特許第6415397号(P6415397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415397
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】分散アレーアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20181022BHJP
   H01Q 21/00 20060101ALI20181022BHJP
【FI】
   H01Q1/52
   H01Q21/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-121922(P2015-121922)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-11353(P2017-11353A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】宗 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】須崎 皓平
(72)【発明者】
【氏名】五藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義規
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆利
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−044596(JP,A)
【文献】 実開昭52−098348(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00− 3/46
H01Q 15/00− 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレー状に配置された複数のアンテナと、前記複数のアンテナのメインローブ方向が同相合成となり、かつ、サイドローブ方向が抑圧されるように、各アンテナで送受信される信号の位相および振幅を制御するアレーアンテナ制御部と、を有する分散アレーアンテナ装置であって、
少なくとも1つのアンテナに設けられたレドームと、
前記レドームの一部に配置され、送受信される周波数の信号を減衰させる構造体と、
前記アンテナと前記構造体との相対位置変化するように前記レドームを移動させる可動機構と
対向する通信局の方向に対する所望のサイドローブを抑圧可能な前記相対位置の情報を予め保持する記憶部と、
前記通信局の方向を取得し、前記記憶部に保持された前記情報に基づいて、前記所望のサイドローブが抑圧されるように前記可動機構を制御する構造体位置制御部と
を有することを特徴とする分散アレーアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分散アレーアンテナ装置において、
前記構造体は、固有のパターンを周期的に配列した構造である
ことを特徴とする分散アレーアンテナ装置。
【請求項3】
請求項に記載の分散アレーアンテナ装置において、
前記構造体の固有のパターンは、金属および誘電体により形成される
ことを特徴とする分散アレーアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の分散アレーアンテナ装置において、
少なくとも1つの前記レドームに複数の前記構造体を配置する
ことを特徴とする分散アレーアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の分散アレーアンテナ装置において、
前記アンテナは、追尾機構を有するパラボラアンテナである
ことを特徴とする分散アレーアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散アレーアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムのブロードバンド化に対応して、衛星通信システムに使用するアンテナ装置の高利得化が必要になっている。高利得のアンテナ装置は大型化により実現できるが、アンテナ装置の大型化による設置場所やコストの増大が問題となる。この問題を解決する方法として、複数のアンテナをアレー状に配置し、受信端で同相合成できるように送信信号の位相および振幅を制御する分散アレーアンテナ装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5606217号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】五藤 大介, 山下 史洋, 須崎 皓平, 宗 秀哉, 小林 聖, "分散アレーにおける送信EIRPを改善するオフセットアンテナ配置方法の提案," 2015年電子情報通信学会総合大会, B-1-219, 2015年3月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の分散アレーアンテナ装置は、受信端で同相合成できるように送信信号の位相および振幅を制御することにより、メインローブ方向の電力を増大させることが可能である。しかし、サイドローブ方向の電力がメインローブ方向と同様に同相合成されるため、メインローブの電力増加量と同等の電力がサイドローブ方向でも増加する。このため、増大したサイドローブ方向に、同一周波数帯域を使用する別のアンテナ装置が存在する場合、サイドローブ方向の電力の増大により、当該アンテナ装置に与える干渉が増大するという問題が生じる。
