特許第6415148号(P6415148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415148
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20181022BHJP
【FI】
   G01R15/20 A
【請求項の数】22
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-144055(P2014-144055)
(22)【出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2015-45634(P2015-45634A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-157857(P2013-157857)
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健治
(72)【発明者】
【氏名】今庄 秀人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 太一
【審査官】 山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/008466(WO,A1)
【文献】 特開平02−212789(JP,A)
【文献】 特表2003−510612(JP,A)
【文献】 特開2001−174486(JP,A)
【文献】 特開2008−298761(JP,A)
【文献】 特開2013−096728(JP,A)
【文献】 特開2003−130895(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0038352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギャップを有し、被計測電流が流れる導体と、
平面視で前記導体と電気的に絶縁するための間隙を有する、信号処理ICを支持するための支持部と、
前記信号処理ICと電気的に接続可能に構成されるとともに、前記導体に流れる電流から生じる磁界を検出するように前記導体の前記ギャップに配置された磁電変換素子と、
前記磁電変換素子を支持する絶縁部材と
を備え、
前記絶縁部材は、前記支持部の前記信号処理ICが配置される面とは反対側の面に接触するように配置されており、
前記導体は、前記絶縁部材と接触しないように配置されていることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
リード端子を有する信号端子部をさらに備え、
前記支持部は前記信号端子部と電気的に接続可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記導体は段差を有しており、
前記導体は、前記段差により、前記導体が前記絶縁部材と接触しないように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記導体と、前記絶縁部材との間が樹脂で充填されていることを特徴とする請求項2又は3のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記導体と前記支持部と前記絶縁部材と前記磁電変換素子とを封止するモールド樹脂をさらに備え、
前記信号端子部は前記支持部と接続しており、
前記信号端子部の少なくとも一部が前記モールド樹脂から露出していることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記絶縁部材はシリコン基材であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記導体は、U字形状、V字形状、または、C字形状の電流経路を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項8】
前記磁電変換素子は、前記U字形状、V字形状、または、C字形状の電流経路のギャップに配置されることを特徴とする請求項に記載の電流センサ。
【請求項9】
前記U字形状、V字形状、または、C字形状の電流経路は、平面視で前記支持部がある方向とは逆の方向に開口していることを特徴とする請求項又はに記載の電流センサ。
【請求項10】
前記磁電変換素子は、前記絶縁部材に支持されることによって、前記導体と電気的に絶縁されるように構成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項11】
前記絶縁部材と前記磁電変換素子との間に粘着剤層又は接着剤層が設けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項12】
前記絶縁部材は、絶縁テープ又は絶縁シートであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項13】
前記磁電変換素子は、ダイアタッチフィルムを用いて前記絶縁部材とダイボンドされていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項14】
前記磁電変換素子は、ホール素子または磁気抵抗素子であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項15】
前記磁電変換素子は、前記導体の前記ギャップに配置され、該磁電変換素子の底面と前記導体の前記段差以外の部分における裏面とが同一面上に設けられていることを特徴とする請求項に記載の電流センサ。
