(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機シリコーン樹脂は、ビニル官能基を有する有機シリコーン樹脂およびヒドリド官能基を有する有機シリコーン樹脂の混合物である、請求項1に記載のダイアタッチペースト組成物。
前記ペースト組成物は、全ペースト組成物の15重量%〜40重量%の有機シリコーン樹脂を含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載のダイアタッチペースト組成物。
前記ペースト組成物は、全ペースト組成物の55重量%〜80重量%の単結晶アルミナ充填剤を含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載のダイアタッチペースト組成物。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスおよび部品は熱を発生する。この熱は、多くの用途において、デバイス機能のために効果的に放散させる必要がある。ポリマー樹脂は、他の無機物質、例えば金属材料と比べ、極めて低い熱伝導性を有するので、発生した熱を放散させることが困難である。高バルク熱伝導性を有する充填剤を混合することにより樹脂組成物を得る様々な試みがなされている。
【0003】
一般に、充填剤は3つの種類に分類される:導電性、半導性および電気絶縁性。導電性充填剤は、金属、例えばAu、AgおよびCu、並びに金属合金を包含する。グラファイトおよび炭素繊維は、それらを使用すると、電気絶縁性が低下するので、半導性充填剤として扱われ得る。従って、導電性充填剤および半導性充填剤は、非常に高い熱伝導性を有しても、電子デバイス用途には適さない。
【0004】
電気絶縁性充填剤は、高い熱伝導性および良好な電気絶縁性を付与するために発光ダイオード(LED)技術において広く使用されている。そのような充填剤の例は、AlN、BN、Si
3N
4、Al
2O
3およびダイヤモンドである。AlNおよびBNは、高バルク熱伝導性を有すると広く考えられているが、AlNおよびBNの適用は、その加水分解反応および環境危険因子の故に制限される。一方、ダイヤモンドは、良好な物理的性質および極めて高い熱伝導性を付与するが、より広く使用するには値段が高いという問題がある。Al
2O
3は良好な熱伝導性および他の物理的性質を付与し、値段も手ごろである。
【0005】
熱放散性は、依然としてLEDチップの大きな課題の1つのままである。熱放散性は、チップと基材の間のダイアタッチペーストの熱伝導性に依存する。
【0006】
電子産業における最近の動向では、LED用途のためのチップは、より小さく薄くなってきており、これには、ダイアタッチペーストの接着剤層厚さを常により薄くする必要があることが要求される。大きい粒度を有する充填剤はダイアタッチペーストの薄い接着剤層厚さの形成を妨げるので、前記要求により、充填剤の粒度が制限される。明らかに、小さい粒度を有する充填剤は、ダイアタッチペーストの接着剤層厚さを減少させる。しかし、小さい粒度は必ずしも十分な熱放散を提供しない。一般に、高熱伝導性充填剤、例えば、より小さい粒度を有する球状アルミナ粒子が高熱伝導性の要件を満たさない一方で、より大きい粒度は、ダイアタッチペーストのより小さい接着剤層厚さの要件を満たさない。より具体的には、例えば小球状のAl
2O
3充填剤粒子は、LED用途のための熱伝導性の要件を満たさない。
【0007】
また、LED用途に使用されるダイアタッチペーストは長期間高温に曝されるので、黄変防止性がダイアタッチペーストにとって非常に重要な特徴になってきている。上記した小球状のAl
2O
3充填剤粒子は非常に良好な黄変防止性も有さない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のダイアタッチペーストは、(a)有機シリコーン樹脂、(b)単結晶アルミナ充填剤、(c)硬化剤、および(d)抑制剤を含んでなる。
【0022】
有機シリコーン樹脂
本発明では、既知の様々な有機シリコーン樹脂を使用してよい。有機シリコーン樹脂は、架橋構造を有するポリオルガノシロキサンの1種である。典型的には、有機シリコーン樹脂の調製は、オルガノシランから出発し、オルガノシランを加水分解縮合し、次いで転化させる。ケイ素原子に直接結合している反応性基、例えばヒドロキシル、水素原子、アルコキシおよびビニルを有するシリコーン樹脂が調製され得る。シリコーン樹脂は、優れた特性、例えば、耐熱性および耐候性、良好な電気絶縁性、耐薬品性、疎水性および難燃性を有する。
【0023】
本発明の有機シリコーン樹脂は、好ましくは、ヒドリド官能基およびビニル官能基からなる群から選択される反応性基を有する。これらの官能基は、黄変防止性および接着強度に関して高い性能を提供する。
