特許第6417837号(P6417837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特許6417837両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法
<>
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000003
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000004
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000005
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000006
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000007
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000008
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000009
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000010
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000011
  • 特許6417837-両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6417837
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】両面粘着テープ、両面粘着テープの製造方法、接着方法及び分離方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/22 20180101AFI20181029BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20181029BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20181029BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20181029BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181029BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   C09J7/22
   C09J7/38
   C09J133/00
   C09J5/00
   B32B27/00 M
   B32B27/20 Z
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-205878(P2014-205878)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-74813(P2016-74813A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】森野 彰規
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−291137(JP,A)
【文献】 特開2007−023113(JP,A)
【文献】 特開2015−034265(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/056788(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02080793(EP,A1)
【文献】 特開2000−281806(JP,A)
【文献】 特開2007−177125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂及びフィラーを含有する易解体層の両面側に粘着剤層を有し、前記易解体層が熱により破断することで被着体同士を分離するものであることを特徴とする両面粘着テープ。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系又はアミド系の熱可塑性エラストマーである請求項1に記載の両面粘着テープ。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G23が1.0×10〜5.0×10Paの範囲であり、1Hz及び100℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G100が1.0×10〜5.0×10Paの範囲である請求項1又は2に記載の両面粘着テープ。
【請求項4】
前記易解体層と前記粘着剤層との間の少なくとも一方に基材フィルムを有する請求項1〜3のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
前記易解体層と前記粘着剤層との間の両方に基材フィルムを有する請求項4に記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
前記フィラーがアルミナ粒子、シリカ粒子、タルク粒子、炭酸カルシウム粒子、クレー粒子、珪藻土粒子、マイカ粒子、珪酸マグネシウム粒子、又はマイクロカプセルである請求項1〜5のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着剤層の少なくとも一方がアクリル系共重合体を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の両面粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着剤層の両方がアクリル系共重合体を含有する請求項7に記載の両面粘着テープ。
【請求項9】
熱可塑性樹脂及びフィラーを含有する易解体層を作製し、該易解体層の一方側に一方の粘着剤層を貼り合わせ、その後、該易解体層の他方側に他方の粘着剤層を貼り合わせることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の両面粘着テープの製造方法。
【請求項10】
