(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
縦方向と横方向と前後方向とを有し、胴回り開口部及び一対の脚回り開口部が形成されているパンツ型吸収性物品であって、吸収体を備え、前記縦方向に沿った吸収性本体と、前記吸収性本体の前記横方向の両側にそれぞれ配され、前記横方向に伸縮する一対のベルト部と、を有し、少なくとも前記吸収性本体と前記一対のベルト部のそれぞれとを接合する一対の接合部が、前記前後方向の前側及び後側にそれぞれ設けられ、少なくとも前記後側の前記一対の接合部間は前記横方向に伸縮せず、前記吸収体よりも着用者の非肌側に、前記縦方向に伸縮する伸縮部が設けられ、前記伸縮部は、少なくとも前記後側において、前記吸収性本体の前記横方向の中央部に設けられていること、を特徴とするパンツ型吸収性物品である。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、下着らしい外観を得るために後側の一対の接合部間が横方向に伸縮していなくとも、伸縮部によって吸収体が着用者の臀部の割れ目に密着するため、排泄物の漏れを抑制できる。
【0010】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記縦方向において、前記伸縮部の上端が、前記吸収体の上端と一致、又は、前記吸収体の上端よりも下側に位置していることを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収体よりも上方の剛性の低い部位のよれ(背中のめくれ)を防止でき、着用者の臀部上部をしっかりと被覆できる。
【0011】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記縦方向において、前記伸縮部の下端が、前記パンツ型吸収性物品の下端と一致、又は、前記パンツ型吸収性物品の下端よりも前記後側且つ上側に位置していることを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、着用者の排泄口よりも後側の臀部に対応する吸収体の部位を着用者に密着させることができ、排泄物の漏れを抑制できる。
【0012】
かかるパンツ型吸収性物品であって、胴回り部を有し、前記胴回り部は、前記一対のベルト部と、前記前側及び前記後側の前記吸収性本体の前記縦方向の上方部と、を少なくとも備え、前記胴回り部を前記横方向に最大に伸長させた状態から、当該最大伸長状態における前記胴回り部の前記横方向の長さを61%に縮めたときの、前記胴回り部の前記横方向の伸縮応力の方が、前記伸縮部を前記縦方向に最大に伸長させた状態から、当該最大伸長状態における前記伸縮部の前記縦方向の長さを82%に縮めたときの、前記伸縮部の前記縦方向の伸縮応力よりも大きいこと、を特徴とするパンツ型吸収性物品である。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、伸縮部によって吸収体を着用者の臀部の割れ目に密着させつつ、胴回り部を着用者にフィットさせ、着用中の胴回り部のずれを抑制できる。
【0013】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記吸収性本体の前記横方向の両側にそれぞれ配され、前記縦方向に伸縮する一対のレッグギャザー部を有し、前記伸縮部及び前記レッグギャザー部は、前記縦方向において互いに重複する重複部を有し、伸長状態から自然状態へと収縮したときに、前記伸縮部における前記重複部の前記縦方向の収縮量の方が、前記レッグギャザー部における前記重複部の前記縦方向の収縮量よりも大きいこと、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、伸縮部の縦方向の収縮がレッグギャザー部によって阻害されてしまうことを防止できる。そのため、レッグギャザー部を着用者の脚回りに密着させつつ、伸縮部によって吸収体を着用者の臀部の割れ目に密着させることができ、排泄物の脚回りからの漏れ及び後ろ漏れを抑制できる。
【0014】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記伸縮部には、複数の糸状弾性部材が前記横方向に並んで設けられ、前記レッグギャザー部には、少なくとも前記脚回り開口部に沿ってシート状弾性部材が設けられていること、を特徴とするパンツ型吸収性物品。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、糸状弾性部材によって伸縮部の縦方向の収縮量を大きくし易い。また、レッグギャザー部が着用者の脚回りに面で密着するため、肌への負担を軽減できる。
【0015】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記接合部は、前記縦方向において、前記胴回り開口部側から前記脚回り開口部に向かって、前記横方向の外側へ傾斜しており、前記後側の前記接合部に対する垂線と、前記伸縮部とが、交差していること、を特徴とするパンツ型吸収性物品である。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、着用時に吸収性本体がベルト部から受ける引き上げ力を伸縮部に伝達でき、伸縮部が縦方向に大きく伸長できる。そのため、伸縮部は大きく収縮しながら、吸収体を着用者の臀部の割れ目にしっかりと密着させることができる。
【0016】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記垂線は前記後側の前記接合部の垂直二等分線であることを特徴とするパンツ型吸収性物品。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収性本体がベルト部から受ける引き上げ力は、接合部の垂直二等分線上において強くなるため、伸縮部は縦方向により大きく伸長できる。そのため、伸縮部はより大きく収縮しながら、吸収体を着用者の臀部の割れ目にしっかりと密着させることができる。
