(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、数値範囲を表す「下限〜上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。
また、「質量部」および「質量%」は、それぞれ、「重量部」および「重量%」と同義である。
【0014】
ここで、フレキソ印刷版およびフレキソ印刷版原版の説明に関し、未架橋の架橋性層を「レリーフ形成層」と称し、上記レリーフ形成層を架橋した層を「架橋レリーフ形成層」と称し、これをレーザー彫刻して表面に凹凸を形成した層を「レリーフ層」と称する。
また、上記架橋は、光および/または熱により行われ、樹脂組成物が硬化される反応であれば特に限定されない。
また、架橋レリーフ形成層を有する印刷版原版にレーザー彫刻し、所望によりリンスすることによりフレキソ印刷版が作製される。
【0015】
[フレキソ印刷版]
本発明のフレキソ印刷版は、非画像部と画像部とを備えるレリーフ層を有するフレキソ印刷版であって、画像部が、網点面積率が0%超100%未満の網点部と網点面積率が100%のベタ部とを有する。
また、網点部における小点およびベタ部、または、網点部における小点が、網点面積率に応じて深さの異なる2以上の凹部を有する。
また、深さの異なる2以上の凹部が、網点面積率が高いほど深くなる凹部である。
ここで、「網点面積率」とは、単位面積あたりに占める網点面積の割合をパーセントで表したものであり、上述した通り、網点面積率が100%の部分をベタ部という。
【0016】
このような構成を有する本発明のフレキソ印刷版は、ベタ部等におけるインキ転写性に優れ、中間階調部における印刷品質が良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
本発明者らは、網点面積率が90%超の領域(ベタ部等)においては、凹部がインキの保持量を増やし、印刷時のインキの流れ(押し出し量)を安定化する役割を果たし、網点面積率が30%超90%以下の領域(中間階調部)においては、凹部が網点におけるインキ濃度を適正に保ち、かつ、網点と網点との間におけるインキの抜けに寄与すると推測している。
すなわち、網点面積率の高い領域における凹部の深さを網点面積率の低い領域における凹部の深さよりも深くすることにより、上述した役割が明確となり、ベタ部等におけるインキ転写性と、中間階調部における印刷品質が両立できたと考えられる。
【0017】
次に、本発明のフレキソ印刷版の全体の構成(特に、画像部に形成される凹部)を
図1〜
図5を用いて説明した後に、各構成について詳述する。
【0018】
図1に示すように、本発明に係るフレキソ印刷版の一例である印刷版1は、画像部3と、非画像部4とが形成されたレリーフ層2を有する。
画像部3は、印刷時にインキを着けてこのインキを被印刷物に転写する、すなわち、印刷時に画像を形成する領域である。また、非画像部4は、印刷時にインキを着けない、すなわち、画像を形成しない領域である。
【0019】
図2に示すように、画像部3は、網点面積率が0%超100%未満の網点部3aと、網点面積率が100%のベタ部3bとを有する。
また、
図2に示すように、網点部3aの各小点における凹部5の深さDaと、ベタ部3bにおける凹部5の深さDbとが異なり、網点面積率が高いベタ部3bにおける凹部5の深さDbが、網点部3aの各小点における凹部5の深さDaよりも深い。なお、
図2に示す符号Wは、凹部5の幅を示す。
ここで、
図2に示す態様においては、深さの異なる2以上の凹部が網点部3aとベタ部bに設けられているが、本発明の
図2に示す態様に限定されず、例えば、所定の網点面積率の領域Aの網点部における小点が有する凹部の深さAと他の所定の網点面積率の領域Bの網点部における小点が有する他の凹部の深さBとが異なる態様や、網点面積率が90%超の領域(ベタ部を含む)における凹部の深さAと網点面積率が90%未満の領域Bの網点部における小点が有する他の凹部の深さBとが異なる態様などであってもよい。
【0021】
〔非画像部〕
本発明のフレキソ印刷版が有する非画像部は、上述した通り、印刷時にインキを着けない、すなわち、画像を形成しない領域をいう。なお、後述する画像部の網点部における網点以外の領域は、明るい(ハイライト)画像を形成するための領域であるため、非画像部には含まれない領域である。
なお、非画像部の形状は、特に限定されず、画像部以外の部分が非画像部となる。
【0022】
〔画像部〕
本発明のフレキソ印刷版が有する画像部は、上述した通り、印刷時にインキを着けてこのインキを被印刷物に転写する、すなわち、印刷時に画像を形成する領域をいう。
本発明においては、画像部は、網点面積率が0%超100%未満の網点部と網点面積率が100%のベタ部とを有し、表面の少なくとも一部に後述する凹部を有するものである。
ここで、網点部を構成する小点は、通常、所定のスクリーン線数(精細度)、例えば、100〜200lpi(line per inch)程度のスクリーン線数で形成される。
また、網点部を構成する小点の大きさは、網点面積率およびスクリーン線数によって左右されるため特に限定されないが、例えば、円形ドットにおいてスクリーン線数が150lpiであり、網点面積率が70%であると、小点の直径は160μmと算出することができる。
【0023】
<凹部>
凹部は、網点部における小点およびベタ部、または、網点部における小点に設けられる凹部である。
本発明においては、網点部における小点およびベタ部、または、網点部における小点に、網点面積率が高いほど深くなるように網点面積率に応じて深さを変えた2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上の凹部を設ける。
