(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着層は、積層された互いに組成が異なる2種以上の前記樹脂組成物で形成され、前記透明面材の両方の面にそれぞれ設けられる、請求項7に記載の粘着層付き透明面材。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更できる。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0026】
本明細書における「透明」とは、面材と表示パネルの表示面とを粘着層を介して、空隙なく貼合した後に、表示パネルの表示画像の全体または一部が光学的な歪を受けることなく面材を通して視認できる様態を意味する。したがって、表示パネルから面材に入射する光の一部が面材により吸収、反射されたり、または光学的な位相の変化などによって、面材の可視光透過率が低いものであっても、面材を通して光学的な歪なく表示パネルの表示画像を視認できれば、「透明」であるということができる。
【0027】
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
本発明書における「厚さ」とは、マイクロゲージまたはレーザー変位計等を用いた測定方法により測定された厚さを意味する。また、「平均厚さ」とは、10箇所について測定された厚さの平均値とする。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の両面粘着フィルム10を示す平面図である。
図2は、本実施形態の両面粘着フィルム10を示す図であって、
図1におけるII−II断面図である。
図3は、粘着層付き透明面材80を示す断面図である。粘着層付き透明面材80は、たとえば、両面粘着フィルム10が保護板(透明面材)81に貼合されたものである。
【0029】
なお、以下の説明においてはXYZ座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各構成の位置関係を説明する。この際、粘着層20の積層方向(
図2参照)をZ軸方向、両面粘着フィルム10の平面視における短手方向(
図1参照)をY軸方向、Z軸方向およびY軸方向と直交し、両面粘着フィルム10の平面視における長手方向をX軸方向とする。
【0030】
<両面粘着フィルム>
本実施形態の両面粘着フィルム10は、
図1および
図2に示すように、粘着層20を備える。両面粘着フィルム10は、たとえば、保護板81(
図3参照)に貼合され、粘着層付き透明面材80を製造するために用いられる粘着フィルムである。
【0031】
粘着層20の一方側(−Z側)の貼合面(第1面)21aには、第1保護フィルム30が貼着されている。粘着層20の他方側(+Z側)の貼合面(第2面)22aには、第2保護フィルム31が貼着されている。
【0032】
[粘着層]
粘着層20の平面視(XY面視)形状は、特に限定されず、本実施形態においては、
図1に示すように、たとえば、矩形状である。粘着層20は、
図2に示すように、高密着性粘着層(第1粘着層)21と、低密着性粘着層(第2粘着層)22と、を備える。
【0033】
高密着性粘着層21は、貼合面21aを有している。低密着性粘着層22は、貼合面22aを有している。高密着性粘着層21と低密着性粘着層22とは、積層して設けられている。以下の説明においては、高密着性粘着層21と低密着性粘着層22とが接する面のうち、高密着性粘着層21の面を積層面21bと呼び、低密着性粘着層22の面を積層面22bと呼ぶ。
【0034】
高密着性粘着層21は、たとえば、表示装置の液晶表示パネル等を保護する保護板81と貼合される側の粘着層である。低密着性粘着層22は、たとえば、表示装置の液晶表示パネル等と貼合される側の粘着層である。詳細については後述するが、高密着性粘着層21の密着力は、低密着性粘着層22の密着力よりも大きい。
【0035】
粘着層20の厚さ(Z軸方向長さ)は、0.1mm〜2.0mm程度が好ましく、0.2mm〜0.8mm程度がより好ましい。粘着層20の厚さが0.1mm以上であれば、保護板81と表示装置とを貼合した際に、保護板81側からの外力による衝撃等を粘着層20が効果的に緩衝し、表示装置本体を保護できる。また、保護板81と表示装置との間に粘着層20の厚さを超えない異物が混入しても、粘着層20の厚さが大きく変化することがなく、光透過性能への影響が少ない。粘着層20の厚さが2.0mm以下であれば、粘着層20を介して保護板81を表示装置に貼合しやすく、表示装置の全体の厚さが不要に厚くならない。
【0036】
本実施形態においては、粘着層20の厚さは、高密着性粘着層21の厚さと、低密着性粘着層22の厚さとを合わせた厚さである。高密着性粘着層21の厚さと、低密着性粘着層22の厚さとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。低密着性粘着層22のせん断弾性率が高密着性粘着層21のせん断弾性率よりも大きい場合には、低密着性粘着層22の厚みを高密着性粘着層21の厚みよりも小さくすることが好ましい。
【0037】
粘着層20のせん断弾性率は、10
2Pa〜10
5Paの範囲にあることが好ましく、10
3Pa〜10
4Paの範囲にあることがより好ましい。粘着層20のせん断弾性率が10
2Pa以上であれば、粘着層20の形状を維持しやすい。また、粘着層20のせん断弾性率が10
2Pa以上であれば、たとえば、保護板81を表示装置に充分に固定することができ、保護板81と表示装置とを貼合する際に、粘着層20が貼合時の圧力などで変形しにくいため好ましい。一方、粘着層20のせん断弾性率が10
5Pa以下であれば、表示装置との貼合時に粘着層20と表示装置との界面に気泡が発生したとしても、その気泡が短時間で消失し、残存しにくいため好ましい。本実施形態の粘着層20全体のせん断弾性率のより好ましい範囲としては、25℃において1kPa〜50kPa、すなわち、10
3Pa以上、5×10
4Pa以下である。
【0038】
粘着層20は、光硬化性を有する液状の樹脂組成物を硬化させた透明樹脂から構成されている。すなわち、本実施形態においては、高密着性粘着層21および低密着性粘着層22は、光硬化性を有する樹脂組成物で形成されている。
以下の説明においては、説明を簡略化するため、高密着性粘着層21を形成する樹脂組成物を高密着性樹脂組成物23と呼び、低密着性粘着層22を形成する樹脂組成物を低密着性樹脂組成物24と呼ぶ。
【0039】
高密着性樹脂組成物23の組成と、低密着性樹脂組成物24の組成とは、互いに異なる。すなわち、粘着層20の貼合面21aにおける樹脂組成物の組成と、粘着層20の貼合面22aにおける樹脂組成物の組成とは、互いに異なる。これにより、粘着層20は、積層された互いに組成が異なる2種以上の樹脂組成物で形成されている。
【0040】
なお、本明細書において樹脂組成物の「組成」が異なるとは、樹脂組成物に含まれる成分の種類が異なる場合と、樹脂組成物に含まれる同一成分の割合が異なる場合と、の両方を意味する。
本実施形態における以下の説明においては、高密着性樹脂組成物23の組成と、低密着性樹脂組成物24の組成とは、含まれる成分の種類については同様で、含まれる各成分の割合が互いに異なる場合について説明する。
【0041】
具体的に、高密着性樹脂組成物23の組成と低密着性樹脂組成物24の組成とは、高密着性粘着層21の密着力が、低密着性粘着層22の密着力よりも大きくなるように調整される。このように調整されることで、保護板81と表示装置とを一度貼合した後に、保護板81を剥離するような場合に、粘着層20が保護板81側に残存し、貼り直すことが容易である。高密着性樹脂組成物23および低密着性樹脂組成物24の具体的な組成については後述する。
【0042】
低密着性粘着層22の密着力は、たとえば、0.1N/25mm以上、0.8N/25mm以下である。高密着性粘着層21の密着力は、低密着性粘着層22の密着力の3倍以上である。高密着性粘着層21の密着力と低密着性粘着層22の密着力とが、このような範囲に調整されることにより、リワーク性を好適に向上できる。
【0043】
本明細書において、密着力(N/25mm)は、以下の方法によって計測されたものである。
まず、両面粘着フィルムを長さ98mm、幅25mmとなるようにカットし、評価片を得る。そして、保護フィルムを部分的に剥離し、長さ方向に30mmだけ、保護フィルムと粘着層とが貼合された状態にする。
【0044】
次に、保護フィルムの剥離した側の端部を、粘着層の主面に対して90°上方に、引っ張り試験機(テンシロン、オリエンテック社)を用いて引張し、残りの部分を剥離させる。剥離させる速度は、50mm/分となるようにし、保護フィルムの剥離に要した力を密着力とした。
【0045】
[保護フィルム]
