(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウエーハを保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルが保持するウエーハを研削または研磨する加工具を装着して加工する加工手段と、該保持面に対して垂直方向に該加工手段を移動させる第1の加工送り機構と、該保持面に対して平行方向に該加工手段を移動させる第2の加工送り機構と、該チャックテーブルを該加工手段に対する所定の位置に移動させる移動手段と、該加工手段で該チャックテーブルが保持するウエーハを加工可能にする所定の位置に該チャックテーブルを該移動手段で位置づけたときに、少なくとも該チャックテーブルと該加工具とを囲繞する加工カバーと、を備える加工装置であって、
該加工カバーは、該チャックテーブルを囲繞するケースと、該ケースの上に連結され該加工手段を該第1の加工送り機構と該第2の加工送り機構とによる加工送りを可能にして該加工具を囲繞し、該加工手段の移動に追従して伸縮する伸縮カバーと、を備え、
該ケースは、該チャックテーブルを囲う側板と、該側板から連接される天井板と、該天井板に形成され該第1の加工送り機構による該加工具の出入りと該第2の加工送り機構による該加工具の移動とを可能にする該第2の加工送り機構の加工送り方向を長手方向とする長穴形状の開口部と、を備え、
該伸縮カバーは、該加工手段に連結する第1の連結部と、該開口部に連結する第2の連結部と、該第1の連結部と該第2の連結部とを接続する伸縮手段と、を備え、
該伸縮手段は、弾性を有し内部に空気を充填したリング状のエアバッグで構成される複数の伸縮部と、複数のリング状の補強部とを備え、該伸縮部と該補強部とを該第1の加工送り機構の加工送り方向に交互に積層して構成され、
隣接する複数の伸縮部は、該補強部を介して連結されることを特徴とする加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本実施の形態に係る加工装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る加工カバーが適用される加工装置の斜視図である。なお、本実施の形態では、加工装置として研削研磨装置を例にし、加工手段として研磨手段を例にして説明するが、この構成に限定されない。加工装置は、ウエーハに対して研削加工又は研磨加工を実施可能であれば、どのように構成されてもよい。また、加工手段は、研磨手段に限らず、研削手段で構成してもよい。
【0014】
図1に示すように、研削研磨装置1は、フルオートタイプの加工装置であり、ウエーハWに対して搬入処理、粗研削加工、仕上げ研削加工、研磨加工、洗浄処理、搬出処理からなる一連の作業を全自動で実施するように構成されている。ウエーハWは、略円板状に形成されており、カセットCに収容された状態で研削研磨装置1に搬入される。なお、ウエーハWは、研削対象及び研磨対象になる板状のワークであればよく、シリコン、ガリウムヒ素等の半導体基板でもよいし、セラミック、ガラス、サファイア等の無機材料基板でもよいし、さらに半導体製品のパッケージ基板等でもよい。
【0015】
研削研磨装置1の基台11の前側には、複数のウエーハWが収容された一対のカセットCが載置されている。一対のカセットCの後方には、カセットCに対してウエーハWを出し入れするカセットロボット16が設けられている。カセットロボット16の両斜め後方には、加工前のウエーハWを位置決めする位置決め機構21と、加工済みのウエーハWを洗浄する洗浄機構26とが設けられている。位置決め機構21と洗浄機構26の間には、加工前のウエーハWをチャックテーブル42に搬入する搬入手段31と、チャックテーブル42から加工済みのウエーハWを搬出する搬出手段36とが設けられている。
【0016】
カセットロボット16は、多節リンクからなるロボットアーム17の先端にハンド部18を設けて構成されている。カセットロボット16では、カセットCから位置決め機構21に加工前のウエーハWが搬送される他、洗浄機構26からカセットCに加工済みのウエーハWが搬送される。位置決め機構21は、仮置きテーブル22の周囲に、仮置きテーブル22の中心に対して進退可能な複数の位置決めピン23を配置して構成される。位置決め機構21では、仮置きテーブル22上に載置されたウエーハWの外周縁に複数の位置決めピン23が突き当てられることで、ウエーハWの中心が仮置きテーブル22の中心に位置決めされる。
