(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)液状エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで表面処理された平均粒径7〜50nmのシリカフィラー、(D)平均粒径0.2〜5μmのシリカフィラー、および、(E)ルイス塩基もしくはその塩を含み、
前記(B)成分の硬化剤が芳香族ポリアミン類であり、
前記(E)成分が、トリフェニルホスフィンであり、
液状封止材の全成分の合計100質量部に対し、前記(C)成分のシリカフィラー、および、前記(D)成分のシリカフィラーの合計含有量が、45〜77質量部であり、
前記(C)成分のシリカフィラーと、前記(D)成分のシリカフィラーと、の配合割合(質量比)が1:17.7〜1:76であることを特徴とする液状封止材。
前記(A)成分の液状エポキシ樹脂と、前記(C)成分の2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで表面処理された平均粒径7〜50nmのシリカフィラーと、が予め混合されている、請求項1に記載の液状封止材。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、高性能化に伴い半導体の実装形態がワイヤーボンド型からフリップチップ型へと変化してきている。
フリップチップ型の半導体装置は、バンプ電極を介して基板上の電極部と半導体素子とが接続された構造を持っている。この構造の半導体装置は、温度サイクル等の熱付加が加わった際に、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数の差によってバンプ電極に応力がかかり、バンプ電極にクラック等の不良が発生することが問題となっている。この不良発生を抑制するためにアンダーフィルと呼ばれる液状封止剤を用いて、半導体素子と基板との間のギャップを封止し、両者を互いに固定することによって、耐サーマルサイクル性を向上させることが広く行われている。
【0003】
アンダーフィルとして用いられる液状封止剤は、注入性、接着性、硬化性、保存安定性等に優れ、かつ、ボイドが発生しないことが求められる。また、液状封止材によって封止した部位が、耐湿性、耐サーマルサイクル性、耐リフロー、耐クラック性、耐反り等に優れることが求められる。
【0004】
上記の要求を満足するため、アンダーフィルとして用いられる液状封止材としては、エポキシ樹脂を主剤とするものが広く用いられている。
液状封止材によって封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性を向上させるためには、シリカフィラーのような無機物質からなる充填材(以下、「フィラー」という。)を液状封止材に添加することにより、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数差のコントロールを行うことや、バンプ電極を補強することが有効であることが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
フリップチップ型の半導体装置においては、近年のLow−K層の微細化や、半田バンプの鉛フリー化、Cuピラー化に伴い、熱応力によるLow−K層の破壊や、半田バンプでのクラックの発生を防ぐため、液状封止材にはより一層の低熱膨張化(液状封止材の熱膨張係数を低くすること)が求められる。
その一方で半導体素子と基板とのギャップや、バンプ間の距離は狭くなっている傾向がある。
【0006】
アンダーフィル材を低熱膨張化するには、フィラーの高充填化(フィラーの充填率を高めること)が必須であるが、フィラーの充填率の上昇に伴って粘度も増加し、半導体素子と基板との間のギャップへのアンダーフィル材の注入性が低下する。
また、シリカフィラーの場合、その表面に親水基であるシラノール基が多数存在するため、アンダーフィル材の疎水性成分(たとえば、主剤をなすエポキシ樹脂)との相溶性が良好ではなく、アンダーフィル剤におけるフィラーの分散性が劣る傾向がある。
フィラーを高充填化する場合、より微細なフィラーを使用することになるが、フィラーの微細化に伴ってフィラーの表面積は指数関数的に増加する。その結果、上述した理由によりフィラーの分散性が悪化し、アンダーフィル材の粘度が増加し、半導体素子と基板との間のギャップへのアンダーフィル材の注入性の低下を招く。
【0007】
一方、無機充填材の配合量を高めるために、無機充填剤をシランカップリング剤で表面処理する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の液状封止材について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、以下に示す(A)〜(D)成分を必須成分として含有する。
【0020】
(A)液状エポキシ樹脂
(A)成分の液状エポキシ樹脂は、本発明の液状封止材の主剤をなす成分である。
本発明において、液状エポキシ樹脂とは常温で液状のエポキシ樹脂を意味する。
