原子数が8以上である。
R
1はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。
【0029】
R
3およびR
4はアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、ヘテロアリール基、アミノ基またはハロゲン原子を表す。
R
3同士は互いに連結して環を形成してもよく、またR
4同士が互いに連結して環を形成してもよい。さらに、R
3およびR
4が互いに連結して環を形成してもよい。
Mは一価の陽イオンを表す。
n
1は0〜4の整数を表す。
n
3およびn
4は0〜3の整数を表す。
Rは式(2)で表される基であるか、または、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、ヘテロアリール基、アミノ基もしくはハロゲン原子を表す。
【0030】
本発明において、式(1)における上記Ar
1およびAr
2は互いに連結して環を形成することはない。また、Ar
1およびR
1が互いに連結して環を形成することもなく、Ar
2およびR
1が互いに連結して環を形成することもない。
【0032】
式(2)中、Ar
3およびAr
4は、環構成原子数が6〜30のアリール基または環構成原子数が5〜30のヘテロアリール基を表す。但し、Ar
3およびAr
4のうち少なくとも1つは環構成原子数が8以上である。
R
2はR
1と同義である。
n
2は0〜4の整数を表す。
本発明において、式(2)における上記Ar
3およびAr
4は互いに連結して環を形成することはない。また、Ar
3およびR
2が互いに連結して環を形成することもなく、Ar
4およびR
2が互いに連結して環を形成することもない。
【0033】
式(1)中、Ar
1およびAr
2として採り得るアリール基およびヘテロアリール基は、芳香族性を示す単環および縮環構造を有する基であり、環構成原子の全てがp軌道を有しており、環構成原子が有する全てのp軌道が芳香族性に寄与する。すなわち、縮環構造中に脂肪族環が含まれることはない。
【0034】
Ar
1およびAr
2として採り得るアリール基としては、芳香族性を示す単環の炭化水素環基でもよく、芳香族性を示す2以上の炭化水素環が縮合してなる環基(縮合多環芳香族炭化水素基)でもよい。
上記の芳香族性を示す単環の炭化水素環基としては、フェニル基が好ましい。上記縮合多環芳香族炭化水素基としては、好ましくは、6員環が2つ以上縮合してなる炭化水素環基であり、例えば、芳香族性を示す単環の炭化水素環(好ましくはベンゼン環)が複数縮合してなる炭化水素環基が挙げられる。なかでも縮合多環芳香族炭化水素基としては、2つ以上のベンゼン環が縮合してなる環基が挙げられ、2つ以上のベンゼン環が縮合してなる環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、ヘプタセン環、クリセン環、ベンゾピレン環、ピセン環、ピレン環、ペリレン環、コロネン環、およびトリフェニレン環が挙げられる。ここで、縮合する炭化水素環の数は、本発明で規定する環構成原子数を満たせば特に限定されず、2〜5個であることが好ましく、2〜3個であることがより好ましく、2個であることがさらに好ましい。
Ar
1およびAr
2として採り得るアリール基の環構成原子数は6〜30が好ましく、6〜15がより好ましく、6〜13がさらに好ましい。Ar
1およびAr
2として採り得るアリール基の環構造は、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、トリフェニレン環またはピレン環であり、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環またはピレン環がより好ましく、ベンゼン環またはナフタレン環がさらに好ましい。
【0035】
Ar
1およびAr
2として採り得るヘテロアリール基は、芳香族性を示す単環のヘテロ環基、および、ヘテロ環を含む複数の芳香族環が縮合した縮合多環芳香族ヘテロ環基を含む。
単環のヘテロ環基としては、ヘテロ原子を環構成原子として含む5員環または6員環の基が好ましい。ヘテロ原子としては、本発明で規定する環構成原子数を満たせば特に限定されず、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子およびリン原子等が挙げられる。上記のヘテロ原子を含む5員環としては、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環およびトリアゾール環が挙げられる。上記のヘテロ原子を含む6員環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環およびテトラジン環が挙げられる。
【0036】
上記縮合多環芳香族ヘテロ環基としては、単環の芳香族ヘテロ環が複数縮合してなる環基、および、単環の芳香族ヘテロ環と単環の芳香族炭化水素環が複数縮合してなる環基等が挙げられる。
好ましくは、ベンゼン環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環、チアゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環およびテトラジン環からなる群より選ばれる同種または異種の複数の環が縮合してなる環基が挙げられる。ここで、縮合する環の数は、本発明で規定する環構成原子数を満たせば特に限定されず、2〜5個であることが好ましく、2〜3個であることがより好ましい。
縮合多環芳香族ヘテロ環基の具体例としては、例えば、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾイソチオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ジベンゾピロール環、インダゾール環、インドール環、イソインドール環、インドリジン環、キノリン環、イソキノリン環、チエノピリジン環、シクロペンタジフラン環、シクロペンタジチオフェン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、チエノ[3,4−b]チオフェン環、トリチオフェン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、およびジチエノピロール環が挙げられる。
【0037】
Ar
1およびAr
2として採り得るヘテロアリール基の環構成原子数は6〜15がより好ましく、6〜13がより好ましい。Ar
1およびAr
2として採り得るヘテロアリール基の環構造は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、チエノ[3,4−b]チオフェン環、またはジベンゾチオフェン環がより好ましく、ジベンゾチオフェン環がさらに好ましい
Ar
1およびAr
2のうち少なくとも1つは環構成原子数が8以上である。すなわち、Ar
1およびAr
2のいずれも環構成原子数が8以上であってもよく、Ar