【0017】
搬入手段31は、基台11上で旋回可能な搬入アーム32の先端に搬入パッド33を設けて構成される。搬入手段31では、搬入パッド33によって仮置きテーブル22からウエーハWが持ち上げられ、搬入アーム32によって搬入パッド33が旋回されることでチャックテーブル42にウエーハWが搬入される。搬出手段36は、基台11上で旋回可能な搬出アーム37の先端に搬出パッド38を設けて構成される。搬出手段36では、搬出パッド38によってチャックテーブル42からウエーハWが持ち上げられ、搬出アーム37によって搬出パッド38が旋回されることでチャックテーブル42からウエーハWが搬出される。
【0018】
洗浄機構26は、スピンナーテーブル27に向けて洗浄水及び乾燥エアーを噴射する各種ノズル(不図示)を設けて構成される。洗浄機構26では、ウエーハWを保持したスピンナーテーブル27が基台11内に降下され、基台11内で洗浄水が噴射されてウエーハWがスピンナー洗浄された後、乾燥エアーが吹き付けられてウエーハWが乾燥される。搬入手段31及び搬出手段36の後方には、4つのチャックテーブル42が周方向に均等間隔で配置されたターンテーブル41が設けられている。各チャックテーブル42の上面には、ウエーハWの下面を保持する保持面43が形成されている。また、各チャックテーブル42は、基台11に設けられた回転手段(不図示)によって回転可能に構成されている。
【0019】
ターンテーブル41が90度間隔で間欠回転することで、ウエーハWが搬入及び搬出される搬入出位置、粗研削手段46に対峙する粗研削位置、仕上げ研削手段51に対峙する仕上げ研削位置、研磨手段56に対峙する研磨位置に順に位置付けられる。このように、ターンテーブル41は、チャックテーブル42を粗研削手段46、仕上げ研削手段51、研磨手段56に対する所定の位置に移動させる移動手段を構成する。粗研削位置では、粗研削手段46によってウエーハWが所定の厚みまで粗研削される。仕上げ研削位置では、仕上げ研削手段51によってウエーハWが仕上げ厚みまで仕上げ研削される。研磨位置では、研磨手段56によってウエーハWが研磨される。
【0020】
ターンテーブル41の周囲には、コラム12、13、14が立設されている。コラム12には、粗研削手段46を上下動させる移動機構61が設けられている。移動機構61は、コラム12の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール62と、一対のガイドレール62にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル63とを有している。Z軸テーブル63の前面には、ハウジング64を介して粗研削手段46が支持されている。Z軸テーブル63の背面側にはボールネジ65が螺合されており、ボールネジ65の一端には駆動モータ66が連結されている。駆動モータ66によってボールネジ65が回転駆動され、粗研削手段46がガイドレール62に沿ってZ軸方向に移動される。
【0021】
同様に、コラム13には、仕上げ研削手段51を上下動させる移動機構71が設けられている。移動機構71は、コラム13の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール72と、一対のガイドレール72にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル73とを有している。Z軸テーブル73の前面には、ハウジング74を介して仕上げ研削手段51が支持されている。Z軸テーブル73の背面側にはボールネジ75が螺合されており、ボールネジ75の一端には駆動モータ76が連結されている。駆動モータ76によってボールネジ75が回転駆動され、仕上げ研削手段51がガイドレール72に沿ってZ軸方向に移動される。
【0022】
