(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機層の溶媒を除去すること、前記溶媒除去後のエステル化反応物に有機溶媒を加えること、および得られる溶液に前記アミンを加えることを含む請求項2に記載の製造方法。
前記環構造が、置換基を有していてもよい5〜18員環の脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい5〜18員環の芳香族炭化水素環、または置換基を有していてもよい5〜18員環の芳香族複素環である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
前記モノエステルのオキシカルボニル基が、以下式XI:
【化1】
で表される基であり、
式中、Lは、単結合、または炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示し、
A
2は、単結合、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基を示し、
Spは炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、および
炭素数3から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において
一部の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、または−C(=O)O−、−OC(=O)O−,−C(=O)N(T)−,−N(T)C(=O)−,または−CF
2−で置換された基からなる群から選択される連結基を示し、Tは、水素原子または−Sp−Qを表し、
Qは水素原子、フッ素原子もしくは以下の式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示す請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【化2】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のジカルボン酸モノエステルの製造方法は、従来から、煩雑であることが知られている。例えば、特許文献1および2で開示される製造方法は、カラムクロマトグラフィーを用いた精製や再沈殿、洗浄、乾燥を繰り返す煩雑な精製を行う工程を含む。また、特許文献3〜8に記載の製造方法は、保護および脱保護を繰り返した多段階の製造方法となっている。このため従来のジカルボン酸モノエステルの製造方法では、製造適性の点で不十分であり、さらに、簡便かつ、純度の高い合成法が必要とされていた。
【0005】
上記を鑑み、本発明の課題は、環構造とその環構造に直接置換したカルボキシル基とオキシカルボニル基とを有するジカルボン酸モノエステルを対応するジカルボン酸から製造する方法として、簡便であり、複雑な精製を行わなくても、純度の高い生成物を得ることができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題の解決のために種々検討していたところ、驚くべきことに、極めて単純な方法で、純度の高いジカルボン酸モノエステルを対応するジカルボン酸から製造できることを見出し、この知見に基づきさらに検討を重ね、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の<1>〜<17>を提供するものである。
<1>環構造と上記環構造に直接置換したカルボキシル基と上記環構造に直接置換したオキシカルボニル基とを有するジカルボン酸モノエステルの製造方法であって、
上記環構造と上記環構造に直接置換した2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸のエステル化反応物から上記ジカルボン酸モノエステルをアミン塩として単離することを含む、製造方法。
<2>上記環構造と上記環構造に直接置換した2つのカルボキシル基とを有する上記ジカルボン酸のエステル化反応を行うこと、
上記エステル化反応後のエステル化反応物にアミンを加えること、
上記ジカルボン酸モノエステルのアミン塩を単離すること、
単離したアミン塩を脱塩して、上記ジカルボン酸のモノエステルを得ること
を含む<1>に記載の製造方法。
【0007】
<3>上記アミンを加える前に、
上記エステル化反応後のエステル化反応物を分液工程に付して得られた有機層を無機塩基水溶液で洗浄することを含む
<2>に記載の製造方法。
<4>上記有機層の溶媒を除去すること、上記溶媒除去後のエステル化反応物に有機溶媒を加えること、および得られる溶液に上記アミンを加えることを含む<3>に記載の製造方法。
<5>上記環構造が、置換基を有していてもよい5〜18員環の脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい5〜18員環の芳香族炭化水素環、または置換基を有していてもよい5〜18員環の芳香族複素環である<1>〜<4>のいずれか一項に記載の製造方法。
<6>上記環構造が、置換基を有していてもよい5〜10員環の脂肪族炭化水素環である<5>に記載の製造方法。
<7>上記環構造に直接置換した2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸がトランス−1,4−シクロヘキサジカルボン酸である<6>に記載の製造方法。
