(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記縮合型シリコーン樹脂硬化物の含有量が、前記縮合型シリコーン樹脂硬化物と前記波長変換材料との合計含有量に対して、5質量%以上80質量%以下である、請求項1に記載の波長変換シート。
前記縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる前記式(A3)で表される構造単位の含有量が、前記縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、50モル%以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の波長変換シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる構造単位は、繰り返し単位として縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれていることが好ましい。
【0014】
<波長変換シート>
本実施形態の波長変換シートは、縮合型シリコーン樹脂硬化物と、波長変換材料とを含む。本実施形態の波長変換シートの製造に用いられる縮合型シリコーン樹脂は、波長変換材料と混合される樹脂であり、シート成形が可能である。また、本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物は、高温下に曝された場合でも、しわ、クラック等の発生の少ないため、耐熱性に優れる樹脂である。
【0015】
[縮合型シリコーン樹脂硬化物]
本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物の原料には、縮合型シリコーン樹脂が用いられる。すなわち、「縮合型シリコーン樹脂硬化物」とは、縮合型シリコーン樹脂を縮合反応させることにより硬化させた硬化物であり、流動性を有さない。
【0016】
縮合型シリコーン樹脂とは、ケイ素原子に結合した水酸基と、別のケイ素原子に結合したアルコキシ基または水酸基とを、脱アルコール反応または脱水反応させることにより重縮合する樹脂である。
【0017】
本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物の比重は、好ましくは1.20〜1.35である。
【0018】
本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物は、下記式(A3)で表される構造単位を含むことが好ましい。また、本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物は、下記式(A1)で表される構造単位、下記式(A1’)で表される構造単位および下記式(A2)で表される構造単位からなる群から選ばれる1種以上の構造単位をさらに含むことが好ましい。
【化3】
[式(A1)、式(A1’)、式(A2)および式(A3)中、
R
1は、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表す。
R
2は、炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基を表す。
複数あるR
1およびR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0019】
本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物は、式(A3)で表される構造単位、式(A1)で表される構造単位、式(A1’)で表される構造単位および式(A2)で表される構造単位の全てを含んでいることが好ましい。
【0020】
本明細書では、3個の酸素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「T体」という。
また、当該3個の酸素原子の全てが他のケイ素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「T3体」という。
また、当該3個の酸素原子のうち2個の酸素原子が他のケイ素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「T2体」という。
また、当該3個の酸素原子のうち1個の酸素原子が他のケイ素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「T1体」という。
つまり、「T体」は、「T1体」、「T2体」および「T3体」を意味する。
【0021】
本明細書では、2個の酸素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「D体」という。1個の酸素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「M体」という。4個の酸素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「Q体」という。
【0022】
式(A3)で表される構造単位は、他のケイ素原子と結合した3個の酸素原子およびR
1と結合しているケイ素原子を含んでいる。R
1は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基であるため、式(A3)で表される構造単位はT3体である。
【0023】
式(A2)で表される構造単位は、他のケイ素原子と結合した2個の酸素原子、R
1およびR
2と結合しているケイ素原子を含んでいる。R
2は炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基であるため、式(A2)で表される構造単位はT2体である。
【0024】
式(A1)で表される構造単位は、他のケイ素原子と結合した1個の酸素原子、R
1および2個のR
2と結合しているケイ素原子を含んでいる。R
1は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基であり、R
2は炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基であるため、式(A1)で表される構造単位はT1体である。
【0025】
式(A1’)で表される構造単位は、R
1および2個のR
2と結合しているケイ素原子を含み、当該ケイ素原子は、他の構造単位中のケイ素原子と結合している酸素原子と結合している。R
1は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基であり、R
2は炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基であるため、式(A1’)で表される構造単位はT1体である。
【0026】
式(A1)で表される構造単位および式(A1’)で表される構造単位は、縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれるオルガノポリシロキサン鎖の末端を構成している。また、式(A3)で表される構造単位は、縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれるオルガノポリシロキサン鎖の分岐鎖構造を構成している。すなわち、式(A3)で表される構造単位は、縮合型シリコーン樹脂硬化物の網目構造や環構造の一部を形成している。
【0027】
本明細書では、T3体に含まれるケイ素原子のことを「T3ケイ素原子」と称する。また、T2体に含まれるケイ素原子のことを「T2ケイ素原子」と称する。また、T1体に含まれるケイ素原子のことを「T1ケイ素原子」と称する。
【0028】
本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物において、式(A3)で表される構造単位、式(A1)で表される構造単位、式(A1’)で表される構造単位および式(A2)で表される構造単位の合計含有量は、縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが殊更に好ましい。
【0029】
換言すると、本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物において、T1体、T2体およびT3体の合計含有量は、縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが殊更に好ましい。
【0030】
さらに換言すると、本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物において、T1ケイ素原子、T2ケイ素原子およびT3ケイ素原子の合計含有量は、縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる全ケイ素原子の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが殊更に好ましい。
【0031】
本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物において、式(A3)で表される構造単位の含有量は、縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましく、55モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることがさらに好ましく、65モル%以上であることが特に好ましく、70モル%以上であることが殊更に好ましい。
【0032】
換言すると、本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物において、T3体の含有量は、縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましく、55モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることがさらに好ましく、65モル%以上であることが特に好ましく、70モル%以上であることが殊更に好ましい。
【0033】
さらに換言すると、本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物において、T3ケイ素原子の含有量は、縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる全ケイ素原子の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましく、55モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることが更に好ましく、65モル%以上であることが特に好ましく、70モル%以上であることが殊更に好ましい。
【0034】
本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物において、式(A3)で表される構造単位の含有量がこの範囲内であれば、得られる波長変換シートの室温(25℃)での貯蔵弾性率と、高温(150℃)での貯蔵弾性率とを所望の範囲に制御することができる。
【0035】
本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物において、D体の含有量は、縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが特に好ましく、4モル%以下であることが殊更に好ましい。
【0036】
縮合型シリコーン樹脂硬化物に含まれるT3ケイ素原子の含有量は、固体
29Si−NMR測定において求められる全ケイ素原子のシグナルの合計の面積で、T3ケイ素原子として帰属されるシグナルの面積を除することで求めることができる。なお、T3ケイ素原子以外のケイ素原子(T1ケイ素原子およびT2ケイ素原子)の含有量についても同様に求めることができる。
【0037】
R
1で表される炭素数1〜10のアルキル基は、直鎖状のアルキル基であってもよく、分岐鎖状のアルキル基であってもよく、環状構造を有するアルキル基であってもよい。これらの中でも、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0038】
R
1で表される炭素数1〜10のアルキル基は、当該アルキル基を構成する1個以上の水素原子が、他の官能基で置換されていてもよい。アルキル基の置換基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0039】
R
1で表される炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の無置換のアルキル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基またはn−ブチル基が好ましく、メチル基、エチル基またはイソプロピル基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0040】
R
1で表される炭素数6〜10のアリール基は、当該アリール基を構成する1個以上の水素原子が、他の官能基で置換されていてもよい。アリール基の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0041】
R
1で表される炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の無置換のアリール基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等のアルキルアリール基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0042】
上記式(A1)で表される構造単位、上記式(A1’)で表される構造単位、上記式(A2)で表される構造単位および上記式(A3)で表される構造単位において、R
1は、アルキル基が好ましく、耐熱性の観点からは、メチル基が好ましい。
【0043】
R
2で表される炭素数1〜4のアルコキシ基は、直鎖状のアルコキシ基であってもよく、分岐鎖状のアルコキシ基であってもよく、環状構造を有するアルコキシ基であってもよい。これらの中でも、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基が好ましく、直鎖状のアルコキシ基がより好ましい。
【0044】
R
2で表される炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基またはtert−ブトキシ基が挙げられ、本実施形態のシリコーン樹脂組成物の安定性と硬化性とをバランスよく両立させる観点からは、メトキシ基、エトキシ基またはイソプロポキシ基が好ましい。
【0045】
上記式(A1)で表される構造単位、上記式(A1’)で表される構造単位、上記式(A2)で表される構造単位および上記式(A3)で表される構造単位において、R
2は、メトキシ基または水酸基であることが好ましい。
【0046】
本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物は、上記式(A1)、上記式(A1’)、上記式(A2)および上記式(A3)で表される繰返し単位中のR