粗研削手段46及び仕上げ研削手段51は、円筒状のスピンドルの下端にマウント47、52を設けて構成されている。粗研削手段46のマウント47の下面には、複数の粗研削砥石48が環状に配設された粗研削用の加工具としての研削ホイール49が装着される。粗研削砥石48は、例えば、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドやレジンボンド等の結合剤で固めたダイヤモンド砥石で構成される。また、仕上げ研削手段51のマウント52の下面には、複数の仕上げ研削砥石53が環状に配設された仕上げ研削用の加工具としての研削ホイール54が装着される。仕上げ研削砥石53は、粗研削砥石48よりも粒径が細かい砥粒で形成される。粗研削加工及び仕上げ研削加工ではウエーハWが所定厚みまで薄化される。
【0023】
コラム14には、研磨手段56をウエーハWに対して所定の研磨位置に位置付ける移動機構80が設けられている。移動機構80は、チャックテーブル42の保持面43に対して垂直方向に研磨手段56を移動させる第1の加工送り機構81と、保持面43に対して水平方向に研磨手段56を移動させる第2の加工送り機構82とで構成される。
【0024】
第2の加工送り機構82は、コラム14の前面に配置されたY軸方向に平行な一対のガイドレール83と、一対のガイドレール83にスライド可能に設置されたモータ駆動のY軸テーブル84とを有している。Y軸テーブル84の背面側にはボールネジ(不図示)が螺合されており、ボールネジの一端には駆動モータ85が連結されている。駆動モータ85によってボールネジが回転駆動され、Y軸テーブル84は、ガイドレール83に沿って水平方向(Y軸方向)に移動される。
【0025】
第1の加工送り機構81は、Y軸テーブル84の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール86と、一対のガイドレール86にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル87とを有している。Z軸テーブル87の背面側にはボールネジ(不図示)が螺合されており、ボールネジの一端には駆動モータ88が連結されている。Z軸テーブル87の前面には、ハウジング89を介して研磨手段56が支持されている。駆動モータ88によってボールネジが回転駆動され、研磨手段56は、ガイドレール86に沿って垂直方向(Z軸方向)に移動される。このように、研磨手段56は、第1の加工送り機構81及び第2の加工送り機構82によって、垂直方向及び水平方向に移動される。
【0026】
研磨手段56は、円筒状のスピンドルの下端にマウント57を設けて構成されている。マウント57の下面には発泡材や繊維質等で形成された研磨用の加工具としての研磨パッド58が装着されている。研磨加工では、ウエーハWの上面が僅かに研磨されることで、粗研削加工及び仕上げ研削加工でウエーハWに残された研削ダメージが除去される。
【0027】
また、詳細は後述するが、研磨手段56の下方には、研磨位置を区画する加工カバー90が設けられている(
図2参照)。加工カバー90によって研磨パッド58及びチャックテーブル42が囲繞され、加工カバー90内の空間が密閉されることにより、加工によって生じる研磨屑(加工屑)が加工カバー90の外側に流出するのを防止することができる。
【0028】
このような研削研磨装置1では、カセットC内からウエーハWが位置決め機構21に搬送されて、位置決め機構21でウエーハWがセンタリングされる。次に、チャックテーブル42上にウエーハWが搬入され、ターンテーブル41の回転によってウエーハWが粗研削位置、仕上げ研削位置、研磨位置の順に位置付けられる。粗研削位置ではウエーハWが粗研削加工され、仕上げ研削位置ではウエーハWが仕上げ研削加工され、研磨位置ではウエーハWが研磨加工される。そして、洗浄機構26でウエーハWが洗浄され、洗浄機構26からカセットCへウエーハWが搬出される。
【0029】
次に、
図2を参照して、本実施の形態に係る加工カバーについて説明する。
図2は、本実施の形態に係る加工カバーの分解斜視図である。なお、
図2においては、説明の便宜上、研磨手段の周辺構成のみを示しており、一部構成は省略している。
【0030】
先ず、研削研磨装置(研磨手段、チャックテーブル)の動きと加工カバーとの関係について説明する。
図1に示す研削研磨装置1は、ターンテーブル41を間欠回転させることにより、ウエーハWを保持したチャックテーブル42を所定の加工位置に移動させるように構成されている。粗研削加工及び仕上げ研削加工は、粗研削手段46及び仕上げ研削手段51を上下動させるだけで実施されるが、研磨加工においては、研磨手段56の上下動だけでなく、チャックテーブル42に対して研磨手段56を水平方向に移動させる必要がある。研磨パッド58をウエーハWの被研磨面に回転接触させた状態で研磨手段56を水平移動させることにより、ウエーハWの被研磨面を均一に研磨することが可能になる。
