(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記リアル走査線を,上記集束位置と上記観測対象位置との上記円弧方向に位置ずれがある上記音響波エコー信号と,上記位置ずれが無い上記音響波エコー信号とから生成する,
請求項1から10のうち,いずれか1項に記載の音響波画像生成装置。
音響波プローブに,円弧状に複数配列されている音響波振動子であって,かつ音響波を送信させる上記音響波振動子を,駆動手段が,順に更新しながら,集束位置に集中する音響波を上記音響波振動子から被検体に送信させ,
リアル走査線生成手段が,上記駆動手段による上記音響波振動子の駆動にもとづいて得られる上記被検体の観測対象位置からの音響波エコーを表す音響波エコー信号を用いて上記被検体の音響波画像を表すリアル走査線を生成し,
補間走査線生成手段が,上記被検体内部において深さのしきい値よりも深い部分について,上記集束位置と上記観測対象位置との上記円弧方向に位置ずれがある上記音響波エコー信号を用いて,上記リアル走査線の間に位置する第1の補間走査線を生成し,
音響波画像生成手段が,上記リアル走査線と上記第1の補間走査線とから上記被検体の音響波画像を生成する音響波画像生成装置の制御方法であって,
走査線密度算出手段が,上記リアル走査線の走査線密度を上記被検体の深さごとに算出し,
上記補間走査線生成手段は,
上記走査線密度算出手段によって算出された走査線密度がしきい値以下であることに応じて,上記第1の補間走査線を生成する,
音響波画像生成装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この実施例においては,音響波として超音波が用いられるが,超音波に限定されるものではなく,被検対象,測定条件などに応じて適切な周波数が選択されれば,可聴周波数の音響波を用いるようにしてもよい。また,被検体として人間の病気の診断に利用するだけでなく,音響波画像(超音波画像)が生成されることにより,壁,配管などの中味を検査等する場合にも利用できる。
【0022】
図1は,この発明の実施例による超音波診断装置(音響波画像生成装置)において生成される超音波画像Imgの一例である。
【0023】
この実施例による超音波診断装置は,複数の超音波振動子(音響波振動子)が円弧方向に配列されているコンベックス型超音波プローブ(音響波プローブ)が利用される。コンベックス型超音波プローブを用いることにより得られる超音波画像Imgは,長さの短い円弧C1と長さの長い円弧C2と,これらの二つの円弧C1およびC2のそれぞれの両端を結ぶ直線によって囲まれている。短い円弧C1から長い円弧C2に向かう方向が被検体の深さ方向を示している。
【0024】
超音波プローブを構成する超音波振動子の駆動にもとづいて被検体から得られる超音波エコーを表す超音波エコー信号を用いてマルチ・ライン処理が行われることにより,超音波画像Imgを構成するリアル走査線L1が生成される。深さ方向のしきい値D1よりも深い部分については,マルチ・ライン処理が行われることにより得られる音響波エコー信号を用いて,リアル走査線L1の間に位置する第1の補間走査線L2が生成される。リアル走査線L1と第1の補間走査線L2を用いて超音波画像Imgが生成される。
【0025】
被検体の浅い部分を表す超音波画像部分Ar1における走査線密度(走査線間隔)と被検体の深い部分を表す超音波画像部分Ar2における走査線密度との差が大きく変わらなくなるので,被検体の浅い部分を表す超音波画像部分Ar1の画質と被検体の深い部分を表す超音波画像部分Ar2の画質が変わらなくなる。被検体の深い部分を表す超音波画像部分Ar2についての画質も向上する。
【0026】
図2は,この発明の実施例を示すもので超音波診断装置(音響波画像生成装置)1の電気的構成を示すブロック図である。
【0027】
マルチ・ライン処理を用いて上述したリアル走査線L1を生成する処理について,まず説明する。
【0028】
超音波診断装置1の全体の動作は,制御装置2によって統括される。
【0029】
制御装置2には,超音波診断装置1を操作するユーザ(医師,看護師,技師など)によって操作される操作装置3および所定のデータ等が格納される格納装置4が接続されている。
【0030】
超音波診断装置1には,超音波プローブ6が含まれている。上述したように超音波プローブ6は,コンベックス型であり,複数の超音波振動子が円弧状に配列されている(
図3Aなど参照)。
【0031】
制御装置2から出力される制御信号は送信装置5に与えられる。すると,送信装置5から超音波プローブ6の超音波振動子に電気パルスが与えられる。超音波振動子によって電気パルスが超音波パルス43に変換され,被検体の体内を伝播し,超音波エコー44が超音波プローブ6に戻る。
【0032】
超音波エコー44は,超音波振動子において電気信号(超音波エコー信号)に変換される。
【0033】
図3Aから
図7Bは,超音波プローブ6から超音波パルス43が出力され,上述のように超音波エコー信号が得られる様子を示している。
【0034】
図3Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子21−27から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
図4Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子22−28から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
図5Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子23−29から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
図6Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子24−30から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