【請求項16】
前記磁電変換素子は、前記磁電変換素子の感磁面が前記段差における前記導体の厚み方向の中心高さと略等しくなるように前記絶縁部材上に配置されることを特徴とする請求項に記載の電流センサ。
【請求項17】
前記支持部は、平面視で前記導体側に向けて当該支持部の中央が窪む凹状部が形成されており、前記凹状部の両側は、前記導体側に向けて張り出す突出部を有し、
前記導体は、平面視で、前記支持部の前記凹状部および前記突出部に沿う凸状部を有し、前記絶縁部材は、前記突出部の前記信号処理ICが配置される面とは反対側の面である裏面に接触していることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項18】
前記信号処理ICは、前記磁電変換素子に励起電流を印加するためのバイアス回路、前記磁電変換素子から得られる信号を補正する補正回路、および、前記補正された信号を増幅するための増幅回路を有することを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項19】
前記磁電変換素子の感磁面上に形成される磁性材料をさらに備えることを特徴とする請求項1から18のいずれか1項に記載の電流センサ。
【請求項20】
前記磁電変換素子の感磁部は、前記導体を含む面の垂直方向において、前記導体の上面と下面との間に設けられる請求項1から19の何れか1項に記載の電流センサ。
【請求項21】
前記導体と前記絶縁部材との間の距離をg、前記磁電変換素子の厚みをd1としたときに、下記式1を満たす請求項1から20の何れかに1項に記載の電流センサ。
10μm≦g≦d1μm ・・・ (1)
【請求項22】
前記導体と前記磁電変換素子との間の距離wは、平面視で、50μm以上150μm以下である請求項1から21の何れか1項に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁電変換素子を有する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
電流センサは、例えば磁電変換素子を有し、導体に流れる電流によって発生する磁場に比例する大きさの信号を出力することが知られている。例えば特許文献1では、基板と、基板に設けられた磁場変換器、すなわち磁電変換素子と、電流導体とを備え、磁電変換素子が、電流導体に流れる電流を検出する電流センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/130393号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の電流センサでは、磁電変換素子を有する基板が絶縁体を介してリードフレーム上に配置されているものの、基板とリードフレームとの間のクリアランスが小さくなるため、絶縁耐性の低下が懸念される(特許文献1の図1)。
【0005】
また、特許文献1の別の電流センサでは、電流導体部を有する導電性留め具の一端が固定されて、導電性留め具の他端に有する電流導体部と磁電変換素子との間のクリアランスが決まる(特許文献1の図7)。しかしながら、導電性留め具の一端のみが固定される状況下では、電流導体部の高さにばらつきが生じ、電流導体部と磁電変換素子との間のクリアランスが、そのばらつきの影響を受けやすくなる。したがって、絶縁耐性が低下するおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような状況下に鑑みてなされたものであり、その目的は、絶縁耐性の優れた電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための電流センサは、ギャップを有し、被計測電流が流れる導体と、平面視で前記導体と電気的に絶縁するための間隙を有する、信号処理ICを支持するための支持部と、前記信号処理ICと電気的に接続可能に構成されるとともに、前記導体に流れる電流から生じる磁界を検出するように前記導体の前記ギャップに配置された磁電変換素子と、前記磁電変換素子を支持する絶縁部材とを備え、前記絶縁部材は、前記支持部の前記信号処理ICが配置される面とは反対側の面に接触するように配置されており、前記導体は、前記絶縁部材と接触しないように配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた絶縁耐性を有する電流センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る電流センサの一例を示す上面図である。
図2図1の電流センサの側面図である。
図3】信号処理ICの内部の構成例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る電流センサの一例を示す側面図である。
図5】一般的な樹脂ペーストを用いて磁電変換素子が絶縁部材上に固着される場合の固着状態の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明の電流センサの一実施形態を図1図3を参照して説明する。実施形態に係る電流センサ1は、例えばホール素子等の磁電変換素子を有し、電流によって生じる磁束密度に基づいて電流を検出するセンサである。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る電流センサ1の構成例を示す上面図である。図1に示すように、この電流センサ1は、例えば12本のリード端子12a,12bを有する被計測電流を流すための導体10と、信号処理IC20と、信号処理IC20を支持するための支持部30と、例えば12本のリード端子41を有する信号端子部42とを備える。なお、リード端子12a,12b,41の数は、図1に示した例に限られず、変更することもできる。