【0024】
上記凹部の深さ(
図2において符号Daで表される部分)は、網点部における小点およびベタ部において、あるいは、網点部における小点において、網点面積率が高いほど深くなるように網点面積率に応じて変更する。
ここで、モアレの発生をより抑制する観点から、網点面積率が0%超30%以下の領域(以下、「A区分」ともいう。)においては、凹部の深さが10μm以下であるのが好ましく、8μm以下であるのがより好ましい。
また、網点カラミの発生をより抑制する観点から、網点面積率が30%超70%以下の領域(以下、「B区分」ともいう。)においは、凹部の深さが15μm以下であるのが好ましく、8μm以上12μm以下であるのがより好ましい。
また、網点ツブレの発生をより抑制する観点から、網点面積率が70%超90%以下の領域(以下、「C区分」ともいう。)においては、凹部の深さが9μm以上18μm以下であるのが好ましく、12μm以上16μm以下であるのがより好ましい。
また、インキ転写性がより良好となる理由から、網点面積率が90%超100%以下の領域(以下、「D区分」ともいう。)においては、凹部の深さが11μm以上23μm以下であるのが好ましく、18μm以上22μm以下であるのがより好ましい。
なお、上述した凹部の深さの好適範囲のうち、各領域において一部重複している数値が記載されているが、これは、各領域において同一の値の深さを採用することを許容するものでない。
【0025】
本発明においては、上述したA区分〜D区分のうち、少なくとも2区分における凹部の深さが網点面積率に応じて異なっていれば、他の区分においては、凹部の深さが共通していてもよく、凹部を有していなくてもよい。
具体的には、例えば、上述したC区分およびD区分において、D区分の凹部の深さをC区分の凹部の深さよりも深くして設けていれば、A区分およびB区分の凹部の深さはC区分の凹部の深さと共通していてもよく、C区分の凹部の深さよりも浅い値で共通していてもよく、あるいは、A区分および/またはB区分には凹部を有していなくてもよい。
【0026】
また、本発明においては、上述したA区分〜D区分のうち、少なくとも3区分における凹部の深さが網点面積率に応じて異なっているのが好ましく、4区分のすべてにおいて凹部の深さが網点面積率に応じて異なっているのがより好ましい。
【0027】
上記凹部は、インキを被印刷体にスムーズに転移させ、より高いインキ濃度での印刷が可能となる理由から、凹部の幅(
図2において符号Wで表される部分)が5〜30μmであることが好ましく、10〜25μmとなる溝であることが好ましい。
同様の理由から、凹部のピッチ、すなわち、隣接する凹部の中心間距離が、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmとなる溝であることが好ましい。
【0028】
また、上記凹部は、インキを被印刷体にスムーズに転移させ、より高いインキ濃度での印刷が可能となる理由から、深さ方向と直交する方向に連続して形成された溝であることが好ましい。
【0029】
<比表面積>
画像部は、上述した凹部のピッチ等に左右されるため特に限定されないが、上述した凹部を設けることにより、比表面積、すなわち、測定面積(幾何学的測定面積)に対する表面積(実面積)の割合は、概ね1.5倍〜3.5倍となる。
ここで、上記比表面積の測定は、3次元レーザー顕微鏡VK−8700(対物レンズ倍率:20倍、株式会社キーエンス製)を用い、形状解析には形状解析アプリケーション(VK Analyzer、株式会社キーエンス社製)を用いた値をいう。
【0030】
〔支持体〕
本発明のフレキソ印刷版は、レリーフ層の裏面側(彫刻面とは反対側の面)に支持体を有してもよい。
このような支持体としては特に限定されないが、寸法安定性の高いものが好ましく使用され、例えば、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート));PAN(ポリアクリロニトリル);PI(ポリイミド);PA(ポリアミド);テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂;シリコーン樹脂やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂;スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム;ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など);等が挙げられる。
支持体としては、PETフィルム、PENフィルム、PIフィルム、PAフィルム、フッ素樹脂フィルム、シリコーン樹脂フィルムが好ましく用いられる。
【0031】
[フレキソ印刷版の製造方法]
上述した本発明のフレキソ印刷版を製造する製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、レーザー彫刻用樹脂組成物を用いてレリーフ形成層を形成する層形成工程と、上記レリーフ形成層を架橋して架橋レリーフ形成層を有するフレキソ印刷版原版を得る架橋工程と、上記架橋レリーフ形成層にレーザー彫刻を施して、上記非画像部と、上述した凹部が形成された画像部とを備えるレリーフ層を形成し、フレキソ印刷版を得る彫刻工程と、を有するフレキソ印刷版の製造方法である。
以下に、本発明の製造方法の各工程について詳述する。
【0032】
〔層形成工程〕
層形成工程は、レーザー彫刻用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)を用いて架橋前(硬化前)のレリーフ形成層を形成する工程である。
