(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記周波数解析部は、前記第1の周波数解析および前記第2の周波数解析の結果を最大値処理することにより前記各ピクセルに対するスペクトル信号を取得する請求項1に記載の超音波診断装置。
前記周波数解析部は、前記第1の周波数解析および前記第2の周波数解析の結果を平均処理することにより前記各ピクセルに対するスペクトル信号を取得する請求項1に記載の超音波診断装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようにして生成されたドプラ波形画像においては、超音波の送受信の際に発生するスペックル、ドプラ信号同士の干渉等に起因して、黒線が入り、画質の低下を招いていた。
このため、従来は、ドプラ波形画像の画像データに対して時間方向および周波数方向に平滑化の処理を施すことで、黒線を目立たなくしている。
しかしながら、平滑化を行うことにより時間方向の分解能が劣化してしまい、画質を高めようとすると、時間分解能が低下し、逆に、時間分解能の低下を抑制すると、黒線が目立って画質が低下するという問題があった。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、時間分解能を低下することなくドプラ波形画像における黒線の発生を抑制して画質を向上させることができる超音波診断装置およびドプラ波形画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る超音波診断装置は、アレイトランスデューサと、アレイトランスデューサから被検体に向けて超音波ビームを送信する送信部と、被検体による超音波エコーを受信したアレイトランスデューサから出力される受信信号を処理して受信高周波データを生成する受信部と、受信部で生成された受信高周波データを直交検波して複素データを生成する直交検波部と、第1の始点から予め設定された設定数のサンプル点
を含む第1のサンプル点群の複素データを用いて周波数解析する第1の周波数解析と、前記第1の始点とは異なる第2の始点から設定数のサンプル点
を含む少なくとも1つの第2のサンプル点群の複素データ
を用いて周波数解析する第2の周波数解析とを行い、第1の周波数解析および第2の周波数解析の結果を用いてドプラ波形画像の各ピクセルに対応するスペクトル信号を取得する周波数解析部と、スペクトル信号を用いてドプラ波形画像を生成するドプラ波形画像生成部とを備え
、互いに隣接するピクセルに対する第1の始点は、互いに隣接するピクセルの間隔に対応する第1のサンプル点数だけ離れ、各ピクセルに対する少なくとも1つの第2のサンプル点群のうち、第1のサンプル点群から最も離れた第2のサンプル点群と、第1のサンプル点群との間隔に対応するサンプル点数が、第1のサンプル点数の1/2よりも小さく設定されるものである。
【0009】
周波数解析部は、第1の周波数解析および第2の周波数解析の結果を最大値処理することにより各ピクセルに対するスペクトル信号を取得することができる。あるいは、周波数解析部は、第1の周波数解析および第2の周波数解析の結果を平均処理することにより各ピクセルに対するスペクトル信号を取得することができる。
周波数解析部は、第2の周波数解析として、第1の始点よりも所定数のサンプル点だけ時間的に早い第2の始点から設定数のサンプル点
を含む少なくとも1つの第2のサンプル点群の複素データ
を用いた周波数解析と、第1の始点よりも所定数のサンプル点だけ時間的に遅い第2の始点から設定数のサンプル点
を含む少なくとも1つの第2のサンプル点群の複素データ
を用いた周波数解析を行うことができる。
【0010】
好ましくは、直交検波部で生成された複素データを保存するデータメモリと、設定数および第1の始点と第2の始点の間のサンプル点数を指定するための操作部をさらに備え、周波数解析部は、データメモリに保存された複素データに対して操作部により指定された設定数および第1の始点と第2の始点の間のサンプル点数に基づいて周波数解析を行う。
受信部は、アレイトランスデューサから出力される受信信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、デジタル信号に変換された受信信号を整相加算するビームフォーマとを含むことが好ましい。
受信部で生成された受信高周波データに基づいてBモード画像を生成するBモード処理部と、ドプラ波形画像生成部で生成されたドプラ波形画像およびBモード処理部で生成されたBモード画像を表示する表示部をさらに備えることができる。
