(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
80℃未満のビカット軟化点(ISO306/ASOによる)を有する少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ならびにTPUおよびフリーラジカル重合によって得ることができるポリマーの全体に対して5から95質量%のフリーラジカル重合によって得ることができる少なくとも1種のポリマーを含む発泡性ポリマー粒子材料であって、フリーラジカル重合によって得ることができるポリマーが、櫛形ポリマー、グラフトポリマー、またはコポリマーになるようにTPUに結合されており、及び
前記ポリマー粒子材料のTPU相形態は、TPUホモポリマーから作られる連続相ならびにTPUのグラフトポリマーおよびフリーラジカル重合によって得ることができるポリマーから作られる不連続相からなることを特徴とする発泡性ポリマー粒子材料。
前記TPUが、ジフェニルメタン2,2−ジイソシアネート、ポリテトラヒドロフラン、および1,4−ブタンジオールから得ることができる、請求項1から6のいずれか一項に記載の発泡性ポリマー粒子材料。
重合温度未満で、前記熱可塑性ポリウレタンが、フリーラジカル経路によって重合可能なモノマー、開始剤、ならびにまた場合によって補助剤およびその他の追加の物質の溶液中で膨潤され、重合温度が、膨潤手順が実行される温度を著しく超える、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、特に、数週間の期間にわたって物理的発泡剤(ペンタン)を保持でき、市販のEPS機器で処理でき、それにもかかわらず弾性特性の十分なレベルを、依然として有している、TPUをベースとする材料を開発することが、目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
使用されるTPUが、80℃未満のビカット軟化点(ISO306/A50による)を有し、フリーラジカル重合によって得ることができるポリマーが、櫛形ポリマー、グラフトポリマー、またはコポリマーの形態で、TPUに結合された場合、TPUおよびフリーラジカル重合によって得ることができるポリマーから所望の有利な特性を有するポリマーを生成することが、可能であるとわかった。
【0013】
したがって、本発明は、80℃未満のビカット軟化点(ISO306/A50による)を有する少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ならびにTPUおよびフリーラジカル重合によって得ることができるポリマーの全体に対して5から95質量%のフリーラジカル重合によって得ることができる少なくとも1種のポリマー含む発泡性ポリマー粒子材料であって、フリーラジカル重合によって得ることができるポリマーが、櫛形ポリマー、グラフトポリマー、またはコポリマーになるようにTPUに結合されている、発泡性ポリマー粒子材料を提供する。
【0014】
本発明はさらに、本発明のポリマー粒子材料の予備発泡によって得ることができる、本発明の発泡ポリマー粒子材料を提供する。
【0015】
本発明はまた、本発明の予備発泡させたポリマー粒子材料から得ることができる発泡成形品を提供する。
【0016】
本発明はさらに、本発明のポリマー粒子材料の製造方法であって、以下の方法:
a)スチレンモノマーの実質的な重合が起こらない温度で、水性媒体に、80℃未満のビカット軟化点を有する1種もしくは複数のTPU、TPUおよび述べられたモノマーの全体に対して5から95質量%のフリーラジカル経路によって重合可能な1種もしくは複数のモノマーおよび場合によってコモノマー、重合開始剤、分散剤、ならびに場合によって、その他の追加の物質および/または重合助剤を分散する工程と、
b)結果として得られた分散物を、フリーラジカル経路によって重合可能なモノマーの実質的な重合が起こらない温度で1から24時間、場合によって撹拌する工程と、
c)TPUに、フリーラジカル経路によって重合可能なモノマーを櫛形ポリマー、グラフトポリマーまたはコポリマーの形態で重合する工程と、
d)水性懸濁液に物理的発泡剤を加える工程と
を含む、方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、弾性フォームとして、好ましくは、ファサード、住宅の内装、および/もしくは固体伝送音の消音のための絶縁材料として、スポーツ用床、靴底、ならびに/または自動車のバンパーのために、本発明の発泡成形品を使用する方法を提供する。
【0018】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびその製造方法は、既知である。
【0019】
本発明は、ビカット軟化点が80℃未満、好ましくは60から79℃、特に好ましくは60から75℃である等級のTPUを使用する。
【0020】
ビカット軟化点は、ここにおいて、ASO法によるISO306に従って、すなわち、10Nの力および加熱速度50℃/時を使用して測定される。
【0021】
ビカット軟化点は、発泡剤が入っておらず、所望の適用例のために従来使用されてきた添加剤を全く含まない試料で測定される。
【0022】
本発明のビカット軟化点は、当業者にとって既知の方法によって、例えば、TPUの生成における適切なモノマー単位の使用によって、達成できる(以下参照)。
【0023】
本発明で使用される等級のTPUのショアA硬度は、好ましくは50から150、特に好ましくは65から85の範囲内である(DIN53505に従って測定)。
【0024】
融解範囲(ガラス転移)は、好ましくは−20℃から−60℃の範囲内である。
【0025】
DIN53504−S2による破断伸びは、好ましくは>550%である。
【0026】
提示されたビカット軟化点とともに、本発明にとって必須である別の特徴において、本発明で使用されるTPUは、例えばスチレンのフリーラジカル重合の典型的な条件下で(T=100〜140℃、過酸化ジクミルなどの過酸化物開始剤0.1〜3質量%)、フリーラジカル重合が可能なモノマーによって、櫛形ポリマー、グラフトポリマー、またはコポリマーを形成する、官能基を含まなければならない。第1の変化形は、原理的に知られている方法でTPUを生成する間にフリーラジカル経路によって抽出可能である水素原子を有する、ジ−またはモノイソシアネート成分、例えば、ジフェニルメタン4,4’−、2,4’−、および/もしくは2,2’−ジイソシアネート(MDI)、さもなければ、これらの混合物の使用によって、これを達成する(以下参照)。
