(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る光透過性皮革調シート及び皮革調発光シートの代表的な実施形態について説明する。
【0027】
図1は、第1実施形態の光透過性皮革調シート9を備える皮革調発光シート10の模式図である。
図1(a)は平面図を示し、
図1(b)は
図1(a)のI−I’断面における断面図を示す。
【0028】
光透過性皮革調シート9は、繊維基材1と、繊維基材1の一面に配された樹脂表皮層2と、遮光層3とを備える。光透過性皮革調シート9の繊維基材1の他の一面には、導光体(ライトガイド)4が遮光層3を介して透明接着層6で接着されている。遮光層3は、繊維基材1と導光体4との間に介在する層である。導光体4は拡散材を含有する透明樹脂フィルムである。繊維基材1と遮光層3とは接着層5を介して接合されている。そして、導光体4の端面には、回路基板8に実装された、異なる色の光を発する光源7R,7G,7Bが配置されている。
【0029】
図1(a)に示すように、光透過性皮革調シート9は、リング状の透光部L1を有する。
図1(b)に示すように、透光部L1は、透光部L1に対応する領域に、その周囲の領域である非透光部よりも薄い薄肉部Cを繊維基材1に形成することにより透光性が確保されている。さらに、透光部L1に対応する領域には、遮光層3が形成されていない。透光部は、全光線透過率が1%以上、さらには5%以上、とくには10%以上、ことには20%以上であることが好ましい。
【0030】
光源7R,7G,7Bは、例えば、それぞれ赤色、緑色、青色を発するLED装置であり、光源7R,7G,7Bのそれぞれの発光強度は回路基板8に接続された図略の発光強度調整手段により調整され、光源7R,7G,7Bの各色の発光強度を調整することにより、色座標上の幅広い範囲で所望の色の光を形成することができる。
【0031】
図略の電池等の電源から電流を付与して光源7R,7G,7Bを発光させた場合、導光体4の繊維基材1と接合されている面は面発光する。具体的には、
図1(b)中に矢印で示したように、光源7R,7G,7Bからの発光は導光体4の端面から入射し、導光体4内で拡散された後、繊維基材1と接合されている面から出射する。そして、出射された光は、繊維基材1の透光部L1に対応する薄肉部Cに入射する。そして、
図1(a)中に矢印で示したように、光透過性皮革調シート9の上面で透光部L1が発光する。一方、光源7R,7G,7Bを消灯した場合には、光透過性皮革調シート9の上面は発光せず、一体感のある銀付皮革調の外観を呈する。
【0032】
図1(b)の遮光層3は、例えば、カーボンブラックのような遮光性を有する着色剤を含有する樹脂層である。遮光層3は、例えば、着色剤を含有する樹脂シートを用いて形成される。具体的には、例えば、繊維基材1に接着剤や両面テープである接着層5を介して着色剤を含有する樹脂シートを接着することにより形成される。遮光層3の他の一面は、透明性を有する透明接着層6を介して導光体4に接着されている。
【0033】
繊維基材1の薄肉部Cを形成する方法としては、例えば、繊維基材1に遮光層3を形成するための樹脂シートを貼り合せた後、薄肉部Cを形成する領域をレーザーカットして薄肉化する方法等が挙げられる。なお、このようにして形成された薄肉部Cの凹部は、透明接着層6を形成する際に透明接着剤で埋められるために、光透過性を保持する。
【0034】
図2は、第2実施形態の光透過性皮革調シート19を備える皮革調発光シート20の断面模式図である。光透過性皮革調シート19は、第1実施形態の光透過性皮革調シート9と以下の点で異なる以外同様の構成を有する。光透過性皮革調シート19においては、繊維基材1に接着層5を介して着色剤を含有する樹脂シートを用いた遮光層3を接着する代わりに、繊維基材1に着色剤を含有する塗液をコーティングし、乾燥することにより形成された遮光層13を有する。また、拡散材を含有する透明フィルムである導光体4の代わりに、遮光層13が形成された繊維基材1の表層のみと一体化するように成形された、拡散材を含有する透明樹脂成形体である導光体14を有する。なお、平面図は
図1(a)と実質的に同様である。
【0035】
皮革調発光シート20においても、導光体14の端面に、異なる色の光を発する光源7R,7G,7Bが配置されている。電流を付与して光源7R,7G,7Bを発光させた場合、光源7R,7G,7Bからの発光は導光体14内に入射し、導光体14内で拡散した後、繊維基材1と接合されている面から出射する。そして、出射した光は、繊維基材1の薄肉部Cに入射する。その結果、光透過性皮革調シート19の上面で、透光部L1が発光する。一方、光源7R,7G,7Bを消灯した場合、光透過性皮革調シート19の上面は、一体感のある銀付調の皮革調外観を呈する。
【0036】