【0011】
この発明に係るドプラ波形画像生成方法は、アレイトランスデューサから被検体に向けて超音波ビームを送信し、被検体による超音波エコーを受信したアレイトランスデューサから出力される受信信号を処理して受信高周波データを生成し、生成された受信高周波データを直交検波して複素データを生成し、第1の始点から予め設定された設定数のサンプル点
を含む第1のサンプル点群の複素データを用いて周波数解析する第1の周波数解析と、第1の始点とは異なる第2の始点から設定数のサンプル点
を含む少なくとも1つの第2のサンプル点群の複素データ
を用いて周波数解析する第2の周波数解析とを行い、第1の周波数解析および第2の周波数解析の結果を用いてドプラ波形画像の各ピクセルに対応するスペクトル信号を取得し、スペクトル信号を用いてドプラ波形画像を生成
し、ドプラ波形画像の互いに隣接するピクセルに対する第1の始点は、互いに隣接するピクセルの間隔に対応する第1のサンプル点数だけ離れ、各ピクセルに対する少なくとも1つの第2のサンプル点群のうち、第1のサンプル点群から最も離れた第2のサンプル点群と、第1のサンプル点群との間隔に対応するサンプル点数が、第1のサンプル点数の1/2よりも小さく設定する方法である。
第2の発明に係る超音波診断装置は、アレイトランスデューサと、アレイトランスデューサから被検体に向けて超音波ビームを送信する送信部と、被検体による超音波エコーを受信したアレイトランスデューサから出力される受信信号を処理して整相加算された受信高周波データを生成する受信部と、受信部で生成された受信高周波データを直交検波して複素データを生成する直交検波部と、第1の始点から予め設定された設定数のサンプル点を含む第1のサンプル点群の複素データを用いて周波数解析する第1の周波数解析と、第1の始点とは異なる第2の始点から設定数のサンプル点を含む少なくとも1つの第2のサンプル点群の複素データを用いて周波数解析する第2の周波数解析とを行い、第1の周波数解析および第2の周波数解析の結果を用いてドプラ波形画像の各ピクセルに対応するスペクトル信号を取得する周波数解析部と、スペクトル信号を用いてドプラ波形画像を生成するドプラ波形画像生成部とを備え、互いに隣接するピクセルに対する第1の始点は、互いに隣接するピクセルの間隔に対応する第1のサンプル点数Npだけ離れ、互いに隣接する第1のサンプル点群および少なくとも1つの第2のサンプル点群の間は、第2のサンプル点数Nbだけ離れ、第1のサンプル点数Npの最大値をNpMAX、複素データの繰り返し周波数の最大値をPRFMAX、ドプラ波形画像のスイープ時間の最大値をTsMAX、ドプラ波形画像の時間軸に沿ったピクセル数をPNとして、前記第2のサンプル点数Nbの最大値NbMAXは、下記式(1)により表される超音波診断装置。
NbMAX=NpMAX/2<(PRFMAX×TsMAX/PN)/2 ・・・(1)
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、第1の始点から予め設定された設定数のサンプル点の複素データを用いて周波数解析する第1の周波数解析と、第1の始点とは異なる第2の始点から設定数のサンプル点の複素データを少なくとも1組用いて周波数解析する第2の周波数解析とを行い、第1の周波数解析および第2の周波数解析の結果を用いてドプラ波形画像の各ピクセルに対応するスペクトル信号を取得し、スペクトル信号を用いてドプラ波形画像を生成するので、時間分解能を低下することなくドプラ波形画像における黒線の発生を抑制して画質を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、アレイトランスデューサ1を備え、このアレイトランスデューサ1に送信部2および受信部3が接続されている。受信部3には、Bモード処理部4およびドプラ処理部5が並列に接続され、これらBモード処理部4およびドプラ処理部5に表示制御部6を介して表示部7が接続されている。
また、送信部2および受信部3に送受信制御部8が接続され、Bモード処理部4、ドプラ処理部5、表示制御部6および送受信制御部8に装置制御部9が接続されている。さらに、装置制御部9に、操作部10と格納部11がそれぞれ接続されている。
【0015】
アレイトランスデューサ1は、1次元又は2次元に配列された複数の超音波トランスデューサを有している。これらの超音波トランスデューサは、それぞれ送信部2から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各超音波トランスデューサは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
