特許第6420274号(P6420274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6420274硬化性接着剤組成物及びそれを用いた偏光板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6420274
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】硬化性接着剤組成物及びそれを用いた偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20181029BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20181029BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181029BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20181029BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B32B7/02 103
   B32B27/00 D
   C09J4/02
   C09J11/06
【請求項の数】7
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2016-75831(P2016-75831)
(22)【出願日】2016年4月5日
(62)【分割の表示】特願2015-208931(P2015-208931)の分割
【原出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-170418(P2016-170418A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年2月14日
【審判番号】不服2017-17342(P2017-17342/J1)
【審判請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-27495(P2015-27495)
(32)【優先日】2015年2月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪上 智恵
(72)【発明者】
【氏名】中川 弘也
【合議体】
【審判長】 中田 誠
【審判官】 宮澤 浩
【審判官】 清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−543992(JP,A)
【文献】 特開2014−232126(JP,A)
【文献】 特開2013−35968(JP,A)
【文献】 特開2011−116983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B5/30, C09J4/02, C09J11/06, B32B27/00, B32B7/02, G03F1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物と、下記式(I):
【化1】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H原子であるか、又は、O原子及びN原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基である。R1及びR3がH原子であり、R2及びR4が前記置換基であるとき、R2及びR4は、それらが結合しているノルボルネン環の2つのC原子と一緒になって環構造を形成していてもよい。)
で表されるノルボルネン系化合物と、
ラジカル重合開始剤と、を含有し、
前記ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によって前記ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物の重合反応を開始させるものであり、
前記ノルボルネン系化合物の含有量は、前記ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物及び前記ノルボルネン系化合物の合計量100重量部に対して、0.001重量部以上0.55重量部以下である硬化性接着剤組成物。
【請求項2】
ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物と、下記式(I):
【化2】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H原子であるか、又は、O原子及びN原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基(但し、エチレン性不飽和二重結合を含む置換基を除く。)である。R1及びR3がH原子であり、R2及びR4が前記置換基であるとき、R2及びR4は、それらが結合しているノルボルネン環の2つのC原子と一緒になって環構造を形成していてもよい。)
で表されるノルボルネン系化合物と、
ラジカル重合開始剤と、を含有し、
前記ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によって前記ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物の重合反応を開始させるものである硬化性接着剤組成物。
【請求項3】
前記ノルボルネン系化合物の含有量は、前記ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物及び前記ノルボルネン系化合物の合計量100重量部に対して、0.001重量部以上6重量部以下である請求項2に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項4】
偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとを接着するための硬化性接着剤組成物である請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項5】
1、R2、R3及びR4の少なくとも1つが前記置換基であり、
前記置換基は、−C(=O)−、−OH、及び−NH2からなる群より選択される少なくとも1つの構造を含む請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性接着剤組成物。
【請求項6】
光フィルムと、その少なくとも一方の面に接着剤層を介して積層される熱可塑性樹脂フィルムとを含み、
前記接着剤層は、請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性接着剤組成物の硬化物層である偏光板。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、及びセルロースエステル系樹脂からなる群より選択される樹脂で構成される請求項に記載の偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとを接着するための硬化性接着剤組成物、及びそれを用いた偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表される画像表示装置等に広く用いられている偏光板は通常、偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムのような熱可塑性樹脂フィルムを積層貼合した構成を有する。偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの貼合には通常、接着剤が用いられ、当該接着剤の一例としてラジカル重合性接着剤が従来公知である〔例えば、特開2010−286737号公報(特許文献1)〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−286737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また偏光板が適用される画像表示装置には、それが置かれる環境下における耐久性が求められるところ、偏光板にもより一層の耐久性が求められている。そこで本発明は、偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとを接着するための硬化性接着剤組成物であって、耐久性の良好な偏光板を与えることができる硬化性接着剤組成物、及びこれを用いた耐久性の良好な偏光板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示す硬化性接着剤組成物及び偏光板を提供する。
[1]偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとを接着するための硬化性接着剤組成物であって、
ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物と、下記式(I):
【0006】
【化1】
【0007】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H原子であるか、又は、O原子及びN原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基である。R1及びR3がH原子であり、R2及びR4が前記置換基であるとき、R2及びR4は、それらが結合しているノルボルネン環の2つのC原子と一緒になって環構造を形成していてもよい。)
で表されるノルボルネン系化合物と、を含有する硬化性接着剤組成物。
【0008】
[2]R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つが前記置換基であり、
前記置換基は、−C(=O)−、−OH、及び−NH2からなる群より選択される少なくとも1つの構造を含む[1]に記載の硬化性接着剤組成物。
【0009】
[3]R1、R2、R3及びR4のうちのいずれか1つ又はいずれか2つが前記置換基であり、
前記置換基は、−C(=O)−O−アルキル、−C(=O)−NH−アルキル、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−H、−C(=O)−OH、−C(=O)−NH2、−O−C(=O)−アルキル、−OH、−NH2、−アルキレン−OH、及び−アルキレン−NH2からなる群より選択される基であり、前記アルキル及びアルキレンの少なくとも1つの水素原子は、−OH及び−NH2からなる群より選択される基で置換されていてもよい[2]に記載の硬化性接着剤組成物。
【0010】
[4]前記ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物は、(メタ)アクリルアミドモノマーを含み、
1、R2、R3及びR4のうちのいずれか1つ又はいずれか2つが前記置換基であり、
前記置換基は、−C(=O)−NH−アルキル、−NH2、及び−アルキレン−NH2からなる群より選択される基であり、前記アルキル及びアルキレンの少なくとも1つの水素原子は、−OH及び−NH2からなる群より選択される基で置換されていてもよい[2]に記載の硬化性接着剤組成物。
【0011】
[5]ラジカル重合開始剤をさらに含む[1]〜[4]のいずれかに記載の硬化性接着剤組成物。
【0012】
[6]前記偏光フィルムと、その少なくとも一方の面に接着剤層を介して積層される熱可塑性樹脂フィルムとを含み、
前記接着剤層は、[1]〜[5]のいずれかに記載の硬化性接着剤組成物の硬化物層である偏光板。
【0013】
[7]前記熱可塑性樹脂フィルムは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、及びセルロースエステル系樹脂からなる群より選択される樹脂で構成される[6]に記載の偏光板。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る硬化性接着剤組成物によれば、耐久性の良好な偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る偏光板の層構成の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明に係る偏光板の層構成の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<硬化性接着剤組成物>
