特許第6411066号(P6411066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6411066吸収体用の不織布シートを含む吸収性物品、及び当該吸収性物品に用いられる不織布シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411066
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】吸収体用の不織布シートを含む吸収性物品、及び当該吸収性物品に用いられる不織布シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20181015BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20181015BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20181015BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20181015BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20181015BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20181015BHJP
   D04H 1/492 20120101ALI20181015BHJP
【FI】
   A61F13/53 100
   A61F13/53 300
   A61F13/537 200
   A61F13/537 330
   A61F13/15 320
   B32B5/26
   B32B5/02 A
   D04H1/4374
   D04H1/492
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-98637(P2014-98637)
(22)【出願日】2014年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-213643(P2015-213643A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】木村 明寛
(72)【発明者】
【氏名】出谷 耕
(72)【発明者】
【氏名】丹下 悟
(72)【発明者】
【氏名】松村 紀明
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴司
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−048381(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024147(WO,A1)
【文献】 特開平10−273884(JP,A)
【文献】 特開2007−009356(JP,A)
【文献】 特開2012−110364(JP,A)
【文献】 特開2004−298387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に位置する吸収体と、該吸収体用の不織布シートと、を含む吸収性物品であって、
前記不織布シートが、
パルプを含み、第1面及び第2面を有するパルプ繊維層と、
前記パルプ繊維層の第1面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第1面側繊維層と、
前記パルプ繊維層の第2面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第2面側繊維層と、を含み、
前記第1面側繊維層及び第2面側繊維層がそれぞれレーヨン繊維を50質量%よりも多い割合で含む、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層が、質量比にて、親水性繊維よりも少ない量の疎水性繊維を更に含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記疎水性繊維が熱可塑性繊維を含む、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記熱可塑性繊維が、親水処理されたポリエステル系繊維である、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層における親水性繊維が、異形断面を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層における親水性繊維が、セルロース系繊維を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記パルプ繊維層におけるパルプがフラッフパルプを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記パルプ繊維層におけるパルプが、カヤーニ平均繊維長が2〜3mmのパルプを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
各繊維層間の繊維同士が水流の作用によって交絡された構造を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層がカードウェブを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層における繊維の一部が、前記パルプ繊維層の内部に入り込んだ構造を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
