特許第6411385号(P6411385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6411385金属アミド堆積前駆体及び不活性アンプルライナによるそれらの安定化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411385
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】金属アミド堆積前駆体及び不活性アンプルライナによるそれらの安定化
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20181015BHJP
【FI】
   C23C16/448
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-560358(P2015-560358)
(86)(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-513185(P2016-513185A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】US2014019495
(87)【国際公開番号】WO2014134481
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年2月27日
(31)【優先権主張番号】61/770,786
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/193,088
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ナップ ディヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン ディヴィッド
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−060944(JP,A)
【文献】 特開2005−023425(JP,A)
【文献】 特表2012−515842(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/059881(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/060428(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/067439(WO,A2)
【文献】 特開2001−019410(JP,A)
【文献】 特開2001−172767(JP,A)
【文献】 特開2006−182709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学前駆体ガスを発生させるための装置であって、
内部容積を形成する側壁、上部、および底部を有するキャニスタと、
内部容積に流体連通している入口ポートおよび出口ポートと、
側壁、上部、または底部の少なくとも一部の上にあるライニングであり、不活性金属酸化物を含むライニングと、
キャニスタの内部容積内にある前駆体であり、少なくとも1つのMn−N結合および2電子ドナー配位子を含有する前駆体と
を含む装置。
【請求項2】
不活性金属酸化物が、SiO2、Al23、TiO2、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、またはTa25を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
2電子ドナー配位子が、ピリジン、テトラヒドロフランもしくはテトラヒドロチオフェン、テトラメチルエチレンジアミン、アセトニトリル、第三級アミン、または2,2’−ビピリジルを含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前駆体が、
【化1】
により表される構造を有する、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
マンガン含有膜を堆積する方法であって、
少なくとも1つのMn−N結合を含有する前駆体を用意するステップと、
前駆体を、不活性金属酸化物を含むライニングを有する、化学前駆体ガスを発生させる装置内に流すステップと
を含む方法。
【請求項6】
不活性金属酸化物が誘電体を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前駆体が、
【化2】
によって表される構造を有し、式中、各Aは独立して炭素またはケイ素から選択され、各Rは独立して水素、メチル、置換もしくは非置換アルカン、分岐状もしくは非分岐状アルカン、置換もしくは非置換アルケン、分岐状もしくは非分岐状アルケン、置換もしくは非置換アルキン、分岐状もしくは非分岐状アルキン、または置換もしくは非置換芳香族から選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
各Aがケイ素であり、かつ/または各R基がメチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前駆体が、マンガンビス[ビス(トリメチルシリル)アミド]を含む、請求項5から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
基板表面を、マンガンビス[ビス(トリメチルシリル)アミド]にかつNH3を含む第2の前駆体に曝すステップをさらに含む、請求項5から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前駆体が、2電子ドナー配位子をさらに含有する、請求項5から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
2電子ドナー配位子が、ピリジン、テトラヒドロフランもしくはテトラヒドロチオフェン、テトラメチルエチレンジアミン、アセトニトリル、第三級アミン、または2,2’−ビピリジルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのMn−N結合が、2電子ドナー配位子の部分である、請求項5から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前駆体が、
