(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットにおける爆発的なトラフィックの増加に対応するため、ノード間を結ぶ伝送には、光が用いられ、低損失性を生かして大容量化が実現されている。一方で、光の伝搬速度を遅くする光遅延の技術がある。例えば、複数のフォトニック結晶共振器を直列に配列したフォトニック結晶連結共振器がある。
【0003】
以下、フォトニック結晶連結共振器について簡単に説明する。複数の光共振器を、一定の結合強度κにより、一定の間隔で直列に配列することで、各光共振器の固有共振モードが互いに結合し、結合共振モードが形成される。このように、光共振器が直列に配列され、結合共振モードを形成する光共振器群は「連結共振器」と呼ばれる(例えば、非特許文献1を参照)。連結共振器は、結合共有モードにより導波路としても機能することから、結合共振器光導波路(Coupled Resonator Optical Waveguide;CROW)とも呼ばれる。
【0004】
上述した連結共振器は、フォトニック結晶構造により光を閉じ込めたフォトニック結晶共振器を直列配置して光学的に結合させたものであっても実現することができる。これを、フォトニック結晶連結共振器と呼ぶ。
【0005】
例えば、
図14,
図15に示すようなフォトニック結晶連結共振器がある。これらはいずれも、SiないしはInPなどの半導体基板に、柱状の複数の中空構造を平面視で三角格子状に配列させたフォトニック結晶を用いている。
【0006】
このフォトニック結晶の格子ベクトル方向に、中空構造を設けない光の閉じ込め構造(共振部)を設けたフォトニック結晶共振器を、等間隔で直列に配列して連結している。連結構造では、共振部も等間隔で配列される。
図14に示すフォトニック結晶連結共振器は、フォトニック結晶共振器をΓK方向(最近接の穴が隣接する方向)に配列させている。また、
図15に示すフォトニック結晶連結共振器は、フォトニック結晶共振器をΓM方向(ΓKに対し垂直な方向)に配列させている。
【0007】
なお、共振部の間隔で周期的に繰り返させる領域の最小単位のフォトニック結晶共振器を「ユニットセル」とし、連結共振器は、ユニットセルの繰り返し配列により構成されているものとする(
図14(a)および
図15(a))。また、
図14,
図15において、(b)は、無限長のフォトニック結晶連結共振器における共鳴周波数の分散特性、(c)は、(b)の黒丸におけるユニットセル内の磁界フィールド分布を表している。
【0008】
ここで、
図15の(b)(c)中の位相差Δθとは、隣り合うユニットセル境界間の位相差であり、境界上にその中心を合わせるように配置された共振器部に閉じ込められている光の、共振部中心の位相差である。それぞれの共振部に閉じ込められた光は、ユニットセルの並び順に各々Δθずれた異なる位相をとり、特に、位相差Δθ=0(π)の場合、隣り合うユニットセルの共振部に閉じ込められた光が、同相(逆相)で連結する共鳴モードになる。
【0009】
ここで、
図14に示すフォトニック結晶連結共振器は、共振器内の磁界フィールドが、隣り合うユニットセルの境界部分を境に対称、すなわち偶関数の形状となる共振器がΓM方向に連結した構成となっている。
【0010】
図14の(b)に示す11個の共鳴モードに対応する、ユニットセル内の磁界フィールド分布を
図14の(c)に示す。ユニットセルの左右に位置する共振部中心間の位相差が0からπの間で変化するに従い、ユニットセル中で形成される磁界フィールド分布は、左右のユニットセル境界線を挟む中心線(ユニットセル中心)を境に、「対称」から「反対称」の形状に変化する様子が示されている。つまりこの場合、隣り合うユニットセルの共振部中心間の位相差Δθ=0のとき、ユニットセル中の磁界フィールドが「対称」、すなわち偶関数の形状となる。また、位相差Δθ=πのとき、ユニットセル中の磁界フィールドが「反対称」、すなわち奇関数の形状となる。この特徴は、ユニットセルの並ぶ方向には依存せず、ユニットセル境界上に配置された共振器のフィールドの対称性に依存していることは自明である。
【0011】
次に、
図15に示すフォトニック結晶連結共振器は、共振器内の磁界フィールドが隣り合うユニットセル境界を境に反対称、すなわち奇関数の形状となる共振器が、ΓK方向に連結した構成となっている。
図15の(b)における11個の共鳴モードに対応する、隣り合うユニットセルの境界を共振器中心線とした磁界フィールド分布を
図15の(c)に示す。
【0012】
ここで留意すべき点は、共振器内の磁界フィールドが、隣り合うユニットセルの境界部分を境に反対称であるため、Δθとユニットセル内の磁界フィールドの対称性の関係が、
図14の場合と正反対になることである。つまり、隣り合う共振器中心間の位相差がΔθ=0のとき、ユニットセル中の磁界フィールドがユニットセル中心を境に「反対称」、すなわち奇関数の形状となる。また、位相差Δθ=πのとき、ユニットセル中の磁界フィールドがユニットセル中心を境に「対称」、すなわち偶関数の形状となる。この特徴は、ユニットセルの並ぶ方向には依存せず、ユニットセル境界上に配置された共振器のフィールドの対称性に依存していることは自明である。
【0013】
なお、上記の共鳴モードの特徴は、フォトニック結晶共振器の共振部に埋め込みヘテロ構造を有するものであっても同様の態様を示す。あるいは、フォトニック結晶内の線欠陥の幅を部分的に変調した共振部(非特許文献2、非特許文献3参照)や、線欠陥を空気穴で終端した共振部(非特許文献4参照)など、フォトニック結晶線欠陥をベースとするいずれの共振部の構造においても成立するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】H. Takesue et al., "An on-chip coupled resonator optical waveguide single-photon buffer", Nature Communications, 3725, 2013.