1がメチル基であり、R
2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルコキシ基または水酸基であることが好ましい。
【0047】
なお、本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物は、下記式(C1)、式(C1’)、式(C2)、式(C3)または式(C4)で表される構造単位をさらに含んでいてもよい。
【化4】
[ただし、式(C1)、式(C1’)、式(C2)、式(C3)および式(C4)中、R
7は炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基を表す。複数あるR
7は、同一であっても異なっていてもよい。]
【0048】
上述のとおり、本明細書では、4個の酸素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「Q体」という。
また、当該4個の酸素原子のうち1個の酸素原子が他のケイ素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「Q1体」という。式(C1)で表される構造単位および式(C1’)で表される構造単位は「Q1体」である。
また、当該4個の酸素原子のうち2個の酸素原子が他のケイ素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「Q2体」という。式(C2)で表される構造単位は「Q2体」である。
また、当該4個の酸素原子のうち3個の酸素原子が他のケイ素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「Q3体」という。式(C3)で表される構造単位は「Q3体」である。
また、当該4個の酸素原子の全てが他のケイ素原子と結合しているケイ素原子を含む構造単位を「Q4体」という。式(C4)で表される構造単位は「Q4体」である。
【0049】
つまり、Q体は、Q1体、Q2体、Q3体およびQ4体を意味する。
【0050】
本実施形態の波長変換シートにおいて、縮合型シリコーン樹脂硬化物の含有量は、縮合型シリコーン樹脂硬化物と波長変換材料との合計含有量に対して、5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上60質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
本実施形態の波長変換シートにおいて、縮合型シリコーン樹脂硬化物の含有量がこの範囲であれば、波長変換シートの変換効率を高くできるとともに、波長変換シートの室温(25℃)での貯蔵弾性率と、高温(150℃)での貯蔵弾性率とを所望の範囲に制御することができる。
【0052】
本実施形態の波長変換シートにおける縮合型シリコーン樹脂硬化物の含有量は、縮合型シリコーン樹脂、波長変換材料およびその他の原料の仕込み量から計算される値や、波長変換シートの元素分析により算出することができる。
【0053】
[波長変換材料]
本実施形態の波長変換シートに含まれる波長変換材料としては、例えば、蛍光体、量子ドットが挙げられる。蛍光体としては、例えば、波長570nmから700nmの範囲で蛍光を発する赤色蛍光体、490nmから570nmの範囲で蛍光を発する緑色蛍光体、420nmから480nmの範囲で蛍光を発する青色蛍光体などが挙げられる。蛍光体は、1種類のみを単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0054】
《赤色蛍光体》
赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、(Mg,Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体;規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、(Y,La,Gd,Lu)
2O
2S:Euで表わされるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体が挙げられる。
【0055】
他の赤色蛍光体としては、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、WおよびMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物もしくは酸硫化物またはその両方を含有する蛍光体であって、Al元素の一部または全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体が挙げられる。
【0056】
他の赤色蛍光体としては、(La,Y)
2O
2S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体;Y(V,P)O
4:Eu、Y
2O
3:Eu等のEu付活酸化物蛍光体;(Ba,Sr,Ca,Mg)
2SiO
4:Eu,Mn、(Ba,Mg)
2SiO
4:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体;(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体;YAlO
3:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体;LiY
9(SiO
4)
6O
2:Eu、Ca
2Y
8(SiO
4)
6O
2:Eu、(Sr,Ba,Ca)
3SiO
5:Eu、Sr
2BaSiO
5:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体;(Y,Gd)
3Al
5O
12:Ce、(Tb,Gd)
3Al
5O
12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体;(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN
2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN
3:Eu等のEu付活窒化物蛍光体;(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN
3:Ce等のCe付活窒化物蛍光体;(Sr,Ca,Ba,Mg)
10(PO
4)
6Cl
2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体;(Ba
3Mg)Si
2O
8:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)
3(Zn,Mg)Si
2O
8:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体;3.5MgO・0.5MgF
2・GeO
2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体;Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体;(Gd,Y,Lu,La)
2O
3:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体;(Gd,Y,Lu,La)
2O
2S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体;(Gd,Y,Lu,La)VO
4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体;SrY
2S
4:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体;CaLa
2S
4:Ce等のCe付活硫化物蛍光体;(Ba,Sr,Ca)MgP
2O
7:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)
2P
2O
7:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体;(Y,Lu)
2WO
6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体;(Ba,Sr,Ca)
xSi
yN
z:Eu,Ce(ここで、x、yおよびzは、1以上の整数を表す。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体;(Ca,Sr,Ba,Mg)
10(PO
4)
6(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体;((Y,Lu,Gd,Tb)
1−xSc
xCe
y)
2(Ca,Mg)
1−r(Mg,Zn)
2+rSi
z−qGe
qO
12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体が挙げられる。
【0057】
他の赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料が挙げられる。
【0058】
赤色蛍光体のうち、蛍光発光のピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上であり、かつ、蛍光発光のピーク波長が620nm以下、好ましくは610nm以下である赤色蛍光体は、橙色蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色蛍光体としては、例えば、(Sr,Ba)
3SiO
5:Eu、(Sr,Mg)
3PO
4)
2:Sn
2+、SrCaAlSiN
3:Euが挙げられる。
【0059】
《黄色蛍光体》
黄色蛍光体としては、例えば、酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。具体的には、RE
3M
5O
12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、LuおよびSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Al、GaおよびScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)、M
23M
32M
43O
12:Ce(ここで、M
2は2価の金属元素を表し、M
3は3価の金属元素を表し、M
4は4価の金属元素を表す。)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体;AE
2M
5O
4:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、MgおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表し、M
5は、SiおよびGeからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体;これらの蛍光体の構成元素である酸素原子の一部を窒素原子で置換した酸窒化物系蛍光体;AEAlSiN
3:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、MgおよびZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN
3構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0060】
他の黄色蛍光体としては、CaGa
2S
4:Eu(Ca,Sr)Ga
2S
4:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al)
2S
4:Eu等の硫化物系蛍光体;Ca
x(Si,Al)
12(O,N)
16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体が挙げられる。
【0061】
《緑色蛍光体》
緑色蛍光体としては、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si
2O
2N
2:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体;破断面を有する破断粒子から構成され、(Ba,Ca,Sr,Mg)
2SiO
4:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体が挙げられる。
【0062】
他の緑色蛍光体としては、Sr
4Al
14O
25:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al
2O
4:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体;(Sr,Ba)Al
2Si
2O
8:Eu、(Ba,Mg)
2SiO
4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)
2SiO
4:Eu、(Ba,Sr,Ca)
2(Mg,Zn)Si
2O
7:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体;Y
2SiO
5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体;Sr
2P
2O
7−Sr
2B
2O
5:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体;Sr
2Si
3O
8−2SrCl
2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体;Zn
2SiO
4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体;CeMgAl
11O
19:Tb、Y
3Al
5O
12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体;Ca
2Y
8(SiO
4)
6O
2:Tb、La
3Ga
5SiO
14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体;(Sr,Ba,Ca)Ga
2S
4:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体;Y
3(Al,Ga)
5O
12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体;Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce、Ca
3(Sc,Mg,Na,Li)
2Si
3O
12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体;CaSc
2O
4:Ce等のCe付活酸化物蛍光体;SrSi
2O
2N
2:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si
2O
2N
