(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のアブソリュート型エンコーダでは、2つのトラックが同心円状に配置されるため、エンコーダの外径が大きくなってしまうという問題がある。この点、特許文献2に記載の誘導検出型ロータリエンコーダでは、同じ外径の2つのトラックが積層される構成のため、エンコーダを小型化できるメリットがある。しかし、測定するトラックとは別のトラックからのクロストーク(ノイズ成分)が発生しやすく、測定精度の低下を招くという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、エンコーダの小型化とクロストークを抑制した精度の高い位置検出を行うことができる誘導検出型ロータリエンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の誘導検出型ロータリエンコーダは、ステータと、ステータと対向し、回転軸を中心に回転可能に設けられたロータと、ステータに設けられ、回転軸を中心とした第1半径を有する第1送信巻線と、ステータに設けられ、回転軸を中心とした第2半径を有する第2送信巻線と、ステータに設けられ、回転軸を中心とした環状の第1領域に形成され、回転軸を中心とした第1内側半径と第1外側半径とを有する第1受信巻線と、ステータに設けられ、回転軸を中心とした環状の第2領域に形成され、第1受信巻線との間に第1絶縁層を介して形成され、回転軸を中心とした第2内側半径と第2外側半径とを有する第2受信巻線と、ロータに設けられ、回転軸を中心とした環状の領域であって回転軸に沿った軸方向に第1領域と重なる第3領域に形成され、回転軸を中心とした第3内側半径と第3外側半径とを有する第1磁束結合体と、ロータに設けられ、回転軸を中心とした環状の領域であって軸方向に第2領域と重なる第4領域に形成され、第1磁束結合体との間に第2絶縁層を介して形成され、回転軸を中心とした第4内側半径と第4外側半径とを有する第2磁束結合体と、を備え、第2領域、第1領域、第3領域及び第4領域は、軸方向にこの順で並び、第1送信巻線と第1磁束結合体との最短距離は、第2送信巻線と第1磁束結合体との最短距離よりも短く、第2送信巻線と第2磁束結合体との最短距離は、第1送信巻線と第2磁束結合体との最短距離よりも短く、かつ、第1送信巻線と第1磁束結合体との最短距離は、第1送信巻線と第2磁束結合体との最短距離よりも短く、第2送信巻線と第2磁束結合体との最短距離は、第2送信巻線と第1磁束結合体との最短距離よりも短いことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、第1受信巻線、第2受信巻線、第1磁束結合体及び第2磁束結合体の積層構造によってエンコーダの外径を小型化することができる。また、第1送信巻線と第1磁束結合体との最短距離を、第2送信巻線と第1磁束結合体との最短距離よりも短くすることで、第1磁束結合体では第2送信巻線からのクロストークの影響が抑制される。また、第2送信巻線と第2磁束結合体との最短距離を、第1送信巻線と第2磁束結合体との最短距離よりも短くすることで、第2磁束結合体では第1送信巻線からのクロストークの影響が抑制される。
【0011】
本発明の誘導検出型ロータリエンコーダにおいて、第1内側半径は、第2内側半径よりも大きく、第2外側半径は、第1内側半径以上であり、第1外側半径は、第2外側半径よりも大きくてもよい。このような構成によれば、エンコーダの外径の大型化を抑制しつつ、軸方向にみて第2受信巻線と第2磁束結合体との間に第2送信巻線を配置するスペースを確保することができる。
【0012】
本発明の誘導検出型ロータリエンコーダにおいて、第3内側半径は、第4内側半径よりも大きく、第4外側半径は、第3内側半径以上であり、記第3外側半径は、第4外側半径よりも大きくてもよい。このような構成によれば、エンコーダの外径の大型化を抑制しつつ、軸方向にみて第2受信巻線と第2磁束結合体との間に第2送信巻線を配置するスペースを確保することができる。
【0013】
本発明の誘導検出型ロータリエンコーダにおいて、第1半径は、第1外側半径よりも大きく、第2半径は、第1内側半径よりも小さくてもよい。このような構成によれば、エンコーダの外径の大型化を抑制しつつ、クロストークの影響を抑制する配置を実現することができる。
【0014】
本発明の誘導検出型ロータリエンコーダにおいて、第1送信巻線は、第2送信巻線と同層に設けられていてもよい。このような構成によれば、エンコーダの薄型化を図ることができる。
【0015】
