特許第6415476号(P6415476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6415476信号品質推定方法および信号品質推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6415476
(24)【登録日】2018年10月12日
(45)【発行日】2018年10月31日
(54)【発明の名称】信号品質推定方法および信号品質推定装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/336 20150101AFI20181022BHJP
【FI】
   H04B17/336
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-92364(P2016-92364)
(22)【出願日】2016年5月2日
(65)【公開番号】特開2017-201735(P2017-201735A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2017年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
(72)【発明者】
【氏名】太田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山中 勝彦
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−274945(JP,A)
【文献】 特開平06−046013(JP,A)
【文献】 特表2010−502154(JP,A)
【文献】 特開平07−231485(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0225998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号がキャリアごとに信号の有無が決められており、キャリアごとにそれぞれ振幅制御値を乗算して規定の振幅レベルに調整する復調回路を備え、受信信号の信号電力対雑音電力比を推定する信号品質推定方法において、
前記復調回路から各キャリアの前記振幅制御値を取得し、
信号がない第1のキャリアの前記振幅制御値から雑音電力を推定し、
信号がある第2のキャリアの前記振幅制御値から信号電力と前記雑音電力との和を推定し、
前記雑音電力と前記信号電力から前記信号電力対雑音電力比を推定する
ことを特徴とする信号品質推定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の信号品質推定方法において、
前記第1のキャリアと前記第2のキャリアの利得偏差があるときに、該利得偏差で補正した前記雑音電力を用いて前記信号電力対雑音電力比を推定する
ことを特徴とする信号品質推定方法。
【請求項3】
受信信号が時間ごとに信号の有無が決められており、各時間の受信信号にそれぞれ振幅制御値を乗算して規定の振幅レベルに調整する復調回路を備え、受信信号の信号電力対雑音電力比を推定する信号品質推定方法において、
前記復調回路から複数の異なるタイミングで前記振幅制御値を取得し、
信号がない第1の時間の前記振幅制御値から雑音電力を推定し、
信号がある第2の時間の前記振幅制御値から信号電力と前記雑音電力との和を推定し、 前記雑音電力と前記信号電力から前記信号電力対雑音電力比を推定する
ことを特徴とする信号品質推定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の信号品質推定方法において、
前記複数の異なるタイミングで取得した振幅制御値のうち、最大値付近の複数の振幅制御値の平均値から前記雑音電力を推定し、最小値付近の複数の振幅制御値の平均値から前記信号電力と前記雑音電力との和を推定する
ことを特徴とする信号品質推定方法。
【請求項5】
請求項3に記載の信号品質推定方法において、
前記受信信号がバースト信号であるときに、バースト信号の未検出タイミングで取得した前記振幅制御値から前記雑音電力を推定し、バースト信号の検出タイミングで取得した前記振幅制御値から前記信号電力と前記雑音電力との和を推定する
ことを特徴とする信号品質推定方法。
【請求項6】
受信信号がキャリアごとに信号の有無が決められており、キャリアごとにそれぞれ振幅制御値を乗算して規定の振幅レベルに調整する復調回路を備え、受信信号の信号電力対雑音電力比を推定する信号品質推定装置において、
前記復調回路から各キャリアの前記振幅制御値を取得する手段と、
信号がない第1のキャリアの前記振幅制御値から雑音電力を推定する手段と、
信号がある第2のキャリアの前記振幅制御値から信号電力と前記雑音電力との和を推定する手段と、
前記雑音電力と前記信号電力から前記信号電力対雑音電力比を推定する手段と