1およびAr
2のいずれか1つのみ、環構成原子数が8以上であってもよい。
【0038】
本発明において、式(1)中のAr
1とAr
2、あるいはR
1とAr
1またはAr
2とは、環が固定されて捩れが解消されてしまわないように、互いに連結して環を形成することはない。Ar
1およびAr
2を形成する全ての環構成原子がp軌道を有し、それらのp軌道を非局在化して芳香族環を形成する。これにより、捩れた環構成原子数8以上のアリール基またはヘテロアリール基同士が分子間で相互作用(π−πスタッキング)し、色素が半導体表面に効率的且つ高密度に吸着することができる。Ar
1およびAr
2がかかる芳香族環を形成せずに、仮に、脂肪族環を含む縮環構造(例えばフルオレン構造等)をとった場合には、Ar
1およびAr
2のp軌道と水平方向に上記相互作用を抑制するような置換基または水素原子を有する構造となり、本発明の効果は得られない。
Ar
1およびAr
2は後記の置換基群Tから選ばれる基を有していてもよいが、環構成原子数が8以上のAr
1ないしAr
2が有する置換基は、分子間相互作用向上の観点から嵩高くないものが好ましい。さらに好ましくは、環構成原子数が8以上のAr
1およびAr
2は置換基を有さない。
【0039】
R
1として採り得るアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、およびアミノ基の好ましい範囲ないし具体例は、後記置換基群Tにおける対応する基の好ましい範囲ないし具体例と同じである。
R
1として採り得るハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
R
1は、好ましくはアルコキシ基、アルキル基およびアミノ基であり、さらに好ましくはアルコキシ基またはアルキル基であり、特に好ましくはアルコキシ基である。
【0040】
R
3およびR
4は、好ましくはアルコキシ基、アルキル基、アルキルチオ基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基である。
R
3およびR
4の好ましい範囲ないし具体例は、後記置換基群Tにおける対応する基の好ましい範囲ないし具体例と同じである。
【0041】
n
1は好ましくは0〜2であり、さらに好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
【0042】
n
3は好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。
【0043】
n
4は好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。
【0044】
Mは一価の陽イオンを表す。この一価の陽イオンは、例えば無機または有機のアンモニウムイオン(例えばテトラメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラデシルアンモニウムイオン、トリエチルベンジルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等)、アルカリ金属イオン(例えばリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン等)、ホスホニウムイオン(例えばテトラブチルホスホニウムイオン)またはプロトンである。
Mは、好ましくは有機のアンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、またはプロトンであり、さらに好ましくはテトラブチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、またはプロトンであり、さらに好ましくはカリウムイオン、ナトリウムイオン、またはプロトンである。吸着速度の観点からはプロトンが特に好ましく、会合抑制による光電変換効率向上の観点からはカリウムイオンまたはナトリウムイオンが特に好ましい。
【0045】
式(2)中、Ar
3およびAr
4、R
2およびn
2の好ましい形態は、それぞれ式(1)におけるAr
1、Ar
2、R
1、およびn
1における好ましい形態と同じである。
Rとして採り得るアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、ヘテロアリール基、アミノ基およびハロゲン原子の好ましい範囲ないし具体例は、後述する置換基群Tにおける対応する基の好ましい範囲ないし具体例と同じである。
【0046】
式(1)で表される金属錯体色素は下記式(3)で表される金属錯体色素および式(4)で表される金属錯体色素が好ましい。
【0048】
式(3)および式(4)中、R
1、R
2、n
1、n
2およびMは、それぞれ式(1)のR
1、R
2、n
1、n
2およびMと同義であり、好ましい範囲も同じである。
R
5、R
6、R
7およびR
8は置換基を表し、具体的には後記の置換基群Tから選択される基が挙げられる。
R
5およびR
7は好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基、ヘテロアリール基またはハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基またはアルコキシ基である。アルキル基およびアルコキシ基は分岐でも直鎖でもよいが、直鎖の置換基が好ましい。
R
6およびR
8は好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基、ヘテロアリール基またはハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基またはアルコキシ基である。
【0049】
m
1およびm
3は0〜7の整数を表し、好ましくは0〜3、さらに好ましくは0または1、特に好ましくは0である。
m
2およびm
4は0〜5の整数を表し、好ましくは0〜3、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくは0または1である。
【0050】
− 金属錯体色素 −
本発明の金属錯体色素は、上記のように、式(1)で表され、好ましい範囲も同じである。
【0051】
この金属錯体色素は、例えば、特開2001−291534号公報に記載の方法や当該公報に引用された方法、太陽電池に関する上記特許文献、公知の方法、または、これらに準じた方法で合成することができる。
【0052】
式(1)で表される金属錯体色素は、溶液における極大吸収波長が、好ましくは300〜600nmの範囲であり、より好ましくは350〜600nmの範囲であり、特に好ましくは370〜600nmの範囲である。
【0053】
<置換基群T>
本発明において、好ましい置換基としては、下記置換基群Tから選ばれる基が挙げられる。
また、本明細書において、単に置換基としてしか記載されていない場合は、この置換基群Tを参照するものであり、また、各々の基、例えば、アルキル基、が記載されているのみの場合は、この置換基群Tの対応する基における好ましい範囲、具体例が適用される。
