特許第6410966号(P6410966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6410966
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/06 20060101AFI20181015BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20181015BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20181015BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20181015BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20181015BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   C08L81/06
   C08L67/00
   C08K7/02
   C08K7/00
   C08K7/06
   C08K7/14
【請求項の数】15
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-558042(P2017-558042)
(86)(22)【出願日】2017年5月1日
(86)【国際出願番号】JP2017017135
(87)【国際公開番号】WO2017191828
(87)【国際公開日】20171109
【審査請求日】2017年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-92526(P2016-92526)
(32)【優先日】2016年5月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】小森 一弘
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−067726(JP,A)
【文献】 特開2013−194165(JP,A)
【文献】 特開2012−193343(JP,A)
【文献】 特開2008−007758(JP,A)
【文献】 特開2013−209622(JP,A)
【文献】 特開2004−315776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーと、を含む樹脂組成物であって、前記樹脂成分100質量部に対し、繊維状フィラーを30質量部以上100質量部以下含有し、前記樹脂成分100質量部に対し、板状フィラーを20質量部以上80質量部以下含有し、前記樹脂成分100質量部に対する、繊維状フィラーと板状フィラーとの合計が50質量部以上180質量部以下であり、前記樹脂成分は非晶性樹脂を含み、前記樹脂成分100質量部中に、前記非晶性樹脂を60質量部以上95質量部以下含有し、MD方向64mm×TD方向64mm×厚さ3mmであるキャビティを有する金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、
下記式(1)から求められるTDの成形収縮率が0.23%以下であり、
下記式(2)から求められるMDの成形収縮率が0.15%以下であり、
前記TDの成形収縮率/前記MDの成形収縮率が1.5以下であり、
前記樹脂成分は非晶性樹脂と液晶性樹脂とを含み、
前記非晶性樹脂はポリエーテルスルホンであり、
前記液晶性樹脂は液晶ポリエステルであり、
前記繊維状フィラーが、炭素繊維又はガラス繊維であり、
前記板状フィラーが、鱗片状グラファイト、タルク及びマイカからなる群から選ばれる少なくとも1種の板状フィラーであることを特徴とする樹脂組成物。
TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]−[成形体のTDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]×100・・・(1)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]−[成形体のMDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]×100・・・(2)
【請求項2】
前記TDの成形収縮率/前記MDの成形収縮率が、1.0以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーと、を含む樹脂組成物であって、前記樹脂成分100質量部に対し、繊維状フィラーを30質量部以上100質量部以下含有し、前記樹脂成分100質量部に対し、板状フィラーを20質量部以上80質量部以下含有し、前記樹脂成分100質量部に対する、繊維状フィラーと板状フィラーとの合計が50質量部以上180質量部以下であり、前記樹脂成分は非晶性樹脂を含み、前記樹脂成分100質量部中に、前記非晶性樹脂を60質量部以上95質量部以下含有し、
下記条件の金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、
下記式(3)から求められるTDの成形収縮率が0.02%以上0.20%以下であり、
下記式(4)から求められるMDの成形収縮率が−0.05%以上0.05%以下であり、
前記MDの成形収縮率と前記TDの成形収縮率との和が、0.25%以下であり、
前記樹脂成分は非晶性樹脂と液晶性樹脂とを含み、
前記非晶性樹脂はポリエーテルスルホンであり、
前記液晶性樹脂は液晶ポリエステルであり、
前記繊維状フィラーが、炭素繊維又はガラス繊維であり、
前記板状フィラーが、鱗片状グラファイト、タルク及びマイカからなる群から選ばれる少なくとも1種の板状フィラーであることを特徴とする樹脂組成物。
(条件)
金型キャビティ:MD方向64mm×TD方向64mm×厚さ3mmの基体において、前記基体の外周から7mm内側に想定される50mm×50mmの仮想正方形の角に平面視で頂点が重なるように4つの四角錘が付された形状のキャビティを有する
前記四角錘:底面2mm×2mm、高さ0.2mm
TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(3)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(4)
【請求項4】
前記MDの成形収縮率と前記TDの成形収縮率との和が0.15%以下である請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂成分100質量部に対して、炭素繊維を30質量部以上80質量部以下含有し、樹脂成分100質量部に対する繊維状フィラーと板状フィラーの合計含有量が50質量部以上120質量部以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーと、を含む樹脂組成物であって、前記樹脂成分100質量部に対し、繊維状フィラーを30質量部以上100質量部以下含有し、前記樹脂成分100質量部に対し、板状フィラーを20質量部以上80質量部以下含有し、前記樹脂成分は非晶性樹脂を含み、前記樹脂成分100質量部中に、前記非晶性樹脂を60質量部以上95質量部以下含有し、樹脂成分100質量部に対して、ガラス繊維を40質量部以上100質量部以下含有し、樹脂成分100質量部に対する繊維状フィラーと板状フィラーの合計含有量が50質量部以上140質量部以下であり、
前記樹脂成分は非晶性樹脂と液晶性樹脂とを含み、
前記非晶性樹脂はポリエーテルスルホンであり、
前記液晶性樹脂は液晶ポリエステルであり、
前記繊維状フィラーが、炭素繊維又はガラス繊維であり、
前記板状フィラーが、鱗片状グラファイト、タルク及びマイカからなる群から選ばれる少なくとも1種の板状フィラーである樹脂組成物。
【請求項7】
MD方向64mm×TD方向64mm×厚さ3mmであるキャビティを有する金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、
下記式(1)から求められるTDの成形収縮率が0.23%以下であり、
下記式(2)から求められるMDの成形収縮率が0.15%以下であり、
前記TDの成形収縮率/前記MDの成形収縮率が1.5以下である請求項6に記載の樹脂組成物。
TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]−[成形体のTDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]×100・・・(1)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]−[成形体のMDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]×100・・・(2)
【請求項8】
下記条件の金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、
下記式(3)から求められるTDの成形収縮率が0.02%以上0.20%以下であり、
下記式(4)から求められるMDの成形収縮率が−0.05%以上0.05%以下であり、
前記MDの成形収縮率と前記TDの成形収縮率との和が、0.25%以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の樹脂組成物。
(条件)
金型キャビティ:MD方向64mm×TD方向64mm×厚さ3mmの基体において、前記基体の外周から7mm内側に想定される50mm×50mmの仮想正方形の角に平面視で頂点が重なるように4つの四角錘が付された形状のキャビティを有する
前記四角錘:底面2mm×2mm、高さ0.2mm
TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(3)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(4)
【請求項9】
前記非晶性樹脂のガラス転移温度が160℃以上である請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
自動車部品成形用である請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いたオイルコントロールバルブ、ソレノイドバルブ、カーエアコンベーンまたはターボチャージャケーシング・シュラウド。
【請求項12】
樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーと、を含む樹脂組成物であって、前記樹脂成分100質量部に対し、繊維状フィラーを30質量部以上100質量部以下含有し、前記樹脂成分100質量部に対し、板状フィラーを20質量部以上80質量部以下含有し、前記樹脂成分100質量部に対する、繊維状フィラーと板状フィラーとの合計が50質量部以上180質量部以下であり、前記樹脂成分は非晶性樹脂を含み、前記樹脂成分100質量部中に、前記非晶性樹脂を60質量部以上95質量部以下含有し、
