特許第6413298号(P6413298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

特許6413298ポリウレタン及び、ポリウレタンの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413298
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】ポリウレタン及び、ポリウレタンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20181022BHJP
   C08G 64/02 20060101ALI20181022BHJP
   D01F 6/70 20060101ALI20181022BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20181022BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20181022BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   C08G18/42 044
   C08G64/02
   D01F6/70 A
   D06N3/14 101
   C09D175/08
   C08G18/48 054
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-69038(P2014-69038)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189886(P2015-189886A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽子
(72)【発明者】
【氏名】長濱 寿史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】金森 芳和
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−45678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/42
C08G 18/48
C08G 64/02
C09D 175/08
D01F 6/70
D06N 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボネート結合を有するポリエーテルポリオール(a)と、イソシアネート化合物(b)を反応させて製造されるポリウレタンであって、ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価が50以下であり、ポリエーテルポリオール(a)中に、ポリアルキレンエーテルグリコール由来の構造単位を含み、該ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であるポリウレタン。
【請求項2】
ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量が2040以上である請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量が100〜5000である請求項1又は2に記載のポリウレタン
【請求項4】
ポリエーテルポリオール(a)とイソシアネート化合物(b)と共に、さらに鎖延長剤(c)を反応させて製造される請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリウレタン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンを使用した繊維。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンを使用した人工/合成皮革。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンを使用したコーティング剤。
【請求項8】
ポリアルキレンエーテルグリコールとカーボネート化合物を反応させて得られた水酸基価が50以下のポリエーテルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)及び鎖延長剤(c)を付加重合反応させるポリウレタンの製造方法であって、該ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であるポリウレタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリウレタン及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン及びポリウレタンウレアは様々な分野で応用されている。ポリウレタンは、その主たるソフトセグメント部を構成する原料ポリオールの種類により、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールなどに代表されるポリエーテルタイプ、ジカルボン酸系ポリエステルに代表されるポリエステルポリオールタイプ、ポリカプロラクトンに代表されるポリラクトンタイプ、並びにカーボネート源とジオールを反応させて得られるポリカーボネートタイプに分けられる(非特許文献1)。その中でも特に、ポリテトラメチレングリコールをポリエーテルポリオール成分として使用したポリウレタンは、耐摩耗性、耐加水分解性及び弾性回復性に優れ、弾性繊維や合成皮革・人工皮革を初めとして各種用途で使用されている。
【0003】
近年、ポリウレタンを原料にした弾性繊維や合成皮革・人工皮革等において、用途に応じた各種物性及び弾性回復性がより高い素材が求められている。
そのため、原料のポリエーテルポリオール成分としてポリオキシテトラメチレングリコールを用いたポリウレタンについて目的に応じた各種物性を向上させるために、使用するポリエーテルポリオールを改良する方法が種々提案されている。
例えば特許文献1には、ポリオキシテトラメチレングリコールとオルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸を反応させて得られたポリエーテルポリオールを原料として用い、寸法安定性に優れた硬質ポリウレタンを製造したことが記載されている。
特許文献2には、ポリオキシテトラメチレングリコールとアルキレンオキサイドをカーボネート結合で連結したポリエーテルポリオールを原料に用いることで、破断時伸びに優れる気泡性ポリウレタンエラストマーを製造したことが記載されている。
特許文献3には、ポリアルキレンエーテルグリコールをカーボネート結合で連結したポリエーテルポリオールを原料に、伸縮性、引張強さ等の各種機械的特性に優れたポリウレタンを製造したことが記載されている。
特許文献4には、ポリテトラメチレンエーテルグリコールをカーボネート結合で連結したポリエーテルポリオールを原料に、低温特性に優れたポリウレタンを製造したことが記載されている。
【0004】
しかし、これらの方法でも、未だ十分な弾性回復性、伸縮特性を持つポリウレタンが得られないといった問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“ポリウレタンの基礎と応用”96頁〜松永勝治 監修、(株)シーエムシー出版、2006年11月発行
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−224753号公報
【特許文献2】特開平4−325511号公報
【特許文献3】特表2009−523867号公報
【特許文献4】特開平2−175721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、弾性回復性、引張強度、引張伸び等の伸縮特性に優れたポリウレタンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリウレタンを製造するにあたり、カーボネート結合を含み特定の分子量以上のポリエーテルポリオールを原料として用いることで、伸縮特性に優れるポリウレタンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の要旨は以下である。
【0010】
[1] カーボネート結合を有するポリエーテルポリオール(a)と、イソシアネート化合物(b)を反応させて製造されるポリウレタンであって、ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価が55以下であり、ポリエーテルポリオール(a)中に、ポリアルキレンエーテルグリコール由来の構造単位を含み、該ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であるポリウレタン。
【0011】
[2] ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量が2040以上である[1]に記載のポリウレタン。
【0013】
] ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量が100〜5000である[又は[2]に記載のポリウレタン
【0015】
] ポリエーテルポリオール(a)とイソシアネート化合物(b)と共に、さらに鎖延長剤(c)を反応させて製造される[1]〜[]のいずれかに記載のポリウレタン。
【0016】
] [1]〜[]のいずれかに記載のポリウレタンを使用した繊維。
【0017】
] [1]〜[]のいずれかに記載のポリウレタンを使用した人工/合成皮革。
【0018】
] [1]〜[]のいずれかに記載のポリウレタンを使用したコーティング剤。
【0019】
] ポリアルキレンエーテルグリコールとカーボネート化合物を反応させて得られた水酸基価が55以下のポリエーテルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)及び鎖延長剤(c)を付加重合反応させるポリウレタンの製造方法であって、該ポリアルキレンエーテルグリコールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であるポリウレタンの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐摩耗性、耐加水分解性、耐光性、耐酸化性、耐油性、加工性といった特性に優れる上に、弾性回復性、引張強度、引張伸び等の伸縮特性にも優れたポリウレタン及びその製造方法を提供することができる。
特に弾性回復性、引張強度、引張伸び等の伸縮特性は、ポリウレタンを原料に製造される繊維において極めて重要な性質であり、これらに優れる本発明のポリウレタンは特に弾性繊維の原料に適している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に記載するが、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下に記載の態様に限定されない。