図7Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子25−31から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
【0035】
このように,超音波プローブ6に含まれる複数の超音波振動子20−32は,円弧状に配列(二次元配列でもよい)されている。また,制御装置2(駆動手段)によって,超音波振動子20から32のうち,駆動する超音波振動子が順に更新させられながら,集束位置41に集中する超音波パルス(音響波)43が,駆動する超音波振動子から送信させられる。
【0036】
図5Aを参照して,超音波振動子23−29から超音波パルス43が送信されたものとする。超音波パルス43は,超音波振動子23−29の中央の超音波振動子26の送信方向(
図5Aでは超音波振動子26の真下)の所定距離にある集束位置41に集中するように超音波振動子23−29から送信される。超音波振動子23−29の位置に応じて超音波パルス43が遅延して送信されることにより,超音波パルス43が集束位置41に集中する。
図5Aに示す例では,中央の超音波振動子26と集束位置41との延長方向に観測対象位置42(被検体の中での媒質が変わる場所など)が存在する。このために,超音波パルス43が観測対象位置42に照射され,観測対象位置42から超音波エコー44が発生する。超音波エコー44は,超音波振動子23から29において受信される。
【0037】
図5Bは,超音波エコー44を受信した超音波振動子23−29から出力される超音波エコー信号71−77を示している。横軸は超音波振動子の位置を示し,縦軸は超音波振動子から超音波パルス43が出力された時間tbからの経過時間を示している。
【0038】
超音波振動子23−29の位置(超音波振動子23−29は,円弧状に配列されているため集束位置41までの距離が,超音波振動子23−29の円弧方向の位置に応じて異なり,かつ超音波振動子26から超音波振動子23,24,25,27,28および29までの距離も異なる)に応じて,超音波パルス43および超音波エコー44の伝播距離に差が生じるために,超音波振動子23−29から出力される超音波エコー信号71−77の出力タイミングも超音波振動子ごとに異なる。中央の超音波振動子26から出力される超音波パルス43および観測対象位置42から中央の超音波振動子26の超音波エコー44の伝播距離は一番短いから,中央の超音波振動子26から最初に超音波エコー信号74が出力される(時刻t0)。中央の超音波振動子26の両隣の超音波振動子25および27から出力される超音波パルス43および観測対象位置42から超音波振動子25および27の超音波エコー44の伝播距離は次に短いから,超音波エコー信号74の次に超音波エコー信号73および75が超音波振動子25および27から出力される。同様に,次に超音波振動子24および28から超音波エコー信号72および76が出力される。最後に超音波振動子23および29から超音波エコー信号71および77が出力する。
図5Bにおいて(他の図においても同様),超音波エコー信号71から77を示すものとして超音波エコー信号71から77の包絡線が超音波エコー信号群g53として図示されている。
【0039】
図3Aを参照して,超音波振動子21−27から超音波パルス43が送信されたものとする。超音波パルス43が集束位置41に集中し,一つの超音波素子(
図3Aに示す場合は,超音波振動子24)の幅よりも広がらなければ,超音波を送信する超音波振動子21−27のうち,中央の超音波振動子24と集束位置41との延長方向に存在しない観測対象位置42(被検体の中での媒質が変わる場所など)には超音波パルス43が照射されないため,観測対象位置42からは超音波エコー44も発生しない。しかしながら,超音波パルス43は集束位置41を越えると広がってしまうために,中央の超音波振動子24と集束位置41との延長方向に存在しない観測対象位置42にも超音波パルス43が照射されてしまう。このために,観測対象位置42から超音波エコー44が発生する。超音波エコー44は,超音波振動子21−27において受信される。
【0040】
図3Bは,超音波エコー44を受信する超音波振動子21−27から出力される超音波エコー信号群g51を示している。超音波エコー信号群g51は,超音波振動子21−27からそれぞれ出力される超音波エコー信号69−75の包絡線である(実際には超音波エコー信号は
図3Bの超音波エコー信号69−75のようになる)。超音波エコー44を受信する超音波振動子21−27のうちの超音波振動子26の超音波パルス43の出力方向(
図3Aでは真下)に観測対象位置42が存在するから,超音波振動子26から最初に超音波エコー信号74が出力され(時刻t1),次に超音波振動子25および27から超音波エコー信号73および75が出力され,次に超音波振動子24から超音波エコー信号72が出力される。さらに,超音波振動子23から超音波エコー信号71が出力され,超音波振動子22から超音波エコー信号70が出力され,超音波振動子21から超音波エコー信号69が出力される。集束位置41は,超音波エコー44を受信する超音波振動子26と観測対象位置42との間には存在しないので,最初に超音波エコー信号74が出力される時間t1は,
図5Bに示したように,最初に超音波エコー信号74が出力される時間t0よりも遅い。
【0041】
図4Aを参照して,駆動される超音波振動子が更新されて,超音波振動子22−28から超音波パルス43が送信されたものとする。
図3Aを参照して説明したのと同様に,超音波エコー44が超音波振動子22−28において受信される。
【0042】
図4Bを参照して,
図3Bと同様に,超音波振動子22−28から超音波エコー信号群g52が得られる。この超音波エコー信号群g52も,超音波振動子22−28からそれぞれ出力される超音波エコー信号70−76の包絡線である。上述したのと同様に,超音波振動子26から最初に超音波エコー信号74が出力される(時刻t2)。
【0043】
駆動される超音波振動子が更新されて,
図5Aに示すように,超音波振動子23−29から超音波パルス43が送信されると,すでに説明した動作となる。
【0044】