<8>上記モノエステルのオキシカルボニル基が、以下式XI:
【0008】
【化1】
【0009】
で表される基であり、
式中、Lは、単結合、または炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示し、
A
2は、単結合、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基を示し、
Spは単結合、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、および炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つまたは2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、または−C(=O)O−、−OC(=O)O−,−C(=O)N(T)−,−N(T)C(=O)−,または−CF
2−で置換された基からなる群から選択される連結基を示し、Tは、水素原子または−Sp−Qを表し、
Qは水素原子、フッ素原子もしくは以下の式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示す<1>〜<7>のいずれか一項に記載の製造方法。
【0010】
【化2】
【0011】
<9>Lが単結合を示し、Spが単結合、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、および炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つまたは2つ以上の−CH
2−が−O−,−C(=O)O−,−OC(=O)−で置換された基からなる群から選択される連結基である<8>に記載の製造方法。
<10>Qがそれぞれ独立に式(Q−1)で表される基または式(Q−2)で表される基である<8>または<9>に記載の製造方法。
<11>上記アミンが、以下式XII:
【0012】
【化3】
【0013】
で表され、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数2から10の直鎖もしくは分岐のアルケニル基、および炭素数3から10のシクロアルキル基よりなる群より選択されるいずれかの置換基を表すか、またはR
1およびR
2もしくはR
1、R
2およびR
3は、結合して環状構造を形成していてもよい<1>〜<10>のいずれか一項に記載の製造方法。
<12>R
3が水素原子であり、R
1およびR
2は同時に水素原子ではない、<11>に記載の製造方法。
<13>R
1が水素原子でありかつR
2がtert−ブチル基であるか、またはR
1およびR
2のいずれもシクロへキシル基である<12>に記載の製造方法。
<14>以下式Xで表されるジカルボン酸モノエステルアミン塩:
【0014】
【化4】
【0015】
式中、
A
1は、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基を示し、
A
2は、単結合、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基を示し、
Lは、単結合、または炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示し、
Spは単結合、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、および炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つまたは2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、または−C(=O)O−、−OC(=O)O−,−C(=O)N(T)−,または−N(T)C(=O)−で置換された基からなる群から選択される連結基を示し、Tは、水素原子または−Sp−Qを表し、
Qは水素原子もしくは以下の式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示し;
【0016】
【化5】
【0017】
R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数2から10の直鎖もしくは分岐のアルケニル基、および炭素数3から10のシクロアルキル基からなる群より選択されるいずれかの置換基を表すか、またはR
1、R
2もしくはR
1、R
2およびR
3は、結合して環状構造を形成していてもよい。
<15>R
3が水素原子であり、R
1およびR
2は同時に水素原子ではない、<14>に記載のジカルボン酸モノエステルアミン塩。
<16>R
1が水素原子でありかつR
2がtert−ブチル基であるか、またはR
1およびR
2のいずれもシクロへキシル基である<15>に記載のジカルボン酸モノエステルアミン塩。
