特許第6411650号(P6411650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6411650
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】画像形成方法及びダンボール
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20181015BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20181015BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20181015BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20181015BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20181015BHJP
【FI】
   B41M5/00 100
   B41M5/00 120
   B41M5/00 132
   B41M5/50 120
   B41M5/00 110
   C09D11/322
   B41J2/01 109
   B41J2/01 123
   B41J2/01 501
   C09D11/54
【請求項の数】7
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-521855(P2017-521855)
(86)(22)【出願日】2016年5月25日
(86)【国際出願番号】JP2016065439
(87)【国際公開番号】WO2016194729
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-113396(P2015-113396)
(32)【優先日】2015年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幕田 俊之
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−161823(JP,A)
【文献】 特開2009−012277(JP,A)
【文献】 特開2014−094998(JP,A)
【文献】 特開2010−046896(JP,A)
【文献】 特開2007−136734(JP,A)
【文献】 特開2008−031579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00 − 5/52
B41J 2/01 − 2/215
C09D 11/00 − 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の酸性化合物を有するpH2以下の処理液をL≦90のダンボール基材上に付与すること、
色材及び水を含み、樹脂粒子及びワックス粒子の合計含有量が第1のインク組成物全質量に対して2質量%以下である第1のインク組成物を、インクジェット法により10ピコリットル以上の液滴量とする条件で、前記処理液が付与された前記ダンボール基材の処理液付与面に付与すること、
樹脂、ワックス、及び水を含み、色材の含有量が第2のインク組成物全質量に対して0.5質量%以下である第2のインク組成物を、前記ダンボール基材に付与された第1のインク組成物上に付与すること、
を有する画像形成方法。
【請求項2】
前記第2のインク組成物に含まれる樹脂は、ウレタン樹脂を含む請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記第1のインク組成物に含まれる色材は、顔料を含む請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記ダンボール基材上の処理液付与面に付与することにおいては、ノズル密度が1インチあたり600個以下のインクジェットヘッドにより前記第1のインク組成物を付与する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記ダンボール基材上の処理液付与面に付与することにおいては、ノズル密度が1インチあたり400個以下のインクジェットヘッドにより、25ピコリットル以上40ピコリットル以下の液滴量にて、前記第1のインク組成物を付与する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記第2のインク組成物中の前記樹脂が樹脂粒子であり、前記第2のインク組成物中の前記ワックスがワックス粒子であり、前記第2のインク組成物がインクジェット法により付与される請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記第1のインク組成物を付与することにおいては、網点面積率を100%以上として前記第1のインク組成物を付与する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、画像形成方法及びダンボールに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法による画像形成方法に用いられるインクジェット用インク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう)としては、溶媒として溶剤を用いた溶剤系のインク組成物のほか、地球環境及び作業環境に配慮する点から、溶媒として水を用いた水系のインク組成物が知られている。
インクジェット法による画像形成法は、近年、高速での画像の形成が可能であり、多種多様な基材に対して高品位の画像を記録し得ること等から広く利用されている。
【0003】
水系のインク組成物を用いた画像形成方法としては、例えば、特開2014−94998号公報には、普通紙の記録媒体の塗工層を有する面に前処理液を付着させる前処理工程と、前処理液を付着させた面上に水、水溶性有機溶剤、界面活性剤及び着色剤を含有するインクジェット記録用インクを付着させて画像を形成する画像形成工程と、インクを付着させた記録媒体面上に水分散性樹脂を含有する後処理液を付着させて透明な保護層を形成する工程と、を設けるインクジェット記録方法が開示されている。
【0004】
また、特開2013−176972号公報には、脂肪族系有機酸塩又は無機金属塩、水溶性有機溶剤及び水を含有する前処理液により処理した普通紙の記録媒体に、水性インクを用いて記録媒体に画像を形成した後、画像形成部にウレタン樹脂、フッ素系界面活性剤、水溶性有機溶剤及び水を含有する後処理液を吐出して被覆する画像形成方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、ダンボールへ画像形成する場合においても、小ロット化のニーズが高まってきている。また、ダンボールは波状(wavy)に加工した紙に少なくとも1枚の平面紙を接着することで作製される紙基材であり、ダンボールに画像を形成する場合、ダンボールを作製した後にダンボールの表面に画像を形成することがコスト面で有利である。このような要求に対しては、インクジェット法による画像形成方法が適している。
しかしながら、ダンボールは記録面に凹凸及び反りがあり、インクジェット法により画像を形成する場合、インクジェットヘッドと記録面との間隔を離さないとインクジェットヘッドと記録面との接触が生じやすく安定した画像形成ができない。一方、インクジェットヘッドと記録面との間隔を離した場合、インク液滴量が少ないと所望の位置に着弾させることは難しい。そのため、インク液滴量を多くすることが有効である。ところが、液滴量が多いとインク液滴の着弾干渉及び着弾後のインク液滴の合一が起きやすくなり、形成された画像において部分的に濃度が高い領域が生じて濃度ムラとなる現象(いわゆるモトル:mottle)が発生しやすい。モトルの発生を抑制するためには、インクジェットヘッドにおけるノズル密度を下げてインク液滴の着弾干渉を起き難くする必要がある。その一方で、着滴後にインク液滴が広がらない場合は、液滴間に隙間が生じ、ダンボール地の色が現れて所望の色相(フレキソ色)を再現ができない傾向がある。
【0006】
ここでいうフレキソ色とは、全国段ボール工業組合連合会、全日本紙器段ボール箱工業組合連合会、及び印刷インキ工業連合会の関連三団体から発行された2006年度版「段ボール印刷用インキ見本帳」の標準色(白を除く17色)を意味する。
【0007】
従来、酸性化合物を含む処理液を付与した後に、色材、樹脂粒子、及びワックス粒子を含有したインク組成物をインクジェットヘッドにて打滴し画像を形成する画像形成システムが提案されている。
このような画像形成システムで用いられるインク組成物をダンボールへの画像形成に適用した場合、着滴したインク液滴が十分に広がらずダンボール地の色が見えてしまい、フレキソ色を再現できない。一方、樹脂粒子及びワックス粒子を含有しないインク組成物を適用した場合は、フレキソ色は再現できでも画像の耐擦性に劣る傾向にある。
【0008】
また、特開2014−94998号公報及び特開2013−176972号公報に記載の画像形成方法においては、ダンボール基材への画像形成について検討されていない。特開2014−94998号公報及び特開2013−176972号公報による方法ではフレキソ色を再現しながら、画像の耐擦性を付与することはできない。
【0009】
本発明の一実施形態は上記に鑑みてなされたものであり、L≦90のダンボール基材において、フレキソ色再現性、及び耐擦性に優れ、モトルの発生が抑制された画像を形成する画像形成方法、並びに画像形成方法により画像が形成されたダンボールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 少なくとも1種の酸性化合物を有するpH2以下の処理液をL≦90のダンボール基材上に付与すること、色材及び水を含み、樹脂粒子及びワックス粒子の合計含有量が第1のインク組成物全質量に対して2質量%以下である第1のインク組成物を、インクジェット法により10ピコリットル以上の液滴量とする条件で、処理液が付与されたダンボール基材の処理液付与面に付与すること、樹脂、ワックス、及び水を含み、色材の含有量が第2のインク組成物全質量に対して0.5質量%以下である第2のインク組成物を、ダンボール基材に付与された第1のインク組成物上に付与すること、を有する画像形成方法。
【0011】
<2> 第2のインク組成物に含まれる樹脂は、ウレタン樹脂を含む<1>に記載の画像形成方法。
<3> 第1のインク組成物に含まれる色材は、顔料を含む<1>又は<2>に記載の画像形成方法。
<4> ダンボール基材上の処理液付与面に付与することにおいては、ノズル密度が1インチあたり600個以下のインクジェットヘッドにより第1のインク組成物を付与する<1>〜<3>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<5> ダンボール基材上の処理液付与面に付与することにおいては、ノズル密度が1インチあたり400個以下のインクジェットヘッドにより、25ピコリットル以上40ピコリットル以下の液滴量にて、第1のインク組成物を付与する<1>〜<4>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<6> 第2のインク組成物中の樹脂が樹脂粒子であり、第2のインク組成物中のワックスがワックス粒子であり、第2のインク組成物がインクジェット法により付与される<1>〜<5>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
<7> 第1のインク組成物を付することにおいては、網点面積率を100%以上として第1のインク組成物を付与する<1>〜<6>のいずれか1つに記載の画像形成方法。
【0012】
<8> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の画像形成方法により画像が形成されたダンボール。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、L≦90のダンボール基材において、フレキソ色再現性、及び耐擦性に優れ、モトルの発生が抑制された画像を形成する画像形成方法、並びに画像形成方法により画像が形成されたダンボールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】画像形成の実施に用いるインクジェット画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】実施例1で用いたインクジェット画像形成装置の構成例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔画像形成方法〕
本発明の一実施形態の画像形成方法は、少なくとも1種の酸性化合物を有するpH2以下の処理液をL≦90のダンボール基材上に付与すること(以下、処理液付与工程ともいう)、色材及び水を含み、樹脂粒子及びワックス粒子の合計含有量が第1のインク組成物全質量に対して2質量%以下である第1のインク組成物を、インクジェット法により10ピコリットル以上の液滴量とする条件で、処理液が付与されたダンボール基材の処理液付与面に付与すること(以下、第1のインク付与工程ともいう)、樹脂、ワックス、及び水を含み、色材の含有量が第2のインク組成物全質量に対して0.5質量%以下である第2のインク組成物を、ダンボール基材に付与された第1のインク組成物上に付与すること(以下、第2のインク付与工程ともいう)、を有する。
【0016】
画像形成方法は、処理液付与工程、第1のインク付与工程、及び第2のインク付与工程のそれぞれの工程の後に、各工程で付与される処理液、第1のインク組成物、又は第2のインク組成物を乾燥させる乾燥工程を有していてもよい。
【0017】
画像形成方法の作用は明確ではないが、本発明者らは、以下のように推定している。
従来の樹脂粒子及びワックス粒子を含有したインク組成物は、着弾後の液滴が十分に広がらずフレキソ色は再現できなかった。一方、樹脂粒子及びワックス粒子を含有しないインク組成物は、フレキソ色は再現しやすいものの、画像の耐擦性に劣っていた。
これに対して、本発明の一実施形態の画像形成方法では、処理液付与工程により処理液がダンボール基材に付与され、付与された処理液の上に第1のインク組成物が付与されることで、第1のインク組成物中の成分(特に色材)が凝集する。そのため、色材の基材への浸透が抑制され、基材表面に色材が留まると考えられる。さらに、第1のインク組成物が色材を含有し、第1のインク組成物中の樹脂粒子及びワックス粒子の合計含有量が2質量%以下であることで、ダンボール基材に着弾した後の第1のインク組成物の液滴が適度に広がるため、凝集作用により液滴同士の合一は抑制しつつも、ダンボール基材上に隙間の発生を抑えた画像が形成され、所望の色相の画像が得られる。これにより、モトル(濃度ムラ)の発生が抑制され、フレキソ色の再現性が高い画像が得られる。そして、第1のインク組成物が付与されたダンボール基材上の第1のインク組成物上に、樹脂及びワックスを含む第2のインク組成物が付与されることで、画像の耐擦性を保持することができる。
このような工程を経ることで、フレキソ色再現性、及び耐擦性に優れ、モトルの発生が抑制された画像が形成される。
【0018】
以下、本発明の一実施形態の画像形成方法について、詳細に説明する。
なお、画像形成に用いるインク組成物を単に「インク」ということがある。また、インク組成物中の成分の凝集を、「インク(組成物)の凝集」ということがある。また、ダンボール基材を単に「基材」ということがある。
なお、本明細書中、数値範囲を表す「〜」はその上限及び下限の数値を含む範囲を表す。更に本明細書においてインク組成物中の各成分の量は、インク組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、インク組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0019】
