(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴムシートおよび前記弾性スペーサを取り外した後で、前記硬化した樹脂と前記小径フランジ部との間、または前記硬化した樹脂と前記第2の配管のフランジとの間に、シール材を挿入することを特徴とする請求項1に記載の配管接続方法。
前記ゴムシートが貼付された後で、前記ゴムシートを、前記第1の配管と前記第2の配管の内面にゴムシート固定治具により押圧することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配管接続方法。
前記第1の貫通孔は前記弾性スペーサの最下部に形成され、前記第2の貫通孔は前記弾性スペーサの最上部に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配管接続方法。
【背景技術】
【0002】
ポンプを設置する場合、回転軸や羽根車などの回転体の水平度および鉛直度だけでなく、羽根車が収容されるインペラケーシングや吐出管の水平度および鉛直度も厳密に調整することが必要とされる。これは、ポンプの据え付け状態を安定させることで、回転体が回転しているときの異常振動の発生を防止するためである。
【0003】
このように設置されたポンプの吐出管を、ポンプ機場の既設の配管と接続する場合、吐出管の水平度および鉛直度に対して、既設配管の水平度および鉛直度がずれている場合がある。例えば、吐出管のフランジに対して、既設配管のフランジが傾いている場合、ポンプの吐出管を既設の配管に正しく接続することができない。既設配管のフランジボルト孔の振り分けが吐出管のフランジボルト孔の振り分け中心とずれている場合も、吐出管のフランジを既設配管のフランジに正しく接続することができない。本明細書では、このような既設配管の水平度および鉛直度のずれおよびフランジボルト孔のずれを、据付誤差と称する。
【0004】
据付誤差への対策として、従来は、吐出管と既設の配管との間に短管を設け、当該短管のフランジが既設配管のフランジと合うように短管を加工していた。具体的には、短管のフランジが既設配管のフランジと合うように微調整した状態で、当該フランジを現場で短管に仮溶接し、フランジが仮溶接された短管を工場に持ち帰って正規の溶接を完了させていた。このような短管は、一般に「現合管」と呼ばれている。
【0005】
しかしながら、このような現合管工法では、一旦仮溶接した短管を工場に持ち帰って正規の溶接を行うため、ポンプの施工期間が増大し、また設置コストが増大してしまう。特に、現合管がナイロンコーティングなどを配管内面に施したライニング管の場合は、正規の溶接が完了した後でなければ、コーティングを実施することができないので、ポンプの施工期間が大きく延びてしまう。
【0006】
特許文献1に開示されるようなルーズフランジ管を、現合管の代わりに使用することで、据付誤差を吸収する方法がある。しかしながら、ルーズフランジ管は、配管の長手方向のずれを吸収することはできるが、フランジ面の傾きや、フランジボルト孔のずれなどの据付誤差を吸収することは難しい。また、ルーズフランジ管は、Oリングなどのゴム製シール部材を使用する。したがって、大きな据付誤差がある場合には、シール部材の一部のみが変形するので、ルーズフランジ管では液密性を確保することが難しい。
【0007】
特許文献2には、伸縮可撓管継手を用いて、据付誤差が発生した配管同士を接続する技術が開示されている。しかしながら、この伸縮可撓管継手は構造が複雑であり非常に高価である。したがって、この伸縮可撓管継手を採用すると経済的効果が小さい。また、特許文献2の伸縮可撓管継手は、成形パッキンなどのゴム製シール部材を使用する。したがって、大きな据付誤差がある場合には、シール部材の一部のみが変形するので、特許文献2に記載される伸縮可撓管継手では液密性を確保することが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接続される配管同士に据付誤差があっても、現場作業だけで配管同士を接続することができ、且つ液密性を確保できる配管接続方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、第1の配管の小径フランジ部と、第2の配管のフランジとが互いに対面するように、前記第1の配管を前記第2の配管に対して配置し、前記小径フランジ部に隣接した、前記第1の配管の大径フランジ部と、前記第2の配管のフランジとの間に、前記小径フランジ部と前記第2の配管のフランジとの間に隙間ができるように弾性スペーサを挟み、前記弾性スペーサを挟んだ状態で、前記大径フランジ部と前記第2の配管のフランジとを互いに締結して、前記第1の配管と前記第2の配管を連結し、前記第1の配管と前記第2の配管の内面に、前記隙間の内側開口端を閉じるようにゴムシートを貼付し、前記弾性スペーサに形成された第1の貫通孔を通じて前記隙間に樹脂を注入しながら、前記弾性スペーサに形成された第2の貫通孔を通じて前記隙間から空気を抜くことで、前記隙間を樹脂で充填し、前記隙間内の前記樹脂を硬化させ、前記樹脂が硬化した後で、前記ゴムシートおよび前記弾性スペーサを取り外すことを特徴とする配管接続方法である。