本発明に係る硬化性接着剤組成物は、偏光フィルムと保護フィルムのような熱可塑性樹脂フィルムとを接着するための硬化性接着剤組成物であり、ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物と、上記式(I)で表されるノルボルネン系化合物(以下、「ノルボルネン系化合物(I)」ともいう。)とを含有する。R1、R2、R3及びR4の詳細については後述する。ノルボルネン系化合物(I)を含有させることにより、偏光フィルムの片面又は両面に硬化性接着剤組成物の硬化物層である接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼合してなる偏光板において偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの密着力(接着力)を改善することができ、ひいては当該偏光板の耐久性を改善することができる。また、上記接着剤層の80℃における貯蔵弾性率を高めることができるので、高温条件と低温条件とが繰り返されるような環境下に置かれたときの偏光板の耐久性(以下、「耐冷熱衝撃性」ともいう。)を改善することもできる。
【0017】
本発明に係る硬化性接着剤組成物は、加熱により硬化する熱硬化性接着剤組成物であってもよいし、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性接着剤組成物であってもよいが、好ましくは活性エネルギー線硬化性接着剤組成物であり、より好ましくは紫外線硬化性接着剤組成物である。
【0018】
(1)ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物
本発明に係る硬化性接着剤組成物は、硬化性(重合性)化合物として、活性エネルギー線の照射や加熱によりラジカル重合反応を起こして硬化する化合物又はオリゴマーであるラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物を含有する。本明細書において「ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物」とは、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいう。「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選択される少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイルオキシ基」や「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」などというときについても同様である。硬化性接着剤組成物は、ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物を1種又は2種以上含有することができる。
【0019】
ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、及び、官能基含有化合物を2種以上反応させて得られ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルオリゴマーなどを挙げることができる。(メタ)アクリルオリゴマーは、好ましくは、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0020】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0021】
単官能(メタ)アクリレートモノマーの一例は、アルキル(メタ)アクリレートである。アルキル(メタ)アクリレートの具体例を挙げると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアラルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレートのようなテルペンアルコールの(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートのようなテトラヒドロフルフリル構造を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートのようなアルキル基部位にシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなアミノアルキル(メタ)アクリレート;2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートのようなアルキル部位にエーテル結合を有する(メタ)アクリレートも単官能(メタ)アクリレートモノマーとして用いることができる。
【0022】
さらに、アルキル部位に水酸基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートや、アルキル部位にカルボキシル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートも用いることができる。アルキル部位に水酸基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートの具体例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートを含む。アルキル部位にカルボキシル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートの具体例は、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノ(メタ)アクリレート、1−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]フタル酸、1−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヘキサヒドロフタル酸、1−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]コハク酸、4−[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]トリメリット酸、N−(メタ)アクリロイルオキシ−N’,N’−ジカルボキシメチル−p−フェニレンジアミンを含む。
【0023】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエン又はトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコール又はジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
2官能(メタ)アクリレートモノマーのより具体的な例を挙げれば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンとのアセタール化合物〔化学名:2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等である。
【0025】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の脂肪族ポリオールのポリ(メタ)アクリレート;3官能以上のハロゲン置換ポリオールのポリ(メタ)アクリレート;グリセリンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート;1,1,1−トリス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ]プロパン;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリルアミドモノマーは、好ましくはN−位に置換基を有する(メタ)アクリルアミドであり、そのN−位の置換基の典型的な例はアルキル基であるが、(メタ)アクリルアミドの窒素原子とともに環を形成していてもよく、この環は、炭素原子及び(メタ)アクリルアミドの窒素原子に加え、酸素原子を環構成員として有してもよい。さらに、その環を構成する炭素原子には、アルキルやオキソ(=O)のような置換基が結合していてもよい。
【0027】
N−置換(メタ)アクリルアミドの具体例は、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−i−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミドのようなN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドのようなN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドを含む。また、N−位の置換基は水酸基を有するアルキル基であってもよく、その例として、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド等がある。さらに、上述のN−位の置換基が環を形成する場合として、5員環又は6員環を形成するN−置換(メタ)アクリルアミドを挙げることができ、その具体例としては、N−アクリロイルピロリジン、3−(メタ)アクリロイル−2−オキサゾリジノン、4−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン等がある。
【0028】
熱可塑性樹脂フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルム、(メタ)アクリル系樹脂フィルムである場合には、偏光フィルムとの密着性の点で、ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物は、(メタ)アクリルアミドモノマーを含むことが望ましい。
【0029】
分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリルオリゴマーには、ウレタン(メタ)アクリルオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリルオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリルオリゴマー等がある。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリルオリゴマーとは、分子内にウレタン結合(−NHCOO−)及び少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。具体的には、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物や、ポリオールをポリイソシアネートと反応させて得られる末端イソシアナト基含有ウレタン化合物と、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基及び少なくとも1個の水酸基をそれぞれ有する(メタ)アクリルモノマーとのウレタン化反応生成物等であり得る。
【0031】
上記ウレタン化反応に用いられる水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、例えば水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーであることができ、その具体例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを含む。水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー以外の具体例は、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーを含む。
【0032】
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとのウレタン化反応に供されるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジベンジルベンゼントリイソシアネート等のジ−又はトリ−イソシアネート、及び、上記のジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
また、ポリイソシアネートとの反応により末端イソシアナト基含有ウレタン化合物とするために用いられるポリオールとしては、芳香族、脂肪族又は脂環式のポリオールの他、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を使用することができる。脂肪族及び脂環式のポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0034】
ポリエステルポリオールは、上記したポリオールと多塩基性カルボン酸又はその無水物との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物であり得るものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸等がある。
【0035】
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレングリコールの他、上記したポリオール又はジヒドロキシベンゼン類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオール等であり得る。
【0036】