【化3】
によって表される構造を有する、請求項5から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
基板表面を前駆体に曝すステップをさらに含む、請求項5から14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、膜の堆積に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、膜堆積プロセス中の前駆体の安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、単一チップ上に数百万のトランジスタ、キャパシタ、および抵抗器を含む、複雑なデバイスに進化してきた。チップデザインの進化は、益々精密な製造プロセスを要する、より高速な回路およびより大きい回路密度を絶えず必要とし続けている。基板の精密な加工では、加工中に使用される流体の送出における温度、速度、および圧力の精密な制御が必要である。
化学気相堆積(CVD)および原子層堆積(ALD)は、基板上に様々な材料を形成しまたは堆積するのに使用される2つの堆積プロセスである。一般に、CVDおよびALDプロセスでは、気状反応物が基板表面に送出され、そこでは反応の熱力学に好ましい温度および圧力条件下で化学反応が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くのそのような堆積プロセスは、前駆体の気化を助ける条件下で揮発性液体前駆体を含有するアンプルまたはバブラなどの加熱された槽またはキャニスタを利用する。しかし、薄膜の堆積に関する一般的な問題は、多くの前駆体の安定性がアンプル内では限られていることである。このことは、低い配位数を有する金属前駆体の場合に特に言えることであるが、それは金属中心がその他の化合物と反応し易いからである。錯体は、不純物、分解生成物、またはアンプルそのものの金属表面とさえも反応し得る。前駆体の安定性を増大させないと、堆積ツールのスループットが減じられまたはさらに悪化し、分解および/または望ましくない反応が阻止されるようにプロセス条件を完全に設計製作し直す必要があると考えられる。したがって、金属前駆体を安定化させる追加の装置および方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、化学前駆体ガスを発生させるための装置に関する。装置は、内部容積を形成する側壁、上部、および底部を有するキャニスタと;内部容積に流体連通している入口ポートおよび出口ポートと;側壁、上部、または底部の少なくとも一部の上にあるライニングであって、不活性金属酸化物を含むライニングと;キャニスタの内部容積内にある前駆体であって、少なくとも1つのMn−N結合および2電子ドナー配位子を含有する前駆体とを含む。1つまたは複数の実施形態では、ライニングが、底部の少なくとも一部の上にある。いくつかの実施形態では、不活性金属酸化物が誘電体を含む。1つまたは複数の実施形態では、不活性金属酸化物は、SiO2、Al23、TiO2、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、またはTa25を含む。いくつかの実施形態では、2電子ドナー配位子は、ピリジン、テトラヒドロフランもしくはテトラヒドロチオフェン、テトラメチルエチレンジアミン、アセトニトリル、第三級アミン、または2,2’−ビピリジルを含む。1つまたは複数の実施形態では、前駆体は、
【化1】
によって表される構造を有する。
【0005】
本発明の別の態様は、マンガン含有膜を堆積する方法に関する。方法は、少なくとも1つのMn−N結合を含有する前駆体を用意するステップと;この前駆体を、不活性金属酸化物を含むライニングを有する、化学前駆体ガスを発生させる装置内に流すステップとを含む。1つまたは複数の実施形態では、不活性金属酸化物が誘電体を含む。いくつかの実施形態では、不活性金属酸化物が、SiO2、Al23、TiO2、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、またはTa25を含む。1つまたは複数の実施形態では、前駆体は、
【0006】
【化2】
によって表される構造を有し、式中、各Aは独立して炭素またはケイ素から選択され、各Rは独立して水素、メチル、置換もしくは非置換アルカン、分岐状もしくは非分岐状アルカン、置換もしくは非置換アルケン、分岐状もしくは非分岐状アルケン、置換もしくは非置換アルキン、分岐状もしくは非分岐状アルキン、または置換もしくは非置換芳香族から選択される。
【0007】
1つまたは複数の実施形態では、各Aがケイ素である。いくつかの実施形態では、各R基がメチルである。1つまたは複数の実施形態では、前駆体は、マンガンビス[ビス(トリメチルシリル)アミド]を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、基板表面をマンガンビス[ビス(トリメチルシリル)アミド]にかつNH3を含む第2の前駆体に曝すステップを含む。1つまたは複数の実施形態では、前駆体はさらに、2電子ドナー配位子を含有する。いくつかの実施形態では、2電子ドナー配位子は、ピリジン、テトラヒドロフランもしくはテトラヒドロチオフェン、テトラメチルエチレンジアミン、アセトニトリル、第三級アミン、または2,2’−ビピリジルを含む。1つまたは複数の実施形態では、少なくともMn−N結合が、2電子ドナー配位子の部分である。いくつかの実施形態では、前駆体は、
【0008】
【化3】
によって表される構造を有する。1つまたは複数の実施形態では、方法はさらに、基板表面を前駆体に曝すステップを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、マンガン含有膜を堆積する方法であって:基板表面を、気化した前駆体に曝すステップを含み、この前駆体が:
【化4】
を含んでいる方法に関する。
【0010】