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記ゴムシートおよび前記弾性スペーサを取り外した後で、前記硬化した樹脂と前記小径フランジ部との間、または前記硬化した樹脂と前記第2の配管のフランジとの間に、シール材を挿入することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記大径フランジ部は、前記小径フランジ部から切り離された遊動フランジとして構成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記ゴムシートが貼付された後で、前記ゴムシートを、前記第1の配管と前記第2の配管の内面にゴムシート固定治具により押圧することを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい態様は、前記第1の貫通孔は前記弾性スペーサの最下部に形成され、前記第2の貫通孔は前記弾性スペーサの最上部に形成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔には、中空パイプが挿入されることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1の配管は、ポンプの吐出管に接続される短管であり、前記第2の配管は、ポンプ機場に配置された既設配管であることを特徴とする。
【0013】
本発明の
一参考例は、既設配管のフランジに対面する小径フランジ部、および該小径フランジ部に隣接する大径フランジ部を有する短管と、前記小径フランジ部と前記既設配管のフランジとの間の隙間に充填された、硬化した樹脂と、前記大径フランジ部と前記既設配管のフランジとを締結する締結部材と、を備えたことを特徴とする配管接続構造である。
【0014】
上記参考例の好ましい態様は、前記硬化した樹脂と前記小径フランジ部との間、または前記硬化した樹脂と前記既設配管のフランジとの間に配置されたシール材をさらに備えたことを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記大径フランジ部は、前記小径フランジ部から切り離された遊動フランジとして構成されていることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記硬化した樹脂は、硬化したエポキシ樹脂であることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記短管は、水平に延びることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の配管(短管)と第2の配管(既設配管)との間に据付誤差があっても、小径フランジ部と第2の配管のフランジとの間の隙間に充填された樹脂によって、当該据付誤差を吸収することができる。樹脂は、配管を接続する現場で上記隙間に注入することができるので、第1の配管を、当該第1の配管に対して据付誤差のある第2の配管に現場作業で接続することができる。また、硬化した樹脂は、小径フランジ部と第2の配管のフランジとに密着している。したがって、この硬化した樹脂によって、第1の配管と第2の配管内を流れる流体のシールが達成されるので、第1の配管と第2の配管との接続部分の液密性を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の配管接続方法および配管接続構造の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る配管接続方法によって接続された配管を有する立軸ポンプの一例を示す概略断面図である。
図1に示される立軸ポンプは、吸込ベルマウス1aおよびポンプボウル1bを有するインペラケーシング1と、インペラケーシング1を吸込水槽30内に吊り下げる吊下管2と、吊下管2の上端に接続される吐出曲管3と、吐出曲管3の吐出側に接続される吐出管4と、インペラケーシング1内に収容される羽根車10と、羽根車10が固定される回転軸15と、回転軸15を回転させるための駆動機25と、を備えている。吐出管4は水平に延びている。
