(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6413807
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20181022BHJP
G02F 1/035 20060101ALI20181022BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20181022BHJP
G02B 6/27 20060101ALI20181022BHJP
G02B 6/30 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
G02F1/03 505
G02F1/035
G02B6/32
G02B6/27
G02B6/30
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-16646(P2015-16646)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-142809(P2016-142809A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】原 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】細川 洋一
【審査官】
山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−043776(JP,A)
【文献】
特開平10−104669(JP,A)
【文献】
特開2005−266362(JP,A)
【文献】
特開2010−060751(JP,A)
【文献】
特開2003−270591(JP,A)
【文献】
特開2009−229592(JP,A)
【文献】
特開平10−268371(JP,A)
【文献】
特表2013−517516(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/051096(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0069240(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/03,1/035
G02B 6/12,6/27,6/30,6/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光導波路および第2の光導波路と、各光導波路を伝播する光波を制御するための制御用電極とを有する光変調器において、
直線偏波光を供給する供給部と、
該供給部から供給された該直線偏波光を前記第1及び第2の光導波路に導く空間光学系を備え、
該空間光学系には、該直線偏波光を互いに偏波面が直交する2つの光に分岐すると共に、該直線偏波光の偏波面の角度を調整することで偏波面が直交する2つの光の強度比を変更することが可能な分岐部と、
該第1の光導波路に入射する光と該第2の光導波路に入射する光との偏波面を一致させるため、該分岐部で分岐された一方の光が該第1の光導波路に至る光路、または、該分岐部で分岐された他方の光が該第2の光導波路に至る光路の少なくともいずれか一方に配置される波長板とを設けることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器において、
該供給部は、光出射端に偏光子を取り付けた光ファイバ、または、偏波保持光ファイバであることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項2に記載の光変調器において、
該偏光子または該偏波保持光ファイバを、該供給部から出力される光の光軸に対して回転調整可能に設けたことを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光変調器において、
該供給部と該分岐部との間にコリメートレンズを配置し、該分岐部と該第1および第2の光導波路との間に結合レンズを各々配置したことを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光変調器において、
該分岐部は、偏光ビームスプリッタであることを特徴とする光変調器。
【請求項6】
第1の光導波路および第2の光導波路と、各光導波路を伝播する光波を制御するための制御用電極とを有する光変調器において、
直線偏波光を供給する供給部と、
該供給部から供給された該直線偏波光を前記第1及び第2の光導波路に導く空間光学系を備え、
該空間光学系には、該直線偏波光を互いに偏波面が直交する2つの光に分岐することが可能な分岐部と、
該第1の光導波路に入射する光と該第2の光導波路に入射する光との偏波面を一致させるため、該分岐部で分岐された一方の光が該第1の光導波路に至る光路、または、該分岐部で分岐された他方の光が該第2の光導波路に至る光路の少なくともいずれか一方に配置される波長板と
該供給部と該分岐部との間に配置されるコリメートレンズと、