第1保護フィルム30と第2保護フィルム31とは、同様の構成であるため、以下の説明においては、代表して第1保護フィルム30についてのみ説明する。
第1保護フィルム30は、粘着層20と強固に密着しないことが求められる。よって、第1保護フィルム30としては、粘着層20と接する面にシリコーン樹脂などによる離型剤が塗布されたPET(Polyethylene Terephthalate)フィルム等の保護フィルムや、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等の密着性の比較的低い保護フィルムが好ましい。
【0046】
第1保護フィルム30と高密着性粘着層21との密着力と、第2保護フィルム31と低密着性粘着層22との密着力は適宜設定することができるが、
図3に示す粘着層付き透明面材80の提供においては、第1保護フィルム30と高密着性粘着層21との密着力が、第2保護フィルム31と低密着性粘着層22との密着力よりも小さいことが好ましい。
【0047】
第1保護フィルム30の好適な厚さは、用いる樹脂により異なるが、離型剤が塗布されたPETフィルム等の硬いフィルムを用いる場合には、0.025mm〜0.175mmが好ましく、0.038mm〜0.125mmがさらに好ましい。ポリエチレン、ポリプロピレン等の比較的柔軟なフィルムを用いる場合には0.04mm〜0.2mmが好ましく、0.06mm〜0.1mmがさらに好ましい。0.025mm以上であると粘着層20から第1保護フィルム30を剥離する際に第1保護フィルム30の変形を抑えることができ、0.2mm以下であると剥離時に第1保護フィルム30が撓みやすく剥離させることが容易である。
【0048】
また、第1保護フィルム30の一部に、外部から気体(酸素ガス、窒素ガス、水蒸気等)が第1保護フィルム30を透過して粘着層20に混入するのを防止するバリア層を設けるとより好ましい。
【0049】
[樹脂組成物の組成]
以下、粘着層20の樹脂組成物、すなわち、高密着性樹脂組成物23および低密着性樹脂組成物24を組成する成分について説明する。
本実施形態の樹脂組成物は、光硬化性を有する硬化性化合物(II)、光重合開始剤(C2)、非硬化性オリゴマー(D)(非硬化成分)、および連鎖移動剤(E)を含む。
【0050】
(硬化性化合物(II))
硬化性化合物(II)は、硬化性基を有し、かつ数平均分子量が1000〜100000であるオリゴマー(A’)の1種以上と、硬化性基を有し、かつ分子量が125〜600であるモノマー(B’)の1種以上とを含むことが好ましい。この種の硬化性化合物(II)を用いると、樹脂組成物の粘度を好ましい範囲に調整しやすい。
【0051】
オリゴマー(A’)またはモノマー(B’)の硬化性基としては、付加重合性の不飽和基(アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、不飽和基とチオール基との組み合わせ等が挙げられ、硬化速度が速い点および透明性の高い粘着層20が得られる点から、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選ばれる基が好ましい。
【0052】
オリゴマー(A’)における硬化性基と、モノマー(B’)における硬化性基とは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。比較的高分子量のオリゴマー(A’)における硬化性基は、比較的低分子量のモノマー(B’)における硬化性基よりも反応性が低くなりやすい。そのため、モノマー(B’)の硬化が先に進んで急激に組成物全体の粘性が高まり、硬化反応が不均質となるおそれがある。両者の硬化性基の反応性の差を小さくし、均質な粘着層20を得るために、オリゴマー(A’)の硬化性基を比較的反応性の高いアクリロイルオキシ基とし、モノマー(B’)の硬化性基を比較的反応性の低いメタクリロイルオキシ基とすることがより好ましい。硬化反応に必要な時間を短縮したり、粘着層20の粘着力を高めるためには、オリゴマー(A’)とモノマー(B’)の硬化性基をいずれもアクリロイルオキシ基とすることが好ましい。
【0053】
(オリゴマー(A’))
オリゴマー(A’)の数平均分子量は、1000〜100000であり、10000〜70000が好ましい。オリゴマー(A’)の数平均分子量がこの範囲であると、樹脂組成物の粘度を前記範囲に調整しやすい。オリゴマー(A’)の数平均分子量は、GPCの測定によって得られた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。なお、GPCの測定において、未反応の低分子量成分(モノマー等)のピークが現れる場合は、ピークを除外して数平均分子量を求める。
【0054】
オリゴマー(A’)としては、樹脂組成物の硬化性、粘着層20の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり平均1.8個〜4個有するものが好ましい。オリゴマー(A’)としては、ウレタン結合を有するウレタンオリゴマー、ポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ウレタン鎖の分子設計等によって硬化後の樹脂の機械的特性、面材との密着性等を幅広く調整できる点から、ウレタンオリゴマー(A2)が好ましい。
【0055】
ウレタンオリゴマー(A2)は、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート基を有するプレポリマーを得た後、プレポリマーのイソシアネート基に、モノマー(B2)を反応させる方法で合成されるものが好ましい。ポリオール、ポリイソシアネートとしては、公知の化合物、たとえば国際公開第2009/016943号パンフレットに記載のウレタン系オリゴマー(a)の原料として記載されたポリオール(i)、ジイソシアネート(ii)等が挙げられ、本明細書中に組み入れられる。
【0056】
オリゴマー(A’)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計(100質量%)のうち、20質量%〜90質量%が好ましく、30質量%〜80質量%がより好ましい。オリゴマー(A’)の割合が20質量%以上であると、粘着層20の耐熱性が良好となる。オリゴマー(A’)の割合が90質量%以下であると、樹脂組成物の硬化性、保護板と粘着層20との密着性が良好となる。
【0057】
(モノマー(B’))
モノマー(B’)の分子量は125〜600であり、140〜400が好ましい。モノマー(B’)の分子量が125以上であると、減圧手段を用いて粘着層20を形成するような場合にモノマーの揮発が抑えられる。モノマー(B’)の分子量が600以下であると、粘着層20の密着性が良好となる。モノマー(B’)は、樹脂組成物の硬化性、粘着層20の機械的特性の点から、硬化性基を1分子あたり1個〜3個有するものが好ましい。モノマー(B’)の含有割合は、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計(100質量%)のうち、10質量%〜80質量%が好ましく、20質量%〜70質量%がより好ましい。
【0058】
本実施形態において、モノマー(B’)は、硬化性基を有し、かつ水酸基を有するモノマー(B3)(極性成分)を含む。モノマー(B3)は非硬化性オリゴマー(D)の安定化に寄与する。また、モノマー(B3)を含有させると、保護板81と粘着層20との良好な密着性が得られやすい。水酸基を有するモノマー(B3)としては、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、または4−ヒドロキシブチルアクリレートが特に好ましい。モノマー(B3)の含有割合については、硬化性化合物(II)の全体(100質量%)、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計(100質量%)のうち、10質量%〜60質量%が好ましく、20質量%〜50質量%がより好ましい。モノマー(B3)の含有割合が10質量%以上であると、樹脂組成物の安定性向上、および粘着層20と保護板81や表示パネル等との密着性向上の効果が充分に得られやすい。
【0059】
モノマー(B’)は、下記のモノマー(B4)を含むことが好ましい。
モノマー(B4)は、炭素数8〜22のアルキル基を有するアルキルアクリレート、およびアルキルメタクリレートから選ばれる1種以上で構成される。モノマー(B4)としては、n−デシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−ドデシルメタクリレート、イソオクタデシルアクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、n−ベヘニルメタクリレート等が挙げられ、n−デシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、n−ドデシルメタクリレートが好ましい。