【0027】
第2の変化形において、フリーラジカル重合が可能であり、イソシアネートとの重付加反応に入ることができる基(アルコール基、エポキシ基、アミン基)を有するモノマーは、既知の方法でTPUを生成する間に、加えられる(下記参照)。ここにおいて、特に好ましいのは、モノマーとしての以下の化合物である:
ヒドロキシエチルメタクリレート;1,2−および1,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート;グリシジルメタクリレート、オルト−、メタ−、およびパラ−ヒドロキシスチレン、メタ−およびパラ−アミノスチレン、メタクリルアミド、1,4−ブテンジオール、1,4−ブチンジオール、ならびに/またはポリブタジエンジオール。
【0028】
TPUおよびその製造方法は、例えば、Gerhard W.BeckerおよびDietrich Braun、Kunststoff Handbuch、Band7「Polyurethane」[プラスチックハンドブック、第7巻、「ポリウレタン」(Plastics handbook、volume7、「Polyurethanes」)]、Carl Hanser Verlag、Munich、Vienna、1993に、広く記載されている。
【0029】
[kg/mol]で提示されている、本明細書における全てのモル質量は、数平均モル質量である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
好ましい実施形態は、イソシアネート(a)と、イソシアネートに対して反応性が高く、好ましくはモル質量0.5kg/molから10kg/molを有する化合物(b)、および場合によって、好ましくはモル質量0.05kg/molから0.5kg/molを有する、鎖延長剤(c)との混合物からの反応によって、TPUを生成する。
【0032】
その他の好ましい実施形態において、少なくとも1種の鎖調節剤(c1)、1種の触媒(d)、および場合によって、少なくとも1種のフィラー、補助剤、および/または追加の物質もまた、TPUの生成のために混合物に加えられる。小文字、また時に数字によって指定された物質群はまた、成分と呼ばれる。
【0033】
TPUの生成において通常使用される成分(a)、(b)、(c)、(c1)、(d)、および(e)は、後述に例として記載され、以下の物質群を含む:
イソシアネート(a)、イソシアネートに対して反応性の高い化合物(b)、鎖延長剤(c)、鎖調節剤(c1)、触媒(d)、ならびに/または少なくとも1種の従来のフィラー、補助剤、および/もしくは追加の物質。
【0034】
全ての場合において、TPUの生成は、イソシアネート(a)とイソシアネートに対して反応性の高い化合物(b)との混合物を必要とする。成分(c)、(c1)、(d)、および(e)のさらなる添加は任意であり、単独でまたは可能な変形形態のいずれかで、実施できる。ここにおける用語、成分は、いずれの場合にも、その成分の個々の物質または物質の混合物を意味する。
【0035】
用語「構成成分」は、以下の成分のために使用されている:イソシアネート(a)、イソシアネートに対して反応性の高い化合物(b)、および鎖延長剤(c)、ならびにまた必要に応じて、鎖調節剤(c1)。
【0036】
好ましい実施形態は、有機イソシアネート(a)として、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、および/または芳香族イソシアネート、より好ましくはジイソシアネートを使用する。好ましいジイソシアネートの例は、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、および/もしくはオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−および/もしくは1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−および/もしくは2,6−ジイソシアネート、ならびに/またはジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−、および2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−、および/もしくは4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4−および/もしくは2,6−ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート、ならびにフェニレンジイソシアネートである。
【0037】
特に好ましいのは、ジフェニルメタン4,4’−、2,4’−、および2,2’−ジイソシアネート(MDI)、ならびにまたこれらの混合物である。官能性3以上のポリイソシアネートの従属量、例えば、有機ジイソシアネートに対して3mol%まで、好ましくは1mol%までの量は、場合によって、有機ジイソシアネートと置き換えることができるが、この置換えの量は、得られたポリウレタンに熱可塑の処理がまだ可能であるように、制限されなければならない。ポリウレタンのいかなる過剰な化学架橋も避けるために、比較的大量のこれらの二官能性を超えるイソシアネートが、反応性水素原子を有する二官能性未満の化合物の同時使用によって補われることは、有利である。
【0038】
好ましい実施形態において、イソシアネートに対して反応性の高い、使用された化合物(b)は、ポリエーテルオール、ポリエステルオール、および/またはポリカーボネートジオールであり、これらに通常使用される別の総称は、「ポリオール」である。
【0039】
TPUは、好ましくは、ポリエーテルアルコールから生成され、ポリエーテルジオールを使用することが特に好ましい。
【0040】
