特許第6419973号(P6419973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6419973
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】積層体および窓
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20181029BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20181029BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20181029BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20181029BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   G02B5/30
   E06B5/00 D
   B32B7/02 103
   G02F1/13363
   G02F1/13 101
【請求項の数】10
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2017-532525(P2017-532525)
(86)(22)【出願日】2016年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2016072044
(87)【国際公開番号】WO2017022591
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2018年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-152708(P2015-152708)
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】矢内 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/033932(WO,A1)
【文献】 特開2013−164525(JP,A)
【文献】 特開2013−92707(JP,A)
【文献】 特表2014−507676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 7/02
G02F 1/13
G02F 1/1335
G02F 1/13363
E06B 9/24
E06B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏光子と、第1のパターン光学異方性層と、第2のパターン光学異方性層と、第2の偏光子とをこの順で有し、
前記第2の偏光子と前記第2のパターン光学異方性層の間に配置された光学異方性層を含む積層体であって;
前記第1の偏光子の吸収軸と前記第2の偏光子の吸収軸のなす角度が90°±5°であり;
前記第1のパターン光学異方性層および前記第2のパターン光学異方性層はそれぞれ面内に遅相軸の方位が異なる第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有し、かつ、前記第1位相差領域の遅相軸方位と前記第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって;
前記第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、前記第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる前記第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が0°±5°であって前記第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態と、前記第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、前記第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる前記第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって前記第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態を切り替えられ;
前記第1位相差領域の遅相軸方位および前記第2位相差領域の遅相軸方位はいずれも前記2枚の偏光子の吸収軸および透過軸と平行または直交ではなく;
前記光学異方性層は、1層または2層以上であって、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRe_off(550)が240〜310nmであり、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRth_off(550)が−50〜50nmである積層体;
ここで、Re_off(550)とRth_off(550)は、前記光学異方性層の遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおける前記光学異方性層のJones Matrixから算出される値である;
前記光学異方性層のJones Matrixは、前記光学異方性層が1層である場合は下記式(ii)から算出されるJを表し、前記光学異方性層が2層以上である場合は下記式(i)から算出されるJones Matrixの積Jn*Jn−1*・・・*J2*J1を表す;
Pout=(Jn*Jn−1*・・・*J2*J1)*Pin ・・(i)
Pout=J*Pin ・・(ii)
前記式(i)および前記式(ii)中、Poutは最終偏光状態を表し、Pinは入射偏光状態を表し、Jnは前記光学異方性層が2層以上の場合のn層目のJones Matrixを表し、Jは前記光学異方性層が1層の場合の前記光学異方性層のJones Matrixを表し、nは2以上の整数を表す。
【請求項2】
前記第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)および前記第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)がそれぞれ独立に110〜135nmであり、かつ、下記式(1)を満たす請求項1に記載の積層体。
Re2(550) = Re1(550) ±10nm ・・(1)
【請求項3】
第1の偏光子と、第1のパターン光学異方性層と、第2のパターン光学異方性層と、第2の偏光子とをこの順で有し、
前記第2の偏光子と前記第2のパターン光学異方性層の間に配置された光学異方性層を含む積層体であって;
前記第1の偏光子の吸収軸と前記第2の偏光子の吸収軸のなす角度が90°±5°であり;
前記第1のパターン光学異方性層および前記第2のパターン光学異方性層は、面内に遅相軸の方位が異なり、かつ、連続的に遅相軸の方位が変化する位相差領域を3つ以上有し;
前記第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、前記第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる前記第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が45°±5°であって前記第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態と、前記第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、前記第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる前記第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって前記第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態を切り替えられ;
前記光学異方性層は、1層または2層以上であって、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRe_off(550)が240〜310nmであり、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRth_off(550)が−50〜50nmである積層体;
ここで、Re_off(550)とRth_off(550)は、前記光学異方性層の遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおける前記光学異方性層のJones Matrixから算出される値である;
前記光学異方性層のJones Matrixは、前記光学異方性層が1層である場合は下記式(ii)から算出されるJを表し、前記光学異方性層が2層以上である場合は下記式(i)から算出されるJones Matrixの積Jn*Jn−1*・・・*J2*J1を表す;
Pout=(Jn*Jn−1*・・・*J2*J1)*Pin ・・(i)
Pout=J*Pin ・・(ii)
前記式(i)および前記式(ii)中、Poutは最終偏光状態を表し、Pinは入射偏光状態を表し、Jnは前記光学異方性層が2層以上の場合のn層目のJones Matrixを表し、Jは前記光学異方性層が1層の場合の前記光学異方性層のJones Matrixを表し、nは2以上の整数を表す。
【請求項4】
前記第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)および前記第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)がそれぞれ独立に230〜270nmであり、かつ、下記式(1)を満たす請求項3に記載の積層体。
Re2(550) = Re1(550) ±10nm ・・(1)
【請求項5】
前記第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)、前記第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRth1(550)、前記第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)および前記第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRth2(550)が、下記式(1)および式(2)を満たす請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
Re2(550) = Re1(550) ±10nm ・・(1)
Rth2(550) = −Rth1(550) ±10nm ・・(2)
【請求項6】
前記第1のパターン光学異方性層と前記第2のパターン光学異方性層の組み合わせが、+Aプレートと−Aプレートの組み合わせである請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記第1のパターン光学異方性層と前記第2のパターン光学異方性層の面内方向のレターデーションReの波長分散がともに順波長分散、ともに逆波長分散またはともにフラット分散であり、
前記第1のパターン光学異方性層と前記第2のパターン光学異方性層の膜厚方向のレターデーションRthの波長分散がともに順波長分散、ともに逆波長分散またはともにフラット分散である請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記第1のパターン光学異方性層と前記第2のパターン光学異方性層の面内方向のレターデーションReの波長分散がともに順波長分散であり、
前記第1のパターン光学異方性層と前記第2のパターン光学異方性層の膜厚方向のレターデーションRthの波長分散がともに順波長分散である請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記第1のパターン光学異方性層および前記第2のパターン光学異方性層が液晶化合物を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層体を有する窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および窓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窓、部屋の隔壁などを、時間帯や用途に応じて白表示状態(透過モードとも言われる)および黒表示状態(遮光モードとも言われる)を切り替えられるようなシャッター機能を有する窓などの調光装置(調光システムとも言われる)が、プライバシー意識の高まりや外光を建物や乗り物の内部に選択的に取り入れて省エネルギー化を目指すために求められてきている。
【0003】
特許文献1には、可変的な透過装置であって、第1の偏光軸を有する第1の均一偏光子と、第2の偏光軸を有する第2の均一偏光子と、第1及び第2の偏光子の間に位置し、且つ、光軸、厚さ又は複屈折率の少なくとも1つを変化させるように構成された第1の複数の領域を含む、第1の模様付けされた波長リターダ、及び、第1及び第2の偏光子の間に位置し、且つ、光軸、厚さ又は複屈折率の少なくとも1つを変化させるように構成された第2の複数の領域を含む、第2の模様付けされた波長リターダを含み、第1又は第2の波長リターダが、同第1又は第2の波長リターダの他方に対して直線的に移動するように構成された装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014−507676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、正面方向における位相差に関する記載しかなかった。本発明者らが特許文献1に記載の装置の性能を検討したところ、正面および全方位での黒表示状態の輝度を低くできないこと、すなわち黒表示状態を観察する方位によって光漏れが多く発生する方位があることがわかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、積層体に光が入射した場合に白表示状態および黒表示状態を切り替えられ、正面および全方位での黒表示状態の輝度が低い積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した。その結果、第1の偏光子と、第1のパターン光学異方性層と、第2のパターン光学異方性層と、第2の偏光子とをこの順で有し、白表示状態と黒表示状態を切り替えられる積層体に対し、第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に特定の光学特性を有する光学異方性層を配置することで、積層体に光が入射した場合に白表示状態および黒表示状態を切り替えられ、正面および全方位での黒表示状態の輝度が低い積層体を提供できることを見出すに至った。
なお、特許文献1には、第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に特定の光学特性を有する光学異方性層を配置することは開示も示唆もされていない。
上記課題を解決するための手段である本発明および本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
【0008】
[1] 第1の偏光子と、第1のパターン光学異方性層と、第2のパターン光学異方性層と、第2の偏光子とをこの順で有し、
第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に配置された光学異方性層を含む積層体であって;
第1の偏光子の吸収軸と第2の偏光子の吸収軸のなす角度が90°±5°であり;
第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層はそれぞれ面内に遅相軸の方位が異なる第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有し、かつ、第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって;
第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が0°±5°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態を切り替えられ;
第1位相差領域の遅相軸方位および第2位相差領域の遅相軸方位はいずれも2枚の偏光子の吸収軸および透過軸と平行または直交ではなく;
光学異方性層は、1層または2層以上であって、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRe_off(550)が240〜310nmであり、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRth_off(550)が−50〜50nmである積層体;
ここで、Re_off(550)とRth_off(550)は、光学異方性層の遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおける光学異方性層のJones Matrixから算出される値である;
光学異方性層のJones Matrixは、光学異方性層が1層である場合は下記式(ii)から算出されるJを表し、光学異方性層が2層以上である場合は下記式(i)から算出されるJones Matrixの積Jn*Jn−1*・・・*J2*J1を表す;
Pout=(Jn*Jn−1*・・・*J2*J1)*Pin ・・(i)
Pout=J*Pin ・・(ii)
式(i)および式(ii)中、Poutは最終偏光状態を表し、Pinは入射偏光状態を表し、Jnは光学異方性層が2層以上の場合のn層目のJones Matrixを表し、Jは光学異方性層が1層の場合の光学異方性層のJones Matrixを表し、nは2以上の整数を表す。
[2] [1]に記載の積層体は、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)および第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)がそれぞれ独立に110〜135nmであり、かつ、下記式(1)を満たすことが好ましい。
Re2(550) = Re1(550) ±10nm ・・(1)
[3] 第1の偏光子と、第1のパターン光学異方性層と、第2のパターン光学異方性層と、第2の偏光子とをこの順で有し、
第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に配置された光学異方性層を含む積層体であって;
第1の偏光子の吸収軸と第2の偏光子の吸収軸のなす角度が90°±5°であり;
第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層は、面内に遅相軸の方位が異なり、かつ、連続的に遅相軸の方位が変化する位相差領域を3つ以上有し;
第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が45°±5°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態を切り替えられ;
光学異方性層は、1層または2層以上であって、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRe_off(550)が240〜310nmであり、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRth_off(550)が−50〜50nmである積層体;
ここで、Re_off(550)とRth_off(550)は、光学異方性層の遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおける光学異方性層のJones Matrixから算出される値である;
