(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6418575
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法、および制御装置
(51)【国際特許分類】
H04W 72/04 20090101AFI20181029BHJP
H04W 72/10 20090101ALI20181029BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20181029BHJP
H04W 76/15 20180101ALI20181029BHJP
【FI】
H04W72/04 111
H04W72/04 132
H04W72/10
H04W84/12
H04W76/15
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-87653(P2015-87653)
(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-208267(P2016-208267A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】石原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】アベーセーカラ ヒランタシティラ
(72)【発明者】
【氏名】安達 文幸
(72)【発明者】
【氏名】天間 克宏
(72)【発明者】
【氏名】シライト マルティン トゥア ハモナンガン
【審査官】
齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−531869(JP,A)
【文献】
特表2015−511445(JP,A)
【文献】
特開2012−222398(JP,A)
【文献】
特表2010−525619(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/147294(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0269459(US,A1)
【文献】
Martin T.H. Sirait et.al.,AP Cooperative Diversity in Wireless Network Using Interference-Aware Channel Segregation Based Dynamic Channel Assignment,IEEE 25th Annual International Symposium on Personal Indoor and Mobile Radio Communications (PIMRC'14) Washington D.C USA,2014年 9月 5日,SectionsI〜II
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局装置(以下、APという)が接続される制御装置(以下、CCという)の制御により、複数のAPが同一チャネルを用いて端末装置(以下、STAという)とAP連携ダイバーシチ通信を行う無線通信システムにおいて、
前記APは、他のAPが送信するビーコン信号を受信し、チャネルごとのビーコン受信電力から得られる同一チャネル干渉電力が小さい順にチャネル優先順位を保持し、該チャネル優先順位を前記CCに通知するチャネル優先順位通知手段を備え、
前記STAは、前記複数のAPが送信するビーコン信号を受信し、ビーコン受信電力が大きい順の前記APの番号をAP情報として保持し、該AP情報を前記APに対する通信要求に含めて前記CCに送信するAP情報送信手段を備え、
前記CCは、
前記通信要求を送信するSTA(以下、要求STAという)から取得する前記AP情報に基づいて、前記要求STAごとに異なるマスターAPを選択するマスターAP選択手段と、
前記APから取得する前記チャネル優先順位に基づいて、前記要求STAごとに前記マスターAPとの通信に用いる割当チャネルを選択する割当チャネル選択手段と、
前記要求STAから取得する前記AP情報に基づいて、前記マスターAPとして選択されていない前記APの中から、前記要求STAごとに異なるスレーブAPを選択するスレーブAP選択手段と、
前記要求STAに対して、前記AP連携ダイバーシチ通信に用いるAPとして前記マスターAPおよび前記スレーブAPと、前記割当チャネルの番号を前記通信要求に対する応答に含めて送信する通信要求応答手段と、
前記複数のAPのうち、前記マスターAPおよび前記スレーブAPとして前記要求STAとの接続に用いられるAPに対して、接続先STA番号および前記割当チャネルの番号を通知するAP通知手段とを備え、
前記CCの前記マスターAP選択手段は、前記ビーコン受信電力が大きい前記APの順に前記マスターAPとして選択する構成であり、