【0060】
(光重合開始剤(C2))
樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(C2)としては、アセトフェノン系、ケタール系、ベンゾインまたはベンゾインエーテル系、フォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、キノン系等の光重合開始剤が挙げられ、フォスフィンオキサイド系、チオキサントン系の光重合開始剤が好ましく、光重合反応後に着色を抑える面ではフォスフィンオキサイド系が特に好ましい。高強度の光照射による光重合反応を行う場合には、アセトフェノン系の光重合開始剤を用いると、硬化速度を高めることができるため、好ましい。樹脂組成物における光重合開始剤(C2)の含有量は、硬化性化合物(II)の全体、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計100質量部に対して、0.01質量%〜10質量部が好ましく、0.1質量%〜5質量部がより好ましい。
【0061】
(非硬化性オリゴマー(D))
非硬化性オリゴマー(D)は、樹脂組成物の硬化時に組成物中の硬化性化合物(II)と硬化反応しない水酸基を有するオリゴマーである。非硬化性オリゴマー(D)の1分子当たりの水酸基数は、0.8個〜3個が好ましく、1.8個〜2.3個がより好ましい。非硬化性オリゴマー(D)の水酸基1個あたりの数平均分子量(Mn)は400〜8000が好ましい。水酸基1個あたりの数平均分子量が400以上であると、非硬化性オリゴマー(D)の極性が高くなりすぎず、樹脂組成物中の硬化性化合物(II)との良好な相溶性が得られやすい。水酸基1個あたりの数平均分子量が8000以下であると、硬化性化合物(II)に由来する水酸基と、非硬化性オリゴマー(D)の水酸基との間の相互作用によって、硬化後に非硬化性オリゴマー(D)を安定化させる効果が得られやすい。相互作用には水素結合が関与すると推測される。非硬化性オリゴマー(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
水酸基を含有する非硬化性オリゴマー(D)の例としては、高分子量のポリオールなどが挙げられ、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましい。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、分枝構造を有するポリオキシプロピレングリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。
【0063】
ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基1個あたりの数平均分子量(Mn)は400〜8000が好ましく、600〜5000がより好ましい。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族ジオールの残基とグルタル酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸の残基とを有する脂肪族系ポリエステルジオールが挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール残基を有する脂肪族ポリカーボネートジオール、脂肪族環状カーボネートの開環重合体などの脂肪族ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0064】
ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオールの水酸基1個あたりの数平均分子量(Mn)は400〜8000が好ましく、800〜6000がより好ましい。本明細書における非硬化性オリゴマー(D)の数平均分子量は、JISK1557−1(2007年版)に準拠して測定した水酸基価A(mgKOH/g)と非硬化性オリゴマー(D)の1分子内の水酸基の数Bより、下記式(1)にて算出した値である。
非硬化性オリゴマー(D)の分子量=56.1×B×1000/A …(1)
【0065】
硬化後の粘着層20の弾性率がより低くなりやすい点で、非硬化性オリゴマー(D)としてポリオキシアルキレンポリオールを用いることが好ましく、特にポリオキシプロピレンポリオールが好ましい。また、ポリオキシプロピレンポリオールのオキシプロピレン基の一部をオキシエチレン基で置換してもよい。たとえば、オリゴマー(A’)が、ポリオキシアルキレンポリオールおよびポリイソシアネートを原料に用いて合成されたウレタンオリゴマーであり、非硬化性オリゴマー(D)がポリオキシアルキレンポリオールであることが相溶性の点で好ましい。
【0066】
樹脂組成物中の非硬化性オリゴマー(D)は、減圧、または常圧雰囲気下で粘着層付き透明面材80と表示パネル等とを貼合した後、大気圧雰囲気下において、表示パネルと粘着層20との界面に生じた気泡が消失するのに必要な時間の短縮に寄与する。樹脂組成物中の非硬化性オリゴマー(D)の含有量が少なすぎると、所定の効果が得られず、多すぎると粘着層20の硬化が不充分となるおそれがある。粘着層20の硬化が不十分であると、硬化後の粘着層20から第1保護フィルム30および第2保護フィルム31を剥離することが困難となる場合がある。したがって、樹脂組成物における非硬化性オリゴマー(D)の含有量は、樹脂組成物の全体(100質量%)のうち、10質量%〜70質量%の範囲内で、これらの不都合が生じないように、他の成分とのバランスも考慮して設定されることが好ましい。
【0067】
連鎖移動剤(E)は、ラジカル重合によって成長するポリマーからラジカルを受け取り、ポリマーの伸長を抑制する。そのため、連鎖移動剤(E)の含有量を調節することによって、硬化後の粘着層20の分子量を調節することができる。
連鎖移動剤(E)としては、たとえば、チオール基を有する化合物(n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。
【0068】
樹脂組成物は、硬化性化合物(II)、非硬化性オリゴマー(D)、光重合開始剤(C2)、および連鎖移動剤(E)以外に、必要に応じて、重合禁止剤、光硬化促進剤、光安定剤(紫外線吸収剤、ラジカル捕獲剤等)、酸化防止剤、難燃化剤、接着性向上剤(シランカップリング剤等)、顔料、染料等の各種添加剤を含んでいてもよく、重合禁止剤、光安定剤、酸化防止剤等を含むことが好ましい。特に、重合開始剤より少ない量の重合禁止剤を含むことによって、樹脂組成物の安定性を改善でき、硬化後の分子量も調整できる。また、酸化防止剤を含むことにより硬化後の樹脂組成物の安定性を高めることができる。これらの添加剤の合計量は、硬化性化合物(II)の全体、すなわちオリゴマー(A’)とモノマー(B’)との合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0069】
以上に説明した樹脂組成物の各種成分の割合を、高密着性粘着層21の密着力と低密着性粘着層22の密着力とが互いに異なるように調整する。具体的には、樹脂組成物において、硬化性化合物(II)における水酸基を有するモノマー(B3)と、非硬化性オリゴマー(D)(非硬化成分)と、連鎖移動剤(E)と、の割合を、いずれかひとつ、または複数において、それぞれ調整する。以下、それぞれについて説明する。
【0070】
モノマー(B3)は極性基である水酸基を有する極性成分であるため、硬化性化合物(II)におけるモノマー(B3)の割合が大きくなるほど、言い換えると、樹脂組成物におけるモノマー(B3)の割合が大きくなるほど、粘着層と被貼合体との密着力は向上する。すなわち、高密着性樹脂組成物23に含まれる硬化性化合物(II)におけるモノマー(B3)の割合を、低密着性樹脂組成物24に含まれる硬化性化合物(II)におけるモノマー(B3)の割合よりも大きくなるように調整することで、高密着性粘着層21の密着力を、低密着性粘着層22の密着力よりも大きくできる。
【0071】
樹脂組成物における非硬化性オリゴマー(D)の割合が大きくなるほど、樹脂組成物を硬化させた際の粘着層のせん断弾性率が低くなり、粘着層と被貼合体との密着力は低下する。そのため、高密着性樹脂組成物23に含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合を、低密着性樹脂組成物24に含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合よりも小さくなるように調整することで、高密着性粘着層21の密着力を、低密着性粘着層22の密着力よりも大きくできる。