【0031】
また、
図1に示す研磨手段56は、いわゆるドライポリッシュタイプの研磨手段であり、研磨加工によって生じる研磨屑は、加工室内に飛散する。そこで、研磨屑が外部に流出するのを防止するために、研磨手段56と研磨位置に位置するチャックテーブル42との間には、研磨パッド58とチャックテーブル42とを囲繞する加工カバー90(
図2参照)が設けられる。上記したように、研磨手段56は、上下動だけでなく水平移動もするため、加工カバー90は、研磨手段56の移動に追従して伸縮する伸縮カバー92(
図2参照)で構成される。これにより、研磨手段56の上下動及び水平移動を可能にしつつ、研磨屑が外部に流出するのを防止することが可能になっている。以下、本実施の形態に係る加工カバー90の構成について説明する。なお、研磨手段56は、ドライポリッシュタイプに限らず、適宜変更が可能である。
【0032】
図2に示すように、研磨手段56の下方には、加工カバー90が設けられている。加工カバー90は、ウエーハW(
図1参照)を保持するチャックテーブル42(
図1参照)がターンテーブル41(
図1参照)によって研磨位置に位置付けられたときに、チャックテーブル42及び研磨パッド58を囲繞する。加工カバー90は、研磨位置に位置付けられたチャックテーブル42を囲繞するケース91と、研磨パッド58を囲繞する伸縮カバー92とを備えている。
【0033】
ケース91は、略直方体状の箱型に形成され、チャックテーブル42を囲う側板93と、側板93の上端に連接される天井板94とを備えている。側板93の一部は切り欠かれており、ターンテーブル41(
図1参照)の間欠回転に応じてチャックテーブル42(
図1参照)がケース91の内外で移動できるように構成されている。天井板94には、第2の加工送り機構82の加工送り方向を長手方向とする長穴形状の開口部94aが形成されている。この開口部94aは、研磨手段56の直下に設けられ、ケース91に対する研磨パッド58の出入り(第1の加工送り機構81による研磨パッド58の上下動)及び水平移動(第2の加工送り機構82による研磨パッド58の水平移動)を可能にする。
【0034】
伸縮カバー92は、ケース91の上に連結され、研磨手段56を第1の加工送り機構81と第2の加工送り機構82とによる加工送り(すなわち、研磨手段56の上下動及び水平移動)を可能にし、研磨手段56の移動に追従して伸縮するように構成される。伸縮カバー92は、研磨手段56に連結される第1の連結部95と、ケース91の開口部94aに連結される第2の連結部96と、第1の連結部95と第2の連結部96とを接続する伸縮手段97とを備えている。第1の連結部95は、研磨パッド58の外径より大きいリング状の金属板で形成され、研磨パッド58より上方でハウジング89の下面に取り付けられる。第2の連結部96は、開口部94aの形状に対応した略楕円リング状の金属板で形成され、第1の連結部95より大きい外径を有している。第2の連結部96は、天井板94の上面に取り付けられる。
【0035】
伸縮手段97は、弾性を有するリング状の伸縮部97aと、リング状に形成される補強部97bとを備えている(
図3参照)。伸縮手段97は、複数の伸縮部97a及び補強部97bを垂直方向(第1の加工送り機構81の加工送り方向)に交互に積層し、伸縮部97aと補強部97bとを接着等により固定して構成される。複数の伸縮部97aは、断面が略円形状で上面視リング状のエアバッグで構成され、内部に空気が充填されている。複数の補強部97bは、金属線等のワイヤによって、隣接する伸縮部97aと略同径に形成される。補強部97bは、伸縮部97aを補強し、伸縮部97aのリング形状を維持する役割を果たす。最上端の伸縮部97aは、リング状の第1の連結部95に連結され、それぞれの伸縮部97a及び補強部97bは、下方に向かうに従って拡径し、最下端の伸縮部97aは、楕円リング状の第2の連結部96に連結される。このように、伸縮カバー92(伸縮手段97)は、上端側の開口部が円形状であるのに対し、下端側の開口部が楕円形状の開口部となるように、上端から下端に向かって段階的に形状が変化するように構成されている。