被着体同士を請求項1〜8のいずれかに記載の両面粘着テープにより貼り合わせることを特徴とする接着方法。
【請求項11】
前記易解体層を加熱することを特徴とする、請求項10に記載の接着方法により貼り合わされた前記被着体同士の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体への貼付け、物品間の固定を行った後、一定期間経過後に当該貼付けや固定を容易に解体できる易解体性の両面粘着テープ、当該両面粘着テープの製造方法、当該両面粘着テープによる接着方法、及び当該両面粘着テープにより貼り合わされた被着体同士の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れる接着信頼性の高い接合手段として、OA機器、IT・家電製品、自動車等の各産業分野での部品固定用途や、部品の仮固定用途、製品情報を表示するラベル用途等に使用されている。近年、地球環境保護の観点から、これら家電や自動車等の各種の産業分野において、使用済み製品のリサイクル、リユースの要請が高まっている。各種製品をリサイクル、リユースする際には、部品の固定やラベルに使用されている粘着テープを剥離する作業が必要となるが、当該粘着テープは製品中の各所に設けられているため、簡易な除去工程による作業コストの低減が要望されている。
【0003】
易解体性の粘着テープとしては、例えば、接着力が相違する2層以上の粘着層を有する粘着部材が開示されている(特許文献1参照)。当該粘着テープは、重畳構造の粘着層を有する粘着部材における弱粘着層を介して被着体を接合処理することにより、被着体の強固な固着と、当該弱粘着層を剥離面とする容易な解体を実現するとの粘着部材である。しかし当該粘着部材は、複数の粘着剤層を必須の構成とするため製造コストが高くなる問題があった。また、弱粘着層により被着体との接着が行われる構成であるため接着力を高めるには制限があり、強固に物品を固定する用途への展開が困難であった。
【0004】
他の易解体性の粘着テープとしては、例えば、光照射により発泡する粘着剤組成物として、t−ブチルオキシカルボニル構造を有する発泡性成分を有する発泡性接着剤組成物が開示されている(特許文献2参照)。当該粘着剤組成物を使用した粘着テープは、光照射により発泡することから、貼付後に光照射により被着体からの剥離が可能となる。しかし、当該粘着剤組成物は、光照射が必要なことから、解体には光照射装置が必要となるため設備投資が大きくなり、また、粘着テープが貼り付けられた部分に一定量の光照射が必要となることから、一度に多量の解体を行うことが難しいものであった。
【0005】
その他、加熱により発泡する熱発泡剤含有展着剤層を含む粘着テープまたはシートが開示されている(特許文献3参照)。熱発泡剤含有展着剤層を含む粘着テープは、加熱により発泡することから、貼付後の加熱により被着体からの剥離が可能となる。しかし、比較的高い処理温度で粘着テープを加熱する必要があり、熱により被着体が劣化してしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−140093号公報
【特許文献2】特開2004−43732号公報
【特許文献3】特開2013−79322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、被着体への貼付けや部品間の固定が可能で、かつ、解体時には簡易に解体可能な両面粘着テープ、当該両面粘着テープの製造方法、当該両面粘着テープによる接着方法、及び当該両面粘着テープにより貼り合わされた被着体同士の分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の態様を含む。
(1)熱可塑性樹脂及びフィラーを含有する易解体層の両面側に粘着剤層を有することを特徴とする両面粘着テープ。
(2)前記熱可塑性樹脂が、スチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系又はアミド系の熱可塑性エラストマーである前記(1)に記載の両面粘着テープ。
(3)前記熱可塑性樹脂の1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G23が1.0×103〜5.0×107Paの範囲であり、1Hz及び100℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G100が1.0×102〜5.0×106aの範囲である前記(1)又は(2)に記載の両面粘着テープ。
(4)前記易解体層と前記粘着剤層との間の少なくとも一方に基材フィルムを有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の両面粘着テープ。
(5)前記易解体層と前記粘着剤層との間の両方に基材フィルムを有する前記(4)に記載の両面粘着テープ。
(6)前記フィラーがアルミナ粒子、シリカ粒子、タルク粒子、炭酸カルシウム粒子、クレー粒子、珪藻土粒子、マイカ粒子、珪酸マグネシウム粒子、又はマイクロカプセルである前記(1)〜(5)のいずれかに記載の両面粘着テープ。
(7)前記粘着剤層の少なくとも一方がアクリル系共重合体を含有する前記(1)〜(6)のいずれかに記載の両面粘着テープ。
(8)前記粘着剤層の両方がアクリル系共重合体を含有する前記(7)に記載の両面粘着テープ。
(9)熱可塑性樹脂及びフィラーを含有する易解体層を作製し、該易解体層の一方側に一方の粘着剤層を貼り合わせ、その後、該易解体層の他方側に他方の粘着剤層を貼り合わせることを特徴とする、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の両面粘着テープの製造方法。
(10)被着体同士を前記(1)〜(8)のいずれかに記載の両面粘着テープにより貼り合わせることを特徴とする接着方法。
(11)前記易解体層を加熱することを特徴とする、前記(10)に記載の接着方法により貼り合わされた前記被着体同士の分離方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の両面粘着テープは、被着体への貼付が可能で、被着体同士を貼り合わせることができ、被着体同士の貼り合わせを解消して解体する際には加熱により被着体同士の貼り合わせを簡易に分離することができる。
本発明の両面粘着テープの製造方法によれば、本発明の両面粘着テープを製造することができる。
本発明の接着方法によれば、被着体同士を貼り合わせることができる。
