(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0038】
<第1の実施形態>
図1は本発明の第1の実施形態による放射線照射装置1の非使用時における全体形状を示す斜視図、
図2は上記放射線照射装置1の使用時の状態を示す側面図である。なお以下では、例えば医療機関の床等の装置載置面2上に放射線照射装置1が載置された状態において、鉛直方向上側、下側をそれぞれ「上」、「下」と称し、また、同じ状態において鉛直方向に対して直角となる方向を「水平」方向ということとする。また、以下では、鉛直方向をz方向、
図2における左右方向をy方向、
図2における紙面に垂直な方向をx方向と規定する。
【0039】
図示のように本例の放射線照射装置1は、脚部10、本体部20、放射線源保持部としてのアーム部30、および線源部(放射線源)40を備える。
【0040】
脚部10は、装置載置面2上を走行可能であり、板状の台座11と、台座11の四隅に近い部分に取り付けられた4つの車輪部とを有している。これらの車輪部は、2つの前輪部12Fおよび2つの後輪部12Rである。各前輪部12Fおよび各後輪部12Rは一般的な旋回キャスターと同様に、ゴムタイヤ等の車輪および、この車輪を走行回転可能に保持した旋回部等から構成されている。上記旋回部は、上下方向に延びる軸を中心として、水平面内で旋回可能に台座11に取り付けられている。これにより、脚部10は、装置載置面2上を任意の方向に走行可能とされている。なお、前輪部12Fおよび後輪部12Rの構造については、後に詳しく説明する。
【0041】
本体部20は、脚部10の上に設置されており、筐体21を備える。筐体21内には、放射線照射装置1の駆動を制御する制御装置22およびバッテリ(図示せず)が収容されている。制御装置22は、線源部40から発せられる放射線の線量および照射時間等を始めとして、放射線照射装置1の各種動作を制御するための装置であり、例えば、制御のためのプログラムをインストールしたコンピュータ、専用のハードウェア、あるいは両者を組み合わせて構成される。また、筐体21の上面には、スピーカ18を内蔵したモニタ23が取り付けられている。筐体21の上部には、放射線照射装置1を押したり引いたりするための取っ手26がアダプタ27を介して取り付けられている。また、本体部20の右側面、後面、左側面、および前面にはそれぞれ、装置1の全周囲の画像を撮影するためのカメラ28A、28B、28C、および28Dが取り付けられている。これらのカメラ28A〜28Dとしては、例えば、撮影した動画を示すデジタル信号を出力するデジタルビデオカメラが用いられる。ただしそれに限らず、デジタルスチルカメラが適用されても構わない。
【0042】
表示手段としてのモニタ23は液晶パネル等からなり、被検体Hの撮影により取得された放射線画像、および装置1の制御に必要な各種情報を表示する。また、モニタ23はタッチパネル方式の入力部24を備えており、装置1の操作に必要な各種指示の入力を受け付ける。このモニタ23は、傾きおよび回転位置を変更可能に本体部20の上面に取り付けられている。上記カメラ28A〜28Dが撮影した動画あるいは静止画はモニタ23に表示される。そこで操作者は、このモニタ23に表示された画像を参考にして、放射線照射装置1の周りの状況を把握することができる。
【0043】
アーム部30は、本体部20に保持されている。詳細には、アーム部30は、本体部20の取っ手26とは反対側の面、すなわち、
図2における右側の面に保持されている。アーム部30は、例えばパンタグラフ機構等からなる昇降機構50により、本体部20に対して昇降可能とされている。アーム部30は、第1アーム31、第2アーム32、第1回動部33、第2回動部34および線源保持部35を備える。第1アーム31の先端には線源保持部35を介して線源部40が保持されている。なお、以降の説明において、第1アーム31における線源部40側の端部を上端部、第2アーム32側の端部を下端部とする。また、第2アーム32における第1アーム31側の端部を上端部、本体部20側の端部を下端部とする。
【0044】
第1アーム31と第2アーム32とは、関節状の第1回動部33により回動軸AX1の周りに回動可能に連結されている。回動軸AX1はx方向に延びる軸である。第1アーム31は回動軸AX1を中心にして、第2アーム32となす角度が変更されるように回動する。第1回動部33は、第1アーム31が第2アーム32に対して摩擦機構を介して回動するように両者を保持している。このため第1アーム31は、ある程度強い外力が加えられることによって回動可能であり、外力が加えられない限り回動せず、第2アーム32に対する相対角度を維持する。
【0045】
第2アーム32は、昇降機構50の上端部に取り付けられたアダプタ51に対して、関節状の第2回動部34を介して回動軸AX2の周りに回動可能に連結されている。回動軸AX2はx方向に延びる軸である。第2アーム32は回動軸AX2を中心にして、本体部20のアーム部30を保持している側の面となす角度が変わるようにyz面内で回動する。第2回動部34は、第2アーム32がアダプタ51に対して摩擦機構を介して回動するように両者を保持している。このため第2回動部34は、ある程度強い外力が加えられることによって回動可能であり、外力が加えられない限り回動せず、本体部20に対する相対角度を維持する。
【0046】
図3は、放射線照射装置1の一部を
図2の矢印A方向から見た状態を示している。この
図3に示すように、本体部20の
図2における右側の面には、昇降機構50による昇降動作の際に、アダプタ51が通過可能な溝29が形成されている。なお、
図3においては、説明の都合上、モニタ23およびアーム部30を省略している。
【0047】
図1および
図2に戻って説明を続ける。線源保持部35は概略U字形状とされ、第1アーム31の先端に取り付けられている。線源部40は第1アーム31の先端に対して、線源保持部35を介して回動軸AX3の周りに回動可能に連結されている。回動軸AX3はx方向に延びる軸である。線源部40は回動軸AX3を中心にして、第1アーム31となす角度が変更されるように回動する。線源保持部35は、線源部40が第1アーム31に対して摩擦機構を介して回動するように両者を保持している。このため、線源部40は、ある程度強い外力が加えられることによって回動可能であり、外力が加えられない限り回動せず、第1アーム31に対する相対角度を維持する。
【0048】
また上記アダプタ51は、昇降機構50に対して、回動軸AX4の周りに回動可能に連結されている。回動軸AX4はz方向に延びる軸である。アダプタ51は、回動軸AX4を中心にしてxy面内で回動する。アダプタ51がこのように回動すれば、アーム部30全体がxy面内で回動する。アダプタ51は、昇降機構50に対して摩擦機構を介して回動するように両者を保持している。このため、アダプタ51に連結しているアーム部30は、ある程度強い外力が加えられることによって回動可能であり、外力が加えられない限り回動せず、xy面内における回動位置を維持する。
【0049】
以上の通り本例では、第1アーム31の第2アーム32に対する回動、第2アーム32の本体部20に対するyz面内回動、線源部40の第1アーム31に対する回動、およびアーム部30全体の昇降機構50に対するxy面内回動が、摩擦機構を介してなされるものとされているが、公知のロック機構により回動位置を固定するものとしてもよい。この場合、ロック機構を解除することにより、第1アーム31、第2アーム32、線源部40およびアーム部30全体の回動が可能となる。そして、所望の回動位置においてロック機構をロックすることにより、回動位置を固定することができる。
【0050】
図1は放射線照射装置1の非使用時の状態を示しており、この非使用時において、アーム部30は初期位置にある。アーム部30の初期位置とは、第1アーム31および第2アーム32を折り畳んだ状態で、アーム部30全体が昇降機構50に対してy方向に離れて存在し、かつ、アーム部30が昇降機構50による上下方向移動位置内の最低位置にある位置である。特に本例においては、初期位置を、
図1に示すように、第1アーム31および第2アーム32をこれ以上回動しなくなる限界まで折り畳んだ状態におけるアーム部30の位置とする。なお、初期位置において第2アーム32は、第1回動部33が第2回動部34よりも上方に位置する状態となっている。
【0051】
ここで、アーム部30の全体が昇降機構50に対して+y方向に離れて存在する位置を、アーム部30の初期回動位置と言うこととする。なお上記+y方向とは、
図2における右方向である。アーム部30はこの初期回動位置から、前述したように回動軸AX4を中心にしてxy面内で回動可能である。この回動は例えば、回動軸AX4を中心にして右回りに45°、左回りに45°の範囲でなされる。
【0052】
なお、上記の初期位置においては、第1アーム31と第2アーム32とが締結ベルト36により締結される。締結ベルト36は、例えば一端部が第2アーム32に取り付けられたもので、その他端部には面ファスナーが取り付けられている。第1アーム31の