したがって、本発明の上記列挙された特徴を詳細に理解することができるように、上記にて手短にまとめた本発明のより具体的な記載を、そのいくつかが添付図面に示されている実施形態を参照することによって得ることができる。しかし、添付図面は本発明の典型的な実施形態のみ示し、したがってその範囲を限定すると見なすものではなく、本発明は、その他の等しく有効な実施形態を認めることができることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の1つまたは複数の実施形態による装置の、1つの例示的な実施形態の側断面図である。
図2】本発明の1つまたは複数の実施形態による、1つの比較例および3つの実施例の、不揮発性残留物パーセントを示すグラフである。
図3】本発明の1つまたは複数の実施形態による、1つの比較例および3つの実施例の、不揮発性残留物パーセントを示すグラフである。
図4】Mn(TMSA)2の熱重量曲線である。
図5】Mn(TMSA)2(py)2の熱重量曲線である。
図6】Mn(TMSA)2(TMEDA)2の熱重量曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のいくつかの例示的な実施形態について記載する前に、本発明は、以下の記載で述べる構成またはプロセスステップの詳細に限定するものではないことを理解されたい。本発明は、その他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践しまたは実施することが可能である。
【0013】
Mn前駆体は、配位子の修正および/または膜堆積プロセス中に利用される設備の修正によって、安定化できることを発見した。上記にて論じたように、前駆体は、例えばステンレス鋼で作製することができるアンプルの内壁と反応することができる。しかし、アンプルの内壁に不活性金属酸化物でライニングを施すことにより、前駆体の反応を防止するのを助けることができる。さらに前駆体は、この前駆体が2電子ドナー部分も含有するアミド配位子に配位するように、または個別の2電子ドナー配位子が付加され得るように、合成することができ、その結果、化学安定性が得られる。本明細書に記載される装置およびプロセスは、高温で分解され得る有機金属(即ち、前駆体)を、安定化するのを助ける。
したがって、本発明の態様は、生成操作中に前駆体の分解を防止する、高い安定性を提供する。前駆体の安定性の増大は、プロセス条件を設計製作し直す必要をずっと回避しながら、堆積ツールのスループットを増大させることができることを意味する。
【0014】
装置
本発明の一態様は、いくつかの実施形態でアンプルと呼ばれる、化学前駆体ガスを発生させるための装置に関する。装置は、内部容積を形成する側壁、上部、および底部を有するキャニスタと;内部容積に流体連通している入口ポートおよび出口ポートと;側壁、上部、または底部の少なくとも一部の上にあるライニングであって、不活性金属酸化物を含むライニングと;キャニスタの内部容積内にある前駆体であって、少なくとも1つのMn−N結合および2電子ドナー配位子を含有する前駆体とを含む。1つまたは複数の実施形態では、ライニングは、底部の少なくとも一部の上にある。いくつかの実施形態では、装置は、有機金属を含有するオンボードリザーバである。1つまたは複数の実施形態では、装置は、前駆体を加熱する加熱要素を含有する。
【0015】
装置の変形例は、異なるライニング材料を含む。いくつかの実施形態では、例えば、不活性金属酸化物は誘電体を含む。他の実施形態では、不活性金属酸化物は、SiO2、Al23、TiO2、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、またはTa25を含む。1つまたは複数の実施形態では、不活性金属酸化物がシリコンベースである。
【0016】
いくつかの実施形態では、2電子ドナー配位子は、前駆体が安定化するのを助ける配位子である。いくつかの実施形態では、Mn−N結合が2電子ドナー配位子の一部である。1つまたは複数の実施形態では、2電子ドナー配位子は、ピリジン(py)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロチオフェン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)配位子、アセトニトリル、第三級アミン、または2,2’−ビピリジルを含む。いくつかの実施形態では、前駆体が、トリメチルシリルアミド(TMSA)配位子を含有する。他の実施形態では、前駆体は、
【化5】
により表される構造を有する。
【0017】
本明細書に記載される安定化前駆体は、Mn(TMSA)2(THF)の合成について特に記載しているHorvath, et al., "Manganese(II) silylamides"に記載された方法によって、合成されてもよい。MnCL2およびLiN(SiMe32をTHFに溶かしたものを利用して、前駆体を生成した。プロセスは、その他の配位子に適合させてもよく、並列プロセスを使用して適合させてもよい。
アンプルには、その内面が長時間にわたって堆積化学物質に接触したままの状態にできるように、有利にライニングが施される。したがって1つまたは複数の実施形態では、堆積チャンバシステムのアンプルだけにライニングが施される。バルブおよびラインは、堆積化学物質にまで拡張された接触を、保持しないと考えられるが、本発明の1つまたは複数の実施形態では被覆されてもよい。
【0018】
図1は、代替として「ソースキャニスタ」300と呼ばれる、装置の一実施形態の断面図を示す。ソースキャニスタ300は、一般に、キャリアガス源302と処理チャンバ306との間に連結される。ソースキャニスタ300は、一般に、前駆体材料414、例えばMn(TMSA)2(py)2を保持するように適合された、ハウジング420を有するアンプルまたはその他の密封容器を含み、そこから昇華または気化プロセスを通してプロセス(またはその他の)ガスを発生させることができる。前駆体材料414は、少なくとも1つのMn−N結合および2電子ドナー配位子を含有する前駆体を含む。ハウジング420は、前駆体材料414およびそこから生成されたガスに対して実質的に不活性な材料から、一般に製造され、したがって構成材料は、生成されるガスに基づいて変えることができる。
【0019】
