(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
物体側から順に、変倍の際に像面に対して固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔を変化させて移動する複数の移動レンズ群と、変倍の際に像面に対して固定されている正の屈折力を有する最終レンズ群と、を備え、
前記複数の移動レンズ群において、少なくとも2つの移動レンズ群はともに負の屈折力を有し、
最も物体側の負の屈折力を有する前記移動レンズ群を前側負レンズ群としたとき、該前側負レンズ群は2枚以上の負レンズを有し、
最も像側の負の屈折力を有する前記移動レンズ群を後側負レンズ群としたとき、該後側負レンズ群は、負レンズと、正レンズと、を備え、
下記条件式(1)〜(3)、(5)および(6)全てを満足することを特徴とするズームレンズ。
2.395<NF2+0.012×νF2<2.495 (1)
−35<νF1−νF2<−16 (2)
0.12<NF1−NF2<0.34 (3)
2.395<NRn+0.012×νRn<2.495 (5)
25<νRn−νRp<35 (6)
ただし、
NF2:前記前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズのd線に対する屈折率
νF2:前記前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズのd線基準のアッベ数
νF1:前記前側負レンズ群内の最も物体側の負レンズのd線基準のアッベ数
NF1:前記前側負レンズ群内の最も物体側の負レンズのd線に対する屈折率
NRn:前記後側負レンズ群の前記負レンズのd線に対する屈折率
νRn:前記後側負レンズ群の前記負レンズのd線基準のアッベ数
νRp:前記後側負レンズ群の前記正レンズのd線基準のアッベ数
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記分野のカメラにおいては、より高いズーム比を有し、より高解像の画像を取得可能なことが望まれている。高解像の画像を得るためには搭載されるレンズ系の色収差が良好に補正されている必要があるが、そうしようとするとレンズ枚数が多くなりやすく、レンズ系の大型化を招いてしまう。レンズ枚数が抑えられて小型に構成可能であり、かつ高ズーム比と高性能が実現されたレンズ系が要望されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のレンズ系は、第1レンズ群のレンズ枚数が多く小型化が図られていない、あるいはズーム比が不十分である。特許文献2に記載のレンズ系は、近年の要望に応えるためにはさらに高いズーム比を有することが望まれる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、高ズーム比を確保しつつ、小型に構成可能であり、色収差が良好に補正されて高い光学性能を有するズームレンズ、およびこのズームレンズを備えた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のズームレンズは、物体側から順に、変倍の際に像面に対して固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔を変化させて移動する複数の移動レンズ群と、変倍の際に像面に対して固定されている正の屈折力を有する最終レンズ群と、を備え、複数の移動レンズ群において、少なくとも
2つの移動レンズ群は
ともに負の屈折力を有し、最も物体側の負の屈折力を有する移動レンズ群を前側負レンズ群としたとき、前側負レンズ群は2枚以上の負レンズを有し、
最も像側の負の屈折力を有する移動レンズ群を後側負レンズ群としたとき、後側負レンズ群は、負レンズと、正レンズと、を備え、下記条件式(1)〜(3)
、(5)および(6)全てを満足することを特徴とする。
2.395<NF2+0.012×νF2<2.495 (1)
−35<νF1−νF2<−16 (2)
0.12<NF1−NF2<0.34 (3)
2.395<NRn+0.012×νRn<2.495 (5)
25<νRn−νRp<35 (6)
ただし、
NF2:前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズのd線に対する屈折率
νF2:前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズのd線基準のアッベ数
νF1:前側負レンズ群内の最も物体側の負レンズのd線基準のアッベ数
NF1:前側負レンズ群内の最も物体側の負レンズのd線に対する屈折率
NRn:前記後側負レンズ群の前記負レンズのd線に対する屈折率
νRn:前記後側負レンズ群の前記負レンズのd線基準のアッベ数
νRp:前記後側負レンズ群の前記正レンズのd線基準のアッベ数
【0008】
本発明のズームレンズにおいては、下記条件式(4)、(1−1)〜(4−1)のうちの少なくとも1つを満足することが好ましい。
0.93<fF2/fGNF<1.1 (4)
2.395<NF2+0.012×νF2<2.455 (1−1)
−33<νF1−νF2<−18 (2−1)
0.13<NF1−NF2<0.31 (3−1)
0.94<fF2/fGNF<1.05 (4−1)