クレム法による吸水度試験において、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層の吸液高さが、前記パルプ繊維層の吸液高さよりも高い、請求項1〜11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収体が、吸収コアを含み、前記不織布シートが、少なくとも前記裏面シートと前記吸収コアとの間に配置される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記吸収体が、吸収コアと前記吸収コアを覆うコアラップとを含み、前記不織布シートが前記コアラップとして用いられる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記パルプ繊維層の坪量が10〜60g/mの範囲内であり、第1面側繊維層及び第2面側繊維層の坪量がそれぞれ5〜50g/mの範囲内である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項16】
液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に位置する吸収体と、該吸収体用の不織布シートと、を含む吸収性物品に用いられる吸収体用の不織布シートの製造方法であって、
前記不織布シートが、
パルプを含み、第1面及び第2面を有するパルプ繊維層と、
前記パルプ繊維層の第1面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第1面側繊維層と、
前記パルプ繊維層の第2面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第2面側繊維層と、を含み、
前記第1面側繊維層及び第2面側繊維層がそれぞれレーヨン繊維を50質量%よりも多い割合で含み、
前記製造方法は、
レーヨン繊維を50質量%よりも多い割合で含む第2面側繊維層用の繊維ウェブを供給する工程と、
前記繊維ウェブ上に、親水性繊維を含むパルプ繊維層用のパルプを供給する工程と、
前記パルプ上に、レーヨン繊維を50質量%よりも多い割合で含む第1面側繊維層用の繊維ウェブを供給して、積層物を得る工程と、
前記積層体の両面側から高圧水流処理を施して、少なくとも各繊維層間の繊維同士を交絡させる工程と、を含む、吸収体用の不織布シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体用の不織布シートを含む吸収性物品、及び当該吸収性物品に用いられる不織布シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー等の吸収性物品は、一般に、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記トップシート及び前記裏面シートの間に配置される吸収体とから構成され、特に、前記吸収体において内部の高吸収性ポリマー粒子を覆うコアラップは、乾燥時であっても、湿潤時であっても、前記高吸収性ポリマー粒子を確実に保持し、また、吸収性物品に到達した尿や血液等の体液を迅速に前記吸収体の広範囲に拡散させて、前記体液を迅速に前記高吸収性ポリマー粒子に吸収させる機能などが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体透過性の表面材、液体保持性の吸収体、及び液体不透過性の防漏材を有する実質的に縦長の吸収性物品において、上記吸収体は、拡散性吸収シート及び該拡散性吸収シートより裏面側に位置する吸収保持性シートを有し、(a)上記拡散性吸収シートは、親水度(cosθ)が0.5〜1で且つ長手方向のクレム吸水速度が40[mm/分]以上のシートからなり、また、(b)上記吸収保持性シートは、毛管浸透圧4000〜15000[dyn/cm2]の繊維集合体からなるシートで、生理食塩水の吸収量が40〜70[g/g]で且つその吸収速度が2[ml/0.3gポリマー・分]以上の高吸収ポリマーを、該繊維集合体に対して10〜100重量%挟持する積層シートからなることを特徴とする吸収性物品が開示されている(請求項1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−89053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された吸収性物品において、吸収体の拡散性吸収シートは、その強度を保持するために、結合剤としてポリビニルアルコール等を用いて各繊維を接着するか、又はスパンボンド法により繊維同士を融着することによって形成されているため、その接着部分又は融着部分によって液拡散性が阻害される虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、液拡散性を阻害する虞のある接着剤の後塗工等による強度付与手段を用いていない液拡散性に優れた吸収体用の不織布シートを含む吸収性物品、及び当該吸収性物品に用いられる吸収体用の不織布シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸収性物品は、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に位置する吸収体と、吸収体用の不織布シートと、を含む吸収性物品であって、前記不織布シートが、パルプを含み、第1面及び第2面を有するパルプ繊維層と、前記パルプ繊維層の第1面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第1面側繊維層と、前記パルプ繊維層の第2面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第2面側繊維層と、を含むものである。
【0008】
