【文献】
金山 賢一郎 外1名,時間相関イメージセンサによる三次元計測,ViEW2010ビジョン技術の実利用ワークショップ講演論文集,2010年,I-40,p.307−310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光の強度の違いによって生じる縞パターンの移動で、光の強度の周期的な時間変化を与える面的な照明部で生じさせている前記縞パターンの周期と撮像間隔が一致している、時間相関カメラまたはそれと等価な動作をする撮像システムを用いて、前記撮像間隔の間に検査対象から反射した光信号による輝度値を示した強度画像データと、前記撮像間隔の間に検査対象から反射した光信号の輝度変化から算出された振幅画像データと、を生成し、
前記強度画像データ及び前記振幅画像データに基づいて、前記検査対象の透明な層の表面から反射した成分を示した正反射画像データと、前記透明な層の内部から反射した成分を示した拡散反射画像データと、を生成する、
検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
本実施形態の検査システムについて説明する。第1の実施形態の検査システムは、被検査体を検査するために様々な構成を備えている。
図1は、本実施形態の検査システムの構成例を示した図である。
図1に示されるように、本実施形態の検査システムは、PC100と、時間相関カメラ110と、照明装置120と、スクリーン130と、アーム140と、を備えている。
【0009】
アーム140は、被検査体150を固定するために用いられ、PC100からの制御に応じて、時間相関カメラ110が撮影可能な被検査体150の表面の位置と向きを変化させる。
【0010】
照明装置120は、被検査体150に光を照射する装置であって、PC100からの縞パターンに従って、照射する光の強度を領域単位で制御できる。さらに、照明装置120は、周期的な時間の遷移に従って当該領域単位の光の強度を制御できる。換言すれば、照明装置120は、光の強度の周期的な時間変化及び空間変化を与えることができる。なお、具体的な光の強度の制御手法については後述する。
【0011】
スクリーン130は、照明装置120から出力された光を拡散させた上で、被検査体150に対して面的に光を照射する。本実施形態のスクリーン130は、照明装置120から入力された周期的な時間変化及び空間変化が与えられた光を、面的に被検査体150に照射する。なお、照明装置120とスクリーン130との間には、集光用のフレネルレンズ等の光学系部品(図示されず)が設けられてもよい。
【0012】
なお、本実施形態は、照明装置120とスクリーン130とを組み合わせて、光強度の周期的な時間変化及び空間変化を与える面的な照射部を構成する例について説明するが、このような組み合わせに制限するものではなく、例えば、LEDを面的に配置して照明部を構成してもよい。
【0013】
時間相関カメラ110は、光学系210と、イメージセンサ220と、データバッファ230と、制御部240と、参照信号出力部250と、を備えている。
図2は、本実施形態の時間相関カメラ110の構成を示したブロック図である。
【0014】
光学系210は、撮影レンズ等を含み、時間相関カメラ110の外部の被写体(被検査体を含む)からの光束を透過し、その光束により形成される被写体の光学像を結像させる。
【0015】
イメージセンサ220は、光学系210を介して入射された光の強弱を光強度信号として画素毎に高速に出力可能なセンサとする。
【0016】
本実施形態の光強度信号は、検査システムの照明装置120が被写体(被検査体を含む)に対して光を照射し、当該被写体からの反射光を、イメージセンサ220が受け取ったものである。
【0017】
イメージセンサ220は、例えば従来のものと比べて高速に読み出し可能なセンサであり、行方向(x方向)、列方向(y方向)の2種類の方向に画素が配列された2次元平面状に構成されたものとする。そして、イメージセンサ220の各画素を、画素P(1,1),……,P(i,j),……,P(X,Y)とする(なお、本実施形態の画像サイズをX×Yとする。)。なお、イメージセンサ220の読み出し速度を制限するものではなく、従来と同様であってもよい。
【0018】
イメージセンサ220は、光学系210によって透過された、被写体(被検査体を含む)からの光束を受光して光電変換することで、被写体から反射された光の強弱を示した光強度信号(撮影信号)で構成される、2次元平面状のフレームを生成し、制御部240に出力する。本実施形態のイメージセンサ220は、読み出し可能な単位時間毎に、当該フレームを出力する。
【0019】
本実施形態の制御部240は、例えばCPU、ROM、及びRAM等で構成され、ROMに格納された検査プログラムを実行することで、転送部241と、読出部242と、強度画像用重畳部243と、第1の乗算器244と、第1の相関画像用重畳部245と、第2の乗算器246と、第2の相関画像用重畳部247と、画像出力部248と、を実現する。なお、CPU等で実現することに制限するものではなく、FPGA、またはASICで実現してもよい。
【0020】
転送部241は、イメージセンサ220から出力された、光強度信号で構成されたフレームを、データバッファ230に、時系列順に蓄積する。
【0021】
データバッファ230は、イメージセンサ220から出力された、光強度信号で構成されたフレームを、時系列順に蓄積する。
【0022】
図3は、本実施形態の時間相関カメラ110で時系列順に蓄積されたフレームを表した概念図である。