【0012】
この実施形態では、導体10は、リード端子12a側から、リード端子12b側に電流Iが流れるような電流経路11を有する。そして、この電流経路11の形状に沿うように、リード端子12a,12b間にはギャップ10aが形成されている。この実施形態では、電流経路11は、例えばU字状の形状とするが、後述する磁電変換素子13において電流検出が可能であれば、図1に示した形状に限らず、一端が閉じた形状であればよい。導体10の電流経路11の形状として、例えばV字状、C字状などを適用することも可能である。尚、U字状、V字状、C字状に準じた形状もU字状、V字状、C字状に含まれるものとする。
【0013】
導体10のギャップ10a内には、磁電変換素子13が配置されている。磁電変換素子13としては、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子、ホールIC、磁気抵抗ICがある。この実施形態の電流センサ1では、導体10、信号端子部42、信号処理IC20および磁電変換素子13は、図1に示すように、樹脂80で封止され、同一のパッケージとして形成される。樹脂80は、エポキシ樹脂等のモールド樹脂である。
【0014】
この電流センサ1において、導体10に電流Iが流れると、電流経路11に形成されたU字状を流れる電流量及び電流方向に応じた磁界が生じる。ここで、磁電変換素子13は、U字状の電流経路11に近傍するギャップ10a内に配置されるので、上述した電流によって発生する磁束密度を検出して、磁束密度に応じた電気信号を信号処理IC20に出力することになる。
【0015】
ギャップ10a内の磁電変換素子13は、ギャップ10aにより導体10と離間して配置されており、常に導体10と接触しない状態となっている。これにより、導体10と磁電変換素子13との間は電気的に導通せず、絶縁を維持するための間隙(クリアランス)が確保される。
【0016】
導体10と磁電変換素子13との間の距離wは、平面視で、例えば50μm以上150μm以下にすることが好ましい。距離wがこのような範囲内にあると、絶縁耐性を大きく低下させることなく、また、導体10に電流が流れたときに磁電変換素子13によって検出される磁場が十分に大きくなるので、絶縁耐性と検出精度を両立させることができる。
【0017】
また、磁電変換素子13は、絶縁部材14(図1において破線で示す。)によって支持される。絶縁部材14としては、例えば絶縁耐圧の高いポリイミド材からなる絶縁テープが用いられる。なお、この絶縁部材14として、ポリイミドテープに限らず、例えば、ポリイミド材やセラミック材などに接着剤を塗布した絶縁シートを適用することもできる。
【0018】
導体10の裏面には、例えばコイニングにより形成された段差101(図1において斜線で示す。)が形成されており、この段差101により、導体10は、絶縁部材14と離間して配置される。この点は後述で詳細に説明する。
【0019】
図1において、導体10および信号処理IC20は、それぞれが重ならないように配置されており、導体10と信号処理IC20との間には、それぞれが電気的に絶縁するための間隙が設けられている。さらに、導体10と支持部30との間にも、それぞれが電気的に絶縁するための間隙が設けられている。
【0020】
磁電変換素子13は、ワイヤ(金属線)60を介して信号処理IC20と電気的に接続され、信号処理IC20は、ワイヤ(金属線)50を介して信号端子部42と電気的に接続される。支持部30と信号端子部42は接続されており、支持部30及び信号端子部42は共に金属で構成されている。
【0021】
信号処理IC20は、例えばLSI(Large Scale Integration)で構成され、この実施形態では、例えば、メモリ、プロセッサ、バイアス回路、補正回路および増幅回路などを備える。この信号処理IC20の回路構成については、後述で詳細に説明する。
【0022】
図2は、電流センサ1の側面図である。図2に示すように、絶縁部材14は、支持部30の裏面30Aの一部と接合されて、磁電変換素子13を支持するように形成される。ここで、支持部30の裏面とは、支持部30の信号処理IC20が配置されていない側の面を指す。
【0023】
ギャップ10aを画成する導体10の一部の裏面には、段差101が形成されており、この段差101によって、導体10は、常に絶縁部材14と接触しないように配置される。図2に示す段差101は、絶縁部材14の高さよりも高くなるように形成されている。これは、絶縁部材14と導体10との間において、絶縁物が導電性材料と接するときに形成される沿面を有しないようにするためである。
【0024】
図2において、導体10の裏面と絶縁部材14との間は、モールド樹脂で充填されている。
【0025】
本実施形態の電流センサ1において、仮に、絶縁部材14と導体10とが接するように構成された場合、上述の沿面が電流センサ1の1次側に形成されるため、絶縁部材14と導体10とが接しないように構成した場合に比べて耐圧性能は低下する。またヒートサイクルなどの熱負荷がかかると、その沿面(材料の界面)に剥離が生じ易くなり、耐圧性能は更に劣化し得る。
【0026】