【0022】
[本発明のポリウレタン]
本発明のポリウレタンは、水酸基価が55以下で、構造中にカーボネート結合を有するポリエーテルポリオール(a)と、イソシアネート化合物(b)を反応させて製造される。
【0023】
尚、本発明において、ポリウレタンとは、特に限定がない限り、類似の物性を有することが従来から知られているポリウレタンとポリウレタンウレアの両者を言う。
ここで、ポリウレタンとポリウレタンウレアの構造的特徴の違いとしては、ポリウレタンは、主としてウレタン結合によって連鎖構造を形成するポリマーであり、ポリウレタンウレアは、主としてウレタン結合及びウレア結合によって連鎖構造を形成するポリマーである。原料面からの違いとしては、ポリウレタンは、鎖延長剤として炭素数10以下の短鎖ポリオールを使用して製造されるものであり、ポリウレタンウレアは、鎖延長剤としてポリアミン化合物を使用して製造されるものである。
【0024】
<ポリエーテルポリオール(a)>
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(a)(以下、「本発明のポリエーテルポリオール(a)」と称す場合がある。)は、ポリエーテルポリオール構造中にカーボネート結合を有する必要がある。なお、カーボネート結合以外のポリエーテルポリオール構造は特に限定されないが、ポリアルキレンエーテルグリコール由来の構造単位が含まれることが好ましい。
【0025】
ポリエーテルポリオール(a)の好ましい様態としては、ポリアルキレンエーテルグリコールをカーボネート結合で連結したものであり、ポリアルキレンエーテルグリコール同士をカーボネート結合で直接連結したものでもよいし、ポリアルキレンエーテルグリコールとは異なるポリオール等を介してカーボネート結合で間接的に連結したものでもよい。
【0026】
本発明のポリエーテルポリオール(a)の水酸基価は、55以下である必要があり、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、更に好ましくは40以下、特に好ましくは35以下であり、下限は特に限定されないが、通常10以上、好ましくは15以上、より好ましくは20以上である。
【0027】
尚、本発明における水酸基価とは、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法によって測定した値である。
ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価が高すぎると、本発明の特徴である優れた弾性回復性率、引張強度、引張伸び等の伸縮特性が発現しなくなり、低すぎるとポリエーテルポリオール(a)の粘度が高くなり作業性を低下させるとともに、引張強度が低下しすぎるといった問題が発生する。
【0028】
一般に、ポリウレタンやポリウレタンウレアは、ハードセグメントとソフトセグメントとから構成されるブロック共重合体であるが、弾性回復性を向上させるためにはこれらのセグメントが明確に相分離していることが好ましい。
ハードセグメントとソフトセグメントの相分離性を向上させるためには、ソフトセグメントを構成するポリエーテルポリオールの水酸基価が低い方が有利であるが、一方でポリエーテルポリオールの水酸基価が低くなると、ポリエーテルポリオール自身が結晶化する傾向にある。このようにソフトセグメントであるポリエーテルポリオールが結晶化してしまうと、たとえ相分離性が向上したとしても、弾性回復性はむしろ悪化する。
本発明においては、ハードセグメントとソフトセグメントの相分離性を向上させながら、ソフトセグメントの結晶化を抑制するための手段を検討した結果、ポリエーテルポリオール(a)の水酸基価が規定の値以下であっても、ソフトセグメント中にカーボネート結合を有する構造とすれば、意外にも弾性回復性が顕著に向上することを見出したものである。
【0029】
また、本発明のポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量は、上記水酸基価から求めることができる。本発明のポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量は通常2040以上であり、好ましくは2300以上、より好ましくは2500以上、更に好ましくは2800以上、特に好ましくは3000以上、最も好ましくは3200以上である。上限は、特に限定されないが、通常9000以下が好ましく、7000以下がより好ましく、5000以下が更に好ましく、4500以下が最も好ましい。
【0030】
ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量が小さすぎると、本発明の特徴である優れた弾性回復性率、引張強度、引張伸び等の伸縮特性が発現しにくくなり、大きすぎるとポリエーテルポリオール(a)の粘度が高くなり作業性を低下させるとともに、引張強度が低下しすぎるといった問題が発生する傾向にある。
【0031】
尚、ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法により求めることができる。
【0032】
本発明において用いられるポリエーテルポリオール(a)の性状は特に限定されるものではないが、常温で液状又はワックス状のものであり、ポリエーテルポリオール(a)の性状や形態は、用途に応じて種々選択すればよい。
【0033】
<ポリアルキレンエーテルグリコール>
本発明においてポリエーテルポリオール(a))に含まれていてもよい構造単位としてポリアルキレンエーテルグリコール由来の構造単位がある。ポリアルキレンエーテルグリコールは、通常、分子内の主骨格中に1つ以上のエーテル結合を有するポリヒドロキシ化合物である。
【0034】
ポリアルキレンエーテルグリコールの主骨格中の繰り返し単位としては、例えば、1,2−エチレングリコール単位、1,2−プロピレングリコール単位、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)単位、2−メチル−1,3−プロパンジオール単位、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール単位、1,4−ブタンジオール(テトラメチレングリコール)単位、2−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、1,7−ヘプタンジオール単位、1,8−オクタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等の炭素数1〜20の飽和炭化水素基が挙げられ、単独の繰り返し単位でポリアルキレンエーテルグリコールを形成していてもよいし、2種以上の繰り返し単位で共重合ポリアルキレンエーテルグリコールを形成していてもよい。これら、繰り返し単位を与える原料は特に限定されないが、好ましくは環状エーテルである。また、これら、繰り返し単位を与える原料は石油由来であっても、バイオマス由来であってもよい。
【0035】
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、前記繰り返し単位を主骨格中に有するポリアルキレンエーテルグリコールのうち、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、1〜20モル%の3−メチルテトラヒドロフランとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルポリオール(例えば、保土ヶ谷化学社製「PTG−L1000」、「PTG−L2000」及び「PTG−L3500」等)及びネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの反応により得られる共重合ポリエーテルグリコール等が好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールがより好ましい。
【0036】
これらのポリアルキレンエーテルグリコールは、単独で用いても二種以上を混合して使用することもでき、求めるポリウレタンの物性に応じて種々選択すればよい。
【0037】
本発明において、ポリエーテルポリオール(a)の原料として用いられるポリアルキレンエーテルグリコールの分子量は、数平均分子量で、下限は通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは800以上、特に好ましくは1000以上であり、上限は通常5000以下、好ましくは4000以下、より好ましくは3500以下、更に好ましくは2500以下、である。
【0038】
ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量を前記上限以下とすることにより、生成するポリエーテルポリオール(a)の分子量が非常に大きく粘度が高くなりすぎるのを防ぎ、ポリウレタン製造時の操作性及び生産性を向上させることができる。一方、ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量を前記下限以上とすることにより、生成するポリエーテルポリオール(a)の粘度が取扱いに適したものとなり、均質なポリウレタンを製造することができる。
【0039】
尚、ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法により求めることができる。
【0040】
<ポリエーテルポリオール(a)の製造方法>
本発明におけるポリエーテルポリオール(a)は、カーボネート結合を含むことを必須とし、好ましくはポリアルキレンエーテルグリコール由来の構造単位を更に含んでいる。
【0041】
本発明のポリエーテルポリオール(a)の製造方法は、公知の方法であれば特に限定はされないが、上記のポリアルキレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオールとカーボネート化合物とを反応させる方法が好ましく用いられる。具体的には、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと炭酸ジエステルとのエステル交換反応等が挙げられる。
【0042】
(カーボネート化合物)
本発明のポリエーテルポリオール(a)の製造に用いる事のできるカーボネート化合物としては、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートまたはアルキレンカーボネート等が挙げられる。具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、エチルイソブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート等のジアリールカーボネート;エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、1,3−ペンチレンカーボネート、1,4−ペンチレンカーボネート、1,5−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートおよび2,4−ペンチレンカーボネート、ネオペンチルカーボネート等のアルキレンカーボネートが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