さらに、本明細書において、アルキル基を環状(シクロ)アルキル基と区別して記載している場合、アルキル基は、直鎖アルキル基および分岐アルキル基を包含する意味で用いる。一方、アルキル基を環状アルキル基と区別して記載していない場合(単に、アルキル基と記載されている場合、および、特段の断りがない場合、アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基および環状アルキル基を包含する意味で用いる。このことは、環状構造を採りうる基(アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等)を含む基(アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニルオキシ基等)、環状構造を採りうる基を含む化合物についても同様である。下記置換基群Tの説明においては、例えば、アルキル基とシクロアルキル基のように、直鎖または分岐構造の基と環状構造の基とを明確にするため、これらを分けて記載していることもある。
【0054】
置換基群Tに含まれる基としては、下記の基を含が挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12で、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチルまたはトリフルオロメチル)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは1〜12で、例えば、ビニル、アリルまたはオレイル)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは1〜12で、例えば、エチニル、ブチニルまたはフェニルエチニル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数5〜20)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル、ジフルオロフェニルまたはテトラフルオロフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20で、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5員環または6員環のヘテロ環基がより好ましく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリルまたは2−オキサゾリル)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシまたはベンジルオキシ)、アルケニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは1〜12)、アルキニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは1〜12)、シクロアルキルオキシ基(好ましくは炭素数3〜20)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数2〜20)、
【0055】
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20)、シクロアルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数4〜20)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキルアミノ基、アルケニルアミノ基、アルキニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基、シクロアルケニルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、N−アリルアミノ、N−(2−プロピニル)アミノ、N−シクロヘキシルアミノ、N−シクロヘキセニルアミノ、アニリノ、ピリジルアミノ、イミダゾリルアミノ、ベンゾイミダゾリルアミノ、チアゾリルアミノ、ベンゾチアゾリルアミノまたはトリアジニルアミノ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルファモイル基が好ましい)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのカルバモイル基が好ましい)、
【0056】
アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールのスルホンアミド基が好ましい)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜12で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオまたはベンジルチオ)、シクロアルキルチオ基(好ましくは炭素数3〜20)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26)、アルキル、シクロアルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20)、
【0057】
シリル基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリル基が好ましい)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、アルキル、アリール、アルコキシおよびアリールオキシが置換したシリルオキシ基が好ましい)、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、カルボキシ基、スルホ基、ホスホニル基、ホスホリル基、あるいは、ホウ酸基が挙げられる。
【0058】
置換基群Tから選ばれる基は、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、シクロアルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはシアノ基が挙げられる。
化合物ないし置換基等がアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。またアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0059】
式(1)で表される金属錯体色素の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの金属錯体色素に限定されない。これらの金属錯体色素は光学異性体、幾何異性体が存在する場合、これらの異性体のいずれであってもよく、またこれらの異性体の混合物であってもよい。 下記具体例は、各具体例における配位子LAとZとの具体的な組み合わせに関わらず、配位子LAおよび配位子Zそれぞれの具体例をも独立に示すものである。