<17>液晶化合物の製造方法であって、<1>〜<13>のいずれか一項に記載の方法により得られた上記ジカルボン酸モノエステルと水酸基を有する化合物とを脱水縮合することを含む製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、環構造と上記環構造に直接置換したカルボキシル基と上記環構造に直接置換したオキシカルボニル基とを有するジカルボン酸モノエステルを対応するジカルボン酸から製造する方法として、簡便であり、複雑な精製を行わなくても、純度の高い生成物を得ることができる製造方法が提供される。また、本発明によって、上記の製造方法の過程で得られる中間体として新規なアミン塩を提供される。このアミン塩、または上記の製造方法を用いて得られるジカルボン酸モノエステルから液晶化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値とする。
【0020】
<環構造と上記環構造に直接置換したカルボキシル基と上記環構造に直接置換したオキシカルボニル基とを有するジカルボン酸モノエステル>
本発明は環構造と上記環構造に直接置換したカルボキシル基と上記環構造に直接置換したオキシカルボニル基とを有するジカルボン酸モノエステルの製造方法に関する。
上記環構造は芳香族環であっても脂肪族であってもよい。また、単環であっても、2以上の環を含む縮合環であってもよい。また、環構造は炭素原子のみで環が構成されている構造であってもよく、炭素原子以外の原子を含んで環が構成されている構造であってもよい。例えば、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選択される原子を1個または2個以上含んでいてもよい。環を構成する原子の数としては、特に限定されないが、5〜18程度であればよく、5〜10が好ましく、5〜7がより好ましく、6が特に好ましい。環構造の例としては、5〜18員環の脂肪族炭化水素環、5〜18員環の芳香族炭化水素環または5〜18員環の芳香族複素環が挙げられる。これらのうち、5〜18員環の脂肪族炭化水素環が特に好ましい。
以下に、環構造の例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0022】
また、環構造は、上記例示の環構造が置換基を有したものであってもよい。環構造の置換基は、特に限定されず、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、アルキルカルボニル基、アミノ基、およびハロゲン原子ならびに、上記の置換基を2つ以上組み合わせて構成される基からなる群から選択される置換基が挙げられる。また、環構造は置換基を1〜4個有していてもよい。2個以上の置換基を有するとき、2個以上の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。この置換基の定義は、本明細書において「置換基を有していてもよい」というときの置換基についても同様である。
【0023】
本明細書において、アルキル基は直鎖状または分枝鎖状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は1〜30が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6が特に好ましい。アルキル基の例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、直鎖状または分枝鎖状のヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、またはドデシル基を挙げることができる。アルキル基に関する上記説明はアルキル基を含むアルコキシ基においても同様である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0024】
上記環構造としては、特に、シクロヘキサン、ベンゼン、チオフェン、またはピリジンが好ましく、シクロヘキサンがより好ましい。それぞれ無置換であることが特に好ましい。
【0025】
本明細書において、「環構造に直接置換した」とは、上記環構造に直接単結合で結合していることを意味する。すなわち、本発明で製造されるジカルボン酸モノエステルは上記環構造とともに、上記環構造に直接結合したカルボキシル基と上記環構造に直接結合したオキシカルボニル基とを有する。環構造へのカルボキシル基とオキシカルボニル基との結合位置は特に限定されないが、例えばシクロヘキサン、ベンゼンについては、1位および4位、チオフェン、またはピリジンについては2位および5位であることが好ましい。このとき2,5位のいずれがカルボキシル基であってもよい。
オキシカルボニル基は特に限定されないが、以下式XIで表される基であることが好ましい。
【0027】
式XI中、黒丸は結合位置を示す。
Lは、単結合、または炭素数1から12の直鎖もしくは分岐のアルキレン基を示す。アルキレン基の例としては上記のアルキル基例のそれぞれから任意の水素原子を除いて得られる基を挙げることができる。Lは、単結合であることが好ましい。
A
2は、単結合、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基を示す。トランス−1,4−シクロヘキシレン基、または1,4−フェニレン基が置換基を有するときの置換基としては、メチル基またはアセチル基が好ましく、置換数は1つであることが好ましい。A
2は、無置換のトランス−1,4−シクロヘキシレン基、または無置換の1,4−フェニレン基であることがより好ましい。
【0028】
Spは単結合、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、および炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つまたは2つ以上の−CH