ただし、
fF2:前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズの焦点距離
fGNF:前側負レンズ群の焦点距離
NF2:前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズのd線に対する屈折率
νF2:前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズのd線基準のアッベ数
νF1:前側負レンズ群内の最も物体側の負レンズのd線基準のアッベ数
NF1:前側負レンズ群内の最も物体側の負レンズのd線に対する屈折率
【0009】
本発明のズームレンズにおいては
、下記条件式(5−1)および/または(6−1)を満足することがより好ましい
。
2.395<NRn+0.012×νRn2<2.455 (5−1)
27<νRn−νRp<30 (6−1)
ただし、
NRn:後側負レンズ群の負レンズのd線に対する屈折率
νRn:後側負レンズ群の負レンズのd線基準のアッベ数
νRp:後側負レンズ群の正レンズのd線基準のアッベ数
【0010】
上記の後側負レンズ群が、負レンズと、正レンズと、を備える場合、下記条件式(7)を満足することが好ましく、下記条件式(7−1)を満足することがより好ましい。
0.35<fRn/fGNR<0.51 (7)
0.37<fRn/fGNR<0.48 (7−1)
ただし、
fRn:後側負レンズ群の負レンズの焦点距離
fGNR:後側負レンズ群の焦点距離
【0011】
本発明のズームレンズにおいては、上記の複数の移動レンズ群は、負の屈折力を有するレンズ群と、負の屈折力を有するレンズ群と、を備える構成としてもよく、あるいは、上記の複数の移動レンズ群は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群と、負の屈折力を有するレンズ群と、負の屈折力を有するレンズ群と、を備える構成としてもよく、あるいは、上記の複数の移動レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有するレンズ群と、正の屈折力を有するレンズ群と、負の屈折力を有するレンズ群と、を備える構成としてもよい。
【0012】
本発明の撮像装置は、本発明のズームレンズを備えたものである。
【0013】
なお、本明細書の「〜から実質的になり」および「〜から実質的になる」とは、構成要素として挙げたもの以外に、実質的にパワーを有さないレンズ、絞りおよび/またはカバーガラス等のレンズ以外の光学要素、レンズフランジ、レンズバレル、および/または手振れ補正機構等の機構部分等を含んでもよいことを意図するものである。
【0014】
なお、上記の「〜レンズ群」は、必ずしも複数のレンズから構成されるものだけでなく、1枚のレンズのみで構成されるものも含まれる。上記の「正の屈折力を有する〜レンズ群」および「負の屈折力を有する〜レンズ群」は、対応するレンズ群全体としての屈折力の符号をそれぞれ表すものである。上記のレンズ群の屈折力の符号およびレンズの屈折力の符号は、非球面が含まれているものは近軸領域で考えることとする。上記条件式は全て断りがない限り、d線(波長587.6nm、nm:ナノメートル)に関するものである。
【0015】
なお、あるレンズのg線とF線間の部分分散比θgFとは、g線、F線、C線に対するそのレンズの屈折率をそれぞれNg、NF、NCとしたとき、θgF=(Ng−NF)/(NF−NC)で定義されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、物体側から順に、変倍の際に固定されている正の第1レンズ群と、変倍の際に移動する複数の移動レンズ群と、変倍の際に固定されている正の最終レンズ群とからなるズームレンズにおいて、1つ以上の移動レンズ群を負レンズ群とし、負の屈折力を有する移動レンズ群の構成に関して所定の条件式を満足するよう設定することにより、高ズーム比を確保しつつ、小型に構成可能であり、色収差が良好に補正されて高い光学性能を有するズームレンズ、およびこのズームレンズを備えた撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に、本発明の一実施形態に係るズームレンズの広角端におけるレンズ構成の断面図を示す。
図2に、
図1に示すズームレンズのレンズ構成と各光束を示す。
図2では、「WIDE」と付した上段に広角端状態を示し、光束として軸上光束waおよび最大画角の光束wbを記入しており、「MIDDLE」と付した中段に中間焦点距離状態を示し、光束として軸上光束maおよび最大画角の光束mbを記入しており、「TELE」と付した下段に望遠端状態を示し、光束として軸上光束taおよび最大画角の光束tbを記入している。なお、
図1および
図2に示す例は後述の実施例1のズームレンズに対応している。
図1および
図2では紙面左側が物体側、紙面右側が像側であり、無限遠物体に合焦した状態を示している。以下では主に
図1を参照しながら説明する。
【0019】
なお、ズームレンズが撮像装置に搭載される際には、撮像装置の仕様に応じた各種フィルタおよび/または保護用のカバーガラスを備えることが好ましく、
図1では、これらを想定した入射面と出射面が平行の光学部材PPをレンズ系と像面Simとの間に配置した例を示している。しかし、光学部材PPの位置は