適切なポリエーテルジオールは、既知の方法、例えば、触媒として、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、またはナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、もしくはカリウムエトキシド、もしくはカリウムイソプロポキシドなどのアルカリ金属アルコレートによる、および結合形態で2から3個、好ましくは2個の反応性水素原子を含む少なくとも1種の出発分子を添加することによる、アルキレンオキシドのアニオン重合によって、あるいはアルキレン部分に2から4個の炭素原子を有する1種もしくは複数のアルキレンオキシドからの、触媒としてのルイス酸によるカチオン重合によって、生成できる。適切なアルキレンオキシドの例は、テトラヒドロフラン、プロピレン1,3−オキシド、特に好ましくは、エチレンオキシドおよびプロピレン1,2−オキシドである。アルキレンオキシドは、個別に、交互に連続して、または混合物の形態で使用できる。使用できる出発分子の例は、水、コハク酸およびアジピン酸などの有機のジカルボン酸、ならびに好ましくは、結合形態でエーテル橋を場合によって含む二価アルコール、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、および2−メチル−1,5−ペンタンジオールである。出発分子は、個別にまたは混合物の形態で使用できる。水酸基を含むポリテトラヒドロフラン(PTHF)は、特に適切であり、好ましい。
【0041】
本質的に直鎖状であるポリエーテルオールの平均分子量は、通常500から8000、好ましくは600から6000であり、ここにおけるPTHFの好ましい平均分子量は、500から2500、特に800から2000である。ここにおける材料は、個別に、さもなければ互いの混合物の形態においてのいずれかで、使用できる。
【0042】
特に好ましいポリエーテルジオールは、ポリテトラヒドロフランである。使用されるポリエーテルアルコールおよびポリテトラヒドロフランのモル質量は、0.6kg/molから2.5kg/molであることが、好ましい。ポリエーテルアルコールは、個別に、さもなければさまざまなポリエーテルアルコールの混合物の形態で、使用される。
【0043】
代替の実施形態において、TPUは、ポリエステルアルコールから生成される。好ましい一実施形態において、ポリエステルジオールは、この目的のために使用される。好ましいポリエステルジオールは、アジピン酸および1,4−ブタンジオールから生成される。ポリエステルアルコールの好ましい実施形態は、モル質量0.6kg/molから2.5kg/molを有する。
【0044】
さらに好ましい実施形態において、前記ポリオールは、モル質量0.5kg/molから8kg/mol、好ましくは0.6kg/molから6kg/mol、特に0.8kg/molから4kg/molを有し、さらに好ましい実施形態において、前記ポリオールは、平均官能基数、1.8から2.3、より好ましくは1.9から2.2、特に2を有する。特に好ましい一実施形態において、ポリオールは、ポリエステルアルコールであり、好ましくは、ポリテトラヒドロフランから合成され、さらに好ましい実施形態において、そのモル質量は、0.6kg/molから2.5kg/molである。
【0045】
好ましい実施形態において、使用される鎖延長剤(c)は、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式の化合物を含み、さらに好ましい実施形態において、これらのモル質量は、0.05kg/molから0.5kg/molである。いくつかの好ましい実施形態において、鎖延長剤(c)は、2つの官能基を有する化合物、例えば、ジアミンおよび/またはアルキレン部分に2から10個の炭素原子を有するアルカンジオール、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ならびに/または3から8個の炭素原子を有するジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−、および/もしくはデカアルキレングリコール、および対応するオリゴ−および/もしくはポリプロピレングリコールである。その他の実施形態において、鎖延長剤の混合物が、TPUの生成のために使用される。
【0046】
いくつかの実施形態において、鎖調節剤(c1)は、通常、モル質量0.03kg/molから0.5kg/molで、使用される。鎖調節剤は、イソシアネートについて、ただ1つの官能基を有する化合物である。鎖調節剤の例は、一価アルコール、単官能アミン、好ましくはメチルアミン、および/または一価ポリオールである。鎖調節剤は、個々の成分の混合物の流動挙動を制御して調整するために使用できる。好ましい実施形態において、鎖調節剤の使用される量は、イソシアネートに対して反応性の高い化合物b)の100質量部に対して、0質量部から5質量部、より好ましくは0.1質量部から1質量部である。鎖調節剤は、鎖延長剤を補うためにまたは鎖延長剤の代わりに使用される。
【0047】
その他の実施形態において、TPU製造方法は、ジイソシアネート(a)のNCO基と、イソシアネートに対して反応性の高い化合物、好ましくは、構成成分(b)、(c)、および(c1)の水酸基との間の反応を特に促進する、少なくとも1種の触媒(d)を使用する。好ましい実施形態において、触媒は、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、および同様の物質などの第三級アミンの群から選択される触媒である。さらに好ましい実施形態において、少なくとも1種の触媒は、有機金属化合物の群から選択される触媒であり、例として、チタンのエステル、鉄(III)アセチルアセトネートなどの鉄化合物、スズジアセテート、スズジオクタノエート、スズジラウレートなどのスズ化合物、または脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等である。
【0048】
触媒が、個別に使用される実施形態もあれば、触媒の混合物が使用される実施形態もある。好ましい実施形態において、触媒または触媒の混合物の使用量は、イソシアネートに対して反応性の高い化合物(b)、好ましくはポリヒドロキシ化合物、100質量部当たり0.0001質量部から0.1質量部である。