図3に示されるように、本実施形態のデータバッファ230には、時刻t(t=t0,t1,t2,……,tn)毎の複数の光強度信号G(1,1,t),……,G(i,j,t),……,G(X,Y,t)の組み合わせで構成された複数のフレームFk(k=1,2,……,n)が、時系列順に蓄積される。なお、時刻tで作成される一枚のフレームは、光強度信号G(1,1,t),……,G(i,j,t),……,G(X,Y,t)で構成される。
【0023】
本実施形態の光強度信号(撮像信号)G(1,1,t),……,G(i,j,t),……,G(X,Y,t)には、フレーム画像Fk(k=1,2,……,n)を構成する各画素P(1,1),……,P(i,j),……,P(X,Y)が対応づけられている。
【0024】
イメージセンサ220から出力されるフレームは、光強度信号のみで構成されており、換言すればモノクロの画像データとも考えることができる。なお、本実施形態は、解像度、感度、及びコスト等を考慮して、イメージセンサ220がモノクロの画像データを生成する例について説明するが、イメージセンサ220としてモノクロ用のイメージセンサに制限するものではなく、カラー用のイメージセンサを用いてもよい。
【0025】
図2に戻り、本実施形態の読出部242は、データバッファ230から、光強度信号G(1,1,t),……,G(i,j,t),……,G(X,Y,t)をフレーム単位で、時系列順に読み出して、第1の乗算器244と、第2の乗算器246と、強度画像用重畳部243と、に出力する。
【0026】
本実施形態の時間相関カメラ110は、読出部242の出力先毎に画像データを生成する。換言すれば、時間相間カメラ110は、3種類の画像データを作成する。
【0027】
本実施形態の時間相関カメラ110は、3種類の画像データとして、強度画像データと、2種類の時間相関画像データと、を生成する。なお、本実施形態は、3種類の画像データを生成することに制限するものではなく、強度画像データを生成しない場合や、1種類又は3種類以上の時間相関画像データを生成する場合も考えられる。
【0028】
本実施形態のイメージセンサ220は、上述したように単位時間毎に、光強度信号で構成されたフレームを出力している。しかしながら、通常の画像データを生成するためには、撮影に必要な露光時間分の光強度信号が必要になる。そこで、本実施形態では、強度画像用重畳部243が、撮影に必要な露光時間分の複数のフレームを重畳して、強度画像データを生成する。なお、強度画像データの各画素値(光の強度を表す値)G(x,y)は、以下に示す式(1)から導き出すことができる。なお、露光時間は、t0とtnの時間差とする。強度画像データとは、時間相関カメラ110で撮像されている間(撮像間隔の間)に検査対象から反射した光信号による輝度値を示した画像データとする。
【0030】
これにより、従来のカメラの撮影と同様に、被写体(被検査体を含む)が撮影された強度画像データが生成される。そして、強度画像用重畳部243は、生成した強度画像データを、画像出力部248に出力する。
【0031】
時間相関画像データは、時間遷移に応じた光の強弱の変化を示す画像データである。つまり、本実施形態では、時系列順のフレーム毎に、当該フレームに含まれる光強度信号に対して、時間遷移を示した参照信号を乗算し、参照信号と光強度信号と乗算結果である時間相関値で構成された、時間相関値フレームを生成し、複数の時間相関値フレームを重畳することで、時間相関画像データを生成する。
【0032】
ところで、時間相関画像データを用いて、被検査体の異常を検出するためには、イメージセンサ220に入力される光強度信号を、参照信号に同期させて変化させる必要がある。このために、照明装置120が、上述したように、スクリーン130を介して周期的に時間変化および縞の空間的な移動を与えるような、面的な光の照射を行うこととした。
【0033】
本実施形態では、2種類の時間相関画像データを生成する。参照信号は、時間遷移を表した信号であればよいが、本実施形態では、複素正弦波e
-jωtを用いる。なお、角周波数ω、時刻tとする。参照信号を表す複素正弦波e
-jωtが、上述した露光時間(換言すれば強度画像データ、時間相関画像を生成するために必要な時間)の一周期と相関をとるように、角周波数ωが設定されるものとする。換言すれば、照明装置120およびスクリーン130等の照明部によって形成された面的かつ動的な光は、被検査体150の表面(反射面)の各位置で第一の周期(時間周期)での時間的な照射強度の変化を与えるとともに、表面に沿った少なくとも一方向に沿った第二の周期(空間周期)での空間的な照射強度の増減分布を与える。この面的な光は、表面で反射される際に、当該表面のスペック(法線ベクトルの分布等)に応じて複素変調される。時間相関カメラ110は、表面で複素変調された光を受光し、第一の周期の参照信号を用いて直交検波(直交復調)することにより、複素信号としての時間相関画像データを得る。このような複素時間相関画像データに基づく変復調により、表面の法線ベクトルの分布に対応した特徴を検出することができる。
【0034】
複素正弦波e
-jωtは、e
-jωt=cos(ωt)―j・sin(ωt)と表すこともできる。従って、時間相関画像データの各画素値C(x,y)は、以下に示す式(2)から導き出すことができる。
【0036】
本実施形態では、式(2)において、実数部を表す画素値C1(x,y)と、虚数部を表す画素値C2(x,y)と、に分けて2種類の時間相関画像データを生成する。
【0037】