前記樹脂成分は非晶性樹脂と液晶性樹脂とを含み、
前記非晶性樹脂はポリエーテルスルホンであり、
前記液晶性樹脂は液晶ポリエステルであり、
前記繊維状フィラーが、炭素繊維又はガラス繊維であり、
前記板状フィラーが、鱗片状グラファイト、タルク及びマイカからなる群から選ばれる少なくとも1種の板状フィラーであることを特徴とする、自動車部品成形用樹脂組成物。
【請求項13】
MD方向64mm×TD方向64mm×厚さ3mmであるキャビティを有する金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、
下記式(1)から求められるTDの成形収縮率が0.23%以下であり、
下記式(2)から求められるMDの成形収縮率が0.15%以下であり、
前記TDの成形収縮率/前記MDの成形収縮率が1.5以下である請求項12に記載の自動車部品成形用樹脂組成物。
TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]−[成形体のTDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]×100・・・(1)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]−[成形体のMDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]×100・・・(2)
【請求項14】
樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーとを含み、前記樹脂成分100質量部に対し、繊維状フィラーを30質量部以上100質量部以下含有し、前記樹脂成分100質量部に対し、板状フィラーを20質量部以上80質量部以下含有し、前記樹脂成分100質量部に対する、繊維状フィラーと板状フィラーとの合計が50質量部以上180質量部以下であり、前記樹脂成分は非晶性樹脂を含み、前記樹脂成分100質量部中に、前記非晶性樹脂を60質量部以上95質量部以下含有し、
前記樹脂成分は非晶性樹脂と液晶性樹脂とを含み、
前記非晶性樹脂はポリエーテルスルホンであり、
前記液晶性樹脂は液晶ポリエステルであり、
前記繊維状フィラーが、炭素繊維又はガラス繊維であり、
前記板状フィラーが、鱗片状グラファイト、タルク及びマイカからなる群から選ばれる少なくとも1種の板状フィラーである樹脂組成物を用いた、オイルコントロールバルブ、ソレノイドバルブ、カーエアコンベーンまたはターボチャージャケーシング・シュラウド。
【請求項15】
前記樹脂組成物が、MD方向64mm×TD方向64mm×厚さ3mmであるキャビティを有する金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、
下記式(1)から求められるTDの成形収縮率が0.23%以下であり、
下記式(2)から求められるMDの成形収縮率が0.15%以下であり、
前記TDの成形収縮率/前記MDの成形収縮率が1.5以下である請求項14に記載のオイルコントロールバルブ、ソレノイドバルブ、カーエアコンベーンまたはターボチャージャケーシング・シュラウド。
TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]−[成形体のTDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]×100・・・(1)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]−[成形体のMDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]×100・・・(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関する。
本願は、2016年5月2日に、日本に出願された特願2016−092526号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気電子部品や自動車部品、雑貨など様々な用途分野において、成形材料としてプラスチックを含む組成物(以下、樹脂組成物)が好適に用いられている。例えば、ポリスルホンと液晶ポリエステルとを含む樹脂組成物は、ポリスルホンが有する耐熱性、機械物性および耐薬品性と、液晶ポリエステルが有する耐熱性、高流動性とを兼ね備える優れた樹脂材料として検討されている。
例えば、特許文献1には、ガラス転移温度が140℃以上の非晶性樹脂100重量部に対して、融点が200℃以上の結晶性樹脂0〜150重量部と、平均粒径が5〜100μmの鱗片状グラファイト5〜100重量部と、平均粒径が5〜100μmの粒子状フィラー1〜200重量部を配合してなる摺動部材用樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献2には、非晶性樹脂と、鱗片状グラファイトと炭素繊維とを含み、前記鱗片状グラファイトの含有量が、前記非晶性樹脂100質量部に対して、5〜40質量部であり、前記炭素繊維の含有量が、前記非晶性樹脂100質量部に対して、5〜60質量部である摺動部材用樹脂組成物が記載されている。
これらの樹脂組成物を用いて成形される成形体は、成形収縮率が低く、寸法精度に優れるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特許第3303697号公報
【特許文献2】特開2015−67726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、種々の機構部品用途において、軽量化やコストダウンの要求がますます強まっている。なかでも、自動車用部品用の様々な機構部材には、優れた寸法安定性が要求される。
特許文献1〜2に記載されている樹脂組成物には、さらに高い寸法精度を達成するため、未だ改良の余地がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、成形体を成形したときの寸法精度、特に成形体が円筒部を有する場合はその円筒部の真円度、が優れる樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明は、樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーと、を含む樹脂組成物であって、前記繊維状フィラーの含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、30質量部以上100質量部以下であり、
前記板状フィラーの含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、20質量部以上80質量部以下であり、
前記繊維状フィラーと前記板状フィラーとの合計含有量は、前記樹脂成分100質量部に対して、50質量部以上180質量部以下であり、
前記樹脂成分は非晶性樹脂を含み、
前記非晶性樹脂の含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、60質量部以上100質量部以下である樹脂組成物である。
[2]本発明は、MD64mm×TD64mm×厚さ3mmであるキャビティを有する金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、
下記式(1)から求められるTDの成形収縮率が0.23%以下であり、
下記式(2)から求められるMDの成形収縮率が0.15%以下であり、
前記TDの成形収縮率/前記MDの成形収縮率が1.5以下である[1]に記載の樹脂組成物である。
TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]−[成形体のTDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]×100・・・(1)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]−[成形体のMDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]×100・・・(2)
[3]本発明は、前記TD収縮率/MD収縮率が、1.0以下である[2]に記載の樹脂組成物である。
[4]本発明は、下記条件の金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、下記式(3)から求められるTDの成形収縮率が0.02%以上0.20%以下であり、
下記式(4)から求められるMDの成形収縮率が−0.05%以上0.05%以下であり、
前記MDの成形収縮率と前記TDの成形収縮率との和が、0.25%以下である[1]に記載の樹脂組成物である。
(条件)
金型キャビティ:MD64mm×TD64mm×厚さ3mmの基体において、前記基体の外周から7mm内側に想定される50mm×50mmの仮想正方形の角に平面視で頂点が重なるように4つの四角錘が付された形状のキャビティを有する
前記四角錘:底面2mm×2mm、高さ0.2mm
TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(3)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(4)
[5]本発明は、前記TD収縮率+MD収縮率が0.15%以下である[4]に記載の樹脂組成物である。
[6]本発明は、前記樹脂成分が、液晶性樹脂を含む[1]〜[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
[7]本発明は、前記繊維状フィラーが、炭素繊維又はガラス繊維である[1]〜[6]のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
[8]本発明は、炭素繊維の含有量が、樹脂成分100質量部に対して、30質量部以上80質量部以下であり、
繊維状フィラーと板状フィラーの合計含有量が、樹脂成分100質量部に対して、50質量部以上120質量部以下である、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
[9]本発明は、ガラス繊維の含有量が、樹脂成分100質量部に対して、40質量部以上100質量部以下であり、
繊維状フィラーと板状フィラーの合計含有量が、樹脂成分100質量部に対して、50質量部以上140質量部以下である[1]〜[7]のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
[10]本発明は、前記非晶性樹脂のガラス転移温度が160℃以上である[1]〜[9]のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