本発明における液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均分子量が約400以下のもの;p−グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂の平均分子量が約570以下のもの;ビニル(3,4−シクロヘキセン)ジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルカルボン酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)5,1−スピロ(3,4−エポキシシクロヘキシル)−m−ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂;3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、3−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ならびに1,3−ジグリシジル−5−メチル−5−エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂;ナフタレン環含有エポキシ樹脂が例示される。また、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格をもつエポキシ樹脂も使用することができる。さらに、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等も例示される。
中でも好ましくは、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状アミノフェノール型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂である。さらに好ましくは液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、p−アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサンである。
(A)成分としての液状エポキシ樹脂は、単独でも、2種以上併用してもよい。
また、常温で固体のエポキシ樹脂であっても、液状のエポキシ樹脂と併用することにより、混合物として液状を示す場合は用いることができる。
【0021】
(B)硬化剤
(B)成分の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができ、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、および、フェノール系硬化剤のいずれも使用できる。
【0022】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物等のアルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、メチルナジック酸無水物、グルタル酸無水物等が例示される。
【0023】
アミン系硬化剤の具体例としては、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン類が挙げられる。また、市販品として、T−12(商品名、三洋化成工業製)(アミン当量116)が挙げられる。
【0024】
フェノール系硬化剤の具体例としては、フェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、フェノールノボラック樹脂およびそのアルキル化物またはアリル化物、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、アミン系硬化剤が、耐湿性および耐サーマルサイクル性に優れることから好ましく、中でも、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタンが、耐熱性、機械的特性、密着性、電気的特性、耐湿性の観点から好ましい。また、常温で液状を呈する点も、液状封止材の硬化剤として好ましい。
【0026】
(B)成分の硬化剤は、単独でも、2種以上併用してもよい。
【0027】
本発明の液状封止材において、(B)成分の硬化剤の配合割合は特に限定されないが、(A)成分の液状エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.6当量であることが好ましく、0.6〜1.3当量であることがより好ましい。
【0028】
(C):シリカフィラー(1)
(D):シリカフィラー(2)
(C)成分のシリカフィラー(1)、および、(D)成分のシリカフィラー(2)は、封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性を向上させる目的で液状封止材に添加される。シリカフィラーの添加により耐サーマルサイクル性が向上するのは、線膨張係数を下げることにより、サーマルサイクルによる、液状封止材の硬化物の膨張・収縮を抑制できるからである。
本発明の液状封止材では、(C)成分として、平均粒径が7〜50nmのシリカフィラー(1)と、(D)成分として、平均粒径が0.2〜5μmのシリカフィラー(2)という、平均粒径が互いに異なる2種類のシリカフィラーを併用する。平均粒径が互いに異なる2種類のシリカフィラーを併用する理由は以下の通り。