【0036】
また、伸縮カバー92(伸縮部97a)には、各伸縮部97a内の圧力を調整する圧力調整機構98が設けられている。圧力調整機構98は、例えば、レギュレータやエアー供給源を含んで構成され、伸縮部97a内のエアーを出し入れすることにより、伸縮部97a内の圧力を調整する。研磨手段56の移動(研磨手段56の位置)に応じて各伸縮部97a内の圧力を調整することにより、研磨手段56の移動を妨げることなく、研磨手段56の移動に追従して伸縮カバー92を伸縮させることが可能になる。
【0037】
このように、本実施の形態においては、研磨手段56の移動に応じて伸縮カバー92が変形するので、研磨手段56及びチャックテーブル42は常に加工カバー90に覆われた状態になっている。このため、加工によって生じた研磨屑が加工カバー90から外側に流出することがない。また、研磨手段56の移動に追従して伸縮することで、研磨手段56の移動を妨げることなく、研磨加工によって生じる研磨屑の飛散を防止することが可能になっている。また、詳細は後述するが、伸縮部97aが弾性を有していることにより、伸縮部97aの形状が変化しても、伸縮部97aには復帰力が作用する。このように、伸縮部97aは、復帰力によって元の形状に戻ろうとするため、伸縮部97aが自重によって加工カバー90の内側に落ち込むことがない。この結果、伸縮部97aが加工カバー90内の研磨手段56に接触することがなく、加工カバー90の破損を防止することができる。
【0038】
以下、
図3及び
図4を参照して、本実施の形態に係る加工カバーを適用した研磨手段の動作及び比較例に係る加工カバーを適用した研磨手段の動作について説明する。
図3は、本実施の形態に係る加工カバーが適用される研磨手段の動作図である。
図4は、比較例に係る加工カバーが適用される研磨手段の動作図である。なお、以下の説明においては、ウエーハを保持したチャックテーブルが研磨位置に位置付けられているものとする。また、以下の説明においては、4つの伸縮部を積層して伸縮カバーを構成するが、これに限定されず、3つ以下又は5つ以上の伸縮部を積層してもよい。また、
図4に示す変形例においては、加工カバーが、伸縮カバーの代わりに蛇腹カバーを含んで構成される点で本実施の形態と相違し、加工カバー以外の構成については、本実施の形態と同一の符号を付して説明する。
【0039】
図3Aに示すように、ウエーハWを保持したチャックテーブル42は、ターンテーブル41(
図1参照)の間欠回転によって研磨位置(開口部94aの直下)に位置付けられている。このとき、チャックテーブル42は、ケース91に囲繞された状態になっている。また、研磨手段56は、チャックテーブル42の上方において、研磨パッド58がウエーハWの被研磨面から離間した位置(高さ)に位置付けられる。
【0040】
伸縮カバー92は、第1の連結部95が研磨手段56のハウジング89の下面に取り付けられ、第2の連結部96がケース91の天井板94に取り付けられることにより、研磨パッド58を囲繞する。また、研磨パッド58がウエーハWの被研磨面から離間した位置に位置付けられているため、伸縮カバー92は、垂直方向に引っ張られた状態になっている。
図3Aに示すように、エアバッグで構成される各伸縮部97aは、断面が楕円形状になっている。このとき、第1の連結部95の外周縁と第2の連結部96の外周縁との距離L1は、Y軸方向(第2の加工送り機構82の加工送り方向)の左右で等しくなっている。また、圧力調整機構98(
図2参照)により、各伸縮部97a内の圧力は、適切に調整されている。
【0041】
図3Bに示すように、研磨パッド58を回転させた状態で、研磨手段56が第1の加工送り機構81によって加工送りされると、研磨パッド58の表面がウエーハWの被研磨面に当接し、研磨手段56は、最下位置に位置付けられる。このとき、研磨パッド58は、伸縮カバー92内からケース91内に移動される。また、第1の連結部95と第2の連結部96とが接近されるため、伸縮カバー92は縮み、各伸縮部97aの断面は、
図3Aに示す楕円形状より長軸部分が小さい楕円形状になる。
図3Bにおいては、第1の連結部95の外周縁と第2の連結部96の外周縁との距離L2が、
図3Aに示す距離L1より小さくなっており、Y軸方向(第2の加工送り機構82の加工送り方向)の左右では等しくなっている。また、伸縮カバー92が縮んだことにより、各伸縮部97a内の圧力が上昇するため、圧力調整機構98(