カーボネート化合物の中でも炭酸ジエステルが好ましく、中でもジアルキルカーボネートが安価かつ回収が容易であり、工業的に製造する上では、効率的であり好ましく、工業原料として容易にかつ安価に入手可能なジエチルカーボネートがより好ましい。
【0044】
これらカーボネート化合物の使用量は、ポリエーテルポリオール(a)の原料であるポリアルキレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオールに対するモル比で、下限は好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上であり、上限は好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0045】
カーボネート化合物の使用量が上記上限超過では得られるポリエーテルポリオール(a)の末端基が水酸基でないものの割合が増加したり、分子量が所定より大きくなる場合があり、前記下限未満では所定の分子量まで重合反応が進行しない場合がある。
【0046】
(エステル交換触媒)
前記エステル交換反応は、触媒の存在しない系で行うことも可能ではあるが、通常は、これらの反応を円滑に進行させるために、金属触媒を用いることができる。
【0047】
前記金属触媒としては、通常のエステル交換反応に使用されているいずれの触媒も用いることができる。
【0048】
エステル交換触媒として利用できる金属は、一般にエステル交換能があるとされている、金属であれば制限なく用いる事ができる。金属の例を挙げると、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;チタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマスなどの遷移金属;ランタン、セリウム、ユーロピウム、イッテルビウムなどランタナイド系金属などが挙げられる。これらの金属は金属の単体として使用される場合と、水酸化物又は塩等の金属化合物として使用される場合があるが、塩として使用される場合の例としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物塩;炭酸塩、炭酸水素塩;酢酸塩、蟻酸塩、安息香酸塩などのカルボン酸塩;メタンスルホン酸やトルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸塩;燐酸塩や燐酸水素塩、燐酸二水素塩などの燐含有の塩;アセチルアセトナート塩を用いることができる。エステル交換触媒としては、前記金属のメトキシドやエトキシドの様なアルコキシドを用いることもできる。
エステル交換触媒としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属の酢酸塩やハロゲン化物、アルコキシドが用いられる。
これらの金属、および金属化合物よりなるエステル交換触媒は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
エステル交換触媒のアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステア燐酸ナトリウム、ステア燐酸カリウム、ステア燐酸セシウム、ステア燐酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、燐酸水素2ナトリウム、燐酸水素2カリウム、燐酸水素2リチウム、フェニル燐酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が挙げられる。
【0050】
アルカリ土類金属化合物の例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステア燐酸マグネシウム、ステア燐酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニル燐酸マグネシウム等が挙げられる。
【0051】
遷移金属化合物の例としては、テトラエチルチタネート、テトライソプロポキシチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートなどのチタンアルコキシド;四塩化チタンなどのチタンのハロゲン化物;酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛塩;塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシドなどのスズ化合物;ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシドなどのジルコニウム化合物;酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、塩化鉛(IV)等の鉛化合物等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、入手が容易で毒性も低く、エステル化またはエステル交換反応に幅広く使用されていることから、イソプロピルチタネート及びn−ブチルチタネート等のチタン系触媒が最も好ましい。
【0053】
エステル交換触媒の使用量は、ポリエーテルポリオール(a)の製造用原料総量に対して0.00001質量%以上が好ましく、0.0001質量%以上が更に好ましく、0.001質量%以上が最も好ましい。また、1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以下が最も好ましい。
触媒の使用量を前記下限以上とすることにより、ポリエーテルポリオール(a)の形成にかかる時間を短縮し、生成物の着色を防ぐことができる。また、前記上限以下とすることにより、生成したポリエーテルポリオール(a)中に残存するエステル交換触媒量を低減し、触媒がポリウレタン化反応に対する過剰な反応促進作用を示すのを防ぐことができる。
【0054】
なお、エステル交換触媒を用いるポリエーテルポリオール(a)の製造では、得られたポリエーテルポリオール(a)中に、エステル交換触媒が残存する事がある。ポリエーテルポリオール(a)中の触媒の残存量が多いとウレタン化反応を想定以上に促進したりすることがあり、好ましくない傾向がある。ポリエーテルポリオール(a)中に残存する触媒量は、エステル交換触媒由来の金属原子の含有量として好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。残存する金属原子の種類としては、上記のエステル交換能を有する金属が挙げられる。
【0055】
(エステル交換反応条件)
ポリアルキレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオールとカーボネート化合物とをエステル交換反応させて本発明のポリエーテルポリオール(a)を製造する際のエステル交換反応の反応温度は、通常100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、通常240℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましく、210℃以下が更に好ましく、200℃以下が特に好ましい。エステル交換反応の初期はアルコールの留出量が多いため、反応初期は上記最適温度範囲の低めの温度で反応を行い、アルコールの留出量が減ってきた反応後半は上記最適温度範囲の高めの温度で反応を行うことが好ましい。具体的には、アルコールやカーボネート化合物の留出が観測されなくなってから、エステル交換反応開始時よりも反応温度を10℃以上高くすることが好ましい。
【0056】
反応温度を前記下限以上とすることにより、エステル交換反応を進行しやすくすることができる。また、反応温度を前記上限以下とすることにより、カーボネート化合物の留出量を減らすことができる。
【0057】
エステル交換反応は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。反応圧力は任意であり、目的に応じて常圧又は減圧下で実施することができる。反応中に生成するアルコールを反応系から除去するために、反応系に不活性ガスを流通させてもよい。
【0058】
又、エステル交換反応の反応時間は、触媒の使用量、反応温度、反応させる基質、製造されるポリエーテルポリオール(a)の物性等により異なるが、通常2時間以上とすることが好ましく、4時間以上とすることがより好ましい。また、通常40時間以下とすることが好ましく、30時間以下とすることがより好ましい。
【0059】
(後処理)
ポリエーテルポリオール(a)からのエステル交換触媒等の除去には通常繁雑な工程を伴うので、生成したポリエーテルポリオール(a)は、一般にエステル交換触媒を分離することなく、そのままポリウレタンの製造に使用することが多い。しかし、触媒の含有量が多い場合やポリウレタンの用途によってはポリエーテルポリオール(a)中のエステル交換触媒を失活させておくことが好ましい。
【0060】
ポリエーテルポリオール(a)中のエステル交換触媒の失活方法としては、例えば、ポリエーテルポリオール(a)を加熱下に水と接触させる方法、並びにポリエーテルポリオール(a)を燐酸、燐酸エステル、亜燐酸及び亜燐酸エステル等の燐化合物で処理する方法等を挙げることができる。
【0061】
水と接触させる前者方法による場合は、例えば、ポリエーテルポリオール(a)に水を1質量%以上添加して、好ましくは70〜150℃、より好ましくは90〜130℃の温度で1〜3時間程度加熱すればよい。その際の加熱による失活処理は、常圧下で行っても加圧下で行ってもよい。失活処理後に、系を減圧にする方法や生成物中に不活性ガスをバブリングさせる方法、有機溶媒を添加し共沸脱水する方法などにより、失活に用いた水分をポリエーテルポリオール(a)から円滑に除去することができる。なお、共沸脱水に用いた有機溶媒については系を減圧することにより除去できる。
【0062】
<イソシアネート化合物(b)>
本発明において用いられるイソシアネート化合物(b)は、特に限定されるものではないが、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’−MDI、パラフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート及びトリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;並びに1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0063】