【0024】
本発明の有機シリコーン樹脂は、好ましくは、ビニル官能基を有する有機シリコーン樹脂およびヒドリド官能基を有する有機シリコーン樹脂の混合物である。
【0025】
低粘度を有する直鎖ビニルシリコーン樹脂が、本発明において特に適していることが見出された。そのような構造の例は、下記式(I):
【化1】
[式中、D>0であり、一分子あたりのビニル基の数は2であり、ビニル基の含量は、ビニル水素シリコーンの総重量に基づいて0.01〜3mmol/gである]
で例示される。
【0026】
より好ましいビニルシリコーン樹脂は、下記式(II):
【化2】
[式中、D>0およびM>0であり、一分子あたりのビニル基の数は3以上であり、ビニル基の含量は、ビニル水素シリコーンの総重量に基づいて0.1〜3mmol/gである]
で例示される。
【0027】
別の好ましいシリコーン樹脂は、下記式(III):
【化3】
[式中、一分子あたりのビニル基の数は3以上であり、ビニル基の含量は、ビニル水素シリコーンの総重量に基づいて0.1〜3mmol/gである]
で例示されるような、いわゆる、網目構造を有するQ樹脂である。
【0028】
低粘度を有する直鎖ビニルシリコーン樹脂は、1つの樹脂単独または2つ以上の樹脂の混合物のいずれであっても、本発明において特に適していることが見出された。
【0029】
好ましい直鎖ビニルシリコーン樹脂は、式(I)、(II)、(III)およびそれらの混合物からなる群から選択される。式(II)が好ましく、式(III)が最も好ましい。
【0030】
好ましい組み合わせは、式(I)および(II)の混合物である。最も好ましい組み合わせは、式(I)および(III)の混合物であり、これは、高接着強度および低粘度を提供する。
【0031】
本発明において使用される適当なビニル官能基含有有機シリコーン樹脂は、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ビニルフェニルメチル末端ビニルフェニルシロキサン−フェニルメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ビニルQ樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0032】
本発明において使用される適当な市販ビニルシリコーン樹脂は、例えば、AB Specialty Silicones CO., LTD.製のVQM1およびVQM0.6、並びにEvonik Specialty Chemicals CO., LTD.製のVQM809およびVQM881である。
【0033】
ヒドリド官能基含有有機シリコーン樹脂は、ビニル官能性有機シリコーン樹脂のための架橋剤として使用される。
【0034】
1つの適当なヒドリド官能基含有有機シリコーン樹脂は、液状ヒドロシリコーン樹脂である。これは、平均組成式(IV):
【化4】
[式中、R
1〜R
6は、有機基および水素原子からなる群から独立して選択される同じまたは異なった基であり、R
1〜R
6の少なくとも1つは、ケイ素原子に直接結合している水素原子であり、M、TおよびQはそれぞれ0〜1未満の範囲の数を表し、Dは0より大きく1未満の数を表し、M+D+T+Q=1、およびT+Q>0である]
で示され、一分子あたり平均して少なくとも2個のケイ素原子に直接結合している水素原子を有し、好ましくは、500〜35000g/mol、より好ましくは1000〜30000g/molの重量平均分子量を有する。
【0035】
適当なヒドロシリコーン油は、下記式(V):
【化5】
[式中、R
7およびR
8は同じまたは異なっており、それぞれ独立してメチルまたは水素であり、m>0、n≧0、一分子あたりのSi−H基の数は3以上であり、Si原子に直接結合している水素原子の含量はヒドロシリコーン油の総重量に基づいて0.1〜1.6重量%である]
で示される直鎖ヒドロシリコーン油を包含する。
【0036】
適当なヒドロシリコーン油は、下記式(VI):
【化6】
[式中、m>0、n≧0、一分子あたりのSi−H基の数は3以上であり、Si原子に直接結合している水素原子の含量はヒドロシリコーン油の総重量に基づいて0.1〜1.6重量%である]
で示される環状ヒドロシリコーン油を包含してよい。
【0037】
適当なヒドロシリコーン油は、組成式(VII):
【化7】
[式中、R
9およびR
10は同じまたは異なっており、それぞれ独立してメチルまたは水素であり、m>0、n≧0、一分子あたりのSi−H基の数は3以上であり、Si原子に直接結合している水素原子の含量はヒドロシリコーン油の総重量に基づいて0.1〜1.6重量%である]