図1における表示面と反対側の面には、締結ベルト36の面ファスナーと対応する面ファスナーが取り付けられている。そして、締結ベルト36を
図1における第1アーム31の右側の面から反対側の面に回して、締結ベルト36の面ファスナーを、第1アーム31に取り付けられた面ファスナーに接続する。これにより、初期位置においては、第1アーム31は第2アーム32に対して回動しなくなる。
【0053】
放射線照射装置1が使用される際、アーム部30は上記初期位置から、第1アーム31および第2アーム32が展開された使用位置に移行する。
図4は、この使用位置の一つである位置にアーム部30が設定されている放射線照射装置1を示している。
【0054】
線源部40は、筐体41内に、放射線源、および放射線の照射範囲を絞るためのコリメータ等が収容されて構成されている。放射線源は、例えばX線管球、昇圧回路およびX線管球を冷却する冷却手段等から構成されている。なお、線源部40の放射線源からの放射線の出射は、操作者がモニタ23の入力部24から入力する指示によって行われる。入力部24は、放射線照射装置1の各種操作を実行させるための情報を入力するものであり、制御装置22およびモニタ23と共に、撮影オーダーの管理、撮影画像の画像処理、撮影画像の表示等を行うコンソール(操作卓)を構成している。
【0055】
本例において、被検体Hの放射線画像撮影時には、
図2に示すように、ベッド3に仰臥している被検体Hの下に放射線検出器80を配置し、線源部40の放射線源から出射した例えばX線等の放射線を、被検体Hを透過させて放射線検出器80に照射することにより撮影が行われる。
【0056】
ここで、
図5を参照して放射線検出器80について簡単に説明する。
図5は放射線検出器を放射線照射側である前面から見た外観斜視図である。図に示すように本例の放射線検出器80は、放射線画像記録媒体である画像検出部81、およびこの画像検出部81を収容する筐体82を備えたカセッテ型の放射線検出器である。画像検出部81は、周知のように、入射した放射線を可視光に変換するシンチレータ(蛍光体)、およびTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板を備える。TFTアクティブマトリクス基板上には、シンチレータからの可視光に応じた電荷を蓄積する複数の画素が配列された矩形状の撮像領域が形成される。なお、この放射線検出器80では、画像検出部81が放射線画像記録媒体そのものであるが、本明細書では便宜上、放射線検出器80全体のことも放射線画像記録媒体と称することとする。
【0057】
筐体82には、画像検出部81の他に、TFTのゲートにゲートパルスを与えてTFTをスイッチングさせるゲートドライバ、および画素に蓄積された電荷を、X線画像を表すアナログの電気信号に変換して出力する信号処理回路等を備えた撮影制御部等が内蔵されている。また筐体82は、例えば、フイルムカセッテ、IP(Imaging Plate)カセッテ、あるいはCR(Computed Radiography)カセッテとほぼ同様の、国際規格ISO(International Organization for Standardization)4090:2001に準拠した大きさとされている。
【0058】
筐体82の前面82Aの四隅には、放射線検出器80を識別するための識別情報を表すマーカ84A〜84Dが付与されている。本例において、マーカ84A〜84Dの各々は、直交する2つのバーコードから構成されている。またマーカ84A〜84Dは、無線で識別情報を発するものとされてもよい。
【0059】
次に、放射線照射装置1における放射線画像撮影前の操作について説明する。放射線照射装置1は
図1に示す非使用時の状態、つまりアーム部30を収納した状態で、走行回転する前輪部12Fおよび後輪部12Rにより装置載置面2上を走行させながら使用位置まで搬送される。この放射線照射装置1の搬送は、一例として、操作者(装置使用者)が取っ手26を持って放射線照射装置1を押したり引いたりすることによってなされる。
【0060】
ここで、「アーム部30を収納した状態」とは、アーム部30が前述した初期位置にある状態である。なお、救急治療に対応する場合等においては、放射線照射装置1は、アーム部30を展開した状態のまま、上述と同様にして使用位置まで運ばれることもある。前輪部12Fおよび後輪部12Rの各々は、前述した通り自身が旋回可能に台座11に取り付けられているので、放射線照射装置1は前後左右方向に移動可能で、また大きくカーブするようにも移動可能であり、さらには、台座11内を通過する鉛直軸の周りに旋回することも可能である。したがって放射線照射装置1は、小回りが利く状態で迅速に使用位置まで搬送され得る。
【0061】
放射線画像の撮影は、前述した
図2に示すように、例えばベッド3の上に仰臥している被検体Hに対して行われる。被検体Hの近くに放射線照射装置1をセットする際には、車輪部12により放射線照射装置1を、被検体Hの身長方向に移動させることも可能である。これにより、放射線照射装置1を容易に最適位置にセットすることができる。
【0062】
次に、本実施形態の放射線照射装置1における後輪部12Rの構造について、
図6〜
図9を参照して詳しく説明する。
図6は、2つの後輪部12Rおよびその周辺部の外観を示す斜視図であり、また
図7は1つの後輪部12Rの内部構造を示す一部破断側面図である。これらの
図6および
図7に示される通り後輪部12Rは、台座11の後端側の部分、例えば後端面11aに固定された保持部100と、この保持部100に保持された走行方向変更部としてのケーシング101と、回転軸AX5を中心に走行回転可能にしてケーシング101に保持された2つの車輪102とを有している。
【0063】
上記ケーシング101内には、2つの車輪102と連結されてこれらの車輪102と共に回転するディスク103と、ケーシング101の円筒状部分101a内に上下方向に延びる状態に配置されたロッド104と、一端部がロッド104の下方に位置し、他端部がディスク103の近くに位置する状態に配置されて、揺動軸AX6を中心に揺動するレバー105とが収められている。ケーシング101の上記円筒状部分101aは、前述の回転軸AX5とは交差しない位置において筒軸方向に延びる旋回軸AX7を中心に旋回可能にして、上記保持部100に保持されている。ロッド104は、長軸が上記旋回軸AX7と一致する状態に配置されている。なお、レバー105は図示外の付勢手段により、
図7中で揺動軸AX6を中心に時計方向に揺動するように付勢されている。またロッド104は図示外の付勢手段により、
図7中で上方に付勢さている。これらのロッド104やレバー105に外力が加えられなければ、レバー105の上記他端部は、ディスク103から僅かに離れた状態を維持する。
【0064】
一方、保持部100内には、カム106と歯車107とが収められている。カム106は外周面の一部に歯車状部分が形成されたもので、ロッド104の上方に位置して回動軸AX8の周りに回動可能とされている。歯車107は、カム106の歯車状部分と噛合する状態に配置されている。この歯車107は、回転軸AX9を中心に回転するシャフト108に連結されている。シャフト108の一端部は保持部100の外まで延び、この一端部にはブレーキペダル(操作片)109が連結されている。
【0065】
ブレーキペダル109は、上記回転軸AX9を支点としてシーソー状に揺動する。つまり、このブレーキペダル109の前側操作部109Fが例えば操作者の足等によって下方に押されると、ブレーキペダル109は
図7中で回転軸AX9を支点として左端が下がるように揺動し、ブレーキペダル109の後側操作部109Rが下方に押されると、ブレーキペダル109は
図7中で回転軸AX9を支点として右端が下がるように揺動する。
【0066】
なおブレーキペダル109は、前側操作部109Fあるいは後側操作部109Rが押されている間だけ上述のように揺動した状態を保つように構成されてもよいし、一度前側操作部109F(あるいは後側操作部109R)が押されると上述のように揺動した状態を保ち、次に別の操作部つまり後側操作部109R(あるいは前側操作部109F)が押されると、揺動した状態を解除して水平状態に戻るように構成されてもよい。ただし、作業性を考慮すると、後者のように構成されるのがより好ましい。
【0067】
以上の構成を有する後輪部12Rにおいて、ブレーキペダル109の前側操作部109Fが下方に押し操作されると、シャフト108を介して操作力がカム106に伝達され、カム106が
図7中で回動軸AX8の周りに時計方向に回動する。この際の状態を
図8に示す。なおこの
図8において、先に
図7等において説明したものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。
【0068】