図1に示すものに限定されないし、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0020】
本実施形態のズームレンズは、光軸Zに沿って物体側から順に、変倍の際に像面Simに対して固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔を変化させて移動する複数の移動レンズ群と、変倍の際に像面Simに対して固定されている正の屈折力を有する最終レンズ群Geとから実質的になる。
【0021】
上記の複数の移動レンズ群において、少なくとも1つの移動レンズ群は負の屈折力を有するように構成される。また、上記の複数の移動レンズ群において、少なくとも2つの移動レンズ群がともに負の屈折力を有するように構成することが好ましい。
図1に示す例のズームレンズは、2つの移動レンズ群が負の屈折力を有する例である。以下では、第1レンズ群G1と最終レンズ群Geとの間に配置される複数の移動レンズ群のうち、最も物体側の負の屈折力を有する移動レンズ群を前側負レンズ群GNFと呼び、最も像側の負の屈折力を有する移動レンズ群を後側負レンズ群GNRと呼ぶことにする。
【0022】
図1に示す例のズームレンズは、光軸Zに沿って物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、負の屈折力を有する第3レンズ群G3、および正の屈折力を有する第4レンズ群G4から実質的になる。変倍の際に、第1レンズ群G1と第4レンズ群G4は像面Simに対して固定されており、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3は光軸方向の相互間隔を変化させて移動する。
図1に示す例では、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3がそれぞれ移動レンズ群であり、第2レンズ群G2が前側負レンズ群GNFに対応し、第3レンズ群G3が後側負レンズ群GNRに対応し、第4レンズ群G4が最終レンズ群Geに対応する。
図1では、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3それぞれの下に、広角端から望遠端へ変倍する際の各レンズ群の移動方向を模式的に示す矢印を記入している。
【0023】
図1に示す例では、第1レンズ群G1は、物体側から順に、第1負レンズL11、第2負レンズL12、およびレンズL13〜レンズL18の計8枚のレンズからなり、第2レンズ群G2は、物体側から順に、レンズL21〜レンズL24の4枚のレンズからなり、第3レンズ群G3は、物体側から順に、レンズL31〜レンズL32の2枚のレンズからなり、第4レンズ群G4は、物体側から順に、レンズL41〜レンズL49の9枚のレンズからなる。ただし、本発明のズームレンズにおいては、各レンズ群を構成するレンズの枚数は
図1に示す例に必ずしも限定されない。
【0024】
なお、
図1では第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間に開口絞りStを配置した例を示すが、開口絞りStは別の位置に配置することも可能である。
図1に示す開口絞りStは必ずしも大きさおよび/または形状を表すものではなく、光軸Z上の位置を示すものである。
【0025】
本実施形態のズームレンズでは、最も物体側の第1レンズ群G1を正レンズ群とすることにより、レンズ系全長の短縮が可能となり、小型化に有利となる。最も像側の最終レンズ群Geを正レンズ群とすることにより、軸外光線の主光線が像面Simへ入射する入射角が大きくなるのを抑制することができ、シェーディングを抑制できる。そして、最も物体側のレンズ群と最も像側のレンズ群が変倍の際に固定されている構成をとることにより、変倍の際にレンズ系全長を不変とすることができる。
【0026】
また、複数の移動レンズ群において、少なくとも1つの移動レンズ群が負の屈折力を有することにより、高ズーム比の実現に寄与することができる。
【0027】
前側負レンズ群GNFは、2枚以上の負レンズを有し、下記条件式(1)〜(3)全てを満足するように構成されている。
2.395<NF2+0.012×νF2<2.495 (1)
−35<νF1−νF2<−16 (2)
0.12<NF1−NF2<0.34 (3)
ただし、
NF2:前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズのd線に対する屈折率
νF2:前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズのd線基準のアッベ数
νF1:前側負レンズ群内の最も物体側の負レンズのd線基準のアッベ数
NF1:前側負レンズ群内の最も物体側の負レンズのd線に対する屈折率
【0028】
条件式(1)の下限以下とならないようにすることによって、広角側の倍率色収差の色消しに必要なレンズのパワーが強くなりすぎるのを防ぐことができ、これにより変倍による球面収差の変化を抑えることができる。条件式(1)の上限以上とならないようにすることによって、広角側の倍率色収差に必要なレンズのパワーが弱くなりすぎるのを防ぐことができ、変倍の際の移動レンズ群の移動量を抑えることができるため、小型化を図りつつ高ズーム比を実現することが容易となる。さらに下記条件式(1−1)を満足することが好ましい。条件式(1−1)の上限以上とならないようにすることによって、条件式(1)の上限に関する効果をより高めることが可能となる。