【0065】
次に、光電変換素子および色素増感太陽電池の主たる部材の好ましい態様について説明する。
【0066】
<導電性支持体>
導電性支持体は、導電性を有し、感光体層2等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された導電性支持体1、または、ガラスもしくはプラスチックの基板44とこの基板44の表面に成膜された透明導電膜43とを有する導電性支持体41が好ましい。
【0067】
なかでも、基板44の表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明導電膜43を成膜した導電性支持体41がさらに好ましい。プラスチックで形成された基板44としては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。また、基板44を形成する材料は、ガラスおよびプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、基板44の表面積1m
2当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体41を用いる場合、光は基板44側から入射させることが好ましい。
【0068】
導電性支持体1および41は、実質的に透明であることが好ましい。「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
導電性支持体1および41の厚みは、特に限定されないが、0.05μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明導電膜43を設ける場合、透明導電膜43の厚みは、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。
【0069】
導電性支持体1および41は、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、表面に、特開2003−123859号公報に記載の高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
【0070】
<感光体層>
感光体層は、上記色素21が担持された半導体微粒子22および電解質を有していれば、その他の構成は特に限定されない。好ましくは、上記感光体層2および上記感光体層42が挙げられる。
【0071】
− 半導体微粒子(半導体微粒子が形成する層) −
半導体微粒子22は、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の微粒子である。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブもしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン(チタニア)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
【0072】
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、またはルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドは、単独で、または、チタニア微粒子に混合して、用いることができる。
【0073】
半導体微粒子22の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で1次粒子として0.001〜1μm、分散物の平均粒径として0.01〜100μmであることが好ましい。半導体微粒子22を導電性支持体1または41上に塗設する方法として、湿式法、乾式法、その他の方法が挙げられる。
【0074】
半導体微粒子22は多くの色素21を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。例えば半導体微粒子22を導電性支持体1または41上に塗設した状態で、その表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。一般に、半導体微粒子22が形成する半導体層45(光電変換素子10においては感光体層2と同義)の厚みが大きいほど単位面積当たりに担持できる色素21の量が増えるため光の吸収効率が高くなるが、発生した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。
【0075】
半導体層45(光電変換素子10においては感光体層2)の好ましい厚みは、光電変換素子の用途によって一義的なものではないが、典型的には0.1〜100μmである。色素増感太陽電池として用いる場合は、1〜50μmがより好ましく、3〜30μmがさらに好ましい。
【0076】
半導体微粒子22は、導電性支持体1または41に塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間焼成して、粒子同士を密着させることが好ましい。成膜温度は、導電性支持体1または基板44の材料としてガラスを用いる場合、60〜600℃が好ましい。
【0077】
半導体微粒子22の、導電性支持体1または41の表面積1m
2当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
【0078】
導電性支持体1または41と感光体層2または42との間には、感光体層2または42が含む電解質と導電性支持体1または41が直接接触することによる逆電流を防止するため、短絡防止層を形成することが好ましい。
また、受光電極5または40と対極4または48の接触を防ぐために、スペーサーS(
図2参照)やセパレータを用いることが好ましい。
【0079】
− 色素 −
光電変換素子10および色素増感太陽電池20においては、増感色素として少なくとも1種の上記式(1)で表される金属錯体色素を使用する。式(1)で表される金属錯体色素は上記の通りである。
【0080】
本発明において、上記式(1)の金属錯体色素と併用できる色素としては、Ru錯体色素、スクアリリウムシアニン色素、有機色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素等が挙げられる。
【0081】
併用できる色素としては、Ru錯体色素、スクアリリウムシアニン色素、または有機色素が好ましい。
【0082】
色素の使用量は、全体で、導電性支持体1または41の表面積1m
2当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。また、色素21の半導体微粒子22に対する吸着量は1gの半導体微粒子22に対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。このような色素量とすることによって、半導体微粒子22における増感効果が十分に得られる。