図8に示される通り、回動したカム106はロッド104を前述の付勢力に抗して押し下げる。それによりレバー105の一端部がロッド104に押され、レバー105は
図8中で揺動軸AX6を中心に反時計回りに揺動する。そこで、レバー105の他端部がディスク103を押圧し、ディスク103の回転が、つまりは車輪102の回転軸AX5を中心とした走行回転(以下、これを「後輪部12Rの走行回転」という)が抑止される。この場合のブレーキペダル109の状態は、本発明における第1の状態の一つである。
【0069】
他方、ブレーキペダル109の後側操作部109Rが下方に押し操作されると、シャフト108を介して操作力がカム106に伝達され、カム106が
図7中で回動軸AX8の周りに反時計方向に回動する。この際の状態を
図9に示す。
図9に示される通り、回動したカム106はケーシング101の円筒状部分101aの上端面を押圧する。それによりケーシング101の旋回が抑止され、つまりは車輪102の旋回軸AX7を中心とした旋回(以下、これを「後輪部12Rの旋回」という)が抑止される。この場合のブレーキペダル109の状態は、本発明における第2の状態の一つである。
【0070】
以上説明した第1の状態および第2の状態を、
図10も参照して詳しく説明する。この
図10は、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。同図においては後輪部12Rの走行回転を小さな楕円の矢印で示し、後輪部12Rの旋回を大きな円の矢印で示してある。それらの矢印において、実線のものは各動作が可能であることを示し、破線のものは各動作が抑止されていることを示している。また同図では、ブレーキペダル109の操作状態を併せて示してあり、白ヌキの矢印が図中でブレーキペダル109の上端近傍に併記されているのは、ブレーキペダル109の前側操作部109Fが押し操作されていることを示し、白ヌキの矢印が図中でブレーキペダル109の下端近傍に併記されているのは、ブレーキペダル109の後側操作部109Rが押し操作されていることを示している。ここでは、2つの後輪部12Rにおいてブレーキペダル109が同じように操作されるものとして、1つのブレーキペダル109のみについて操作状態を示している。なお本実施形態では、前輪部12Fは走行回転も旋回も常時可能としているので、前輪部12Fのそれらの動作については特に図示せず、また説明も省略する。ただし本発明の放射線照射装置1においては、それに限らず、前輪部12Fの走行回転および旋回の少なくとも一方を抑制するロック手段が適宜設けられても構わない。
【0071】
図10の(1)に示すように、アーム部30は平面視(装置載置面2に投影するように見ること)で、概略長方形の台座11の左右の長辺と平行で左右方向(
図1中の±x方向)中央を通る中心線CLを回動範囲の中央として、角度θ内で回動自在となっている。この回動は前述した通り、
図2のアダプタ51が昇降機構50に対して回動軸AX4の周りに回動することによってなされるものである。そしてアーム部30は平面視で伸縮可能、つまり前述した初期位置(折り畳んで収納された状態)と
図4に示すような展開位置との間で変化可能となっていて、この変化を装置載置面2に投影した場合、この投影面上で伸縮する方向に伸縮可能となっている。
【0072】
2つの後輪部12Rは、アーム部30が上記回動範囲の中央にある場合に、平面視での伸びる方向(
図1の+y方向)に関して、2つの前輪部12Fよりも後側にあることから「後輪」としているものである。なお、アーム部30が回動せずに伸縮だけする場合は、その伸縮におけるアーム部30の平面視での伸びる方向に関して前側にある車輪部を前輪とし、後側にある車輪部を後輪とする。2つの後輪部12Rは、アーム部30が上記のように伸びる方向に対して交わる方向に、互いに離して配置されている。
【0073】
また、本発明におけるアーム部の「伸縮」とは、本実施形態のアーム部30のように折り畳み状態と展開状態との間で変化することだけを指すものではなく、例えば筒状のアーム基端部内に棒状のアーム先端部が収容され、アーム先端部がアーム基端部内で筒軸方向に進退するように構成されたアーム部において、アーム先端部の進退によりアーム部全体の長さが直線的に変化するようなことも「伸縮」と言うものである。さらには、アーム部が折り畳み状態と展開状態との間で変化することに加えて、アーム部全体の長さが直線的に変化することにより、アーム部全体の長さが変化することもアーム部の「伸縮」と言うものである。
【0074】
図10の(1)は、後輪部12Rが
図7の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fも後側操作部109Rも押し操作されないので、後輪部12Rは走行回転および旋回の双方が可能となっている。そこでこの状況下では、放射線照射装置1を普通に走行させ、そして後輪部12Rを適宜旋回させて小回りの効く走行が可能となる。なお、この場合のブレーキペダル109の状態は、本発明における第3の状態の一つである。
【0075】
また
図10の(2)は、後輪部12Rが
図8の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fが押し操作されたことにより(ブレーキペダル109の第1の状態)、後輪部12Rは走行回転が不可能で、旋回は可能となっている。そこで、例えば放射線画像の撮影に際して放射線照射装置1の位置を微調整したいような場合に、2つの後輪部12Rの一方だけを走行回転不可能とし、その後輪部12Rの旋回軸AX7(
図7等参照)を中心にして放射線照射装置1を装置載置面2上で全体的に回動させて位置調整することが可能になる。また、この位置調整を行う際に、回動の軸となる1つの後輪部12Rの走行回転が不可能になっているので、この後輪部12Rが回転してしまって上記回動の軸がぶれてしまうことが防止される。
【0076】
アーム部30が伸ばされた状態つまり
図4に示すような状態で、放射線照射装置1を走行させると、放射線照射装置1の重心がかなり前方(
図1の+y方向)に存在するようになるので、放射線照射装置1の位置を調整しようとすると、装置が振られやすくなる。しかし、上述のようにして1つの後輪部12Rを軸にして放射線照射装置1を回動させるのであれば、装置が振られることを防止して、放射線照射装置1を安定に保って位置調整可能となる。
【0077】
さらに、上述のような放射線照射装置1の位置調整を行うか否かに関わらず、後輪部12Rの走行回転が不可能となっていることにより、放射線画像の撮影時に放射線照射装置1が動いてしまって撮影が不正になされることが防止される。
【0078】
また
図10の(3)は、後輪部12Rが
図9の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の後側操作部109Rが押し操作されたことにより(ブレーキペダル109の第2の状態)、後輪部12Rは走行回転が可能で、旋回は不可能となっている。そこで、例えば放射線照射装置1を真っ直ぐに走行させたい場合、真っ直ぐに走行中にこの状況にすることによって、後輪部12Rの旋回による走行方向のふらつきを防止し、放射線照射装置1の真っ直ぐな走行を維持させることが可能になる。
【0079】
以上の説明から明らかな通り本実施形態では、ブレーキペダル109の前側操作部109F、シャフト108、歯車107、カム106、ロッド104、レバー105およびディスク103が、後輪部12Rの走行回転を抑止する第1のロック手段を構成し、ブレーキペダル109の後側操作部109R、シャフト108、歯車107およびカム106が、後輪部12Rの旋回を抑止する第2のロック手段を構成している。
【0080】
<第2の実施形態>
次に
図11を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なお
図11では、本実施形態における後輪部12Rの走行回転および旋回の可否を説明しており、その可否に関する表記の仕方は
図10におけるものと同じである。
【0081】
この第2の実施形態は、上に説明した第1の実施形態と比べると、後輪部12Rの旋回を抑止するための第2のロック手段が異なるものであり、その他の点は基本的に第1の実施形態と同様に構成されている。すなわち本実施形態においては、台座11に、その後端部(図中での下端部)に近い部分において、シーソー状のブレーキペダル200が取り付けられている。この第2のロック手段としてのブレーキペダル200は、2つの後輪部12Rに対してそれぞれ設けられているが、
図11ではブレーキペダル109と同様に、1つのブレーキペダル200のみを示している。
【0082】
上記ブレーキペダル200は、その一端部が、後輪部12Rのケーシング101の円筒状部分101a(
図7〜9参照)に圧接する揺動位置と、この円筒状部分101aから離れた揺動位置とを取り得るようにシーソー状に動作するものである。
【0083】
図11の(1)は、後輪部12Rが