【0017】
かかるパンツ型吸収性物品であって、前記接合部は、前記縦方向において、前記胴回り開口部側から前記脚回り開口部に向かって、前記横方向の外側へ傾斜しており、前記後側の前記一対の接合部の前記縦方向における各上端が、前記横方向に離間しており、当該各上端の前記横方向の位置の間に前記伸縮部が位置していること、を特徴とするパンツ型吸収性物品である。
このようなパンツ型吸収性物品によれば、ベルト部からの横方向の引っ張り力を伸縮部が受け難くなるため、伸縮部の縦方向への伸長が阻害され難くなる。よって、吸収性物品の引き上げ時に伸縮部が縦方向に大きく伸長でき、伸縮部によって吸収体を着用者の臀部の割れ目にしっかりと密着させることができる。
【0018】
===生理用のパンツ型吸収性物品1の基本構成===
以下、本発明のパンツ型吸収性物品として、生理用のパンツ型吸収性物品1を例に挙げて実施形態を説明する。但し、本発明のパンツ型吸収性物品は、生理用として利用されるに限らず、例えば軽失禁用のおむつとしても利用可能である。
図1は生理用のパンツ型吸収性物品1(以下、吸収性物品1)の概略斜視図である。
図2Aは吸収性物品1において吸収性本体10の長手方向とベルト部20の長手方向とが揃った平面状態且つ伸長状態の概略図である。
図2Bは
図2A中の概略B−B断面図である。
図3Aは
図2Aの平面状態である吸収性物品1の接合部2を解いてベルト部20を横方向の外側に開いた概略図である。
図3Bは
図3A中の概略B−B断面図である。なお、
図2B及び
図3B中の波形線やハッチング部は、厚さ方向に隣り合う部材を接合する接着剤や溶着箇所を示したものである。
【0019】
吸収性物品1は、
図1に示すパンツ型状態において、互いに直交する縦方向と横方向と前後方向とを有する。また、吸収性物品1には、胴回り開口部BH、及び、一対の脚回り開口部LHが形成されている。縦方向において、胴回り開口部BH側を上側とし、着用者の股下に対応する側を下側とする。前後方向において、着用者の腹側に対応する側を前側とし、着用者の背側に対応する側を後側とする。また、吸収性物品1は厚さ方向を有し、厚さ方向において着用者に接触する側を肌側とし、その逆側を非肌側とする。
【0020】
また、吸収性物品1は、パンツ型状態において、縦方向に長手方向を沿わせつつ長手方向の中央CL2で2つ折りされた吸収性本体10と、吸収性本体10の横方向の両側にそれぞれ配され、横方向に伸縮する一対のベルト部20と、吸収性本体10の長手方向に沿って吸収性本体10の横方向の両側にそれぞれ配され、縦方向に伸縮する一対のレッグギャザー部30とを有する。以下の説明では、一対のベルト部20のうち横方向の一方側のものを第1ベルト部21、横方向の他方側のものを第2ベルト部22とも呼ぶ。また、一対のレッグギャザー部30のうち横方向の一方側のものを第1レッグギャザー部31、横方向の他方側のものを第2レッグギャザー部32とも呼ぶ。
【0021】
また、吸収性物品1には、吸収性本体10及び一対のレッグギャザー部30のそれぞれに、一対のベルト部20のそれぞれを接合する一対の接合部2が、前後方向の前側及び後側にそれぞれ設けられている。接合部2は、縦方向において、胴回り開口部側BHから脚回り開口部LHに向かって、横方向の外側へ傾斜している。
【0022】
具体的には、前後の第1接合部2Aにおいて、吸収性本体10の縦方向の上方且つ横方向の一方側の側部、及び、第1レッグギャザー部31の縦方向の上端部に、第1ベルト部21の横方向の内側端部が接合されている。また、前後の第2接合部2Bにおいて、吸収性本体10の縦方向の上方且つ横方向の他方側の側部、及び、第2レッグギャザー部32の縦方向の上端部に、第2ベルト部22の横方向の内側端部が接合されている。
【0023】
なお、接合部2の形成方法として、例えばヒートシールや超音波シール等の溶着処理や接着剤による接着処理等を例示できる。以下の説明では、一対の接合部2のうち横方向の一方側のものを第1接合部2A、横方向の他方側のものを第2接合部2Bとも呼ぶ。また、接合部2は、非肌側面に形成され、且つ、脚回り開口部LHまで達していないことが好ましい。そうすることで、他の部位に比べて硬い接合部2が着用者に接触することを防ぎ、着け心地が向上する。
【0024】
また、第1接合部2Aの縦方向の上端2A1と第2接合部2Bの縦方向の上端2B1とが横方向に離間している。よって、パンツ型状態の吸収性物品1において、胴回り開口部BHは、一対のベルト部20の縦方向の上端部、及び、吸収性本体10の前後の縦方向の上端部により形成されている。脚回り開口部LHは、ベルト部20の縦方向の下端部、及び、レッグギャザー部30の横方向の外側の側部により形成されている。ベルト部20において胴回り開口部BHとなる部位が
図2Bに示すように複数回折り返されており、丈夫且つ着用者の肌への負担が軽減される構造になっている。
【0025】
吸収性物品1はその製造過程の最終段階で
図2Aに示す平面状態となる。平面状態では、吸収性本体10、一対のベルト部20、及び、一対のレッグギャザー部30の各長手方向が揃っている。また、互いの肌側面が対向するように、吸収性本体10及び一対のレッグギャザー部30の上に一対のベルト部20が重ねられている。この平面状態の吸収性物品1において、一対のベルト部20の横方向内側の各端部20aをそれぞれ横方向の外側に引っ張りながら、吸収性本体10を長手方向の中央で二つ折りすると、吸収性物品1は
図1のパンツ型状態になる。
【0026】
