(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一部が重なり合った状態で束ねられた薬剤シートの束を撮像した複数の撮像画像を取得する画像取得部であって、前記薬剤シートの束を構成する全ての薬剤シートについて、各々の薬剤シートの少なくとも一部を含む前記複数の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記複数の撮像画像のうちの少なくとも一つの撮像画像から薬剤種別を特定する薬剤種別特定部と、
前記複数の撮像画像から前記薬剤シートの束を構成する各々の前記薬剤シートの外縁の情報を抽出する外縁情報抽出部と、
前記薬剤シートの前記外縁の情報に基づき、前記薬剤シートの枚数を計数する枚数計数部と、
前記薬剤シートの前記外縁の情報に基づき、前記薬剤シートの束の最外表部に存在する薬剤シート片を最表層シートとして特定する最表層シート特定部と、
前記最表層シートの中の薬剤数を計数する第1の薬剤計数部と、
を備える薬剤検査装置。
前記シート薬剤数取得部は、薬剤の種別ごとにそれぞれの切り取られていない薬剤シートの1枚あたりの薬剤数が記録されている薬剤情報データベースから、前記薬剤種別特定部で特定した前記薬剤種別の切り取られていない薬剤シートの1枚あたりの薬剤数を取得する請求項2に記載の薬剤検査装置。
前記シート薬剤数取得部は、前記薬剤シートの前記外縁の情報と前記最表層シートの中の薬剤数に基づき、切り取られていない薬剤シート1枚に内包される薬剤数を取得する請求項2に記載の薬剤検査装置。
前記薬剤種別特定部により特定された前記薬剤種別と前記第2の薬剤計数部により得られた薬剤総数を、前記薬剤シートの束に対応する調剤情報と照合する照合部を備える請求項2から4のいずれか一項に記載の薬剤検査装置。
前記外縁情報抽出部は、前記複数の撮像画像から得られる前記立体情報に基づき前記薬剤シートの束において重なり合う前記薬剤シートの互いの位置関係を検出し、前記薬剤シートの互いの位置関係に基づき各々の前記薬剤シートの外縁の情報を抽出する請求項7又は8に記載の薬剤検査装置。
前記画像取得部は、環状の弾性体で結束された前記薬剤シートの束が扇状に広げられた状態で前記薬剤シートの重ね方向の両面を撮像した前記複数の撮像画像を取得する請求項1から11のいずれか一項に記載の薬剤検査装置。
前記枚数計数部は、前記外縁情報抽出部によって抽出される前記薬剤シートの前記外縁の交差に基づいて、前記薬剤シートの枚数を計数する請求項1から12のいずれか一項に記載の薬剤検査装置。
前記最表層シート特定部は、前記外縁情報抽出部により抽出された各々の前記薬剤シートの外縁のうち、外縁が全周にわたって抽出されている薬剤シートを前記最表層シートとして特定する請求項1から13のいずれか一項に記載の薬剤検査装置。
前記薬剤種別特定部は、前記薬剤シートの包装体に記載されている薬剤の種別を示す文字列、識別コード、及び、包装されている薬剤に印刷又は刻印されている文字列のいずれかの識別情報を前記撮像画像から抽出し、前記識別情報に基づき前記薬剤種別を特定する請求項1から14のいずれか一項に記載の薬剤検査装置。
少なくとも一部が重なり合った状態で束ねられた薬剤シートの束を撮像した複数の撮像画像を取得する画像取得工程であって、前記薬剤シートの束を構成する全ての薬剤シートについて、各々の薬剤シートの少なくとも一部を含む前記複数の撮像画像を取得する画像取得工程と、
前記複数の撮像画像のうちの少なくとも一つの撮像画像から薬剤種別を特定する薬剤種別特定工程と、
前記複数の撮像画像から前記薬剤シートの束を構成する各々の前記薬剤シートの外縁の情報を抽出する外縁情報抽出工程と、
前記薬剤シートの前記外縁の情報に基づき、前記薬剤シートの枚数を計数する枚数計数工程と、
前記薬剤シートの前記外縁の情報に基づき、前記薬剤シートの束の最外表部に存在する薬剤シート片を最表層シートとして特定する最表層シート特定工程と、
前記最表層シートの中の薬剤数を計数する第1の薬剤計数工程と、
を含む薬剤検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2で提案されている従来技術には次のような課題があり、監査の効率化につながっていない。
【0007】
[課題1]PTP包装薬剤は、複数の薬剤シートが重ねられ、輪ゴムなどで束ねられていることが多く、調剤監査のためには各薬剤シートをバラバラにする必要がある。
【0008】
[課題2]従来の調剤監査支援装置では、錠数などの薬剤数を検出できないため、別途重量計測や人手による計数が必要である。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、簡単な操作で、効率よく、正確な薬剤検査が可能になる薬剤検査装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決するために、次の発明態様を提供する。
【0011】
第1態様に係る薬剤検査装置は、少なくとも一部が重なり合った状態で束ねられた薬剤シートの束を撮像した複数の撮像画像を取得する画像取得部であって、薬剤シートの束を構成する全ての薬剤シートについて、各々の薬剤シートの少なくとも一部を含む複数の撮像画像を取得する画像取得部と、複数の撮像画像のうちの少なくとも一つの撮像画像から薬剤種別を特定する薬剤種別特定部と、複数の撮像画像から薬剤シートの束を構成する各々の薬剤シートの外縁の情報を抽出する外縁情報抽出部と、薬剤シートの外縁の情報に基づき、薬剤シートの枚数を計数する枚数計数部と、薬剤シートの外縁の情報に基づき、薬剤シートの束の最外表部に存在する薬剤シート片を最表層シートとして特定する最表層シート特定部と、最表層シートの中の薬剤数を計数する第1の薬剤計数部と、を備える薬剤検査装置である。
【0012】
「薬剤シート」とは、薬剤が包装体に包装されているシートである。薬剤シートの代表的な例として、PTP包装された薬剤シートを挙げることができる。
【0013】
画像取得部で取得する複数の撮像画像の中に、薬剤シートの束を構成する全ての薬剤シートについて、各々の薬剤シートの少なくとも一部の画像が含まれていればよく、画像取得部で取得する各々の撮像画像の中に、薬剤シートの束を構成する全ての薬剤シートの少なくとも一部の画像が含まれていることは要求されない。