図6Aを参照して,駆動される超音波振動子が更新されて,超音波振動子24−30から超音波パルス43が送信されたものとする。上述したのと同様に,超音波エコー44が超音波振動子24−30において受信される。
【0045】
図6Bを参照して,
図3A等と同様に,超音波振動子24−30から超音波エコー信号群g54が得られる。この超音波エコー信号群g54も,超音波振動子24−30からそれぞれ出力される超音波エコー信号72−78の包絡線である。上述したのと同様に,超音波振動子26から最初に超音波エコー信号74が出力される(時刻t4)。
【0046】
図7Aを参照して,駆動される超音波振動子が更新されて超音波振動子25−31から超音波パルス43が送信されたものとする。
図3Aを参照して説明したのと同様に,超音波振動子25−31において受信される。
【0047】
図7Bを参照して,
図3A等と同様に,超音波振動子25−31から超音波エコー信号群g55が得られる。この超音波エコー信号群g55も,超音波振動子25−31からそれぞれ出力される超音波エコー信号73−79の包絡線である。上述したのと同様に,超音波振動子26から最初に超音波エコー信号74が出力される(時刻t5)。
【0048】
図2に戻って,上述のようにして得られた超音波エコー信号が,受信装置7に与えられる。受信装置7において超音波エコー信号が増幅され,A/D(アナログ/ディジタル)変換回路8において,ディジタルの超音波エコー・データに変換される。超音波エコー・データは,超音波エコー・データ記憶装置9に与えられ,一時的に記憶される。超音波エコー・データは,超音波エコー・データ記憶装置9から読み取られ,超音波エコー・データ処理装置10に入力する。
【0049】
超音波エコー・データ処理装置10において,制御装置2(駆動手段)による超音波振動子(音響波振動子)の駆動にもとづいて得られる被検体の観測対象位置42の超音波エコー(音響波エコー)44が超音波振動子(音響波振動子)において受信されることにより超音波振動子(音響波振動子)から出力される超音波エコー信号(音響波エコー信号)のうち,
図3A,
図4A,
図6Aおよび
図7Aに示したように,集束位置41と観測対象位置42との円弧方向に位置ずれがある超音波エコー・データ(音響波信号)について,駆動させられた超音波振動子の位置に応じて位置ずれが補正させられる。
【0050】
位置ずれの補正は,次に述べるように,観測対象位置42が,集束位置41と,観測対象位置42からの超音波エコー44を受信する超音波振動子21−27の中央の超音波振動子24と,の間に存在したと仮定した場合に得られる超音波エコー信号を生成するものである。言い換えれば,超音波パルス43を送信し,かつ超音波エコー44を受信する超音波振動子21−27の中央の超音波振動子24と集束位置41との延長上に観測対象位置42が存在したと仮定した場合に得られる超音波エコー信号を生成するものである。
【0051】
図3Bを参照して,超音波エコー・データ処理装置102において,超音波エコー信号群g51が,
図5Bに示すように,時刻t0の時点において超音波振動子26から出力されたように遅延時間を補正する第1の補正が行われ,かつ集束位置41と観測対象位置42との円弧方向の位置ずれを解消するように超音波エコー信号群g51の頂点をシフトする第2の補正が行なわれる。円弧方向における位置ずれは,円弧方向における集束位置41と観測対象位置42とのずれのことである。円弧方向における位置ずれの補正は,
図3Aに示すように集束位置41と観測対象位置42とが円弧方向において位置ずれがある場合(円弧方向と垂直方向において集束位置41と観測対象位置42とが直線上に無い場合)に,円弧方向の位置ずれが無かった場合に得られるであろう超音波エコー信号を生成するものである。
図3Aに示す場合であれば,集束位置41と観測対象位置42とは円弧方向において超音波振動子の2個分の間隔だけずれているから,その間隔のずれが解消されるように,超音波エコー信号群g51が円弧方向と逆方向(超音波振動子20から超音波振動子32に向かう方向を円弧方向とする)に超音波振動子2個分の間隔だけシフトされる。これらの第1の補正および第2の補正を合わせた補正が位置ずれ補正となる。これにより,
図3Bに示すように,超音波エコー信号群g51(以下,超音波エコー信号を超音波エコー・データということがある)は破線で示すように超音波エコー・データ群g61に補正される。このように超音波エコー・データ処理装置102において,制御装置(駆動手段)2による超音波振動子の駆動にもとづいて得られる被検体の観測対象位置42の超音波エコー44が超音波振動子21−27において受信されることにより超音波振動子21−27から出力される超音波エコー・データのうち,集束位置41と観測対象位置42との円弧方向における位置ずれがある超音波エコー・データについて,制御装置2によって駆動させられた超音波振動子の位置に応じて位置ずれが補正させられる。
【0052】
第1の補正における遅延時間は,次のようにして算出できる。
【0053】
図8は,
図5Aに示したように集束位置41と観測対象位置42との間に円弧方向(一方向)における位置ずれが無い場合の超音波パルス43および超音波エコー44を示している。
【0054】
図8に示すように,一方向をX方向,一方向の鉛直方向をZ方向とする。符号Aを中心に半径diの位置に円弧方向に複数の超音波振動子23−29が配列されているとする。中心位置AのX,Z座標を(X,Z)=(0,0),集束位置41の座標を(X,Z)=(0,df),観測対象位置42の座標を(X,Z)=(0,z)とする。集束位置41と観測対象位置42との間に円弧方向における位置ずれが無い場合には,超音波振動子26から送信された超音波パルス43が集束位置41を経て観測対象位置42に至るまでの送信経路の長さLtaと,観測対象位置42から反射する超音波エコー44が観測対象位置42から超音波振動子26に戻るまでの受信経路の長さLraと,は等しい。したがって,Lta=Lra=z−diとなり,超音波パルス43の伝播距離Ltaと超音波エコー44の伝播距離Lraとを合わせた伝播距離Luaは,Lua=Lta+Lra=2z−2diとなる。このようにして得られた伝播距離Luaが音速(被検体内での音速)で除されることにより,位置ずれが無い場合の超音波パルス43および超音波エコー44の伝播時間が得られる。