好適なイソシアネート化合物は、製造するポリウレタンの用途に応じて異なり、例えば、合成/人工皮革の表皮層や塗料のような耐候性を必要とされる用途には、光による黄変が少ない点で脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートを使用することが好ましい。中でも、物性が良好で入手が容易な点で1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。一方、弾性繊維等、強度を必要とされる用途には、凝集力の高い芳香族ジイソシアネートを使用することが好ましく、物性が良く入手が容易な点で、特にトリレンジイソシアネート(TDI)及びジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。又、イソシアネート化合物のNCO基の一部を、ウレタン、ウレア、ビュレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド及びイミド等に変成したものであってもよく、更に多核体には前記以外の異性体を含有しているものも含まれる。
【0064】
本発明のポリウレタンの製造時に用いるこれらのイソシアネート化合物(b)の使用量は、ポリエーテルポリオール(a)の水酸基量、並びに必要に応じて用いる後述の鎖延長剤(c)の水酸基及び/又はアミノ基を合計した1当量に対し、通常0.1当量〜5当量であることが好ましく、0.8当量〜2当量であることがより好ましく、0.9当量〜1.5当量であることが更に好ましく、0.95当量〜1.2当量であることが特に好ましく、0.98当量〜1.1当量であることが最も好ましい。
イソシアネート化合物(b)の使用量を5当量以下とすることにより、未反応のイソシアネート基が、架橋反応等の好ましくない反応を起こすのを防ぎ、所望の物性を得やすくなる。また、0.1当量以上とすることにより、ポリウレタン及びポリウレタンウレアの分子量を十分に大きくすることができ、所望の性能を発現し易くなる。
【0065】
イソシアネート化合物(b)は、ポリエーテルポリオール(a)や必要に応じて用いられる後述の鎖延長剤(c)等、イソシアネート化合物以外のポリウレタン原料に含まれる水分と反応して一部消失するため、それを補填する量を所望のイソシアネート化合物使用量に加えてもよい。具体的には、反応の際イソシアネート化合物と混合する前に、ポリエーテルポリオール(a)や鎖延長剤等の水分量を測定しておき、その水分の物質量の2倍に相当するイソシアネート基を持つイソシアネート化合物を、所定の使用量に加えるものである。
イソシアネート基が水分と反応して消失する機構は、イソシアネート基が水分子との反応でアミン化合物となり、そのアミン化合物が更にイソシアネート基と反応してウレア結合を形成することにより、水1分子に対しイソシアネート基2つが消失するものである。
この消失により必要とされるイソシアネート化合物が不足し、所望の物性が得られなくなる恐れがあるため、上記に記載の方法で水分量に見合う量を補填するためのイソシアネート化合物を添加することが有効である。
【0066】
<鎖延長剤(c)>
本発明のポリウレタンを製造する際は、前記のポリエーテルポリオール(a)及びイソシアネート化合物(b)と共に、更に鎖延長剤(c)を用いてもよい。
本発明において用いてもよい鎖延長剤(c)は、主として、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物、2個以上のアミノ基を有する化合物、水に分類される。この中でも、ポリウレタン製造には短鎖ポリオール、具体的には2個以上のヒドロキシル基を有する化合物が好ましい。また、ポリウレタンウレア製造には、ポリアミン化合物、具体的には2個以上のアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0067】
本発明のポリウレタンは、鎖延長剤(c)として、分子量(数平均分子量)が500以下の化合物を併用すると、ポリウレタンエラストマーのゴム弾性が向上するために、物性上更に好ましい。尚、これらの鎖延長剤(c)は単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0068】
前記2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール及び1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族グリコール;ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン等の脂環族グリコール;並びにキシリレングリコール及びビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香環を有するグリコール等が挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオールが好ましく、特に得られるポリウレタンの物性のバランスが優れる点において1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0069】
又、2個以上のアミノ基を有する化合物としては、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、キシリレンジアミン及び4,4′−ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン及び1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;並びに1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4′−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン及び1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−ペンタンジアミン及び2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン(水添MDA)が好ましい。
【0070】
また、これらの鎖延長剤(c)は、バイオマス資源由来のものを用いることもできる。
【0071】
これらの鎖延長剤(c)の使用量は、イソシアネート化合物(b)の当量からポリエーテルポリオール(a)の水酸基当量を引いた当量を1とした場合、通常0.1当量〜5.0当量であることが好ましく、0.8当量〜2.0当量であることがより好ましく、0.9当量〜1.5当量であることが更に好ましい。
鎖延長剤(c)の使用量を前記上限以下とすることにより、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)が硬くなりすぎるのを防いで所望の特性を得ることができ、溶媒に溶け易く加工し易く、また、未反応の鎖延長剤(c)が残存しにくく、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)の物性を安定化させる。また、前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタン(又はポリウレタンウレア)が軟らかすぎることなく、十分な強度や弾性回復性能や弾性保持性能が得られ、良好な高温特性が得られる。
【0072】
<その他の添加剤等>
本発明のポリウレタンの製造には、以上のポリエーテルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)及び鎖延長剤(c)の他に、ポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて1個の活性水素基を持つ鎖停止剤等を使用することができる。
前記鎖停止剤としては、水酸基を有するエタノール、プロパノール、ブタノール及びヘキサノール等の脂肪族モノオール、並びにアミノ基を有するジエチルアミン、ジブチルアミン、n−ブチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等の脂肪族モノアミン等が例示される。これらは単独使用でも2種以上の併用でもよい。
【0073】
また、本発明のポリウレタンを製造する際、本発明のポリエーテルポリオール(a)と必要に応じてそれ以外のポリオールを併用してもよい。ここで、本発明のポリエーテルポリオール(a)以外のポリオールとは、通常のポリウレタン製造の際に用いるものであれば特に限定されず、例えば本発明のポリエーテルポリオール(a)以外のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。
本発明のポリウレタンの製造に、本発明のポリエーテルポリオール(a)以外のポリオールを用いる場合、本発明のポリエーテルポリオール(a)とそれ以外のポリオールを合わせた質量に対する本発明のポリエーテルポリオール(a)の質量割合は70%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。本発明のポリエーテルポリオール(a)の質量割合が少ないと、ポリウレタン原料として本発明のポリエーテルポリオール(a)を用いることによる前述の効果を十分に得ることができない場合がある。
【0074】
また、本発明のポリウレタンを製造する際、得られるポリウレタンの耐熱性や強度を上げる目的で、必要に応じて3個以上の活性水素基やイソシアネート基を持つ架橋剤を使用してもよい。これらの架橋剤にはトリメチロールプロパンやグリセリン並びにそのイソシアネート変性物、ポリメリックMDI等が使用できる。
【0075】
さらに、本発明のポリウレタン製造時に、必要に応じて他の添加剤を加えてもよい。これらの添加剤としては、「CYANOX1790」(CYANAMID社製)、「IRGANOX245」、「IRGANOX1010」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「Sumilizer GA−80」(住友化学社製)及び2,6−ジブチル−4−メチルフェノール(BHT)等の酸化防止剤、「TINUVIN622LD」、「TINUVIN765」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、「SANOL LS−2626」及び「SANOL LS−765」(以上、三共社製)等の光安定剤、「TINUVIN328」及び「TINUVIN234」(以上、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等の紫外線吸収剤、ジメチルシロキサンポリオキシアルキレン共重合体等のシリコン化合物、赤燐、有機燐化合物、燐及びハロゲン含有有機化合物、臭素または塩素含有有機化合物、ポリ燐酸アンンモニウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン等の添加及び反応型難燃剤、二酸化チタン等の顔料、染料、カーボンブラック等の着色剤、カルボジイミド化合物等の加水分解防止剤、ガラス短繊維、カーボンファイバー、アルミナ、タルク、グラファイト、メラミン、白土等のフィラー、滑剤、油剤、界面活性剤、その他の無機増量剤並びに有機溶媒等が挙げられる。