図3は、第3実施形態の光透過性皮革調シート29を備える皮革調発光シート30の断面模式図である。光透過性皮革調シート29は、第1実施形態の光透過性皮革調シート9と以下の点で異なる以外同様の構成を有する。光透過性皮革調シート29においては、遮光層3を形成するために繊維基材1に接着層5を介して着色剤を含有する樹脂シートを接着する代わりに、繊維基材1に着色剤を含有させて、遮光性を付与している。なお、着色剤は繊維基材を形成する繊維自身に含有させても、繊維基材に高分子弾性体を含浸付与し、高分子弾性体で着色剤を固定してもよい。また、拡散材を含有する透明フィルムを導光体4として用いる代わりに、繊維基材1の表層のみに一体化するように成形された拡散材を含有する透明樹脂成形体である導光体14を用いる。なお、平面図は
図1(a)と実質的に同様の構成である。
【0037】
皮革調発光シート30においても、導光体14の端面に、異なる色の光を発する光源7R,7G,7Bが配置されている。電流を付与して光源7R,7G,7Bを発光させた場合、光源7R,7G,7Bからの発光は導光体14内に入射し、導光体14内で拡散した後、繊維基材1と接合されている面から出射する。そして、出射した光は、繊維基材1の薄肉部Cに入射する。そして、光透過性皮革調シート29の上面で透光部L1が発光する。一方、光源7R,7G,7Bを消灯した場合、光透過性皮革調シート9の上面は、一体感のある銀付皮革調の外観を呈する。
【0038】
図4は、第4実施形態の光透過性皮革調シート39を備える皮革調発光シート40の模式図である。
図4(a)は平面図を示し、
図4(b)は
図4(a)のIV−IV’断面における断面図を示す。皮革調発光シート40は、第1実施形態の皮革調発光シート10と以下の点で異なる以外、同様の構成を有する。光透過性皮革調シート39は、繊維基材1の一面に樹脂表皮層2を積層した銀面調の外観を付与する代わりに、表面が起毛処理された繊維基材11を用いることにより起毛皮革調の外観を有する。
【0039】
皮革調発光シート40においても、導光体4の端面に、異なる色の光を発する光源7R,7G,7Bが配置されている。電流を付与して光源7R,7G,7Bを発光させた場合、光源7R,7G,7Bからの発光は導光体4内に入射し、導光体4内で拡散した後、繊維基材1と接合されている面から出射する。そして、出射した光は、繊維基材1の薄肉部Cに入射する。そして、光透過性皮革調シート39の上面で透光部L1が発光する。一方、光源7R,7G,7Bを消灯した場合、光透過性皮革調シート39の上面は、一体感のある起毛皮革調の外観を呈する。
【0040】
図5は、第5実施形態の光透過性皮革調シート49を備える皮革調発光シート50の模式図である。
図5(a)は平面図を示し、
図5(b)は
図5(a)のV−V’断面における断面図を示す。皮革調発光シート50は、第1実施形態の皮革調発光シート10と以下の点で異なる以外、同様の構成を有する。光透過性皮革調シート49は、繊維基材1の透光部L1に対応する領域に、その周囲の非透光部に対応する領域よりも薄い薄肉部Cを形成する代わりに、透過性皮革調シート9の全面において透光性を有するように薄い繊維基材21を用いている。また、遮光層3を設けず、薄い繊維基材21が透明接着層6を介して導光体4に接合されている。
【0041】
皮革調発光シート50においても、異なる色の光を発する光源7R,7G,7Bが導光体4の端面に配置されている。電流を付与して光源7R,7G,7Bを発光させた場合、光源7R,7G,7Bからの発光は導光体4内に入射し、導光体4内で拡散した後、繊維基材1と接合されている面から出射する。このとき、繊維基材21は全面が光透過性を有する透光部であるために、
図5(b)の矢印で示したように、光透過性皮革調シート49の上面の全面で発光する。一方、光源7R,7G,7Bを消灯した場合、光透過性皮革調シート49の上面は、一体感のある銀付皮革調の外観を呈する。
【0042】
図6は、第6実施形態の光透過性皮革調シート59を備える皮革調発光シート60の模式図である。
図6(a)は平面図を示し、
図6(b)は
図6(a)のVI−VI’断面における断面図を示す。皮革調発光シート60は、第1実施形態の皮革調発光シート10と以下の点で異なる以外、同様の構成を有する。光透過性皮革調シート59は、透光部L1に対応する領域に、非透光部に対応する領域よりも薄い薄肉部Cを形成する代わりに、光透過性皮革調シート9の全面で透光性を有する薄い繊維基材21を用いている。また、遮光層3を設けていない。さらに、導光体4の代わりに画像表示装置24を用いている。画像表示装置24の表示面は透明接着層6を介して繊維基材21に接合されている。画像表示装置24は、液晶パネルや有機ELパネルのような光により画像を表示する装置である。なお、
図6の画像表示装置24では光源を有する液晶パネルの例を示した。有機ELパネルを用いる場合には、有機ELパネルが自発光するために、独立した光源を必要としない。また、有機ELパネルは可撓性に優れている。
【0043】
皮革調発光シート60においては、画像表示装置24により自由な画像を発光表示することができる。そして、光透過性皮革調シート59は全面で透光性を有するために、光透過性皮革調シート59の上面に画像Dを浮き出るように表示することができる。一方、画像表示装置24を消灯した場合、光透過性皮革調シート60の上面は、一体感のある銀付皮革調の外観を呈する。
【0044】
図7は、第7実施形態の光透過性皮革調シート69を備える皮革調発光シート70の斜視模式図である。