本発明の誘導検出型ロータリエンコーダにおいて、第1磁束結合体及び第1受信巻線は、回転軸を中心とした回転方向に第1ピッチで周期的に変化する形状に設けられ、第2磁束結合体及び第2受信巻線は、回転軸を中心とした回転方向に第1ピッチと異なる第2ピッチで周期的に変化する形状に設けられていてもよい。このような構成によれば、ロータの回転角度における絶対値を得られるようになる。
【0016】
本発明の誘導検出型ロータリエンコーダにおいて、第1磁束結合体は、回転軸を中心として第3内側半径と同じ半径で環状に設けられた第1環状電流経路を含み、第2磁束結合体は、回転軸を中心として第4外側半径と同じ半径で環状に設けられた第2環状電流経路を含んでいてもよい。このような構成によれば、第1環状電流経路がシールドの役目を果たし、第2送信巻線から第1磁束結合体へのクロストークの影響を抑制することができる。また、第2環状電流経路がシールドの役目を果たし、第1送信巻線から第2磁束結合体へのクロストークの影響を抑制することができる。
【0017】
本発明の誘導検出型ロータリエンコーダにおいて、第1磁束結合体の内側に回転軸を中心として環状に設けられた第1環状電流経路と、第2磁束結合体の外側に回転軸を中心として環状に設けられた第2環状電流経路と、をさらに備えていてもよい。このような構成によれば、第1環状電流経路がシールドの役目を果たし、第2送信巻線から第1磁束結合体へのクロストークの影響を抑制することができる。また、第2環状電流経路がシールドの役目を果たし、第1送信巻線から第2磁束結合体へのクロストークの影響を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
図1は、第1実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダを適用したデジタル式マイクロメータを例示する正面図である。
図1に表したように、デジタル式マイクロメータ1は、フレーム3と、シンブル5と、スピンドル7と、表示部9と、を備える。フレーム3は、シンブル5及びスピンドル7を支持する本体部3aと、本体部3aから間隔を開けて設けられるアンビル部3bとを有する。シンブル5は、フレーム3の本体部3aに回転可能に取り付けられる。測定子であるスピンドル7は、フレーム3の本体部3aで回転可能に支持される。
【0020】
スピンドル7の一端7a側はフレーム3の本体部3aからアンビル部3bに向けて突出している。アンビル部3bには、スピンドル7の一端7aと対向するようにアンビル3cが取り付けられる。スピンドル7の他端側はフレーム3の本体部3aに入り込む。スピンドル7の他端側には送りねじ(
図1には示されない)が設けられる。この送りねじがシンブル5内に設けられたナット(
図1には示されない)に嵌め込まれている。
【0021】
フレーム3の本体部3aの外装面には表示部9が設けられる。表示部9は、例えばセグメント方式で数値等を表示する液晶表示パネルである。このような構成において、シンブル5を正方向に回転させると、スピンドル7は、スピンドル7の軸(回転軸AX)に沿ってアンビル3c側へ移動する。これにより、スピンドル7とアンビル3cとの間隔が狭くなる。一方、シンブル5を逆方向に回転させるとスピンドル7は回転軸AXに沿ってアンビル3cとは反対側へ移動する。これにより、スピンドル7とアンビル3cとの間隔が広くなる。
【0022】
対象物の大きさを測定する場合には、アンビル3cとスピンドル7の一端7aとの間に対象物を配置し、シンブル5を正方向に回転させてアンビル3cとスピンドル7の一端7aとの間で対象物を挟むようにする。この際のアンビル3cとスピンドル7の一端7aとの間隔が測定結果として表示部9に表示される。
【0023】
次に、本実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダの構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダの構成を例示する断面図である。
図2に表したように、誘導検出型ロータリエンコーダ11は、フレーム3の本体部3aに設けられる。
【0024】
誘導検出型ロータリエンコーダ11は、ステータ14と、ロータ15とを備える。ステータ14はステータブッシュ21を介してフレーム3の本体部3aに固定される。ロータ15は、ステータ14と対向し、回転軸AXを中心に回転可能に設けられる。ロータ15は、円筒状のロータブッシュ19の端面に固定される。ロータブッシュ19及びステータブッシュ21にはスピンドル7が挿入される。
【0025】