本発明の分離方法によれば、被着体同士の貼り合わせを簡易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る両面粘着テープの実施形態の一例を示す断面図である。
図2】本発明に係る両面粘着テープの実施形態の一例を示す断面図である。
図3】本発明に係る両面粘着テープの製造方法の実施形態の一例を説明する図である。
図4】本発明に係る接着方法の実施形態の一例を説明する図である。
図5】本発明に係る分離方法の実施形態の一例を説明する図である。
図6】被着体の分離の様子を模式的に示した図である。
図7】本発明に係る分離方法の実施形態の一例を示す断面図である。
図8】実施例1の両面粘着テープ及び比較例1の両面粘着テープの製造方法、並びに実施例1の両面粘着テープ及び比較例1の両面粘着テープの構成を説明する図である。
図9】実施例における接着性試験の方法を説明する図である。
図10】実施例における解体性試験の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪両面粘着テープ≫
本発明の両面粘着テープは、熱可塑性樹脂及びフィラーを含有する易解体層の両面側に粘着剤層を有する。
以下、本発明の両面粘着テープの実施形態の一例を説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る両面粘着テープの実施形態の一例である。両面粘着テープ1は、熱可塑性樹脂11及びフィラー12を含有する易解体層10の両面側に粘着剤層20,21を有する。粘着剤層20,21上には、夫々剥離シート30,31が積層されている。
【0013】
以下、両面粘着テープの各構成を説明する。
[易解体層]
易解体層10は、熱可塑性樹脂11及びフィラー12を含有する。易解体層は、両面粘着テープにより貼り合わせられた被着体同士を分離する際に、被着体同士を引き離す等の剥離応力により破断される層である。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のウレタン系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリトリメチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリブチレンナフタレ−ト等のポリエステル系樹脂;ナイロン(登録商標)等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン(PS)、イミド変性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合(SAN)樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、シクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂;ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、これらのなかでも、特にスチレン系、オレフィン系、塩化ビニル系、エステル系、ウレタン系、又はアミド系の熱可塑性エラストマーであることが好ましく、スチレン系熱可塑性エラストマーが、特に好ましい。
【0014】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)等のスチレン系AB型ジブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS))、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS))、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)等のスチレン系ABA型トリブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン(SBSB)等のスチレン系ABAB型テトラブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン(SBSBS)等のスチレン系ABABA型ペンタブロック共重合体;これら以上のAB繰り返し単位を有するスチレン系マルチブロック共重合体;スチレン−ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体のエチレン性二重結合を水素添加した水素添加物;等が挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーは市販品を用いてもよい。
【0015】
通常状態で被着体同士を良好に固定させるとの観点から、易解体層を構成する熱可塑性樹脂の1Hz及び23℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G23が1.0×10〜5.0×10Paであることが好ましく5.0×10〜5.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10〜1.0×10Paであることがさらに好ましい。
【0016】
また、加熱により被着体同士を容易に分離させるとの観点から、易解体層を構成する熱可塑性樹脂の1Hz及び100℃での動的粘弾性スペクトルで測定される貯蔵弾性率G100が1.0×10〜5.0×10Paであることが好ましく5.0×10〜1.0×10Paであることがより好ましく、5.0×10〜5.0×10Paであることがさらに好ましい。
【0017】
易解体層の熱可塑性樹脂の前記貯蔵弾性率G100は、前記貯蔵弾性率G23よりも小さいことが好ましい。
【0018】
前記貯蔵弾性率G23及びG100は、易解体層を構成する熱可塑性樹脂から形成された試験片に対する測定の結果とする。該試験片にフィラーは含まれない。試験片の厚みは2mmとする。試験片は易解体層に含有される熱可塑性樹脂をシート上に塗布する等によって得ることができる。
貯蔵弾性率G23及びG100は、市販の粘弾性試験機を用いて、後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
【0019】
易解体層の厚みは、5〜80μmであることが好ましく、5〜60μmであることがより好ましく、10〜20μmであることがさらに好ましい。易解体層の厚みは、易解体層の厚み方向にフィラーの存在しない部分のうち、無作為に選出した5か所の厚みを測定して得られた平均値とする。易解体層の厚みが上記範囲であることにより、層形成が容易であり易解体性に優れる易解体層とすることができる。