2:Eu、Eu付活βサイアロン、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体;BaMgAl
10O
17:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体;SrAl
2O
4:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体;(La,Gd,Y)
2O
2S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体;LaPO
4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体;ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体;(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO
3:Ce,Tb、Na
2Gd
2B
2O
7:Ce,Tb、(Ba,Sr)
2(Ca,Mg,Zn)B
2O
6:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体;Ca
8Mg(SiO
4)
4Cl
2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体;(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)
2S
4:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体またはチオガレート蛍光体;(Ca,Sr)
8(Mg,Zn)(SiO
4)
4Cl
2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体が挙げられる。
【0063】
他の緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素;ヘキシルサリチレートを配位子として有するテルビウム錯体等の有機蛍光体が挙げられる。
【0064】
《青色蛍光体》
青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、BaMgAl
10O
17:Euで表わされるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体;規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、(Ca,Sr,Ba)
5(PO
4)
3Cl:Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体;規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、(Ca,Sr,Ba)
2B
5O
9Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体;破断面を有する破断粒子から構成され、(Sr,Ca,Ba)Al
2O
4:Euまたは(Sr,Ca,Ba)
4Al
14O
25:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体が挙げられる。
【0065】
他の青色蛍光体としては、Sr
2P
2O
7:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体;Sr
4Al
14O
25:Eu、BaMgAl
10O
17:Eu、BaAl
8O
13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体;SrGa
2S
4:Ce、CaGa
2S
4:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体;(Ba,Sr,Ca)MgAl
10O
17:Eu、BaMgAl
10O
17:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体;(Ba,Sr,Ca)MgAl
10O
17:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体;(Sr,Ca,Ba,Mg)
10(PO
4)
6Cl
2:Eu、(Ba,Sr,Ca)
5(PO
4)
3(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体;BaAl
2Si
2O
8:Eu、(Sr,Ba)
3MgSi
2O
8:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体;Sr
2P
2O
7:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体;ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体;Y
2SiO
5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体;CaWO
4等のタングステン酸塩蛍光体;(Ba,Sr,Ca)BPO
5:Eu,Mn、(Sr,Ca)
10(PO
4)
6・nB
2O
3:Eu、2SrO・0.84P
2O
5・0.16B
2O
3:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体;Sr
2Si
3O
8・2SrCl
2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体が挙げられる。
【0066】
他の青色蛍光体としては、ナフタル酸イミド系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、スチリル系化合物、クマリン系化合物、ピラリゾン系化合物、トリアゾール系化合物等の蛍光色素;ツリウム錯体等の有機蛍光体等が挙げられる。
【0067】
《量子ドット》
量子ドットとしては、例えば、InAs系の量子ドット、CdE(E=S,Se,Te)系の量子ドット(CdS
xSe
1−x/ZnS等)が挙げられる。
【0068】
本実施形態の波長変換シートに含まれる波長変換材料の平均粒子径は、0.1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましく、2〜20μmであることが更に好ましい。波長変換材料の平均粒子径がこの範囲内であれば、より均一な波長変換シートとなる。
【0069】
本実施形態の波長変換シートにおいて、波長変換材料の含有量は、縮合型シリコーン樹脂硬化物と波長変換材料との合計含有量に対して、20質量%以上95質量%以下であることが好ましく、30質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上85質量%以下である事が更に好ましく、50質量%以上80質量以下であることが特に好ましい。
【0070】
[その他の成分]
本実施形態の波長変換シートは、縮合型シリコーン樹脂硬化物および波長変換材料の他に、添加剤等をさらに含んでいてもよい。
【0071】
また、本実施形態の波長変換シートは、無機粒子をさらに含んでいてもよい。無機粒子は、波長変換シートにおいて光を散乱させて波長変換材料をより効果的に励起させることができるとともに、波長変換シートの製造段階において、波長変換材料が、縮合型シリコーン樹脂を含む組成物中で沈降することを抑制することができる。
【0072】
無機粒子としては、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニア、アルミニウム、鉄、亜鉛等の酸化物、カーボンブラック、チタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウムが挙げられる。これらの中でも、ケイ素、チタン、ジルコニア、アルミニウム等の酸化物が好ましい。
【0073】
無機粒子の形状としては、例えば、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状が挙げられ、より均一な波長変換シートが得られるため、略球状が好ましい。
【0074】
本実施形態の波長変換シートに含まれる無機粒子は、1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。無機粒子の大きさは、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは1〜10μmである。
【0075】
無機粒子の一次粒子の平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡等により粒子を直接観察する画像イメージング法により求めることができる。
具体的には、まず、測定対象となる無機粒子を任意の溶媒に分散させた液を調製し、得られた分散液をスライドガラス等に滴下し、乾燥させる。接着テープの接着面に無機粒子を直接散布し、無機粒子を付着させたものを作製してもよい。
次に、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)により粒子を直接観察し、得られた形状から無機粒子の寸法を割り出すことにより、無機粒子の一次粒子の平均粒子径が求められる。
【0076】
無機粒子の含有量は、本実施形態の波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物100質量部に対して、0.01質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
【0077】
[波長変換シート]
本実施形態の波長変換シートは、25℃での貯蔵弾性率が2GPa以上10GPa以下である。
波長変換シートの25℃での貯蔵弾性率が2GPa以上であると、しわ、クラック等の発生を抑制することができる。
一方、波長変換シートの25℃での貯蔵弾性率が10GPa以下であると、波長変換シートと基材とを備える積層体を製造することが容易となる。
本実施形態の波長変換シートは、25℃での貯蔵弾性率が、好ましくは2GPa以上8GPa以下であり、より好ましくは2.5GPa以上6GPa以下である。
【0078】
本実施形態の波長変換シートは、150℃での貯蔵弾性率が0.1GPa以上5GPa以下の材料である。
波長変換シートの150℃での貯蔵弾性率が0.1GPa以上であると、波長変換シートが高温下に曝された場合でも、波長変換シートに含まれる縮合型シリコーン樹脂硬化物を構成する分子の運動性が抑制され、劣化反応が抑制されているため、着色の発生を抑制することができる。
一方、波長変換シートの150℃での貯蔵弾性率が5GPa以下であると、波長変換シートに応力が負荷された際、応力が適度に緩和されるため、高温から温度を下げた際のクラックの発生を抑制することができる。その結果、波長変換シートから安定して光を取り出すことができる。
本実施形態の波長変換シートは、150℃での貯蔵弾性率が、好ましくは0.1Pa以上3GPa以下であり、より好ましくは0.3GPa以上2GPa以下であり、さらに好ましくは0.5GPa以上1.5GPa以下である。
【0079】
本明細書において、波長変換シートの貯蔵弾性率とは、サンプル片に歪みまたは応力を与えて、歪みまたは応力に対して発生する応力または歪みを、粘弾性測定装置(例えば、TAインスツルメンツ社製 粘弾性測定装置DMA Q−800)で測定することにより算出される値である。
【0080】
本実施形態の波長変換シートの厚み(膜厚)は、波長変換シートを安定的に製造できるため、10μm以上であることが好ましい。また、本実施形態の波長変換シートの厚みは、波長変換シートの光学特性や耐熱性を高める観点から、1mm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。波長変換シートの厚みが1mm以下であることで、縮合型シリコーン樹脂硬化物による光吸収や光散乱を低減することができる。
【0081】
本実施形態の波長変換シートの膜厚は、例えば、波長変換シートの複数箇所における膜厚を、マイクロメーターを用いて測定し、その平均値を算出することにより求めることができる。複数箇所とは、例えば、波長変換シートの形状が4角形の場合、波長変換シートの中心部1箇所と、波長変換シートの隅部4箇所の合計5箇所が挙げられる。
【0082】
本実施形態の波長変換シートは、ショアD硬度が50以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましい。
【0083】
本明細書では、タイプDのデュロメータ(ゴム・プラスチック硬度計)によって1mm/秒の下降スピードで測定した硬度を、ショアD硬度とした。
【0084】
本実施形態の波長変換シートは、太陽電池、半導体レーザー、LED、フォトダイオード、CCD、CMOS等における波長変換シートの用途に好適に用いることができる。特に、本実施形態の波長変換シートは耐熱性に優れているため、耐熱性が要求される半導体レーザーの発光部用の波長変換シートに特に好適に用いることができる。
【0085】
本実施形態の波長変換シートは、耐熱性に優れる。
【0086】
<積層体>
本実施形態の積層体は、本実施形態の波長変換シートと、波長変換シートの一方の面に設けられた基材(支持基材)とを備える。
【0087】
支持基材は、積層体の用途により適宜選択すればよいが、例えば、公知の金属、フィルム、ガラス、セラミック、紙等を形成材料とする基材を使用することができる。
【0088】
支持基材の形成材料の具体例として、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア等の透明な無機酸化物ガラス;アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅、鉄等の金属板や箔;セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、アラミド等のプラスチックのフィルム;上記プラスチックがラミネートされた紙;上記プラスチックによりコーティングされた紙;上記金属がラミネートまたは蒸着された紙;上記金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフイルムが挙げられる。これらの中でも、無機酸化物ガラスまたは金属板が好ましい。
【0089】
支持基材の厚みは、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。支持基材の厚みが30μm以上であると、波長変換シートの形状を保護するのに十分な強度を有する。また、支持基材の厚みは、経済性の観点から、5000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましい。
【0090】
本実施形態の積層体は、耐熱性に優れる。
【0091】
<波長変換シートの製造方法>
本実施形態の波長変換シートの製造方法について説明する。
【0092】
本実施形態の波長変換シートの製造方法は、調製工程S1と、成形工程S2と、第一の加熱工程S3と、第二の加熱工程S4と、を含む。
【0093】
[調製工程S1]
調製工程S1では、縮合型シリコーン樹脂と、波長変換材料と、溶媒とを含む波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を調製する。