スピンドル7の表面には、シンブル5の内部に配置されたナットに嵌め込まれる送りねじ23が形成される。また、スピンドル7の表面には、スピンドル7の長手方向(スピンドル7の進退方向)にキー溝25が設けられる。キー溝25には、ロータブッシュ19に固定されたピン27の先端部が嵌まっている。これにより、スピンドル7が回転すると、その回転力がピン27を介してロータブッシュ19に伝わり、ロータ15が回転する。すなわち、スピンドル7の回転に連動してロータ15が回転することになる。ピン27はキー溝25に固定されていないので、ロータ15をスピンドル7とともに移動させずにロータ15を回転させることができる。一方、ステータブッシュ21はスピンドル7を回転させても回転しない。つまり、ステータ14はスピンドル7を回転させても固定されたままである。
【0026】
次に、ステータ14及びロータ15の構成について説明する。
図3は、ステータ及びロータの構成を例示する模式的断面図である。
図3に表したように、ステータ14は、積層された絶縁層33A、33B、33C及び33Dを有する。絶縁層33A、33B、33C及び33Dは、ロータ15から離れる方向にこの順で積層される。絶縁層33A、33B、33C及び33Dには、スピンドル7を通すための貫通孔34が設けられる。
【0027】
ロータ15は、積層された絶縁層42A及び42Bを有する。絶縁層42A及び42Bは、ステータ14から離れる方向にこの順で積層される。絶縁層42A及び42Bには、スピンドル7を通すための貫通孔43が設けられる。
【0028】
ステータ14には、第1受信巻線32a及び第2受信巻線32bが設けられる。第1受信巻線32aは、回転軸AXを中心とした環状の第1領域R1に形成される。第1受信巻線32aの一部は絶縁層33Aのロータ15側に形成され、他部は絶縁層33Aと絶縁層33Bとの間に形成される。これらは絶縁層33Aを貫通するスルーホール又はビアを介して接続される。
【0029】
第2受信巻線32bは、回転軸AXを中心とした環状の第2領域R2に形成される。第2受信巻線32bの一部は絶縁層33Bと絶縁層33Cとの間に形成され、他部は絶縁層33Cと絶縁層33Dとの間に形成される。これらは絶縁層33Cを貫通するスルーホール又はビアを介して接続される。
【0030】
さらに、ステータ14には、回転軸AXを中心とした環状の第1送信巻線31a及び第2送信巻線31bが設けられる。第1送信巻線31aはステータ14の外周側に設けられ、第2送信巻線31bはステータ14の内周側に設けられる。第1送信巻線31aに流される電流の方向は周期的に変化する。この電流により発生する磁界をロータ15に形成された第1磁束結合体41aに与える。また、第2送信巻線31bに流される電流の方向は周期的に変化する。この電流により発生する磁界をロータ15に形成された第2磁束結合体41bに与える。
【0031】
ロータ15には、第1磁束結合体41aと、第2磁束結合体41bとが設けられる。第1磁束結合体41aは、回転軸AXを中心とした環状の第3領域R3に形成される。第1磁束結合体41aは、絶縁層42Aのステータ14側に設けられる。第2磁束結合体41bは、回転軸AXを中心とした環状の第4領域R4に形成される。第2磁束結合体41bは、絶縁層42Aと絶縁層42Bとの間に形成される。
【0032】
本実施形態では、第2領域R2、第1領域R1、第3領域R3及び第4領域R4がこの順に並んでいる。これにより、第1受信巻線32aは、第1磁束結合体41aと対向し、第2受信巻線32bは、第2磁束結合体41bと対向する。
【0033】
ここで、誘導検出型ロータリエンコーダ11の動作について説明する。
誘導検出型ロータリエンコーダ11においては、第1送信巻線31aに流す送信電流の方向を周期的に変化させ、この送信電流により発生する磁界をロータ15に形成された第1磁束結合体41aに与える。第1磁束結合体41aには、磁束結合による誘導電流が流れる。第1受信巻線32aは、第1磁束結合体41aに流れる誘導電流によって発生した磁界に基づく誘導電圧を検出する。
【0034】
また、誘導検出型ロータリエンコーダ11においては、第2送信巻線31bに流す送信電流の方向を周期的に変化させ、この送信電流により発生する磁界をロータ15に形成された第2磁束結合体41bに与える。第2磁束結合体41bには、磁束結合による誘導電流が流れる。第2受信巻線32bは、第2磁束結合体41bに流れる誘導電流によって発生した磁界に基づく誘導電圧を検出する。
【0035】
本実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ11において、第1送信巻線31aと第1磁束結合体41aとの最短距離は、第2送信巻線31bと第1磁束結合体41aとの最短距離よりも短くなっている。さらに、第2送信巻線31bと第2磁束結合体41bとの最短距離は、第1送信巻線31aと第2磁束結合体41bとの最短距離よりも短くなっている。さらに、第1送信巻線31aと第1磁束結合体41aとの最短距離は、第1送信巻線31aと第2磁束結合体41bとの最短距離よりも短くなっている。さらに、第2送信巻線31bと第2磁束結合体41bとの最短距離は、第2送信巻線31bと第1磁束結合体41aとの最短距離よりも短くなっている。