【0076】
[本発明のポリウレタンの製造方法]
本発明のポリウレタンを製造するには、ポリエーテルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)を主製造用原料として上記記載の各使用量で用い、一般的に実験/工業的に用いられる全ての製造方法により、無溶媒或いは溶媒共存下で実施することができる。本発明のポリウレタンを製造するにあたり、好ましい様態は、ポリエーテルポリオール(a)、イソシアネート化合物(b)及び鎖延長剤(c)を原料としてポリウレタンを製造することである。
【0077】
製造方法の一例としては、前記ポリエーテルポリオール(a)、前記イソシアネート化合物(b)及び前記鎖延長剤(c)を同時に反応させる方法(以下、一段法という)、まず前記ポリエーテルポリオール(a)と前記イソシアネート化合物(b)を反応させて両末端がイソシアネート基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーと前記鎖延長剤(c)を反応させる方法(以下、イソシアネート末端の二段法という)、また、前記ポリエーテルポリオール(a)と前記イソシアネート化合物(b)を反応させて両末端が水酸基のプレポリマーを調製した後に、そのプレポリマーとイソシアネート化合物とを反応させる方法(以下、水酸基末端の二段法という)等の方法が挙げられる。
【0078】
これらの中でもイソシアネート末端の二段法は、ポリエーテルポリオール(a)を予め1当量以上のイソシアネート化合物(b)と反応させることにより、ポリウレタンのソフトセグメントに相当する両末端イソシアネートで封止された中間体を調製する工程を経るものである。二段法は、プレポリマーを一旦調製した後に鎖延長剤(c)と反応させることにより、ソフトセグメント部分の分子量の調整が行いやすいという利点がある。
特に、鎖延長剤(c)がジアミンの場合には、イソシアネート基との反応速度がポリエーテルポリオール(a)の水酸基とジアミンのアミノ基では大きく異なるため、二段法にてポリウレタンウレアを製造することが好ましい。
【0079】
<溶媒>
本発明のポリウレタンの製造を溶媒共存下で行う場合、使用する溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類;ヘキサン及びシクロヘキサン等の炭化水素類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類;クロルベンゼン、トリクレン及びパークレン等のハロゲン化炭化水素類;並びにγ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒及びそれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0080】
これら有機溶媒の中でも、溶解性の観点から、非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒の好ましい具体例を挙げると、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン及びジメチルスルホキシドが挙げられ、より好ましくは非プロトン性アミド系溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0081】
溶媒存在下で反応を行った際に得られるポリウレタン溶液は、ゲル化が進行しにくく、粘度の経時変化が小さい等保存安定性がよく、又、チクソトロピー性も小さいため、フィルム、繊維等に加工するためにも都合がよい。
溶媒存在下で反応を行った際に得られるポリウレタン溶液のポリウレタン濃度は、ポリウレタン溶液の全質量に対して、通常1〜99質量%であることが好ましく、5〜90質量%であることがより好ましく、10〜75質量%であることが更に好ましく、15〜60質量%であることが特に好ましい。ポリウレタン溶液のポリウレタン濃度を前記下限以上とすることにより、後工程で大量の溶媒を除去することが不要とになり生産性を向上させることができる。一方、前記上限以下とすることにより、溶液の粘度を抑え、操作性及び加工性を向上することができる。
尚、ポリウレタン溶液を長期にわたり保存する場合は、常温又はそれ以下の温度で、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で保存することが好ましい。
【0082】
<一段法>
一段法とは、ワンショット法とも呼ばれ、前記ポリエーテルポリオール(a)、前記イソシアネート化合物(b)及び必要に応じて前記鎖延長剤(c)を一緒に仕込むことで反応を行う方法である。反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させることが好ましく、50〜150℃で反応させることが更に好ましい。
前記反応温度は、溶剤の量、使用原料の反応性、反応設備等により異なる。温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低くなるために生産性が低下する傾向があり、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こる傾向がある。
【0083】
一段法は溶媒を用いても用いなくてもよい。溶媒を用いる場合は、上述のような溶媒を、得られるポリウレタン溶液のポリウレタン濃度が上記の範囲となるような量で用いることが出来る。
溶媒を用いない場合は、イソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)等を低圧発泡機や高圧発泡機を使用して反応させてもよいし、高速回転混合機を使用して攪拌混合して反応させてもよい。
また、反応は減圧下脱泡しながら行ってもよい。
【0084】
また一段法の場合、NCO/活性水素基(ポリエーテルポリオール(a)と鎖延長剤(c))の反応当量比は下限が通常0.50であることが好ましく、より好ましくは0.8であり、上限が通常1.5であることが好ましく、より好ましくは1.2の範囲である。
【0085】
前記反応当量比を前記1.5以下とすることにより、過剰のイソシアネート基が副反応を起こしてポリウレタンの物性に好ましくない影響を与えるのを防ぐことができる。また、0.50以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量が十分に上がり、強度又は熱安定性に問題を生じるのを防ぐことができる。
【0086】
<二段法>
二段法は、プレポリマー法ともよばれる。まずポリエーテルポリオール(a)とイソシアネート化合物(b)とを好ましくは0.1〜10.00の反応当量比で反応させたプレポリマーを製造する。次いで該プレポリマーに、両末端がイソシアネート基の場合は多価アルコール及びアミン化合物等の活性水素化合物成分を鎖延長剤(c)として加えることにより、二段階反応させ(イソシアネート末端の二段法)、また、両末端が水酸基の場合は、イソシアネート化合物を加えることにより、二段階反応させる(水酸基末端の二段法)。
【0087】
二段法は無溶媒でも溶媒共存下でも実施することができる。溶媒共存下で実施する場合、前述のような溶媒を、得られるポリウレタン溶液のポリウレタン濃度が上記の範囲となるような量で用いることができる。
【0088】
(イソシアネート末端の二段法)
イソシアネート末端のプレポリマーを合成する場合、(1)まず溶媒を用いないで直接イソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)を反応させてプレポリマーを合成して鎖延長剤(c)との鎖延長反応にそのまま使用してもよいし、(2)(1)の方法でプレポリマーを合成しその後に溶媒に溶かして使用してもよいし、(3)初めから溶媒を用いてイソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)を反応させてもよい。
【0089】
(1)の場合には、本発明では、鎖延長剤(c)と作用させるにあたり、鎖延長剤(c)を溶媒に溶かしたり、溶媒に同時にプレポリマー及び鎖延長剤(c)を導入する等の方法により、ポリウレタンを溶媒と共存する形で得ることが好ましい。
【0090】
NCO/活性水素基(ポリエーテルポリオール(a))の反応当量比は、通常1以上であることが好ましく、1.1以上であることがより好ましい。また、通常10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。
【0091】
NCO/活性水素基(ポリエーテルポリオール(a))の反応当量比を前記上限以下とすることにより、得られるポリウレタンの物性の柔軟性が低下することを防ぎ、良好なポリウレタンの物性が得られる。また、前記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンの弾性率を高め、十分な強度及び熱安定性が得られる。
【0092】
又、鎖延長剤(c)の使用量については特に限定されないが、プレポリマーに含まれるNCO基の当量に対して、通常0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。また、通常5.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。
【0093】
鎖延長剤(c)の使用量を、上記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量を十分に高めて所望の強度や弾性回復性を得ることが出来る。また、上記上限以下とすることで、未反応の鎖延長剤(c)が物性を低下させたり、ポリウレタン成形物とした際にブリードアウトしたりすることを防ぐことができる。
【0094】
両末端がイソシアネート基のプレポリマーに鎖延長剤(c)を反応させる鎖延長反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させることが好ましく、鎖延長剤(c)が多価アルコールの場合は50〜150℃が、一方、鎖延長剤(c)がアミン化合物の場合は0〜60℃が更に好ましい。当該反応温度は溶媒の量、使用原料の反応性及び反応設備等により異なるが、温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために生産性が悪く、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。
【0095】
(水酸基末端の二段法)