シリカフィラーのみに着目して、シリカフィラーを最密充填状態に近づけることを考えた場合、平均粒径が同一の範囲のシリカフィラーのみ、つまり、単一粒子径のシリカフィラーを使用するよりも、平均粒径が互いに異なる2種類のシリカフィラーを併用する、つまり、多成分粒子径のシリカフィラーを使用するほうが好ましい。それは粒径が大きいシリカフィラー同士の間隙に、粒径がより小さいシリカフィラーが入りこむことで、シリカフィラーをより密に充填できるからである。シリカフィラー単体として、最密充填状態に近づくということは、該シリカフィラーを成分とする液状封止材では、シリカフィラー同士の間隙が広がるために分散性が向上することになる。これは、液状封止材の流動性に寄与する樹脂成分が多くなるためである。結果として液状封止材の粘度が低くなり、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が向上する。上記の理由から、(C)成分のシリカフィラー(1)と、(D)成分のシリカフィラー(2)と、の平均粒径の差が大きいことが望ましい。
【0029】
(C)成分のシリカフィラー(1)は、平均粒径7〜50nmであるため、液状封止材における分散性を向上させるため、シランカップリング剤で予め表面処理されたものを使用する必要がある。但し、上述したように、粒径がnmオーダーのシリカフィラーは、特許文献2に記載された平均粒径5〜40μmのシリカフィラーに比べて、その表面積がはるかに大きくなるため、特許文献2に記載されたもののような、活性が高い従来のシランカップリング剤を使用した場合、シリカフィラーの表面に存在するシラノール基と、シランカップリング剤と、が過度に反応して、液状封止材におけるシリカフィラーの分散性が悪化し、液状封止材の粘度が増加し、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が低下する。
これに対し、本発明の液状封止材では、(C)成分のシリカフィラー(1)として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランで予め表面処理されたものを使用する。
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランは、下記式に示す構造をなしており、末端にシクロ環が存在する。
【化1】
このシクロ環による立体障害のため、特許文献2に記載されたもののような、従来使用される、グリシジルエーテル型シランカップリング剤のグリシジル基よりも活性が制限される。そのため、シリカフィラーの表面に存在するシラノール基と、シランカップリング剤としての2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランと、が適度に反応するため、液状封止材における分散性が良好である。このため、液状封止材の粘度が増加することがなく、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が良好である。
【0030】
シランカップリング剤として、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを用いて、シリカフィラーを表面処理する方法は特に限定されず、例えば、撹拌法、湿式法、乾式法等により実施することができる。
撹拌法は、予めシランカップリング剤とシリカフィラーとを撹拌装置に仕込み、適切な条件で撹拌する方法である、上記撹拌装置としては、ヘンシェルミキサー等の高速回転で撹拌・混合が可能なミキサーを用いることができるが、特に限定されるものではない。
湿式法は、表面処理しようとするシリカフィラーの表面積に対して十分な量のシランカップリング剤を水または有機溶剤に溶解して、シランカップリング剤をなす化合物、すなわち、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを加水分解させることにより、表面処理溶液とする。得られた表面処理溶液に対してシリカフィラーを添加し、スラリー状となるように撹拌する。撹拌によってシランカップリング剤およびシリカフィラーを十分反応させた後、濾過や遠心分離等の方法によりシリカフィラーを表面処理溶液から分離し、加熱乾燥する。
乾式法は、攪拌装置によって高速攪拌しているシリカフィラーに、シランカップリング剤の原液あるいは溶液を均一に分散させて処理する方法である。上記撹拌装置としては、ヘンシェルミキサー等の高速回転で撹拌・混合が可能なミキサーを用いることができるが、特に限定されるものではない。
なお、上記撹拌法、湿式法、乾式法以外にも、例えば、シリカフィラーを溶媒中に分散させてなるシリカフィラー分散液に直接シランカップリング剤を添加し、シリカフィラーの表面を改質するインテグラルブレンド法も好適に用いることができる。
【0031】
(C)成分のシリカフィラー(1)の平均粒径7nm未満だと、該シリカフィラーの比表面積が指数関数的に増加するため、液状封止材における(C)成分のシリカフィラー(1)の分散性が悪化し、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が低下する。