このため、参照信号出力部250は、第1の乗算器244と、第2の乗算器246と、に対してそれぞれ異なる参照信号を生成し、出力する。本実施形態の参照信号出力部250は、複素正弦波e
-jωtの実数部に対応する第1の参照信号cosωtを第1の乗算器244に出力し、複素正弦波e
-jωtの虚数部に対応する第2の参照信号sinωtを第2の乗算器246に出力する。このように本実施形態の参照信号出力部250は、互いにヒルベルト変換対をなす正弦波および余弦波の時間関数として表される2種類の参照信号を出力する例について説明するが、参照信号は時間関数のような時間遷移に応じて変化する参照信号であればよい。
【0038】
そして、第1の乗算器244は、読出部242から入力されたフレーム単位で、当該フレームの光強度信号毎に、参照信号出力部250から入力された複素正弦波e
-jωtの実数部に対応する第1の参照信号cosωtを乗算する。
【0039】
第1の相関画像用重畳部245は、撮影に必要な露光時間分の複数のフレームについて、第1の乗算器244の乗算結果を画素毎に重畳する処理を行う。これにより、第1の時間相関画像データの各画素値C1(x,y)が、以下の式(3)から導出される。
【0041】
そして、第2の乗算器246は、読出部242から入力されたフレームの光強度信号に対して、参照信号出力部250から入力された複素正弦波e
-jωtの虚数部に対応する第2の参照信号sinωtを乗算する。
【0042】
第2の相関画像用重畳部247は、撮影に必要な露光時間分の複数のフレームについて、第2の乗算器246の乗算結果を画素毎に重畳する処理を行う。これにより、第2の時間相関画像データの各画素値C2(x,y)が、以下の式(4)から導出される。
【0044】
上述した処理を行うことで、2種類の時間相関画像データ、換言すれば2自由度を有する時間相関画像データを生成できる。
【0045】
また、本実施形態は、参照信号の種類を制限するものでない。例えば、本実施形態では、複素正弦波e
-jωtの実部と虚部の2種類の時間相関画像データを作成するが、光の振幅と、光の位相と、による2種類の画像データを生成してもよい。
【0046】
なお、本実施形態の時間相関カメラ110は、時間相関画像データとして、複数系統分作成可能とする。これにより、例えば複数種類の幅の縞が組み合わされた光が照射された際に、上述した実部と虚部とによる2種類の時間相関画像データを、縞の幅毎に作成可能とする。このために、時間相関カメラ110は、2個の乗算器と2個の相関画像用重畳部とからなる組み合わせを、複数系統分備えるとともに、参照信号出力部250は、系統毎に適した角周波数ωによる参照信号を出力可能とする。
【0047】
そして、画像出力部248が、2種類の時間相関画像データと、強度画像データと、をPC100に出力する。これにより、PC100が、2種類の時間相関画像データと、強度画像データと、を用いて、被検査体の異常を検出する。そのためには、被写体に対して光を照射する必要がある。
【0048】
本実施形態の照明装置120は、高速に移動する縞パターンを照射する。
図4は、本実施形態の照明装置120が照射する縞パターンの一例を示した図である。
図4に示す例では、縞パターンをx方向にスクロール(移動)させている例とする。白い領域が縞に対応した明領域、黒い領域が縞と縞との間に対応した間隔領域(暗領域)である。
【0049】
本実施形態では、照明装置120としてプロジェクタを用いる例とする。そして、プロジェクタである照明装置120から照射された光が、スクリーンを介して、被写体(被検査体を含む)に照射される。
【0050】
本実施形態では、時間相関カメラ110が強度画像データ及び時間相関画像データを撮影する露光時間で、照明装置120が照射する縞パターンが一周期分移動させる。これにより、照明装置120は、光の強度の縞パターンの空間的な移動により光の強度の周期的な時間変化を与える。本実施形態では、
図4の縞パターンが一周期分移動する時間を、露光時間と対応させることで、時間相関画像データの各画素には、少なくとも、縞パターン一周期分の光の強度信号に関する情報が埋め込まれる。
【0051】
図4に示されるように、本実施形態では、照明装置120が矩形波に基づく縞パターンを照射する例について説明するが、矩形波以外を用いてもよい。本実施形態では、照明装置120がスクリーン130を介して照射されることで、矩形波の明暗の境界領域をぼかすことができる。
【0052】
まずは、照明装置120が照射する縞パターンをA+Acos(ωt+kx)と表した場合について説明する。すなわち、縞パターンには、複数の縞が反復的に(周期的に)含まれる。なお、被検査体に照射される光の強度は0〜2Aの間で調整可能とし、光の位相kxとする。kは、縞の波数である。xは、位相が変化する方向である。
【0053】
そして、フレームの各画素の光強度信号f(x,y,t)の基本周波数成分は、以下の式(5)として表すことができる。式(5)で示されるように、x方向で縞の明暗が変化する。
【0054】
f(x,y,t)=A(1+cos(ωt+kx))
=A+A/2{e
j(ωt+kx)+e
-j(ωt+kx)}……(5)
【0055】
式(5)で示されるように、照明装置120が照射する縞パターンの強度信号は、複素数として考えることができる。
【0056】
そして、イメージセンサ220には、当該照明装置120からの光が被写体(被検査体を含む)から反射して入力される。
【0057】