【0094】
[縮合型シリコーン樹脂]
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上であってもよい。
【0095】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂は、上記式(A3)で表される構造単位を含むことが好ましい。また、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂は、上記式(A1)で表される構造単位、上記式(A1’)で表される構造単位および上記式(A2)で表される構造単位からなる群から選ばれる1種以上の構造単位をさらに含むことが好ましい。
【0096】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂は、上記式(A1)で表される構造単位、上記式(A1’)で表される構造単位、上記式(A2)で表される構造単位および上記式(A3)で表される構造単位の全てを含んでいることが好ましい。
【0097】
本明細書において、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂が、後述するオリゴマー成分を含んでいる場合、「縮合型シリコーン樹脂に含まれる全構造単位」には、オリゴマー成分に含まれる構造単位を含めるものとする。
【0098】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、上記式(A1)で表される構造単位、上記式(A1’)で表される構造単位、上記式(A2)で表される構造単位および上記式(A3)で表される構造単位の合計含有量は、縮合型シリコーン樹脂に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが殊更に好ましい。
【0099】
換言すると、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、T1体、T2体およびT3体の合計含有量は、縮合型シリコーン樹脂に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが殊更に好ましい。
【0100】
さらに換言すると、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、T1ケイ素原子、T2ケイ素原子およびT3ケイ素原子の合計含有量は、縮合型シリコーン樹脂に含まれる全ケイ素原子の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることが特に好ましく、90モル%以上であることが殊更に好ましい。
【0101】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、上記式(A3)で表される構造単位の含有量は、縮合型シリコーン樹脂に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、65モル%以上であることが更に好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。
【0102】
換言すると、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、T3体の含有量は、縮合型シリコーン樹脂に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましい。
【0103】
換言すると、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、T3ケイ素原子の含有量は、縮合型シリコーン樹脂に含まれる全ケイ素原子の合計含有量に対して、50モル%以上であることが好ましい。
【0104】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、上記式(A3)で表される構造単位の含有量がこの範囲内であれば、得られる波長変換シートの室温(25℃)での貯蔵弾性率と、高温(150℃)での貯蔵弾性率とを所望の範囲に制御することができる。
【0105】
すなわち、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、T3体の含有量は、縮合型シリコーン樹脂に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、65モル%以上であることが更に好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。換言すると、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、T3ケイ素原子の含有量は、縮合型シリコーン樹脂に含まれる全ケイ素原子の合計含有量に対して、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、65モル%以上であることが更に好ましく、70モル%以上であることが特に好ましい。
【0106】
実施例で後述するように、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、T体の含有量およびT3体の含有量が上記の範囲内であれば、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を用いて得られる波長変換シートが十分な耐熱性を示し、かつ、耐熱試験後にも高い光透過率を示す。すなわち、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を用いて得られる波長変換シートは、耐クラック性に優れ、かつ、変色しにくい。
【0107】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂において、D体の含有量は、縮合型シリコーン樹脂に含まれる全構造単位の合計含有量に対して、30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以下であることが特に好ましく、4モル%以下であることが殊更に好ましい。
【0108】
縮合型シリコーン樹脂に含まれるT3ケイ素原子の含有量は、
29Si−NMR測定において求められる全ケイ素原子のシグナルの合計の面積で、T3ケイ素原子として帰属されるシグナルの面積を除することで求めることができる。なお、T3ケイ素原子以外のケイ素原子(T1ケイ素原子およびT2ケイ素原子)の含有量についても同様に求めることができる。
【0109】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂は、上記式(C1)、式(C1’)、式(C2)、式(C3)または式(C4)で表される構造単位をさらに含んでいてもよい。
【0110】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常、1500〜15000あり、2000〜10000であることが好ましく、2000〜8000であることより好ましい。縮合型シリコーン樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量がこの範囲内であれば、縮合型シリコーン樹脂の溶媒に対する溶解性が向上し、かつ、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を使用する際のハンドリング性および塗布性が向上する。
【0111】
シリコーン樹脂の重量平均分子量は、一般的に、ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を用いることができる。具体的には、シリコーン樹脂を可溶性の溶媒に溶かした後、得られた溶液を細孔(ポア)が数多く存在する充てん剤を用いたカラム内に移動相溶媒と共に通液し、カラム内で分子量の大小によって分離させ、分離された分子量成分の含有量を示差屈折率計やUV計、粘度計、光散乱検出器等を検出器として用いて検出する。GPC専用装置は広く市販されており、重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算によって測定することが一般的である。本明細書における重量平均分子量は、この標準ポリスチレン換算によって測定されたものである。
【0112】
(シリコーン樹脂A)
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂は、主剤となるシリコーン樹脂(以下、「シリコーン樹脂A」と称する場合がある。)と、後述する改質用シリコーン樹脂(オリゴマー成分)とが混合されたものであることが好ましい。
【0113】
シリコーン樹脂Aは、上記式(A3)で表される構造単位を含むことが好ましい。また、シリコーン樹脂Aは、上記式(A1)で表される構造単位、上記式(A1’)で表される構造単位および上記式(A2)で表される構造単位からなる群から選ばれる1種以上の構造単位をさらに含むことが好ましい。
【0114】
シリコーン樹脂Aにおいて、T1体、T2体およびT3体の合計含有量は、通常、シリコーン樹脂Aの全構造単位の合計含有量に対して、70モル%以上である。
シリコーン樹脂Aにおいて、T3体の含有量は、通常、シリコーン樹脂Aの全構造単位の合計含有量に対して、60モル%以上90モル%以下である。
【0115】
シリコーン樹脂Aのポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常、1500以上8000以下である。
【0116】
シリコーン樹脂Aにおいて、T1体、T2体およびT3体の合計含有量は、シリコーン樹脂Aの全構造単位の合計含有量に対して、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。
【0117】
シリコーン樹脂Aにおいて、T3体の含有量は、シリコーン樹脂Aの全構造単位の合計含有量に対して、65%以上90%以下であることが好ましく、70%以上85%以下であることがより好ましい。
【0118】
シリコーン樹脂Aのポリスチレン換算の重量平均分子量は、1500以上7000以下が好ましく、2000以上5000以下であることがより好ましい。
【0119】
シリコーン樹脂Aとしては、市販のシリコーンレジンを用いることができる。
【0120】
シリコーン樹脂Aは、シラノール基(Si−OH)を有することが好ましい。シリコーン樹脂Aにおいて、シラノール基を有するケイ素原子は、シリコーン樹脂Aに含まれる全ケイ素原子に対して、1〜30モル%であることが好ましく、5〜27モル%であることがより好ましく、10〜25モル%であることが更に好ましい。シリコーン樹脂Aにおいて、シラノール基を有するケイ素原子の含有量が上記の範囲内であれば、シリコーン樹脂Aと波長変換材料の表面とに水素結合が形成されるため、波長変換材料との混合性が良好になる。また、本実施形態の波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の硬化反応が進行しやすいため、耐熱性の高い波長変換シートを得ることができる。
【0121】
また、シリコーン樹脂Aにおいて、アルコキシ基を有するケイ素原子は、シリコーン樹脂Aに含まれる全ケイ素原子に対して、0モル%超20モル%以下であることが好ましく、0モル%超10モル%以下であることがより好ましく、1モル%以上10モル%以下であることが更に好ましい。シリコーン樹脂Aにおいて、アルコキシ基を有するケイ素原子の含有量が上記の範囲内であれば、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の保存安定性が良好であり、かつ、流動性が適切な範囲内となり、当該波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物のハンドリング性が向上する。
【0122】
シリコーン樹脂Aは、シロキサン結合を生じ得る官能基を有する有機ケイ素化合物を出発原料として合成することができる。ここで、「シロキサン結合を生じ得る官能基」としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基を挙げることができる。上記式(A3)で表される構造単位に対応する有機ケイ素化合物としては、例えば、オルガノトリハロシラン、オルガノトリアルコキシシラン等が挙げられる。シリコーン樹脂Aは、出発原料である有機ケイ素化合物を、各構造単位の存在比率に対応した比率で、塩酸等の酸または水酸化ナトリウム等の塩基の存在下で、加水分解縮合法で反応させることにより合成することができる。出発原料である有機ケイ素化合物を適宜選択することにより、シリコーン樹脂Aに含まれるT3ケイ素原子の存在比率を調整することができる。
【0123】
シリコーン樹脂Aの含有量は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる全縮合型シリコーン樹脂の合計含有量に対して、60質量%〜100質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。
【0124】
[改質用シリコーン]
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂は、シリコーン樹脂Aの他に、下記の改質用シリコーン(オリゴマー成分)を含んでいてもよい。縮合型シリコーン樹脂に改質用シリコーンが含まれることにより、本実施形態の波長変換シートは、柔軟性および耐クラック性に優れたものとなる。
【0125】
《オリゴマーB》
具体的には、改質用シリコーンとして、下記式(B1)、式(B1’)、式(B2)または式(B3)で表される構造単位を含むオリゴマーが挙げられる。
【0126】
【化5】
[式(B1)、式(B1’)、式(B2)および式(B3)中、
R
3は、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表す。
R
4は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基を表す。
複数あるR
3およびR
4は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0127】
式(B1)、式(B1’)、式(B2)または式(B3)で表される構造単位を含むオリゴマーのポリスチレン換算の重量平均分子量は、1000〜10000であることが好ましく、2000〜8000であることがより好ましく、3000〜6000であることがさらに好ましい。
【0128】
以下の説明においては、式(B1)、式(B1’)、式(B2)または式(B3)で表される構造単位を含み、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1000〜10000である改質用シリコーンを、「オリゴマーB」と称する。
【0129】
オリゴマーBは、(a)T2体を含むオリゴマーまたは(b)D体を含むオリゴマーが好ましく、(a)および(b)を満たすオリゴマー、すなわち(c)T2体およびD体と含むオリゴマーがより好ましい。
【0130】
(a)T2体を含むオリゴマー
(a)T2体を含むオリゴマーとしては、式(B2)で表される構造単位であって、R