光学異方性層のJones Matrixは、光学異方性層が1層である場合は下記式(ii)から算出されるJを表し、光学異方性層が2層以上である場合は下記式(i)から算出されるJones Matrixの積Jn*Jn−1*・・・*J2*J1を表す;
Pout=(Jn*Jn−1*・・・*J2*J1)*Pin ・・(i)
Pout=J*Pin ・・(ii)
式(i)および式(ii)中、Poutは最終偏光状態を表し、Pinは入射偏光状態を表し、Jnは光学異方性層が2層以上の場合のn層目のJones Matrixを表し、Jは光学異方性層が1層の場合の光学異方性層のJones Matrixを表し、nは2以上の整数を表す。
[4] [3]に記載の積層体は、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)および第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)がそれぞれ独立に230〜270nmであり、かつ、下記式(1)を満たすことが好ましい。
Re2(550) = Re1(550) ±10nm ・・(1)
[5] [1]〜[4]のいずれか一つに記載の積層体は、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRth1(550)、第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)および第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRth2(550)が、下記式(1)および式(2)を満たすことが好ましい。
Re2(550) = Re1(550) ±10nm ・・(1)
Rth2(550) = −Rth1(550) ±10nm ・・(2)
[6] [1]〜[5]のいずれか一つに記載の積層体は、第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の組み合わせが、+Aプレートと−Aプレートの組み合わせであることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一つに記載の積層体は、第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の面内方向のレターデーションReの波長分散がともに順波長分散、ともに逆波長分散またはともにフラット分散であり、
第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の膜厚方向のレターデーションRthの波長分散がともに順波長分散、ともに逆波長分散またはともにフラット分散であることが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一つに記載の積層体は、第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の面内方向のレターデーションReの波長分散がともに順波長分散であり、
第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の膜厚方向のレターデーションRthの波長分散がともに順波長分散であることが好ましい。
[9] [1]〜[8]のいずれか一つに記載の積層体は、第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層が液晶化合物を含むことが好ましい。
[10] [1]〜[9]のいずれか一つに記載の積層体を有する窓。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層体に光が入射した場合に白表示状態および黒表示状態を切り替えられ、正面および全方位での黒表示状態の輝度が低い積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の積層体の第1の態様の一例に関する分解斜視図である。
図2図2は、本発明の積層体の第2の態様の一例に関する分解斜視図である。
図3図3は、積層体の正面方向と、斜めon−axis方向と、斜めoff−axis方向を説明する模式図である。
図4図4は、光学異方性層を有さない積層体の一例の分解斜視図である。
図5図5は、光学異方性層を有さない積層体の一例が、斜めoff−axisでの黒表示状態の輝度が低くならない理由の一例をポアンカレ球の上で説明する模式図である。
図6図6は、光学異方性層を有さない積層体の一例が、斜めoff−axisでの黒表示状態の輝度が低くならない理由の他の一例をポアンカレ球の上で説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、および厚さ方向のレターデーションを表す。単位はいずれもnmである。Re(λ)はKOBRA 21ADH、またはWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定に用いる波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する光学異方性層中の円盤状液晶分子の配向層側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、またはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、またはWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、および入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、および式(B)よりRthを算出することもできる。
【0013】
【数1】
【0014】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方位の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nxおよびnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・式(B)
【0015】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前述のRe(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、またはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値および入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種類の光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0016】
後述のRe_off(550)およびRth_off(550)は、以下の方法で測定することができる。
測定装置は、特に限定されないが、例えばAxometry(Axometrics.Inc)を用いることができる。
上記測定装置で検出される光学異方性層の遅相軸方位を基準に、光学異方性層を含むフィルムを方位角方向に45°回転させて、極角60°から波長550nmにおける光学異方性層のJones Matrix(以下JM)を測定する。
光学異方性層のJMより、ポアンカレ球における回転量と回転中心が分かる。つまり、後述の入射偏光状態Pinと最終偏光状態Poutは、Pout=JM*Pinの関係をもつ。光学異方性層が2層以上の場合は、後述の方法で光学異方性層のJones Matrixを決定し、つぎに、光学異方性層のJMと等価な光学特性を有する1層の光学異方性層を仮定する。
光学異方性層が1層の場合のポアンカレ球における回転中心、あるいは、光学異方性層が2層以上の場合は上記の仮定の1層の光学異方性層のポアンカレ球における回転中心は、ストークスパラメーター1(0,90度の直線偏光成分)S1とストークスパラメーター2(45,135度の直線偏光成分)S2のなす平面上(ポアンカレ球における赤道上)に必ずある。Pinを測定角度(本明細書の場合、光学異方性層の遅相軸方位を基準に、極角60°、方位角45°)における直線偏光と仮定すると、Poutにするために必要な回転量が分かる。
この回転量は測定角度におけるレターデーションに対応する。Fundamentals of Polarized Light: A Statistical Optics Approach等に記載の方法により、光学異方性層のRe_off、Rth_offを求めることができる。
【0017】
本明細書において、偏光子または偏光板の「吸収軸」と「透過軸」とは、互いに90°の角度をなす方向を意味する。
本明細書において、位相差フィルム等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。
また、本明細書において、位相差領域、位相差フィルム、および液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、および定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲および性質を示していると解釈されるものとする。
また、本明細書で「正面」とは、表示面に対する法線方向を意味する。
本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、±5°以下であることが好ましく、±3°以下であることがより好ましい。
【0018】
円盤状液晶化合物の垂直配向とは、円盤状液晶化合物の平面が支持体に対して極角0度の状態で配向することを意味する。垂直配向している円盤状液晶化合物のダイレクタの方向は、支持体に対して平行方向である。
円盤状液晶化合物の水平配向とは、円盤状液晶化合物の平面が支持体に対して平行の状態で配向することを意味する。水平配向している円盤状液晶化合物のダイレクタの方向は、支持体に対して垂直方向である。
少なくとも2枚のパターン光学異方性層が円盤状液晶化合物の垂直配向で形成される場合、その角度はプラスマイナス15度の幅で揺らいでいてもよい。本発明における配向状態は、Axo Scan(OPMF−1、Axometrics社製)を用いて確認することができる。
【0019】
[積層体]
本発明の積層体の第1の態様は、第1の偏光子と、第1のパターン光学異方性層と、第2のパターン光学異方性層と、第2の偏光子とをこの順で有し、
第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に配置された光学異方性層を含む積層体であって;
第1の偏光子の吸収軸と第2の偏光子の吸収軸のなす角度が90°±5°であり;
第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層はそれぞれ面内に遅相軸の方位が異なる第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有し、かつ、第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって;
第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が0°±5°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態を切り替えられ;
第1位相差領域の遅相軸方位および第2位相差領域の遅相軸方位はいずれも2枚の偏光子の吸収軸および透過軸と平行または直交ではなく;
光学異方性層は、1層または2層以上であって、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRe_off(550)が240〜310nmであり、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRth_off(550)が−50〜50nmである積層体;
ここで、Re_off(550)とRth_off(550)は、光学異方性層の遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおける光学異方性層のJones Matrixから算出される値である;
光学異方性層のJones Matrixは、光学異方性層が1層である場合は下記式(ii)から算出されるJを表し、光学異方性層が2層以上である場合は下記式(i)から算出されるJones Matrixの積Jn*Jn−1*・・・*J2*J1を表す;
Pout=(Jn*Jn−1*・・・*J2*J1)*Pin ・・(i)
Pout=J*Pin ・・(ii)
式(i)および式(ii)中、Poutは最終偏光状態を表し、Pinは入射偏光状態を表し、Jnは光学異方性層が2層以上の場合のn層目のJones Matrixを表し、Jは光学異方性層が1層の場合の光学異方性層のJones Matrixを表し、nは2以上の整数を表す。
【0020】
本発明の積層体の第2の態様は、第1の偏光子と、第1のパターン光学異方性層と、第2のパターン光学異方性層と、第2の偏光子とをこの順で有し、
第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に配置された光学異方性層を含む積層体であって;
第1の偏光子の吸収軸と第2の偏光子の吸収軸のなす角度が90°±5°であり;
第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層は、面内に遅相軸の方位が異なり、かつ、連続的に遅相軸の方位が変化する位相差領域を3つ以上有し;
第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が45°±5°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態を切り替えられ;
光学異方性層は、1層でも2層以上でもよく、波長550nmにおけるRe_off(550)が240〜310nm、Rth_off(550)が−50〜50nmである。
【0021】
本発明の積層体の第1の態様および本発明の積層体の第2の態様に共通する事項については、まとめて本発明の積層体として説明する。
これらの本発明の積層体の構成により、本発明の積層体は、積層体に光が入射した場合に白表示状態および黒表示状態を切り替えられ、正面および全方位での黒表示状態の輝度が低い。ここで、図3は、積層体の正面方向と、斜めon−axis方向と、斜めoff−axis方向を説明する模式図である。正面および全方位での黒表示状態の輝度が低いとは、積層体に光が入射した場合に積層体の正面方向1から観察した場合の黒表示状態の輝度が低く、積層体の斜めon−axis方向2(方位角0°、90°、180°、270°)から観察した場合の黒表示状態の輝度が低く、積層体の斜めoff−axis方向3(方位角が0°、90°、180°、270°のいずれでもない場合)から観察した場合の黒表示状態の輝度が低いことを意味する。
本発明の積層体は、各パターン光学異方性層を移動させて、パターン光学異方性層の位相差領域の積層の組み合わせを変えることができる。これにより少なくとも2枚のパターン光学異方性層の位相差(または旋光性)の総和が変化し、積層体の一方の偏光子から入射してもう一方の偏光子から出射する光の透過率を制御することができる。
【0022】
<構成>
図1および図2に、本発明の積層体の一例の分解斜視図を示す。図1および図2に示した本発明の積層体の一例は、第1の偏光子12と、第1のパターン光学異方性層15と、第2のパターン光学異方性層16と、第2の偏光子13とをこの順で有し、第2の偏光子13と第2のパターン光学異方性層16の間に配置された光学異方性層17を含む。
図1および図2に示した本発明の積層体の一例は、第1の偏光子の吸収軸12Aと第2の偏光子の吸収軸13Aのなす角度が90°±5°である。
本発明の積層体は、光学異方性層17が第2の偏光子13と第2のパターン光学異方性層16の間に配置されることで、光学異方性層17を第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16の間に配置した場合に比べ、斜めoff−axis方向の補償をできて光漏れを抑制でき、全方位での黒表示状態の輝度を低くできる。
なお、本発明の積層体は、第1の偏光子と第2の偏光子のいずれが視認側であってもよい。そのため、光学異方性層は第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に配置されているが、光学異方性層が第1の偏光子と第1のパターン光学異方性層の間に配置された態様も実質的に本発明の積層体に含まれる。
【0023】
なお、分解斜視図中の層の位置および/または大きさの相対的関係は、実際の相対的関係を反映しているわけではない。いずれの図についても同様である。
【0024】
本発明の趣旨に反しない限りにおいて、本発明の積層体は、各部材の間に、不図示の支持体、不図示の配向膜、不図示の接着剤層や粘着層などを有していてもよい。粘着剤については特に制限はなく、接着剤を用いてもよい。使用可能な粘着剤の例には、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが含まれる。
【0025】
(第1の態様の構成)
図1は、本発明の積層体の第1の態様の一例に関する分解斜視図である。
図1に示す本発明の積層体の第1の態様の一例では、第1のパターン光学異方性層15および第2のパターン光学異方性層16はそれぞれ面内に遅相軸の方位が異なる第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有し、かつ、第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°である。図1では、第1のパターン光学異方性層15は、第1のパターン光学異方性層の遅相軸方位15Aが互いに異なるストライプ形状の第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有しており、第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°となっている。同様に、第2のパターン光学異方性層16は、第2のパターン光学異方性層の遅相軸方位16Aが互いに異なるストライプ形状の第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有しており、第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°となっている。第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域のそれぞれの個数(繰り返し数)は、特に限定されないが、1〜1000個であることが好ましく、2〜100個であることがより好ましく、3〜50個であることが特に好ましい。
図1に示す本発明の積層体の第1の態様の一例では、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が0°±5°であって第1の偏光子12に入射した光が第2の偏光子13から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態にすることができる。例えば、図1において、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の幅を同じとする。この場合、第1のパターン光学異方性層15の紙面の左端の第1位相差領域の遅相軸に第2のパターン光学異方性層16の紙面の左端の第1位相差領域の遅相軸を重ねた場合に、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が0°±5°となる。