2.395<NF2+0.012×νF2<2.455 (1−1)
【0029】
条件式(2)の下限以下とならないようにすることによって、広角側の倍率色収差の補正不足および望遠側の軸上色収差の補正不足を防ぐことが可能となり、良好な光学性能を得ることに有利となる。条件式(2)の上限以上とならないようにすることによって、広角側の倍率色収差の補正過剰および望遠側の軸上色収差の補正過剰を防ぐことが可能となり、良好な光学性能を得ることに有利となる。条件式(2)に関する効果をより高めるためには、下記条件式(2−1)を満足することが好ましい。
−33<νF1−νF2<−18 (2−1)
【0030】
条件式(3)の下限以下とならないようにすることによって、長焦点側で球面収差が大きくなるのを防ぐことができ、これにより、高ズーム比を実現することが容易となる。条件式(3)の上限以上とならないようにすることによって、広角側の倍率色収差を小さくすることが可能となり、良好な光学性能を得ることに有利となる。条件式(3)に関する効果をより高めるためには、下記条件式(3−1)を満足することが好ましい。
0.13<NF1−NF2<0.31 (3−1)
【0031】
第1レンズ群G1に最も近い負の屈折力を有する移動レンズ群の負レンズの材料を条件式(1)〜(3)を満足するように選択することによって、色収差の補正に有利となり、第1レンズ群G1が負担する色収差の補正を低減することが可能となる。すなわち、色収差を良好に補正しながらレンズ枚数を抑えて小型化を図ることが可能となる。また、上述した特許文献1に記載のレンズ系では、広角側の倍率色収差を補正するために、開口絞りから像面までの長さが長くなりレンズ全長が長くなっているのに対して、本実施形態のズームレンズによれば、広角側の倍率色収差を良好に補正可能な構成となっているため、開口絞りStから像面Simまでの長さを抑えることができる。
【0032】
さらに、このズームレンズは前側負レンズ群GNFについて下記条件式(4)を満足することが好ましい。
0.93<fF2/fGNF<1.1 (4)
ただし、
fF2:前側負レンズ群内の物体側から2番目の負レンズの焦点距離
fGNF:前側負レンズ群の焦点距離
【0033】
条件式(4)の下限以下とならないようにすることによって、前側負レンズ群GNF内の物体側から2番目の負レンズのパワーが強くなりすぎるのを防ぐことができ、変倍による球面収差および/または非点収差の変化を小さくすることが可能となる。条件式(4)の上限以上とならないようにすることによって、前側負レンズ群GNF内の物体側から2番目の負レンズのパワーが弱くなりすぎるのを防ぐことができ、広角側の倍率色収差の補正が容易となる。条件式(4)に関する効果をより高めるためには、下記条件式(4−1)を満足することがより好ましい。
0.94<fF2/fGNF<1.05 (4−1)
【0034】
後側負レンズ群GNRは、負レンズと、正レンズとから実質的になることが好ましく、このようにした場合は、変倍による軸上色収差の変化を抑えることができる。なお、後側負レンズ群GNRは、物体側から順に、負レンズと、正レンズとからなる構成としてもよく、あるいは、物体側から順に、正レンズと、負レンズとからなる構成としてもよい。
【0035】
後側負レンズ群GNRが、負レンズと、正レンズとから実質的になる場合は、下記条件式(5)および(6)を満足することが好ましい。
2.395<NRn+0.012×νRn<2.495 (5)
25<νRn−νRp<35 (6)
ただし、
NRn:後側負レンズ群の負レンズのd線に対する屈折率
νRn:後側負レンズ群の負レンズのd線基準のアッベ数
νRp:後側負レンズ群の正レンズのd線基準のアッベ数
【0036】
条件式(5)の下限以下とならないようにすることによって、広角側の軸上色収差の色消しに必要なレンズのパワーが強くなりすぎるのを防ぐことができ、これにより変倍による球面収差の変化を抑えることができる。条件式(5)の上限以上とならないようにすることによって、広角側の軸上色収差に必要なレンズのパワーが弱くなりすぎるのを防ぐことができ、変倍の際の移動レンズ群の移動量を抑えることができるため、小型化を図りつつ高ズーム比を実現することが容易となる。さらに下記条件式(5−1)を満足することが好ましい。条件式(5−1)の上限以上とならないようにすることで、条件式(5)の上限に関する効果をより高めることが可能となる。
2.395<NRn+0.012×νRn2<2.455 (5−1)
【0037】
条件式(6)の下限以下とならないようにすることによって、広角側の軸上色収差の補正不足を防ぐことが可能となり、良好な光学性能を得ることに有利となる。条件式(6)の上限以上とならないようにすることによって、広角側の軸上色収差の補正過剰を防ぐことが可能となり、良好な光学性能を得ることに有利となる。条件式(6)に関する効果をより高めるためには、下記条件式(6−1)を満足することがより好ましい。
27<νRn−νRp<30 (6−1)
【0038】
また、後側負レンズ群GNRが、負レンズと、正レンズとから実質的になる場合は、下記条件式(7)を満足することが好ましい。
0.35<fRn/fGNR<0.51 (7)