4が炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基である構造単位の含有量、すなわちT2体の含有量が30〜60モル%であるものが好ましく、40〜55モル%であるものがより好ましい。
【0131】
オリゴマーBが(a)T2体を含むオリゴマーである場合、T2体の含有量が上述の範囲内であれば、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、シリコーン樹脂AおよびオリゴマーBの溶解性を確保しながら、熱硬化時に良好な硬化反応性を示す。
【0132】
(b)D体を含むオリゴマー
(b)D体を含むオリゴマーとしては、式(B1)、式(B1’)、式(B2)または式(B3)で表される構造単位を含むシリコーン樹脂であって、平均組成式が下記式(I)で表されるシリコーン樹脂が好ましい。
(R
5)
nSi(OR
6)
mO
(4−n―m)/2 …(I)
[式(I)中、
R
5は、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表す。
R
6は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または水素原子を表す。
nは1<n<2を満たす実数を表す。mは0<m<1を満たす実数を表す。]
【0133】
平均組成式が上記式(I)で表されるオリゴマーBは、上述した「T体」および「D体」を含む。
【0134】
式(I)において、R
5はメチル基が好ましく、R
6はメチル基または水素原子が好ましい。nは1<n≦1.5を満たす実数であり、且つ、mは0.5≦m<1を満たす実数であることが好ましく、nは1.1≦n≦1.4を満たす実数であり、且つ、mは0.55≦m≦0.75を満たす実数であることがより好ましい。式(I)におけるnおよびmがこれらの範囲内であれば、オリゴマーBとシリコーン樹脂Aとの相溶性が良好になる。
【0135】
オリゴマーBに含まれる全構造単位のうち、式(B1)で表される構造単位および式(B1’)で表される構造単位であって、2つのR
4のうち一方が炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基であり、他方が炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基である構造単位は、「D1体」である。
【0136】
オリゴマーBに含まれる全構造単位のうち、式(B2)で表される構造単位であって、R
4が炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基である構造単位は、「D2体」である。
【0137】
オリゴマーBが(b)D体を含むオリゴマーである場合、オリゴマーBに含まれる全構造単位のうち、D1体およびD2体の合計含有量は、5〜80モル%であることが好ましく、10〜70モル%であることがより好ましく、15〜50モル%であることがさらに好ましい。
【0138】
(c)T2体およびD体を含むオリゴマー
(c)T2体およびD体を含むオリゴマーは、(a)T2体を含むオリゴマーと、(b)D体を含むオリゴマーの双方の要件を満たすものである。
【0139】
オリゴマーBに含まれる全構造単位のうち、式(B1)で表される構造単位および式(B1’)で表される構造単位であって、2つのR
4が炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基である構造単位は、T1体である。
【0140】
オリゴマーBに含まれる全構造単位のうち、式(B2)で表される構造単位であって、R
4が炭素数1〜4のアルコキシ基または水酸基である構造単位は、T2体である。
【0141】
オリゴマーBに含まれる全構造単位のうち、式(B3)で表される構造単位は、T3体である。
【0142】
オリゴマーBが(c)T2体およびD体を含むオリゴマーである場合、オリゴマーBに含まれる全構造単位のうち、T1体、T2体およびT3体の合計含有量と、D体の含有量とのモル比(T体:D体)は、60:40〜90:10であることが好ましく、75:25〜85:15であることがより好ましい。T体:D体のモル比が上記の範囲内であれば、シリコーン樹脂AとオリゴマーBとの相溶性が良好になる。
【0143】
オリゴマーBは、シリコーン樹脂を構成する上述した各構造単位に対応し、シロキサン結合を生じ得る官能基を有する有機ケイ素化合物を出発原料として合成することができる。ここで、「シロキサン結合を生じ得る官能基」としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基を挙げることができる。上記式(B3)で表される構造単位に対応する有機ケイ素化合物としては、例えば、オルガノトリハロシラン、オルガノトリアルコキシシラン等が挙げられる。上記式(B2)で表される構造単位に対応する有機ケイ素化合物としては、例えば、オルガノジハロシラン、オルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0144】
オリゴマーBは、出発原料である有機ケイ素化合物を、各構造単位の存在比率に対応した比率で、塩酸等の酸または水酸化ナトリウム等の塩基の存在下で、加水分解縮合法で反応させることにより合成することができる。出発原料である有機ケイ素化合物を適宜選択することにより、オリゴマーBに含まれるT体のケイ素原子とD体のケイ素原子の存在比率を調整することができる。
【0145】
GPC法により測定したオリゴマーBの分子量分布において、ピークは単一であっても、複数存在していてもよい。オリゴマーBの分子量分布において、ポリスチレン換算の重量平均分子量7500以上の領域に存在するピークの面積の総和が、全ピークの面積の総和に対して、20%以上の大きさであり、ポリスチレン換算の重量平均分子量1000以下の領域に存在するピークの面積の総和が、全ピークの面積の総和に対して、30%以上であってもよい。
【0146】
オリゴマーBの含有量は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれるシリコーン樹脂の合計含有量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.2〜15質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることが更に好ましい。
【0147】
また、オリゴマーBの含有量は、シリコーン樹脂Aの含有量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましく、5〜12質量%であることが特に好ましい。
【0148】
(オリゴマーC)
その他の改質用シリコーンとしては、例えば、上記式(A1)、式(A1’)、式(A2)または式(A3)で表される構造単位を含むシリコーン樹脂であって、上記式(A3)で表される構造単位の含有量が、上記式(A1)で表される構造単位、上記式(A1’)で表される構造単位、上記式(A2)で表される構造単位および上記式(A3)で表される構造単位の合計含有量に対して、0〜30モル%であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1500未満であるシリコーン樹脂が挙げられる。
以下の説明においては、このようなシリコーン樹脂を、「オリゴマーC」と称する。
【0149】
オリゴマーCは、上記式(A1)で表される構造単位、上記式(A1’)で表される構造単位、上記式(A2)で表される構造単位および上記式(A3)で表される構造単位のうち、1種以上の構造単位を含むシリコーン樹脂であり、4種全ての構造単位を含むシリコーン樹脂であってもよい。
【0150】
オリゴマーCは、T1ケイ素原子、T2ケイ素原子およびT3ケイ素原子の合計含有量に対する、T3ケイ素原子の含有量の割合が0〜30モル%であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1500未満であるシリコーン樹脂である。T1ケイ素原子、T2ケイ素原子およびT3ケイ素原子の合計含有量に対する、T3ケイ素原子の含有量の割合は、0〜25モル%であることが好ましい。
【0151】
オリゴマーCは、水素原子と結合したケイ素原子(ヒドロシリル基)およびアルケニル基と結合したケイ素原子を実質的に有しないことが好ましい。オリゴマーCが、水素原子と結合したケイ素原子(ヒドロシリル基)またはアルケニル基と結合したケイ素原子を有すると、本実施形態の波長変換シートの耐熱性が低くなる。
【0152】
オリゴマーCは、下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン構造を有するオリゴマーであることが好ましい。
【0153】
【化6】
[式(1)中、
R
1およびR
2は、前記と同じ意味を表す。複数あるR
1およびR
2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
p
2、q
2、r
2、a
2およびb
2は、[a
2×q
2]/[(p
2+b
2×q
2)+a
2×q
2+(r
2+q
2)]=0〜0.3となる任意の0以上の数を表す。]
【0154】
式(1)で表されるオルガノポリシロキサン構造において、R
1がメチル基、エチル基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の基であり、R
2がメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基および水酸基からなる群より選択される1種以上の基であることが好ましく、R
1がメチル基およびエチル基からなる群より選択される1種以上の基であり、R
2がメトキシ基、エトキシ基およびイソプロポキシ基からなる群より選択される1種以上の基であることがより好ましい。本実施形態の波長変換シートの耐熱性の観点から、R
1はメチル基であることが好ましい。
【0155】
式(1)で表されるオルガノポリシロキサン構造を有するオリゴマーCの各構造単位の存在比率は、T1ケイ素原子、T2ケイ素原子およびT3ケイ素原子の存在比率で表すことができる。すなわち、T1ケイ素原子:T2ケイ素原子:T3ケイ素原子=[r
2+q
2]:[p
2+b
2×q
2]:[a
2×q
2]である。オリゴマーC中の各ケイ素原子の存在比率は、p
2、q
2、r
2、a
2およびb
2の数値を適宜調整することによって調整することができる。例えば、a
2とq
2の少なくとも一方が0の場合、オリゴマーC中にはT3ケイ素原子が存在せず、直鎖状または環状の分子のみが含まれる。一方、r
2とq
2の両方が0の場合、オリゴマーC中にはT2ケイ素原子のみが存在し、環状の分子のみが含まれる。
【0156】
式(1)で表されるオルガノポリシロキサン構造において、T2ケイ素原子の数をx
2とし、T3ケイ素原子の数をy
2とし、T1ケイ素原子の数をz
2とした場合、式(2)で表されるオルガノポリシロキサン構造中のT3ケイ素原子の存在比率は、[y
2/(x
2+y
2+z
2)]で表される。
【0157】
[a
2×q
2]/[(p
2+b
2×q
2)+a
2×q
2+(r
2+q
2)]は、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン構造中のT3ケイ素原子の存在比率:[y
2/(x
2+y
2+z
2)]に等しい。すなわち、式(2)中のp
2、q
2、r
2、a
2およびb
2は、T3ケイ素原子の存在比率が0〜0.3の範囲内となるように適宜調整される。
【0158】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物が含んでいてもよいオリゴマーCは、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン構造を有するシリコーン樹脂であって、T1ケイ素原子、T2ケイ素原子およびT3ケイ素原子の合計含有量に対する、T3ケイ素原子の含有量の割合:[y
2/(x
2+y
2+z
2)]が0〜0.3であり、且つ、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1500未満であるオリゴマーが好ましい。T3ケイ素原子の存在比率がこの範囲内であれば、T2ケイ素原子の存在比:[x
2/(x
2+y
2+z
2)]およびT1ケイ素原子の存在比:[z
2/(x
2+y
2+z
2)]は特に限定されない。オリゴマーCとしては、[y
2/(x
2+y
2+z
2)]が0〜0.25の範囲内であるものが好ましく、0.05〜0.2の範囲内であるものがより好ましい。
【0159】
オリゴマーCは、T3ケイ素原子の存在比率が比較的低いため、分岐鎖構造が少なく、直鎖状や環状の分子を多く含む。オリゴマーCとしては、環状分子のみを含むものであってもよいが、直鎖状の分子を多く含むものが好ましい。オリゴマーCとしては、例えば、T1ケイ素原子の存在比率:[z
2/(x
2+y
2+z
2)]が0〜0.80の範囲内であるものが好ましく、0.30〜0.80の範囲内であるものがより好ましく、0.35〜0.75の範囲内であるものが更に好ましく、0.35〜0.55の範囲内であるものが特に好ましい。
【0160】
GPC法により測定されるオリゴマーCのポリスチレン換算の重量平均分子量は1500未満である。オリゴマーCのポリスチレン換算の重量平均分子量が大きすぎる場合、本実施形態の波長変換シートの耐クラック性が不充分となる場合がある。オリゴマーCのポリスチレン換算の重量平均分子量は、1000未満であってもよい。
【0161】
オリゴマーCの1分子中のT1ケイ素原子、T2ケイ素原子およびT3ケイ素原子の数は、式(2)で表されるオルガノポリシロキサン構造を有する樹脂が、所望の分子量となるように適宜調整される。一実施形態においては、オリゴマーC1分子中のT1ケイ素原子の数とT2ケイ素原子の数とT3ケイ素原子の数との和は、2以上であることが好ましい。
【0162】
オリゴマーCは、オリゴマーCを構成する上述した各構造単位に対応し、シロキサン結合を生じ得る官能基を有する有機ケイ素化合物を出発原料として合成することができる。ここで、「シロキサン結合を生じ得る官能基」は、上述したものと同じ意味を表す。上記式(A3)で表される構造単位に対応する有機ケイ素化合物としては、例えば、オルガノトリハロシラン、オルガノトリアルコキシシラン等が挙げられる。オリゴマーCは、このような出発原料である有機ケイ素化合物を各構造単位の存在比率に対応した比率で、加水分解縮合法で反応させることにより合成することができる。
【0163】
オリゴマーCの合成時には、出発原料として、上記式(A1)で表される構造単位に対応する有機ケイ素化合物と、上記式(A1’)で表される構造単位に対応する有機ケイ素化合物とを混合することとなる。これらの有機ケイ素化合物は、有機ケイ素化合物が加水分解縮合反応して重合する際に、重合反応の末端に結合して重合反応を停止させる。
【0164】
オリゴマーCの含有量は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれるシリコーン樹脂の合計含有量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.2〜15質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。