【0083】
式(1)で表される金属錯体色素と他の色素を併用する場合、式(1)で表される金属錯体色素の質量/他の色素の質量の比は、95/5〜10/90が好ましく、95/5〜50/50がより好ましく、95/5〜60/40がさらに好ましく、95/5〜65/35が特に好ましく、95/5〜70/30が最も好ましい。
【0084】
色素を半導体微粒子22に担持させた後に、アミン化合物を用いて半導体微粒子22の表面を処理してもよい。好ましいアミン化合物としてピリジン化合物(例えば4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン)等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0085】
− 共吸着剤 −
本発明においては、式(1)で表される金属錯体色素または必要により併用する色素とともに共吸着剤を使用することが好ましい。このような共吸着剤としては酸性基(好ましくは、カルボキシ基またはその塩)を1つ以上有する共吸着剤が好ましく、脂肪酸やステロイド骨格を有する化合物が挙げられる。
脂肪酸は、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、例えば、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ヘキサデカン酸、ドデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
ステロイド骨格を有する化合物として、コール酸、グリココール酸、ケノデオキシコール酸、ヒオコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸等が挙げられる。好ましくはコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸であり、さらに好ましくはデオキシコール酸である。
【0086】
好ましい共吸着材として、特開2014−82187号公報の段落番号0125〜0129に記載の式(CA)で表される化合物が挙げられ、特開2014−82187号公報の段落番号0125〜0129の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0087】
上記共吸着剤は、半導体微粒子22に吸着させることにより、金属錯体色素の非効率な会合を抑制する効果および半導体微粒子表面から電解質中のレドックス系への逆電子移動を防止する効果がある。共吸着剤の使用量は、特に限定されないが、上記の作用を効果的に発現させる観点から、上記金属錯体色素1モルに対して、好ましくは1〜200モル、さらに好ましくは10〜150モル、特に好ましくは20〜50モルである。
【0088】
− 光散乱層 −
本発明において、光散乱層は、入射光を散乱させる機能を有する点で、半導体層と異なる。
色素増感太陽電池20において、光散乱層46は、好ましくは、棒状または板状の金属酸化物粒子を含有する。光散乱層46に用いられる金属酸化物粒子は、例えば、上記金属のカルコゲニド(酸化物)の粒子が挙げられる。光散乱層46を設ける場合、光散乱層の厚みは感光体層42の厚みの10〜50%とすることが好ましい。
光散乱層46は、特開2002−289274号公報に記載されている光散乱層が好ましく、特開2002−289274号公報の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0089】
<電荷移動体層>
本発明の光電変換素子に用いられる電荷移動体層3および47は、色素21の酸化体に電子を補充する機能を有する層であり、受光電極5または40と、対極4または48との間に設けられる。
電荷移動体層3および47は電解質を含む。ここで、「電荷移動体層が電解質を含む」とは、電荷移動体層が電解質のみからなる態様、および、電解質と電解質以外の物質を含有する態様の、両態様を含む意味である。
電荷移動体層3および47は、固体状、液体状、ゲル状またはこれら混合状態のいずれであってもよい。
【0090】
− 電解質 −
電解質の例としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体電解質、酸化還元対を含有する溶融塩および酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質等が挙げられる。なかでも、液体電解質が光電変換効率の点で好ましい。
【0091】
酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(ヨウ化物塩、ヨウ化イオン性液体が好ましく、ヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化メチルプロピルイミダゾリウムが好ましい)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体の組み合わせ(例えば赤血塩と黄血塩の組み合わせ)、2価と3価のコバルト錯体の組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせ、または2価と3価のコバルト錯体の組み合わせが好ましく、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせが特に好ましい。
【0092】
上記コバルト錯体は、特開2014−82189号公報の段落番号0144〜0156に記載の式(CC)で表される錯体が好ましく、特開2014−82189号公報の段落番号0144〜0156の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0093】
電解質として、ヨウ素とヨウ化物との組み合わせを用いる場合、5員環または6員環の含窒素芳香族カチオンのヨウ素塩をさらに併用するのが好ましい。
【0094】
液体電解質およびゲル電解質に用いる有機溶媒としては、特に限定されないが、非プロトン性の極性溶媒(例えばアセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、3−メチルオキサゾリジノン等)が好ましい。
特に、液体電解質に用いる有機溶媒としては、ニトリル化合物、エーテル化合物、エステル化合物等が好ましく、ニトリル化合物がより好ましく、アセトニトリル、メトキシプロピオニトリルが特に好ましい。
【0095】
溶融塩やゲル電解質としては、特開2014−139931号公報の段落番号0205および段落番号0208〜0213に記載のものが好ましく、特開2014−139931号公報の段落番号0205および段落番号0208〜0213の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0096】