【0055】
図9は,
図3Aに示したように集束位置41と観測対象位置42との間に円弧方向における位置ずれがある場合の超音波パルス43および超音波エコー44を示している。
【0056】
集束位置41は,中心位置Aと超音波振動子24の中心との延長線上にあり,観測対象位置42から円弧方向(
図9において左側から右側を正の円弧方向とすると,負の円弧方向)にずれている。超音波振動子24から送信された超音波パルス43が集束位置41を経て観測対象位置42に至るまでの送信経路の長さをLtb,観測対象位置42から反射する超音波エコー44が観測対象位置42から超音波振動子26に戻るまでの受信経路の長さをLrbとする。円弧状に配列されている超音波振動子20−32の円弧の中心位置(超音波振動子20−32が円周上に配列されているたした場合の円の中心位置)をA,集束位置41をB,観測対象位置42をC,超音波振動子24の中心位置をD,超音波振動子26の中心位置をE,集束位置41から三角形ABCにおける辺CAに下した垂線が辺CAと交わる箇所をFとすると,送信経路の長さLtbは,DB間の距離+BC間の距離となり,受信経路の長さLrbは,CE間の距離となる。DB間の距離は,dfであり,BC間の距離は,√{(BF間の距離)
2+(CF間の距離)
2}である。BF間の距離は,超音波振動子24と超音波振動子26とのなす角をθとすると,(di+df)sinθとなり,CF間の距離は,(AC間の距離)−(AF間の距離)であるから,z−(di+df)cosθとなる。したがって,BC間の距離は,√[{(di+df)sinθ}
2+{z−(di+df)cosθ}
2]となる。また,CE間の距離は,z−diである。超音波パルス43の伝播距離Ltbと超音波エコー44の伝播距離Lrbとを合わせた伝播距離Lubは,Lub=Ltb+Lrb=df+√[{(di+df)sinθ}
2+{z−(di+df)cosθ}
2]+z−diとなる。このようにして得られた伝播距離Lubが音速で除されることにより,位置ずれが有る場合の超音波パルス43および超音波エコー44の伝播時間が得られる。
【0057】
位置ずれが無い場合の伝播時間と位置ずれが有る場合の伝播時間との差から,上述したように第1の補正で補正される遅延時間が算出される。
図3Aに示す位置ずれの場合だけでなく,
図4A,
図6A,
図7Aなどに示す位置ずれの場合においても同様にして遅延時間が算出できるのはいうまでもない。
【0058】
図4B,
図6Bおよび
図7Bのように,集束位置41と観測対象位置42との間に円弧方向の位置ずれが生じている超音波エコー・データ群g52,g54およびg55についても同様に超音波エコー・データ処理装置10において位置ずれ補正が行なわれ,位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g62,g64およびg65が得られる。
【0059】
つづいて,位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g61,g62,g64およびg65と位置ずれが無い超音波エコー・データ群g53とが,同一の超音波エコー・データ同士が加算されるように超音波エコー・データ処理装置10において重畳される。
【0060】
重畳においては,観測対象位置42の延長線上にある超音波振動子26の位置が,超音波エコー・データ74と重なるように重畳を行う。重畳された超音波エコー・データ69−79は,整相加算装置11に与えられる。
【0061】
図10Aおよび
図11は,重畳された超音波エコー・データ69−79が整相加算される様子を示している。
【0062】
図10を参照して,重畳された超音波エコー・データ69−79が,時刻t0において最初に超音波振動子26から出力される超音波エコー信号74の出力タイミングと同じであったように,出力時間補正が整相加算装置11において行なわれる。
【0063】
続いて,
図11を参照して,出力時間補正がされた超音波エコー・データ69−79が,観測対象位置42の延長線上にある超音波振動子26の位置で重ね合わせられるように,整相加算装置11により加算が行われる。この加算により,リアル走査線(この場合,超音波振動子26に対応するリアル走査線)L1を表す超音波エコー・データが得られる。
【0064】
このような出力時間補正および超音波エコー・データ69−79の加算が整相加算であり,上述したように整相加算装置11において行われる。整相加算が行われることにより,S/Nが向上する。
【0065】
なお,ここでは,位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g61,g62,g64およびg65と,位置ずれ補正されていない超音波エコー・データ群g53とは,重畳を行ったあとに整相加算を行っているが,この順番はこれに限らない。つまり,位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g61,g62,g64およびg65と,位置ずれ補正されていない超音波エコー・データ群g53とを,それぞれ独立に整相加算を行ったあとに,重畳して1つの重畳データを得るようにしてもよい。また,位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g61,g62,g64およびg65と,位置ずれ補正されていない超音波エコー・データ群g53との少なくとも一部に対して超音波エコー・データ処理装置10などにより重み付けをした上で重畳を行なうようにしてもよい。このように,位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g61,g62,g64およびg65を整相加算することにより走査線を生成する処理がマルチ・ライン処理である。マルチ・ライン処理においては,位置ずれ補正されていない超音波エコー・データ群g53を用いてもよいし,用いなくともよい。
【0066】