ハウジング420は、任意の数の幾何学的形態を有していてもよい。図1に示す実施形態では、ハウジング420は、円筒状側壁402と底部432とを含み、蓋404で密封されている。蓋404は、溶接、結合、接着、またはその他の漏れ防止法によって、側壁402に連結されていてもよい。あるいは、側壁402と蓋404との間の接合部は、それらの間に配置された密封材、oリング、またはガスケットなどを有することにより、ソースキャニスタ300からの漏れを防止することができる。側壁402は、代替として、その他の中空幾何学的形態、例えば中空角管を含んでいてもよい。
【0020】
図1の装置は、本発明の1つまたは複数の実施形態により、底部432に沿ってライニング444も有する。ライニングは、誘電体を含んでいてもよく、または他の実施形態ではSiO2、Al23、TiO2、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、またはTa25を含んでいてもよい。
入口ポート406および出口ポート408は、ガス流をソースキャニスタ300に流入させかつ流出させるように、ソースキャニスタ内を通して形成される。ポート406、408は、ソースキャニスタ300の蓋404および/または側壁402を通して形成されてもよい。ポート406、408は、ソースキャニスタ300をガス供給システム(図示せず。)から取り外す最中に、ソースキャニスタ300の内部を周囲環境から切り離すことができるよう、一般に密封可能である。一実施形態では、バルブ312、314は、前駆体材料414の再充填またはソースキャニスタ300の交換のためにガス供給システムから取り外す場合、ソースキャニスタ300からの漏れを防止するために、ポート406、408に封止連結されている。切断継手436A、436Bを接合することによって、バルブ312、314に連結され、ガス供給システム304からソースキャニスタ300を取り外しかつこのキャニスタ300を交換することが容易になる。バルブ312、314は、ガス供給システムへの充填、輸送、または連結中にソースキャニスタ300からの潜在的な漏れを最小限に抑えながら、効率的に投入され再利用されたシステムからソースキャニスタ300を取り外すことを可能にするために、典型的にはボールバルブまたはその他の正の密封バルブである。あるいはソースキャニスタ300は、このソースキャニスタ300の蓋404上にVCR継手が配置されている細管などの再充填ポート(図示せず。)を通して再充填することができる。前駆体材料414は、蓋404を取り外すことによって、またはポート406、408の1つを通して、ソースキャニスタ300内に導入されてもよい。
【0021】
ソースキャニスタ300は、ソースキャニスタ300の上方領域418内に配置された少なくとも1つのバッフル410を含んでいてもよい。バッフル410は、入口ポート406と出口ポート408との間に配置されて、拡張された平均流路を生成し、それによって入口ポート406から出口ポート408へのキャリアガスの直接(即ち、直線ライン)の流れが防止される。これには、ソースキャニスタ300内でのキャリアガスの平均滞留時間を長くしかつキャリアガスによって運ばれる昇華または気化前駆体ガスの量を増大させるという作用がある。さらにバッフル410は、ソースキャニスタ300内に配置された前駆体材料414の露出面全体にキャリアガスを仕向け、反復可能なガス発生特性および前駆体材料414の効率的な消費を確実にする。バッフル410の数、間隔、および形状は、前駆体ガスの最適な発生に合わせてソースキャニスタ300を調整するように、選択されてもよい。例えば、より多くの数のバッフル410は、前駆体材料414でより速いキャリアガス速度が与えられるように選択されてもよく、またはバッフル410の形状は、前駆体材料のより効率的な使用のため、前駆体材料414の消費を制御するように構成されてもよい。
【0022】
入口管422は、ソースキャニスタ300の内部容積438内に配置されてもよい。管422は、第1の端部424によって、ソースキャニスタ300の入口ポート406に連結され、ソースキャニスタ300の上方領域418において、第2の端部426が終端している。
装置は、前駆体材料414の撹拌によって液滴をキャリアガス中に閉じ込めかつ処理チャンバ306に向けて液滴を運ばせるように、オイルトラップ450を含有していてもよい。そのような液体416の液滴が処理チャンバ306に到達するのを防ぐため、オイルトラップ450は、ソースキャニスタ300の出口ポート408に連結されていてもよい。オイルトラップ450は、オイルトラップ本体452の中心線456を超えて延びかつソースキャニスタ300に向かって少なくとも僅かに下向きに角度が付けられた、複数の交互に配置されたバッフル454を含有する本体452を含んでいてもよい。バッフル454は、処理チャンバ306に向かって流れるガスを、バッフル454の周りの蛇行経路に強制的に流す。バッフル454の表面積は、流動ガスに曝される広い表面積を提供し、そこには、ガス中に閉じ込められた可能性のある油滴が接着する。バッフル454の下向きの角度は、オイルトラップ内に蓄積された任意の油が、下向きに流れかつソースキャニスタ300に戻るのを可能にする。
【0023】
前駆体材料414は、所定の温度および圧力で前駆体ガスを発生させる。前駆体材料414から昇華または気化したガスは、ソースキャニスタ300の上方領域418内に蓄積されてもよく、入口ポート406を通って進入しかつ出口ポート408から出ていく不活性キャリアガスにより一掃することができ、その結果、処理チャンバ306に運ばれる。一実施形態では、前駆体材料414は、側壁402の近傍に配置された抵抗ヒータ430によって所定の温度まで加熱される。あるいは、前駆体材料414は、ソースキャニスタ300の上方領域418もしくは下方領域434に配置されたカートリッジヒータ(図示せず。)によってまたはキャリアガス入口ポート406の上流に配置されたヒータ(図示せず。)でキャリアガスを予熱することによってなど、その他の手段によって加熱されてもよい。
【0024】
堆積プロセス