【0020】
フィラーは、加熱により被着体同士の分離をより容易にするとの観点から、熱可塑性樹脂よりも硬度が硬いものであることが好ましい。フィラー材料は有機質、無機質いずれでもよい。
【0021】
フィラーの形状は特に制限されず、例えば、板状、球状、棒状等の形状やその他不定形の形状のものが挙げられ、球状が好ましい。フィラーは粒子状であることが好ましい。
【0022】
フィラーとしては、アルミナ粒子、シリカ粒子、タルク粒子、炭酸カルシウム粒子、クレー粒子、珪藻土粒子、マイカ粒子、珪酸マグネシウム粒子、又はマイクロカプセルが挙げられる。
マイクロカプセルとしては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなど物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球が挙げられる。前記殻は、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成されていてもよい。前記殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。マイクロカプセルは、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などにより製造できる。なお、マイクロカプセルには、例えば、松本油脂製薬(株)製、商品名「マイクロスフェアー F30D、F50D」や日本フィライト(株)製、商品名「エクスパンセル 461−40DU」などの市販品を使用することも可能である。
【0023】
フィラーのサイズは、フィラーの粒子径が、易解体層の厚みの30%以上、易解体層の厚み以下であることが好ましく、易解体層の厚みの40%以上、易解体層の厚みの90%以下であることがより好ましく、易解体層の厚みの40%以上、易解体層の厚みの80%以下であることがさらに好ましい。フィラーの粒子径が、上記範囲であることにより、易解体層にかかる剥離応力の分散の抑制の程度が好ましいものとなり、より容易に易解体層を破断することができる。フィラーの粒子径が易解体層の厚み以下である場合、フィラーの突出により易解体層表面に積層された層との一体化を阻害する恐れがなく好ましい。フィラーの粒子径は、フィラー粒子の長径の値とする。
【0024】
フィラーの粒子径は、上記易解体層の厚みとの比を考慮し、適宜定めればよいが、1.5μm〜80μmであることが好ましく、10μm〜50μmであることがより好ましく、15μm〜40μmであることがさらに好ましい。
【0025】
易解体層における熱可塑性樹脂に対するフィラーの配合体積比は、フィラーが熱可塑性樹脂に対して5〜80体積%で配合されていることが好ましく、10〜50体積%で配合されていることがより好ましく、10〜40体積%で配合されていることがさらに好ましい。上記範囲とすることにより、より解体性に優れた易解体層とすることができる。
【0026】
易解体層における熱可塑性樹脂に対するフィラーの配合重量比としては、上記体積比を考慮して適宜定めればよいが、フィラーが熱可塑性樹脂に対して5〜80重量%で配合されていることが好ましく、10〜50重量%で配合されていることがより好ましく、10〜40重量%で配合されていることがさらに好ましい。
【0027】
また、易解体層においては、酸触媒や酸発生剤を含有することで、光や熱の外部刺激による解体性を付与することもできる。酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸やベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、脂肪族スルホン酸などの有機酸や、塩酸や硫酸等の無機酸等を例示できる。また、酸発生剤としては、各種の熱酸発生剤や光酸発生剤を使用できる。熱酸発生剤としては、熱酸発生剤としては、例えば、スルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩を使用することができ、光酸発生剤としては、例えば4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアルセネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、及び3−ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート等から適宜選択して使用することができる。例えばN−ヒドロキシナフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドトリフラート、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−4−メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス(tert−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、ビフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、フェニル−(3−ヒドロキシ−ペンタデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、及びフェニル−(3−ヒドロキシペンタデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート等から適宜選択して使用することができる。
【0028】
なかでも、光酸発生剤は、光と熱の二種の外部刺激により粘着剤層を好適に解体できる一方で、粘着剤組成物として保管する際や、両面粘着テープとして物品を固定した際には容易に分解や解体が生じにくく、安定した保存性や粘着特性を保持できるため、特に好ましく使用できる。特に、N−ヒドロキシナフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステルやビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン等の酸発生剤単独での熱分解温度が概ね150℃以上のものは安定性が良く、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン等の加熱により気体を発生する光酸発生剤は、特に高い解体性を実現しやすく、N−ヒドロキシナフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル等の100℃程度の加熱よっても気体を発生しにくい光酸発生剤は、熱安定性の高い粘着剤層を得やすく、また、骨格中にベンゼン環やナフタレン環構造等の光吸収性の構造を有する光酸発生剤は、少ない光照射時間や少ない含有量で好適な解体性を実現できることから、それぞれ好ましく使用できる。