このようにして整相加算されることにより,超音波エコー・データ処理装置10および整相加算装置11(リアル走査線生成手段)を用いて,
図1に示したように,超音波画像Imgを表すリアル走査線L1が生成される。上述した例では,超音波振動子26の位置に相当するリアル走査線L1が生成されることとなる。
【0067】
次に,マルチ・ライン処理を用いて第1の補間走査線L2を生成する処理について説明する。超音波振動子26と27との間に位置決めされる第1の補間走査線L2が生成される場合について説明するが,他の場所に位置決めされる第1の補間走査線L2であっても同様に生成できる。以下に示す処理は,超音波エコー・データ処理装置10において行われる。
【0068】
図12A,
図13A,
図14A,
図15Aおよび
図16Aは,上述した
図3A,
図4A,
図5A,
図6Aおよび
図7Aに対応するものである。
図12Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子21−27から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
図13Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子22−28から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
図14Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子23−29から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
図15Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子24−30から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
図16Aは,超音波プローブ6に含まれる超音波振動子20−32のうち,超音波振動子25−31から超音波パルス43が出力されている様子を示している。
【0069】
図14Aを参照して,
図5Aと同様に,超音波振動子23−29から超音波パルス43が送信されたものとする。超音波パルス43は,超音波振動子23−29の中央の超音波振動子26の送信方向(
図14Aでは超音波振動子26の真下)の所定距離にある集束位置41に集中するように超音波振動子23−29から送信される。
図14Aに示す例では,中央の超音波振動子26と集束位置41との延長方向よりも超音波振動子0.5個分だけ円弧方向に観測対象位置42が存在する。超音波パルス43が観測対象位置42に照射されると,観測対象位置42から超音波エコー44が発生する。超音波エコー44は,超音波振動子23から29において受信される。
【0070】
図14Bは,超音波エコー44を受信する超音波振動子23−29から出力される超音波エコー信号群g53を示している。超音波エコー信号群g53は,超音波振動子23−29からそれぞれ出力される超音波エコー信号71−77の包絡線である。超音波エコー44を受信する超音波振動子23−29のうちの超音波振動子26と27と間の超音波パルス43の出力方向に観測対象位置42が存在するから,超音波振動子26および27から最初に超音波エコー信号74および75が出力され(時刻t3),次に超音波振動子25および28から超音波エコー信号73および76が出力され,さらに次に超音波振動子24および429から超音波エコー信号72および77が出力される。最後に超音波振動子23から超音波エコー信号71が出力される。
【0071】
図12Aを参照して,超音波振動子21−27から超音波パルス43が送信されたものとする。超音波エコー44が超音波振動子21−27において受信される。
【0072】
図12Bを参照して,超音波振動子21−27から超音波エコー信号群g51が得られる。この超音波エコー信号群g51も,超音波振動子21−27からそれぞれ出力される超音波エコー信号69−75の包絡線である。上述したのと同様に,超音波振動子26および27から最初に超音波エコー信号74および75が出力される(時刻t11)。
【0073】
図13Aを参照して,駆動される超音波振動子が更新されて,超音波振動子22−28から超音波パルス43が送信されたものとする。観測対象位置42からの超音波エコー44は,超音波振動子22−28において受信される。
【0074】
図13Bを参照して,超音波振動子22−28から超音波エコー信号群g52が得られる。この超音波エコー信号群g52も,超音波振動子22−28からそれぞれ出力される超音波エコー信号70−76の包絡線である。上述したのと同様に,超音波振動子26および27から最初に超音波エコー信号74および75が出力される(時刻t12)。
【0075】
駆動される超音波振動子が更新されて,
図14Aに示すように,超音波振動子23−29から超音波パルス43が送信されると,
図14Aおよび
図14Bを参照してすでに説明した動作となる。
【0076】
図15Aを参照して,駆動される超音波振動子が更新されて,超音波振動子24−30から超音波パルス43が送信されたものとする。上述したのと同様に,超音波エコー44が超音波振動子24−30において受信される。
【0077】
図15Bを参照して,超音波振動子24−30から超音波エコー信号群g54が得られる。この超音波エコー信号群g54も,超音波振動子24−30からそれぞれ出力される超音波エコー信号72−78の包絡線である。上述したのと同様に,超音波振動子26および27から最初に超音波エコー信号74および75が出力される(時刻t14)。
【0078】
図16Aを参照して,駆動される超音波振動子が更新されて超音波振動子25−31から超音波パルス43が送信されたものとする。超音波エコー44は,超音波振動子25−31において受信される。
【0079】
図16Bを参照して,超音波振動子25−31から超音波エコー信号群g55が得られる。この超音波エコー信号群g55も,超音波振動子25−31からそれぞれ出力される超音波エコー信号73−79の包絡線である。上述したのと同様に,超音波振動子26から最初に超音波エコー信号74が出力される(時刻t15)。