このため、本実施形態の電流センサ1では、上述の段差101を導体10に形成することによって、絶縁部材14と導体10とが接しないように、導体10の段差101部分が絶縁部材14よりも上方に位置するようにしている。これにより、絶縁部材14は、導体10とは接触せず、電流センサ1の1次側(導体10側)には沿面が形成されない。したがって、電流センサ1の1次側に沿面が形成されないため、電流センサ1における耐圧性能が維持され、かつ動作環境変化による耐圧劣化の発生を抑制できる。
【0027】
絶縁部材14は、例えば耐圧性の優れたポリイミド材の絶縁テープからなり、図2に示すような状態で、支持部30の裏面30Aに貼られ、磁電変換素子13を裏面から支持する。
【0028】
図2において、導体10と磁電変換素子13とは、絶縁部材14の同一面上に設けられる。また、磁電変換素子13は、導体10のギャップ10aに、導体10の厚みd分落とし込んで配置されている。これにより、電流センサ1では、磁電変換素子13の感磁面13Aの高さ位置が、導体10の厚み中心位置に近づくため、磁電変換素子13の感磁面13Aでは、導体10に流れる電流Iによって発生する磁束をより多く捉えることが可能となり、その結果、電流検出感度が向上する。
【0029】
次に、再び図1を参照して、導体10および支持部30の形状について詳述する。
【0030】
支持部30は、平面視で導体10側に向けて当該支持部30の中央部分が窪んだ凹状部31を有しており、支持部30の両側は、導体10側に向けて張り出す突出部32を有する。図1の例では、凹状部31は、例えば2段階に窪む凹状部31a,31bを有するように形成されている。
【0031】
導体10は、平面視で、支持部30の凹状部31および突出部32に沿うように形成された凸状部15を有する。つまり、凸状部15は、平面視で支持部30側に向けて導体10の中央部分が突出するように形成されている。図1の例では、凹状部31が2段階に窪む凹状部31a,31bを有するようになっているので、凸状部15も、2段階に突出する凸状部15a,15bを有するように形成されている。
【0032】
そして、図1では、絶縁部材14は、導体10側ではなく、支持部30裏面の少なくとも突出部32で支持される。なお、絶縁部材14は、突出部32以外の支持部30裏面(例えば凹状部31a両側の側部、または/および、凹状部31aの底部)で支持するようにしてもよい。
【0033】
なお、凸状部15および凹状部31は、例えば2段階に形状が変化する場合について例示したが、例えば1段階または3段階以上となるように段階的に構成してもよい。あるいは、凸状部15は、徐々に、または、連続的に導体10の中央部分(ギャップ10a周辺部分)が突出するようにしてもよいし、凹状部31は、その導体10の突出形状に沿うよう徐々に、または、連続的に窪みを形成するようにしてもよい。
【0034】
図1では、導体10の凸状部15(15a,15b)も、支持部30の凹状部31(31a,31b)の形状に合わせて、多段形状(2段階形状)を有している。それによって、導体10に電流が流れた時に、磁電変換素子13の部位に生成される磁束の影響が比較的小さい一部の導体10の幅が広がることになるため、導体10全体の抵抗値を小さくすることができる。
【0035】
図2の例において、導体10と絶縁部材14との間の距離をg、磁電変換素子13の厚みをd1とすると、絶縁耐圧及び検出精度の点から、10μm≦g≦d1μmを満たすようにするのが好ましい。この関係を満たすと、絶縁耐性を大きく低下させることなく、また、導体10に電流が流れたときに磁電変換素子13によって検出される磁場も十分に大きいので、絶縁耐性と検出精度を両立させることができる。
【0036】
図3は、信号処理IC20の一例の回路図である。この信号処理IC20は、バイアス回路201、補正回路202および増幅回路203を備える。バイアス回路201は、磁電変換素子13と接続され、磁電変換素子13に電源を供給するようになっている。換言すれば、バイアス回路201は、磁電変換素子13に励起電流を印加(流入)するための回路である。
【0037】
補正回路202は、例えば、動作温度に基づいて、予めメモリに記憶されている温度補正係数に従い磁電変換素子13の出力値を補正するようになっている。このため、温度依存性が少なく高精度な電流検出が可能となる。
【0038】
増幅回路203は、補正回路202からの出力値を増幅するようになっている。
【0039】
次に、本実施形態の電流センサ1の作製方法の概略について図1および図2を参照して説明する。
【0040】
まず、リードフレームに接着された絶縁部材14上に磁電変換素子13をダイボンディングするとともに(図2)信号処理IC20を支持部30上にダイボンディングする。そして、磁電変換素子13および信号処理IC20をワイヤ50,60でワイヤボンディングする(図1)。次に、導体10、磁電変換素子13、信号処理IC20および信号端子部42を樹脂80でモールドしてリードカットを行う(図1)。次に、フォーミングにより高圧側のリード端子12a,12bおよび低電圧側のリード端子41を形成する(図1)。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の電流センサ1によれば、導体10と信号処理IC20とは、電気センサ1を上面からみて、電気的に絶縁するための間隙を有するので、優れた絶縁耐性を有する。
【0042】
また、絶縁部材14は、導体10とは接触せず、支持部30のみによって支持されるので、導体10と絶縁部材14との間では沿面が形成されず、電流センサ1の耐圧が低下しにくくなる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図1図4および図5を参照して説明する。
【0044】