【0033】
<樹脂組成物>
上記樹脂組成物は、フレキソ印刷版原版のレリーフ形成層を形成する従来公知の樹脂組成物を用いることができ、例えば、ジエン系ポリマー、熱重合開始剤、および、カーボンブラックを含有する樹脂組成物が挙げられる。
次に、層形成工程に用いる樹脂組成物に含有する各成分について説明する。
【0034】
(ジエン系ポリマー)
上記ジエン系ポリマーは特に限定されず、従来公知のジエン系ポリマーを制限なく使用することができる。
上記ジエン系ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、レリーフ形成層の膜厚のばらつきが小さくなる理由から、ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびエチレン−プロピレン−ジエン共重合体よりなる群から選択される少なくとも1種のジエン系ポリマーであるのが好ましい。
【0035】
本発明においては、ジエン系ポリマーは、レリーフ形成層の引張強度の観点から、重量平均分子量は200,000以上であることが好ましく、300,000〜2,000,000であることがより好ましく、300,000〜1,500,000であることが更に好ましく、300,000〜700,000であることが特に好ましい。
ここで、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)法にて測定され、標準ポリスチレンで換算して求められる。具体的には、例えば、GPCは、HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラムとして、TSKgeL Super HZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(東ソー株式会社製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.35質量%、流速を0.35mL/min、サンプル注入量を10μL、測定温度を40℃とし、IR検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー株式会社製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製する。
【0036】
ジエン系ポリマーの樹脂組成物中の含有量は、全固形分に対して、5〜90質量%であることが好ましく、15〜85質量%であることがより好ましく、30〜85質量%であることが更に好ましい。ジエン系ポリマーの含有量が上記範囲内であると、彫刻カスのリンス性に優れ、インキ転移性により優れるので好ましい。
【0037】
(熱重合開始剤)
上記熱重合開始剤は特に限定されず、従来公知の熱重合開始剤(例えば、ラジカル重合開始剤等)を制限なく使用することができる。
【0038】
上記熱重合開始剤としては、具体的には、例えば、(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、(l)アゾ系化合物等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、半減期温度が高く、その結果、樹脂組成物の混練時のスコーチ(早期硬化)を抑制することができり理由や、彫刻感度と、フレキソ印刷版原版のレリーフ形成層に適用した際にはレリーフエッジ形状を良好とするといった理由などから、(c)有機過酸化物が特に好ましい。
【0039】
ここで、上記(a)芳香族ケトン類、(b)オニウム塩化合物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物、および、(l)アゾ系化合物としては、特開2008−63554号公報の段落0074〜0118に挙げられている化合物を好ましく用いることができる。
一方、好適例である(c)有機過酸化物としては、以下に示す化合物が好ましい。
【0040】
上記有機過酸化物としては、具体的には、例えば、ジクミルペルオキシド(10時間半減期温度:116℃)、α,α’−ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(10時間半減期温度:119℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(10時間半減期温度:118℃)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明において、有機過酸化物の形態としては、原体のまま使用することも可能であるが、取扱い上の問題(危険性、作業性など)から、原体を炭酸カルシウムなどの無機フィラーに吸着させた濃度40wt%の希釈品(非危険物、粉状)や更に、混練時の粉立ち防止、ポリマーへの分散性改善を目的としたマスターバッチタイプの希釈品をより好ましく用いることができる。
原体としては、例えば、パークミルD(日油株式会社製)、PerkadoxBC−FF(化薬アクゾ株式会社製)、ルペロックスDC(アルケマ吉富株式会社製)、パーブチルP(日油株式会社製)、パーカドックス14(化薬アクゾ株式会社製)、ルペロックスF(アルケマ吉富株式会社製)、ルペロックスF90P(アルケマ吉富株式会社製)、パーヘキサ25B(日油株式会社製)、カヤヘキサAD(化薬アクゾ株式会社製)、ルペロックス101(アルケマ吉富株式会社製)等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