【0014】
第1態様によれば、薬剤シートの束に含まれている薬剤シートを1枚ずつバラバラに撮像することなく、束の状態でまとめて複数枚の薬剤シートを撮像した複数の撮像画像を基に、薬剤種別と、薬剤シートの枚数と、最表層シートの中の薬剤数とを把握することができる。これにより、簡単な操作で効率よく、薬剤種別と分量を把握でき、正確な薬剤検査が可能となる。
【0015】
第2態様として、第1態様の薬剤検査装置において、切り取られていない薬剤シートの1枚あたりの薬剤数を取得するシート薬剤数取得部と、シート薬剤数取得部にて取得した1枚あたりの薬剤数と枚数計数部の計数結果と最表層シートの中の薬剤数とに基づき、薬剤シートの束の薬剤総数を計数する第2の薬剤計数部と、を備える構成とすることができる。
【0016】
第2態様によれば、束の状態でまとめて複数枚の薬剤シートを撮像した複数の撮像画像を基に、薬剤種別と薬剤総数を把握することができる。
【0017】
「切り取られていない薬剤シート」とは、切り取りが行われていない薬剤シートである。製薬メーカから供給される薬剤シートは、薬剤種別ごとにそれぞれ特定の形態の(つまり、定形の)薬剤シートとなっている。この定形の薬剤シートは、「切り取られていない薬剤シート」である。最表層シートは、切り取られていない薬剤シートである場合と、切り取られた薬剤シート(つまり、定形の薬剤シートの一部分である端数シート)である場合とがあり得る。
【0018】
第3態様として、第2態様の薬剤検査装置において、シート薬剤数取得部は、薬剤の種別ごとにそれぞれの切り取られていない薬剤シートの1枚あたりの薬剤数が記録されている薬剤情報データベースから、薬剤種別特定部で特定した薬剤種別の切り取られていない薬剤シートの1枚あたりの薬剤数を取得する構成とすることができる。
【0019】
切り取られていない薬剤シートの1枚あたりの薬剤数であるシート薬剤数は、薬剤の種別ごとに定められている。薬剤の種別ごとのシート薬剤数を薬剤情報データベースに記録しておくことができる。第3態様によれば、薬剤種別特定部で特定した薬剤種別を基に薬剤情報データベースを参照して、該当するシート薬剤数を取得することができる。
【0020】
第4態様として、第2態様の薬剤検査装置において、シート薬剤数取得部は、薬剤シートの外縁の情報と最表層シートの中の薬剤数に基づき、切り取られていない薬剤シート1枚に内包される薬剤数を取得する構成とすることができる。
【0021】
外縁情報抽出部によって抽出される外縁の情報を基に、最表層シートと最表層シート以外の薬剤シートとの形状の差異を把握することができる。そして、この把握される形状の差異と、最表層シートの中の薬剤数から、切り取られていない薬剤シート1枚に内包される薬剤数を推定することができる。
【0022】
第5態様として、第2態様から第4のいずれか一態様の薬剤検査装置において、薬剤種別特定部により特定された薬剤種別と第2の薬剤計数部により得られた薬剤総数を、薬剤シートの束に対応する調剤情報と照合する照合部を備える構成とすることができる。
【0023】
第6態様として、第5態様の薬剤検査装置において、照合部による照合結果を表示する表示部を備える構成とすることができる。
【0024】
第7態様として、第1態様から第6態様のいずれか一態様の薬剤検査装置において、画像取得部は、薬剤シートの束の立体情報が得られる複数の撮像画像を取得する構成とすることができる。
【0025】
立体情報を利用することで、薬剤シートの束における各々の薬剤シートの位置関係を正確に把握することができ、薬剤シートの枚数をより一層正確に計数することができる。
【0026】
第8態様として、第7態様の薬剤検査装置において、画像取得部は、視差のある複数の視点画像を含む複数の撮像画像を取得する構成とすることができる。
【0027】
第9態様として、第7態様又は第8態様の薬剤検査装置において、外縁情報抽出部は、複数の撮像画像から得られる立体情報に基づき薬剤シートの束において重なり合う薬剤シートの互いの位置関係を検出し、薬剤シートの互いの位置関係に基づき各々の薬剤シートの外縁の情報を抽出する構成とすることができる。
【0028】
第10態様として、第7態様から第9態様のいずれか一態様の薬剤検査装置において、薬剤シートは、薬剤を収容する凸状の収容室を有しており、第1の薬剤計数部は、複数の撮像画像から得られる立体情報に基づき薬剤シートの凹凸情報を取得し、凹凸情報に基づき収容室の数を薬剤数として計数する構成とすることができる。
【0029】
第11態様として、第1態様から第10態様のいずれか一態様の薬剤検査装置において、画像取得部は、薬剤シートの束を複数の方向から撮像した複数の撮像画像を取得する構成とすることができる。
【0030】
第12態様として、第1態様から第11態様のいずれか一態様の薬剤検査装置において、画像取得部は、環状の弾性体で結束された薬剤シートの束が扇状に広げられた状態で薬剤シートの重ね方向の両面を撮像した複数の撮像画像を取得する構成とすることができる。
【0031】
第13態様として、第1態様から第12態様のいずれか一態様の薬剤検査装置において、枚数計数部は、外縁情報抽出部によって抽出される薬剤シートの外縁の交差に基づいて、薬剤シートの枚数を計数する構成とすることができる。
【0032】
第14態様として、第1態様から第13態様のいずれか一態様の薬剤検査装置において、最表層シート特定部は、外縁情報抽出部により抽出された各々の薬剤シートの外縁のうち、外縁が全周にわたって抽出されている薬剤シートを最表層シートとして特定する構成とすることができる。
【0033】
第15態様として、第1態様から第14態様のいずれか一態様の薬剤検査装置において、薬剤種別特定部は、薬剤シートの包装体に記載されている薬剤の種別を示す文字列、識別コード、及び、包装されている薬剤に印刷又は刻印されている文字列のいずれかの識別情報を撮像画像から抽出し、識別情報に基づき薬剤種別を特定する構成とすることができる。
【0034】