本明細書中において、「ワックス」とは融点が170℃以下である高分子化合物を意味し、「ワックス粒子」とは、上記のワックスから形成された粒子を意味する。
この点において、融点を有しない又は融点が170℃を超える高分子化合物である「樹脂」とは区別できる。
融点は、示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)(例えば、(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220)を用いたDSC測定における吸熱ピークトップの温度を意味する。
【0020】
[処理液付与工程]
画像形成方法は、少なくとも1種の酸性化合物を有するpH2以下の処理液をL≦90のダンボール基材上に付与する処理液付与工程を有する。
処理液付与工程は、後述のインク組成物中の成分を凝集させる酸性化合物を少なくとも1種含むpH2以下の処理液をダンボール基材上に付与する工程であり、後述の第1のインク付与工程において付与されるインク組成物中の成分を凝集させる。インク組成物中の成分(特に色材)がダンボール基材上で凝集するため、インク組成物中の成分のダンボール基材中への浸透を抑制できる。
【0021】
<ダンボール基材>
画像形成方法においては、L≦90のダンボール基材上に画像を形成する。ダンボール基材とは、波状に加工した紙(中しん:corrugationg medium)に少なくとも1枚の平面紙(ライナー:liner)を接着することで作製される紙基材である。
≦90のダンボール基材は、白色以外のダンボールを指す。すなわち、画像形成方法は、白色以外のダンボール基材にインクジェット法によりインク組成物を付与した場合に、フレキソ色を再現することができる。
ダンボール基材としては、フレキソ色の再現性の効果がより顕著に現れる観点から、L≦80のダンボール基材が好ましく、L≦70のダンボール基材がさらに好ましい。また、L≧10のダンボール基材が好ましく、L≧30のダンボール基材がより好ましい。
また、同様の観点から、L=63、a=8、b=26を中心としたΔE≦10の範囲の色域を有するダンボール基材が好ましい。
ダンボール基材のL、a、b、及びΔEは、GretagMacbeth社製のSpectrolinoにより測定される値である。
【0022】
ダンボール基材に用いられるライナーとしては、例えば、王子マテリア社製、レンゴー社製等のKライナー、Cライナー、軽量ライナー、及び各種の色ライナーが挙げられる。
ダンボール基材に用いられる中しんとしては、例えば、王子マテリア社製、レンゴー社製の一般中しん、強化しん、軽量中しん、及び耐水中しんが挙げられる。
ダンボール基材としては、上述の中しんを波状に加工し、加工された中しんに上述のライナーを接着したものも使用でき、本発明の一実施形態においては接着後のダンボールを用いることが好ましい。波状に加工された中しんとライナーとを接着したダンボール基材としては、中しんを2枚のライナーで挟んで接着した両面ダンボールの他、中しんに1枚のライナーを接着した片面ダンボール、ライナー/中しん/ライナー/中しん/ライナーの順に積層した複両面ダンボール、ライナー/中しん/ライナー/中しん/ライナー/中しん/ライナーの順に積層した複々両面ダンボールが挙げられる。
【0023】
<処理液>
処理液は、少なくとも1種の酸性化合物を有し、pH2以下である。
フレキソ色再現性及びモトル発生の抑制の観点から、処理液のpHは1以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。
なお、pHは、pHメーターWM−50EG(東亜DDK(株)製)を用いて25℃(±1℃)の環境下で測定される値である。
【0024】
(酸性化合物)
酸性化合物としては、インク組成物のpHを低下させ得る化合物が挙げられる。
酸性化合物としては、有機酸性化合物及び無機酸性化合物のいずれを用いてもよく、有機酸性化合物及び無機酸性化合物から選択される化合物を2種以上併用してもよい。
【0025】
−有機酸性化合物−
有機酸性化合物としては、酸性基を有する有機化合物が挙げられる。
酸性基としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、及びカルボキシ基等を挙げることができる。酸性基は、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシ基であることが好ましく、カルボキシ基であることがより好ましい。
【0026】
カルボキシ基を有する有機化合物(有機カルボン酸)は、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸(好ましくは、DL−リンゴ酸)、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、4−メチルフタル酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、もしくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等が好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0027】
有機カルボン酸としては、インク組成物の凝集速度の観点から、2価以上のカルボン酸(以下、多価カルボン酸ともいう。)であることが好ましく、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、4−メチルフタル酸、及びクエン酸から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、及びクエン酸が更に好ましい。
【0028】
有機酸性化合物は、pKaが低いことが好ましい。
これにより、カルボキシ基等の弱酸性の官能基で分散安定化しているインク組成物中の色材などの表面電荷を、よりpKaの低い有機酸性化合物と接触させることにより減じ、分散安定性を低下させることができる。
【0029】
処理液に含まれる有機酸性化合物は、pKaが低く、水に対する溶解度が高く、価数が2価以上であることが好ましく、インク組成物中の成分(特に色材)を分散安定化させている官能基(例えば、カルボキシ基等)のpKaよりも低いpH領域に高い緩衝能を有する2価又は3価の酸性物質であることがより好ましい。
【0030】
−無機酸性化合物−
無機酸性化合物としては、リン酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、塩酸などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。無機酸性化合物としては、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸が最も好ましい。
【0031】
処理液に含まれる酸性化合物の総量は、特に制限はないが、インク組成物の凝集速度の観点から、処理液の全質量に対し、5質量%〜40質量%であることが好ましく、10質量%〜30質量%であることがより好ましい。
酸性化合物として有機酸性化合物と無機酸性化合物とを併用する場合において、有機酸性化合物と無機酸性化合物との含有比は、凝集速度の観点から、有機酸性化合物の含有量に対する無機酸性化合物の含有量が、5モル%〜50モル%であることが好ましく、10モル%〜40モル%であることがより好ましく、15モル%〜35モル%であることがさらに好ましい。
【0032】
処理液は、酸性化合物の他に、必要に応じて、多価金属塩及びカチオン性ポリマーなどの他の凝集成分を併用してもよい。
多価金属塩及びカチオン性ポリマーについては、例えば、特開2011−042150号公報の段落0155〜0156に記載されている多価金属塩及びカチオン性ポリマーを用いることができる。
【0033】
(水)
処理液は水を含有することが好ましい。
水の含有量は、処理液の全質量に対して、好ましくは50質量%〜90質量%であり、より好ましくは60質量%〜80質量%である。
【0034】
(水溶性溶剤)
処理液は、水溶性溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
水溶性溶剤として、具体的には、後述の第1のインク組成物が含むことができる水溶性溶剤を、処理液においても同様に用いることができる。
中でも、処理液の基材への浸透性の観点から、ポリアルキレングリコール又はその誘導体であることが好ましく、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGmME)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGmBE)から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0035】
水溶性溶剤の処理液における含有量としては、塗布性などの観点から、処理液全質量に対して3質量%〜20質量%であることが好ましく、5質量%〜15質量%であることがより好ましい。
【0036】
−界面活性剤−
処理液は、界面活性剤の少なくとも1種を含んでもよい。
界面活性剤は、表面張力調整剤として用いることができる。表面張力調整剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等が挙げられる。中でも、インク組成物の凝集速度の観点から、ノニオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0037】
界面活性剤としては、特開昭59−157636号公報の第37〜38頁及びリサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)に界面活性剤として挙げた化合物も挙げられる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載のフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤等も挙げられる。
【0038】
処理液における界面活性剤の含有量としては特に制限はないが、処理液の表面張力が60mN/m以下となるような含有量であることが好ましく、20mN/m〜50mN/mとなるような含有量であることがより好ましく、30mN/m〜45mN/mとなるような含有量であることがさらに好ましい。
【0039】
(含窒素ヘテロ環化合物)
本発明における処理液は、含窒素ヘテロ環化合物を含有してもよい。これにより、処理液の付与に用いる装置が錆びることを防ぐことができる。
【0040】
含窒素ヘテロ環化合物の構造としては、含窒素5員環構造又は6員環構造が好ましく、中でも含窒素5員環構造が好ましい。
【0041】
含窒素5員環構造又は含窒素6員環構造の中でも、好ましくは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びセレン原子の少なくとも一種の原子を含む5員又は6員のヘテロ環の構造が好ましい。なお、このヘテロ環は炭素芳香環または複素芳香環で縮合していてもよい。
ヘテロ環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、セレナジアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズイミダゾール環、ピリミジン環、トリアザインデン環、テトラアザインデン環、ペンタアザインデン環等が挙げられる。
【0042】
これらの環は、置換基を有してもよく、置換基は、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、及び臭素原子)、メルカプト基、シアノ基、それぞれ置換もしくは無置換のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、t−ブチル、及びシアノエチルの各基)、アリール基(例えば、フェニル、4−メタンスルホンアミドフェニル、4−メチルフェニル、3,4−ジクロルフェニル、及びナフチルの各基)、アルケニル基(例えば、アリル基)、アラルキル基(例えば、ベンジル、4−メチルベンジル、及びフェネチルの各基)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、及びp−トルエンスルホニルの各基)、カルバモイル基(例えば、無置換カルバモイル、メチルカルバモイル、及びフェニルカルバモイルの各基)、スルファモイル基(例えば、無置換スルファモイル、メチルスルファモイル、及びフェニルスルファモイルの各基)、カルボンアミド基(例えば、アセトアミド、及びベンズアミドの各基)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、及びp−トルエンスルホンアミドの各基)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、及びベンゾイルオキシの各基)、スルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、ウレイド基(例えば、無置換ウレイド、メチルウレイド、エチルウレイド、及びフェニルウレイドの各基)、アシル基(例えば、アセチル、及びベンゾイルの各基)、オキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、及びフェノキシカルボニルの各基)、オキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、及び2−エチルヘキシルオキシカルボニルアミノの各基)、ヒドロキシ基などで置換されていてもよい。置換基は、一つの環に複数置換してもよい。
また、処理液中における含窒素ヘテロ環化合物の含有量には特に限定はないが、処理液の全質量に対し、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜4質量%がより好ましい。
【0043】
好ましい含窒素ヘテロ環化合物の具体例としては以下のものが挙げられる。
即ち、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾインダゾール、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ピリジン、キノリン、ピリミジン、ピペリジン、ピペラジン、キノキサリン、モルホリンなどが挙げられ、これらは、上記のアルキル基、カルボキシ基、スルホ基などの置換基を有してよい。
【0044】
好ましい含窒素6員環化合物としては、トリアジン環、ピリミジン環、ピリジン環、ピロリン環、ピペリジン環、ピリダジン環、又はピラジン環を有する化合物であり、中でもトリアジン環、又はピリミジン環を有する化合物が好ましい。これらの含窒素6員環化合物は置換基を有していてもよく、その場合の置換基としては炭素数1〜6、より好ましくは1〜3のアルキル基、炭素数1〜6、より好ましくは1〜3のアルコキシ基、水酸基、カルボキシ基、メルカプト基、炭素数1〜6、より好ましくは1〜3のアルコキシアルキル基、炭素数1〜6、より好ましくは1〜3のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
好ましい含窒素6員環化合物の具体例としては、トリアジン、メチルトリアジン、ジメチルトリアジン、ヒドロキシエチルトリアジン環、ピリミジン、4−メチルピリミジン、ピリジン、及びピロリンが挙げられる。
【0045】
(その他の添加剤)
処理液は、必要に応じ、上記以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
処理液に含有され得るその他の添加剤としては、後述のインク組成物に含有され得るその他の添加剤と同様である。
【0046】
(処理液の物性)
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、0.5mPa・s〜10mPa・sの範囲が好ましく、1mPa・s〜5mPa・sの範囲がより好ましい。粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて25℃(±1℃)の条件下で測定される値である。