したがって、イメージセンサ220に入力される光強度信号G(x,y,t)を、照明装置120が照射された際のフレームの各画素の光強度信号f(x,y,t)とできる。そこで、強度画像データを導出するための式(1)に式(5)を代入すると、式(6)を導出できる。なお、位相kxとする。
【0059】
式(6)から、強度画像データの各画素には、露光時間Tに、照明装置120が出力している光の強度の中間値Aを乗じた値が入力されていることが確認できる。さらに、時間相関画像データを導出するための式(2)に式(5)を代入すると、式(7)を導出できる。なお、AT/2を振幅とし、kxを位相とする。
【0061】
これにより、式(7)で示された複素数で示された時間相関画像データは、上述した2種類の時間相関画像データと置き換えることができる。つまり、上述した実部と虚部とで構成される時間相関画像データには、検査体に照射された光強度変化における位相変化と振幅変化とが含まれている。換言すれば、本実施形態のPC100は、2種類の時間相関画像データに基づいて、照明装置120から照射された光の位相変化と、光の振幅変化と、を検出できる。そこで、本実施形態のPC100が、時間相関画像データ及び強度画像データに基づいて、画素毎に入る光の振幅を表した振幅画像データと、画素毎に入る光の位相変化を表した位相画像データと、を生成できる。そして、生成した振幅画像データ及び位相画像データのうちいずれか一つ以上を用いることで、被検査体の異常を検出する。
【0062】
ところで、被検査体の表面形状に凹凸に基づく異常が生じている場合、被検査体の表面の法線ベクトルの分布には異常に対応した変化が生じている。また、被検査体の表面に光を吸収するような異常が生じている場合、反射した光の強度に変化が生じる。法線ベクトルの分布の変化は、光の位相変化及び振幅変化のうち少なくともいずれか一つとして検出される。そこで、本実施形態では、時間相関画像データ及び強度画像データを用いて、法線ベクトルの分布の変化に対応した、光の位相変化及び振幅変化のうち少なくともいずれか一つを検出する。これにより、表面形状の異常を検出可能となる。次に、被検査体の異常、法線ベクトル、及び光の位相変化又は振幅変化の関係について説明する。
【0063】
図5は、第1の実施形態の時間相関カメラ110による、被検査体の異常の第1の検出例を示した図である。
図5に示される例では、被検査体500に突形状の異常501がある状況とする。当該状況においては、異常501の点502の近傍領域においては、法線ベクトル521、522、523が異なる方向を向いていることを確認できる。そして、当該法線ベクトル521、522、523が異なる方向を向いていることで、異常501から反射した光に拡散(例えば、光511、512、513)が生じ、時間相関カメラ110のイメージセンサ220の任意の画素531に入る縞パターンの幅503が広くなる。
【0064】
図6は、
図5に示される異常501が被検査体500にある場合に、当該異常に応じて変化する、光の振幅の例を表した図である。
図6に示される例では、光の振幅を実部(Re)と、虚部(Im)に分けて2次元平面上に表している。
図6では、
図5の光511、512、513に対応する光の振幅611、612、613として示している。そして、光の振幅611、612、613は互いに打ち消し合い、イメージセンサ220の当該任意の画素531には、振幅621の光が入射する。
【0065】
したがって、
図6に示される状況で、検査体500の異常501が撮像された領域で振幅が小さいことが確認できる。換言すれば、振幅変化を示した振幅画像データで、周囲と比べて暗くなっている領域がある場合に、当該領域で光同士の振幅の打ち消し合いが生じていると推測できるため、当該領域に対応する被検査体500の位置で異常501が生じていると判断できる。
【0066】
本実施形態の検査システムは、
図5の異常501のように傾きが急峻に変化しているものに限らず、緩やかに変化する異常も検出できる。
図7は、第1の実施形態の時間相関カメラ110による、被検査体の異常の第2の検出例を示した図である。
図7に示される例では、正常な場合は被検査体の表面が平面(換言すれば法線が平行)となるが、被検査体700に緩やかな勾配701が生じた状況とする。このような状況においては、勾配701上の法線ベクトル721、722、723も同様に緩やかに変化する。したがって、イメージセンサ220に入力する光711、712、713も少しずつずれていく。
図7に示される例では、緩やかな勾配701のために光の振幅の打ち消し合いは生じないため、
図5、
図6で表したような光の振幅はほとんど変化しない。しかしながら、本来スクリーン130から投影された光が、そのままイメージセンサに平行に入るはずが、緩やかな勾配701のために、スクリーン130から投影された光が平行の状態でイメージセンサに入らないために、光に位相変化が生じる。従って、光の位相変化について、周囲等との違いを検出することで、
図7に示したような緩やかな勾配701による異常を検出できる。
【0067】
また、被検査体の表面形状(換言すれば、被検査体の法線ベクトルの分布)以外にも異常が生じる場合がある。
図8は、第1の実施形態の時間相関カメラ110による、被検査体の異常の第3の検出例を示した図である。
図8に示される例では、被検査体800に汚れ801が付着しているため、照明装置120から照射された光が吸収あるいは拡散反射し、時間相関カメラ110の、汚れ801を撮影している任意の画素領域では光がほとんど強度変化しない例を表している。換言すれば、汚れ801を撮影している任意の画素領域では、光強度は位相打ち消しを起こし振動成分がキャンセルされ、ほとんど直流的な明るさになる例を示している。