【0029】
[粘着剤層]
粘着剤層20,21は被接着体と接着する層である。粘着剤層20,21を構成する粘着剤は、ポリマーの種類として、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ビニルエーテル系等が挙げられる。また、粘着剤の形態としては、溶剤系、エマルジョン型粘着剤、水溶性粘着剤等の水系、ホットメルト型粘着剤、UV硬化型粘着剤、EB硬化型粘着剤等の無溶剤系等が挙げられる。
【0030】
なかでも粘着剤層20,21はアクリル系共重合体を含有することが好ましい。アクリル系共重合体は、親水性を付与する(メタ)アクリル酸と、それと共重合可能なその他のモノマーとの共重合体であり、(メタ)アクリル酸とビニルエーテルとを反応させて得られる(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
粘着剤層の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜80μmであることがより好ましく、30〜70μmであることがさらに好ましい。粘着剤層の厚みが上記範囲であると、層形成が容易であり且つ被着体同士の接着性にも優れるため好ましい。
【0032】
粘着剤層20,21は、必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤、その他の添加剤等を含有していてもよい。
【0033】
(粘着付与樹脂)
粘着剤層においては、得られる粘着剤層の強接着性を調整するために粘着付与樹脂を使用しても良い。本発明に使用する粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系、重合ロジン系、重合ロジンエステル系、ロジンフェノール系、安定化ロジンエステル系、不均化ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、石油樹脂系等が例示できる。
【0034】
(溶媒)
粘着剤層においては、粘着剤組成物に通常使用される溶媒を使用でき、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン等を使用できる。また、水系粘着剤組成物とする場合には、水又は、水を主体とする水性溶媒を使用できる。
【0035】
(架橋剤)
粘着剤層においては、得られる粘着剤層の凝集力を向上させる目的で、架橋剤を使用することも好ましい。架橋剤としては、公知のイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、多価金属塩系架橋剤、金属キレート系架橋剤、ケト・ヒドラジド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラン系架橋剤、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系架橋剤等が使用できる。
【0036】
(添加剤)
粘着剤層においては、酸触媒や酸発生剤を含有することで、光や熱の外部刺激による解体性を付与することもできる。酸触媒や酸発生剤としては、上述の易解体層と同様のものを使用することができる。
粘着剤層においては、添加剤として、必要に応じて本発明の所望の効果を阻害しない範囲で、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、発泡剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知のものを粘着剤組成物に任意で添加することができる。また、酸触媒、酸発生剤を添加してもよい。
【0037】
[剥離シート]
剥離シート30としては、例えば、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙、ポリエチレン等のフィルムをラミネートした紙、ポリビニルアルコールやアクリル酸エステル共重合体等の樹脂を塗布した紙、ポリエステルやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム等に、剥離剤であるフッ素樹脂やシリコーン樹脂等を塗布したもの等が挙げられる。
【0038】
本実施形態の両面粘着テープが有する一対の粘着剤層は、それぞれ同一の構成であってもよく、それぞれ異なる構成であってもよい。
【0039】
本実施形態の両面粘着テープは、易解体層に含有された熱可塑性樹脂が加熱により軟化し、易解体層にフィラーが含有されているので、易解体層にフィラーが含有されていない場合と比べ、より弱い力で被着体同士の接着を解体することができる。
【0040】
<第2の実施形態>
図2は、本発明に係る両面粘着テープの実施形態の一例である。両面粘着テープ2は、熱可塑性樹脂11及びフィラー12を含有する易解体層10の両面側に粘着剤層20,21を有し、前記易解体層と前記粘着剤層との間の両方に基材フィルム40,41を有する。粘着剤層20,21上には、夫々剥離シート30,31が積層されている。
【0041】
第2の実施形態の両面粘着テープは、前記<第1の実施形態>の両面テープが、前記易解体層と前記粘着剤層との間の両方に、さらに基材フィルム40,41を有するものである。なお、前記<第1の実施形態>と共通する点については、説明を省略する。
【0042】
[基材フィルム]
基材フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ABS、ポリカーボネート、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリビニルアルコール等からなるプラスチック系フィルム、パルプ、レーヨン、マニラ麻、アクリロニトリル、ナイロン、ポリエステル等からなる不織布、紙、布、又は金属箔等があげられる。基材フィルムは、両面粘着テープにより貼り合わせられた被着体同士が解体され易解体層が破断された後、両面粘着テープを被着体から剥離する際に、支持体としての役目を果たし得る。したがって基材フィルムと両面粘着テープの他の層との接着性(本実施形態においては、基材フィルム40,41と粘着剤層20,21との接着性)及び支持体としての強度を両立しやすいことから、プラスチック系フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムがより好ましい。