該分岐部と前記第1及び第2の光導波路との間に各々配置される結合レンズとを設けることを特徴とする光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、特に、2つの光導波路と、入射光を分波して各々の光導波路に導く空間光学系を有する光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、光変調器、特に、基板に光導波路と当該光導波路を伝播する光波を制御する制御電極を備えた光変調器が多用されている。近年では、変調速度の高速化および大容量化が求められ、直角位相振幅変調(QAM;Quadrature Amplitude Modulation)などの多値変調方式も利用されるようになった。
【0003】
このような光変調器に関し、特許文献1には、ビームスプリッターとミラーとを有し単数又は複数の入力光を分岐する光分岐部と、光分岐部で分岐された各光を集光するレンズと、レンズを介して入力される各光をそれぞれ位相変調する複数の位相変調部と、複数の位相変調部から出力される複数の位相変調光を合成して変調信号光を出力する光合成部と、を有する光変調器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−246325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているように、ハーフミラーと全反射ミラーにより構成される光分岐部を備え、入射側コリメータから出射される光を光分岐部により分波して2つの光導波路にそれぞれ結合する光変調器の場合、ハーフミラーにおける分岐比の設定の仕方によって、任意の分岐比に光を分岐して各々の光導波路に結合することができる。一例として、ハーフミラーを透過率80%、反射率20%の分岐比とすれば、光強度4:1で各光導波路に結合することができる。
【0006】
ところが、この分岐比はハーフミラーの設計によって固定されてしまう。このため、例えば光変調器の用途に応じて、光変調器の組立段階で分岐比を変更するといったことはできない。また、2つの光導波路の光伝搬損失の差(ロス差)を勘案しながら分岐比をチューニングすることも不可能である。
このため、従来の技術では、光変調器の組立段階で、各々の光導波路に対する入射光の強度比を変更または補正できなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、各々の光導波路に対する入射光の強度比を組立段階で変更または補正することが可能な光変調器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の光変調器は以下のような技術的特徴を有する。
(1) 第1の光導波路および第2の光導波路と、各光導波路を伝播する光波を制御するための制御用電極とを有する光変調器において、直線偏波光を供給する供給部と、
該供給部から供給された該直線偏波光を前記第1及び第2の光導波路に導く空間光学系を備え、該空間光学系には、該直線偏波光を互いに偏波面が直交する2つの光に分岐する
と共に、該直線偏波光の偏波面の角度を調整することで偏波面が直交する2つの光の強度比を変更することが可能な分岐部
と、該第1の光導波路に入射する光と該第2の光導波路に入射する光との偏波面を一致させるため、該分岐部で分岐された一方の光が該第1の光導波路に至る光路、または、該分岐部で分岐された他方の光が該第2の光導波路に至る光路の少なくともいずれか一方に
配置される波長板
とを設けることを特徴とする。
【0009】
(2) 上記(1)に記載の光変調器において、該供給部は、光出射端に偏光子を取り付けた光ファイバ、または、偏波保持光ファイバであることを特徴とする。
【0010】
(3) 上記(2)に記載の光変調器において、該偏光子または該偏波保持光ファイバを、該供給部から出力される光の光軸に対して回転調整可能に設けたことを特徴とする。
【0011】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の光変調器において、該供給部と該分岐部との間にコリメートレンズを配置し、該分岐部と該第1および第2の光導波路との間に結合レンズを各々配置したことを特徴とする。
【0012】
(5) 上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の光変調器において、該分岐部は、偏光ビームスプリッタであることを特徴とする。
(6) 第1の光導波路および第2の光導波路と、各光導波路を伝播する光波を制御するための制御用電極とを有する光変調器において、直線偏波光を供給する供給部と、該供給部から供給された該直線偏波光を前記第1及び第2の光導波路に導く空間光学系を備え、該空間光学系には、該直線偏波光を互いに偏波面が直交する2つの光に分岐することが可能な分岐部と、該第1の光導波路に入射する光と該第2の光導波路に入射する光との偏波面を一致させるため、該分岐部で分岐された一方の光が該第1の光導波路に至る光路、または、該分岐部で分岐された他方の光が該第2の光導波路に至る光路の少なくともいずれか一方に配置される波長板と該供給部と該分岐部との間に配置されるコリメートレンズと、該分岐部と前記第1及び第2の光導波路との間に各々配置される結合レンズとを設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、直線偏波光を供給する供給部と、該供給部から供給された直線偏波光を互いに偏波面が直交する2つの光に分岐する分岐部を有し、該分岐部で分岐された一方の光が該第1の光導波路に至る光路、または、該分岐部で分岐された他方の光が該第2の光導波路に至る光路の少なくともいずれか一方に波長板を配置し、該第1の光導波路に入射する光と該第2の光導波路に入射する光との偏波面を一致させたので、光変調器の組立段階で、該供給部から供給される直線偏波光の偏波面の角度を調整することで、各々の光導波路に対する入射光の強度比を変更または補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示す図である。