【0068】
このような場合、汚れ801を撮影している画素領域においては、光の振幅がほとんどないため、振幅画像データを表示した際に、周囲と比べて暗くなる領域が生じる。したがって、当該領域に対応する被検査体800の位置に、汚れ等の異常801があることを推定できる。
【0069】
このように、本実施形態では、時間相関画像データに基づいて、光の振幅の変化と、光の位相の変化と、を検出することで、被検査体に異常があることを推定できる。
【0070】
図1に戻り、PC100について説明する。PC100は、検出システム全体の制御を行う。PC100は、アーム制御部101と、照明制御部102と、制御部103と、を備える。
【0071】
アーム制御部101は、被検査体150の時間相関カメラ110による撮像対象となる表面を変更するために、アーム140を制御する。本実施形態では、PC100において、被検査体の撮影対象となる表面を複数設定しておく。そして、時間相関カメラ110が被検査体150の撮影が終了する毎に、アーム制御部101が、当該設定に従って、時間相関カメラ110が設定された表面を撮影できるように、アーム140が被検査体150を移動させる。なお、本実施形態は撮影が終了する毎にアームを移動させ、撮影が開始する前に停止させることを繰り返すことに制限するものではなく、継続的にアーム140を駆動させてもよい。なお、アーム140は、搬送部、移動部、位置変更部、姿勢変更部等とも称されうる。
【0072】
照明制御部102は、被検査体150を検査するために照明装置120が照射する縞パターンを出力する。本実施形態の照明制御部102は、少なくとも3枚以上の縞パターンを、照明装置120に受け渡し、当該縞パターンを露光時間中に切り替えて表示するように照明装置120に指示する。
【0073】
図9は、照明制御部102が照明装置120に出力する縞パターンの例を示した図である。
図9(B)に示す矩形波に従って、
図9(A)に示す黒領域と白領域とが設定された縞パターンが出力されるように、照明制御部102が制御を行う。
【0074】
本実施形態で照射する縞パターン毎の縞の間隔は、検出対象となる異常(欠陥)の大きさに応じて設定されるものとしてここでは詳しい説明を省略する。
【0075】
また、縞パターンを出力するための矩形波の角周波数ωは、参照信号の角周波数ωと同じ値とする。
【0076】
図9に示されるように、照明制御部102が出力する縞パターンは、矩形波として示すことができるが、スクリーン130を介することで、縞パターンの境界領域をぼかす、すなわち、縞パターンにおける明領域(縞の領域)と暗領域(間隔の領域)との境界での光の強度変化を緩やかにする(鈍らせる)ことで、正弦波に近似させることができる。
図10は、スクリーン130を介した後の縞パターンを表した波の形状の例を示した図である。
図10に示されるように波の形状が、正弦波に近づくことで、計測精度を向上させることができる。また、縞に明度が多段階に変化するグレー領域を追加したり、グラデーションを与えたりしてもよい。また、カラーの縞を含む縞パターンを用いてもよい。
【0077】
図1に戻り、制御部103は、振幅−位相画像生成部104と、反射成分画像生成部105と、異常検出処理部106と、を備え、時間相関カメラ110から入力された強度画像データと、時間相関画像データと、により、被検査体150の検査対象面の法線ベクトルの分布と対応した特徴であって、周囲との違いによって異常を検出する特徴を算出するための処理を行う。なお、本実施形態は、検査を行うために、複素数で示した時間相関画像データ(複素時間相関画像データと称す)の代わりに、複素数相関画像データの実部と虚部とで分けた2種類の時間相関画像データを、時間相関カメラ110から受け取る。
【0078】
振幅−位相画像生成部104は、時間相関カメラ110から入力された強度画像データと、時間相関画像データと、に基づいて、振幅画像データと、位相画像データと、を生成する。
【0079】
振幅画像データは、時間相関カメラ110による撮像されている間(撮像間隔の間)に検査対象面から反射した光信号の輝度変化から算出された、画素毎に入る光の振幅を表した画像データとする。位相画像データは、画素毎に入る光の位相を表した画像データとする。
【0080】
本実施形態は振幅画像データの算出手法を制限するものではないが、例えば、振幅−位相画像生成部104は、2種類の時間相関画像データの画素値C1(x,y)及びC2(x,y)から、式(8)を用いて、振幅画像データの各画素値F(x,y)を導き出せる。
【0082】
ところで、被検査体の被検査面が、例えば、下地、下地の上で塗装が行われた面、さらにこの上に透明な層(以下、クリア層とも称す)等のような複数の層から構成される場合がある。このような場合、いずれの層に異常が存在するかを検出することができれば、より正確に異常検出を行うことができる。
【0083】
図11は、被検査体のクリア層と内層とから反射した光を例示した図である。
図11に示される例では、被検査体1101は、内層1111と、内層1111の表面に塗装されたクリア層1112を含んでいる。
【0084】
そして、照明装置120より出射された照明光は、クリア層1112の表面で正反射して、時間相関カメラ110に向かう光1121と、クリア層1112内部を透過して、内層1111の内部に入り込んで内層1111内部で多数の反射を繰り返して、その結果拡散光となって内層1111、クリア層1112から出射し、時間相関カメラ110に向かう光1122と、に分かれる。クリア層1112の表面で正反射した光1121を、正反射成分と称し、内層1111の内部に入り込み、拡散光として内層1111、クリア層1112から出射された光1122を、拡散反射成分とも称する。