【0036】
このような構成では、第1送信巻線31aに電流が流れることで磁界が発生し、この磁界によって第1磁束結合体41aに誘導電流が流れる。この際、第2磁束結合体41bは第1送信巻線31a及び第1磁束結合体41aで発生する磁界の影響を受けることになる。本実施形態では、第1送信巻線31a及び第1磁束結合体41aから第2磁束結合体41bが離れた位置にあることから、第1送信巻線31a及び第1磁束結合体41aの磁界の影響を第2磁束結合体41bが受けにくくなる。
同様に、第2送信巻線31bに電流が流れることで磁界が発生し、この磁界によって第2磁束結合体41bに誘導電流が流れる。この際、第1磁束結合体41aは第2送信巻線31b及び第2磁束結合体41bで発生する磁界の影響を受けることになる。本実施形態では、第2送信巻線31b及び第2磁束結合体41bから第1磁束結合体41aが離れた位置にあることから、第2送信巻線31b及び第2磁束結合体41bの磁界の影響を第1磁束結合体41aが受けにくくなる。
この結果、第1磁束結合体41aでは、第2送信巻線31bからのクロストークの影響が抑制される。また、第2磁束結合体41bでは、第1送信巻線31aからのクロストークの影響が抑制される。
【0037】
上記の距離関係を実現するため、本実施形態では、第1受信巻線32a及び第1磁束結合体41aの径と、第2受信巻線32b及び第2磁束結合体41bの径とを相違させて、第1送信巻線31aと第1磁束結合体41aに近づけ、第2送信巻線31bを第2磁束結合体41bに近づけて配置している。
【0038】
ここで、上記のような位置関係を実現するための具体例を説明する。
先ず、第1受信巻線32aの回転軸AXを中心とした内側半径を第1内側半径r11、外側半径を第1外側半径r12とする。第2受信巻線32bの回転軸AXを中心とした内側半径を第2内側半径r21、外側半径を第2外側半径r22とする。第1磁束結合体41aの回転軸AXを中心とした内側半径を第3内側半径r31、外側半径を第3外側半径r32とする。第2磁束結合体41bの回転軸AXを中心とした内側半径を第4内側半径r41、外側半径を第4外側半径r42とする。また、第1送信巻線31aの回転軸AXを中心とした半径を第1半径r10、第2送信巻線31bの回転軸AXを中心とした半径を第2半径r20とする。
【0039】
ここで、内側半径とは、回転軸AXに沿った方向にみて、巻線や磁束結合体が設けられた領域を一定の幅を持ったリング状の領域とした場合のリング内側の半径のことをいう。また、外側半径とは、このリング状の領域のリング外側の半径のことをいう。第1半径とは、第1送信巻線31aを円形とした場合の巻線の中心位置での半径のことをいう。第2半径とは、第2送信巻線31bを円形とした場合の巻線の中心位置での半径のことをいう。
【0040】
本実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ11では、第1内側半径r11は、第2内側半径r21よりも大きく、第2外側半径r22は、第1内側半径r11以上であり、第1外側半径r12は、第2外側半径r22よりも大きい。これにより、第1受信巻線32a及び第2受信巻線32bを同層に並べる場合に比べてエンコーダの外径を小さくすることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ11において、第3内側半径r31は、第4内側半径r41よりも大きく、第4外側半径r42は、第3内側半径r31以上であり、第3外側半径r32は、第4外側半径r42よりも大きくなっている。これにより、第1磁束結合体41a及び第2磁束結合体41bを同層に並べる場合に比べてエンコーダの外径を小さくすることができる。また、軸方向にみて第2受信巻線32bと第2磁束結合体41bとの間に第2送信巻線31bを配置することができ、第2送信巻線31bによる第1磁束結合体41aへのクロストークを抑制することができる。
【0042】
図3に表した例では、第1送信巻線31aは、第2送信巻線31bと同層に設けられる。そして、第2半径r20は、第2内側半径r21よりも小さく、第1半径r10は、第1外側半径r12よりも大きい。これにより、第1送信巻線31aを第1磁束結合体41aの近くに配置でき、第2送信巻線31bを第2磁束結合体41bの近くに配置することができる。
【0043】
次に、第1送信巻線31a、第2送信巻線31b、第1受信巻線32a、第2受信巻線32b、第1磁束結合体41a及び第2磁束結合体41bの平面的形状について説明する。
【0044】
図4は、第1送信巻線、第2送信巻線及び第1受信巻線を例示する平面図である。