【0047】
処理液の25℃(±1℃)における表面張力としては、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m〜50mN/mであることがより好ましく、30mN/m〜45mN/mであることがさらに好ましい。処理液の表面張力が範囲内であると、塗布ムラの発生が抑えられ有利である。処理液の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用い、プレート法によって測定されるものである。
【0048】
<処理液の付与>
処理液の付与は、塗布法、例えば、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布は、例えば、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については後述する。
【0049】
処理液付与工程は、第1のインク組成物を用いた第1のインク付与工程の前に設ける。
具体的には、ダンボール基材上に、第1のインク組成物を付与する前に、予め第1のインク組成物中の成分(例えば、色材など)を凝集させるため処理液を付与しておき、ダンボール基材上に付与された処理液に接触するように第1のインク組成物を付与して画像化する。これにより、インクジェット記録を高速化でき、フレキソ色再現性に優れ、モトル発生が抑制された画像が得られる。
【0050】
処理液の付与量としては、第1のインク組成物の凝集が可能であれば特に制限はないが、好ましくは、酸性化合物の付与量が0.01g/m以上となる量とすることができる。中でも、酸性化合物の付与量が0.1g/m〜5.0g/mとなる量が好ましい。酸性化合物の付与量が0.01g/m以上であると、インク組成物の種々の使用形態に応じ良好な高速凝集性が保てる。また、酸性化合物の付与量が5.0g/m以下であることは、付与したダンボール基材の表面性に影響(光沢の変化等)を与えない点で好ましい。
【0051】
また、本発明の一実施形態においては、処理液付与工程後に乾燥工程を設け、処理液を基材上に付与した後、第1のインク組成物が付与されるまでの間に、基材上の処理液を乾燥させることもできる。これにより、処理液中の酸性化合物のダンボール基材表面での存在量を多くすることができ、その結果、少ない付与量でフレキソ色の再現性に優れた画像を形成できる。処理液の乾燥の手段及び方法の好ましい態様は、後述する乾燥工程の好ましい態様における、乾燥の手段及び方法と同様である。
【0052】
[第1のインク付与工程]
第1のインク付与工程は、色材及び水を含み、樹脂粒子及びワックス粒子の合計含有量が第1のインク組成物全質量に対して2質量%以下である第1のインク組成物を、インクジェット法により10ピコリットル以上の液滴量とする条件で、処理液が付与されたダンボール基材の処理液付与面に付与する。
【0053】
第1のインク組成物をインクジェット法により、前述の処理液が付与されたダンボール基材上の処理液付与面に付与することで、インク組成物中の成分(特に色材)が凝集し、ダンボール基材中への色材の浸透が抑制される。この場合、インク組成物における樹脂粒子及びワックス粒子の合計含有量が2質量%以下であるため、第1のインク組成物の液滴は適度に広がり、前述の処理液による凝集作用により液滴同士の合一は抑制しつつも、ダンボール基材上に隙間なく画像が形成され、所望の色相の画像が得られる。そのため、モトルの発生が抑制され、フレキソ色の再現性が高い画像が得られる。
【0054】
第1のインク組成物において樹脂及びワックスが水不溶性の粒子の形態で含まれていると、樹脂粒子及びワックス粒子が処理液と接触した際に凝集する。そのため、第1のインク組成物における樹脂粒子及びワックス粒子の合計含有量がインク組成物全質量に対して2質量%以下であることで、第1のインク組成物の凝集が抑制されダンボール基材着弾後のインク組成物の液滴が広がりやすくなり、凝集作用により液滴同士の合一は抑制しつつも、ダンボール基材上に隙間の発生を抑えた画像が形成され、所望の色相の画像が得られる。そのため、モトルの発生が抑制され、フレキソ色の再現性が高い画像となる。
インクジェットヘッドとしてノズル密度の低いヘッドを用いてシングルパスで画像形成した場合においても、高いフレキソ色の再現性を実現できる。
【0055】
インクジェット法により1回の吐出で1つのノズルから吐出され基材に付与される第1のインク組成物の液滴量が10ピコリットル以上であることで、ダンボール基材とインクジェットヘッドとの間隔を大きく保ちながら所望の位置にインク組成物を付与することができる。そのため、インク組成物の着弾干渉を抑制でき、液滴の合一によるモトルの発生を抑制できる。また、インクジェットヘッドとしてノズル密度の低いヘッドを用いても、高いフレキソ色を再現できる。
【0056】
<第1のインク組成物>
第1のインク組成物は、色材及び水を含み、樹脂粒子及びワックス粒子の合計含有量が第1のインク組成物全質量に対して2質量%以下である。
上記の樹脂粒子及びワックス粒子は、粒子形態の水不溶性樹脂及び水不溶性ワックスが好ましい。「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部以下であることを指す。
また、上記の樹脂粒子及びワックス粒子は、1nm〜200nmの範囲の体積平均粒子径を有する粒子であることが好ましい。体積平均粒子径は、光散乱を用いた粒度分布測定装置(例えば、日機装(株)製のマイクロトラックUPA(登録商標)EX150)によって測定された値を指す。
さらに、上記の樹脂粒子は樹脂からなる粒子である点で、後述する樹脂で被覆された顔料(樹脂被覆顔料)と区別される。また、上記のワックス粒子はワックスからなる粒子である点で、ワックスで被覆された顔料とは区別される。
【0057】
モトル発生の抑制、及びフレキソ色の再現性の観点から、樹脂粒子及びワックス粒子の合計含有量は第1のインク組成物全質量に対して、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましく、0質量%(含まれないこと)が特に好ましい。
【0058】
(色材)
第1のインク組成物は、色材を少なくとも1種含有する。
色材としては、顔料を用いてもよく、酸性染料を用いてもよい。色材としては顔料を用いることが好ましく、顔料を用いる場合、顔料の表面の少なくとも一部が樹脂(以下、「被覆樹脂」ともいう)によって被覆された構造の、樹脂被覆顔料が好ましい。これにより、第1のインク組成物の分散安定性が向上し、形成される画像の品質が向上する。
【0059】
−顔料−
顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機顔料、及び無機顔料のいずれであってもよい。また、着色顔料としてカーボンブラック顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料及びイエロー顔料を用いてもよい。顔料は、水に殆ど不溶であるか又は難溶である顔料であることが、インク着色性の点で好ましい。
【0060】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。無機顔料の中でも、カーボンブラックが更に好ましい。
【0061】
有機顔料を用いる場合、有機顔料の体積平均粒子径は、フレキソ色再現性の観点から小さい方が好ましいが、耐光性の観点からは大きい方が好ましい。これらを両立する観点から、体積平均粒子径は10nm〜200nmが好ましく、10nm〜150nmがより好ましく、10nm〜120nmがさらに好ましい。また、有機顔料の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ有機顔料を2種以上混合して使用してもよい。
なお、体積平均粒子径は、既述の方法で測定できる。
【0062】
顔料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
顔料の第1のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、第1のインク組成物に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、2質量%〜10質量%がより好ましい。
【0063】
−被覆樹脂−
樹脂被覆顔料における被覆樹脂としては、分散剤が好ましい。
分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。
また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
【0064】
低分子の界面活性剤型分散剤については、例えば、特開2011−178029号公報の段落0047〜0052に記載された公知の低分子の界面活性剤型分散剤を用いることができる。
【0065】
ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物が挙げられる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子等が挙げられる。
【0066】
また、天然物を原料に修飾した親水性高分子化合物では、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子等が挙げられる。
さらに、合成系の親水性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
【0067】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、又はスチレンアクリル酸のホモポリマー、及び他の親水基を有するモノマーとの共重合体などのように、カルボキシ基が導入された水溶性分散剤が親水性高分子化合物として好ましい。
【0068】
ポリマー分散剤のうち、非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部との両方を有するポリマーを用いることができる。親水性構成単位としては、酸性基を有する構成単位であることが好ましく、カルボキシ基を有する構成単位であることがより好ましい。水不溶性樹脂としては、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
より具体的には例えば、特開2005−41994号公報、特開2006−273891号公報、特開2009−084494号公報、特開2009−191134等に記載の水不溶性樹脂を好適に用いることができる。
【0069】
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000であり、さらに好ましくは5,000〜40,000であり、特に好ましくは10,000〜40,000である。
【0070】
重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によって測定された値を意味する。
上記GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて行う。
また、GPCは、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行なう。
検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0071】
ポリマー分散剤は、自己分散性、及び処理液が接触した場合の凝集速度の観点から、カルボキシ基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシ基を有し、酸価が130mgKOH/g以下のポリマーであることが好ましく、酸価は25mgKOH/g〜120mgKOH/gのポリマーがより好ましい。特に、カルボキシ基を有し、かつ酸価が25mgKOH/g〜100mgKOH/gのポリマー分散剤が有効である。
【0072】
顔料(p)と分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、さらに好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
【0073】
顔料を被覆する被覆樹脂の第1のインク組成物全質量に対する含有量は、0.5質量%〜3.0質量%が好ましく、1.0質量%〜2.8質量%がより好ましく、1.2質量%〜2.5質量%が更に好ましい。
【0074】
被覆樹脂と後述の無機塩との質量比(被覆樹脂/無機塩)は、インクの減粘抑制及び画像の面アレ抑制の観点から、10〜250が好ましく、15〜200がより好ましく、30〜150が更に好ましい。
【0075】
樹脂被覆顔料(分散状態での顔料)の体積平均粒子径(二次粒子径)としては、10nm〜200nmが好ましく、10nm〜150nmがより好ましく、10nm〜100nmがさらに好ましい。体積平均粒子径が200nm以下であると、フレキソ色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好になる。体積平均粒子径が10nm以上であると、耐光性が良好になる。また、樹脂被覆顔料の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ樹脂被覆顔料を二種以上混合して使用してもよい。ここで、分散状態での樹脂被覆顔料の体積平均粒子径は、インク化した状態での平均粒子径を示すが、インク化する前段階のいわゆる濃縮インク分散物についても同様である。
【0076】
ここで、樹脂被覆顔料の体積平均粒子径は、前述の樹脂粒子の体積平均粒子径と同様の方法によって求められた値を指す。
【0077】
また、樹脂被覆顔料において顔料を被覆している樹脂は、架橋剤により架橋されていることが好ましい。
即ち、樹脂被覆顔料は、架橋剤によって架橋された樹脂により、顔料の表面の少なくとも一部が被覆されている樹脂被覆顔料であることが好ましい。
架橋剤によって架橋された樹脂により顔料の表面の少なくとも一部が被覆されている樹脂被覆顔料については、特開2012−162655号公報の、段落0029〜0048、段落0110〜0118、及び段落0121〜0129、並びに、特開2013−47311号公報の段落0035〜0071の記載を適宜参照できる。
【0078】
架橋剤としては、樹脂と反応する部位を2つ以上有している化合物であれば、特に限定されないが、中でもカルボキシ基との反応性に優れている点から、好ましくは2つ以上のエポキシ基を有している化合物(2官能以上のエポキシ化合物)である。
架橋剤として、具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられ、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが好ましい。
【0079】
架橋剤としては市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、Denacol EX−321、EX−821、EX−830、EX−850、EX−851(ナガセケムテックス(株)製)等を用いることができる。
【0080】
架橋剤の架橋部位(例えばエポキシ基)と樹脂の被架橋部位(例えばカルボキシ基)のモル比は、架橋反応速度、架橋後の分散液安定性の観点から、1:1〜1:10が好ましく、1:1〜1:5がより好ましく、1:1〜1:1.5が最も好ましい。
【0081】
−酸性染料−
酸性染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料などが挙げられる。
具体的には、特開2010−94864号公報の段落0032〜0034に記載の酸性染料が挙げられる。
【0082】