【0072】
一方、高密着性樹脂組成物23と低密着性樹脂組成物24とに含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合が大きく異なると、高密着性粘着層21と低密着性粘着層22との間の密着力が低下する恐れがある。そのため、高密着性樹脂組成物23と低密着性樹脂組成物24とに含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合の差は20ポイント以下とすることが好ましい。高密着性粘着層21と低密着性粘着層22との間の密着力を高めるためには、高密着性樹脂組成物23と低密着性樹脂組成物24とに含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合をほぼ等しくすることが好ましい。
【0073】
連鎖移動剤(E)はラジカル重合を抑制しポリマーの成長を抑制するため、樹脂組成物における含有率が大きくなるほど、樹脂組成物を硬化させた際の粘着層に含まれる分子の分子量は小さくなる。粘着層に含まれる分子の分子量が小さいと、粘着層が被貼合体と接した際に、粘着層の分子が被貼合体の表面に形成された微細な凹凸部分に浸透しやすく、粘着層と被貼合体との密着力を向上できる。そのため、高密着性樹脂組成物23に含まれる連鎖移動剤(E)の割合を、低密着性樹脂組成物24に含まれる連鎖移動剤(E)の割合よりも大きくなるように調整することで、高密着性粘着層21の密着力を、低密着性粘着層22の密着力よりも大きくできる。
【0074】
一方、連鎖移動剤(E)の割合が大きすぎると硬化物の分子量が小さくなりすぎて、高温保管時に硬化物の形状が変化するなど耐久性が損なわれる恐れがある。高密着性樹脂組成物23に含まれる連鎖移動剤(E)の割合は、1.5wt%以下が好ましく、1.0wt%以下がさらに好ましい。低密着性樹脂組成物24は連鎖移動剤(E)を含まなくてもよいが、連鎖移動剤(E)を全く含まないと低密着性粘着層22のせん断弾性率が高くなり、表示装置との貼合後に貼合時の空隙が消失しにくくなるおそれがある。低密着性樹脂組成物24は、連鎖移動剤(E)を0.1wt%以上含むことが好ましい。
【0075】
本実施形態においては、上記説明した、モノマー(B3)、非硬化性オリゴマー(D)、および連鎖移動剤(E)のうちのいずれか1つ、あるいは、2つ以上において、上記のようにして、高密着性樹脂組成物23と低密着性樹脂組成物24との組成の割合が、調整される。すなわち、高密着性粘着層21の密着力を低密着性粘着層22の密着力よりも大きくするためには、低密着性粘着層22に含まれる各成分の割合に対して、高密着性樹脂組成物23に含まれるモノマー(B3)の割合を大きくするか、非硬化性オリゴマー(D)の割合を小さくするか、連鎖移動剤(E)の割合を大きくするか、すればよい。
【0076】
各種成分割合の調整については、高密着性粘着層21の密着力が、低密着性粘着層22の密着力よりも大きくなる範囲内において、特に限定されない。本実施形態においては、たとえば、連鎖移動剤(E)については、上記のようにして高密着性樹脂組成物23に含まれる割合を、低密着性樹脂組成物24に含まれる割合よりも大きくし、非硬化性オリゴマー(D)については、上記とは逆にして高密着性樹脂組成物23に含まれる割合を、低密着性樹脂組成物24に含まれる割合よりも大きくしてもよい。
【0077】
この場合、非硬化性オリゴマー(D)の割合のみに着目すれば、高密着性粘着層21の密着力は、低密着性粘着層22の密着力よりも小さくなるように調整されているが、連鎖移動剤(E)の割合の相違による高密着性粘着層21の密着力の向上する度合いが、非硬化性オリゴマー(D)の割合の相違による高密着性粘着層21の密着力の低下する度合いを上回るように調整することで、結果として、高密着性粘着層21の密着力を、低密着性粘着層22の密着力よりも大きくできる。
【0078】
<両面粘着フィルムの製造方法>
本実施形態においては、まず粘着層が1層で構成される粘着フィルム原反11,12を製造した後に、それらを互いに貼り合わせることで、両面粘着フィルム10を製造する。
図4は、粘着層が1層で構成される粘着フィルム原反11,12を製造するための製造装置の一例である製造装置100を示す模式図である。以下、製造装置100を用いた粘着フィルム原反11,12の製造方法について説明する。
【0079】
製造装置100は、
図4に示すように、巻出しロール50と、巻出しロール51と、塗布部44と、貼合ロール52と、硬化部40と、バックアップロール53と、搬送ロール60と、を備えている。
【0080】
巻出しロール50は、ロール状に巻き取られた第1保護フィルム30を順次巻き出すロールである。巻出しロール51は、ロール状に巻き取られた第3保護フィルム32を順次巻き出すロールである。第3保護フィルム32は、第1保護フィルム30と同様の構成であり、一時的に粘着層の表面を保護する。すなわち、第3保護フィルム32は、本実施形態の両面粘着フィルム10において、最終的に残るものでなく、製造プロセス中にのみ用いられる。
【0081】
塗布部44は、巻出しロール50によって巻き出された第1保護フィルム30の面上に、液状の高密着性樹脂組成物23を帯状に連続して塗布する塗布装置である。
高密着性樹脂組成物23が塗布された第1保護フィルム30は、貼合ロール52によって、第3保護フィルム32と、高密着性樹脂組成物23を介して貼合される。高密着性樹脂組成物23を介して貼合された第1保護フィルム30および第3保護フィルム32は、硬化部40に搬送される。
【0082】
硬化部40(本実施形態では光照射装置)は、チャンバー41と、チャンバー41内に配置された光源42および光源43と、を備えている。
図4に示す例では、光源は2つであるが、光源の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0083】
チャンバー41内は、不活性ガス雰囲気となっている。たとえば、チャンバー41内には窒素が充填され、酸素濃度が100ppm以下に制御されている。チャンバー41内が不活性ガス雰囲気下となっているため、上述した樹脂組成物に紫外線を照射(光照射)し硬化反応させる際に、紫外線照射によって樹脂組成物に生じるラジカルが、酸素で失活する副反応を抑制することができる。
【0084】
光源42,43は、紫外線を照射可能な光源である。光源42,43としては、たとえば、通常知られた高圧水銀灯やメタルハライドランプを用いることができる。
【0085】
高密着性樹脂組成物23を介して貼合された第1保護フィルム30および第3保護フィルム32は、バックアップロール53によってチャンバー41内を掛け回され、光源42,43によって紫外線が照射される。紫外線が照射されることによって、高密着性樹脂組成物23が硬化され、高密着性粘着層21が形成される。これにより、高密着性粘着層21が第1保護フィルム30および第3保護フィルム32によって挟持された粘着フィルム原反11が製造される。
【0086】
粘着フィルム原反11は、複数の搬送ロール60によって搬送され、原反ロール54によって巻き取られる。
【0087】
粘着層が低密着性粘着層22の一層で構成される粘着フィルム原反12は、上述したのと同様にして、製造装置100を用いて製造され、原反ロール55によって巻き取られる。この場合においては、巻出しロール50からは、第2保護フィルム31が巻き出され、巻出しロール51からは、第4保護フィルム33が巻き出される。第4保護フィルム33の構成および取り扱いについては、第3保護フィルム32と同様である。また、塗布部44からは、低密着性樹脂組成物24が吐出される。
【0088】
上記のようにして製造された、粘着フィルム原反11,12を貼合して、本実施形態の両面粘着フィルム10を製造する。
図5は、粘着フィルム原反11,12を貼り合わせて本実施形態の両面粘着フィルム10を製造するための貼合装置の一例である貼合装置200を示す模式図である。以下、貼合装置200を用いた両面粘着フィルム10の製造方法について説明する。
【0089】
貼合装置200は、
図5に示すように、原反ロール54と、原反ロール55と、保護フィルム巻取りロール56aと、保護フィルム巻取りロール56bと、剥離ロール55aと、剥離ロール55bと、貼合ロール57aと、貼合ロール57bと、搬送ロール60と、切断部46と、を備える。
【0090】
原反ロール54は、製造装置100によってロール状に巻き取られた粘着フィルム原反11を順次巻き出し、原反ロール55は、同様に製造装置100によってロール状に巻き取られた粘着フィルム原反12を順次巻き出す。
【0091】