【0080】
図2に戻って,上述のようにして得られた超音波エコー信号が,受信装置7に与えられる。受信装置7において超音波エコー信号が増幅され,A/D(アナログ/ディジタル)変換回路8において,ディジタルの超音波エコー・データに変換される。超音波エコー・データは,超音波エコー・データ記憶装置9に与えられ,一時的に記憶される。超音波エコー・データは,超音波エコー・データ記憶装置9から読み取られ,超音波エコー・データ処理装置10に入力する。
【0081】
超音波エコー・データ処理装置10において,制御装置2(駆動手段)による超音波振動子(音響波振動子)の駆動にもとづいて得られる被検体の観測対象位置42の超音波エコー(音響波エコー)が超音波振動子(音響波振動子)において受信されることにより超音波振動子(音響波振動子)から出力される超音波エコー信号(音響波エコー信号)のうち,
図12A,
図13A,
図14A,
図15Aおよび
図16Aに示したように,集束位置41と観測対象位置42との円弧方向に位置ずれがある超音波エコー・データ(音響波信号)について,駆動させられた超音波振動子の位置に応じて位置ずれが補正させられる。
【0082】
また,上述したのと同様に,
図12Bを参照して,超音波エコー・データ処理装置102において,超音波エコー信号群g51が,時刻t0の時点において超音波振動子24から出力されたように遅延時間を補正する第1の補正が行われ,かつ集束位置41と観測対象位置42との円弧方向の位置ずれを解消するように超音波エコー信号群g51の頂点をシフトする第2の補正が行なわれる。円弧方向における位置ずれは,円弧方向における集束位置41と観測対象位置42とのずれのことである。円弧方向における位置ずれの補正は,
図12Aに示すように集束位置41と観測対象位置42とが円弧方向において位置ずれがある場合に,円弧方向の位置ずれが無かった場合に得られるであろう超音波エコー信号を生成するものである。
図12Aに示す場合であれば,集束位置41と観測対象位置42とは円弧方向において超音波振動子の2.5個分の間隔だけずれているから,その間隔のずれが解消されるように,超音波エコー信号群g51が円弧方向と逆方向(超音波振動子20から超音波振動子32に向かう方向を円弧方向とする)に超音波振動子2.5個分の間隔だけシフトされる。これらの第1の補正および第2の補正を合わせた補正が位置ずれ補正となる。これにより,
図12Bに示すように,超音波エコー信号群g51は破線で示すように超音波エコー・データ群g71に補正される。このように超音波エコー・データ処理装置102において,制御装置(駆動手段)2による超音波振動子の駆動にもとづいて得られる被検体の観測対象位置42の超音波エコーが超音波振動子21−27において受信されることにより超音波振動子21−27から出力される超音波エコー・データのうち,集束位置41と観測対象位置42との円弧方向における位置ずれがある超音波エコー・データについて,制御装置2によって駆動させられた超音波振動子の位置に応じて位置ずれが補正させられる。
【0083】
図13B,
図14B,
図15Bおよび
図16Bのように,集束位置41と観測対象位置42との間に円弧方向の位置ずれが生じている超音波エコー・データ群g52,g53,g54およびg55についても同様に超音波エコー・データ処理装置10において位置ずれ補正が行なわれ,位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g72,g73,g74およびg75が得られる。
【0084】
位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g71,g72,g73,g74およびg75が超音波エコー・データ処理装置10において重畳され,重畳された超音波エコー・データ69−79が得られる。重畳においては,観測対象位置42の延長線上にある超音波振動子26と27の間の位置が,超音波エコー・データ74と75の間の位置と重なるように重畳を行う。重畳された超音波エコー・データ69−79は,整相加算装置11に与えられる。
【0085】
図17および
図18は,それぞれ
図10および
図11に相当するもので,重畳された超音波エコー・データ69−79が整相加算される様子を示している。
【0086】
図17を参照して,重畳された超音波エコー・データ69−79が,時刻t0において最初に超音波振動子26と27の間の仮想位置から出力される仮想の超音波エコー信号の出力タイミングと同じであったように,出力時間補正が整相加算装置11において行なわれる。
【0087】
図18を参照して,出力時間補正がされた重畳された超音波エコー・データ69−79が,観測対象位置42の延長線上にある超音波振動子26と27の間の位置で重ね合わせられるように,整相加算装置11により加算が行われる。この加算により,補間走査線(この場合,超音波振動子26と27との間に相当補間走査線)を表す超音波エコー・データ80が得られる。
【0088】
図17に示す出力時間補正および
図18に示す超音波エコー・データ69-79の加算が整相加算である。整相加算が行われることにより,S/Nが向上する。
【0089】
この場合も,重畳を行った後に
図17および
図18の整相加算を行っているが,位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g71,g72,g73,g74およびg75を独立に整相加算を行った後に,重畳して1つの重畳データを得てもよい。また,位置ずれ補正された超音波エコー・データ群g71,g72,g73,g74およびg75の少なくとも一部に対して超音波エコー・データ処理装置10などにより重み付けをした上で重畳を行なうようにしてもよい。
【0090】
このようにして整相加算されることにより,超音波エコー・データ処理装置10および整相加算装置11(補間走査線生成手段)を用いて,
図1に示したように,超音波画像Imgを表す補間走査線L2が生成される。上述した例では,超音波振動子26と27との間の位置に相当する補間走査線L2が生成されることとなる。他の位置の補間走査線L2も同様に生成される。
