(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像素子100の構成の一例を示す図である。撮像素子100は、例えば静止画または動画を撮像するカメラである。本例の撮像素子100は、撮像部120、複数のAD変換部180および複数のランプ生成部182を備える。
【0010】
撮像部120は、複数の撮像領域131を有する。それぞれの撮像領域131は、入射光に応じた電荷を蓄積する。それぞれの撮像領域131は、入射光を電荷に変換して蓄積する1以上の光電変換部を有する。撮像素子100は、それぞれの撮像領域131が蓄積した電荷量を読み出すことで、入射光に応じた画像信号を生成する。
図1においては、第1画像信号を生成する第1撮像領域131−1、および、第2画像信号を生成する第2撮像領域131−2を示している。
【0011】
第1撮像領域131−1は、1以上の第1光電変換部を有しており、第2撮像領域131−2は、1以上の第2光電変換部を有する。例えば、撮像部120は、行列状に配置された複数の光電変換部を有しており、それぞれの撮像領域131は1列分の光電変換部を含んでよい。また、撮像領域131は、離散して配置された光電変換部を含んでもよい。また、撮像領域131は、行方向および列方向において所定の長さ(光電変換部の数)を有するブロックであってもよい。
【0012】
AD変換部180は、それぞれの撮像領域131に対応して設けられる。
図1においては、第1撮像領域131−1および第2撮像領域131−2に対応する第1AD変換部180−1および第2AD変換部180−2を示している。それぞれのAD変換部180は、対応する撮像領域131における電荷蓄積量に応じたアナログの画像信号をデジタル画像信号に変換する信号変換部の一例である。第1AD変換部180−1は、第1画像信号を第1デジタル画像信号に変換し、第2AD変換部180−2は、第2画像信号を第2デジタル画像信号に変換する。また、撮像領域131に複数の光電変換部が含まれる場合、AD変換部180は、複数の光電変換部が発生した電荷量を順番に読み出して、デジタル画像信号に変換してよい。
【0013】
ランプ生成部182は、少なくとも2つ設けられる。
図1においては、第1AD変換部180−1および第2AD変換部180−2に対応して設けられた第1ランプ生成部182−1および第2ランプ生成部182−2を示している。それぞれのランプ生成部182は、ランプ信号を生成する。それぞれのランプ生成部182が生成するランプ信号の傾き等の特性は、ランプ生成部182毎に独立して制御可能である。ランプ生成部182は、複数のAD変換部180と一対一に対応して設けられてよく、少なくとも一部のランプ生成部182は、2以上のAD変換部180に共有されてもよい。
【0014】
それぞれのAD変換部180は、対応するランプ生成部182が生成したランプ信号と、対応する画像信号との比較結果に基づいて、画像信号をデジタル信号に変換する。例えばAD変換部180は、ランプ信号を受け取ったタイミングから、ランプ信号のレベルと画像信号のレベルとが交差するタイミングまでの時間に応じたデジタル値を出力することで、画像信号のレベルをデジタル値に変換する。
【0015】
本例の撮像素子100は、複数のランプ生成部182を備えるので、撮像領域131毎に異なる特性のランプ信号を用いることができる。例えば、第1撮像領域131−1および第2撮像領域131−2に対して異なる傾きのランプ信号を用いることで、撮像領域131が出力する画像信号のアナログレベルに対する、デジタル画像信号のデジタル値のゲインを異ならせることができる。また、第1撮像領域131−1および第2撮像領域131−2に対して、異なるタイミングで発生させたランプ信号を用いることで、撮像領域131が出力する画像信号の読み出しタイミングを異ならせることができる。
【0016】
図2は、撮像領域131およびAD変換部180の構成例を示す図である。本例において、複数の撮像領域131を含む撮像部120は、撮像チップ113に設けられる。また、複数のAD変換部180および複数のランプ生成部182は、信号処理チップ111に設けられる。
図2においては、一組の撮像領域131、AD変換部180および複数のランプ生成部182を示している。
【0017】
撮像チップ113および信号処理チップ111は、例えば半導体チップである。信号処理チップ111は、撮像チップ113と積層される。例えば信号処理チップ111は、撮像チップ113と重なるように配置され、バンプ109等を介して撮像チップ113と電気的に接続される。このように、撮像部120と、AD変換部180およびランプ生成部182とを別のチップに設けることで、撮像部120の面積の増大を抑制しつつ、複数のAD変換部180および複数のランプ生成部182を容易に設けることができる。また、それぞれの光電変換部104とAD変換部180との間の配線長を短くすることができ、画像信号を精度よく読み出すことができる。