で示される別の好ましいシリコーン樹脂を包含してよい。
【0038】
適当なヒドロシリコーン油は、組成式(VIII):
【化8】
[式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16およびR
17は同じまたは異なっており、それぞれ独立してメチルまたはエチルであり、m>0、一分子あたりのSi−H基の数は1以上であり、Si原子に直接結合している水素原子の含量はヒドロシリコーン油の総重量に基づいて0.1〜1.6重量%である]
で示される更に別の好ましいシリコーン樹脂を包含してよい。
【0039】
本発明において使用される適当なヒドリド官能基含有有機シリコーン樹脂は、トリメチルシリル末端メチル水素シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、水素末端ポリジメチルシロキサン、ヒドリド末端ポリ(メチル−フェニル)シロキサン、トリメチルシリル末端ジメチルシロキサン−メチル水素シロキサンコポリマー、トリメチルシリル末端メチルヒドロシロキサンジメチルシロキサンコポリマー、ヒドリド末端メチルヒドロシロキサンジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルメチル水素シロキサンコポリマー、トリメチルまたは水素末端ジメチルメチル水素メチルフェニルポリシロキサンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
本発明において使用される好ましいヒドリド官能基含有有機シリコーン樹脂は、トリメチルシリル末端メチル水素シリコーン、ジメチルメチル水素シロキサンコポリマー、ヒドリド末端メチルヒドロシロキサンジメチルシロキサンコポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
本発明において使用される適当な市販水素シリコーン樹脂は、例えば、Evonik Specialty Chemicals CO., LTD.製の水素シリコーン架橋剤110、並びにDow Corning (China) Holding CO., LTD.製の水素シリコーンSYL-OFF(R)7672および7028架橋剤である。
【0042】
好ましい有機シリコーン樹脂は、本発明のダイアタッチペーストに高接着強度および低粘度を提供する。有機シリコーン樹脂の低粘度は、より高い熱伝導性に近づくための充填剤の高割合の添加量を可能にする。
【0043】
ビニル官能基とヒドリド官能基との比が、接着強度に影響を及ぼす。好ましくは、ビニル官能基とヒドリド官能基との比は、1:0.2〜1:10、より好ましくは1:0.5〜1:5、最も好ましくは1:2〜1:2.5である。
【0044】
アルカリイオンおよびハライドイオンは、接着領域に移行して、腐蝕を含む望ましくない状態をもたらし得る。好ましくは、本発明において使用される適当な有機シリコーン樹脂は、アルカリイオンおよびハライドイオンを含まない。
【0045】
本発明のダイアタッチペーストは、全ペースト組成物の好ましくは15重量%〜40重量%、より好ましくは17重量%〜37重量%、最も好ましくは22重量%〜32重量%の有機シリコーン樹脂を含んでなる。
【0046】
充填剤
本発明のダイアタッチペーストは、単結晶アルミナ充填剤を含んでなる。本発明において使用される適当な充填剤は、熱伝導性および電気絶縁性の要件を満たさなければならない。その望ましい高い熱伝導性および電気絶縁性の組み合わせの故に、単結晶Al
2O
3ベース充填剤が使用される。
【0047】
一般に、球状構造を有するAl
2O
3充填剤(
図1)は、ダイアタッチペーストにおける充填剤の高割合の添加量をもたらす。しかし、球体形状は、小さい粒度を有するものであっても、小さい接着剤層厚さをもたらさない。加えて、球状構造を有するAl
2O
3充填剤は、多結晶構造を有する部分(約20%)も含み、残部(約80%)は非結晶質である。
【0048】
従って、単結晶Al
2O
3充填剤が高度の結晶度を有することが好ましい。好ましくは、結晶度は少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%である。高度の結晶度は、熱伝導性および黄変防止性にプラスの影響を及ぼす。
【0049】
意外なことに、楕円体形状を有する単結晶Al
2O
3(
図2)が小さい接着剤層厚さおよび高い熱伝導性をもたらすことが見出された。楕円体形状は、球体形状と比べて大きい導電面積をもたらす。更に、楕円体形状を有する単結晶Al
2O
3は、熱伝導性ネットワークが容易に形成される(これは、熱放散に利点をもたらす)よう、球状粒子と比べて、異なった粒子間の界面面積を増大させ得る。従って、単結晶アルミナ充填剤が楕円体形状を有することが好ましい。