本発明の吸収性物品によれば、パルプ繊維層、第1面側繊維層及び第2面側繊維層を含む3層以上の層からなる吸収体用の不織布シートが、液拡散性を阻害する虞のある接着剤の後塗工等による強度付与手段を用いずに、高圧水流によって繊維同士を交絡させて形成されているため、体液等の液体を、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層を形成する繊維集合体の毛管現象を利用して、不織布シートの面方向に広く迅速に拡散させることができる。さらに、第1面側繊維層及び第2面側繊維層が、パルプ繊維層の両面側に配置されているので、第1面側繊維層及び第2面側繊維層において面方向に拡散された液体を、前記パルプ繊維層の両面から吸収させることができ、不織布シートの保水量を格段に向上させることができると共に、該不織布シートにおける面方向の液拡散を持続的に実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液拡散性に優れた吸収体用の不織布シートを含む吸収性物品、及び当該吸収性物品に用いられる吸収体用の不織布シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつの斜視図(模式図)である。
図2図2は、図1の使い捨ておむつを展開した状態の平面図である。
図3図3は、図2のIII−III’線に沿った幅方向の断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る不織布シートの断面図(模式図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である使い捨ておむつの斜視図(模式図)であり、図2は、図1の使い捨ておむつを展開した状態の平面図である。図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態である使い捨ておむつ1は、着用者の腹部に当てられる前面部11と、着用者の股間部に当てられる中間部12と、着用者の尻部及び/又は背部に当てられる後面部13とを有している。図1に示すように、接合部14a,14bにおいて、前面部11の両側部111a,111b及び後面部13の両側部131a,131bが互いに接合されることにより、前面部11の端部112と後面部13の端部132とによってウエスト開口部が形成されていると共に、中間部12の両側部121a,121bによってレッグ開口部が形成されており、使い捨ておむつ1はパンツ型の形状を有している。
【0013】
図1及び図2に示すように、使い捨ておむつ1は、液透過性の不織布シートやプラスチックフィルム等からなる表面シート2と、液不透過性のポリエチレンフィルム等からなる裏面シート3と、表面シート2及び裏面シート3の間に設けられた吸収体4と、液不透過性のカバーシート5と、弾性部材61,62,63,64と、を備えている。前記表面シート2の肌面側表面に設けられたカバーシート5は、略中央に開口部51が形成されており、表面シート2の一部(吸収体4の配置領域の一部)が、前記カバーシート5の開口部51から露出し、前記カバーシート5と共に、使い捨ておむつ1の肌面側表面を形成している。
【0014】
さらに、図1及び図2に示すように、略同一寸法の砂時計形状である裏面シート3とカバーシート5の間には、弾性部材61,62,63,64が設けられている。前記弾性部材61,62の弾性収縮力により、ウエスト開口部にはウエストギャザーが形成されていると共に、前記弾性部材63,64の弾性収縮力により、レッグ開口部にはレッグギャザー(レッグ側のカフ)が形成されている。このレッグギャザーによって、レッグ開口部からの排泄物の漏れが防止できる。なお、本明細書において、幅方向Xは、展開した状態の使い捨ておむつ1(吸収性物品)において、平面視にて幅方向(短手方向)を指し、長手方向Yは、展開した状態の使い捨ておむつ1(吸収性物品)において、平面視にて長手方向(着用者の前後方向)を指し、前記幅方向Xと前記長手方向Yとは、平面視にて互いに直交する。
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る使い捨ておむつ(吸収性物品)に用いられる吸収体及び該吸収体用の不織布シートについて詳細に説明する。図3は、図2におけるIII−III’線に沿った幅方向の断面図である。図3に示すように、本実施形態における吸収体4は、吸水性材料からなる吸収コア7と、該吸収コア7の裏面シート3側に配置される吸収体用の不織布シート8と、前記吸収コア7及び前記不織布シート8を包むコアラップ(不図示)と、を含む。本発明において、不織布シートは、吸収コアを包むコアラップのシートの中に配置してもよいし、コアラップの外側で該コアラップに接するように配置してもよいが、不織布シートが吸収コアを包むコアラップのシートの中に配置されていると、体液等の液体の吸液及び拡散に有利なことから、不織布シートは、吸収コアを包むコアラップのシートの中に配置することが好ましい。なお、本明細書において、「吸収体用」とは、吸収コア及び該吸収コアを包むコアラップを含む吸収体において、吸収コアに接するように配置するためのもの又はコアラップの外側で該コアラップに接するように配置するためのものを意味する。また、本発明においては、表面シートを通過した体液等の液体の拡散性を更に向上させるために、吸収コアの表面シート側にも、前記不織布シート又は前記不織布シートとは異なる液拡散性シートを配置してもよい。
【0016】
前記吸収コアは、特に制限されないが、例えば、フラッフパルプや不織布等の繊維集合体に高吸収性ポリマーを分散保持させたものなどを用いることができる。前記高吸収性ポリマーは、水溶性高分子が適度に架橋した三次元網目構造を有し、自重の20倍以上もの水を吸収することができる。このような高吸収性ポリマーとしては、例えば、デンプン系ポリマー、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸やアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等のアクリル酸系ポリマー、アミノ酸系ポリマーなどが挙げられる。