【0018】
撮像領域131は、一つの光電変換部104、転送トランジスタ152、リセットトランジスタ154、増幅トランジスタ156および選択トランジスタ158を有する。転送トランジスタ152のソースおよびドレインはそれぞれ、光電変換部104の出力端、および、増幅トランジスタ156のゲートに接続される。光電変換部104の出力端と、転送トランジスタ152のソースとの間の配線における寄生容量は、光電変換部104が発生した電荷を蓄積する電荷蓄積部として機能する。本例において電荷蓄積部は光電変換部104の一部である。転送トランジスタ152のゲートには、電荷蓄積部が蓄積した電荷量を転送するか否かを制御する転送信号Txが入力される。
【0019】
リセットトランジスタ154のドレインには基準電圧VDDが入力され、ソースは増幅トランジスタ156のゲートに接続される。リセットトランジスタ154のゲートには、電荷蓄積部が蓄積した電荷量をリセットするか否かを制御するリセット信号Resetが入力される。
【0020】
増幅トランジスタ156のドレインには基準電圧VDDが入力され、ソースは選択トランジスタ158のドレインに接続される。増幅トランジスタ156は、転送トランジスタ152から転送された電荷量に応じたアナログの画像信号を出力する。選択トランジスタ158のゲートには選択信号Selectが入力され、ソースはAD変換部180に接続されている。選択トランジスタ158は、選択信号Selectに応じて、転送トランジスタ152からの画像信号をAD変換部180に入力する。
【0021】
図2の例においては、一つの光電変換部104を有する撮像領域131を示したが、撮像領域131には複数の光電変換部104が設けられてもよい。撮像領域131に複数の光電変換部104が設けられている場合、対応するAD変換部180は、それぞれの光電変換部104が蓄積した電荷に応じたアナログ信号を順番に読み出す。
【0022】
AD変換部180は、レベル比較器184および期間測定部186を有する。レベル比較器184は、対応するランプ生成部182から入力されたランプ信号のレベルと、対応する撮像領域131からの画像信号のレベルとを比較する。例えばレベル比較器184は、画像信号のレベルがランプ信号のレベルよりも小さい期間では論理値0を出力し、画像信号のレベルがランプ信号のレベル以上の期間では論理値1を出力する。
【0023】
期間測定部186は、ランプ生成部182がレベル比較器184へのランプ信号の入力を開始したタイミングから、レベル比較器184が論理値1を出力するまでの期間を測定する。期間測定部186は、所定の周波数のクロック信号を受け取り、当該期間内における当該クロック信号のパルス数を計数するカウンタであってよい。期間測定部186は、計測した期間の長さに応じたデジタル値を出力する。一例として、期間測定部186は、当該期間内において計数したクロック信号のパルス数をデジタル値として出力する。
【0024】
本例のAD変換部180によれば、ランプ信号の傾きに応じて、ランプ生成部182がレベル比較器184へのランプ信号の入力を開始したタイミングから、レベル比較器184が論理値1を出力するまでの期間が変化する。このため、ランプ信号の傾きにより、AD変換部180におけるゲインを制御することができる。
【0025】
図3は、第1撮像領域131−1および第2撮像領域131−2の動作例を示すタイミングチャートである。本例では、第1撮像領域131−1および第2撮像領域131−2に対して、異なる傾きのランプ信号を用いる。
【0026】
図3において、ADC1 inputは、第1AD変換部180−1に入力される第1画像信号の波形を示し、Ramp1は、第1ランプ生成部182−1が生成する第1ランプ信号の波形を示し、ADC1 outは、第1AD変換部180−1が出力するデジタル値の大きさを、時間軸における長さで示している。同様に、ADC2 inputは、第2AD変換部180−2に入力される第2画像信号の波形を示し、Ramp2は、第2ランプ生成部182−2が生成する第2ランプ信号の波形を示し、ADC2 outは、第2AD変換部180−2が出力するデジタル値の大きさを、時間軸における長さで示している。
【0027】