酸性染料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸性染料の第1のインク組成物中における含有量としては、画像濃度の観点から、第1のインク組成物の全質量に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、2質量%〜10質量%がより好ましい。
【0083】
(水)
第1のインク組成物は水を含有する。
水の含有量には特に制限はないが、水の含有量は、第1のインク組成物の全質量に対し、例えば50質量%以上とすることができる。
上記水の含有量は、第1のインク組成物の全質量に対して、50質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以上75質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上70質量%以下である。
【0084】
(水溶性溶剤)
第1のインク組成物は、水溶性溶剤を含有してもよい。
これにより、インクジェットヘッドからの吐出性及びインク組成物の保存安定性がより向上する。
本明細書中において、「水溶性」とは、水に一定濃度以上溶解できる性質を指す。「水溶性」としては、25℃の水100gに対して5g以上(より好ましくは10g以上)溶解する性質が好ましい。
【0085】
水溶性溶剤としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
水溶性溶剤としては、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等のアルカンジオールなどの多価アルコール類、特開2011−42150号公報の段落0116に記載の、糖類や糖アルコール類、ヒアルロン酸類、炭素原子数1〜4のアルキルアルコール類、グリコールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これら溶剤は、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。多価アルコール類は、乾燥防止剤又は湿潤剤としても有用であり、例えば、特開2011−42150号公報の段落0117に記載の例も挙げられる。また、ポリオール化合物は、浸透剤として好ましく、脂肪族ジオールとしては、例えば、特開2011−42150号公報の段落0117に記載の例が挙げられる。
また、その他の水溶性溶剤としては、例えば、特開2011−46872号公報の段落0176〜0179に記載されている水溶性溶剤、及び特開2013−18846号公報の段落0063〜0074に記載されている水溶性溶剤の中から適宜選択することもできる。
【0086】
第1のインク組成物における水溶性溶剤の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、第1のインク組成物の全質量に対し、10質量%〜60質量%であることが好ましい。
上記総含有量が10質量%以上であることで、ヘッドからの吐出性及び保存安定性がより向上する。
上記総含有量は、第1のインク組成物の全質量に対し、15質量%〜55質量%であることがより好ましく、20質量%〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0087】
(界面活性剤)
第1のインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤を少なくとも1種含有することができる。界面活性剤は、例えば表面張力調整剤として用いることができる。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部とを合わせ持つ構造を有する化合物を有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。さらに、上述したポリマー分散剤を界面活性剤としても用いてもよい。また、フッ素系界面活性剤も好ましく用いることができる。
【0088】
界面活性剤としては、インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体(アセチレングリコール系界面活性剤)がより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができ、これから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの化合物の市販品としては例えば、日信化学工業社のオルフィンE1010などのEシリーズ、サーフィノール(登録商標)シリーズ等を挙げることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤以外の界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤が挙げられ、この中でアニオン系界面活性剤がより好ましい。アニオン系界面活性剤の例としては、Capstone FS−63、Capstone FS−61(Dupont社製)、フタージェント100、フタージェント110、フタージェント150(株式会社ネオス社製)、CHEMGUARD S−760P(Chemguard Inc.社製)等が挙げられる。
【0089】
界面活性剤(表面張力調整剤)を第1のインク組成物に含有する場合、界面活性剤はインクジェット法により第1のインク組成物の吐出を良好に行う観点から、第1のインク組成物の表面張力を20mN/m〜60mN/mに調整できる範囲の量を含有することが好ましく、表面張力の点からはより好ましくは20mN/m〜45mN/mであり、さらに好ましくは25mN/m〜40mN/mである。
ここで、第1のインク組成物の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用い、液温25℃(±1℃)の条件下で測定された値を指す。
【0090】
第1のインク組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の具体的な量には特に限定はないが、第1のインク組成物の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%〜10質量%であり、さらに好ましくは0.2質量%〜3質量%である。
【0091】
(尿素)
第1のインク組成物は尿素を含有することができる。
尿素は、保湿機能が高いため、固体湿潤剤としてインクの望ましくない乾燥又は凝固を効果的に抑制することができる。
さらに第1のインク組成物は、コロイダルシリカと尿素とを含むことでインクジェットヘッド等のメンテナンス性(拭き取り作業性)がより効果的に向上する。
【0092】
第1のインク組成物における尿素の含有量は、メンテナンス性(拭き取り作業性)を向上させる観点等からは、インク組成物の全質量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、3質量%以上10質量%以下が更に好ましい。
【0093】
第1のインク組成物が、尿素と、後述するコロイダルシリカと、を含有する場合、尿素の含有量と、コロイダルシリカの含有量の比率としては特に制限はないが、コロイダルシリカに対する尿素の含有比率(尿素/コロイダルシリカ)が、質量基準で、5〜1000であることが好ましく、10〜500であることがより好ましく、20〜200であることがさらに好ましい。
【0094】
また、第1のインク組成物が、尿素及びコロイダルシリカを含有する場合、尿素の含有量とコロイダルシリカの含有量との組み合わせとしては特に限定されないが、拭き取り性及び画像の定着性をより効果的に両立させる観点からは、下記の組み合わせが好ましい。
即ち、尿素の含有量が1.0質量%以上であって、コロイダルシリカの含有量が0.01質量%以上である組み合わせが好ましく、尿素の含有量が1.0質量%〜20質量%であって、コロイダルシリカの含有量が0.02質量%〜0.5質量%である組み合わせがより好ましく、尿素の含有量が3.0質量%〜10質量%であって、コロイダルシリカの含有量が0.03質量%〜0.2質量%である組み合わせが特に好ましい。
【0095】
(コロイダルシリカ)
第1のインク組成物は、必要に応じ、コロイダルシリカを含有していてもよい。
これにより、インクの連続吐出時の安定性をより向上させることができる。
コロイダルシリカは、平均粒子径が数100nm以下のケイ素を含む無機酸化物の微粒子からなるコロイドである。コロイダルシリカは、主成分として二酸化ケイ素(その水和物を含む)を含み、少量成分としてアルミン酸塩(アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなど)を含んでいてもよい。
またコロイダルシリカには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の無機塩類やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩類が含まれていてもよい。これらの無機塩類及び有機塩類は、例えば、コロイドの安定化剤として作用する。
コロイダルシリカについては、例えば、特開2011−202117号公報の段落0043〜0050の記載を適宜参照することができる。
また、第1のインク組成物は、必要に応じ、コロイダルシリカに代えて、又は、コロイダルシリカに加えて、ケイ酸アルカリ金属塩を含有してもよい。ケイ酸アルカリ金属塩については、特開2011−202117号公報の段落0052〜0056の記載を適宜参照することができる。
【0096】
第1のインク組成物がコロイダルシリカを含む場合、コロイダルシリカの含有量は、インク組成物の全質量に対し、0.0001質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜3質量%がより好ましく、0.02質量%〜0.5質量%がさらに好ましく、0.03質量%〜0.3質量%が特に好ましい。
【0097】
(水溶性高分子化合物)
第1のインク組成物は、必要に応じて、水溶性高分子化合物を少なくとも1種含有してもよい。
水溶性高分子化合物としては特に限定はなく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の公知の水溶性高分子化合物を用いることができる。
また、水溶性高分子化合物としては、処理液に含まれることがある特定高分子化合物、又は特開2013−001854号公報の段落0026〜0080に記載された水溶性高分子化合物も好適である。
【0098】
第1のインク組成物が水溶性高分子化合物を含有する場合、水溶性高分子化合物の含有量は、インク組成物の全質量に対し、0.0001質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜3質量%がより好ましく、0.02質量%〜0.5質量%がさらに好ましく、0.03質量%〜0.3質量%が特に好ましい。
【0099】
(消泡剤)
第1のインク組成物は、必要に応じ、消泡剤を少なくとも1種含有していてもよい。
消泡剤としては、例えばシリコーン系化合物(シリコーン系消泡剤)、プルロニック系化合物(プルロニック系消泡剤)等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン系消泡剤が好ましい。
シリコーン系消泡剤としては、ポリシロキサン構造を有するシリコーン系消泡剤が好ましい。
【0100】
消泡剤としては、市販品を用いることができる。
市販品としては、BYK−012、017、021、022、024、025、038、094(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、KS−537、KS−604、KM−72F(以上、信越化学工業(株)製)、TSA−739(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、オルフィンAF104(日信化学工業(株)製)等が挙げられる。
中でも、シリコーン系消泡剤である、BYK−017、021、022、024、025、094、KS−537、KS−604、KM−72F、TSA−739が好ましく、中でも、インクの吐出安定性の点でBYK−024が最も好ましい。
【0101】
第1のインク組成物が消泡剤を含有する場合、消泡剤の含有量は、インク組成物の全質量に対し、0.0001質量%〜1質量%が好ましく、0.001質量%〜0.1質量%がより好ましい。
【0102】
(無機塩)
第1のインク組成物は、必要に応じ、無機塩を少なくとも1種含有していてもよい。
これにより、形成された画像の面アレが抑制される。
ここで、面アレ(graininess)とは、画像の明るい領域(ハイライト)と暗い領域(シャドウ)の中間の領域(中間調領域)において、インク組成物の濃度の高い部分と低い部分が偏在して、荒れているように見える現象のことをいう。
「面アレ」は、従来の「にじみ(bleed)」や「スジ(streak)」のようなインク組成物の局部的な凝集不足により生じる現象ではなく、基材上に処理液が不均一に分布することによる凝集不均一に起因する現象である。
【0103】
無機塩としては、塩酸塩又は硝酸塩が好ましい。
中でも、インクの減粘抑制及び面アレ抑制に優れるという点から、1価の塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、塩化リチウム、硝酸リチウム、塩化カリウム、又は硝酸カリウムがさらに好ましい。
無機塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1のインク組成物が無機塩を含有する場合、第1のインク組成物中における無機塩の含有量(2種以上の場合には合計の含有量)には特に限定はないが、第1のインク組成物の全質量に対し、0.01質量%〜0.1質量%が好ましく、0.02質量%〜0.1質量%がより好ましく、0.03質量%〜0.1質量%が特に好ましい。
【0104】
(その他の成分)
第1のインク組成物は、上記成分に加えて必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、固体湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0105】
(インク組成物の好ましい物性)
第1のインク組成物の物性には特に制限はないが、以下の物性であることが好ましい。
第1のインク組成物は、凝集速度及び組成物の分散安定性の観点から、25℃(±1℃)におけるpHが7.5以上であることが好ましい。
第1のインク組成物のpH(25℃±1℃)は、pH7.5〜pH13が好ましく、pH7.5〜pH10がより好ましい。なお、pHは、pHメーターWM−50EG(東亜DDK(株)製)を用いて25℃(±1℃)の条件下で測定される値である。
【0106】
第1のインク組成物の粘度としては、凝集速度の観点から、0.5mPa・s〜20mPa・sの範囲が好ましく、4mPa・s〜15mPa・sの範囲がより好ましい。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて25℃(±1℃)の条件下で測定される値である。
【0107】
第1のインク組成物の25℃(±1℃)における表面張力としては、60mN/m以下であることが好ましく、18mN/m〜50mN/mであることがより好ましく、20mN/m〜45mN/mであることがさらに好ましい。第1のインク組成物の表面張力が範囲内であると、着弾後の液滴が基材上で適度に広がるためフレキソ色再現性に有利である。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用い、プレート法により25℃(±1℃)の条件下で測定される値である。
【0108】
<インクジェット法>
第1のインク付与工程において、インクジェット法により10ピコリットル以上の液滴量とする条件で、第1のインク組成物を付与する。
液滴量を10ピコリットル以上として付与することで、ダンボール基材とインクジェットヘッドとの間隔が広い場合においてもインク組成物の着弾干渉を抑制でき、液滴の合一によるモトルの発生を抑制できる。また、インクジェットヘッドとしてノズル密度の低いヘッドを用いても、高いフレキソ色の再現性を実現できる。