本明細書に記載される装置は、マンガン含有膜の堆積中に利用されてもよい。したがって本発明の一態様は、化学前駆体ガスを発生させるための本明細書に記載される装置のいずれかを使用して、マンガン含有膜を堆積する方法に関する。装置内に含有される前駆体は、膜堆積プロセスにおけるマンガン供給源として使用することができる。1つまたは複数の実施形態は、本明細書に記載される化学前駆体ガスを発生させるための装置における、本明細書に記載される前駆体の気化に関する。次いで基板表面を、気化した前駆体に曝してもよい。1つまたは複数の実施形態では、2電子ドナー配位子が、ピリジン(py)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロチオフェン、またはテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)配位子を含む。他の実施形態では、前駆体は、
【化6】
によって表される構造を有する。
【0025】
本発明の別の態様は、マンガン含有膜を堆積する方法であって:少なくとも1つのMn−N結合を含有する前駆体を用意するステップと;前駆体を、不活性金属酸化物を含むライニングを有するアンプル内に流すステップとを含む方法に関する。この方法は、化学前駆体ガスを発生させるためのアンプルまたはその他の装置が使用される、任意の堆積プロセスの部分であってもよい。したがって例えば、この方法は、化学気相堆積(CVD)、原子層堆積(ALD)、プラズマ化学気相堆積(PECVD)、プラズマ原子層堆積(PEALD)、またはその他の堆積プロセスの一部であってもよい。本明細書に記載されるプロセスは、MnNを含むがこれに限定されない様々なマンガン含有膜、および本質的にマンガンからなる膜を堆積するのに使用されてもよい。したがって、1つまたは複数の実施形態では、方法は、本明細書に記載される前駆体のいずれかに基板表面を曝すステップをさらに含む。
【0026】
上記装置に関して記載された変形例のいずれかを、この方法に適用してもよい。したがって例えば、1つまたは複数の実施形態では、不活性金属酸化物が誘電体を含む。他の実施形態では、不活性金属酸化物は、SiO2、Al23、TiO2、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、またはTa25を含む。
【0027】
上述のように、前駆体は、少なくとも1つのMn−N結合を含有する。1つまたは複数の実施形態では、前駆体は、上述の安定化前駆体のいずれか1つである。即ち、いくつかの実施形態では、前駆体は、それ自体がMn−N結合を含有していてもよい2電子ドナー配位子をさらに含有する。1つまたは複数の実施形態では、2電子ドナー配位子は、前駆体を安定化させるのを助ける配位子である。いくつかの実施形態では、2電子ドナー配位子は、ピリジン(py)、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロチオフェン、またはテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)配位子を含む。他の実施形態では、前駆体は、
【化7】
によって表される構造を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、前駆体は、
【化8】
によって表される構造を有し、式中、各Aは独立して炭素またはケイ素から選択され、各Rは独立して水素、メチル、置換もしくは非置換アルカン、分岐状もしくは非分岐状アルカン、置換もしくは非置換アルケン、分岐状もしくは非分岐状アルケン、置換もしくは非置換アルキン、分岐状もしくは非分岐状アルキン、または置換もしくは非置換芳香族から選択される。マンガンの酸化状態は、基板または第2の前駆体と反応することが可能な、任意の適切な酸化状態にあるとすることができる。いくつかの実施形態では、マンガンがMn(II)またはMn(III)である。1つまたは複数の実施形態では、各Aがケイ素である。いくつかの実施形態では、各R基がメチルである。他の実施形態では、前駆体は、
【0029】
【化9】
によって表される構造を有する、マンガンビス[ビス(トリメチルシリル)アミド]を含む。
【0030】
上記前駆体は、有機金属前駆体からマンガン(Mn)または窒化マンガン(MnNx)を生成する際に利用することができる。堆積方法は、原子層堆積(ALD)または化学気相堆積(CVD)とすることができる。有機金属前駆体は、マンガンシリルアミド錯体を含んでいてもよい。堆積されたマンガンまたはMnNx膜は、現在使用されているPVD TaNまたはALD TaNの代わりをするために、バックエンドオブライン(back-end-of-line)銅相互接続において代替の拡散バリアとして使用することができる。堆積手法は、マンガンドープ型TaNまたはMnNxがドープされたタンタルを発生させるため、ALD TaN堆積と統合することができる。その他のドーパントを利用してもよい。1つまたは複数の実施形態では、バリア層が、マンガン層の質量に対して0.1〜10%のドーパントを含む。いくつかの実施形態では、バリア層が0.2〜8質量%のドーパントを含む。特定の実施形態では、バリア層が0.5〜5質量%のドーパントを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、基板は、第1の前駆体および第2の前駆体に曝される。したがって1つまたは複数の実施形態では、方法は、基板表面をマンガンビス[ビス(トリメチルシリル)アミド]にかつNH3を含む第2の前駆体に曝すステップをさらに含む。これらの前駆体への曝露は、CVD反応の場合のように実質的に同時にすることができ、またはALD反応の場合のように逐次行うことができる。本明細書および添付される特許請求の範囲で使用されるように、「実質的に同時に」という用語は、2種の前駆体ガスが、互いにかつ基板表面と一緒に反応するために、チャンバ内に少なくとも部分的に同時に流れることを意味する。他の前駆体が同じ領域に拡散されるまで、1種の前駆体にのみ短時間曝される基板の領域があることが、当業者に理解されよう。
【0032】
いくつかの実施形態では、Mn前駆体を、1種または複数の追加の前駆体と共に使用することができる。その例には、アンモニアおよび水素が含まれる。したがって、例としてアンモニアが使用される場合、窒化マンガン膜を形成することができる。それに対して、水素が第2の前駆体として使用される場合、本質的にマンガンからなる膜を形成することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、マンガン膜はMnNxを含む。いくつかの実施形態のxは、約0.1〜約3の範囲内、または約0.2〜約2の範囲内、または約0.25〜約1の範囲内にある。いくつかの実施形態では、膜は、ケイ酸マンガンを含み、誘電体層上に形成されてもよい。1つまたは複数の実施形態では、マンガン膜は、誘電体表面近くに堆積された場合にはケイ酸マンガンを含み、表面から離れた場合には窒化マンガンを含む。ケイ酸塩から窒化物への転移は、漸進的なまたは個別のステップで行うことができる。