本例では、比較のために第1画像信号および第2画像信号の波形を同一とする。また、本例の撮像素子100は、いわゆる相関二重サンプリングCDSを行う。リセットトランジスタ154にHレベルのリセット信号が入力されると、それぞれの光電変換部104が蓄積した電荷がリセットされ、それぞれのAD変換部180に入力される画像信号のレベルは所定の基準レベルとなる。
【0028】
画像信号のレベルが安定した状態で、それぞれのランプ生成部182はランプ信号を生成する。本例においてランプ信号の初期レベルは画像信号の基準レベルよりも大きく、時間と共に一定の割合でレベルが減少する。AD変換部180は、ランプ信号のレベル減少の開始タイミングから、ランプ信号のレベルが画像信号のレベルよりも小さくなるタイミングまでの期間を測定する。これにより、AD変換部180は、画像信号の基準レベルを示すデジタル値を出力する。
【0029】
次に、転送トランジスタ152に転送信号Txが入力されると、光電変換部104が蓄積した電荷量に応じた画像信号が、AD変換部180に入力される。画像信号のレベルが安定した状態で、ランプ生成部182はランプ信号を生成する。AD変換部180は、ランプ信号のレベル減少の開始タイミングから、ランプ信号のレベルが画像信号のレベルよりも小さくなるタイミングまでの期間を測定する。これにより、AD変換部180は、画像信号のレベルを示すデジタル値を出力する。当該レベルと、基準レベルとの差分により、光電変換部104の画素の輝度値を算出する。
【0030】
上述したように、本例においては、第1撮像領域131−1および第2撮像領域131−2に対して異なる傾きのランプ信号を用いる。このため、
図3に示すように、画像信号の波形が同一であっても、出力されるデジタル画像信号の値は異なる。例えば、ランプ信号の波形の傾きが大きいほど、デジタル画像信号の値は小さくなる。このように、それぞれのランプ信号の傾きを独立に制御することで、それぞれのAD変換部180における、入出力間のゲインを制御することができる。
【0031】
それぞれのランプ生成部182は、対応する光電変換部104における感度の差に応じて、異なる傾きのランプ信号を生成してよい。ここで感度とは、入射光の強度に対する、画像信号のレベルのゲインを指す。また、感度は、入射光の特定の波長成分の強度に対する、画像信号のレベルのゲインを指してもよい。
【0032】
図4は、複数の撮像領域131の例を示す図である。本例において第1撮像領域131−1は複数の第1光電変換部104−1を有し、第2撮像領域131−2は複数の第2光電変換部104−2を有する。なお、
図4では2つの撮像領域131だけを図示しているが、撮像部120にはより多くの撮像領域131が含まれる。それぞれの光電変換部104は、いずれかの撮像領域131に含まれる。なお、それぞれの光電変換部104には、
図2に示した各トランジスタが設けられる。
【0033】
第1光電変換部104−1は、入射光が通過した光学系の焦点位置を検出する焦点検出用の光電変換部である。ただし、第1光電変換部104−1が出力する信号は、焦点検出の他にも、画像を構成する画像信号としても用いられる。第2光電変換部104−2は、焦点検出用ではない光電変換部である。
【0034】
一般に、焦点検出用の第1光電変換部104−1における感度は、他の第2光電変換部104−2における感度とは異なる。例えば第1光電変換部104−1は、受光面の半分を遮光する遮光部122を有する。つまり、第1光電変換部104−1における感度は、他の第2光電変換部104−2の半分程度になる場合がある。第1ランプ生成部182−1は、当該感度の減少を補償するランプ信号を生成する。例えば第1ランプ生成部182−1は、第2ランプ信号に比べて傾きが半分のランプ信号を生成する。これにより、第1AD変換部180−1におけるゲインは第2AD変換部180−2におけるゲインの2倍になり、第1光電変換部104−1と第2光電変換部104−2における感度の差を補償することができる。
【0035】
図5は、複数の撮像領域131の他の例を示す図である。本例の撮像部120は、3つの撮像領域131を有する。
図5においては、それぞれの撮像領域131に含まれる1または2個の光電変換部104を示しており、撮像領域131全体の構成は省略している。第1撮像領域131−1に含まれる第1光電変換部104−1は、入射光のうち、第1波長成分を第1画像信号に変換する。第2撮像領域131−2に含まれる第2光電変換部104−2は、入射光のうち、第1波長成分とは異なる第2波長成分を第2画像信号に変換する。第3撮像領域131−3に含まれる第3光電変換部104−3は、入射光のうち、第1波長成分および第2波長成分とは異なる第3波長成分を第3画像信号に変換する。本例において第1波長成分は緑色に対応する成分であり、第2波長成分は青色に対応する成分であり、第3波長成分は赤色に対応する成分である。それぞれの光電変換部104は、所定の波長成分を通過させるカラーフィルタを有してよい。