【0109】
インクジェット法によるインク組成物の付与は、エネルギーを供与することにより、所望とする基材上に第1のインク組成物を吐出して行う。なお、本発明に好ましいインクジェット法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
【0110】
インクジェット法には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。インクジェット法としては、特に、特開昭54−59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット法を有効に利用することができる。
【0111】
インクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式(シングルパスのプリント方式)とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面に画像形成を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
【0112】
ダンボール基材への画像形成は生産性が求められる為にシングルパスのプリント方式で実施されることが好ましい。プリント速度としては50m/min以上が好ましく、100m/min以上が更に好ましい。
また、ダンボール基材への画像形成の方式としては、ライナーと波状に加工した紙(中しん)とを張り合わせたダンボールに画像形成するポストプリントの方式があり、用紙のロスを防ぐという観点で好ましい。
ポストプリント方式を用いる場合、張り合わされた印刷表面には張り合わせに由来する凹凸が生じたり、また基材が反る事に由来する非平滑性が生じる。そのために、インクジェットヘッドと基材の記録面との間隔は3mm以上が好ましく、5mm以上が更に好ましく、10mm以上が特に好ましい。
【0113】
前述のように、高速で画像形成し、またインクジェットヘッドと基材の記録面との間隔が広い場合にはインクジェットヘッドより吐出されるインクの量が少ない場合には着弾位置ずれが生じ、良好な画像を形成することができない。そのために液滴の量は10ピコリットル以上であり、25ピコリットル以上が更に好ましい。また、液滴の量の上限は、低濃度部分の粒状性の観点から、80ピコリットル以下が好ましく、40ピコリットル以下が更に好ましい。
また、液滴の量の上限が80ピコリットル以下であることで、基材の記録面に付与される液量が多くなりすぎず、モトルの発生が抑制される。
【0114】
画像形成方法の好ましい態様であるシングルパスのプリント方式で画像を形成するためには用紙搬送方向に対して垂直にヘッドを配置されるため、インクジェットヘッドのノズル密度(npi(nozzle per inch))は用紙搬送と垂直方向の印字密度(dpi(dot per inch))と同数となる。そのため前述のモトル発生を避けるため本発明の一実施形態で使用されるインクジェットヘッドのノズル密度は1インチあたり600個(600npi)以下が好ましく、1インチあたり400個(400npi)以下が更に好ましい。
上記ノズル密度を達成するためには1)好ましい範囲のノズル密度を有するインクジェットヘッドを用いる方法、2)好ましい範囲のノズル密度以下のノズル密度を持つインクジェットヘッドを組み合わせて使う方法、3)好ましいノズル密度以下のノズル密度を持つインクジェットヘッドを用紙搬送方向に対して斜めに配置して隣接するノズルを用紙搬送方向と垂直方向に近づける方法、4)好ましい範囲のノズル密度以上のノズル密度を有するヘッドを用いて必要なノズルのみ使用する方法が考えられるが、装置価格を低く抑えるという観点から1)、2)、又は3)の方法を用いることが好ましい。
本発明の画像形成方法に好ましく用いられるヘッドとしてはSG1024ヘッドFUJIFILM Dimatix社製:400npi)、QEヘッド(FUJIFILM Dimatix社製:100npi)、QSヘッド(FUJIFILM Dimatix社製:100npi)、Polarisヘッド(FUJIFILM Dimatix社製:200npi)が挙げられる。SG1024ヘッドは1)の方法で用いられることが好ましく、QEヘッド、及びQSヘッドは2)、並びに3)の方法で用いられることが好ましく、Polarisヘッドは2)の方法で用いられることが好ましい。これらヘッドの最低液滴量は約10ピコリットルのもの、30ピコリットルのもの、80ピコリットルのものがラインナップされており、30ピコリットルのものが用いられることが好ましい。
【0115】
特に、本発明の一実施形態の画像形成方法では、ヘッドのノズル密度が600npi以下であり、10ピコリットル以上の液滴量にて第1のインク組成物を付与する態様が好ましく、ヘッドのノズル密度が400npi以下であり、25ピコリットル以上40ピコリットル以下の液滴量にて第1のインク組成物を付与する態様がより好ましい。
【0116】
フレキソ色の再現性の観点から、第1のインク付与工程において、網点面積率(dot area rate)を100%以上として第1のインク組成物を付与することが好ましく、網点面積率を100%以上400%以下として第1のインク組成物を付与することがより好ましく、網点面積率を100%以上250%以下として第1のインク組成物を付与することがさらに好ましい。
なお、網点面積率とは、単位面積あたりに占める網点の面積の割合を百分率で表したものを意味する。
【0117】
[第2のインク付与工程]
画像形成方法は、樹脂、ワックス、及び水を含み、色材の含有量が第2のインク組成物全質量に対して0.5質量%以下である第2のインク組成物を、ダンボール基材に付与された第1のインク組成物上に付与する第2のインク付与工程を有する。
第2のインク組成物を、前述の第1のインク組成物が付与されたダンボール基材上に付与することで、耐擦性に優れた画像が形成される。
【0118】
<第2のインク組成物>
第2のインク組成物は、樹脂、ワックス、及び水を含み、色材の含有量がインク組成物全質量に対して0.5質量%以下である。
第2にインク組成物は、樹脂及びワックスを含むことで、形成される画像に耐擦性が付与される。
【0119】
第2のインク組成物中における樹脂及びワックスの含有量は、各々第2のインク組成物全質量に対して2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、4質量%以上が特に好ましい。樹脂、及びワックスの含有量が、各々1質量%以上であると画像の耐擦性がより向上する。
また、第2のインク組成物は、色材の含有量がインク組成物全質量に対して0.5質量%以下であり、0.1質量%以下であることが好ましく、0質量%(含まれないこと)が特に好ましい。
【0120】
(樹脂)
第2のインク組成物は、樹脂を少なくとも1種含有する。これにより、画像の耐擦性がより向上する。
【0121】
前述のとおり、樹脂は、ワックスとは異なり、融点を有しないか、又は、170℃を超える融点を有する高分子化合物を意味する。樹脂は、ガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。
樹脂は、インク組成物中の分散安定性の観点から、粒子の形態で含有されることが好ましい。すなわち、樹脂は樹脂粒子の形態で含まれることが好ましい。また、樹脂を含める場合、ラテックスを用いてもよい。
【0122】
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれる樹脂が挙げられる。
これらの樹脂は、さらに変性された樹脂であってもよい。
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニル樹脂(例:塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等)、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂(例:フタル酸樹脂等)、アミノ材料(例:メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等)などが挙げられる。
また、樹脂は、上記に例示された樹脂を構成する構造単位を2種以上含む共重合体であってもよく、2種以上の樹脂の混合物であってもよい。
第2のインク組成物に用いる樹脂は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0123】
上記のうち、樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、又はポリオレフィン樹脂の粒子が好ましく、安定性、及び形成された膜(画像)の膜質の観点から、ウレタン樹脂又はアクリル樹脂が更に好ましく、ウレタン樹脂が特に好ましい。
【0124】
−ウレタン樹脂−
ウレタン樹脂は、ポリマー間で水素結合のような強固な相互作用が可能なウレタン部位と、ポリマー間での相互作用が比較的弱い非ウレタン部位とから形成されており、インクの膜が形成される際に、ミクロな構造として、相互作用が比較的強い部位と比較的弱い部位とがそれぞれ寄り集まって海−島構造を構築しているものと推定され、これによりウレタンが柔軟性を有するものと推定される。
【0125】
ウレタン樹脂は、ジイソシアネート化合物に由来する構造と、ジオール化合物に由来する構造と、を有するポリマーであることが好ましい。
ウレタン樹脂の調製方法は特に限定されないが、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを有機溶剤中でウレタン化させて調製されることが好ましく、更には、インクの水分散性及びインク組成物と記録基材との親和性の観点から、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物及びカルボキシ基を含むジオール化合物の有機塩を有機溶剤中でウレタン化反応させて調製されることがより好ましい。この場合に使用されるジイソシアネート化合物としては、脂肪族、芳香族、又は脂環族の各種公知ジイソシアネート化合物を使用することができる。
【0126】
ジイソシアネート化合物の具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’ −ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’ −ジベンジルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂肪族又は脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0127】
ジオール化合物の具体的な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル化合物、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルジール、シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコールとマレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの多価カルボン酸との脱水縮合反応又はカプロラクトン、ビバロラクトンなどの環状エステルの開環重合反応によって得られるポリエステル、ジオールポリカーボネート及びエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水添ビスフェノールAのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシドなどの低分子グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルなどが挙げられる。
ジオール化合物としては、ポリエーテル構造、ポリエステル構造及びポリカーボネート構造の少なくとも1つを有することが好ましい。
【0128】
ジオール化合物としては、ジオールポリカーボネートに由来する構造を有することがより好ましい。ジオールポリカーボネートは、多価アルコールとジメチルカーボネートとの脱メタノール縮合反応、多価アルコールとジフェニルカーボネートの脱フェノール縮合反応、又は、ジアルコールとエチレンカーボネートの脱エチレングリコール縮合反応などの反応を経ても生成される。これらの反応で使用される多価アルコールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の飽和もしくは不飽和の各種グリコール類、1,4−シクロヘキサンジグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール等が挙げられる。
【0129】
また、他のジオール化合物の例として、上記以外にもヒドロキシ基を含むポリカプロラクトン(ポリカプロラクトンジオール)、ヒドロキシ含有アクリルポリマー、ヒドロキシ含有エポキシド、ポリヒドロキシポリアセタール、ポリヒドロキシポリチオエーテル、ポリシロキサンポリオール、エトキシ化ポリシロキサンポリオール、ポリブタジエンポリオール及び水素化ポリブタジエンポリオール、ポリイソブチレンポリオール、ポリアクリレートポリオール、ハロゲン化ポリエステル及びポリエーテルなどが挙げられる。
【0130】
上記したジオール化合物の中では、ジオールポリカーボネート、ヒドロキシ基を含むポリカプロラクトン、低分子グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルが好ましい。さらに好ましいのは、ジオールポリカーボネート、ヒドロキシ基を含むポリカプロラクトン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールである。特に好ましいのは、ジオールポリカーボネートである。
【0131】
また、ウレタン樹脂にはカルボキシ基を含むジオール化合物を、水溶性付与成分として構成成分に含めることができる。具体的な例としては、ウレタン樹脂を粒子とした場合の水分散性を増強させる観点から、ヒドロキシカルボン酸から誘導される化合物であるジメチロールプロパン酸(DMPA)、ジメチロールブタン酸(DMBA)、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、ジヒドロキシリンゴ酸及びジヒドロキシ酒石酸など、並びにこれらの混合物が挙げられる。
この中でも、ジメチロールプロパン酸(DMPA)及びジメチロールブタン酸(DMBA)が好ましい。
【0132】
ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂を粒子とした場合の分散性向上の観点から、溶液中でウレタン樹脂の対イオンとなる中和剤を加えて塩とすることが好ましい。塩としては特に限定されないが、無機塩及び有機塩(例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物及び酸化物、それらの炭酸塩及び炭酸水素塩、並びにアンモニア又は第一級、第二級、又は第三級アミンの塩)が含まれる。この中でも耐擦性の観点から、有機カチオンを対イオンとする有機塩が好ましい。有機塩としては、例えば、有機アミン塩であるトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアンモニウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルモルホリン、モルホリン、2,2−ジメチルモノエタノールアミン、N、N−ジメチルモノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンの塩が挙げられる。この中でも有機アミン塩が好ましく、さらにトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン及びトリブチルアンモニウムの塩が好ましい。この中でも、トリエチルアミンカチオンを対イオンとするトリエチルアミン塩が最も好ましい。