【
図3】本発明の第3実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示す図である。
【
図4】本発明の第4実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示す図である。
【
図5】本発明の第5実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の光変調器について、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明に係る光変調器は、
図1〜
図5に示すように、基板上に形成された第1の光導波路31および第2の光導波路32と、各光導波路を伝播する光波を制御するための制御用電極(不図示)とを有する光変調器において、直線偏波光を供給する供給部(光出射端に偏光子12を取り付けた光ファイバ11、または、偏波保持光ファイバ13)と、該供給部から供給された直線偏波光P1を互いに偏波面が直交する2つの光(P2,P3)に分岐する分岐部(偏光ビームスプリッタ21)とを有し、該分岐部で分岐された一方の光が該第1の光導波路31に至る光路(第1の光導波路31側への入射光の光路)、または、該分岐部で分岐された他方の光が該第2の光導波路32に至る光路(第2の光導波路32側への入射光の光路)の少なくともいずれか一方に波長板23を配置し、該第1の光導波路31に入射する光P2と該第2の光導波路32に入射する光P4との偏波面を一致させたことを特徴とする。
【0016】
本発明の光変調器に用いる基板は、LiNbO
3,LiTaO
5又はPLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)のいずれかの単結晶など、電気光学効果を有する基板が好適に利用可能である。特に、光変調器などの光制御素子で多用されているLiNbO
3,LiTaO
5が、好ましい。
【0017】
基板上に形成する各々の光導波路31,32は、例えば、LiNbO
3基板(LN基板)上にチタン(Ti)などを熱拡散することにより形成される。また、基板に光導波路に沿った凹凸を形成したリッジ型光導波路も利用可能である。光導波路のパターン形状としてはマッハツェンダー型導波路や複数のマッハツェンダー型導波路を組み合わせたネスト型導波路など、光変調器の用途に応じて種々の形状を採用することが可能である。さらに、光導波路31,32は同一基板に形成する必要は無く、各々別々の基板に形成された光導波路であっても良い。
【0018】
制御用電極は、信号電極や接地電極から構成され、基板表面に、Ti・Auの電極パターンを形成し、金メッキ方法などにより形成することが可能である。さらに、必要に応じて光導波路形成後の基板表面に誘電体SiO
2等のバッファ層を設け、該バッファ層の上側に変調電極を形成することも可能である。信号電極は、1本の信号電極に限られるものではなく、光導波路の変調領域が複数ある場合には、その数に対応して、複数の信号電極を設けることが可能である。信号電極としては、ACとDCの電圧を印加するものも含まれる。
【0019】
図1には、本発明の第1実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示してある。
本実施例の入射光分離用光学系は、入射コリメータ15と、偏光ビームスプリッタ21および反射ミラー22と、波長板23と、入射レンズアレイ24とを備えている。
【0020】
入射コリメータ15は、フェルール端面(光出射端)に偏光子12を取り付けた光ファイバ11(直線偏波光の供給部)と、コリメートレンズ14とを有している。
光変調器外部のレーザー光源等の光源から光ファイバ11を通じて入力される入射光(入射ビーム)は、偏光子12によって斜め45度の偏波面を持つ直線偏波光P1に変換され、コリメートレンズ14によって平行状態の光(コリメート光)に調整される。
ここで、斜め45度の偏波面とは、入射光の光軸に沿った水平平面(または垂直平面)に対して45度に傾けた偏波面を意味する。また、水平平面とは、基準面(本例では基板面)に対して水平な平面であり、垂直平面とは、基準面に対して垂直な平面である。
【0021】
偏光ビームスプリッタ21は、入射コリメータ15から出力された直線偏波光を互いに偏波面が直交する2つの光に分岐する。本例では、斜め45度の偏波面を持つ直線偏波光を、入射光の光軸に沿った水平平面を偏波面とした水平偏波光P2と、該光軸に沿った垂直平面を偏波面とした垂直偏波光P3とに、1:1の強度比で分岐する。また、本例では、入射光の光軸と同じ方向に水平偏波光を射出し、水平平面上で該光軸に直交する方向に垂直偏波光を射出する。ここでは、分岐光の強度比(分岐比)を1:1とする場合を中心に説明するが、特許文献1のように、分岐比を1:1以外の値に設定することも可能である。
【0022】