[11]本発明は、前記非晶性樹脂が、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、及び変性ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂である[1]〜[10]のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
[12]本発明は、前記液晶性樹脂が、液晶ポリエステルである[6]に記載の樹脂組成物である。
[13]本発明は、前記板状フィラーが、鱗片状グラファイト、タルク及びマイカからなる群から選ばれる少なくとも1種の板状フィラーである[1]〜[12]のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
[14]本発明は、自動車部品成形用である[1]〜[13]のいずれか1つに記載の樹脂組成物である。
[15]本発明は[1]〜[14]のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成されたオイルコントロールバルブ、ソレノイドバルブ、カーエアコンベーンまたはターボチャージャケーシング・シュラウドである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、成形体を成形したときの寸法精度、特に成形体が円筒部を有する場合はその円筒部の真円度、が優れる樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の樹脂組成物を用いて成形した成形体の収縮率を測定するための成形体を示す図である。
図2】本発明の樹脂組成物を用いて成形した成形体の収縮率を測定するための成形体を示す図である。
図3】本発明の樹脂組成物を用いて成形した成形体の収縮率を測定するための成形体を示す図である。
図4】本発明の樹脂組成物を用いて成形した、真円度の測定に用いるオイルコントロールバルブの図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪第1実施形態≫
本発明の樹脂組成物の1つの側面は、樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーと、を含む樹脂組成物であって、前記繊維状フィラーの含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、30質量部以上100質量部以下であり、前記板状フィラーの含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、20質量部以上80質量部以下であり、前記繊維状フィラーと前記板状フィラーとの合計含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、50質量部以上180質量部以下であり、前記樹脂成分は非晶性樹脂を含み、前記非晶性樹脂の含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、60質量部以上100質量部以下である樹脂組成物である。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、非晶性樹脂を含む樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーと、を特定の割合で含有することを特徴とする。
樹脂組成物から成形体を成形する際、成形体のMD(すなわち、Machine Direction:成形時の流れ方向)の成形収縮率(MD収縮率と記載することがある)が低減し易く、また、前記成形体のTD(すなわち、Transverse Direction:成形時の流れ方向に垂直な方向)の成形収縮率(TD収縮率と記載することがある)が上昇し易い。このため、TD収縮率/MD収縮率の値が大きくなる傾向にある。
ここで、例えばオイルコントロールバルブに代表される円筒形状の部品には、円筒部の真円度や凹凸を小さくするため、高い寸法精度が求められる。成形体を成形した際の、TD収縮率/MD収縮率の値が大きい樹脂組成物を用いてオイルコントロールバルブを製造すると、寸法精度が不十分であり、円筒部の真円度が悪化したり、凹凸が大きくなるという問題がある。
本実施形態は、非晶性樹脂を含む樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーと、を特定の割合で含有する樹脂組成物とすることにより、成形体を成形した際のTD収縮率/MD収縮率の値を小さくすることができる。これにより、成形体の寸法精度を高いものとできるため、特に、高い真円度が要求されるようなオイルコントロールバルブ等の自動車用部品の製造に好適に用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物の具体的な説明は後述する。
【0010】
≪第2実施形態≫
本発明における樹脂組成物の別の側面は、MDの長さ64mm×TDの長さ64mm×厚さ3mmであるキャビティを有する金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、下記式(1)から求められるTDの成形収縮率(以下、TD収縮率と記載することがある)が0.23%以下、好ましくは−0.04%以上であり、下記式(2)から求められるMDの成形収縮率(以下、MD収縮率と記載することがある)が0.15%以下、好ましくは0.01%以上であり、TD収縮率/MD収縮率が1.5以下、好ましくは−5.0以上である樹脂組成物である。
また別の側面として、TDの成形収縮率は−0.025〜0.116%であってもよい。TD収縮率/MD収縮率は−0.66〜1.33であってもよい。 TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]−[成形体のTDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値]×100・・・(1)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]−[成形体のMDの2辺の長さの平均値])/[金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値]×100・・・(2)
【0011】
具体的に、本実施形態について図1を用いて説明する。
図1に、樹脂組成物から成形した成形体の一例を示す。図1中、Gはフィルムゲートであるゲート部位を示し、L1はMDの辺を示し、L2はTDの辺を示し、L3は成形体の厚さを示す。
例えば、L1:64mm、L2:64mm、L3:3mmのキャビティを有する金型キャビティを使用して成形体を製造したときに、L1の長さ(図1中のL1及びL1の対辺の、2辺の長さの平均値、すなわち、成形体のMDの2辺の長さの平均値)を測定し、金型キャビティのL1相当の長さ(すなわち、金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値)とから、MD収縮率を下記の方法で算出する。
[MD収縮率(%)]=([金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値(μm)]−[成形体のMDの2辺の長さの平均値(μm)])/[金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値(μm)]×100
同様に、L2の長さ(図1中のL2及びL2の対辺の、2辺の長さの平均値、すなわち、成形体のTDの2辺の長さの平均値)を測定し、金型キャビティのL2相当の長さ(すなわち、金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値)とから、TD収縮率を下記の方法で算出する。
[TD収縮率(%)]=([金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値(μm)]−[成形体のTDの2辺の長さの平均値(μm)])/[金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値(μm)]×100
なお、本明細書において、「TDの2辺の長さ」、「MDの2辺の長さ」は、マイクロメーター(例えば、(株)ミツトヨ製「MDC−75M」)により測定し、「厚さ」は、マイクロメーター(例えば(株)ミツトヨ製「MD−25M」)により測定した。
【0012】
上記の方法により算出したMD収縮率は、0.01%以上、0.15%以下が好ましく、0.01%以上、0.10%以下がより好ましい。また、TD収縮率は、−0.04%以上、0.23%以下が好ましく、−0.04%以上、0.10%以下がより好ましい。
【0013】
さらに、TD収縮率/MD収縮率は1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.9以下が特に好ましい。また、好ましくは−5.0以上である。
1つの側面として、TD収縮率/MD収縮率は−5.0以上、1.5以下が好ましく、−5.0以上、0.9以下がより好ましい。
TD収縮率/MD収縮率が1.5を超えると、例えばオイルコントロールバルブ等の円筒形状を有する成形体を成形したときに、円筒部の真円度や凹凸度が低下する傾向がある。一方、TD収縮率/MD収縮率が−5.0を下回ると、ショートショットなどの成形不良を引き起こす虞がある。フィラーを過剰に添加した場合には、TD収縮率/MD収縮率が−5.0を下回ることがあるが、その場合には樹脂組成物の流動性が低下しすぎて、ショートショットなどの成形不良を引き起こす虞がある。
成形体を成形した場合の収縮率が上記の範囲であると、例えば円筒形状の部品を製造した場合に円筒部の真円度を高くすることができる。
なお、前記金型キャビティを使用した成形体の製造方法は、公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、ペレット状の樹脂組成物を射出成形機(例えば、日精樹脂工業(株)製「UH−1000」)により、シリンダー温度360〜380℃、射出速度50〜120mm/sec.、保持圧力80〜200MPa、金型温度150℃で、前記金型キャビティーに射出成形する方法により、成形体を得ることができる。
【0014】
≪第3実施形態≫
本発明の樹脂組成物の更に別の側面は、下記条件の金型キャビティを使用して成形体を形成したときに、下記式(4)から求められるMDの成形収縮率(以下、高精度MD収縮率ということがある)が−0.05%以上0.05%以下であり、下記式(3)から求められるTDの成形収縮率(以下、高精度TD収縮率ということがある)が0.02%以上0.20%以下であり、前記高精度MD収縮率と前記高精度TD収縮率との和が、0.25%以下であることを特徴とする。
(条件)
金型キャビティ:MD64mm×TD64mm×厚さ3mmの基体において、前記基体の外周から7mm内側に想定される50mm×50mmの仮想正方形の角に平面視で頂点が重なるように4つの四角錘が付された形状のキャビティを有する。
前記四角錘:底面2mm×2mm、高さ0.2mm
TDの成形収縮率(%)=([金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(3)