【0018】
吊下管2は、揚水されるべき水が流れ込む吸込水槽30の上部のポンプ据付床6に形成された挿通孔7を通して下方に延び、吊下管2の上端に設けられた据付用ベース8を介してポンプ据付床6に固定される。回転軸15は、吐出曲管3、吊下管2、及びインペラケーシング1内を通って鉛直方向に延びている。回転軸15は、水中軸受17、中間軸受18、および外軸受19に回転自在に支持されている。
【0019】
吸込ベルマウス1aは、吸込水槽30内で下方を向いて開口し、吸込ベルマウス1aの上端はポンプボウル1bの下端に固定されている。羽根車10は、回転軸15の下端に固定されており、羽根車10と回転軸15とは一体的に回転するようになっている。この羽根車10の二次側(吐出側)には、複数のガイドベーン16が配置されている。これらのガイドベーン16はポンプボウル1bの内周面に固定されている。回転軸15を回転自在に支持する水中軸受17は、ポンプボウル1bに収容されており、羽根車10の上方に位置している。同様に回転軸15を回転自在に支持する中間軸受18は、吊下管2に収容され、外軸受19は、吐出曲管3の外部で当該吐出曲管3に固定されている。
【0020】
吐出管4には、吐出弁24が設けられている。この吐出弁24は、立軸ポンプの駆動機25が運転されていないときは閉じられており、駆動機25が起動されると、図示しない制御部により、吐出弁24が開かれるように構成されている。本実施形態では、吐出弁24は、電動弁から構成されている。駆動機25および吐出弁24は、図示しない制御部に接続されていて、この制御部によって、駆動機25の始動および停止と、吐出弁24の開閉動作とが制御される。
【0021】
立軸ポンプの羽根車10の回転によって昇圧された水が吐き出される吐出水槽31には、吐出水槽31の壁面50を貫通して、当該吐出水槽31内で開口する既設配管51が設けられている。既設配管51の吐出側端部には、吐出水槽31からの水の逆流を防止する逆流防止弁としてのフラップ弁23が設けられる。この既設配管51は、立軸ポンプが据え付けられる前に設置されているので、水平度および鉛直度を厳密に管理して据え付けられた立軸ポンプの吐出管4に対して、据付誤差が発生している場合がある。そこで、本実施形態では、吐出管4と既設配管51との間に短管40を設け、この短管40と既設配管51とを以下に説明する配管接続方法で接続することにより据付誤差を吸収する。その結果、吐出管4を、短管40を介して既設配管51に接続することができる。
【0022】
本実施形態では、まず、ポンプの吐出管4に接続される短管(以下、第1の配管と称する)40とポンプ機場に配置された既設配管51(以下、第2の配管と称する)とを接続するために、
図2に示すように、第1の配管40のフランジ41が第2の配管51のフランジ52と対面するように、第1の配管40が配置される。第1の配管40および第2の配管51は、いずれも水平に延びている。第1の配管40のフランジ41は、第2の配管51のフランジ52に対面する小径フランジ部43と、小径フランジ部43よりも大きな直径を有する大径フランジ部44とを備える。大径フランジ部44は小径フランジ部43に隣接している。大径フランジ部44は小径フランジ部43から切り離された遊動フランジとして構成されており、小径フランジ部43に対してある程度移動できるようになっている。
【0023】
小径フランジ部43の、第2の配管51のフランジ52に対面する面は、第1の配管40および第2の配管51の内部を流れる流体の漏れを防止するためのフランジシール面43aを構成する。同様に、第2の配管51のフランジ52の、小径フランジ部43に対面する面は、第1の配管40および第2の配管51の内部を流れる流体の漏れを防止するためのフランジシール面52aを構成する。大径フランジ部44の外径は、第2の配管51のフランジ52の外径と等しくなっている。
【0024】
次に、
図3に示すように、小径フランジ部43と第2の配管51のフランジ52との間に隙間Sができるように、大径フランジ部44と第2の配管51のフランジ52との間に弾性スペーサ46を挟んで、大径フランジ部44と第2の配管51のフランジ52とを締結部材54により締結する。弾性スペーサ46は、円環状の形状を有する。
【0025】