2−が−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−C(=O)−、−OC(=O)−、または−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−C(=O)N(T)−、−N(T)C(=O)−、または−CF
2−で置換された基からなる群から選択される連結基を示す。ここで、Tは、水素原子または−Sp−Qを表す。Spは炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基または炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基において1つもしくは2つ以上の−CH
2−が−O−,−C(=O)O−,−OC(=O)−で置換された基であることが好ましく、炭素数1から20の直鎖もしくは分岐のアルキレン基においてQ側末端の−CH
2−が−O−で置換された基であることがより好ましい。
Qは水素原子、フッ素原子もしくは以下の式(Q−1)〜式(Q−5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの重合性基を示す。
【0030】
重合性基としては、アクリロイル基(式(Q−1))またはメタアクリロイル基(式(Q−2))が好ましい。
また、Qがフッ素原子であるとき、Spは−CF
2−を1つまたは2つ以上含む連結基であることが好ましく、−(CH
2)
m(CF
2)
n−(m、nはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す)であることが好ましい。
環構造と上記環構造に直接置換したカルボキシル基と上記環構造に直接置換したオキシカルボニル基とを有するジカルボン酸モノエステルの一例は、以下の一般式Iで表される化合物である。
【0032】
式I中、A
1は、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基を示し、L、A
2、Sp、およびQの定義および好ましい範囲は上記と同様である。
【0033】
<環構造と上記環構造に直接置換した2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸>
本発明は上記ジカルボン酸モノエステルに対応するジカルボン酸のエステル化反応を経て、ジカルボン酸モノエステルを製造する方法に関する。本発明の製造方法に用いられるジカルボン酸の好ましい例としては以下の式IIで表されるジカルボン酸が挙げられる。
【0035】
式II中A
1は、置換基を有していてもよいトランス−1,4−シクロヘキシレン基、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基を示す。特に好ましいジカルボン酸としては、トランス−1,4−シクロヘキサジカルボン酸が挙げられる。
【0036】
<アミン>
本発明の製造方法に用いられるアミンとしては特に限定されないが、以下式XII:
【化11】
【0037】
で表されるアミンを用いることが好ましい。式XII中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、炭素数2から10の直鎖もしくは分岐のアルケニル基、および炭素数3から10のシクロアルキル基からなる群より選択されるいずれかの置換基を表すか、またはR
1、R
2もしくはR
1、R
2、およびR
3は、結合して環状構造を形成していてもよい。R
1、R
2およびR
3は全て同時に水素原子ではないことが好ましい。
【0038】
アルケニル基の例としてはビニル基、アリル基、1−プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0039】
R
1、R
2またはR
1、R
2、およびR
3が、結合して環状構造を形成するときの環状構造としては、1個または2個以上の窒素原子を環構成原子として含む環状構造であればよく、ピペリジン構造、ピロリジン構造、ピロール構造、およびピリジン構造などが例として挙げられる。これらの環状構造はメチル基などの置換基を有していてもよい。
【0040】
R
3が水素原子であり、R
1およびR
2は同時に水素原子ではないことが好ましい。すなわち、アミンは第1級または第2級アミンであることが好ましい。アミンとして特に好ましいものとしては、式XIIにおいてR
1が水素原子でありかつR
2がtert−ブチル基であるか、またはR
1およびR
2のいずれもシクロへキシル基であるアミンが挙げられる。
【0041】
以下、本発明の製造方法で製造されるジカルボン酸モノエステルの好ましい例を、以下に示す。しかし、本発明の製造方法で製造されるジカルボン酸モノエステルはこれらの例に限定されるものではない。
【0044】
以下、本発明の製造方法で使用されるアミンの好ましい例を、以下に示す。しかし、本発明の製造方法で使用されるアミンはこれらの例に限定されるものではない。
【0046】
<エステル化反応>
ジカルボン酸からジカルボン酸モノエステルを得るためのエステル化反応は、ジカルボン酸およびアルコールの脱水縮合反応となる。上記ジカルボン酸モノエステルを得る際のアルコールとしては、例えば以下式XI−2で表されるアルコールを用いればよい。