【0043】
また、基材と粘着剤層との密着性を向上させることを目的に、基材の片面または両面に、コロナ処理、プラズマ処理、アンカーコート処理等を施してもよい。
【0044】
本実施形態の両面粘着テープは、易解体層に含有された熱可塑性樹脂が加熱により軟化し、易解体層にフィラーが含有されているので、易解体層にフィラーが含有されていない場合と比べ、より弱い力で被着体同士の接着を解体することができる。
本実施形態の両面粘着テープは、さらに、易解体層と粘着剤層との間に基材フィルムを有する。解体された両面粘着テープは、両面粘着テープの残渣が被着体上に残ってしまう場合がある。特に易解体層のような易解体性の脆い層を有する両面粘着テープでは、被着体上に残った両面粘着テープの残渣を取り除き難い場合がある。しかし、本実施形態の両面粘着テープは、さらに、易解体層と粘着剤層との間に基材フィルムを有するので、基材フィルム部分を捉えて引っ張るなどすることにより、解体された両面テープの残渣全体を、容易に被着体から剥がすことができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、熱可塑性樹脂11及びフィラー12を含有する易解体層10、粘着剤層20,21、基材フィルム40,41、及び剥離シート30,31からなる両面粘着テープを例示したが、上記の層構造に加え、さらに任意の層構造を有していてもよい。
例えば、上記基材フィルム40,41と粘着剤層20,21との間に、発泡体(フォーム剤)層が設けられていてもよい。発泡体層はクッションの役割を果たし、発泡体層を有する両面粘着テープにクッション性を付与することができる。
【0046】
本発明の両面粘着テープの被着体は特に制限されないが、剛体と剛体の接着、剛体と剛体同士の分離に好適に用いることができる。剛体の被着体としては、例えば、金属板、金属筐体、金属カバー、ガラス板、プラスチック板等を挙げることができる。本発明の両面粘着テープによって接着される被着体同士は、同種類の被着体であっても、異なる種類の被着体同士であってもよい。また、本発明の両面粘着テープによって接着及び分離される被着体同士は、同種類の被着体であっても、異なる種類の被着体同士であってもよい。
本発明の両面粘着テープは、リユースやリサイクル時の部材間の分離に際して、加熱により容易に解体できる。このため、自動車、建材、OA、家電業界などの工業用途における各種製品の部品間固定を行う両面粘着テープとして好適に使用できる。リユースやリサイクル時の多量の部品の分離や、多量のラベル剥離等を行う際にも作業効率が良好である。
本発明の両面粘着テープは、低い加熱温度により解体を実現することも可能である。そのため、特に、熱により部品の劣化が懸念される携帯電話、映像機器、コンピュータなどの電気製品の部品間固定を行う両面粘着テープとして好適に使用できる。
【0047】
≪両面粘着テープの製造方法≫
【0048】
両面粘着テープが、基材を有する場合には、前記粘着剤組成物をロールコーターやダイコーター等を用い、直接基材に塗布した後、乾燥工程を経て、剥離シートを貼り合わせる直塗り法や、剥離シート上にいったん粘着剤組成物をコーティングし、乾燥工程を経た後、基材に転写する転写法により製造できる。基材を有さない場合には、剥離シート上に粘着剤組成物をコーティングし、他の剥離シートを貼り合わせる方法により製造できる。
【0049】
本発明の両面粘着テープの製造方法は、熱可塑性樹脂及びフィラーを含有する易解体層を作製し、該易解体層の一方側に一方の粘着剤層を貼り合わせ、その後、該易解体層の他方側に他方の粘着剤層を貼り合わせるものである。
【0050】
図3は、本発明に係る両面粘着テープの製造方法の実施形態の一例である。まず、粘着剤層を構成する粘着剤、易解体層を構成する熱可塑性樹脂及びフィラーの混合物を用意する。次に、図3に示すように、アプリケーターを用いて、剥離シート32,34上に粘着剤を塗布して粘着剤層20,21を形成し、剥離シート33上に熱可塑性樹脂及びフィラーの混合物を塗布して易解体層10を形成する。次いで、易解体層10の一方の面に粘着剤層20を貼り合わせた後、易解体層10の他方の面に粘着剤層21を貼り合わせ、本発明に係る両面粘着テープを得る。
【0051】
本実施形態の両面粘着テープの製造方法では、製造する両面粘着テープの2つの粘着剤層20,21が同一の構成であるので、易解体層と粘着剤層とを個別に成形して貼り合わせることで、粘着剤層の成形の工程は一度でよく、効率良く両面粘着テープを製造することができる。
【0052】
≪接着方法・分離方法≫
本発明の接着方法は、被着体同士を本発明の両面粘着テープにより貼り合わせるものである。
また、本発明の分離方法は、前記易解体層を加熱し、本発明の接着方法により貼り合わされた前記被着体同士を分離させるものである。
【0053】
図4は、本発明に係る接着方法の実施形態の一例である。図4に示すように、両面粘着テープの両面の粘着層20,21に被着体50,51を接触させ、被着体同士を貼り合わせ、接着させる。
【0054】
図5は、本発明に係る分離方法の実施形態の一例である。
まず、両面粘着テープを加熱する。両面粘着テープの加熱は貼り合わされた前記被着体及び両面粘着テープ全体を加熱することにより行ってもよい。すると、易解体層10の熱可塑性樹脂11が熱により軟化する。このとき被着体50,51同士を分離させる方向に両面粘着テープに力をかけることで、両面粘着テープに剥離応力がかけられる。本発明の両面粘着テープの易解体層にはフィラーが含有されているので、被着体同士を容易に分離させることができる。
【0055】
図6は、本発明の分離方法と別法とにおける、被着体の分離の様子の一例を模式的に示した図である。図6(a)は、本発明の分離方法の一例であり、両面粘着テープの易解体層10にフィラー12が含有されている場合を示している。図6(b)は、両面粘着テープの易解体層10にフィラーが含有されていない場合を示している。
図6(b)に示すように、易解体層10にフィラーが配合されていない場合では、熱可塑性樹脂11にかかる応力が分散し、熱可塑性樹脂の層は解体され難い。