ただし、
fRn:後側負レンズ群の負レンズの焦点距離
fGNR:後側負レンズ群の焦点距離
【0039】
条件式(7)の下限以下とならないようにすることによって、後側負レンズ群GNR内の負レンズのパワーが強くなりすぎるのを防ぐことができ、変倍による球面収差および/または非点収差の変化を小さくすることが可能となる。条件式(7)の上限以上とならないようにすることによって、後側負レンズ群GNR内の負レンズのパワーが弱くなりすぎるのを防ぐことができ、軸上色収差の補正不足を防ぐことが可能となる。条件式(7)に関する効果をより高めるためには、下記条件式(7−1)を満足することがより好ましい。
0.37<fRn/fGNR<0.48 (7−1)
【0040】
なお、
図1に示す例では、第1レンズ群G1と最終レンズ群Geとの間に配置される複数の移動レンズ群の数は2つであり、これら2つの移動レンズ群とも負の屈折力を有するレンズ群である。このようにした場合は、機構を簡素化しつつ、小型で高ズーム比のズームレンズが実現可能となる。
【0041】
しかし、第1レンズ群G1と最終レンズ群Geとの間に配置される複数の移動レンズ群の数を3つ以上とした構成も可能である。例えば、上記複数の移動レンズ群は、物体側から順に、正の屈折力を有するレンズ群と、負の屈折力を有するレンズ群と、負の屈折力を有するレンズ群とから実質的になる構成としてもよく、このようにした場合は、広角側の歪曲収差および/または望遠側の球面収差の発生を抑制しつつ、小型で高ズーム比のズームレンズが実現可能となる。あるいは、上記複数の移動レンズ群は、物体側から順に、負の屈折力を有するレンズ群と、正の屈折力を有するレンズ群と、負の屈折力を有するレンズ群とから実質的になる構成としてもよく、このようにした場合は、収差補正が容易になるとともに、小型で高ズーム比のズームレンズが実現可能となる。
【0042】
また、複数の移動レンズ群において、最も像側の移動レンズ群は負の屈折力を有することが好ましい。このようにした場合は、レンズ系全長を抑えつつ、最も像側の移動レンズ群より物体側に位置する移動レンズ群の移動ストロークをより長くとることができるため、小型化および高ズーム比の実現に有利となる。
【0043】
なお、このズームレンズは、物体までの距離が変動した際の合焦は第1レンズ群G1内の1枚以上のレンズを光軸方向に移動させることにより行うようにしてもよい。このように、変倍の際に移動するレンズ群よりも物体側のレンズを用いて合焦を行うことで、変倍の際のピントのずれを抑えることが容易となる。
【0044】
例えば、
図1の例の第1レンズ群G1は、物体側から順に、合焦の際に像面Simに対して固定されている負の屈折力を有する第1レンズ群前群G1aと、合焦の際に光軸方向に移動する正の屈折力を有する第1レンズ群中群G1bと、合焦の際に第1レンズ群中群G1bとの光軸方向の間隔が変化する正の屈折力を有する第1レンズ群後群G1cとから実質的になる。このような構成とした場合は、合焦による画角の変化を抑えることが容易となる。
図1の第1レンズ群中群G1bの下の両矢印は、合焦の際に、第1レンズ群中群G1bが光軸方向に移動することを示している。
【0045】
なお、第1レンズ群後群G1cは、合焦の際に、像面Simに対して固定されていてもよく、このようにした場合は、合焦の際に移動するレンズ群は第1レンズ群中群G1bのみとすることができ、合焦機構を簡略化できるため、装置の大型化を抑制できる。あるいは、第1レンズ群後群G1cは、合焦の際に、第1レンズ群中群G1bとは異なる軌跡で光軸方向に移動してもよく、このようにした場合は、合焦の際の収差変動を抑えることができる。
【0046】
第1レンズ群前群G1aは、最も物体側から順に連続して、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズと、物体側に凹面を向けた負レンズとを有する構成としてもよい。このようにした場合は、非点収差の発生を抑えつつ、広角化に必要な負の屈折力を得ることができる。第1レンズ群前群G1aの最も像側のレンズは、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズとしてもよい。このようにした場合は、広角側の非点収差の発生を抑えることができ、また、第1レンズ群前群G1aにより発生する望遠側のオーバー傾向の球面収差、特に5次以上の高次の球面収差を良好に補正できる。
図1の例のように、第1レンズ群前群G1aは、物体側から順に、負メニスカスレンズと、負レンズと、正メニスカスレンズとからなり、これら3枚のレンズを全て接合されていない単レンズとしてもよい。このようにした場合は、小型化を図りながら、非点収差の発生を抑えつつ、広角化に必要な負の屈折力を得ることができる。
【0047】
第1レンズ群後群G1cは、物体側から順に連続して、負レンズおよび正レンズが物体側から順に接合された接合レンズと、正レンズとを有することが好ましい。このようにした場合は、第1レンズ群G1の色収差および望遠側の球面収差の補正が容易となる。なお、第1レンズ群後群G1cが、物体側から順に、負レンズおよび正レンズが物体側から順に接合された接合レンズと、正レンズとからなるように構成した場合は、小型化を図りながら、第1レンズ群G1の色収差および望遠側の球面収差の補正を容易にすることができる。
【0048】