ウレタン樹脂は、インクの水分散性の点で、ジイソシアネート化合物に由来する構造と、ジオール化合物に由来する構造と、カルボキシ基を含むジオール化合物の有機塩に由来する構造と、を含むことが好ましい。
【0133】
ウレタン樹脂が有する酸価としては、10mmol/g〜200mmol/gが好ましく、10mmol/g〜100mmol/gがさらに好ましく、30mmol/g〜80mmol/gが最も好ましい。酸価が10mmol/g以上であれば、ウレタン樹脂粒子の分散性を高めることができ、酸価が200mmol/g以下であれば、画像の耐擦性を向上できる。
なお、酸価は樹脂粒子1グラム(g)を中和するのに必要な水酸化カリウムのモル数で表される。すなわち、酸価は、JIS規格(JIS K0070:1992)による測定法で求められる値である。
【0134】
ウレタン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、10,000〜200,000であることが好ましく、30,000〜150,000であることがより好ましく、50,000〜120,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量を10,000以上とすることで、高耐擦性を得ることができる。また、重量平均分子量を200,000以下とすることで、高柔軟性を得ることができる。
なお、重量平均分子量は、既述の方法で測定できる。
【0135】
ウレタン樹脂は、第2のインク組成物中における分散性の観点から、粒子の形態であることが好ましい。また、第2のインク組成物をインクジェット法により付与する場合、ウレタン樹脂が粒子の形状であることで、吐出性が向上するため好ましい。
【0136】
−アクリル樹脂−
本明細書中において、アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を含む樹脂を意味する。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位以外の構造単位を含んでいてもよい。
【0137】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有する樹脂であれば、特に制限されない。
アクリル樹脂としては、脂環族基を有する構造単位を、芳香族基を有する構造単位に変更した形態、又は、脂環族基を有する構造単位に加えて芳香族基を有する構造単位を含む形態が好ましい。
いずれの形態においても、脂環族基を有する構造単位及び芳香族基を有する構造単位の総含有量は、ポリマーの全質量に対し、3質量%〜95質量%が好ましく、5質量%〜75質量%がより好ましく、10質量%〜50質量%が更に好ましい。
【0138】
上記脂環族基を有する構造単位としては、単環式(メタ)アクリレート、2環式(メタ)アクリレート、及び3環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素原子数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのうち、定着性、耐ブロッキング性、及び自己分散性ポリマー粒子の分散安定性の観点から、2環式(メタ)アクリレート又は3環式以上の多環式(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0139】
芳香族基を有する構造単位は、芳香族基含有モノマーに由来する構造単位であることが好ましい。
芳香族基含有モノマーとしては、例えば、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー(例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等)、スチレン系モノマー等が挙げられる。
中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、又はフェニル(メタ)アクリレートがより好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート又はベンジル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0140】
アルキル基を有する構造単位は、アルキル基含有モノマーに由来する構造単位であることが好ましい。
アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−、イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
中でも、アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキル基の炭素原子数が1〜4であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、又はブチル(メタ)アクリレートがさらに好ましく、メチル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0141】
以下に、アクリル樹脂の具体例として、例示化合物P−1〜P−5を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
・P−1:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(70/20/10)
・P−2:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(48/42/10)
・P−3:メチルメタクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(65/25/10)
・P−4:イソプロピルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(50/40/10)
・P−5:ブチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(60/30/10)
【0142】
アクリル樹脂は、粒子の形態で用いることが好ましく、転相乳化法により得られた樹脂粒子であることがより好ましく、下記の自己分散性ポリマーの粒子(自己分散性ポリマー粒子)がさらに好ましい。
ここで、自己分散性ポリマーとは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身が有する官能基(特に、カルボキシ基等の酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性ポリマーをいう。
ここで、分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
また、「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部以下であることを指す。
【0143】
転相乳化法としては、例えば、ポリマーを溶媒(例えば、水溶性溶剤等)中に溶解又は分散させた後、界面活性剤を添加せずにそのまま水中に投入し、ポリマーが有する塩生成基(例えば、酸性基)を中和した状態で、攪拌及び混合し、溶媒を除去した後、乳化又は分散状態となった水性分散物を得る方法が挙げられる。
【0144】
自己分散性ポリマー粒子としては、特開2010−64480号公報の段落0090〜0121又は特開2011−068085号公報の段落0130〜0167に記載されている自己分散性ポリマー粒子の中から選択して用いることができる。特に、上記公報に記載されている自己分散性ポリマー粒子の中から、ガラス転移温度が100℃以上であるものを選択して用いることが好ましい。
【0145】
〜樹脂の物性〜
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、画像の耐擦性の観点から、40℃以上であることが好ましい。
樹脂のガラス転移温度の上限は、250℃であることが好ましい。
樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上230℃以下の範囲である。
【0146】
樹脂のガラス転移温度は、通常用いられる方法によって適宜制御することができる。例えば、樹脂を構成するモノマー(重合性化合物)の種類、その構成比率、及び樹脂を構成するポリマーの分子量等を適宜選択することで、樹脂のガラス転移温度を所望の範囲に調整することができる。
【0147】
本明細書中において、樹脂のガラス転移温度は、実測によって得られる測定Tgを適用する。
具体的には、測定Tgとしては、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて通常の測定条件で測定された値を意味する。但し、ポリマーの分解等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは下記の式(1)で計算されるものである。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi) ・・・(1)
ここで、計算対象となるポリマーはi=1からnまでのn種のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。但し、Σはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook (3rd Edition) (J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用する。
【0148】
樹脂を構成するポリマーの重量平均分子量は、3,000〜200,000であることが好ましく、5,000〜150,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることがさらに好ましい。
重量平均分子量が3,000以上であると、水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を200,000以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。重量平均分子量は、既述のGPC法により測定できる。
【0149】
樹脂を構成するポリマーは、自己分散性、及び処理液が接触した場合の凝集速度の観点から、酸価が100mgKOH/g以下のポリマーであることが好ましく、酸価は25mgKOH/g〜100mgKOH/gのポリマーがより好ましい。
【0150】
樹脂を粒子の形態(樹脂粒子)で用いる場合の体積平均粒子径は、1nm〜200nmの範囲が好ましく、1nm〜150nmの範囲がより好ましく、1nm〜100nmの範囲がさらに好ましい。体積平均粒子径が1nm以上であると製造適性が向上する。また、体積平均粒子径が200nm以下であると保存安定性が向上する。また、樹脂粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、樹脂粒子を2種以上混合して使用してもよい。
樹脂粒子の体積平均粒子径は、既述の方法で測定できる。
【0151】
樹脂の第2のインク組成物中における含有量(2種以上である場合には総含有量)には特に制限はないが、第2のインク組成物の全質量に対し、0.3質量%〜10.0質量%が好ましく、0.5質量%〜7.0質量%がより好ましく、1.0質量%〜6.0質量%が更に好ましい。
上記含有量が0.3質量%以上であると、画像の耐擦性をより向上させることできる。
上記含有量が10.0質量%以下であると、インクの吐出性をより向上させることができ、また、低温環境下での析出物の発生を抑制する点でも有利である。
【0152】
(ワックス)
第2のインク組成物は、ワックスの少なくとも1種を含有する。これにより、耐擦性をより向上させることができる。
ワックスは、インク組成物中の分散安定性の観点から、粒子の形態で含有されることが好ましい。すなわち、ワックスはワックス粒子の形態で含むことが好ましい。ワックスを含める場合、ラテックスを用いてもよい。
【0153】
ワックスとしては、例えば、カルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物系、動物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス、カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス、α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体、等の天然ワックスもしくは合成ワックス又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0154】
ワックスは、分散物の形で添加されることが好ましく、例えば、エマルションなどの分散物として第2のインク組成物中に含有することができる。分散物とする場合の溶媒としては水が好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば通常用いられている有機溶媒を適宜選択して分散時に使用することができる。有機溶媒については、特開2006−91780号公報の段落番号0027の記載を参照することができる。
ワックスは、1種単独であるいは複数種を混合して用いることができる。
【0155】
ワックスは上市されている市販品を用いてもよい。市販品の例として、ノプコートPEM17(サンノプコ(株)製)、ケミパール(登録商標)W4005(三井化学(株)製)、AQUACER515、AQUACER593(いずれもビックケミー・ジャパン(株)製)、セロゾール524(中京油脂(株)製)等が挙げられる。
【0156】
上記のうち、好ましいワックスとしては、カルナバワックス、ポリオレフィンワックスが好ましく、画像の耐擦性の点で、特に好ましくはカルナバワックスである。
【0157】
第2のインク組成物における樹脂とワックスとの含有比率としては、樹脂:ワックス=1:5〜5:1の範囲(固形分比)であることが好ましく、樹脂:ワックス=1:2〜2:1の範囲がより好ましく、1.2:1〜1.7:1が特に好ましい。含有比率が上記の範囲内であると、画像の耐擦性に優れる。
【0158】
(水)
第2のインク組成物は水を含有する。
水の含有量には特に制限はないが、水の含有量は、第2のインク組成物の全質量に対し、例えば50質量%以上とすることができる。
上記水の含有量は、第2のインク組成物の全質量に対して、50質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは50質量%以上75質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上70質量%以下である。
【0159】
(水溶性溶剤)
第2のインク組成物は、水溶性溶剤を含有してもよい。
水溶性溶剤としては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
水溶性溶剤の具体例は、第1のインク組成物に用い得る水溶性溶剤と同じものが挙げられる。
【0160】
第2のインク組成物における水溶性溶剤の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、第2のインク組成物の全質量に対し、10質量%〜60質量%であることが好ましい。
上記総含有量が10質量%以上であることで、ヘッドからの吐出性及び保存安定性がより向上する。
上記総含有量は、第2のインク組成物の全質量に対し、15質量%〜55質量%であることがより好ましく、20質量%〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0161】
(界面活性剤)
第2のインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤を少なくとも1種含有することができる。界面活性剤は、例えば表面張力調整剤として用いることができる。