【非特許文献2】E. Kuramochi et al., "Ultrahigh-Q photonic crystal nanocavities realized by the local width modulation of a line defect", Applied Physics Letters, vol.88, 041112, 2006.
【非特許文献3】B. Song et al., "Ultra-high-Q photonic double-heterostructure nanocavity", Nature Materials, vol.4, pp.207-201. 2005.
【非特許文献4】Y. Akahane et al., "High-Q photonic nanocavity in a two-dimensional photonic crystal", Nature, vol.425, pp.944-947, 2003.
【非特許文献5】K. Nozaki et al., "Room temperature continuous wave operation and controlled spontaneous emission in ultrasmall photonic crystal nanolaser", Optics Express, vol.15, no.12, pp.7506-7514, 2007.
【非特許文献6】S. Matsuo et al., "High-speed ultracompact buried heterostructure photonic-crystal laser with 13 fJ of energy consumed per bit transmitted", Nature Photonics, vol.4, pp.648-654, 2010.
【非特許文献7】S. Matsuo et al., "20-Gbit/s directly modulated photonic crystal nanocavity laser with ultra-low power consumption", Opt. Express, vol.19, no.3, pp.2242-2250, 2011.
【非特許文献8】K. Nozaki et al., "Ultralow-power all-optical RAM based on nanocavities", Nature Photonics, vol.6, pp.248-252, 2012.
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0025】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1におけるフォトニック結晶連結共振器の構成を示す構成図である。
図1では、平面を模式的に示している。このフォトニック結晶連結共振器は、複数のフォトニック結晶共振器101と、隣り合うフォトニック結晶共振器101の間に配置された漏れ導波路102とを備える。
【0026】
複数のフォトニック結晶共振器101は、光が導波する第1方向に直列に配列されている。
図1では、紙面の左右方向が第1方向となる。また、漏れ導波路102は、第1方向に垂直な第2方向に延在している。漏れ導波路102は、中空構造を形成しない部分より構成したいわゆる線欠陥光導波路である。なお、漏れ導波路102の構造は、これに限定されるものではない。漏れ導波路102としては、第2方向に延在し、かつ隣り合うフォトニック結晶共振器101(共振部105)の中心をつなぐ線分の垂直二等分線上に設けられた光導波路であれば、その構造はいずれのものであってもよい。
【0027】
図1では、漏れ導波路102は、隣り合うフォトニック結晶共振器101(共振部105)の中心をつなぐ線分を貫通するようにして設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、隣り合うフォトニック結晶共振器101(共振部105)の中心をつなぐ線分の垂直二等分線上であって、この線分の図中上方のみ (あるいは下方のみ)に設けた光導波路であってもよい。後述する他の実施の形態においても、同様である。
【0028】
フォトニック結晶共振器101は、例えばInPからなる基部103と、基部103に設けられた柱状の複数の中空構造104とからなるフォトニック結晶より構成されている。中空構造104は、例えば平面視で三角格子状に配列している。各中空構造104は、同一形状とされている。このようなフォトニック結晶において、中空構造を形成しない部分(線欠陥部)などによる共振部105を設けることで、共振器としている。また、共振部105は、例えば、基部103を構成する材料とは異なる屈折率の材料からなる部分を埋め込む構造としてもよい。
【0029】
また、中空構造104とは異なる孔径(小さな孔径の)の中空構造を配置して共振部105としてもよい。