【0085】
このように、時間相関カメラ110は、正反射成分と、拡散反射成分と、の組み合わせを受光する。
【0086】
図12は、時間相関カメラ110が受光する正反射成分と、拡散反射成分と、を例示した図である。
図12に示されるように、正反射成分1201は、照明装置120が照射する縞パターンの輝度値が変化する周期に従って、輝度値が変化する。なお、正反射成分1201の振幅Bは、当該被検査体の正反射率や、実測に基づいて定められるものとする。
【0087】
そして、本実施形態の反射成分画像生成部105は、強度画像データから、正反射成分1201と、拡散反射成分1202と、に分ける。これにより、正反射成分1201に基づいてクリア層1112の表面の検査と、拡散反射成分1202に基づいてクリア層1112の内層1111内部の検査と、を実現できる。
【0088】
図12に示される例では、時間相関カメラ110が受光する輝度を求める式f’(x,y,t)は、以下の式(9)で示される。なお、光の位相kxとする。
【0089】
G’(x,y,t)=A+Bcos(ωt+kx)…(9)
【0090】
そして、G’(x,y,t)は、撮像間隔毎の輝度値、換言すればクリア層が塗布された場合の強度画像データは、下記の式(10)から導出できる。
【0092】
式(10)に示されるように、
図12に示される例において、照明装置120が照射する縞パターン一周期で、時間相関カメラ110が受光する光強度信号の合計値である強度画像データは、ATとなる。
【0093】
また、式(8)、式(3)、式(4)は、拡散反射成分を考慮しない場合であったが、成分振幅−位相画像生成部104は、式(8)、式(3)、式(4)におけるG(x、y、z)に対して、式(9)で示したG’(x,y,t)を代入する。これにより、クリア層が塗布されている場合の振幅データF’(x,y)として、式(11)を導出できる。
【0095】
なお、式(11)で示したC1’(x,y)、C2’(x,y)は、下の式(12)、式(13)から導出する。
【0097】
同様に、振幅−位相画像生成部104は、画素値C1’(x,y)及びC2’(x,y)から、式(14)を用いて、クリア層が塗布されている場合における、位相画像データの各画素値P’(x,y)を導き出せる。
【0099】
そして、本実施形態の反射成分画像生成部105は、振幅−位相画像生成部104により生成された強度画像データAT及び振幅画像データF’(x,y)に基づいて、被検査体の被検査面の透明な層の表面から反射した正反射画像データと、被検査体の被検査面の透明な層の内部から反射した拡散反射画像データと、を生成する。
【0100】
振幅画像データは、変動する正反射成分の1/2に相当する。そこで、反射成分画像生成部105は、振幅画像データF’(x,y)を2倍して、正反射成分の画像データを算出する。
【0101】
上述したように、強度画像データ=正反射成分の画像データ+拡散反射成分の画像データとなる。そこで、反射成分画像生成部105は、拡散反射成分の画像データを、強度画像データAT−正反射成分の画像データ2・F’(x,y)から導出する。
【0102】
図13は、拡散反射成分を示した画像データ(以下、拡散反射画像データと称す)を生成するための概念を例示した図である。
図13に示されるように、強度画像データから、振幅画像データ*2を減算することで拡散反射画像データを生成できる。
【0103】
そして、本実施形態では、正反射成分の画像データに基づいて異常の検出を行うことで、被検査体のクリア層表面の異常の検出を行うことができる。さらには、拡散反射画像データに基づいて、異常の検出を行うことで、被検査体のクリア層内部の内層の異常の検出を行うことができる。
【0104】
異常検出処理部106は、反射成分画像生成部105により生成された振幅画像データ、及び拡散反射データを用いて、検査対象面の異常を検出する。
【0105】
次に、本実施形態の異常検出処理部106における振幅画像データに基づく異常検出処理について説明する。
図14は、本実施形態の異常検出処理部106における当該処理の手順を示すフローチャートである。
【0106】
まず、異常検出処理部106は、正反射成分(振幅の2倍)の画像データの各画素に格納された、光の振幅値(を表した画素値)から、当該画素を基準(例えば中心)として、N×N領域の平均振幅値を減算し(ステップS1401)、振幅の平均差分画像データを生成する。振幅の平均差分画像データは、振幅の勾配に対応する。なお、整数Nは実施の態様に応じて適切な値が設定される。
【0107】
次に、異常検出処理部106は、減算により生成された振幅の平均差分画像データに対して、予め定められた振幅の閾値を用いたマスク処理を行う(ステップS1402)。
【0108】
さらに、異常検出処理部106は、平均差分画像データのマスク領域内について画素毎に標準偏差を算出する(ステップS1403)。なお、本実施形態では、標準偏差に基づいた手法について説明するが、標準偏差を用いた場合に制限するものではなく、例えば平均値等を用いてもよい。
【0109】
そして、異常検出処理部106は、平均を引いた振幅画素値が−4.5σ(σ:標準偏差)より小さい値の画素を、異常(欠陥)がある領域として検出する(ステップS1404)。
【0110】