【0091】
この実施例においては,マルチ・ライン処理において,超音波振動子の駆動にもとづいて得られる被検体の観測対象位置42からの超音波エコー44を表す超音波エコー・データを用いて生成される被検体の超音波画像(音響波画像)Imgを表すリアル走査線L1の間に位置する第1の補間走査線L2は,深さしきい値D1よりも深い部分について,超音波エコー・データ処理装置10および整相加算装置11(補間走査線生成手段)によって生成される。第1の補間走査線L2は,上述したように,集束位置41と観測対象位置との円弧方向に位置ずれがある音響波エコー・データ群g51,g52,g53,g54およびg55から生成される。深さしきい値D1よりも深い部分について第1の補間走査線L2を生成するには,深さしきい値D1よりも深い観測対象位置42から得られる超音波エコー44を利用して上述したマルチ・ライン処理を行なえばよい。深さしきい値D1よりも深い観測対象位置42から得られる超音波エコー44かどうかは,超音波振動子から出力された超音波が観測対象位置42に送信され,その超音波エコー44が超音波振動子に受信されるまでの時間を利用できる。観測対象位置42が深さしきい値D1にある場合に得られる時間よりも長い時間かかって得られた超音波エコー44にもとづいて上述したようにして得られる超音波エコー・データを用いることにより,深さしきい値D1よりも深い位置にある第1の補間走査線L2を生成できる。観測対象位置42が深さしきい値D1による場合に得られる時間については,時間=(超音波振動子から集束位置41を経て観測対象位置42までの距離+観測対象位置42から超音波を受信する超音波振動子までの距離)/(被検体内での音速)で得られる。
【0092】
図2を参照して,リアル走査線L1を生成するための超音波エコー・データおよび第1の補間走査線L2を生成するための超音波エコー・データは,DSC(ディジタル・スキャン・コンバータ)13に入力する。
【0093】
DSC13において,通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像データにラスタ変換される。深さしきい値D1よりも浅い部分については,リアル走査線L1から超音波画像Imgが生成され,深さしきい値D1よりも深い部分については,リアル走査線L1および第1の補間走査線L2から,
図1に示すような超音波画像Imgを表す画像データが得られることとなる(DSC13:音響波画像生成手段)。
【0094】
DSC13から出力された画像データは,画像作成装置14において,階調処理等の画像処理が行われる。画像作成装置14から出力された画像データは表示制御装置16に与えられ,表示装置17の表示画面に超音波画像Imgが表示されることとなる。画像作成装置14から出力された画像データは画像メモリ15にも与えられ,画像メモリ15に,超音波画像Imgを表わす画像データが記憶される。画像メモリ15に記憶された画像データが表示制御装置16に与えられることにより,超音波画像Imgが表示装置17の表示画面に表示される(音響波画像表示制御手段)。
【0095】
上述の実施例では,リアル走査線L1について,いわゆるマルチ・ライン処理が利用されているが,リアル走査線L1については,いわゆるマルチ・ライン処理を利用しなくともよい。マルチ・ライン処理を利用しない場合,上述した位置ずれの無い超音波エコー・データ群g53を利用してリアル走査線L1が生成されよう。また,上述の実施例では,位置ずれのある超音波エコー・データ群g51,g52,g54およびg55ならびに位置ずれの無い超音波エコー・データ群g53の両方の超音波エコー・データを利用して,リアル走査線L1を生成しているが,位置ずれのある超音波エコー・データ群g51,g52,g54およびg55のみを利用してリアル走査線L1を生成するようにしてもよい。
【0096】
図19は,超音波画像Img2の他の一例を示している。
【0097】
図19に示す超音波画像Img2においては,二つの深さしきい値D1およびD2が規定されている。深さしきい値(第1の深さしきい値)D1よりも深い位置に第2の深さしきい値D2が規定されている。
【0098】
第1の深さしきい値D1以下(よりも浅い)の深さの超音波画像Img2の部分Ar1は,リアル走査線L1により構成されている。第1の深さしきい値D1より深く,第2の深さしきい値D2以下(よりも浅い)の超音波画像Img2の部分Ar3は,
図1に示した超音波画像Imgと同様に,リアル走査線L1と,リアル走査線L1の間に位置する第1の補間走査線L2と,から構成されている。第2の深さしきい値D2以下(よりも浅い)の深さの超音波画像Img3の部分Ar4は,リアル走査線L1,第1の補間走査線L2および第2の補間走査線L3から構成されている。
【0099】
分かりやすくするために,第1の補間走査線L2と第2の補間走査線L3とを区別しているが,第1の補間走査線L2および第2の補間走査線L3は,いずれもリアル走査線L1の間に位置するから,第2の補間走査線L3も第1の補間走査線L2ということもできる。このことから,深さごとに決められた走査線密度となるように,深さごとに異なる密度の第1の補間走査線L2(L3)を生成することもできるし,被検体の深さに関わらず走査線密度が一定となるように第1の補間走査線L2(L3)を生成することができるようになる。
【0100】
図20は,第2の補間走査線L3の生成の方法を示すもので,
図18に対応している。
【0101】
上述のようにして得られた超音波エコー・データ71−77のほかに,第1の補間走査線L2を生成するための超音波エコー・データ80を用いて第2の補間走査線のL3のための超音波エコー・データ80Aが生成される。上述したのと同様に,第2の補間走査線L3は,整相加算装置11においてディジタル的に生成される。
【0102】
図21は,第2の補間走査線L3を生成する他の方法を示している。
【0103】