また、図1に示す本発明の積層体の第1の態様の一例では、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって第1の偏光子12に入射した光が第2の偏光子13から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態に切り替えることができる。例えば、図1において、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の幅を同じとする。この場合、第1のパターン光学異方性層15の紙面の左端の第1位相差領域の遅相軸に第2のパターン光学異方性層16の紙面の左端から2番目の第2位相差領域の遅相軸を重ねた場合に、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°となる。このような白表示状態と黒表示状態の切り替えは、いずれか一方のパターン光学異方性層を、パターン光学異方性層の位相差領域の幅だけスライドさせる操作により実施することが好ましい。本発明の積層体は、このようなスライド機構を備えていてもよい。例えば、図1において、第1のパターン光学異方性層15の第1位相差領域の幅だけスライド移動できる機構(不図示)を設けることが好ましい。
図1に示す本発明の積層体の第1の態様の一例では、第1位相差領域の遅相軸方位および第2位相差領域の遅相軸方位はいずれも2枚の偏光子の吸収軸(例えば、第1の偏光子の吸収軸12Aおよび第2の偏光子の吸収軸13A)および透過軸(例えば、不図示の第1の偏光子の透過軸および第1の偏光子の透過軸13B)と平行または直交ではない。第1の(または第2の)パターン光学異方性層の各位相差領域の面内の遅相軸方位と、第1の(または第2の)偏光子の吸収軸との関係は、互いに±35°〜±55°になっていることが好ましく、±40°〜±45°になっていることがより好ましく、互いに±45°になっていることが特に好ましい。
【0026】
図4は、光学異方性層を有さない積層体の一例の分解斜視図である。第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に特定の光学特性を有する光学異方性層を設けない場合、すなわち図4の構成の積層体の場合は、本発明の積層体に比較して、黒表示状態を図3における斜めoff−axis方向3から観察する場合の光漏れが大きい。図5は、光学異方性層を有さない積層体の一例(例えば図4の構成の積層体)が、斜めoff−axisでの黒表示状態の輝度が低くならない理由の一例をポアンカレ球の上で説明する模式図である。図5は、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16がそれぞれ順波長分散の+Aプレートと順波長分散の+Aプレートである場合に、黒表示状態を図3における斜めoff−axis方向3から観察した例である。図5では、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のRthが同じ符号、波長分散が同じ、Rthの絶対値を同じにしても回転軸は同じであるが回転量が異なるために、第2の偏光子の透過軸13Bから入射した光(紙面の左から順に赤色光、緑色光、青色光を表している)は第1の偏光子の吸収軸12Aには完全には戻らず、光漏れが多い。図6は、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16がそれぞれ順波長分散の+Aプレートと順波長分散の−Aプレートである場合に、例えば図4の構成の積層体の黒表示状態を図3における斜めoff−axis方向3から観察した例である。図6では、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のRthが異なる符号、波長分散が同じ、Rthの絶対値を同じにしても回転軸および回転量が同じであるが、第2の偏光子の透過軸13Bから入射した光(図5および図6中、紙面の左から順に赤色光R、緑色光G、青色光Bを表している)は、消光点である第1の偏光子の吸収軸12Aには未到達であることがわかる。図5および図6中、S1はストークスパラメーター1(0,90度の直線偏光成分)、S2はストークスパラメーター2(45,135度の直線偏光成分)、S3はストークスパラメーター3(円偏光成分)を表す。
これに対し、本発明の積層体では、第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に特定の光学特性を有する光学異方性層を含むことで、図6における第1の偏光子の吸収軸12Aへ戻る破線の矢印で示した偏光板補償をし、黒表示状態を図3における斜めoff−axis方向3から観察した場合の光漏れを小さくできるため、正面および全方位での黒表示状態の輝度が低い積層体となる。なお、以上は本発明の第1の態様において説明したが、本発明の第2の態様においても同様である。
【0027】
本発明の積層体は、白表示状態の色味が良好であることが好ましく、正面および全方位での白表示状態の色味が良好であることがより好ましい。また、本発明の積層体は、黒表示状態の色味が良好であることが好ましく、正面および全方位での黒表示状態の色味が良好であることがより好ましい。本発明者らが検討をした結果、特表2014−507676号公報の構成では、正面での白表示状態および黒表示状態の色味付きが生じる問題もあることがわかった。さらに、正面および全方位での黒表示状態の輝度を低くしようとすると、正面での白表示状態および黒表示状態の色味が悪化してしまい、正面での白表示状態および黒表示状態の色味と正面および全方位での黒表示状態の輝度を同時に解決することが難しいことがわかった。そこで、以下の検討を行い、正面での白表示状態および黒表示状態の色味と正面および全方位での黒表示状態の輝度を同時に解決できることを見出すに至った。
本発明の積層体の第1の態様の白表示状態を図3における正面方向1から観察すると、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReがともに逆波長分散であると、第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層が広い波長帯域においてλ/4板の機能を奏するため、白表示状態の色味の観点からは好ましいと予想された。また、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReが逆波長分散と順波長分散の組み合わせであると、特に青色光などの短波長の光がポアンカレ球上での赤道を超えてしまうために白表示状態の色味がやや黄色となり、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReが順波長分散と順波長分散の組み合わせであると白表示状態の色味がさらに黄色になると予想された。この白表示状態を図3における正面方向1から観察する場合の色味変化の傾向は、本発明の積層体の白表示状態を図3における斜めon−axis方向2から観察する場合も、斜めoff−axis方向3から観察する場合も同様であると予想された。
本発明の積層体の第1の態様の黒表示状態を図3における正面方向1から観察する。この場合、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReの絶対値が同程度であり、かつ、λ/4板(4分の1波長板の略称)の機能を奏する程度のReであると、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°にして黒表示状態にした場合の第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率の最小値を小さくしやすい。
一方、本発明の積層体の第1の態様の黒表示状態を図3における正面方向1から観察すると、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReがともに順波長分散、ともに逆波長分散またはともにフラット分散であると、黒表示状態の色味の観点からは好ましいと予想された。また、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReが逆波長分散と順波長分散の組み合わせであると、特に青色光などの短波長の光がポアンカレ球上での赤道に戻りきらず、黒表示状態の色味が青色となると予想された。なお、この黒表示状態を図3における正面方向1から観察する場合の色味変化の傾向は、本発明の積層体の黒表示状態を図3における斜めon−axis方向2から観察する場合も同様であると予想される(後述の実施例では黒表示状態を図3における斜めon−axis方向2から観察する場合の色味は検討していない)。
さらに、本発明の積層体の第1の態様の黒表示状態を図3における斜めon−axis方向2から観察すると、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のRthがともに同じ符号であると、波長分散を同じにしてRthの絶対値を同じにしても回転軸が異なるために完全にはポアンカレ球上での赤道に戻らず青色となり、光漏れも多い。これに対し、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16の波長分散が同じで、Rthが絶対値が同じで、Rthの符号が逆であると、回転軸が原点対称となるため完全にポアンカレ球上での赤道に戻り、色味が良好となり、光漏れも小さくできる。本発明の積層体の第1の態様の黒表示状態を図3における斜めoff−axis方向3から観察する場合も、偏光板補償の光学異方性層を用いる前提で、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16の波長分散が同じで、Rthが絶対値が同じで、Rthの符号が逆であることが好ましい。
【0028】
一般に外光を取り入れたい場合の白表示状態の色味よりも積極的に遮光したい場合の黒表示状態の色味の方が窓などの用途では重要と考えられる。そのため、本発明の積層体の第1の態様では、白表示状態の色味が黄色になることをReの絶対値を通常のλ/4板よりも小さく設計することで抑制し、正面での黒表示状態の色味と斜め方向からの光漏れを抑制することが、正面での白表示状態および黒表示状態の色味が良好であり、正面および全方位での黒表示状態の輝度が低い積層体にしやすくなる観点から好ましい。Reの絶対値を通常のλ/4板よりも小さく設計すると白表示状態の透過率を下げることになるが、白表示状態の透過率を高くすることは調光をする場合に求められないことが多い。以上を踏まえると、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16が、順波長分散の+Aプレート(例えば棒状液晶化合物)と順波長分散の−Aプレート(例えば円盤状液晶化合物)の組み合わせが好ましい。なお、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReとRthの好ましい範囲については後述する。
【0029】
(第2の態様の構成)
図2は、本発明の積層体の第2の態様の一例に関する分解斜視図である。
図2に示す本発明の積層体の第2の態様の一例では、第1のパターン光学異方性層15および第2のパターン光学異方性層16は、面内に遅相軸の方位が異なり、かつ、連続的に遅相軸の方位が変化する位相差領域を3つ以上有する。遅相軸の方位が異なり、かつ、連続的に遅相軸の方位が変化する位相差領域の個数は、位相差領域の区切り方によって異なるために特に限定されないが、3〜1000個であることが好ましく、5〜100個であることがより好ましく、10〜50個であることが特に好ましい。
図2に示す本発明の積層体の第2の態様の一例では、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が45°±5°であって第1の偏光子12に入射した光が第2の偏光子13から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態にすることができる。なお、本発明の積層体の第2の態様で第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が0°±5°にすると、前面が白表示状態にならず、第1の偏光子の吸収軸12Aまたは第2の偏光子の吸収軸13Aと一致する領域のみが黒表示になってしまう。
図2に示す本発明の積層体の第2の態様の一例では、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°であって第1の偏光子12に入射した光が第2の偏光子13から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態に切り替えることができる。例えば、図2において、第1のパターン光学異方性層15の紙面の左端から3番目の第1位相差領域の遅相軸に第2のパターン光学異方性層16の紙面の左端から1番目の第2位相差領域の遅相軸を重ねた場合に、第1のパターン光学異方性層15の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層16の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°となる。このような白表示状態と黒表示状態の切り替えは、いずれか一方のパターン光学異方性層を、白表示状態と黒表示状態の切り替えができる幅だけスライドさせる操作により実施することが好ましい。本発明の積層体の第2の態様が有することが好ましいスライド機構は、本発明の積層体の第1の態様が有することが好ましいスライド機構と同じ構成としてもよい。
【0030】
本発明の積層体の第1の態様の白表示状態を図3における正面方向1から観察する。この場合、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReの絶対値が同程度であり、かつ、λ/2板(2分の1波長板の略称)の機能を奏する程度のReであると、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が45°±5°にして白表示状態にした場合の第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率の最大値を大きくしやすい。
本発明の積層体の第2の態様の黒表示状態を図3における正面方向1から観察する場合、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReの絶対値が同程度であり、かつ、λ/2板の機能を奏する程度のReであると、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°にして黒表示状態にした場合の第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率の最小値を小さくしやすい(位相差キャンセル)。
本発明の積層体の第1の態様と本発明の積層体の第2の態様の好ましい態様は、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16のReの絶対値の好ましい範囲が異なる。ただし、Reの絶対値の変更は、ポアンカレ球上では、移動量の違いに相当するため、黒表示状態の色味や光漏れを改善するための設計は本発明の積層体の第1の態様と本発明の積層体の第2の態様で同じである。すなわち、偏光板補償の光学異方性層を用いる前提で、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16の波長分散が同じで、Rthが絶対値が同じで、Rthの符号が逆であることが好ましい。例えば、第1のパターン光学異方性層15と第2のパターン光学異方性層16が、順波長分散の+Aプレート(例えば棒状液晶化合物)と順波長分散の−Aプレート(例えば円盤状液晶化合物)の組み合わせが好ましい。
本発明の積層体の第1の態様と同様の理由で、本発明の積層体の第2の態様では、白表示状態の色味が黄色になることをReの絶対値を通常のλ/2板よりも小さく設計することで抑制し、正面での黒表示状態の色味と斜め方向からの光漏れを抑制することが、正面での白表示状態および黒表示状態の色味が良好であり、正面および全方位での黒表示状態の輝度が低い積層体にしやすくなる観点から好ましい。
【0031】
<第1の偏光子、第2の偏光子>
本発明の積層体は、第1の偏光子と第2の偏光子を有する。第1の偏光子と第2の偏光子に共通する構成については、偏光子としてまとめて説明する。
本発明の積層体が有する偏光子についても特に制限はない。従来使用されている直線偏光子を広く利用することができる。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光子、UV(ultraviolet)吸収で偏光化する素材を用いた偏光子があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光子の製造方法は、例えば、特開2011−128584号公報の記載を参酌することができる。また、偏光子は、塗布によって形成される層であってもよい。
UV吸収で偏光化する素材を用いた偏光子としては、UV吸収によって偏光度と濃度が同時に高くなる素材を用いてもよい。このようなUV吸収で偏光化する素材を用いた偏光子を第1の偏光子または第2の偏光子として用いることで、本発明の積層体がUV吸収した場合に第1の偏光子または第2の偏光子が偏光能を発揮し、黒表示状態に切り替えることができる。本発明の積層体には、UV吸収で偏光化する素材を用いた偏光子を第1の偏光子または第2の偏光子として有する態様も含まれる。すなわち、本発明における第1の偏光子または第2の偏光子は、偏光能を常に発揮していなくてもよく、必要に応じて偏光能を発揮できればよい。UV吸収で偏光化する素材を用いた偏光子としては、例えばトランジションズ オプティカル社製の偏光レンズなどを挙げることができる。
【0032】
本発明の積層体では、偏光子は、面内に一様に形成されていることが好ましい。すなわち、偏光子がパターニングされていないことが好ましい。偏光子は、吸収軸がいずれも面内で同じ方位にあることが好ましく、透過軸がいずれも面内で同じ方位にあることが好ましい。
【0033】
また、一方の偏光板の偏光子の吸収軸は、パターン光学異方性層のストライプと直交し、他方の偏光板の偏光子の吸収軸はパターン光学異方性層のストライプと平行となるように設定することが好ましい。
【0034】
<偏光板保護フィルム>
本発明の積層体は、偏光子の少なくとも一方の表面上に、偏光子を保護するための偏光板保護フィルムを有していてもよい。また偏光子が塗布によって形成される層である態様では、偏光板保護フィルムが、偏光子の支持体として利用されていてもよい。偏光板保護フィルムは、パターン光学異方性層の支持体として利用されてもよい。偏光板保護フィルムとしては、特に制限はなく、種々の高分子材料(重合体及び樹脂の双方を含む意味で用いる)を主成分として含む高分子フィルムを用いることができる。光透過性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れる重合体や樹脂を主成分とするフィルムが好ましい。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又はこれらのポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0035】
偏光板保護フィルムとしては、セルロースアシレート、環状オレフィン、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及びポリカーボネート樹脂から選択される少なくとも1種類を主成分として含むフィルムを用いるのが好ましい。
【0036】
また、市販品を用いてもよく、例えば、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等を用いることができる。また、種々の市販のセルロースアシレートフィルムを用いることもできる。
【0037】
また、偏光板保護フィルムとしては、溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれの方法で製膜されたフィルムも用いることもできる。フィルムの厚みは、10〜1000μmであることが好ましく、40〜500μmであることがより好ましく、40〜200μmであることが特に好ましい。
【0038】
偏光板保護フィルムの光学特性については特に制限はない。斜め方向から観察した際の光漏れの軽減の観点では、光学等方性のフィルムであるのが好ましいが、ただし、この態様に限定されるものではない。具体的には、Re(550)が0〜10nmであり、且つRthの絶対値が20nm以下のフィルムが好ましい。