【0050】
本発明の単結晶アルミナ充填剤は、0.65μm〜6μm、好ましくは1μm〜5.5μm、より好ましくは2μm〜5μmの粒度を有する。粒度は、粒度分布(PSD)法を用いて測定される。本発明のAl
2O
3粒子について、好ましくは、D10は0.65μm〜0.95μmであり、D50は1.15μm〜1.55μmであり、D90は2μm〜5μmである。ここで、D50が平均粒度を意味する。
【0051】
微細な粒度および狭い粒度分布を有する単結晶アルミナ充填剤は、小さい接着剤層厚さおよびより高い熱伝導性をもたらす。例えば、実施例において使用されている単結晶アルミナ充填剤BRA3X(Lot番号:21221-A)は、PSD Horiba LA950を用いて、D10が0.8μm、D50が1.2μm、D90が2.0μmであることが測定されており、これは非常に狭い粒度分布を示す。
【0052】
本発明の単結晶アルミナ充填剤粒子は、好ましくは1〜3m
2/g、より好ましくは2〜2.5m
2/gの比表面積を有しており、比表面積は、Brenauer-Emmentt-Teller吸着法を用いて測定される。
【0053】
本発明のダイアタッチペースト組成物は、好ましくは、全ペースト組成物の55重量%〜80重量%、好ましくは60重量%〜80重量%、より好ましくは65重量%〜75重量%、更により好ましくは65重量%〜70重量%の単結晶アルミナ充填剤を含んでなる。
【0054】
硬化剤
本発明のダイアタッチペーストは、硬化剤を含んでなる。硬化剤は、有機シリコーン樹脂を硬化させるために使用される。有機ケイ素樹脂の硬化は、有機ケイ素樹脂のヒドリド官能基およびビニル官能基の間の付加反応により達成される。本発明において使用される適当な硬化剤は、熱伝導性および電気絶縁性の要件を満たさなければならない。
【0055】
ヒドロシリル化硬化反応を促進するのに有用な硬化剤は、高価な金属硬化剤、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムおよび白金を用いた高価な金属硬化剤、並びにこれらの金属の錯体を包含する。本発明における使用に適したヒドロシリル化硬化剤の例は、例えば、米国特許第3,159,601号および第3,159,662号(Ashby)、第3,814,730号(Karstedt)、第3,516,946号(Modic)、並びに第4,029,629号(Jeram)に記載されている。
【0056】
好ましくは、ヒドロシリル化硬化剤は、白金含有硬化剤である。本発明において使用される1つの好ましい白金含有硬化剤は、90.9重量%のオクチルアルコールおよび9.1重量%の塩化白金酸を含有する白金オクタノール錯体である。
【0057】
別の好ましい白金含有硬化剤は、エタノール溶液中、重炭酸ナトリウムの存在下で(4モルの水を含有する)塩化白金酸とテトラビニルシクロテトラシロキサンとを反応させることによって生成された白金錯体である。この硬化剤は、米国特許第3,775,452号(Karstedt)に開示されている。
【0058】
硬化剤は、触媒量で使用されなければならない。これは、ヒドロシリル化反応を促進するのに十分な量である。一般に、白金金属の部分に関して少なくとも0.1ppmの白金触媒を使用しなければならない。
【0059】
本発明において使用される硬化剤は、より低い温度では抑制され、100℃以上のより高い温度で活性化され得るよう、潜在性でなければならない。
【0060】
Pt触媒の高い効率の故に、より低い温度で反応を抑制するために、抑制剤を添加してよい。
【0061】
本発明のダイアタッチペーストは、有機シリコーン樹脂の好ましくは0.05重量%〜1.05重量%、より好ましくは0.1重量%〜1.0重量%、最も好ましくは0.2重量%〜0.5重量%の硬化剤を含んでなる。
【0062】
抑制剤
LED分野においてダイの寸法は制限されるので、ペースト量を制御するためにピン転写技術が使用されている。所望のピン転写性を確保するために、ダイアタッチペーストは室温で硬化してはならない。抑制剤は、より低い温度では硬化効果を抑制し、より高い温度では残留物を伴わずに揮発する役割を果たす。結果として、抑制剤の引火点は重要であり、100℃より高い引火点を有する抑制剤が最も適していると考えられる。抑制剤は、本発明のダイアタッチペーストに添加される。抑制剤はPt触媒と配位結合を形成して、その触媒効果を妨げ得ると考えられる。開放時間にとってより良好な性能を得るために、複合抑制剤が好ましい。複合抑制剤は、2種以上の異なった抑制剤および/または他の関連化合物を組み合わせることによって形成される。
【0063】