大径フランジ部44には、締結部材54が挿入される貫通孔58が複数設けられる。第2の配管51のフランジ52および弾性スペーサ46にも、締結部材54が挿入される貫通孔59および貫通孔47がそれぞれ複数設けられる。締結部材54は、ボルト55とこのボルト55に螺合するナット56とで構成される。ボルト55を貫通孔58、貫通孔47、および貫通孔59に挿入した状態で、ナット56を締め付け方向に回転させると、大径フランジ部44と第2の配管51のフランジ52とが締結される。これにより、第1の配管40は、第2の配管51に連結される。
【0026】
大径フランジ部44と第2の配管51のフランジ52との間に挟まれた弾性スペーサ46は、少なくともその一部が弾性材料から構成されたシールである。例えば、弾性スペーサ46はスポンジガスケットである。弾性スペーサ46として、鋼製または硬化樹脂製の環状スペーサと、環状のスポンジガスケットとを組み合わせた構成を採用してもよい。この場合、大径フランジ部44は環状スペーサに接触し、第2の配管51のフランジ52はスポンジガスケットに接触する。
【0027】
弾性スペーサ46は小径フランジ部43を囲むように配置されている。小径フランジ部43と第2の配管51のフランジ52との間に隙間Sができるように、弾性スペーサ46は小径フランジ部43の幅(厚み)よりも大きな幅(厚み)を有している。
図3に示すように、第1の配管40の水平度および鉛直度に対する第2の配管51の水平度および鉛直度がずれているので、隙間Sの上部の幅W1は、下部の幅W2とは異なる。例えば、隙間Sの上部の幅W1が10mmであるときに、隙間Sの下部の幅W2は5mmである。
【0028】
次に、
図4に示されるように、第1の配管40と第2の配管51の内面にゴムシート61が貼付され、隙間Sの内側開口端がゴムシート61の外面によって閉じられる。隙間Sの外側開口端は、上述した弾性スペーサ46によって閉じられている。弾性スペーサ46およびゴムシート61は、隙間Sに注入される樹脂(後述する)が隙間Sから漏れ出すことを防止するために設けられる。ゴムシート61は、第1の配管40の小径フランジ部43と第2の配管51のフランジ52との間に形成された隙間Sの幅よりも広い幅を有している。ゴムシート61は、例えば3mmの厚さを有する。ゴムシート61によって隙間Sの内側開口端がその全周に亘って閉じられると、隙間Sは、小径フランジ部43、第2の配管のフランジ52、弾性スペーサ46、およびゴムシート61によって形成された密閉空間となる。
【0029】
ゴムシート61を貼付した後で、このゴムシート61は、ゴムシート固定治具により、第1の配管40および第2の配管51の内面に押圧されるのが好ましい。
図5は、ゴムシート固定治具70の一例を示した平面図であり、以下、
図5を参照してゴムシート固定治具70を説明する。
【0030】
図5に示されるゴムシート固定治具70は、鋼製シートを円環状に繋いだ外輪71と、外輪71の内側に配置される円環状の内輪72とを有する。内輪72から半径方向外方に複数の内輪ボルト部材73が延び、内輪ボルト部材73の位置に対応して、外輪71から半径方向内方に複数の外輪ボルト部材75が延びる。内輪ボルト部材73と外輪ボルト部材75にはねじ山が設けられており、長さ調整ナット74がこれらねじ山に螺合する。したがって、内輪ボルト部材73は、対応する外輪ボルト部材75と長さ調整ナット74により連結されている。
【0031】
長さ調整ナット74を一方向に回すと、内輪ボルト部材73と外輪ボルト部材75との間の距離が延びるように、内輪ボルト部材73と外輪ボルト部材75のねじ山は構成されている。長さ調整ナット74を逆方向に回すと、内輪ボルト部材73と外輪ボルト部材75との間の距離は縮む。
【0032】
長さ調整ナット74を逆方向に回転させて、外輪71の外径を第1の配管40および第2の配管51の内径よりも小さくすることにより、ゴムシート固定治具70をゴムシート61が貼付されている位置まで運ぶことができる。第1の配管40および第2の配管51内で長さ調整ナット74を回転させて、外輪71の直径を大きくし、外輪71の外周面によってゴムシート61を第1の配管40と第2の配管51の内面に対して押し付ける。
【0033】
このように、ゴムシート61は第1の配管40と第2の配管51の内面に押されているので、高圧の樹脂を密閉空間である隙間Sに注入しても、この樹脂が第1の配管40と第2の配管51の内面側へ漏洩することがない。なお、ゴムシート固定治具70は、
図5に示した例に限定されない。例えば、ゴムシート固定治具70として、第1の配管40と第2の配管51の内径と略同一の外径を有する止水プラグを用いてもよい。このような止水プラグは、市場で入手可能である。
【0034】
図6は、隙間Sに樹脂を注入する前の