図7では、説明のために長手方向の断面を表している。皮革調発光シート70は、第1実施形態の皮革調発光シート10と以下の点で異なる以外、同様の構成を有する。皮革調発光シート70は、環状の透光部L1の代わりに、線状の透光部L2を備える。また、透光体4には接触スイッチ16が組み込まれている。接触スイッチ16の配置領域に対応する樹脂表皮層12の表面には、接触スイッチ16の位置を示すスイッチマーク15が示されている。
【0045】
皮革調発光シート70においては、指Fで人がスイッチマーク15を押圧することにより、可撓性を有する光透過性皮革調シート69が撓み、接触スイッチ16の接点が接触して電池18から回路基板8に電流が流れ、光源7R,7G,7Bが発光する。このように、接触スイッチ16を配した皮革調発光シート70を用いることにより、接触スイッチ16を押圧したときのみ透光部L2を光らせることができる。
【0046】
図8は、第8実施形態の光透過性皮革調シート79を備える皮革調発光シート80の斜視模式図である。
図8では、説明のために長手方向の断面を表している。皮革調発光シート80は、第1実施形態の皮革調発光シート10と以下の点で異なる以外、同様の構成を有する。皮革調発光シート80は、環状の透光部L1の代わりに、線状の透光部L2を備える。また、透光体4にセンサ17が組み込まれている。センサ17は、例えば、温度を感知する温度センサや、人の心拍数をカウントするための心拍数センサ等とくに限定されない。さらに、センサ17から発せられた電流値に応じて、回路基板8に流す電流値を制御する制御装置19を備える。
【0047】
例えばセンサ17が温度センサである場合、皮革調発光シート80においては、センサ17が感温部の温度に応じて異なる電流を制御装置19に流す。そして、制御装置19はセンサ17から受けた電流に応じて、回路基板78に流れる電流を決定する。回路基板78には、制御装置19から流された電流に応じて、光源7R,7G,7Bのそれぞれの発光強度を調整する回路が設けられている。そして、光源7R,7G,7Bは、制御装置19からの指示によりそれぞれ所定の発光強度で発光する。そして、透光部L2は、例えば、温度が高いときには赤色、温度が低いときには青色、のように温度に応じた発光色を呈する。
【0048】
以上、本発明に係る光透過性皮革調シート及び皮革調発光シートの代表的な実施形態の層構成等を説明した。次に、光透過性皮革調シート及び皮革調発光シートをさらに詳しく説明する。
【0049】
光透過性皮革調シートの製造に用いられる繊維基材としては、不織布,織布,織物,編物等の繊維構造体を含み、必要に応じて繊維構造体の空隙に高分子弾性体やその他の改質剤を含浸付与したものが特に限定なく用いられる。繊維構造体の中では、不織布、とくには極細繊維の不織布が好ましい。極細繊維の不織布は繊維密度が緻密であるために見掛け密度が高くなりやすく、繊維の粗密ムラが小さく、均質性も高い。そのために、透光部に対応する領域に透光部の周囲の非透光部の領域よりも薄い薄肉部を形成する場合に、レーザーカッター等を用いて繊維基材を正確に切削しやすい。また、遮光性も高くなりやすいために薄肉化しやすい。さらに、繊維基材の表層のみと一体化するように射出成形して導光体となる透明樹脂成形体を成形する場合には、溶融樹脂が繊維基材全体に浸透せず、表層のみに含浸されやすいために、表層以外の部分のしなやかな繊維の風合いが維持されて、硬い風合いにならない点から好ましい。極細繊維の不織布を含む繊維基材を用いる場合について、代表例として詳しく説明する。
【0050】
極細繊維の不織布は、例えば、海島型(マトリクス-ドメイン型)複合繊維のような極細繊維発生型繊維を絡合処理し、極細繊維化処理することにより得られる。なお、本実施形態においては、海島型複合繊維を用いる場合について詳しく説明するが、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維を用いても、また、極細繊維発生型繊維を用いずに、直接極細繊維を紡糸してもよい。なお、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維の具体例としては、紡糸直後に複数の極細繊維が軽く接着されて形成され、機械的操作により解きほぐされることにより複数の極細繊維が形成されるような剥離分割型繊維や、溶融紡糸工程において花弁状に複数の樹脂を交互に集合させてなる花弁型繊維等が挙げられ、極細繊維を形成しうる繊維であれば特に限定されずに用いられる。
【0051】
極細繊維の不織布の製造においては、はじめに、選択的に除去できる海島型複合繊維の海成分(マトリクス成分)を構成する熱可塑性樹脂と、極細繊維を形成する樹脂成分である海島型複合繊維の島成分(ドメイン成分)を構成する熱可塑性樹脂とを溶融紡糸し、延伸することにより海島型複合繊維を得る。
【0052】
海成分の熱可塑性樹脂としては、島成分の樹脂とは溶剤に対する溶解性または分解剤に対する分解性を異にする熱可塑性樹脂が選ばれる。海成分を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンエチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、などが挙げられる。これらの中では、湿熱や熱水で収縮し易い点でポリビニルアルコール系樹脂、特にエチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