【0049】
補助剤および/または添加剤(e)について述べられてよい例は、加水分解安定剤および難燃剤である。その他の添加剤および補助剤は、上述のBeckerおよびBraun(1996)の研究などの標準となる研究に見つけることができる。
【0050】
触媒(d)とともに、さもなければ触媒を使用せずに、構成成分(a)から(c)、および場合によって(c1)に加えることができるその他の物質は、ポリマーおよび低分子量のカルボジイミドなどの加水分解安定剤である。
【0051】
構成成分(b)対(c)のモル比は、TPUのショア硬度を調整するために、比較的大きく変えることができる。好ましい実施形態において、成分(b)対使用される鎖延長剤(c)の全量のモル比は、10:1から1:10、好ましくは5:1から1:8、より好ましくは1:1から1:4であり、TPUの硬度は、鎖延長剤(c)の含有量が増加することによって上昇する。この方法によって、ショア硬度値はA44からD80へ調整され、特に好ましいショア硬度値は、A44からA84である。ショア硬度値は、DIN53505に従って測定される。
【0052】
さらに好ましい実施形態において、TPUを生成する反応は、通例の指標によって起こる。指標は、成分(a)中の反応の間に使用されるイソシアネート基の全体対成分(b)および(c)中のイソシアネートに対して反応性の高い基、すなわち、活性水素原子の比によって定義される。指標が100である場合、成分(a)中のそれぞれのイソシアネート基について、成分(b)および(c)中に、1個の活性水素原子、すなわち、イソシアネートに対して反応性の高い1つの官能基がある。指標が100を超える場合、イソシアネートに対して反応性の高い基、例えばOH基より多くのイソシアネート基が存在する。
【0053】
特に好ましい実施形態において、TPUを生成する反応は、指標60から120、より好ましくは指標80から110で起こる。
【0054】
TPUの生成は、好ましくは、下に述べられる既知の方法の1つによって実行される。好ましい実施形態は、例えば反応押出機を使用する連続法、ベルト法、「ワンショット」法、またはプレポリマー法である。バッチ法およびプレポリマー法は、等しく好ましい実施形態である。これらの方法において、反応成分(a)および(b)、ならびにまた場合によって(c)、(c1)、(d)、および/または(e)は、連続してまたは同時に、互いに混合でき、すると成分(a)および(b)の反応がすぐに始まる。
【0055】
押出機法において、構成成分(a)および(b)、ならびにまた場合によって成分(c)、(c1)、(d)、および/または(e)は、個別にまたは混合物の形態で、押出機に導入され、例として、温度100℃から280℃、好ましくは140℃から250℃で反応させられる。結果として得られたTPUを押し出し、冷却し、ペレット化する。1から24時間の間、80℃から120℃、好ましくは100℃から110℃で、さらに処理する前に、結果として得られたTPUを適切な状態にすること、すなわち一定の温度で、混合物を反応し続けさせることは、時に有利であり得る。
【0056】
TPUの好ましい種類は、硬い相と比べて、比較的大きい含有量の柔らかい相を有し、柔らかい相の好ましい量は、5から30質量%、特に好ましくは10から25質量%である。さらに、硬い相の窒素含有量が比較的高いことが好ましい。
【0057】
TPUの好ましい種類の例は、BASF Polyurethan GmbH、Lemforde、ドイツから、Elastollan(登録商標)1170AU、Elastollan(登録商標)1180、Elastollan(登録商標)1175A10W000、およびElastollan(登録商標)880A13N000として市販されている。
【0058】
特に好ましいのは、Elastollan(登録商標)1170AU、ポリテトラヒドロフラン1000および2000(数字は分子量M
wに関し、製品は、例として、BASF SEから市販されている)ならびに少量の1,4−ブタンジオールおよびジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)から得ることができるTPU、Elastollan(登録商標)1170AUである。
【0059】
本発明のポリマー粒子材料は、TPUとともに、フリーラジカル重合によって得ることできる、櫛形ポリマー、グラフトポリマー、またはコポリマーの形態でTPUに結合されている1種または複数のポリマー(TPUおよびスチレンポリマーの全体に対して)5から95質量%を含む。これらの割合は、80から30%、特に好ましくは75から50%、非常に特に好ましくは75から65%であることが、好ましい。
【0060】
使用される、フリーラジカル重合によって得ることができる好ましいポリマーは、ビニル不飽和を有するモノマー、例えば(および好ましくは)スチレン、アクリレート、およびメタクリレート、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ならびにそれらの混合物をベースとするポリマーである。
【0062】
本発明における表現、スチレンポリマーは、スチレンもしくはα−メチルスチレン、またはスチレンとα−メチルスチレンとの混合物をベースとするポリマーを含む。本発明のスチレンポリマーは、少なくとも50質量%のスチレンおよび/またはα−メチルスチレンモノマーをベースとする。
【0063】
好ましいスチレンポリマーは、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、およびスチレン−α−メチルスチレンコポリマーであり、使用できるその他のスチレンポリマーは、スチレン−ブタジエンコポリマー(SB)、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)、アクリロニトリル−α−メチルスチレンコポリマー(AMSAN)、スチレン−無水マレイン酸コポリマー(SMA)、スチレン−メチルメタクリレートコポリマー(SMMA)、スチレン−N−フェニルマレイミドコポリマー(SPMI)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)、およびメチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(MABS)ポリマー、ならびにそれらの混合物である。特に好ましいのは、ポリスチレン、すなわち、スチレンモノマーの使用である。