平面状態では、吸収性物品1に配された各弾性部材(後述するベルト部20の糸状弾性部材23等)の収縮力に抗して吸収性物品1を長手方向に伸長させ、弾性部材が配されている部分において実質的に皺やギャザーが視認できなくなる程度まで吸収性物品1を伸長させている。
【0027】
<吸収性本体10>
吸収性本体10では、厚さ方向の肌側から順に、トップシート11と、吸収体12と、バックシート13と、弾性部材被覆シート40と、4本の臀部弾性部材41と、外装シート14が積層されている。また、吸収性本体10の長手方向の両端部(パンツ型状態における縦方向の上端部)には、吸収体12よりも厚さ方向の肌側に、一対の端部シート15が設けられている。
【0028】
トップシート11は液透過性シートであればよく、エアスルー不織布等を例示できる。バックシート13は液不透過性シートであればよく、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等を例示できる。トップシート11及びバックシート13は吸収体12全体を覆う大きさとする。本実施形態のトップシート11は横方向の両側部が吸収体12の非肌側面側に折り込まれている。外装シート14及び端部シート15は液透過性シートでも液不透過性シートでもよく、不織布等の柔軟なシートであることが好ましい。
【0029】
吸収体12は、液体を吸収する吸収性コア121、及び、吸収性コア121の外周面を被覆するコアラップシート122を備えている。吸収性コア121は、液体吸収性素材が所定の形状に成形されたものであり、本実施形態では長手方向の両端が湾曲した略長方形状をなしている。液体吸収性素材としては、パルプ繊維等の液体吸収性繊維に高吸収性ポリマー(所謂SAP)等が含有されたものを例示できる。コアラップシート122としては、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性シートを例示できる。なお、コアラップシート122はなくてもよい。
【0030】
弾性部材被覆シート40は、
図3Aに示すように、吸収性本体10の横方向の中央部に、吸収性本体10の長手方向の前端10aから後端10bまで長手方向に沿って設けられている。弾性部材被覆シート40の横方向の長さは比較的に狭く、第1接合部2Aの上端2A1と第2接合部2Bの上端2B1の間の長さと同程度である。弾性部材被覆シート40は、非伸縮性のシートであり、外装シート14と同じ不織布等を例示できる。
【0031】
また、弾性部材被覆シート40のうち長手方向の後側の部位には4本の臀部弾性部材41が設けられている。4本の臀部弾性部材41は、横方向に間隔を空けて並ぶとともに、長手方向に伸長した状態で弾性部材被覆シート40に固定されている。そのため、自然状態のパンツ型吸収性物品1において、4本の臀部弾性部材41は縦方向に伸縮可能となっている(吸収性本体10の長手方向に伸縮可能となっている)。図には臀部弾性部材41のうち伸縮性を発現する部位(所謂有効長の部位)のみを示す。そのため図示する臀部弾性部材41の長手方向の外側に伸縮性を発現しない弾性部材の部位が存在していてもよい。そして、吸収性本体10において伸縮性を発現する4本の臀部弾性部材41が設けられた部位(後述する
図4の太線で囲われた領域42)が本発明の伸縮部に相当し、以下の説明では「臀部伸縮部42」とも呼ぶ。
【0032】
なお、臀部弾性部材41の数は4本に限らない。また、臀部伸縮部42を糸状弾性部材で形成するに限らない。例えば、臀部伸縮部42として、伸縮性フィルム、伸縮性不織布等のシート状弾性部材や帯状の糸ゴムを、横方向に間隔を空けて複数配置してもよいし、臀部伸縮部42と同じ大きさのシート状弾性部材を1枚配置してもよいし、糸状弾性部材とシート状弾性部材の両方を配置してもよい。
【0033】
<ベルト部20及びレッグギャザー部30>
パンツ型状態の吸収性物品1において、ベルト部20は横方向に伸縮し、レッグギャザー部30は縦方向に伸縮する。よって、吸収性物品1は着用者の胴回りや脚回りにフィットする。そのために、ベルト部20では、ベルト部20の長手方向(略横方向)に沿った複数の糸状弾性部材23がベルト部20の幅方向(略縦方向)に並ぶ。レッグギャザー部30では、縦方向に沿った複数(ここでは2本)の糸状弾性部材33が横方向に並ぶ。そして、ベルト部20及びレッグギャザー部30の脚回り開口部LHに沿う部位にシート状弾性部材52が配されている。
【0034】
なお、糸状弾性部材23,33としては糸ゴム等を例示できる。また、シート状弾性部材52としては、ポリウレタン系エラストマー等の略弾性を示すエラストマー繊維とポリオレフィン系樹脂等の略非弾性を示す熱可塑性樹脂繊維とを有した不織布に対して所謂ギア延伸加工を施して伸縮性が発現した不織布等を例示できる。
【0035】
本実施形態では
図3に示すようにベルト部20及びレッグギャザー部30が同一のシート部材50で形成されている。シート部材50では、2枚のシート51の間に、ベルト部20及びレッグギャザー部30の糸状弾性部材23,33と、シート状弾性部材52とが、伸長状態で固定されている。2枚のシート51は不織布等の柔軟なシートであることが好ましい。また、シート部材50のうちシート状弾性部材52が存在する部位に、脚回り開口部用の孔(LH)がくり抜かれている。
【0036】
吸収性物品1の製造過程では、吸収性本体10の横方向の両側に一対のシート部材50が配置される。詳しくは、吸収体12とバックシート13の間に各シート部材50の横方向内側の端部が介挿され接合される。そして、シート部材50の長手方向に沿い且つ脚回り開口部用の孔(LH)を通過する折り返し線FLにて、シート部材50は吸収性本体10の肌側面側に折り返される。シート部材50のうち折り返し線FLを境に吸収性本体10と厚さ方向に重なる部位がベルト部20となり、吸収性本体10と横方向に並ぶ部位がレッグギャザー部30となる。そして、一対の接合部2が形成されることで、シート部材50の折り返し状態が固定され、