図4に表したように、第1送信巻線31aは、絶縁層33Aの外周に近い側に配置され、第2送信巻線31bは、貫通孔34に近い側に配置される。第2送信巻線31bの取り出し配線は、絶縁層33Aにおける第1受信巻線32aの内側の位置でスルーホールを介して絶縁層33Bと絶縁層33Cとの間まで引き回される。これにより、ステータ14の外径を大きくすることなく、第1受信巻線32aと干渉せずに配線できる。なお、第2送信巻線31bの取り出し配線は、第2受信巻線32bの貫通孔34側から下層に引き回してもよい。
【0045】
第1受信巻線32aは、第1送信巻線31a及び第2送信巻線31bの間における第1送信巻線31aに近い位置に配置される。第1受信巻線32aは、回転方向に位相を異ならせた3つの受信巻線部321a〜323aにて構成される。受信巻線部321a〜323aにおける互いに交差する部分は、絶縁層33Aを介して上下に配列され、相互にスルーホール又はビアにて接続される。これにより、各々絶縁分離されて配置される。
【0046】
図5は、第1受信巻線の一つの受信巻線部を例示する平面図である。
図5に表したように、受信巻線部321aは、ロータ15の回転方向にピッチλ1をもって周期的に変化するループ状(菱型状)の形状を有する。受信巻線部321aにおいて、菱型状のパターン対PA1は10個設けられる。なお、受信巻線部322a、323aも受信巻線部321aと同様の形状を有する。
【0047】
図6は、第2受信巻線を例示する平面図である。
図6に表したように、第2受信巻線32bは、第1受信巻線32aと同様な形状を有し、回転方向に位相を異ならせた3つの受信巻線部321b〜323bにて構成される。しかし、第2受信巻線32bの全体の大きさは第1受信巻線32aよりも小さい。また、第2受信巻線32bの回転方向のピッチは、第1受信巻線32aの回転方向のピッチと相違する。
【0048】
図7は、第2受信巻線の一つの受信巻線部を例示する平面図である。
図7に表したように、受信巻線部321bは、ロータ15の回転方向にピッチλ1とは異なるピッチλ2をもって周期的に変化するループ状(菱型状)の形状を有する。例えば、ピッチλ2は、ピッチλ1よりも長い。言い換えると、ピッチλ1は、ピッチλ2よりも短い。菱型状のパターン対PA2は8個設けられる。なお、受信巻線部322b、323bも受信巻線部321bと同様の形状を有する。
【0049】
図8は、第1磁束結合体を例示する平面図である。
図8に表したように、第1磁束結合体41aは、スピンドル7に対して同軸的に形成され、第1受信巻線32aと空隙を介して重なるように形成される。第1磁束結合体41aは、第1受信巻線32aと同じピッチλ1をもってロータ15の回転方向に周期的に変化する連続した歯車状の形状を有する。
【0050】
第1磁束結合体41aは、スピンドル7に近づく方向に窪む凹部411aと、スピンドル7から離れる方向に突出する凸部412aとを交互に構成する。
図8に表した例では、凹部411aと凸部412aとのパターン対PA3は10個設けられる。
【0051】
図9は、第2磁束結合体を例示する平面図である。
図9に表したように、第2磁束結合体41bは、スピンドル7に対して同軸的に形成され、第1磁束結合体41aと同様な凹部411bと凸部412bとが交互に繰り返される歯車状の形状を有する。第2磁束結合体41bの凹部411b及び凸部412bのピッチはλ2である。
図9に表した例では、凹部411bと凸部412bとのパターン対PA4は9個設けられる。なお、第1磁束結合体41a及び第2磁束結合体41bの形状は歯車状、sin波状のほか、島状など他の形状であってもよい。
【0052】
このような構成を備えた本実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ11では、エンコーダの外径を小型化しつつ、クロストークの影響を抑制した精度の高い位置検出を行うことができる。
【0053】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図10は、第2実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダを例示する断面図である。
図11及び
図12は、第2実施形態に係る磁束結合体を例示する平面図である。
第2実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ12において、第1磁束結合体41aは第1環状電流経路413aを含み、第2磁束結合体41bは第2環状電流経路413bを含む。
【0054】