前記CCの前記スレーブAP選択手段は、前記ビーコン受信電力が大きい前記APの順に前記スレーブAPとして選択する構成であり、
さらに、前記スレーブAPを選択できない場合は前記マスターAPのみで前記要求STAとの接続を行う
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記STAの前記AP情報送信手段は、前記AP情報として、前記複数のAPのビーコン受信電力の最大値を含み、
前記CCの前記マスターAP選択手段は、前記ビーコン受信電力の最大値が小さい前記要求STAの順に、前記マスターAPの選択処理を行う構成であり、
前記CCの前記スレーブAP選択手段は、前記ビーコン受信電力の最大値が小さい前記要求STAの順に、前記スレーブAPの選択処理を行う構成である
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
複数の基地局装置(以下、APという)が接続される制御装置(以下、CCという)の制御により、複数のAPが同一チャネルを用いて端末装置(以下、STAという)とAP連携ダイバーシチ通信を行う無線通信方法において、
前記APは、他のAPが送信するビーコン信号を受信し、チャネルごとのビーコン受信電力から得られる同一チャネル干渉電力が小さい順にチャネル優先順位を保持し、該チャネル優先順位を前記CCに通知するチャネル優先順位通知ステップを有し、
前記STAは、前記複数のAPが送信するビーコン信号を受信し、ビーコン受信電力が大きい順の前記APの番号をAP情報として保持し、該AP情報を前記APに対する通信要求に含めて前記CCに送信するAP情報送信ステップを有し、
前記CCは、
前記通信要求を送信するSTA(以下、要求STAという)から取得する前記AP情報に基づいて、前記要求STAごとに異なるマスターAPを選択するマスターAP選択ステップと、
前記APから取得する前記チャネル優先順位に基づいて、前記要求STAごとに前記マスターAPとの通信に用いる割当チャネルを選択する割当チャネル選択ステップと、
前記要求STAから取得する前記AP情報に基づいて、前記マスターAPとして選択されていない前記APの中から、前記要求STAごとに異なるスレーブAPを選択するスレーブAP選択ステップと、
前記要求STAに対して、前記AP連携ダイバーシチ通信に用いるAPとして前記マスターAPおよび前記スレーブAPと、前記割当チャネルの番号を前記通信要求に対する応答に含めて送信する通信要求応答ステップと、
前記複数のAPのうち、前記マスターAPおよび前記スレーブAPとして前記要求STAとの接続に用いられるAPに対して、接続先STA番号および前記割当チャネルの番号を通知するAP通知ステップとを有し、
前記CCの前記マスターAP選択ステップは、前記ビーコン受信電力が大きい前記APの順に前記マスターAPとして選択し、
前記CCの前記スレーブAP選択ステップは、前記ビーコン受信電力が大きい前記APの順に前記スレーブAPとして選択し、
さらに、前記スレーブAPを選択できない場合は前記マスターAPのみで前記要求STAとの接続を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信方法において、
前記STAの前記AP情報送信ステップは、前記AP情報として、前記複数のAPのビーコン受信電力の最大値を含む処理を行い、
前記CCの前記マスターAP選択ステップは、前記ビーコン受信電力の最大値が小さい前記要求STAの順に、前記マスターAPの選択処理を行い、
前記CCの前記スレーブAP選択ステップは、前記ビーコン受信電力の最大値が小さい前記要求STAの順に、前記スレーブAPの選択処理を行う
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
複数の基地局装置(以下、APという)が接続される制御装置の制御により、複数のAPが同一チャネルを用いて端末装置(以下、STAという)とAP連携ダイバーシチ通信を行う無線通信システムの制御装置において、
通信要求を送信するSTA(以下、要求STAという)で、前記複数のAPが送信するビーコン信号を受信して得られるビーコン受信電力が大きい順の前記APの番号を含むAP情報に基づいて、前記要求STAごとに異なるマスターAPを選択するマスターAP選択手段と、
前記APがチャネルごとのビーコン受信電力から得られる同一チャネル干渉電力が小さい順のチャネル優先順位に基づいて、前記要求STAごとに前記マスターAPとの通信に用いる割当チャネルを選択する割当チャネル選択手段と、
前記要求STAから取得する前記AP情報に基づいて、前記マスターAPとして選択されていない前記APの中から、前記要求STAごとに異なるスレーブAPを選択するスレーブAP選択手段と、
前記要求STAに対して、前記AP連携ダイバーシチ通信に用いるAPとして前記マスターAPおよび前記スレーブAPと、前記割当チャネルの番号を前記通信要求に対する応答に含めて送信する通信要求応答手段と、