巻き出された粘着フィルム原反11の第3保護フィルム32は、剥離ロール55aを介して、保護フィルム巻取りロール56aに巻き取られる。これにより、高密着性粘着層21の積層面21bが露出する。
巻き出された粘着フィルム原反12の第4保護フィルム33は、剥離ロール55bを介して、保護フィルム巻取りロール56bに巻き取られる。これにより、低密着性粘着層22の積層面22bが露出する。
【0092】
それぞれ積層面21b,22bが露出された粘着フィルム原反11,12は、貼合ロール57aと貼合ロール57bとによって、積層面21bと積層面22bとが当接するように挟持され、貼合される。これにより、粘着層20を備える両面粘着フィルム原反13が製造される。
【0093】
両面粘着フィルム原反13は、複数の搬送ロール60によって搬送される。搬送された両面粘着フィルム原反13は、切断部46によって切断され、個片化される。切断部46は、本実施形態においては、たとえば、レーザーカッターである。
以上により、両面粘着フィルム10が製造される。
【0094】
<粘着層付き透明面材>
粘着層付き透明面材80は、たとえば、液晶表示装置の表示パネル等に貼合される粘着層付きの保護板である。
粘着層付き透明面材80は、
図3に示すように、保護板81と、遮光印刷部82と、粘着層20と、第2保護フィルム31と、を備える。
【0095】
粘着層20は、
図2に示す両面粘着フィルム10から第1保護フィルム30を剥離し、高密着性粘着層21を介して保護板81の上面81aに貼合したものである。すなわち、本実施形態における粘着層付き透明面材80は、たとえば、本実施形態の両面粘着フィルム10が貼合されることによって製造される。
【0096】
[保護板]
保護板81は、透明な平板である。保護板81の平面視形状は、特に限定されず、保護板81が貼合される表示パネル、または表示パネルが設けられた表示装置等の形状に応じて適宜設定できる。保護板81の平面視形状は、たとえば、矩形状である。
保護板81は、表示パネルの画像表示面側に設けられて表示パネルを保護する。保護板81の材質としては、ガラス板、または透明樹脂板が挙げられる。表示パネルからの射出光や反射光に対して透明性が高い点はもちろん、耐光性、低複屈折性、高い平面精度、耐表面傷付性、高い機械的強度を有する点からも、保護板81の材質は、ガラス板が最も好ましい。後述する光硬化性樹脂組成物を硬化させるための光を充分に透過させる点でも、ガラス板が好ましい。
【0097】
保護板81としては、一方向に湾曲した板を採用することもできる。たとえば、この場合において粘着層付き透明面材80を厚みの薄い表示パネルに貼合する際には、保護板81の湾曲した方向と同方向に表示パネルを湾曲させて、表示パネルに粘着層付き透明面材80を貼合する。
【0098】
ガラス板の材料としては、ソーダライムガラス等のガラス材料が挙げられ、鉄分がより低く、青みの少ない高透過ガラス(白板ガラス)がより好ましい。安全性を高めるために表面材として強化ガラスを用いてもよい。特に薄いガラス板を用いる場合には、化学強化を施したガラス板を用いることが好ましい。
透明樹脂板の材料としては、透明性の高い樹脂材料(ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等)が挙げられる。
【0099】
保護板81には、粘着層20における高密着性粘着層21との界面接着力を向上させるために、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、保護板81の表面をシランカップリング剤で処理する方法、フレームバーナーによる酸化炎によって酸化ケイ素の薄膜を形成する方法等が挙げられる。
【0100】
保護板81には、表示画像のコントラストを高めるために、粘着層20が形成された側(+Z側)とは反対側(−Z側)の下面81bに反射防止層を設けてもよい。反射防止層は、保護板81の表面に無機薄膜を直接形成する方法、反射防止層を設けた透明樹脂フィルムを保護板81に貼合する方法によって設けることができる。
【0101】
また、目的に応じて、保護板81の一部または全体を着色したり、保護板81の表面の一部または全体を磨りガラス状にして光を散乱させたり、保護板81の表面の一部または全体に微細な凹凸等を形成して透過光を屈折または反射させたりしてもよい。また、着色フィルム、光散乱フィルム、光屈折フィルム、光反射フィルム等を、保護板81の表面の一部または全体に貼着してもよい。
【0102】
保護板81の厚さは、機械的強度、透明性の点から、ガラス板の場合は通常0.5mm〜25mmである。屋内で使用するテレビ受像機、PC用ディスプレイ等の用途では、表示装置の軽量化の点から、0.5mm〜6mmが好ましく、屋外に設置する公衆表示用途では、3mm〜20mmが好ましい。化学強化ガラスを用いる場合は、ガラスの厚さは、強度の点で、0.4mm〜1.5mm程度が好ましい。透明樹脂板の場合は、2mm〜10mmが好ましい。
【0103】
[遮光印刷部]
遮光印刷部82は、枠状に形成された、加飾印刷部である。遮光印刷部82は、表示パネルの画像表示領域以外が保護板81側から視認できないようにして、表示パネルに接続されている配線部材等を隠蔽する。遮光印刷部82は、粘着層20が形成される側(+Z側)である保護板81の上面81a、またはその反対側である保護板81の下面81bに形成できる。
図3に示す例では、遮光印刷部82は、上面81aに形成されている。遮光印刷部82と画像表示領域との視差を低減する点では、遮光印刷部82は、粘着層20が形成される側(+Z側)である保護板81の上面81aに形成されることが好ましい。保護板81がガラス板の場合、遮光印刷部82に黒色顔料を含むセラミック印刷を用いると遮光性が高く好ましい。
【0104】
遮光印刷部が、粘着層が形成された側と反対側(−Z側)の下面81bに形成される場合、遮光印刷部をあらかじめ設けた透明フィルムを保護板に貼合することで形成することもできる。保護板に貼合される面の透明フィルムの周縁部に遮光印刷部を設け、その裏面、すなわち表示装置の最表面に反射防止層を設けたフィルムを保護板に貼合してもよい。表示パネルの配線部材等が、表示パネルを観察する側からは視認できない構造である場合や、表示装置の筺体等の他の部材により隠蔽される場合、または、表示パネル以外の被貼合体と粘着層付き透明面材とを貼合する場合には、遮光印刷部を保護板に形成しない場合もある。
【0105】
<粘着層付き透明面材の製造方法>
粘着層付き透明面材80は、上述したように、両面粘着フィルム10を保護板81に貼合することによって製造されてもよいし、以下に述べる他の製造方法によって製造されてもよい。
【0106】
粘着層付き透明面材80の他の製造方法としては、たとえば、両面粘着フィルム10を製造する際に、その前段階において製造される粘着層が1層で構成された粘着フィルム原反11,12を個片化し、順次保護板81に貼合する方法を採用してもよい。
【0107】
すなわち、まず、高密着性粘着層21を備える粘着フィルム原反11を個片化し、第1保護フィルム30を剥離する。これにより、高密着性粘着層21の貼合面21aが露出する。
次に、高密着性粘着層21が露出した貼合面21aを保護板81に接触させて、高密着性粘着層21を保護板81の上面81aに貼合する。
【0108】
次に、低密着性粘着層22を備える粘着フィルム原反12を個片化する。そして、個片化された粘着フィルム原反12の第4保護フィルム33と、保護板81上に貼合された高密着性粘着層21に貼着されている第3保護フィルム32とを剥離する。これにより、低密着性粘着層22の積層面22bと、高密着性粘着層21の積層面21bとが露出する。
【0109】
次に、低密着性粘着層22の積層面22bと、高密着性粘着層21の積層面21bとを接触させ、高密着性粘着層21上に、低密着性粘着層22を積層して貼合する。
以上により、粘着層付き透明面材80が製造される。
【0110】
また、粘着層付き透明面材80の他の製造方法としては、たとえば、保護板81の上面81aに直接粘着層20を形成する方法を採用してもよい。この場合においては、保護板81の上面81aに、高密着性粘着層21を形成した後に、高密着性粘着層21に積層して低密着性粘着層22を形成する。各粘着層の形成方法については、特に限定されず、たとえば、ダイコート方式によって樹脂組成物を塗布することによって形成してもよいし、ディスペンサ等によって樹脂組成物を塗布した後に、減圧雰囲気下においてフィルムを貼り合わせ、その後大気圧解放する方法によって形成してもよい。
【0111】
なお、本実施形態においては、保護板81上に高密着性粘着層21が形成された後に、保護板81側(−Z側)から高密着性粘着層21に紫外線を照射してもよい。これにより、高密着性粘着層21と保護板81との密着力をさらに向上できる。