【0048】
式XI−2中、L、A
2、Sp、Qの定義および好ましい範囲はそれぞれ上記と同様である。エステル化反応の際、ジカルボン酸モノエステルを優勢に合成するために、ジカルボン酸とアルコールとは、3:1〜1:1の比で反応させることが好ましく、2:1〜1:1の比で反応させることがより好ましい。
【0049】
ジカルボン酸からジカルボン酸モノエステルを得るためのエステル化反応としては、例えば、塩化チオニルを作用させカルボン酸塩化物を経る方法、メタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド等を作用させる混合酸無水物法、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCl)などの縮合剤を用いる方法が挙げられる。
【0050】
エステル化反応としては、塩化チオニルを作用させカルボン酸塩化物を経る方法およびメタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド等を作用させる混合酸無水物法が好ましい。これらの方法には、例えば、実施例に示すように、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルアセトアミド等の有機溶媒中、0℃から80℃で塩化チオニルとジカルボン酸を混合し、溶媒を減圧留去した後、さらにアルコールおよびトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミン等の塩基を0℃から25℃で添加することにより行うことができる。または、テトラヒドロフラン、酢酸エチルまたはN,N−ジメチルアセトアミド等の有機溶媒中、0℃から25℃でメタンスルホニルクロリド、またはp−トルエンスルホニルクロリドをジカルボン酸、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンまたはN−メチルイミダゾール等の塩基と混合し、さらにアルコールおよびトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンまたはN−メチルイミダゾール等の塩基(エステル化の脱プロトンのために添加)を0℃から25℃で添加することにより行うことができる。なお、これらの方法で添加された塩基は後処理の分液工程で除去することができる。
【0051】
<エステル化反応物からのジカルボン酸モノエステルの精製>
本発明の製造方法は、エステル化反応物からジカルボン酸モノエステルをアミン塩として単離することを含む。
本発明者らは、驚くべきことに、環構造と上記環構造に直接置換した2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸のエステル化反応物から、アミンを用いることによりジカルボン酸モノエステルがアミン塩として効率良く単離できることを見出した。これによって、カラムクロマトグラフィーを用いた精製や再沈殿、洗浄、乾燥を繰り返す煩雑な精製を行う必要性が排除される。
すなわち、別の観点からは、本発明は、環構造と上記環構造に直接置換した2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸のエステル化反応物からジカルボン酸モノエステルを精製する方法にも関する。
【0052】
アミン塩の形成は、上記式XIIで表されるアミンをエステル化反応物に添加することにより行うことができる。得られるジカルボン酸モノエステルが上記式Iで表される化合物であって、アミンとして上記式XIIで表される化合物を用いるとき、以下式Xで表されるアミン塩が形成される。
【0054】
エステル化反応物にアミンを添加する段階は特に限定されない。エステル化反応物から、副生成物であるジカルボン酸ジエステルまたは出発物質等を除去する工程の後でアミンを添加することも好ましい。エステル化反応物からの副生成物または出発物質、上記塩基等の除去は、例えば、エステル化反応物を分液工程に付して、より水溶性の高い成分を除去することにより容易に行うことができる。分液は、例えば水と酢酸エチル、テトラヒドロフランの混合有機層、または水とトルエンにより行うことができる。得られる有機層はさらに無機塩基水溶液で洗浄することが好ましく、重曹水(炭酸水素ナトリウム溶液)にて洗浄することがより好ましい。その後、洗浄後の有機層に直接アミンを加えてもよいが、乾燥、溶媒除去後のエステル化反応物をさらにアセトニトリル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、またはトルエンなどの有機溶媒に再溶解したものにアミンを加えて、アミン塩を得ることが好ましい。
【0055】
得られるジカルボン酸モノエステルアミン塩を脱塩することにより、容易にジカルボン酸モノエステルを得ることができる。脱塩は酸性溶液を用いて行えばよく、例えば、モノカルボン酸アミン塩をトルエン/塩酸水溶液中で攪拌した後、水層を除去し、減圧下、溶媒を留去することで行うことができる。
【0056】
<環構造と上記環構造に直接置換したカルボキシル基と上記環構造に直接置換したオキシカルボニル基とを有するジカルボン酸モノエステルの用途>