第16態様として、第1態様から第15態様のいずれか一態様の薬剤検査装置において、薬剤シートの束を撮像する撮像部を備え、撮像部によって薬剤シートの束を撮像することにより複数の撮像画像が得られる構成とすることができる。
【0035】
第17態様に係る薬剤検査方法は、少なくとも一部が重なり合った状態で束ねられた薬剤シートの束を撮像した複数の撮像画像を取得する画像取得工程であって、薬剤シートの束を構成する全ての薬剤シートについて、各々の薬剤シートの少なくとも一部を含む複数の撮像画像を取得する画像取得工程と、複数の撮像画像のうちの少なくとも一つの撮像画像から薬剤種別を特定する薬剤種別特定工程と、複数の撮像画像から薬剤シートの束を構成する各々の薬剤シートの外縁の情報を抽出する外縁情報抽出工程と、薬剤シートの外縁の情報に基づき、薬剤シートの枚数を計数する枚数計数工程と、薬剤シートの外縁の情報に基づき、薬剤シートの束の最外表部に存在する薬剤シート片を最表層シートとして特定する最表層シート特定工程と、最表層シートの中の薬剤数を計数する第1の薬剤計数工程と、を含む薬剤検査方法である。
【0036】
第17態様において、第2態様から第16態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、薬剤検査装置において特定される処理や機能を担う手段である処理部や機能部等は、これに対応する処理や動作の「工程(ステップ)」の要素として把握することができる。
【0037】
第18態様に係るプログラムは、コンピュータに、少なくとも一部が重なり合った状態で束ねられた薬剤シートの束を撮像した複数の撮像画像を取得する画像取得機能であって、薬剤シートの束を構成する全ての薬剤シートについて、各々の薬剤シートの少なくとも一部を含む複数の撮像画像を取得する画像取得機能と、複数の撮像画像のうちの少なくとも一つの撮像画像から薬剤種別を特定する薬剤種別特定機能と、複数の撮像画像から薬剤シートの束を構成する各々の薬剤シートの外縁の情報を抽出する外縁情報抽出機能と、薬剤シートの外縁の情報に基づき、薬剤シートの枚数を計数する枚数計数機能と、薬剤シートの外縁の情報に基づき、薬剤シートの束の最外表部に存在する薬剤シート片を最表層シートとして特定する最表層シート特定機能と、最表層シートの中の薬剤数を計数する第1の薬剤計数機能を実現させるためのプログラムである。
【0038】
第18態様のプログラムにおいて、第2態様から第13態様で特定した事項と同様の事項を適宜組み合わせることができる。その場合、薬剤検査装置において特定される処理や機能を担う手段である処理部や機能部等は、これに対応する処理や動作を行うプログラムの「機能」の要素として把握することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、薬剤シートの束を撮像した撮像画像から、薬剤種別と分量を把握することができる。これにより、簡易な操作で効率よく、正確な薬剤検査を行うことが可能である。本発明によれば、薬剤師による薬剤監査の負担を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0042】
[薬剤処方作業の概略]
図1は薬剤処方作業の概要を示す説明図である。病院や薬局などで行われる薬剤処方作業は、処方箋入力及び印刷作業11と、ピッキング作業12と、調剤監査作業13と、服薬指導及び処方作業14とを含む。
【0043】
処方箋入力及び印刷作業11では、処方箋16に記載されている調剤情報を基に、薬剤師がレセプトコンピュータ18に調剤情報を入力する。調剤情報には、患者の氏名及び年齢、並びに薬剤の種別、分量、用法及び用量などが含まれる。なお、レセプトコンピュータ18に入力する薬剤の種別は、処方箋に記載された薬剤種別に限らず、これと同一成分かつ同一薬効を有する後発医薬品の薬剤種別であってもよい。薬剤種別は、薬剤を特定するための各薬剤に固有の呼び名である。薬剤種別は、「薬種」という用語と同義である。
【0044】
次いで、薬剤師は、レセプトコンピュータ18を操作して、このレセプトコンピュータ18に接続しているプリンタ19から調剤情報21を出力する。また、レセプトコンピュータ18は、薬剤検査装置30に対して調剤情報22を出力する。
【0045】
ピッキング作業12では、プリンタ19から出力された調剤情報21に基づき、薬剤師が薬剤棚24から調剤情報21の調剤内容に対応する薬剤25をピッキングする。
【0046】
本例における薬剤25は、錠剤又はカプセル剤であり、プレススルーパッケージ(PTP)の包装形態で包装されている。PTP包装薬剤シートである薬剤シート26は、複数個の薬剤25が包装されている。
【0047】
同一薬種の複数枚の薬剤シート26をピッキングした場合には、これら複数枚の薬剤シート26は積層され、輪ゴム27によって束ねられる。積層は、各々の表裏を互い違いに重ねた状態でなされることが多い。輪ゴム27は「環状の弾性体」の一形態である。なお、ピッキング作業12には、例えば、レセプトコンピュータ18に入力された調剤情報に基づき薬剤を自動的にピッキングする自動ピッキング装置を用いてもよい。ピッキングされた薬剤シート26の束をシート束28とよぶ。本明細書において「シート束」という用語は、「薬剤シートの束」を意味する。
【0048】
調剤監査作業13では、薬剤師が薬剤25の薬種や個数が正しいか否か、すなわち、レセプトコンピュータ18に入力された調剤情報に従ったものであるか否か、を確認する調剤監査を行う。本発明の実施形態に係る薬剤検査装置30は、薬剤師による調剤監査の作業を支援する装置であり、薬剤監査支援装置として用いられる。
【0049】
服薬指導及び処方作業14では、薬剤師は、調剤監査後に患者に対する服薬指導、並びに薬剤25の処方を行う。
【0050】
[薬剤検査装置の構成]
本発明の実施形態に係る薬剤検査装置30は、撮像部32と、情報処理装置33と、表示部34と、を備える。
【0051】
撮像部32は、被写体であるシート束28を撮像して被写体の像を電気信号に変換する。本例の撮像部32には、被写体であるシート束28の立体情報を取得可能な立体撮像カメラが用いられている。立体撮像カメラは、複眼カメラ、ステレオカメラ、3Dカメラなどの用語と同義である。3D(スリーディー)は、三次元を表す「three-dimensional」又は「three dimensions」の略語表記である。