また、本実施形態においては、高密着性粘着層21に低密着性粘着層22を積層した後に紫外線を照射してもよい。これにより、高密着性粘着層21と低密着性粘着層22との密着力をさらに向上できる。
【0112】
従来の両面粘着フィルムについても、複数の異なる樹脂層から構成されるものは存在していた。しかしながら、例えば表示装置とその保護板との貼合のように、リワークの容易さが求められる場合などに、その複数の樹脂層において、それぞれの被着体との間に異なる密着力を提供することは開示されていなかった。本明細書において示されるように、所定の密着力を複数の樹脂組成にて制御できることから、異なる樹脂層が一義的に異なる密着力を示すと言うことはできず、リワークの容易さという観点で、樹脂層両面でのそれぞれの密着力を評価したものはこれまでに無かった。
【0113】
本実施形態によれば、リワーク性を向上できる両面粘着フィルムおよび粘着層付き透明面材が得られる。以下、詳細に説明する。
【0114】
粘着層付き透明面材を、表示装置等の被貼合体に貼合する際には、保護フィルムを剥離し、露出した粘着層の面を被貼合体に接触させて、粘着層付き透明面材を被貼合体に貼合する。このとき、たとえば、粘着層付き透明面材を貼合する位置がずれた場合や、粘着層と被貼合体との間に異物が混入した場合においては、粘着層付き透明面材を一度剥離し、再度貼り直す必要がある。
【0115】
しかし、一度貼合させた粘着層付き透明面材を剥離すると、粘着層が分離し、粘着層の一部が被貼合体の被貼合面に残留する場合があった。このような場合においては、再度粘着層付き透明面材を貼合した際に、残留した粘着層によって被貼合面が平坦にならず、良好な表示特性が得られないという問題があった。そのため、被貼合体の被貼合面を洗浄し、残留した粘着層を除去しなければならず手間がかかっていた。
【0116】
また、剥離した粘着層付き透明面材においても粘着層の一部が分離してしまっているため、被貼合体に再度貼合すると、粘着層と被貼合面との界面が平坦にならず、良好な表示特性が得られない。そのため、新たな粘着層付き透明面材を用意する必要があり、コストがかかるという問題があった。
【0117】
上記のような問題に対して、本実施形態の両面粘着フィルムによれば、粘着層20における貼合面21aと貼合面22aとで、樹脂組成物の組成が異なる。そのため、相対的に保護板81との密着性が大きい方の貼合面、すなわち、本実施形態においては、高密着性粘着層21の面である貼合面21a、を保護板81と貼合する側とし、他方の面、すなわち、本実施形態においては低密着性粘着層22の面である貼合面22a、を被貼合体と貼合する側として利用する。このようにすれば、一度貼合した後に保護板81を剥離するような場合であっても、保護板81とともに粘着層20が剥離しやすい。これにより、粘着層20が分離することを抑制でき、被貼合体の被貼合面に粘着層20が分離して残留してしまうことを抑制できる。その結果、本実施形態によれば、保護板81を再度貼合することが容易となり、リワーク性を向上できる。したがって、本実施形態によれば、保護板を再度剥離しなければならないような場合における、手間やコストを低減できる。
【0118】
また、本実施形態によれば、保護板81に貼合される高密着性粘着層21と、表示装置の表示パネル等に貼合される低密着性粘着層22とでは、形成材料である樹脂組成物の組成の割合が異なる。すなわち、本実施形態において、高密着性樹脂組成物23は、低密着性樹脂組成物24よりも、極性成分であるモノマー(B3)を含有する割合が大きいか、非硬化成分である非硬化性オリゴマー(D)を含有する割合が小さいか、あるいは、連鎖移動剤(E)を含有する割合が大きい。これにより、高密着性粘着層21における保護板81との密着力を、低密着性粘着層22における表示装置との密着力よりも大きくできる。
【0119】
また、本実施形態によれば、高密着性粘着層21と低密着性粘着層22とを形成する樹脂組成物の組成の種類は、互いに同じである。そのため、高密着性粘着層21と低密着性粘着層22との親和性が高く、高密着性粘着層21と低密着性粘着層22とが強固に接着される。したがって、本実施形態によれば、リワーク時において、高密着性粘着層21と低密着性粘着層22とが界面で分離することを抑制できる。
【0120】
特に、高密着性粘着層21と低密着性粘着層22とを形成する樹脂組成物の組成のうち、連鎖移動剤の含有量以外の組成の比率を、互いに同じとすることで、高密着性粘着層21と低密着性粘着層22との接着力を高めることができ、さらに好ましい。
【0121】
また、本実施形態の粘着層付き透明面材によれば、高密着性樹脂組成物23に含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合を、低密着性樹脂組成物24に含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合よりも大きくすることで、貼合時においてはリワーク性が高く、貼合された後、時間の経過とともに密着性が向上するような粘着層付き透明面材が得られる。以下、詳細に説明する。
【0122】
粘着層付き透明面材においては、表示装置等に貼合する際に、保護板(透明面材)を容易に剥離できるリワーク性が求められる一方で、保護板が所定の位置に貼合された後においては、保護板が剥離しにくくなることが求められる。言い換えると、貼合してから所定時間が経過する前においては粘着層と表示装置との密着力が小さく、貼合してから所定時間が経過した後においては粘着層と表示装置との密着力が大きいことが求められる。
【0123】
ここで、本発明者らによって明らかになった知見として、非硬化性オリゴマー(D)は、濃度勾配に応じて移動することが挙げられる。すなわち、非硬化性オリゴマー(D)は、濃度が高い箇所から、濃度が低い箇所に向かって移動する性質を有する。これにより、上記のような性質を有する粘着層付き透明面材が得られる。
【0124】
図6(A),(B)は、非硬化性オリゴマー(D)の移動によって粘着層20の性質が変化することを説明するための図である。
図6(A),(B)においては、樹脂組成物に含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合をハッチングの密度に対応させて模式的に示している。
【0125】
低密着性樹脂組成物24に含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合が、高密着性樹脂組成物23に含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合よりも大きい場合には、低密着性粘着層22から高密着性粘着層21へと非硬化性オリゴマー(D)が移動する。これにより、非硬化性オリゴマー(D)の割合は、時間の経過とともに、
図6(A)に示すように、低密着性粘着層22の貼合面22aから、積層面22b(積層面21b)、高密着性粘着層21の貼合面21aへと向かうにしたがって、非硬化性オリゴマー(D)の割合が小さくなるように変化する。
【0126】
そして、所定時間が経過することにより、
図6(B)に示すように、非硬化性オリゴマー(D)の割合が低下した低密着性粘着層27と、非硬化性オリゴマー(D)の割合が増加した高密着性粘着層26と、を備える粘着層25が形成される。これにより、低密着性粘着層27における非硬化性オリゴマー(D)の割合が小さくなり、低密着性粘着層27の密着力が向上する。言い換えると、被貼合体から剥離させやすい低密着性粘着層22を備えた粘着層付き透明面材80は、所定時間の経過により、被貼合体との密着力が向上した低密着性粘着層27を備えた粘着層付き透明面材83となる。したがって、本実施形態によれば、貼合時においてはリワーク性が高く、貼合後、所定時間経過した後においては粘着層と表示装置との密着力が向上する粘着層付き透明面材が得られる。
【0127】
なお、実際には、非硬化性オリゴマー(D)の移動は、非硬化性オリゴマー(D)の含まれる割合の差がある程度小さくなると起こらなくなるものと考えられる。すなわち、
図6(B)においては、所定時間が経過した後の低密着性粘着層27と高密着性粘着層26との非硬化性オリゴマー(D)の割合、すなわち、ハッチングの密度は、同程度で示されているが、実際には、高密着性粘着層21における非硬化性オリゴマー(D)の割合と、低密着性粘着層22における非硬化性オリゴマー(D)の割合との差が、ある程度小さくなった段階で、非硬化性オリゴマー(D)の移動は起こらなくなるものと考えられる。
【0128】
また、
図6(B)では、低密着性粘着層27と高密着性粘着層26とにおける層内において、それぞれ均一に濃度が変化しているように示しているが、実際には、低密着性粘着層27の貼合面27aから高密着性粘着層26の貼合面26aに向かうにしたがって、非硬化性オリゴマー(D)の含まれる割合が、連続的、あるいは、不連続的に減少していくような濃度分布になるものと考えられる。