なお、上述した好ましい構成および/または可能な構成は、任意の組合せが可能であり、ズームレンズに要望される事項に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。上記構成を適宜採用することによって、より良好な光学系を実現することができる。本実施形態によれば、高ズーム比を確保しつつ、小型化が達成され、色収差が良好に補正されて、変倍全域で高い光学性能を有するズームレンズを実現することが可能である。なお、ここでいう高ズーム比とは5.5倍以上を意味する。
【0049】
次に、本発明のズームレンズの数値実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1のズームレンズのレンズ構成は
図1、
図2に示したものであり、その図示方法は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1のズームレンズは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、開口絞りStと、第4レンズ群G4とからなる。これら4つのレンズ群は変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する。第2レンズ群G2と第3レンズ群G3はいずれも負の屈折力を有する移動レンズ群である。第1レンズ群G1は、物体側から順に、3枚のレンズからなり負の屈折力を有する第1レンズ群前群G1aと、2枚のレンズからなり正の屈折力を有する第1レンズ群中群G1bと、3枚のレンズからなり正の屈折力を有する第1レンズ群後群G1cとからなる。合焦の際に、第1レンズ群前群G1aは像面Simに対して固定されており、第1レンズ群中群G1bは移動し、第1レンズ群中群G1bと第1レンズ群後群G1cとの光軸方向の間隔が変化する。
【0050】
実施例1のズームレンズの基本レンズデータを表1に、諸元と可変面間隔の値を表2に、非球面係数を表3に示す。表1のSiの欄には最も物体側の構成要素の物体側の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加するように構成要素の面に面番号を付した場合のi番目(i=1、2、3、…)の面番号を示し、Riの欄にはi番目の面の曲率半径を示し、Diの欄にはi番目の面とi+1番目の面との光軸Z上の面間隔を示す。表1のNdjの欄には最も物体側の構成要素を1番目として像側に向かうに従い順次増加するj番目(j=1、2、3、…)の構成要素のd線(波長587.6nm)に関する屈折率を示し、νdjの欄にはj番目の構成要素のd線基準のアッベ数を示し、θgFjの欄にはj番目の構成要素のg線とF線間の部分分散比を示す。
【0051】
ここで、曲率半径の符号は、物体側に凸面を向けた面形状のものを正とし、像側に凸面を向けた面形状のものを負としている。表1には開口絞りStおよび光学部材PPも含めて示している。表1では、開口絞りStに相当する面の面番号の欄には面番号と(St)という語句を記載している。Diの最下欄の値は表中の最も像側の面と像面Simとの間隔である。表1では変倍の際に変化する可変面間隔については、DD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の物体側の面番号を付してDiの欄に記入している。
【0052】
表2に、ズーム比Zr、全系の焦点距離f、空気換算距離でのバックフォーカスBf、FナンバーFNo.、最大全画角2ω、および可変面間隔の値をd線基準で示す。2ωの欄の(°)は単位が度であることを意味する。表2では、広角端状態、中間焦点距離状態、および望遠端状態の各値をそれぞれWIDE、MIDDLE、およびTELEと表記した欄に示している。表1と表2の値は無限遠物体に合焦した状態のものである。
【0053】
表1では、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表3に、実施例1の非球面の非球面係数を示す。表3の非球面係数の数値の「E−n」(n:整数)は「×10
−n」を意味する。非球面係数は、下式で表される非球面式における各係数KA、Am(m=3、4、5、…20)の値である。
【0054】
【数1】
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(非球面頂点が接する光軸に垂直な平面において、非球面上の点から光軸に下ろした垂線の長さ)
C:近軸曲率
KA、Am:非球面係数
【0055】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大または比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0059】
図11に実施例1のズームレンズの無限遠物体に合焦した状態において各収差図を示す。
図11では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差(ディストーション)、および倍率色収差(倍率の色収差)を示す。