【0016】
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0017】
送信部2は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、送受信制御部8からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、アレイトランスデューサ1の複数の超音波トランスデューサから送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数の超音波トランスデューサに供給する。
【0018】
受信部3は、
図2に示されるように、増幅部12とA/D変換部13とビームフォーマ14が順次直列に接続された構成を有している。受信部3は、アレイトランスデューサ1の各超音波トランスデューサから送信される受信信号を増幅部12で増幅し、A/D変換部13でA/D変換した後、送受信制御部8からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速または音速の分布に従い、ビームフォーマ14で各受信信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、整相加算され超音波エコーの焦点が絞り込まれた受信高周波データが生成される。
【0019】
Bモード処理部4は、
図3に示されるように、信号処理部15とDSC(Digital Scan Converter)16と画像処理部17が順次直列に接続された構成を有している。
信号処理部15は、受信部3で生成された受信高周波データに対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
DSC16は、信号処理部15で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部17は、DSC16から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部6に出力する。
【0020】
ドプラ処理部5は、いわゆるパルスドプラ法によりドプラ波形画像を生成するもので、
図4に示されるように、直交検波部18とハイパスフィルタ19とFFT(Fast Fourier Transformer)20とドプラ波形画像生成部21が順次直列に接続されると共に直交検波部18の出力端にデータメモリ22が接続された構成を有している。
直交検波部18は、受信部3で生成された受信高周波データに参照周波数のキャリア信号を混合することで、受信高周波データを直交検波して複素データに変換する。
ハイパスフィルタ19は、いわゆるウォールフィルタ(Wall Filter)として機能するもので、直交検波部18で生成された複素データから被検体の体内組織の運動に由来する周波数成分を除去する。
【0021】
FFT20は、複数のサンプル点の複素データをフーリエ変換することにより周波数解析してスペクトル信号を生成する。
ドプラ波形画像生成部21は、FFT20で生成されたスペクトル信号を時間軸上に揃えつつ各周波数成分の大きさを輝度で表すことによりドプラ波形画像信号を生成する。ドプラ波形画像は、横軸に時間軸を示し、縦軸にドプラシフト周波数すなわち流速を示し、波形の輝度が各周波数成分におけるパワーを表すものである。
また、データメモリ22は、直交検波部18で受信高周波データから変換された複素データを保存する。
【0022】
表示制御部6は、Bモード処理部4により生成されたBモード画像信号に基づいて、表示部7にBモード画像を表示させると共に、パルスドプラモード時にドプラ処理部5により生成されたドプラ波形画像信号に基づいて、表示部7にドプラ波形画像を表示させる。
表示部7は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部6の制御の下で、Bモード画像およびドプラ波形画像を表示する。
【0023】
送受信制御部8は、装置制御部9から伝送される各種の制御信号に基づき、繰り返し周波数(PRF)間隔で被検体への超音波パルスの送信と被検体からの超音波エコーの受信が繰り返し行われるように、送信部2および受信部3を制御する。