を備えたことを特徴とする信号品質推定装置。
【請求項7】
受信信号が時間ごとに信号の有無が決められており、各時間の受信信号にそれぞれ振幅制御値を乗算して規定の振幅レベルに調整する復調回路を備え、受信信号の信号電力対雑音電力比を推定する信号品質推定装置において、
前記復調回路から複数の異なるタイミングで前記振幅制御値を取得する手段と、
信号がない第1の時間の前記振幅制御値から雑音電力を推定する手段と、
信号がある第2の時間の前記振幅制御値から信号電力と前記雑音電力との和を推定する手段と、
前記雑音電力と前記信号電力から前記信号電力対雑音電力比を推定する手段と
を備えたことを特徴とする信号品質推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信信号の信号電力対雑音電力比(以下、S/Nという)を推定する信号品質推定方法および信号品質推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の信号品質推定装置の構成例を示す(特許文献1)。
図9において、信号品質推定装置は、復調回路21、シンボル判定回路22およびS/N推定回路23により構成される。復調回路21は、直交検波した受信信号の振幅制御および周波数・位相同期制御を行い、シンボル判定回路22でシンボル判定を行う。S/N推定回路23は、シンボル判定回路22の出力から受信信号のS/Nを推定する。
【0003】
図10は、S/N推定回路23における従来のS/N推定法を示す。ここでは、4相位相変調信号の直交検波信号を例に説明する。
図10において、△は周波数・位相同期が確立された受信信号点を示し、●は信号電力Sのシンボル判定点を示す。受信信号点からシンボル判定点を差し引くと誤差信号成分が算出され、誤差信号成分の2乗平均をとることで雑音電力Nが計算される。したがって、S/N推定回路23では、周波数・位相同期が確立された受信信号の格子点配置に基づき、既知の信号電力Sと雑音電力Nとの除算により、受信信号のS/Nを推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5120564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のS/Nの推定過程ではシンボル判定が必要であるが、雑音が信号に重畳してシンボル誤判定が生じることがある。そのため、図11に示すように、受信信号点と誤判定されたシンボル判定点との間を雑音電力N’として識別すると、受信信号点と正しいシンボル判定点との間の正しい雑音電力Nと異なり、S/Nの推定精度が劣化する問題がある。
【0006】
また、従来技術では、周波数・位相同期が完了してから、受信信号点と正しいシンボル判定点との間の誤差電力を正確に推定できるが、図12に示すように、周波数・位相同期が確立する前は周波数・位相誤差で回転しており、その周波数・位相誤差のシンボル回転を雑音電力と誤推定することがある。すなわち、同期確立が完了するまでのS/Nの推定値精度が悪く、受信信号の正確なS/N推定までに遅延が大きくなる問題がある。
【0007】
本発明は、受信信号のS/Nを高速かつ精度よく推定することができる信号品質推定方法および信号品質推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、受信信号がキャリアごとに信号の有無が決められており、キャリアごとにそれぞれ振幅制御値を乗算して規定の振幅レベルに調整する復調回路を備え、受信信号の信号電力対雑音電力比を推定する信号品質推定方法において、復調回路から各キャリアの振幅制御値を取得し、信号がない第1のキャリアの振幅制御値から雑音電力を推定し、信号がある第2のキャリアの振幅制御値から信号電力と雑音電力との和を推定し、雑音電力と信号電力から信号電力対雑音電力比を推定する。
【0009】
第1の発明の信号品質推定方法において、第1のキャリアと第2のキャリアの利得偏差があるときに、該利得偏差で補正した雑音電力を用いて信号電力対雑音電力比を推定する。
【0010】
第2の発明は、受信信号が時間ごとに信号の有無が決められており、各時間の受信信号にそれぞれ振幅制御値を乗算して規定の振幅レベルに調整する復調回路を備え、受信信号の信号電力対雑音電力比を推定する信号品質推定方法において、復調回路から複数の異なるタイミングで振幅制御値を取得し、信号がない第1の時間の振幅制御値から雑音電力を推定し、信号がある第2の時間の振幅制御値から信号電力と雑音電力との和を推定し、雑音電力と信号電力から信号電力対雑音電力比を推定する。
【0011】
第2の発明の信号品質推定方法において、複数の異なるタイミングで取得した振幅制御値のうち、最大値付近の複数の振幅制御値の平均値から雑音電力を推定し、最小値付近の複数の振幅制御値の平均値から信号電力と雑音電力との和を推定する。