図1に例示する構成では、共振部105を、第2方向に延在して設けている。なお、基部103,中空構造104は、いずれも光の媒質であり、中空構造104は、基部103に対して異なる屈折率の媒質からなる柱状構造であってもよい。
【0030】
上述した実施の形態1におけるフォトニック結晶連結共振器によれば、後述するように、所望の共鳴モード以外のモードが、漏れ導波路102に結合してフォトニック結晶連結共振器から漏れ出すが、所望の共鳴モードのみフォトニック結晶連結共振器に閉じ込められるようになるため、単一のモードのみ共鳴するようになる。
【0031】
以下、実施の形態1における共鳴モードと漏れ導波路102の導波モードとの結合について、より詳細に説明する。
【0032】
図2は、実施の形態1に係るフォトニック結晶連結共振器における、フォトニック結晶連結共振器の共鳴モードと、漏れ導波路102の導波モードとの結合を説明する説明図である。
図2の(a)は、実施の形態1に係るフォトニック結晶連結共振器の平面を模式的に示し、
図2の(b)は、フォトニック結晶連結共振器における共鳴周波数の分散特性を示し、
図2の(c)は、フォトニック結晶共振器101内の磁界フィールド分布を示す。
図2の(c)において、「規格化周波数(=a/λ)」の「a」は、隣接する中空構造104の中心間距離のうち最も短いもの(
図2(a)ではΓK方向=第2方向に隣接する中空構造104の中心間距離であり、一般にはフォトニック結晶における「格子定数」と呼ばれる)、λは波長である。
【0033】
図2の(a)に示すように、実施の形態1のフォトニック結晶連結共振器は、フォトニック結晶共振器101が、ΓM方向(第1方向)に等間隔で周期的に配列されており、隣り合うフォトニック結晶共振器101の中心をつなぐ線分の垂直二等分線上に、漏れ導波路102が配置されている。各フォトニック結晶共振器101の共鳴モードは、漏れ導波路102を介して連結モードを形成している。フォトニック結晶共振器101を11個連結させた場合、前述のとおり、11個の共鳴モードが存在する。漏れ導波路がない場合、
図2の(b)中の黒丸で示される11個の共鳴モードが存在する。これに対し、漏れ導波路102を設けた場合、11個の共鳴モードは、
図2の(b)において、白丸で示されるように変化する。
【0034】
ところで、実施の形態1における漏れ導波路102は、ΓK方向(第2方向)に光を伝搬させる導波路である。漏れ導波路102における導波モードは、隣り合うフォトニック結晶共振器101の間の中心線を挟んで「対称」の磁界フィールド形状を有する。すなわち、「偶関数」の横モード形状となるように構成されている。なお、
図2の(c)に示すように、位相差Δθ=πにおいては、隣り合うフォトニック結晶共振器101の間の中心線上にフィールド強度がゼロとなる節が存在するため、中心線の部分には、白い線が現れる。一方、位相差Δθ=0においては、隣り合うフォトニック結晶共振器101の間の中心線の部分には、白い線が現れない。このように、位相差Δθ=πにおいて白い線が見える状態が、結合共鳴モードが「奇関数」の磁界フィールド形状を有する状態である。
【0035】
ここで重要なことは、「奇関数」と偶関数のモードは互いに結合することができない、ということである。すなわち、隣り合うフォトニック結晶共振器101間の中心線を境に「奇関数」となる位相差Δθ=π(あるいは−π)の結合共鳴モードは、同中心線を境に「偶関数」となる漏れ導波路102には結合できない。なお、上記共鳴モードは、フォトニック結晶共振器101内で、隣り合う漏れ導波路を挟む共振器中心を境に「偶関数」の形状の共鳴モードとなることに留意されたい。
【0036】
一方で、位相差Δθ=π(あるいは−π)以外の位相差Δθの共鳴モードは、漏れ導波路102に結合できる。このため、フォトニック結晶連結共振器に存在する11の共鳴モードのうち、位相差Δθ=π(あるいは−π)の共鳴モードのみフォトニック結晶連結共振器に留まり、位相差Δθ=π(あるいは−π)以外の共鳴モードは、漏れ導波路102を介してフォトニック結晶連結共振器から漏れ出すようになる。従って、実施の形態1に係るフォトニック結晶連結共振器では、位相差θ=π(あるいは−π)の共鳴モードのみが存在でき、他のモードは消失する。このようにして、漏れ導波路102を設けることにより、単一の共鳴モードのみ共鳴できるようになる。
【0037】
図2の(c)では、11の共鳴モードにおけるフォトニック結晶共振器101中の磁界フィールド分布を示しているが、位相差Δθ=π(逆相)の場合、共鳴モードと漏れ導波路102の結合が弱くなり、光がフォトニック結晶共振器101内に強く閉じ込められ、Q値が高くなる様子が示されている。
【0038】
図3は、実施の形態1におけるフォトニック結晶連結共振器における漏れ導波路102のモード選択効果を示す説明図である。漏れ導波路がない従来のフォトニック結晶連結共振器の場合、
