(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、社会的な問題として高齢者における虚弱が注目されている。以前より、老年医学の分野を中心として、要介護状態に陥る前の高齢者の虚弱状態について「Fraility」という概念が提唱され、さまざまな研究がなされてきた(非特許文献1)。この「Fraility」の日本語訳には「フレイル」を用いる、とのステートメントが、2014年5月に日本老年医学会より公表された。フレイルとは、高齢者が要介護状態に陥る過程に存在する、移動能力、筋力、バランス、運動処理能力、認知機能、栄養状態、持久力、日常生活の活動性の低下および疲労感といった状態を指している。その評価は、体重減少、疲れやすさの自覚、活動量低下、歩行速度の低下および筋力低下のうち、3つ以上該当する場合にフレイルと見做される。特徴的なのは、「日常生活の活動性の低下」や「活動量低下」がその状態や評価指標となっていることである。すなわち、日々の活動量が徐々に低下することに伴って、体力、筋肉量も徐々に低下し、結果として要介護状態に陥る。高齢化社会において要介護状態の高齢者を増加させないためには、活動意欲を向上させて日々の活動量を低下させないことが重要である。
【0003】
また、肥満、メタボリックシンドロームを原因とする循環器疾患、糖尿病、がんなどの生活習慣病の発症およびこれらを原因とする死亡に至るリスクは、日常の身体活動量を増やすことで低下させることが期待できる。近年、メタボリックシンドロームの対策として、非運動性活動熱産生(NEAT:Non-Exercise Activity Thermogenesis)が注目されている。NEATは日常の生活活動で消費されるエネルギーのことであり、活動意欲を向上させて消費エネルギーを増加させることができる。したがって活動意欲の向上は、肥満、メタボリックシンドローム対策としても有益である。
【0004】
また、身体活動量を増やすことは、気分転換またはストレス解消につながり、統合失調症などの精神疾患の予防としても有効であると考えられる。
【0005】
これまで、活動意欲、運動意欲を向上させる薬剤として、チオクト酸類を有効成分とする薬剤(特許文献1)、β−アラニルロイシン等を活性成分とする薬剤(特許文献2)が報告されていた。しかし、チオクト酸の摂取はインスリン自己免疫症候群発症との関連が示唆されており、またβ−アラニルロイシンはメープルシロップ尿症の患者において摂取上の注意が必要な成分である。
【0006】
一方、フルスルチアミンなどのビタミンB
1誘導体を含有するビタミン剤は、ビタミンB
1補給、関節障害の予防治療剤(特許文献3)などの目的で、広く販売され、一般的に摂取されている安全な栄養剤である。また、ビタミンB
1依存性酵素活性低下に基づく神経症状改善剤(特許文献4)、ストレス又は精神神経的な疲労による沈滞した気分又は意欲の低下を改善するための改善剤(特許文献5)などの用途も報告されている。しかし、ビタミンB
1誘導体が、中枢モノアミン神経系を刺激・調節し、活動意欲、運動意欲を向上させることは、これまで知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩を含む、活動意欲向上剤(以下、「本発明の薬剤」と称する)に関する。
【0014】
本発明における「活動」とは、安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する全ての動作を指す。
本発明における「生活活動」とは、上記「活動」のうち、日常生活における労働、家事、通勤・通学などを指す。
本発明における「運動」とは、上記「活動」のうち、生活活動以外の、スポーツなど、特に体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施し、継続性のある活動を指す。
【0015】
本発明における「活動意欲」とは、上記活動に積極的・前向きに取り組む気持ちを指し、「活動意欲向上」とは、その気持ちを高めることを指す。
ここで、本発明における「活動意欲向上」は、精神疾患により活動意欲が低下した患者の意欲を罹患前の状態まで戻す「意欲の回復」を指すものではなく、通常の意欲を有する者の意欲をさらに高めることを指し、意欲の回復と区別できるものである。
活動意欲向上は、例えば、自発活動の時間または量の延長または増大、運動の頻度、時間、強度、期間または量の増大、さらには意欲に係る脳内部位の活性化などにより確認することができる。
【0016】
本発明における「中枢モノアミン神経系」とは、脳および脊髄を含む中枢神経系のうち、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンなどのモノアミンにより刺激・調節される神経系を指す。
【0017】
本発明の薬剤における中枢モノアミン神経系におけるモノアミンとしては、例えば、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンなどが挙げられ、好ましくはドーパミンが挙げられる。
【0018】
本発明の薬剤における活動意欲としては、好ましくは生活活動意欲、運動意欲が挙げられ、特に運動意欲が挙げられる。