界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部とを合わせ持つ構造を有する化合物を有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及びベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。さらに、上述したポリマー分散剤を界面活性剤としても用いてもよい。また、フッ素系界面活性剤も好ましく用いることができる。
界面活性剤の具体例は、第1のインク組成物に用い得る界面活性剤と同じものが挙げられる。また、好ましい態様も第1のインク組成物に用い得る界面活性剤と同じである。
【0162】
<その他の成分>
第2のインク組成物は、上記成分に加えて必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、尿素、コロイダルシリカ、水性高分子化合物、消泡剤、固体湿潤剤、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0163】
<インク組成物の好ましい物性>
第2のインク組成物の物性には特に制限はないが、以下の物性を有することが好ましい。
第2のインク組成物は、凝集速度及び組成物の分散安定性の観点から、25℃(±1℃)におけるpHが7.5以上であることが好ましい。
インク組成物のpH(25℃±1℃)は、pH7.5〜pH13が好ましく、pH7.5〜pH10がより好ましい。なお、pHは、pHメーターWM−50EG(東亜DDK(株)製)を用いて25℃(±1℃)の環境下で測定される値である。
【0164】
第2のインク組成物の粘度としては、凝集速度の観点から、0.5mPa・s〜20mPa・sの範囲が好ましく、4mPa・s〜15mPa・sの範囲がより好ましい。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて25℃(±1℃)の条件下で測定される値である。
【0165】
第2のインク組成物の25℃(±1℃)における表面張力としては、60mN/m以下であることが好ましく、18mN/m〜50mN/mであることがより好ましく、20mN/m〜45mN/mであることがさらに好ましい。表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用い、プレート法により25℃(±1℃)の条件下で測定される値である。
【0166】
<付与方法>
第2のインク組成物の付与は、例えば、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布は、例えば、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については前述のとおりである。
第2のインク組成物の付与方法としては、塗布にコーターを用いた場合の第1のインク組成物と第2のインク組成物とのコーター上での混合を避けるとの観点から、インクジェット法が好ましい。
【0167】
<第2のインク付与工程における好ましい態様>
第2のインク付与工程において、第2のインク組成物中の樹脂が樹脂粒子であり、第2のインク組成物中のワックスがワックス粒子であり、第2のインク組成物がインクジェット法により付与される態様が好ましい。
上記のように、第2のインク組成物をインクジェット法により付与することは、塗布にコーターを用いた場合の第1のインク組成物と第2のインク組成物とのコーター上での混合を避けるとの観点から好ましく、樹脂粒子及びワックス粒子であることは、インクジェット法により吐出しやすい粘度に第2にインク組成物の粘度を調整しやすい点で有利である。
【0168】
[乾燥工程]
画像形成方法は、処理液付与工程、第1のインク付与工程、及び第2にインク付与工程のそれぞれの工程の後に、各工程で付与される処理液、第1のインク組成物、又は第2のインク組成物を乾燥させる乾燥工程を有していてもよい。
本工程では、上記画像を加熱乾燥させることが好ましい。
加熱乾燥を行うための手段としては、ヒータ等の公知の加熱手段、ドライヤ等の公知の送風手段、及び、これらを組み合わせた手段が挙げられる。
加熱乾燥を行うための方法としては、例えば、基材の画像形成面(記録面)とは反対側からヒータ等で熱を与える方法、基材の画像形成面に温風又は熱風をあてる方法、基材の画像形成面又は画像形成面とは反対側から、赤外線ヒータで熱を与える方法、これらの複数を組み合わせた方法、等が挙げられる。
【0169】
加熱乾燥の際の加熱温度は、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上が特に好ましい。
加熱温度の上限には特に制限はないが、例えば100℃以下が好ましく90℃以下がより好ましい。
加熱乾燥の時間には特に制限はないが、0.1秒〜30秒が好ましく、0.2秒〜20秒がより好ましく、0.5秒〜10秒が特に好ましい。
【0170】
[インクジェット画像形成装置]
本発明の一実施形態の画像形成方法に用いることができる画像形成装置には、特に制限はなく、特開2010−83021号公報、特開2009−234221号公報、特開平10−175315号公報等に記載の公知の画像形成装置を用いることができる。
【0171】
以下、本発明の一実施形態の画像形成方法に用いることができる画像形成装置の一例について、図1又は図2を参照して説明する。
次に、本発明の一実施形態の画像形成方法を実施するのに好適なインクジェット画像形成装置の一例を図1を参照して具体的に説明する。
図1は、インクジェット画像形成装置全体の構成例を示す概略構成図である。
【0172】
図1に示すように、インクジェット画像形成装置は、基材の搬送方向(図中の矢印方向)に向かって順次、処理液を塗布するローラ材として、アニロックスローラ20及びこれに当接する塗布ローラ22を備えた処理液付与部12と、付与された処理液を乾燥させる加熱手段(不図示)を備えた処理液乾燥ゾーン13と、各種インク組成物を吐出するインク吐出部14と、吐出されたインク組成物を乾燥させるインク乾燥ゾーン15とが配設されている。
【0173】
このインクジェット画像形成装置に供給された基材は、基材が装填されたケースから基材を給紙する給紙部から、搬送ローラによって、処理液付与部12、処理液乾燥ゾーン13、インク吐出部14、インク乾燥ゾーン15と順に送られて集積部に集積される。搬送は、搬送ローラによる方法のほか、ドラム状部材を用いたドラム搬送方式やベルト搬送方式、ステージを用いたステージ搬送方式などを採用してもよい。
【0174】
複数配置された搬送ローラのうち、少なくとも1つのローラはモータ(不図示)の動力が伝達された駆動ローラとすることができる。モータで回転する駆動ローラを定速回転することにより、基材は所定の方向に所定の搬送量で搬送されるようになっている。
【0175】
処理液付与部12には、処理液が貯留された貯留皿に一部を浸漬させて配されたアニロックスローラ20と、アニロックスローラ20に当接された塗布ローラ22と、が設けられている。アニロックスローラ20は、基材の記録面と対向配置された塗布ローラ22に予め定められた量の処理液を供給するためのローラ材である。アニロックスローラ20から適量が供給された塗布ローラ22によって基材の上に処理液が均一に塗布されるようになっている。
塗布ローラ22は、対向ローラ24と対をなして基材を搬送可能に構成されており、基材は、塗布ローラ22と対向ローラ24との間を通って処理液乾燥ゾーン13に送られる。
【0176】
処理液付与部12の基材搬送方向の下流側には、処理液乾燥ゾーン13が配置されている。処理液乾燥ゾーン13は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段を用いて構成することができる。加熱手段は、基材の処理液付与面とは反対側(例えば、基材を自動搬送する場合は基材を載せて搬送する搬送機構の下方)にヒータ等の発熱体を設置する方法や、基材の処理液付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0177】
また、基材の種類(材質、厚み等)及び環境温度等によって、基材の表面温度は変化するため、基材の表面温度を計測する計測部と計測部で計測された基材の表面温度の値を加熱制御部にフィードバックする制御機構を設けて温度制御しながら処理液を付与することが好ましい。基材の表面温度を計測する計測部としては、接触又は非接触の温度計が好ましい。
また、溶媒除去ローラ等を用いて溶媒除去を行なってもよい。他の態様として、エアナイフで余剰な溶媒を基材から取り除く方式も用いられる。
【0178】
インク吐出部14は、処理液乾燥ゾーン13の基材搬送方向下流側に配置されている。インク吐出部14には、第1のインク組成物であるブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、及びイエロー(Y)の各色インクを貯留するインク貯留部の各々と繋がる記録用ヘッド(インク吐出用ヘッド)30K、30C、30M、及び30Yが配置されている。不図示の各インク貯留部には、各色相に対応する色材と水とを含有する第1のインク組成物が貯留されており、画像の記録に際して必要に応じて各インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yに供給されるようになっている。また、インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yの搬送方向下流側には、図1に示すように、第2のインク組成物を吐出可能なように、第2のインク組成物吐出用の記録ヘッド30A、及び30Bが設けられている。
【0179】
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、及び30Yは、基材の記録面と対向配置された吐出ノズルから、それぞれ画像に対応するインクを吐出する。これにより、基材の記録面上に各色インクが付与され、カラー画像が記録される。
【0180】
インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bはいずれも、基材上に記録される画像の最大記録幅(最大記録幅)にわたって多数の吐出口(ノズル)が配列されたフルラインヘッドとなっている。基材の幅方向(基材搬送面において搬送方向と直交する方向)に短尺のシャトルヘッドを往復走査しながら記録を行なうシリアル型のものに比べて、高速で基材に画像形成を行なうことができる。本発明の一実施形態においては、シリアル型での画像形成、又は比較的高速画像形成が可能な方式、例えば1回の走査で1ラインを形成するシングルパス方式での記録のいずれを採用してもよいが、本発明の一実施形態の画像形成方法によればシングルパス方式でも再現性の高い高品位の画像が得られる。
【0181】
ここでは、インク吐出用ヘッド30K、30C、30M、30Y、30A、及び30Bは、全て同一構造になっている。
図示は省略するが、これらのインク吐出用ヘッドは、ノズルプレートを備える。ノズルプレートには、二次元に配列された吐出孔が設けられている。
【0182】
処理液の付与量とインク組成物の付与量とは、必要に応じて調節することが好ましい。例えば、基材に応じて、処理液とインク組成物とが混合してできる凝集物の粘弾性等の物性を調節する等のために、処理液の付与量を変えてもよい。
【0183】
インク乾燥ゾーン15は、インク吐出部14の基材搬送方向下流側に配置されている。インク乾燥ゾーン15は、処理液乾燥ゾーン13と同様に構成することができる。
【0184】
また、インクジェット画像形成装置には、給紙部から集積部までの搬送路に、基材に加熱処理を施す加熱手段を配置することもできる。例えば、処理液乾燥ゾーン13の上流側や、インク吐出部14とインク乾燥ゾーン15との間、などの所望の位置に加熱手段を配置することで、基材を所望の温度に昇温させることにより、乾燥、及び定着を効果的に行なうようにすることが可能である。
【0185】
次に、本発明の一実施形態の画像形成方法を実施するのに好適なインクジェット画像形成装置の一例を図2を参照して具体的に説明する。
図2は、ロール搬送型インクジェット画像形成装置の構成例を示す概略構成図である。
【0186】
図2に示すように、ロール搬送型インクジェット画像形成装置は、ダンボール基材101を搬送するリニアスライダー搬送ユニット102、処理液を塗布するフレキソコーター103、第1のインク組成物を吐出するイエローインク用ヘッド(HY)104、マゼンタインク用ヘッド(HM)105、シアンインク用ヘッド(HC)106、及びブラックインク用ヘッド(HK)107、並びに第2のインク組成物を吐出するクリアインク用ヘッド(HCL)108を備えている。
【0187】
このインクジェット画像形成装置に供給されたダンボール基材101は、リニアスライダー搬送ユニット102上に固定され、リニアスライダー搬送ユニット102により搬送方向(図中の矢印方向)に搬送される。
ダンボール基材101が、フレキソコーター103、イエローインク用ヘッド(HY)104、マゼンタインク用ヘッド(HM)105、シアンインク用ヘッド(HC)106、ブラックインク用ヘッド(HK)107、又はクリアインク用ヘッド(HCL)108に搬送されたとき、フレキソコーターでは処理液が塗布され、各ヘッドでは第1のインク組成物又は第2のインク組成物が付与される。
【0188】
各ヘッドは、対応する各色のインク(例えば、イエローインク用ヘッドであればイエローインク)を貯留するインク貯留部と各々繋がれている。不図示の各インク貯留部には、各色相に対応する第1のインク組成物又は第2のインク組成物が貯留されており、画像の形成に際して必要に応じて各インクのヘッドに供給されるようになっている。
【0189】
各ヘッドは、基材の記録面と対向配置された吐出ノズルから、それぞれ画像に対応するインクを吐出する。これにより、ダンボール基材の記録面上に各インクが付与され、画像が形成される。
【0190】
〔ダンボール〕
本発明のダンボールは、前述の画像形成方法により形成された画像を有する。そのため、フレキソ色再現性、及び耐擦性に優れ、モトルの発生が抑制された画像を有するダンボールとなる。
【実施例】
【0191】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0192】
〔処理液〕
下記組成の成分を混合することで処理液1を調製し処理液として用いた。
処理液1の粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて測定し、25℃において2.9mPa・sであった。
処理液1の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定し、25℃において41mN/mであった。
処理液1のpHは、pHメーターWM−50EG(東亜DDK(株)製)を用いて測定し、25℃においてpH0.78であった。
【0193】
−処理液1の組成−
・TPGmME(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル) … 4.8質量%
・DEGmBE(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)… 4.8質量%
・マロン酸 … 9.0質量%
・リンゴ酸 … 8.0質量%
・プロパントリカルボン酸 … 2.5質量%
・リン酸85質量%水溶液 … 6.0質量%
・消泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSA−739(15質量%);エマルジョン型シリコーン消泡剤) … シリコーンオイルの量として0.01質量%
・ベンゾトリアゾール … 1.0質量%
・イオン交換水 … 合計で100質量%となる残量
【0194】
〔第1のインク組成物の調製〕