図3の(a)に示すように、白色の矢印で示されている共鳴モードがフォトニック結晶連結共振器への閉じ込めモードであり、複数の共鳴モードが異なる位相差で存在している。
【0039】
一方、実施の形態1に係るフォトニック結晶共振器のように漏れ導波路102を備えることにより、
図3の(b)に示すように、白丸で示される位相差Δθ=±πの共鳴モードに収束する。
【0040】
図3の(c)に、実施の形態1に係るフォトニック結晶連結共振器における磁界フィールド分布を示す。位相差Δθ=±πの共鳴モードは、フォトニック結晶連結共振器内に強く閉じ込めている共鳴モードであり、高いQ値を得ている。例えば、各フォトニック結晶共振器101の共振部105に活性媒質を設けてレーザなどの用途に用いる場合は、位相差Δθ=±πの共鳴モードのみが共振する単一モードレーザを実現できる。
【0041】
位相差Δθ=±π以外のモードは、漏れ導波路102の導入により新たに生じたモードであり、漏れ導波路102に光が閉じ込められる。上述のレーザ用途に用いた場合、これら位相差Δθ=±π以外の共鳴モードはレーザ発振への寄与は小さい。
【0042】
なお、実施の形態1では、漏れ導波路102として横モード形状が「偶関数」の形状となる導波路と、フォトニック結晶共振器101内の磁界フィールドが共振部105中心を境に対称、すなわち「偶関数」の形状となる共振器を用いたが、「奇関数」の形状となる漏れ導波路や「奇関数」の形状となる共振器を採用してもよい。この場合、(導波路、共振器)の組み合わせが、(偶関数、偶関数)、(奇関数、奇関数)、(奇関数、偶関数)、(偶関数、奇関数)のそれぞれの組み合わせにおいて、Δθ=±π、±π、0、0の共鳴モードに収束し、モードのQ値が高くなる。
【0043】
つまりどの組み合わせにおいても、複数存在する結合共振器モードの内、ユニットセル内の結合共振器モードのフィールドの対称性と、ユニットセルの中心を走る導波路モードの対称性が正反対になるΔθの条件は1つであり、この条件を満足する唯一の共鳴モードのみが、フォトニック結晶連結共振器に強く閉じ込められる。
【0044】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の実施の形態2におけるフォトニック結晶連結共振器の構成を示す構成図である。
図4では、平面を模式的に示している。このフォトニック結晶連結共振器は、複数のフォトニック結晶共振器201と、隣り合うフォトニック結晶共振器201の間に配置された漏れ導波路202とを備える。なお、実施の形態2においても、フォトニック結晶共振器201は、例えばInPからなる基部103と、基部103に設けられた柱状の複数の中空構造104とからなるフォトニック結晶より構成されている。
【0045】
複数のフォトニック結晶共振器201は、光が導波する第1方向に直列に配列されている。
図4では、紙面の左右方向が第1方向となる。漏れ導波路202は、第1方向に垂直な第2方向に延在している。実施の形態2では、漏れ導波路202を、三角格子配列の中空構造104よりなるフォトニック結晶に、さらに1穴列おきに1個の中空構造104を設けた光導波路としている。なお、漏れ導波路202の構造は、これに限定されるものではない。漏れ導波路202としては、第2方向に延在し、かつ隣り合うフォトニック結晶共振器201の中心をつなぐ線分の垂直二等分線上設けられた光導波路であれば、その構造はいずれのものであってもよい。
【0046】
また、実施の形態2では、フォトニック結晶共振器201が、第1方向に延在する線状欠陥による光導波路206を備え、2つの漏れ導波路202に挾まれた領域の光導波路206に、共振部205が形成される。共振部205には、例えば、基部103を構成する材料とは異なる屈折率の材料からなる部分が埋め込まれていればよい。
図4に例示する構成では、共振部205を、第1方向に延在して設けている。
【0047】
上述した実施の形態2により、後述するように、所望の共鳴モード以外のモードが漏れ導波路202に結合してフォトニック結晶連結共振器から漏れ出すが、一方で、所望の共鳴モードのみフォトニック結晶連結共振器に閉じ込められるようになるため、単一のモードのみ共鳴するようになる。
【0048】
以下、実施の形態2における共鳴モードと漏れ導波路202の導波モードとの結合について、より詳細に説明する。
【0049】
図5は、実施の形態2に係るフォトニック結晶連結共振器における、フォトニック結晶連結共振器の共鳴モードと、漏れ導波路202の導波モードとの結合を説明する説明図である。
図5の(a)は、実施の形態2に係るフォトニック結晶連結共振器の平面を式的に示し、
図5の(b)は、フォトニック結晶連結共振器における共鳴周波数の分散特性を示し、
図5の(c)は、フォトニック結晶共振器201内の磁界フィールド分布を示す。
図5の(c)において、「規格化周波数(=a/λ)」の「a」は、フォトニック結晶の格子定数、λは波長である。
【0050】