【0012】
第2の発明の信号品質推定方法において、受信信号がバースト信号であるときに、バースト信号の未検出タイミングで取得した振幅制御値から雑音電力を推定し、バースト信号の検出タイミングで取得した振幅制御値から信号電力と雑音電力との和を推定する。
【0013】
第3の発明は、受信信号がキャリアごとに信号の有無が決められており、キャリアごとにそれぞれ振幅制御値を乗算して規定の振幅レベルに調整する復調回路を備え、受信信号の信号電力対雑音電力比を推定する信号品質推定装置において、復調回路から各キャリアの振幅制御値を取得する手段と、信号がない第1のキャリアの振幅制御値から雑音電力を推定する手段と、信号がある第2のキャリアの振幅制御値から信号電力と雑音電力との和を推定する手段と、雑音電力と信号電力から信号電力対雑音電力比を推定する手段とを備える。
【0014】
第4の発明は、受信信号が時間ごとに信号の有無が決められており、各時間の受信信号にそれぞれ振幅制御値を乗算して規定の振幅レベルに調整する復調回路を備え、受信信号の信号電力対雑音電力比を推定する信号品質推定装置において、復調回路から複数の異なるタイミングで振幅制御値を取得する手段と、信号がない第1の時間の振幅制御値から雑音電力を推定する手段と、信号がある第2の時間の振幅制御値から信号電力と雑音電力との和を推定する手段と、雑音電力と信号電力から信号電力対雑音電力比を推定する手段とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、受信信号を規定の振幅レベルに調整する振幅制御値を用い、シンボル判定が不要であるため、受信開始後に速やかに精度よく受信信号の信号電力対雑音電力比を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1の信号品質推定装置の構成例を示す図である。
図2】本発明の実施例1の信号品質推定処理手順例を示すフローチャートである。
図3】信号電力Sと雑音電力Nと振幅制御値Cの関係を示す図である。
図4】本発明の実施例2の信号品質推定装置の構成例を示す図である。
図5】本発明の実施例2の信号品質推定処理手順例を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施例3の信号品質推定処理手順例を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施例4の信号品質推定装置の構成例を示す図である。
図8】本発明の実施例4の信号品質推定処理手順例を示すフローチャートである。
図9】従来の信号品質推定装置の構成例を示す図である。
図10】従来のS/N推定法を示す図である。
図11】従来のS/N推定法の問題点1を示す図である。
図12】従来のS/N推定法の問題点2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1の信号品質推定装置の構成例を示す。
図1において、実施例1の信号品質推定装置は、キャリアごとに信号の有無が決められているN波多重信号(Nは2以上の整数)のS/Nを推定する構成であり、N波多重信号をキャリア1〜Nの信号に分波する分波回路11と、キャリア1〜Nの信号を入力する復調回路12−1〜12−Nと、S/N推定回路13により構成される。
【0018】
復調回路12−k(kは1〜Nの整数)は、本発明の信号品質推定装置に関わる構成として、振幅制御部121、振幅制御値算出部122および周波数位相同期部123のみを示す。振幅制御部121は、キャリアkの信号と振幅制御値算出部122が算出する振幅制御値とを乗算し、周波数位相同期部123で周波数・位相同期を確立するために必要な規定の振幅レベルに制御する。なお、復調回路の基本的な構成は図9に示す従来のものと同じであり、その後段にシンボル判定回路などが接続される。
【0019】
実施例1のS/N推定回路13は、復調回路12−1〜12−Nの各振幅制御値算出部122で算出される振幅制御値の情報を入力し、キャリアごとの信号の有無を示す回線設定情報に基づき、信号のないキャリアの振幅制御値と、信号のあるキャリアの振幅制御値から、受信信号のS/Nを推定する構成である。
【0020】
図2は、本発明の実施例1の信号品質推定処理手順例を示す。
ここで、復調回路12−kの振幅制御値算出部122で算出されるキャリアkの振幅制御値C(k) は、入力電力が小さければ大きな値となり、入力電力が大きければ小さな値となる。すなわち、振幅制御値C(k) の2乗値C(k)2は、受信電力P(k) に反比例する関係であり、Aを定数として次式で表される。
P(k) =A/C(k)2 …(1)
【0021】
実施例1のS/N推定回路13は、入力する回線設定情報に基づいて、信号のないキャリアk1と、信号のあるキャリアk2を特定する(S11)。このとき、キャリアk1の受信電力P(k1)は雑音電力Nであり、キャリアk2の受信電力P(k2)は信号電力S+雑音電力Nである。