【0034】
本発明の様々な実施形態による膜は、事実上任意の基板材料の上に堆積することができる。本明細書で使用される「基板表面」は、基板上に形成された任意の基板または材料表面であって、製造プロセス中に膜の処理が行われる表面をさす。例えば、処理を行うことができる基板表面には、適用例に応じて、ケイ素、酸化ケイ素、ストレインドシリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI)、炭素ドープ型酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープ型ケイ素、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、ガラス、サファイヤなどの材料と、金属、金属窒化物、金属合金、およびその他の導電性材料などの任意のその他の材料が含まれる。基板表面上のバリア層、金属、または金属窒化物には、デバイス製造に有用な、チタン、窒化チタン、窒化タングステン、タンタル、および窒化タンタル、アルミニウム、銅、または任意のその他の導電体、または導電性もしくは非導電性バリア層が含まれる。基板は、200mmまたは300mmの直径のウエハ、ならびに長方形または正方形のペーンなど、様々な寸法を有していてもよい。表面で本発明の実施形態を役立てることができる基板には、半導体ウエハ、例えば結晶シリコン(例えば、Si<100>またはSi<111>)、酸化ケイ素、ストレインドシリコン、シリコンゲルマニウム、ドープ型または非ドープ型ポリシリコン、ドープ型または非ドープ型シリコンウエハ、GaAs、GaN、InPなどのIII−V材料、およびパターニングされたまたはパターニングされていないウエハが含まれるが、これらに限定するものではない。基板は、基板表面を研磨し、エッチングし、還元し、酸化し、ヒドロキシル化し、アニールし、かつ/またはベークするために前処理プロセスに曝露してもよい。
【0035】
本発明の実施形態は、ドープ型マンガン含有膜を堆積しまたは形成するための方法を提供するので、処理チャンバは、気相堆積プロセス中に基板を一連のガスおよび/またはプラズマに曝すように構成される。処理チャンバは、反応物の個別の供給物を、キャリア、パージ、および不活性ガス、例えばアルゴンおよび窒素の任意の供給物と一緒に、反応物およびガスのそれぞれに関するガス入口に流体連通するように含むと考えられる。各入口は、反応物のそれぞれが基板に流れて本明細書に記載される堆積プロセスを行うことができるように、中央処理装置(CPU)と通信する質量流量制御器または体積流量制御器などの適切な流量制御器によって制御されてもよい。中央処理装置は、様々なチャンバおよびサブプロセッサを制御するための工業環境で使用することができる、コンピュータプロセッサの任意の形の1つであってもよい。CPUは、メモリに連結することができ、容易に利用可能なメモリ、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、コンパクトディスク、フロッピーディスク、ハードディスク、または任意のその他の形の局所または遠隔デジタルストレージの1つまたは複数であってもよい。支持回路は、従来の手法でCPUを支持するためにCPUに連結することができる。これらの回路には、キャッシュ、電源、クロック回路、入力/出力回路、およびサブシステムなどが含まれる。
【0036】
共反応物は、典型的には蒸気またはガス形態にある。反応物は、キャリアガスと共に送出されてもよい。キャリアガス、パージガス、堆積ガス、またはその他のプロセスガスは、窒素、水素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、またはこれらの組合せを含有していてもよい。窒素プラズマまたは不活性ガスプラズマなどの本明細書に記載される様々なプラズマは、プラズマ共反応物ガスから発火させかつ/またはこのガスを含有していてもよい。
【0037】
1つまたは複数の実施形態では、プロセス用の様々なガスは、入口に、ガスチャネルを通して、様々な穴または出口から、かつ中央チャネルに、パルス導入されてもよい。1つまたは複数の実施形態では、堆積ガスは、シャワーヘッドにかつシャワーヘッドを経て逐次パルス導入されてもよい。あるいは、ガスは、ガス供給ノズルまたはヘッドを通して同時に流すことができ、基板および/またはガス供給ヘッドは、基板がガスに逐次曝されるように移動することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の層は、プラズマ原子層堆積(PEALD)プロセス中に形成されてもよい。いくつかのプロセスでは、プラズマの使用は、表面反応が好まれかつ適切になるような励起状態に核種がなるのを促進するように、十分なエネルギーを供給する。プロセスへのプラズマの導入は、連続的にまたはパルス形態で行うことができる。いくつかの実施形態では、前駆体(または反応性ガス)およびプラズマの逐次パルスは、層を処理するのに使用される。いくつかの実施形態では、試薬は、局所的に(即ち、処理領域内で)または遠隔部位で(即ち、処理領域外で)イオン化されてもよい。いくつかの実施形態では、遠隔イオン化は、イオンまたはその他の高エネルギーもしくは発光核種が堆積膜に直接接触しないように、堆積チャンバの上流で行うことができる。いくつかのPEALDプロセスでは、プラズマは、遠隔プラズマ発生器システムなどによって、処理チャンバから離れた場所で発生する。プラズマは、当業者に公知の任意の適切なプラズマ発生プロセスまたは技法を介して発生させてもよい。例えば、プラズマは、マイクロ波(MW)周波数発生器または高周波(RF)発生器の1つまたは複数によって発生させてもよい。プラズマの周波数は、使用されている特定の反応性核種に応じて調整されてもよい。適切な周波数には、2MHz、13.56MHz、40MHz、60MHz、および100MHzが含まれるが、これらに限定するものではない。プラズマは、本明細書に開示される堆積プロセス中に使用されてもよいが、プラズマは必ずしも必要ではないことに留意すべきである。