【0053】
島成分を形成し、極細繊維を形成する樹脂成分である熱可塑性樹脂としては、海島型複合繊維及び極細繊維を形成可能な樹脂であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,スルホイソフタル酸変性PET,ポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート樹脂等の脂肪族ポリエステル;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド10,ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6−12等のポリアミド;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
極細繊維の不織布の製造方法としては、例えば、海島型複合繊維を溶融紡糸してウェブを製造し、ウェブを絡合処理した後、海島型複合繊維から海成分を選択的に除去して極細繊維を形成するような方法が挙げられる。ウェブを製造する方法としては、スパンボンド法などにより紡糸した長繊維の海島型複合繊維をカットせずにネット上に捕集して長繊維ウェブを形成する方法や、長繊維をステープルにカットして短繊維ウェブを形成する方法等が挙げられる。これらの中では、緻密さ及び充実感に優れている点から長繊維ウェブが特に好ましい。また、形成されたウェブには形態安定性を付与するために融着処理を施してもよい。
【0055】
なお、長繊維とは、紡糸後に意図的にカットされた短繊維ではない、連続的な繊維であることを意味する。さらに具体的には、例えば、繊維長が3〜80mm程度になるように意図的に切断された短繊維ではない繊維を意味する。極細繊維化する前の海島型複合繊維の繊維長は100mm以上であることが好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、製造工程において不可避的に切断されない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。なお、後述する絡合時のニードルパンチや、表面のバフィングにより、製造工程において不可避的に長繊維の一部が切断されて短繊維になることもある。
【0056】
海島型複合繊維の海成分を除去して極細繊維を形成するまでの何れかの工程において、絡合処理及び水蒸気による熱収縮処理等の繊維収縮処理を施すことにより、海島型複合繊維を緻密化することができる。絡合処理としては、例えば、ウェブを5〜100枚程度重ね、ニードルパンチや高圧水流処理する方法が挙げられる。
【0057】
海島型複合繊維の海成分は、ウェブを形成させた後の適当な段階で溶解または分解して除去される。このような分解除去または溶解抽出除去により海島型複合繊維が極細繊維化されて、繊維束状の極細繊維の不織布が形成される。繊維束状の極細繊維の不織布は、熱収縮処理や、加熱ロールや加熱プレスすることにより、さらに、見掛け密度が高められてもよい。
【0058】
極細繊維の繊度は特に限定されないが、0.001〜0.9dtex、さらには0.01〜0.6dtex、とくには0.02〜0.5dtexであることが好ましい。繊度が高すぎる場合には、緻密感が不充分な不織布が得られる傾向がある。また、繊度が低すぎる繊維は製造しにくい。
【0059】
このようにして得られた極細繊維の不織布は、必要に応じて厚さ調整及び平坦化処理される。具体的には、スライス処理やバフィング処理が施される。このようにして、極細繊維の不織布が得られる。
【0060】
なお、繊維基材に含まれる不織布等の繊維構造体の繊維間の空隙には、形状安定性を付与したり、後述する着色剤を固定したり、充実感を付与したりすることを目的として、必要に応じて高分子弾性体が含有されてもよい。高分子弾性体の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル、合成ゴム等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが接着性や機械特性が優れる点から好ましい。
【0061】
繊維構造体に高分子弾性体を付与する方法としては、高分子弾性体の溶液またはエマルジョンを繊維構造体に含浸させた後、高分子弾性体を凝固させる方法が挙げられる。高分子弾性体の溶液またはエマルジョンを繊維構造体に含浸させる方法としては、溶液またはエマルジョンを繊維構造体に所定の含浸状態になるように浸漬し、プレスロール等で絞るという処理を1回又は複数回行うディップニップ法が好ましく用いられる。また、その他の方法として、バーコーティング法、ナイフコーティング法、ロールコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法等を用いてもよい。
【0062】