ポリエステル(メタ)アクリルオリゴマーとは、分子内にエステル結合と少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基(典型的には(メタ)アクリロイルオキシ基)とを有する化合物である。具体的には、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸又はその無水物、及びポリオールを用いた脱水縮合反応により得ることができる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸又はその無水物の例を、無水物であり得るものに「(無水)」を付して表すと、(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等がある。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、グリセリン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。
【0037】
エポキシ(メタ)アクリルオリゴマーは、例えば、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得ることができ、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有している。付加反応に用いられるポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0038】
(2)他の硬化性化合物
本発明に係る硬化性接着剤組成物は、ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物及びノルボルネン系化合物(I)以外の他のラジカル重合性化合物を含むことができる。他のラジカル重合性化合物としては、スチレン、スチレンスルホン酸、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドンのようなビニル化合物を代表例とする、分子内にエチレン性不飽和結合を1個以上有する化合物を挙げることができる。硬化性接着剤組成物は、他のラジカル重合性化合物を1種又は2種以上含有することができる。
【0039】
ただし、偏光フィルムの片面又は両面に硬化性接着剤組成物の硬化物層である接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼合してなる偏光板の耐久性の観点から、他のラジカル重合性化合物の含有量は、ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることがさらに好ましい。
【0040】
また本発明に係る硬化性接着剤組成物は、硬化性(重合性)化合物として、ラジカル重合性化合物に加えて、活性エネルギー線の照射や加熱によりカチオン重合反応を起こして硬化する化合物又はオリゴマーであるカチオン重合性化合物を含有していてもよい。カチオン重合性化合物としては、分子内に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(例えば、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等)、分子内に1個以上のオキセタン環(オキセタニル基)を有するオキセタン化合物、脂肪族又は脂環式ビニル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物等を挙げることができる。硬化性接着剤組成物は、カチオン重合性化合物を1種又は2種以上含有することができる。
【0041】
ただし、偏光フィルムの片面又は両面に硬化性接着剤組成物の硬化物層である接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼合してなる偏光板の耐久性の観点から、カチオン重合性化合物の含有量は、ラジカル重合性化合物100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましく、50重量部以下であることがより好ましく、30重量部以下であることがさらに好ましく、10重量部以下であることが特に好ましい。
【0042】
(3)ラジカル重合開始剤
本発明に係る硬化性接着剤組成物は、活性エネルギー線硬化性である場合には光ラジカル重合開始剤を、熱硬化性である場合には熱ラジカル重合開始剤を含有することができる。電子線硬化性である場合には光ラジカル重合開始剤は必須ではないが、紫外線硬化性等である場合には、本発明に係る硬化性接着剤組成物は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。活性エネルギー線硬化性である場合、とりわけ紫外線硬化性である場合において、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤とを併用してもよい。光ラジカル重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、又は電子線のような活性エネルギー線の照射によって、ラジカル硬化性化合物の重合反応を開始させるものである。硬化性接着剤組成物は、ラジカル重合開始剤を1種又は2種以上含有することができる。
【0043】
光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤としては従来公知のものを使用できる。光ラジカル重合開始剤の具体例は、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル系開始剤;4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;その他、キサントン、フルオレノン、カンファーキノン、ベンズアルデヒド、アントラキノンを含む。
【0044】
ラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性化合物100重量部に対して、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜6重量部である。ラジカル重合開始剤を0.5重量部以上含有させることにより、ラジカル重合性化合物を十分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械的強度と接着強度を与えることができる。一方で、その量が過度に多くなると、偏光板の耐久性が逆に低下するおそれがある。
【0045】
(4)ノルボルネン系化合物(I)
本発明に係る硬化性接着剤組成物は、下記式(I):
【0046】
【化2】
【0047】
で表されるノルボルネン系化合物(I)を含有する。式(I)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H原子であるか、又は、O原子及びN原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む置換基である。R1、R2、R3及びR4のすべてがH原子であるとき、ノルボルネン系化合物(I)は2−ノルボルネンである。
【0048】
ノルボルネン系化合物(I)は、好ましくは、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つが上記置換基であり、より好ましくは、R1、R2、R3及びR4のうちのいずれか1つ又はいずれか2つが上記置換基である。ノルボルネン系化合物(I)が少なくとも1つの上記置換基を含む場合において、当該置換基はそれぞれ、その立体配置がendoであってもよいし、exoであってもよいし、これらの混合であってもよい。
【0049】
偏光フィルムの片面又は両面に硬化性接着剤組成物の硬化物層である接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼合してなる偏光板の耐久性の観点から、上記置換基は、−C(=O)−、−OH、及び−NH2からなる群より選択される少なくとも1つの構造を含むことが好ましい。−C(=O)−〔カルボニル基〕の構造を含む置換基の具体例は、−C(=O)−O−アルキル、−C(=O)−NH−アルキル、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−H、−C(=O)−OH、−C(=O)−NH2、−O−C(=O)−アルキルである。これらの置換基中の「アルキル」は、それぞれ独立して、例えば炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であることができ、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。上記置換基中の「アルキル」における少なくとも1つの水素原子は、−OH及び−NH2からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
【0050】
また、−OHの構造を含む置換基の具体例は、ノルボルネン環に直接結合する−OH基、−アルキレン−OHである。−NH2の構造を含む置換基の具体例は、ノルボルネン環に直接結合する−NH2基、−アルキレン−NH2である。置換基−アルキレン−OH及び−アルキレン−NH2中の「アルキレン」は、それぞれ独立して、例えば炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であることができ、好ましくは炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。上記置換基中の「アルキレン」における少なくとも1つの水素原子は、−OH及び−NH2からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
【0051】
上記置換基を有するノルボルネン系化合物(I)の例を、その化学式とともに以下に示す。
【0052】
〔a〕置換基−C(=O)−O−アルキルを有するノルボルネン系化合物(I)
a−1:5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、
a−2:5−ノルボルネン−2−カルボン酸t−ブチル、
a−3:5−ノルボルネン−2−カルボン酸(2−アミノエチル)、
a−4:5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸モノメチル。
【0053】
【化3】
【0054】
〔b〕置換基−C(=O)−NH−アルキルを有するノルボルネン系化合物(I)
b−1:5−ノルボルネン−(N−2−ヒドロキシエチル)−2−カルボキサミド。
【0055】
【化4】
【0056】
〔c〕置換基−C(=O)−アルキルを有するノルボルネン系化合物(I)
c−1:5−アセチル−2−ノルボルネン。
【0057】
【化5】
【0058】
〔d〕置換基−C(=O)−Hを有するノルボルネン系化合物(I)
d−1:5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド。
【0059】
【化6】
【0060】
〔e〕置換基−C(=O)−OHを有するノルボルネン系化合物(I)
e−1:5−ノルボルネン−2−カルボン酸、
e−2:5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸。
【0061】
【化7】
【0062】
〔f〕置換基−C(=O)−NH2を有するノルボルネン系化合物(I)
f−1:5−ノルボルネン−2−カルボキサミド。
【0063】
【化8】
【0064】
〔g〕置換基−O−C(=O)−アルキルを有するノルボルネン系化合物(I)
g−1:5−ノルボルネン−2−イル アセテート。
【0065】
【化9】
【0066】
〔h〕置換基−OHを有するノルボルネン系化合物(I)
h−1:5−ノルボルネン−2−オール、
h−2:5−ノルボルネン−2−メタノール、
h−3:5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール、
h−4:5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール(endo,endo体、又はexo,exo体等)。
【0067】
【化10】
【0068】
〔i〕置換基−NH2を有するノルボルネン系化合物(I)
i−1:5−アミノ−2−ノルボルネン、
i−2:5−ノルボルネン−2−メチルアミン。
【0069】
【化11】
【0070】
上述のように、R1及びR3がH原子であり、R2及びR4が上記置換基であるとき、R2及びR4は、それらが結合しているノルボルネン環の2つのC原子と一緒になって環構造を形成していてもよい。環構造としては、環状イミド構造や環状酸無水物構造を挙げることができる。環構造を形成している置換基を有するノルボルネン系化合物(I)の例を、その化学式とともに以下に示す。
【0071】
〔j〕環構造を形成している置換基を有するノルボルネン系化合物(I)
j−1:5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、