【0165】
また、オリゴマーCの含有量は、シリコーン樹脂Aの含有量に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.3〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0166】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂は、シリコーン樹脂Aに加えて、オリゴマーBまたはオリゴマーCを含むことが好ましく、シリコーン樹脂A、オリゴマーBおよびオリゴマーCを含むことがより好ましい。
【0167】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、シリコーン樹脂Aと、溶媒と、波長変換材料と、オリゴマーBまたはオリゴマーCとを含むことが好ましく、シリコーン樹脂Aと、溶媒と、波長変換材料と、オリゴマーBと、オリゴマーCとを含むことがより好ましい。
【0168】
改質用シリコーンの他の例としては、例えば、上記式(A1)で表される構造単位および上記式(A2)で表される構造単位を含むシリコーン樹脂が挙げられる。当該シリコーン樹脂は、D体を含むシリコーン樹脂である。
【0169】
[波長変換材料]
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる波長変換材料は、本実施形態の波長変換シートに含まれる波長変換材料と同様である。波長変換材料は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物中で沈降しやすい。波長変換材料の沈降を抑制するためには、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物中に含まれる他の材料を予め混合させた後、波長変換材料を混合することが好ましい。
【0170】
[溶媒]
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂は、T3体の含有量が高いため、ハンドリング性を向上させる目的で、溶媒を含有している。以下、縮合型シリコーン樹脂と溶媒とを含み、波長変換材料を含まない組成物を、「縮合型シリコーン樹脂組成物」と称する。
【0171】
溶媒は、シリコーン樹脂(シリコーン樹脂A)およびオリゴマー(オリゴマーBおよびオリゴマーC)を溶解させることができる限り特に限定されない。シリコーン樹脂とオリゴマーとを均一に混合させることができ、かつ、縮合型シリコーン樹脂組成物および波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の安定性を向上させることができるため、溶媒としては、沸点の異なる2種類以上の溶媒(以下、溶媒Pおよび溶媒Qと称する。)を用いることが好ましい。
【0172】
溶媒Pとしては、沸点が100℃未満の有機溶媒が好ましい。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒が好ましい。
【0173】
これらの中でも、溶媒Pとしては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール等のアルコール系溶媒がより好ましい。
【0174】
溶媒Qとしては、沸点が100℃以上の有機溶媒が好ましい。具体的には、グリコールエーテル溶媒、グリコールエステル溶媒などが好ましい。
【0175】
グリコールエーテル溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノベンジルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノベンジルエーテルが挙げられる。
【0176】
グリコールエステル溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールモノベンジルエーテルアセテートが挙げられる。
【0177】
これらの中でも、溶媒Qとしては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0178】
縮合型シリコーン樹脂組成物の粘度は、25℃において、100〜500000mPa・sであることが好ましい。
【0179】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物において、溶媒の含有量は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる全成分の合計含有量に対して、10〜40質量%であることが好ましい。溶媒の含有量が上記の範囲内であれば、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の粘度を、塗布性が良好となる範囲に調整しやすくなる。
【0180】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、波長変換材料の沈降を抑制しやすく、塗布性が良好となるため、25℃において、粘度が1000〜500000mPa・sの液状組成物であることが好ましい。
【0181】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の25℃における粘度が上記の範囲内であれば、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、例えば、スクリーン印刷等により、基板上に塗布することが容易である。また、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、加熱硬化時に溶媒および気泡を除去しやすい。そのため、高耐熱性の波長変換シートを得ることができる。波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の粘度は、例えば、コーンプレート式のE型粘度計により、コーンプレートが流体から受ける抵抗(粘性抵抗)を回転トルクで検出する方法により測定することができる。
【0182】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の25℃における粘度は、8000〜100000mPa・sであることが好ましく、10000〜80000mPa・sであることがさらに好ましい。波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の粘度がこの範囲内にあることで、塗布性が良好となる。
【0183】
従来の波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物では、シリカ等の沈降防止剤を添加することで、波長変換材料の分散性を維持していた。これに対し、上記の波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物では、粘度が上述した範囲内であれば、沈降防止剤を添加しなくても、波長変換材料の沈降を抑制することが可能である。
【0184】
(シリカ粒子)
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、実質的にシリカ粒子を含まないことが好ましい。ここで、「実質的にシリカ粒子を含まない」とは、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物が、シリカ粒子を全く含まない形態と、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の硬化物の光透過性を低下させない程度のシリカ粒子を含む形態とを意味する。ここで、「硬化物の光透過性を低下させない程度」とは、光透過性の低下の度合いが実用上問題のない程度であることを意味する。具体的には、シリカ粒子を含有する波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の硬化物の光透過性の低下の度合いが、シリカ粒子を含有しない波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の硬化物の光透過性に対して、10%以下であることを意味し、5%以下であることが好ましい。波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物において、シリカ粒子の含有量は、約1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0185】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物が、実質的にシリカ粒子を含まないことにより、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の硬化物を半導体発光装置の波長変換材料に適用した場合に、波長変換材料を形成するマトリックス樹脂の光透過性の低下を抑制することができる。その結果、半導体発光装置の光取出し効率の低下が抑制され、半導体発光装置の光出力の低下を抑制することができる。
【0186】
[その他の材料]
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、必要に応じて種々の材料を含んでいてもよい。波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、例えば、波長変換材料の拡散や塗布性の改善のために、無機粒子、接着助剤等の添加物を含んでいてもよい。波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、硬化用触媒またはシランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0187】
(硬化用触媒)
硬化用触媒としては、例えば、上記式(A1)で表される構造単位、上記式(A1’)で表される構造単位および上記式(A2)で表される構造単位におけるR
2が、アルコキシ基または水酸基である場合、加水分解縮合反応を促進するため、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、クエン酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、コハク酸等の有機酸を用いることができる。
【0188】
硬化用触媒として、酸性化合物だけではなく、アルカリ性の化合物を用いることができる。具体的には、硬化用触媒として、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等を用いることができる。
【0189】
硬化用触媒として、有機金属化合物触媒を用いることもできる。具体的には、硬化用触媒として、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、チタンまたは亜鉛を含有する有機金属化合物触媒を用いることができる。
【0190】
アルミニウムを含有する有機金属化合物触媒としては、例えば、アルミニウムトリアセチルアセテート、アルミニウムトリイソプロポキシドが挙げられる。
【0191】
ジルコニウムを含有する有機金属化合物触媒としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシジアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムアシレート、ジルコニウムトリブトキシステアレートが挙げられる。
【0192】
スズを含有する有機金属化合物触媒としては、例えば、テトラブチルスズ、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキサイド、テトラオクチルスズ、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズオキサイド、テトラメチルスズ、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ネオデカノエート)スズ、ジ−n−ブチルビス(エチルへキシルマレート)スズ、ジ−ノルマルブチルビス(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−ノルマルブチルブトキシクロロスズ、ジ−ノルマルブチルジアセトキシスズ、ジ−ノルマルブチルジラウリル酸スズ、ジメチルジネオデカノエートスズが挙げられる。
【0193】
チタンを含有する有機金属化合物触媒としては、例えば、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラノルマルブトキシド、プチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテートが挙げられる。
【0194】
亜鉛を含有する有機金属化合物触媒としては、例えば、亜鉛トリアセチルアセトネートが挙げられる。
【0195】
これらの中でも、燐酸エステルまたは燐酸が好ましく、燐酸が特に好ましい。
【0196】
硬化用触媒を所定の濃度で波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に添加するためには、硬化用触媒を水、有機溶媒、シリコーン系モノマー、アルコキシシランオリゴマー等に希釈した後、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物へ添加することが好ましい。
【0197】
硬化用触媒の含有量は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の硬化反応の加熱温度、時間、触媒の種類等を考慮して、適宜調整することができる。硬化用触媒の含有量は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上1質量部以下がさらに好ましい。
【0198】
硬化用触媒は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物へ事前に添加されていてもよいし、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の硬化反応を行う直前に、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物へ添加されていてもよい。
【0199】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上を有するシランカップリング剤が好ましい。これらの中でも、エポキシ基またはメルカプト基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0200】
シランカップリング剤の具体例としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0201】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物中にシランカップリング剤が含まれる場合、シランカップリング剤に含まれるケイ素原子も