反射ミラー22は、偏光ビームスプリッタ21で分岐された垂直偏波光の射出方向の位置に、該偏光ビームスプリッタ21の面と平行に向き合うように配置してある。このため、偏光ビームスプリッタ21で分岐された垂直偏波光は、偏光ビームスプリッタ21で分岐された水平偏波光と平行な方向に反射される。すなわち、偏光ビームスプリッタ21による各分岐光(水平偏波光および垂直偏波光)の光軸が平行に揃えられる。
【0023】
本例では、一対のガラス基材の接合面に誘電体多層膜を設けて偏光ビームスプリッタ21を形成し、一方のガラス基材における接合面の対向面に反射膜面を設けて反射ミラー22を形成することで、偏光ビームスプリッタ21と反射ミラー22を一体構造の部品としているが、これらを分離した別部品としてもよい。なお、一体構造の部品としておいた方が、別部品にする場合に比べて部品配置の際の位置ずれ等を抑えることができるので、精度良い部品配置を行う観点において好ましい。
【0024】
波長板23は、通過する光に垂直偏波光に90度の偏波回転を付与するλ/2波長板である。この波長板23により、反射ミラー22から導かれる垂直偏波光が水平偏波光に変換される。
【0025】
第1の光導波路31および第2の光導波路32は、平行化された各分岐光の光軸に沿って並列に配置されている。また、その前段には、第1の光導波路31および第2の光導波路32の各々に対応させて第1の結合レンズ25および第2の結合レンズ26を配置した入射レンズアレイ24を設けてある。
【0026】
以上のような構成により、光ファイバ11を通じて入力される入射光が、偏光子12で斜め45度の偏波面を持つ直線偏波光に変換され、コリメートレンズ14で平行光線化され、偏光ビームスプリッタ21で水平偏波光と垂直偏波光に1:1の強度比で分岐される。そして、偏光ビームスプリッタ21で分岐された水平偏波光が、第1の結合レンズ25によって結合されて第1の光導波路31に入射される。また、偏光ビームスプリッタ21で分岐された垂直偏波光が、反射ミラー22で第2の光導波路32の方向に反射され、波長板23で水平偏波光に変換された後に、第2の結合レンズ26によって結合されて第2の光導波路32に入射される。
【0027】
このため、第1の光導波路31および第2の光導波路32に、互いに同一角度の偏波面を持つ直線偏波光が同一の強度で入射することになる。また、各々の光導波路31,32で光ロスが異なる場合は、偏光子12を光ファイバ11から出力される入射光の光軸に対して回転させることで、偏光ビームスプリッタ21で分岐される2つの光の強度比を1:1から変更することができ、これにより光ロス差を補正できる。これにより、光変調器の消光比を高めることや光ロス差を低減することが可能となり、デバイスとしての性能を向上させることができる。
【0028】
本実施例の光変調器の組立段階では、偏光子12以外の光学部品が固定される一方で、偏光子12は出射光(直線偏波光)の光軸に対して回転調整可能に取り付けられる。この状態で、各々の光導波路31,32での光ロス差の有無を調べ、光ロス差が無い場合(あるいは許容範囲内の場合)には、偏光子12をそのまま固定する。一方、そうでない場合には、偏光子12を光ロス差が無くなるまで(あるいは許容範囲内となるまで)回転調整した後に固定する。これにより、消光比や光ロス差が優れた光変調器を提供することが可能となる。
なお、偏光子12が固定された光ファイバ11を光軸に対して回転調整可能に取り付けておき、該光ファイバ11を各々の光導波路31,32での光ロス差を低減するように回転調整した後に固定するようにしてもよい。
【0029】
ここで、偏光ビームスプリッタ21に入射する直線偏波光の偏波面の角度(水平平面に対する角度)をθとし、該光の強度をEとすると、偏光ビームスプリッタ21で分岐される水平偏波光の強度Exと、垂直偏波光の強度Eyは、以下の式で表すことができる。
Ex=Ecosθ
Ey=Esinθ
また、偏光ビームスプリッタ21による分岐比(水平偏波光と垂直偏波光の強度比)Rは、以下の式で表すことができる。
R=(Ey/Ex)
2=(cosθ/sinθ)
2=tan
2θ
【0030】
したがって、各々の光導波路31,32で光ロス差がない場合には、0dB=101og
10(tan
2θ)であり、θ=45度となる。
これに対し、例えば、各々の光導波路31,32で0.5dBの光ロス差がある場合には、0.5dB=101og
10(tan
2θ)であり、θ=43.34度となるので、偏光子12を回転させて、光ファイバ11からのレーザ光が43.35度の偏波面を持つ直線偏波光に変換されるように調整すればよい。
【0031】
図2には、本発明の第2実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示してある。なお、以下の各実施例では、先の実施例と共通の構成要素には同一の符号を付し、それらについての詳細な説明は簡略化または省略する。
【0032】
本実施例の入射光分離用光学系では、直線偏波光の供給部として、フェルール端面(光出射端)に偏光子12を取り付けた光ファイバ11に代えて、偏波保持光ファイバ13を設けてある。したがって、特定の偏波面を持つ直線偏波光を偏波保持光ファイバ13の光入射端に入力すれば、その偏波面の方向(角度)が維持されて偏波保持光ファイバ13の光出射端から直線偏波光が出力される。そして、偏波保持光ファイバ13から出射する光波の偏波面が、例えば、斜め45度の偏波面を持つ直線偏波光となるように、偏波保持光ファイバの出射端部の位置を設定する。なお、偏波保持光ファイバ13に対して更に偏光子12を取り付けても構わない。
【0033】