高分子弾性体の溶液またはエマルジョンを繊維構造体に含浸し、高分子弾性体を凝固させることにより、高分子弾性体を繊維構造体に固定する。
【0063】
繊維基材中の高分子弾性体の含有割合としては、5〜40質量%、さらには、8〜35質量%、とくには12〜30%であることが、見かけ密度が高くなりやすくなることにより、切削加工性や透明樹脂成形体を成形する場合に繊維基材が硬くなりにくくなる点から好ましい。
【0064】
繊維基材の見かけ密度は0.50g/cm
3以上、さらには0.50〜0.85g/cm
3、とくには0.50〜0.80g/cm
3であることが好ましい。このように高い見かけ密度の場合には、切削加工性や透明樹脂成形体を成形する場合に繊維基材が硬くなりにくくなる点から好ましい。
【0065】
繊維基材の厚さは、目的とする透光部の全光線透過率や、用途に応じて適宜調整される。例えば、100〜3000μm、さらには、150〜1000μm、とくには、200〜900μm、ことには250〜800μmであることが好ましい範囲として挙げられる。繊維基材が厚すぎる場合には遮光性が高くなりすぎ、薄すぎる場合には遮光性が低下する傾向がある。
【0066】
透光部の全光線透過率は1%以上、さらには5%以上、とくには10%以上、ことには20%以上であることが好ましい。このような全光線透過率を達成するために、極細繊維を含む繊維基材を含む場合、透光部の厚みは1000μm以下、さらには900μm以下、とくには800μm以下、ことには500μm以下であることが好ましい。
【0067】
繊維基材には、遮光性を調整するために必要に応じて着色剤を含有させてもよい。繊維基材に着色剤を含有させる方法は特に限定されない。具体的には、例えば、繊維基材に含有される繊維構造体の繊維の溶融紡糸時に顔料を配合して繊維自身を着色したり、繊維を染料で染色したり、また、顔料とバインダとなる上述した高分子弾性体とを含む顔料混合液を繊維構造体に含浸させた後、顔料混合液を乾燥させることにより繊維構造体に顔料を高分子弾性体で固着させるような方法であってもよい。これらの中では、遮光性の点及び堅牢度が高い点から顔料を高分子弾性体で固着させる方法がとくに好ましい。
【0068】
顔料としては、バインダとなる高分子弾性体により不織布基材に固着されるものであれば、特に限定なく用いられうる。このような顔料の具体例としては、例えば、カーボンブラックや、フタロシアニン系,アントラキノン系,キナクドリン系,ジオキサジン系,ペリレン系,チオインジゴ系,アゾ系等の有機顔料や、酸化チタン,べんがら,クロムレッド,モリブデンレッド,リサージ,酸化鉄等の無機顔料が挙げられる。
【0069】
このような繊維基材の一面に樹脂表皮層を積層形成することにより、銀付皮革調の外観を有する銀付皮革調シートが得られる。また、繊維基材の一面を起毛処理することにより起毛皮革調の外観を有する起毛皮革調シートが得られる。
【0070】
銀付皮革調シートを形成する方法としては、繊維基材の表面に乾式造面法やダイレクトコート法などの方法によりポリウレタン等の高分子弾性体を含む樹脂表皮層を形成する方法が挙げられる。乾式造面法は、離型紙などの支持基材上に高分子弾性体を含む樹脂膜を形成した後、その樹脂膜の表面に接着剤を塗布し、繊維基材の表面に貼り合せて、必要によりプレスして接着し、離型紙を剥離することにより銀付調の樹脂表皮層を形成する方法である。また、ダイレクトコート法は、高分子弾性体を含む液状樹脂または樹脂液を繊維基材の表面に直接塗布した後、硬化させることにより銀付調の樹脂表皮層を形成する方法である。
【0071】
銀付調の樹脂表皮層を形成するための高分子弾性体としては、従来から銀付調の樹脂表皮層の形成に用いられているポリウレタンやアクリル系弾性体等を用いることができる。なお、銀付調の樹脂表皮層は、光透過性皮革調シートの透光部の全光線透過率が高めるために透明性を有することが好ましい。
【0072】
樹脂表皮層を形成するための高分子弾性体の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等の各種ポリウレタンや、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル弾性体、合成ゴム等が挙げられる。これらの高分子弾性体は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリウレタンが耐磨耗性や耐屈曲性等の機械物性が優れる点から好ましい。また、ポリウレタンの中では、光源からの光照射による黄変を抑制するために、耐黄変性に優れたポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンが特に好ましい。また、高分子弾性体には、樹脂表皮層の黄変を抑制するために、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系の紫外線吸収剤やHALS、フェノール系酸化防止剤等を含有させることが好ましい。
【0073】
樹脂表皮層の厚みは、特に限定されないが、例えば、20〜200μm程度であることが、機械的特性と風合いとのバランスに優れた銀付皮革調シートが得られる点から好ましい。