j−2:5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物。
【0072】
【化12】
【0073】
本発明に係る硬化性接着剤組成物は、ノルボルネン系化合物(I)を1種又は2種以上含有することができる。ノルボルネン系化合物(I)を2種以上含有する場合には、例えば、化学組成は互いに同じであるが、ある置換基がendoの立体配置である化合物と、exoの立体配置である化合物とを併用する場合も含まれる。中でも、偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの接着強度、ひいては偏光板の耐久性の観点から、−C(=O)−O−アルキル、−C(=O)−NH−アルキル、−アルキレン−NH2、−OH、及び−NH2のいずれか1以上(好ましくはいずれか1つ又はいずれか2つ)を含む置換基を有するノルボルネン系化合物が好ましく用いられ、化合物(a−1)、(a−3)、(b−1)などがより好ましく用いられ、化合物(a−3)、(b−1)などが特に好ましく用いられる。
【0074】
偏光フィルムの片面又は両面に硬化性接着剤組成物の硬化物層である接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを貼合してなる偏光板の耐久性の観点から、ノルボルネン系化合物(I)の含有量は、ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物及びノルボルネン系化合物(I)の合計量100重量部に対して、0.001重量部以上であることが好ましく、0.01重量部以上であることがより好ましく、0.05重量部以上であることがさらに好ましい。ノルボルネン系化合物(I)の含有量は、ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物及びノルボルネン系化合物(I)の合計量100重量部に対して、通常20重量部以下であり、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは6重量部以下であり、さらに好ましくは5重量部以下である。
【0075】
(5)添加剤
本発明に係る硬化性接着剤組成物は、必要に応じて、添加剤を含むことができる。添加剤の具体例は、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、重合促進剤、増感剤、増感助剤、光安定剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、色素、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光又は熱カチオン重合開始剤を含む。光又は熱カチオン重合開始剤は、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を併用する場合に添加される。イオントラップ剤としては粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、カルシウム系、チタン系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられ、酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0076】
<偏光板>
上記本発明に係る硬化性接着剤組成物は、偏光板を構成する偏光フィルムと、その上に積層される保護フィルムのような熱可塑性樹脂フィルムとを接着するための接着剤として好適に用いることができる。すなわち、本発明に係る偏光板は、偏光フィルムと、その少なくとも一方の面に、上記本発明に係る硬化性接着剤組成物から形成される接着剤層を介して積層される熱可塑性樹脂フィルムとを含むものである。当該接着剤層は、上記本発明に係る硬化性接着剤組成物の硬化物層である。本発明に係る偏光板は、偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとを上記本発明に係る硬化性接着剤組成物を用いて接着しているので、良好な耐久性(両フィルム間の接着強度、耐冷熱衝撃性)を示す。
【0077】
(1)偏光板の構成
本発明に係る偏光板の層構成の例を図1及び図2に示す。図1に示されるように本発明に係る偏光板は、偏光フィルム30と、その一方の面に第1接着剤層15を介して積層貼合される第1熱可塑性樹脂フィルム10とを含むものであることができる。また図2に示されるように本発明に係る偏光板は、偏光フィルム30と、その一方の面に第1接着剤層15を介して積層貼合される第1熱可塑性樹脂フィルム10と、偏光フィルム30の他方の面に第2接着剤層25を介して積層貼合される第2熱可塑性樹脂フィルム20とを含むものであってもよい。偏光板が第1接着剤層15及び第2接着剤層25を有する場合、いずれか一方が本発明に係る硬化性接着剤組成物から形成されるものであってもよいし、両接着剤層が本発明に係る硬化性接着剤組成物から形成されるものであってもよいが、耐久性の観点から、好ましくは後者である。
【0078】
図1及び図2の例に限らず、本発明に係る偏光板は、上記以外の他の層(又はフィルム)を含むことができる。他の層の具体例を挙げれば、例えば、第1熱可塑性樹脂フィルム10、第2熱可塑性樹脂フィルム20及び/又は偏光フィルム30の外面に積層される粘着剤層;当該粘着剤層の外面に積層されるセパレートフィルム(「剥離フィルム」とも呼ばれる。);第1熱可塑性樹脂フィルム10、第2熱可塑性樹脂フィルム20及び/又は偏光フィルム30の外面に積層されるプロテクトフィルム(「表面保護フィルム」とも呼ばれる。);第1熱可塑性樹脂フィルム10、第2熱可塑性樹脂フィルム20及び/又は偏光フィルム30の外面に接着剤層や粘着剤層を介して積層される光学機能性フィルム(又は層)等である。
【0079】
(2)偏光フィルム
偏光フィルム30は、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過する機能を有するフィルムである。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素としてのヨウ素を吸着・配向させたヨウ素系偏光フィルム、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素としての二色性染料を吸着・配向させた染料系偏光フィルム、及びリオトロビック液晶状態の二色性染料をコーティングし、配向・固定化した塗布型偏光フィルム等が挙げられる。これらの偏光フィルムは、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を吸収するため吸収型偏光フィルムと呼ばれている。偏光フィルム30は、吸収型偏光フィルムに限定されず、自然光からある一方向の直線偏光を選択的に透過し、もう一方向の直線偏光を反射する反射型偏光フィルム、又はもう一方向の直線偏光を散乱する散乱型偏光フィルムでも構わないが、視認性に優れる点から吸収型偏光フィルムが好ましい。中でも、ポリビニルアルコール系樹脂で構成されるポリビニルアルコール系偏光フィルムがより好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性色素を吸着・配向させたポリビニルアルコール系偏光フィルムがさらに好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素を吸着・配向させたポリビニルアルコール系偏光フィルムが特に好ましい。
【0080】
ポリビニルアルコール系偏光フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等を含む。
【0081】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は通常、85〜100mol%程度であり、98mol%以上が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は通常、1000〜10000程度であり、1500〜5000程度が好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
【0082】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルム30の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは、例えば150μm以下であり、好ましくは100μm以下(例えば50μm以下)である。
【0083】
偏光フィルム30は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程;二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理(架橋処理)する工程;及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を含む方法によって製造できる。
【0084】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前又はホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行ってもよい。
【0085】
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤や水を用いてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3〜8倍程度である。
【0086】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、例えば、該フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0087】
ヨウ素による染色処理としては通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100重量部あたり0.01〜1重量部程度であることができる。ヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり0.5〜20重量部程度であることができる。また、この水溶液の温度は、20〜40℃程度であることができる。一方、二色性有機染料による染色処理としては通常、二色性有機染料を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。二色性有機染料を含有する水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。この水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100重量部あたり1×10-4〜10重量部程度であることができる。この水溶液の温度は、20〜80℃程度であることができる。
【0088】
二色性色素による染色後のホウ酸処理としては通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり2〜15重量部程度であることができる。この水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり0.1〜20重量部程度であることができる。この水溶液の温度は、50℃以上であることができ、例えば50〜85℃である。
【0089】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行うことができる。水洗処理における水の温度は通常、5〜40℃程度である。水洗後に乾燥処理を施して、偏光フィルム30が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。この偏光フィルム30の片面又は両面に保護フィルムなどとしての熱可塑性樹脂フィルムを硬化性接着剤組成物等を用いて貼合することにより、偏光板を得ることができる。
【0090】
また、偏光フィルム30の製造方法の他の例として、例えば、特開2000−338329号公報や特開2012−159778号公報に記載の方法が挙げられる。この方法では、基材フィルムの表面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する溶液を塗布して樹脂層を設けた後、基材フィルムと樹脂層からなる積層フィルムを延伸し、次いで染色処理、架橋処理等を施して、樹脂層から偏光子層(偏光フィルム層)を形成する。基材フィルムと偏光子層からなるこの偏光性積層フィルムは、偏光子層面に保護フィルムなどとしての熱可塑性樹脂フィルムを貼合した後、基材フィルムを剥離除去して、図1に示される構成の偏光板とすることができる。基材フィルムの剥離によって露出した偏光子層面にさらに熱可塑性樹脂フィルムを貼合すれば、図2に示される構成の偏光板となる。
【0091】