装置制御部9は、操作者により操作部10から入力された指令に基づいて、Bモード処理部4、ドプラ処理部5、表示制御部6および送受信制御部8の制御を行う。ドプラ処理部5のFFT20と装置制御部9により、周波数解析部が構成されている。
操作部10は、操作者が入力操作を行うためのもので、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
格納部11は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM、SDカード、CFカード、USBメモリ等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0024】
ここで、ドプラ処理部5のFFT20の動作について
図5を参照して説明する。
FFT20は、装置制御部9による制御の下で、繰り返し周波数(PRF)間隔で繰り返し取得される複素データDiqのうち、第1の始点から複数のサンプル点で構成されるサンプル点群S0の複素データDiqをフーリエ変換して周波数解析を行うが、サンプル点群S0だけでなく、それぞれ第1の始点とは異なる第2の始点から複数のサンプル点で構成されるサンプル点群S1〜S4の複素データDiqに対しても、それぞれフーリエ変換して周波数解析を行う。
【0025】
それぞれのサンプル点群S0〜S4は、予め設定された設定数Nfのサンプル点を含んでいる。サンプル点群S1は、サンプル点群S0よりも個数Nbのサンプル点だけ時間的に早く取得されたもので、サンプル点群S2は、サンプル点群S1よりもさらに個数Nbのサンプル点だけ時間的に早く取得されたものである。また、サンプル点群S3は、サンプル点群S0よりも個数Nbのサンプル点だけ時間的に遅く取得されたもので、サンプル点群S4は、サンプル点群S3よりもさらに個数Nbのサンプル点だけ時間的に遅く取得されたものである。
【0026】
そして、FFT20は、サンプル点群S0に対する第1の周波数解析とサンプル点群S1〜S4に対する第2の周波数解析の結果に基づいて、ピクセルP
Xに対応する1つのスペクトル信号を取得する。このとき、FFT20は、サンプル点群S0に対する第1の周波数解析およびサンプル点群S1〜S4に対する第2の周波数解析の結果を最大値処理することにより、すなわち、それぞれの解析結果における各周波数成分のパワーの最大値を抽出することでピクセルP
Xに対するスペクトル信号を取得することができる。
あるいは、FFT20は、サンプル点群S0に対する第1の周波数解析およびサンプル点群S1〜S4に対する第2の周波数解析の結果を平均処理することにより、ピクセルP
Xに対するスペクトル信号を取得してもよい。
【0027】
ピクセルP
Xに対するスペクトル信号を取得した後、FFT20は、同様にして、ピクセルP
Xに隣接するピクセルP
X+1に対応するスペクトル信号を取得する。すなわち、FFT20は、ピクセルP
X+1に対して第1の始点から設定数Nfのサンプル点を有するサンプル点群S0の複素データDiqに対する第1の周波数解析だけでなく、それぞれ第1の始点とは異なる第2の始点から設定数Nfのサンプル点を有するサンプル点群S1〜S4の複素データDiqに対して第2の周波数解析を行い、これら第1の周波数解析および第2の周波数解析の結果に基づいて、ピクセルP
X+1に対応する1つのスペクトル信号を取得する。
なお、ピクセルP
Xに対する第1の始点とピクセルP
X+1に対する第1の始点は、互いに隣接するピクセルの間隔に対応するサンプル点数Npだけ離れている。
このようにして、ドプラ波形画像の各ピクセルに対応するそれぞれのスペクトル信号が取得される。
図5には、5つのピクセルP
X−2〜P
X+2に対応するそれぞれのスペクトル信号が例示されている。
【0028】
例えば、繰り返し周波数PRFを5000Hz、表示部7に表示されるドプラ波形画像のスイープ時間Tsを4秒、ドプラ波形画像の時間軸に沿ったピクセル数PNを640、周波数解析を行うサンプル点の設定数Nfを128としたとき、互いに隣接するピクセルの間隔に対応するサンプル点数Npは、
Np=5000×4/640=31
となる。
また、互いに隣接するサンプル点群S0〜S4の間のサンプル点数Nbは、最小値Nb
MIN=1から最大値Nb
MAXまでの任意の値とすることができる。最大値Nb
MAXは、次式により表される。
Nb
MAX=Np
MAX/2<(PRF
MAX×Ts
MAX/PN)/2
ここで、Np
MAXはサンプル点数Npの最大値、PRF
MAXは繰り返し周波数PRFの最大値、Ts
MAXはドプラ波形画像のスイープ時間Tsの最大値、PNはドプラ波形画像の時間軸に沿ったピクセル数である。