MDの成形収縮率(%)=([金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(4)
【0015】
本実施形態の樹脂組成物から成形した成形体の測定条件について、図面を参照して説明する。
図2は本実施形態の樹脂組成物から成形した成形体の斜視図である。前記成形体は、平板上に、4つの四角錘が付されている。図2中、Gはフィルムゲートであるゲート部位を示し、L1はMDの辺を示し、L2はTDの辺を示し、L3は平板の厚さを示し、H1は四角錘の高さを示す。
本実施形態で用いる金型キャビティのキャビティは、L1が64mm、L2が64mm、L3が3mm、H1が0.2mmである基体部を有する。
【0016】
図3に、本実施形態で測定に用いる成形体の上面図を示す。四角錘は、その底面L6及びL7が2mm(すなわち、底面が2mm×2mの四角形)である。前記基体(金型キャビティ)の外周から、L8及びL9で表される距離が7mm内側に想定される、L4で表される1辺が50mmの仮想正方形の角に平面視で頂点が重なるように4つの四角錘が付されている(すなわち、前記金型キャビティの外周から7mm内側に想定される50mm×50mmの仮想正方形の角に平面視で頂点が重なるように4つの四角錘が付されている)。また、前記基体の角の曲率半径Rは2mmである。
上記の寸法の金型キャビティから形成された成形体において、高精度MD収縮率は、前記仮想正方形の辺に沿ってMDに離間した2つの四角錘間の距離L5について、前記金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さ(2つの頂点を直線で結んだときのその直線の長さ)の平均値に対する、前記金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値と、前記金型キャビティから形成された成形体の、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値と、の差の割合(%)とする。 また、上記の寸法の金型キャビティから形成された成形体において、高精度TD収縮率は、前記仮想正方形の辺に沿ってTDに離間した2つの四角錘間の距離L4について、金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値に対する、前記金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値と、前記金型キャビティから形成された成形体の、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値と、の差の割合(%)とする。
より具体的には、L5の長さ(L5及びL5−2の2辺の長さの平均値、すなわち、上記寸法の金型キャビティから形成された成形体の前記仮想正方形におけるMDの2辺の長さの平均値)を3次元形状測定装置により測定し、金型キャビティのL5相当の長さ(すなわち、上記寸法の金型キャビティの前記仮想正方形におけるMDの2辺の長さの平均値)とから、MDの収縮率を下記の方法で算出する。
MDの成形収縮率(高精度MD収縮率)(%)=([金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100
【0017】
同様に、L4の長さ(L4の及びL4−2の2辺の長さの平均値、すなわち、上記寸法の金型キャビティから形成された成形体の前記仮想正方形におけるTDの2辺の長さの平均値)を3次元形状測定装置を用いて測定し、金型キャビティのL4相当の長さ(すなわち、上記寸法の金型キャビティの前記仮想正方形におけるTDの2辺の長さの平均値)とから、TD方向の収縮率を下記の方法で算出する。
TDの成形収縮率(高精度TD収縮率)(%)=([金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100
【0018】
上記の方法により算出した高精度MD収縮率は、−0.05%以上0.05%以下であり、−0.05%以上0.03%以下が好ましく、−0.05%以上0.00以下がより好ましい。また、高精度TD収縮率は、0.02%以上0.20%以下であり、0.02%以上0.15%以下が好ましく、0.02%以上0.13%以下がより好ましい。
【0019】
さらに、高精度TD収縮率と高精度MD収縮率の和は−0.03%以上、0.25%以下が好ましく、−0.03%以上、0.18%以下がより好ましく、−0.03%以上、0.13%以下がさらに好ましく、−0.03%以上、0.10%以下が特に好ましい。
成形体を成形した場合の収縮率が上記の範囲であると、例えば円筒形状の部品を製造した場合に円筒部の真円度を高くすることができる。
なお、前記金型キャビティを使用した成形体の製造方法は、公知の方法から適宜選択すればよく、例えば、前記と同様の製造方法により成形体を得ることができる。
【0020】
以下、本発明の樹脂組成物について説明する。
【0021】
[樹脂成分]
本実施形態の樹脂組成物は樹脂成分を含有する。前記樹脂成分は、非晶性樹脂を含む。
非晶性樹脂の例としては、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアリレート及びポリアリーレンエーテルが挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、本実施形態においてはポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、及び変性ポリフェニレンエーテルが好ましく、中でもポリエーテルスルホンが好ましい。これらの非晶性樹脂は、主鎖に芳香族基を有するのが好ましい。
また、非晶性樹脂のガラス転移温度は160℃以上420℃以下であることが好ましい。非晶性樹脂のガラス転移温度が160℃以上であると、成形体の耐熱性が向上するため、例えば自動車のエンジン周辺部品の様に、高い耐熱性が必要とされる部品に好適に適用することができ、耐熱性が高い成形体を得る事ができる。
ガラス転移温度は、JIS K7121:1987に従って示差走査熱量測定(DSC)により求められる中間点ガラス転移温度である。
また、成形時の樹脂の流動性を向上させる観点から、樹脂成分は、液晶性樹脂を含むことが好ましい。
液晶性樹脂の例としては、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルが好ましい。
以下、非晶性樹脂の好ましいものとして、ポリエーテルスルホンを、液晶性樹脂の好ましいものとして、液晶ポリエステルについて説明する。
【0022】
(ポリエーテルスルホン)
本実施形態で使用されるポリエーテルスルホンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とスルホニル基(−SO−)と酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。
【0023】
ポリエーテルスルホンは、耐熱性や耐薬品性の点から、下記式(5)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(5)」ということがある。)を有することが好ましい。さらに、下記式(6)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(6)」ということがある。)や、下記式(7)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(7)」ということがある。)等の他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
【0024】
(5)−Ph−SO−Ph−O−
(Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表し;前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0025】
(6)−Ph−R−Ph−O−
(Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表し;前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよく;Rは、アルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
【0026】
(7)−(Ph−O−
(Phは、フェニレン基を表し;前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよく;nは、1〜3の整数を表し;nが2以上である場合、複数存在するPhは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0027】
Ph〜Phのいずれかで表されるフェニレン基は、p−フェニレン基であってもよいし、m−フェニレン基であってもよいし、o−フェニレン基であってもよいが、得られる樹脂の耐熱性、強度が高くなる観点からp−フェニレン基であることが好ましい。
【0028】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基等が挙げられる。
【0029】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいアリール基は、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基等のような単環式芳香族基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等のような縮環式芳香族基が挙げられる。
【0030】
前記フェニレン基にある水素原子を置換していてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0031】
前記フェニレン基にある水素原子がこれらの基で置換されている場合、フェニレン基が有する置換基の数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に、好ましくは1個または2個であり、より好ましくは1個である。
【0032】
Rで表されるアルキリデン基の例としては、炭素数1〜5のアルキリデン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基及び1−ブチリデン基、1−ペンチリデン基等が挙げられる。
【0033】
なお、本実施形態で使用されるポリエーテルスルホンは、繰返し単位(5)〜(7)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。中でも、本実施形態で使用されるポリエーテルスルホンは、ポリエーテルスルホンの全繰返し単位の合計に対して、繰返し単位(5)を50モル%以上100モル%以下有することが好ましく、80モル%以上100モル%以下有することがより好ましく、繰返し単位として繰返し単位(5)のみ(100モル%)を有することがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態で使用されるポリエーテルスルホンは、ポリエーテルスルホンを構成する繰返し単位に対応するジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合させることにより、製造することができる。