図5の(a)に示すように、実施の形態2のフォトニック結晶連結共振器は、フォトニック結晶共振器201が、ΓK方向(第1方向)に等間隔で周期的に配列されており、隣り合うフォトニック結晶共振器201の中心をつなぐ線分の垂直二等分線上に、漏れ導波路202が配置されている。各フォトニック結晶共振器101の共鳴モードは、漏れ導波路202を介して連結モードを形成している。ここでも、フォトニック結晶共振器201を11個連結させた場合を示しており、漏れ導波路を構成しない場合、
図5の(b)に黒丸で示すように、11個の共鳴モードが存在することとなる。一方、実施の形態2では、漏れ導波路202を設けており、11個の共鳴モードは、
図5の(b)に白丸で示すように変化する。
【0051】
実施の形態2の漏れ導波路202における横モードの導波モードは、
図5の(c)に示すように、隣り合うフォトニック結晶共振器201の間の中心線(漏れ導波路202)を挟んで「反対称」の磁界フィールド形状を有する。すなわち、「奇関数」の横モード形状となるように構成されている。なお、
図5の(c)に示すように、位相差Δθ=0においては、隣り合うフォトニック結晶共振器201の間の中心線の部分には、白い線が見える。一方、位相差Δθ=πにおいては、隣り合うフォトニック結晶共振器201の間の中心線の部分には、白い線が見えない。このように、位相差Δθ=0において白い線が見える状態が、「奇関数」の磁界フィールド形状を有する状態であり、その状態からπだけ位相のずれた位相差Δθ=πが、「偶関数」の磁界フィールド形状を有する状態である。
【0052】
実施の形態1の説明と同様、フォトニック結晶連結共振器で共鳴する共鳴モードのうち「偶関数」の結合共鳴モードは、このような奇関数の横モードを有する漏れ導波路202に結合することができない。すなわち、隣り合うフォトニック結晶共振器201の位相差Δθ=π(あるいは−π)の共鳴モードは、横モードが「奇関数」の漏れ導波路202には結合できない。なお、上記共鳴モードは、フォトニック結晶共振器201内で、隣り合う漏れ導波路を挟む共振器中心を境に「奇関数」の形状の共鳴モードとなることに留意されたい。
【0053】
一方で、位相差Δθ=π(あるいは−π)以外の位相差Δθの共鳴モードは、漏れ導波路202に結合できる。このため、フォトニック結晶連結共振器に存在する11の共鳴モードのうち、位相差Δθ=π(あるいは−π)の共鳴モードのみフォトニック結晶連結共振器に留まり、位相差Δθ=π(あるいは−π)以外の共鳴モードは、漏れ導波路202を介してフォトニック結晶連結共振器から漏れ出すようになる。従って、実施の形態2に係るフォトニック結晶連結共振器では、位相差θ=π(あるいは−π)の共鳴モードのみが存在でき、他のモードは消失する。このようにして、漏れ導波路202を設けることにより、単一の共鳴モードのみ共鳴できるようになる。
【0054】
図5(c)には、11の共鳴モードにおけるユニットセル中の磁界フィールド分布を示しているが、位相差Δθ=π(逆相)の場合、共鳴モードと導波路の結合が弱くなり、光がフォトニック結晶共振器内に強く閉じ込められ、Q値が高くなる様子が示されている。
【0055】
図6は、実施の形態2におけるフォトニック結晶連結共振器における漏れ導波路202のモード選択効果を示す説明図である。漏れ導波路がない従来のフォトニック結晶連結共振器の場合、
図6の(a)に白色の矢印で示されている共鳴モードが、共振器への閉じ込めモードであり、複数の共鳴モードが異なる位相差で存在している。
【0056】
一方、実施の形態2に係るフォトニック結晶共振器のように、漏れ導波路202を備えることにより、
図6の(b)に白丸で示される位相差Δθ=±πの共鳴モードに、収束する。
図6の(c)に、実施の形態2に係るフォトニック結晶連結共振器における磁界フィールド分布を示す。位相差Δθ=±πの共鳴モードは、フォトニック結晶連結共振器内に強く閉じ込めている共鳴モードであり、高いQ値を得ている。例えば、フォトニック結晶共振器201の共振部205に、活性媒質を設けてレーザなどの用途に用いる場合は、位相差Δθ=±πの共鳴モードのみが共振する単一モードレーザを実現できる。
【0057】
なお、実施の形態2では、漏れ導波路202として横モード形状が「奇関数」の形状となる導波路と、共振器内の磁界フィールドが共振器中心を境に反対称、すなわち「奇関数」の形状となる共振器を用いたが、「偶関数」の形状となる漏れ導波路202や「偶関数」の形状となる共振器を採用してもよい。この場合、(導波路、共振器)の組み合わせが、(偶関数、偶関数)、(奇関数、奇関数)、(奇関数、偶関数)、(偶関数、奇関数)のそれぞれの組み合わせにおいて、Δθ=±π、±π、0、0の共鳴モードに収束し、そのモードのQ値が高くなる。
【0058】
つまりどの組み合わせにおいても、複数存在する結合共振器モードの内、ユニットセル内の結合共振器モードのフィールドの対称性と、ユニットセルの中心を走る導波路モードの対称性が正反対になるΔθの条件はたった1つであり、その条件を満足する唯一の共鳴モードのみがフォトニック結晶連結共振器に強く閉じ込められる。