上述のようにして生成された第1の補間走査線L2のための超音波エコー・データ80をシフトすることにより,上述した第2の補間走査線L3のための超音波エコー・データ80Aが生成される。このように,すでに生成された第1の補間走査線L2を利用して第2の補間走査線L3を生成することもできる。このような超音波エコー・データ80のシフトも整相加算装置11において行うことができる。
【0104】
図22は,超音波画像生成処理手順を示すフローチャートである。
【0105】
まず,超音波プローブ6の超音波振動子から被検体に超音波が送信される(ステップ81)。被検体の観測対象位置42からの超音波エコー44が超音波プローブ6の超音波振動子において受信される(ステップ82)。つづいて,走査線密度の閾値が操作装置3を用いて設定され(ステップ83),リアル走査線L1の位置および第1の補間走査線L2(必要であれば,第2の補間走査線L3も)の位置が操作装置3を用いて設定される(ステップ84)。超音波送信前にすでに,走査線密度の閾値の設定ならびにリアル走査線L1の位置および第1の補間走査線L2(必要であれば,第2の補間走査線L3も)の位置の設定が行なわれていてもよい。
【0106】
上述したように,被検体の深さにかかわらず走査線密度が所定の閾値以上となるように,整相加算装置11(補間走査線生成手段)において,リアル走査線L1および第1の補間走査線L2が生成される(ステップ85)。たとえば,
図1に示すように,第1の深さしきい値D1までの深さについては,第1の超音波画像部分Ar1については,リアル走査線L1が生成され,第2の超音波画像部分Ar2については,リアル走査線L1と,リアル走査線L1の間に一つの第1の補間走査線L2が位置決めされ,かつ生成される。このようにして生成されたリアル走査線L1および第1の補間走査線L2を用いて超音波画像Imgが生成される(ステップ86)。
【0107】
ステップ85および86においては,
図1では2段階に分けて(深さしきい値を一つ設けて)第1の補間走査線L2を設定している場合について説明したが,深さ方向を3段階以上に分けた(深さしきい値を2つ以上設けた)場合も同じようにできる。たとえば,
図19に示すように,第1の深さしきい値D1までの第1の超音波画像部分Ar1,第1の深さしきい値D1より深く第2の深さしきい値D2までの第2の超音波画像部分Ar2,第2の深さしきい値D2より深い第3の超音波画像部分Ar3についても同様に,部分ごとに設定された密度となるように,第1の補間走査線L2,第2の補間走査線L3(必要であれば,さらに他の補間走査線)が生成されて(ステップ85に適用),超音波画像が得られる(ステップ86に適用)。
【0108】
図23は,超音波画像を生成する他の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は,走査線(リアル走査線L1,第1の補間走査線L2,第2の補間走査線L3を含む)の密度を深さごとに逐次算出し,算出された密度が所定のしきい値以下となっている場合には,所定のしきい値以上となるように補間走査線を生成するものである。
【0109】
超音波プローブ6の超音波振動子から超音波が送信され(ステップ91),超音波エコー44が超音波振動子において受信される(ステップ92)。操作装置3を用いて所望の走査線の密度が設定される(ステップ93)。つづいて,被検体の深さを表す深さ係数が0にリセットされ(ステップ94),初期のマルチ・ライン処理を行なう走査線の位置が設定される(ステップ95)。初期のマルチ・ライン処理では,リアル走査線L1が生成されることとなる。マルチ・ライン処理が行なわれ,上述のように超音波エコー・データ処理装置10においてリアル走査線L1が生成される(ステップ96)。加算された深さ係数が超音波診断装置1において生成する被検体の最終深さになっていれば(ステップ97でYES),処理は終了する。加算された深さ係数が超音波診断装置1において生成する被検体の最終深さになっていなければ(ステップ97でNO),リアル走査線L1が生成された深さの走査線密度が制御装置2において算出され(走査線密度算出手段),算出された走査線密度が,設定された走査線しきい値以下かどうかが判定される(ステップ98)。設定されたしきい値以下であれば(ステップ98でYES),走査線の密度が倍となるように,補間走査線(第1の補間走査線L2,第2の補間走査線L3)の位置が設定される(ステップ100)。マルチ・ライン処理により補間走査線(第1の補間走査線L2,第2の補間走査線L3)が生成される(ステップ96)。走査線密度が設定された深さの密度以上となるまで,ステップ96からの処理が繰り返される。設定されたしきい値の密度以上となっていれば(ステップ98でNO),次の深さでの走査線密度の算出および補間走査線の生成のために,所定の深さ分Δだけ深さ係数に加算される(ステップ99)。
【0110】
上記の処理では,深さにかかわらず,走査線密度がしきい値以上となる場合について説明したが,深さごとに異なるしきい値を設定して,深さに対応したしきい値以上の走査線密度となるように,深さごとに異なる密度の補間走査線を設定し,生成してもよい。
【0111】
図24および
図25は,さらに変形例を示すものであり,超音波画像Imgの一例である。
【0112】
図24に示す超音波画像Img2は,深さしきい値D1よりも深い位置にある超音波画像のすべての部分について補間走査線を生成するのではなく,円弧方向の第1のしきい値Cr1から第2のしきい値Cr2の間の部分Ar5の部分において補間走査線L2が生成される。このように,深さ方向で定まる画像部分だけでなく,深さ方向および円弧方向で定まる画像部分について第1の補間走査線L2(必要であれば,第2の補間走査線L3も)を生成するようにしてもよい。生成する補間走査線の数が少ないので,補間走査線の生成時間を短縮でき,超音波画像Img2の表示までの時間を短縮できる。
【0113】
また,
図25に示す超音波画像Img3は,深さしきい値D1よりも深い位置にあり,かつ深さしきい値D2より浅い位置にあり,かつ円弧方向の第1のしきい値Cr1から第2のしきい値Cr2の間の部分Ar6において補間走査線L2が生成される。このように,超音波画像Img3の一部の画像部分について補間走査線L2を生成するようにしてもよい。ユーザが関心のある領域のみをさらに詳細な超音波画像として表示できる。