【0039】
1つまたは複数の実施形態によれば、基板は、層を形成する前および/または後に、処理に供される。この処理は、同じチャンバでまたは1つもしくは複数の個別の処理チャンバで行うことができる。いくつかの実施形態では、基板は、第1のチャンバから、さらなる処理のために別の第2のチャンバに移動する。基板は、第1のチャンバから別の処理チャンバに直接移動することができ、または第1のチャンバから1つもしくは複数の移送チャンバに移動し、次いで所望の別の処理チャンバに移動することができる。したがって処理装置は、移送ステーションに連通している多数のチャンバを含んでいてもよい。この種類の装置を、「クラスタツール」または「クラスタ化システム」などと呼んでもよい。
【0040】
一般に、クラスタツールは、基板の心出しおよび配向、ガス抜き、アニーリング、堆積、および/またはエッチングを含めた様々な機能を発揮する多数のチャンバを含むモジュラシステムである。1つまたは複数の実施形態によれば、クラスタツールは、少なくとも第1のチャンバおよび中心移送チャンバを含む。中心移送チャンバは、基板を処理チャンバとロードロックチャンバとの間およびそれらの中で往復させることができるロボットを収容してもよい。移送チャンバは、真空状態で典型的には維持され、基板を1つのチャンバから、クラスタツールの前端に位置決めされた別のおよび/またはロードロックチャンバへと往復させる中間段階を提供する。本発明に適合されてもよい2つの周知のクラスタツールは、Centura(登録商標)およびEndura(登録商標)であり、共にApplied Materials,Inc.、Santa Clara、Calif.から入手可能なものである。1つのそのような多段真空基板処理装置の詳細は、1993年2月16日に発行されたTepmanらの「多段真空ウエハ処理装置および方法(Staged-Vacuum Wafer Processing Apparatus and Method)」という名称の米国特許第5,186,718号に開示されている。しかし、チャンバの正確な配置構成および組合せは、本明細書に記載されるようなプロセスの特定のステップを行う目的で、変化させてもよい。使用されてもよいその他の処理チャンバには、周期的層堆積(CLD:cyclical layer deposition)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)、エッチング、前洗浄、化学洗浄、RTPなどの熱処理、プラズマ窒化、ガス抜き、配向、ヒドロキシル化、およびその他の基板処理が含まれるが、これらに限定するものではない。プロセスをクラスタツール上のチャンバ内で実施することにより、後続の膜を堆積する前に酸化することなく、雰囲気中の不純物による基板の表面汚染を回避することができる。
【0041】
1つまたは複数の実施形態によれば、基板は、連続的に真空または「ロードロック」条件下にあり、1つのチャンバから次のチャンバに移動するときに周囲の空気に曝されない。したがって移送チャンバは真空下にあり、真空圧力下で「ポンプダウン」される。不活性ガスは、処理チャンバ内または移送チャンバ内に存在してもよい。いくつかの実施形態では、不活性ガスがパージガスとして使用されて、基板の表面上に層を形成した後に反応物の一部または全てを除去する。1つまたは複数の実施形態によれば、パージガスは、堆積チャンバの出口で注入されて、反応物が堆積チャンバから移送チャンバおよび/または追加の処理チャンバに移動するのを防止する。このように、不活性ガスの流れは、チャンバの出口にカーテンを形成する。
【0042】
基板は、単一基板堆積チャンバ内で処理することができ、そこでは単一基板が投入され、処理され、取り出され、その後に別の基板が処理される。基板は、コンベヤシステムのように連続手法でも処理することができ、その場合、多数の基板が個々にチャンバの第1の部分に投入され、チャンバ内を移動し、チャンバの第2の部分から取り出される。チャンバおよび関連するコンベヤシステムの形状は、直線経路または湾曲経路を形成することができる。さらに処理チャンバは、内部で多数の基板が中心軸の周りを移動しているカルーセルであって、カルーセル経路の全体を通して堆積、エッチング、アニーリング、洗浄などのプロセスに曝されているカルーセルであってもよい。
【0043】
処理中、基板を加熱しまたは冷却することができる。そのような加熱または冷却は、基板支持体の温度の変更と、加熱されまたは冷却されたガスの、基板表面への流動とを含むがこれらに限定されない任意の適切な手段によって実現することができる。いくつかの実施形態では、基板支持体は、基板温度を伝導的に変化させるように制御することができる、ヒータ/冷却器を含む。1つまたは複数の実施形態では、用いられているガス(反応性ガスまたは不活性ガスのいずれか)を加熱しまたは冷却して、基板温度を局所的に変化させる。いくつかの実施形態では、ヒータ/冷却器は、基板温度が対流により変化するように、基板表面に隣接するチャンバ内に位置決めされる。
基板は、処理中に固定しまたは回転させることもできる。回転している基板は、連続的にまたは個別のステップで回転させることができる。例えば基板は、全プロセスを通して回転させてもよく、または基板は、種々の反応性またはパージガスに曝される合間に、少量ずつ回転させることができる。処理中の基板を回転させることにより(連続的または段階的のいずれか)、例えばガス流幾何形状の局所的なばらつきの影響を最小限に抑えることによって、より均一な堆積またはエッチングの生成を助けることができる。
【0044】
原子層堆積型チャンバでは、基板は、空間的または時間的に切り離されたプロセスの第1および第2の前駆体に、曝すことができる。時間的ALDは伝統的なプロセスであり、第1の前駆体がチャンバ内に流入して表面と反応する。第1の前駆体はチャンバからパージされ、その後、第2の前駆体が流入する。空間ALDでは、第1および第2の前駆体が共に、同時にチャンバに流れるが、空間的には分離されており、それらの間には前駆体の混合を防止する領域が存在している。空間ALDでは、ガス分布プレートに対して基板を移動させなければならず、またはその逆も同様である。