【0059】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について
図7を用いて説明する。
図7は、本発明の実施の形態3におけるフォトニック結晶連結共振器について説明する説明図である。
図7は、実施の形態3におけるフォトニック結晶連結共振器における漏れ導波路のモード選択効果を示している。
【0060】
実施の形態3では、実施の形態2における共振部205を、隣り合うフォトニック結晶共振器201の間で連結した構成としている。例えば、基部103を構成する材料とは異なる屈折率の材料からなる部分を、複数(例えば11個)の連結したフォトニック結晶共振器201において、連続して一体にしている。
【0061】
共振部を連続的につなぐと共振部の領域長がほぼ倍増するため、漏れ導波路がなければ、
図7の(a)に示すように、共鳴モード数は増えてしまう。しかしながら、漏れ導波路202を設けることにより、
図7の(b)および(c)に示されるように、隣り合うフォトニック結晶共振器の位相差Δθ=π(あるいは−π)の共鳴モードのみに絞り込むことが可能となる。
【0062】
この原理は以下のように説明することができる。連続的につながる共振部における磁界フィールドは、共振部の一方のサイドに隣接する2つの穴の中間点と、その反対サイドに隣接する2つの穴の中間点を結ぶ直線上において、Δθ=0(π)の条件下で必ず節(腹)となる。そのため、
図7の(c)に示すように、より濃い色の部分で示すように、共振部を連続的に連ねた場合、漏れ導波路202の中心軸上において、共振部のフィールドはΔθ=0(π)の条件下で節(腹)になる。つまり、漏れ導波路202の対称性とフォトニック結晶共振器内のフィールドの対称性の関係は、
図5の場合と同じとなり、このことは、
図5におけるフォトニック結晶共振器201内の2つの共振部を連続的につなぐことに矛盾しない。
【0063】
また、漏れ導波路202と共振部の相対位置関係を半格子定数だけΓK方向(第1方向)にずらせば、漏れ導波路202の対称性とフォトニック結晶共振器201内のフィールドの対称性の関係は、
図5の場合と逆になることは自明である。
実施の形態1,2と同様に、フォトニック結晶共振器中心を境に対称・反対称の2種類の磁界フィールドを考えることができるため、(導波路、フォトニック結晶共振器内の磁界フィールド)の4つのどの組み合わせを構成することが可能であり、いずれにおいても、複数存在する結合共振器モードを1つに絞ることができる。
【0064】
ところで、上述した実施の形態1,2,3のいずれにおいても、共振部に活性媒質を配置することで、レーザとすることができる。以下、本発明をレーザに適用することについて説明する。
【0065】
近年の光技術は、前述したインターネットのノード間を結ぶ伝送に限らず、ボード間、ラック間と言った近距離の伝送においても、光の高速性を生かして電気の配線の置き換えが進んでいる。さらには、LSI(Large Scale Integration)のチップ間、チップ内においても、電気配線のボトルネックが指摘され、光による配線の可能性の検討が進められている。このような光配線の光源として、マイクロキャビティレーザが用いられている。マイクロキャビティレーザは、大規模な光集積回路あるいはLSIとの集積化を目指したミクロンオーダのサイズのレーザである。
【0066】
このような中で、フォトニック結晶共振器を持つマイクロキャビティレーザが、注目を集めている(非特許文献5,非特許文献6,非特許文献7参照)。特に、非特許文献6では、非特許文献5などに示されたデバイスにおいて現れる、デバイスの温度上昇とキャリアの拡散という特性低下の2つの主要因を、埋め込みヘテロ(buried heterostructure;BH)構造により解消する手段が提案されている(非特許文献6参照)。
【0067】
ここで、上述したマイクロキャビティレーザについて、
図8を用いて説明する。
図8は、マイクロキャビティレーザの構成を示す平面図(a)および断面図(b)である。断面図は、光が導波する方向に垂直な面を示している。このマイクロキャビティレーザは、まず、InP基板からなる基部801と、基部801に設けられた柱状の複数の中空構造802とからなるフォトニック結晶803に、線欠陥光導波路804を設けている。中空構造802は、例えば平面視で三角格子状に配列している。また、線欠陥光導波路804は、周期的な間隔で設けられた中空構造802の中に、線状に連続した部分の中空構造802をなくした構造であり、この領域に光が導波する。
【0068】
上述した構成のフォトニック結晶803の線欠陥光導波路804は、共振部821と、共振部821を挾む2つのミラー領域822とから構成され、共振部821の線欠陥光導波路804に、活性媒質805が設けられて(埋め込まれて)いる。活性媒質805は、InGaAs層からなるコア層の上下を、InGaAsPからなるクラッド層で覆った構成とされている。このように、ミラー領域822に挾まれた共振部821により、フォトニック結晶共振器(以下、単に光共振器ともいう)が構成される。