本発明において使用される適当な抑制剤は、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニル−シクロテトラシロキサン(MVC)などを包含する。本発明において使用される好ましい抑制剤は、2−フェニル−3−ブチン−2−オールである。
【0064】
本発明において使用される適当かつ好ましい複合抑制剤は、2−フェニル−3−ブチン−2−オールおよび1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニル−シクロテトラシロキサンの組み合わせを包含する。
【0065】
ダイアタッチペースト組成物は、好ましくは、全ペースト組成物の0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜5重量%、より好ましくは1重量%〜3重量%の抑制剤を含んでなる。
【0066】
任意添加剤
本発明のダイアタッチペーストは、様々な任意添加剤を更に含んでよい。任意添加剤は、ダイアタッチペーストのある性質、例えば接着強度を更に増強する。
【0067】
有機シリコーン樹脂ベースダイアタッチペーストの金属基材との接着特性は、低い極性の故に、理想的ではない。特に他の樹脂(例えばエポキシおよびMBI)と比べると、有機シリコーン樹脂の接着特性には、改善の余地がある。従って、金属基材との接着特性を増強するために、本発明のダイアタッチペーストに接着促進剤を添加することが好ましい。これは、特にLED分野における銀基材について好ましい。
【0068】
本発明において使用される好ましい接着促進剤は、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。
【0069】
市販の接着促進剤は、例えば、Momentive Performance Materials製のSilquest A186およびSilquest A187、Dow Corning製のZ6040、および信越化学工業社製のKBM5103である。
【0070】
シランカップリング剤が好ましく、他の特定の剤、例えばブリード防止剤を、特定の金属基材のために使用してよい。
【0071】
本発明のダイアタッチペーストにおいて、有機溶媒を添加剤として使用してよい。溶媒は、ダイアタッチペーストの粘度を低減するために使用される。適当な有機溶媒は、例えば、低粘性シリコーン油である。本発明において使用される適当な市販のシリコーン油は、例えば、AB Specialty Silicones CO., LTD製のSF10およびSF50である。
【0072】
蛍光増白剤は初期反射能を高め、蛍光増白剤含有組成物は、150℃で168時間老化させた後であっても非常に高い反射能をなお有する。これは、LED用途にとって重要な特性である。従って、好ましくは、高い反射能および良好な黄変防止性を確保するために、蛍光増白剤を組成物に添加してよい。
【0073】
本発明において使用される適当な蛍光増白剤は、例えば、DuPont製の二酸化チタン(TiO
2、R-105)である。他の好ましい蛍光増白剤は、主有機化合物、例えば、スチルベン誘導体、クマリン、イミダゾリン、ジアゾール、トリアゾール、ベンゾキサゾリンおよびそれらの混合物である。
【0074】
本発明のダイアタッチペーストは、
1)シリコーン樹脂および抑制剤を、Thinkyミキサーを用いてよく混合し、次いで、60℃で30分間加熱する工程;
2)混合物に充填剤および任意成分を添加し、Thinkyミキサーを用いてよく混合する工程;
3)最後に硬化剤を添加し、反応が確実に起こらないよう低速でよく混合する工程;
4)続いて、三本ロール混合機によって混合する工程;
5)調製されたペーストをシリンジに導入する工程
を含む方法に従って調製される。
【0075】
本発明のダイアタッチペーストは、100〜200℃の温度、好ましくは150〜175℃の温度で硬化される。硬化時間は、0.5〜3時間、好ましくは1〜2時間である。
【0076】
本発明のダイアタッチペーストは、ダイを基材に接合するために使用される。適当な基材は、例えば、Au、Cu、プラスチック、並びにAg被覆基材およびAu被覆基材である。
【実施例】
【0077】
先に記載した方法に従って、実施例の組成物を調製した。
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
AB Specialty Silicones CO., LTD.製ビニルシリコーンVQM1およびVQM0.6;
Evonik Specialty Chemicals CO., LTD.製ビニルシリコーンVQM809およびVQM881;
Evonik Specialty Chemicals CO., LTD.製水素シリコーン架橋剤110;