上述した処理手順により、各画素の振幅値(換言すれば、振幅の分布)から、被検査体のクリア層表面の異常を検出できる。
【0111】
そして、本実施形態の異常検出処理部106は、拡散反射画像データを用いて、被検査体のクリア層の内面について異常を検出する。なお、拡散反射画像データを用いた異常の検出手法は、従来用いられている手法と同様の手法を用いても良いものとして、説明を省略する。
【0112】
また、本実施形態の異常検出処理部106は、振幅画像データを用いた異常の検出手法と、拡散画像データを用いた異常の検出手法と、に制限するものではなく、例えば、位相画像データを用いた異常の検出手法や、強度画像データと他の画像データとの比較結果を用いた異常の検出手法等を用いてもよい。
【0113】
次に、本実施形態の検査システムにおける被検査体の検査処理について説明する。
図15は、本実施形態の検査システムにおける上述した処理の手順を示すフローチャートである。なお、被検査体150は、すでにアーム140に固定された状態で、検査の初期位置に配置されているものとする。
【0114】
本実施形態のPC100が、照明装置120に対して、被検査体を検査するための縞パターンを出力する(ステップS1501)。
【0115】
照明装置120は、PC100から入力された縞パターンを格納する(ステップS1521)。そして、照明装置120は、格納された縞パターンを、時間遷移に従って変化するように表示する(ステップS1522)。なお、照明装置120が表示を開始する条件は、縞パターンが格納された際に制限するものではなく、例えば検査者が照明装置120に対して開始操作を行った際でもよい。
【0116】
そして、PC100の制御部103が、時間相関カメラ110に対して、撮影の開始指示を送信する(ステップS1502)。
【0117】
次に、時間相関カメラ110が、送信されてきた撮影開始指示に従って、被検査体150を含む領域について撮像を開始する(ステップS1511)。次に、時間相関カメラ110の制御部240が、強度画像データと、時間相関画像データと、を生成する(ステップS1512)。そして、時間相関カメラ110の制御部240が、強度画像データと、時間相関画像データと、を、PC100に出力する(ステップS1513)。
【0118】
PC100の制御部103は、強度画像データと、時間相関画像データと、を受け取る(ステップS1503)。そして、振幅−位相画像生成部104は、受け取った強度画像データと時間相関画像データとから、振幅画像データと、位相画像データとを生成する(ステップS1504)。
【0119】
そして、反射成分画像生成部105が、強度画像データ、及び振幅画像データに基づいて、正反射成分の画像データと、拡散反射成分の画像データと、を生成する(ステップS1505)。
【0120】
そして、異常検出処理部106が、正反射成分の画像データと、拡散反射成分の画像データとに基づいて、被検査体の異常検出制御を行う(ステップS1506)。そして、異常検出処理部106は、異常検出結果を、PC100が備える(図示しない)表示装置に出力する(ステップS1507)。
【0121】
異常検出結果の出力例としては、強度画像データを表示するとともに、正反射成分の画像データと、拡散反射成分の画像データとに基づいて異常が検出された領域に対応する、強度画像データの領域を、検査者が異常を認識できるように装飾表示するなどが考えられる。また、視覚に基づく出力に制限するものではなく、音声等で異常が検出されたことを出力してもよい。
【0122】
制御部103は、当該被検査体の検査が終了したか否かを判定する(ステップS1508)。検査が終了していないと判定した場合(ステップS1508:No)、アーム制御部101が、予め定められた設定に従って、次の検査対象となる被検査体の表面が、時間相関カメラ110で撮影できるように、アームの移動制御を行う(ステップS1509)。アームの移動制御が終了した後、制御部103が、再び時間相関カメラ110に対して、撮影の開始指示を送信する(ステップS1502)。
【0123】
一方、制御部103は、当該被検査体の検査が終了したと判定した場合(ステップS1508:Yes)、終了指示を時間相関カメラ110に対して出力し(ステップS1510)、処理を終了する。
【0124】
そして、時間相関カメラ110は、終了指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS1514)。終了指示を受け付けていない場合(ステップS1514:No)、再びステップS1511から処理を行う。一方、終了指示を受け付けた場合(ステップS1514:Yes)、処理を終了する。
【0125】
なお、照明装置120の終了処理は、検査者が行ってもよいし、他の構成からの指示に従って終了してもよい。
【0126】
また、本実施形態では、時間相関カメラ110を用いて生成された強度画像データと、時間相関画像データと、を生成する例について説明した。しかしながら、強度画像データと、時間相関画像データと、を生成するために時間相関カメラ110を用いることに制限するものではなく、アナログ的な処理で実現可能な時間相関カメラや、それと等価な動作をする撮像システムを用いてもよい。例えば、通常のデジタルスチルカメラが生成した画像データを出力し、情報処理装置が、デジタルスチルカメラが生成した画像データを、フレーム画像データとして用いて参照信号を重畳することで、時間相関画像データを生成してもよいし、イメージセンサ内で光強度信号に参照信号を重畳するようなデジタルカメラを用いて、時間相関画像データを生成してもよい。