図2参照)は、各伸縮部97a内のエアーを一部排出し、研磨手段56の移動を妨げない程度に伸縮部97a内の圧力を適切に調整する。
【0042】
図3Cに示すように、研磨手段56は、研磨パッド58の研磨面がウエーハWの被研磨面に接触した後、研磨パッド58を回転させながら、第2の加工送り機構82によって水平方向(開口部94aの長手方向)に(
図3Cでは紙面右側に向かって)移動される。このとき、伸縮カバー92は、研磨手段56の移動方向とは反対の方向(
図3Cの紙面左側)では引っ張られるのに対し、研磨手段56の移動方向(
図3Cの紙面右側)では縮められる。
【0043】
また、
図3Cにおいては、紙面左側の各伸縮部97aの断面は、引張方向(図中矢印参照)が長軸となる楕円形状となり、紙面右側の各伸縮部97aの断面は、圧縮方向(図中矢印参照)が短軸となる楕円形状となっている。このとき、紙面左側における第1の連結部95の外周縁と第2の連結部96の外周縁との距離L3に対して、紙面右側における第1の連結部95の外周縁と第2の連結部96の外周縁との距離L4が小さくなっている。また、研磨手段56の移動を妨げない程度に、各伸縮部97a内の圧力が圧力調整機構98(
図2参照)によって調整される。
【0044】
以上のように、
図3Cにおいては、Y軸方向の左右で伸縮カバー92の変形具合が異なっている。しかしながら、上記したように、伸縮部97aは弾性を有しているため、各伸縮部97aの形状が変化しても、各伸縮部97aには、元の形状を維持しようとする復帰力が作用する。また、補強部97bによって伸縮部97aのリング形状が維持されている。これらにより、伸縮カバー92は、
図3Cに示す形状を保持することができ、伸縮部97a(特に最下端の伸縮部97aの右側部分)が自重によってケース91内に落ち込むことがない。この結果、伸縮部97aがケース91内の研磨手段56(マウント57)に接触することがなく、伸縮カバー92の破損を防止することができる。
【0045】
一方、
図4に示す変形例においては、加工カバー100が、チャックテーブル42を囲繞するケース101と、研磨パッド58を囲繞する蛇腹カバー102とを含んで構成される。蛇腹カバー102は、研磨手段56に連結される第1の連結部103と、ケース101の開口部104に連結される第2の連結部105と、第1の連結部103と第2の連結部105とを接続する蛇腹部106とを備えている。蛇腹部106は、複数の谷部107と山部108とを垂直方向に繰り返して積層した折り畳み構造を有している。山部108には、リング状のワイヤ108aが設けられており、蛇腹部106は、ワイヤ108aによって山部108の形状を維持するように補強される。
【0046】
図4A、
図4Bに示すように、チャックテーブル42が研磨位置に位置付けられた後、研磨パッド58を回転させながら研磨手段56を降下させると、蛇腹カバー102は、研磨手段56の移動に追従して伸縮する。そして、
図4Cに示すように、研磨パッド58を回転させながら、研磨手段56を水平方向に(
図4Cでは紙面右側に向かって)移動させると、蛇腹カバー102は、研磨手段56の移動方向とは反対の方向(
図4Cの紙面左側)では引っ張られるのに対し、研磨手段56の移動方向(
図4Cの紙面右側)では縮められる(折り畳まれる)。蛇腹カバー102では、山部108のみがワイヤ108aで補強されているのに対し、谷部107は補強されていないため、紙面右側下方の谷部107が自重によってケース91内に落ち込む。この場合、研磨手段56(マウント57)に谷部107が接触することにより、蛇腹カバー102が破損するおそれがあった。
【0047】
このような比較例に対し、本実施の形態に係る加工カバー90によれば、伸縮カバー92を構成する伸縮部97aが弾性を有しているため、伸縮部97aの形状が変化しても、元の形状を維持しようとする。よって、伸縮部97aが自重によってケース91の内側に落ち込むことがない。この結果、伸縮部97aがケース91内の研磨手段56に接触することがなく、伸縮カバー92の破損を防止することができる。
【0048】
次に、
図5を参照して、変形例に係る加工カバーについて説明する。
図5は、変形例に係る加工カバーが適用される研磨手段の動作図である。