【0052】
撮像部32は、第1撮像部32Aと第2撮像部32Bを有する。第1撮像部32Aと第2撮像部32Bのそれぞれによって同じ被写体を異なる視点から撮像することにより、視差を有する複数の視点画像が得られる。視差を有する一組の視点画像から対応点検出を行い、視差から対象物までの距離を求めることができる。
【0053】
情報処理装置33は、例えばパーソナルコンピュータで構成される。情報処理装置33は、レセプトコンピュータ18及び撮像部32並びに表示部34と接続されている。「接続」は、有線接続に限らず、無線接続であってもよい。
【0054】
情報処理装置33は、レセプトコンピュータ18から取得した調剤情報22と、撮像部32にて撮像された画像情報である撮像画像とに基づき、調剤監査の対象となっている薬剤25の薬剤種別と分量(本例の場合は、薬剤数である数量)が正しいかどうかを判定する。情報処理装置33は、薬剤25が正しいと判定しなかった場合に、その旨を示す判定結果を表示部34へ出力する。
【0055】
表示部34は、情報処理装置33から提供された判定結果を表示する。
【0056】
図2は薬剤検査装置30の構成を示すブロック図である。
図2において
図1で説明した要素には同じ符号を付した。
【0057】
撮像部32は、被写体の像を電気信号に変換して被写体に応じた画像情報である撮像画像を生成する。本例の撮像部32は、第1撮像部32Aと第2撮像部32Bのそれぞれから撮像画像が得られる。撮像画像は、電子画像データであり、各画素の信号値がデジタル値で表されたデジタル画像データである。
【0058】
撮像部32にて撮像された撮像画像は情報処理装置33に送られる。
【0059】
情報処理装置33は、画像取得部40と、薬剤種別特定部42と、シート外縁認識部44と、枚数計数部46と、最表層シート特定部48と、端数計数部50と、シート薬剤数取得部51と、薬剤総数計数部52と、照合部54と、情報出力部56と、を備える。なお、これらの各部の機能はコンピュータのハードウエア及びソフトウエアの組み合わせによって実現される。シート外縁認識部44は「外縁情報抽出部」の一形態に相当する。端数計数部50は「第1の薬剤計数部」の一形態に相当する。薬剤総数計数部52は「第2の薬剤計数部」の一形態に相当する。
【0060】
画像取得部40は、撮像部32によって撮像された撮像画像を取得する手段である。画像取得部40は、撮像部32から撮像画像を取り込むデータ入力端子で構成することができる。また、画像取得部40として、有線又は無線の通信インターフェース部を採用してもよい。画像取得部40から取り込まれた撮像画像は、情報処理装置33内のメモリ58に記憶される。メモリ58は、撮像画像を記憶する画像記憶部として機能し、かつ、薬剤種別特定部42やシート外縁認識部44などの処理部の作業用メモリとして機能する。
【0061】
撮像部32によって、シート束28を複数の方向から撮像し、複数の撮像画像を取得する。「複数の方向から撮像」とは、第1撮像部32Aと第2撮像部32Bによってそれぞれが異なる位置からシート束28を撮像することを含む。また、「複数の方向から撮像」とは、シート束28の姿勢や向きを変えて、複数のアングル(視点)から撮像することを含む。
【0062】
本実施形態では、シート束28を構成する全ての薬剤シート26について、各々の薬剤シート26の少なくとも一部の画像情報を取得することを保証するために、シート束28を扇状に広げた状態で、そのおもて側と裏側をそれぞれ撮像する。当該シート束28における「おもて側」とは、薬剤シート26を重ねた積層方向の一方の面である第1面側であり、「裏側」とは薬剤シート26を重ねた積層方向の他方の面(第1面と反対側の面)である第2面側である。
【0063】
画像取得部40は、薬剤シート26の少なくとも一部が重なり合った状態で束ねられたシート束28を撮像して得られる撮像画像を複数取得する。画像取得部40が取得する複数の撮像画像の中に、シート束28を構成する全ての薬剤シート26について、各々の薬剤シートの少なくとも一部が含まれるように撮像部32による撮像が行われる。画像取得部40を通じて撮像画像を取得する機能が「撮像画像取得機能」の一形態に相当する。
【0064】
薬剤種別特定部42は、取得した複数の撮像画像から薬剤の薬剤種別を特定する処理を行う。薬剤種別特定部42は、複数の撮像画像のうちの一部又は全部の撮像画像の全体から文字列及び/又はバーコードを抽出して薬剤種別を特定する。バーコードは識別コードの一形態である。文字列は、薬剤シート26の包装体に記載されている文字であってもよいし、薬剤25上に印刷又は刻印された文字であってもよい。
【0065】
文字列及び/又は識別コードから薬剤種別を特定する場合には、文字列及び/又は識別コードと薬剤種別の対応関係が記述された図示せぬ対応表が参照される。識別コードと薬剤種別の対応表のデータは、薬剤情報データベース60に含まれている構成とすることができる。薬剤種別特定部42の処理機能が「薬剤種別特定機能」の一形態に相当する。
【0066】
シート外縁認識部44は、複数の撮像画像からシート束28における各々の薬剤シート26の外縁の情報を抽出する処理を行う。本例の場合、複数の撮像画像からシート束28の立体情報を取得することができ、立体情報から薬剤シート26の上下関係を把握できる。「上下関係」とは、シート束28における薬剤シート26の積層方向について積み重ねの位置関係である上下関係を意味している。重なり合いにおける手前側が「上」、奥側が「下」に該当する。
【0067】
シート外縁認識部44は、複数の撮像画像から得られるシート束28の立体情報を基に薬剤シート26の互いの位置関係(上下関係)を検出し、検出した位置関係に基づき各々の薬剤シート26の外縁を認識する。外縁の情報は、外周縁の境界線を示す情報であり、輪郭線、境界線、又は外周エッジを示す情報と同義である。シート外縁認識部44は「外縁情報抽出部」の一形態に相当する。シート外縁認識部44の処理機能が「外縁情報抽出機能」の一形態に相当する。