一方、(C)成分のシリカフィラー(1)の平均粒径50nm超だと、(D)成分のシリカフィラー(2)との平均粒径の差が小さくなるため、液状封止材における(C)成分のシリカフィラー(1)、および、(D)成分のシリカフィラー(2)の両方の分散性が低下し、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が低下する。
(C)成分のシリカフィラー(1)は、平均粒径が7〜15nmであることがより好ましい。
【0032】
(C)成分のシリカフィラー(1)の形状は特に限定されず、粒状、粉末状、りん片等のいずれの形態であってもよい。なお、シリカフィラーの形状が粒状以外の場合、シリカフィラーの平均粒径とはシリカフィラーの平均最大径を意味する。
但し、真球度0.8以上の略真球状の形状をなすことが、液状封止材中でのシリカフィラーの分散性、および、液状封止材の注入性が向上するとともに、シリカフィラーをより最密充填状態に近づけるという観点から好ましい。本明細書における「真球度」は、「粒子の最大径に対する最小径の比」と定義する。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の結果、観測される最大径に対する最小径の比が0.8以上であればよい。(C)成分のシリカフィラーは、真球度が0.9以上であることが好ましい。
【0033】
(D)成分のシリカフィラー(2)は、平均粒径が0.2〜5μmであるため、表面処理なしでも、液状封止材における分散性が問題になることはない。但し、シランカップリング剤で予め表面処理されたものを用いた場合、液状封止材における分散性が向上するため、(D)成分のシリカフィラー(2)の含有量を増やすには好適である。
【0034】
(D)成分のシリカフィラー(2)の表面処理には、ビニル系、グリシドキシ系、メタクリル系、アミノ系、メルカプト系などの各種シランカップリング剤を用いることができる。
シランカップリング剤によるシリカフィラーの表面処理方法については、(C)成分のシリカフィラー(1)について記載したのと同様である。
【0035】
(D)成分のシリカフィラー(2)の平均粒径0.2μm未満だと、前述のように比表面積が指数関数的に増加するため、液状封止材の粘度が高くなり、半導体素子と基板とのギャップへの注入性が低下する。
一方、(D)成分のシリカフィラー(2)の平均粒径5μm超だと、半導体素子と基板とのギャップに対してシリカフィラーのサイズが大き過ぎ、注入時にボイドの巻き込みが問題となる。
(D)成分のシリカフィラー(2)は、平均粒径が0.25〜0.6μmであることがより好ましい。
【0036】
(D)成分のシリカフィラー(2)の形状については、(C)成分のシリカフィラー(1)について記載したのと同様である。
【0037】
本発明の液状封止材において、液状封止材の全成分の合計100質量部に対し、(C)成分のシリカフィラー(1)、および、(D)成分のシリカフィラー(2)の合計含有量が、45〜77質量部である。
シリカフィラー(1),(2)の合計含有量が45質量部未満だと、液状封止材の線膨張係数が大きくなり、液状封止材で封止した部位の耐サーマルサイクル性が低下する。
一方、シリカフィラー(1),(2)の合計含有量が77質量部超だと、液状封止材の粘度が増加し、半導体素子と基板とのギャップへの注入性が低下する。
シリカフィラー(1),(2)の合計含有量は、50〜70質量部であることがより好ましい。
【0038】
本発明の液状封止材において、(C)成分のシリカフィラー(1)と、(D)成分のシリカフィラー(2)と、の配合割合(質量比)が1:10.2〜1:559である。
シリカフィラー(1)の配合割合が1:10.2より多いと、液状封止材におけるシリカフィラー(1)の分散性が悪化し、液状封止材の粘度が増加し、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が低下する。
一方、シリカフィラー(1)の配合割合が1:559より少ないと、液状封止材におけるシリカフィラー(1)、(2)の分散性が悪化し、もしくは、シリカフィラー(2)の分散性が悪化し、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性が低下する。
シリカフィラー(1),(2)の配合割合は、1:17.7〜1:111であることがより好ましく、1:17.7〜1:76が更に好ましい。
【0039】
本発明の液状封止材は、上記(A)〜(D)成分以外に、以下に述べる成分を必要に応じて含有してもよい。
【0040】
(E):ルイス塩基もしくはその塩
本発明の液状封止材は、(E)成分としてルイス塩基もしくはその塩を含有してもよい。
上述したように、(C)成分のシリカフィラー(1)、および、(D)成分のシリカフィラー(2)の表面には親水基であるシラノール基が多数存在する。これらのシラノール基は、ルイス酸としても作用し活性を持つ。
(E)成分として、ルイス塩基もしくはその塩を含有することにより、シリカフィラー(1),(2)の表面に存在するシラノール基のルイス酸活性が抑制される。これにより、液状封止材におけるシリカフィラー(1),(2)の分散性がさらに向上する。これにより、半導体素子と基板との間のギャップへの注入性がさらに向上する。