【0045】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、または「実施形態」という場合、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通して様々な場所で「1つまたは複数の実施形態において」、「ある実施形態において」、「一実施形態において」、または「実施形態において」などの文言が現れた場合、本発明の同じ実施形態を必ずしも指してはいない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、任意の適切な手法で、1つまたは複数の実施形態において組み合わせてもよい。
本明細書の発明を、特定の実施形態を参照しながら記載してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および適用例の単なる例示であることを理解されたい。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本発明の方法および装置に行うことができることが、当業者に明らかであろう。したがって本発明は、添付される特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にある修正例および変更例を含むものとする。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
2種のマンガン前駆体を、下記の表によるステンレス鋼またはSiO2でライニングが施された容器内に置いた:
【表1】
【0047】
全てのサンプルは、90℃の温度に18日間加熱し、不揮発性残留物のパーセンテージを、18日間を通して様々な間隔で測定した。マンガン前駆体の1種は、2つのビス(トリメチルシリル)アミド(TMSA)配位子を含有していた。その他は、2つのTMSA配位子および2つのピリジン(py)配位子を含有しており、「安定化した」と呼ぶ。ステンレス鋼による実施例は、一般にステンレス鋼でライニングが施された従来のアンプルを表す。SiO2による実施例は、ライニングを持つアンプルをシミュレートする。不揮発性残留物のパーセントは、表面との反応により失われた前駆体の量を表す。即ち、不揮発性残留物のパーセンテージが高いほど、より多くの前駆体が失われた。したがって、より低いパーセンテージが望まれる。
【0048】
図2は、データ点に基づく傾向線を含む、18日間にわたる不揮発性残留物のパーセントを示すグラフである。加熱されたステンレス鋼容器内にMn(TMSA)2を含有した実施例1Aは、容器がライニングを含有せずかつ前駆体が余分な安定化配位子を含有しなかったので、ベースラインプロセスを提供する。したがってこの実施例は、その他の実施例と比較するためのベースラインとしても働く。図からわかるように、18日目までに、約17%の不揮発性残留物が存在した。比較により、同じ前駆体でライニングが施された容器(実施例1B)は、約7%の不揮発性残留物しか示さず、これは半分超の降下に該当した。ステンレス鋼容器内での安定化前駆体を特徴とする実施例1Cは、実施例1Bのライニング付き容器における不安定な前駆体と同様に機能した。即ち、18日後に、実施例1Cは約7.5%の不揮発性残留物を示し、これは依然として実施例1Aで示された値の半分未満である。安定化前駆体とライニング付き容器との両方を特徴とする実施例1Dは、最良の結果を示した。18日後、実施例1Dに関するデータの外挿は、不揮発性残留物の%が実施例1Bおよび1Cよりも約3.5%低く、実施例1Aよりも著しく低いことが予測された。前駆体の安定化および/またはアンプルのライニングの利点は、これらの実施例から明らかである。
【0049】
(実施例2)
Mn(TMSA)2前駆体を、下記の表により、異なるライニングを持ついくつかの容器内に置き、90℃の温度に20日間加熱した:
【表2】
【0050】
Dursan(商標)およびSilcolloy(商標)は、2つの異なるシリコンベースの耐蝕性コーティングで被覆されたステンレス鋼のタグを指す。これらのタグは、2Aと同様にサンプルと共にガラス容器に含まれ、被覆されたステンレス鋼に接触させてMn(TMSA)2を置くことによって、ライン付きSSTアンプルをシミュレートした。加熱された容器は、加熱されたアンプルが経験した条件をシミュレートする。不揮発性残留物のパーセントを、様々な間隔で、サンプルのそれぞれに関して測定した。図3は、20日間にわたる不揮発性残留物のパーセントを示すグラフであり、データ点の傾向線が含まれる。図から明らかなように、様々な金属酸化物がライニングされた容器は、不揮発性残留物のパーセントを大幅に削減した。
【0051】
(実施例3(比較例))
図4は、Mn(TMSA)2の熱重量分析曲線ならびにその微分である。前駆体の質量は、温度の関数として測定した。少量の前駆体を、2℃/分で着実に上昇させた。実線による曲線は質量を表し、点線による曲線は、質量の時間微分を表し、所与の温度での質量損失(即ち、気化)の速度を提供する。
【0052】
(実施例4)
実施例4は、前駆体が、安定化前駆体と見なされるMn(TMSA)2(py)2であったこと以外、実施例3の実験を繰り返した。この場合も、実線による曲線は質量を表し、点線の曲線は質量の微分を表し、所与の温度での質量損失(即ち、気化)の速度を提供する。図5は、熱重量分析曲線および微分を示す。図からわかるように、ピリジン配位子を持つ安定化前駆体は、Mn(TMSA)2に比べて高い安定性を有する。
【0053】
(実施例5)
実施例5は、前駆体が、安定化前駆体と見なされるMn(TMSA)2(TMEDA)であったこと以外、実施例3の実験を繰り返した。この場合も、実線による曲線は質量を表し、点線の曲線は質量の微分を表し、所与の温度での質量損失(即ち、気化)の速度を提供する。図6は、熱重量分析曲線および微分を示す。図からわかるように、安定化前駆体は、Mn(TMSA)2に比べて高い安定性を有する。さらに、TMEDA安定化前駆体には、Mn(TMSA)2に比べて揮発性の著しい損失が全くない。微分曲線に示されるピークは、それらの温度で生じたいくらかの分解があることを意味すると考えられるが、質量曲線がゼロに向かうという事実は、その分解の生成物が依然として揮発性であることを意味し、許容され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6