図5に示す変形例では、加工カバー(伸縮カバー)の構成が本実施の形態と相違する。以下、主に相違点について説明し、本実施の形態と同一名称の構成については、同一の符号を付して説明する。
【0049】
図5に示すように、変形例に係る加工カバー200は、チャックテーブル42を囲繞するケース201と、研磨パッド58を囲繞する伸縮カバー202とを備えている。伸縮カバー202は、ケース201の上に連結され、研磨手段56の移動に追従して伸縮するように構成される。伸縮カバー202は、研磨手段56に連結される第1の連結部203と、ケース201の開口部204に連結される第2の連結部205と、第1の連結部203と第2の連結部205とを接続する伸縮手段206とを備えている。伸縮手段206は、弾性を有するリング状の伸縮部206aと、リング状に形成される補強部206bとを備えている。伸縮手段206は、複数の伸縮部206a及び補強部206bを垂直方向(第1の加工送り機構81の加工送り方向)に交互に積層して構成される。
【0050】
複数の伸縮部206aは、断面が略C形状で上面視リング状の樹脂部材で構成される。伸縮部206aは、例えば、可撓性や弾性を有する材料で形成される。複数の補強部206bは、金属線等のワイヤによって、隣接する伸縮部206aと略同径に形成される。補強部206bは、伸縮部206aを補強し、伸縮部206aのリング形状を維持する役割を果たす。上記したように、複数の伸縮部206a及び補強部206bは、垂直方向に交互に積層される。伸縮部206aのC形状の端部で補強部206bを接着等することにより、伸縮部206aと補強部206bとが連結される。最上端の伸縮部206aは、リング状の第1の連結部203に連結され、それぞれの伸縮部206a及び補強部206bは、下方に向かうに従って拡径し、最下端の伸縮部206aは、楕円リング状の第2の連結部205に連結される。このように、伸縮カバー202(伸縮手段206)は、上端側の開口部が円形状であるのに対し、下端側の開口部が楕円形状の開口部となるように、上端から下端に向かって段階的に形状が変化するように構成される。
【0051】
図5A、
図5Bに示すように、チャックテーブル42が研磨位置に位置付けられた後、研磨パッド58を回転させながら研磨手段56を降下させると、伸縮カバー202は、研磨手段56の移動に追従して伸縮する。そして、
図5Cに示すように、研磨パッド58を回転させながら、研磨手段56を水平方向に(
図5Cでは紙面右側に向かって)移動させると、伸縮カバー202は、研磨手段56の移動方向とは反対の方向(
図5Cの紙面左側)では引っ張られるのに対し、研磨手段56の移動方向(
図5Cの紙面右側)では縮められる。
【0052】
このように、
図5Cにおいては、Y軸方向の左右で伸縮カバー202の変形具合が異なっている。しかしながら、上記したように、伸縮部206aは弾性を有しているため、各伸縮部206aの形状が変化しても、各伸縮部206aには、元の形状を維持しようとする復帰力が作用する。また、補強部206bによって伸縮部206aのリング形状が維持されている。これらにより、伸縮カバー202は、
図5Cに示す形状を保持することができ、伸縮部206a(特に右側の伸縮部206a)が自重によってケース201内に落ち込むことがない。この結果、伸縮部206aがケース201内の研磨手段56(マウント57)に接触することがなく、伸縮カバー202の破損を防止することができる。以上のように、変形例に係る加工カバー200においても、研磨加工によって生じる研磨屑の飛散を防止すると共に、伸縮カバー202の破損を防止することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0054】
例えば、上記した実施の形態においては、複数の伸縮部97a(伸縮部206a)を積層して伸縮カバー92(伸縮カバー202)を構成したが、この構成に限定されない。例えば、
図4に示す蛇腹カバー102の内面又は外面に伸縮部97a(伸縮部206a)を取り付けて蛇腹カバー102を支持し、ケースの内側に蛇腹カバー102(の谷部107)が落ち込むのを防止してもよい。
【0055】
また、上記した実施の形態において、伸縮カバー202の伸縮部206aを、C形状の湾曲部分が外側になるように構成したが、この構成に限定されない。C形状の湾曲部分を内側に向けて伸縮部206aを構成してもよい。