【0039】
本発明の積層体は、太陽光に起因する劣化を防止するため、いずれかの層が、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、いずれの層中に添加されていてもよい。一例は、偏光板保護フィルムが紫外線吸収剤を含む態様である。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ光透過性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。特に、波長370nmでの透過率が、20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。このような紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、上記のような紫外線吸収性基を含有する高分子紫外線吸収化合物等があげられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤は2種類以上用いてもよい。
【0040】
溶液製膜法で紫外線吸収剤含有フィルムを製造する場合は、紫外線吸収剤を主成分ポリマーの溶液であるドープに添加するが、紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に溶解してから添加してもよいし、また直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒と主成分ポリマー中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
なお、セルロースアシレートフィルムについては、特に、紫外線吸収剤を添加して、耐光性を改善するのが好ましい。
【0041】
紫外線吸収剤の使用量は、偏光板保護フィルムの主成分100質量部に対し0.1〜5.0質量部、好ましくは0.5〜2.0質量部、より好ましくは0.8〜2.0質量部である。
【0042】
偏光子の偏光度を波長430nmの光を入射した際に99.8%以下にすることが好ましい。この偏光度を示す偏光子は、通常の偏光板作製工程において、ヨウ素染色量を低減させるか、ポリビニルアルコールの総合延伸倍率を低減させる等により作製することができる。また、光透過性基板や、所望により使用される偏光板保護フィルムとして、フィルム単板での透過率が90%以上の光学特性を示すものを使用することが好ましい。
【0043】
<パターン光学異方性層>
本発明の積層体は、第1の偏光子と、第1のパターン光学異方性層と、第2のパターン光学異方性層と、第2の偏光子とをこの順で有する。
第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層に共通する事項については、パターン光学異方性層としてまとめて説明することがある。また、本発明の積層体の第1の態様におけるパターン光学異方性層の第1位相差領域および第2位相差領域、ならびに、本発明の積層体の第2の態様におけるパターン光学異方性層の各位相差領域を、各位相差領域としてまとめて説明することがある。
本発明の積層体に含まれるパターン光学異方性層を3層以上とすることで調光を段階的に変えることができるが、白表示状態での透過率を高める観点から本発明の積層体に含まれるパターン光学異方性層を2枚とすることが好ましい。
【0044】
(光学特性)
本発明の積層体は、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRth1(550)、第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)および第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRth2(550)が、下記式(1)および式(2)を満たすことが好ましい。
Re2(550) = Re1(550) ±10nm ・・(1)
Rth2(550) = −Rth1(550) ±10nm ・・(2)
本発明の積層体は、さらに、下記式(1A)を満たすことがより好ましく、下記式(1B)を満たすことが特に好ましい。
Re2(550) = Re1(550) ±5nm ・・(1A)
Re2(550) = Re1(550) ±3nm ・・(1B)
本発明の積層体は、さらに、下記式(2A)を満たすことがより好ましく、下記式(2B)を満たすことが特に好ましい。
Rth2(550) = −Rth1(550) ±5nm ・・(2A)
Rth2(550) = −Rth1(550) ±3nm ・・(2B)
【0045】
本発明の積層体は、第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の組み合わせが、+Aプレートと−Aプレートの組み合わせであることが好ましい。
【0046】
本発明の積層体は、第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の面内方向のレターデーションReの波長分散がともに順波長分散、ともに逆波長分散またはともにフラット分散であり、第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の膜厚方向のレターデーションRthの波長分散がともに順波長分散、ともに逆波長分散またはともにフラット分散であることが好ましい。
本発明の積層体は、第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の面内方向のレターデーションReの波長分散がともに順波長分散であり、第1のパターン光学異方性層と第2のパターン光学異方性層の膜厚方向のレターデーションRthの波長分散がともに順波長分散であることがより好ましい。
【0047】
第1のパターン光学異方性層の面内方向のレターデーションReの波長分散は、Re1(450)/Re1(550)が1.04〜1.20であることが好ましく、1.06〜1.15であることがより好ましく、1.08〜1.12であることが特に好ましい。
Re1(630)/Re1(550)が0.85〜0.98であることが好ましく、0.88〜0.97であることがより好ましく、0.90〜0.96であることが特に好ましい。
第1のパターン光学異方性層の膜厚方向のレターデーションRthの波長分散は、Rth1(450)/Rth1(550)が1.04〜1.20であることが好ましく、1.06〜1.15であることがより好ましく、1.08〜1.12であることが特に好ましい。
Rth1(630)/Rth1(550)が0.85〜0.98であることが好ましく、0.88〜0.97であることがより好ましく、0.90〜0.96であることが特に好ましい。
【0048】
第2のパターン光学異方性層の面内方向のレターデーションReの波長分散は、Re2(450)/Re2(550)が1.04〜1.20であることが好ましく、1.06〜1.15であることがより好ましく、1.08〜1.12であることが特に好ましい。
Re2(630)/Re2(550)が0.85〜0.98であることが好ましく、0.88〜0.97であることがより好ましく、0.90〜0.96であることが特に好ましい。
第2のパターン光学異方性層の膜厚方向のレターデーションRthの波長分散は、Rth2(450)/Rth2(550)が1.04〜1.20であることが好ましく、1.06〜1.15であることがより好ましく、1.08〜1.12であることが特に好ましい。
Rth2(630)/Rth2(550)が0.85〜0.98であることが好ましく、0.88〜0.97であることがより好ましく、0.90〜0.96であることが特に好ましい。
【0049】
本発明の積層体は、第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層が液晶化合物を含むことが好ましい。第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層に用いられる液晶化合物については後述する。
【0050】
(第1の態様における第1のパターン光学異方性層、第2のパターン光学異方性層)
本発明の積層体の第1の態様における第1のパターン光学異方性層15と、第2のパターン光学異方性層16の一例は、それぞれ面内に遅相軸の方位が異なる第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有し、かつ、第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°±5°である。
【0051】
例えば、第1位相差領域及び第2位相差領域が、面内の任意の方向において幅Lが1mm〜50mmのパターンで面内に配置されたパターン光学異方性層であることが好ましい。
【0052】
位相差領域の幅は、第1位相差領域と第2位相差領域の境界である境界部で隣接する2つの境界部間の距離を示している。ここで、境界部間の距離は、1つの位相差領域の一方の端の膜の厚み方向の平均面と、隣接する位相差領域の前述の位相差領域に近い側の端の膜の厚み方向の平均面の間の最短距離をいう。ここで、平均面とは、位相差領域の端の厚み方向の面が凸凹な面となっている場合に、凸凹面を平坦な平面と仮定したときの、基準面をいう。
Lは1mm〜50mmであるのが好ましい。Lがこの範囲であると、調光機能の観点で好ましい。各位相差領域の幅Lは、5mm以上であることが第1位相差領域と第2位相差領域の間の境界における遅相軸のずれをブラインドする効果を考えるとよく、一方で大き過ぎない方が遮光モードと透過モードを切り替える際に第1のパターン光学異方性層15または第2のパターン光学異方性層16を各位相差領域の幅だけ動かすためのデッドスペースが増えなくてよい。
【0053】
L1は、境界部の幅を意味する。境界部の幅は、1つの位相差領域の一方の端の厚み方向の平均面と、この位相差領域と隣接する位相差領域の前述の位相差領域に近い側の端の厚み方向の平均面の間の最短距離をいう。本発明では、隣接する2つの境界部間の距離(位相差領域の幅)Lと、この境界部の幅L1が下記式(a)を満たすことが好ましい。
式(a) 100≦L/L1≦5,000
さらには、200≦L/L1≦5,000であることが好ましく、400≦L/L1≦5,000であることがより好ましく、500≦L/L1≦5,000であることがさらに好ましい。
【0054】
第1位相差領域と第2位相差領域は、互いに、等しい形状であるのが好ましい。また、それぞれの配置は、均等であることが好ましい。本実施形態におけるパターン光学異方性層は、第1位相差領域および第2位相差領域が、それぞれ、この順にストライプ形状に交互に配置された構造となっているが、ストライプ形状に限るものではない。また、本実施形態では、ストライプは、フィルムの長手方向に形成されていてもよいし、長手方向に垂直な方向に形成されていてもよい。
【0055】
本発明の積層体の第1の態様では、少なくとも、第1位相差領域および第2位相差領域の面内の遅相軸方位は、互いに異なる態様が好ましく、任意の辺(好ましくは位相差領域によって形成されるストライプ、すなわち第1位相差領域または第2位相差領域の長手方向)に対して異なることがより好ましい。本発明の積層体は、第1位相差領域の遅相軸と第1位相差領域または第2位相差領域の長手方向とのなす角度が30°以上60°以下であることが好ましく、かつ、第2位相差領域の遅相軸と第1位相差領域または第2位相差領域の長手方向とのなす角度が−30°以上−60°以下であることが好ましい。第1位相差領域の遅相軸と第1位相差領域または第2位相差領域の長手方向とのなす角度が45°であることがより好ましく、かつ、第2位相差領域の遅相軸と第1位相差領域または第2位相差領域の長手方向とのなす角度が−45°であることがより好ましい。
【0056】
本発明の積層体の第1の態様は、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)および第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)がそれぞれ独立に110〜135nmであり、かつ、下記式(1)を満たすことが好ましい。
Re2(550) = Re1(550) ±10nm ・・(1)
本発明の積層体の第1の態様は、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)および第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)は、白表示状態の色味を良好にする観点から、それぞれ独立に110〜130nmであることがより好ましく、110〜125nmであることが特に好ましく、110〜120nmであることがより特に好ましい。
第1のパターン光学異方性層が波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRth1(550)および第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける膜厚方向のレターデーションRth2(550)は55〜80nmであることが好ましく、60〜80nmであることがより好ましく、65〜75nmであることが特に好ましい。第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層のRth(550)がλ/8近傍であることが好ましい。
【0057】
パターン光学異方性層の上層及び下層の少なくとも一方には、境界部に対応する位置に配置された色素部分を有するのが好ましい。色素部分を設けることにより、境界部の光漏れに起因する調光機能の乱れを抑制することができる。なお、色素部分は、色素を含有することによって光透過性が低下した部分であり、1種類又は2種類以上の色素を含むことにより、ブラック又はそれに類似する色相であることが好ましい。
色素部分の幅は、透過状態での面内輝度均一性の観点で適切に設定され、隣接する2つの境界部間の距離(位相差領域の幅)Lの0.1〜0.7倍であることが好ましく、0.3〜0.5倍であることがより好ましい。
【0058】
パターン光学異方性層は、高分子フィルム等からなる支持体の表面に形成し、支持体とともに、本発明の積層体に組み込まれてもよい。特に、パターン光学異方性層の支持体を、偏光板保護フィルムとしても利用できるので好ましい。支持体としては、光透過性の高分子フィルムが好ましく、支持体として使用可能な高分子フィルムは、偏光板保護フィルムとして使用可能なポリマーフィルムの例と同様である。なお、支持体のRthとパターン光学異方性層のRthの合計が|Rth|≦20nmを満たすことが好ましく、そのためには、支持体は、−150nm≦Rth(630)≦100nmを満たすことが好ましい。
【0059】
パターン光学異方性層が、互いに隣り合う第1位相差領域及び第2位相差領域の間に存在する幅L1の境界部を含む場合は、光漏れ等を軽減することを目的として、境界部に対応する位置に配置された色素部分(好ましくはブラックストライプ)を有しているのが好ましい。
色素部分は、パターン光学異方性層の上層及び下層の少なくとも一方に有しているのが好ましい。色素部分は、光漏れの軽減の観点から、黒又は黒に類似する色相を有しているのが好ましく、1種類又は2種類以上の色素を含むことによりこの色相になっているのが好ましい。使用可能な色素としては、従来、カラーフィルタのブラックマトリックスの形成に利用されている色素等が挙げられる。
色素部分は、例えば印刷法を利用して、パターン光学異方性層上等に形成することができ、印刷法の一例は、フレキソ印刷法である。
【0060】
(第2の態様における第1のパターン光学異方性層、第2のパターン光学異方性層)
本発明の積層体の第2の態様は、第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層は、面内に遅相軸の方位が異なり、かつ、連続的に遅相軸の方位が変化する位相差領域を3つ以上有する。
それぞれの位相差領域はストライプ形状であることが好ましい。ストライプの好ましい幅は第1の態様における第1のパターン光学異方性層、第2のパターン光学異方性層の第1位相差領域および第2位相差領域のストライプの好ましい幅と同様である。
【0061】
本発明の積層体の第2の態様は、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)および第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)がそれぞれ独立に230〜270nmであり、かつ、下記式(1)を満たすことが好ましい。
Re2(550) = Re1(550) ±10nm ・・(1)
本発明の積層体の第2の態様は、第1のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe1(550)および第2のパターン光学異方性層の波長550nmにおける面内方向のレターデーションRe2(550)がそれぞれ独立に230〜260nmであることがより好ましく、230〜250nmであることが特に好ましく、235〜245nmであることがより特に好ましい。
【0062】
(パターン光学異方性層の材料)
パターン光学異方性層の材料としては、液晶化合物を含む液晶組成物であることが好ましく、重合性基を有する液晶化合物を含む重合性液晶組成物であることが好ましい。
パターン光学異方性層の形成に用いられる液晶組成物の一例は、重合性基を有する液晶化合物の少なくとも1種類、及び配向制御剤の少なくとも1種類を含有する液晶組成物である。その他、重合開始剤、増感剤、配向助剤などのその他の成分を含有していてもよい。
以下、各材料について詳細に説明する。
【0063】
−液晶化合物−
液晶化合物は、パターン光学異方性層のReおよびRthの値、ならびにパターン光学異方性層のReの波長分散およびRthの波長分散の設計に応じて、適宜選択することができる。
【0064】
−−スメクチック液晶化合物−−
パターン光学異方性層のReの波長分散を逆波長分散にする場合、例えば以下のスメクチック液晶化合物を用いることが好ましい。
スメクチック液晶化合物とは、形成するパターン光学異方性層または光学異方性層にスメクチック液晶性を示すことができる化合物をいう。
また、スメクチック液晶性を示すパターン光学異方性層または光学異方性層には、硬化等によって完全なスメクチック液晶性を示さなくなるパターン光学異方性層または光学異方性層も含まれ、後述する配向秩序度が0.8以上1.0以下の範囲にある光学異方性層のみならず、例えば、X線回折法を用いた液晶配向方向に平行な方向の周期の測定により、入射ビームと回折ビームとのなす角2θ=1〜3°の範囲においてピーク数が1本である光学異方性層も含まれる。
このようなスメクチック液晶化合物のうち、分子内にフッ素原子を含まない化合物を用いることが好ましい。
【0065】
スメクチック液晶化合物としては、剛直なメソゲンと柔軟な側鎖が擬似的に相分離することでスメクチック性を発現しやすくなり、かつ、十分な剛直性を示す理由から、ベンゼン環およびシクロヘキサン環からなる群から選択される環構造を少なくとも3個有する化合物であるのが好ましい。
また、パターン光学異方性層の湿熱耐久性付与の観点から、重合性基(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等)を2個以上有する化合物であるのが好ましい。
なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す表記である。
【0066】
このようなスメクチック液晶化合物としては、具体的には、例えば、下記式L−1、L−3、L−6で表される化合物などが挙げられる。
【化1】
【0067】
また、スメクチック液晶化合物としては、液晶分子間に電子的相互作用が働くことでパターン光学異方性層の配向性がより良好となる理由から、下記式(I)で表される構造を有する化合物であるのが好ましい。
【化2】
ここで、上記式(I)中、*は結合位置を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
なお、上記式(I)で表される構造を有する化合物としては、上記式(I)におけるRがいずれも水素原子である上記式L−1で表される化合物が好適に挙げられる。