【0006】
そこで、分散アレーアンテナ装置により増大するサイドローブの抑圧方法が検討されている(例えば非特許文献1参照)。この方法は、サイドローブが発生する方向にアレーファクタのヌルまたは限りなく小さい値となるようにアンテナを配置する。しかし、このような分散アレーアンテナ装置を船や航空機などの移動体に適用する場合、アンテナの配置が固定されているため、受信端に対するアンテナの配置関係が移動局の進行方向により変化する。このため、受信端に対する移動局の向きによりサイドローブが増減してしまい、十分な抑圧効果が期待できない、という問題が生じる。
【0007】
上記課題に鑑み、本発明に係る分散アレーアンテナ装置は、受信端に対する移動局の向きにかかわらず同相合成によるメインローブ方向の電力を増大させながら、サイドローブ方向の電力を抑圧する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、アレー状に配置された複数のアンテナと、複数のアンテナのメインローブ方向が同相合成となり、かつ、サイドローブ方向が抑圧されるように、各アンテナで送受信される信号の位相および振幅を制御するアレーアンテナ制御部と、を有する分散アレーアンテナ装置であって、少なくとも1つのアンテナに設けられたレドームと、レドームの一部に配置され、送受信される周波数の信号を減衰させる構造体と、アンテナと構造体との相対位置変化するようにレドームを移動させる可動機構と、対向する通信局の方向に対する所望のサイドローブを抑圧可能な相対位置の情報を予め保持する記憶部と、通信局の方向を取得し、記憶部に保持された情報に基づいて、所望のサイドローブが抑圧されるように可動機構を制御する構造体位置制御部とを有することを特徴とする。
【0010】
の発明は、構造体は、固有のパターンを周期的に配列した構造であることを特徴とする。
【0011】
の発明は、構造体の固有のパターンは、金属および誘電体により形成されることを特徴とする。
【0013】
の発明は、少なくとも1つのレドームに複数の構造体を配置することを特徴とする。
【0014】
の発明は、アンテナは、追尾機構を有するパラボラアンテナであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る分散アレーアンテナ装置は、受信端に対する移動局の向きにかかわらず同相合成によるメインローブ方向の電力を増大させながら、サイドローブ方向の電力を抑制して他のアンテナ装置への干渉等を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る分散アレーアンテナ装置の一例を示す図である。
図2】2台の分散アレーアンテナ装置の一例を示す図である。
図3】分散アレーアンテナ装置の適用例を示す図である。
図4】レドーム回転角度制御部の一例を示す図である。
図5】構造体の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る分散アレーアンテナ装置の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る分散アレーアンテナ装置100の一例を示す。分散アレーアンテナ装置100は、アンテナ装置101(1)、アンテナ装置101(2)、・・・、アンテナ装置101(N)のN台(Nは2以上の整数)のアンテナ装置を有する。
【0019】
アンテナ装置101(1)は、パラボラアンテナ201(1)、構造体202(1)、レドーム203(1)およびレドーム回転機構204(1)を有する。同様に、アンテナ装置101(2)は、パラボラアンテナ201(2)、構造体202(2)、レドーム203(2)およびレドーム回転機構204(2)を有し、アンテナ装置101(N)は、パラボラアンテナ201(N)、構造体202(N)、レドーム203(N)およびレドーム回転機構204(N)を有する。
【0020】
ここで、アンテナ装置101(1)、アンテナ装置101(2)およびアンテナ装置101(N)に共通の事項を説明する場合は、符号末尾の(番号)を省略してアンテナ装置101と表記する。パラボラアンテナ201(1)、パラボラアンテナ201(2)およびパラボラアンテナ201(N)についても同様に表記する。また、構造体202(1)、構造体202(2)および構造体202(N)と、レドーム203(1)、レドーム203(2)およびレドーム203(N)と、レドーム回転機構204(1)、レドーム回転機構204(2)およびレドーム回転機構204(N)についても同様に表記する。
【0021】
図1において、分散アレーアンテナ装置100は、アレー状に配置されたN台のアンテナ装置101、アレーアンテナ制御部102、変復調部103およびレドーム回転角度制御部104を有する。なお、本実施形態では、レドーム回転角度制御部104がレドーム回転機構204を制御してレドーム203に配置された構造体202のパラボラアンテナ201に対する位置を変える例について説明するが、分散アレーアンテナ装置100が移動体に搭載されていない場合は、レドーム回転角度制御部104を設けずに、レドーム回転機構204を手動で回転させて調整するようにしてもよい。