図7の状態にあって、かつブレーキペダル200がケーシング101の円筒状部分101aから離れた揺動位置を取っている場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fも後側操作部109Rも押し操作されず、またブレーキペダル200もケーシング101の円筒状部分101aを押圧するように操作されないので、後輪部12Rは走行回転および旋回の双方が可能となっている。そこでこの状況下では、放射線照射装置1を普通に走行させ、そして後輪部12Rを適宜旋回させて小回りの効く走行が可能となる。
【0084】
また
図11の(2)は、後輪部12Rが
図8の状態にあって、かつブレーキペダル200がケーシング101の円筒状部分101aから離れた揺動位置を取っている場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fが押し操作され、一方ブレーキペダル200はケーシング101の円筒状部分101aを押圧しないので、後輪部12Rは走行回転が不可能で、旋回は可能となっている。そこで、例えば放射線画像の撮影に際して放射線照射装置1の位置を微調整したいような場合に、2つの後輪部12Rの一方だけを走行回転不可能とし、その後輪部12Rの旋回軸AX7を中心にして放射線照射装置1を装置載置面2上で全体的に回動させて位置調整することが可能になる。また、この位置調整を行う際に、回動の軸となる1つの後輪部12Rの走行回転が不可能になっているので、この後輪部12Rが回転してしまって上記回動の軸がぶれてしまうことが防止される。さらに、このような放射線照射装置1の位置調整を行うか否かに関わらず、後輪部12Rの走行回転が不可能となっていることにより、放射線画像の撮影時に放射線照射装置1が動いてしまって撮影が不正になされることが防止される。
【0085】
また
図11の(3)は、後輪部12Rが
図8の状態にあって、かつブレーキペダル200がケーシング101の円筒状部分101aを押圧する揺動位置を取っている場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fが押し操作され、そしてブレーキペダル200がケーシング101の円筒状部分101aを押圧するので、後輪部12Rは走行回転および旋回の双方が不可能になる。
【0086】
そこで、例えば放射線照射装置1を真っ直ぐに走行させたい場合は、真っ直ぐに走行中にブレーキペダル200を押し操作することによって後輪部12Rの旋回による走行方向のふらつきを防止し、放射線照射装置1の真っ直ぐな走行を維持させることが可能になる。そして放射線照射装置1が例えば放射線画像の撮影のために適切な位置に到達したならば、ブレーキペダル109の前側操作部109Fを押し操作して後輪部12Rの走行回転を抑止すれば、放射線照射装置1が動いてしまって撮影が不正になされることが防止される。
【0087】
以上の説明から明らかな通り本実施形態では、ブレーキペダル109の前側操作部109F、シャフト108、歯車107、カム106、ロッド104、レバー105およびディスク103(
図6および
図7参照)が、後輪部12Rの走行回転を抑止する第1のロック手段を構成し、ブレーキペダル200が後輪部12Rの旋回を抑止する第2のロック手段を構成している。
【0088】
<第3の実施形態>
次に
図12〜
図15を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
図12は、本実施形態における後輪部12Rの内部構造を示す一部破断側面図である。この
図12に示す後輪部12Rの内部構造は、
図7に示した第1の実施形態における構造と比べると、カム106に代えて、それとは異なる形状のカム206が適用されている点で異なるものである。
【0089】
以上の構成を有する後輪部12Rにおいて、一輪用ロック操作部であるブレーキペダル109の前側操作部109Fが下方に押し操作されると、シャフト108を介して操作力がカム206に伝達され、カム206が
図12中で回動軸AX8の周りを時計方向に回動する。この際の状態を
図13に示す。この
図13に示される通り、回動したカム206はロッド104を前述の付勢力に抗して押し下げる。それによりレバー105の一端部がロッド104に押されるので、レバー105は
図13中で揺動軸AX6を中心に反時計回りに揺動する。そこで、レバー105の他端部がディスク103を押圧し、ディスク103の回転が、つまりは車輪102の走行回転が抑止される。また、上述のように回動したカム206は、ケーシング101の円筒状部分101aの上端面を押圧する。それによりケーシング101の旋回が抑止され、つまりは後輪部12Rの車輪102の旋回が抑止される。以上のように、後輪部12Rの走行回転および旋回を抑止したブレーキペダル109の状態は、本発明における第1の状態の一つである。
【0090】
一方、ブレーキペダル109の後側操作部109Rが下方に押し操作されると、シャフト108を介して操作力がカム206に伝達され、カム206が
図12中で回動軸AX8の周りを反時計方向に回動する。この際の状態を
図14に示す。この
図14に示される通り、回動したカム206は、ケーシング101の円筒状部分101aの上端面を押圧する。それによりケーシング101の旋回が抑止され、つまりは後輪部12Rの車輪102の旋回が抑止される。以上のようにして、後輪部12Rの旋回を抑止したブレーキペダル109の状態は、本発明における第2の状態の一つである。
【0091】
以上説明した第1の状態および第2の状態を、
図15も参照して詳しく説明する。この
図15は、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示しており、その可否に関する表記の仕方は
図10におけるものと同じである。
【0092】
図15の(1)は、後輪部12Rが
図12の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fも後側操作部109Rも押し操作されないので、後輪部12Rは走行回転および旋回の双方が可能となっている。この場合のブレーキペダル109の状態は、本発明における第3の状態の一つである。そこでこの状況下では、放射線照射装置1を普通に走行させ、そして後輪部12Rを適宜旋回させて小回りの効く走行が可能となる。
【0093】
また
図15の(2)は、後輪部12Rが
図13の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fが押し操作されているので(ブレーキペダル109の第1の状態)、後輪部12Rは走行回転および旋回が不可能となる。
【0094】
また
図15の(3)は、後輪部12Rが
図14の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の後側操作部109Rが押し操作されているので(ブレーキペダル109の第2の状態)、後輪部12Rは走行回転が可能で、旋回が不可能となる。
【0095】
そこで、例えば放射線照射装置1を真っ直ぐに走行させたい場合は、真っ直ぐに走行中にブレーキペダル109の後側操作部109Rを押し操作することによって後輪部12Rの旋回を抑止する
図15の(3)の状態とする。そこで、後輪部12Rの旋回による走行方向のふらつきを防止し、放射線照射装置1の真っ直ぐな走行を維持させることが可能になる。そして放射線照射装置1が例えば放射線画像の撮影のために適切な位置に到達したならば、ブレーキペダル109の前側操作部109Fを押し操作して後輪部12Rの走行回転および旋回を抑止する
図15の(2)の状態とする。この状態にすれば、放射線照射装置1が動いてしまって撮影が不正になされることが防止される。
【0096】
以上の説明から明らかな通り本実施形態では、ブレーキペダル109の前側操作部109F、シャフト108、歯車107、カム206、ロッド104、レバー105およびディスク103が、後輪部12Rの走行回転を抑止する第1のロック手段を構成し、ブレーキペダル109の後側操作部109R、シャフト108、歯車107およびカム206が、後輪部12Rの旋回を抑止する第2のロック手段を構成している。
【0097】
<第4の実施形態>
次に
図16および
図17を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。
図16は、本実施形態における後輪部12Rの内部構造を示す一部破断側面図である。この
図16に示す後輪部12Rの内部構造は、
図6に示した第1の実施形態における構造と比べると、複輪用ロック操作部としての2輪用ブレーキペダル400と、この2輪用ブレーキペダル400を台座11の例えば後端面11aに保持する保持部材401と、ブレーキシャフト402とが設けられた点で異なっている。上記ブレーキシャフト402の一端、他端はそれぞれ2つの後輪部12Rのシャフト108に連結されている。また上記2輪用ブレーキペダル400は、このブレーキシャフト402の中央部に固定されている。
【0098】