【0068】
Reの波長分散を逆波長分散にする場合のパターン光学異方性層は、上述したスメクチック液晶化合物以外に、他の液晶化合物を含有していてもよい。
他の液晶化合物としては、例えば、ネマチック液晶化合物などが挙げられ、具体的には、後述する実施例でも用いられる下記式L−2、L−4で表される化合物などが挙げられる。
なお、上述したスメクチック液晶化合物と他の液晶化合物を含有する場合、スメクチック液晶化合物の含有割合は、スメクチック液晶化合物と他の液晶化合物との合計質量に対して少なくとも35質量%以上であるのが好ましい。
【化3】
【0069】
一方、パターン光学異方性層のReの波長分散を順波長分散にする場合、例えば以下の液晶化合物を用いることが好ましい。
液晶化合物としては、棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物が挙げられる。
【0070】
−−棒状液晶化合物−−
棒状液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶分子だけではなく、高分子液晶分子も用いることができる。
【0071】
棒状液晶化合物を重合によって配向を固定することがより好ましく重合性基を有する重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性液晶化合物の例は、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号公報、米国特許5622648号公報、米国特許5770107号公報、WO95/22586号公報、WO95/24455号公報、WO97/00600号公報、WO98/23580号公報、WO98/52905号公報、特開平1−272551号公報、特開平6−16616号公報、特開平7−110469号公報、特開平11−80081号公報、および特開2001−328973号公報、特開2014−198815号公報、特開2014−198814号公報などに記載の化合物が含まれる。さらに棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11−513019号公報や特開2007−279688号公報に記載の化合物も好ましく用いることができる。
2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0072】
棒状液晶化合物の具体例としては、下記(1)〜(11)に示す化合物が挙げられる。
【0073】
【化4】
【0074】
【化5】
[化合物(11)において、Xは2〜5(整数)である。]
【0075】
以下に、2以上の棒状液晶化合物を組み合わせて用いる場合の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
【化6】
【0077】
−−円盤状液晶化合物−−
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007−108732号公報や特開2010−244038号公報に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
以下に、円盤状液晶化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
【化7】
【0079】
また、液晶組成物中の液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、75〜99.9質量%であることが好ましく、80〜99質量%であることがより好ましく、85〜90質量%であることが特に好ましい。
【0080】
−アルキルシクロヘキサン環含有化合物−
Reの波長分散を逆波長分散にする場合のパターン光学異方性層は、アルキルシクロヘキサン環含有化合物を含むことが好ましい。アルキルシクロヘキサン環含有化合物とは、直鎖状のアルキル基で水素原子が1個置換されたシクロヘキサン環を一部に有する化合物である。
ここで、「直鎖状のアルキル基で水素原子が1個置換されたシクロヘキサン環」とは、例えば、下記式(2)に示すように、シクロヘキサン環を2つ有する場合には、分子末端側に存在するシクロヘキサン環の水素原子が直鎖状のアルキル基で1個置換されたシクロヘキサン環をいう。
【0081】
アルキルシクロヘキサン環含有化合物としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられ、なかでも、光学異方性層の湿熱耐久性付与の観点から、(メタ)アクリロイル基を有する下記式(3)で表される化合物であるのが好ましい。
【化8】
【0082】
ここで、上記式(2)中、*は結合位置を表す。
また、上記式(2)および(3)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、nは1または2を表し、WおよびWはそれぞれアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、また、WおよびWはこれらが互いに結合し、置換基を有していてもよい環構造を形成していてもよい。
また、上記式(3)中、Zは−COC−または−OCO−を表し、Lは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0083】
このようなアルキルシクロヘキサン環含有化合物としては、具体的には、例えば、下記式A−1〜A−5で表される化合物が挙げられる。なお、下記式A−3中、Rは、エチル基またはブチル基を表す。
【化9】
【0084】
−配向制御剤−
配向制御剤の例には、特開2005−99248号公報の[0092]および[0093]中に例示されている化合物、特開2002−129162号公報の[0076]〜[0078]および[0082]〜[0085]中に例示されている化合物、特開2005−99248号公報の[0094]および[0095]中に例示されている化合物、特開2005−99248号公報の[0096]中に例示されている化合物が含まれる。
フッ素系配向制御剤として、特開2014−119605号公報の[0082]〜[0090]に記載の化合物、特開2007−272185号公報の段落[0018]〜[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーも好ましい。
配向制御剤として、特開2007−272185号公報の段落[0018]〜[0043]に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマーを好ましく用いることができ、この明細書の記載は本発明に組み込まれる。
なお、配向制御剤としては1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
−Aプレートのパターン光学異方性層を形成する場合は、重合性基を有する円盤状液晶化合物の垂直配向をさせたパターン光学異方性層とすることが好ましく、その場合は液晶組成物に配向制御剤として、以下のオニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)やフルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)を用いることが好ましい。
【0086】
−−オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)−−
前述のように、重合性基を有する液晶化合物、特に、重合性基を有する円盤状液晶化合物の垂直配向を実現するために、オニウム塩を添加することが好ましい。オニウム塩は配向膜界面に偏在し、液晶分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用をする。
【0087】
オニウム塩としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)
Z−(Y−L−)Cy・X
式中、Cyは5又は6員環のオニウム基であり、L、Y、ZおよびXは、それぞれ後述する一般式(2a)及び(2b)におけるL23(L24)、Y22(Y23)、Z21およびXと同義であり、nは2以上の整数を表す。
L、Y、ZおよびXの好ましい範囲は、それぞれ後述する一般式(2a)及び(2b)におけるL23(L24)、Y22(Y23)、Z21およびXの好ましい範囲と同一である。
【0088】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、ピラゾリウム環、イミダゾリウム環、トリアゾリウム環、テトラゾリウム環、ピリジニウム環、ピラジニウム環、ピリミジニウム環、トリアジニウム環が好ましく、イミダゾリウム環、ピリジニウム環が特に好ましい。
【0089】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、配向膜材料と親和性のある基を有するのが好ましい。オニウム塩化合物は、酸発生剤が分解していない部分(未露光部分)では配向膜材料との親和性が高く配向膜界面に偏在している。一方、酸発生剤が分解し酸性化合物が発生している部分(露光部分)では、オニウム塩のアニオンがイオン交換し親和性が低下し配向膜界面における偏在性が低下している。水素結合は、液晶を配向させる実際の温度範囲内(室温〜150℃程度)において、結合状態にも、その結合が消失した状態にもなり得るので、水素結合に基づく親和性を利用するのが好ましい。但し、この例に限定されるものではない。
例えば、配向膜材料としてポリビニルアルコールを利用する態様では、ポリビニルアルコールの水酸基と水素結合を形成するために、水素結合性基を有しているのが好ましい。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H.Uneyama and K.Morokuma、Journal of American Chemical Society、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、Angewante Chemie International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。
【0090】
水素結合性基を有する5又は6員環のオニウム基は、オニウム基の親水性の効果に加え、ポリビニルアルコールと水素結合することによって、配向膜界面の表面偏在性を高めるとともに、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交配向性を付与する機能を促進する。好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオウラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、ピリジル基を挙げることができる。
5又は6員環のオニウム環に、水素結合性基を有する原子(例えば、イミダゾリウム環の窒素原子)を含有していることも好ましい。
【0091】
nは、2〜5の整数が好ましく、3又は4であるのがより好ましく、3であるのが特に好ましい。複数のL及びYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。nが3以上である場合、一般式(1)で表されるオニウム塩は、3つ以上の5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基であるYを有しているため、円盤状液晶化合物と強い分子間π−π相互作用が働く。そのため、円盤状液晶化合物の垂直配向を実現することができ、特に、ポリビニルアルコール配向膜上では、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交垂直配向を実現することができる。
【0092】
一般式(1)で表されるオニウム塩は、下記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物であることが特に好ましい。
一般式(2a)及び(2b)で表される化合物は、主に、円盤状液晶化合物の配向膜界面における配向を制御することを目的として添加され、円盤状液晶化合物の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。
【0093】
【化10】
【0094】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基を表す。
23は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が2〜10のアルキレン基である。L23は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合または−O−がさらに好ましく、−O−が最も好ましい。
【0095】
24は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−または−N=N−であるのが好ましく、−O−CO−又は−CO−O−がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL24が交互に、−O−CO−及び−CO−O−であるのがさらに好ましい。
【0096】
22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基である。
22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R23は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。R23が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
【0097】
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、パラトルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。
【0098】
22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y22及びY23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y22およびY23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香環(ベンゼン環)および複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12のアルキル基および炭素原子数が1〜12のアルコキシ基を含む。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y22及びY23がフェニレン基である場合は、1〜4個の、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基で置換されていてもよい。
【0099】
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0100】
21は、ハロゲン置換フェニル基、ニトロ置換フェニル基、シアノ置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z21は、シアノ基、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4〜10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
mが1の場合、Z21は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0101】
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0102】
pは、1〜10の整数である。pは、1または2であることが特に好ましい。C2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。C2pは、直鎖状アルキレン基(−(CH−)であることが好ましい。
【0103】
一般式(2b)中、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。
【0104】
一般式(2a)又は(2b)で表される化合物の中でも、下記一般式(2a’)又は(2b’)で表される化合物が好ましい。
【0105】
【化11】
【0106】
一般式(2a’)及び(2b’)中、一般式(2a)と同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L25はL24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L24及びL25は、−O−CO−又は−CO−O−であるのが好ましく、L24が−O−CO−で、且つL25が−CO−O−であるのが好ましい。
【0107】
23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。n23及びn25が0で、n24が1〜4(より好ましくは1〜3)であるのが好ましい。
30は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。
【0108】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報の明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
【0109】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X)は省略した。
【0110】
【化12】
【0111】
一般式(2a)及び(2b)の化合物は、一般的な方法で製造することができる。例えば、一般式(2a)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
オニウム塩は、その添加量が、液晶化合物に対して5質量%を超えることはなく、0.1〜2質量%程度であるのが好ましい。
【0112】
一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特に円盤状液晶化合物との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、円盤状液晶化合物の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。
【0113】
さらに、一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩を併用すると、光分解により光酸発生剤から放出された酸性化合物とアニオン交換し、オニウム塩の水素結合力及び親水性が変化することにより配向膜界面における偏在性が低下し、液晶が、その遅相軸を、ラビング方向に対して平行にして配向する、平行配向を促進するようになる。これは、塩交換により、オニウム塩が配向膜に均一に分散され配向膜表面における密度が低下し、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向するためである。
【0114】
以下に、オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
【化13】
【0116】
−−フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)−−
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、液晶の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、液晶の分子の空気界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。さらに、ムラ、ハジキなどの塗布性も改善される。