前記複数のAPのうち、前記マスターAPおよび前記スレーブAPとして前記要求STAとの接続に用いられるAPに対して、接続先STA番号および前記割当チャネルの番号を通知するAP通知手段とを備え、
前記CCの前記マスターAP選択手段は、前記ビーコン受信電力が大きい前記APの順に前記マスターAPとして選択する構成であり、
前記CCの前記スレーブAP選択手段は、前記ビーコン受信電力が大きい前記APの順に前記スレーブAPとして選択する構成であり、
さらに、前記スレーブAPを選択できない場合は前記マスターAPのみで前記要求STAとの接続を行う
ことを特徴とする無線通信システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基地局装置(以下、APという)が同一チャネルを用いて端末装置(以下、STAという)とAP連携ダイバーシチ通信を行う無線通信システム、無線通信方法、および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一チャネルを再利用する無線LANでは、同一チャネル干渉(CCI:Co-Channel Interference)によりスループットが劣化することがある。このチャネル再利用におけるCCI低減を目的として、干渉測定型チャネル棲み分けに基づく動的チャネル配置(IACS−DCA:Interference-Aware Channel Segregation based Dynamic Channel Assignment)の無線LANへの適用が検討されてきた(非特許文献1)。
【0003】
IACS−DCAは、各APが独立に利用チャネルを決定するアルゴリズムであり、周辺セルから受ける全チャネルの干渉電力(CCI電力)を測定して、周辺セルに与えるCCIを最小化するようなチャネル再利用パターンを形成する。例えば
図5に示すように、各APは、一定周期ごとに全チャネルの瞬時CCI電力を測定し、チャネルごとに平均CCI電力(過去のCCI電力の平均) を計算し、全チャネルを平均CCI電力の小さい順に格納したチャネル優先度テーブルを更新する。各APは、送信時にチャネル優先度テーブルの最上位にある平均CCI電力が最小のチャネルを使用する。これにより、AP周辺電波環境の変化に適応して、周辺セルに与えるCCIを最小とするようなチャネル再利用パターンが自律的に形成される。
【0004】
ところで、APからの距離が遠いSTAでは、伝搬損失の影響によって十分な受信信号電力が得られず、通信品質が著しく劣化してしまう。また、自然災害や機器の故障等によってAPが使用不可能となった場合、そのAPがカバーしていたエリアのSTAは通信不可能となってしまう。この問題を解決する手法として、各APが連携してダイバーシチ通信を行う手法が検討されている(非特許文献2)。
【0005】
このAP連携ダイバーシチ通信を行うためには、各APが連携して同じチャネルを用いてSTAと通信を行う必要がある。しかしながら、IACS−DCAでは、CCIを最小化するため、隣り合うAPの使用チャネルが異なるようなチャネル配置となってしまう。一方、完全集中制御型のDCA(非特許文献3)を用いてチャネル割当を行えば、AP同士の連携は可能であるものの、AP数の増加に伴い集中制御を行う制御装置(以下、CCという)の演算処理量が膨大となってしまう問題がある。そこで、CCでの演算処理量を抑えることができるIACS−DCAを利用したAP連携ダイバーシチが検討されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Y. Matsumura, S. Kumagai, T. Obara, T. Yamamoto, and F. Adachi, “Channel Segregation Based Dynamic Channel Assignment for WLAN,” 2012 IEEE The 13th International Conference on Communication Systems, Singapore, 21-23 Nov. 2012.
【非特許文献2】熊谷慎也,長岡諒,小原辰徳,山本哲矢,安達文幸, “STBC−OFDMを用いる連携ダイバーシチ, ”信学技報, RCS2012-112, pp.97-102, 2012年8月.
【非特許文献3】G. F. Marias, D. Skyrianoglou, and L. Merakos,“A centralized approach to dynamic channel assignment in wireless ATM LANs,” Proc. 18th Annual Joint Conference of the IEEE Computer and Communications Societies (Infocom’99), Mar. 1999.