図2に示した電流センサ1では、磁電変換素子13は、絶縁部材14上に設けられているが、本実施形態の電流センサ1Aでは、磁電変換素子13が、ダイアタッチフィルムを用いて、絶縁部材14上に設けられることで、沿面の形成をより確実に防止する点に特徴がある。
【0045】
図4は、第2実施形態に係る電流センサ1Aの構成例を示す側面図である。この電流センサ1Aでは、磁電変換素子13が、ダイアタッチフィルム70を用いて、絶縁部材14上に固着される。それ以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0046】
ダイアタッチフィルム70は、ウェーハのダイシング前に、ウェーハの裏面に貼り付けるため、後述する絶縁ペーストや導電性ペーストを使用して磁電変換素子13を固定する場合と異なり、磁電変換素子13を囲む導体10に向かって裾野部分が形成されるように沿面が伸びることが無いため、電流センサの耐圧がより向上する。
【0047】
一般に、磁電変換素子13は、ダイボンド材を用いて絶縁部材14上に固着されることになるが、このダイボンド材として、導電性ペーストを用いた場合は、ペーストの裾野部分により磁電変換素子13と導体10との絶縁距離が縮まる。また、ダイボンド材として絶縁ペーストを用いた場合でも、ペーストの裾野部分により沿面が形成され得る。この様子を図5に示す。
【0048】
図5では、絶縁ペースト180を用いて磁電変換素子13が絶縁部材14上に固着された場合に、絶縁ペースト180の裾野部分が導体10と接触している。この場合、絶縁ペースト180の裾野部分が前述の沿面を形成することになるため、この沿面において、ヒートサイクルなどの熱負荷により剥離が生じやすくなり、電流センサの耐圧が低下を起こし得る。
【0049】
一般に、磁電変換素子13は、ダイボンド材を用いて絶縁部材14上に固着されることになるが、このダイボンド材として、導電性ペーストを用いた場合は、ペーストの裾野部分により磁電変換素子13と導体10との絶縁距離が縮まる。また、ダイボンド材として絶縁ペーストを用いた場合でも、ペーストの裾野部分により沿面が形成され得る。
【0050】
図4では、絶縁ペースト180を用いて磁電変換素子13が絶縁部材14上に固着された場合に、絶縁ペースト180の裾野部分により導体10との絶縁距離が縮まっている。この場合、絶縁ペースト180の裾野部分と一次導体10との距離xが10μmより小さくなると、電流センサの耐圧が低下し得るので、裾野部分と一次導体10との距離xは10μm以上とすることが好ましい。
【0051】
ところで、導体10に電流が流れると熱が発生し、全体を封止する樹脂80と絶縁部材14との線膨張係数の差により、磁電変換素子13に応力がかかる。磁電変換素子13は応力によって感度が変動するので、磁電変換素子13に応力がかかると、磁場検出精度が低下する恐れがある。本実施形態の電流センサ1Aでは、支持部30は絶縁部材14と接触しており、リード端子41の一部は樹脂80から露出している。このため、導体10に被計測電流が流れて熱が発生したとしても、その熱が、絶縁部材14およびリード端子41を通じて迅速に放出される。これにより、磁場検出精度の低下を抑制することができる。
【0052】
上記観点から、絶縁部材14として、熱導電率が高いシリコン基材を用いることがより好ましい。
【0053】
支持部30は、平面視で、導体10側とは反対側に凹んで形成された凹状部31、及び、導体10側に向けて張り出す突出部32を有する。また、導体10は、上面からみて、支持部30の凹状部31、及び、突出部32にそれぞれ沿うように形成された凸状部15を有する。導体10の凸状部15が支持部30の凹状部31及び突出部32に沿って配置されているので、導体10に被計測電流が流れたときの熱をリード端子41側に放出しやすくなる。これにより、磁場検出精度の低下を抑制することができる。
【0054】
また、磁電変換素子13上(感磁面13A上)に、例えば磁性体メッキによって磁性材料71が形成されていてもよい。尚、磁性材料71の構成例として、フェライトなどの磁性体チップであっても良い。これにより、導体10に電流Iが流れると、電流Iによって生じる磁束が磁電変換素子13の感磁部13Aに収束されやすくなる。したがって、電流センサ1Aの電流検出感度が向上する。
【0055】
[変形例]
上述した各実施形態に係る電流センサ1,1Aは例示に過ぎず、以下に示すような変更を行うことが可能である。
【0056】
第1および第2実施形態の電流センサ1,1Aにおいて、導体10に段差101を設ける場合について説明したが、導体10の高さを絶縁部材14よりも高くなるように構成することで、段差101を設けないようにしてもよい。このように構成することによっても、絶縁部材14は、導体10とは接触せず、支持部30のみによって支持されるので、導体10と絶縁部材14との間では沿面が形成されず、電流センサ1の耐圧が低下しにくくなる。
【0057】
第1および第2実施形態の電流センサ1,1Aでは、1つの磁電変換素子13を適用した場合について説明したが、例えば2つ以上の磁電変換素子を有するようにしてもよい。
【0058】
第1および第2実施形態の電流センサ1,1Aは、半導体パッケージに適用してもよいし、1チップで構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1,1A 電流センサ
10 導体
10a ギャップ
11 電流経路
12a,12b,41,41a〜41l リード端子
13 磁電変換素子
14 絶縁部材
20 信号処理IC
30 支持部
42 信号端子部
70 ダイアタッチフィルム
71 磁性材料
図1
図2
図3
図4
図5