29Si−NMRのシグナルとして検出されるが、本明細書においては、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物のシグナル面積の計算時にシランカップリング剤のシグナルも含めるものとする。
【0202】
シランカップリング剤の含有量は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる縮合型シリコーン樹脂100質量部に対して、0.0001質量部以上1.0質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上0.1質量部以下であることがより好ましい。
【0203】
(無機粒子)
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物に含まれる無機粒子は、本実施形態の波長変換シートに含まれていてもよい無機粒子と同様である。無機粒子は、波長変換シートにおいて光を散乱させて波長変換材料をより効果的に励起させることができるとともに、波長変換シートの製造段階において、波長変換材料が、縮合型シリコーン樹脂を含む組成物中で沈降することを抑制することができる。
【0204】
(その他の添加剤)
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、必要に応じて上述の材料以外の添加剤を含んでもよい。添加剤の具体例としては、分散剤、レベリング剤、消泡剤が挙げられる。
【0205】
[波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物]
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、シリコーン樹脂(シリコーン樹脂A)と、波長変換材料と、溶媒と、必要に応じてその他の成分(オリゴマーB、オリゴマーC等)を混合することにより得られる。
【0206】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物は、シリコーン樹脂A、オリゴマーBおよびオリゴマーCを含むことが好ましい。ここで、シリコーン樹脂Aに対して、シリコーン樹脂Aよりも少量のオリゴマーBと、シリコーンAよりも少量のオリゴマーCとを含むことが好ましい。波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物において、シリコーン樹脂A、オリゴマーBおよびオリゴマーCの混合比は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の塗布性が良好となり、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の硬化物(波長変換シート)の耐熱性がより優れたものとなるため、シリコーン樹脂A:オリゴマーB:オリゴマーC=100:0.1〜20:0.1〜20(質量比)であることが好ましい。
【0207】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物において、シリコーン樹脂の混合比は、シリコーン樹脂A:オリゴマーB:オリゴマーC=100:0.2〜15:0.2〜15(質量比)であることがより好ましく、シリコーン樹脂A:オリゴマーB:オリゴマーC=100:1〜10:1〜10(質量比)であることがさらに好ましい。
【0208】
[混合]
まず、シリコーン樹脂(例えば、シリコーン樹脂A、オリゴマーBおよびオリゴマーC)を調製する。
【0209】
シリコーン樹脂A、オリゴマーBおよびオリゴマーCの混合方法は特に限定されるものではなく、2種類以上の高分子を混合する際に行われる公知の方法のいずれを用いてもよい。例えば、シリコーン樹脂A、オリゴマーB、オリゴマーC、および、必要に応じてその他の成分のそれぞれを有機溶媒に溶解させた後、得られた溶液を混合してもよい。
【0210】
シリコーン樹脂をより均一に混合させることができ、かつ、調製されたシリコーン樹脂組成物の安定性を向上させることができるため、シリコーン樹脂を揮発性および溶解性が高い有機溶媒に溶解させた後、当該有機溶媒を別の溶媒に置換することが好ましい。
【0211】
具体的には、まず、揮発性および溶解性の高い有機溶媒(以下、「溶媒P」と称する。)にシリコーン樹脂Aを加えた後、溶媒Pの沸点付近の温度まで加熱し、攪拌することによって、シリコーン樹脂Aを溶解させる。
次に、得られた溶液に、オリゴマーB、オリゴマーC、および、必要に応じてその他の成分を加えた後、上記と同様の方法で、オリゴマーB、オリゴマーC、および、必要に応じてその他の成分を、溶媒Pに溶解させる。
次に、得られた溶液に、溶媒Pよりも揮発性が低い溶媒(以下、「溶媒Q」と称する。)を加えた後、溶媒Pの濃度が1%以下になるまで加熱蒸留することにより、溶媒Pから溶媒Qへの置換を行うことができる。溶媒置換を効率的に行うために、加熱蒸留を減圧状態下で行ってもよい。
【0212】
溶媒置換を行うことにより、シリコーン樹脂A、オリゴマーB、オリゴマーC、および、その他の成分のそれぞれに含まれる残存溶媒、水等を除去することができる。そのため、溶媒置換により、縮合型シリコーン樹脂組成物の安定性を向上させることができる。
【0213】
続いて、調製された縮合型シリコーン樹脂組成物と、波長変換材料と、必要に応じて追加溶媒とを混合し、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を得る。波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の調製は、公知の撹拌・混練機を用いて行うことができる。公知の撹拌・混練機としては、例えば、ホモジナイザー、自公転型攪拌機、3本ローラー、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミルが挙げられる。混合分散後または混合分散の過程において、必要に応じて、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を、真空または減圧条件下で脱泡してもよい。
【0214】
[成形工程S2]
成形工程S2では、通常、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を支持基材上にシート状に成形して、支持基材上に成形体を得る。支持基材は、成形体を得た後に剥離してもよいし、剥離しなくてもよい。成形方法は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物をシート状に成形できる限り特に制限されず、公知の塗布装置を用いて行うことができる。
公知の塗布装置としては、例えば、リバースロールコーター、ブレードコーター、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、キスコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ワイヤーバーコーター、アプリケーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーター、ナイフコーターが挙げられる。これらの中でも、得られる成形体の膜厚が均一になりやすいため、スリットダイコーターまたはアプリケーターを用いて波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を支持基材上に塗布することが好ましい。
【0215】
他の成形方法としては、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、平版印刷等の印刷法が挙げられる。これらの中でも、作業性の観点からは、スクリーン印刷が好ましい。
【0216】
波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を、スクリーン印刷法により支持基材上に塗布する方法について説明する。
まず、支持基材の表面を所要パターンの開口部を有するマスクで覆い、スキージ部に波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を投入する。次に、スキージを移動させて波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を加圧しながらマスク上を移動させることにより、当該マスクの開口部に波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を充填する(充填工程)。次に、充填工程後、マスクを取り外す。
このようにして、支持基材上に波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物のパターンを形成することができる。
【0217】
なお、支持基材上に波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物のパターンを形成する例を説明したが、支持基材上の全面に波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を形成してもよい。
【0218】
[第一の加熱工程S3]
第一の加熱工程S3および後述する第二の加熱工程S4では、得られた成形体を加熱硬化させて波長変換シートを得る。成形体の加熱は、通常、自然対流式オーブン、送風式オーブン、真空オーブン、イナートオーブン、ホットプレート、熱プレス機、赤外線ヒーター等の機器を用いて行われる。これらの中でも、生産性の観点から、送風式オーブンを用いることが好ましい。
【0219】
第一の加熱工程S3では、得られた成形体を、0.60≦E/D≦0.97の要件を満たすように、室温(25℃)から120℃まで昇温させた雰囲気内に放置して硬化させる。
【0220】
ここで、Dは、第一の加熱工程S3前の成形体の質量を表す。
Eは、第一の加熱工程S3後の成形体の質量を表す。
【0221】
本実施形態の製造方法において、第一の加熱工程S3は、0.70≦E/D≦0.97の要件を満たすことが好ましく、0.80≦E/D≦0.96の要件を満たすことがより好ましく、0.85≦E/D≦0.96の要件を満たすことがさらに好ましく、0.90≦E/D≦0.95の要件を満たすことが特に好ましい。
【0222】
E/Dの値が0.60以上であると、波長変換材料の分散性を確保しながらクラックや皺の無いシートを形成することができる。
E/Dの値が0.97以下であると、第二の加熱工程で揮発する成分を減らすことが可能となり、シート中の気泡の固定化を抑制することができる。
【0223】
[第二の加熱工程S4]
第二の加熱工程S4では、第一の加熱工程S3で得られた成形体を、1.01≦C/B≦1.30の要件を満たすように、120℃から150℃まで昇温させた雰囲気内に放置して硬化させる。なお、成形体の加熱は、第一の加熱工程S3と同様の機器を用いて行われる。
【0224】
ここで、Bは、第一の加熱工程S3後の成形体に含まれる全構造単位の合計含有量に対する、T3体(前記式(A3)で表される構造単位)の含有量を表す。換言すると、第一の加熱工程S3後の成形体に含まれる全ケイ素原子の合計含有量に対する、T3ケイ素原子の含有量を表す。
Cは、第二の加熱工程S4後の成形体に含まれる全構造単位の合計含有量に対する、T3体(前記式(A3)で表される構造単位)の含有量を表す。換言すると、第二の加熱工程S4後の成形体に含まれる全ケイ素原子の合計含有量に対する、T3ケイ素原子の含有量を表す。
【0225】
本実施形態の製造方法において、第二の加熱工程S4は、1.02≦C/B≦1.20を満たすことが好ましく、1.03≦C/B≦1.10の要件を満たすことがより好ましい。
C/Bの値が1.01以上であると、実使用が可能なシートの強度を達成することができる。
C/Bの値が1.30以下であると、気泡の固定化や、皺、クラックが発生しにくいシートを得ることができる。
【0226】
このようにして、本実施形態の波長変換シートを得ることができる。
【0227】
第一の加熱工程S3は、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物中に含まれる溶媒や水を低減しつつ、シリコーン樹脂(シリコーン樹脂A)とオリゴマー(オリゴマーB、オリゴマーC)との縮合反応が進行しない温度で行われる。
【0228】
第二の加熱工程S4は、シリコーン樹脂(シリコーン樹脂A)とオリゴマー(オリゴマーB、オリゴマーC)との縮合反応が進行する温度で行われる。
【0229】
第一の加熱工程S3および第二の加熱工程S4により、蛍光体溶媒(波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物)における蛍光体(波長変換材料)の分散性を維持しながら、シリコーン硬化物の網目構造を適切に制御することができる。これにより、得られる波長変換シートは、しわやクラック、気泡の噛み込みを抑制することができる。
【0230】
本発明者らは、第一の加熱工程S3において溶媒と水を低減することで蛍光体(波長変換材料)の運動性を制限し、結果として蛍光体の沈降を抑制できると推測している。さらには、シリコーン分子(シリコーン樹脂の分子)を密に並べることができると推測している。このような状態のシリコーン樹脂およびオリゴマーを、第二の加熱工程S4において縮合させることで、貯蔵弾性率が適切な範囲の波長変換シートを形成することができる。このようにして得られた波長変換シートは割れにくく、高温使用時の変色も発生しにくい。
【0231】
本実施形態の波長変換シートの製造方法によれば、耐熱性に優れた波長変換シートが得られる。
【0232】
<発光装置>
図1は、本実施形態の波長変換シートを備えた発光装置の構造を示す断面図である。
発光装置1000は、基板110と、半導体レーザー素子(光源)120と、導光部130と、波長変換シート140と、反射鏡150とを有している。波長変換シート140は、上述した構成のものを用いることができる。
【0233】
半導体レーザー素子120は、基板110上に設定されている。
【0234】
導光部130は、内部に半導体レーザー素子120から射出されたレーザー光Laが入射され、内部でレーザー光Laを導光する。導光部130の一端には半導体レーザー素子120が光学的に接続され、他端には波長変換シート140が光学的に接続されている。
導光部130は、一端側から他端側に向けて幅が漸減する錘状を呈しており、半導体レーザー素子120から射出されたレーザー光Laが波長変換シート140に集束する構成となっている。
【0235】
反射鏡150は、波長変換シート140の周囲に配置された椀状の部材であり、波長変換シート140に面する曲面が光反射面となっている。反射鏡150は、波長変換シート140から射出される光を装置前方(レーザー光Laの照射方向)に偏向する。
【0236】
波長変換シート140に照射されたレーザー光Laは、波長変換シート140が含有する波長変換材料により白色光Lbに変換され、発光装置1000から出力される。
【0237】
発光装置1000は、半導体レーザー素子120を1つ有しているが、2つ以上有していてもよい。
【0238】
図2は、発光装置の変形例を示す断面図である。
図2および以下の説明において、
図1で説明した構成と同じ構成については、
図1と共通する符号を付している。
【0239】
発光装置1100は、複数の基板110と、複数の半導体レーザー素子(光源)120と、複数の光ファイバー180と、導光部130と、波長変換シート140と、反射鏡150と、透明支持体190とを有している。