下記組成の成分を混合し、ミキサー(シルバーソン社製のL4R)を用いて室温で5,000回転/分にて20分撹拌し、シアンインクC1(第1のインク組成物)を作製した。 作製したインクの粘度はVISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて測定し、25℃において8mPa・sであった。
作製したインクの表面張力はAutomatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定し、25℃において30mN/mであった。
【0195】
<シアンインクC1の組成>
・シアン顔料分散物:Projet Cyan APD 1000(富士フイルムイメージングカラーラント(株)製、顔料濃度14質量%) … 21部
・水溶性溶剤:グリセリン(和光純薬工業(株)製) … 40部
・水溶性溶剤:ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(和光純薬工業(株)製) … 9部
・界面活性剤:サーフィノール(登録商標)104 PG50(大東化学(株)製、固形分濃度 50質量%) … 0.6部
・イオン交換水 … 合計量が100部となる残部
【0196】
シアンインクC1と同様の方法で下記表1の組成となるように、表1に示す市販の顔料分散物を用いて、マゼンタインクM1、イエローインクY1、ブラックインクK1を作製した。
また、同様の方法で下記表1の組成となるように、シアンインクC0、マゼンタインクM0、イエローインクY0、ブラックインクK0を作製した。なお、下記表1において「−」は、当該成分を含有しないことを示す。表1中の数値は各組成の含有量(単位:質量部)を表す。また、表1中の濃度の単位は質量%である。
【0197】
〔第2のインク組成物の調製〕
下記組成の成分を混合し、ミキサー(シルバーソン社製のL4R)を用いて室温で5,000回転/分にて20分撹拌し、クリアインクCL1(第2のインク組成物)を作製した。
作製したインクの粘度はVISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて測定し、25℃において8mPa・sであった。
作製したインクの表面張力はAutomatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて測定し、25℃において表面張力は30mN/mであった。
【0198】
<クリアインクCL1の組成>
・水溶性溶剤:グリセリン(和光純薬工業(株)製)… 27部
・ポリエチレングリコール(平均分子量8000):PEG8000(MP Biomedicals,Inc.社製) … 4部
・ウレタンラテックス:WBR2101(大成ファインケミカル(株)製、固形分濃度26質量%、融点を有しない) … 23部
・カルバナワックス:セロゾール(登録商標)524(中京油脂(株)製、固形分濃度30質量%、融点83℃)… 13部
・界面活性剤:サーフィノール(登録商標)104 PG50(大東化学(株)製、固形分濃度50質量%)… 0.6部
・イオン交換水 … 合計量で100部となる残部
【0199】
クリアインクCL1と同様の方法で下記表1の組成となるようにクリアインクCL2、CL3、及びCL4を作製した。
【0200】
【表1】
【0201】
表1中の成分の詳細は以下の通りである。
・Projet Magenta APD 1000(マゼンタ色の顔料分散物、富士フイルムイメージングカラーラント(株)製)
・Projet Black APD 1000(ブラック色の顔料分散物、富士フイルムイメージングカラーラント(株)製)
・Projet Yellow APD 1000(イエロー色の顔料分散物、富士フイルムイメージングカラーラント(株)製)
・PEG8000(ポリエチレングリコール(平均分子量8000)、MP Biomedicals, Inc.社製)
・WBR2101(ウレタンラテックス(樹脂粒子)、融点を有しない、体積平均粒子径50nm、大成ファインケミカル(株)製)
・EM−94(アクリルラテックス(樹脂粒子)、融点を有しない、体積平均粒子径3nm、大東化学(株)製)
・セロゾール524(カルバナワックス(ワックス粒子)、融点83℃、体積平均粒子径65nm、中京油脂(株)製)
・サーフィノール(登録商標)104 PG50(界面活性剤、大東化学(株)製)
【0202】
−融点の測定−
上記ワックス粒子及び樹脂粒子の各々の融点を、以下のようにして測定した。
固形分換算で0.5gのワックス粒子の水分散物を、50℃で4時間減圧乾燥させ、ワックス粒子(固形分)を得た。得られたワックス粒子の融点を、(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて測定した。
ワックス粒子(固形分)5mgをアルミパンに密閉し、窒素雰囲気下、ワックス粒子(固形分)に対し、以下の温度プロファイルによる温度変化を施した。以下の温度プロファイルにおける、2回目の昇温時のDSCのピークトップ(吸熱ピーク)の値を、ワックス粒子の融点とした。
樹脂粒子の融点も、ワックス粒子の融点の測定と同様にして測定した。その結果、樹脂粒子は、上記DSCのピークトップ(吸熱ピーク)が観測されなかった。つまり、樹脂粒子の融点は観測されず、融点を有しない。
【0203】
−融点の測定における温度プロファイル−
30℃→−50℃(50℃/分で冷却)
−50℃→220℃(20℃/分で昇温)
220℃→−50℃(50℃/分で冷却)
−50℃→220℃(20℃/分で昇温)
【0204】
−体積平均粒子径の測定−
上記ワックス粒子及び樹脂粒子の各々の体積平均粒子径を、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて動的光散乱法によって測定した。
【0205】
〔画像形成〕
(実施例1)
図2に示すインクジェット画像形成装置を用意した。
画像形成装置は、フレキソコーター103(塗布液量1ml/m)、リニアスライダー搬送ユニット102(1m/min〜50m/min可変)、イエローインク用ヘッド(HY)104(FUJIFILM Dimatix社製SG1024、液滴体積:30ピコリットル、ノズル密度400npi(400個/inch)、ノズル数1024個)、マゼンタインク用ヘッド(HM)105(FUJIFILM Dimatix社製SG1024、液滴体積:30ピコリットル、ノズル密度400npi(400個/inch)、ノズル数1024個)、シアンインク用ヘッド(HC)106(FUJIFILM Dimatix社製SG1024、液滴体積:30ピコリットル、ノズル密度400npi(400個/inch)、ノズル数1024個)、ブラックインク用ヘッド(HK)107(FUJIFILM Dimatix社製SG1024、液滴体積:30ピコリットル、ノズル密度400npi(400個/inch)、ノズル数1024個)、クリアインク用ヘッド(HCL)108(FUJIFILM Dimatix社製SG1024、液滴体積:30ピコリットル、ノズル密度400npi(400個/inch)、ノズル数1024個)を備えている。
各ヘッドと基材との距離は5mmに設定した。
処理液、第1のインク組成物、及び第2にインク組成物は、下記表3に示す組み合わせ(水準1〜水準12)で用いた。
【0206】
ダンボール基材として、以下のダンボール1を用いた。
ダンボール1は、ダンボール原紙としてKライナー(レンゴー(株)製)、中しんとして一般中しん(王子マテリア(株)製)を用い、段の種類がAフルートである両面ダンボールである。
ダンボール1の表面のLab値は、L=61.41、a=8.39、b=29.44であった。Lab値は、GretagMacbeth社製のSpectrolinoにより測定した。
【0207】
(処理液付与工程)
上記のダンボール基材をロール搬送型インクジェット画像形成装置のリニアスライダー搬送ユニット上に固定し、次いでダンボール基材が固定されたリニアスライダー搬送ユニットを搬送方向に50m/minで定速移動させながら、フレキソコーターにより処理液1を1ml/mとなるように塗布した。なお、上記の処理液1を1ml/m塗布した場合、ダンボール基材上の酸性化合物の付与量は0.25g/mとなる。
【0208】
(インク付与工程)
−画像形成条件1−
処理液1が塗布されたダンボール基材を、リニアスライダー搬送ユニットを速度50m/minで定速移動させながら、ダンボール基材の処理液が付与された面に対し、上記ヘッド(HY、HM、HC、及びHK)から上記で調製された第1のインク組成物を、それぞれイエローインクを網点面積率50%、マゼンタインクを網点面積率50%、シアンインクを網点面積率50%、ブラックインクを網点面積率100%で吐出した。クリアインク(第2のインク組成物)を用いる本発明の場合には、クリアインクを網点面積率100%で吐出した。インク組成物の付与は5cm×20cmのサイズで行った。以上により、画像サンプルを得た。
【0209】
−画像形成条件2−
処理液1が塗布されたダンボール基材を、リニアスライダー搬送ユニットを速度50m/minで定速移動させながら、ダンボール基材の処理液が付与された面に対し、上記ヘッド(HY、HM、HC、及びHK)から上記で調製された第1のインク組成物を吐出して複数の異なる色のパッチからなるチャートを出力して画像サンプルを得た。クリアインクを用いる場合には網点面積率100%で吐出した。
各パッチにおける色は、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、及びブラックインクの網点面積率を、それぞれ1%から100%まで1%ごとに変えて吐出することで調整した。なお、1つのパッチのサイズは、1cm×1cmとした。
【0210】
−画像形成条件3−
画像形成条件2で出力したチャートのパッチの中から、最も2006年度版「段ボール印刷用インキ見本帳」の標準色の「D 240 ちゃ」と近似した色を5cm×20cmのサイズで画像形成した。なお、このときの搬送速度は50m/minであった。
【0211】
〔評価〕
(耐擦性)
画像形成条件1で作製したサンプルを、日本T.M.C(株)製学振型試験機を用いJIS P 8136に従い、500回の擦りテストを実施し、下記の評価基準に従い耐擦性を評価した。擦り紙としては白ライナー(王子マテリア(株)製)を用いた。評価結果は下記の表3に示す。
なお、色移りの濃度はGretagMacbeth社製のSpectrolinoにより測定した。
【0212】
〜評価基準〜
1:ダンボール側に傷が見られず、白ライナー側の色移り濃度が0.05以下である。
2:ダンボール側に傷が見られず、白ライナー側の色移り濃度が0.05を超え0.1未満である。
3:ダンボール側にわずかに傷が見られ、白ライナー側の色移り濃度が0.1以上である。
4:ダンボール側に大きく傷が見られ、白ライナー側の色移り濃度が0.1以上である。
5:ダンボール側の地色が見え、白ライナー側の色移り濃度が0.1以上である。
【0213】
(フレキソ近似性)
画像形成条件2で作製したサンプルの全ての色パッチを、GretagMacbeth社製のSpectrolinoで測定し、全国段ボール工業組合連合会・全日本紙器段ボール箱工業組合連合会・印刷インキ工業連合会の関連三団体から発行された2006年度版「段ボール印刷用インキ見本帳」の標準色(白を除く17色)(下記表2)との色差を比較し、フレキソ近似性(フレキソ色再現性)を下記の評価基準に従い評価した。評価結果は下記の表3に示す。
【0214】
【表2】
【0215】
〜評価基準〜
1:17色中、色パッチと標準色との色差が最も大きいもののΔEの値が、ΔE≦5である。
2:17色中、色パッチと標準色との色差が最も大きいもののΔEの値が、5<ΔE≦7である。
3:17色中、色パッチと標準色との色差が最も大きいもののΔEの値が、7<ΔE≦10である。
4:17色中、色パッチと標準色との色差が最も大きいもののΔEの値が、ΔE>10である。
【0216】
(モトル)
画像形成条件3で形成された画像の面内均一性を評価した。ミクロ濃度測定機(2405型マイクロデンシトメーター(サカタインクスエンジニアリング(株)製))で面内の10箇所の濃度を測定し、最大値と最小値の色差を算出することで面内の色差とし、下記の評価基準に従いモトルの評価の指標とした。評価結果は下記の表3に示す。なお、面内の色差の値が小さいほどモトルの発生が抑制されていることを示す。
【0217】
〜評価基準〜
1:面内の色差がΔE≦3である。
2:面内の色差が3<ΔE≦5である。
3:面内の色差が5<ΔE≦7である。
4:面内の色差が7<ΔE≦10である。
5:面内の色差がΔE>10であ。
【0218】
【表3】
【0219】
(実施例2)
実施例1においてダンボール基材をダンボール2に変えた以外は同様にして、各評価を行った。
ダンボール2は、ダンボール原紙としてCライナー(王子マテリア(株)製)、中しんとして一般中しん(王子マテリア(株)製)を用い、段の種類がAフルートである両面ダンボールである。
ダンボール2の表面のLab値はL=65.09、a=7.02、b=24.4であった。なお、Lab値の測定にはGretagMacbeth社製のSpectrolinoにより測定した。
【0220】
(実施例3)
実施例1においてダンボール基材をダンボール3に変えた以外は同様にして、各評価を行った。
ダンボール3は、ダンボール原紙として軽量ライナー(王子マテリア(株)製)、中しんとして一般中しん(王子マテリア(株)製)を用い、段の種類がAフルートである両面ダンボールである。
ダンボール3の表面のLab値はL=63.76、a=7.55、b=24.88であった。なお、Lab値の測定にはGretagMacbeth社製のSpectrolinoにより測定した。
【0221】
実施例2及び実施例3においても実施例1と同様の結果が得られた。
以上のことから、画像形成に、処理液を用い、色材を含む第1のインク組成物と、樹脂及びワックスを含む第2のインク組成物と、を別々に付与することで、耐擦性に優れ、フレキソ色再現性が高く、モトルの発生が抑制された画像が得られることがわかる。
また、第1のインク組成物中の樹脂としてウレタン樹脂を用いた表3中の水準9の本発明と第1のインク組成物中の樹脂としてアクリル樹脂を用いた表3中の水準12の本発明との比較により、樹脂としてウレタン樹脂を用いることでより耐擦性の評価結果に優れることがわかる。
一方、表3中の水準7の比較例のように、色材を含み、かつ、樹脂及びワックスの合計含有量が2質量%を超えるインク組成物を用いた場合、フレキソ色再現性の評価結果に劣ることがわかる。
また、表3中の水準8の比較例のように、画像形成に処理液を用いないと、フレキソ色再現性及びモトルの評価結果に劣ることがわかる。
【0222】
(実施例4)
実施例1におけるシアンインクC1と同様の方法で以下の表4に示すシアンインクC2、マゼンタインクM2、イエローインクY2、ブラックインクK2を作製した。下記表4において「−」は、当該成分を含有しないことを示す。表4中の数値は各組成の含有量(単位:質量部)を表す。また、表4中の濃度の単位は質量%である。
【0223】
【表4】
【0224】
実施例1中の水準9において、イエローインクY1、マゼンタインクM1、シアンインクC1、及びブラックインクK1を、上記表4に示すイエローインクY2、マゼンタインクM2、シアンインクC2、及びブラックインクK2に変えた以外は同様に画像形成(水準13)を行い、各種評価を行った。結果を表5に示す。
【0225】
【表5】
【0226】
(比較例)
上記組成の処理液1をイオン交換水にて100倍に希釈し、pH2.3の処理液2を得た。
この処理液2を用いて、実施例1中の水準9と同様に画像形成(水準14)を行い、各種評価を行った。結果を表6に示す。
なお、処理液付与工程における処理液2の塗布量は、上記の実施例1と同様に約1ml/mである。処理液2を1ml/m塗布した場合、ダンボール基材上の酸性化合物の付与量は0.0025g/mとなる。
【0227】
【表6】
【0228】
2015年6月3日に出願された日本国特許出願2015−113396号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1
図2