【0022】
次に、復調回路12−1〜12−Nの各振幅制御値算出部122から、キャリアk1の雑音電力Nに対する振幅制御値C(k1)と、キャリアk2の信号電力S+雑音電力Nに対する振幅制御値C(k2)を取得する(S12)。信号電力Sと雑音電力Nと振幅制御値Cの関係を図3(1) および次式に示す。
N=P(k1)=A/C(k1)2 …(2)
S+N=P(k2)=A/C(k2)2 …(3)
【0023】
次に、キャリアk1の振幅制御値C(k1)と、キャリアk2の振幅制御値C(k2)から、受信信号のS/Nを次式のように計算する(S13)。
S/N=(P(k2)−P(k1))/P(k1)
=C(k1)2/C(k2)2−1 …(4)
【0024】
なお、S/N推定回路13の機能は、キャリアk1の振幅制御値C(k1)とキャリアk2の振幅制御値C(k2)をコマンドで収集してソフトウェア処理で実現してもよいし、同じ機能をハードウェアに実装して実現してもよい。
【0025】
(実施例2)
図4は、本発明の実施例2の信号品質推定装置の構成例を示す。
図4において、実施例2の信号品質推定装置は、時間で信号の有無が決められている受信信号のS/Nを推定する構成であり、受信信号を入力する復調回路12と、S/N推定回路14により構成される。
【0026】
復調回路12は、本発明の信号品質推定装置に関わる構成として、振幅制御部121、振幅制御値算出部122および周波数位相同期部123のみを示す。振幅制御部121は、振幅制御値算出部122が算出する振幅制御値とを乗算し、周波数位相同期部123で周波数・位相同期を確立するために必要な規定の振幅レベルに制御する。なお、復調回路の基本的な構成は図9に示す従来のものと同じであり、その後段にシンボル判定回路などが接続される。
【0027】
実施例2のS/N推定回路14は、復調回路12の振幅制御値算出部122で算出される振幅制御値の時間ごとの情報を入力し、時間ごとの信号の有無を示す回線設定情報に基づき、信号のない時間t1の振幅制御値と、信号のある時間t2の振幅制御値から、受信信号のS/Nを推定する構成である。
【0028】
図5は、本発明の実施例2の信号品質推定処理手順例を示す。
図5において、実施例2のS/N推定回路14は、入力する回線設定情報に基づいて、信号のない時間t1と、信号のある時間t2を特定する(S21)。このとき、時間t1の受信電力P(t1)は雑音電力Nであり、時間t2の受信電力P(t2)は信号電力S+雑音電力Nである。
【0029】
次に、復調回路12の振幅制御値算出部122から時間t1の雑音電力Nに対する振幅制御値C(t1)と、時間t2の信号電力S+雑音電力Nに対する振幅制御値C(t2)を取得する(S22)。信号電力Sと雑音電力Nと振幅制御値Cの関係を図3(2) および次式に示す。
N=P(t1)=A/C(t2)2 …(5)
S+N=P(t2)=A/C(t2)2 …(6)
【0030】
次に、時間t1の振幅制御値C(t1)と、時間t2の振幅制御値C(t2)から、受信信号のS/Nを次式のように計算する(S23)。
S/N=(P(t2)−P(t1))/P(t1)
=C(t1)2/C(t2)2−1 …(7)
【0031】
なお、S/N推定回路14の機能は、時間t1の振幅制御値C(t1)と時間t2の振幅制御値C(t2)をコマンドで収集してソフトウェア処理で実現してもよいし、同じ機能をハードウェアに実装して実現してもよい。
【0032】
(実施例3)
実施例2のS/N推定回路14は、信号が配置される時間が回線設定情報により通知される構成であったが、実施例3は回線設定情報がない場合に、信号の有無を自律的に把握して対応する例を示す。
【0033】
一般的に、信号がない場合は受信電力が小さく、振幅制御値が大きくなる。したがって、異なる複数のタイミングで振幅制御値を取得し、取得した振幅制御値を相対的に比較し、最大の振幅制御値が現れたタイミングを信号がない、すなわち雑音のみのタイミング(実施例2の時間t1)と見なすことができる。また、最小の振幅制御値が現れたタイミングを信号があるタイミング(実施例2の時間t2)と見なすことができる。
【0034】
実施例3の信号品質推定装置の装置構成は図4に示す実施例2と同様であり、実施例3のS/N推定回路14は、復調回路12の振幅制御値算出部122で異なる複数のタイミングで算出される振幅制御値の情報を入力し、最大値付近の振幅制御値と最小値付近の振幅制御値から、受信信号のS/Nを推定する構成である。
【0035】
図6は、本発明の実施例3の信号品質推定処理手順例を示す。