【0068】
枚数計数部46は、シート外縁認識部44によって抽出され薬剤シート26の外縁の情報に基づき、薬剤シート26の枚数を計数する。枚数計数部46は、各々の薬剤シート26の外縁の交差に基づいて、薬剤シートの枚数を計数する。交差している外縁同士は、それぞれ別々の薬剤シートの外縁であると把握することができる。また、外縁に囲まれたシートの表と裏の模様の違いを用いて、第1面と第2面の画像から把握したシート外縁の裏(背後)に完全に重なったシートがあるかどうかを把握することができる。したがって、外縁の交差関係と外縁に囲まれたシートの模様から薬剤シートの枚数を計数することができる。枚数計数部46の処理機能が「枚数計数機能」の一形態に相当する。
【0069】
最表層シート特定部48は、シート外縁認識部44から得られる薬剤シート26の外縁の情報に基づき、シート束28における薬剤シート26の積層方向(重なり方向と同義)の最も外側の最外表部に存在する薬剤シート片である最表層シートを特定する処理を行う。薬剤シート片という用語は、定形の薬剤シートの一部を切り取って定形の薬剤シートの薬剤数よりも少ない薬剤数の薬剤シートの一片、又は、定形の薬剤シートを指す。「定形の薬剤シート」は、製薬メーカから供給される薬剤シートのそのままの形態である。必要な薬剤の調剤数量が定形の薬剤シートの薬剤数の整数倍以外の数量である場合には、端数に相当する薬剤数の薬剤シート片がシート束28の最外表部に配置される。
【0070】
最表層シートは、定形の薬剤シートの薬剤数未満の薬剤数である端数シートであることが想定される。もちろん、調剤数量が定形の薬剤シートの薬剤数の整数倍である場合も想定され、この場合の最表層シートは定形の薬剤シートとなる。
【0071】
最表層シート特定部48は、シート外縁認識部44にて検出される薬剤シート26の互いの位置関係を基に、最表層シートを特定する。また、最表層シート特定部48は、シート外縁認識部44により抽出された各々の薬剤シート26の外縁のうち、外縁が全周にわたって抽出されている薬剤シートを最表層シートとして特定することができる。
【0072】
「外周が全周にわたって抽出されている」とは、他の薬剤シート26の外縁との交差によって外縁が途切れていないことを意味する。「全周」は外縁が厳密に閉曲線であることに限定されず、輪ゴム27によって外縁の一部が隠れたり、或いは、シート束28を持つ薬剤師の手によって外縁の一部が隠れたりする場合なども、他の薬剤シート26の存在によって外縁が途切れるものではい限り、「全周」の概念に含まれる。最表層シート特定部48は、外縁の交差がない薬剤シートを最表層シートとして認識する。
【0073】
最表層シート特定部48の処理機能が「最表層シート特定機能」の一形態に相当する。
【0074】
端数計数部50は、最表層シートの中の薬剤数を計数する処理部である。端数計数部50は、撮像画像から画像認識によって薬剤数を認識する。薬剤シート26は、薬剤25を収容する凸状の収容室を有している。端数計数部50は、複数の撮像画像から得られる立体情報に基づき最表層シートの凹凸情報を取得し、取得した凹凸情報に基づき収容室の凸部の数を、当該最表層シート内の薬剤数として計数する。端数計数部50は「第1の薬剤計数部」の一形態に相当する。端数計数部50の処理機能は「第1の薬剤計数機能」の一形態に相当する。
【0075】
シート薬剤数取得部51は、切り取られていない薬剤シートの1枚あたりの薬剤数を取得する処理を行う。本例のシート薬剤数取得部51は、薬剤種別特定部42によって特定した薬剤種別を基に、薬剤情報データベース60を参照して、切り取られていない薬剤シート26の1枚あたりの薬剤数の情報を得る。シート薬剤数取得部51の処理機能は「シート薬剤数取得機能」の一形態に相当する。
【0076】
薬剤情報データベース60は、複数種類の薬剤の種別ごとにそれぞれの定形の(切り取られていない)薬剤シートの1枚あたりの薬剤数が記録されているデータベースである。
【0077】
薬剤総数計数部52は、薬剤種別特定部42による特定結果である薬剤種別と、枚数計数部46の計数結果である枚数と、端数計数部50の計数結果である最表層シートの中の薬剤数とに基づき、シート束28の薬剤総数を計数する処理を行う。シート束28の薬剤総数とは、シート束28に含まれている全薬剤の数である。
【0078】
薬剤総数計数部52は、シート薬剤数取得部51にて取得したシート薬剤数(切り取られていない薬剤シート26の1枚あたりの薬剤数)の情報を得る。
【0079】
薬剤総数計数部52における薬剤総数の算出方法は、例えば、シート束28における最表層シートを除く薬剤シート26の枚数をk枚、薬剤情報データベース60から取得される1枚あたりの薬剤数をa個、端数計数部50から得られる最表層シートの薬剤数をb個、薬剤総数をs個とする場合、s=a×k+bの式にしたがって薬剤総数を求めることができる。なお、k、a、bは、いずれも1以上の整数を表す。なお、枚数計数部46は最表層シートを含む薬剤シートの全枚数を計数してもよいし、最表層シートを除く薬剤シートの枚数を計数してもよい。
【0080】
薬剤総数計数部52は「第2の薬剤計数部」の一形態である。薬剤総数計数部52の処理機能が「第2の薬剤計数機能」の一形態に相当する。薬剤総数計数部52で求めた薬剤総数の情報は照合部54に送られる。
【0081】
照合部54は、薬剤種別特定部42により特定された薬剤種別と薬剤総数計数部52により得られた薬剤総数を、調剤情報22と照合する処理を行う。調剤情報22は、レセプトコンピュータ18(
図1参照)から情報処理装置33に提供される。
【0082】
情報出力部56は、照合部54による照合結果の情報を外部に出力するための出力インターフェース部である。本例の情報出力部56は、表示部34に対する表示用の信号を生成する処理を行う表示制御回路と、表示部34に対する表示用の信号の出力端子とを含む。照合部54による照合結果は情報出力部56を介して表示部34に出力される。
【0083】
[薬剤シートの例]
図3は薬剤シート26の一例を示す斜視図である。
図3に示す薬剤シート26は、錠剤である薬剤25が包装されたPTP包装薬剤シートである。1枚の薬剤シート26には複数個(