【0036】
それぞれの光電変換部104は、異なる特性のカラーフィルタ等を通過した入射光を画像信号に変換するので、カラーフィルタ等を通過する前の入射光に対する、画像信号の感度は必ずしも一致しない。それぞれのランプ生成部182は、対応する光電変換部104の感度に応じた傾きのランプ信号を生成する。これにより、それぞれの光電変換部104の感度の差異を補償することができる。
【0037】
なお、ランプ生成部182は、同一感度の複数の撮像領域131に対して共通に設けられてよい。例えば撮像素子100は、緑色、青色、赤色の各色に対応する3つのランプ生成部182を備え、それぞれのランプ生成部182は、各色に対応する1以上の撮像領域131に対応する1以上のAD変換部180にランプ信号を供給してよい。また、撮像素子100は、
図4に示した焦点検出用の撮像領域131に対応するランプ生成部182を更に備えてもよい。
【0038】
図6は、複数の撮像領域131の他の例を示す図である。本例におけるランプ生成部182は、対応する撮像領域131の位置に応じて、ランプ信号の傾きを制御する。例えば、ランプ生成部182は、撮像領域全体の中心からの距離に応じて、ランプ信号の傾きを制御してよい。このような制御により、光学系の特性により、撮像領域131の位置に応じて入射光量にばらつきが生じた場合であっても、当該ばらつきによる画像信号のレベル差を補償することができる。それぞれの撮像領域131に対してどのようなランプ信号の傾きを採用するかは、既知の基準光を入射したときに、それぞれの撮像領域131が出力する画像信号のレベルに基づいて決定してよい。
【0039】
図7は、撮像部120および複数のAD変換部180の構成例を示す図である。なお
図7においては、ランプ生成部182を省略しているが、AD変換部180およびランプ生成部182は一対一に設けられる。
【0040】
撮像部120は、行列状に配置された複数の光電変換部104を有する。本例の撮像部120は、列方向にN個、行方向にM個の光電変換部104を有する。また、本例においてAD変換部180は、P×M個設けられる。なお、PはNの約数であり、
図7の例ではP=4である。
【0041】
本例において、それぞれの撮像領域131はN/P個の光電変換部104を含む。AD変換部180および撮像領域131は一対一に対応する。つまり、それぞれのAD変換部180は、N/P個の光電変換部104と対応して設けられ、対応する光電変換部104の画像信号を順次読み出す。本例においては、AD変換部180は、各列に4個設けられる。それぞれのAD変換部180は、当該列において4個毎に配置された光電変換部104に接続される。
【0042】
例えば第1AD変換部180−1は、当該列における1、5、9、・・・、n、n+4、・・・、N−3番目の光電変換部104に接続される。同様に、第2AD変換部180−2は、当該列における2、6、10、・・・、n+1、n+5、・・・、N−2番目の光電変換部104に接続される。第3AD変換部180−3は、当該列における3、9、11、・・・、n+2、n+7、・・・、N−1番目の光電変換部104に接続され、第4AD変換部180−4は、当該列における4、8、12、・・・、n+3、n+7、・・・、N番目の光電変換部104に接続される。
【0043】
なお
図7に示す例において、複数のAD変換部180および複数のランプ生成部182は、撮像部120において複数の光電変換部104と同一面に設けられる。同一列に設けられたP個のAD変換部180は、同一のタイミングで画像信号を読み出してよく、異なるタイミングで画像信号を読み出すこともできる。
【0044】
図8は、同一列に設けられた4個のAD変換部180の動作例を示すタイミングチャートである。本例では、同一列における光電変換部104の画像信号を、4個ずつ同時に読み出す。
図8においてSerectxは、x番目のAD変換部180に画像信号を入力する光電変換部104の番号を示している。
【0045】
それぞれの光電変換部104には、同一のリセット信号Resetが入力される。リセット信号Resetの周期は、一例として2〜20μsである。そして、n、n+1、n+2、n+3番目の光電変換部104に、同一タイミングの転送信号Txが入力される。また、画像信号を読み出すべき光電変換部104として、n、n+1、n+2、n+3番目の光電変換部104が選択信号Serectにより同時に選択される。それぞれのAD変換部180は、選択された光電変換部104の画像信号を同時に読み出す。