図2に示す平面状態の吸収性物品1が形成される。なお、ベルト部20とレッグギャザー部30が別部材で形成されていてもよい。
【0037】
===臀部伸縮部42===
図4は平面状態且つ伸長状態である吸収性物品1の概略平面図である。
図5はパンツ型状態の吸収性物品1を後側から見た図である。
図6は着用中の吸収性物品1を後側から見た図である。
【0038】
本実施形態の吸収性物品1のように、生理用のパンツ型吸収性物品は、女性に利用されるため、特に下着らしい外観が求められる。前述のように、吸収性物品1では、一対の接合部2間に横方向に沿う弾性部材が配されず、一対の接合部2間は横方向に伸縮しない。そのため、例えば胴回りの全周に亘って糸状弾性部材が配されたものに比べると、吸収性物品1は下着らしい外観となっている。更に、一対の接合部2がそれぞれ、縦方向において、胴回り開口部BH側から脚回り開口部LH側に向かって、横方向の外側へ傾斜している。そのため、例えば接合部が縦方向に沿ったものに比べると、吸収性物品1は下着らしい外観となっている。
【0039】
また、一対の接合部2間を横方向に伸縮させないことで、伸縮領域が減り、締め付け感を抑えられる。また、歩行時等に吸収性物品1の前後に動く臀部や脚の動きが弾性部材に阻害されない。よって、吸収性物品1では着け心地も向上する。
【0040】
その一方で、一対の接合部2間に弾性部材が配されず横方向に伸縮しないと、一対の接合部2間の吸収性本体10が着用者に密着し難く、着用者との間に隙間が生じるおそれがある。そうすると、排泄物が漏れ易くなってしまう。
【0041】
また、パンツ型吸収性物品がおむつとして利用される場合、吸収性物品の後方部をカップ形状にして、便を収容する空間を設けることが好ましい。一方、パンツ型吸収性物品が生理用として利用される場合、便を収容する必要がない。また、生理用品における排泄物である経血等は尿に比べると粘度が高く、膣口から排出された後に臀部の割れ目を伝って後ろ漏れし易い。また、生理用ナプキンではなくパンツ型吸収性物品が使用される状況として、長時間交換の出来ない就寝時が考えられる。よって、生理用のパンツ型吸収性物品では特に排泄物の後ろ漏れの改善が求められる。
【0042】
そこで、本実施形態の吸収性物品1では、後側(背側)において、吸収性本体10の横方向の中央部に、縦方向に伸縮する臀部伸縮部42(4本の臀部弾性部材41)が設けられている。臀部伸縮部42は、
図2Bに示すように吸収体12よりも着用者の非肌側(厚さ方向の非肌側)に設けられている。
【0043】
そのため、
図6に示すように、吸収性物品1では、着用時に、臀部伸縮部42が設けられた吸収体12の部位が着用者の臀部の割れ目に密着する。詳しく説明すると、吸収性物品1の着用時、一対の脚回り開口部LHに着用者の脚が挿入された後、一対のベルト部20は斜め上方に引き上げられる。それに伴って吸収性本体10も上方に引き上げられ、臀部伸縮部42が縦方向に伸長する。その後、吸収性本体10が着用者の股下部まで引き上げられ、着用者に対する吸収性物品1の位置が整えられる際に、臀部伸縮部42は収縮し、臀部伸縮部42が設けられた吸収体12の部位が着用者の臀部の割れ目に密着する。したがって、排泄口から臀部の割れ目を伝って流れる経血等を吸収体12でしっかりと吸収できる。よって、後側の一対の接合部2間が横方向に伸縮していなくとも、排泄物の後ろ漏れを抑制できる。このように吸収性物品1では下着らしい外観を得つつ、排泄物の漏れを抑制できる。なお、前側の一対の接合部2間は横方向に伸縮していてもよい。
【0044】
また、
図4及び
図5に示すように、臀部伸縮部42の縦方向の上端42a(長手方向の後側の端)が、吸収体12の上端12a(長手方向の後側の端)と一致している。このようにパンツ型状態の吸収性物品1の縦方向において、臀部伸縮部42の上端42aが、吸収体12の上端12aと一致、又は、吸収体12の上端12aよりも下側に位置していることが好ましい。
【0045】
吸収体12よりも上方の、外装シート14等から構成される部位は、吸収体12が存在しない分だけ剛性が低くなっている。そのため、仮に臀部伸縮部42が吸収体12よりも上側に位置していると、吸収体12よりも上方の部位が臀部伸縮部42によってよれてしまう(背中がめくれてしまう)。ゆえに、吸収体12が存在する剛性の高い部位に臀部伸縮部42を設けることで、吸収体12よりも上方の部位のよれを防止できる。その結果、着用者の臀部上部をしっかりと被覆できる。また、外観の低下や着け心地の低下を防止できる。但し上記に限らず、臀部伸縮部42が吸収体12の上端12aよりも上側に位置していてもよい。
【0046】
また、吸収体12の中でも吸収性コア121が存在する部位の剛性が高い。そのため、図示しないが、より好ましくは、臀部伸縮部42の上端42aが、吸収性コア121の上端121aと一致、又は、吸収性コア121の上端121aよりも下側に位置していることが好ましい。そうすることで、臀部伸縮部42による吸収性本体10のよれをより確実に防止できる。
【0047】
一方、
図4及び
図5に示すように、臀部伸縮部42の縦方向の下端42b(長手方向の前側の端)が、パンツ型状態の吸収性物品1の下端CL2と一致している。このようにパンツ型状態の吸収性物品1の縦方向において、臀部伸縮部42の下端42bが、吸収性物品1の下端CL2と一致、又は、その下端CL2よりも後側且つ上側に位置していることが好ましい。パンツ型状態の吸収性物品1において、吸収性本体10は長手方向の中央CL2で二つ折りされている。そのため、換言すると、臀部伸縮部42の長手方向の前側の端42bが、吸収性本体10の長手方向の中央CL2と一致、又は、その中央CL2よりも長手方向の後側に位置することが好ましい。そうすることで、着用者の排泄口よりも後側の臀部に対応する吸収体12の部位を着用者に密着させることができ、排泄物の漏れを抑制できる。