(E)成分のルイス塩基もしくはその塩としては、イミダゾール類、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン等のアミン化合物、もしくはそれらの塩、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等のホスフィン化合物、もしくはそれらの塩を用いることができる。
これらの中でも、トリフェニルホスフィンが、シリカフィラー表面のシラノール基に効果的に作用し、かつ液状封止材の貯蔵安定性が良好になるため好ましい。
(E)成分として、ルイス塩基を含有させる場合、本発明の液状封止材におけるルイス塩基の含有量は、(C)成分のシリカフィラー(1)、および、(D)成分のシリカフィラー(2)の合計量100質量部に対して、0.1〜0.8質量部であることが好ましく、0.2〜0.5質量部であることがより好ましい。
【0041】
(その他の配合剤)
本発明の液状封止材は、上記(A)〜(E)成分以外の成分を必要に応じてさらに含有してもよい。このような成分の具体例としてはエラストマー、硬化促進剤、金属錯体、レベリング剤、着色剤、イオントラップ剤、消泡剤、難燃剤などを配合することができる。各配合剤の種類、配合量は常法通りである。
【0042】
(液状封止材の調製)
本発明の液状封止材は、上記(A)〜(D)成分、および、含有させる場合はさらに(E)成分、ならびに、さらに必要に応じて配合するその他の配合剤を混合し、攪拌して調製される。
混合攪拌は、ロールミルを用いて行うことができるが、勿論、これに限定されない。(A)成分のエポキシ樹脂が固形の場合には、加熱などにより液状化ないし流動化し混合することが好ましい。
各成分を同時に混合しても、一部成分を先に混合し、残りの成分を後から混合するなど、適宜変更しても差支えない。(A)成分の液状エポキシ樹脂に対し、(C)成分のシリカフィラー(1)を均一に分散させることが困難な場合は、(A)成分の液状エポキシ樹脂と、(C)成分のシリカフィラー(1)を先に混合し、残りの成分を後から混合してもよい(A)成分の液状エポキシ樹脂と、(C)成分のシリカフィラー(1)と、を先に混合し、残りの成分を後から混合してもよい。
【0043】
次に本発明の液状封止材の特性について述べる。
【0044】
本発明の液状封止材(1),(2)は、常温(25℃)での粘度が200Pa・s以下であることが好ましく、アンダーフィルとして使用した際に注入性が良好である。
本発明の液状封止材は、常温(25℃)での粘度が100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0045】
また、本発明の液状封止材は、アンダーフィル材として使用した場合に、キャピラリーフローによる注入性が良好である。具体的には、後述する実施例に記載の手順でギャップへの注入性を評価した際に、注入時間が1200秒以下であることが好ましい。
【0046】
次に本発明の液状封止材の使用方法を、アンダーフィルとしての使用を挙げて説明する。
本発明の液状封止材をアンダーフィルとして使用する場合、以下の手順で基板と半導体素子との間のギャップに本発明の液状封止材を充填する。
基板をたとえば70〜130℃に加熱しながら、半導体素子の一端に本発明の液状封止材を塗布すると、毛細管現象によって、基板と半導体素子との間のギャップに本発明の液状封止材が充填される。この際、本発明の液状封止材充填に要する時間を短くするため、基板を傾斜させたり、該ギャップ内外に圧力差を生じさせてもよい。
該ギャップに本発明の液状封止材を充填させた後、該基板を所定温度で所定時間、具体的には、80〜200℃で0.2〜6時間加熱して、液状封止材を加熱硬化させることによって、該ギャップを封止する。
【0047】
本発明の半導体装置は、本発明の液状封止材をアンダーフィルとして使用し、上記の手順で封止部位、すなわち、基板と半導体素子との間のギャップを封止したものである。ここで封止を行う半導体素子としては、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタおよびダイオードおよびコンデンサ等で特に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
(
参考例1
〜6、8〜15
、実施例7、比較例1〜6)
下記表に示す配合割合となるように、ロールミルを用いて原料を混練して
参考例1
〜6、8〜15
、実施例7、比較例1〜6の液状封止材を調製した。但し、(A)成分の液状エポキシ樹脂と、(C)成分のシリカフィラー(1)を先に混合し、残りの成分を後から混合した。なお、表中の各組成に関する数値は質量部を表している。
【0050】
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂A−1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、製品名YDF8170、新日鐵化学株式会社製、エポキシ当量158
エポキシ樹脂A−2:アミノフェノール型エポキシ樹脂、製品名jER630、三菱化学株式会社製、エポキシ当量94g/eq
エポキシ樹脂A−3:1,4ヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、製品名EP−4085S、株式会社ADEKA製、エポキシ当量135g/eq
【0051】
(B)硬化剤