【0064】
本発明のポリマー粒子材料は、特有のTPU相形態を特徴とし、その形態は、TPUホモポリマーから作られる連続相ならびに
TPUのグラフトポリマーおよびフリーラジカル重合によって得ることができるポリマーから作られる不連続相からなる。ここにおけるTPU相は、
図1(TEM画像)に示された相形態を有することが、理想的である。ここにおいて、TPUおよびフリーラジカル重合によって得ることができるポリマーから作られるグラフトポリマーは、直径50から500nmを有する円形から楕円形の不連続相を形成する。これらを取り囲んで、干渉性の連続TPU網状構造がある。
図1は、良好な発泡剤保持能力を有する、発泡性TPU−PSペレット(40:60)のEFTEM(エネルギーフィルター型透過電子顕微鏡)画像を提供する。
図1および1bにおいて、造影剤は、RuO
4であり、
図1cおよび1dにおいては、リンタングステン酸である。
【0065】
例として、50〜70%のポリスチレン含有量を有する発泡性ビーズポリマーは、ストレートTPUからなる直径10〜100μmの周辺帯を有する(
図2参照)。この周辺帯は、ポリマーから生成されるフォームに特有の表面(ストレートTPUの良好なグリップを有する)を提供し、したがって、結果として得られたフォームは、非常に高品質の外観を有する。
図2は、良好な発泡剤保持能力を有する発泡性TPU−PSペレット(50:60)のSEM画像を示す:試料を、凍結切片にし、RuO
4によって造影し、次にSEMによって観察した。SEMを使用して、位置の例(周辺帯A、ビーズの中心B)の画像を得た。ストレートTPUは、SEM画像において、スチレン改質TPUより色あせて見える。
【0066】
本発明の必須要素は、上記のポリマー構造を、前記モノマー(複数可)で膨潤されたTPU網状構造中での1種または複数のモノマーのフリーラジカル重合により、適切な条件下で得ることができることである。
【0067】
機械特性または温度変化に対する耐性を改善するために、相溶化剤を場合によって使用して、ポリマー含有量に対して、全部で、最大30質量%まで、好ましくは1から10質量%の範囲内である割合で、ポリアミド(PA)、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン(PP)もしくはポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)もしくはポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルケトン、もしくはポリエーテルスルフィド(PES)、またはそれらの混合物などの熱可塑性ポリマーと、本発明のポリマー粒子材料をブレンドできる。述べられた量の範囲の混合物はまた、例えば、疎水的に改質されたもしくは官能性を持たせたポリマーまたはオリゴマー、ポリアクリレートもしくはポリジエンなどのゴム、例えば、スチレンブタジエンブロックコポリマー、または生分解性の脂肪族もしくは脂肪族/芳香族コポリエステルで、さらに可能である。
【0068】
本発明のポリマーペレットは、発泡剤成分を含む。発泡剤成分は、に対して、全部で、1から15質量%、好ましくは2から6質量%、特に好ましくは3から5質量%の割合で、1種または複数の発泡剤を含む。適切な発泡剤の例は、2から8個、好ましくは3から8個の炭素原子を有する脂肪族の炭化水素、ならびにこれらの炭化水素2種以上および/またはこれらの炭化水素の2種以上の異性体の混合物である。好ましいのは、ブタン異性体およびペンタン異性体、例えばイソブタン、n−ブタン、イソペンタン、n−ペンタン、ならびにこれらの混合物、特にペンタン異性体、例えばイソペンタンおよびn−ペンタン、ならびにこれらの異性体の混合物である。以下は、好ましくは、((P)に対して)0から3質量%、好ましくは0.25から2.5質量%、特に0.5から2.0質量%の割合で、共発泡剤として特に適切である:(C
1〜C
4)−カルボニル化合物、例えばケトンおよびエステル、C
1〜C
4−アルコール、ならびにC
2〜C
4−エーテル。好ましい共発泡剤は、ケトン、特にアセトンである。
【0069】
発泡剤の提示された量は、生成プロセスの間に加えられる量である。生成物中の、特に貯蔵後の含有量は、対応して、より少なくなる。
【0070】
本発明の発泡ポリマーペレットのかさ密度は、一般に、最大で300g/l、好ましくは15から200g/l、特に好ましくは40から150g/lの範囲内である。フィラーが使用される場合、40から150g/lの範囲内のかさ密度は、フィラーの性質および量に応じて、上昇し得る。
【0071】
本発明のポリマー粒子材料は、好ましくは、ポリマー成分および発泡剤成分とともに、添加剤成分を含む。適切な添加剤は、当業者にとって既知である。
【0072】
好ましい一実施形態において、少なくとも1種の造核剤を、ポリマー成分(P)に加える。使用できる造核剤の例は、(P)に対して、一般に0.1から10質量%、好ましくは0.1から3質量%、特に好ましくは0.1から1.5質量%の量の微粒子の無機固体、例えば、タルク粉末、二酸化ケイ素、雲母、粘土、ゼオライト、炭酸カルシウム、および/またはポリエチレンワックスである。造核剤の平均粒子直径は、一般に、0.01から100μm、好ましくは1から60μmの範囲内である。特に好ましい造核剤は、タルク粉末、例えば、Luzenac Pharmaからのタルク粉末である。造核剤は、当業者にとって既知の方法によって加えることができる。
【0073】
その他の添加剤は、所望であれば、加えることができ、例は、フィラー(鉱物フィラーなど、例えばガラス繊維)、可塑剤、難燃剤、IR吸収体、ならびに不透熱性材料、例えばカーボンブラック、コークス、グラフェン、および/もしくはグラファイト、アルミニウム粉末、ならびに二酸化チタン、可溶性および不溶性染料、顔料、UV安定剤、ならびに/または熱安定剤である。
【0074】
(P)に対して、一般に0.05から25質量%である量、特に2から8質量%の量のグラファイトを加えることは、非常に特に好ましい。使用されるグラファイトのための適切な粒子径は、1から50μmの範囲内、好ましくは2から10μmの範囲内である。