図4のA−A線断面図である。
図6に示されるように、隙間Sに連通する複数の貫通孔80が弾性スペーサ46に設けられる。全ての貫通孔80は、弾性スペーサ46の外周面から内周面まで延び、隙間Sに連通している。
図6に示される実施形態では、2つの貫通孔80が、円環状の弾性スペーサ46の最上部と最下部に設けられている。樹脂は最下部に設けられた貫通孔80から注入され、最上部の貫通孔80は空気抜き孔として利用される。
【0035】
弾性スペーサ46の中心点Oを通って水平に延びるX軸の方向を0°としたときに、
図6に示した実施形態の2つの貫通孔80は、90°の位置と270°の位置に設けられている。貫通孔80を3つ以上設けることもできる。例えば、4つの貫通孔80を、45°の位置、90°の位置、135°の位置、および270°の位置に設けてもよい。あるいは、6つの貫通孔80を、45°の位置、90°の位置、135°の位置、225°の位置、270°の位置、および315°の位置に設けてもよい。
【0036】
いずれの場合でも、樹脂は、最も下に位置する270°の位置にある貫通孔80から注入され、それ以外の貫通孔80は、空気抜き孔および樹脂の充填確認用孔として用いられる。すなわち、貫通孔80から樹脂が流れ出してきた場合に、作業者は、樹脂が当該貫通孔80の位置まで到達したことを確認することができる。このように3つ以上の貫通孔80を設けると、樹脂が隙間Sに注入されていく位置を下から順番に確認することができるので、樹脂を隙間S全体に確実に充填することが可能となる。したがって、信頼性の高い樹脂充填作業を行うことが可能となる。
【0037】
弾性スペーサ46が大径フランジ部44と第2の配管51のフランジ52との間に挟まれる前に、弾性スペーサ46に貫通孔80を予め形成してもよく、あるいは弾性スペーサ46が大径フランジ部44と第2の配管51のフランジ52との間に挟まれた状態で、弾性スペーサ46に貫通孔80を形成してもよい。
【0038】
図7は、貫通孔80に挿入された中空パイプ81から隙間Sに樹脂を注入する様子を示した部分分解斜視図である。
図7では、ゴムシート固定治具70の図示は省略されている。
図8は、隙間Sが樹脂で満たされた後の
図4のA−A線断面図である。
図7および
図8に示されるように、貫通孔80には、中空パイプ81が挿入されるのが好ましい。例えば、270°の位置にある貫通孔80に挿入された中空パイプ81を通じて、樹脂60を容易に隙間Sに注入することができる。また、45°の位置、90°の位置、135°の位置、225°の位置、および315°の位置にある貫通孔80に中空パイプ81を挿入しておくと、樹脂が当該中空パイプ81を通って流れ出すので、作業者は、樹脂60の充填確認を容易かつ確実に行うことができる。樹脂60が流れ出した後の中空パイプ81を折り曲げてその内部の流路を閉じることにより、当該中空パイプ81から樹脂が流れ出すことを容易に止めることができる。
【0039】
図7に示されるように、樹脂60は、中空パイプ81に配管83を介して接続されるグリスガンなどの充填機86により隙間Sに注入される。上述したように、樹脂60は、弾性スペーサ46の最も低い位置にある(すなわち、270°の位置にある)貫通孔80に挿入された中空パイプ81から注入される。弾性スペーサ46の最も高い位置にある(すなわち、90°の位置にある)貫通孔80に挿入された中空パイプ81は、空気抜き孔として利用される。隙間Sは、貫通孔80以外は、小径フランジ部43、第2の配管のフランジ52、弾性スペーサ46、およびゴムシート61によって密封されているので、樹脂60を隙間S全体に充填することができる。
【0040】
隙間Sに充填される樹脂60は、例えば、主剤と硬化剤との混合体からなる2液タイプのエポキシ樹脂である。このエポキシ樹脂は、時間経過と共に硬化する。樹脂60が硬化した後で、弾性スペーサ46およびゴムシート61が取り外される。
図9は、樹脂が硬化した後の、第1の配管40と第2の配管51との接続部を示す模式図である。
図9では、弾性スペーサ46とゴムシート61が取り外されている。
図9に示されるように、小径フランジ部43と第2の配管51のフランジ52との間には、硬化した樹脂60が挟まれている。このように流動性のある樹脂60を、小径フランジ部43と第2の配管51のフランジ52との間の隙間Sに充填して、その後、樹脂60を硬化させることで、第1の配管40に対する第2の配管51のあらゆる据付誤差を樹脂60が吸収することができる。
【0041】