電解質は、添加物として、4−t−ブチルピリジン等のピリジン化合物のほか、アミノピリジン化合物、ベンズイミダゾール化合物、アミノトリアゾール化合物およびアミノチアゾール化合物、イミダゾール化合物、アミノトリアジン化合物、尿素化合物、アミド化合物、ピリミジン化合物または窒素を含まない複素環を含有していてもよい。
【0097】
また、光電変換効率を向上させるために、電解液の水分を制御する方法をとってもよい。水分を制御する好ましい方法としては、濃度を制御する方法や脱水剤を共存させる方法を挙げることができる。電解液の水分含有量(含有率)を0〜0.1質量%に調整することが好ましい。
ヨウ素は、ヨウ素とシクロデキストリンとの包摂化合物として使用することもできる。また環状アミジンを用いてもよく、酸化防止剤、加水分解防止剤、分解防止剤、ヨウ化亜鉛を加えてもよい。
【0098】
以上の液体電解質および擬固体電解質の代わりに、p型半導体あるいはホール輸送材料等の固体電荷輸送層、例えば、CuI、CuNCS等を用いることができる。また、Nature,vol.486,p.487(2012)等に記載の電解質を用いてもよい。固体電荷輸送層として有機ホール輸送材料を用いてもよい。有機ホール輸送材料としては、特開2014−139931号公報の段落番号0214に記載のものが好ましく、特開2014−139931号公報の段落番号0214の記載が、そのまま本明細書に好ましく取り込まれる。
【0099】
酸化還元対は、電子のキャリアになるので、ある程度の濃度で含有するのが好ましい。好ましい濃度としては合計で0.01モル/L以上であり、より好ましくは0.1モル/L以上であり、特に好ましくは0.3モル/L以上である。この場合の上限は特に制限はないが、通常5モル/L程度である。
【0100】
<対極>
対極4および48は、色素増感太陽電池の正極として働くものであることが好ましい。対極4および48は、通常、上記導電性支持体1または41と同じ構成とすることもできるが、強度が十分に保たれるような構成では基板44は必ずしも必要でない。対極4および48の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光体層2および42に光が到達するためには、上記導電性支持体1または41と対極4または48との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の色素増感太陽電池においては、導電性支持体1または41が透明であって太陽光を導電性支持体1または41側から入射させるのが好ましい。この場合、対極4および48は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。色素増感太陽電池の対極4および48としては、金属もしくは導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチックが好ましく、白金を蒸着したガラスが特に好ましい。色素増感太陽電池では、構成物の蒸散を防止するために、電池の側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
【0101】
[光電変換素子および色素増感太陽電池の製造方法]
本発明の光電変換素子および色素増感太陽電池は、本発明の金属錯体色素および溶媒を含有する色素溶液(本発明の色素溶液)を用いて、製造することが好ましい。
【0102】
このような色素溶液には、本発明の金属錯体色素が溶媒に溶解されてなり、必要により他の成分を含んでもよい。
【0103】
使用する溶媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒を挙げることができるが、特にこれに限定されない。本発明においては有機溶媒が好ましく、さらにアルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、および、これらの2種以上の混合溶媒がより好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒または炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。さらに好ましくはアルコール溶媒とアミド溶媒、アルコール溶媒と炭化水素溶媒の混合溶媒、アルコール溶媒とニトリル溶媒の混合溶媒、特に好ましくはアルコール溶媒とアミド溶媒の混合溶媒、アルコール溶媒とニトリル溶媒の混合溶媒である。具体的にはメタノール、エタノール、プロパノールおよびt−ブタノールの少なくとも1種と、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドの少なくとも1種との混合溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールおよびt−ブタノールの少なくとも1種と、アセトニトリルとの混合溶媒が好ましい。
【0104】
色素溶液は共吸着剤を含有することが好ましく、共吸着剤としては、上記の共吸着剤が好ましい。
ここで、本発明の色素溶液は、光電変換素子や色素増感太陽電池を製造する際に、この溶液をこのまま使用できるように、金属錯体色素や共吸着剤の濃度が調整されている色素溶液が好ましい。本発明においては、本発明の色素溶液は、本発明の金属錯体色素を0.001〜0.1質量%含有することが好ましい。共吸着剤の使用量は上記した通りである。
【0105】
色素溶液は、水分含有量を調整することが好ましく、本発明では水分含有量を0〜0.1質量%に調整することが好ましい。
【0106】
本発明においては、上記色素溶液を用いて、半導体微粒子表面に式(1)で表される金属錯体色素またはこれを含む色素を担持させることにより、感光体層を作製することが好ましい。すなわち、感光体層は、導電性支持体上に設けた半導体微粒子に上記色素溶液を塗布(ディップ法を含む)し、乾燥または硬化させて、形成することが好ましい。
このようにして作製した感光体層を備えた受光電極に、さらに電荷移動体層や対極等を設けることで、本発明の光電変換素子または色素増感太陽電池を得ることができる。
色素増感太陽電池は、上記のようにして作製した光電変換素子の導電性支持体1および対極4に外部回路6を接続して、製造される。
【実施例】
【0107】
以下に実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0108】
以下に、本発明の金属錯体色素の合成方法を詳しく説明する。
下記合成方法において、室温とは25℃を意味する。また、下記スキームまたは化学式中、Etはエチルを表し、Buはブチルを表し、Acはアセチルを表す。
実施例1において合成した金属錯体色素を、MS(マススペクトル)測定より同定した。
【0109】
実施例1(金属錯体色素の合成)
本実施例で、合成した金属錯体色素D−1〜D−8を以下に示す。
【0110】
【化15】
【0111】
以下に、本発明の金属錯体色素の合成方法を詳しく説明するが、出発物質、色素中間体および合成ルートはこれらに限定されるものではない。
【0112】
(金属錯体色素D−1の合成)
下記のスキームの方法に従って金属錯体色素D−1を合成した。
【0113】