【0075】
UV安定剤の使用が、有利であると判明した。具体的に、SMAなどのポリマーPS1)の場合、強いUV照射によって、著しい脆化を伴う、材料中に目に見える黄変および化学変化を引き起こす。例えばSMAに対しての反応性は、適切なUV安定剤の選択にとって重要な要因である。Tinuvin234などのベンゾトリアゾールをベースとする安定剤が、処理特性および泡特性を変化させることなく、UV抵抗性を改善することができる一方で、立体障害アミンをベースとする安定剤、例えばUvinul4050およびTinuvin770は、本発明の材料の系にとってそれほど適切でない。
【0076】
本発明のペレットが、添加剤として、ポリマー(P)の100質量部に対して0.05から5質量部、好ましくは0.1から1質量部の範囲の量のベンゾトリアゾールをベースとするUV安定剤を含むことは、好ましい。
【0077】
さまざまな産業が防火規制を適用するので、1種または複数の難燃剤を加えることが好ましい。適切な難燃剤の例は、テトラブロモビスフェノールA、臭素化ポリスチレンオリゴマー、WO2007/058736による臭素化ブタジエン−ポリスチレンコポリマー、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、およびヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、特に工業製品であり、これらは、ジクミルなどの相乗剤を加えたα−、β−、およびγ−異性体を本質的に含む。好ましいのは、テトラブロモビスフェノールAなどの臭素化芳香族、および臭素化スチレンオリゴマーである。適切なノンハロゲン難燃剤の例は、発泡性グラファイト、赤リン、ならびにリン化合物、例えば、発泡性グラファイト、赤リン、リン酸トリフェニル、および9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン10−オキシドである。
【0078】
好ましいリン化合物は、トリス(2−クロロイソプロピル)ホスフェート、リン酸トリエチル、エチルホスホン酸ジエチル、リン酸クレジルジフェニル、Exolit OP560、ジフェニル6−(ジフェノキシホスホリルオキシ)ヘキサヒドロフロ[3,2−b]フラン−3−イルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン10−オキシド、および6H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン6−オキシドである。
【0079】
さらに、相乗剤として、好ましいのは、有機過酸化物(過酸化ジクミル)、硫黄、およびジスルフィドである。上述の難燃剤は、重合反応が始まる前にモノマーに溶解するか、または押出によってTPUに組み入れるかのいずれかができる。
【0080】
好ましい一実施形態において、本発明のポリマー粒子材料は、1種または複数のコーティング成分によりコーティングされ、前記コーティング成分は、場合によって、多孔質固体上に吸着できた。
【0081】
適切なコーティング成分の例は、グリセロールエステル、ステアリン酸亜鉛、クエン酸エステル、特に、微粒子のシリケートである。
【0082】
特に好ましいのは、対応する市販の製品であり、これらの製品は、一般に対応するモノ−、ジ−、およびトリエステルの混合物であり、遊離グリセロールおよび遊離脂肪酸を少ない割合で含むこともまたでき、例は、グリセロールトリステアレートおよびグリセロールモノステアレートである。
【0083】
親水性シリカ(例えば、Sipernat(登録商標)FK320、Evonik)0.1から1質量%でポリマーをコーティングすることが、特に好ましいと判明した。
【0084】
その他の可能性のあるコーティング材料は、a)沸点≧160℃を有する、シクロヘキサンカルボン酸の1種または複数のアルキルエステル、b)沸点≧150℃を有する、1種または複数のフェニルC
10〜C
21−アルカンスルホネート、ならびにc)成分a)とb)との混合物からなる群からの可塑剤である。
【0085】
好ましいのは、グリセロールとステアリン酸、グリセロールと12−ヒドロキシステアリン酸、およびグリセロールとリシノール酸から得ることができるモノ−、ジ−、およびトリグリセリド、ならびにまた、ステアリン酸、12−ヒドロキシ−ステアリン酸、およびリシノール酸とともに、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびパルミチン酸の群からの1種または2種の脂肪酸から得ることができる混合されたジ−およびトリグリセリドである。
【0086】
添加剤の総量は、一般に、使用されるポリマーの総質量に対して0から5質量%、好ましくは0から0.5質量%である。
【0087】
本発明のポリマー粒子材料は、発泡性ポリマー粒子材料の製造方法であって、以下の工程
a)フリーラジカル経路によって重合可能なモノマーの実質的な重合が起こらない温度で、水性媒体に、80℃未満のビカット軟化点を有する1種もしくは複数のTPU、TPUおよび述べられたモノマーの全体に対して5から95質量%のフリーラジカル経路によって重合可能な1種もしくは複数のモノマーおよび場合によってコモノマー、重合開始剤、分散剤、ならびに場合によって、その他の追加の物質および/または重合助剤を分散する工程と、
b)フリーラジカル経路によって重合可能なモノマーの実質的な重合が起こらない温度で、1から24時間、結果として得られた分散物を場合によって撹拌する工程と、
c)TPUに、櫛形ポリマー、グラフトポリマーまたはコポリマーの形態で、フリーラジカル経路によって重合可能なモノマーを重合する工程と、
d)水性懸濁液に物理的発泡剤を加える工程と
を含む方法によって得ることができる。
【0088】
本発明の懸濁重合方法について、上に述べられたことに従って、スチレンのみを使用することが好ましい。フリーラジカル重合が可能なその他のモノマー、例えば、アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、アクリロニトリル、ジフェニルエーテル、またはα−メチルスチレンおよびアクリレートを使用することもまた、代替方法として可能である。