【0048】
また、上記に限らず、臀部伸縮部42が吸収性本体10の長手方向の中央CL2よりも前側まで延びていてもよい。その場合にも、着用者の排泄口に対応する吸収体12の部位を臀部伸縮部42によって着用者に密着させることができる。但し着用者の排泄口に対応する吸収体12の部位では一般に、吸収性コア121の坪量が高くなっており、臀部伸縮部42による密着度の効果が得られ難い。そのため、上記のように高い効果が得られる部位に臀部伸縮部42を設け、臀部伸縮部42を出来る限り短くすることで、低コスト化を図れる。
【0049】
また、接合部2が縦方向に対して傾斜している方が、下着らしい外観が得られるが、接合部2が縦方向に沿って延びていてもよい。
【0050】
接合部2が傾斜している場合、吸収性物品1が着用のために引き上げられる時、吸収性本体10は、接合部2を介してベルト部20から、接合部2の直交方向への引っ張り力を受ける。そのため、
図4に示すように、後側の接合部2に対する垂線Lb1,Lb2と臀部伸縮部42とが交差していることが好ましい。なお、接合部2に対する垂線は接合部2の何れの位置から引いた垂線であってもよい。そうすることで、吸収性物品1の引き上げ時に、ベルト部20からの引っ張り力が臀部伸縮部42に伝達され、臀部伸縮部42は縦方向に大きく伸長できる。そして、着用者が吸収性物品1を位置合わせする際に、臀部伸縮部42は大きく伸長した分だけ大きく収縮しながら、吸収体12を着用者の臀部の割れ目にしっかりと密着させることができる。
【0051】
また、吸収性物品1の引き上げ時、ベルト部20からの引っ張り力は、接合部2の垂直二等分線Lb1上において強くなる。そのため、後側の接合部2の垂直二等分線Lb1と臀部伸縮部42とが交差しているとより好ましい。そうすることで、臀部伸縮部42は、吸収性物品1の引き上げ時により大きく伸長でき、その後、より大きく収縮しながら吸収体12を着用者の臀部の割れ目にしっかりと密着させることができる。
【0052】
吸収性物品1がある程度引き上げられた後、着用者の股下に吸収性本体10がフィットするように、ベルト部20の下端側から手が入れられて、吸収性物品1が更に引き上げられることが多い。この時、ベルト部20からの引っ張り力は、接合部2の下端部に対する垂線Lb2上において強くなる。そのため、後側の接合部2の下端部に対する垂線Lb2と臀部伸縮部42とが交差しているとより好ましい。そうすることで、臀部伸縮部42は、吸収性物品1の引き上げ時により大きく伸長でき、その後、より大きく収縮しながら吸収体12を着用者の臀部の割れ目にしっかりと密着させることができる。
【0053】
また、臀部伸縮部42の幅(横方向の長さ)は太すぎずに、吸収体12が着用者の臀部の割れ目に密着できる幅が好ましく、具体的には25mm以下、15mm程度であることが好ましい。また、吸収性物品1では、
図4に示すように、後側の一対の接合部2の縦方向における各上端2A1,2B1が横方向に離間しているが、その各上端2A1,2B1の横方向の位置p1,p2の間に臀部伸縮部42が位置していることが好ましい。つまり、後側の第1接合部2A及び第2接合部2Bと臀部伸縮部42とが横方向に重複していないことが好ましい。
【0054】
横方向において第1接合部2A及び第2接合部2Bと重複しない吸収性本体10の部位(p1〜p2)は、重複する部位に比べて、ベルト部20からの横方向の引っ張り力を受け難い。そのため、上記のように臀部伸縮部42が配されることで、臀部伸縮部42は横方向に伸長され難くなり、臀部伸縮部42の縦方向への伸長が阻害されてしまうことを防止できる。したがって、吸収性物品1の引き上げ時に、臀部伸縮部42は縦方向に大きく伸長でき、その分だけ臀部伸縮部42の収縮量が大きくなる。そのため、臀部伸縮部42によって吸収体12を着用者の臀部の割れ目にしっかりと密着させることができる。
【0055】
また、
図4に示すように、吸収性本体10を横方向に二分する縦中心線CL1と前側の接合部2との成す角度θ1が、縦中心線CL1と後側の接合部2との成す角度θ2よりも大きくなっていることが好ましい。具体的には、前側の角度θ1は20〜70度の範囲、より好ましくは30〜60度の範囲であるとよい。後側の角度θ2は10〜60度の範囲、より好ましくは20〜50度の範囲であるとよい。
【0056】
そうすることで、接合部2の傾斜が緩やかな前側では、ベルト部20が横方向の外側に向かって上方に傾斜する傾向となり、逆に後側では、ベルト部20が横方向の中心に向かって上方に傾斜する傾向となる。そのため、前側では、歩行時等の着用者の脚の動きがベルト部20により阻害されてしまうことを防止できる。一方、後側では、着用者の臀部上方に位置する仙骨部周辺まで吸収性物品1が引き上げられる。よって、着用者の股下部での吸収性物品1のだぶつきが抑えられ、吸収性物品1のフィット性が増すため、排泄物の漏れを抑制できる。
【0057】
===臀部伸縮部42とレッグギャザー部30===
図7は臀部伸縮部42とレッグギャザー部30の収縮量の違いを説明する図である。臀部伸縮部42及びレッグギャザー部30は、縦方向(長手方向)において互いに重複する重複部60を有する。そして、吸収性物品1が伸長状態から自然状態へと収縮したときに、臀部伸縮部42における重複部60の縦方向の収縮量の方が、レッグギャザー部30における重複部60の縦方向の収縮量よりも大きいことが好ましい。
【0058】
臀部伸縮部42及びレッグギャザー部30の「重複部」は、臀部伸縮部42及びレッグギャザー部30が縦方向において重複する範囲の全てでもよいし一部でもよい。本実施形態の吸収性物品1では接合部2が傾斜しており、レッグギャザー部30の縦方向の上端30aも傾斜している。そのため、以下で説明する縦方向の収縮量の比較が行い易いように、本実施形態では、