【0035】
例えば、繰返し単位(5)を有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として下記式(8)で表される化合物(以下、「化合物(8)」ということがある。)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(9)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0036】
(8)X−Ph−SO−Ph−X
(Xは及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表し;Ph及びPhは、前記と同義である。)
【0037】
(9)HO−Ph−SO−Ph−OH
(Ph及びPhは、前記と同義である。)
【0038】
また、繰返し単位(5)と繰返し単位(6)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(8)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(10)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0039】
(10)HO−Ph−R−Ph−OH
(Ph、Ph及びRは、前記と同義である。)
【0040】
また、繰返し単位(5)と繰返し単位(7)とを有する樹脂は、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(8)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記式(11)で表される化合物を用いることにより、製造することができる。
【0041】
(11)HO−(Ph−OH
(Ph及びnは、前記と同義である。)
【0042】
前記重縮合は、炭酸のアルカリ金属塩を用いて、溶媒中で行うことが好ましい。炭酸のアルカリ金属塩は、正塩である炭酸アルカリ(アルカリ金属の炭酸塩)であってもよいし、酸性塩である重炭酸アルカリ(炭酸水素アルカリ、アルカリ金属の炭酸水素塩)であってもよいし、両者の混合物であってもよく、炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく用いられ、重炭酸アルカリとしては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましく用いられる。
【0043】
重縮合に用いる溶媒としては、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、1,3-ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等の有機極性溶媒が好ましく用いられる。
【0044】
前記ポリエーテルスルホンの分子量は、分子量の目安となる還元粘度を用いて評価する。還元粘度とは、ある濃度の溶液の粘度と溶媒の粘度との比がもとの溶媒の粘度に対してどの程度増加したかを示す値であり、比粘度を溶質の濃度で割った値である。前記ポリエーテルスルホンの還元粘度の測定には、前記ポリエーテルスルホンをN,N−ジメチルホルムアミド に溶解して得られる1w/v%溶液を用いる。前記ポリエーテルスルホンの還元粘度は、0.28以上0.53以下であることが好ましく、0.30以上、0.49以下であることがより好ましく、0.35以上、0.42以下であることが特に好ましい。前記ポリエーテルスルホンは、還元粘度が高いほど、耐熱性や強度・耐薬品性が向上し易い。一方、還元粘度が高すぎると、射出成形する際に高温を要するために、成形時に熱劣化し易くなったり、溶融時の粘度が高くなり、溶融樹脂の流動性が不足して、薄肉部位を有する成形体を成形する際に、ショートショットなどの成形不良を発生する虞がある。還元粘度が低いほど、溶融時の粘度が低くなり、流動性が向上しやすく、薄肉部位を有する成形品を成形しやすくなる。一方、還元粘度が低すぎると、耐熱性や強度・耐薬品性が低下しやすくなる。その結果、例えば、薬品に長期間接触する環境下で用いられるオイルコントロールバルブ等の成形品を、還元粘度が低すぎるポリエーテルスルホンを含む組成物から形成すると、成形品の強度が低下しやすくなる等の問題が発生する虞がある。
【0045】
(液晶ポリエステル)
本実施形態に用いる液晶ポリエステルは、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰返し単位を有する。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
【0046】
上記一般式(1)〜(3)中、Ar、Ar又はArで表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能なハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0047】
上記一般式(1)〜(3)中、Ar、Ar又はArで表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能なアルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基等が挙げられる。
【0048】
上記一般式(1)〜(3)中、Ar、Ar又はArで表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能なアリール基は、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基等のような単環式芳香族基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等のような縮環式芳香族基が挙げられる。
【0049】
上記一般式(1)〜(3)中、Ar、Ar又はArで表される前記基中の1個以上の水素原子がこれらの基で置換されている場合、その置換数は、Ar、Ar又はArで表される前記基毎に、それぞれ独立に、好ましくは1個又は2個であり、より好ましくは1個である。
【0050】
上記一般式(4)中、アルキリデン基は、炭素数1〜10のアルキリデン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基等が挙げられる。
【0051】
一般式(1)で表される繰返し単位としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(すなわち、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びArが2,6−ナフチレン基であるもの(すなわち、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましく、Arが1,4−フェニレン基であるものがより好ましい。
本明細書において、「由来」とは、重合するために化学構造が変化することを意味する。
【0052】
一般式(1)で表される繰返し単位を形成するモノマーとしては、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、p−ヒドロキシ安息香酸または4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸が挙げられ、さらに、これらのベンゼン環またはナフタレン環の水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で置換されているモノマーも挙げられる。さらに、前記モノマーを後述のエステル形成性誘導体にして用いてもよい。
【0053】
一般式(2)で表される繰返し単位としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(すなわち、テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが1,3−フェニレン基であるもの(すなわち、イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6−ナフチレン基であるもの(すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びArがジフェニルエーテル−4,4’−ジイル基であるもの(すなわち、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましく、Arが1,4−フェニレン基であるもの、及びArが1,3−フェニレン基であるものがより好ましい。
【0054】
一般式(2)で表される繰返し単位を形成するモノマーとしては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはビフェニル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられ、さらに、これらのベンゼン環またはナフタレン環の水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で置換されているモノマーも挙げられる。さらに、前記モノマーを後述のエステル形成性誘導体にして用いてもよい。
【0055】
一般式(3)で表される繰返し単位としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(すなわち、ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びArが4,4’−ビフェニリレン基であるもの(すなわち、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましく、4,4’−ビフェニリレン基であるものがより好ましい。
【0056】
一般式(3)で表される繰返し単位を形成するモノマーとしては、2,6−ナフトール、ハイドロキノン、レゾルシンまたは4,4’−ジヒドロキシビフェニルが挙げられ、さらに、これらのベンゼン環またはナフタレン環の水素原子が、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリール基で置換されているモノマーも挙げられる。さらに、前記モノマーを後述のエステル形成性誘導体にして用いてもよい。
【0057】
前記の式(1)、(2)または(3)で示される構造単位を形成するモノマーは、ポリエステルを製造する過程で重合を容易にするため、エステル形成性誘導体にして用いることが好ましい。この「エステル形成性誘導体」とは、エステル生成反応を促進するような基を有するモノマーを示し、具体的に例示すると、モノマー分子内のカルボン酸基を酸ハロゲン化物、又は酸無水物に転換したエステル形成性誘導体や、モノマー分子内のヒドロキシル基(水酸基)を低級カルボン酸エステル基にしたエステル形成性誘導体などの高反応性誘導体が挙げられる。