図11では、WIDEと付した上段に広角端状態のものを示し、MIDDLEと付した中段に中間焦点距離状態のものを示し、TELEと付した下段に望遠端状態のものを示す。球面収差図では、d線(波長587.6nm)、C線(波長656.3nm)、F線(波長486.1nm)、およびg線(波長435.8nm)に関する収差をそれぞれ黒の実線、長破線、一点鎖線、および灰色の実線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線に関する収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線に関する収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線に関する収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、F線、およびg線に関する収差をそれぞれ長破線、一点鎖線、および灰色の実線で示す。球面収差図のFNo.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0060】
上記の実施例1の説明で述べた各データの記号、意味、および記載方法は、特に断りがない限り以下の実施例のものについても同様であるため、以下では重複説明を省略する。
[実施例2]
実施例2のズームレンズの断面図を
図3に示す。実施例2のズームレンズは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、開口絞りStと、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、物体側から順に、3枚のレンズからなる第1レンズ群前群G1aと、2枚のレンズからなる第1レンズ群中群G1bと、3枚のレンズからなる第1レンズ群後群G1cとからなる。各レンズ群の屈折力の符号、変倍の際に移動するレンズ群、および合焦の際に移動するレンズ群は実施例1のものと同様である。
【0061】
実施例2のズームレンズの基本レンズデータを表4に、諸元と可変面間隔の値を表5に、非球面係数を表6に、無限遠物体に合焦した状態において各収差図を
図12に示す。
【0065】
[実施例3]
実施例3のズームレンズの断面図を
図4に示す。実施例3のズームレンズは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、開口絞りStと、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、物体側から順に、3枚のレンズからなる第1レンズ群前群G1aと、2枚のレンズからなる第1レンズ群中群G1bと、3枚のレンズからなる第1レンズ群後群G1cとからなる。各レンズ群の屈折力の符号、変倍の際に移動するレンズ群、および合焦の際に移動するレンズ群は実施例1のものと同様である。
【0066】
実施例3のズームレンズの基本レンズデータを表7に、諸元と可変面間隔の値を表8に、非球面係数を表9に、無限遠物体に合焦した状態において各収差図を
図13に示す。
【0070】
[実施例4]
実施例4のズームレンズの断面図を
図5に示す。実施例4のズームレンズは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、開口絞りStと、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、物体側から順に、3枚のレンズからなる第1レンズ群前群G1aと、1枚のレンズからなる第1レンズ群中群G1bと、3枚のレンズからなる第1レンズ群後群G1cとからなる。各レンズ群の屈折力の符号、変倍の際に移動するレンズ群、および合焦の際に移動するレンズ群は実施例1のものと同様である。
【0071】
実施例4のズームレンズの基本レンズデータを表10に、諸元と可変面間隔の値を表11に、非球面係数を表12に、無限遠物体に合焦した状態において各収差図を
図14に示す。
【0075】
[実施例5]
実施例5のズームレンズの断面図を
図6に示す。実施例5のズームレンズは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、開口絞りStと、第5レンズ群G5とからなる。これら5つのレンズ群は変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する。第2レンズ群G2は正の屈折力を有し、第3レンズ群G3は負の屈折力を有し、第4レンズ群G4は負の屈折力を有する。第2レンズ群G2〜第4レンズ群G4の3つのレンズ群はそれぞれ移動レンズ群である。第1レンズ群G1は、物体側から順に、3枚のレンズからなる第1レンズ群前群G1aと、2枚のレンズからなる第1レンズ群中群G1bと、3枚のレンズからなる第1レンズ群後群G1cとからなる。第1レンズ群G1を構成する上記3つのレンズ群の屈折力の符号、および合焦の際に移動するレンズ群は実施例1のものと同様である。
【0076】
実施例5のズームレンズの基本レンズデータを表13に、諸元と可変面間隔の値を表14に、無限遠物体に合焦した状態において各収差図を
図15に示す。
【0079】
[実施例6]
実施例6のズームレンズの断面図を
図7に示す。実施例6のズームレンズは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、開口絞りStと、第5レンズ群G5とからなる。第1レンズ群G1は、物体側から順に、3枚のレンズからなる第1レンズ群前群G1aと、2枚のレンズからなる第1レンズ群中群G1bと、3枚のレンズからなる第1レンズ群後群G1cとからなる。各レンズ群の屈折力の符号、変倍の際に移動するレンズ群、および合焦の際に移動するレンズ群は実施例5のものと同様である。