【0069】
このマイクロキャビティレーザは、活性媒質805が、基部801に埋め込まれたBH構造となっているため、活性媒質805の励起に伴い生じる熱を効率的に放出でき、かつ光共振器への高いキャリア閉じ込めを実現できる。
【0070】
さらに、BH構造を用いたレーザをフォトニック結晶線欠陥光導波路と結合させることにより、面内光出力も可能とする構造が提案されている(非特許文献7参照)。フォトニック結晶を用いたマイクロキャビティレーザは、将来の平面光集積回路用の光源として有望視されている。また、同類の構造が光メモリなど光情報処理用のデバイスとしても注目を集めている(非特許文献8参照)。
【0071】
しかしながら、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8で提案されるBH構造のフォトニック結晶共振器では、レーザの出力パワーを上げるために共振器の体積を増大させると、共振器が複数の共鳴モードを有することになる。このため、レーザ出力が、マルチモード発振となってしまうか、あるいは、単一モードで発振しても、どのモードが発振するか不確定となる、という問題が生じていた。
【0072】
これに対し、本発明によれば、前述した実施の形態1,2,3に示したように、漏れ導波路によるモード選択効果が得られるので、レーザの出力パワーを上げた状態で、単一モード発信のみを取り出すことが可能となる。レーザとする場合、
図8を用いて説明したように、フォトニック結晶連結共振器を構成する各フォトニック結晶共振器の共振部に、活性媒質(活性部)が埋め込まれていればよい。活性媒質は、フォトニック結晶の基部より大きな屈折率とされていればよい。
【0073】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について
図9,10を用いて説明する。
図9は、本発明の実施の形態4におけるフォトニック結晶連結共振器について説明する説明図である。平面を模式的に示している。また、
図10は、
図9の一部を拡大して示す平面図である。
図9では、平面を模式的に示している。このフォトニック結晶連結共振器は、複数のフォトニック結晶共振器901を備える。複数のフォトニック結晶共振器901は、光が導波する第1方向に直列に配列されている。
図9では、紙面の左右方向が第1方向となる。
【0074】
フォトニック結晶共振器901は、例えばInPからなる基部903と、基部903に設けられた柱状の複数の中空構造904とからなるフォトニック結晶より構成されている。中空構造904は、例えば平面視で三角格子状に配列している。各中空構造904は、同一形状とされている。このようなフォトニック結晶において、中空構造を形成しない部分(線欠陥部)などによる共振部105を設けることで、共振器としている。また、共振部105は、例えば、基部903を構成する材料とは異なる屈折率の材料からなる部分を埋め込む構造としてもよい。
【0075】
また、中空構造904とは異なる孔径(小さな孔径の)の中空構造を配置して共振部905としてもよい。
図9に例示する構成では、共振部905を、第2方向に延在して設けている。なお、基部903,中空構造904は、いずれも光の媒質であり、中空構造904は、基部903に対して異なる屈折率の媒質からなる柱状構造であってもよい。
【0076】
上述した構成は、前述した実施の形態1と同様である。また、実施の形態4においても、隣り合うフォトニック結晶共振器901の間に配置された漏れ導波路902を備える。また、漏れ導波路902は、第1方向に垂直な第2方向に延在している。漏れ導波路902は、中空構造を形成しない部分より構成したいわゆる線欠陥光導波路である。加えて、実施の形態4では、上記線欠陥光導波路の幅が、中空構造904による第1方向への3列分の配列間隔より狭くされている。
【0077】
線欠陥光導波路の幅は、第2方向に並ぶ複数の中空構造904からなる列の3つ分の第1方向の間隔となる。この第2方向への3列分の間隔の線欠陥光導波路の幅を狭くすることで、漏れ導波路902を伝搬する光(不要な共鳴モードの光)が、クラッド側へ漏れていくようになる。このため、漏れ導波路902を伝搬する光は、漏れ導波路902の端部に到達することが抑制されるようになる。この結果、不要な共鳴モードの光が、漏れ導波路902の端部で反射して戻り光となることが無く、フォトニック結晶共振器901へ悪影響を与えることがなくなる。特に、複数のフォトニック結晶共振器901による共鳴モードと漏れ導波路902の導波モード帯域とが一致する状態とされているとよい。
【0078】
漏れ導波路902を構成している線欠陥光導波路の幅は、