例えば、スイープ時間Tsの最大値Ts
MAX=10秒、繰り返し周波数PRFの最大値PRF
MAX=15.6kHzとして、サンプル点数Npの最大値Np
MAX=244の場合には、サンプル点数Nbの最大値Nb
MAX=Np
MAX/2=122となる。
ただし、周辺のサンプル点群S1〜S4のうち、サンプル点群S0から最も離れたサンプル点群S2またはS4との間隔2×Nbの値が、互いに隣接するピクセルの間隔に対応するサンプル点数Npの1/2より小さく設定されることが好ましい。
【0029】
図5では、第2の周波数解析を行うサンプル点群として、サンプル点群S0よりも時間的に早く取得された2つのサンプル点群S1およびS2と、サンプル点群S0よりも時間的に遅く取得された2つのサンプル点群S3およびS4を用いたが、第2の周波数解析を行うサンプル点群の数Ngは、適宜選択することができる。また、サンプル点群S0よりも時間的に早く取得されたサンプル点群の数と、サンプル点群S0よりも時間的に遅く取得されたサンプル点群の数は、同一である必要はなく、互いに異なる数でもよい。
なお、繰り返し周波数PRF、ドプラ波形画像のスイープ時間、周波数解析を行うサンプル点の設定数Nf、互いに隣接するサンプル点群の間のサンプル点数Nb、周波数解析を行う周辺のサンプル点群の数Ng、並びに、第1および第2の周波数解析の結果に基づく各ピクセルに対する1つのスペクトル信号の取得方法(最大値処理または平均処理)は、操作部10を介して装置制御部9に入力することができるものとする。
【0030】
次に、この実施の形態1に係る超音波診断装置の動作を説明する。
まず、送信部2からの駆動信号に従ってアレイトランスデューサ1の複数の超音波トランスデューサから超音波ビームが送信され、被検体からの超音波エコーを受信した各超音波トランスデューサから受信信号が受信部3に出力され、増幅部12で増幅され、A/D変換部13でA/D変換された後、ビームフォーマ14で整相加算されて、受信高周波データが生成される。この受信高周波データは、Bモード処理部4において、信号処理部15で包絡線検波処理が施されることでBモード画像信号となり、DSC16および画像処理部17を経て表示制御部6に出力され、表示制御部6によりBモード画像が表示部7に表示される。
【0031】
ここで、操作者が操作部10を操作することにより、パルスドプラモードを選択すると、
図6に示されるように、表示部7の画面31が、Bモード画像32とドプラ波形画像33の領域に二分され、Bモード画像32上にゲート34が重畳表示される。ゲート34は、操作部10の操作により、Bモード画像32上を自由に移動させることができ、例えば、Bモード画像32に表示されている頸動脈の血管35内における血液の流速を計測するために、ゲート34が血管35の上に位置するように操作される。
なお、繰り返し周波数PRF、ドプラ波形画像のスイープ時間、サンプル点の設定数Nf、互いに隣接するサンプル点群の間のサンプル点数Nb、第2の周波数解析を行うサンプル点群の数Ng、並びに、第1および第2の周波数解析の結果に基づく各ピクセルに対応する1つのスペクトル信号の取得方法(最大値処理または平均処理)は、操作部10を介して予め装置制御部9に設定されているものとする。
【0032】
ゲート34の位置は、装置制御部9から送受信制御部8に伝送され、送受信制御部8により送信部2および受信部3が制御されて、ゲート34を通る特定の方位に向けた超音波パルスの送信と超音波エコーの受信が繰り返し周波数(PRF)間隔で繰り返し行われる。
受信部3で生成された受信高周波データは、ドプラ処理部5の直交検波部18で複素データに変換され、データメモリ22に保存されると共に、ハイパスフィルタ19で被検体の体内組織の運動に由来する周波数成分が除去された後、FFT20に出力される。
【0033】
FFT20においては、予め設定されているサンプル点の設定数Nf、互いに隣接するサンプル点群の間のサンプル点数Nb、第2の周波数解析を行うサンプル点群の数Ng、並びに、スペクトル信号の取得方法に基づいて、第1の始点から設定数Nfのサンプル点を有する1個のサンプル点群における複素データDiqを用いて周波数解析する第1の周波数解析と、それぞれ第2の始点から設定数Nfのサンプル点を有するNg個のサンプル点群における複素データDiqを用いて周波数解析する第2の周波数解析とを行い、これら第1および第2の周波数解析の結果に基づいて各ピクセルに対応するスペクトル信号を取得する。
【0034】