図7に示すように、臀部伸縮部42及びレッグギャザー部30が縦方向において重複する範囲(すなわち臀部伸縮部42の上端42aから下端42bまでの範囲)の一部を重複部60とする。具体的には、縦方向において、接合部2の下端2bから臀部伸縮部42の下端42bまでの範囲を重複部60とする。
【0059】
縦方向の収縮量の比較方法の一例として次の方法が挙げられる。まず、パンツ型状態の吸収性物品1において一対のベルト部20の各横方向の外側端20bを切断し(
図5の位置L1→L1,L2→L2にて切断し)、
図7に示すように吸収性本体10及びレッグギャザー部30を長手方向に伸長させた状態で固定する。
【0060】
この伸長状態は最大伸長状態であってもよいし、最大伸長状態よりも収縮している状態であってもよい。なお、最大伸長状態とは、臀部伸縮部42やレッグギャザー部30に実質的に皺やギャザーが視認できなくなる程度まで、臀部伸縮部42及びレッグギャザー部30を長手方向に伸長させた状態である。つまり、外装シート14等の吸収性本体10を構成するシートやレッグギャザー部30を構成するシート51がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態である。
【0061】
次に、臀部伸縮部42における重複部60の長手方向の両端にマーカーm1,m2を付す。レッグギャザー部30における重複部60の長手方向の両端にもマーカーm3,m4を付す。そして、伸長状態における重複部60の長手方向の長さL0を測定する。つまり、マーカーm1からm2までの長手方向の長さL0であり、マーカーm3からm4までの長手方向の長さL0を測定する。
【0062】
次に、吸収性物品1の伸長状態を解除して自然状態(無負荷状態)にする。そして、自然状態での、臀部伸縮部42における重複部60の長手方向の長さL1(マーカーm1からm2までの長さL1)と、レッグギャザー部30における重複部60の長手方向の長さL2(マーカーm3からm4までの長さL2)を測定する。そして、長さL0から長さL1を引いた値(L0−L1)が、長さL0から長さL2を引いた値(L0−L2)よりも大きい場合に、臀部伸縮部42における重複部60の縦方向の収縮量が、レッグギャザー部30における重複部60の縦方向の収縮量よりも大きいと確認できる。なお、この比較方法は一例であり、例えば、吸収性物品1を
図7のように展開せずに、パンツ型状態のままで縦方向の収縮量を測定する等、別の方法で比較してもよい。
【0063】
仮に、臀部伸縮部42よりもレッグギャザー部30の縦方向の収縮量が大きいとすると、レッグギャザー部30が臀部伸縮部42の縦方向の収縮を阻害し、レッグギャザー部30の方が臀部伸縮部42よりも着用者に密着し易くなる。そうすると、吸収性物品1はカップ形状に変形し、臀部伸縮部42が着用者の臀部の割れ目に密着し難くなる。
【0064】
そのため、レッグギャザー部30よりも臀部伸縮部42の縦方向の収縮量を大きくするとよい。つまり、レッグギャザー部30の伸縮応力よりも臀部伸縮部42の伸縮応力を大きくするとよい。そうすることで、レッグギャザー部30を着用者の脚回りに密着させつつ、臀部伸縮部42によって吸収体12を着用者の臀部の割れ目にしっかりと密着させることができる。したがって、排泄物の脚回りからの漏れ及び後ろ漏れを抑制できる。
【0065】
なお、縦方向の収縮量を大きくするためには、例えば、糸状弾性部材の場合、径を太くしたり、伸長倍率を高めたり、本数を増やしたりするとよく、シート状弾性部材の場合には、伸長倍率を高めたり、幅を太くしたりするとよい。また、伸長倍率とは、弾性部材の自然長を1としたときの伸び度合であり、例えば伸長倍率が2.4の場合、弾性部材は自然長から自然長の2.4倍の長さに伸張された状態でシート等に固定されている。
【0066】
また、臀部伸縮部42には、複数(ここでは4本)の糸状弾性部材(臀部弾性部材)41が横方向に並んで設けられている。一方、各レッグギャザー部30には、脚回り開口部LHに沿ってシート状弾性部材52が設けられるとともに、シート状弾性部材52よりも横方向の内側に複数(ここでは2本)の糸状弾性部材33が設けられている。
【0067】
但し上記に限らず、レッグギャザー部30の脚回り開口部LHに沿って糸状弾性部材を配してもよい。しかし、その場合、排泄物の漏れを抑制するために糸状弾性部材の伸縮応力を高める必要があり、糸状弾性部材が着用者の脚回りに局所的に密着し、肌に負担がかかり易い。そのため、レッグギャザー部30の脚回り開口部LHに沿ってシート状弾性部材52を配することが好ましい。そうすることで、レッグギャザー部30は着用者の脚回りに面で密着でき、脚回りからの排泄物の漏れをしっかりと抑制しつつ、肌への負担を軽減できる。
【0068】
また、臀部伸縮部42にシート状弾性部材を配するよりも糸状弾性部材を配する方が、縦方向の収縮量を大きくし易く、臀部伸縮部42によって吸収体12を着用者の臀部の割れ目にしっかりと密着させることができる。また、臀部伸縮部42は厚みのある吸収体12と重なるため、臀部伸縮部42に糸状弾性部材41が配されても肌への負担となり難い。
【0069】
===臀部伸縮部42と胴回り部70===
吸収性物品1は、
図5に示すように、一対のベルト部20と、前側及び後側の、吸収性本体10の縦方向の上方部、及び、一対のレッグギャザー部30の縦方向の上方部とを備えた胴回り部61を有する。胴回り部61は横方向に伸縮可能である。本実施形態では、吸収性物品1において
図5に示す縦方向の位置L3→L3よりも上側の部位を胴回り部61とする。
【0070】
なお、本実施形態ではベルト部20とレッグギャザー部30が同一のシート部材50で形成され、且つ、接合部2が脚回り開口部LHに達していない。そのため、接合部2及びその延長線をベルト部20とレッグギャザー部30の境界とする。
【0071】