本発明に使用可能なフルオロ脂肪族基含有共重合体としては、特開2004−333852号、特開2004−333861号、特開2005−134884号、特開2005−179636号、及び特開2005−181977号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。特に好ましくは、特開2005−179636号、及び特開2005−181977号の各公報及び明細書に記載の、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種類以上の親水性基とを側鎖に含むポリマーである。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、その添加量が、液晶化合物に対して2質量%を超えることはなく、0.1〜1質量%程度であるのが好ましい。
【0117】
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基の疎水性効果により空気界面への偏在性を高めると共に、空気界面側に低表面エネルギーの場を提供し、液晶、特に円盤状液晶化合物のチルト角を増加させることができる。さらに、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種類以上の親水性基を側鎖に含む共重合成分を有すると、これらのアニオンと液晶のπ電子との電荷反発により液晶化合物の垂直配向を実現することができる。
【0118】
以下に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
ポリマーA
【化14】
【0120】
ポリマーB
【化15】
上記aは90、bは10を表す。
【0121】
【化16】
【0122】
液晶組成物中における、配向制御剤の添加量は、液晶化合物の全質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜5質量%がより好ましく、0.02質量%〜1質量%が特に好ましい。
【0123】
−重合開始剤−
重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許2367670号の各明細書に記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書に記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書に記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許2951758号の各明細書に記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとパラ−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書に記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書に記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書に記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報に記載)等が挙げられる。
市販の重合開始剤としては、光重合開始剤であるIRGACURE 907、IRGACURE 184、IRGACURE OXE−01(以上、BASF社製)、増感剤であるカヤキュアーDETX(日本化薬(株)製)などを挙げることができる。
紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜12質量%であることがさらに好ましい。
【0124】
−溶媒−
液晶組成物の溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましく、メチルエチルケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0125】
(パターン光学異方性層の製造方法)
以下に、本発明に利用可能なパターン光学異方性層の製造方法について詳細に説明する。
パターン光学異方性層を製造する方法は、液晶組成物を利用して、各位相差領域を形成することが好ましく、液晶を主成分とする同一の硬化性液晶組成物を利用して、各位相差領域を形成することが好ましく、パターン露光により各位相差領域を形成することが好ましい。
パターン光学異方性層の形成方法としては、例えば、液晶化合物などを含有する液晶組成物を用いて、液晶化合物を配向状態で固定化する方法などが好ましい。このとき、液晶化合物を固定化する方法としては、例えば、液晶化合物として重合性基を有する液晶化合物を用い、重合させて固定化する方法等が好適に例示される。なお、本発明においては、パターン光学異方性層は、任意の支持体上や、偏光子上に形成することができる。
【0126】
より具体的には、パターン光学異方性層を形成する第1の方法は、液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。例えば、配向膜に基づく配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、液晶を、所定の配向状態とし、それを固定して一の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤に基づく作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜に基づく作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他の位相差領域を形成する。例えば、所定のピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基が、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基で置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特に円盤状液晶化合物との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、円盤状液晶化合物の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、ピリジニウム化合物等の配向膜表面における密度が低下し、その作用を消失する。その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。この方法の詳細については、特開2012−8170号公報の[0014]〜[0132]に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0127】
パターン光学異方性層を形成する第2の方法は、パターン配向膜を利用する方法である。この方法では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じた位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。印刷法の詳細については、特開2012−32661号公報の[0013]〜[0116]、[0166]〜[0181]に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。光配向膜に対するマスク露光の詳細については、配向膜の項目で後述する。
【0128】
また、上記第1及び第2の方法を併用してもよい。一例は、配向膜中に光酸発生剤を添加する例である。この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、露光量(露光強度)のオンおよびオフによって、2種類以上の位相差領域を形成することができる。
すなわち、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、光酸発生剤が分解せず、酸性化合物が発生していない領域とを形成する。光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。この方法の詳細については、特開2012−150428号公報の[0013]〜[0175]に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0129】
パターン光学異方性層の形成に利用されるパターン配向膜の好ましい例として、パターン光配向膜を用いる方法を挙げることができる。
【0130】
パターン光学異方性層の形成方法では、パターン配向膜の表面に、塗布液として調製された、重合性基を有する液晶を主成分とする一種類の組成物を塗布することが好ましい。液晶組成物の塗布は、液晶組成物を溶媒により溶液状態としたもの、または加熱により溶融液等の液状物としたものを、ロールコーティング方式やグラビア印刷方式、スピンコート方式などの適宜な方式で展開する方法などにより行うことができる。さらにワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、液晶組成物をノズルから吐出して、塗布膜を形成することもできる。
その後、液晶組成物の硬化により、液晶化合物の分子の配向状態を維持して固定することが好ましい。硬化は、液晶分子に導入した重合性基の重合反応により実施することが好ましい。
液晶組成物の塗布後であって、硬化のための重合反応前に、塗布膜は、公知の方法で乾燥してもよい。例えば放置によって乾燥してもよく、加熱によって乾燥してもよい。
液晶組成物の塗布および乾燥の工程で、液晶組成物中の液晶分子が配向していればよい。
【0131】
重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。液晶分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、1mJ/cm以上、20mJ/cm以上、または100mJ/cm以上であればよく、50J/cm以下、800mJ/cm以下、または400mJ/cm以下であればよい。紫外線照度は、例えば、0.1〜50mW/cmが好ましい。
【0132】
液晶組成物の液晶分子の配向に基づく光学的性質は、層中において保持されていれば十分であり、硬化後のパターン光学異方性層の液晶組成物はもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0133】
パターン光学異方性層の形成においては、上記の硬化により、パターン光学異方性層の配向状態が固定されることが好ましい。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、この層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。
【0134】
本発明の積層体の第1の態様に用いられるパターン光学異方性層の製造方法としては、例えば、液晶化合物の遅相軸をラビング方向に対して直交及び平行にしてそれぞれ配向させることが好ましい。これにより、第1及び第2の面内遅相軸の方向が決定され、互いに直交した面内遅相軸を有する第1位相差領域及び第2位相差領域が形成され、本発明の積層体の第1の態様に用いられるパターン光学異方性層を形成できる。
本発明の積層体の第1の態様に用いられるパターン光学異方性層と本発明の積層体の第2の態様に用いられるパターン光学異方性層に共通する製造方法としては、液晶の遅相軸をパターン光配向膜の配向能の異なる領域のそれぞれの配向能に応じて配向させる方法が挙げられる。
さらに、これらの工程における液晶の配向状態によって、パターン光学異方性層の光学特性(Re及びRth)が決定される。
【0135】
このようにして形成するパターン光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
【0136】
<光学異方性層>
本発明の積層体の第1の態様および本発明の積層体の第2の態様は、第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に配置された光学異方性層を含み、光学異方性層は、1層または2層以上であって、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRe_off(550)が240〜310nmであり、遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおけるRth_off(550)が−50〜50nmである積層体;
ここで、Re_off(550)とRth_off(550)は、光学異方性層の遅相軸から方位角45°、極角60°方向の波長550nmにおける光学異方性層のJones Matrixから算出される値である;
光学異方性層のJones Matrixは、光学異方性層が1層である場合は下記式(ii)から算出されるJを表し、光学異方性層が2層以上である場合は下記式(i)から算出されるJones Matrixの積Jn*Jn−1*・・・*J2*J1を表す;
Pout=(Jn*Jn−1*・・・*J2*J1)*Pin ・・(i)
Pout=J*Pin ・・(ii)
式(i)および式(ii)中、Poutは最終偏光状態を表し、Pinは入射偏光状態を表し、Jnは光学異方性層が2層以上の場合のn層目のJones Matrixを表し、Jは光学異方性層が1層の場合の光学異方性層のJones Matrixを表し、nは2以上の整数を表す。
光学異方性層は、面内で均一なレターデーションを有することが好ましく、パターン光学異方性層とは区別される。
光学異方性層の遅相軸は、第1の偏光子または第2の偏光子の吸収軸と90°±5°の角度をなすように配置することが、黒表示での全方位における光漏れ抑制の観点から好ましい。
【0137】
(Re_off、Rth_off)
光学異方性層は、波長550nmにおけるRe_off(550)が240〜310nmであり、245〜300nmであることが好ましく、250〜290nmであることがより好ましい。
光学異方性層は、波長550nmにおけるRth_off(550)が−50〜50nmであり、−45〜45nmであることが好ましく、−40〜40nmであることがより好ましい。
また本明細書において、本発明の積層体の斜め方向のRe及びRthであるRe_off及びRth_offの意義を以下において説明する。
極角60°及び方位角45°の方向の入射光が光学異方性層を通過後の偏光状態が、特許5657228号の図4のポアンカレ球上の点Xの位置にあるとする。膜厚方向にNzファクターが均一で、ReがRe、RthがRthの光学異方性層があり、その光学異方性層通過後の、同方向の入射光の偏光状態が同じになる(つまり特許5657228号の図4の点Xの位置にくる)時、Re_off=Re、Rth_off=Rthである。
従来の位相差フィルムである膜厚方向にNzファクターが均一な2軸フィルムは、Re=Re_off、Rth=Rth_offであるので、このようなことを考える必要はないが、本発明に用いられる光学異方性層では、従来のRe及びRth(軸方向(即ちフィルム面に対する法線方向)で測定されるRe及びRth)ではなく、Re_off、Rth_offが、実際に、斜め方向の補償における最終的な偏光状態に対応する。
【0138】
数学的には、光学異方性層が1層の場合の光学異方性層のJones MatrixをJ、光学異方性層が2層以上の場合のn層目のJones MatrixをJn、入射偏光状態をPin、最終偏光状態をPoutとすると、n層の光学異方性層通過後の偏光状態は、下記式(i)
Pout=(Jn*Jn−1*・・・*J2*J1)*Pin ・・(i)
で表すことができる。
一方、光学異方性層が1層の場合は、
Pout=J*Pin ・・(ii)
で表すことができる。つまり、(ii)式におけるJと、(i)式における各層のJones Matrixの積(Jn*Jn−1*・・・*J2*J1)と等価と考えることで、光学異方性層のJones MatrixからRe_off、Rth_offを算出することができる。
【0139】
本発明に用いられる光学異方性層のRe_off及びRth_offの波長分散性については特に制限はないが、逆波長分散であることが異なる波長の偏光状態を同一にする、もしくは、近づける観点から好ましい。
一例は、Re_off及びRth_offが、可視光域において同一の波長分散性を示す光学異方性層であり、他の例は、Re_off及びRth_offが、可視光域において互いに異なる波長分散性を示す光学異方性層である。本発明に用いられる光学異方性層では、Re_off及びRth_offの波長分散性は、各層の波長分散性を調整すること、より具体的には、各層の波長分散の足し算で表すことができる。また、本発明に用いられる光学異方性層のRe(Rth)の波長分散性も各層のRe(Rth)の波長分散の足し算であり、その程度はRe_offとRth_offとおよそ同等であるため、その測定値からも波長分散性は把握できる。
【0140】
(光学異方性層の材料)
光学異方性層に用いる材料としては、所望のレターデーションを発現できれば特に制限はなく、液晶化合物を含む液晶組成物、セルロースアシレートフィルムなどが挙げられる。光学異方性層は、1層でも2層以上でもよい。光学異方性層の例としては、+Aプレートと+Cプレートの積層体、−Bプレートと+Cプレートの積層体、Rthが0nm程度のλ/2板などを挙げることができる。
光学異方性層に用いる素材の例としては、特許5657228号の[0032]〜[0120]に記載のセルロースアシレートフィルムおよび添加剤などの材料を挙げることができ、この公報の内容は本発明に組み込まれる。
光学異方性層の形成方法としては、例えば、液晶化合物などを含有する液晶組成物を用いて、液晶化合物を配向状態で固定化する方法などが好ましい。このとき、液晶化合物を固定化する方法としては、例えば、液晶化合物として重合性基を有する液晶化合物を用い、重合させて固定化する方法等が好適に例示される。なお、本発明においては、光学異方性層は、任意の支持体上や、偏光子上に形成することができる。
光学異方性層の形成に用いる素材は液晶化合物を含む液晶組成物であることが好ましく、液晶化合物は重合性液晶化合物であることが好ましい。
なお、光学異方性層は液晶相を固定してなる層であってもよく、ネマチックの液晶相を固定してなる層であることが好ましい。
光学異方性層に用いられる液晶化合物の好ましい範囲は、パターン光学異方性層に用いられる液晶化合物の好ましい範囲と同様である。
【0141】
(ホウ素を含む化合物)
光学異方性層は、ホウ素を含む化合物を含むことが、スメクチック液晶化合物を垂直配向させて、逆波長分散のCプレートを形成しやすくする観点から好ましい。ホウ素を含む化合物としては、特開2014−191156号公報の[0064]〜[0079]に記載の化合物を挙げることができ、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0142】
以下に、ホウ素を含む化合物の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0143】
【化17】
【0144】
液晶組成物中のホウ素を含む化合物の含有量は、液晶化合物の含有量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.3質量%〜1質量%であることがさらに好ましい。
【0145】
(その他の添加剤)
重合性液晶化合物を含む液晶組成物はさらに配向制御剤、重合開始剤、オニウム塩化合物、メソゲン骨格を持たない重合性モノマーなどを含んでいてもよい。光学異方性層に用いられる、配向制御剤、重合開始剤、オニウム塩化合物、溶媒の好ましい範囲は、パターン光学異方性層に用いられる各材料の好ましい範囲と同様である。
【0146】
<配向膜>
また、本発明の積層体は、配向膜を有していてもよい。例えば、パターン光学異方性層に隣接する配向膜や光学異方性層に隣接する配向膜を有していてもよい。この配向膜は、パターン光学異方性層や光学異方性層を形成する際に、液晶分子の配向を制御する機能を有する。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、SiOなどの無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向膜(好ましくは光配向膜)も知られている。