樹脂60は、配管を接続する現場で隙間Sに充填することができるので、第1の配管40に対して据付誤差のある第2の配管51を、当該第1の配管40に現場作業で接続することができる。硬化した樹脂60は、小径フランジ部43と第2の配管51のフランジ52とに密着しているので、この硬化した樹脂60によって、第1の配管40と第2の配管51内を流れる流体の漏洩を防止するシールを達成することができる。したがって、第1の配管40と第2の配管51との接続部分の液密性を確保することができる。
【0042】
上述の実施形態では、大径フランジ部44は、小径フランジ部43から切り離された遊動フランジとして構成されており、小径フランジ部43に対して回転し、かつ傾くことが可能となっている。このような構成により、第2の配管51のフランジ52に形成される貫通孔59が正規の位置からずれていても、大径フランジ部44の貫通孔58を貫通孔59の位置に合わせることができる。したがって、貫通孔59と大径フランジ部44の貫通孔58とに締結部材54としてのボルト55を挿入することができる。
【0043】
据付誤差が小さい場合は、大径フランジ部44が小径フランジ部43と一体に形成されてもよい。
図10は、大径フランジ部44が小径フランジ部43と一体に形成された構成を示す模式図である。据付誤差が小さく、第2の配管51のフランジ52の貫通孔59と、大径フランジ部44の貫通孔58とが大きくずれていない場合は、
図10に示されるようなフランジ41を用いることができる。大径フランジ部44が小径フランジ部43と一体に形成されたフランジ41として、JIS規格に規定されるRFフランジを用いてもよい。
【0044】
弾性スペーサ46を取り外すときや、立軸ポンプのメンテナンスのときなど、第1の配管40を第2の配管51から切り離すことが必要な場合がある。また、樹脂60の硬化面を確認するために、第1の配管40を第2の配管51から切り離すことが必要な場合もある。しかしながら、硬化した樹脂60は、小径フランジ部43および第2の配管51のフランジ52に接着されているため、小径フランジ部43または第2の配管51のフランジ52を樹脂60から切り離すことが困難なことがある。
【0045】
そこで、樹脂60を隙間Sに充填する前に、小径フランジ部43のフランジシール面43a(すなわち、小径フランジ部43における樹脂60との接触面、
図2乃至
図4参照)にテフロン(登録商標)被膜を予め形成しておくことが好ましい。テフロン(登録商標)被膜は、テフロン(登録商標)スプレーをフランジシール面43aに吹き付けることによって形成することができる。テフロン(登録商標)被膜は、樹脂60に接着されないので、小径フランジ部43を樹脂60から容易に切り離すことができる。
【0046】
なお、第2の配管51のフランジ52のフランジシール面52a(すなわち、フランジ52における樹脂60との接触面、
図2乃至
図4参照)にテフロン(登録商標)被膜を形成してもよい。この場合、樹脂60は小径フランジ部43に接着される一方で、フランジ52は樹脂60から容易に切り離すことができる。
【0047】
一旦、第1の配管40を第2の配管51から外した後は、樹脂60が剥がされたフランジシール面と樹脂60との間にシール材を挿入して、液密性を確保することが好ましい。例えば、硬化した樹脂60が、小径フランジ部43のフランジシール面43aから切り離された場合は、硬化した樹脂60と小径フランジ部43の間にシール材を挿入してから、第1の配管40と第2の配管51とを接続する。あるいは、硬化した樹脂60が、第2の配管51のフランジ52のフランジシール面52aから切り離された場合は、硬化した樹脂60と第2の配管51のフランジ52との間にシール材を挿入してから、第1の配管40と第2の配管51とを接続する。
【0048】
図11は、硬化した樹脂60と小径フランジ部43の間に挟まれたシール材65を示す模式図である。シール材65は、硬化した樹脂60と小径フランジ部43の間に配置され、この状態で、第1の配管40のフランジ41と第2の配管51のフランジ52とが締結部材54により連結される。シール材65は、締結部材54を構成するボルト55が挿通される複数の貫通孔を有している。これらの貫通孔にボルト55が挿入されることにより、シール材65が位置決めされる。したがって、第1の配管40と第2の配管51とを締結部材54により連結するときの作業効率を高めることができる。シール材65は、例えば、ゴムガスケットであり、市販のゴムガスケットを使用することができる。
【0049】
図12は、本発明の配管接続方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