【0074】
また、起毛皮革調シートを形成する方法としては、繊維基材の表面をバフィング処理することにより起毛処理されたスエード調やヌバック調の加飾面を形成する方法が挙げられる。バフィング処理は繊維基材の表面をサンドペーパー等を用いて繊維を起毛する処理である。
【0075】
このようにして革に似せた皮革調シートが得られる。皮革調シートには、製造される光透過性皮革調シートの種類に応じて必要に応じて、加飾面を形成する面に対する他の一面に次のような加工がさらに施される。
【0076】
例えば、
図1で示した皮革調発光シート10の場合、遮光層3が設けられている。遮光層は、繊維基材の遮光性を補うための層である。繊維基材のみで充分な遮光性を保持させるためには比較的に厚い厚さが要求される。このような場合において、遮光層を設けることにより、繊維基材を薄くしても遮光性を確保できる。皮革調発光シート10の場合、繊維基材1の透光部L1を除く非透光部に対応する領域に遮光層3が形成されている。
【0077】
このような遮光層は、例えば、繊維基材の一面に、着色剤を含有する樹脂シートを接着剤や両面テープで接着したり、繊維基材に着色剤を含有する塗液をコーティングして乾燥したりすることにより形成される。また、遮光性を有する接着剤や両面テープを用いることのみにより、遮光層を形成してもよい。
【0078】
着色剤を含有する樹脂シートの具体例としては、例えば、着色剤としてカーボンブラックや酸化チタン等の隠蔽性の高い顔料を含有する樹脂シートが挙げられる。また、樹脂シートとしては、可撓性を有するエラストマーのシートであることが皮革調発光シートの可撓性を維持することができる点から好ましい。樹脂シートの厚さは特に限定されないが、10〜600μm、さらには20〜300μm程度であることが好ましい。
【0079】
繊維基材にコーティングされる、着色剤を含有する塗液としては、ポリウレタン等の高分子弾性体及び着色剤を含有する液状コーティング液が挙げられる。液状コーティング液の粘度としては3000〜10000mPa・sec程度であることが、繊維基材への浸透を抑制することができる点から好ましい。また、このような塗液を乾燥して形成される膜の厚さとしては10〜600μm、さらには20〜300μm程度であることが好ましい。
【0080】
例えば、
図1で示した皮革調発光シート10の場合、透光部Cが一部分に形成されている。そして、繊維基材1の透光部L1に対応する領域の薄肉部Cは、透光部L1の周囲の非透光部の領域よりも薄く形成されている。また、透光部L1に対応する領域には遮光層3が形成されておらす、透光部Lを除く非透光部に対応する領域のみに遮光層3が形成されている。このように透光部を部分的に形成することにより、所望の意匠を発光表示する光透過性皮革調シートが得られる。
【0081】
このような透光部L1に対応する薄肉部C及び透光部L1に対応する領域を除く周囲のみに遮光層3を形成する方法としては、繊維基材の一面の全面に遮光層を形成した後、例えばレーザーカッター等を用いて所望の意匠のパターンに沿って、遮光層及び繊維基材を所望の透光性を示す厚さになるまで切削する方法が挙げられる。なお、上述したような極細繊維の不織布を含む繊維基材は、その見かけ密度を向上させやすいために、細い線幅を有する意匠のパターンを正確に切削しやすい点から特に好ましい。薄肉部の厚さは、繊維基材の種類や目的とする透光性等に応じて適宜設定されるが、具体的には、例えば、100〜1000μm、さらには200〜800μm程度であることが好ましい。
【0082】
皮革調シートに対して、加飾面を形成する面に対する他の一面に発光部材を配する。例えば、
図1で示した皮革調発光シート10の場合、繊維基材1の樹脂表皮層2が形成された面の他の一面を覆うように、その面に透明接着層6を介して導光体4が接合されている。
【0083】
皮革調シートの加飾面を形成する面に対する他の一面に導光体を配する方法としては、例えば、拡散材を含有する透明樹脂フィルムを他の一面側に透明接着剤で接着する方法や、インモールド成形用金型のキャビティに皮革調シートの加飾面がキャビティ表面に対向するように配置し、拡散材を含有する透明樹脂をキャビティ内に射出する射出成形により、透明樹脂成形体を成形する方法が挙げられる。また、透明樹脂フィルムや透明樹脂成形体に拡散材を含有させる代わりに、繊維基材と接合する面に対する反対側の面に拡散板を配置してもよい。
【0084】
透明樹脂フィルムや透明樹脂成形体を形成する透明樹脂としては、耐光性に優れる透明性樹脂であれば特に限定なく用いられる。このような透明性樹脂の具体例としては、ポリメチルメタクリレートのような透明アクリル系樹脂や、メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)のブロック共重合体である透明性のアクリル系熱可塑性エラストマー(例えば、(株)クラレ製の商品名クラリティ等)や透明ポリウレタン等の透明エラストマー、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの中では、透明性のアクリル系熱可塑性エラストマーが柔軟性及び耐光性に優れ、成形性及び接着性にも優れる点から特に好ましい。また、透明樹脂に分散される拡散材の具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ガラスパウダー、酸化チタン等が挙げられる。