【0058】
前記液晶ポリエステルの繰返し単位(1)の含有量は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)の合計量を100モル%としたとき、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上70モル%以下、とりわけ好ましくは45モル%以上65モル%以下である。
【0059】
前記液晶ポリエステルの繰返し単位(2)の含有量は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)の合計量を100モル%としたとき、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下、とりわけ好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0060】
前記液晶ポリエステルの繰返し単位(3)の含有量は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)の合計量を100モル%としたとき、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下、とりわけ好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0061】
すなわち、前記液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)の合計量を100モル%としたとき、繰返し単位(1)の含有量が30モル%以上80モル%以下であり、繰返し単位(2)の含有量が10モル%以上35モル%以下であり、繰返し単位(3)の含有量が10モル%以上35モル%以下であることが好ましい。
【0062】
前記液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)の含有量が上記の範囲であると、溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上し易くなる。
【0063】
前記液晶ポリエステルにおいては、繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合が、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0064】
なお、前記液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、1種のみ有してもよいし、2種以上有してもよい。また、前記液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を1種又は2種以上有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは0モル%以上10モル%以下、より好ましくは0モル%以上5モル%以下である。
【0065】
前記液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが、溶融粘度が低くなり易いので好ましく、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することが、より好ましい。
【0066】
前記液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性よく製造できる。溶融重合は触媒の存在下で行ってもよく、前記触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、N,N−ジメチルアミノピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましい。
【0067】
前記液晶ポリエステルの流動開始温度は、好ましくは270℃以上、より好ましくは270℃以上400℃以下、さらに好ましくは280℃以上380℃以下である。前記液晶ポリエステルは、流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり高いと、溶融させるために高温を要し、成形時に熱劣化し易くなったり、溶融時の粘度が高くなり、流動性が低下したりする。
【0068】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーター(例えば、(株)島津製作所製フローテスター「CFT−500」)を用いて、9.8MPa(100kgf/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0069】
前記液晶ポリエステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
本実施形態においては、樹脂成分100質量部中に、非晶性樹脂を60質量部以上100質量部以下含有する。
非晶性樹脂の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、65質量部以上95質量部以下が好ましく、70質量部以上90質量部以下がより好ましく、80質量部以上90質量部以下が特に好ましい。
また、樹脂成分中に液晶性樹脂を含む場合には、液晶性樹脂は、0質量部超、40質量部以下が好ましく、5質量部以上30質量部以下がより好ましく、5質量部以上25質量部以下が特に好ましく、10質量部以上20質量部以下が極めて好ましい。
液晶性樹脂の含有量が多い程、樹脂組成物の溶融流動性は向上しやすいが、液晶性樹脂の含有量が40質量部を超えると、樹脂組成物から得られる成形体の、MD収縮率は低減し易く、一方、TD収縮率は上昇し易い傾向がある。その結果として、TD収縮率/MD収縮率が1.5を超え易くなる傾向がある。そしてその結果、例えば、オイルコントロールバルブ等の円筒形状を有する成形体では、円筒部の真円度や凹凸度が低下する傾向がある。一方で、樹脂成分中に液晶性樹脂を含まない場合、薄肉部位を有する成形体を成形する際に、溶融樹脂の流動性が不足して、ショートショットなどの成形不良を発生する虞がある。
本実施形態において、樹脂成分の含有量は、樹脂組成物の総質量に対して、40〜65質量%であることが好ましく、45〜60質量%であることがより好ましい。
【0071】
[繊維状フィラー]
繊維状フィラーとしては、無機フィラーであってもよいし、有機フィラーであってもよい。繊維状フィラーの例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。前記ガラス繊維の例としては、チョップドガラス繊維、ミルドガラス繊維等、種々の方法で製造されたものが挙げられる。
本実施形態においては無機フィラーが好ましく、炭素繊維又はガラス繊維がより好ましい。
本明細書において「繊維状フィラー」とは、その形状が繊維状であるフィラーを意味し、後述する「板状フィラー」とは、その形状が板状であるフィラーを意味する。
【0072】
前記ガラス繊維の溶融混練後の数平均繊維長は50μm以上500μm以下であることが好ましい。また、前記ガラス繊維の溶融混練後の数平均繊維径は、6μm以上18μm以下であることが好ましい。
なお、前記ガラス繊維の溶融混練後の数平均繊維径及び数平均繊維長は、電子顕微鏡観察により測定することができる。
【0073】
前記ガラス充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記炭素繊維の溶融混練後の数平均繊維径は、好ましくは5〜20μm、より好ましくは5〜15μmである。また、前記炭素繊維の溶融混練後の数平均繊維長は、50〜500μmであることが好ましい。
また、前記炭素繊維の溶融混練後の数平均アスペクト比(数平均繊維長/数平均繊維径)は、好ましくは10〜200、より好ましくは20〜100である。
なお、本明細書において前記炭素繊維の溶融混練後の数平均繊維径及び数平均繊維長は、電子顕微鏡観察により測定できる。
【0075】
本実施形態において、繊維状フィラーとして炭素繊維を用いる場合には、樹脂成分100質量部に対して、炭素繊維を30質量部以上80質量部以下含有することが好ましく、30質量部以上60質量部以下がより好ましく、30質量部以上50質量部以下が特に好ましい。また、炭素繊維の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、33質量部以上42質量部以下であってもよい。
また、本実施形態において、繊維状フィラーとして炭素繊維を用いる場合には、樹脂成分100質量部に対する繊維状フィラーと、後述する板状フィラーの合計含有量が50質量部以上100質量部以下であることが好ましく、55質量部以上100質量部以下がより好ましく、60質量部以上100質量部以下が特に好ましい。このとき、上記繊維状フィラーには、炭素繊維以外の繊維状フィラーが含まれてもよい。
また、別の側面として、本実施形態において、繊維状フィラーとして炭素繊維を用いる場合には、樹脂成分100質量部に対する炭素繊維と、後述する板状フィラーの合計含有量が50質量部以上100質量部以下であることが好ましく、55質量部以上100質量部以下がより好ましく、60質量部以上100質量部以下が特に好ましい。また、樹脂成分100質量部に対する炭素繊維と、後述する板状フィラーの合計含有量は、67質量部以上100質量部以下であってもよい。
繊維状フィラーと板状フィラーとの合計含有量が上記範囲であると、成形体を成形した場合の収縮率を抑えることができ、さらに、例えばオイルコントロールバルブ等の円筒形状を有する成形体を成形した場合に、円筒部の真円度や凹凸度が良好な、寸法精度の高い成形体を得ることができる。
【0076】
本実施形態において、繊維状フィラーとしてガラス繊維を用いる場合には、樹脂成分100質量部に対して、ガラス繊維を40質量部以上100質量部以下含有することが好ましく、50質量部以上95質量部以下がより好ましく、55質量部以上90質量部以下が特に好ましい。また、ガラス繊維の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、60質量部以上89質量部以下であってもよい。
また、本実施形態において、繊維状フィラーとしてガラス繊維を用いる場合には、樹脂成分100質量部に対する繊維状フィラーと、後述する板状フィラーの合計含有量が50質量部以上140質量部以下であることが好ましく、80質量部以上130質量部以下がより好ましく、90質量部以上125質量部以下が特に好ましい。このとき、上記繊維状フィラーには、ガラス繊維以外の繊維状フィラーが含まれてもよい。
また、別の側面として、本実施形態において、繊維状フィラーとしてガラス繊維を用いる場合には、樹脂成分100質量部に対するガラス繊維と、後述する板状フィラーの合計含有量が50質量部以上140質量部以下であることが好ましく、80質量部以上130質量部以下がより好ましく、90質量部以上125質量部以下が特に好ましい。また、樹脂成分100質量部に対するガラス繊維と、後述する板状フィラーの合計含有量は、100質量部以上122質量部以下であってもよい。