また、希釈品としては、例えば、パークミルD−40(日油株式会社製:不活性充填剤希釈品)、パークミルD−40MB(日油株式会社製:シリカ/ポリマー他希釈品)、カヤクミルD−40C(化薬アクゾ株式会社製:炭酸カルシウム希釈品)、カヤクミルD−40MB−S(化薬アクゾ株式会社製:ゴムマスターバッチ)、カヤクミルD−40MB(化薬アクゾ株式会社製:ゴムマスターバッチ)、パーブチルP−40(日油株式会社製:不活性充填剤希釈品)、パーブチルP−40MB(日油株式会社製:シリカ/ポリマー他希釈品)、パーカドックス14/40(化薬アクゾ株式会社製:炭酸カルシウム希釈品)、パーカドックス14−40C(化薬アクゾ株式会社製:炭酸カルシウム希釈品)、ルペロックスF40(アルケマ吉富株式会社製)、パーヘキサ25B−40(日油株式会社製:シリカ他希釈品)、カヤヘキサAD−40C(化薬アクゾ株式会社製:ケイ酸カルシウム希釈品)、トリゴノックス101−40MB(化薬アクゾ株式会社製:ゴムマスターバッチ)、ルペロックス101XL(アルケマ吉富株式会社製)等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明においては、熱重合開始剤は、彫刻カスのリンス性に優れ、耐刷性やインキ着肉性も良好となる理由から、ジエン系ポリマー100質量部に対して0.1〜20.0質量部であることが好ましく、0.5〜15.0質量部であることがより好ましく、1.0〜15.0質量部であるのが更に好ましい。
【0043】
(カーボンブラック)
上記カーボンブラックは特に限定されず、樹脂組成物中における分散性などが安定である限り、American Society for Testing and Materials(ASTM)による分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。
ここで、本発明においては、カーボンブラックは、レーザーの光を吸収し発熱することで、レーザー彫刻時の硬化物の熱分解を促進する光熱変換剤として機能していると考えられる。
【0044】
上記カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、これらのカーボンブラックは、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができるが、コストの観点から粉体で使用することが好ましい。
【0045】
本発明においては、カーボンブラックの含有量は、レーザー彫刻時の感度が良好となり、インキ着肉性も良好となる理由から、ジエン系ポリマー100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、2〜25質量部であることがより好ましく、3〜20質量部が特に好ましい。
【0046】
(その他の添加剤)
層形成工程に用いる樹脂組成物には、公知の各種添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合することができる。例えば、架橋助剤、シランカップリング剤、他の充填剤、ワックス、プロセス油、金属酸化物、オゾン分解防止剤、老化防止剤、重合禁止剤、着色剤等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
(形成方法)
レリーフ形成層の形成方法としては、例えば、樹脂組成物を調製し、必要に応じて、この樹脂組成物から溶剤を除去した後に、支持体上に溶融押し出しする方法;樹脂組成物を調製し、樹脂組成物を支持体上に流延し、これをオーブンなどの中で加熱乾燥して溶剤を除去する方法、
図6に示すようなカレンダーロールを用い、樹脂組成物をシート状に成型する方法;などが好適に挙げられる。
図6中、カレンダーロール60は第1ロール62a〜第4ロール62dを有しおり、これらのロールの間隔、ロールの温度、および、ロールの回転速度が設定可能となっている。
このロールの間に樹脂組成物の混練物70をセットし、圧延成形することにより、シート状の未硬化層71を得ることができる。
【0048】
〔架橋工程〕
架橋工程は、上記層形成工程で形成したレリーフ形成層を架橋して架橋レリーフ形成層を形成する工程である。
ここで、架橋させる方法としては、光および/または熱によりレリーフ形成層を硬化させる方法であれば特に特に限定されず、従来のフレキソ印刷版原版の製造方法で用いられる硬化方法を適宜利用することができる。
【0049】
(光硬化)
レリーフ形成層が光重合開始剤を含有する場合には、光重合開始剤のトリガーとなる光(以下、「活性光線」ともいう。)をレリーフ形成層に照射することで、レリーフ形成層を架橋することができる。
活性光線の照射は、レリーフ形成層全面に行うのが一般的である。
活性光線としては、例えば、可視光、紫外光、電子線などが挙げられるが、紫外光が最も一般的である。レリーフ形成層の支持体等、レリーフ形成層を固定化するための基材側を裏面とすれば、表面に光を照射するだけでもよいが、支持体が活性光線を透過する透明なフィルムであれば、更に裏面からも光を照射することが好ましい。表面からの照射は、保護フィルムが存在する場合、これを設けたまま行ってもよいし、保護フィルムを剥離した後に行ってもよい。酸素の存在下では重合阻害が生じる恐れがあるので、レリーフ形成層に塩化ビニルシートを被せて真空引きした上で、活性光線の照射を行ってもよい。
【0050】
(熱硬化)
レリーフ形成層が熱重合開始剤を含有する場合、レリーフ形成層を加熱することにより架橋することができる。
熱による架橋を行うための加熱手段としては、未硬化層を熱風オーブンや遠赤外オーブン内で所定時間加熱する方法や、加熱したロールに所定時間接する方法が挙げられる。