さらに本実施形態においては、後輪部12Rとして、ブレーキペダル109の後側操作部109R(例えば
図7参照)が押し操作されると走行回転が抑止され、ブレーキペダル109の前側操作部109F(例えば
図7参照)が押し操作されると旋回が抑止される構造のものが適用されている。そのような構造は、例えば
図7の構造において、カム106と歯車107との間に別の1つの追加歯車を介在させることによって実現可能である。また、2輪用ブレーキペダル400は下方に押し操作可能に構成されており、その操作がなされると、操作力がブレーキシャフト402を介して2つの後輪部12Rのシャフト108に伝達される。つまり2輪用ブレーキペダル400が下方に押し操作されると、2つの後輪部12Rの後側操作部109Rが同時に押し操作された場合と同じ状態となる。
【0099】
本実施形態における後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を、
図17を参照して説明する。この
図17における後輪部12Rの走行回転および旋回の可否に関する表記の仕方は
図10におけるものと同じである。また
図17では、2輪用ブレーキペダル400の操作状態を併せて示してあり、白ヌキの矢印が図中で2輪用ブレーキペダル400の下側に併記されているのは、2輪用ブレーキペダル400が押し操作されていることを示している。
【0100】
図17の(1)は、ブレーキペダル109の後側操作部109Rと2輪用ブレーキペダル400が共に押し操作されていない場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。この場合、後輪部12Rは走行回転および旋回の双方が可能となっている。そこでこの状況下では、放射線照射装置1を普通に走行させ、そして後輪部12Rを適宜旋回させて小回りの効く走行が可能となる。
【0101】
また
図17の(2)は、ブレーキペダル109の後側操作部109Rが押し操作された場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。この場合、後輪部12Rは走行回転が不可能で、旋回が可能となる。この後側操作部109Rの押し操作は、2つの後輪部12Rにおいて共に行うこともできるし、あるいは、一方の後輪部12Rのみにおいて行うこともできる。そこで、例えば放射線画像の撮影に際して放射線照射装置1の位置を微調整したいような場合に、2つの後輪部12Rの一方だけを走行回転不可能とし、その後輪部12Rの旋回軸AX7を中心にして放射線照射装置1を装置載置面2上で全体的に回動させて位置調整することが可能になる。
【0102】
また、このような放射線照射装置1の回動は行わず、2つの後輪部12Rの双方とも走行回転不可能にしたい場合は、
図17の(3)に示すように、2輪用ブレーキペダル400が押し操作される。それにより、2つの後輪部12Rの各ブレーキペダル109をそれぞれ押し操作する場合よりも素早く、2つの後輪部12Rの走行回転を抑止可能となる。
【0103】
なお、
図17には示していないが、ブレーキペダル109の前側操作部109Fが押し操作された場合、後輪部12Rは走行回転が可能で、旋回が不可能となる。例えば放射線照射装置1を真っ直ぐに走行させたい場合は、放射線照射装置1が真っ直ぐに走行中に、2つの後輪部12Rがこの状態とされる。それにより、後輪部12Rの旋回による走行方向のふらつきを防止して、放射線照射装置1の真っ直ぐな走行を維持させることが可能になる。
【0104】
以上の説明から明らかな通り本実施形態では、ブレーキペダル109の後側操作部109R、シャフト108、歯車107、カム106、ロッド104、レバー105およびディスク103(
図6および
図7参照)に、前述した追加歯車を適用する場合はこの追加歯車を加えた構成と、以上の構成においてブレーキペダル109の後側操作部109Rを2輪用ブレーキペダル400およびブレーキシャフト402に代替させた構成が、それぞれ後輪部12Rの走行回転を抑止する第1のロック手段を構成している。また、ブレーキペダル109の前側操作部109F、シャフト108、歯車107およびカム106(
図6および
図7参照)に、前述した追加歯車を適用する場合はこの追加歯車を加えた構成が、後輪部12Rの旋回を抑止する第2のロック手段を構成している。
【0105】
<第5の実施形態>
次に
図18を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
図18は、本実施形態における後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示しており、その可否に関する表記の仕方は
図10におけるものと同じである。
【0106】
本実施形態においては、
図16に示したものと同じ2輪用ブレーキペダル400、保持部材401およびブレーキシャフト402が設けられている。
図18では上記2輪用ブレーキペダル400の操作状態を、
図17におけるのと同じ表記の仕方で示してある。また本実施形態では、2つの後輪部12Rとして、
図7〜
図9に示したものと同様の後輪部12Rが適用されている。以上の構成において、2輪用ブレーキペダル400が押し操作されると、各後輪部12Rは、
図9に示したようにブレーキペダル109の後側操作部109Rが押し操作された場合と同じ状態になる。
【0107】
図18の(1)は、後輪部12Rが
図7の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fも後側操作部109Rも押し操作されず(ブレーキペダル109の第3の状態)、また2輪用ブレーキペダル400も押し操作されないので、後輪部12Rは走行回転および旋回の双方が可能となっている。そこでこの状況下では、放射線照射装置1を普通に走行させ、そして後輪部12Rを適宜旋回させて小回りの効く走行が可能となる。
【0108】
また
図18の(2)は、後輪部12Rが
図8の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fが押し操作されたことにより(ブレーキペダル109の第1の状態)、後輪部12Rは走行回転が不可能で、旋回は可能となっている。そこで、例えば放射線画像の撮影に際して放射線照射装置1の位置を微調整したいような場合に、2つの後輪部12Rの一方だけを走行回転不可能とし、その後輪部12Rの旋回軸AX7を中心にして放射線照射装置1を装置載置面2上で全体的に回動させて位置調整することが可能になる。また、このような放射線照射装置1の位置調整を行うか否かに関わらず、後輪部12Rの走行回転を不可能にしておけば、放射線画像の撮影時に放射線照射装置1が動いてしまって撮影が不正になされることが防止される。
【0109】
また
図18の(3)は、後輪部12Rが
図9の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、2つの後輪部12Rの各ブレーキペダル109の後側操作部109Rが押し操作されるか(ブレーキペダル109の第2の状態)、あるいは2輪用ブレーキペダル400が押し操作されることにより、後輪部12Rは走行回転が可能で、旋回は不可能となっている。そこで、例えば放射線照射装置1を真っ直ぐに走行させたい場合は、真っ直ぐに走行中にこの状況にすることによって後輪部12Rの旋回による走行方向のふらつきを防止し、放射線照射装置1の真っ直ぐな走行を維持させることが可能になる。
【0110】
なお、
図18の(3)の状態とするために、2輪用ブレーキペダル400を押し操作するのであれば、ブレーキ操作は1回だけで済む。つまりこの場合は、2つの後輪部12Rの各ブレーキペダル109の後側操作部109Rを押し操作する場合と比べて、ブレーキ操作はより簡単なものとなる。また、そのような2輪用ブレーキペダル400の押し操作は、放射線照射装置1を走行させて運搬している最中に行うことも可能であり、その際は、2つの後輪部12Rの各ブレーキペダル109の後側操作部109Rを押し操作する場合と比べてブレーキ操作がより素早くなされるので特に好ましい。
【0111】
以上の説明から明らかな通り本実施形態では、ブレーキペダル109の前側操作部109F、シャフト108、歯車107、カム106、ロッド104、レバー105およびディスク103(
図6および
図7参照)が後輪部12Rの走行回転を抑止する第1のロック手段を構成している。また、ブレーキペダル109の後側操作部109R、シャフト108、歯車107およびカム106(
図6および
図7参照)が後輪部12Rの旋回を抑止する第2のロック手段を構成し、さらに、2輪用ブレーキペダル400、ブレーキシャフト402シャフト108、歯車107およびカム106も後輪部12Rの旋回を抑止する第2のロック手段を構成している。
【0112】
<第6の実施形態>
次に
図19を参照して、本発明の第6実施形態について説明する。