【0017】
本発明において、吸収体用の不織布シートは、パルプを含み、第1面及び第2面を有するパルプ繊維層と、前記パルプ繊維層の第1面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第1面側繊維層と、前記パルプ繊維層の第2面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第2面側繊維層と、を含む、3層以上の層によって構成される。
【0018】
本発明において、「親水性繊維を主に含む」とは、全体の質量に対して親水性繊維を50質量%より多い割合で含むことをいう。したがって、当該用語を言い換えれば、50質量%より多く100質量%以下の親水性繊維と、0質量%以上50質量%未満の他の成分(例えば、疎水性繊維など)を含むことを意味する。
【0019】
図4は、本発明の一実施形態に係る不織布シートの断面図(模式図)である。本実施形態における不織布シート8は、第1面及び第2面を有するパルプ繊維層81と、前記パルプ繊維層81の第1面側に配置される第1面側繊維層82と、前記パルプ繊維層の第2面側に配置される第2面側繊維層83と、を含む、3層構造の積層体によって構成されている。
【0020】
本発明におけるパルプ繊維層は、一般的に繊維長が1〜10mmのセルロース系繊維であるパルプを主に含み(すなわち、50質量%より多い割合で含み)、好ましくは、100質量%のパルプによって構成されている。また、パルプの種類は、特に制限されず、木材パルプや非木材パルプ、古紙パルプ等の任意のパルプを用いることができるが、第1面側繊維層及び第2面側繊維層において拡散された体液等の液体を、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層から吸い取る能力が高いという点で、フラッフパルプを用いることが特に好ましい。
【0021】
前記パルプは、吸水性や保水性、柔軟性、取扱い易さなどの点から、カヤーニ平均繊維長が2〜3mmのパルプを含むことが好ましい。なお、「カヤーニ平均繊維長」は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.52:2000に準拠して、カヤーニオートメーション社製のカヤーニ繊維長測定器によって測定される長さ加重平均繊維長をいう。また、前記パルプの坪量は、特に制限されないが、保水性、柔軟性、嵩高さなどの点から、5〜60g/m2程度のものが好ましく、15〜40g/m2程度のものがより好ましい。
【0022】
本発明における第1面側繊維層及び第2面側繊維層は、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含み(すなわち、50質量%より多い割合で含み)、好ましくは70質量%以上含む。前記親水性繊維としては、特に制限されないが、液拡散性や強度、柔軟性、汎用性等の点から、例えば、セルロース系繊維などが挙げられ、更に具体的には、綿などの天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維などが挙げられる。また、表面に親水処理を施したレーヨン繊維を用いることもできる。これらの中でも、レーヨン繊維は、液拡散性や交絡後の強度、取扱い易さ、汎用性などの点から、特に好ましく用いることができる。
【0023】
本発明において、前記親水性繊維は、平均繊維長が25mm〜64mmの範囲内であることが好ましい。平均繊維長がこの範囲内にあると、排出された体液等の液体を、第1面側繊維層及び第2面側繊維層を形成する繊維集合体の毛管現象を利用して、不織布シートの面方向に広く迅速に拡散させることができると共に、拡散させた液体を、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の間に配置されるパルプ繊維層に受け渡し易くすることができる。なお、「平均繊維長」は、JIS L 1015:2010の附属書Aの「A7.1 繊維長の測定」の「A7.1.1 A法(標準法)目盛りが付いたガラス板上で個々の繊維の長さを測定する方法」に従って測定される平均繊維長をいう。なお、上記方法は、1981年に発行されたISO 6989に相当する試験方法である。
【0024】
また、親水性繊維の形態は、特に制限されず、一般的な円形断面のものを用いても、Y字形や十字形、中空等の異形断面のものを用いてもよく、また、これらの形態のものを組み合わせて用いてもよい。親水性繊維が異形断面の繊維を含むと、該異形断面の繊維は表面積が大きく、吸液性に優れるため、第1面側繊維層及び第2面側繊維層を形成する繊維集合体の液拡散性を更に向上させることができる。
【0025】
本発明において、第1面側繊維層及び第2面側繊維層は、親水性繊維以外の他の成分を、質量比にて前記親水性繊維よりも少ない割合(すなわち、50質量%未満の割合)で含むことができ、好ましくは30質量%以下の割合で含む。前記他の成分としては、疎水性繊維、熱融着性繊維、各種処理剤、充填材などが挙げられ、所望の液拡散性や強度、柔軟性、保水性、製造コスト等に応じて、適宜単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0026】
前記疎水性繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等の熱可塑性繊維又はこれらの熱可塑性繊維を組み合わせた複合繊維などを用いることができるが、湿潤時における強度や嵩高さ、柔軟性等の点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維を用いることが好ましい。