【0051】
レリーフ形成層の硬化方法としては、レリーフ形成層を表面から内部まで均一に硬化(架橋)可能という観点で、熱による架橋の方が好ましい。
レリーフ形成層を熱により架橋することにより、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻カスの粘着性が抑制されるという利点がある。
【0052】
〔彫刻工程〕
彫刻工程は、上記架橋工程で架橋させた架橋レリーフ形成層にレーザー彫刻を施して、非画像部と、表面に上述した凹部が形成された画像部、すなわち、網点部における小点およびベタ部、または、網点部における小点において網点面積率に応じて深さの異なる2以上の凹部を設けた画像部とを備えるレリーフ層を形成する工程である。
【0053】
レーザー彫刻の方法は特に限定されないが、本発明の製造方法においては、非画像部となる部分を彫刻(非画像部を形成)するとともに、画像部の表面に上述した凹部を形成する必要があるため、所望の画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋レリーフ形成層に対して走査照射する方法が好ましく挙げられる。
【0054】
(画像データ生成方法)
レーザー彫刻のための画像データの生成方法は、以下の手法を用いることができる。
まず、作成する印刷版の原画像データを取得する。次に、この原画像データを、レーザー彫刻を行うためのデータに変換するため、RIP(Raster Image Processor)処理を行う。一方で、原画像データをラスタライズして、各画像部の外縁(端辺)から所定の幅の複数の部分領域を抽出する。抽出した各部分領域に、それぞれ所定の面積率の凹部パターンのテンプレートを重ねてマスクを生成する。さらに、RIP処理をした画像データ(2値画像)に、生成したマスクを掛け合わせて、出力画像データ(光量画像)を生成する。
ここで、凹部の深さの調整は、光量画像を生成する際の形状プロファイルにより行うことができ、例えば、彫刻深度との関係で設定されるDEPTH POWER値(DP値)に応じて、レーザーパワーとドラムの回転速度を設定することにより行うことができる。
このようにして、原画像データの画像部に凹部パターンを付加した出力画像データを生成して、この出力画像データを用いてレーザー彫刻を行い、フレキソ印刷版を作製する。
【0055】
(レーザー彫刻)
レーザー彫刻の方法としては、例えば、円筒形を有するドラムの外周面にシート状のレーザー彫刻用印刷版原版を巻き付けてドラムを回転させて、印刷版原版に向けて露光ヘッドから、上記出力画像データに応じたレーザー光を射出し、露光ヘッドを主走査方向と直交する副走査方向に所定ピッチで走査させることで、印刷版原版の表面に2次元画像を高速で彫刻(記録)する方法、等が利用可能である。
【0056】
レーザー彫刻において利用されるレーザーの種類については特に限定はないが、赤外線レーザーが好ましく用いられる。赤外線レーザーが照射されると、架橋レリーフ形成層中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外線レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱が発生し、硬化層中の分子は分子切断又はイオン化されて選択的な除去、すなわち、彫刻がなされる。
【0057】
赤外線レーザーとしては、生産性、コスト等の面から、炭酸ガスレーザー(CO
2レーザー)又は半導体レーザーが好ましく、ファイバー付き半導体赤外線レーザー(FC−LD)が特に好ましい。一般に、半導体レーザーは、CO
2レーザーに比べレーザー発振が高効率且つ安価で小型化が可能である。また、小型であるためアレイ化が容易である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。
半導体レーザーとしては、波長が700〜1,300nmのものが好ましく、800〜1,200nmのものがより好ましく、860〜1,200nmのものが更に好ましく、900〜1,100nmのものが特に好ましい。
また、ファイバー付き半導体レーザーは、更に光ファイバーを取り付けることで効率よくレーザー光を出力できるため、レーザー彫刻には有効である。更に、ファイバーの処理によりビーム形状を制御できる。例えば、ビームプロファイルはトップハット形状とすることができ、安定に版面にエネルギーを与えることができる。半導体レーザーの詳細は、「レーザーハンドブック第2版」レーザー学会編、「実用レーザー技術」電子通信学会編著等に記載されている。
また、特開2009−172658号公報及び特開2009−214334号公報に詳細に記載されるファイバー付き半導体レーザーを備えた製版装置は、本発明のフレキソ印刷版の製造方法に好適に使用することができる。
【0058】
〔リンス工程〕
本発明の製造方法では、彫刻工程の後に、彫刻表面をアルカリ水溶液でリンスするリンス工程を有していてもよい。リンス工程を有することにより、彫刻表面の付着・残留する彫刻カスを洗い流し、除去することが可能である。
リンスの手段として、アルカリ水溶液に浸漬する方法、アルカリ水溶液に浸漬しながら、リンス液を回転させ、彫刻表面をブラシ(例えば、獣毛ブラシ、毛径が100〜500μmの波線加工済みブラシ等)で摺る方法、アルカリ水溶液をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式又は搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主にアルカリ水溶液の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられ、彫刻カスのヌメリがとれない場合は、石鹸や界面活性剤を添加したリンス液を用いてもよい。