【非特許文献4】Martin T.H. Sirait, Yuki Matsumura, Katsuhiro Temma, Koichi Ishihara, B. A. Hirantha Sithira Abeysekera, Tomoaki Kumagai and Fumiyuki Adachi, “AP Cooperative Diversity in Wireless Network Using Interference-Aware Channel Segregation Based Dynamic Channel Assignment, ” IEEE 25th Annual International Symposium on Personal, Indoor and Mobile Radio Communications (PIMRC'14), Washington D.C., USA, 2-5 Sept. 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
AP連携ダイバーシチを行うためには、STAに対して複数のAPを連携APとして選択し、全ての連携APで同一のチャネルを用いて通信を行う必要がある。しかしながら、連携候補となるAPが既に他のSTAに対する連携ダイバーシチに使用されている場合には、そのAPは連携ダイバーシチに使用することができない。連携候補となる全てのAPが他のSTAへの連携ダイバーシチのために使用されていれば、STAからの通信要求が棄却されてしまう。
【0008】
本発明は、IACS−DCAを用いる無線通信システムにおいて、STAからの通信要求が棄却されにくくかつAP連携ダイバーシチを可能とする無線通信システム、無線通信方法、および制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、複数のAPが接続されるCCの制御により、複数のAPが同一チャネルを用いてSTAとAP連携ダイバーシチ通信を行う無線通信システムにおいて、APは、他のAPが送信するビーコン信号を受信し、チャネルごとのビーコン受信電力から得られる同一チャネル干渉電力が小さい順にチャネル優先順位を保持し、該チャネル優先順位をCCに通知するチャネル優先順位通知手段を備え、STAは、複数のAPが送信するビーコン信号を受信し、ビーコン受信電力が大きい順のAPの番号をAP情報として保持し、該AP情報をAPに対する通信要求に含めてCCに送信するAP情報送信手段を備え、CCは、通信要求を送信する要求STAから取得するAP情報に基づいて、要求STAごとに異なるマスターAPを選択するマスターAP選択手段と、APから取得するチャネル優先順位に基づいて、要求STAごとにマスターAPとの通信に用いる割当チャネルを選択する割当チャネル選択手段と、要求STAから取得するAP情報に基づいて、マスターAPとして選択されていないAPの中から、要求STAごとに異なるスレーブAPを選択するスレーブAP選択手段と、要求STAに対して、AP連携ダイバーシチ通信に用いるAPとしてマスターAPおよびスレーブAPと、割当チャネルの番号を通信要求に対する応答に含めて送信する通信要求応答手段と、複数のAPのうち、マスターAPおよびスレーブAPとして要求STAとの接続に用いられるAPに対して、接続先STA番号および割当チャネルの番号を通知するAP通知手段とを備え
、CCのマスターAP選択手段は、ビーコン受信電力が大きいAPの順にマスターAPとして選択する構成であり、CCのスレーブAP選択手段は、ビーコン受信電力が大きいAPの順にスレーブAPとして選択する構成であり、さらに、スレーブAPを選択できない場合はマスターAPのみで要求STAとの接続を行う。
【0010】
第1の発明における無線通信システムにおいて、STAのAP情報送信手段は、AP情報として、複数のAPのビーコン受信電力の最大値を含み、CCのマスターAP選択手段は、ビーコン受信電力の最大値が小さい要求STAの順に、マスターAPの選択処理を行う構成であり、CCのスレーブAP選択手段は、ビーコン受信電力の最大値が小さい要求STAの順に、スレーブAPの選択処理を行う構成である。
【0012】
第2の発明は、複数のAPが接続されるCCの制御により、複数のAPが同一チャネルを用いてSTAとAP連携ダイバーシチ通信を行う無線通信方法において、APは、他のAPが送信するビーコン信号を受信し、チャネルごとのビーコン受信電力から得られる同一チャネル干渉電力が小さい順にチャネル優先順位を保持し、該チャネル優先順位をCCに通知するチャネル優先順位通知ステップを有し、STAは、複数のAPが送信するビーコン信号を受信し、ビーコン受信電力が大きい順のAPの番号をAP情報として保持し、該AP情報をAPに対する通信要求に含めてCCに送信するAP情報送信ステップを有し、CCは、通信要求を送信する要求STAから取得するAP情報に基づいて、要求STAごとに異なるマスターAPを選択するマスターAP選択ステップと、APから取得するチャネル優先順位に基づいて、要求STAごとにマスターAPとの通信に用いる割当チャネルを選択する割当チャネル選択ステップと、要求STAから取得するAP情報に基づいて、マスターAPとして選択されていないAPの中から、要求STAごとに異なるスレーブAPを選択するスレーブAP選択ステップと、要求STAに対して、AP連携ダイバーシチ通信に用いるAPとしてマスターAPおよびスレーブAPと、割当チャネルの番号を通信要求に対する応答に含めて送信する通信要求応答ステップと、複数のAPのうち、マスターAPおよびスレーブAPとして要求STAとの接続に用いられるAPに対して、接続先STA番号および割当チャネルの番号を通知するAP通知ステップとを有