図3の例では10個)の薬剤25が包装されている。1枚あたりの薬剤数は、10個に限らず、薬剤の種別によって、7個、14個、20個など様々な形態があり得る。
【0084】
薬剤シート26は、薬剤25が収容される凸状の収容部70を有する。収容部70は、その縦断面が半円形又は半楕円形若しくは概ねこれらに類する形状を有するドーム状の凸部となっている。収容部70は薬剤シート26の片側の面のみに設けられている。薬剤シート26において収容部70が設けられている片側の面を、薬剤シート26の「おもて面」と呼び、収容部70と反対側の面を、薬剤シート26の「裏面」と呼ぶ。
【0085】
図4(A)は薬剤シート26のおもて面の平面図であり、
図4(B)は薬剤シート26の裏面の平面図である。
図4(A)(B)に示したように、薬剤シート26の包装体72には、薬剤種別を示す文字列74、76と、バーコード78が記載されている。なお、文字列74、76やバーコード78の配置形態は図示の例に限定されず、様々な形態があり得る。
図4(A)(B)に示した例では、薬剤シート26のおもて面の複数箇所に文字列74が記載され、裏面の複数箇所に文字列76が記載されているが、文字列74、76は、おもて面と裏面の少なくとも一方の面に少なくとも一つ記載されていればよい。
【0086】
また、本例のバーコード78は薬剤シート26の裏面のみに記載されているが、バーコード78は、薬剤シート26のおもて面に記載されていてもよい。また、薬種によっては、薬剤シート26のおもて面と裏面の両面にバーコード78が記載されていている場合もあり得る。また、薬種によっては、薬剤シート26にバーコード78が記載されていない場合もあり得る。
【0087】
なお、
図4(A)(B)には示されていないが、薬剤25自体に薬種を示す文字が印刷又は刻印されている場合がある。
【0088】
図5は複数枚の薬剤シート26を束ねたシート束28の例を示す斜視図である。複数枚の薬剤シート26は、互いにおもて面同士、又は裏面同士を向かい合わせて積層された状態で輪ゴム27によって束ねられている。
図5において、最上層である最外表部に存在する最表層シート26Tは端数シートとなっている。なお、薬剤25は錠剤に限らずカプセル剤であってもよい。
【0089】
図6はカプセル剤の薬剤シートの例を示す斜視図である。
図6において、
図3で説明と同一又は類似する要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図6において、図示の便宜上、包装体72に記載されている文字列等の記載は省略した。
【0090】
図7は撮像部32によってシート束28を撮像する際のシート束28の状態の例を示す図である。本例では、シート束28を輪ゴム27で結束したまま、
図7に示すように、薬剤シート26を扇状に広げた状態で、おもて側と裏側の両面を撮像する。扇状とは、複数枚の薬剤シート26における長手方向の一方の端部付近を中心にして、複数枚の薬剤シート26を概ね円弧状に拡開して薬剤シート26同士をシート面方向にずらした状態を指している。薬剤師が自らの手でシート束28を
図7のように扇状に広げてもよいし、図示せぬ機械的な装置を用いて、
図7のような状態を実現してもよい。
【0091】
図7のように薬剤シート26を互いにシート面方向に少しずつずらして拡開した状態とすることにより、異種シートの混在の有無や枚数の欠落を確認しやすい。
【0092】
図8は扇状に広げたシート束28のおもて側から撮像した撮像画像81の例であり、
図9はシート束の裏側から撮像した撮像画像82の例である。なお、図示の便宜上、シート束28を持つ手の画像要素は省略した。ここでは、端数シートである薬剤シート(最表層シート26T)が最上層に配置される側から見た面をおもて側の面としている。また、
図8及び
図9では、図示を簡単にするために、
図5よりも薬剤シート26の枚数を減らして描いた。
【0093】
図8及び
図9に示したように、シート束28の両面を撮像して、おもて側と裏側のそれぞれの撮像画像81、82を取得することにより、シート束28に含まれる全ての薬剤シート26の各々の少なくとも一部の画像情報を得ることが可能である。このような撮像画像81、82から薬剤シート26の各々の外縁84の情報を抽出して、外縁情報を基に薬剤シート26の枚数が把握される。
【0094】
[薬剤検査方法の手順]
図10は薬剤検査装置30を用いた薬剤検査方法の手順を示すフローチャートである。薬剤検査方法は調剤監査支援方法として用いることができる。
図10のフローチャートは、薬剤検査装置30における処理の手順を示す。
【0095】
まず、薬剤シート26のシート束28の撮像画像を取得する(ステップS12)。ステップS12では、
図7から
図9で説明したように、シート束28を構成する全ての薬剤シート26について、各々の薬剤シート26の少なくとも一部が含まれるように撮像した複数の撮像画像を取得する。ステップS12は「画像取得工程」の一形態に相当する。
【0096】
次いで、撮像画像から薬剤種別を特定する(ステップS14)。ステップS14では、ステップS12で取得した複数の撮像画像のうちの少なくとも一つの撮像画像から文字列74、76及び/又はバーコード78を認識して薬剤種別を特定する処理を行う。ステップS14の処理は、
図2の薬剤種別特定部42によって行われる。ステップS14は「薬剤種別特定工程」の一形態に相当する。
【0097】
仮に、シート束28の中に異なる薬種の薬剤シート26が混在していた場合は、ステップS14において、複数の薬剤種別が検出されることも想定される。異種シートの混在の有無は薬剤師が目視で確認することが期待されるが、本実施形態の薬剤検査装置30では、撮像画像から複数の薬剤種別が検出された場合に、異種シートが混在していると判断してその旨を報知する警告が出力される。
【0098】
すなわち、ステップS16では、異なる薬剤種別の薬剤シート26が混在しているか否かの判定を行い、異種シートが混在していると判定した場合は、その旨の警告を出力する(ステップS18)。警告の出力方法は、表示部34への警告表示の他、これと組み合わせて音声による報知を行ってもよい。