【0046】
そして、次のリセット信号Resetに応じて、同様の手順でn+4、n+5、n+6、n+7番目の光電変換部104の画像信号が同時に読み出される。このような動作により、所定の周期(例えば、2〜20μs)毎に、P個(
図8の例では4個)の光電変換部104の画像信号が同時に読み出される。このため、各列における光電変換部104の画像信号をローリング方式で読み出す場合に、読み出しタイミングの差は、リセット信号Resetの周期となる。
【0047】
図9は、
図8に示した動作例における、第1AD変換部180−1および第2AD変換部180−2の動作の詳細を示すタイミングチャートである。なお、本例においては、
図3に示した例と同様に、第1ランプ信号Ramp1および第2ランプ信号Ramp2の傾きが異なる。
図3において説明したように、第1AD変換部180−1および第2AD変換部180−2では、ランプ信号の傾きに応じてゲインが異なっている。なお、
図8において説明したように、第1AD変換部180−1および第2AD変換部180−2の動作タイミングは同一である。
【0048】
図10は、同一列に設けられた4個のAD変換部180の他の動作例を示すタイミングチャートである。本例では、4個のAD変換部180の読み出しタイミングが、ΔTずつずれている。具体的には、それぞれのAD変換部180の読み出しタイミングは、リセット信号の周期(例えば2〜20μs)をPで除算した値ずつずれている。本例では、読み出しタイミングのずれΔTは、ΔT=2〜20μs/4=0.5〜5μsである。
【0049】
本例では、それぞれの光電変換部104に入力されるリセット信号の位相が、ΔTずつずれている。また、それぞれの光電変換部104に入力される転送信号Txおよび選択信号Selectの位相も、ΔTずつずれている。また、AD変換部180の読み出しタイミングも、ΔTずつずれている。
【0050】
図11は、
図10に示した動作例における、第1AD変換部180−1および第3AD変換部180−3の動作の詳細を示すタイミングチャートである。なお、本例においては、
図3に示した例と同様に、第1ランプ信号Ramp1および第3ランプ信号Ramp3の傾きが異なる。
【0051】
また、AD変換部180の読み出しタイミングをΔTずつずらすべく、それぞれのランプ生成部182がランプ信号を生成するタイミングも、ΔTずつずれている。つまり、第1ランプ信号Ramp1と、第3ランプ信号Ramp3では、2×ΔTだけタイミングがずれている。それぞれのランプ生成部182がランプ信号を生成するタイミングは、例えば対応するリセット信号Resetを所定の遅延量で遅延させたタイミングである。
【0052】
図10および
図11に示したように、ランプ信号のタイミングをずらすことで、ローリング方式で画像信号を読み出すときの読み出しタイミングの差を、
図8および
図9に示した例に比べて、1/P倍にすることができる。このため、歪の少ない画像を取得することができる。
【0053】
図12は、ローリング読み出しにおける読み出しタイミング差のイメージを示す図である。
図12の上側が
図8および
図9に示した例における読み出しタイミング差を示しており、下側が
図10および
図11に示した例における読み出しタイミング差を示す。
【0054】
図12において、行方向の左端が、各行における光電変換部104の読み出しタイミングを示している。つまり、行方向における段差がタイミング差を示す。上述したように、ランプ生成部182におけるランプ信号のタイミングをずらすことで、読み出しタイミング差を1/P倍にできる。
【0055】
図13Aは、複数のランプ生成部182の構成例を示す図である。本例においては、撮像素子100は、シードランプ生成部190と、複数のランプ生成部182aを有する。シードランプ生成部190は、予め定められた傾きのシードランプ信号を生成する。本例において、それぞれのランプ生成部182aは、シードランプ信号を分岐して受け取り、シードランプ信号を増幅して出力する増幅器を有する。それぞれのランプ生成部182aにおける増幅率は独立して制御可能である。これにより、それぞれのランプ生成部182aは、増幅率に応じた傾きのランプ信号を生成することができる。
【0056】
また、それぞれのランプ生成部182aは、シードランプ信号を遅延させる可変遅延素子を更に有してもよい。これにより、それぞれのランプ生成部182aは、ランプ信号のタイミングを独立して制御することができる。
【0057】