そして、FFT20で取得されたスペクトル信号に基づきドプラ波形画像生成部21でドプラ波形画像信号が生成され、
図6に示されるように、表示制御部6により表示部7の画面31にドプラ波形画像33が表示される。ドプラ波形画像33の横軸に時間軸が示され、縦軸に血管35内の血液の流速が示される。このとき、各ピクセルに対するスペクトル信号から生成されたドプラ波形画像信号は、時間方向にも周波数方向にも平滑化されることなく、ドプラ波形画像生成部21で生成されたドプラ波形画像信号に基づいてドプラ波形画像33の表示が行われる。
なお、Bモード画像取得用の超音波ビームの送受信とドプラ波形画像取得用の超音波ビームの送受信を時分割で行うことにより、表示部7の画面31にBモード画像32とドプラ波形画像33を同時に表示することができる。
【0035】
上述したように、装置制御部9に制御されたFFT20が、各ピクセルに対して、第1の始点から設定数Nfのサンプル点を有する1個のサンプル点群における複素データDiqを周波数解析する第1の周波数解析だけでなく、それぞれ第1の始点とは異なる第2の始点から設定数Nfのサンプル点を有するNg個のサンプル点群における複素データDiqを周波数解析する第2の周波数解析を行い、これら第1および第2の周波数解析の結果に基づいて各ピクセルに対応するスペクトル信号を取得するので、従来のように、ドプラ波形画像の画像データに対して平滑化処理を施す必要がなく、このため、時間分解能を低下させずにドプラ波形画像における黒線の発生を抑制することができる。
【0036】
具体的に、従来の方法、すなわち、第1の始点から設定数Nfのサンプル点の複素データDiqを周波数解析するだけで、第1の始点とは異なる第2の始点から設定数Nfのサンプル点については周波数解析を行わない方法で生成したドプラ波形画像を
図7(A)に示す。ここで、繰り返し周波数PRFを5000Hz、ドプラ波形画像のスイープ時間を4秒、ドプラ波形画像の時間軸に沿ったピクセル数を640、周波数解析に用いたサンプル点の設定数Nfを128とした。
ドプラ波形画像に、黒線BLが明確に現れていることがわかる。
【0037】
これに対して、繰り返し周波数PRF、ドプラ波形画像のスイープ時間、ドプラ波形画像の時間軸に沿ったピクセル数、周波数解析に用いたサンプル点の設定数Nfを
図7(A)の場合と同一にしたまま、実施の形態1の方法で、第1の始点から設定数Nfのサンプル点を有するサンプル点群S0における複素データDiqを用いて周波数解析する第1の周波数解析と、それぞれ第1の始点とは異なる第2の始点から設定数Nfのサンプル点を有するサンプル点群S1〜S4における複素データDiqを用いて周波数解析する第2の周波数解析を行って生成したドプラ波形画像を
図7(B)に示す。
図7(A)の画像に現れていた黒線BLが目立たなくなっていることがわかる。
このように、この発明によれば、時間分解能を低下することなく黒線の発生を抑制して画質を向上させることが可能となる。
【0038】
なお、ドプラ処理部5の直交検波部18で変換された複素データがデータメモリ22に保存されているので、周波数解析に用いるサンプル点の設定数Nf、互いに隣接するサンプル点群の間のサンプル点数Nb、および、第2の周波数解析を行うサンプル点群の数Ngのうちの少なくとも1つを変更して操作部10から入力することにより、変更した条件で新たにドプラ波形画像を生成し直すこともできる。
【0039】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、第2の周波数解析を行うサンプル点群として、第1の周波数解析を行うサンプル点群S0よりも時間的に早く取得された2つのサンプル点群S1およびS2と、サンプル点群S0よりも時間的に遅く取得された2つのサンプル点群S3およびS4を用いたが、
図8に示されるように、サンプル点群S0よりも時間的に早く取得された2つのサンプル点群S1およびS2のみを用いて第2の周波数解析を行い、第1の周波数解析と第2の周波数解析の結果に基づいて各ピクセルに対応する1つのスペクトル信号を取得してもよい。このようにしても、時間分解能を低下することなく黒線の発生を抑制して画質を向上させることができる。
【0040】
また、第1の周波数解析を行うサンプル点群S0よりも時間的に早く取得された1つ、あるいは、3つ以上のサンプル点群を第2の周波数解析を行うサンプル点群として使用することもできる。
同様に、第1の周波数解析を行うサンプル点群S0よりも時間的に遅く取得された1つ以上のサンプル点群を第2の周波数解析を行うサンプル点群として使用してもよい。