【0099】
ステップS16にて異なる薬剤種別の薬剤シートが混在していないと判定された場合は、ステップS20に進む。ステップS20では撮像画像から薬剤シート26の外縁84の情報を抽出する。ステップS20の処理は、
図2のシート外縁認識部44によって行われる。ステップS20は「外縁情報抽出工程」の一形態に相当する。
【0100】
次いで、薬剤シート26の外縁84の情報を基に、薬剤シート26の枚数を計数する(ステップS22)。ステップS22の処理は
図2の枚数計数部46によって行われる。ステップS22は「枚数計数工程」の一形態に相当する。
【0101】
また、薬剤シート26の外縁の情報を基に、最表層シート26Tを特定する(ステップS24)。ステップS24の処理は
図2の最表層シート特定部48によって行われる。ステップS24は「最表層シート特定工程」の一形態に相当する。なお、ステップS22とステップS24の処理の順番は入れ替えることができる。
【0102】
次いで、最表層シート26Tの薬剤数を計数する(ステップS26)。ステップS26の処理は
図2の端数計数部50によって行われる。ステップS26の処理は「第1の薬剤計数工程」の一形態に相当する。
【0103】
その一方で、ステップS14で特定された薬剤種別を基に薬剤情報データベース60を参照し、当該特定された薬剤種別に係る定形の薬剤シート26における1枚あたりの薬剤数を取得する(ステップS28)。ステップS28の処理は「シート薬剤数取得工程」の一形態に相当する。そして、ステップS28で取得される1枚あたりの薬剤数と、ステップS22にて把握される薬剤シート26の枚数と、ステップS22にて把握される最表層シート26Tの薬剤数とを基に、シート束28の薬剤総数を計数する(ステップS30)。ステップS28及びステップS30の処理は
図2の薬剤総数計数部52によって行われる。ステップS30は「第2の薬剤計数工程」の一形態に相当する。なお、ステップS28の処理順番は、ステップS30の直前に限らず、ステップS14以降かつステップS30の前までの適宜のタイミングで実施することができる。
【0104】
次いで、ステップS14で特定された薬剤種別とステップS30にて得られた薬剤総数をレセプトコンピュータ18の調剤情報22と照合する(ステップS32)。ステップS32の処理は
図2の照合部54によって行われる。
【0105】
そして、ステップS32の照合結果を出力する(ステップS34)。ステップS34の処理は
図56の情報出力部56を通じて行われる。照合結果の出力に際しては、薬剤数の過不足など、調剤情報22と不一致である場合に限り、不一致である旨を知らせる情報を出力してもよいし、調剤情報22と合致する場合にも合致する旨を知らせる情報を出力してもよい。ステップS34による照合結果の出力やステップS18の警告出力によって、薬剤師等のユーザに対して調剤の誤りに関する注意を喚起することができる。
【0106】
[薬剤検査装置の各種形態について]
<変形例1>
薬剤検査装置30は、
図1で説明したコンピュータシステムによって実現する形態に限らず、眼鏡型(ゴーグル型)のヘッドマウントディスプレイ方式によるウエアラブル端末によって実現する形態とすることが可能である。かかる形態によれば、拡張現実(AR:Augmented Reality)による調剤監査支援が可能である。
【0107】
<変形例2>
図2では、情報処理装置33が薬剤情報データベース60を備えている形態を示したが、薬剤情報データベース60は情報処理装置33の外部に設置されてもよい。例えば、薬剤情報データベース60は、レセプトコンピュータ18に保持されていてもよい。また、薬剤情報データベース60は、図示せぬ他のコンピュータに保持されていてもよく、情報処理装置33がネットワーク経由で薬剤情報データベース60から情報を取得する形態も可能である。薬剤情報データベース60を保持する「外部の装置」として、例えば、図示せぬネットワークに接続されたサーバとすることができる。ネットワークは、ローカルエリアネットワーク、若しくはワイドエリアネットワーク、又はこれらの組み合わせとすることができる。
【0108】
<変形例3>
図2で説明したシート薬剤数取得部51は薬剤情報データベース60からシート薬剤数を取得する例を述べたが、かかる形態に限らない。他の形態として、シート薬剤数取得部51は、シート外縁認識部44から得られる薬剤シートの外縁の情報と、端数計数部50から得られる最表層シートの中の薬剤数に基づき、切り取られていない薬剤シート1枚に内包される薬剤数を取得してもよい。例えば、シート薬剤数取得部51は、シート外縁認識部44から得られる各薬剤シートの外縁の情報から、最表層シート26Tと、それ以外の薬剤シート26(切り取られていない薬剤シート)の形状の差異を把握し、最表層シート26Tとそれ以外の薬剤シート26のシート面積の比率と、最表層シート26T上の薬剤数から、切り取られていない薬剤シート1枚に内包される薬剤数を推定する演算を行うことにより、シート薬剤数を取得する構成とすることができる。
【0109】
<変形例4>
立体情報を取得する手段として、上述に例示した立体撮像カメラを用いる形態に限らず、例えば、次のような手段を採用することも可能である。
【0110】
すなわち、被写体である対象物に対してライン状の照明光を斜め方向から照射し、その反射光をカメラで捉える。対象物に凹凸があると、その凸部分の高さに応じてライン照明光の光があたる位置が変わるため、対象物に対してライン照明光の照射位置を移動させて対象物を走査し、その反射光を、対象物に正対するカメラで撮像することにより、凸部分(膨らみ部)の形状を反映した反射画像が得られる。このようにして撮像される画像も「撮像画像」の一形態であり、かかる撮像画像を含む「複数の撮像画像」を基に、薬剤シート26の枚数や最表層シートを認識することができる。
【0111】
<変形例5>
