特許第6415299号(P6415299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415299
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20181022BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20181022BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20181022BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   B24B53/00 K
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
   B24B49/12
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-255792(P2014-255792)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-112674(P2016-112674A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】松山 敏文
【審査官】 上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−069277(JP,A)
【文献】 特開2003−165053(JP,A)
【文献】 特開2003−211354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00−53/14
B24B 27/06
B24B 49/12
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、回転駆動されるスピンドルと該スピンドルの先端部に装着された切削ブレードを有し、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段と、該スピンドルを該スピンドルの回転軸と平行なY軸方向に移動させるY軸移動手段と、該スピンドルを該チャックテーブルの保持面に対して接近及び離反させる方向のZ軸方向に移動させるZ軸移動手段と、該Y軸方向及び該Z軸方向と直交し切削送り方向であるX軸方向に該チャックテーブルを移動させるX軸移動手段と、を備えた切削装置であって、
該Y軸移動手段による該切削ブレードの移動経路上の該スピンドルの直下の該ベースに固定されたドレスボード支持手段を更に備え、
該ドレスボード支持手段は、
対向配置された発光素子と受光素子との間に該Z軸移動手段により下降して侵入する該切削ブレードが該発光素子からの光を遮蔽する量に基づいて、該切削ブレードの刃先の位置を検出する非接触セットアップ機構を選択的に覆う保護カバーから構成されるとともに、該保護カバーの上面に該ドレスボードが装着され、
該ドレスボード支持手段に支持されたドレスボードに該切削ブレードが該Z軸移動手段で切り込むことで該切削ブレードをドレッシングすることを特徴とする切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレスボードを支持するドレスボード支持手段を有する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが格子状に形成された分割予定ラインによって区画されて表面に形成された半導体ウェーハは、切削ブレードを備えた切削装置によって個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に広く利用されている。
【0003】
切削装置は、ウェーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウェーハを切削する切削ブレードを回転可能に支持する切削手段と、切削すべき領域を検出するアライメント手段とを備えていて、ウェーハを高精度に個々のデバイスに分割することができる。
【0004】
切削ブレードの切刃は一般的にダイアモンド砥粒がニッケルメッキで固定されて形成されている。ところで、スピンドルの軸心とスピンドルに装着された切削ブレードの回転中心が僅かに偏心していると、切削ブレードを装着したスピンドルを高速回転した際に、切削ブレードがスピンドルの軸心と直交する方向、即ち切り込み方向に振動する。
【0005】
このように、切削ブレードが振動した状態で分割予定ラインに沿ってウェーハを切削すると、切削溝の両側に比較的大きい欠け(チッピング)が発生してデバイスの品質を低下させるという問題がある。このため、切削ブレードを新たな切削ブレードに交換した際には、切削ブレードの外周を修正する真円出しドレッシングを実施している。
【0006】
また、切削ブレードは切削を継続すると外周が先細りとなり、この状態で切削を続行するとデバイス側面の形状精度を悪化させるという問題がある。これを防止するため、定期的に切削ブレードの外周を修正する外径修正ドレッシングを実施している。更に、切削ブレードは切削を継続すると目つぶれが生じて切削能力が低下するため、定期的に目立てドレッシングを実施している。
【0007】
しかし、切削加工中に切削ブレードの目詰まりや目つぶれが発生した場合には、切削加工中でもドレッシングを行う必要があり、チャックテーブルに保持された被加工物とドレスボードを交換せずにドレッシングが実施できるよう、チャックテーブルに隣接してドレッシング専用のドレステーブルを設置した切削装置が開発されている(例えば、特開2000−49120号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−49120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