ここで、胴回り部61を横方向に最大に伸長させた状態から、当該最大伸長状態における胴回り部61の横方向の長さを61%に縮めたときの、胴回り部61の横方向の伸縮応力を「胴回り伸縮応力A」とする。また、臀部伸縮部42を縦方向に最大に伸長させた状態から、当該最大伸長状態における臀部伸縮部42の縦方向の長さを82%に縮めたときの、臀部伸縮部42の縦方向の伸縮応力を「臀部伸縮応力B」とする。
【0072】
吸収性物品1の着用時、胴回り部61は、大きく広げられた後に、収縮しながら着用者の胴回りにフィットする。そして、胴回り部61の最大伸長状態から61%に縮んだときの胴回り部61の周長は、吸収性物品1の着用者として想定している人の平均的な胴回りに相当する。そのため、最大伸長状態から61%に縮んだときの胴回り伸縮応力Aは、着用のために広げられた状態から着用者の胴回りにフィットしたとき、つまり着用中における胴回り部61の伸縮応力に相当する。同様に、臀部伸縮部42も、吸収性物品1の引き上げ時に縦方向に伸長された後に収縮しながら着用者の臀部にフィットする。そして、臀部伸縮部42の最大伸長状態から82%縮んだ状態は、吸収性物品1の着用者として想定している人の平均的な臀部に吸収体12がフィットする状態に相当する。そのため、臀部伸縮応力Bも、着用中における臀部伸縮部42の伸縮応力に相当する。
【0073】
仮に、臀部伸縮応力Bが胴回り伸縮応力Aよりも大きいとすると、臀部伸縮部42の縦方向の収縮によって胴回り部61が下方にずれ落ち易くなってしまう。そのため、胴回り伸縮応力Aが臀部伸縮応力Bよりも大きくなっていること(A>B)が好ましい。そうすることで、臀部伸縮部42によって吸収体12を着用者の臀部の割れ目に密着させつつ、胴回り部61を着用者にフィットさせ、着用中の胴回り部61のずれを抑制できる。
【0074】
なお、胴回り部61の最大伸長状態とは、胴回り部61に実質的に皺やギャザーが視認できなくなる程度まで、胴回り部61を横方向に伸長させた状態であり、例えばベルト部20を構成するシート51をその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長させた状態である。同様に、臀部伸縮部42の最大伸長状態とは、臀部伸縮部42に実質的に皺やギャザーが視認できなくなる程度まで、臀部伸縮部42(吸収性本体10)を縦方向に伸長させた状態であり、吸収性本体10を構成する外装シート14等をその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長させた状態である。
【0075】
<伸縮応力A、Bの測定方法>
図8は実施例1、2及び比較例1、2の吸収性物品1において、伸縮応力A、Bを測定し、評価した結果を示す表である。
図9は臀部伸縮応力Bを測定する際に使用した臀部サンプル63の説明図である。
【0076】
胴回り伸縮応力Aを測定する際に使用した胴回りサンプル62は次のように取得した。パンツ型状態の吸収性物品1を
図5に示す位置L3→L3にて切断し、その切断ラインよりも縦方向の上方部(胴回り部61)を胴回りサンプル62として取得した。
【0077】
臀部伸縮応力Bを測定する際に使用した臀部サンプル63は次のように取得した。まずパンツ型状態の吸収性物品1を
図5に示す位置L1→L1及び位置L2→L2(ベルト部20の横方向の外側端20b)にて切断し、吸収性物品1を
図9に示す状態にした、すなわち、吸収性本体10及びレッグギャザー部30を長手方向に伸長させた状態にした。次に、
図9に示す吸収性物品1を、長手方向に沿う位置L4→L4及び位置L5→L5(吸収体12よりも横方向の両外側部)にて切断し、その後、横方向に沿う位置L6→L6、具体的には臀部伸縮部42の長手方向の前側端42bよりも40mm前側の位置にて切断し、臀部サンプル63を取得した。なお、臀部サンプル63に、レッグギャザー部30が備える糸状弾性部材33及びシート状弾性部材52が含まれないようにする。
【0078】
胴回り伸縮応力Aの測定は、インストロン ジャパン カンパニーリミテッド社製の引張試験機(INSTRON 型式:5564)を用いて、次の通りに行った。まず、上下に間隔を空けて配された細棒状の一対の治具(不図示)に胴回りサンプル62を引っ掛けて固定する。すなわち、輪状の胴回りサンプル62の内側に一対の治具を通し、試験機の上下方向(一対の治具が並ぶ方向)と、吸収性物品1における横方向とを合わせた。また、測定対象とした吸収性物品1(Mサイズ)の着用対象者の平均的な胴回りを732mmとし、最大伸長状態での胴回りサンプル62の周長を1200mm、横方向の長さは600mm(=1200/2)とした。そのため、一対の治具の上下方向の間隔を600mmよりも小さい180mmにセットした。
【0079】
次に、300mm/minのスピードで一対の治具の上下方向の間隔を離し、最大伸長状態になるまで胴回りサンプル62を吸収性物品1における横方向に伸長させた。すなわち、一対の治具の上下方向の間隔を、初期の間隔180mmから更に420mm離して、600mm(100%)まで広げた。その後、同じスピードで一対の治具の上下方向の間隔を狭めていき、最大伸長状態の胴回りサンプル62を吸収性物品1における横方向に収縮させた。そして、胴回りサンプル62の横方向の長さが、最大伸長状態のときの61%の長さ366mm(=600×0.61)になったとき、つまり初期状態から186mm(=366−180)伸長している状態での伸縮応力(N)を測定し、胴回り伸縮応力Aとした。
【0080】
同様に、臀部伸縮応力Bの測定も、インストロン ジャパン カンパニーリミテッド社製の引張試験機(INSTRON 型式:5564)を用いて、次の通りに行った。まず、上下に間隔を空けて配された一対のチャックに、吸収性物品1の縦方向(長手方向)における臀部サンプル63の両端部を把持させた。また、最大伸長状態での臀部サンプル63の縦方向の長さは330mmとした。そのため、一対のチャック間隔を330mmよりも小さい170mm(そのうち一対のチャックのつかみ幅が10mm×2)にセットした。