【0022】
アレーアンテナ制御部102は、N台のアンテナ装置101のそれぞれのパラボラアンテナ201で送受信する信号の振幅および位相を制御して、分散アレーアンテナ装置100全体の指向特性におけるメインローブ方向を所定方向に調整することができる。例えば、アレーアンテナ制御部102は、各パラボラアンテナ201から送信する信号の位相および振幅を調整し、各パラボラアンテナ201のメインローブ方向の誤差を補償して所定方向における位相が空間で同相合成されるように制御する。これにより、メインローブ方向における等価等方輻射電力(EIRP:Equivalent Isotropic Radiated Power)を増大することができる。また、分散アレーアンテナ装置100が船舶などの移動体に設置されている場合に、アレーアンテナ制御部102の制御により、対向する通信局との相対位置の変化に応じてメインローブ方向の調整を行うことができる。なお、各パラボラアンテナ201は、アンテナ本体(反射器および放射器)を仰角方向に回転する調整機構と、パラボラアンテナ201の周囲を回転させる回転機構とを有し、アンテナ本体を通信局の方向に向ける機械的な追尾機能を有する。ここで、追尾機能は、分散アレーアンテナ装置100が船舶などの移動体に設置されている場合に、GPS(Global Positioning System)やジャイロにより受信端(対向局)との相対位置の変化を計算し、パラボラアンテナ201の方向を調整する。そして、分散アレーアンテナ装置100は、パラボラアンテナ201毎の追尾機能により、各パラボラアンテナ201の放射方向を対向する通信局方向に向けると共に、アレー制御によりアレーアンテナ全体のメインローブが受信端の通信局で同相合成されるように調節する。
【0023】
変復調部103は、外部に接続される通信装置(不図示)との間で入出力する送受信データを変調または復調する処理を行う。例えば送信の場合、変復調部103は、外部に接続される通信装置から受け取る送信データを変調してアレーアンテナ制御部102に出力する。逆に受信の場合、変復調部103は、アレーアンテナ制御部102から受け取る受信データを復調して外部に接続される通信装置に出力する。
【0024】
パラボラアンテナ201は、放射器と反射器とを有し、反射器の焦点位置に配置された放射器により信号を送受信するアンテナである。なお、本実施形態では、パラボラアンテナ201を用いているが、他の種類のアンテナを用いてもよい。
【0025】
構造体202は、パラボラアンテナ201で送受信される信号の経路(放射方向)のレドーム203上に配置され、パラボラアンテナ201で送受信される周波数の信号を減衰させる特性を有する。例えば、構造体202は、金属や誘電体を周期的に配列した部材が用いられる。なお、図1の例では、構造体202は、N台のアンテナ装置101の全てに配置されているが、N台のアンテナ装置101のうち少なくとも1台のアンテナ装置101に配置されていてもよい。例えばアンテナ装置101(2)からアンテナ装置101(N)までの構造体202(2)から構造体202(N)までを除去して、アンテナ装置101(1)にのみ構造体202(1)を配置するようにしてもよい。また、構造体202は、レドーム203全体に配置されていてもよいし、1つのレドーム203に複数の構造体202が配置されてもよい。或いは、レドーム203毎に配置する構造体202の枚数が異なってもよい。さらに、1つのレドーム203に複数の構造体202が配置される場合、各構造体202に使用されるパターンや材質が異なっていてもよい。
【0026】
レドーム203は、パラボラアンテナ201を風雨や積雪などから保護するカバーであって、構造体202よりもパラボラアンテナ201で送受信される周波数の信号に与える影響が少ない部材が用いられる。なお、本実施形態では、レドーム203が全てのパラボラアンテナ201に配置される場合について説明するが、構造体202を配置するパラボラアンテナ201だけにレドーム203を配置してもよい。
【0027】
レドーム回転機構204は、レドーム203をパラボラアンテナ201の周囲で回転させるための駆動部を有し、レドーム203上の構造体202が外部から指示された回転角に来るように調整する。レドーム回転機構204によるレドームの回転は、例えば追尾機能によるパラボラアンテナ201の方向調整とは独立して行われる。したがって、アンテナの放射方向と、レドーム203に設けられた構造体202との位置関係は、レドーム回転機構204により、調整可能である。なお、本実施形態では、キャップ状のレドーム203をパラボラアンテナ201の周囲で回転するようにしたが、例えばレドーム203を球体状にして仰角方向を含む任意の位置に構造体202を配置できるようにしてもよい。
【0028】
レドーム回転角度制御部104は、GPS(Global Positioning System)やジャイロを有し、分散アレーアンテナ装置100が船舶などの移動体に設置されている場合に、受信端(対向局)との相対位置の変化に応じてレドーム回転機構204を介してレドーム203を回転させ、パラボラアンテナ201に対する構造体202の位置を調整する。なお、レドーム回転角度制御部104は、各アンテナ装置101の位置や放射パターンを事前情報として保持する。また、レドーム回転角度制御部104は、分散アレーアンテナ装置100が搭載された移動局の移動方向や位置を、GPSなどによる位置情報により取得する機能を有する。これにより、レドーム回転角度制御部104は、分散アレーアンテナ装置100の放射方向を決めることができる。また、レドーム回転角度制御部104は、構造体202の位置に応じたアンテナ装置101毎の放射パターンを予め保持しており、移動局の位置に応じて所望のサイドローブが抑圧されるように、アンテナ装置101毎の構造体202の位置を求めることができる。
