(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413326
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】磁気センサ及び電流検出構造
(51)【国際特許分類】
G01R 33/09 20060101AFI20181022BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20181022BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
G01R33/09
G01R33/02 X
G01R15/20 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-94629(P2014-94629)
(22)【出願日】2014年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-212634(P2015-212634A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】二口 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和久
【審査官】
山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−522146(JP,A)
【文献】
特表2004−504713(JP,A)
【文献】
特開2002−156390(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0006017(US,A1)
【文献】
特開2011−182177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/09
G01R 15/20
G01R 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検出素子と、
該磁気検出素子の出力電圧を補正して出力する補正部と、を備え、
前記補正部は、前記磁気検出素子の出力電圧から磁束密度を演算し、演算した磁束密度に対して線形の関係となる補正後出力電圧を演算し出力するように構成される磁気センサであって、
前記磁気検出素子が、異方性磁気抵抗素子であり、
前記補正部は、
前記磁気検出素子での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係が
V=f(B)=a{cos(bB+c)}2+d
但し、a,b,c,d:係数
または、
V=f(B)=a{sin(bB+c)}2+d
但し、a,b,c,d:係数
で表されるとき、下式
Vout=m・f-1(V)
但し、m:係数
f-1(V):f(B)の逆関数
により、補正後出力電圧Voutを演算し出力するように構成される
ことを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
磁気検出素子と、
該磁気検出素子の出力電圧を補正して出力する補正部と、を備え、
前記補正部は、前記磁気検出素子の出力電圧から磁束密度を演算し、演算した磁束密度に対して線形の関係となる補正後出力電圧を演算し出力するように構成される磁気センサであって、
前記磁気検出素子が、巨大磁気抵抗素子であり、
前記補正部は、
前記磁気検出素子での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係が
V=f(B)=a{cos(bB+c)}+d
但し、a,b,c,d:係数
または、
V=f(B)=a{sin(bB+c)}+d
但し、a,b,c,d:係数
で表されるとき、下式
Vout=m・f-1(V)
但し、m:係数
f-1(V):f(B)の逆関数
により、補正後出力電圧Voutを演算し出力するように構成される
ことを特徴とする磁気センサ。
【請求項3】
1つの電流路と、
前記電流路に流れる電流の電流値を検出するための1つの磁気検出素子と、
該磁気検出素子の出力電圧を補正して出力する補正部と、を備え、
前記補正部は、前記磁気検出素子の出力電圧から磁束密度を演算し、演算した磁束密度に対して線形の関係となる補正後出力電圧を演算し出力するように構成される電流検出構造であって、
前記磁気検出素子が、異方性磁気抵抗素子であり、
前記補正部は、
前記磁気検出素子での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係が
V=f(B)=a{cos(bB+c)}2+d
但し、a,b,c,d:係数
または、
V=f(B)=a{sin(bB+c)}2+d
但し、a,b,c,d:係数
で表されるとき、下式
Vout=m・f-1(V)
但し、m:係数
f-1(V):f(B)の逆関数
により、補正後出力電圧Voutを演算し出力するように構成される
ことを特徴とする電流検出構造。
【請求項4】
1つの電流路と、
前記電流路に流れる電流の電流値を検出するための1つの磁気検出素子と、
該磁気検出素子の出力電圧を補正して出力する補正部と、を備え、