【0080】
実施例6のズームレンズの基本レンズデータを表15に、諸元と可変面間隔の値を表16に、無限遠物体に合焦した状態において各収差図を
図16に示す。
【0083】
[実施例7]
実施例7のズームレンズの断面図を
図8に示す。実施例7のズームレンズは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、開口絞りStと、第5レンズ群G5とからなる。これら5つのレンズ群は変倍の際に隣り合う群との光軸方向の間隔が変化する。第2レンズ群G2は負の屈折力を有し、第3レンズ群G3は正の屈折力を有し、第4レンズ群G4は負の屈折力を有する。第2レンズ群G2〜第4レンズ群G4の3つのレンズ群はそれぞれ移動レンズ群である。第1レンズ群G1は、物体側から順に、3枚のレンズからなる第1レンズ群前群G1aと、2枚のレンズからなる第1レンズ群中群G1bと、3枚のレンズからなる第1レンズ群後群G1cとからなる。第1レンズ群G1を構成する上記3つのレンズ群の屈折力の符号、および合焦の際に移動するレンズ群は実施例1のものと同様である。
【0084】
実施例7のズームレンズの基本レンズデータを表17に、諸元と可変面間隔の値を表18に、非球面係数を表19に、無限遠物体に合焦した状態において各収差図を
図17に示す。
【0088】
[実施例8]
実施例8のズームレンズの断面図を
図9に示す。実施例8のズームレンズは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、開口絞りStと、第5レンズ群G5とからなる。第1レンズ群G1は、物体側から順に、3枚のレンズからなる第1レンズ群前群G1aと、2枚のレンズからなる第1レンズ群中群G1bと、3枚のレンズからなる第1レンズ群後群G1cとからなる。各レンズ群の屈折力の符号、変倍の際に移動するレンズ群、および合焦の際に移動するレンズ群は実施例5のものと同様である。
【0089】
実施例8のズームレンズの基本レンズデータを表20に、諸元と可変面間隔の値を表21に、無限遠物体に合焦した状態において各収差図を
図18に示す。
【0092】
[実施例9]
実施例9のズームレンズの断面図を
図10に示す。実施例9のズームレンズは、物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、開口絞りStと、第4レンズ群G4とからなる。第1レンズ群G1は、物体側から順に、1枚の負レンズと、5枚の負レンズとからなる。合焦の際に、第1レンズ群G1の物体側から1〜3番目のレンズは像面Simに対して固定されており、第1レンズ群G1の物体側から4〜6番目のレンズは光軸方向に移動する。各レンズ群の屈折力の符号、および変倍の際に移動するレンズ群は実施例1のものと同様である。
【0093】
実施例9のズームレンズの基本レンズデータを表22に、諸元と可変面間隔の値を表23に、無限遠物体に合焦した状態において各収差図を
図19に示す。
【0096】
表24に実施例1〜9のズームレンズの条件式(1)〜(7)の対応値を示す。表24に示す値はd線に関するものである。
【0098】
以上のデータからわかるように、実施例1〜9のズームレンズは、第1レンズ群G1のレンズ枚数が6〜8枚と比較的少ない枚数に抑えられているため小型に構成可能であり、ズーム比が5.79〜17.3の範囲にあり高ズーム比を確保しており、色収差を含む諸収差が良好に補正されて高い光学性能を実現している。
【0099】
次に、本発明の実施形態に係る撮像装置について説明する。
図20に、本発明の実施形態の撮像装置の一例として、本発明の実施形態に係るズームレンズ1を用いた撮像装置10の概略構成図を示す。撮像装置10としては、例えば、映画撮影用カメラ、放送用カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、または監視用カメラ等を挙げることができる。
【0100】
撮像装置10は、ズームレンズ1と、ズームレンズ1の像側に配置されたフィルタ2と、フィルタ2の像側に配置された撮像素子3とを備えている。なお、
図20では、ズームレンズ1が備える第1レンズ群前群G1a、第1レンズ群中群G1b、第1レンズ群後群G1c、第2レンズ群G2〜第4レンズ群G4を概略的に図示している。撮像素子3はズームレンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いることができる。撮像素子3は、その撮像面がズームレンズ1の像面に一致するように配置される。
【0101】
撮像装置10はまた、撮像素子3からの出力信号を演算処理する信号処理部5と、信号処理部5により形成された像を表示する表示部6と、ズームレンズ1の変倍を制御するズーム制御部7と、ズームレンズ1の合焦を制御するフォーカス制御部8とを備えている。なお、
図20では1つの撮像素子3のみ図示しているが、本発明の撮像装置はこれに限定されず、3つの撮像素子を有するいわゆる3板方式の撮像装置であってもよい。
【0102】
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。