【0081】
次に、100mm/minのスピードで一対のチャックの上下方向の間隔を離し、最大伸長状態になるまで臀部サンプル63を吸収性物品1における縦方向に伸長させた。すなわち、一対のチャックの上下方向の間隔を、初期の間隔170mmから更に160mm離して、330mm(100%)まで広げた。その後、同じスピードで一対のチャックの上下方向の間隔を狭めていき、最大伸長状態の臀部サンプル63を吸収性物品における縦方向に収縮させた。そして、臀部サンプル63の縦方向の長さが、最大伸長状態のときの82%の長さ270mm(=330×0.82)になったとき、つまり初期状態から100mm(=270−170)伸長している状態での伸縮応力(N)を測定し、臀部伸縮応力Bとした。
【0082】
図8に示すように、実施例1、2及び比較例1、2の吸収性物品1から、それぞれ胴回りサンプル62及び臀部サンプル63を取得して、伸縮応力A、Bを測定した。なお、実施例1、2及び比較例1、2において吸収性物品1の基本構成(弾性部材以外の構成)は同じとし、上記の実施形態にて説明した吸収性物品1の構成とする。
【0083】
そして、実施例1、2及び比較例1、2の吸収性物品1について、「胴回りのずれ」と「臀部の食い込み」について評価試験を行った。
胴回りのずれについては、被験者が実際に吸収性物品1を着用し、歩く、しゃがむ、座る等の動作を行った際の、胴回り部61のずれ量を評価した。ずれ量が少ない場合を「○」とし、ずれはするが許容範囲である場合を「△」とした。
臀部の食い込みについては、被験者に実際に吸収性物品を着用してもらい、被験者の感じ方で評価した。臀部に対する吸収体12のフィット性が良いと感じた場合を「○」とし、若干の食い込み感はあるが許容範囲である場合を「△」とした。
【0084】
実施例1と比較例1では、胴回りサンプル62の弾性部材の構成は異なるが、臀部サンプル63の弾性部材の構成は同じである。
具体的には、実施例1の胴回りサンプル62では、一対のベルト部20のそれぞれにおいて、上端部の2回折り返されている部位(
図2B参照)に、径が940dtex、伸長倍率が3.2である6本の糸ゴムが、5mmピッチで配され、その下方に、径が940dtex、伸長倍率が2.7である11本の糸ゴムが、5mmピッチで配されている。
比較例1の胴回りサンプル62では、一対のベルト部20のそれぞれにおいて、上端部(折り返しなし)に、径が470dtex、伸長倍率が3.2である6本の糸ゴムが、5mmピッチで配され、その下方に、径が620dtex、伸長倍率が2.7である11本の糸ゴムが、5mmピッチで配されている。
実施例1及び比較例1の臀部サンプル63では、径が470dtex、伸長倍率が2.2である4本の糸ゴムが、5mmピッチで配されている。
【0085】
逆に、実施例2と比較例2では、胴回りサンプル62の弾性部材の構成は同じであるが、臀部サンプル63の弾性部材の構成は異なる。
具体的には、実施例2及び比較例2の胴回りサンプル62では、一対のベルト部20のそれぞれにおいて、上端部の2回折り返されている部位に、径が1240dtex、伸長倍率が3.2である6本の糸ゴムが、5mmピッチで配され、その下方に、径が1240dtex、伸長倍率が2.7である11本の糸ゴムが、5mmピッチで配されている。
実施例2の臀部サンプル63では、径が620dtex、伸長倍率が2である4本の糸ゴムが、5mmピッチで配されている。
比較例2の臀部サンプル63では、径が780dtex、伸長倍率が2.2である4本の糸ゴムが、5mmピッチで配されている。
【0086】
測定の結果、
図8に示すように、実施例1の胴回り伸縮応力Aは「5.56(N)」、比較例1の胴回り伸縮応力Aは「2.62(N)」、実施例1及び比較例1の臀部伸縮応力Bは「0.37(N)」という測定結果が得られた。そして、実施例1では、胴回りのずれ及び臀部の食い込みについて共に「○」であった。比較例1では、臀部の食い込みについては「○」であったが、胴回りのずれについては「△」であった。
【0087】
つまり、臀部の食い込みが生じないように臀部伸縮応力Bを設定し、その臀部伸縮応力Bの15倍の胴回り伸縮応力Aであると胴回りのずれが「○」となり、7.1倍の胴回り伸縮応力Aであると胴回りのずれが「△」となることが分かった。
【0088】
一方、実施例2及び比較例2の胴回り伸縮応力Aは「6.56(N)」、実施例2の臀部伸縮応力Bは「0.54(N)」、比較例2の臀部伸縮応力Bは「0.98(N)」という測定結果が得られた。そして、実施例2では、胴回りのずれ及び臀部の食い込みについて共に「○」であった。比較例2では、胴回りのずれについては「○」であったが、臀部の食い込みについては「△」であった。
【0089】
つまり、胴回りのずれが生じないように胴回り伸縮応力Aを設定し、その胴回り伸縮応力Aの1/12.1の臀部伸縮応力Bであると臀部の食い込み「○」となり、1/6.7の臀部伸縮応力Bであると臀部の食い込みが「△」となることが分かった。
【0090】
比較例1及び比較例2であっても、臀部伸縮応力Bが胴回り伸縮応力Aよりも大きい場合に比べると、臀部伸縮部42によって吸収体12を着用者の臀部の割れ目に密着させつつ、着用中の胴回り部61のずれを抑制できる。但し、
図8の結果から、胴回り伸縮応力Aが臀部伸縮応力Bの7.1倍よりも大きい値(A/B>7.1)であることがより好ましいと言える。この場合、臀部への吸収体12の食い込み過ぎによる着用時の違和感を軽減して、着け心地を向上させつつ、着用中の胴回り部61のずれを抑制できる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。