本発明の製造方法により得られるジカルボン酸モノエステルはさらに残ったカルボキシル基等で他の化合物と反応することができるため、種々の化合物の合成の出発原料として用いることができる。特に上記式Iで表されるジカルボン酸モノエステルでQが重合性基であるものは末端に重合性基を有するため、カルボキシル基においてさらにエステル化反応した化合物は重合性の化合物となり、種々のポリマー形成のためのモノマーとして有用である。典型的には、本発明の製造方法により得られるジカルボン酸モノエステルと水酸基を有する化合物とを脱水縮合することにより、液晶化合物、重合性液晶化合物などの化合物の合成が可能である。例えば、特許文献1に記載のモノカルボン酸M1も本発明の製造方法にて合成可能であるため、本製造方法で合成したアミン塩の脱塩後に得られるモノカルボン酸M1は、特許文献1と同様の使用が可能である。また、以下の一例の反応式を示すように、メソゲン部位該当化合物1当量に対して2当量で脱水縮合して、重合性液晶化合物を製造することができる。メソゲン部位該当化合物は、環構造を1つまたは2つ以上含む化合物であって、いずれかの環構造(好ましくは末端にある環構造)に直接置換した水酸基を2つ有する化合物であればよい。脱水縮合方法については、上記のエステル化反応を参照することができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0059】
以下に示すカルボン酸アミン塩の化合物番号は、「Mxx(ジカルボン酸モノエステルの化合物番号)−Axx(アミンの化合物番号)」と定義する。
【0060】
<化合物M1−A1の合成>
【化18】
【0061】
trans−1,4−シクロヘキサジカルボン酸(40.6g)とメタンスルホニルクロリド(14.9g)のテトラヒドロフラン(THF、390mL)溶液に対し、氷冷下トリエチルアミン(14.4g)を滴下し、室温で2時間攪拌した。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレート(17.0g)を添加し、氷冷下トリエチルアミン(14.4g)を滴下し、室温で3時間攪拌した。メタノール(2mL)を加えて、室温で15分間攪拌した後、水と酢酸エチルを加えて水層を除去し、有機層を飽和重曹水、希塩酸、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去した。このとき、モノエステル化体とジエステル化体の比率はHPLC上、約7:3であった。その後、アセトニトリル(200mL)を加え、室温でt−ブチルアミン(18.6mL)を滴下した後、ろ取することでモノカルボン酸アミン塩M1−A1を得た。このとき、ジエステル化体の存在をHPLCで確認した結果、ジエステル化体は検出されなかった。
【0062】
1H−NMR(溶媒:CD
3OD)δ(ppm):
1.3−1.6(m,13H),1.7−1.8(m,4H),2.0−2.2(m,4H),2.2−2.4(m,1H),4.1(t,2H),4.2(t,2H),5.8(dd,1H),6.1(dd,1H),6.4(dd,1H)
【0063】
【化19】
【0064】
trans−1,4−シクロヘキサジカルボン酸(21g)と塩化チオニル(29g)をトルエン(60mL)中、内温70℃で2時間攪拌した。減圧下、溶媒留去した後、THF(50mL)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(17.0g)とジブチルヒドロキシトルエン(BHT、0.2g)を添加し、N,N−ジメチルアミノピリジン(0.8g)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(16.17g)のTHF(15mL)溶液を滴下し、室温で3時間攪拌した。メタノール(2mL)を加えて、室温で15分間攪拌した。メタノール(2mL)を加えて、室温で15分間攪拌した後、水と酢酸エチルを加えて水層を除去し、有機層を飽和重曹水、希塩酸、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去した。その後、アセトニトリル(200mL)を加え、室温でt−ブチルアミン(18.6mL)を滴下した後、ろ取することでモノカルボン酸アミン塩M1−A1を得た。このとき、ジエステル化体の存在をHPLCで確認した結果、ジエステル化体は検出されなかった。
【0065】
【化20】
【0066】
trans−1,4−シクロヘキサジカルボン酸(20.3g)、p−トルエンスルホニルクロリド(27.0g)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(17.0g)のTHF(170mL)溶液に対し、氷冷下N−メチルイミダゾール(29.1g)を滴下し、室温で4時間攪拌した。メタノール(2mL)を加えて、室温で15分間攪拌した後、水と酢酸エチルを加えて水層を除去し、有機層を飽和重曹水、希塩酸、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去した。その後、アセトニトリル(200mL)を加え、室温でt−ブチルアミン(18.6mL)を滴下した後、ろ取することでモノカルボン酸アミン塩M1−A1を得た。このとき、ジエステル化体の存在をHPLCで確認した結果、ジエステル化体は検出されなかった。
【0067】
<化合物M1−A2の合成>
【化21】
【0068】