【0019】
本発明の薬剤は、中枢モノアミン神経系を刺激・調節し、活動意欲を向上させることができることから、例えば、フレイル予防・改善、気分の高揚、肥満・メタボリックシンドローム予防・改善、体温上昇または摂食・飲水抑制などに用いることができる。
ここで「フレイル」とは、上記日本老年医学会が提唱する、高齢者が要介護状態に陥る過程に存在する、移動能力、筋力、バランス、運動処理能力、認知機能、栄養状態、持久力、日常生活の活動性の低下および疲労感といった状態を指す。
【0020】
また、本発明の薬剤により、運動意欲が向上することにより、運動不足が解消された結果として、肥満、メタボリックシンドロームを原因とする循環器疾患の予防・治療、糖尿病、がんなどの生活習慣病の発症を予防することができる
。
【0021】
本発明の薬剤中、
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩は、例えば、
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩として、薬剤全体の0.01〜100重量%程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%程度であってもよい。
【0022】
本発明の薬剤は、
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩に加えて、他の活性成分、例えば、カフェイン類、ビタミンA類、ビタミンB
2類、ビタミンB
6類、ビタミンB
12類、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンE類、カルニチン類、ニコチン酸類、グルコサミン類、コンドロイチン類、カルシウム類、マグネシウム類、パントテン酸類、γ−オリザノール類、オロチン酸類、ビオチン類、葉酸類、鉄類、グルクロン酸類、イノシトール類、コリン類、ウルソデスオキシコール酸類、タウリン類、アミノ酸類および生薬類からなる群から選択される少なくとも1種の活性成分を含有していてもよい。
本発明の薬剤中、上記
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩以外の活性成分の量は、特に限定されないが、例えば、薬剤全体の0〜99.9重量%程度の範囲から選択でき、通常、0.1〜97重量%、好ましくは1〜90重量%程度であってもよい。
【0023】
カフェイン類には、カフェインまたは無水カフェイン等が挙げられる。
ビタミンA類には、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールまたはビタミンA油等が挙げられる。
ビタミンB
2類には、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビン、リボフラビンリン酸塩またはリボフラビン酪酸塩等が挙げられる。
ビタミンB
6類には、ピリドキシン塩酸塩またはピリドキサールリン酸塩等が挙げられる。
ビタミンB
12類には、シアノコバラミン、ヒドロキシソコバラミン塩酸塩、ヒドロキシソコバラミン酢酸塩またはヒドロキシソコバラミン等が挙げられる。
ビタミンC類には、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウムまたはアスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
ビタミンD類には、エルゴカルシフェロールまたはコレカルシフェロール等が挙げられる。
ビタミンE類には、d-α-トコフェロールコハク酸塩、dl-α-トコフェロールコハク酸塩、dl-α-トコフェロールカルシウムコハク酸塩、d-α-トコフェロール酢酸塩、dl-α-トコフェロール酢酸塩、d-α-トコフェロールまたはdl-α-トコフェロール等が挙げられる。
カルニチン類には、塩化カルニチン等が挙げられる。
ニコチン酸類には、ニコチン酸またはニコチン酸アミド等が挙げられる。
グルコサミン類には、グルコサミン等が挙げられる。
コンドロイチン類には、コンドロイチン硫酸ナトリウム等が挙げられる。
カルシウム類には、乳酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウムまたは沈降炭酸カルシウム等が挙げられる。
マグネシウム類には、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
パントテン酸類には、パンテノール、パントテン酸カルシウムまたはパントテン酸ナトリウム等が挙げられる。
γ−オリザノール類には、γ-オリザノール等が挙げられる。
オロチン酸類には、オロチン酸またはオロチン酸コリン等が挙げられる。
ビオチン類には、ビオチン等が挙げられる。
葉酸類には、葉酸等が挙げられる。
鉄類には、クエン酸鉄アンモニウムまたはフマル酸第一鉄等が挙げられる。
グルクロン酸類には、グルクロノラクトンまたはグルクロン酸アミド等が挙げられる。
イノシトール類には、イノシトールまたはイノシトールヘキサニコチネート等が挙げられる。
コリン類には、重酒石酸コリン等が挙げられる。