図19は、本実施形態における後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示しており、その可否に関する表記の仕方は
図18におけるものと同じである。
【0113】
本実施形態においては、
図16に示したものと同じ2輪用ブレーキペダル400、保持部材401およびブレーキシャフト402が設けられている。
図19では上記2輪用ブレーキペダル400の操作状態を、
図17におけるのと同じ表記の仕方で示してある。また本実施形態では、2つの後輪部12Rとして、
図12〜
図14に示したものと同様の後輪部12Rが適用されている。以上の構成において、2輪用ブレーキペダル400が押し操作されると、各後輪部12Rは、
図14に示したようにブレーキペダル109の後側操作部109Rが押し操作された場合と同じ状態になる。
【0114】
図19の(1)は、後輪部12Rが
図12の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fも後側操作部109Rも押し操作されず(ブレーキペダル109の第3の状態)、また2輪用ブレーキペダル400も押し操作されないので、後輪部12Rは走行回転および旋回の双方が可能となっている。そこでこの状況下では、放射線照射装置1を普通に走行させ、そして後輪部12Rを適宜旋回させて小回りの効く走行が可能となる。
【0115】
また
図19の(2)は、後輪部12Rが
図13の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の前側操作部109Fが押し操作されたことにより(ブレーキペダル109の第1の状態)、後輪部12Rは走行回転と旋回の双方が不可能となっている。
【0116】
上述のようにブレーキペダル109を第1の状態にするのは、2つの後輪部12Rの双方においても、あるいは一方のみにおいても可能である。そこで、例えば放射線画像の撮影に際して放射線照射装置1の位置を微調整したいような場合に、2つの後輪部12Rの一方だけを走行回転不可能とし、その後輪部12Rの旋回軸AX7を中心にして放射線照射装置1を装置載置面2上で全体的に回動させて位置調整することが可能になる。また、このような放射線照射装置1の位置調整を行うか否かに関わらず、2つの後輪部12Rの走行回転を不可能にしておけば、放射線画像の撮影時に放射線照射装置1が動いてしまって撮影が不正になされることが防止される。
【0117】
また
図19の(3)は、後輪部12Rが
図14の状態にある場合の、後輪部12Rの走行回転および旋回の可否状況を示している。つまりこの場合は、ブレーキペダル109の後側操作部109Rが押し操作されるか(ブレーキペダル109の第2の状態)、あるいは2輪用ブレーキペダル400が押し操作されることにより、後輪部12Rは走行回転が可能で、旋回が不可能となる。
【0118】
そこで、例えば放射線照射装置1を真っ直ぐに走行させたい場合は、真っ直ぐに走行中にブレーキペダル109の後側操作部109Rを押し操作するか、あるいは2輪用ブレーキペダル400を押し操作することによって後輪部12Rの旋回を抑止する
図19の(3)の状態とする。そこで、後輪部12Rの旋回による走行方向のふらつきを防止し、放射線照射装置1の真っ直ぐな走行を維持させることが可能になる。そして放射線照射装置1が例えば放射線画像の撮影のために適切な位置に到達したならば、ブレーキペダル109の前側操作部109Fを押し操作して後輪部12Rの走行回転および旋回を抑止する
図19の(2)の状態とする。この状態にすれば、放射線照射装置1が動いてしまって撮影が不正になされることが防止される。
【0119】
なお、
図19の(3)の状態とするために、2輪用ブレーキペダル400を押し操作するのであれば、ブレーキ操作は1回だけで済む。つまりこの場合は、2つの後輪部12Rの各ブレーキペダル109の後側操作部109Rを押し操作する場合と比べて、ブレーキ操作はより簡単なものとなる。また、そのような2輪用ブレーキペダル400の押し操作は、放射線照射装置1を走行させて運搬している最中に行うことも可能であり、その際は、2つの後輪部12Rの各ブレーキペダル109の後側操作部109Rを押し操作する場合と比べてブレーキ操作がより素早くなされるので特に好ましい。
【0120】
以上の説明から明らかな通り本実施形態では、ブレーキペダル109の前側操作部109F、シャフト108、歯車107、カム206、ロッド104、レバー105およびディスク103(
図6および
図12参照)が後輪部12Rの走行回転を抑止する第1のロック手段を構成している。また、ブレーキペダル109の後側操作部109R、シャフト108、歯車107およびカム206(
図6および
図12参照)が後輪部12Rの旋回を抑止する第2のロック手段を構成し、さらに、2輪用ブレーキペダル400、ブレーキシャフト402シャフト108、歯車107およびカム206も後輪部12Rの旋回を抑止する第2のロック手段を構成している。
【0121】
<第7の実施形態>
次に、放射線照射装置1に適用される後輪に関して、前述した旋回キャスターからなる後輪部12R以外の例について説明する。
図20に示す後輪は、例えばオムニホイール(登録商標)から構成されたものである。
図20は一例として、後輪を構成するオムニホイール700が
図1に示した放射線照射装置1の台座11に脚保持部712を介して取り付けられた状態を示している。
【0122】
オムニホイール700は全方向移動車輪の一つであって、車軸701に取り付けられて回転軸AX11の周りを正逆回転可能である回転体702と、この回転体702の外周部に取り付けられた複数のローラ703とを有している。ローラ703としては、例えば樽型のローラが適用されている。
【0123】
本例では回転体702において、左右に分けて7個ずつ、つまり合計で14個のローラ703が取り付けられている。左右一方側の7個のローラ703はそれぞれ、回転軸AX11と同軸の1つの円の接線方向に延びる回転軸AX12を中心に正逆回転可能にして、回転体702に取り付けられている。この点は、左右他方側の7個のローラ703についても同様である。また、左右一方側の7個のローラ703はそれぞれ、左右他方側の7個のローラ703同士の隙間に向かい合う位置に配されている。以上の構成を有するオムニホイール700は、車軸701を受承する軸受部704を介して、脚保持部712に取り付けられている。
【0124】
上記オムニホイール700においては、車輪本体としての回転体702と、走行方向変更部としての14個のローラ703とが1つの回転車輪を構成している。すなわち、脚保持部712を有する放射線照射装置に図中の矢印P方向に作用する力が加えられると、回転体702およびローラ703からなる車輪が14個のローラ703を車輪の外周面として回転軸AX11の周りに回転し、脚12を、つまりは放射線照射装置を矢印P方向へ走行させる。また、脚保持部712を有する放射線照射装置に図中の矢印Q方向に作用する力が加えられると、接地しているローラ703が回転軸AX12の周りに回転し、脚保持部712の、つまりは放射線照射装置の矢印Q方向への移動を容易化する。
【0125】
以上説明したオムニホイール700から後輪を構成する場合も、回転体702の回転つまり走行回転を抑止する第1のロック手段と、ローラ703の回転を抑止する第2のロック手段とを設けることができる。そして、それらのロック手段の動作を制御することによって、本発明の放射線照射装置を得ることができる。
【0126】
なお、全方向移動車輪としては、以上説明したオムニホイール700の他に、例えば特開2013−081659号公報に示されているメカナムホイールも適用可能である。
【0127】
<第8の実施形態>
次に、1つのロック操作部において、第1および第2のロック手段を操作するための操作片が複数設けられてなる実施形態について説明する。
図21は、本発明の第8の実施形態による放射線照射装置の後輪の周辺部分を示す斜視図である。また
図22は、この第8の実施形態の放射線照射装置に適用されたペダル連動機構を示す側面図である。
【0128】
図22に示すペダル連動機構は、第1および第2のロック手段を操作する操作部の一部を構成するものであり、後輪側ロック操作片としての後輪側ペダル500と、前輪側ロック操作片としての前輪側ペダル501と、これらの後輪側ペダル500および前輪側ペダル501を連結する連結ロッド502とを有している。なお
図21においては、上記2つのペダル500および501のうち、後輪側ペダル500のみが示されている。
【0129】
図22に示される通り後輪側ペダル500は、上端部(+z方向の前端部)に、円形の一部をなす形状とされた回転基部500aを有し、この回転基部500aは例えば嵌合等によってブレーキシャフト402に固定されている。それにより後輪側ペダル500は、このブレーキシャフト402と一体的に回転可能とされている。一方、後輪側ペダル500の下端に近い部分には、踏み板503が固定されている。また後輪側ペダル500の上下方向中央に近い位置には、前輪側ペダル501の方に突出したロッド連結部500bが形成されている。そしてこのロッド連結部500bには、連結ロッド502の一端部が、回転軸AX13を中心に回転可能に連結されている。