【0059】
〔乾燥工程〕
本発明の製造方法では、彫刻表面をリンスするリンス工程を行った場合、彫刻工程の後に、乾燥してリンス液を揮発させる乾燥工程を追加してもよい。
【0060】
〔後架橋工程〕
本発明の製造方法では、必要に応じて、彫刻工程の後に更に架橋する後架橋工程を追加してもよい。追加の架橋工程である後架橋工程を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0061】
本発明においては、上述のレーザー彫刻(DLE(Direct Laser Engraving)方式)に限定はされず、レーザーで印刷版原版の表面に画像を書き込み現像するLAMS(Laser Ablation Masking System)等の種々の公知の製造方法が利用可能である。
なお、LAMSは、具体的には、国際公開第2004/090638号や特開2014−063132号公報などに記載された方式が挙げられる。
【0062】
[フレキソ印刷装置]
次に、上述した本発明のフレキソ印刷版を用いるフレキソ印刷装置の構成について詳細に説明する。フレキソ印刷装置は、上記フレキソ印刷版を用いる以外は、基本的に、従来のフレキソ印刷装置と同様の構成を有する。
【0063】
図7は、本発明に係るフレキソ印刷版を用いるフレキソ印刷装置の要部を概念的に示す図である。
図7に示すように、フレキソ印刷装置30は、上記フレキソ印刷版1、ドラム(版胴)31、搬送ローラ(圧胴)32、アニロックスローラ33、ドクターチャンバ34、および、循環タンク35を有する。
【0064】
ドラム31は、円筒状であり、フレキソ印刷版1を周面に載置して、回転しつつ、フレキソ印刷版1を被印刷体zに接触させるものである。
搬送ローラ32は、被印刷体zを所定の搬送経路で搬送する搬送部(図示せず)を構成するローラであり、その周面が、ドラム31の周面と対面して配置されて、被印刷体zをフレキソ印刷版1に接触させるものである。
ドラム31はその回転方向が、被印刷体zの搬送方向と一致するように配置されている。
【0065】
アニロックスローラ33、ドクターチャンバ34、および、循環タンク35は、フレキソ印刷版1にインキを供給するためのものである。循環タンク35はインキを貯留しており、循環タンク35内のインキが、ポンプ(図示せず)によってドクターチャンバ34に供給される。ドクターチャンバ34は、アニロックスローラ33の表面に密接して設けられ、内部にインキが保持されている。アニロックスローラ33は、ドラム31の周面に当接して同調回転し、ドクターチャンバ34内のインキを印刷版1に塗布(供給)する。
【0066】
このように構成されたフレキソ印刷装置30は、被印刷体zを所定の搬送経路で搬送しつつ、ドラム31に載置されたフレキソ印刷版1を回転させて、インキを被印刷体zに転写して印刷を行う。すなわち、フレキソ印刷版を載置するドラムの回転方向が印刷方向となる。
【0067】
本発明のフレキソ印刷版を用いるフレキソ印刷装置で用いられる被印刷体の種類には、特に限定はなく、紙、フィルム、段ボール等の、通常のフレキソ印刷装置で用いられる、種々の公知の被印刷体を用いることができる。
また、本発明のフレキソ印刷版を用いるフレキソ印刷装置で用いられるインキの種類にも、特に限定はなく、水性インキ、UV(Ultra Violet)インキ、油性インキ、EB(Electron Beam)インキ等の、通常のフレキソ印刷装置で用いられる、種々の公知のインキを用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0069】
[実施例1]
<樹脂組成物Aの調製>
ポリマーとしてEPDM:MITSUI EPT1045〔エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン含量:58質量%、ジエン含量:5質量%、ジエン種:ジシクロロペンタジエン(DCPD)、三井化学株式会社製〕を80質量部と、光熱変換剤としてカーボンブラック#45L(窒素吸着比表面積:125m
2/g、DBP吸収量:45cm3/100g、三菱化学株式会社製)を12質量部と、パークミルD40〔ジクミルペルオキシド(40質量%)、日油株式会社製〕を5質量部とを混練し、樹脂組成物Aを調製した。なお、下記第1表中、樹脂組成物Aを用いた処方を「処方A」と表示し、後述する樹脂組成物B〜Fを用いた場合についても同様に「処方B〜F」と表示する。
【0070】
<フレキソ印刷版原版の作製>
得られた樹脂組成物Aを、加熱プレス機(MP−WCL、株式会社東洋精機製作所製)を用いて、10MPaの圧力で、160℃で20分間加熱して架橋し、厚さが915μmの架橋レリーフ形成層を作製した。
得られた架橋レリーフ形成層の片側に、光硬化性組成物(株式会社スリーボンド製:3030)を平均膜厚が100μmになるように塗設した後、支持体として125μm厚のPETフィルムをニップローラにて貼り合わせ、20秒後にPETフィルム側からUV露光機(アイグラフィックス株式会社製UV露光機ECS―151U、メタルハライドランプ、1,500mJ/cm
2、14sec露光)にて光硬化性層を硬化させて、フレキソ印刷版原版を得た。
【0071】
<フレキソ印刷版の作製>
上記で得たフレキソ印刷版原版の架橋レリーフ形成層にレーザー彫刻を施すことにより、画像部、および、非画像部を有するフレキソ印刷版を形成した。なお、下記第1表中、レーザー彫刻によるDLE方式を「方法1」と表示する。