切削ブレードのドレッシングを実施する際、通常はドレスボードを切削送りしつつ切削ブレードでドレスボードに切り込み、切削ブレードを強制的に消耗させるが、ドレッシングが完了するまで10ライン以上の切削を要するため、ドレッシングのために時間がかかるという問題があった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比較的短時間で切削ブレードのドレッシングを実施できる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、ベースと、被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、回転駆動されるスピンドルと該スピンドルの先端部に装着された切削ブレードを有し、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削手段と、該スピンドルを該スピンドルの回転軸と平行なY軸方向に移動させるY軸移動手段と、該スピンドルを該チャックテーブルの保持面に対して接近及び離反させる方向のZ軸方向に移動させるZ軸移動手段と、該Y軸方向及び該Z軸方向と直交し切削送り方向であるX軸方向に該チャックテーブルを移動させるX軸移動手段と、を備えた切削装置であって、該Y軸移動手段による該切削ブレードの移動経路上の該スピンドルの直下の該ベースに固定されたドレスボード支持手段を更に備え、該ドレスボード支持手段は、対向配置された発光素子と受光素子との間に該Z軸移動手段により下降して侵入する該切削ブレードが該発光素子からの光を遮蔽する量に基づいて、該切削ブレードの刃先の位置を検出する非接触セットアップ機構を選択的に覆う保護カバーから構成されるとともに、該保護カバーの上面に該ドレスボードが装着され、該ドレスボード支持手段に支持されたドレスボードに該切削ブレードが該Z軸移動手段で切り込むことで該切削ブレードをドレッシングすることを特徴とする切削装置は提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の切削装置によると、Y軸移動手段による切削ブレードの移動経路上のスピンドルの直下のベースに、ドレスボード支持手段を固定したため、ドレスボード支持手段に支持されたドレスボードに切削ブレードが所謂チョッパーカットで切り込むことでドレッシングを行うので、ドレッシング工程が非常に短時間で終了できるという効果を奏する。
【0014】
また、チャックテーブルとは別にドレスボード支持手段が設けられているため、被加工物の搬出入やアライメントのタイミングで切削ブレードのドレッシングを実施することができ、工程に無駄がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明実施形態に係る切削装置の斜視図である。
図2図1に示した切削装置の要部平面図である。
図3】切削工程からドレッシング工程へ移る動作を説明する側面図である。
図4図4(A)は保護カバーを閉じた状態のドレスボード支持ユニットの斜視図、図4(B)は保護カバーを開けた状態のドレスボード支持ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態に係る切削装置2の斜視図が示されている。4は切削装置2のベースであり、ベース4上にはチャックテーブル8が回転可能且つ図示しない切削送り機構(X軸移動機構)によりX軸方向に往復動可能に配設されている。
【0017】
チャックテーブル8の周囲には複数のクランプ9及びウォーターカバー10が配設されており、このウォーターカバー10とベース4にわたり切削送り機構の軸部を保護するための蛇腹12が連結されている。
【0018】
ベース4の後方には門型形状のコラム14が立設されている。コラム14にはY軸方向に伸長する一対のガイドレール16が固定されている。コラム14には更に、Y軸移動ブロック18がボールねじ20と図示しないパルスモータとからなる割り出し送り機構(Y軸移動機構)22によりガイドレール16に沿ってY軸方向に移動可能に搭載されている。
【0019】
Y軸移動ブロック18にはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール24が固定されている。Y軸移動ブロック18上には、Z軸移動ブロック26がボールねじ28とパルスモータ30とからなるZ軸移動機構32によりガイドレール24に案内されてZ軸方向に移動可能に搭載されている。
【0020】
Z軸移動ブロック26には切削ユニット34が取り付けられており、切削ユニット34のスピンドルハウジング36内にスピンドル37(図3参照)が回転可能に収容されており、スピンドル37の先端部に切削ブレード38が装着されている。切削ブレード38の概略上半分はブレードカバー40により覆われている。切削ユニット34のスピンドルハウジング36には撮像ユニット42が取り付けられている。
【0021】
図1及び図2を合わせて参照すると明らかなように、Y軸移動機構22による切削ブレード38の移動経路上のスピンドル37の直下のベース4の側壁4aには、ドレスボード支持ユニット44が固定されている。ドレスボード支持ユニット44上にはドレスボード46が搭載されている。
【0022】
図2を参照すると、チャックテーブル8の保持面8a上にダイシングテープTを介してウェーハ等の被加工物11が保持された状態の平面図が示されている。ダイシングテープTの外周は環状フレームFに貼着され、環状フレームFはクランプ9によりクランプされて固定されている。チャックテーブル9に保持されたウェーハ11はX方向に往復動し、切削ユニット34はY方向に往復動可能に配設されている。