trans−1,4−シクロヘキサジカルボン酸(40.6g)とメタンスルホニルクロリド(14.9g)のTHF(390mL)溶液に対し、氷冷下トリエチルアミン(14.4g)を滴下し、室温で2時間攪拌した。その後、4−ヒドロキシブチルアクリレート(17.0g)を添加し、氷冷下トリエチルアミン(14.4g)を滴下し、室温で3時間攪拌した。メタノール(2mL)を加えて、室温で15分間攪拌した後、水と酢酸エチルを加えて水層を除去し、有機層を飽和重曹水、希塩酸、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去した。その後、アセトニトリル(200mL)を加え、室温でジシクロヘキシルアミン(35.3mL)を滴下した後、ろ取することでモノカルボン酸アミン塩M1−A2を得た。このとき、ジエステル化体の存在をHPLCで確認した結果、ジエステル化体は検出されなかった。
【0069】
1H−NMR(溶媒:CD
3OD)δ(ppm):
1.1−1.5(m,16H),1.7−2.2(m,17H),2.2−2.4(m,1H),3.1−3.2(m,2H),4.1(t,2H),4.2(t,2H),5.8(dd,1H),6.1(dd,1H),6.4(dd,1H)
【0070】
<化合物M5−A1の合成>
【化22】
【0071】
trans−1,4−シクロヘキサジカルボン酸(21g)と塩化チオニル(29g)をトルエン(60mL)中、内温70℃で2時間攪拌した。減圧下、溶媒留去した後、THF(50mL)、4−(6−アクリロキシ−へキシ−1−イル−オキシ)フェノール(31.21g)とBHT(0.2g)を添加し、N,N−ジメチルアミノピリジン(0.8g)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(16.17g)のTHF(15mL)溶液を滴下し、室温で3時間攪拌した。メタノール(2mL)を加えて、室温で15分間攪拌した後、水と酢酸エチルを加えて水層を除去し、有機層を飽和重曹水、希塩酸、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去した。その後、アセトニトリル(200mL)を加え、室温でt−ブチルアミン(18.6mL)を滴下した後、ろ取することでモノカルボン酸アミン塩M5−A1を得た。このとき、ジエステル化体の存在をHPLCで確認した結果、ジエステル化体は検出されなかった。
【0072】
H−NMR(溶媒:CD
3OD)δ(ppm):
1.3−1.6(m,17H),1.7−1.9(m,4H),1.9−2.2(m,5H),2.4−2.6(m,1H),3.9(t,2H),4.2(t,2H),5.8(dd,1H),6.1(dd,1H),6.4(dd,1H),6.8−7.0(m,4H)
【0073】
<化合物M5−A2の合成>
【化23】
【0074】
trans−1,4−シクロヘキサジカルボン酸(21g)と塩化チオニル(29g)をトルエン(60mL)中、内温70℃で2時間攪拌した。減圧下、溶媒留去した後、THF(50mL)、フェノール1(31.21g)とBHT(0.2g)を添加し、N,N−ジメチルアミノピリジン(0.8g)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(16.17g)のTHF(15mL)溶液を滴下し、室温で3時間攪拌した。メタノール(2mL)を加えて、室温で15分間攪拌した後、水と酢酸エチルを加えて水層を除去し、有機層を飽和重曹水、希塩酸、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去した。その後、アセトニトリル(200mL)を加え、室温でジシクロヘキシルアミン(35.3mL)を滴下した後、ろ取することでモノカルボン酸アミン塩M5−A2を得た。このとき、ジエステル化体の存在をHPLCで確認した結果、ジエステル化体は検出されなかった。
【0075】
1H−NMR(溶媒:CD
3OD)δ(ppm):
1.1−1.5(m,20H),1.7−2.3(m,17H),2.4−2.6(m,1H),3.0−3.2(m,2H),4.0(t,2H),4.2(t,2H),5.9(dd,1H),6.1(dd,1H),6.4(dd,1H),6.9−7.0(m,4H)
【0076】
<化合物M16−A1の合成>
【化24】
【0077】
trans−1,4−シクロヘキサジカルボン酸(17.2g)とメタンスルホニルクロリド(6.3g)のTHF(78mL)と酢酸エチル(67mL)の混合溶液に対し、氷冷下トリエチルアミン(6.07g)を滴下し、室温で2時間攪拌した。その後、2−(ペルフルオロヘキシル)エタノール(18.2g)を添加し、氷冷下トリエチルアミン(6.07g)を滴下し、室温で3時間攪拌した。水(8mL)を加えて、室温で15分間攪拌した後、水と酢酸エチルを加えて水層を除去し、有機層を飽和重曹水、希塩酸、食塩水の順に洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、乾燥剤をろ過した後、溶媒を減圧留去した。その後、酢酸エチル(90mL)を加え、室温でt−ブチルアミン(5.3mL)を滴下した後、ろ取することでモノカルボン酸アミン塩M16−A1を得た。
【0078】
1H−NMR(溶媒:CD
3OD)δ(ppm):
1.3−1.5(m,13H),1.9−2.1(m,5H),2.2−2.4(m,1H),2.5−2.7(m,2H),4.4(t,2H),4.9(brs,3H)