上記で得たフレキソ印刷版原版の架橋レリーフ形成層にレーザー彫刻を施すことにより、各区分における凹部の深さが下記第1表に示す値となる画像部、および、非画像部を有するフレキソ印刷版を作製した。
具体的には、レーザー照射による彫刻は、レーザー彫刻機(Hell Gravure Systems社製 1300S)により、解像度2540dpiで彫刻し、その後、洗浄剤(The Procter & Gamble Company社製 ジョイ(登録商標)2%水溶液)を版上に垂らし、豚毛ブラシで擦り、流水にて水洗することで彫刻カスを除去した。
また、画像部に凹部を形成するためのパターン(凹部形成パターン)として、横ピッチxp(pix)、縦ピッチyp(pix)の等間隔の格子点について、これを反時計回りにa(deg)回転させた位置に彫刻点を設定してマスクパターンを作製した。パラメータは実数とし、パラメータに従って計算した結果を整数化して彫刻点の座標とする。
なお、下記第1表中の凹部形成パターンは、下記第2表に示す横ピッチxp(pix)、縦ピッチyp(pix)、および、a(deg)に設定したパターンI〜IIIである。ここで、パターンIを用いて得られた画像部の表面のうち、網点面積率が30%の網点部とベタ部の平面図は
図3Aおよび
図3Bに示す通りであり、パターンIIを用いて得られた画像部の表面のうち、網点面積率が30%の網点部とベタ部の平面図は
図4Aおよび
図4Bに示す通りであり、パターンIIIを用いて得られた画像部の表面のうち、網点面積率が30%の網点部とベタ部の平面図は
図5Aおよび
図5Bに示す通りである。
【0072】
[実施例2〜13、比較例1〜3]
各区分における凹部の深さを下記第1表に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、フレキソ印刷版を製造した。
【0073】
[実施例14]
凹部形成パターンとして、パターンIに代えて、パターンIIを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、フレキソ印刷版を製造した。
【0074】
[実施例15]
凹部形成パターンとして、パターンIに代えて、パターンIIIを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、フレキソ印刷版を製造した。
【0075】
[実施例16]
樹脂組成物Aに代えて、以下に示す樹脂組成物B(処方B)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、フレキソ印刷版を製造した。
<樹脂組成物Bの調製>
カーボンブラック#45Lに代えて、カーボンブラック#1000(窒素吸着比表面積:180m
2/g、DBP吸収量:56cm
3/100g、三菱化学株式会社製)を用いた以外は、樹脂組成物Aと同様の方法により、樹脂組成物Aを調製した。
【0076】
[実施例17]
樹脂組成物Aに代えて、以下に示す樹脂組成物C(処方C)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、フレキソ印刷版を製造した。
<樹脂組成物Cの調製>
カーボンブラック#45Lに代えて、F−200(窒素吸着比表面積:51m
2/g、DBP吸収量:180cm
3/100g、旭カーボン株式会社製)を用いた以外は、樹脂組成物Aと同様の方法により、樹脂組成物Cを調製した。
【0077】
[実施例18]
樹脂組成物Aに代えて、以下に示す樹脂組成物D(処方D)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、フレキソ印刷版を製造した。
<樹脂組成物Dの調製>
カーボンブラック#45Lに代えて、シーストFM(窒素吸着比表面積:42m
2/g、DBP吸収量:160cm
3/100g、東海カーボン株式会社製)を用いた以外は、樹脂組成物Aと同様の方法により、樹脂組成物Dを調製した。
【0078】
[実施例19]
樹脂組成物Aに代えて、以下に示す樹脂組成物E(処方E)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、フレキソ印刷版を製造した。
<樹脂組成物Eの調製>
ポリマーとしてUBEPOL BR150(ポリブタジエン、宇部興産株式会社製)を80質量部と、光熱変換剤としてカーボンブラック#45L(窒素吸着比表面積:125m
2/g、DBP吸収量:45cm
3/100g、三菱化学株式会社製)を12質量部と、パークミルD40〔ジクミルペルオキシド(40質量%)、日油株式会社製〕を5質量部とを混練し、樹脂組成物Eを調製した。
【0079】
[実施例20]
<樹脂組成物Fの調製>
ポリマーとして、Kraton D-1102(SBSブロックコポリマー、クレイトン株式会社製)を60質量部と、可塑剤としてDEHP#80030〔フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、シグマアルドリッチ製〕を32質量部と、モノマーとしてA-HD-N(ヘキサンジオールジアクリレート、新中村化学株式会社製)10質量部と、光重合開始剤としてイルガキュア651(BASF社製)を2質量部と、1質量部の染料及び熱安定剤とを混練し、樹脂組成物Fを調製した。
【0080】
<フレキソ印刷版原版の作製>
アクリル樹脂75質量部およびニトリルゴム(NBR)25質量部からなるバインダーポリマーに対し、カーボンブラック100質量部と可塑剤3質量部とを加え、さらに溶剤としてメチルイソブチルケトン815質量部を加え、攪拌機にて混合した。得られた混合液をロールミルにより分散させた後、さらにメチルイソブチルケトンを加えることにより、赤外線アブレーション組成物を調製した。