本実施例の光変調器の組立段階では、偏波保持光ファイバ13が出射光(直線偏波光)の光軸に対して回転調整可能に取り付けられる。この状態で、各々の光導波路31,32での光ロス差の有無を調べ、光ロス差が無い場合(あるいは許容範囲内の場合)には、偏波保持光ファイバ13をそのまま固定する。一方、そうでない場合には、偏波保持光ファイバ13を光ロス差が無くなるまで(あるいは許容範囲内となるまで)回転調整した後に固定する。これにより、消光比や光ロス差が優れた光変調器を提供することが可能となる。
なお、直線偏波光の入力側(偏波保持光ファイバ13の光入射端)において、偏光子等により直線偏波光の偏波面の調整を行うようにしてもよく、この場合には、光ロス差に基づく調整を行わずに偏波保持光ファイバ13を固定することができる。
【0034】
図3には、本発明の第3実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示してある。
本実施例の入射光分離用光学系では、波長板23を、偏光ビームスプリッタ21および反射ミラー22と一体構造にしている。
すなわち、一対のガラス基材の接合面に誘電体多層膜を設けて偏光ビームスプリッタ21を形成し、一方のガラス基材における接合面の対向面に反射膜面を設けて反射ミラー22を形成し、更に、該一方のガラス基材における光反射方向の端面に波長板23を貼り合わせた構造となっている。
このように、偏光ビームスプリッタ21、反射ミラー22、波長板23を一体構造の部品とすることで、それぞれを別部品にする場合に比べて部品配置の際の位置ずれ等が抑えられ、精度良い部品配置を行うことができる。
【0035】
図4には、本発明の第4実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示してある。
本実施例の入射光分離用光学系では、入射コリメータ15の向きを、各々の光導波路31,32の向きに対して直角にしてある。また、偏光ビームスプリッタ21への光入射方向が変わったのに対応させて、偏光ビームスプリッタ21で入射光の光軸と同じ方向に垂直偏波光を分岐し、水平平面上で該光軸に直交する方向に水平偏波光を分岐している。
このような構成により、光変調器に対する光ファイバ11(あるいは偏光保持光ファイバ13)のケーブル接続を該光変調器の長手方向の端面ではなく該光変調器の側面にすることができる。このため、光変調器の長手方向の端面にケーブル接続する構成に比べ、該長手方向のスペースが限られた場所へ光変調器を配置する際のケーブル配線の取り回しが容易となる。
【0036】
図5には、本発明の第5実施例に係る光変調器における入射光分離用光学系の概要を示してある。
本実施例の入射光分離用光学系では、入射コリメータ15の向きを、各々の光導波路31,32の向きに対して直角にしてある。また、入射コリメータ15と偏光ビームスプリッタ21との間に反射ミラー16を設けてある。
このような構成によっても、光変調器に対する光ファイバ11(あるいは偏光保持光ファイバ13)のケーブル接続を該光変調器の長手方向の端面ではなく該光変調器の側面にすることができる。このため、光変調器の長手方向の端面にケーブル接続する構成に比べ、該長手方向のスペースが限られた場所へ光変調器を配置する際のケーブル配線の取り回しが容易となる。
【0037】
なお、上記の各実施例では、偏光ビームスプリッタで直線偏波光を1:1の強度比で分岐したが、使用する変調方式で要求される各々の光導波路31,32での強度比に対応させて、他の強度比で分岐するようにしてもよい。
【0038】
また、上記の各実施例では、各々の光導波路31,32に水平偏波光を入力しているが、垂直偏波光を入力するようにしてもよい。この場合には、偏光ビームスプリッタ21による各分岐光の出力方向を入れ替えるか、波長板23を第2の光導波路32側への入射光の光路ではなく第1の光導波路31側への入射光の光路に配置すればよい。
【0039】
また、上記の各実施例では、第2の光導波路32側への入射光の光路のみに波長板23を配置したが、第1の光導波路31側への入射光の光路にも波長板23を配置するようにしてもよく、第1の光導波路31への入射光と第2の光導波路32への入射光の各偏波面が一致するようになればよい。
【0040】
また、上記の各実施例では、直線偏波光の分岐部として、偏光ビームスプリッタ21を用いたが、直線偏波光を互いに偏波面が直交する2つの光に分岐可能な他の光学素子(例えば、複屈折材料の光学素子)を用いてもよい。
【0041】
また、上記の各実施例では、2つの光導波路31,32に対応させて2つの結合レンズ25,26を用いているが、特許文献1にも開示されているように、1つのレンズ(単レンズ)で各々の光導波路31,32に入射光を結合させるようにしてもよい。この場合には、第1の光導波路31と第2の光導波路32は、互いに平行でなく、入射光の全体の入射方向に対し傾いた配置となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上、説明したように、本発明によれば、各々の光導波路に対する入射光の強度比を組立段階で変更または補正することが可能な光変調器を提供することができる。
【符号の説明】
【0043】
11 光ファイバ
12 偏光子
13 偏波保持光ファイバ
14 コリメートレンズ
15 入射コリメータ
16 反射ミラー
21 偏光ビームスプリッタ
22 反射ミラー
23 波長板
24 入射レンズアレイ
25,26 結合レンズ
31,32 光導波路