【0027】
また、前記疎水性繊維は、液拡散性などの点から、表面に親水性油剤等によって親水処理が施された繊維を用いることが好ましく、親水処理を施されたポリエステル系繊維を用いることがより好ましい。親水処理に用いられる親水性油剤としては、特に制限されないが、例えば、アルキルホスフェートエステル塩やアルキルホスフェート金属塩などが挙げられる。さらに、本発明においては、第1面側繊維層、パルプ繊維層及び第2面側繊維層が、後述するようにウォータージェット等の高圧水流によって一体化されるため、当該高圧水流によって流れ落ちない程度の耐久性を有する親水性油剤(耐久親水性油剤)を用いて、疎水性繊維の表面を親水処理することが特に好ましい。このような耐久親水性油剤としては、特に制限されないが、例えば、ポリエーテルエステル、エーテルノニオン、ポリエーテル変性シリコーン、スルホサクシネート、ポリオキシエチレンアミドエーテル、アルキルイミダゾリン型カチオン、ポリグリセリンポリエステル、炭素数が10〜30のアルキルホスフェートエステル塩に、炭素数が10〜30のベタイン化合物や硫酸エステル塩あるいはスルホネート塩のいずれかを混合させたもの、又はアルキルホスフェートエステル塩とポリエーテル変性シリコーンとの混合物などの混合油剤などが挙げられる。
【0028】
また、前記熱融着性繊維としては、少なくとも表面に、ポリエチレン樹脂や低融点ポリプロピレンなどの融点の低い熱可塑性樹脂を含むものであり、例えば、ポリエチレン樹脂の単成分繊維;ポリプロピレン樹脂の単成分繊維;芯部がポリエチレンテレフタレート樹脂であり、鞘部がポリエチレン樹脂である芯鞘型の複合合成繊維;芯部がポリプロピレン樹脂であり、鞘部がポリエチレン樹脂である芯鞘型の複合合成繊維;芯部が高融点ポリプロピレン樹脂であり、鞘部が低融点ポリプロピレン樹脂である芯鞘型の複合合成繊維;ポリエチレンテレフタレート樹脂とポリエチレン樹脂からなるサイドバイサイド型の複合合成繊維;ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂からなるサイドバイサイド型の複合合成繊維などが挙げられる。
【0029】
第1面側繊維層及び第2面側繊維層が熱融着性繊維を含んでいると、第1面側繊維層、パルプ繊維層及び第2面側繊維層を後述するようにウォータージェット等の高圧水流によって一体化して不織布シートを得た後に、該不織布シートを熱処理することで、前記熱融着性繊維の低融点の樹脂が溶融して他の繊維に融着し、不織布シートの強度、特に湿潤時における強度を向上させることができる。なお、熱融着性繊維は、質量比にて前記親水性繊維よりも少ない割合で含まれるため、当該熱融着性繊維によって融着部が形成されたとしても、不織布シートの液拡散性を阻害することなく、不織布シートの強度を補助的に補強することができる。
【0030】
第1面側繊維層及び第2面側繊維層は、エアレイド法などの方法によって形成された繊維ウェブを用いることもできるが、第1面側繊維層及び第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層は、カード機を用いて形成されたカードウェブを用いることが好ましい。カードウェブを用いることで、構成繊維の繊維長が長い場合であっても、第1面側繊維層、パルプ繊維層及び第2面側繊維層を後述するウォータージェット等の高圧水流により一体化する際に、各繊維層内の繊維同士及び各繊維層間の繊維同士を十分に交絡させることができる。なお、カードウェブの形態は、特に制限されず、パラレルウェブ、クロスウェブ、ランダムウェブなどのいずれの形態でもよい。
【0031】
なお、本発明における第1面側繊維層と第2面側繊維層は、同じ構成の繊維層(すなわち、繊維の種類、配合率及び層の構造が同じ繊維層)であっても、異なる構成の繊維層(すなわち、繊維の種類、配合率及び層の構造のうちの少なくとも1つが異なる繊維層)であってもよい。
【0032】
次に、本発明の吸収性物品に用いられる吸収体用の不織布シートの製造方法について説明する。前記不織布シートは、少なくとも、親水性繊維を含む第2面側繊維層用の繊維ウェブを供給する工程と、前記繊維ウェブ上に、親水性繊維を含むパルプ繊維層用のパルプを供給する工程と、前記パルプ上に、親水性繊維を含む第1面側繊維層用の繊維ウェブを供給して、積層物を得る工程と、前記積層物の両面側から高圧水流処理を施して、各繊維層間の繊維同士を交絡させる工程と、を含む製造方法によって得ることができる。更に具体的には、上述した親水性繊維等の構成繊維を、そのまま或いは所定の配合割合で混綿した後、カード機等により処理して、カードウェブ等の第2面側繊維層用の繊維ウェブを作製し、次いで、作製した繊維ウェブを搬送しながら該繊維ウェブ上に、フラッフパルプ等の親水性繊維を含むパルプ繊維層用のパルプをエアレイ等によって供給し、さらに、前記パルプ上に、カードウェブ等の親水性繊維を含む第1面側繊維層用の繊維ウェブを供給して積層物を得た後、当該積層物の両面側からウォータージェット等の高圧水流処理を施すことにより、少なくとも各繊維層間の繊維同士を交絡させて、前記第1面側繊維層、前記パルプ繊維層及び前記第2面側繊維層が一体化した不織布シートを得ることができる。また、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層が熱融着性繊維を含む場合は、上記のようにして得られた不織布シートを更に熱処理することにより、シート強度が強化された不織布シートを得ることができる。
【0033】