【0085】
導光体となる透明樹脂フィルムや透明樹脂成形体の厚さは、端面等に配置される光源から発光された光を取り込んで導光体内で拡散させ、導かれた光を面発光させて繊維基材の一面に出射できるような厚みであれば特に限定されない。具体的には、例えば、0.05〜10mm、さらには0.1〜5mm程度であることが好ましい。
【0086】
透明樹脂フィルムを他の一面側に透明接着剤で接着する方法により導光体を形成する場合、透明接着剤としては、硬化時に透明樹脂フィルムの屈折率に近い屈折率を有するような接着層を形成できる接着剤が好ましく用いられる。このような接着剤の具体例としてはポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、アクリル系、酢酸ビニル系、ポリスチレン系、エポキシ系等の透明接着剤が挙げられる。このとき、接着層の厚みは、光源から導かれた光を繊維基材の一面に出射できるような厚みであれば特に限定されない。具体的には、例えば、10〜600μm、さらには20〜300μm程度であることが好ましい。また、繊維基材としては、極細繊維の不織布及び高分子弾性体を含有する見かけ密度0.50g/cm
3以上の繊維基材を用いることが好ましい。このような緻密な繊維基材を用いて接着した場合には、繊維基材の内層にまで透明接着剤が浸透せず、表層以外の部分のしなやかな繊維の風合いが維持されて、硬い風合いにならない点から好ましい。また、伸びにくく、寸法安定性も高いために、透明樹脂フィルムを貼り合せたときの寸法の狂いが少なくなる。
【0087】
一方、インモールド成形用金型のキャビティに皮革調シートの加飾面がキャビティ表面に対向するように配置し、拡散材を含有する透明樹脂をキャビティ内に射出する射出成形により、透明樹脂成形体を成形する方法により導光体を形成する場合、繊維基材としては、極細繊維の不織布及び高分子弾性体を含有する見かけ密度0.50g/cm
3以上の繊維基材を用いることが好ましい。このような緻密な繊維基材を用いてインモールド成形した場合には、繊維基材の内層にまで透明樹脂が浸透せず、表層のみで透明樹脂成形体を一体化させることができるために、表層以外の部分のしなやかな繊維の風合いが維持されて、硬い風合いにならない点から好ましい。なお、繊維基材の表層とは、繊維基材の全厚みに対して50%未満、さらには30%未満の厚みの領域であることが好ましい。
【0088】
光透過性皮革調シートに、導光体に光を照射する少なくとも一つの光源を配置することにより、光源が発光したときには表面の少なくとも一領域が発光し、光源が発光していないときには表面が皮革調の外観を呈する皮革調発光シートが得られる。
【0089】
光源は特に限定されないが、少なくとも一つの発光ダイオード(LED)が好ましくは用いられる。LEDの形態の具体例としては、例えば、ドーム型LEDや、SMT型LED、チップオンボード型LED等が特に限定なく用いられる。
【0090】
また、配置されるLEDの個数は一つ以上であれば特に限定されないが、例えば、色の3原色を形成する赤色(R)、緑色(G)〜黄色(Y)、及び青色(B)のそれぞれの色を発光する3つのLEDを配置した場合、各色の発光強度を調整して混色させることにより、色座標上の幅広い範囲の色の光を形成することができる。
【0091】
導光体に光を照射する少なくとも一つの光源を配置する方法としては、導光体の端面に光源を装着するための凹部を形成し、光源の発光が導光体内に指向するようにその凹部に光源を挿入し、凹部に透明接着剤を充填して固定する方法や、導光体の底面に光源を装着するための凹部を形成し、光源の発光が導光体内に指向するようにその凹部に光源を挿入し、凹部に透明接着剤を充填して固定する方法等、光源から発光された光を導光体内に取り込んで、導かれた光を繊維基材の一面に出射できる限り特に限定されない。
【0092】
また、光源と光源の発光を導く導光体とを備える発光部材に代えて、上述したような画像表示装置を発光部材として用いてもよい。
【0093】
本発明に係る皮革調発光シートは、好ましくは可撓性を有する。可撓性を有する場合にはリストバンドタイプのウェアラブル端末のような耐屈曲性が要求されるような用途に好ましく用いることができる。可撓性に優れた皮革調発光シートを得るためには、具体的には、20%強力が20kg/2.5cm以下、さらには15kg/2.5cm以下であるような光透過性皮革調シートを用いることが好ましい。
【0094】
図9は、本発明に係る皮革調発光シートを用いた皮革調発光ベルトの一例として、リストバンドタイプのウェアラブル端末90を説明するための模式説明図である。ウェアラブル端末90は、人の腕に巻かれて、人に必要とされる情報を提示したり、人の健康情報をセンサにより入手したりするための端末である。
図9においては、皮革調発光シート91の内部に図略の画像表示装置が埋め込まれている。そして、画像表示装置が発光することにより形成された画像(