パターン光学異方性層や光学異方性層の下層の材料によっては、配向膜を設けなくても、下層を直接配向処理(例えば、ラビング処理)することで、配向膜として機能させることもできる。そのような下層となる支持体の一例としては、PET(polyethylene terephthalate)を挙げることができる。
また、下層が配向膜として振舞い、上層のパターン光学異方性層や光学異方性層の作製のための液晶化合物を配向させることができる場合もある。このような場合、配向膜を設けなくても、また、特別な配向処理(例えば、ラビング処理)を実施しなくても上層の液晶化合物を配向することができる。
以下、好ましい例として光配向膜を説明する。
【0147】
光照射により形成される光配向膜に用いられる光配向膜材料としては、多数の文献等に記載がある。例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、国際公開第2005/096041号の段落[0024]〜[0043]、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、またはエステル、特開平9−118717号公報、特表平10−506420号公報、特表2003−505561号公報、WO2010/150748号公報、特開2012−155308号公報の[0028]〜[0176]、特開2013−177561号公報、特開2014−12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート(ケイ皮酸)化合物、カルコン化合物、クマリン化合物が好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、エステル、シンナメート化合物、カルコン化合物である。
特に好ましい光配向膜材料の具体例としては、特開2006−285197号公報中の一般式(1)で表される化合物、特開2012−155308号公報の[0028]〜[0176]に記載された光配向性基を有する液晶配向剤を挙げることができる。光配向膜として、Rolic Technologies社製の商品名LPP−JP265CPなどを用いることができる。
【0148】
上記材料から形成した膜に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向膜を製造することができる。
また、パターン光配向膜は、直線偏光または非偏光照射を施す際に、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することが好ましい。例えば、本発明の積層体の第1の態様に用いられるパターン光学異方性層を形成するための、面内に配向能の方位が異なる第1領域と第2領域を交互に有するパターン光配向膜は、特定の偏光の向きで直線偏光を照射した後、所望のパターン形状のフォトマスク(例えばアルミホイルを貼合したガラスなどでもよい)等を用いて、異なる偏光の向きで直線偏光を照射して形成することができる。また、本発明の積層体の第2の態様に用いられるパターン光学異方性層を形成するための、面内に配向能の方位が異なり、かつ、連続的に配向能の方位が変化する領域を3つ以上有するパターン光配向膜は、偏光板と所望のスリット幅の有する遮光板を配置した活性エネルギー線照射装置から特定の偏光の向きで直線偏光を遮光板のスリット幅に対応する領域のみに照射した後、偏光板を任意の角度で回転させつつ、スリット幅に対応する領域を動かしながら異なる偏光の向きで直線偏光を照射することを繰り返して形成することができる。
本明細書において、「直線偏光照射」とは、光配向膜材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向膜材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。好ましくは、光照射に用いる光のピーク波長が200nm〜700nmであり、より好ましくは光のピーク波長が400nm以下の紫外光である。
【0149】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種類のレーザー(例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザー)、発光ダイオード、陰極線管などを挙げることができる。
【0150】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例、グラントムソンプリズム)やブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルターや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0151】
照射する光は、直線偏光の場合、配向膜に対して上面、または裏面から配向膜表面に対して垂直、または斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向膜材料によって異なるが、例えば、0〜90°(垂直)、好ましくは40〜90°である。
非偏光を利用する場合には、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10〜80°、好ましくは20〜60°、特に好ましくは30〜50°である。
照射時間は好ましくは1〜60分間、さらに好ましくは1〜10分間である。
【0152】
また、配向膜の素材を選択することで、パターン光学異方性層や光学異方性層の形成用仮支持体から配向膜を剥離したり、パターン光学異方性層や光学異方性層のみ剥離させたりできる。転写(剥離)したパターン光学異方性層や光学異方性層を貼合することで数μmの薄いパターン光学異方性層や光学異方性層を提供することができる。さらに、偏光子に直接ラビング配向膜や光配向膜を塗布積層し、ラビングまたは光配向処理して配向機能を付与する態様も好ましい。即ち、本発明の積層体は、偏光子を有し、上記直線偏光子の表面上に光配向膜またはラビング配向膜を有する積層体でもよい。
【0153】
本発明では、パターン光学異方性層や光学異方性層に含まれる重合性棒状液晶化合物のプレ傾斜角を0°に出来、正面の光漏れが低減された高いコントラストと、斜めの色味変化低減の両立がしやすいことから、光配向膜を配向膜として使用する態様が特に好ましい。本発明で用いる光配向膜では、光配向膜に対して、垂直方向または斜め方向から偏光照射する工程、または、斜め方向から非偏光照射する工程により配向規制力を付与する態様が好ましい。斜め方向から照射する場合の斜め方向とは、光配向膜に対して、5度〜45度の角度の方向が好ましく、10度〜30度の角度の方向がより好ましい。照射強度としては、好ましくは200〜2000mJ/cmの紫外線を照射すればよい。
【0154】
<光透過性基板>
本発明の積層体は、光透過性基板を含んでいてもよい。
光透過性基板は、ガラス板、又はアクリル板等のプラスチック基板であり、これに、例えば、互いに直交する吸収軸を有する、直線偏光能を示す偏光子を2枚積層した偏光板を用いると、光の入射角度に応じて、透過光の透過率を調整、即ち調光することができる。また、後述するパターン光学異方性層でも、調光することができる。ここでいう偏光能とは、非偏光や円偏光から直線偏光を作り出したり、直線偏光を円偏光にしたりする能力を指し、位相差を付与することで変えることができる。
【0155】
光透過性基板としては、通常の窓に用いられるガラス板、及びアクリル板、ポリカーボネート板、ポリスチレン板等のプラスチック基板を用いることができる。光透過性基板の厚みの好ましい範囲は、用途によって異なるが、建物用の窓では、一般的には、0.1〜20mmであり、自動車等の乗り物用の窓では、一般的には、1〜10mmである。
【0156】
<積層体の製造方法>
積層体の製造方法は、特に制限はない。
【0157】
第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層を配置する工程は特に制限はない。例えば、前述のパターン光学異方性層の製造方法を用いて形成したパターン光学異方性層を用いて、公知の方法で第1の偏光子および第2の偏光子の間に第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層を配置することができる。
【0158】
光学異方性層を第2の偏光子と第2のパターン光学異方性層の間に配置する方法としては特に制限はない。光学異方性層を形成する方法としては、任意の部材の上に、光学異方性層形成用塗布液を塗布する方法が好ましい。光学異方性層形成用塗布液は、液晶組成物であることが好ましい。
【0159】
塗布後の液晶組成物は必要に応じて乾燥または加熱され、その後硬化されることが好ましい。乾燥または加熱の工程で液晶組成物中の重合性液晶化合物が配向することが好ましい。加熱を行う場合、加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0160】
配向させた液晶化合物は、更に重合させることが好ましい。重合は、熱重合、光照射を用いる光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmが好ましく、100mJ/cm〜1,500mJ/cmがより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射紫外線波長は250nm〜430nmが好ましい。重合反応率は安定性の観点から、高いことが好ましく70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
重合反応率は、重合性の官能基の消費割合を、IR(Infrared)吸収スペクトルを用いて決定することができる。
【0161】
<用途>
本発明の積層体は、調光性又は遮光性を要求される種々の用途に用いることができる。具体的には、例えば、カメラやVTR(video tape recorder)、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CD(Compact Disk)プレイヤーやDVD(Digital Versatile Disc)プレイヤー、MD(MiniDisc)プレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光板保護フィルムや位相差フィルムなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、部屋の隔壁、建材用サイジングボードなどの建築または建材分野、電子レンジ調理容器(食器)等に好適に用いることができる。また、一般住宅及び集合住宅等の住宅用建物、並びにオフィスビル等の商業用建物等、種々の建物用の窓に利用することができる。また建物のみならず、自動車等の乗り物用の窓に利用することもできる。さらに写真立て、手帳の表紙などの日用品分野にも用いることができる。
これらの中でも本発明の積層体は、窓、部屋の隔壁、写真立て、手帳の表紙、カーポートなどの用途に好ましく用いることができ、窓に特に好ましく用いることができる。
【0162】
[窓]
本発明の窓は、本発明の積層体を有する。
本発明の積層体はそのまま窓として用いてもよいし、窓用の枠などの他の公知の部材と組み合わせて用いてもよい。本発明の窓は、本発明の積層体の用途に記載した態様で用いるように、公知の方法で適宜変更することができる。
【実施例】
【0163】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0164】
[実施例1]
<パターン光学異方性層1の作製>
(パターン光配向膜P1の形成)
特開2012−155308号公報の実施例3の液晶配向剤(S−3)の調製方法の記載を参考に、光配向膜形成用塗布液1を調製した。
次に、光透過性基板として用意したガラス板上に、調製した光配向膜形成用塗布液1を、スピンコート法によって塗布し、10cm幅の光異性化組成物層1を形成した。
次に、紫外線照射装置(HOYA−SCHOTT株式会社 EX250−W)に偏光板を配置し、得られた光異性化組成物層1に偏光紫外線を照射量500mJ/cmで照射した。このとき偏光の向きはガラス板の辺に対して45°になるようにした。
次に1cm間隔でアルミホイルを貼合したガラスを、偏光紫外線照射装置と光異性化組成物層1の間に配置し、偏光の向きをガラス板に対して上記45°から更に90°回転させ135°にした以外は同様に偏光紫外線を光異性化組成物層1に照射し、配向能の方位が互いに90°異なる領域をそれぞれ5個ずつ有するパターン光配向膜P1を形成した。
【0165】
(パターン光学異方性層の作製)
パターン光配向膜P1上に、下記組成の光学異方性層形成用塗布液1をスピンコート法によって塗布し、液晶組成物層1を形成した。
形成した液晶組成物層1を95℃で30秒間加熱後、紫外線照射によって配向を固定化し、パターン化された光学異方性層を形成し、パターン光学異方性層1を作製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
光学異方性層形成用塗布液1(質量部)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
メチルエチルケトン 244.1
下記の棒状液晶化合物の混合物 100.0
IRGACURE 907(BASF社製) 3.0
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1.0
下記構造のフルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤;下記化合
物T−1) 0.6
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0166】
【化18】
数値は質量%である。また、Rで表される基は右下に示す部分構造であり、この部分構造の酸素原子の箇所で結合している。
【0167】
【化19】
【0168】
パターン光学異方性層1は、面内に遅相軸の方位が異なる第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有し、かつ、第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°であった。また、パターン光学異方性層1は、後述の第2の偏光子の吸収軸と第1位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が45°、第2の偏光子の吸収軸と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が135°となるように、実施例1の積層体の中に配置される。そこで、下記表に、パターン光学異方性層1の遅相軸を45/135パターンと記載した。
パターン光学異方性層1のRe(450)、Re(550)、Re(650)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)を求め、Re(450)/Re(550)、Re(630)/Re(550)、Rth(450)/Rth(550)、Rth(630)/Rth(550)を計算した。パターン光学異方性層1は、順波長分散の+Aプレートであることがわかった。パターン光学異方性層1の光学特性を下記表に記載した。なお、実施例1では、第1のパターン光学異方性層および第2のパターン光学異方性層の両方にパターン光学異方性層1を用いた。
【0169】
<光学異方性層1の作製>
特開2013−222006号公報の実施例1の記載を参考に、セルロースアシレートフィルムを2軸延伸した2軸フィルムを作製した。
その後、特開2013−222006号公報の[0204]の表7のNo.08を参考に、2軸フィルム上に配向膜(日本化薬(株)製、KAYARAD PET30と日油(株)製、ブレンマーGLMの混合物)を形成した。
さらに、配向膜上に特開2013−222006号公報の実施例[0244]に記載の位相差層用組成物を塗布し、+Cプレートを形成した。得られた+Cプレートを光学異方性層1とし、下記表に光学異方性層1の波長550nmにおけるRe_off(550)と、波長550nmにおけるRth_off(550)を記載した。なお、光学異方性層1および2の波長550nmにおけるRe_off(550)と、波長550nmにおけるRth_off(550)は、本明細書中に記載の方法で測定した。
また、光学異方性層1に用いた+CプレートはRe(550)が0.5nm、Rth(550)が−125nm、波長分散はRth(450)/Rth(550)が1.11、Rth(630)/Rth(550)が0.97であった。光学異方性層1に用いた2軸フィルムはRe(550)が100nm、Rth(550)が100nm、Re(450)/Re(550)が1.02、Re(630)/Re(550)が1.01、遅相軸は0度であった。
【0170】
<偏光板1の作製>
セルローストリアセテートフィルム「TD80UL」と「Z−TAC」(ともに富士フイルム製)の支持体表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定(1.5mol/L)の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定(0.2mol/L)の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光子を得た。
偏光子の表面の1方にTD80ULを、他方にZ−TACを、ポリビニルアルコール系接着剤水溶液を用いて貼合した。得られた偏光板を偏光板1とした。
【0171】
<偏光板2の作製>
偏光板1の作製において、Z−TACの代わりに、上記作製した光学異方性層1の2軸フィルム側に偏光子の表面の一方を貼合した以外は同様に偏光子に貼合し、光学異方性層1と偏光子を含む偏光板2を作製した。このとき、偏光板2に含まれる光学異方性層1の2軸フィルムの遅相軸と、偏光板2に含まれる偏光子の吸収軸が90°になるようにした。また、貼合には粘着剤(総研化学製)を用いた。
【0172】
<実施例1の積層体の作製>
第1の偏光子を含む偏光板1、第1のパターン光学異方性層であるパターン光学異方性層1、第2のパターン光学異方性層であるパターン光学異方性層1、光学異方性層1と第2の偏光子をこの順で配置して、実施例1の積層体を作製した。
実施例1の積層体では、第1の偏光子の吸収軸と第2の偏光子の吸収軸のなす角度が90°となるように配置した。
さらに、第1のパターン光学異方性層の外枠として、パターン光学異方性層1の第1位相差領域または第2位相差領域の幅だけスライドさせる操作が可能なスライド機構を有する外枠を3辺に設けた。
実施例1の積層体では、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が0°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態を切り替えられるように配置した。
後述の評価では便宜上、スライド機構を有する第1のパターン光学異方性層を視認側に配置して観察したが、本発明の積層体は裏側から観察しても同じ黒表示状態および白表示状態となる。
なお、第1のパターン光学異方性層の第1位相差領域の遅相軸方位および第2位相差領域の遅相軸方位はいずれも2枚の偏光子の吸収軸および透過軸と45°をなすように配置されており、平行または直交ではなかった。同様に、第2のパターン光学異方性層の第1位相差領域の遅相軸方位および第2位相差領域の遅相軸方位はいずれも2枚の偏光子の吸収軸および透過軸と45°をなすように配置されており、平行または直交ではなかった。
【0173】
[実施例2]
<パターン光学異方性層2の形成>
光学異方性層形成用塗布液1を、下記組成の光学異方性層形成用塗布液2にした以外はパターン光学異方性層1の形成と同様に、パターン光配向膜P1上に、液晶組成物層2を形成した。
形成した液晶組成物層2を80℃で120秒間加熱後、紫外線照射によって配向を固定化し、パターン化された光学異方性層を形成し、パターン光学異方性層2を作製した。
【0174】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用塗布液2