図11に表したように、第2実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ12の第1磁束結合体41aは、回転軸AXを中心として第3内側半径r31と同じ半径で環状に設けられた第1環状電流経路413aを含む。第1環状電流経路413aの一部は凸部412aと共通になっている。
【0055】
また、
図12に表したように、第2磁束結合体41bは、回転軸AXを中心として第4外側半径r42と同じ半径で環状に設けられた第2環状電流経路413bを含む。第2環状電流経路413bの一部は凹部411bと共通になっている。
【0056】
第2実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ12において第1磁束結合体41a及び第2磁束結合体41b以外の構成は第1実施形態と同様である。このような第2実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ12によれば、第1環状電流経路413a及び第2環状電流経路413bのそれぞれがシールドの役目を果たすことになる。
【0057】
例えば、第1環状電流経路413aは第1磁束結合体41aの第2送信巻線31b側に設けられているため、第2送信巻線31bで発生した磁界による影響を第1磁束結合体41aが受ける前に第1環状電流経路413aで受けることができる。つまり、第1環状電流経路413aは第2送信巻線31bの磁界に対するシールドの役目を果たす。これにより、第1磁束結合体41aは、第2送信巻線31bの磁界の影響をほとんど受けず、第1送信巻線31aの磁界による電流を十分に流すことができるようになる。
【0058】
同様に、第2環状電流経路413bは第2磁束結合体41bの第1送信巻線31a側に設けられているため、第1送信巻線31aで発生した磁界による影響を第2磁束結合体41bが受ける前に第2環状電流経路413bで受けることができる。つまり、第2環状電流経路413bは第1送信巻線31aの磁界に対するシールドの役目を果たす。これにより、第2磁束結合体41bは、第1送信巻線31aの磁界の影響をほとんど受けず、第2送信巻線31bの磁界による電流を十分に流すことができるようになる。
【0059】
第2実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ12によれば、第1環状電流経路413a及び第2環状電流経路413bのそれぞれによるシールド効果によって、クロストークの影響を抑制した精度の高い位置検出を行うことができる。
【0060】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図13は、第3実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダを例示する断面図である。
図14及び
図15は、第3実施形態に係る磁束結合体を例示する平面図である。
第3実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ13は、第1磁束結合体41aの内側に回転軸AXを中心として環状に設けられた第1環状電流経路413aと、第2磁束結合体41bの外側に回転軸AXを中心として環状に設けられた第2環状電流経路413bと、をさらに備えている。すなわち、第1環状電流経路413aは、第1磁束結合体41aとは独立して環状に設けられ、第2環状電流経路413bは、第2磁束結合体41bとは独立して環状に設けられる。これら以外の構成は第1実施形態と同様である。
【0061】
第1磁束結合体41aと独立して第1環状電流経路413aが設けられていても、第2実施形態と同様に、第1環状電流経路413aは第2送信巻線31bの磁界に対するシールドの役目を果たす。また、第2磁束結合体41bと独立して第2環状電流経路413bが設けられていても、第2環状電流経路413bは第1送信巻線31aの磁界に対するシールドの役目を果たす。
【0062】
第3実施形態では、第1環状電流経路413a及び第2環状電流経路413bが独立して設けられているため、第1磁束結合体41a及び第2磁束結合体41bのそれぞれは、第1送信巻線31a及び第2送信巻線31bのそれぞれからの磁界による電流が効率良く流れることになる。
【0063】
第3実施形態に係る誘導検出型ロータリエンコーダ13によれば、第1環状電流経路413a及び第2環状電流経路413bのそれぞれによるシールド効果によって、クロストークの影響を抑制した精度の高い位置検出を行うことができる。
【0064】
以上説明したように、実施形態によれば、エンコーダの小型化とクロストークを抑制した精度の高い位置検出を行うことができる誘導検出型ロータリエンコーダ11、12及び13を提供することが可能になる。
【0065】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。