図10に示すように、線欠陥光導波路に隣接している2つ(2列)の中空構造904aの各々を、漏れ導波路902の中心方向に引き延ばして平面視楕円形状とすれば良い。平面視楕円形状とされた中空構造904aの中心は、もとの中空構造904の中心より、漏れ導波路902の中心方向にシフトする。この結果、線欠陥光導波路を挾む2つの中空構造904aの中心間の距離Wは、もとの2つの中空構造904の中心間の距離W
0より小さくなる。この結果、線欠陥光導波路の幅は狭くなる。
【0079】
上述した実施の形態4による線欠陥光導波路を狭くした効果について説明する。例えば、線欠陥光導波路の幅を、0.7倍に狭くした場合の分散特性の計算結果を
図11に示す。分散関係の計算には、マクスウェル方程式を時間領域で直接計算する3次元FDTD(finite difference time domain)法を用いた。分散関係は、モードの波数と角周波数の関係であるが,
図11では両者とも、フォトニック結晶の格子定数で規格化された値で示している。
【0080】
図11に示すように、白線で示されるライトライン(Light line)より高周波数側にも導波モードが存在している。このことは、実施の形態4における漏れ導波路902は、光を伝搬させながら、クラッド側に光を漏らすことを意味し、漏れ導波路902に結合した共鳴モードは、漏れ導波路902を通して基部903の外に放出される。
【0081】
なおライトラインは、クラッド(ここでは空気)を伝搬する光の分散関係を示すものである。ライトラインよりも右側、つまり波数の大きいモードは、クラッドの全反射条件を完全に満たしており、放射損失は起こらない。一方でライトラインよりも左側のモードは、全反射条件を不完全にしか満たさず、伝搬しながら回折損を受けて面外に放射する。このようなモードはリーキー波と呼ばれる。リーキー波は不完全ではあるが全反射によってエネルギーが基部903内に閉じ込められており、全反射条件を全く満たさない反導波の放射モードとは定性的に区別される。
【0082】
次に、実施の形態4におけるフォトニック結晶連結共振器の共鳴スペクトルの、線欠陥光導波路幅に対する依存性を
図12に示す。
図12の最下図は、元の状態の線欠陥光導波路の場合を示し、この導波路幅をW
0とする。
図12において、灰色で示す領域が、導波モードの存在する帯域で、この外に共鳴スペクトルピークが存在している。導波路幅がW
0では、線欠陥光導波路が、共鳴モードをうまく漏らすことができていないことを示している。これに対し、徐々に導波路幅を狭くしていくと、長波長側から新たな導波モード帯域が現れ、0.8W
0付近で共鳴モードの帯域に重なり始める。この導波モードが、
図11に示した漏れモードであり、このモードが共鳴モードに近づくことで、共鳴モードの数が徐々に減少し、0.7W
0付近で共鳴スペクトルピークが単一になっている。
【0083】
図13は、実施の形態4に係るフォトニック結晶連結共振器における磁界フィールド分布を示す分布図である。
図13には、上記単一モード状態における共鳴モードのモード形状が示されている。導波モードが、漏れ導波路中心を境に対称な形状(つまり漏れ導波路中心で腹となる空間分布)のため、漏れ導波路を挟んだ共鳴モードが反対称となる共鳴モード(つまり漏れ導波路中心で節となる空間分布)のみが、漏れ導波路から漏れずに残存できることが分かる。
【0084】
上述した実施の形態4における結果は、漏れ導波路の幅を狭くすることで、フォトニック結晶連結共振器の共鳴モードに漏れ導波路の導波モード帯域を合わせ、かつ、基部の外に光を漏らしやすい導波路特性をもたせることで、漏れ導波路のモードと対称性が正反対になる連結共鳴モード以外をフォトニック結晶外に効率よく漏らし、対称性が正反対になる共鳴モードのみを残存させることで、単一モード性を確保することが可能となることを示している。
【0085】
以上に説明したように、本発明によれば、第1方向に連結された隣り合うフォトニック結晶共振器の間に、第1方向に垂直な第2方向に延在する漏れ導波路を設けるようにしたので、フォトニック結晶連結共振器で所望とする単一モードのみを共鳴させることができるようになる。
【0086】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、フォトニック結晶は、基部とは異なる屈折率の複数の柱状部が、周期的に基部に設けられたものであればよい。複数の柱状部は中空構造であってもよく、基部とは異なる屈折率の材料から構成されていてもよい。また、複数の柱状部は、平面視で三角格子状に配列されていてもよく、また、正方格子状に配列されていてもよい。
【0087】
また、フォトニック結晶共振器としては、フォトニック結晶内の線欠陥の幅を部分的に変調した光共振器(非特許文献2,3参照)や、線欠陥を空気穴で終端した共振器(非特許文献4参照)など、フォトニック結晶線欠陥をベースとするフォトニック結晶共振器を用いることができる。いずれの場合であっても、漏れ導波路によるモード選択効果が得られることは言うまでもない。