得られた赤外線アブレーション組成物を、カバーフィルムとして100μm厚のPETフィルムの片面に予め粘着防止剤を塗布した基板上に、乾燥後の厚みが3μmとなるようにバーコーターで塗布した。
そして、先に調製した樹脂組成物Fを、支持体として125μm厚のPETフィルムの片面に予め接着剤を塗布した基板と、カバーフィルムとの間に挟み、カバーフィルムを除く厚みが1.14mmとなるように、120℃に加熱したプレス機でプレスすることにより、フレキソ印刷版原版を得た。
【0081】
<フレキソ印刷版の作製>
上記で得たフレキソ印刷版原版の支持体側から化学線(光源Philips紫外線低圧水銀ランプ、365nmにおける照度32mW/cm
2)を15秒間照射した。その後、カバーフィルムを剥離した。
カバーフィルムを剥離した版を、Esko CDI SPARK4835に巻き付け、解像度4000dpiでイメージングを行った。この時、各区分における凹部の深さが下記第1表に示す値となる画像部、および、非画像部を有するようにアブレーション層を作製した。
イメージング後、版を取り出し、平面に戻し、化学線(光源Philips紫外線低圧水銀ランプ、365nmにおける照度32mW/cm
2)を420秒間照射した。
その後、メチルエチルケトン(MEK、出光興産株式会社製)を版上に垂らし、豚毛ブラシで擦り、流水にて水洗することで現像を行った。現像後、60℃で10分間乾燥し、化学線(光源Philips紫外線低圧水銀ランプ、365nmにおける照度32mW/cm
2)を600秒間照射し、最後に表面粘着性を除去する(デタック)ために殺菌灯を300秒間照射した。
【0082】
[評価]
〔インキ転写性〕
得られたフレキソ印刷版を印刷機(ILF−270−4F、太陽機械製作所)にセットし、水性フレキソ藍(ハイドリックFCG 739、大日精化製)をインキとして用い、印刷紙として、太閤OPPフィルム FOS−AQ(フタムラ化学株式会社製)を用いて、40m/minにて印刷を継続し、印刷開始から1,000mにおける印刷物上のD区分のインキの付着度合いによりインキ転写性を比較した。
インキ転写性の評価は、上記で得た印刷物上のD区分の濃度を、3箇所をポータブル反射濃度計(エックスライト社製)により各2回測定し、計6回の測定値の平均値を算出し、以下の基準で評価した。
A:濃度の平均値が1.75以上であるもの。
B:濃度の平均値が1.75未満1.60以上であるもの。
C:濃度の平均値が1.60未満であるもの。
【0083】
〔印刷品質〕
<モアレ>
モアレの評価は、インキ転写性の評価で得た印刷物上のA区分について、周期的なムラの発生度合を目視により確認し、以下の基準で評価した。
A:ムラが確認できない。
B:軽度なムラが確認できるが、実用上、問題のないレベル。
C:ムラがはっきりと確認できる。
<カラミ>
カラミの評価は、インキ転写性の評価で得た印刷物上のB区分について、網点間のインキの詰まり具合を目視により確認し、以下の基準で評価した。
A:1cm
2あたりのインキの詰まりが1ヶ所以下
B:1cm
2あたりのインキの詰まりが2〜9ヶ所
C:1cm
2あたりのインキの詰まりが10ヶ所以上
<反転>
反転の評価は、インキ転写性の評価で得た印刷物上のC区分について、画像部と非画像部に対応するインキの転写具合を目視により確認し、以下の基準で評価した。
A:非画像部より小点のインキ量が多い(濃さで判断)
B:小点と非画像部のインキ量が同じである(濃さで判断)
C:小点より非画像部のインキ量が多い(濃さで判断)
<ツブレ>
ツブレの評価は、インキ転写性の評価で得た印刷物上のC区分について、非画像部のインキの転写具合を目視により確認し、以下の基準で評価した。
A:非画像部にインキが詰まっていない。
B:非画像部にややインキが詰まっているが、実用上、問題のないレベル。
C:非画像部にインキが詰まっており、問題になるレベル。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
第1表に示すように、画像部に凹部を形成しない場合は、インキ転写性が劣ることが分かり(比較例1)、深さが均一な凹部を画像部に設けた場合は、インキ転写性は良好であったが、印刷品質(特にモアレの抑制効果)が劣ることが分かった(比較例2〜3)。
【0087】
一方、画像部の網点部における小点およびベタ部、または、網点部における小点に、網点面積率に応じて深さが深くなる凹部を設けた場合は、いずれも、インキ転写性および印刷品質が良好となることが分かった(実施例1〜20)。
特に、実施例1と実施例2との対比から、網点面積率が0%超30%以下の領域(A区分)における凹部の深さが8μm以下であると、モアレの抑制効果が高くなることが分かった。
また、実施例1と実施例3〜4との対比から、網点面積率が30%超70%以下の領域(B区分)における凹部の深さが8μm以上12μm以下であると、カラミの抑制効果が高くなることが分かった。
また、実施例1と実施例5〜6との対比から、網点面積率が70%超90%以下の領域(C区分)における凹部の深さが12μm以上16μm以下であると、ツブレの抑制効果が高くなることが分かった。
また、実施例1と実施例7〜8との対比から、網点面積率が90%超100%以下の領域(D区分)における凹部の深さが18μm以上22μm以下であると、インキ転写性がより良好となることが分かった。
また、実施例1、14および15の対比から、凹部形成パターンとしてパターンIおよびパターンIIを用いた凹部、すなわち、深さ方向と垂直する方向に連続して形成された溝からなる凹部であると、インキ転写性および印刷品質がより良好となることが分かった。