(i)化合物d−1−3の合成
20gの化合物d−1−1、18.56gの化合物d−1−2、tert−ブトキシナトリウム10.52gをトルエン144ml中で室温で攪拌し、脱気を行った。トリ−tert−ブチルホスフィン1.85g、酢酸パラジウム(II)1.02gを添加し、脱気を行った。その後100℃で1時間攪拌し、放冷後、水145ml、酢酸エチル75ml、メタノール10mlを加えて抽出・分液した。次いで有機層に飽和食塩水を加え分液した。得られた有機層をセライトろ過し、ろ液を濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで9.54gの化合物d−1−3を得た。
(ii)化合物d−1−5の合成
1.41gの化合物d−1−4を窒素雰囲気下、0℃でTHF(テラヒドロフラン)56.4mlに溶解し、別途調整したLDA(リチウムジイソプロピルアミド)を、化合物d−1−4の2.05等量を滴下し、75分攪拌した。その後5.0gの化合物d−1−3をTHF25mlに溶解した溶液を滴下し0℃で1時間攪拌し、室温で2時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液60mlを添加後、分液を行い、有機層を濃縮した。得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで950mgの化合物d−1−5を得た。
【0114】
(iii)化合物d−1−6の合成
920mgの化合物d−1―5、PPTS(ピリジニウムパラトルエンスルホン酸)556mgを、トルエン4.6mlに加え、窒素雰囲気下で2時間加熱還流を行った。得られた溶液をクロロホルム、メタノールおよび飽和重曹水で分液を行い、有機層を濃縮した。得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで723mgの化合物d−1−6を得た。
【0115】
(iv)化合物d−1−9の合成
30.6gの化合物d−1−7、30.0gの化合物d−1−8をエタノール中で2時間加熱攪拌した後、濃縮することで、60.6gの化合物d−1−9を得た。
【0116】
(v)化合物d−1−10の合成
500mgの化合物d−1−9、655mgの化合物d−1−6をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)20ml中にて、150℃で7時間加熱攪拌した。その後、得られた溶液にチオシアン酸アンモニウム2.5gを加え130℃で5時間攪拌した。得られた溶液を濃縮後、水を加え、ろ過し、ジエチルエーテルで洗い、残渣として得られた粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで737mgの化合物d−1−10を得た。
(vi)金属錯体色素D−1の合成
700mgの化合物d−1−10にDMF40ml、水2mlおよび3N水酸化ナトリウム水溶液を0.8ml加え、30℃で1時間攪拌した。その後、1Nトリフルオロメタンスルホン酸水溶液を滴下し、pH3.0とした。ろ過し、残渣として660mgの金属錯体色素D−1を得た。
【0117】
得られた金属錯体色素D−1の構造はMS測定により確認した。
MS−ESI m/z=1257.2(M+H)
+
【0118】
【化16】
【0119】
(金属錯体色素D−2の合成)
上記金属錯体色素D−1の合成において、化合物d−1−1に代えて下記化合物d−2−1を用いた以外は、上記金属錯体色素D−1の合成と同様にして、金属錯体色素D−2を合成した。
【0120】
【化17】
【0121】
(金属錯体色素D−3の合成)
上記金属錯体色素D−1の合成において、化合物d−1−1に代えて、下記化合物d−3−1を用いた以外は、上記金属錯体色素D−1の合成と同様にして、金属錯体色素D−3を合成した。
【0122】
【化18】
【0123】
(金属錯体色素D−4の合成)
上記金属錯体色素D−1の合成において、化合物d−1−1に代えて、下記化合物d−4−1を用いた以外は、上記金属錯体色素D−1の合成と同様にして、金属錯体色素D−4を合成した。
【0124】
【化19】
【0125】
(金属錯体色素D−5の合成)
上記金属錯体色素D−1の合成において、化合物d−1−1に代えて、下記化合物d−5−2を用いた以外は、上記金属錯体色素D−1の合成と同様にして、金属錯体色素D−5を合成した。
化合物d−5−2は下記スキームに従って合成した。
【0126】
【化20】
【0127】
(金属錯体色素D−6の合成)
上記金属錯体色素D−5の合成において、化合物d−5−2に代えて、下記化合物d−6−2を用いた以外は、上記金属錯体色素D−5の合成と同様にして、金属錯体色素D−6を合成した。
化合物d−6−2は、上記化合物d−5−2の合成において、化合物d−5−1に代えて、下記化合物d−6−1を用いた以外は、上記d−5−2の合成と同様にして、合成した。
【0128】
【化21】
【0129】
(金属錯体色素D−7の合成)
上記金属錯体色素D−5の合成において、化合物d−5−2に代えて、下記化合物d−7−2を用いた以外は、上記金属錯体色素D−5の合成と同様にして、金属錯体色素D−7を合成した。
化合物d−7−2は、上記化合物d−5−2の合成において、化合物d−5−1に代えて、下記化合物d−7−1を用いた以外は、上記d−5−2の合成と同様にして、合成した。
なお、d−7−1はJournal of Organic Chemistry,2012.vol.77,#1 p.143〜159に記載の方法で合成した。
【0130】
【化22】
【0131】
(金属錯体色素D−8の調製)
上記金属錯体色素D−1の合成において、化合物d−1−1に代えて、下記化合物d−8−3を用いた以外は、上記金属錯体色素D−1の合成と同様にして、金属錯体色素D−8を合成した。
化合物d−8−3は下記スキームに従って合成した。
【0132】
【化23】
【0133】
合成した各金属錯体色素を下記表1のデータから確認した。
【0134】
【表1】
【0135】
実施例2(色素増感太陽電池の製造)
実施例1で合成した金属錯体色素または下記比較化合物C1〜C3それぞれを用いて、以下に示す手順により、
図2に示す色素増感太陽電池20(5mm×5mmのスケール)を製造し、下記性能を評価した。結果を表2に示す。
【0136】
(受光電極前駆体の作製)
ガラス基板(基板44、厚み4mm)上にフッ素ドープされたSnO
2導電膜(透明導電膜43、膜厚;500nm)を形成した導電性支持体41を準備した。そして、このSnO
2導電膜上に、チタニアペースト「18NR−T」(DyeSol社製)をスクリーン印刷し、120℃で乾燥させ、次いで、チタニアペースト「18NR−T」を再度スクリーン印刷し、120℃で1時間乾燥させた。その後、乾燥させたチタニアペーストを500℃で焼成し、半導体層45(膜厚;10μm)を成膜した。この半導体層45上に、チタニアペースト「18NR−AO」(DyeSol社製)をスクリーン印刷し、120℃で1時間乾燥させた後に、乾燥させたチタニアペーストを500℃で焼成し、半導体層45上に光散乱層46(膜厚;5μm)を成膜した。このようにして、SnO