し、CCのマスターAP選択ステップは、ビーコン受信電力が大きいAPの順にマスターAPとして選択し、CCのスレーブAP選択ステップは、ビーコン受信電力が大きいAPの順にスレーブAPとして選択し、さらに、スレーブAPを選択できない場合はマスターAPのみで要求STAとの接続を行う。
【0013】
第2の発明における無線通信方法において、STAのAP情報送信ステップは、AP情報として、複数のAPのビーコン受信電力の最大値を含む処理を行い、CCのマスターAP選択ステップは、ビーコン受信電力の最大値が小さい要求STAの順に、マスターAPの選択処理を行い、CCのスレーブAP選択ステップは、ビーコン受信電力の最大値が小さい要求STAの順に、スレーブAPの選択処理を行う。
【0015】
第3の発明は、複数のAPが接続されるCCの制御により、複数のAPが同一チャネルを用いてSTAとAP連携ダイバーシチ通信を行う無線通信システムの制御装置において、通信要求を送信する要求STAで、複数のAPが送信するビーコン信号を受信して得られるビーコン受信電力が大きい順のAPの番号を含むAP情報に基づいて、要求STAごとに異なるマスターAPを選択するマスターAP選択手段と、APがチャネルごとのビーコン受信電力から得られる同一チャネル干渉電力が小さい順のチャネル優先順位に基づいて、要求STAごとにマスターAPとの通信に用いる割当チャネルを選択する割当チャネル選択手段と、要求STAから取得するAP情報に基づいて、マスターAPとして選択されていないAPの中から、要求STAごとに異なるスレーブAPを選択するスレーブAP選択手段と、要求STAに対して、AP連携ダイバーシチ通信に用いるAPとしてマスターAPおよびスレーブAPと、割当チャネルの番号を通信要求に対する応答に含めて送信する通信要求応答手段と、複数のAPのうち、マスターAPおよびスレーブAPとして要求STAとの接続に用いられるAPに対して、接続先STA番号および割当チャネルの番号を通知するAP通知手段とを備え
、CCのマスターAP選択手段は、ビーコン受信電力が大きいAPの順にマスターAPとして選択する構成であり、CCのスレーブAP選択手段は、ビーコン受信電力が大きいAPの順にスレーブAPとして選択する構成であり、さらに、スレーブAPを選択できない場合はマスターAPのみで要求STAとの接続を行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、各STAからの通信要求に対して、AP連携ダイバーシチを行うマスターAPとスレーブAPを選択する際に、まずマスターAPと割当チャネルを選択し、その後に未選択のAPの中からスレーブAPを選択する処理を行うことにより、通信要求を送信したSTAに対して少なくともマスターAPと割当チャネルの設定が可能となる。これにより、通信要求棄却を回避しながら可能な限りAP連携ダイバーシチを行うマスターAPとスレーブAPを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明におけるAP、STA、CCの処理手順の概要を示す図である。
【
図2】APの処理手順例を示すフローチャートである。
【
図3】STAの処理手順例を示すフローチャートである。
【
図4】CCの処理手順例を示すフローチャートである。
【
図5】IACS−DCAを用いた無線LANのチャネル割当例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明におけるAP、STA、CCの制御処理の概要を示す。
図1において、AP間でビーコン信号を送受信し、他のAPからのビーコン信号を受信したAPは、IACS−DCAに基づき、一定周期ごとに各チャネルの瞬時CCI電力を測定し、過去の測定値をもとに平均CCI電力を算出し、平均CCI電力の小さい順に各チャネルを並べたチャネル優先度テーブルを更新する(S1)。次に、AP連携ダイバーシチを実現するために、APはチャネル優先度テーブルのチャネル優先順位をCCに送信する(S2)。
【0019】
STAは、各APからのビーコン信号を受信してビーコン受信電力を測定し、CCに接続されているAPでビーコン信号の受信が確認できた全APの番号をビーコン受信電力の大きい順に順位付けする(S3)。そして、STAが通信要求を送信する際に、自局のSTA番号、ビーコン受信電力の大きい順のAP番号およびビーコン受信電力の最大値の情報を含めて、APを介してCCに送信する(S4)。
【0020】