【0127】
(変形例1)
第1の実施形態では、x方向に縞パターンを動かして、被検査体の異常(欠陥)を検出する例について説明した。しかしながら、x方向に垂直なy方向で急峻に法線の分布が変化する異常(欠陥)が被検査体に生じている場合、x方向に縞パターンを動かすよりも、y方向に縞パターンを動かす方が欠陥の検出が容易になる場合がある。そこで、変形例では、x方向に移動する縞パターンと、y方向に移動する縞パターンとを、交互に切り替える例について説明する。
【0128】
本変形例の照明制御部102は、所定の時間間隔毎に、照明装置120に出力する縞パターンを切り替える。これにより、照明装置120は、一つの検査対象面に対して、異なる方向に延びた複数の縞パターンを出力する。
【0129】
図16は、本変形例の照明制御部102が出力する縞パターンの切り替え例を示した図である。
図16の(A)では、照明制御部102は、照明装置120が表示する縞パターンをx方向に遷移させる。その後、
図16の(B)に示されるように、照明制御部102は、照明装置120が表示する縞パターンをy方向に遷移させる。
【0130】
そして、PC100の制御部103は、
図16の(A)の縞パターン照射から得られた時間相関画像データに基づいて、異常検出を行い、
図16の(B)の縞パターン照射から得られた時間相関画像データに基づいて、異常検出を行う。
【0131】
図17は、本変形例の照明制御部102が、異常(欠陥)1601を含めた表面に縞パターンを照射した例を示した図である。
図17に示す例では、異常(欠陥)1601が、x方向に延びている。この場合、照明制御部102は、x方向に交差するy方向、換言すれば異常(欠陥)1601の長手方向に交差する方向に縞パターンが移動するように設定する。当該設定により、検出精度を向上させることができる。
【0132】
図18は、y方向、換言すれば欠陥1601の長手方向に直交する方向に縞パターンを変化させた場合における、異常(欠陥)1701とスクリーン130上の縞パターンの関係を示した図である。
図18に示されるように、y方向に幅が狭く、且つ当該y方向に交差するx方向を長手方向とする異常(欠陥)1701が生じている場合、照明装置120から照射された光は、x方向に交差するy方向で光の振幅の打ち消しが大きくなる。このため、PC100では、y方向に移動させた縞パターンに対応する振幅画像データから、当該異常(欠陥)を検出できる。
【0133】
本変形例の検査システムにおいて、被検査体に生じる欠陥の長手方向がランダムな場合には、複数方向(例えば、x方向、及び当該x方向に交差するy方向等)で縞パターンを表示することで、欠陥の形状を問わずに当該欠陥の検出が可能となり、異常(欠陥)の検出精度を向上させることができる。また、異常の形状に合わせた縞パターンを投影することで、異常の検出精度を向上させることができる。
【0134】
(変形例2)
また、上述した変形例1は、x方向の異常検出と、y方向の異常検出と、を行う際に、縞パターンを切り替える手法に制限するものでない。そこで、変形例2では、照明制御部102が照明装置120に出力する縞パターンをx方向及びy方向同時に動かす例について説明する。
【0135】
図19は、本変形例の照明制御部102が照明装置120に出力する縞パターンの例を示した図である。
図19に示される例では、照明制御部102が縞パターンを、方向1801に移動させる。
【0136】
図19に示される縞パターンは、x方向では1周期1802の縞パターンを含み、y方向では一周期1803の縞パターンを含んでいる。つまり、
図19に示される縞パターンは、幅が異なる交差する方向に延びた複数の縞を有している。なお、x方向の縞パターンの幅と、y方向の縞パターンの幅と、を異ならせる必要がある。これにより、x方向に対応する時間相関画像データと、y方向に対応する時間相関画像データと、を生成する際に、対応する参照信号を異ならせることができる。なお、縞パターンによる光の強度の変化の周期(周波数)が変化すればよいので、縞の幅を変化させるのに変えて、縞パターン(縞)の移動速度を変化させてもよい。
【0137】
そして、時間相関カメラ110が、x方向の縞パターンに対応する参照信号に基づいて、x方向の縞パターンに対応する時間相関画像データを生成し、y方向の縞パターンに対応する参照信号に基づいて、y方向の縞パターンに対応する時間相関画像データを生成する。その後、PC100の制御部103は、x方向の縞パターンに対応する時間相関画像データに基づいて、異常検出を行った後、y方向の縞パターンに対応する時間相関画像データに基づいて、異常検出を行う。これにより、本変形例では、欠陥の生じた方向を問わずに検出が可能となり、異常(欠陥)の検出精度を向上させることができる。
【0138】
上述した実施形態の検査システムにおいては、正反射成分の画像データによるクリア層表面の検査と、拡散反射成分の画像データによるクリア層内部の検査と、を実現しているため、検査精度を向上させることができる。
【0139】
上述した実施形態のPC100で実行される検査プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0140】
また、上述した実施形態のPC100で実行される検査プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述した実施形態のPC100で実行される検査プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。