【0240】
光ファイバー180は、内部に半導体レーザー素子120から射出されたレーザー光Laが入射され、内部でレーザー光Laを導光する。複数の光ファイバー180の一端にはそれぞれ半導体レーザー素子120が光学的に接続されている。また、複数の光ファイバー180は他端側で束ねられており、一束にまとめられた状態で他端において導光部130に光学的に接続されている。
導光部130は、内部に半導体レーザー素子120から射出されたレーザー光Laが入射され、内部でレーザー光Laを導光した後、装置前方に向けて射出する。導光部130は、装置前方に射出するレーザー光Laを集光する機能を有していてもよい。
【0241】
波長変換シート140は、透明支持体190に支持された状態で、導光部130と離間し導光部130に対向して配置されている。透明支持体190は、反射鏡150の開口部分を覆うようにして装置前方に設けられている。透明支持体190は、装置使用中に発生する熱により劣化しない透明材料を形成材料とする部材であり、例えばガラス板を用いることができる。
【0242】
波長変換シート140に照射されたレーザー光Laは、波長変換シート140が含有する波長変換材料により白色光Lbに変換され、発光装置1100から出力される。
【0243】
発光装置1000、1100においては、上述したように光源(半導体レーザー素子120)および発光部(波長変換シート140)が分離されている。これにより、発光装置の小型化や、デザイン性を向上させることが容易になる。
【実施例】
【0244】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0245】
[ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)測定]
試料(シリコーン樹脂A、オリゴマーB、オリゴマーC、シリコーン樹脂Pおよびシリコーン樹脂Q)を溶離液に溶解させた後、ポアサイズ0.45μmのメンブランフィルターでろ過することにより、測定溶液を調製した。得られた調製溶液について、下記のいずれかの条件で標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0246】
<測定条件1>
装置名 :東ソー社製HLC−8220 GPC
カラム :TSKgel SuperHM−H×2+SuperH2500×1(内径6.0mm×150mm×3本)
溶離液 :トルエン
流量 :0.6mL/分
検出器 :RI検出器(ポラリティー:−)
カラム温度:40℃
注入量 :40μL
分子量標準:標準ポリスチレン
【0247】
<測定条件2>
装置名 :東ソー社製HLC−8120 GPC
カラム :TSKgel MultiporeHXL−M×3本
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
流量 :1.0mL/分
検出条件 :RI検出器(ポラリティー:−)
カラム温度:40℃
注入量 :100μL
分子量標準:標準ポリスチレン
【0248】
[溶液NMR測定]
下記の実施例で用いたシリコーン樹脂(シリコーン樹脂A、オリゴマーB、オリゴマーCおよびシリコーン樹脂P)の構造単位の存在比率は、下記条件で測定された
1H−NMR法、
29Si−NMR法のいずれかの測定結果に基づいて算出した値である。
【0249】
<
1H−NMR測定条件>
装置名 :JEOL RESONANCE社製 ECA−500
観測核 :
1H
観測周波数 :500.16MHz
測定温度 :室温
測定溶媒 :DMSO−d
6
パルス幅 :6.60μ秒(45°)
パルス繰り返し時間 :7.0秒
積算回数 :16回
試料濃度(試料/測定溶媒):300mg/0.6mL
【0250】
<
29Si−NMR測定条件>
装置名 :Agilent社製 400−MR
観測核 :
29Si
観測周波数 :79.42MHz
測定温度 :室温
測定溶媒 :CDCl
3
パルス幅 :8.40μ秒(45°)
パルス繰り返し時間 :15.0秒
積算回数 :4000回
試料濃度(試料/測定溶媒):300mg/0.6mL
【0251】
<波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の調製>
[縮合型シリコーン樹脂組成物の調製]
(合成例1)
オイルバス内に設置したフラスコ内に、789.6gのシリコーン樹脂A(ポリスチレン換算の重量平均分子量:3500、測定条件1)と、96.0gの酢酸プロピルと、314.40gのイソプロピルアルコールとを加え、80℃で攪拌することにより、シリコーン樹脂Aを溶媒に溶解させた。
得られた溶液に、8.47gのオリゴマーC(ポリスチレン換算の重量平均分子量:<1000、測定条件1)と、75.08gのオリゴマーB(ポリスチレン換算の重量平均分子量:3400、測定条件1)とを加え、1時間以上攪拌することにより、オリゴマーCおよびオリゴマーBを溶媒に溶解させた。
得られた溶液に、274.49gの酢酸2−ブトキシエチルと、0.223gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)とを加えた。
【0252】
得られた混合物をエバポレーターにセットし、当該混合物の温度を85℃、エバポレーターの減圧度を2.0kPaの条件とした後、当該混合物中の酢酸プロピルおよびイソプロピルアルコールの合計濃度が1質量%以下になるまで、酢酸プロピルおよびイソプロピルアルコールを留去した。
【0253】
このようにして、合成例1の縮合型シリコーン樹脂組成物を得た。
【0254】
合成例1使用したシリコーン樹脂Aに含まれる構造単位、オリゴマーCに含まれる構造単位およびオリゴマーBに含まれる構造単位を以下表に示す。
【0255】
オリゴマーBは、表3に示す繰返し単位および存在比率で構成される樹脂を95%以上含んでいた。また、オリゴマーBは、重量平均分子量7500以上の領域に存在するピークの面積の総和が、ピークの全面積の総和に対して、20%以上であり、重量平均分子量1000以下の領域に存在するピーク面積の総和が、ピークの全面積の総和に対して、30%以上であった。
【0256】
(シリコーン樹脂A)
【0257】
【表1】
【0258】
(オリゴマーC)
【0259】
【表2】
【0260】
(オリゴマーB)
【0261】
【表3】
【0262】
(合成例2)
市販の付加型シリコーン樹脂SCR−1016AおよびSCR−1016B(ともに信越化学工業株式会社製)を50重量部ずつ加え、撹拌して均一にすることで、合成例2の付加型シリコーン樹脂組成物を得た。
【0263】
(合成例3)
オイルバス内に設置したフラスコ内に、40.0gのシリコーン樹脂P(ポリスチレン換算の重量平均分子量:3500、測定条件1)と、13.3gの酢酸2−ブトキシエチルとを加え、室温で攪拌することにより、シリコーン樹脂Pを溶媒に溶解させた。
得られた溶液に、26.6gのシリコーン樹脂Q(ポリスチレン換算の重量平均分子量:2100、測定条件2)を加え、室温で攪拌することにより、シリコーン樹脂Qを溶媒に溶解させた。
【0264】
このようにして、合成例3の縮合型シリコーン樹脂組成物を得た。合成例3の縮合型シリコーン樹脂組成物には、シリコーン樹脂Pとシリコーン樹脂Qとが、60:40の質量比で混合されている。
【0265】
合成例3使用したシリコーン樹脂Pに含まれる構造単位、シリコーン樹脂Qに含まれる構造単位を以下に示す。
【0266】
(シリコーン樹脂P)
【0267】
【表4】
【0268】
(シリコーン樹脂Q)
【0269】
【化7】
【0270】
[波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の調製]
合成例1、合成例2および合成例3で調製した縮合型シリコーン樹脂組成物に対して、波長変換材料と、硬化用触媒と、シリカ粒子とを添加し、十分に撹拌混合して、実施例1〜3並びに比較例1および3の波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を得た。表5に、波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物の配合比率を示す。
【0271】
なお、波長変換材料、硬化用触媒およびシリカ粒子としては、以下の材料を用いた。
波長変換材料 :YAG蛍光体(YAG:Ce、粒径:5.4μm、13.6μmおよび17.8μm)(株式会社東京化学研究所製)
硬化用触媒溶液(硬化用触媒):リン酸を15質量%含有する溶液
シリカ粒子 :X−52−7042(信越化学工業株式会社製)、平均粒径4μm
【0272】
【表5】
【0273】
<波長変換シートの作製>
実施例1〜3並びに比較例1および3の波長変換材料含有シリコーン樹脂組成物を、直径4cmのアルミニウムカップに加え、成形体を作製した。
【0274】
[実施例1〜3並びに比較例1および3]
実施例1〜3並びに比較例1および3の成形体を、オーブン中で、室温(25℃)から120℃まで4℃/分の速度で昇温することにより硬化させた(第一の加熱工程)。その後、120℃から150℃まで7℃/分の速度で昇温し、150℃で5時間放置することによりさらに硬化させた(第二の加熱工程)。このようにして、直径4cm、厚み1mmの波長変換シートを得た。
【0275】
実施例1の第一の加熱工程におけるE/Dの値を表6に示す。実施例1の第一の加熱工程におけるE/Dの値は0.93であった。
【0276】
[比較例2]
実施例1の成形体を、160℃にあらかじめ加熱したオーブンに投入し、160℃で5時間放置することで硬化させたところ、多数の気泡が確認された。
比較例2の第一の加熱工程におけるE/Dの値を表6に示す。比較例2の第一の加熱工程におけるE/Dの値は1.00であった。
【0277】
[固体
29Si−NMRを用いたT3体量B、Cの算出]
実施例1の波長変換シートについて、固体
29Si−NMRを下記測定条件で測定し、実施例1の波長変換シートに含まれる全ケイ素原子の合計含有量に対する、T3ケイ素原子の含有量(以下、「T3体量」と称する。)であるBおよびCの値を算出した。算出されたBおよびCを用いて算出されるC/Bを、表6では「T3体量比率」と示す。
【0278】
(測定条件)
装置名 :Bruker社製 AVANCE300
観測核 :
29Si
観測周波数 :59.6MHz
測定温度 :室温
測定法 :DDMAS法
基準物質 :ヘキサメチルシクロトリシロキサン
(−9.66ppmに設定、TMS0ppm設定に相当)
MAS条件 :3.5kHz
パルス幅 :π/6(1.4μ秒)
待ち時間 :20.0秒
積算回数 :4096回
試料量 :290mg
【0279】
実施例1の第二の加熱工程におけるC/Bの値を表6に示す。実施例1の第一の加熱工程におけるC/Bの値は1.05であった。
実施例1の波長変換シートにおけるT3体量(C)は、波長変換シートに含まれる全構造単位の合計含有量に対して、80%であった。
【0280】
【表6】
【0281】
<評価>
[貯蔵弾性率の測定]
実施例1〜3並びに比較例1および3で得られた波長変換シートについて、以下の条件により室温(25℃)および150℃における貯蔵弾性率をそれぞれ測定した。サンプル片として、厚み1mm、縦20mm、横5mmの大きさに切り出したものを用いた。
【0282】
(測定条件)
測定装置 :粘弾性測定装置DMA Q−800(TAインスツルメンツ製)
ひずみ :0.1%
角周波数 :10Hz
温度範囲 :25℃〜150℃
昇温速度 :5℃/分
測定雰囲気 :大気中
【0283】
実施例1〜3並びに比較例1および3で得られた波長変換シートの25℃および150℃における貯蔵弾性率の値を、表7に示す。
【0284】
[ショアD硬度の測定]
実施例1〜3並びに比較例1および3で得られた波長変換シートについて、以下の条件で、ショアD硬度を測定した。
【0285】
測定装置として、株式会社テクロック製のデュロメータ(ゴム・プラスチック硬度計)用自動低圧荷重器GS−610に、デュロメータGS−720G(タイプD)を装着したものを用いた。この装置を用いて、実施例1〜3並びに比較例1および3で得られた波長変換シートについて、1mm/秒の下降スピードでショアD硬度を測定した。測定は5箇所で実施し、平均値を算出した。
【0286】
実施例1〜3並びに比較例1および3で得られた波長変換シートのショアD硬度を、表7に示す。
【0287】
[耐熱性の評価]
実施例1〜3並びに比較例1および3で得られた波長変換シートを、250℃のオーブンの中に24時間放置した後、室温に戻した。加熱後の波長変換シートについて、しわ、クラックおよび着色の有無を目視で確認した。
【0288】
実施例1〜3並びに比較例1および3で得られた波長変換シートについて、目視による耐熱性の評価結果を表7に示す。
なお、実施例1〜3並びに比較例1および3で得られた波長変換シートはいずれも、加熱後の波長変換シートにおいて、しわおよびクラックは確認されなかった。
【0289】
【表7】
【0290】
また、実施例1〜3および比較例1で得られた波長変換シートについて、色差計での測定により、色合いの変化を確認した。色合いの変化は、以下の条件により確認した。
【0291】
(測定条件)
測定装置 :色差計「CM−3600d」(コニカミノルタ株式会社製)
測定径 :4mm
測定モード :SCE+SCI
光源 :D65
色差式 :CIE1994
【0292】
また、実施例1〜3および比較例1で得られた波長変換シートについて、色差計の測定結果を表8に示す。
【0293】
【表8】
【0294】
表7に示すように、実施例1〜3で得られた波長変換シートは25℃での貯蔵弾性率2GPa以上10GPa以下の範囲内であり、150℃での貯蔵弾性率が0.1GPa以上5GPa以下の範囲内であった。また、実施例1〜3で得られた波長変換シートは、ショアD硬度が50以上であった。実施例1〜3で得られた波長変換シートにおいては、250℃のオーブンで24時間加熱後も、しわ、クラックおよび着色はいずれも確認されず、耐熱性に優れていた。
【0295】
一方、表7に示すように、比較例1で得られた波長変換シートは25℃での貯蔵弾性率が2GPa以上10GPa以下の範囲内であるが、150℃での貯蔵弾性率が0.1GPa未満であった。また、比較例1で得られた波長変換シートは、ショアD硬度が50未満であった。比較例1で得られた波長変換シートは、250℃のオーブンで24時間加熱後に着色が確認され、耐熱性に劣っていた。
【0296】
また、表7に示すように、比較例3で得られた波長変換シートは25℃での貯蔵弾性率が2GPa未満であり、150℃での貯蔵弾性率が0.1GPa未満であった。比較例3で得られた波長変換シートは、250℃のオーブンで1時間加熱後に形状の大きな変形が確認され、耐熱性に劣っていた。
【0297】
本実施例において、ΔL
*の絶対値が10以下、かつΔa
*およびΔb
*の絶対値が5以下である物を良品とした。
【0298】
表8に示すように、実施例1〜3で得られた波長変換シートは、比較例1で得られた波長変換シートに比べて、ΔL
*、Δa
*およびΔb
*の絶対値が小さかった。このことから、実施例1〜3で得られた波長変換シートは、比較例1で得られた波長変換シートに比べて、耐熱性に優れることが明らかとなった。
【0299】
以上の結果より、本発明の波長変換シートが有用であることが確かめられた。