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・アルキルシクロヘキサン環含有化合物(下記化合物A−1)
20.00質量部
・下記液晶化合物L−1 40.00質量部
・下記液晶化合物L−2 40.00質量部
・重合開始剤(IRGACURE 184、BASF社製)
3.00質量部
・重合開始剤(IRGACURE OXE−01、BASF社製)
3.00質量部
・フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤;化合物T−1)
0.20質量部
・シクロペンタノン 423.11質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0175】
【化20】
【0176】
得られたパターン光学異方性層2は、面内に遅相軸の方位が異なる第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有し、かつ、第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°であった。また、パターン光学異方性層2は、後述の第2の偏光子の吸収軸と第1位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が45°、第2の偏光子の吸収軸と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が135°となるように、実施例2の積層体の中に配置される。そこで、下記表に、パターン光学異方性層2の遅相軸を45/135パターンと記載した。
パターン光学異方性層2のRe(450)、Re(550)、Re(650)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)を求め、Re(450)/Re(550)、Re(630)/Re(550)、Rth(450)/Rth(550)、Rth(630)/Rth(550)を計算した。パターン光学異方性層2は、逆波長分散のAプレートであることがわかった。パターン光学異方性層2の光学特性を下記表に記載した。なお、実施例2では、第1のパターン光学異方性層にパターン光学異方性層2を用いた。
【0177】
<パターン光学異方性層3の形成>
光学異方性層形成用塗布液1を、下記組成の光学異方性層形成用塗布液3にした以外はパターン光学異方性層1の形成と同様に、パターン光配向膜P1上に、液晶組成物層3を形成した。
形成した液晶組成物層3を80℃で60秒間加熱後、紫外線照射によって配向を固定化し、パターン化された光学異方性層を形成し、パターン光学異方性層3を作製した。
【0178】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用塗布液3
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記のディスコティック液晶化合物(A) 80質量部
・下記のディスコティック液晶化合物(B) 20質量部
・エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 5質量部
・光重合開始剤(IRGACURE907、BASF社製) 4質量部
・オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)(下記のピリジニウム塩(A)
) 2質量部
・フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤;下記のポリマーA
) 0.2質量部
・フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤;下記のポリマーB
) 0.1質量部
・フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤;化合物T−1)
0.1質量部
・メチルエチルケトン 211質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0179】
【化21】
【0180】
ポリマーA
【化22】
【0181】
ポリマーB
【化23】
上記aは90、bは10を表す。
【0182】
得られたパターン光学異方性層3は、面内に遅相軸の方位が異なる第1位相差領域と第2位相差領域を交互に有し、かつ、第1位相差領域の遅相軸方位と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°であった。また、パターン光学異方性層3は、後述の第2の偏光子の吸収軸と第1位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が45°、第2の偏光子の吸収軸と第2位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が135°となるように、実施例2の積層体の中に配置される。そこで、下記表に、パターン光学異方性層3の遅相軸を45/135パターンと記載した。
【0183】
パターン光学異方性層3のRe(450)、Re(550)、Re(650)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)を求め、Re(450)/Re(550)、Re(630)/Re(550)、Rth(450)/Rth(550)、Rth(630)/Rth(550)を計算した。パターン光学異方性層3は、順波長分散の−Aプレートであることがわかった。パターン光学異方性層3の光学特性を下記表に記載した。なお、実施例2では、第2のパターン光学異方性層にパターン光学異方性層3を用いた。
【0184】
<実施例2の積層体の作製>
第1のパターン光学異方性層としてパターン光学異方性層1の代わりにパターン光学異方性層2を用い、第2のパターン光学異方性層としてパターン光学異方性層1の代わりにパターン光学異方性層3を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の積層体を作製した。
【0185】
[実施例3]
第2のパターン光学異方性層としてパターン光学異方性層1の代わりにパターン光学異方性層3を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3の積層体を作製した。
【0186】
[実施例4]
<パターン光学異方性層1Aの作製>
パターン光学異方性層1の膜厚を薄くした以外はパターン光学異方性層1の作製と同様にして、パターン光学異方性層1Aを作製した。パターン光学異方性層1Aの種類、光学特性および波長分散を下記表に記載した。
【0187】
<パターン光学異方性層3Aの作製>
パターン光学異方性層3の膜厚を薄くした以外はパターン光学異方性層3の作製と同様にして、パターン光学異方性層3Aを作製した。パターン光学異方性層3Aの種類、光学特性および波長分散を下記表に記載した。
【0188】
<実施例4の積層体の作製>
第1のパターン光学異方性層としてパターン光学異方性層1の代わりにパターン光学異方性層1Aを用い、第2のパターン光学異方性層としてパターン光学異方性層3の代わりにパターン光学異方性層3Aを用いた以外は実施例3と同様にして、実施例4の積層体を作製した。
【0189】
[実施例5]
<光学異方性層2の作製>
実施例1で作製したケン化されたTD80UL上に、光配向膜形成用塗布液1をスピンコート法によって塗布し、光異性化組成物層1を形成した。
得られた光異性化組成物層1を、偏光紫外線照射装置(HOYA−SCHOTT株式会社 EX250−W)に配置し、偏光紫外線を照射量500mJ/cmで垂直方向から照射した。このとき偏光の向きはフィルムの端部に対して平行(0°)になるようにした。
次に、上記光異性化組成物層1に、実施例2で使用した光学異方性層形成用塗布液2を実施例2と同様に塗布し、紫外線照射し、TD80ULを仮支持体として有する+Aプレートを作製した。得られた+Aプレートは逆波長分散であった。
【0190】
実施例1で作製した光学異方性層1において、支持体を2軸フィルムから実施例1で作製したケン化されたTD80ULに変更したことと、位相差層用組成物を下記光学異方性層形成用塗布液4に変更した以外は同様にして、TD80ULを仮支持体として有する+Cプレートを作製した。得られた+Cプレートは逆波長分散であった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層形成用塗布液4
――――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記化合物A−1 20.00質量部
・上記液晶化合物L−1 40.00質量部
・上記液晶化合物L−2 40.00質量部
・重合開始剤(IRGACURE 184、BASF社製)
3.00質量部
・重合開始剤(IRGACURE OXE−01、BASF社製)
3.00質量部
・オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤;垂直配向剤;下記化合物S−1
) 1.00質量部
・ホウ素を含む化合物(垂直配向剤;下記化合物S−2) 0.50質量部
・フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤;垂直配向剤;上記
ポリマーB) 0.40質量部
・フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤;垂直配向剤;下記
化合物S−3) 0.20質量部
・シクロペンタノン 360.33質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0191】
【化24】
【0192】
<偏光板3の作製>
偏光板1の作製と同様に、ケン化されたTD80ULを偏光子の片側に貼合した。もう一方側には上記作製したTD80ULを仮支持体として有する+Aプレートを、粘着剤(総研化学製)を介して貼合し、+Aプレートの仮支持体として使用したTD80ULを剥離した。このとき、偏光子の吸収軸と+Aプレートの遅相軸が90度になるようにした。同様に、上記作製したTD80ULを仮支持体として有する+Cプレートを+Aプレート上に貼合し、+Cプレートの仮支持体として使用したTD80ULを剥離した。
得られた逆波長分散の+Cプレートおよび逆波長分散の+Aプレートの積層体を光学異方性層2とし、下記表に光学異方性層2の波長550nmにおけるRe_off(550)と、波長550nmにおけるRth_off(550)を記載した。
また、光学異方性層2に用いた+CプレートはRe(550)が0.5nm、Rth(550)が−90nm、波長分散はRth(450)/Rth(550)が0.86、Rth(630)/Rth(550)が1.03であった。光学異方性層2に用いた+AプレートはRe(550)が145nm、Rth(550)が72.5nm、Re(450)/Re(550)が0.86、Re(630)/Re(550)が1.03、遅相軸は0度であった。
このようにして得られた光学異方性層2と偏光子を含む偏光板を偏光板3とした。
【0193】
<実施例5の積層体の作製>
光学異方性層1および第2の偏光子を含む偏光板1の代わりに、光学異方性層2および第2の偏光子を含む偏光板3を用いた以外は実施例4と同様にして、実施例5の積層体を作製した。
【0194】
[実施例6]
<パターン光学異方性層4および5の作製>
(パターン光配向膜P2の形成)
ガラス板上に、実施例1で使用した光配向膜形成用塗布液1を、スピンコート法によって塗布し、10cm幅の光異性化組成物層1を形成した。
次に、紫外線照射装置(HOYA−SCHOTT株式会社 EX250−W)に偏光板と2.17mmのスリット幅の有する遮光板を配置し、得られた光異性化組成物層1に偏光紫外線を照射量500mJ/cmで照射した。
このとき偏光板を1°ずつ回転させつつ、光異性化組成物層1を形成したガラス板を移動させながら、偏光紫外線を照射した。
このようにして、配向能の方位が異なる領域を46個有するパターン光配向膜P2を作製した。
【0195】
(パターン光学異方性層4の作製)
パターン光配向膜P2上に、光学異方性層形成用塗布液1をスピンコート法によって塗布し、液晶組成物層1を形成した。
形成した液晶組成物層1を95℃で30秒間加熱後、紫外線照射によって配向を固定化し、パターン化された光学異方性層を形成し、パターン光学異方性層4を作製した。
パターン光学異方性層4は、面内に遅相軸の方位が異なり、かつ、連続的に遅相軸の方位が変化する位相差領域を、3つ以上有していた。そこで、下記表に、パターン光学異方性層4の遅相軸を連続パターンと記載した。
パターン光学異方性層4のRe(450)、Re(550)、Re(650)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)を求め、Re(450)/Re(550)、Re(630)/Re(550)、Rth(450)/Rth(550)、Rth(630)/Rth(550)を計算した。パターン光学異方性層4は、順波長分散の+Aプレートであることがわかった。パターン光学異方性層4の光学特性を下記表に記載した。なお、実施例6では、第1のパターン光学異方性層にパターン光学異方性層4を用いた。
【0196】
(パターン光学異方性層5の作製)
パターン光配向膜P2上に、光学異方性層形成用塗布液3をスピンコート法によって塗布し、液晶組成物層3を形成した。
形成した液晶組成物層3を80℃で60秒間加熱後、紫外線照射によって配向を固定化し、パターン化された光学異方性層を形成し、パターン光学異方性層5を作製した。
パターン光学異方性層5は、面内に遅相軸の方位が異なり、かつ、連続的に遅相軸の方位が変化する位相差領域を、3つ以上有していた。そこで、下記表に、パターン光学異方性層5の遅相軸を連続パターンと記載した。
パターン光学異方性層5のRe(450)、Re(550)、Re(650)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)を求め、Re(450)/Re(550)、Re(630)/Re(550)、Rth(450)/Rth(550)、Rth(630)/Rth(550)を計算した。パターン光学異方性層5は、順波長分散の−Aプレートであることがわかった。パターン光学異方性層5の光学特性を下記表に記載した。なお、実施例6では、第2のパターン光学異方性層にパターン光学異方性層5を用いた。
【0197】
<実施例6の積層体の作製>
第1のパターン光学異方性層としてパターン光学異方性層1Aの代わりにパターン光学異方性層4を用い、第2のパターン光学異方性層としてパターン光学異方性層3Aの代わりにパターン光学異方性層5を用い、以下のようにスライド機構を調整した以外は実施例5と同様にして、実施例6の積層体を作製した。
実施例6では、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が45°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最大となる白表示状態と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度が90°であって第1の偏光子に入射した光が第2の偏光子から出射する場合の透過率が最小となる黒表示状態を切り替えられるように、パターン光学異方性層4とパターン光学異方性層5を配置した。
第1のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位と、第1のパターン光学異方性層の各位相差領域とそれぞれ重なる第2のパターン光学異方性層の各位相差領域の遅相軸方位とのなす角度を45°または90°にする位置は、KOBRA 21ADH、またはWRにより判断される各位相差領域の面内の遅相軸に基づいて合わせた。
【0198】
[実施例7]
<パターン光学異方性層4Aの作製>
パターン光学異方性層4の膜厚を厚くした以外はパターン光学異方性層4の作製と同様にして、パターン光学異方性層4Aを作製した。パターン光学異方性層4Aの種類、光学特性および波長分散を下記表に記載した。
【0199】
<パターン光学異方性層5Aの作製>
パターン光学異方性層5の膜厚を厚くした以外はパターン光学異方性層5の作製と同様にして、パターン光学異方性層5Aを作製した。パターン光学異方性層5Aの種類、光学特性および波長分散を下記表に記載した。
【0200】
<実施例7の積層体の作製>
第1のパターン光学異方性層としてパターン光学異方性層4の代わりにパターン光学異方性層4Aを用い、第2のパターン光学異方性層としてパターン光学異方性層5の代わりにパターン光学異方性層5Aを用いた以外は実施例6と同様にして、実施例7の積層体を作製した。
【0201】
[比較例1]
実施例1において、光学異方性層1と偏光子を含む偏光板2の代わりに偏光板1を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の積層体を作製した。
【0202】
[比較例2]
実施例2において、光学異方性層1と偏光子を含む偏光板2の代わりに偏光板1を用いた以外は実施例2と同様にして、比較例2の積層体を作製した。
【0203】
[比較例3]
実施例3において、光学異方性層1と偏光子を含む偏光板2の代わりに偏光板1を用いた以外は実施例3と同様にして、比較例3の積層体を作製した。
【0204】
[比較例4]
実施例4において、光学異方性層1と偏光子を含む偏光板2の代わりに偏光板1を用いた以外は実施例4と同様にして、比較例4の積層体を作製した。
【0205】
[評価]
各実施例および比較例の積層体の白表示状態および黒表示状態における性能を評価した。
ここで外光を模擬するため、iPad(登録商標)Air(アップル社製)を分解し、バックライトのみ点灯させて、各実施例および比較例の積層体の第1の偏光子を視認側に配置して評価に使用した。
次に、各実施例および比較例の積層体の片方のパターン光学異方性層(第1のパターン光学異方性層)をずらし、透過率最大の状態を白表示状態、透過率最小の状態を黒表示状態として、EZContrast(ELDIM製)を用い、正面における白表示状態での色味と黒表示状態での輝度と黒表示状態での色味、極角60度かつ方位角0度(図3の斜めon−axis方向2)における黒表示状態での輝度と、極角60度かつ方位角45度(図3の斜めoff−axis方向3)における黒表示状態での輝度を測定した。
(u’,v’)で表される色味は(0.17〜0.23,0.35〜0.55)の範囲が好ましく、(0.18〜0.22,0.38〜0.52)の範囲がより好ましく、(0.19〜0.21,0.40〜0.50)の範囲が特に好ましい。
白表示状態での輝度は大きいほど好ましい。
黒表示状態での輝度は小さいほど好ましい。
得られた結果を下記表1および2に記載した。
【0206】
【表1】
【0207】
【表2】
【0208】
上記表1および2より、本発明の積層体は、積層体に光が入射した場合に白表示状態および黒表示状態を切り替えられ、正面および全方位での黒表示状態の輝度が低いことがわかった。また、本発明の積層体の好ましい態様では、正面での白表示状態および黒表示状態の色味も良好であることがわかった。
一方、比較例1〜4より、光学異方性層を有さない場合、全方位での黒表示状態の輝度を低くできないこと、すなわち黒表示状態を観察する方位によって光漏れが多く発生する方位があることがわかった。
【符号の説明】
【0209】
1 正面方向
2 斜めon−axis方向
3 斜めoff−axis方向
12 第1の偏光子
12A 第1の偏光子の吸収軸
13 第2の偏光子
13A 第2の偏光子の吸収軸
13B 第2の偏光子の透過軸
15 第1のパターン光学異方性層
15A 第1のパターン光学異方性層の遅相軸方位
16 第2のパターン光学異方性層
16A 第2のパターン光学異方性層の遅相軸方位
17 光学異方性層
17A 光学異方性層の遅相軸方位
S1 ストークスパラメーター1:0,90度の直線偏光成分
S2 ストークスパラメーター2:45,135度の直線偏光成分
S3 ストークスパラメーター3:円偏光成分
R 赤色光
G 緑色光
B 青色光
図1
図2
図3
図4
図5
図6