図9においては23:30の時刻表示)が表示部32に浮き出るように現れる。一方、画像表示装置をオフにした場合には皮革調の外観になり、画像表示装置が視認されなくなるか視認されにくくなる。また、スイッチ25は、表示部32に表示される情報を変更する等、ウェアラブル端末90の所定の諸機能を操作できる。
【0095】
表示部32からは、人に必要とされる情報として、時間や心拍数データ等の健康情報データを提示することができる。時間や心拍数データは予め関連付けられた模様や光の色、意匠等によって間接的な表現で表示されていてもよい。
【0096】
本発明に係る皮革調発光シートは、上述したようなウェアラブル端末の他、発光部を設けうる用途の素材として、特に限定なく用いられる。具体的には、例えば、発光または情報表示可能な内装材等の用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0098】
[実施例1]
海成分の熱可塑性樹脂としてエチレン変性ポリビニルアルコール、島成分の熱可塑性樹脂としてTgが110℃である、イソフタル酸変性したポリエチレンテレフタレートを、それぞれ個別に溶融させた。そして、海成分中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成しうるような、多数のノズル孔が並列状に配置された複数紡糸用口金に、それぞれの溶融樹脂を供給した。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。そして、口金温度260℃に設定されたノズル孔より吐出させた。
【0099】
そして、ノズル孔から吐出された溶融繊維を平均紡糸速度が3700m/分となるように気流の圧力を調節したエアジェット・ノズル型の吸引装置で吸引することにより延伸し、平均繊度が2.1dtexの海島型複合長繊維を紡糸した。紡糸された海島型複合長繊維は、可動型のネット上に、ネットの裏面から吸引しながら連続的に堆積された。そして、表面の毛羽立ちを抑えるために、ネット上の堆積された海島型複合長繊維を42℃の金属ロールで軽く押さえた。そして、海島型複合長繊維をネットから剥離し、表面温度75℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させることにより、線圧200N/mmで熱プレスした。このようにして、長繊維ウェブが得られた。
【0100】
次に、得られた長繊維ウェブの表面に、帯電防止剤を混合した油剤をスプレー付与した後、クロスラッパー装置を用いて長繊維ウェブを10枚重ねて重ね合せウェブを作成し、更に、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、重ね合せウェブをニードルパンチングすることにより三次元絡合処理した。
【0101】
得られた絡合ウェブは、以下のようにして湿熱収縮処理されることにより、緻密化された。具体的には、18℃の水を絡合ウェブに対して10質量%均一にスプレーし、温度70℃、相対湿度95%の雰囲気中で3分間張力が掛からない状態で放置して熱処理することにより湿熱収縮させて見かけの繊維密度を向上させた。そして、絡合ウェブをさらに緻密化するために乾熱ロールプレスした。
【0102】
次に、緻密化された絡合ウェブに、ポリウレタンを以下のようにして含浸させた。ポリカーボネート/エーテル系ポリウレタンを主体とするポリウレタンエマルジョン(固形分濃度30%)を緻密化された絡合ウェブに含浸させた。そして、150℃の乾燥炉で水分を乾燥し、さらに非発泡ポリウレタンを架橋させた。このようにして、非発泡ポリウレタン/絡合ウェブの質量比が18/82のポリウレタン絡合ウェブ複合体を形成した。
【0103】
次に、ポリウレタン絡合ウェブ複合体を95℃の熱水中に20分間浸漬することにより海島型複合長繊維に含まれる海成分を抽出除去し、120℃の乾燥炉で乾燥し、スライス及び研削することにより、厚さ約0.28mmに調整した繊維基材を得た。
【0104】
得られた繊維基材に含有される極細繊維の不織布の見かけ密度は0.500g/cm
3であり、目付は140g/cm
2であった。また、極細繊維の繊度は0.08dtexであった。また、JIS−K7136に規定される全光線透過率(%)測定法に準拠して全光線透過率を測定したところ、23.3%であった。また、「2000年JIS L 1906 一般長繊維不織布試験方法」に準じて、引張試験機を用いてS−S曲線を取得し、20%引張強力を測定したところ、不織布の製造時のテンションの掛かった方向を縦方向とし、縦方向に垂直な方向を横方向とした場合、タテ方向6.5kg/2.5cm、横方向2.4kg/2.5cmであった。結果を下記表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
[実施例2〜5及び比較例1]
表1に記載のように目付及び厚さを調製した以外は実施例1と同様にして繊維基材を得、評価した。結果を表1に示す。
【0107】
表1の結果から、厚さ0.70mm以下の実施例1〜5の繊維基材は光透過性を有していたのに対し、厚さ1.50mmの比較例の繊維基材は光透過性を有しないことがわかる。