偏光フィルム30の厚みは、40μm以下とすることができ、好ましくは30μm以下(例えば20μm以下、さらには15μm以下、なおさらには10μm以下)である。特開2000−338329号公報や特開2012−159778号公報に記載の方法によれば、薄膜の偏光フィルム30をより容易に製造することができ、偏光フィルム30の厚みを、例えば20μm以下、さらには15μm以下、なおさらには10μm以下とすることがより容易になる。偏光フィルム30の厚みは、通常2μm以上である。偏光フィルム30の厚みを小さくすることは、偏光板、ひいては画像表示装置の薄型化に有利である。
【0092】
(3)熱可塑性樹脂フィルム
第1熱可塑性樹脂フィルム10及び第2熱可塑性樹脂フィルム20はそれぞれ、透光性を有する(好ましくは光学的に透明な)熱可塑性樹脂、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;又はこれらの混合物、共重合物等からなるフィルムであることができる。中でも、第1熱可塑性樹脂フィルム10及び第2熱可塑性樹脂フィルム20はそれぞれ、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びセルロースエステル系樹脂からなる群より選択される樹脂から構成されることが好ましい。
【0093】
第1熱可塑性樹脂フィルム10及び第2熱可塑性樹脂フィルム20はそれぞれ、延伸されていないフィルム、又は一軸若しくは二軸延伸されたフィルムのいずれであってもよい。二軸延伸は、2つの延伸方向に同時に延伸する同時二軸延伸でもよく、所定方向に延伸した後で他の方向に延伸する逐次二軸延伸であってもよい。第1熱可塑性樹脂フィルム10及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム20は、偏光フィルム30を保護する役割を担う保護フィルムであってもよいし、位相差フィルムのような光学機能を併せ持つ保護フィルムであることもできる。位相差フィルムは、画像表示素子である液晶セルによる位相差の補償等を目的として使用される光学機能性フィルムである。例えば、上記熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸(一軸延伸又は二軸延伸等)したり、当該熱可塑性樹脂フィルム上に液晶層等を形成したりすることにより、任意の位相差値が付与された位相差フィルムとすることができる。
【0094】
鎖状ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂のような鎖状オレフィンの単独重合体のほか、2種以上の鎖状オレフィンからなる共重合体を挙げることができる。
【0095】
環状ポリオレフィン系樹脂は、ノルボルネンやテトラシクロドデセン(別名:ジメタノオクタヒドロナフタレン)又はそれらの誘導体を代表例とする環状オレフィンを重合単位として含む樹脂の総称である。環状ポリオレフィン系樹脂の具体例を挙げれば、環状オレフィンの開環(共)重合体及びその水素添加物、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレンのような鎖状オレフィン又はビニル基を有する芳香族化合物との共重合体、並びにこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性した変性(共)重合体等である。中でも、環状オレフィンとしてノルボルネンや多環ノルボルネン系単量体等のノルボルネン系単量体を用いたノルボルネン系樹脂が好ましく用いられる。
【0096】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースにおける水酸基の少なくとも一部が酢酸エステル化されている樹脂であり、一部が酢酸エステル化され、一部が他の酸でエステル化されている混合エステルであってもよい。セルロースエステル系樹脂は、好ましくはアセチルセルロース系樹脂である。アセチルセルロース系樹脂の具体例として、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等を挙げることができる。
【0097】
ポリエステル系樹脂は、エステル結合を有する、上記セルロースエステル系樹脂以外の樹脂であり、多価カルボン酸又はその誘導体と多価アルコールとの重縮合体からなるものが一般的である。ポリエステル系樹脂の具体例は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリシクロへキサンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートを含む。中でも、機械的性質、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コスト等の観点からポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。ポリエチレンテレフタレートとは、繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0098】
他の共重合成分としては、ジカルボン酸成分やジオール成分が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等が挙げられる。ジオール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。ジカルボン酸成分やジオール成分は、必要に応じてそれぞれ2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、上記ジカルボン酸成分やジオール成分とともに、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を有するジカルボン酸成分及び/又はジオール成分が少量用いられてもよい。
【0099】
ポリカーボネート系樹脂は、炭酸とグリコール又はビスフェノールから形成されるポリエステルである。中でも、分子鎖にジフェニルアルカンを有する芳香族ポリカーボネートは、耐熱性、耐候性及び耐酸性の観点から好ましく使用される。ポリカーボネートとして、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのようなビスフェノールから誘導されるポリカーボネートが例示される。
【0100】
(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステルを主たる単量体とする(50重量%以上含有する)重合体であることができ、これに少量の他の共重合成分が共重合されている共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、より好ましくはメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとの共重合体であり、第三の単官能単量体をさらに共重合させてもよい。
【0101】
第三の単官能単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−、i−又はt−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸n−、i−又はt−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルのようなアクリル酸エステル類;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(1−ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−、i−又はt−ブチルのようなヒドロキシアルキルアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸のような不飽和酸類;クロロスチレン、ブロモスチレンのようなハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン、α−メチルスチレンのような置換スチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル類;無水マレイン酸、無水シトラコン酸のような不飽和酸無水物類;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドのような不飽和イミド類等を挙げることができる。第三の単官能単量体は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
(メタ)アクリル系樹脂には、多官能単量体をさらに共重合させてもよい。多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;プロピレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような2価アルコールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、又はこれらのハロゲン置換体の両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような多価アルコールを(メタ)アクリル酸でエステル化したもの、並びにこれら末端水酸基にグリシジル(メタ)アクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸、フタル酸、これらのハロゲン置換体等の二塩基酸、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等にグリシジル(メタ)アクリレートのエポキシ基を開環付加させたもの;アリール(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼンのような芳香族ジビニル化合物等が挙げられる。中でも、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートが好ましく用いられる。
【0103】
(メタ)アクリル系樹脂は、さらに共重合体が有する官能基間の反応を行い、変性されたものであってもよい。その反応としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルのメチルエステル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱メタノール縮合反応、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基と2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの水酸基との高分子鎖内脱水縮合反応等が挙げられる。
【0104】
(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80〜160℃である。ガラス転移温度は、メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体との重合比、それぞれのエステル基の炭素鎖長及びそれら有する官能基の種類、並びに単量体全体に対する多官能単量体の重合比の調整によって制御可能である。
【0105】
また、(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高めるための手段として、高分子の主鎖に環構造を導入することも有効である。環構造は、環状酸無水物構造、環状イミド構造及びラクトン構造等の複素環構造であることが好ましい。具体的には、無水グルタル酸構造、無水コハク酸構造等の環状酸無水物構造、グルタルイミド構造、コハクイミド構造等の環状イミド構造、ブチロラクトン及びバレロラクトン等のラクトン環構造が挙げられる。主鎖中の環構造の含有量を大きくするほど(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度を高くすることができる。環状酸無水物構造及び環状イミド構造は、無水マレイン酸及びマレイミド等の環状構造を有する単量体を共重合することによって導入する方法、重合後脱水・脱メタノール縮合反応により環状酸無水物構造を導入する方法、アミノ化合物を反応させて環状イミド構造を導入する方法等によって導入することができる。ラクトン環構造を有する樹脂(重合体)は、高分子鎖にヒドロキシル基とエステル基とを有する重合体を調製した後、得られた重合体におけるヒドロキシル基とエステル基とを、加熱により、必要に応じて有機リン化合物のような触媒の存在下に環化縮合させてラクトン環構造を形成する方法によって得ることができる。
【0106】
(メタ)アクリル系樹脂は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤、界面活性剤等を挙げることができる。これらの添加剤は、熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂として、(メタ)アクリル系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を用いる場合にも使用することができる。
【0107】