図12のフローチャートは、樹脂60の硬化面を確認するために、樹脂60が硬化した後で、小径フランジ部43を硬化した樹脂60から切り離す実施形態を示している。
【0050】
まず、第1の配管40の小径フランジ部43のフランジシール面43aと、第2の配管51のフランジ52のフランジシール面52aをアルコールなどを用いて清掃する(ステップ1)。次いで、小径フランジ部43のフランジシール面43aにテフロン(登録商標)スプレーを用いてテフロン(登録商標)被膜を形成する(ステップ2)。次いで、第1の配管40のフランジ41が第2の配管51のフランジ52と対面するように、第1の配管40を第2の配管51に対して位置合わせする(ステップ3)。次いで、小径フランジ部43と第2の配管51のフランジ52との間に隙間Sができるように、大径フランジ部44と第2の配管51のフランジ52との間に弾性スペーサ46が挟まれる(ステップ4)。さらに、弾性スペーサ46に形成された貫通孔80に中空パイプ81が挿入される。大径フランジ部44と第2の配管51のフランジ52との間に弾性スペーサ46を挟んだ状態で、大径フランジ部44と第2の配管51のフランジ52とが締結部材54により締結される(ステップ5)。
【0051】
次いで、第1の配管40と第2の配管51の内面にゴムシート61が貼付され、隙間Sの内側開口端がゴムシート61によって閉じられる(ステップ6)。ゴムシート61を貼付した後で、このゴムシート61は、第1の配管40と第2の配管51の内面にゴムシート固定治具70により押圧されるのが好ましい。次いで、流動性のあるエポキシ樹脂60が用意され、充填機86に詰め込まれる(ステップ7)。そして、エポキシ樹脂60を、充填機86を用いて、弾性スペーサ46の最下部に設けられた貫通孔80に挿入された中空パイプ81から隙間Sに注入する(ステップ8)。このとき、弾性スペーサ46の最上部に設けた貫通孔80に挿入された中空パイプ81は、空気抜き孔として機能する。弾性スペーサ46の最上部に設けた貫通孔80に挿入された中空パイプ81から、エポキシ樹脂60が流れ出てくるのが確認された後、エポキシ樹脂60の注入が終了される(ステップ9)。
【0052】
隙間Sがエポキシ樹脂60で満たされた状態で、エポキシ樹脂60を硬化させる(ステップ10)。エポキシ樹脂60が硬化した後で、ゴムシート61およびゴムシート固定治具70を取り外す(ステップ11)。次いで、ナット56をボルト55から外し、第1の配管40を第2の配管51から切り離す(ステップ12)。このとき、小径フランジ部43のフランジ面43aには、テフロン(登録商標)被膜が形成されているので、小径フランジ部43を硬化した樹脂60から容易に剥がすことができる。このとき、弾性スペーサ46を取り外す。次いで、隙間Sの全体がエポキシ樹脂60で完全に満たされているか否かを樹脂60の硬化面から確認する(ステップ13)。隙間Sの全体がエポキシ樹脂60で満たされていれば、小径フランジ部43と硬化した樹脂60との間にシール材65を配置して(ステップ14)、第1の配管40のフランジ41と第2の配管51のフランジ52とを締結部材54により接続する(ステップ15)。その後、必要に応じて流体による耐圧試験を実施する。以上で、本実施形態の配管接続方法が完了する。
【0053】
これまで説明してきた実施形態では、第1の配管40と第2の配管51とが断面が円形状の円管として構成されている。しかしながら、本発明の配管接続方法と配管接続構造は、第1の配管40と第2の配管51とが断面が矩形状の矩形管であっても適用することができる。2000mm以上の大口径配管の場合、製作の都合から矩形管となることが多い。大口径の配管の場合、僅かな据付誤差であってもフランジ端面では大きなずれを生じてしまう。そのため、従来のルーズフランジ短管では、フランジ端面のずれを吸収することができない。また、現合管を現場で仮溶接する場合には、溶接作業が大掛かりとなり、作業者の負担が大きい。本発明の配管接続方法および配管接続構造は、現場での溶接作業を伴わずに大きなずれを吸収することができるので、非常に有効な技術である。
【0054】
また、上述の実施形態では、立軸ポンプの吐出管4に対して本発明の配管接続方法および配管接続構造を適用した例を説明してきたが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明は、横軸ポンプの吐出管に対しても適用が可能である。その他にも、現合管を必要とするような据付誤差が発生している配管接続部位であれば、本発明を適用することができる。
【0055】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。