水酸基末端のプレポリマーを合成する場合、(1)まず溶媒を用いないで直接イソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)を反応させてプレポリマーを合成してイソシアネート化合物との鎖延長反応にそのまま使用してもよいし、(2)(1)の方法でプレポリマーを合成してその後に溶媒に溶かして使用してもよいし、(3)初めから溶媒を用いてイソシアネート化合物(b)とポリエーテルポリオール(a)を反応させてもよい。
【0096】
NCO/活性水素基(ポリエーテルポリオール(a))の反応当量比は、通常0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。また、通常1以下であることが好ましく、0.95以下であることが更に好ましい。
【0097】
NCO/活性水素基(ポリエーテルポリオール(a))の反応当量比を前記上限以下とすることにより、得られるポリウレタンの分子量が大きくなりすぎて取扱い性を低下させる可能性を防ぐことができる。また、前記下限以上とすることにより、続く鎖延長反応に要する時間を短縮することが出来る。
【0098】
又、鎖延長剤として使用するイソシアネート化合物は、プレポリマーの合成に用いるイソシアネート化合物(b)と同じ化合物であってもよいし、それ以外のイソシアネート化合物であってもよいが、得られるポリウレタンの物性を向上させるためには、イソシアネート化合物(b)と同じ化合物であることが好ましい。
【0099】
鎖延長剤として使用するイソシアネート化合物の使用量については特に限定されないが、プレポリマー合成の際に使用するポリエーテルポリオール(a)等の活性水素基当量に対して、プレポリマー合成に使用したイソシアネート化合物(b)と鎖延長剤として使用するイソシアネート化合物とを合計したイソシアネート当量が、通常0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。また、通常1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。
【0100】
鎖延長剤としてのイソシアネート化合物の使用量を、上記下限以上とすることにより、得られるポリウレタンの分子量を十分に高めて所望の強度や弾性回復性を得ることが出来る。また、上記上限以下とすることで、未反応のイソシアネート化合物が副反応を起こして物性を低下させたりすることを防ぐことができる。
【0101】
両末端が水酸基のプレポリマーにイソシアネート化合物を反応させる鎖延長反応は、通常、各成分を0〜250℃で反応させることが好ましく、50〜150℃が更に好ましい。当該反応温度は溶剤の量、使用原料の反応性及び反応設備等により異なるが、温度が低すぎると反応の進行が遅すぎたり、原料や重合物の溶解性が低いために生産性が低下する傾向があり、又、高すぎると副反応やポリウレタンの分解が起こるので好ましくない傾向がある。反応は、減圧下脱泡しながら行ってもよい。
【0102】
<触媒・安定剤>
ウレタン化反応の際には、ウレタンの重合方法によらず、必要に応じて、触媒及び安定剤等を添加することもできる。その際の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、オクチル酸第一錫、酢酸、燐酸、硫酸、塩酸及びスルホン酸等が挙げられる。
また、安定剤としては、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、ジステアリルチオジプロピオネ−ト、ジ−β−ナフチルフェニレンジアミン及びトリ(ジノニルフェニル)フォスファイト等が挙げられる。
しかしながら、鎖延長剤が短鎖脂肪族アミン等の反応性の高いものの場合は、触媒を添加せずに実施することが好ましい。又、反応時に一官能性の有機アミン及びアルコールを共存させてもよい。
【0103】
<水系ポリウレタンエマルションの製造>
本発明のポリエーテルポリオール(a)を用いて、水系ポリウレタンエマルションを製造することも可能である。その場合、ポリエーテルポリオール(a)を含むポリオールと過剰のイソシアネート化合物を反応させてプレポリマーを製造する際に、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物を混合してプレポリマーを形成し、親水性官能基の中和塩化工程、水添加による乳化工程、鎖延長反応工程を経て水系ポリウレタンエマルションとする。
【0104】
ここで使用する少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の親水性官能基とは、例えばカルボキシル基やスルホン酸基であって、アルカリ性基で中和可能な基である。また、イソシアネート反応性基とは、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基等の一般的にイソシアネートと反応してウレタン結合、ウレア結合を形成する基であり、これらが同一分子内に混在していてもかまわない。
【0105】
少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物としては、具体的には、2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2−メチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等が挙げられる。また、ジアミノカルボン酸類、例えば、リジン、シスチン、3,5−ジアミノカルボン酸等も挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらを実際に用いる場合には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン等のアミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ性化合物で中和して用いることができる。
【0106】
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、少なくとも1個の親水性官能基と少なくとも2個のイソシアネート反応性の基を有する化合物の使用量は、水に対する分散性能を上げるために、その下限は、本発明のポリエーテルポリオール(a)を含むポリオールの総重量に対して好ましくは1質量%、より好ましくは5質量%、さらに好ましくは10質量%である。一方、これを多く添加しすぎると本発明のポリエーテルポリオール(a)の特性が維持されなくなってしまうことがあるために、その上限は好ましくは50質量%、より好ましくは40質量%、さらに好ましくは30質量%である。
【0107】
水系ポリウレタンエマルションを製造する場合、プレポリマー工程においてメチルエチルケトンやアセトン、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒の共存下に反応させてもよいし、無溶媒で反応させてもよい。また、溶媒を使用する場合は、水性エマルションを製造した後に蒸留によって溶媒を留去させるのが好ましい。
【0108】
また、水系ポリウレタンエマルションの合成、あるいは保存にあたり、炭素数12以上の高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、スルホン酸高級アルキル、スルホン酸アルキルアリール、スルホン化ひまし油、スルホコハク酸エステルなどに代表されるアニオン性界面活性剤、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アミン塩、ピリジニウム塩等のカチオン系界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと炭素数11以上の長鎖脂肪族アルコール又はフェノール類との公知の反応生成物に代表される非イオン性界面活性剤等を併用して、乳化安定性を保持してもよい。
【0109】
また、水系ポリウレタンエマルションとする際に、プレポリマーの有機溶媒溶液に、必要に応じて中和塩化工程なしに、乳化剤の存在下、水を機械的に高せん断下で混合して、エマルションを製造することもできる。
【0110】
このようにして製造された水系ポリウレタンエマルションは、様々な用途に使用することが可能である。特に、最近は環境負荷の小さな化学品原料が求められており、有機溶剤を使用しない目的としての従来品からの代替が可能である。
【0111】
水系ポリウレタンエマルションの具体的な用途としては、例えば、コーティング剤、水系塗料、接着剤、合成皮革、人工皮革への利用が好適である。
【0112】
[本発明のポリウレタンの物性]
溶媒存在下で反応を行って製造された本発明のポリウレタンは、溶媒に溶解した状態で得られるが、本発明のポリウレタンは、溶液状態であってもよく、固体状態であってもよく、その存在形態に特に制限はない。
【0113】
本発明のポリウレタンのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、用途により異なるが、通常、標準ポリスチレン換算で1万〜100万が好ましく、5万〜50万がより好ましく、10万〜40万が更に好ましく、15万〜30万が特に好ましい。
【0114】
本発明のポリウレタンのハードセグメント量は、20質量%以下、3質量%以上であることが好ましい。本発明のポリウレタンのハードセグメント量が20質量%以下であることにより、十分な柔軟性や弾性性能を示し、溶媒を使用する場合に溶け易くなり加工し易くなる。一方、本発明のポリウレタンのハードセグメント量が3質量%以上であることにより、ポリウレタンが柔らかくなりすぎるのを防ぎ、加工し易く、十分な強度及び弾性性能が得られる。
尚、本発明でいう、ハードセグメント量とは、P.J.Flory,Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体質量に対する、イソシアネートと鎖延長剤結合部の質量を、下記式で算出したものである。
【0115】
ハードセグメント量(%)=[(R−1)(Mdi+Mdc)/{Mp+R・Mdi+(R−1)・Mdc}]×100
ここで、
R=イソシアネート化合物(b)のモル数/ポリエーテルポリオール(a)の水酸基のモル数
Mdi=イソシアネート化合物(b)の数平均分子量
Mdc=鎖延長剤(c)の数平均分子量
Mp=ポリエーテルポリオール(a)の数平均分子量
【0116】
[ポリウレタン成形体]
固体状態又は液体状態のポリウレタンを公知の方法で成形することによってポリウレタン成形体とすることができる。
この場合、その成形方法も形態も特に限定されないが、押出成形及び射出成形等の成形方法により、シート、フィルム及び繊維等の各種の形態に成形することができる。
【0117】
本発明のポリウレタン、及びそのウレタンプレポリマー溶液は、多様な特性を発現させることができる。例えば、樹脂状、ゴム状及び熱可塑性エラストマー状等の材質で、又、各種形状に成形された固体状またはフォーム状及び液体状等の性状で、繊維、フィルム、塗料、接着剤及び機能部品等として、衣料、衛生用品、包装、土木、建築、医療、自動車、家電及びその他工業部品等の広範な分野で用いられる。