【0129】
非硬化性オリゴマー(D)の移動する速度は、濃度勾配や温度に応じて変化する。すなわち、非硬化性オリゴマー(D)の移動する速度は、濃度勾配が大きいほど速くなり、温度が高いほど速くなる。
【0130】
また、粘着層20の温度を低温に保つことにより、非硬化性オリゴマー(D)の移動を抑制することができる。そのため、表示装置に貼合する前においては、粘着層付き透明面材を低温で保管しておくことが好ましい。
【0131】
なお、本実施形態においては、以下の構成を採用することもできる。
【0132】
上記説明した実施形態においては、極性成分としてモノマー(B3)を用いる場合について説明したが、これに限られない。粘着層の密着力は、極性成分の割合が大きいほど、大きくなりやすく、本実施形態においては、他の極性成分の割合を調整することによって、高密着性粘着層21の密着力と低密着性粘着層22の密着力とを調整してもよい。
また、本実施形態においては、水酸基以外の極性基を有する極性成分を用いてもよい。
【0133】
また、上記説明した実施形態においては、高密着性樹脂組成物23および低密着性樹脂組成物24は、それぞれ、モノマー(B3)、非硬化性オリゴマー(D)、および連鎖移動剤(E)をすべて含むものとしたが、これに限られない。本実施形態においては、各種成分の割合調整において、いずれかの樹脂組成物に含まれない成分があってもよい。すなわち、具体的に例示すれば、高密着性樹脂組成物23に含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合を、低密着性樹脂組成物24に含まれる非硬化性オリゴマー(D)の割合よりも小さくする場合に、高密着性樹脂組成物23が非硬化性オリゴマー(D)を含まないものとしてもよい。すなわち、高密着性樹脂組成物23における非硬化性オリゴマー(D)の割合を0%としてもよい。連鎖移動剤の含有量に関しても同様である。
【0134】
また、本実施形態においては、高密着性粘着層21の貼合面21aにおける樹脂組成物の組成が、低密着性粘着層22の貼合面22aにおける樹脂組成物の組成と異なる範囲内において、高密着性粘着層21の内部における樹脂組成物の成分の分布、および低密着性粘着層22の内部における樹脂組成物の成分の分布は、特に限定されない。
【0135】
また、上記説明した実施形態においては、両面粘着フィルムの製造方法として、高密着性粘着層21を備える粘着フィルム原反11と、低密着性粘着層22を備える粘着フィルム原反12とを製造装置100を用いて製造した後に、それぞれを貼合装置200によって貼合させる方法としたが、これに限られない。本実施形態においては、
図7に示すような製造装置300を用いて、両面粘着フィルム10を製造してもよい。
【0136】
図7は、両面粘着フィルム10の製造装置の他の一例である製造装置300を示す模式図である。
製造装置300は、
図7に示すように、製造装置100と、剥離ロール151と、保護フィルム巻取りロール152と、塗布部144と、貼合ロール153と、巻出しロール154と、硬化部140と、切断部46と、を備える。
【0137】
製造装置100によって、製造された高密着性粘着層21を備える粘着フィルム原反11は、剥離ロール151を介して、保護フィルム巻取りロール152によって、第3保護フィルム32が剥離され、高密着性粘着層21の積層面21bが露出される。
【0138】
高密着性粘着層21の積層面21bには、塗布部144によって、液状の低密着性樹脂組成物24が、連続的に帯状に塗布される。そして、低密着性樹脂組成物24の面上には巻出しロール154から巻き出された第2保護フィルム31が、貼合ロール153を介して貼合される。第2保護フィルム31が貼合された両面粘着フィルム原反は、搬送ロール60によって硬化部140のチャンバー141内に搬送される。
【0139】
チャンバー141内において、低密着性樹脂組成物24には、光源142,143によって紫外線が照射される。チャンバー141、光源142,143は、それぞれ、上述したチャンバー41、光源42,43と同様である。これにより、低密着性樹脂組成物24が硬化し、低密着性粘着層22が形成され、両面粘着フィルム原反13が製造される。
【0140】
両面粘着フィルム原反13は、切断部46によって個片化され、両面粘着フィルム10が製造される。
この製造装置300によれば、一つのラインで両面粘着フィルム10を製造できるため、簡便である。
【0141】
また、本実施形態においては、
図4において示した製造装置100に、2点鎖線で示す塗布部45を加える構成としてもよい。この構成においては、塗布部44および塗布部45によって、高密着性樹脂組成物23および低密着性樹脂組成物24を、硬化する前に2層重ねて塗布し、硬化部40によって2層まとめて硬化させることで、粘着層20を形成する。
【0142】
また、上記説明においては、切断部46は、レーザーカッターとしたが、これに限られない。本実施形態においては、切断部46は、両面粘着フィルム原反13を個片化できる範囲内において、特に限定されず、たとえば、回転刃によって両面粘着フィルム原反13を切断する構成であってもよい。ただし、両面粘着フィルムが柔らかく、せん断弾性率が100kPaより小さい場合などには、切断後の再付着を防止する面からレーザーカッターを用いることが好ましい。
【0143】
また、本実施形態の粘着層付き透明面材80は、保護板81の上面81aにのみ粘着層20が設けられている構成としたが、これに限られない。本実施形態においては、保護板81の上面81a及び下面81bの両方に粘着層20が設けられる構成としてもよい。すなわち、本実施形態においては、粘着層は、保護板81の両方の面にそれぞれ設けられる構成としてもよい。この場合においては、粘着層の組成は、上面81aに設けられる粘着層と下面81bに設けられる粘着層とで、それぞれ異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0144】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態に対して、粘着層が3層設けられている点において異なる。
なお、以下の説明においては、上記実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0145】
図8は、本実施形態の両面粘着フィルム110を示す断面図である。
本実施形態の両面粘着フィルム110は、
図8に示すように、粘着層120を備えている。粘着層120の一方側(−Z側)の貼合面(第1面)121aには、第1保護フィルム30が貼着されている。粘着層120の他方側(+Z側)の貼合面(第2面)123aには、第2保護フィルム31が貼着されている。
【0146】
粘着層120は、高密着性粘着層(第1粘着層)121と、中間粘着層(第3粘着層)122と、低密着性粘着層(第2粘着層)123と、を備える。
高密着性粘着層121は、貼合面121aを有している。低密着性粘着層123は、貼合面123aを有している。
【0147】
高密着性粘着層121は、第1実施形態における高密着性粘着層21と同様である。低密着性粘着層123は、第1実施形態における低密着性粘着層22と同様である。
中間粘着層122は、高密着性粘着層121と低密着性粘着層123とを接続する層である。
【0148】
高密着性粘着層121と、低密着性粘着層123と、中間粘着層122とは、それぞれ、第1実施形態において説明した樹脂組成物と同様の樹脂組成物が硬化されることによって形成されている。
高密着性粘着層121と、低密着性粘着層123と、中間粘着層122とにおいて、それぞれを形成する樹脂組成物に含まれる成分の割合は、互いに異なる。すなわち、貼合面121aにおける樹脂組成物の組成の割合と、貼合面123aにおける樹脂組成物の組成の割合とは、互いに異なる。具体的には、第1実施形態で説明した、モノマー(B3)、非硬化性オリゴマー(D)、および連鎖移動剤(E)の割合が、いずれかひとつ、または複数において、それぞれ異なることによって、各粘着層における密着力が調整されている。
【0149】
高密着性粘着層121および低密着性粘着層123においては、第1実施形態において説明した高密着性粘着層21および低密着性粘着層22と同様にして、高密着性粘着層121の密着力が、低密着性粘着層123の密着力よりも大きくなるように、各種成分の割合が調整される。
中間粘着層122を形成する樹脂組成物の組成割合は、高密着性粘着層121と低密着性粘着層123とを良好に接着できるように調整される。
【0150】