前記補正部は、前記磁気検出素子の出力電圧から磁束密度を演算し、演算した磁束密度に対して線形の関係となる補正後出力電圧を演算し出力するように構成される電流検出構造であって、
前記磁気検出素子が、巨大磁気抵抗素子であり、
前記補正部は、
前記磁気検出素子での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係が
V=f(B)=a{cos(bB+c)}+d
但し、a,b,c,d:係数
または、
V=f(B)=a{sin(bB+c)}+d
但し、a,b,c,d:係数
で表されるとき、下式
Vout=m・f-1(V)
但し、m:係数
f-1(V):f(B)の逆関数
により、補正後出力電圧Voutを演算し出力するように構成される
ことを特徴とする電流検出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気センサを用いた電流検出構造が広く知られている。
【0003】
磁気センサでは、磁束密度に応じた電圧を出力するように構成されているため、検出対象の電流を流す電流路の近傍に磁気センサを配置することで、この磁気センサの出力電圧から、検出対象となる電流により発生する磁束密度(磁気センサを配置した位置での磁束密度)を演算により求め、その求めた磁束密度から検出対象となる電流の電流値を演算することができる。
【0004】
磁気センサに用いる磁気検出素子としては、ホール素子、異方性磁気抵抗素子(以下、AMR素子という)、巨大磁気抵抗素子(以下、GMR素子という)等が知られている。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−55997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、AMR素子やGMR素子では、検出する磁束密度と出力電圧との関係が非線形の関係となっており、磁束密度と出力電圧が直線的な関係となっている範囲(磁束密度と出力電圧との関係を線形に近似できる範囲)が狭いという問題があった。
【0008】
磁束密度と電流値は比例するので、従来の磁気センサを用いて電流検出を行う際には、検出対象となる電流値と出力電圧とが直線的な関係となる範囲が狭くなり、検出可能な電流値の範囲が狭くなってしまう。
【0009】
また、使用可能な磁束密度の範囲が狭いために、磁気検出素子の配置の自由度も低くなってしまう。
【0010】
従来、磁束密度(あるいは検出対象となる電流値)と出力電圧との間で直線的な関係が得られる範囲を広げるためには、磁気平衡方式等の複雑な測定法を採用する必要があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、磁束密度と出力電圧との間で直線的な関係が得られる範囲を広げることが可能な磁気センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、磁気検出素子と、該磁気検出素子の出力電圧を補正して出力する補正部と、を備え、前記補正部は、前記磁気検出素子の出力電圧から磁束密度を演算し、演算した磁束密度に対して線形の関係となる補正後出力電圧を演算し出力するように構成される磁気センサである。
【0013】
前記補正部は、前記磁気検出素子での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係が
V=f(B)
で表されるとき、下式
Vout=m・f
-1(V)
但し、m:係数
f
-1(V):f(B)の逆関数
により、補正後出力電圧Voutを演算し出力するように構成されてもよい。
【0014】
前記磁気検出素子が、異方性磁気抵抗素子であってもよい。
【0015】
前記磁気検出素子での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係として、下式
V=f(B)=a{cos(bB+c)}
2+d
但し、a,b,c,d:係数
または、下式
V=f(B)=a{sin(bB+c)}
2+d
但し、a,b,c,d:係数
のいずれかを用いてもよい。
【0016】
前記磁気検出素子が、巨大磁気抵抗素子であってもよい。
【0017】
前記磁気検出素子での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係として、下式
V=f(B)=a{cos(bB+c)}+d
但し、a,b,c,d:係数
または、下式
V=f(B)=a{sin(bB+c)}+d
但し、a,b,c,d:係数
のいずれかを用いてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、磁束密度と出力電圧との間で直線的な関係が得られる範囲を広げることが可能な磁気センサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る磁気センサの概略構成図である。
【
図2】本発明において、検出する磁束密度と出力電圧との関係の一例を示すグラフ図である。
【
図3】本発明において、検出する磁束密度と補正後出力電圧との関係の一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る磁気センサの概略構成図である。
【0022】