【0029】
このようにして、アンテナ装置101は、パラボラアンテナ201で送受信を行う方向に応じて信号を減衰させる構造体202を配置して、サイドローブを抑圧することができる。
[詳細例]
図2は、2台の分散アレーアンテナ装置100bの一例を示す。なお、図2は、図1に示した分散アレーアンテナ装置100のN=2の場合の例を示す。また、図2において、図1と同符号のブロックは図1のブロックと同一又は同様の機能を有する。
【0030】
図2において、アレーアンテナ制御部102は、合成/分配器301、位相器302(1)、位相器302(2)および位相振幅制御部303を有する。
【0031】
合成/分配器301は、送信時には、変復調部103が出力する変調信号を複数のアンテナ装置101(図2の例ではアンテナ装置101(1)側とアンテナ装置101(2)側と)にそれぞれ分配する。合成/分配器301は、受信時には複数(図2の例では2台)のアンテナ装置101が受信する信号を合成する。
【0032】
位相器302(1)は、送信時には、合成/分配器301が出力する変調信号の振幅と位相を調整し、パラボラアンテナ201(1)に調整後の変調信号を出力する。また、位相器302(1)は、受信時には、パラボラアンテナ201(1)が受信する信号の振幅と位相を調整し、合成/分配器301に調整後の信号を出力する。同様に、位相器302(2)は、送信時には、合成/分配器301が出力する変調信号の振幅と位相を調整し、パラボラアンテナ201(2)に調整後の変調信号を出力する。また、位相器302(2)は、受信時には、パラボラアンテナ201(2)が受信する信号の振幅と位相を調整し、合成/分配器301に調整後の信号を出力する。ここで、位相器302(1)および位相器302(2)に共通の事項を説明する場合は、符号末尾の(番号)を省略して位相器302と表記する。
【0033】
位相振幅制御部303は、各パラボラアンテナ201で送受信する信号の振幅および位相を制御して、分散アレーアンテナ装置100の指向特性を調整する。これにより、分散アレーアンテナ装置100が移動体に設置されている場合、位相振幅制御部303は、対向局との相対位置の変化に応じて指向方向を調整することができる。また、位相振幅制御部303は、指向方向の調整により、メインローブ方向においては同相合成を行い、かつサイドローブ方向においてはサイドローブを抑圧するように各パラボラアンテナ201に入出力する信号の位相および振幅を制御することができる。
【0034】
このように、本実施形態に係る分散アレーアンテナ装置100bは、サイドローブを抑圧するように各パラボラアンテナ201で送受信する信号の位相や振幅を調整する。しかし、サイドローブ方向の電力がメインローブ方向と同様に同相合成される場合、メインローブの電力増加量と同等の電力がサイドローブ方向でも増加する。このため、増大したサイドローブ方向に、同一周波数帯域を使用する別のアンテナ装置が存在する場合、サイドローブ方向の電力の増大により、当該アンテナ装置に与える干渉が増大するという問題が生じる。特に、分散アレーアンテナ装置100を船や航空機などの移動体に適用する場合、アンテナの配置が固定されているため、受信端に対するアンテナの配置関係が移動局の進行方向により変化する。このため、受信端に対する移動局の向きによりサイドローブが増減してしまい、サイドローブの抑圧が十分に得られない場合がある。そこで、本実施形態に係る分散アレーアンテナ装置100bは、パラボラアンテナ201が信号を送受信する経路上のレドーム203に信号を減衰させる構造体202を配置して、レドーム203に一体化された構造体202の位置を調整することにより、所望のサイドローブを抑圧する機能を有する。なお、構造体202の位置に応じて抑圧されるサイドローブの場所は予め実測または計算などにより分かっているものとし、構造体202の位置と抑圧されるサイドローブの場所との対応関係を示す情報は、分散アレーアンテナ装置100に予め保持されている。
【0035】
図3は、本実施形態に係る分散アレーアンテナ装置100の適用例を示す。
【0036】
図3において、分散アレーアンテナ装置100は、船舶などの移動局401に搭載され、陸上の通信局402との間で通信を行う。ここで、移動局401は、進行方向に応じて対向する通信局402の方向が変化するので、移動局401と通信局402との位置関係に応じて分散アレーアンテナ装置100のメインローブ方向を変える必要がある。本実施形態では、レドーム回転角度制御部104は、GPSやジャイロなどにより移動局401の位置や移動局401および受信端の相対位置の情報を取得し、相対位置の変化に応じて構造体202の位置を調整する。なお、各パラボラアンテナ201は、追尾機能により通信局402の方向を独立して追尾している。レドーム回転角度制御部104は、アンテナ装置101同士の位置関係やアンテナパターンを事前情報として保持し、構造体202の位置に応じたアンテナパターン特性を予め保持している。例えば分散アレーアンテナ装置100は、分散アレーアンテナ装置100に対する受信端の方向に対してサイドローブを抑圧可能な構造体202の設定位置の情報をテーブルなどにより予め保持しており、構造体202の位置を適切に調整することができる。