図6において、実施例3のS/N推定回路14は、異なる複数のタイミングで振幅制御値を取得し(S31)、その複数のタイミングにおける振幅制御値の最大値と最小値を特定する(S32)。ここで、振幅制御値が最大値付近の受信電力は雑音電力Nであり、振幅制御値が最小値付近の受信電力は信号電力S+雑音電力Nであり、最大値付近の振幅制御値をC(t1)とし、最小値付近の振幅制御値をC(t2)とする。この雑音電力Nに対する振幅制御値C(t1)と信号電力S+雑音電力Nに対する振幅制御値C(t2)から、受信信号のS/Nを式(7) のように計算する(S33)。
【0036】
ここで、受信電力は雑音の影響を受けて時間変動するので、振幅制御値の最大値付近の複数個の振幅制御値の平均値を計算し、雑音電力Nに対する振幅制御値C(t1)として受信信号のS/Nを計算してもよい。さらに、振幅制御値の最小値付近の複数個の振幅制御値の平均値を計算し、信号電力S+雑音電力Nに対する振幅制御値C(t2)として受信信号のS/Nを計算してもよい。
【0037】
(実施例4)
受信信号が、瞬間的に受信されるバースト信号であることがわかっていれば、振幅制御値が最大値付近となるタイミングでは受信電力が小さく、信号を受信していないと判断できるので、当該最大値付近の振幅制御値を雑音電力Nに対する振幅制御値C(t1)として受信信号のS/Nを計算してもよい。
【0038】
図7は、本発明の実施例4の信号品質推定装置の構成例を示す。
図7において、実施例4の信号品質推定装置は、バースト信号のS/Nを推定する構成であり、バースト信号を入力する復調回路12と、バースト信号を検出するバースト信号検出回路15と、S/N推定回路16により構成される。
【0039】
復調回路12は、本発明の信号品質推定装置に関わる構成として、振幅制御部121、振幅制御値算出部122および周波数位相同期部123のみを示す。振幅制御部121は、振幅制御値算出部122が算出する振幅制御値とを乗算し、周波数位相同期部123で周波数・位相同期を確立するために必要な規定の振幅レベルに制御する。なお、復調回路の基本的な構成は図9に示す従来のものと同じであり、その後段にシンボル判定回路などが接続される。
【0040】
実施例4のS/N推定回路16は、復調回路12の振幅制御値算出部122で算出される振幅制御値の時間ごとの情報を入力し、バースト信号検出回路15からバースト信号の検出タイミングを入力し、バースト信号が検出されない時間t1の振幅制御値と、バースト信号が検出された時間t2の振幅制御値から、受信信号のS/Nを推定する構成である。
【0041】
図8は、本発明の実施例4の信号品質推定処理手順例を示す。
図8において、実施例4のS/N推定回路16は、バースト信号の検出タイミングに基づいて、信号のない時間t1と、信号のある時間t2を特定する(S41)。このとき、時間t1の受信電力P(t1)は雑音電力Nであり、時間t2の受信電力P(t2)はバースト信号に対応する信号電力S+雑音電力Nである。
【0042】
次に、復調回路12の振幅制御値算出部122から時間t1の雑音電力Nに対する振幅制御値C(t1)と、時間t2の信号電力S+雑音電力Nに対する振幅制御値C(t2)を取得する(S42)。次に、時間t1の振幅制御値C(t1)と、時間t2の振幅制御値C(t2)から、受信信号のS/Nを式(7) のように計算する(S43)。
【0043】
(実施例5)
実施例1は、キャリアk1とキャリアk2の信号通過特性が同じとしたが、実施例5はキャリアk1とキャリアk2の信号通過特性(利得偏差)が異なる場合を想定する。なお、衛星中継器においてキャリアk1とキャリアk2の帯域が離れると、容易に利得偏差が生じる。
【0044】
例えば、キャリアk1,k2において、信号がない雑音だけの状態で推定される受信電力P(k1), P(k2)の利得偏差αは、次式のように表される。
α=P(k2)/P(k1) …(8)
【0045】
キャリアk1の受信電力P(k1)が雑音電力Nであるとき、雑音だけのキャリアk2の受信電力P(k2)は、次式のように表される。
P(k2)=αP(k1)=αN …(9)
【0046】
一方、キャリアk2の受信電力P(k2)は、信号電力S+雑音電力Nであるので次式のように表される。
P(k2)=S+αN …(10)
【0047】
よって、信号電力SおよびS/Nは、次式のように表される。
S=P(k2)−αP(k1) …(11)
S/N=(P(k2)−αP(k1))/αP(k1)
=C(k1,t)2/αC(k2,t)2−1 …(12)
【0048】
衛星中継器のように、アナログ機器の影響で帯域内偏差がある場合は、利得偏差αを事前に測定しておき、実際の運用中には事前に測定したαを式(12)に適用することにより、正確なS/Nを推定することができる。
【符号の説明】
【0049】
11 分波回路
12 復調回路
13,14,16 S/N推定回路
15 バースト信号検出回路
21 復調回路
22 シンボル判定回路
23 S/N推定回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12