このようにして得られた不織布シートは、ウォータージェット等の高圧水流によって、各繊維層内の繊維同士及び各繊維層間の繊維同士が交絡した構造を有するため、優れたシート強度及び液拡散性を有しつつ、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層において不織布シートの面方向に拡散された液体の前記パルプ繊維層への受け渡しを促進させることができる。また、液体を前記パルプ繊維層へ受け渡した後の前記第1面側繊維層と前記第2面側繊維層は、再度、液体を吸収して面方向に拡散させることができるため、不織布シート内において、液体の吸収、面方向への拡散及びパルプ繊維層への受け渡しのサイクルを繰り返し実行することができ、液体の持続的な拡散によって、液体の拡散領域や不織布シートに保持される液体の量を格段に増大させることができる。
【0034】
さらに、前記ウォータージェット等の高圧水流によって、第1面側繊維層及び第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層における構成繊維の一部が、パルプ繊維層の内部にまで入り込んだ構造を有していると、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層において不織布シートの面方向に拡散された液体を前記パルプ繊維層へ受け渡し易くなるため、不織布シート内において、液体の吸収、面方向への拡散及びパルプ繊維層への受け渡しのサイクルをより迅速に実行することができ、その結果、不織布シートにおける液体の拡散速度及び拡散領域(拡散面積)を更に増大させることができる。
【0035】
本発明において、吸収体用の不織布シートは、後述するクレム(Klemm)法による吸水度試験における吸液高さが、好ましくは110mm以上であり、より好ましくは120mm以上であり、更に好ましくは130mm以上である。また、前記不織布シートは、前記吸水度試験における吸水倍率が、好ましくは2.0倍以上であり、より好ましくは2.4倍以上であり、更に好ましくは3.0倍以上である。前記吸液高さ及び前記吸水倍率がこれらの範囲にあると、体液等の液体を、不織布シートの面方向に広く迅速に拡散させることができると共に、液透過性の高さと併せて、液体を迅速にパルプ繊維層内部に閉じ込めることができる。
【0036】
また、本発明において、前記不織布シートは、第1面側繊維層及び第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層の吸液高さが、パルプ繊維層の吸液高さよりも高いことが好ましい。各繊維層における吸液高さがこのような関係にあると、上述したサイクルにおいて、第1面側繊維層又は第2面側繊維層が、パルプ繊維層において未だ液体を吸収していない又は保水していない領域に、液体を受け渡し易くなるため、液体の拡散をより持続的に、より迅速に実現することができ、不織布シートにおける液体の拡散領域及び保水量を更に増大させることができる。
【0037】
前記クレム法による吸水度試験は、JIS P 8141:2004による吸水度試験方法に準拠して測定することができ、その具体的な手順は、後述する実施例において説明する。
【0038】
本発明において、前記不織布シートの坪量は、液拡散性、シート強度、液透過性等の点から、15〜100g/m2の坪量を有することが好ましく、20〜80g/m2の坪量を有することがより好ましく、30〜60g/mの坪量を有することがさらに好ましい。また、前記不織布シートを構成する各繊維層の坪量は、各繊維間の交絡の形成状態や液拡散性、シート強度、液透過性等の点から、パルプ繊維層が10〜60g/m2程度の範囲内、第1面側繊維層及び第2面側繊維層が5〜50g/m2程度の範囲内であることが好ましい。
【0039】
また、前記不織布シートの密度は、液体の拡散に必要な毛管の形成状態やシート強度等を考慮すると、好ましくは50〜300mg/cm3であり、より好ましくは50〜200mg/cm3であり、更に好ましくは60〜150mg/cm3である。
【0040】
本発明において、前記不織布シートは、吸収性物品の吸収体に接触し得る部材として用いることができ、例えば、前記吸収体内において、吸収コアの表面シート側及び/又は裏面シート側に配置される拡散性シート、前記吸収コアを覆うコアラップなどとして用いることができる。前記不織布シートをこのような部材に用いると、排出された体液等の液体が当該不織布シートにおいて広範囲に拡散されるため、当該不織布シートに近接する吸収コアの広範囲の領域に液体を吸収させることができ、さらに、前記不織布シートが吸収コアの裏面シート側に配置されていると、吸収性物品におけるリウェット量を著しく低減させる(例えば、20%以上低減させる)ことができる。
【0041】
本発明は、上述した実施形態の使い捨ておむつのほかに、例えば、失禁パッド、生理用ナプキン、パンティーライナー等の様々な吸収性物品に適用することができる。また、本発明の吸収性物品は、上述した実施形態や以下の実施例に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜変更が可能である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0043】
実施例1