【0037】
ここで、抑圧すべきサイドローブは、例えば干渉を与える可能性がある他の通信局の方向のサイドローブである。なお、分散アレーアンテナ装置100は、他の通信局の位置情報を予め保持しており、どのサイドローブを抑圧すべきかを知ることができる。
【0038】
図4は、レドーム回転角度制御部104の一例を示す。図4において、レドーム回転角度制御部104は、位置検出部501、回転制御部502および記憶部503を有する。
【0039】
位置検出部501は、GPSやジャイロなどにより、分散アレーアンテナ装置100が設置されている移動局401の位置を検出する。
【0040】
回転制御部502は、位置検出部501が出力する移動局401の位置情報と、予め保持されたアンテナ装置101同士の位置関係や放射パターンなどの情報に応じて、構造体202の適切な位置を求める。そして、回転制御部502は、レドーム回転機構204を制御してレドーム203を回転させ、構造体202の位置を調整する。
【0041】
記憶部503は、対向する通信局402の位置情報や対向する通信局402の方向に応じた分散アレーアンテナ装置100のアンテナパターンの情報が予め記憶されている。特に、本実施形態では、対向する通信局402の方向(例えば分散アレーアンテナ装置100に対する角度θ)とレドーム203の回転角度との対応関係を示す情報が記憶されたテーブルが、アンテナ装置101毎に記憶部503に予め記憶されている。図4の例では、記憶部503には、アンテナ装置101(1)のテーブルと、アンテナ装置101(2)のテーブルとが記憶されている。例えばアンテナ装置101(1)のテーブルには、対向局の方向θ=10度、20度、30度・・・に対して、レドーム203の回転角度=a1度、a2度、a3度、・・・が記憶されている。同様に、アンテナ装置101(2)のテーブルには、対向局の方向θ=10度、20度、30度・・・に対して、レドーム203の回転角度=b1度、b2度、b3度、・・・が記憶されている。例えば、対向局の方向θ=20度の場合、回転制御部502は、アンテナ装置101(1)のレドーム203をa1度の角度だけ回転させ、アンテナ装置101(2)のレドーム203をb1度の角度だけ回転させる。
【0042】
このようにして、本実施形態に係る分散アレーアンテナ装置100bは、パラボラアンテナ201が信号を送受信する経路上に配置された構造体202の位置を調整することにより、サイドローブを抑圧することができる。
【0043】
図5は、構造体202の一例を示す。図5の例では、構造体202は、例えば金属板601が用いられ、金属板601には、一辺が43.6mmで幅2.1mmの正方形のスロット602がY軸方向およびZ軸方向にそれぞれ3個ずつ周期的に配置されている。ここで、スロット602は、Y軸方向およびZ軸方向に対称となる構造を有し、Y軸方向およびZ軸方向において、注目するスロット602の所定箇所(図5の例で右上隅のスロットの上辺)から所定方向に隣接するスロットの所定箇所(図5の例で1つ下のスロットの上辺)までの間隔(すなわちスロット602の配列周期)はそれぞれ58.1mmである。例えば、金属板601には、誘電体基板上に銅などの金属面を有するプリント基板が用いられ、エッチングなどでスロット602の部分の金属面を除去することにより構造体202が作成される。このように、構造体202は、パラボラアンテナ201で送受信する信号の周波数に影響を与える金属、誘電体などで形成された固有のパターンが周期的に配列された構造になっている。なお、図5に示した構造体202は一例であり、構造体202の部材、形状および周期的に配列する個々のパターンは、分散アレーアンテナ装置100で使用する周波数の信号に影響を与える特性を有するものであれば適用可能である。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態に係る分散アレーアンテナ装置100は、パラボラアンテナ201で送受信を行う方向に応じて構造体202を配置して、放射パターンを変えることができる。そして、それぞれのパラボラアンテナ201の構造体202の位置を調整することにより、分散アレーアンテナ装置100のサイドローブを抑制することができる。
【符号の説明】
【0045】
100,100b・・・分散アレーアンテナ装置;101,101(1),101(2),101(N)・・・アンテナ装置;102・・・アレーアンテナ制御部;103・・・変復調部;104・・・レドーム回転角度制御部;201,201(1),201(2),201(N)・・・パラボラアンテナ;202,202(1),202(2),202(N)・・・構造体;203,203(1),203(2),203(N)・・・レドーム;301・・・合成/分配器;302,302(1),302(2)・・・位相器;303・・・位相振幅制御部;401・・・移動局;402・・・通信局;501・・・位置検出部;502・・・回転制御部;503・・・記憶部;601・・・金属板;602・・・スロット
図1
図2
図3
図4
図5