CCは、APからチャネル優先度テーブルを受信し、APのチャネル優先順位を取得する(S5)。一方、STAの通信要求からSTA番号、ビーコン受信電力の大きい順のAP番号およびビーコン受信電力の最大値の情報を取得し(S6)、通信を許可したSTAごとに、連携ダイバーシチを行うマスターAPおよびスレーブAPを選択するAPグルーピングと、割当チャネルの選択を行う(S7)。APグルーピングでは、まず通信要求のあった全STAに対してそれぞれマスターAPを選択し、次にSTAごとに、未選択のAPの中からスレーブAPを選択する。詳しくは、
図4を参照して説明する。ここで選択されたマスターAP、スレーブAP、割当チャネル番号は、通信要求に対するACK信号に含めてSTAに送信する(S8)。さらに、各APに対して、接続先STA番号と割当チャネル番号を通知する(S9)。
【0021】
STAは、マスターAP、スレーブAP、割当チャネル番号を取得し(S10)、APは、接続先STA番号と割当チャネル番号を取得し(S11)、マスターAPとスレーブAPによるAP連携ダイバーシチによる通信を開始する。
【0022】
以下、AP、STA、CCの順に、それぞれの処理手順例の詳細について具体的に説明する。
【0023】
図2は、APの処理手順例を示す。
図2において、APは、他のAPが送信するビーコン信号を受信する(S21)。次に、受信したビーコン信号の受信電力測定値(RSSI(Received signal strength indicator)の値など)を利用して、各チャネルの瞬時CCI電力を測定する(S22)。次に、測定した瞬時CCI電力を用いて、各チャネルの平均CCI電力を計算する(S23)。平均CCI電力の計算方法については、例えば、忘却係数を用いて計算してもよいし、ある一定時間内における移動平均を計算してもよい。
【0024】
次に、APは、平均CCI電力の小さい順に各チャネルを並べたチャネル優先度テーブルを更新し(S24)、このチャネル優先度テーブルのチャネル優先順位をCCに送信する(S25)。表1は、各APにおけるチャネル優先度テーブルの一例を示す。
【0026】
次に、APは、CCが決定した接続先STA番号と割当チャネル番号をCCから受信する(S26)。ここで、CCからの通知に割当チャネルがあるか否かを判定し(S27)、割当チャネルがあれば、割当チャネルでビーコン信号を送信する(S28)。一方、割当チャネルがなければ、APが保持しているチャネル優先度テーブルを参照し、優先度が最も高いチャネルでビーコンを送信する(S29)。APは、上記のステップS21〜S29の処理を周期的に繰り返す。
【0027】
図3は、STAの処理手順例を示す。
図3において、STAは、各APが送信するビーコン信号を受信し、そのビーコン受信電力を測定する(S31)。次に、CCに接続されているAPでビーコン信号の受信が確認できた全APの番号を、ビーコン受信電力の大きい順に保持する(S32)。このとき、CCに接続されていながらビーコン受信電力を検知できないAPについては、ビーコン受信電力の大きい順にソートする際に便宜的に測定限界値以下の値(例えば-100dBm)を設定してもよい。次に、通信要求を行うか否かを判断する(S33)。ここで、STAが通信要求を行う場合は、自局のSTA番号、CCに接続されているAPでビーコン受信電力の大きい順に並べたAPの番号およびビーコン受信電力の最大値の情報を含む通信要求をCCに送信する(S34)。
【0028】
表2は、各STAにおけるCCに接続のAPからのビーコン受信電力測定結果の一例を示す。例えば、通信要求を行うSTA1は、ビーコン受信電力が大きい順のAP4,AP3,AP1のAP番号と、ビーコン受信電力の最大値である「-60dBm」をCCに送信する。
【0030】
次に、通信要求に対するCCの返信が、通信要求を許可とするACKであるか、通信要求を不許可とするNACKであるかは判定する(S35)。ここで、NACKが返信された場合には、その時点における通信処理を中止する(S36)。一方、ACKが返信された場合には、ACKに含まれている接続先AP番号と割当チャネル番号とを取得し(S37)、割当チャネルを選択して通信を開始する(S38)。
【0031】
図4は、CCの処理手順例を示す。
図4において、CCは、各APからチャネル優先度テーブルの情報を受信し、例えば表1に示すような各APのチャネル優先順位を得る(S41)。この処理は、周期的に繰り返される。
【0032】
その一方でCCは、通信要求を送信するSTA(以下、要求STAという)から通信要求を受信し(S42)、要求STAのSTA番号と、例えば表2のような要求STAにおけるビーコン受信電力の大きい順のAP番号およびビーコン受信電力の最大値を取得する(S43)。このステップS42〜S43の処理を所定時間繰り返し、各要求STAからの通信要求を収集する(S44)。
【0033】