図13Bは、複数のランプ生成部182の他の構成例を示す図である。本例においては、撮像素子100は、クロック生成部192と、複数のランプ生成部182bと、ランプ制御部188とを有する。クロック生成部192は、予め定められた周波数のクロック信号を生成する。本例において、それぞれのランプ生成部182bは、ランプ制御部188から与えられるデジタル信号を、クロック信号の周波数で出力するDA変換器を有する。ランプ制御部188は、ランプ生成部182bに対して、所定の傾きで値が変化するデジタル値を順次入力して、ランプ信号を出力させる。
【0058】
ランプ制御部188は、デジタル値の傾きを、ランプ生成部182b毎に独立に制御することで、異なる傾きのランプ信号を出力させることができる。また、ランプ制御部188は、デジタル値を入力するタイミングを、ランプ生成部182b毎に独立に制御することで、異なる開始タイミングのランプ信号を出力させることができる。
【0059】
図14は、本実施形態に係る撮像素子100の断面図である。本例では、いわゆる裏面照射型の撮像素子100を示すが、撮像素子100は裏面照射型に限定されず、表面照射型であってもよい。撮像素子100は、撮像チップ113に積層された積層チップを備える構造であればよい。
【0060】
本例の撮像素子100は、入射光に対応した画像信号を出力する撮像チップと113と、画像信号を処理する信号処理チップ111と、画像信号を記憶するメモリチップ112とを備える。これら撮像チップ113、信号処理チップ111およびメモリチップ112は積層されており、Cu等の導電性を有する複数のバンプ109により互いに電気的に接続される。本例では、信号処理チップ111およびメモリチップ112が、上述した積層チップに相当する。
【0061】
なお、図示するように、入射光は主に白抜き矢印で示すZ軸プラス方向へ向かって入射する。本実施形態においては、撮像チップ113において、入射光が入射する側の面を裏面と称する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面右方向をX軸プラス方向、Z軸およびX軸に直交する紙面手前方向をY軸プラス方向とする。
【0062】
撮像チップ113の一例は、裏面照射型のMOSイメージセンサである。撮像チップ113は、
図1から
図13Bに示した撮像部120に対応する。PD層106は、配線層108の裏面側に配されている。PD層106は、光に応じた電荷を生成する複数の光電変換部104を有する。撮像チップ113は、当該電荷に応じた画像信号を出力する。本例のPD層106は、二次元的に配された複数の光電変換部104、および、光電変換部104に対応して設けられたトランジスタ105を有する。トランジスタ105は、
図2等における各トランジスタに対応する。
【0063】
PD層106における入射光の入射側にはパッシベーション膜103を介してカラーフィルタ102が設けられる。カラーフィルタ102は、互いに異なる波長領域を透過する複数の種類を有しており、光電変換部104のそれぞれに対応して特定の配列を有している。カラーフィルタ102、光電変換部104およびトランジスタ105の組が一つの画素を形成する。
【0064】
カラーフィルタ102における入射光の入射側には、それぞれの画素に対応して、マイクロレンズ101が設けられる。マイクロレンズ101は、対応する光電変換部104へ向けて入射光を集光する。
【0065】
配線層108は、PD層106からの画像信号を信号処理チップ111に伝送する配線107を有する。配線107は多層であってもよく、また、受動素子および能動素子が設けられてもよい。
【0066】
配線層108の表面には複数のバンプ109が配される。当該複数のバンプ109が信号処理チップ111の対向する面に設けられた複数のバンプ109と位置合わせされて、撮像チップ113と信号処理チップ111とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0067】
同様に、信号処理チップ111およびメモリチップ112の互いに対向する面には、複数のバンプ109が配される。これらのバンプ109が互いに位置合わせされて、信号処理チップ111とメモリチップ112とが加圧等されることにより、位置合わせされたバンプ109同士が接合されて、電気的に接続される。
【0068】
なお、バンプ109間の接合には、固相拡散によるCuバンプ接合に限らず、はんだ溶融によるマイクロバンプ結合を採用してもよい。また、バンプ109は、例えば後述する一つの出力配線に対して一つ設けてよく、複数設けてもよい。バンプ109の大きさは、光電変換部104のピッチよりも大きくてもよい。また、画素が配列された画素領域以外の周辺領域において、画素領域に対応するバンプ109よりも大きなバンプを併せて設けてもよい。