2導電膜上に、感光体層42(受光面の面積;5mm×5mm、膜厚;15μm、金属錯体色素は未担持)を形成し、金属錯体色素を担持していない受光電極前駆体を作製した。
【0137】
(色素吸着)
次に、金属錯体色素を担持していない感光体層42に実施例1で合成した各金属錯体色素D−1〜D−8を以下のようにして担持させた。先ず、t−ブタノールとアセトニトリルとの1:1(体積比)の混合溶媒に、上記金属錯体色素それぞれを濃度が2×10
−4モル/Lとなるように溶解し、さらにそこへ共吸着剤としてケノデオキシコール酸を上記金属錯体色素1モルに対して10モル加え、各色素溶液を調製した。次に、各色素溶液に受光電極前駆体を25℃で5時間浸漬し、引き上げ後に乾燥させることにより、受光電極前駆体に各金属錯体色素が担持した受光電極40をそれぞれ作製した。
【0138】
(色素増感太陽電池の組み立て)
対極48として、上記の導電性支持体41と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚み;100nm)を作製した。また、電解液として、ヨウ素0.1M(モル/L)、ヨウ化リチウム0.1M、4−t−ブチルピリジン0.005Mおよび1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド0.6Mをアセトニトリルに溶解して、液体電解質を調製した。さらに、感光体層42の大きさに合わせた形状を有するデュポン社製のスペーサーS(商品名:「サーリン」)を準備した。
上記のようにして作製した受光電極40それぞれと対極48とを、上記スペーサーSを介して、対向させて熱圧着させた後に、感光体層42と対極48との間に電解液注入口から上記液体電解質を充填して電荷移動体層47を形成した。このようにして作製した電池の外周および電解液注入口を、ナガセケムテック製レジンXNR−5516を用いて、封止、硬化し、各色素増感太陽電池(試料番号1〜8)を製造した。
【0139】
上記色素増感太陽電池の製造において、実施例1で合成した金属錯体色素に代えて、比較のための下記金属錯体色素C1〜C3をそれぞれ用いた以外は上記色素増感太陽電池の製造と同様にして、比較のための色素増感太陽電池(試料番号c1〜c3)を製造した。
金属錯体色素C1は特許文献1の実施例に記載の色素D−3である。金属錯体色素C2は特許文献2の[0042]の具体例に記載の色素40である。金属錯体色素C3は特許文献2の[0044]の具体例に記載の色素(58)である。
【0140】
【化24】
【0141】
<光電変換効率の評価〜評価方法A(擬似太陽光)>
製造した各色素増感太陽電池を用いて電池特性試験を行った。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター(WXS−85H、WACOM社製)を用い、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/m
2(10万ルクス)の擬似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、Jscおよび光電変換効率を求めた。この場合のJscをJscA、光電変換効率を変換効率Aという。
【0142】
各色素増感太陽電池のJscAおよび変換効率Aを、それぞれ試料番号c2のJscAおよび変換効率Aを基準として、下記評価基準により相対評価した。
本発明において、JscAおよび変換効率Aの評価は、A〜Dが合格レベルであり、実用上、好ましくはA〜Bである。
【0143】
−評価基準−
A:c2の1.20倍以上
B:c2の1.12倍以上、1.20倍未満
C:c2の1.08倍以上、1.12倍未満
D:c2の1.04倍以上、1.08倍未満
E:c2の1.00倍以上、1.04倍未満
F:c2の1.00倍未満
【0144】
<光電変換効率の評価〜評価方法B(低照度太陽光)>
製造した各色素増感太陽電池を用いて電池特性試験を行った。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター(WXS−85H、WACOM社製)を用い、渋谷工学から販売されているNDフィルター(ND1〜ND80)を用いて1mW/cm
2(1000ルクス)に調節した擬似太陽光を照射して行った。調節した照度は、オーシャンフォトニクス社製の分光器USB4000用いて確認した。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を求めた。この場合の光電変換効率を変換効率Bという。
【0145】
各色素増感太陽電池の変換効率Bを、試料番号c2の変換効率Bを基準として、下記評価基準により相対評価した。
本発明において、変換効率Bの評価は、A〜Dが合格レベルであり、実用上、好ましくはAおよびBである。
【0146】
−評価基準−
A:c2の2.0倍以上
B:c2の1.5倍以上、2.0倍未満
C:c2の1.2倍以上、1.5倍未満
D:c2の1.1倍以上、1.2倍未満
E:c2の1.0倍以上、1.1倍未満
F:c2の1.0倍未満
【0147】
<光電変換効率の評価〜評価方法C(屋内光)>
製造した各色素増感太陽電池を用いて電池特性試験を行った。電池特性試験は、東芝製の白色LED(型番:LDA8N−G−K/D/60W)を用いて行った。照度は、渋谷工学から販売されているNDフィルター(ND1〜ND80)を用いて300μW/cm
2(1000ルクス)に調節した。調節した照度は、オーシャンフォトニクス社製の分光器USB4000用いて確認した。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を求めた。この場合の光電変換効率を変換効率Cという。
【0148】
各色素増感太陽電池の変換効率Cを、試料番号c2の変換効率Cを基準として、下記評価基準により相対評価した。
本発明において、変換効率Cの評価は、A〜Dが合格レベルであり、実用上、好ましくはAおよびBである。
A:c2の2.0倍以上
B:c2の1.5倍以上、2.0倍未満
C:c2の1.2倍以上、1.5倍未満
D:c2の1.1倍以上、1.2倍未満
E:c2の1.0倍以上、1.1倍未満
F:c2の1.0倍未満
【0149】
【表2】
【0150】
表2に示されるように、本発明で規定する式(1)で表される金属錯体色素が半導体微粒子に担持された色素増感太陽電池(試料番号1〜8)は、Jscが高められ、高照度条件であっても、低照度条件であっても、優れた光電変換効率を発現することが分かった。
【0151】
これに対し、Ar
1およびAr
2のいずれの環構成原子数も8未満である金属錯体色素が半導体微粒子に担持された色素増感太陽電池(試料番号c1およびc2)は、Jscが低く、光電変換効率に劣る結果となった。また、Ar
1ないしAr
2の環構成原子のすべてのp軌道が芳香族性に寄与した形態ではない金属錯体色素c3も、Jscが低く、光電変換効率に劣る結果となった。