【0130】
なお、台座11の後端面11aには、保持部材504が固定されている。この保持部材504は、ブレーキシャフト402を通過させる図示外の貫通孔を有して、ブレーキシャフト402の回転を許容する。後輪側ペダル500の回転基部500aは、この保持部材504と密接する状態に配置されている。こうして後輪側ペダル500は、台座11の後端面11aよりも後方側(−y方向側)に配置されている。
【0131】
ブレーキシャフト402と一体的に回転する後輪側ペダル500は、後述するように3つの回転位置で停止して、各回転位置に保持され得るものとなっている。この保持は、例えば回転基部500aに形成された複数の半球状凸部500cが、保持部材504に形成された図示外の凹部に係合することによってなされる。こうして上記3つの回転位置のいずれかに保持された後輪側ペダル500は、後輪側ペダル500を回転させるある程度の大きさの外力が加えられると、上記凸部500cと凹部との係合が外れて、別の回転位置まで移動可能となる。
【0132】
一方前輪側ペダル501は、上下方向中央に近い位置に回転基部501aを有している。この回転基部501aは、台座11の下面11cに固定された保持部材505に、回転軸AX14を中心として回転可能に保持されている。こうして前輪側ペダル501は、台座11の前端面11bよりも前方側(+y方向側)に配置されている。また前輪側ペダル501の上端部(+z方向の前端部)には、円形の一部をなす形状とされて後輪側ペダル500の方に突出したロッド連結部501bが形成されている。そしてこのロッド連結部501bには、連結ロッド502の他端部が、回転軸AX15を中心に回転可能に連結されている。また、前輪側ペダル501の下端に近い部分には、踏み板506が固定されている。
【0133】
以上の構成においてブレーキシャフト402は、基本的に
図12に示したものと同様の第1のロック手段および第2のロック手段に連結される。すなわち、ブレーキシャフト402の一端部、他端部には各々、
図12に示すシャフト108が同軸状態で連結、固定される。なおその場合、
図12に示すブレーキペダル109は一般に省かれるが、設けられていても構わない。しかし、ブレーキペダル109が台座11の左右端面よりも側外方に突出していると、放射線照射装置を幅が狭い経路において搬送する際に、ブレーキペダル109が障害物と干渉しやすくなる。その点を考慮すると、台座11の左右端面よりも側外方に突出しているブレーキペダル109は省くのが望ましいと言える。
【0134】
後輪側ペダル500は、操作者が例えば踏み板503を足で踏むことにより、
図22中でブレーキシャフト402を中心として時計方向に回転し、また、操作者が例えば踏み板503をつま先で下から持ち上げることにより、
図22中でブレーキシャフト402を中心として反時計方向に回転し得る。そして後輪側ペダル500は、上述のような回転の経路内で、同図中に実線で示す回転位置、1点鎖線で示す回転位置、および破線で示す回転位置に保持され得る。以下、これら3つの回転位置を上記の記載順に下位置、中央位置、上位置と称することとする。
【0135】
後輪側ペダル500が例えば上記下位置から上位置まで回転する際、この後輪側ペダル500のロッド連結部500bに一端部が連結されている連結ロッド502は、
図22において概略右方向に移動する。それにより、連結ロッド502の他端部が連結されているロッド連結部501bが
図22において概略右方向に引っ張られるので、前輪側ペダル501は回転軸AX14を中心として時計方向に回転する。こうして、後輪側ペダル500が上記下位置、中央位置、上位置に設定される際、前輪側ペダル501はそれぞれ
図22中の実線で示す回転位置、1点鎖線で示す回転位置、および破線で示す回転位置に設定される。なお前輪側ペダル501の上記3つの回転位置についても、記載順に下位置、中央位置、上位置と称することとする。
【0136】
以上の通り、一つのロック操作片としての後輪側ペダル500が下位置、中央位置、あるいは上位置に設定されると、別のロック操作片としての前輪側ペダル501も後輪側ペダル500と連動して、それぞれ同様に下位置、中央位置、あるいは上位置に設定される。上では、後輪側ペダル500が回転操作される際に、その操作に連動して前輪側ペダル501が回転移動する場合について説明したが、その逆のことも起こり得る。すなわち、前輪側ペダル501も、踏み板506を踏み板503と同様に操作することにより、回転軸AX14を中心に回転して、下位置、中央位置、あるいは上位置に設定され得る。そしてその際、前輪側ペダル501の動きが連結ロッド502を介して後輪側ペダル500に伝えられ、それにより後輪側ペダル500がブレーキシャフト402を中心に回転して、それぞれ下位置、中央位置、あるいは上位置に設定される。
【0137】
前述したようにブレーキシャフト402に、基本的に
図12に示したものと同様の第1のロック手段および第2のロック手段が連結されている場合は、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が下位置に設定されると、ロック手段は
図14に示す状態となる。つまりこの際、後輪部12R(
図14参照)は走行回転が可能で、旋回が不可能となる。以上のようにして、後輪部12Rの旋回を抑止した後輪側ペダル500および前輪側ペダル501の状態は、本発明における第2の状態の一つである。
【0138】
また、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が中央位置に設定されると、ロック手段は
図12に示す状態となる。つまりこの際、後輪部12R(
図12参照)は走行回転および旋回の双方が可能となる。
【0139】
また、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が上位置に設定されると、ロック手段は
図13に示す状態となる。つまりこの際、後輪部12R(
図13参照)は走行回転および旋回の双方が不可能となる。以上のように、後輪部12Rの走行回転および旋回を抑止した後輪側ペダル500および前輪側ペダル501の状態は、本発明における第1の状態の一つである。
【0140】
なお、例えば、
図12に示されているカム206の形状および配設位置を変更する等により、上記例とは反対に、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が下位置に設定された場合は後輪部12Rの走行回転および旋回が抑止され、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が上位置に設定された場合は後輪部12Rの旋回が抑止されるように構成することも可能である。
【0141】
さらには、ブレーキシャフト402に、基本的に
図7に示したものと同様の第1のロック手段および第2のロック手段が連結されてもよい。そのように構成した場合は、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が下位置に設定された際に後輪部12Rの旋回が抑止され、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が上位置に設定された際に後輪部12Rの走行回転が抑止され、そして後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が中央位置に設定された際に後輪部12Rの旋回および走行回転が可能となる。
【0142】
また、例えば
図7に示されているカム106の配設位置を変更する等により、上記例とは反対に、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が下位置に設定された場合は輪部12Rの走行回転が抑止され、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501が上位置に設定された場合は後輪部12Rの旋回が抑止されるように構成することも可能である。
【0143】
以上説明した通り本実施形態では、前述した前方および後方の方向(±y方向)に関する台座11の中間位置よりも後方側と前方側とにそれぞれ、後輪側ペダル500、前輪側ペダル501が配置されている。つまり、より詳しくは、台座11の後端面11aよりも後方側に後輪側ペダル500が配置され、台座11の前端面11bよりも前方側に前輪側ペダル501が配置されている。
【0144】
この構成により、以下の効果を奏することができる。すなわち、操作者が取っ手26(
図1参照)を持って台座11の後方側から放射線照射装置を搬送している際には、他の実施形態におけるのと同様に、後輪側ペダル500によりブレーキ操作が可能である。また、被検体Hが寝ているベッド3(