【0069】
信号処理チップ111は、撮像チップ113が出力するアナログの画像信号を受け取る。信号処理チップ111は、受け取った画像信号に対して所定の信号処理を行い、メモリチップ112に出力する。メモリチップ112は、信号処理チップ111から受け取る信号を保存する。
【0070】
本例の信号処理チップ111には、複数のAD変換部180および複数のランプ生成部182が設けられる。信号処理チップ111は、当該デジタル画像信号に対して、補正等の所定の演算を行ってよい。
【0071】
複数のAD変換部180の少なくとも一部は、複数の画素が設けられた面と平行なADC配置面において、二次元に配置される。例えば、撮像チップ113において複数の画素が行方向および列方向に沿って二次元に配置されており、信号処理チップ111において複数のAD変換部180が行方向および列方向に沿って二次元に配置される。複数のAD変換部180は、信号処理チップ111において等間隔に配置されることが好ましい。また、複数のAD変換部180は、信号処理チップ111のADC配置面において、不均一に配置されてもよい。例えば複数のAD変換部180は、信号処理チップ111のADC配置面の中央よりも、端部のほうが密度が高くなるように配置されてもよい。
【0072】
また、複数のAD変換部180は、信号処理チップ111において、Z軸方向における位置が異なる複数のADC配置面に配置されてもよい。つまり、信号処理チップ111は多層チップであり、複数のAD変換部180は、異なる層に設けられてよい。この場合においても、複数のAD変換部180が配置された位置を、単一のADC配置面に投影した場合に、それぞれのAD変換部180が等間隔に配置されることが好ましい。
【0073】
また、信号処理チップ111は、表裏面にそれぞれ設けられた回路を互いに接続するTSV(シリコン貫通電極)110を有する。TSV110は、周辺領域に設けられることが好ましい。また、TSV110は、撮像チップ113の周辺領域、メモリチップ112にも設けられてよい。
【0074】
図15は、実施例に係る撮像装置500の構成例を示すブロック図である。撮像装置500は、撮影光学系としての撮影レンズ520を備え、撮影レンズ520は、光軸OAに沿って入射する被写体光束を撮像素子100へ導く。撮影レンズ520は、撮像装置500に対して着脱できる交換式レンズであっても構わない。撮像装置500は、撮像素子100、システム制御部501、駆動部502、測光部503、ワークメモリ504、記録部505、および表示部506を主に備える。
【0075】
撮影レンズ520は、複数の光学レンズ群から構成され、シーンからの被写体光束をその焦点面近傍に結像させる。なお、
図15では瞳近傍に配置された仮想的な1枚のレンズで代表して表している。駆動部502は、システム制御部501からの指示に従って撮像部120のタイミング制御、領域制御等の電荷蓄積制御を実行する制御回路である。本例において駆動部502およびシステム制御部501は、
図1から
図13Bに関連して説明したAD変換部180の機能を担ってよい。
図14に示したように、駆動部502およびシステム制御部501を形成する制御回路の一部は、チップ化されて、撮像チップ113に積層されてもよい。
【0076】
撮像素子100は、画像信号をシステム制御部501の画像処理部511へ引き渡す。撮像素子100は、
図1から
図13Bにおいて説明した撮像素子100と同一である。画像処理部511は、ワークメモリ504をワークスペースとして種々の画像処理を施し、画像データを生成する。例えば、JPEGファイル形式の画像データを生成する場合は、ホワイトバランス処理、ガンマ処理等を施した後に圧縮処理を実行する。生成された画像データは、記録部505に記録されるとともに、表示信号に変換されて予め設定された時間の間、表示部506に表示される。
【0077】
測光部503は、画像データを生成する一連の撮影シーケンスに先立ち、シーンの輝度分布を検出する。測光部503は、例えば100万画素程度のAEセンサを含む。システム制御部501の演算部512は、測光部503の出力を受けてシーンの領域ごとの輝度を算出する。演算部512は、算出した輝度分布に従ってシャッタ速度、絞り値、ISO感度を決定する。なお、上記AEセンサに用いられる画素を撮像部120内に設けてもよく、この場合には当該撮像部120とは別個の測光部503を設けなくてもよい。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0079】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。