次に、CCは、各要求STAにおけるビーコン受信電力の最大値の小さい順に、AP連携ダイバーシチを行うマスターAPとスレーブAPの選択を行う要求STAの順番を設定する(S45)。表2の例では、STA1〜STA3の中でビーコン受信電力の最大値の小さい順に、STA1,STA3,STA2の順番になる。なお、ビーコン受信電力の最大値が小さい順に要求STAの順番を設定する代わりに、例えば要求STAとAPとの距離が遠い順、あるいは受信信号対干渉+雑音電力比(SINR)が小さい順に設定してもよい。
【0034】
次に、CCは、設定順番に応じた要求STAごとに、ビーコン受信電力が大きいAPの順にAP連携ダイバーシチを行うマスターAPを重複しないように選択する(S46)。例えば、表3に示すように、STA1について、ビーコン受信電力が最大のAP4をマスターAPとして選択する。STA3については、ビーコン受信電力が最大のAP4がすでにSTA1のマスターAPとして選択されたので、次にビーコン受信電力が大きいAP1をマスターAPとして選択する。STA2については、ビーコン受信電力が最大のAP2をマスターAPとして選択する。このような手順により、各要求STAに対してビーコン受信電力の最大値が小さい順番で、それぞれビーコン受信電力が最大のマスターAPが選択されるが、選択しようとするAPがすでに他のSTAのマスターAPに選択されていたり、ビーコン受信電力が規定値以下などにより、マスターAPの選択ができないSTAに対しては、要求信号に対するNACK信号を送信し、その時点での通信を中止する。
【0036】
次に、CCは、各要求STAに対して選択したマスターAPに割り当てるチャネルとして、チャネル優先度テーブルのチャネル優先順位に応じて割当チャネルを選択する(S47)。例えば、表1のチャネル優先度テーブルの場合には、表3に示すように、STA1のマスターAPとして選択したAP4では、優先度が最も高い空きチャネルであるCH3が選択される。続いて、STA3のマスターAPとして選択したAP1では、優先度が最も高い空きチャネルであるCH2が選択され、STA2のマスターAPとして選択したAP2では、優先度が最も高いチャネルのCH3がすでに選択されているので、次に優先度が高い空きチャネルであるCH1が選択される。このように、優先度が最も高いチャネルが他のマスターAPに選択されている場合には、次の優先度のチャネルが順次選択されるが、例えば平均CCI電力がある閾値以上のチャネルを使用不可として選択できるチャネルがない場合には、マスターAPとして選択できないことになる。このマスターAPの選択ができないSTAに対しては、要求信号に対するNACK信号を送信し、その時点での通信を中止する。
【0037】
以上の操作を、マスターAPの選択とチャネル割当が済んでいない全ての要求STAに対して行う。
【0038】
次に、CCは、各要求STAに対してビーコン受信電力の最大値の小さい順にそれぞれマスターAPおよび割当チャネルが決定した後、同じ設定順番の各要求STAに対して、ビーコン受信電力が大きいAPの順に、マスターAPとして選択されていないAPの中からスレーブAPを重複しないように選択し(S48)、マスターAPとスレーブAPからなるAPグルーピングを行う。例えば、表3の例では、マスターAPとしてAP4,AP1,AP2がすでに選択されているので、これらを除くAPの中からそれぞれビーコン受信電力が大きい順に、STA1についてはAP3がスレーブAPとして選択される。また、STA3およびSTA2については、スレーブAPとなる候補が存在しないため、マスターAPのみで通信することになる。
【0039】
次に、CCは、各要求STAに対して、表4のように決定したマスターAPおよびスレーブAPと割当チャネル番号をACK信号に含めて送信する(S49)。さらに、CCは、各APに対して、接続先STA番号と割当チャネル番号を通知する(S50)。
【0041】
以上のように、本発明では、各STAからの通信要求に対してAP連携ダイバーシチを行うマスターAPとスレーブAPを選択する際に、まずマスターAPと割当チャネルを選択し、その後に未選択のAPの中からスレーブAPを選択する処理を行うことにより、通信要求を送信したSTAに対して少なくともマスターAPと割当チャネルが設定されるので、通信要求棄却を回避しながら可能な限りAP連携ダイバーシチを行うマスターAPとスレーブAPを選択することができる。
【0042】
また、以上の説明では、各APが送信に使用するチャネルは1つとしたが、各APが複数のチャネルを使用して送信する形態(例えばOFDMAや複数の送受信器をもつAP)の場合には、AP連携ダイバーシチを行うマスターAPとスレーブAPに割り当てる複数のチャネルを選択するようにしてもよい。
【0043】
本発明の無線通信システムの制御装置(CC)は、APとの間の通信インターフェースと、コンピュータと上記の処理を行うコンピュータプログラムにより実現することができる。このコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶することも、ネットワークを介して提供することも可能なものである。
【符号の説明】
【0044】
AP 基地局装置
STA 端末装置
CC 制御装置