図1に示すように、磁気センサ1は、磁気検出素子2と、磁気検出素子2の出力電圧を補正して出力する補正部3と、を備えている。
【0023】
ここでは、磁気検出素子2としては、検出する磁束密度と出力電圧との関係が非線形の関係となるAMR素子またはGMR素子を用いる。本実施形態では、磁気検出素子2としてAMR素子を用いる場合を説明する。AMR素子における検出する磁束密度と出力電圧との関係は、例えば、
図2のような関係となっている。
【0024】
さて、本実施形態に係る磁気センサ1では、補正部3は、磁気検出素子2の出力電圧Vから磁束密度Bを演算し、演算した磁束密度Bに対して線形の関係となる補正後出力電圧Voutを演算し出力するように構成されている。
【0025】
より具体的には、補正部3は、磁気検出素子2での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係が下式(1)
V=f(B) ・・・(1)
で表されるとき、下式(2)
Vout=m・B=m・f
-1(V) ・・・(2)
但し、m:係数
f
-1(V):f(B)の逆関数
により、補正後出力電圧Voutを演算し出力するように構成されている。
【0026】
式(1)の磁束密度Bと出力電圧Vとの関係は、予め磁気検出素子2に対して任意の磁束密度Bを印加し、磁気検出素子2から出力される出力電圧Vを測定することを繰り返し、得られたデータを基に演算により得ることができる。
【0027】
本実施形態では、磁気検出素子2としてAMR素子を用いているので、磁気検出素子2での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係としては、下式(3)
V=f(B)=a{cos(bB+c)}
2+d ・・・(3)
但し、a,b,c,d:係数
または、下式(4)
V=f(B)=a{sin(bB+c)}
2+d ・・・(4)
但し、a,b,c,d:係数
のいずれかを用い、最小二乗法等により係数a〜dを求めるとよい。
【0028】
なお、磁気検出素子2としてGMR素子を用いる場合には、磁気検出素子2での磁束密度Bと出力電圧Vとの関係として、下式(5)
V=f(B)=a{cos(bB+c)}+d ・・・(5)
但し、a,b,c,d:係数
または、下式(6)
V=f(B)=a{sin(bB+c)}+d ・・・(6)
但し、a,b,c,d:係数
のいずれかを用いるとよい。
【0029】
式(3)〜(6)のいずれかで示される関数f(B)の逆関数f
-1(V)を求めることにより、式(2)の関係式を予め得ることができる。
【0030】
補正部3は、予め求めた式(2)に、磁気検出素子2の出力電圧Vを代入することで、補正後出力電圧Voutを演算し出力するように構成される。ここで、式(2)における係数mは、任意に設定可能であり、要求される出力電圧範囲に応じて適宜設定するとよい。磁束密度Bに対する補正後出力電圧Voutの関係は、
図3に示すように、傾きmの直線で表される。なお、
図3では、磁気検出素子2の出力電圧Vを破線にて示している。
【0031】
なお、上記の式(3)〜(6)に限らず、例えば、関数f(B)をBの多項式で表すことも可能である。この場合、関数f(B)の逆関数であるf
-1(V)もVの多項式で表されることになる。
【0032】
ここでは、補正部3を磁気検出素子2と一体に設けている(つまり1つの筐体内に磁気検出素子2と補正部3とが設けられている)場合を示しているが、補正部3は磁気検出素子2と別体に設けられていてもよい。補正部3を磁気検出素子2と別体に設ける場合、通常一般に使用されている磁気検出素子の出力電圧をそのまま出力する磁気センサに補正部3を取り付けるかたちとなり、簡単な構成で広い測定範囲を実現することが可能になる。
【0033】
本実施形態に係る磁気センサ1を用いて電流検出を行う場合、磁気センサ1を検出対象となる電流の電流路4の近傍に配置し、磁気センサ1から出力される補正後出力電圧Voutを検出する。その後、検出した補正後出力電圧Voutを基に、下式(7)
I=k・B=k・Vout/m ・・・(7)
但し、k:係数
により検出対象となる電流の電流値Iを求めるとよい。なお、式(7)におけるkは、電流路4から磁気センサ1(磁気検出素子2)までの距離、温度等により決まる係数である。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る磁気センサ1では、磁気検出素子2と、磁気検出素子2の出力電圧Vを補正して出力する補正部3と、を備え、補正部3は、磁気検出素子2の出力電圧Vから磁束密度Bを演算し、演算した磁束密度Bに対して線形の関係となる補正後出力電圧Voutを演算し出力するように構成されている。
【0035】
このように構成することで、従来と比較して、磁束密度Bと出力電圧(補正後出力電圧Vout)との間で直線的な関係が得られる範囲を大幅に広げることが可能になる。つまり、複雑な測定法を用いずとも、広い被測定電流範囲にわたって直線的な出力電圧を得ることが可能になる。その結果、検出対象となる電流値の範囲を広げることが可能になり、また、磁気センサ1の配置の自由度も向上させることが可能になる。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 磁気センサ
2 磁気検出素子
3 補正部
4 電流路