特に、繊維やフィルムとして用いられるのが本発明のポリウレタンの弾性性能や透湿性の特徴を生かす上で好ましい。これらの具体的用途としては、衣料用の弾性繊維、医療、衛生用品及び人工皮革、合成皮革等に用いられるのが好ましい。
【0118】
<ポリウレタンフィルム>
本発明のポリウレタンを用いたフィルムの厚さは、用途により特に限定されるものではないが、通常1〜1000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましく、10〜100μmであることがさらに好ましい。フィルムの厚さを1000μm以下とすることにより、成形安定性が得られる。又、1μm以上とすることにより、ピンホールが形成されにくいとともに、フィルムがブロッキングしにくく、取り扱い易くなる。
【0119】
本発明のポリウレタンを用いたフィルムは、医療用粘着フィルムや衛生材料、包装材、装飾用フィルム、その他透湿性素材等に好ましく用いることができる。尚、フィルムは布や不織布等の支持体に塗布して形成されたものでもよく、その場合は厚さが1μmよりも更に薄くてもかまわない。
【0120】
本発明のポリウレタンを用いたフィルムの製造方法は、特に限定はなく、従来公知の方法が使用できる。例えば、支持体又は離型材に、ポリウレタン溶液を塗布又は流延し、凝固浴中で溶媒その他の可溶性物質を抽出する湿式製膜法、並びに支持体または離型材にポリウレタン溶液を塗布又は流延し、加熱及び減圧等により溶媒を除去する乾式製膜法等が挙げられる。
【0121】
製膜する際に用いる支持体は特に限定されないが、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、ガラス、金属、剥離剤を塗布した紙や布等が用いられる。塗布の方式は特に限定されないが、ナイフコーター、ロールコーター、スピンコーター及びグラビアコーター等の公知のいずれでもよい。
乾燥温度は、溶媒の種類や乾燥機の能力等によって任意に設定できるが、乾燥不十分、或いは急激な脱溶媒が起こらない温度範囲を選ぶことが必要であり、室温〜300℃の範囲であることが好ましく、60℃〜200℃の範囲であることがより好ましい。
【0122】
<ポリウレタン繊維>
ポリウレタンフィルムと繊維の物性は非常によい相関があり、フィルム試験等で得られた物性値は繊維においても同様の傾向を示す場合が多い。本発明のポリウレタンを用いた繊維は、伸長回復性、弾性、耐加水分解性、耐光性、耐酸化性、耐油性及び加工性等に優れる。
【0123】
本発明のポリウレタンを用いた繊維は、例えば、ストッキング、レッグウォーマー等のレッグウェア、パンティー・、おむつカバー、紙おむつ、スポーツ用衣類、下着、靴下、ファッション性に優れたストレッチ性の衣類、水着及びレオタード等の用途に好ましく用いられる。
【0124】
本発明のポリウレタンを用いた弾性繊維の優れた透湿性は、衣類に使用される際に蒸れにくく、付け心地がよいという特徴を持つ。又、応力の変動率またはモジュラスが小さいという特性は、例えば、衣類として体につける際に小さな力で袖を通したりすることができ、幼児や年配者にとっても非常に着脱しやすいという特徴を持つ。
【0125】
又、フィット感及び運動追従性がよいことより、スポーツ用衣類及びよりファッション性の高い衣類の用途で使用することができる。又、繰り返しの伸張試験での弾性保持率が高いことより、繰り返しの使用に対してもその弾性性能が損なわれにくいという特徴もある。
【0126】
<人工皮革/合成皮革>
以下、本発明のポリウレタンの代表的な用途の一例である人工皮革又は合成皮革について詳細に説明する。
人工皮革又は合成皮革は、基布と接着剤層と表皮層とを主要構成要素とする。表皮層は本発明のポリウレタンにその他の樹脂、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等を混合してポリウレタン溶液を作成し、これに着色剤及び有機溶剤等を混合して得られる表皮層配合液からなる。ポリウレタン溶液には、その他必要に応じて、加水分解防止剤、顔料、染料、難燃剤、充填材及び架橋剤などを添加することができる。
【0127】
その他の樹脂としては、例えば、本発明のポリウレタン以外のポリウレタン、ポリ(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、繊維素系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノキシ樹脂、並びにポリアミド樹脂等などが挙げられる。
【0128】
架橋剤としては、例えば、有機ポリイソシアネート、クルードMDI、トリメチロールプロパンのTDIアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0129】
基布としては、例えば、レーヨン、綿起毛布、メリヤス及びナイロントリコット等が挙げられる。また、接着剤としては、例えば、ポリウレタンとポリイソシアネート化合物及び触媒とからなる2液型ポリウレタンが挙げられる。
【0130】
また、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンのTDIアダクト等が挙げられる。触媒としては、例えば、アミン系又は錫系等の触媒が挙げられる。
【0131】
本発明のポリウレタンを用いた合成皮革を製造するには、例えば、まず、本発明のポリウレタンにその他の樹脂等を混合し、ポリウレタン溶液を作成し、これに着色剤等を混合して、表皮層配合液を作る。次にこの配合液を離型紙の上に塗布し、乾燥させてから、更に接着剤を塗布して接着剤層を形成させ、その上に起毛布等を張り合わせ乾燥させてから、室温で数日熟成後、離型紙を剥離することにより人工皮革・合成皮革が得られる。
【0132】
製造された人工皮革・合成皮革は自動車内装材用、家具用、衣料用、靴用、鞄用などに使用できる。
【実施例】
【0133】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。尚、以下の製造例、実施例及び比較例における分析、測定は、以下の方法によった。
【0134】
<ポリエーテルポリオールの水酸基価>
JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法により水酸基価(KOH(mg)/g)を求めた。
【0135】
<ポリエーテルポリオール及びポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量>
JIS K1557−1:2007に準拠したアセチル化法による水酸基価(KOH(mg)/g)測定方法より数平均分子量を求めた。
【0136】
<ポリエーテルポリオール中の残存ヘプタン量>
生成物をCDClに溶解して400MHz H−NMR(BRUKER製AVANCE400)を測定し、成分のシグナルの積分値より算出した。
【0137】
<ポリウレタンの分子量>
ポリウレタンの分子量は、ポリウレタンの濃度が0.14質量%になるようにN,N−ジメチルアセトアミド溶液を調製し、GPC装置〔東ソー社製、製品名「HLC−8220」(カラム:TskgelGMH−XL・2本)、溶離液にはリチウムブロマイド2.6gをジメチルアセトアミド1Lに溶解させた溶液を使用〕を用い、標準ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0138】
<ポリウレタンのハードセグメント量>
得られたポリウレタンのハードセグメント量は、P.J.Flory,Journal of American Chemical Society,58,1877〜1885(1936)をもとに、全体質量に対する、イソシアネートと鎖延長剤結合部の質量を、下記式で算出して求めた。
ハードセグメント量(%)=[(R−1)(Mdi+Mc)/{Mp+R・Mdi+(R−1)・Mc}]×100
ここで、
R=イソシアネート化合物のモル数/ポリエーテルポリオールの水酸基のモル数
Mdi=イソシアネート化合物の数平均分子量
Mc=鎖延長剤の数平均分子量
Mp=ポリエーテルポリオールの数平均分子量
【0139】
<引張特性>
製造されたポリウレタン溶液を500μmのアプリケーターでガラス板上に塗布し、60℃で15時間乾燥させた。得られたポリウレタンフィルムを幅10mm、長さ100mm、厚み50〜100μmの短冊状とし、引張試験機((株)オリエンテック製テンシロンUTM−III−100)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分、温度23℃(相対湿度55%)の条件下で引張破断強度と引張破断伸度と伸度100%及び300%のときの弾性率を測定した。1サンプルにつき5〜10点測定し、その平均値を採用した。
【0140】
<弾性保持率及び残留歪み>
製造されたポリウレタン溶液を500μmのアプリケーターでガラス板上に塗布し、60℃で15時間乾燥させた。得られたポリウレタンフィルムを幅10mm、長さ100mm、厚み50〜100μmの短冊状とし、温度23℃(相対湿度55%)、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分の条件下で300%まで伸長し、引き続いてもとの長さまで500mm/分の速度で収縮させ、これを下記に記載の回数繰り返した。
n回目の伸長時の150%伸長における応力をHn、n回目の収縮時の150%伸長における応力をHrnとし、Hrn/Hnを求めた。また、n回目の伸長時の150%伸長における応力をHn、(n+1)回目の伸長時の150%伸長における応力をH(n+1)とし、H(n+1)/Hnを求めた。Hrn/HnおよびH(n+1)/Hnは、数値が1に近いほど弾性保持率に優れる。
さらに、2回目(H2)、3回目(H3)、及び4回目(H4)の伸長時の応力が立ち上がる点の伸長度を残留歪みとした。残留歪は0に近いほど弾性回復性に優れる。
【0141】
[製造例:ポリエーテルポリオールの製造]
<製造例1:ポリエーテルポリオール1の製造>
精留塔、冷却管、温度計を備えた300ml四口丸底フラスコに、230.0g(0.385mol)のポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学(株)製「PTMG#650」、数平均分子量597)と、38.4g(0.352mol)のジエチルカーボネート(DEC)を入れて攪拌した。さらに、8.05mlのテトラ−n−ブチルチタネート/ヘキサン溶液(0.19質量%)を加えて攪拌した。常圧で室温から150℃まで昇温させた後、150℃から180℃まで9時間かけて昇温後、180℃で2時間反応させた。180℃で一定に保ったまま、反応系内を常圧から5Torrまで4時間かけて徐々に減圧し、5Torrで1時間反応させた。さらに、0.1Torrで10時間反応させた。室温まで冷却後、窒素により常圧に戻した。ここへ、水2.7gを添加し、100℃で2時間加熱した。放冷後、ヘプタン(82g)を加えて、反応液中を窒素バブリングしながら110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。再度ヘプタン(82g)を加えて、反応液中を窒素バブリングしながら110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。50℃まで冷却後、反応液を一部サンプリングし、カールフィッシャー分析装置により水分量を測定すると、51ppmであった。更に、110℃、0.1Torrで7時間減圧加熱して残存溶媒を留去し、ポリエーテルポリオール1を得た(213.1g、収率89.6%)。