【0089】
懸濁重合方法の間、発泡剤とともに、過酸化物開始剤、懸濁安定剤、発泡剤、連鎖移動剤、発泡助剤、造核剤、および可塑剤などの通常の補助剤を加えることが可能である。
【0090】
述べられた補助剤および追加の物質を、懸濁液にさらに加えることができる。加えられたモノマーおよびTPUの全体に対して3から15質量%の量。補助剤および追加の物質は、懸濁液の重合の前、間、または後で、加えることができる。
【0091】
懸濁安定剤として、無機のピッカリング分散剤、例えば、ピロリン酸マグネシウムまたはリン酸カルシウムを使用することが、有利である。
【0092】
使用されるTPUは、重合に使用される前に、水中ペレット化によって処理されて、平均直径0.5から1.5mmのミニペレットを生成することができる。したがって、重合反応の後で得られた生成物は、従来のEPS機器において処理できる粒子径を有する。タルク粉末またはポリエチレンワックスなどの造核剤、0.01から15質量%の量を、押出によって、使用されるポリウレタンに、さらに組み入れることができる。
【0093】
方法の好ましい一実施形態は、撹拌可能な圧力オートクレーブ中に、上述のピッカリング安定剤0.1から10質量%、界面活性剤(例えば、ナトリウムドデシルスルホネート)0.1から0.001質量%、およびTPUペレット1から90質量%を含む水相を、最初の充填として使用することによって始まる。
【0094】
開始剤および難燃剤などの、上述の補助剤を場合によって含むモノマーを、室温でまたは重合温度未満で計量して、撹拌反応器に入れる。方法の1つの変形形態は、水の不在下で、開始剤および場合によって難燃剤などの上述の補助剤を含むモノマーと、室温でTPUを組み合わせて、0.5から24時間、材料を膨潤させることによって始まる。次に、モノマーで膨潤されたペレットを、上述のピッカリング安定剤および界面活性剤を有する水相を含有する重合反応器へ、同様に移す。
【0095】
モノマー混合物でのTPUペレットの膨潤を促進するために、重合温度未満の高温(好ましくは10から60℃、例えば50℃)で、或る一定の時間(約1から5時間)、反応混合物を撹拌することは、有利であると判明した。次に、反応混合物を、重合温度まで加熱する。驚いたことに、TPUおよびポリスチレンから作られる、上記のコポリマーの形成の増加が、好ましい重合温度110から140℃で起こるとわかった(120から135℃で、T1/2=1hを有する過酸化物開始剤を使用)。
【0096】
懸濁重合反応は、マイクロペレット化されたTPUが使用された場合は0.5から4mmの範囲の平均直径を有する、ビーズ形で、本質的に円形の粒子を、またはTPUのマイクロペレット化が実行されなかった場合は0.5から2cmのサイズの粒子を生成する。これらの粒子は、従来のコーティング剤、例えば、ステアリン酸金属塩、グリセロールエステル、および微粒子のシリケートによってコーティングできる。ポリマーを親水性シリカ(Sipernat(登録商標)FK320、Evonik)0.1から1質量%でコーティングすることが、ここにおいて特に有用であると判明した。
【0097】
発泡性ポリマー粒子材料を処理して、密度20から250g/l、好ましくは50から100g/lを有するフォームを生成できる。このために、好ましい発泡性粒子材料を、蒸気によって予備発泡させる(例えば、Hirschからの標準EPS予備発泡機)。結果として得られた予備発泡させた粒子材料を、好ましくは、10から24時間貯蔵し、次に、好ましくは、標準EPS機器において処理して、ブロックまたは成形品を生成する。
【0098】
良好な回復能力による復元力を必要とする適用例(床仕上げ材、固体伝送音の消音材)のために、結果として得られたブロックまたは成形品は、機械プレスで荷重をかけたり、除いたりすることによって、弾性化できる。材料の一方向性弾性化が、適用例のこれらの種類について、ここにおいて有利であると判明した。弾性化プロセスにおいて、フォーム製品(ブロックまたは成形品)は、最初の体積の10から50%までプレス機で圧縮される。圧縮プロセスが終了するとすぐに、圧縮された成形品を、貯蔵し(24時間まで)、次に側面を適切に切る。弾性化材料は、極度に高い無方向性(undirectional)の回復能力を有する。
【0099】
実施例は、本発明のさらなる説明を提供する。
【0100】
実施例
ピロリン酸マグネシウム(MPP)の沈殿
非晶質のMPP沈殿物を、記載された実施例の全てにおいて、ピッカリング安定剤として使用した。決定的な要因は、使用されたMPP沈殿物が、新しく調製された(最大で12時間経過)ことであり、さもなければ、反応混合物の十分な安定化を達成することが不可能だからである。MPP沈殿物は、以下の通り使用できる:
ピロリン酸ナトリウム(Giulini)931.8gを、室温(25℃)で水32Lに溶解する。この溶液に、硫酸マグネシウム七水和物(エプソム塩)1728gの溶液を、撹拌しながら加え、次に、撹拌を、さらに5分間継続する。これによって、数分後に透明になる、白色の懸濁液を生成する。記載された実施例において、上述の懸濁液を、短く混合/振動させた直後に、使用する。
【0101】
TPUペレット:
市販のポリエーテルをベースとするTPUを使用する(BASF Polyurethanes GmbHからのElastollan(登録商標)1170AU、Elastollan(登録商標)1180A)。EPSに典型的な粒子径(0.5から4mm)を有する発泡性ポリマーペレットを得るために、押出機および水中ペレット化剤を使用して、TPUを粒子径0.5から2mmのマイクロペレットに変換することが有利であると判明した。
【0102】
マイクロペレット化の間に、タルク粉末(Microtalc IT extra、Mondo Minerals)0.1から1質量%を組み入れることが有利であると、さらに判明した。これによって、確実に、より均質なフォーム構造が、その後、得られる(造核剤)。
【実施例1】
【0103】
1.1膨潤