一方、本発明の分離方法では、両面粘着テープの易解体層10にフィラー12が含有されているので、図6(a)に示すように、熱可塑性樹脂11にかかる応力が集中するため易解体層にフィラーが配合されていない場合よりも、少ない力で易解体層を解体することができ、容易に被着体同士を分離させることができる。
【0056】
熱解体を行う際の加熱の条件は、良好な解体性を実現できる温度にて行われればよいが、60〜180℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましく、80〜130℃であることがさらに好ましく、80〜100℃であることがさらに好ましく、80〜90℃であることが特に好ましい。
【0057】
図7は、本発明に係る分離方法の実施形態の一例である。まず、上記の図6で示したような分離方法を行う。このとき被着体50,51上には、解体された両面粘着テープの残渣が残っている。次いで、両面粘着テープを冷却する。その後基材フィルム41部分を引っ張ることで、基材フィルムと両面粘着テープの他の層とが一体となった状態で、両面粘着テープの残渣全体を被着体から剥がすことができる。
【0058】
冷却は、加熱によって軟化された両面粘着テープの残渣中の熱可塑性樹脂の軟化の程度が低下し、両面粘着テープの残渣を取り除き扱いやすい状態となる温度にまで適宜冷却すればよく、35℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0059】
合成ゴム層(1−1) (易解体層・フィラー有り)の製造
重量平均分子量20万のスチレン−イソプレンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は52質量%。前記スチレン−イソプレンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は15質量%、ポリイソプレン単位の質量割合は85質量%)を100質量部、C5石油系粘着付与樹脂(軟化点100℃、数平均分子量885)を40質量部、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(軟化点125℃、数平均分子量880)を30質量部、液状粘着付与樹脂としてHV−100(JX日鉱日石株式会社製、低分子量ポリブテン)を5質量部、フィラーとして、日本フィライト社製アクリル製微粒子エクスパンセル(980)DU−120を20質量部、の配合比で混合したものを、トルエンに溶解することによって合成ゴム系粘着剤を得た。
前記粘着剤を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが50μmとなるように、剥離シートの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって層を形成した。
【0060】
合成ゴム層(1−2) (易解体層・フィラー有り)の製造
フィラーとして、松本油脂製アクリル系微粒子 FN−180Sを用い、FN−180S20質量部と、上記スチレン−イソプレンブロック共重合体S100質量部とを混合した以外は、上記合成ゴム層(1−1)の製造と同様にして、合成ゴム層(1−2)を製造した。
【0061】
合成ゴム層(1−3) (易解体層・フィラー有り)の製造
フィラーとして、松本油脂製アクリル系微粒子 FN−100Mを用い、FN−100M20質量部と、上記スチレン−イソプレンブロック共重合体S100質量部と混合した以外は、上記合成ゴム層(1−1)の製造と同様にして、合成ゴム層(1−3)を製造した。
【0062】
合成ゴム層(1−4) (易解体層・フィラー有り)の製造
フィラーとして、松本油脂製アクリル系微粒子 FN−180Sを用い、FN−180S30質量部と、上記スチレン−イソプレンブロック共重合体S100質量部と混合した以外は、上記合成ゴム層(1−1)の製造と同様にして、合成ゴム層(1−4)を製造した。
【0063】
合成ゴム層(2) (フィラー無し)の製造
重量平均分子量20万のスチレン−イソプレンブロック共重合体S(トリブロック共重合体とジブロック共重合体との混合物。前記混合物の全量に対する前記ジブロック共重合体の占める割合は52質量%。前記スチレン−イソプレンブロック共重合体の全体に占めるポリスチレン単位の質量割合は15質量%、ポリイソプレン単位の質量割合は85質量%)を100質量部、C5石油系粘着付与樹脂(軟化点100℃、数平均分子量885)を40質量部、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(軟化点125℃、数平均分子量880)を30質量部、液状粘着付与樹脂としてHV−100(JX日鉱日石株式会社製、低分子量ポリブテン)を5質量部、の配合比で混合したものを、トルエンに溶解することによって合成ゴム系粘着剤を得た。
前記粘着剤を、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが50μmとなるように、剥離シートの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって層を形成した。
【0064】
アクリル系粘着剤層(3)の製造
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、ブチルアクリレート44.9質量部、2−エチルヘキシルアクリレート50質量部、アクリル酸2質量部、酢酸ビニル3質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.1質量部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、70℃で10時間重合することによって、重量平均分子量80万のアクリル系共重合体溶液を得た。次に、アクリル系共重合体100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(軟化点125℃、数平均分子量880)30質量部を添加し、酢酸エチルを加えて混合することによって、不揮発分45質量%のアクリル系粘着剤を得た。
前記粘着剤100質量部に対し、日本ポリウレタン工業(株)製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤、固形分45質量%)を1.1質量部添加し15分攪拌した後、アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが50μmになるように、剥離シート上に塗布し、85℃下で5分間乾燥した。