ポリエーテルポリオール1の水酸基価は32.3、水酸基価により算出される数平均分子量は3479であった。
H−NMRより、ポリエーテルポリオール1中にヘプタンが存在しないことを確認した。
【0142】
<製造例2:ポリエーテルポリオール2の製造>
精留塔、冷却管、温度計を備えた300ml四口丸底フラスコに、230.0g(0.230mol)のポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学(株)製「PTMG#1000」、数平均分子量1000)と、19.5g(0.165mol)のジエチルカーボネート(DEC)を入れて攪拌した。さらに、8.0mlのテトラ−n−ブチルチタネート/ヘキサン溶液(0.21質量%)を加えて攪拌した。常圧で室温から150℃まで昇温させた後、150℃から180℃まで8時間かけて昇温後、180℃で3時間反応させた。180℃で一定に保ったまま、反応系内を常圧から200Torrまで2時間かけて徐々に減圧し、さらに200Torrから2Torrまで1.5時間かけて徐々に減圧後、2Torrで2.5時間反応させた。さらに、0.1Torrで8時間反応させた。室温まで冷却後、窒素により常圧に戻した。ここへ、水2.4gを添加し、100℃で2時間加熱した。放冷後、ヘプタン(81g)を加えて、反応液中を窒素バブリングしながら110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。再度ヘプタン(82g)を加えて、反応液中を窒素バブリングしながら110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。50℃まで冷却後、反応液を一部サンプリングし、カールフィッシャー分析装置により水分量を測定すると、23ppmであった。更に、110℃、0.1Torrで9時間減圧加熱して残存溶媒を留去し、ポリエーテルポリオール2を得た(209.9g、収率89.6%)。
ポリエーテルポリオール2の水酸基価は34.6、水酸基価により算出される数平均分子量は3243であった。
H−NMRより、ポリエーテルポリオール2中にヘプタンが存在しないことを確認した。
【0143】
<製造例3:ポリエーテルポリオール3の製造>
300mL四つ口丸底フラスコに、48g(0.247mol)のイソフタル酸ジメチル(TCI社製)と、216g(0.332mol)のポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学(株)製「PTMG#650」、数平均分子量650)と、1.08g(原料合計量に対してテトラ−n−ブチルチタネートとして20質量ppm)のテトラ−n−ブチルチタネート/ヘキサン溶液(0.49質量%)を秤り取った。フラスコをオイルバスに浸し、30分で220℃まで昇温した。適宜サンプリングをして反応の進行を確認しながら220℃で8.5時間反応後、フラスコをオイルバスから上げて放冷し、一晩静置させた。再度フラスコをオイルバスに浸して30分で220℃まで昇温し、適宜サンプリングをして反応の進行を確認しながら220℃で5.5時間反応後(合計反応時間14時間)、加熱を止めて放冷した。原料ピークの消失をNMR(400MHz)により確認し、生成物(246.8g、収率99.5%)を200mlのガラス瓶に移した。
得られた生成物に水2.7gを添加し、フラスコをオイルバスに浸して10分で100℃に昇温し、100℃で1時間加熱した。放冷後、ヘプタン(63g)を加えて110℃で加熱してヘプタン/水を留去した。バス温60℃になるまで放冷し、ヘプタン(56g)を加えて120℃で加熱してヘプタン/水を留去した。バス温60℃になるまで放冷し、ヘプタン(50g)を加えて120℃で加熱してヘプタン/水を留去後、放冷した。50℃まで冷却後、反応液を一部サンプリングし、カールフィッシャー分析装置により水分量を測定すると、120ppmであった。更に、オイルバスを110℃に昇温し、110℃で5時間加熱して残存溶媒を留去した。室温まで放冷後、生成物であるポリエーテルポリオール3を200mlガラス瓶に移した(243.6g、収率98.2%)。
ポリエーテルポリオール3の水酸基価は37.0、水酸基価により算出される数平均分子量は3029であった。
H−NMRより、ポリエーテルポリオール3中にヘプタンが存在しないことを確認した。
【0144】
[実施例1]
容量が1Lのフラスコに、予め40℃に加温した製造例1で得られたポリエーテルポリオール1(分子量3479)を146.7gと、予め40℃に加温した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記することがある。)19.0gを加えた。このときの、イソシアネート基/水酸基の反応当量比(以下、「NCO/OH比」と略記することがある。)は1.80であった。
そして、このフラスコを45℃のオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。
【0145】
残存NCO基を過剰量のジブチルアミンと反応させ、その後残存ジブチルアミンを塩酸により逆滴定することによりNCOの反応率が99%を超えていることを確認した後に、オイルバスを取り去り、フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」と略記することがある。関東化学社製)202.4gを加え、室温にて攪拌し溶解させることでポリマー濃度40質量%のポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。
【0146】
上記ポリウレタンプレポリマー溶液332.0gを10℃に冷却し保持しておき、一方で、鎖延長剤として、エチレンジアミン(以下、「EDA」と略記することがある。)1.32gとジエチルアミン(以下、「DEA」と略記することがある。)0.21gをDMAc163.2gに溶解し、このDMAc溶液を、10℃に冷却保持した上記ポリウレタンプレポリマー溶液を高速攪拌しながら添加した。添加後、撹拌したままDEA0.17gとDMAc175.8gの混合液を更に添加して末端停止反応を行い、ポリマー濃度20質量%のポリウレタンウレアDMAc溶液を得た。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は227,000、ハードセグメント量は6.3質量%であった。
【0147】
[実施例2]
実施例1において、ポリエーテルポリオール1の代わりにポリエーテルポリオール2を使用し、表1に示す仕込み量としたこと以外は同様の操作を行って、ポリマー濃度20質量%のポリウレタンウレアDMAc溶液を得た。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は231,000で、ハードセグメント量は6.3質量%であった。
【0148】
[比較例1]
実施例1において、ポリエーテルポリオール1の代わりにポリテトラメチレングリコール(三菱化学(株)製「PTMG#1800」、水酸基価は61.7、水酸基価より算出した数平均分子量は1819、以下「PTMG1」と略記する場合がある。)を使用し、表1に示す仕込み量としたこと以外は同様の操作を行って、ポリマー濃度20質量%のポリウレタンウレアDMAc溶液を得た。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は214,000で、ハードセグメント量は8.3質量%であった。
【0149】
[比較例2]
容量が1Lのフラスコに予め40℃に加温したポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱化学(株)製「PTMG#2000」、水酸基価は57.0、水酸基価より算出した数平均分子量は1969、以下「PTMG2」と略記する場合がある。)150.1gと、40℃に加温した4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)30.7gを加えた。このとき、イソシアネート基/水酸基の反応当量比は1.60であった。そして、このフラスコを45℃のオイルバスにセットし、窒素雰囲気下にて碇型攪拌翼で攪拌しつつ、1時間かけてオイルバスの温度を70℃まで昇温し、その後70℃にて3時間保持した。残存NCO基を過剰量のジブチルアミンと反応させその後残存ジブチルアミンを塩酸により逆滴定することによりNCOの反応率が99%を超えていることを確認した後に、オイルバスを取り去り、フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、関東化学社製)245.0gを加え、室温にて攪拌し溶解させることでポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。
【0150】
上記ポリウレタンプレポリマー溶液345.2gを滴下槽に移して10℃に冷却し保持しておき、一方で、容量が1Lのフラスコに鎖延長剤としてエチレンジアミン(EDA)1.86gとジエチルアミン(DEA)0.28gをDMAc353.6gを添加して均一化し、得られた溶液に上記ポリウレタンプレポリマー溶液345.2gを高速攪拌しながら添加してポリマー濃度20質量%のポリウレタンウレアDMAc溶液を得た。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は191,000、ハードセグメント量は7.8質量%であった。
【0151】
[比較例3]
比較例2においてポリテトラメチレンエーテルグリコールの代わりにポリエーテルポリオール3を使用し、表1に示した仕込み量としたこと以外は同様の操作を行って、ポリマー濃度20質量%のポリウレタンウレアDMAc溶液を得た。
得られたポリウレタンの重量平均分子量は179,000で、ハードセグメント量は6.2質量%であった。
【0152】
下記表1に実施例1〜2、及び比較例1〜3のポリウレタン製造時の原料仕込み条件と得られたポリウレタンの物性をまとめて示す。
【0153】
【表1】
【0154】
[ポリウレタンフィルムの物性の評価結果]
実施例1、2及び比較例1〜3で得られたポリウレタンウレアDMAc溶液をフィルム化し、物性測定を行った結果を表2に示した。
表2の備考欄には、ポリウレタンの製造に用いたポリエーテルポリオールの物性を併記した。
【0155】
【表2】
【0156】
表2より、実施例1、2のポリウレタンは、比較例1〜3に較べて弾性回復性、引張強度、引張伸び等の伸縮特性に優れ、特に繰り返し伸縮した際の弾性回復性(残留歪)に優れることが分かる。