親水性繊維としてレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン株式会社製)、疎水性繊維として表面を耐久親水性油剤で親水処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(東洋紡株式会社製)を用意し、前記レーヨン繊維及び前記PET繊維を、レーヨン繊維/PET繊維=70質量%/30質量%となるように混綿した後、カード機を用いて、坪量が12.0g/m2となるようにカードウェブを作製し、これを第2面側繊維層とした。作製したカードウェブを搬送しながら、該カードウェブ上に、パルプ繊維層用のフラッフパルプ(ウエアーアウザー(Weyerhaeuser)社製NB416)を、坪量が21.0g/m2となるように連続的に供給し、第2面側繊維層上にパルプ繊維層を形成した。次いで、前記パルプ繊維層上に、前記第2面側繊維層と同様にして作製したカードウェブを供給して第1面側繊維層を形成し、第1面側繊維層、パルプ繊維層及び第2面側繊維層からなる積層物を得た。このようにして得た積層物を搬送速度10m/分で搬送しながら、該積層物の両面側からウォータージェット(第1面側繊維層側の水圧:2〜5MPa、第2面側繊維層側の水圧3MPa、ノズル口径:92μm、ノズルピッチ:0.5mm、2列)による高圧水流処理を施すことによって各繊維層内及び各繊維層間の構成繊維同士を交絡させ、前記第1面側繊維層、前記パルプ繊維層及び前記第2面側繊維層が一体化した3層構造の不織布シートを得た。
【0044】
実施例2
パルプ繊維層用のフラッフパルプを、坪量が26.0g/m2となるようにカードウェブ上に供給したこと以外は、実施例1と同様に製造して、3層構造の不織布シートを得た。
【0045】
実施例3
第1面側繊維層及び第2面側繊維層を形成する各カードウェブを、疎水性繊維(PET繊維)を用いずに作製したこと以外は、実施例2と同様に製造して、3層構造の不織布シートを得た。
【0046】
比較例1
親水性繊維としてレーヨン繊維(ダイワボウレーヨン株式会社製)、疎水性繊維として表面を親水性油剤で親水処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(東洋紡株式会社製)を用意し、前記レーヨン繊維及び前記PET繊維を、レーヨン繊維/PET繊維=30質量%/70質量%となるように混綿した後、カード機を用いて、坪量が22.5g/m2となるようにカードウェブを作製し、これを本発明の第2面側繊維層に対応する繊維層とした。作製したカードウェブを搬送しながら、該カードウェブ上に、前記第2面側繊維層に対応する繊維層と同様にして作製したカードウェブを供給して、本発明の第1面側繊維層に対応する繊維層を形成し、2層の繊維層からなる積層物を得た。このようにして得た積層物を搬送速度10m/分で搬送しながら、該積層物の両面側から実施例1と同様のウォータージェットによる高圧水流処理を施すことによって各繊維層内及び各繊維層間の構成繊維同士を交絡させ、前記第1面側繊維層に対応する繊維層及び前記第2面側繊維層に対応する繊維層が一体化した2層構造の不織布シートを得た。
【0047】
比較例2
各繊維層を形成するカードウェブを、レーヨン繊維/PET繊維=50質量%/50質量%となるように混綿して作製したこと以外は、比較例1と同様に製造して、2層構造の不織布シートを得た。
【0048】
比較例3
各繊維層を形成するカードウェブを、レーヨン繊維/PET繊維=70質量%/30質量%となるように混綿して作製したこと以外は、比較例1と同様に製造して、2層構造の不織布シートを得た。
【0049】
上述のようにして得られた実施例1〜3、比較例1〜3の各不織布シートについて、坪量(g/m2)、厚み(mm)、密度(g/cm3)、クレム法による5分後の吸液高さ(mm)及び単位質量当たりの輸送量(g/g)を後述する測定方法によって測定した。また、第1面側繊維層及び第2面側繊維層におけるレーヨン繊維とPET繊維の配合比率を、上述の不織布シートの製造過程で作製された各カードウェブを用いて、後述する測定方法によって測定した。これらの測定結果を、表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、実施例1〜3の不織布シートは、吸液高さが120mm以上、輸送量が3g/g以上であり、比較例1〜3の不織布シートに比べて極めて高い吸液高さ及び輸送量を示し、優れた液拡散性を有していることがわかった。また、実施例1〜3の比較から、第1面側繊維層及び第2面側繊維層におけるレーヨン繊維の配合比率が高いほど、高い吸液高さ及び輸送量を示し、前記レーヨン繊維の配合比率に応じて不織布シートの液拡散性が向上することがわかった。
【0052】
各測定項目の測定方法は、以下のとおりである。
【0053】
[坪量]
100mm×100mmのサイズの試料を10枚採取し、各試料の質量を測定する。次いで、各試料の質量(g)を、各試料の面積(m2)で除することにより、各試料の坪量(g/m2)を算出する。計10個の試料の坪量の平均値を算出し、当該平均値を坪量として採用する。
【0054】
[厚み]
不織布の厚みは、(株)大栄科学精器製作所製 THICKNESS GAUGE UF−60を用いて測定する。UF−60では、測定面の直径が44mmであり、不織布に0.3kPaの圧力を加え、その厚みを測定する。
【0055】
[密度]
不織布の密度は、不織布の坪量を、その厚さで除することにより算出する。
【0056】
[吸液高さ及び輸送量]
クレム法による5分後の吸液高さ及び輸送量は、以下のとおり、JIS P 8141:2004による吸水度試験方法に準拠して測定する。
(1)試料を230mm×25mm(長さ×幅)の大きさにカットし、その長さ方向の端部から30mmのところに印線を引き、試験片の初期質量(W0)を測定する。
(2)170mm×90mm×40mm(縦×横×深さ)の直方体の浸漬容器に、人工尿を、高さ35mmまで充填する。なお、人工尿は、イオン交換水10Lに、尿素200g、塩化ナトリウム80g、硫酸マグネシウム8g、塩化カルシウム3g及び色素:青色1号約1gを溶解させることにより調製する。
(3)試験片を、印線が下側となるようにつり下げ具に固定し、印線まで人工尿に浸漬して、5分間放置する。
(4)5分間放置した後、吸液高さ(mm)として人工尿が印線から上昇した高さを測定する。
(5)次いで、試験片をつり下げ具から外し、人工尿に浸漬されていた、長さ30mmの部分(印線以下の部分)をカットし、残りの長さ200mmの部分の質量(W1)を測定する。