図2参照)の近くまで放射線照射装置を搬送してから、撮影のために放射線照射装置の位置を微調整したいような場合、操作者が台座11よりも前方側に移動して台座11を動かすこともある。そのような状況下で台座11を動かす際には、前輪側ペダル501を利用してブレーキ操作することが可能となる。
【0145】
特に本実施形態では、後輪側ペダル500と前輪側ペダル501とが互いに連動する構成とされているので、上述のように操作者が台座11の後方側から前方側に移動した際に、前輪側ペダル501の位置を確認することにより、第1のロック手段および第2のロック手段が現在どのような状態にあるのかを容易に把握可能となる。これは、操作者が台座11の前方側から後方側に移動した際も同様である。
【0146】
なお後輪側ペダル500は、台座11の後端面11aよりも後方側に配置する他、台座11の左および/または右の側端面の、後端面11aに近い所に配置しても構わない。同様に前輪側ペダル501も、台座11の前端面11bよりも前方側に配置する他、台座11の左および/または右の側端面の、前端面11bに近い所に配置しても構わない。しかし、放射線照射装置を搬送する際に、周囲の障害物等との干渉を避ける上では、後輪側ペダル500および前輪側ペダル501を本実施形態のように配置するのが好ましい。
【0147】
<第9の実施形態>
次に
図23を参照して、本発明の第9の実施形態による放射線照射装置について説明する。
図23は、本発明の第9の実施形態による放射線照射装置の後輪の周辺部分を示す斜視図である。同図に示されるように本実施形態では、例えば
図12に示したような第1および第2のロック手段を操作するために、シャフト108(
図12参照)を正逆回転駆動するアクチュエータ540が設けられている。また台座11の後端面11aには、アクチュエータ540の動作を制御するアクチュエータ制御回路および圧力センサ(共に図示せず)を収容した制御箱550が固定されている。そしてこの制御箱550の下部には、第1および第2のロック手段を操作するための操作片としてのペダル551が取り付けられている。
【0148】
また図示は省略するが、台座11の前端面11b(
図22参照)にも、上記と同様の圧力センサを収容した制御箱が固定され、そしてこの制御箱の下部にはペダル551と同様のペダルが取り付けられている。上記圧力センサは、制御箱550内のアクチュエータ制御回路と電気的に接続されている。
【0149】
ペダル551は、その基部が制御箱550内の圧力センサに連結されている。そしてこの圧力センサにより、ペダル551を踏む踏力が、ある閾値P1よりも小である第1踏力範囲、閾値P1以上閾値P2(P1<P2)以下である第2踏力範囲、および閾値P2よりも大である第3踏力範囲のいずれに含まれるかが検出される。アクチュエータ制御回路は、検出された踏力が第1踏力範囲、第2踏力範囲、あるいは第3踏力範囲に含まれる場合、アクチュエータ540をそれぞれ、後輪部12Rの旋回を抑止する状態、後輪部12Rの旋回および走行回転を抑止する状態、あるいは後輪部12Rの旋回および走行回転を可能にする状態に駆動させる。以上のようにペダル551の踏力に基づいてアクチュエータ540を駆動させる点は、台座11の前端面11b側に設けられたペダルに関しても同様である。
【0150】
なお本実施形態においては、台座11の後端面11a側に設けられたペダル551と、台座11の前端面11b側に設けられたペダルとが連動することはない。しかし、上述したように3つの範囲のペダル踏力を検出することに代えて、ペダルを3つの位置のいずれかに選択的に設定するようにペダルを移動させ、各ペダル位置に応じて第1および第2のロック手段の状態を制御する場合は、2つのペダルを連動させることも可能である。
【0151】
また本実施形態では、アクチュエータ540の駆動によって第1および第2のロック手段の状態を切り替えるようにしているので、ロック手段の状態とペダル踏力との対応関係を、電気的な構成を変えるだけで適宜変更することができる。例えば、検出されたペダル踏力が第1踏力範囲、第2踏力範囲、あるいは第3踏力範囲に含まれる場合、アクチュエータ540をそれぞれ、後輪部12Rの旋回および走行回転を抑止する状態、後輪部12Rの旋回を抑止する状態、あるいは後輪部12Rの旋回および走行回転を可能にする状態に駆動させることも可能である。
【0152】
<第10の実施形態>
次に
図24を参照して、本発明の第10の実施形態による放射線照射装置について説明する。
図24は、本発明の第10の実施形態による放射線照射装置の後輪の周辺部分を示す斜視図である。同図に示されるように本実施形態では、
図23に示した第9の実施形態におけるのと同様のアクチュエータ540および制御箱550が設けられている。また本実施形態では、
図23に示した1つのペダル551に代えて、操作片としての第1ペダル561および第2ペダル562が設けられている。これらの第1ペダル561および第2ペダル562はそれぞれ、例えば足で踏み込まれることにより、制御箱550内でx方向に延びる揺動軸(図示せず)を中心として揺動する。
【0153】
より詳しくは、第1ペダル561は
図24に示されている定位置と、踏み込まれることにより揺動して
図24中の手前側の部分が下がった踏込み位置のいずれかを選択的に取り得る。一方第2ペダル562は
図24に示されている定位置と、踏み込まれることにより揺動して
図24中の手前側の部分が下がった第1踏込み位置と、この第1踏込み位置からさらに踏み込まれることにより上記手前側の部分がさらに下がった第2踏込み位置のいずれかを選択的に取り得る。そして、第1ペダル561が上記踏込み位置にある場合に、第2ペダル562が踏み込まれると、第1ペダル561は定位置に復帰する。反対に、第2ペダル561が上記第1あるいは第2踏込み位置にある場合に、第1ペダル561が踏み込まれると、第2ペダル562は定位置に復帰する。
【0154】
上記アクチュエータ制御回路は、位置センサによって検出された第1ペダル561および第2ペダル562の位置に応じてアクチュエータ540の駆動を制御する。すなわちアクチュエータ制御回路は、第1ペダル561が踏込み位置にある場合(この場合第2ペダル562は定位置に復帰している)、アクチュエータ540を、後輪部12Rの旋回を抑止する状態に駆動させる。またアクチュエータ制御回路は、第2ペダル562が第1踏込み位置にある場合(この場合第1ペダル561は定位置に復帰している)、アクチュエータ540を、後輪部12Rの旋回および走行回転を抑止する状態に駆動させる。そしてアクチュエータ制御回路は、第2ペダル562が第2踏込み位置にある場合(この場合も第1ペダル561は定位置に復帰している)、アクチュエータ540を、後輪部12Rの旋回および走行回転を可能にする状態に駆動させる。
【0155】
なお本実施形態においても、上記第1ペダル561および第2ペダル562と同様の2つのペダルおよび、制御箱550と同様の制御箱を台座11の前端面11b(
図22参照)側に設けて、それらのペダルの操作によって上記と同様にアクチュエータ540を駆動させることが可能である。そのように構成する場合は、第1ペダル561と台座11の前端面11b側の同様のペダルを連動させ、また第2ペダル562と台座11の前端面11b側の同様のペダルを連動させることが可能である。それらのペダル同士の連動は、公知の機構を用いることによって実現可能である。
【0156】
ところで、先に述べた通り、放射線照射装置の位置を微調整したいような場合、操作者が台座11よりも前方側に移動して台座11を動かすこともある。そのような状況下では、第1のロック手段および第2のロック手段を操作する他に、少しの時間だけ簡単に台座11の動きを抑えておきたいこともある。
図25は、そのような要望に応えることができる構成を備えた放射線照射装置の一例を示す斜視図である。この
図25に示す構成においては、台座11から延びて前輪部12Fを各々保持する2つの前輪保持部材600が設けられ、そして各前輪保持部材600の上面に滑り止め601が形成されている。各滑り止め601は、例えば細い角柱状部材が複数並設されてなるものである。なお、前輪保持部材600および滑り止め601は、例えば合成樹脂から形成可能である。そこで操作者は、これらの滑り止め601に例えば片足の靴の底面を載せて前輪保持部材600を押さえ付けることにより、台座11の動きを簡単に抑止することができる。
【0157】
また、以上説明した各実施形態においては、前輪部12Fが2個、後輪部12Rが同じく2個設けられているが、前輪部12Fおよび後輪部12Rの設置数はそれに限られるものではなく、例えば前輪部12Fが1個、後輪部12Rが2個設けられてもよい。
【0158】
また、以上説明した実施形態の放射線照射装置は、操作者の力によって走行するものとされているが、本発明の放射線照射装置はモータなどの動力源を備えて自動で走行するように構成されても、あるいは動力源からの駆動力により補助して操作者の力によって走行するように構成されてもよい。