繊維状フィラーと板状フィラーとの合計含有量が上記範囲であると、成形体を成形した場合の収縮率を抑えることができ、さらに、例えばオイルコントロールバルブ等の円筒形状を有する成形体を成形した場合に、円筒部の真円度や凹凸が良好な、寸法精度の高い成形体を得ることができる。
【0077】
[板状フィラー]
板状フィラーとしては、タルク、マイカ、鱗片状グラファイト、ウォラストナイト、硫酸バリウム及び炭酸カルシウム等が挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
前記鱗片状グラファイトは、天然鱗片状グラファイトであってもよいし、人造鱗片状グラファイトであってもよい。
鱗片状グラファイトは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
鱗片状グラファイトにおいて、その固定炭素分が高く、酸化ケイ素等の灰分が少なく、結晶性が高いものが好ましい。鱗片状グラファイトの体積平均粒径は、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜80μm、さらに好ましくは5〜60μmである。鱗片状グラファイトの体積平均粒径は、レーザー回折散乱法により測定できる。
本実施形態において、前記板状フィラーが、鱗片状グラファイト、タルク及びマイカからなる群から選ばれる少なくとも1種の板状フィラーであることが好ましい。
【0078】
板状フィラーの含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、20質量部以上80質量部以下であり、20質量部以上70質量部以下が好ましく、20質量部以上65質量部以下がより好ましい。また、別の側面として、板状フィラーの含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、25質量部以上60質量部以下であってもよい。
板状フィラーの含有量が、上記範囲であると成形体の収縮率をより低減することができる。
【0079】
(他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の効果を損なわない範囲内において、非晶性樹脂、液晶性樹脂、繊維状フィラー及び板状フィラーのいずれにも該当しない、他の成分を含有してもよい。
前記他の成分の例としては、前記繊維状フィラー及び板状フィラー以外の充填材(以下、「その他の充填材」ということがある。)、添加剤、前記非晶性樹脂、液晶性樹脂以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」ということがある。)等が挙げられる。
前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
本実施形態において樹脂組成物が、前記その他の充填材を含有する場合、前記樹脂組成物におけるその他の充填材の含有量は、前記樹脂成分の合計含有量100質量部に対して、0質量部超100質量部以下であることが好ましい。
【0081】
前記添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。
【0082】
本実施形態において樹脂組成物が、前記添加剤を含有する場合、前記樹脂組成物の添加剤の含有量は、前記樹脂成分、繊維状フィラー及び板状フィラーの合計含有量100質量部に対して、0質量部超5質量部以下であることが好ましい。
【0083】
前記その他の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0084】
本実施形態において樹脂組成物が、前記その他の樹脂を含有する場合、前記樹脂組成物におけるその他の樹脂の含有量は、前記樹脂成分の合計含有量100質量部に対して、0質量部超20質量部以下であることが好ましい。
【0085】
第1の実施形態における樹脂組成物は、前記樹脂成分、繊維状フィラー、板状フィラー及び所望により他の成分を、一括で又は適当な順序で混合することにより製造できる。
第2の実施形態及び第3の実施形態の樹脂組成物は、第1の実施形態の樹脂組成物を用いることで得ることができるが、好ましくは、樹脂成分と、繊維状フィラー及び板状フィラーとを混練する際に、繊維状フィラー又は板状フィラーを遅いタイミングで投入することで得ることができる。具体的には、成形体を得るために樹脂成分を溶融混練するとき、できるだけ押出機の下流側において繊維状フィラー又は板状フィラーを樹脂成分中にサイドフィードすることが望ましい。なお、この際、繊維状フィラー及び板状フィラーの、樹脂成分中での分散性を損なわない範囲の下流側で、サイドフィードすることが望ましい。
そして、本実施形態の樹脂組成物は、非晶性樹脂、液晶性樹脂、繊維状フィラー、板状フィラー及び所望により他の成分を、押出機を用いて溶融混練することで、ペレット化したものが好ましい。
前記押出機は、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリューと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口と、を有するものが好ましく、さらに、シリンダーに1箇所以上のベント部が設けられたものがより好ましい。
【0086】
本実施形態の樹脂組成物から成形した成形体で構成される部品の例としては、カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;自動車部品;電池部品;航空機部品;半導体素子用封止部材、コイル用封止部材等の封止部材等が挙げられる。
中でも、自動車部品が好ましく、自動車部品としては、オイルコントロールバルブ、ソレノイドバルブ、カーエアコンベーン又はターボチャージャケーシング・シュラウド等の高い寸法安定性が求められる部品を好適に成形することができる。
【0087】
本発明の樹脂組成物の別の側面は、
樹脂成分と、繊維状フィラーと、板状フィラーと、を含む樹脂組成物であって、
前記樹脂成分は、非晶性樹脂と液晶性樹脂とを含み、
前記非晶性樹脂は、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリレート、及び変性ポリフェニレンエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1つ、
好ましくはポリエーテルスルホン、より好ましくは芳香族ポリエーテルスルホンであり;
前記液晶性樹脂は、液晶ポリエステル、
好ましくは6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位、テレフタル酸に由来する繰返し単位、イソフタル酸に由来する繰返し単位、ヒドロキノンに由来する繰返し単位、及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位を有する液晶ポリエステルであり;
前記繊維状フィラーは、炭素繊維又はガラス繊維であり;
前記板状フィラーは、鱗片状グラファイト、タルク及びマイカからなる群から選ばれる少なくとも1つであり;
前記樹脂成分の含有量は、好ましくは40〜65質量%、より好ましくは45〜60質量%であり、
前記非晶性樹脂の含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、60質量部以上100質量部以下、好ましくは65質量部以上95質量部以下、より好ましくは70質量部以上90質量部以下、更により好ましくは80質量部以上90質量部以下であり;
前記繊維状フィラーの含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、30質量部以上100質量部以下、好ましくは33質量部以上89質量部以下であり;
前記板状フィラーの含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、20質量部以上80質量部以下、好ましくは25質量部以上60質量部以下であり;
前記繊維状フィラーと前記板状フィラーとの合計含有量は、前記樹脂成分100質量部に対し、50質量部以上180質量部以下、好ましくは67質量部以上122質量部以下である、
樹脂組成物が挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0089】
<製造例1>
液晶ポリエステルA1の製造方法
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(1034.99g、5.5モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(378.33g、1.75モル)、テレフタル酸(83.07g、0.5モル)、ヒドロキノン(272.52g、2.475モル、2,6−ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸の合計量に対して0.225モル過剰)、無水酢酸(1226.87g、12モル)、及び触媒として1−メチルイミダゾール(0.17g)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から145℃まで15分間かけて昇温し、145℃で1時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3.5時間かけて昇温し、310℃で3時間保持した後、内容物を取り出し、これを室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粒径約0.1〜1mmに粉砕することにより粉末状のプレポリマーを得た。
次いで、このプレポリマーを、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から310℃まで10時間かけて昇温し、310℃で5時間保持することにより、固相重合を行った。固相重合後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルA1を得た。
この液晶ポリエステルの流動開始温度は324℃であった。
【0090】
<製造例2>
液晶ポリエステルA2の製造方法