立体情報を取得する他の手段として、TOF(Time of Flight:光飛行時間)方式による距離画像取得を用いる形態も可能である。TOF方式は、対象物に対して赤外光を照射し、対象物からの反射光を受光することにより、受光した反射光の位相を基に、対象物上の各位置までの距離情報を取得することができる。TOF方式カメラによって対象物の各位置の距離に対応した画像情報を得ることが「撮像」の概念に含まれる。TOF方式カメラは「撮像部」の一形態であり、TOF方式カメラによって得られる画像情報は「撮像画像」の一形態である。
【0112】
<変形例6>
撮像部32は、立体情報を取得できる手段を採用することが好ましいが、必ずしも立体情報を取得できるものに限らない。平面画像であっても、外縁の交差関係から、薬剤シートの重なり方向の位置関係を把握することができる。これを利用することで撮像画像から薬剤シートの枚数を把握することができ、かつ、最表層シートを特定することができる。
【0113】
<変形例7>
撮像部32は静止画のデータを生成するものに限らず、動画のデータを生成するものであってもよい。動画のデータから静止画のデータを取り出す技術は周知であり、動画のデータから得られる画像情報も「撮像画像」の一形態に該当する。
【0114】
<変形例8>
上述の実施形態では、一つの撮像部32によって、シート束28のおもて側と裏面側の両面を2回の撮像に分けて撮像する例を説明したが、発明の実施に際しては、かかる形態に限らず、シート束28のおもて側を撮像する撮像部と、シート束28の裏側を撮像する撮像部とをそれぞれ別々に設け、両面を同時に撮像して、それぞれの撮像画像を取得する形態も可能である。
【0115】
<変形例9>
図7では、シート束28を扇状に広げた状態で撮像する例を説明したが、撮像時におけるシート束の状態は、
図7で説明した例に限らない。発明の実施に際しては、シート束の薬剤シートの各々を1枚ずつバラバラに撮像するのではなく、シート束の状態で撮像を行い、薬剤シートの包装体に記載されている文字列、識別コード、及び、薬剤に印刷又は刻印されている文字列のいずれかの識別情報を撮像画像から抽出できること、並びに、シート束に含まれる全ての薬剤シートの枚数を正しく数えるために、全ての薬剤シートについて、各々の薬剤シートの少なくとも一部が撮像されていることが要求される。かかる条件を満たす範囲で、撮像時におけるシート束の具体的な状態は適宜変更可能である。
【0116】
例えば、
図11の斜視図に示すような視点からシート束28を撮像すると、シート束28を拡開せずに、全ての薬剤シート26の少なくとも一部を撮像することができる場合がある。発明の実施に際して、シート束を拡開した状態で撮像することは必ずしも必要とされない。ただし、より正確な検査のためには、撮影する方向を変えて、複数の撮像画像を取得することが好ましく、特に、
図7のように、薬剤シート26の重なり位置をずらした状態で撮像することが好ましい。
【0117】
なお、
図7では、シート束28における全ての薬剤シート26を互いにシート面方向に少しずつずらして拡開した状態を示したが、一部の薬剤シート26同士が完全に重なっている場合もあり得る。例えば、最表層シート26Tは、2枚目のシートに完全に重なっている場合もあり得る。このような場合でも、おもて側と裏側の両面を撮像してそれぞれの撮像画像を取得することにより、シート束28を構成する全ての薬剤シートについて、各々の薬剤シートの画像情報を得ることができる。
【0118】
<変形例10>
上述した実施形態は、シート束28における薬剤総数を計数して、調剤情報22と照合する例を述べたが、薬剤検査装置の形態はこの例に限らない。他の形態の薬剤検査装置として、端数計数部50にて計数した最表層シートの薬剤数の情報と、枚数計数部46にて計数した薬剤シートの枚数の情報を提供する装置も可能である。最表層シートの薬剤数と枚数の情報を基に、分量の正誤を判断することが可能である。
【0119】
<変形例11>
上述した実施形態は、撮像部32と、情報処理装置33と、表示部34とを備えた薬剤検査装置30のシステム形態を説明したが、撮像部32及び表示部34の具備の有無によらず、情報処理装置33の部分を本発明の「薬剤検査装置」の一形態として把握することができる。また、情報処理装置33の処理機能は、一台のコンピュータで実現する形態に限らず、複数台のコンピュータで処理の機能を分担し、複数台のコンピュータの組み合わせによって情報処理装置33の処理機能を実現する形態も可能である。
【0120】
<コンピュータを薬剤検査装置として機能させるプログラムについて>
上述の実施形態で説明した情報処理装置33の薬剤検査機能をコンピュータに実現させるためのプログラムをCD−ROM(Compact Disc Read-only Memory)や磁気ディスクその他のコンピュータ可読媒体(有体物たる非一時的な情報記憶媒体)に記録し、情報記憶媒体を通じてプログラムを提供することが可能である。このような情報記憶媒体にプログラムを記憶させて提供する態様に代えて、インターネットなどの通信ネットワークを利用してプログラム信号をダウンロードサービスとして提供することも可能である。
【0121】
また、上述の実施形態で説明した薬剤検査機能の一部又は全部をアプリケーションサーバやクラウドコンピューティングによって実現し、ネットワークを通じて処理機能を提供するサービスを行うことも可能である。
【0122】
[実施形態の利点]
上述した本発明の実施形態によれば、次のような利点がある。
【0123】
(1)輪ゴム27で束ねられたシート束28をまとめて撮像した撮像画像を基に、薬剤種別と分量を把握することができる。このため、シート束28の輪ゴム27を外すことなく、また、各薬剤シート26を1枚ずつバラバラにして個々に撮像するという煩雑な作業を行うことなく、簡易な操作で検査を行うことができる。
【0124】
(2)複数枚の薬剤シート26が重なり合った状態から、シート束28に含まれる全薬剤数(薬剤総数)を正確に把握することができる。
【0125】
(3)薬剤種別のみならず分量(数量)についても調剤情報22との整合性を確認することができ、より一層効率のよい薬剤監査が可能である。
【0126】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものでは無く、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。