(メタ)アクリル系樹脂は、フィルムへの製膜性やフィルムの耐衝撃性等の観点から、衝撃性改良剤であるアクリル系ゴム粒子を含有していてもよい。アクリル系ゴム粒子とは、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を必須成分とする粒子であり、実質的にこの弾性重合体のみからなる単層構造のものや、この弾性重合体を1つの層とする多層構造のものが挙げられる。この弾性重合体の例として、アクリル酸アルキルを主成分とし、これに共重合可能な他のビニル系単量体及び架橋性単量体を共重合させた架橋弾性共重合体が挙げられる。弾性重合体の主成分となるアクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル等、アルキル基の炭素数が1〜8程度のものが挙げられ、炭素数4以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルが好ましく用いられる。このアクリル酸アルキルに共重合可能な他のビニル系単量体としては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を挙げることができ、より具体的には、メタクリル酸メチルのようなメタクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物等が挙げられる。架橋性単量体としては、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する架橋性の化合物を挙げることができ、より具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート類、アリル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸のアルケニルエステル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0108】
ゴム粒子を含まない(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムと、ゴム粒子を含む(メタ)アクリル系樹脂からなるフィルムとの積層物を保護フィルムとすることもできる。また、(メタ)アクリル樹脂とは異なる樹脂からなる位相差発現層の片面又は両面に、(メタ)アクリル系樹脂層が形成され、位相差が発現されたものを保護フィルムとすることもできる。
【0109】
第1熱可塑性樹脂フィルム10及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム20は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。偏光板を液晶表示装置のような画像表示装置に適用する場合、紫外線吸収剤を含有する保護フィルムを画像表示素子(例えば液晶セル)の視認側に配置することで、画像表示素子の紫外線による劣化を抑制することができる。紫外線吸収剤としては、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。
【0110】
第1熱可塑性樹脂フィルム10及び第2熱可塑性樹脂フィルム20は、同じ熱可塑性樹脂で構成されるフィルムであってもよいし、互いに異なる熱可塑性樹脂で構成されるフィルムであってもよい。第1熱可塑性樹脂フィルム10及び第2熱可塑性樹脂フィルム20は、厚み、添加剤の有無やその種類、位相差特性等において同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0111】
第1熱可塑性樹脂フィルム10及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム20は、その外面(偏光フィルム30とは反対側の表面)にハードコート層、防眩層、反射防止層、光拡散層、帯電防止層、防汚層、導電層のような表面処理層(コーティング層)を備えていてもよい。
【0112】
第1熱可塑性樹脂フィルム10及び第2熱可塑性樹脂フィルム20の厚みはそれぞれ、通常5〜200μmであり、好ましくは10〜120μm、より好ましくは10〜85μmである。第1熱可塑性樹脂フィルム10及び第2熱可塑性樹脂フィルム20の厚みを小さくすることは、偏光板、ひいては画像表示装置の薄型化に有利である。
【0113】
(4)偏光板の製造
偏光フィルム30の一方の面に第1接着剤層15を介して第1熱可塑性樹脂フィルム10を積層接着することにより、図1に示される構成の偏光板を得ることができ、偏光フィルム30の他方の面に第2接着剤層25を介して第2熱可塑性樹脂フィルム20をさらに積層接着することにより、図2に示される構成の偏光板を得ることができる。第1熱可塑性樹脂フィルム10及び第2熱可塑性樹脂フィルム20(以下、これらを総称して単に「熱可塑性樹脂フィルム」ともいう。)の双方を有する偏光板を製造する場合、これらの熱可塑性樹脂フィルムは、段階的に片面ずつ積層接着してもよいし、両面の熱可塑性樹脂フィルムを同時に積層接着してもよい。
【0114】
図1に示される構成の偏光板において第1接着剤層15は、本発明に係る硬化性接着剤組成物の硬化物層である。図2に示される構成の偏光板において第1接着剤層15及び第2接着剤層25は、それらの少なくともいずれか一方が本発明に係る硬化性接着剤組成物の硬化物層であるが、耐久性の観点から、好ましくは両接着剤層が本発明に係る硬化性接着剤組成物の硬化物層である。また耐久性、特に冷熱衝撃性の観点から、偏光板が有する接着剤層(第1接着剤層15及び第2接着剤層25を有する場合には、少なくともいすれか一方であり、好ましくは両接着剤層)の80℃における貯蔵弾性率は、800MPa以上であることが好ましい。
【0115】
偏光フィルム30と熱可塑性樹脂フィルムとの接着は、具体的には、偏光フィルム30の貼合面及び/又は熱可塑性樹脂フィルムの貼合面に接着剤組成物を塗工し、接着剤組成物の塗工層を介して両者のフィルムを重ね、例えば貼合ロール等を用いて上下から押圧して貼合後、活性エネルギー線を照射して硬化させるか(活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の場合)、又は加熱して硬化させる(熱硬化性接着剤組成物の場合)ことにより行うことができる。活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を用いる場合においても、活性エネルギー線の照射と同時に、又は活性エネルギー線の照射後に、加熱処理を行ってもよい。接着剤組成物の塗工層を形成する前に、偏光フィルム30及び熱可塑性樹脂フィルムの貼合面の一方又は両方に対して、ケン化処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理のような易接着処理を施してもよい。
【0116】
接着剤組成物の塗工層の形成には、例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等の種々の塗工方式が利用できる。また、偏光フィルム30及び熱可塑性樹脂フィルムを両者の貼合面が内側となるように連続的に供給しながら、その間に接着剤組成物を流延させる方式を採用することもできる。
【0117】
塗工性の観点から、本発明に係る硬化性接着剤組成物は、その粘度が低いことが好ましい。具体的には、25℃における粘度が、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下である。本発明に係る硬化性接着剤組成物は無溶剤型であることができるが、採用する塗工方式に適した粘度に調整するために有機溶剤を含有させてもよい。
【0118】
また、接着剤組成物の塗工層を形成する工程、又は偏光フィルム30と熱可塑性樹脂フィルムとを重ねて貼合する工程において、熱可塑性樹脂フィルム及び接着剤組成物の少なくとも一方を加熱してもよい。これにより、偏光フィルム30と熱可塑性樹脂フィルムとの密着性、特には熱可塑性樹脂フィルムと接着剤層との密着性が向上する。加熱の具体的な態様としては、熱可塑性樹脂フィルムの加熱、接着剤組成物の加熱、偏光フィルム30と熱可塑性樹脂フィルムとが未硬化の接着剤層を介して積層された積層体の加熱等がある。熱可塑性樹脂フィルムや積層体を加熱する方法としては、例えば、長尺の熱可塑性樹脂フィルムや積層体を順次、赤外線ヒーター等の輻射熱を発する装置を通過させる方法、長尺の熱可塑性樹脂フィルムや積層体に、送風機等を用いて加熱したガスを吹き付ける方法等を挙げることができる。また、接着剤組成物を加熱する方法としては、例えば、予め貯槽内で接着剤組成物を加熱、保温しておき、加熱された接着剤組成物を塗工装置に供給する方法を挙げることができる。熱可塑性樹脂フィルム、接着剤組成物又は積層体を加熱する温度は、30〜80℃であることが好ましく、40〜60℃であることがより好ましい。加熱温度が80℃を超えると、熱可塑性樹脂フィルム、接着剤組成物又は積層体が熱により劣化するおそれがある。また、加熱温度が30℃未満であると、熱可塑性樹脂フィルムと偏光フィルム30との密着性の向上効果が不十分となる傾向にある。
【0119】
活性エネルギー線の光源は、例えば、紫外線、電子線、X線などを発生するものであればよい。活性エネルギー線は、好ましくは紫外線である。紫外線光源としては、波長400nm以下に発光分布を有する光源が好ましく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を挙げることができる。
【0120】
接着剤層への活性エネルギー線照射強度は、接着剤組成物毎に決定されるが、光重合開始剤の活性化に有効な波長領域の光照射強度が0.1〜1000mW/cm2となるようにすることが好ましい。光照射強度が小さすぎると、反応時間が長くなりすぎ、一方でその光照射強度が大きすぎると、ランプから輻射される熱及び接着剤組成物の重合時の発熱により、接着剤層の黄変や偏光フィルム30の劣化、又は熱可塑性樹脂フィルムの肌不良を生じる可能性がある。また、接着剤層への光照射時間も、接着剤組成物毎に制御されるが、光照射強度と光照射時間の積として表される積算光量が10〜5000mJ/cm2となるように設定されることが好ましい。積算光量が小さすぎると、光重合開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、得られる接着剤層の硬化が不十分となる可能性があり、一方でその積算光量が大きすぎると、光照射時間が非常に長くなって生産性向上には不利になりやすい。
【0121】
図2に示される構成の偏光板を製造する場合において、熱可塑性樹脂フィルムを接着剤組成物の塗工層を介して偏光フィルム30に積層するタイミングと塗工層を硬化させるタイミングは特に制限されない。例えば、一方の熱可塑性樹脂フィルムを積層した後、引き続き塗工層を硬化させ、その後、他方の熱可塑性樹脂フィルムを積層し、塗工層を硬化させることができる。あるいは、逐次的に又は同時に両方の熱可塑性樹脂フィルムを積層した後、両面の塗工層を同時に硬化させてもよい。また、活性エネルギー線の照射はどちらの熱可塑性樹脂フィルム側から行ってもよい。例えば、一方の熱可塑性樹脂フィルムが紫外線吸収剤を含有し、他方の熱可塑性樹脂フィルムが紫外線吸収剤を含有しない場合には、紫外線吸収剤を含有しない熱可塑性樹脂フィルム側から活性エネルギー線を照射することが好ましい。このように照射することで、照射される活性エネルギー線を有効に利用し、硬化速度を高めることができる。
【0122】
活性エネルギー線は、偏光フィルム30と熱可塑性樹脂フィルムとが未硬化の接着剤層を介して積層された積層体に張力をかけて、ロールに抱かせながら照射してもよい。また、接着剤組成物の反応性を高めるために、活性エネルギー線照射と同時に、又は活性エネルギー線照射後に偏光板を加熱してもよい。加熱温度は特に制限はないが、通常は熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度以下である。
【0123】
硬化後の第1及び第2接着剤層15,25の厚みは、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。第1及び第2接着剤層15,25の厚みが過度に大きいと、接着剤組成物の反応率が低下し、偏光板の耐湿熱性が悪化する傾向にある。第1及び第2接着剤層15,25の厚みは、通常0.01μm以上であり、好ましくは0.1μm以上である。第1接着剤層15と第2接着剤層25とは、厚みが同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0124】
(5)偏光板のその他の構成要素
(5−1)光学機能性フィルム