本実施形態によれば、中間粘着層122が設けられているため、たとえば、高密着性粘着層121と低密着性粘着層123とに含まれる組成成分を大きく異なるものにしたことによって、低密着性粘着層123と高密着性粘着層121との親和性が低下してしまうような場合であっても、中間粘着層122の組成成分を調整することによって、高密着性粘着層121と低密着性粘着層123とを中間粘着層122を介して良好に接着できる。
【0151】
なお、
図8に示す例では、各粘着層は同程度の厚さ(Z軸方向長さ)で記載されているが、これに限られず、たとえば、高密着性粘着層121と低密着性粘着層123との厚さを中間粘着層122の厚さに比べて十分に小さくしてもよい。この構成によれば、粘着層120全体の物性は、主として中間粘着層122の物性によって決定されるため、リワーク性を担保しつつ、粘着層120の物性を任意に調整することが容易である。
【0152】
(第3実施形態)
第3実施形態は、第1実施形態に対して、粘着層が2層積層される代わりに、1層の粘着層の両面に異なる表面処理が施されている点において異なる。
なお、以下の説明においては、上記実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0153】
図9は、本実施形態の両面粘着フィルム210を示す断面図である。
本実施形態の両面粘着フィルム210は、
図9に示すように、粘着層220を備える。
粘着層220の一方側(−Z側)の貼合面(第1面)220aと、他方側(+Z側)の貼合面(第2面)220bとには、それぞれ表面処理が施されており、高密着性表面処理部(第1粘着層)221と、低密着性表面処理部(第2粘着層)222と、が形成されている。
【0154】
高密着性表面処理部221と低密着性表面処理部222とは、互いに密着力が異なるように形成されている。具体的には、それぞれ高密着性表面処理部221と低密着性表面処理部222とを形成する樹脂組成物において、第1実施形態において説明した、モノマー(B3)、非硬化性オリゴマー(D)、および連鎖移動剤(E)の割合が、いずれかひとつ、または複数において、互いに異なるように形成されている。
【0155】
表面処理の方法としては、たとえば、モノマー(B3)、非硬化性オリゴマー(D)、および連鎖移動剤(E)のいずれかを、硬化前、または半硬化後の粘着層220の貼合面220a,220bに添加する等によって、組成の割合を変化させる方法を選択できる。または、硬化後の粘着層220の貼合面220bに非硬化性オリゴマー(D)を添加することで、低密着性表面処理を施すこともできる。
【0156】
本実施形態によれば、粘着層を1層形成して、表面を処理することによって両面粘着フィルムを製造できるため、簡便である。
【0157】
<積層体>
以下、積層体の一例として、表示装置について説明する。
図10は、表示装置の実施形態の一例を示す断面図である。
本実施形態の表示装置(積層体)1000は、表示パネル(被貼合体)90と、粘着層20における低密着性粘着層22が表示パネル90に接するように、表示パネル90に貼合された粘着層付き透明面材80と、表示パネル90に接続された表示パネル90を動作させる駆動ICを搭載したフレキシブルプリント配線板99と、を備える。
【0158】
表示パネル90は、カラーフィルタを設けた透明基板92と、TFT(薄膜トランジスタ)を設けた透明基板94とを、液晶層96を介して貼合し、これを一対の偏光板98で挟んだ構成の液晶パネルである。
【0159】
表示装置1000は、上記実施形態において説明した粘着層付き透明面材80を表示パネル90に貼合して製造される。すなわち、表示装置1000は、粘着層付き透明面材80の第2保護フィルム31を剥離し、低密着性粘着層22の貼合面22aを表示パネル90に貼合することによって、製造される。
【0160】
たとえば、このような表示装置1000において、高密着性粘着層21の密着力と低密着性粘着層22の密着力とを、非硬化性オリゴマー(D)の割合で調整することによって、表示パネル90と粘着層付き透明面材80とを貼合する際にはリワーク性が高く、時間の経過とともに表示パネル90と保護板81との密着力が向上するようにできる。
【0161】
なお、上記表示装置の実施形態においては、粘着層付き透明面材として両面粘着フィルム10における粘着層20を備える粘着層付き透明面材80を用いた例を示したが、これに限られない。本実施形態の表示装置は、粘着層として、両面粘着フィルム110,210における粘着層120,220を備えていてもよい。
【実施例】
【0162】
第1実施形態の実施例を製造し、高密着性粘着層の密着力と低密着性粘着層の密着力とをそれぞれ計測した。高密着性樹脂組成物と低密着性樹脂組成物とは、連鎖移動剤(E)の割合のみが異なるものとした。粘着層の樹脂組成物は、下記の通りとした。
【0163】
[樹脂組成物]
分子末端をエチレンオキシドで変性した2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000)と、イソホロンジイソシアネートとをモル比4:5で混合し、錫触媒の存在下で、70℃で反応させてプレポリマーを得た。得られたプレポリマーに、2−ヒドロキシエチルアクリレートをモル比1:2で加えて70℃で反応させ、ウレタンアクリレートオリゴマー(A−1)(以下、「オリゴマー(A−1)」と記す。)を得た。オリゴマー(A−1)の硬化性官能基の数は2個、数平均分子量は約24000、25℃における粘度は約830Pa・sであった。樹脂組成物の粘度は、25℃においてE型粘度計を用いて測定した。
【0164】
オリゴマー(A−1)の40質量部と、2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル HOB)の40質量部と、n−ドデシルメタクリレートの20質量部と、を均一に混合し、100質量部の樹脂混合物を得た。100質量部の樹脂混合物に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(光重合開始剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE 819)の0.3質量部、および2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン(重合禁止剤、東京化成社製)の0.04質量部、およびn−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤(E)、花王社製、チオカルコール20)を所定の割合で均一に溶解させて、ベース組成物を得た。連鎖移動剤の割合は、低密着性樹脂組成物と高密着性樹脂組成物とで異なる割合とした。高密着性樹脂組成物においては、連鎖移動剤(E)の割合を1.0質量部とし、低密着性樹脂組成物においては、連鎖移動剤(E)の割合を0.1質量部とした。これにより、2種類のベース組成物を得た。
【0165】
次に、ベース組成物の60質量部と非硬化性オリゴマー(D)の40質量部とを、均一に混合し、容器にいれたまま解放状態で減圧装置内に設置した。減圧装置内を約20Paに減圧して10分保持することで脱泡処理を行い、樹脂組成物を得た。非硬化性オリゴマー(D)としては、オリゴマー(A−1)の合成時に用いたものと同一の、分子末端をエチレンオキシドで変性した2官能のポリプロピレングリコール(水酸基価より算出した数平均分子量:4000)を用いた。
【0166】
以上のようにして得られた樹脂組成物を用いて、両面粘着フィルムを製造し、各粘着層の密着力について計測した。用いた偏光板は、市販の液晶モニター(Dell社製U2212HM)より取り出した。
【0167】
その結果、低密着性粘着層の偏光板に対する密着力は、0.3N/25mm、ガラスに対する密着力は0.1N/25mmであった。それに対して、高密着性粘着層のガラスに対する密着力は、4.0N/25mmであった。これにより、連鎖移動剤(E)の割合を変化させることによって、粘着層の密着力を調整できることが確かめられた。具体的には、樹脂組成物における連鎖移動剤(E)の割合を大きくすることで、密着力を向上できることが確かめられた。
低密着性粘着層と高密着性粘着層とを重ねて、動的粘弾性測定器を用いて、25℃におけるせん断弾性率を測定したところ、25kPaであった。
【0168】
なお、本実施例では、密着力を評価する対象として、表示装置の構成部材(被貼合体)の一例としては偏光板を使用し、保護板の一例としてはガラスを使用したが、表示装置の表面に用いられる部材であれば、これに限られない。例えば、3D表示用の表示装置の表面に、ガラス部材が用いられることもある。安定的にリワークを行うためには、高密着性粘着層とガラスとの密着力は、低密着性粘着層と各被貼合体との密着力の2倍以上が好ましく、3倍以上であればより安定的にリワークが可能となる。
【0169】
以上により、本発明の有用性が確認された。