過酸化ジクミル(Perkadox(登録商標)BC−FF、AkzoNobel)21.0gを溶解させたスチレン3.00kgを、5Lのステンレススチール缶(ミルク缶)中に、最初の充填として使用した。タルク粉末、Elastollan(登録商標)1170AUを0.5質量%含むTPUミニペレット350gを、4時間、スチレン溶液中のふるいインサートの中で懸濁した。次に、ふるいインサートを、スチレン過酸化物溶液から取り除き、膨潤材料を、5分間、滴下乾燥させた。滴下乾燥後の膨潤TPUペレットの質量は、965gであり、PEキャニスターで一晩(約10時間)貯蔵した。
【0104】
1.2重合
膨潤TPUを、脱イオン水3kg、MPP沈殿物803g、およびE30乳化剤(E30−40Leuna Tenside GmbHから生成)の2%溶液42gを含有する6Lの圧力オートクレーブ[EPS反応器、最大圧力:20bar、ブレード撹拌機;撹拌機の回転速度300rpm]に移した。反応器を密閉し、窒素を導入して(不活性化)すぐに、系を、1.5時間以内に、125℃まで加熱した。125℃に達した1時間後、イソペンタン80gを、40分以内に、計量して反応器に入れた。系を、さらに6.5時間、温度125℃に維持し、次に、室温まで冷却した。発泡剤を含む、結果として得られたポリマービーズを、デカントによって単離し、乾燥させて内水を除去し、沈降シリカ(Sipernat FK320、Evonik)0.3質量%でコーティングした。平衡化の目的で、材料を、少なくとも2から5日間、耐圧容器(亜鉛箱)で貯蔵した。
【0105】
気密容器(亜鉛箱)での貯蔵の5日後に、結果として得られたポリマーについて測定された値は、以下の通りであった:水(フィッシャー滴定)および揮発物含有量(120℃で2時間後の重量測定):
水含有量:0.45%
2時間乾燥させた、120℃での揮発物含有量:4.52%。
【0106】
ポリマーの窒素含有量を測定した(ケルダール法による窒素定量)。ポリマーのTPU含有量を、使用されたTPUと比較することによって計算した。
【0107】
窒素分析 TPU含有量
ポリマー 0.92% 33%
対照TPU 2.8% 100%
【0108】
発泡性を評価するために、気密容器(亜鉛箱)での貯蔵の5日後、大気圧(ラウシャーボックス(Rauscher box)、T=98〜102℃)で蒸気予備発泡機において発泡曲線を作成した。予備発泡させた材料のかさ密度を、規定された予備発泡時間後に測定した。
【0109】
気密亜鉛箱での貯蔵の5日後、コーティングされたポリマーを、標準EPS予備発泡機中で、密度50g/lまで予備発泡させた(蒸気圧0.2bar)。
【0110】
予備発泡させた材料を、10時間貯蔵し、標準EPS処理機器において処理して、円形の成形品を生成した。以下のプロセスパラメーターは、実際的であると判明した。
【0111】
【表1】
【0112】
結果として得られた成形品を、発泡ポリプロピレン(EPP)および発泡ポリスチレン(EPS)(Styropor、BASF SE)とのEN12089による曲げエネルギーの比較のために使用した。
図3は、その結果を表す。
【実施例2】
【0113】
使用されたTPU成分が、BASF Polyurethanes GmbHからのElastollan1180A(MDI、polyTHF1000、polyTHF2000およびブタンジオールをベースとするTPU)から作られたタルク粉末0.5質量%を有するTPUミニペレットを含んだことを除いて、本発明の実施例1を繰り返した。
【実施例3】
【0114】
過酸化ジクミル(Perkadox BC−FF、AkzoNobel)10.5gを、5Lのポリエチレンキャニスター中でスチレン2.10kgに溶解し、タルク粉末(Elastollan 1170AU)0.5質量%を含むTPUミニペレット1.40kgを混合した。シェーカーボード(shaker board)を使用して、30分間、室温で、混合物を混合した。
【0115】
次に、混合物を、10LのEPS反応器[ブレード撹拌機付き圧力オートクレーブ(20bar)、撹拌機の回転速度300rpm]に移した。脱イオン水3.50kg、MPP沈殿物1.07kg、およびE30乳化剤(アルカンスルホネート、CAS68188−18−1)(Leuna Tenside GmbH)の2%溶液56gを、反応器中に最初の充填として使用した。懸濁液を、30分以内に50℃まで加熱し、膨潤させるために、温度を、3時間、50℃で維持した。次に、温度を125℃まで1時間以内に上昇させ、125℃に達してから60分後に、次に、ペンタン−S(Haltermann/Exxon)314gを、60分以内に混合物中に計量して入れた。温度125℃を、さらに5.5時間維持し、次に、反応器を、室温まで冷却した。粒子状ポリマーを、後処理して、本発明の実施例1と同様に処理した。
【実施例4】
【0116】
本発明の実施例3を繰り返したが、使用されたTPUは、タルク粉末0.5質量%を有する、等級1170AUミニペレットを含んだ。
【0117】
適用例1:本発明の実施例1および2からの材料の発泡性能
本発明の実施例1または2からのポリマー4gを、ゴム隔膜によって密閉可能な注入ボトル(Max Wiegand、サイズ75×23mm、商品番号4382602)に充填し、密閉した。規定された貯蔵時間後、アンプルを開けて、材料を、大気圧で、標準Styropor予備発泡機において、予備発泡させた(蒸気処理時間300秒)。次に、緩い材料のかさ密度を、体積分析で測定した。
【0118】
【表2】
【0119】
本発明の実施例2からの材料は、19日間の貯蔵後、密度94g/lまで予備発泡できるが、一方、本発明の実施例1からの材料は、53日間の貯蔵後でさえ、密度64g/lまで予備発泡できる。
【0120】
適用例2
本発明の実施例1に記載されたのと同様の手順で、Lumogen Red0.3質量%を、膨潤プロセスに使用されたスチレンと混合した。処理後に得られたフォームは、赤色を有した。
【0121】
適用例3
本発明の実施例1に記載されたのと同様の手順で、Lumogen Green0.3質量%を、膨潤プロセスに使用されたスチレンと混合した。処理後に得られたフォームは、緑色を有した。
【0122】
比較例1:
以下の通り変更して、本発明の実施例1を繰り返した。重合プロセス1.2は、スチレン飽和TPUの代わりにストレートTPUマイクロペレット965gを使用した。次に、発泡剤を含む、結果として得られたTPU粒子材料は、発泡性フォーム粒子を生成するために予備発泡できなかった。