【0023】
図4(A)を参照すると、カバー62を閉じた状態のドレスボード支持ユニット44の斜視図が示されている。図4(B)はカバー62を開いた状態のドレスボード支持ユニット44の斜視図である。本実施形態のドレスボード支持ユニット44は、非接触セットアップ機構48のカバー62を利用したものである。
【0024】
図4(B)に示すように、非接触セットアップ機構48の取り付け部材50は水平部50aと垂直部50bとを有しており、取り付け部材50は、図3に最も良く示されるように、ベース4の壁部4aに固定されている。
【0025】
取り付け部材50の垂直部50bの先端はブレード侵入部52を画成するU形状に形成されており、このブレード侵入部52を挟んで発光部54と発光部54からの光を受光する受光部56が配設されている。発光部54は図示しない光ファイバーを介して光源に接続されており、受光部56は図示しない光ファイバーを介してフォトダイオード等の光電変換部に接続されている。
【0026】
取り付け部材50の水平部50aには、発光部54及び受光部56の端面に恒温調整された洗浄水を供給する洗浄水供給ノズル58a,58bと、発光部54及び受光部56の端面にエアを供給するエア供給ノズル60a,60bが配設されている。
【0027】
取り付け部材50の垂直部50bには、ヒンジ64を介して保護カバー62が回動可能に取り付けられている。取り付け部材50、保護カバー62及びヒンジ64は例えばSUS等の金属から形成されており、保護カバー62はヒンジ64及び取り付け部材50を介してベース4に接地されている。
【0028】
図4(B)に示した保護カバー62を開いた状態から、保護カバー62を矢印A方向に回転すると、図4(A)に示すように、非接触セットアップ機構48が保護カバー62により覆われる。
【0029】
この時、保護カバー62の上面62aに装着されたドレスボード46がドレッシング可能状態に露出される。図4(A)で保護カバー62を矢印A方向に回転すると、図4(B)に示すように、非接触セットアップ機構48が露出され、切削ブレード38のセットアップが可能となる。
【0030】
次に、図3を参照して、切削ブレード38のドレッシング作業について説明する。まず、図3(A)に示すように、切削ブレード38がチャックテーブル8に保持されたウェーハ11の図示しない分割予定ライン(ストリート)にダイシングテープTに至るまで切り込み、チャックテーブル8をX軸方向に切削送りすることにより、ウェーハ11を切削する。切削ユニット34をY軸方向に分割予定ラインのピッチずつ割り出し送りすることにより、第1の方向に伸長する全ての分割予定ラインを切削する。
【0031】
次いで、チャックテーブル8を90°回転してから、第1の方向に直交する第2の方向に伸長する全ての分割予定ラインに同様な切削溝を形成して、ウェーハ11を個々のデバイスチップに分割する。
【0032】
切削ブレード38によるウェーハ11の切削を継続すると、切削ブレード38の目詰まりや目つぶれが生じたり、切削ブレード38の外周が先細り状態になったりする。このような場合には、切削ブレード38のドレッシングを行う必要がある。
【0033】
このドレッシングを実施するには、図3(B)に示すように、切削ユニット38をY軸方向に移動して、切削ブレード38をドレスボード46の直上に位置づける。そして、切削ブレード38を高速で回転させながら下降させて、図3(C)に示すように、静止状態のドレスボード46に所定深さ切り込む。
【0034】
即ち、切削ブレード38でドレスボード46のチョッパーカットを実施する。チョッパーカットとは、静止している被加工物に切削ブレード38を所定深さ切り込ませる切削方法である。
【0035】
このチョッパーカットに対して、被加工物を切削送りしながら切削ブレード38で切削する加工方法をトラバースカットと称する。トラバースカットに比較して、チョッパーカットの方が切削ブレード38に対する抵抗が大きくなり易いため、切削ブレード38の刃先に僅かに付着した金属を除去したり、僅かな目つぶれの解消に効果的であり、2〜3回程度のチョッパーカットの実施で十分なドレッシング効果を上げることができる。
【0036】
上述したように、保護カバー62はヒンジ64及び取り付け部材50を介してベース4に接地されているため、切削ブレード38を降下させて保護カバー62の上面62aに接触させて、切削ブレード38の図示しない接触セットアップ機構に通電することにより、切削ブレード38の接触セットアップを実施できる。これにより、ドレッシング時の切削ブレード38のドレスボード46への切り込み量を正確に制御することができる。
【0037】
ドレッシング終了後、切削ブレード38の非接触セットアップを実施したい場合には、図4(B)に示すように、保護カバー62を開けて非接触セットアップ機構48を露出させる。
【0038】
これにより、チョッパーカットによる切削ブレード38のドレッシングが終了したならば、非接触セットアップ機構48ですぐさま切削ブレード38の消耗量の測定が実施でき、非常に短時間で切削ブレード38のドレッシング及びドレッシング終了後の消耗量の測定を実施できる。
【0039】
本実施形態では、チャックテーブル8と独立して、ドレスボード支持ユニット44がベース4に固定されているため、被加工物の搬出入やアライメントのタイミングで切削ブレード38のドレッシングを実施することができ、無駄な工程を省くことができる。
【符号の説明】
【0040】
2 切削装置
4 ベース
8 チャックテーブル
11 ウェーハ
34 切削ユニット
38 切削ブレード
44 ドレスボード支持ユニット
46 ドレスボード
48 非接触セットアップ機構
50 取り付け部材
54 発光部
56 受光部
62 保護カバー
図1
図2
図3
図4