【0065】
(実施例1)
図8(a)に示すように、アクリル系粘着剤層(3)22を厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム42に貼り合わせた。
一方、別のアクリル系粘着剤層(3)23と易解体層である合成ゴム層(1−1)15(フィラー13有り)を厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム43の両面にそれぞれ貼り合わせ、上記合成ゴム層(1−1)15側の剥離紙を除去して、先に貼り合わせておいた前記ポリエチレンテレフタレートフィルム42及びアクリル系粘着剤層(3)22の貼合品に貼り合わせた後、4kgf/cmで加圧しラミネートすることによって、実施例1の両面粘着テープ3を作製した。
【0066】
(実施例2)
上記合成ゴム層(1−1)に代えて、上記合成ゴム層(1−2)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2の両面粘着テープを作製した。
【0067】
(実施例3)
上記合成ゴム層(1−1)に代えて、上記合成ゴム層(1−3)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、実施例3の両面粘着テープを作製した。
【0068】
(実施例4)
上記合成ゴム層(1−1)に代えて、上記合成ゴム層(1−4)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、実施例4の両面粘着テープを作製した。
【0069】
(比較例1)
図8(b)に示すように、合成ゴム層(1)15(フィラー有り)を、合成ゴム層(2)16(フィラー無し)としたこと以外は、実施例1と同様の方法で比較例1の両面粘着テープ4を作製した。
【0070】
【表1】
【0071】
上記実施例及び比較例にて得られた両面粘着テープについて、以下の評価を行った。得られた結果を表1に示した。
【0072】
<常温時の接着性試験>
図9は、接着性試験の方法を説明する図である。23℃の環境下、実施例1及び比較例1で得た両面粘着テープを、1辺(外形)の長さが14mmの正方形で、幅2mmの額縁状に裁断した。前記裁断した両面粘着テープ102を、長さ15mm、幅15mm及び厚さ2mmの直方体であるアクリル板101に貼付した。その際、前記裁断した両面粘着テープ102の1辺が、前記アクリル板101の1辺15mmに対応するように貼付したものを試験片101とした。次に、中心部に直径10mmの穴を有する縦20mm、横50mm及び厚さ1mmのSUS板103と、前記試験片101の粘着テープ側の面とを、それらの中心が一致するように貼付し、プレス機を用いて80N/cmで10秒加圧した後、前記加圧した状態を解き、23℃の環境下で1時間静置することによって試験片102を作製した。次に、直径8mmのステンレス製のプローブ104を備えた引張試験機(エイアンドディ社製テンシロンRTA−100、圧縮モード)を用意した。前記プローブ104が、前記試験片102を構成するSUS板103の穴をとおして、前記試験片102を構成する試験片101に力を加えた際に、前記試験片101がSUS板103からはがれた時の強度(N/cm)を測定した。なお、前記プローブ104が試験片101を押す速度は10mm/分に設定した。
【0073】
<加熱時の接着性試験>
環境温度を23℃から85℃に代えた以外は、上記常温時の接着性試験と同様にして、接着性試験を行った。
【0074】
<加熱時の解体性試験>
図10は、解体性試験の方法を説明する図である。まず、実施例1及び比較例1で得た両面粘着テープを、1辺(外形)の長さが20mmの正方形状に裁断した。前記裁断した両面粘着テープ202を、長さ100mm、幅30mm及び厚さ1mmのSUS板201に貼付した。その次に、SUS板201’を前記両面粘着テープ202とSUS板201とが貼付された面と反対側の面に貼付し、5kg荷重ローラーで1往復加圧したものを試験片とした。作成した試験片を各温度条件下に30分放置したものを取り出し、SUS板201,201’の両端を手で持ち、垂直方向に引き剥がした際のSUS板の分離し易さを評価した。また、SUS板201,201’同士を引き剥がすように、SUS板201,201’の両端にSUS板と垂直方向に力を加えた際に、前記両面粘着テープ202がSUS板SUS板201又は201’からはがれた時の強度(N/cm)を測定した。
評価結果を表1に示す。
【0075】
尚、評価基準は下記とした。
◎:既に剥がれている(自然分離)
○:SUS板同士を容易に分離させることができる/引き剥がす力が<7N/cm
△:力を入れればSUS板同士を分離させることができる/引き剥がす力が7〜20N/cm
×:SUS板同士を分離させることができない
【0076】
<粘着剤層の動的粘弾性(貯蔵弾性率)測定>
粘着テープの製造に使用した樹脂スチレン−イソプレンブロック共重合体Sを、アプリケーターを用いて乾燥後の厚さが100μmとなるように、離型ライナーの表面に塗布し、85℃で5分間乾燥させることによって、厚さ100μmの熱可塑性樹脂層を、複数枚形成した。
【0077】
次に、同一の粘着剤を用いて得た熱可塑性樹脂層を重ねあわせることによって、厚さ2mmの熱可塑性樹脂層からなる試験片を作成した。
【0078】
ティ・エイ・インスツルメントジャパン社製の粘弾性試験機(アレス2kSTD)に、直径7.9mmのパラレルプレートを装着した。前記試験片を、前記パラレルプレートで圧縮荷重50gで挟み込み、周波数1Hz、温度領域−60〜150℃、及び、昇温速度2℃/minの条件で、23℃下での貯蔵弾性率(G23)及び100℃下での貯蔵弾性率(G100)を測定した。
【符号の説明】
【0079】
1,2…両面粘着テープ
10…易解体層
11…熱可塑性樹脂
12…フィラー
20,21…粘着剤層
30,31,32,33,34…剥離シート
40,41…基材フィルム
50,51…被着体
3,4…両面粘着テープ
14…フィラー
15…合成ゴム層(1)
16…合成ゴム層(2)
22,23…アクリル系粘着剤層(3)
42,43…ポリエチレンテレフタレートフィルム
101…アクリル板
102…両面粘着テープ
103…SUS板
104…プローブ
201,201´…SUS板
202…両面粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10