偏光板は、所望の光学機能を付与するための、偏光フィルム30以外の他の光学機能性フィルムを備えることができ、その好適な一例は位相差フィルムである。上述のように、第1熱可塑性樹脂フィルム10及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム20が位相差フィルムを兼ねることもできるが、熱可塑性樹脂フィルムとは別途に位相差フィルムを積層することもできる。後者の場合、位相差フィルムは、粘着剤層や接着剤層を介して第1熱可塑性樹脂フィルム10及び/又は第2熱可塑性樹脂フィルム20の外面に積層することができる。また、熱可塑性樹脂フィルムの代わりに位相差フィルムを積層することもできる。その具体例を挙げれば、例えば図1に示される偏光フィルム30の一方の面に第1熱可塑性樹脂フィルム10が貼合された片面保護偏光板における偏光フィルム30の他方の面に、位相差フィルムを貼合した構成である。この場合、位相差フィルムは、粘着剤層又は接着剤層を介して偏光フィルム30の表面に積層することができる。
【0125】
位相差フィルムの具体例は、透光性を有する熱可塑性樹脂の延伸フィルムから構成される複屈折性フィルム、ディスコティック液晶又はネマチック液晶が配向固定されたフィルム、基材フィルム上に上記の液晶層が形成されたものを含む。基材フィルムは通常、熱可塑性樹脂からなるフィルムであり、熱可塑性樹脂としてはトリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂が好ましく用いられる。
【0126】
複屈折性フィルムを形成する熱可塑性樹脂としては、第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20について記述したものを使用することができる。例えば、セルロースエステル系樹脂を使用する場合を例に挙げると、セルロースエステル系樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させたものからフィルムを形成する方法、セルロースエステル系樹脂フィルムの表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布する方法、セルロースエステル系樹脂を一軸又は二軸に延伸する方法により複屈折性フィルムを得ることができる。複屈折性フィルムを形成する熱可塑性樹脂として、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂のような他の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0127】
位相差フィルムは、広帯域化等、光学特性の制御を目的として、2枚以上を組み合わせて使用してもよい。また、光学異方性を有するフィルムに限らず、位相差フィルムとして実質的に光学的に等方なゼロレタデーションフィルムを使用することもできる。ゼロレタデーションフィルムとは、面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthがともに−15〜15nmであるフィルムをいう。ここでいう面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthは、波長590nmにおける値である。
【0128】
面内位相差値Re及び厚み方向位相差値Rthは、それぞれ下記式:
e=(nx−ny)×d
th=〔(nx+ny)/2−nz〕×d
で定義される。式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向(x軸方向)の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向(面内でx軸に直交するy軸方向)の屈折率であり、nzはフィルム厚み方向(フィルム面に垂直なz軸方向)の屈折率であり、dはフィルムの厚みである。
【0129】
ゼロレタデーションフィルムには、第1及び第2熱可塑性樹脂フィルム10,20や複屈折性フィルムについて記述した熱可塑性樹脂を使用することができ、例えば、セルロースエステル系樹脂、鎖状ポリオレフィン系樹脂及び環状ポリオレフィン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなる熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。中でも、位相差値の制御が容易で、入手も容易であることから、セルロースエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0130】
偏光板に含まれ得る他の光学機能性フィルム(光学部材)の例は、集光板、輝度向上フィルム、反射層(反射フィルム)、半透過反射層(半透過反射フィルム)、光拡散層(光拡散フィルム)等である。これらは一般的に、偏光板が液晶セルの背面側(バックライト側)に配置される偏光板である場合に設けられる。
【0131】
集光板は、光路制御等を目的に用いられるもので、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、ドット付設シート等であることができる。
【0132】
輝度向上フィルムは、偏光板を適用した液晶表示装置における輝度を向上させる目的で使用される。具体的には、屈折率の異方性が互いに異なる薄膜フィルムを複数枚積層して反射率に異方性が生じるように設計された反射型偏光分離シート、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層を基材フィルム上に支持した円偏光分離シート等が挙げられる。
【0133】
反射層、半透過反射層、光拡散層は、偏光板を反射型、半透過型、拡散型の光学部材とするためにそれぞれ設けられる。反射型の偏光板は、視認側からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置に用いられ、バックライト等の光源を省略できるため、液晶表示装置を薄型化しやすい。半透過型の偏光板は、明所では反射型として、暗所ではバックライトからの光で表示するタイプの液晶表示装置に用いられる。また拡散型の偏光板は、光拡散性を付与してモアレ等の表示不良を抑制した液晶表示装置に用いられる。反射層、半透過反射層及び光拡散層は、公知の方法により形成することができる。
【0134】
(5−2)粘着剤層
本発明に係る偏光板は、これを液晶セル等の画像表示素子、又は他の光学部材に貼合するための粘着剤層を含むことができる。粘着剤層は、図1に示される構成の偏光板においては偏光フィルム30の外面、図2に示される構成の偏光板においては第1熱可塑性樹脂フィルム10又は第2熱可塑性樹脂フィルム20の外面に積層することができる。
【0135】
粘着剤層に用いられる粘着剤としては、(メタ)アクリル系樹脂や、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂等をベースポリマーとするものを用いることができる。中でも、透明性、粘着力、信頼性、耐候性、耐熱性、リワーク性等の観点から、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。(メタ)アクリル系粘着剤には、メチル基やエチル基やn−、i−又はt−ブチル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の官能基含有(メタ)アクリル系モノマーとを、ガラス転移温度が好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下となるように配合した、重量平均分子量が10万以上の(メタ)アクリル系樹脂がベースポリマーとして有用である。
【0136】
偏光板への粘着剤層の形成は、例えば、トルエンや酢酸エチル等の有機溶媒に粘着剤組成物を溶解又は分散させて10〜40重量%の溶液を調製し、これを偏光板の対象面に直接塗工して粘着剤層を形成する方式や、離型処理が施されたセパレートフィルム上に粘着剤層をシート状に形成しておき、それを偏光板の対象面に移着する方式等により行うことができる。粘着剤層の厚みは、その接着力等に応じて決定されるが、1〜50μm程度の範囲が適当であり、好ましくは2〜40μmである。
【0137】
偏光板は、上記のセパレートフィルムを含み得る。セパレートフィルムは、ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等からなるフィルムであることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムが好ましい。
【0138】
粘着剤層には、必要に応じ、ガラス繊維、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粉や他の無機粉末からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が配合されていてもよい。
【0139】
帯電防止剤としては、例えば、イオン性化合物、導電性微粒子、導電性高分子等を挙げることができるが、イオン性化合物が好ましく用いられる。イオン性化合物を構成するカチオン成分は無機カチオンでも有機カチオンでもよい。有機カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン等が挙げられ、無機カチオンとしてはリチウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。一方、イオン性化合物を構成するアニオン成分としては、無機アニオンでも有機アニオンでもよいが、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから、フッ素原子を含むアニオン成分が好ましい。フッ素原子を含むアニオン成分としては、ヘキサフルオロホスフェートアニオン[(PF6-)]、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン[(CF3SO22-]アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン[(FSO22-]アニオン等が挙げられる。
【0140】
(5−3)プロテクトフィルム
本発明に係る偏光板は、その表面(典型的には熱可塑性樹脂フィルム表面)を仮着保護するためのプロテクトフィルムを含むことができる。プロテクトフィルムは、例えば画像表示素子や他の光学部材に偏光板が貼合された後、それが有する粘着剤層ごと剥離除去される。
【0141】
プロテクトフィルムは、基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成される。粘着剤層については上述の記述が引用される。基材フィルムを構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂であることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂である。
【実施例】
【0142】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特に断りのない限り重量基準である。
【0143】
(製造例1:保護フィルムの作製)
ペレット状の下記樹脂〔A〕とペレット状の下記樹脂〔B〕とを、75:25の重量比で押出機に投入して(メタ)アクリル系樹脂組成物を得た。得られた組成物を加熱により溶融混練して液状の溶融混練物を得た。得られた溶融混練物をTダイからフィルム状に連続的に押し出しながら、冷却ロールを用いて固化させることにより、厚み120μmの長尺の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを作製した。
【0144】
〔A〕アルケマ(ARKEMA)社製のメタクリル酸メチル系樹脂である「アルツグラス(ALTUGLAS) HT121」(ガラス転移温度Tg:124℃、重量平均分子量Mw:78200、数平均分子量Mn:41200、分子量分散Mw/Mn:1.9)、
〔B〕メタクリル酸メチル系樹脂(ガラス転移温度Tg:110℃、重量平均分子量Mw:162000、数平均分子量Mn:84500、分子量分散Mw/Mn:1.9)。
【0145】
得られた(メタ)アクリル系樹脂フィルムに縦延伸処理を施した後、横延伸処理(逐次二軸延伸処理)を施し、厚み40μmの延伸された保護フィルムを得た。なお、延伸温度は、縦延伸及び横延伸のいずれも、(メタ)アクリル系樹脂フィルムのガラス転移温度+10℃とし、縦延伸及び横延伸の延伸倍率は、それぞれ(メタ)アクリル系樹脂フィルムの2.2倍、2.0倍とした。
【0146】
<実施例1〜3、比較例1>
(1)硬化性接着剤組成物の調製
表1に示す成分の各々を表1に示す重量部で混合し、硬化性接着剤組成物を調製した。表1に示す成分の詳細は下記のとおりである。表1に記載の「ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物」とは、下記に記載の「DMAA」、「DCPA」、「A−DPH」及び「UV3700B」の混合物であり、その混合比は、重量比で、DMAA/DCPA/A−DPH/UV3700B=65/14/1/20である。
【0147】
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ(株)から入手)、
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成工業(株)から入手)、