(6)以下の式に従って、輸送量(X)(g/g)を算出する。
X={(W1×230/200)−W0}/W0
(7)上記の試験を5回繰返し、その平均値を採用する。
【0057】
[レーヨン繊維とPET繊維の配合比率]
カードウェブ中のレーヨン繊維とPET繊維の配合比率は、次の手順に従ってレーヨン繊維の配合比率を測定することにより、決定する。
(1)測定サンプルとして、レーヨン繊維及びPET繊維を含む繊維ウェブを用意する。
(2)約0.2gの前記繊維ウェブを、100mLのビーカーに入る程度の大きさに裁断し、裁断した繊維ウェブの質量(g)(サンプル初期質量W)を測定する。
(3)裁断した繊維ウェブと30gのヘキサフルオロイソプロパノールを、100mLのビーカーに入れて、300rpmの回転数で1時間撹拌する。
(4)前記ビーカーの内容物を、予め質量(g)(濾紙初期質量W)を測定した濾紙を用いて濾過する。
(5)濾紙上の残渣を、濾紙ごとドラフトチャンバー内に放置し、そこで1時間乾燥させる。
(6)乾燥後の残渣及び濾紙の質量(g)を測定する。
(7)前記サンプル初期質量Wと濾紙の初期質量Wとの合計から、前記乾燥後の残渣及び濾紙の質量を除することにより、前記繊維ウェブ中のレーヨン繊維の質量(g)(レーヨン繊維質量W)を算出する。
(8)算出したレーヨン繊維質量と前記サンプル初期質量Wから、以下の式に従って、レーヨン繊維の配合比率F(質量%)を算出する。
=(W/W)×100
【0058】
以下に、想定される本発明の態様について例示する。
【0059】
本発明の一態様(態様1)は、液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に位置する吸収体と、吸収体用の不織布シートと、を含む吸収性物品であって、前記不織布シートが、パルプを含み、第1面及び第2面を有するパルプ繊維層と、前記パルプ繊維層の第1面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第1面側繊維層と、前記パルプ繊維層の第2面側に配置され、平均繊維長が25mm〜64mmの親水性繊維を主に含む第2面側繊維層と、を含む、前記吸収性物品である。
【0060】
また、本発明の別の態様(態様2)では、前記態様1の吸収性物品において、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層が、質量比にて、親水性繊維よりも少ない量の疎水性繊維を更に含む。
【0061】
更に本発明の別の態様(態様3)では、前記態様2の吸収性物品において、前記疎水性繊維が熱可塑性繊維を含む。
【0062】
更に本発明の別の態様(態様4)では、前記態様3の吸収性物品において、前記熱可塑性繊維が、親水処理されたポリエステル系繊維である。
【0063】
更に本発明の別の態様(態様5)では、前記態様1〜4のいずれかの吸収性物品において、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層における親水性繊維が、異形断面を有する。
【0064】
更に本発明の別の態様(態様6)では、前記態様1〜5のいずれかの吸収性物品において、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層における親水性繊維が、セルロース系繊維を含む。
【0065】
更に本発明の別の態様(態様7)では、前記態様1〜6のいずれかの吸収性物品において、前記パルプ繊維層におけるパルプがフラッフパルプを含む。
【0066】
更に本発明の別の態様(態様8)では、前記態様1〜7のいずれかの吸収性物品において、前記パルプ繊維層におけるパルプが、カヤーニ平均繊維長が2〜3mmのパルプを含む。
【0067】
更に本発明の別の態様(態様9)では、前記態様1〜8のいずれかの吸収性物品において、各繊維層間の繊維同士が水流の作用によって交絡された構造を含む。
【0068】
更に本発明の別の態様(態様10)では、前記態様1〜9のいずれかの吸収性物品において、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層がカードウェブを含む。
【0069】
更に本発明の別の態様(態様11)では、前記態様1〜10のいずれかの吸収性物品において、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層における繊維の一部が、前記パルプ繊維層の内部に入り込んだ構造を含む。
【0070】
更に本発明の別の態様(態様12)では、前記態様1〜11のいずれかの吸収性物品において、クレム法による吸水度試験において、前記第1面側繊維層及び前記第2面側繊維層の少なくとも一方の繊維層の吸液高さが、前記パルプ繊維層の吸液高さよりも高い。
【0071】
更に本発明の別の態様(態様13)では、前記態様1〜12のいずれかの吸収性物品において、前記吸収体が、吸収コアを含み、前記不織布シートが、少なくとも前記裏面シートと前記吸収コアとの間に配置される。
【0072】
更に本発明の別の態様(態様14)では、前記態様1〜13のいずれかの吸収性物品に用いられる吸収体用の不織布シートの製造方法であって、親水性繊維を含む第2面側繊維層用の繊維ウェブを供給する工程と、前記繊維ウェブ上に、親水性繊維を含むパルプ繊維層用のパルプを供給する工程と、前記パルプ上に、親水性繊維を含む第1面側繊維層用の繊維ウェブを供給して、積層物を得る工程と、前記積層物の両面側から高圧水流処理を施して、少なくとも各繊維層間の繊維同士を交絡させる工程と、を含む、前記製造方法である。
【符号の説明】
【0073】
1 使い捨ておむつ
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 カバーシート
61〜64 弾性部材
7 吸収コア
8 不織布シート
図1
図2
図3
図4