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸(994.5g、7.2モル)、テレフタル酸(299.1g、1.8モル)、イソフタル酸(99.7g、0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(446.9g、2.4モル)、(無水酢酸1347.6g、13.2モル)及び1−メチルイミダゾール0.2gを入れ、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分間かけて昇温し、150℃で1時間還流させた。次いで、1−メチルイミダゾールを0.9g添加し、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、320℃まで2時間50分間かけて昇温し、320℃でトルクの上昇が認められるまで保持した後、反応器から内容物を取り出し、これを室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粒径約0.1〜1mmに粉砕することにより粉末状のプレポリマーを得た。次いで、このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温して、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルA2を得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は327℃であった。
【0091】
<樹脂組成物の製造>
≪実施例1〜11、比較例1〜2≫
非晶性樹脂として、芳香族ポリエーテルスルホン(住友化学株式会社製「スミカエクセル(登録商標)PES 3600P」、液晶性樹脂として、上記液晶ポリエステルA1又はA2、繊維状フィラー及び板状フィラーを表1、2に示す条件で混合した。具体的には、サイドフィーダー付2軸押出機(池貝鉄工(株)「PCM−30HS」)と水封式真空ポンプ(神港精機(株)「SW−25」)を用いて、シリンダー温度を340℃とし、サイドフィーダーとダイプレートの間にニーディングブロックを挿入したスクリューにて、メインフィーダーから樹脂成分と板状フィラーとをフィードし、真空ベントで脱気しながら溶融混練した後に、さらに、サイドフィーダーから繊維状フィラーをフィードし、真空ベントで脱気しながら溶融混練した。吐出されたストランドをカットし、樹脂組成物をペレット状で得た。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
上記表1〜2中、各記号は以下のものを意味する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
・PES:芳香族ポリエーテルスルホン(住友化学株式会社製「スミカエクセル(登録商標)PES 3600P」。
・A1、A2:前記液晶ポリエステルA1又はA2。
・CF:炭素繊維TR03A4M(三菱レイヨン株式会社製)。
・GF:チョップドガラス繊維CS3J260S(日東紡績株式会社製)。
・鱗片状グラファイト:黒鉛粉末CSP(日本黒鉛工業株式会社製)。
・マイカ:マイカAB−25S(株式会社ヤマグチマイカ製)。
・タルク:タルクX−50(日本タルク株式会社製)。
【0095】
[成形体の成形収縮率の測定]
上記で得たペレット状の樹脂組成物を、64mm(MD)×64mm(TD)×3mmであるキャビティを有する金型キャビティを使用して射出成形し、図1に示す成形体(L1:略64mm、L2:略64mm、L3:略3mm)を作製した。
MDの2辺(図1中のL1及びL1の対辺)の長さを測定し、その平均値を求め、この平均値と、金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値とから、下記式(1)により、MDの収縮率を算出した。また、得られた成形体について、TDの2辺(図1中のL2及びL2の対辺)の長さを測定し、その平均値を求め、この平均値と、金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値とから、下記式(2)により、TDの収縮率を算出した。結果を表1〜2に示す。
[MDの収縮率(%)]=([金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値(μm)]−[成形体のMDの2辺の長さの平均値(μm)])/[金型キャビティが有するキャビティのMDの2辺の長さの平均値(μm)]×100・・・(1)
[TDの収縮率(%)]=([金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値(μm)]−[成形体のTDの2辺の長さの平均値(μm)])/[金型キャビティが有するキャビティのTDの2辺の長さの平均値(μm)]×100・・・(2)
さらに、TD収縮率/MD収縮率を算出し、表1〜2に記載した。
【0096】
[成形体の真円度の測定]
上記で得たペレット状の樹脂組成物を、オイルコントロールバルブ金型を使用して射出成形し、図4に示す円筒形状の製品(オイルコントロールバルブ)を作成した。図4に示すように、オイルコントロールバルブ1(全長70mm)は、円筒状の軸部11に、第1円筒部12と、第2円筒部13と、リング部14とが、間隔を有して設けられており、第1円筒部12側の端部がゲート部Gになっている。ゲート形状は、ピンゲート(φ1.5mm)である。
前記オイルコントロールバルブ1のゲート部Gから軸方向に距離L10(20mm)の位置の、第2円筒部13における、前記軸方向に対して直交方向の断面周囲の真円度を、真円度・円筒形状測定機((株)東京精密製真円度・円筒形状測定機RONDCOM44DX3;JIS 7451:1997)によりLSC最小二乗中心法で2回測定し、その平均値を、真円度(P−P)とした。なお、本明細書における「真円度(P−P)」とは、JIS B0621:1984で規定される真円度を意味しており、円形形体の幾何学的に正しい円(以下,幾何学的円という。)からの狂いの大きさをいう。具体的には、円形形体の対象物を二つの同心の幾何学的円で挟んだとき、同心二円の間隔が最小となる場合の、二つ円の半径の差である。
【0097】
上記表1〜2に示した結果のとおり、本発明を適用した実施例1〜11は、いずれもTD収縮率/MD収縮率が1.5以下であり、かつ真円度が14以下であり、寸法精度(特に真円度)に優れた成形体を製造することができた。 これに対し、本発明を適用しない比較例1〜2は、いずれもTD収縮率/MD収縮率が1.5を大きく上回り寸法精度が良好ではなかった。真円度も16以上と大きく、良好ではなかった。
【0098】
<樹脂組成物の製造>
≪実施例12、比較例3〜4≫
非晶性樹脂として、芳香族ポリエーテルスルホン(住友化学株式会社製「スミカエクセル(登録商標)PES 3600P」、液晶性樹脂として、上記液晶ポリエステルA2、繊維状フィラー及び板状フィラーを表3に示す条件で混合した。具体的には、サイドフィーダー付2軸押出機(池貝鉄工(株)「PCM−30HS」)と水封式真空ポンプ(神港精機(株)「SW−25」)を用いて、シリンダ温度を340℃とし、サイドフィーダーとダイプレートの間にニーディングブロックを挿入したスクリューにて、メインフィーダーから樹脂成分と板状フィラーとをフィードし、真空ベントで脱気しながら溶融混練した後に、さらに、サイドフィーダーから繊維状フィラーをフィードし、真空ベントで脱気しながら溶融混練した。吐出されたストランドをカットし、樹脂組成物をペレット状で得た。
【0099】
【表3】
【0100】
上記表3中、各記号は以下のものを意味する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
・PES:芳香族ポリエーテルスルホン(住友化学株式会社製「スミカエクセル(登録商標)PES 3600P」。
・A2:前記液晶ポリエステルA2。
・CF:炭素繊維TR03A4M(三菱レイヨン株式会社製)。
・GF:チョップドガラス繊維CS3J260S(日東紡績株式会社製)。
・鱗片状グラファイト:黒鉛粉末CSP(日本黒鉛工業株式会社製)
・マイカ:マイカAB−25S(株式会社ヤマグチマイカ製)
・タルク:タルクX−50(日本タルク株式会社製)
【0101】
[成形体の成形収縮率の測定]
上記で得た、実施例12、比較例3〜4のペレット状の樹脂組成物を、それぞれ64mm(MD)×64mm(TD)×3mmのキャビティを有する金型キャビティを使用して射出成形し、図2及び図3に示す平板状試験片(L1:略64mm、L2:略64mm、L3:略3mm)を作製した。
得られた平板状試験片のMD(L5及びL5−2)の長さを3次元形状測定装置(株式会社ミツトヨ製 3次元形状測定装置 QVH2X 404−PRO)により測定し、その平均値を求め、この平均値と、3次元形状測定装置により測定した金型キャビティのMD(L5及びL5−2に相当)の長さの平均値とから、下記式(4)により、高精度MDの収縮率を算出した。また、得られた成形体について、TD(L4及びL4−2)の長さを3次元形状測定装置により測定し、その平均値を求め、この平均値と、3次元形状測定装置により測定した金型キャビティのTD(L4及びL4−2に相当)の長さの平均値とから、下記式(3)により、高精度TDの収縮率を算出した。結果を表3に示す。
TDの成形収縮率(高精度MD収縮率)(%)=([金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(3)
MDの成形収縮率(高精度MD収縮率)(%)=([金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]−[成形体の、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値])/[金型キャビティの、2つの、MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さの平均値]×100・・・(4)
さらに、高精度TD収縮率と高精度MD収縮率の和を算出し、表3に記載した。
【0102】
[成形体の真円度の測定]
上記で得たペレット状の樹脂組成物を、オイルコントロールバルブ金型を使用して射出成形し、図4に示す円筒形状の製品(オイルコントロールバルブ)を作成し、前記と同様の方法で真円度を測定した。
【0103】
上記表3に示した結果のとおり、本発明を適用した実施例12は、いずれも高精度TD収縮率が0.1%、高精度MD収縮率が‐0.05%と低く、また真円度(P−P)も12μmであり、寸法精度(特に真円度)に優れた成形品を製造することができた。さらに、高精度TD収縮率と高精度MD収縮率の和も0.05%と低いものであった。
これに対し、本発明を適用しない比較例3〜4は、いずれも高精度TD収縮率と高精度MD収縮率との和が大きく、また真円度(P−P)も24μm以上と大きく、寸法精度が良好ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明によれば、成形体を成形したときの寸法精度、特に成形体が円筒部を有する場合、その円筒部の真円度、が優れる樹脂組成物を提供することができるので、産業上有用である。
【符号の説明】
【0105】
L1:MDの辺
L2:TDの辺
L3:厚さ
G:ゲート部位
H1:四角錘の高さ
L4:TDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さ
L4−2:L4の対辺
L5:MDに離間した2つの四角錘の頂点間の長さ
L5−2:L5の対辺
L6、L7:四角錘の底面の辺
L8、L9:基体の外周からの距離
L10:オイルコントロールバルブのゲート部Gからの軸方向の距離
11:円筒状の軸部
12:第1円筒部
13:第2円筒部
14:リング部
図1
図2
図3
図4