硬化剤B−1:4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、製品名カヤハードA−A、日本化薬株式会社製
硬化剤B−2:ジエチルトリエンジアミン、製品名エタキュア100、アルベマール日本株式会社製
硬化剤B−3:ジメチルチオトルエンジアミン、製品名HARTCURE30、Jonson Fine Chemical製
【0052】
(C)シリカフィラー(1)
シリカフィラーC−1:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:7nm)、製品名YN010A−JGP、株式会社アドマテックス製
シリカフィラーC−2:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:10nm)、製品名YA010A−JGP、株式会社アドマテックス製
シリカフィラーC−3:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:50nm)、製品名YA050A−JGP、株式会社アドマテックス製
シリカフィラーC−4:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径:100nm)、製品名YC100A−JGP、株式会社アドマテックス製
シリカフィラーC−5:表面未処理シリカフィラー(平均粒径12nm)、製品名R200、Evonik Industries AG製
シリカフィラーC−6:トリメチルシリル表面処理シリカフィラー(平均粒径12nm)、製品名RX200、Evonik Industries AG製
シリカフィラーC−7:オクチルシリル表面処理シリカフィラー(平均粒径12nm)、製品名R805、Evonik Industries AG製
【0053】
(D)シリカフィラー(2)
シリカフィラーD−1:表面未処理シリカフィラー(平均粒径:0.3μm)、製品名SP−03B、扶桑化学株式会社製
シリカフィラーD−2:シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)表面処理シリカフィラー(平均粒径:0.25μm)、製品名SE1053−SEO、株式会社アドマテックス製
シリカフィラーD−3:シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)表面処理シリカフィラー(平均粒径:0.5μm)、製品名SE2200−SEE、株式会社アドマテックス製
シリカフィラーD−4:シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)表面処理シリカフィラー(平均粒径:1.5μm)、製品名SE5050−SEJ、株式会社アドマテックス製
(E)ルイス塩基
ルイス塩基E−1:トリフェニルホスフィン、製品名TPP、北興化学工業株式会社製
【0054】
調製した液状封止材を評価用試料として以下の評価を実施した。
(粘度)
ブルックフィールド粘度計を用いて、液温25℃、50rpmで調製直後の評価用試料の粘度を測定した。
【0055】
(チクソトロピー指数(T.I.))
ブルックフィールド社製回転粘度計HBDV−1(スピンドルSC4−14使用)用いて、5rpmで25℃における粘度(Pa・s)、および、50rpmで25℃における粘度(Pa・s)測定し、5rpmで測定した粘度の測定値を、50rpmで測定した粘度の測定値により除した値(50rpmでの粘度に対する5rpmでの粘度の比)を、チクソトロピー指数として示す。
【0056】
(注入性)
有機基板(FR−4基板)上に、20μmまたは50μmのギャップを設けて、半導体素子の代わりにガラス板を固定した試験片を作製した。この試験片を110℃に設定したホットプレート上に置き、ガラス板の一端側に液状封止材を塗布し、注入距離が20mmに達するまでの時間を測定した。この手順を2回実施し、測定値の平均値を注入時間の測定値とした。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
参考例1
〜6、8〜15
、実施例7の液状封止材は、いずれも液温25℃、50rpmで測定した粘度、チクソトロピー指数(T.I.)、20mm注入性の評価結果がいずれも良好であった。
(E)成分として、ルイス塩基(トリフェニルホスフィン)を含有させた実施例7では、液状封止材の物性(粘度、T.I.、20mm注入性)がさらに向上した。
また、(D)成分のシリカフィラー2として、シランカップリング剤で表面処理したシリカフィラーを使用した
参考例13〜15では、液状封止材の物性(粘度、T.I.、20mm注入性)を損なうことなく、シリカフィラー2の含有量を増加することができた。
一方、(C)成分のシリカフィラー1として、平均粒径が50nm超(100nm)のものを使用した比較例1は、液状封止材の20mm注入性が劣っていた。(C)成分のシリカフィラー1として、表面未処理のものを使用した比較例2、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン以外のカップリング剤で表面処理した比較例3、4、(C)成分のシリカフィラー1の配合割合を(D)成分のシリカフィラー2に対して、1:10.2より多くした比較例5は、液状封止材の物性(粘度、T.I.、20mm注入性)が劣っていた。