A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)から入手)、
UV3700B:2官能のウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)から入手)、
光ラジカル重合開始剤:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル-プロパン−1−オン(BASFジャパン(株)から入手した「DAROCUR 1173」)、
ノルボルネン系化合物(I):5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル(東京化成工業(株)から入手)。
【0148】
(2)硬化性接着剤組成物の硬化物の80℃における貯蔵弾性率の測定
厚み50μmの環状ポリオレフィン系樹脂フィルムの片面に、塗工機〔バーコーター、第一理化(株)製〕を用いて、硬化性接着剤組成物を硬化後の膜厚が約30μmとなるように塗工し、その上にさらに厚み50μmの環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層させた。次に、一方の環状ポリオレフィン系樹脂フィルム側から、フュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」により紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射して、硬化性接着剤組成物を硬化させた。これを5mm×30mmの大きさに裁断し、環状ポリオレフィン系樹脂フィルムを剥がして硬化性接着剤組成物の硬化フィルムを得た。得られた硬化フィルムをその長辺が引張り方向となるように、アイティー計測制御(株)製の動的粘弾性測定装置「DVA−220」を用いてつかみ具の間隔2cmで把持し、引張りと収縮の周波数を10Hz、昇温速度を3℃/分に設定して、温度80℃における貯蔵弾性率を求めた。結果を表1に示す。温度80℃における貯蔵弾性率の値は高い方が良く、高いほど冷熱衝撃試験時に偏光フィルムの割れを抑制できる傾向にある。
【0149】
(3)偏光板の作製
製造例1で作製した保護フィルムの表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上記(1)で調製した硬化性接着剤組成物をバーコーターを用いて硬化後の膜厚が約2.5μmとなるように塗工した。その塗工面に、厚み25μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光フィルムを貼合した。次いで、環状ポリオレフィン系樹脂からなる厚み50μmの位相差フィルム〔商品名「ZEONOR」、日本ゼオン(株)製〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上記(1)で調製した硬化性接着剤組成物(上記保護フィルム貼合用の接着剤と同じもの)を硬化後の膜厚が約2.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗工した。その塗工面に、上で得られた保護フィルム付の偏光フィルムをその偏光フィルム側で貼合して積層体を得た。この積層体における保護フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」使用〕を用いて積算光量が250mJ/cm2(UVB)となるように紫外線を照射し、硬化性接着剤組成物を硬化させ、偏光板を作製した。
【0150】
(4)剥離力(密着力)の評価
得られた偏光板における(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルム表面にコロナ放電処理を施し、続いてそのコロナ放電処理面に(メタ)アクリル系粘着剤シートを貼合して粘着剤層付の偏光板とした。得られた粘着剤層付偏光板から、幅25mm、長さ約200mmの試験片を裁断し、その粘着剤層面をソーダガラスに貼合した。次いで、偏光フィルムと保護フィルムとの間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥離し、その剥離部分を万能引張試験機〔(株)島津製作所製の「AG−1」〕のつかみ部でつかんだ。この状態の試験片を、温度23℃及び相対湿度55%の雰囲気中にて、JIS K 6854−2:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、つかみ部の30mmを除く170mmの長さにわたる平均剥離力を求めた。結果を表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
<実施例4〜13、比較例2>
(5)硬化性接着剤組成物の調製
表2又は表3に示す成分の各々を表2又は表3に示す重量部で混合し、硬化性接着剤組成物を調製した。表2及び表3に示す成分の詳細は下記のとおりである。表2に記載の「ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物(I)」とは、下記に記載の「DMAA」、「DCPA」、「A−DPH」及び「UV3700B」の混合物であり、その混合比は、重量比で、DMAA/DCPA/A−DPH/UV3700B=65/14/1/20であり、表3に記載の「ラジカル重合性(メタ)アクリル系化合物(II)」とは、下記に記載の「HEAA」である。
【0153】
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ(株)から入手)、
DCPA:ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成工業(株)から入手)、
A−DPH:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業(株)から入手)、
UV3700B:2官能のウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)から入手)、
HEAA:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(KJケミカルズ(株)から入手)、
光ラジカル重合開始剤:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル-プロパン−1−オン(BASFジャパン(株)から入手した「DAROCUR 1173」)、
ノルボルネン系化合物(I):5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル(東京化成工業(株)から入手)、
ノルボルネン系化合物(II):5−ノルボルネン−(N−2−ヒドロキシエチル)−2−カルボキサミド(ENAMINE社から入手)、
ノルボルネン系化合物(III):5−ノルボルネン−2−メタンアミン(異性体混合物)(東京化成工業(株)から入手)。
【0154】
(6)硬化性接着剤組成物の硬化物の80℃における貯蔵弾性率の測定
実施例4〜6で得られた硬化性接着剤組成物について、上記(1)と同様にして、その硬化物の80℃における貯蔵弾性率の測定した。結果を表2に示す。
【0155】
(7)偏光板の作製(実施例4〜6)
製造例1で作製した保護フィルムの表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上記(5)で調製した硬化性接着剤組成物をバーコーターを用いて硬化後の膜厚が約2.5μmとなるように塗工した。その塗工面に、厚み25μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光フィルムを貼合した。次いで、環状ポリオレフィン系樹脂からなる厚み50μmの位相差フィルム〔商品名「ZEONOR」、日本ゼオン(株)製〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上記(5)で調製した硬化性接着剤組成物(上記保護フィルム貼合用の接着剤と同じもの)を硬化後の膜厚が約2.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗工した。その塗工面に、上で得られた保護フィルム付の偏光フィルムをその偏光フィルム側で貼合して積層体を得た。この積層体における保護フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」使用〕を用いて積算光量が250mJ/cm2(UVB)となるように紫外線を照射し、硬化性接着剤組成物を硬化させ、偏光板を作製した。
【0156】
(8)偏光板の作製(実施例7〜13、比較例2)
環状ポリオレフィン系樹脂からなる厚み50μmの位相差フィルム〔商品名「ZEONOR」、日本ゼオン(株)製〕の表面にコロナ処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上記(5)で調製した硬化性接着剤組成物をバーコーターを用いて硬化後の膜厚が約2.5μmとなるように塗工した。その塗工面に、厚み25μmのポリビニルアルコール−ヨウ素系偏光フィルムを貼合した。次いで、セルロースエステル系樹脂からなる厚み80μmの保護フィルム〔商品名「コニカタック KC8UX2MW」、コニカミノルタオプト(株)製〕の表面にコロナ放電処理を施し、そのコロナ放電処理面に、上記(5)で調製した硬化性接着剤組成物(上記位相差フィルム貼合用の接着剤と同じもの)を硬化後の膜厚が約2.5μmとなるようにバーコーターを用いて塗工した。その塗工面に、上で得られた位相差フィルム付の偏光フィルムをその偏光フィルム側で貼合して積層体を得た。この積層体における位相差フィルム側から、ベルトコンベア付き紫外線照射装置〔ランプはフュージョンUVシステムズ社製の「Dバルブ」使用〕を用いて積算光量が250mJ/cm2(UVB)となるように紫外線を照射し、硬化性接着剤組成物を硬化させ、偏光板を作製した。
【0157】
(9)剥離力(密着力)の評価(実施例4〜6)
得られた偏光板における(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルム表面にコロナ放電処理を施し、続いてそのコロナ放電処理面に(メタ)アクリル系粘着剤シートを貼合して粘着剤層付の偏光板とした。得られた粘着剤層付偏光板から、幅25mm、長さ約200mmの試験片を裁断し、その粘着剤層面をソーダガラスに貼合した。このサンプルを温度80℃相対湿度90%の環境下に24時間保管した後、温度23℃相対湿度55%の環境下に一晩保管した。次いで、偏光フィルムと保護フィルムとの間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥離し、その剥離部分を万能引張試験機〔(株)島津製作所製の「AG−1」〕のつかみ部でつかんだ。この状態の試験片を、温度23℃及び相対湿度55%の雰囲気中にて、JIS K 6854−2:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、つかみ部の30mmを除く170mmの長さにわたる平均剥離力を求めた。結果を表2に示す。温度80℃相対湿度90%の環境下で保管した後の剥離力の値は高い方が良く、高いほど湿熱環境下での耐久試験時に、偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの間の浮きや剥がれを抑制できる傾向にある。
【0158】
(10)剥離力(密着力)の評価(実施例7〜13、比較例2)
得られた偏光板における位相差フィルム表面にコロナ放電処理を施し、続いてそのコロナ放電処理面に(メタ)アクリル系粘着剤シートを貼合して粘着剤層付の偏光板とした。得られた粘着剤層付偏光板から、幅25mm、長さ約200mmの試験片を裁断し、その粘着剤層面をソーダガラスに貼合した。このサンプルを温度80℃相対湿度90%の環境下に24時間保管した後、温度23℃相対湿度55%の環境下に一晩保管した。次いで、偏光フィルムと位相差フィルムとの間にカッターの刃を入れ、長さ方向に端から30mm剥離し、その剥離部分を万能引張試験機〔(株)島津製作所製の「AG−1」〕のつかみ部でつかんだ。この状態の試験片を、温度23℃及び相対湿度55%の雰囲気中にて、JIS K 6854−2:1999「接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離」に準じて、つかみ移動速度300mm/分で180度はく離試験を行い、つかみ部の30mmを除く170mmの長さにわたる平均剥離力を求めた。結果を表3に示す。温度80℃相対湿度90%の環境下で保管した後の剥離力の値は高い方が良く、高いほど湿熱環境下での耐久試験時に、偏光フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとの間の浮きや剥がれを抑制できる傾向にある。
【0159】
【表2】
【0160】
【表3】
【符号の説明】
【0161】
10 第1熱可塑性樹脂フィルム、15 第1接着剤層、20 第2熱可塑性樹脂フィルム、25 第2接着剤層、30 偏光フィルム。
図1
図2