Dow Corning (China) Holding CO., LTD.製水素シリコーンSYL-OFF(R) 7672;
GELEST, INC.製触媒SIP6832.2;
BAIKOWSKI製酸化アルミニウムBRA3X;
Admatechs CO., LTD.製酸化アルミニウムAE9204、AE9104、AO802;
Momentive Performance Materials製接着促進剤A186およびA187;
Dow Corning (China) Holding CO., LTD.製接着促進剤Z6040;
信越化学工業社製接着促進剤KBM5103;
Sigma-Aldrich (Shanghai) Trading Co., Ltd.製抑制剤1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール;
AB Specialty Silicones CO., LTD.により供給されている抑制剤MVC;
DuPont Titanium Technologies製蛍光増白剤二酸化チタン(R-105);
AB Specialty Silicones CO., LTD.製溶媒SF10、SF50
【0082】
本発明のダイアタッチペーストの黄変防止性を測定した。また、球状アルミナ充填剤を用いた比較例も測定した。
【0083】
試料(a)は充填剤として単結晶アルミナ(BRA3X)を含み、試料(b)は球状アルミナ充填剤(AE9204)を含んでいた。
【0084】
Lambda 35, Perkin Elmerを用いて測定した。先に記載したダイアタッチペーストから約0.3mmの厚さを有する平滑なフィルムを作製することにより、試料を作製した。フィルム中に気泡が存在しないことが重要である。
【0085】
各試料について、最初に、300〜800nmの範囲の反射能を測定した。次いで、試料を150℃の炉内に168時間投入した。24時間後、48時間後、96時間後、120時間後および168時間後にそれぞれ反射能を測定した。
【0086】
実験データは、本発明のダイアタッチペーストが、球状アルミナ充填剤含有ダイアタッチペーストより良好な黄変防止性を有することを示している。本発明のペーストは、炉内に168時間投入した後に、より良好な反射能を有した。
図3(本発明)および
図4(比較例)は、これらの結果を示している。
【0087】
異なった種類のシリコーン樹脂および樹脂組成物の影響を調べるために、先に記載した方法に従って実施例5〜9を調製した。
【0088】
【表5】
【0089】
【表6】
【0090】
Brookfield HBDV-IIIレオメーター(CP51板、それぞれ0.5rpmおよび5rpm)を用いて、STM D2983に従って、粘度を測定した。
【0091】
ダイ:1mm×1mm Ag、基材:Ag L/F基材、および装置:DAGE-SERIES-4000PXYを用いて、Mil-Std-883法2019に従って、Ag L/F上ダイ剪断強度(DSS)(g)を測定した。
【0092】
TI値(0.5rpm/5rpm)は、(0.5rpmでの粘度)/(5rpmでの粘度)である。
【0093】
異なった種類のアルミナ充填剤間の差異、特に熱伝導性への影響を調べるために、実施例10〜13を調製した。
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
異なった種類の抑制剤が開放時間に及ぼす影響を調べるために、実施例14〜18を調製した。開放時間の定義:ペーストを容器に分注し、25℃の開放空気環境中に置き、異なった時間に粘度を測定した。粘度が25%上昇した時間を、開放時間と定義した。
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【0099】
熱伝導性
装置:CFA447 Nanoflash、NETZSCH COMPANY
試料の作製:直径12.7mmおよび厚さ0.6mmの円形試料を作製した。各ダイアタッチペーストについて4つの試料を作製し、平均値を計算した。(確実に、試料中に気泡が存在しないようにした。)
試験の条件:測定には二層モードを選択した。これは、グラファイトを試料表面に被覆することを意味する。グラファイトの熱伝導性および試料についての他のパラメーター、例えば密度、厚さ、比熱が既知である場合、試料の熱伝導性は計算することができる。
図5に示すように、層1はグラファイトであり、層2は試料である。レーザーから熱が放出されると、熱は層1から層2に移動する。温度変化は、時間の関数として調べることができる。温度変化および他の既知のパラメーター、例えば層1の密度、比熱、厚さおよび熱伝導性によって、層2の熱伝導性は計算することができる。