ウルソデスオキシコール酸類には、ウルソデスオキシコール酸等が挙げられる。
タウリン類には、タウリン等が挙げられる。
アミノ酸類には、L−アルパラギン酸、L−アルパラギン酸カリウム、L−アルパラギン酸ナトリウム、L−アルパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物、アミノ酢酸、L−イソロイシン、塩酸アルギニン、塩酸リジン、L−グルタミン酸、L−トレオニン、L−バリン、L−ヒスチジン塩酸塩、L−ロイシン、DL−メチオニン、L−塩酸システイン、L−システインまたはL−塩酸システイン等が挙げられる。
生薬には、加工大蒜、ニンジン、ヨクイニン、アセンヤク、ウイキョウ、エゾウコギ、オウセイ、加工ダイサン、ガラナ、カンゾウ、クコシ、ケイヒ、コウジン、サフラン、サンザシ、サンヤク、シャクヤク、シュクシャ、ショウキョウ、ジョテイシ、セイヨウサンザシ、タイソウ、チョウジ、チンピ、トウキ、トシシ、トチュウ、ニクジュヨウ、ニンニク、ブクリョウ、ムイラプアマ、モッコウ、ヤクチ、ヨクイニン、リョウガンニクまたはローヤルゼリー等が挙げられる。
【0024】
本発明の薬剤は、医薬的に許容される担体成分または添加剤と組み合わせて、種々の製剤または医薬組成物として提供することができる。例えば、本発明の薬剤は、顆粒剤、細粒剤、散剤、発泡顆粒剤、錠剤(素錠、コーティング錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、薄層糖衣錠、チュアブル錠、発泡錠)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、経口液剤(エリキシル剤、リモナーデ剤)、シロップ剤、経口ゼリー剤、フィルム製剤として用いることができる。
また、本発明の薬剤は、飲食品に通常使用される添加剤と組み合わせて、飲料、機能性表示食品、特定保健用食品、健康食品、栄養補助食品(サプリメント)、医療用食品などの飲食品組成物の形態で使用することもできる。
【0025】
錠剤等の固形製剤に使用する担体成分または添加剤としては、通常、賦形剤、結合剤および崩壊剤のうち少なくとも一種を使用する場合が多い。
賦形剤としては、例えば、D−マンニトール、D−ソルビトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖アルコール、乳糖、ブドウ糖、果糖、白糖、粉末還元麦芽糖水アメなどの糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、デキストリン、βーシクロデキストリン、カルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降性炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、乳酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、タルク、カオリンなどが例示できる。
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、結晶セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドン共重合体(コポリビドン)、アクリル酸系高分子、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、アルファー化デンプン、カンテン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、白糖などが例示できる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン、アルギン酸、ベントナイトなどが例示できる。
【0026】
他の担体成分または添加剤としては、滑沢剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、ポリエチレングリコール、ジメチルポリシロキサン、ミツロウ、サラシミツロウなど);抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、クエン酸など);保存剤(パラオキシ安息香酸エステル類など);着色剤(ウコン抽出液、リボフラビン、カロチン液、タール色素、カラメル、酸化チタン、ベンガラなど);矯味剤(アスパルテームなどの甘味料、アスコルビン酸、ステビア、メントール、カンゾウ粗エキス、単シロップなど);界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル(モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンなど)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、マクロゴール類、ショ糖脂肪酸エステルなど);流動化剤(軽質無水ケイ酸、タルク、含水二酸化ケイ素など);可塑剤(クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール、トリアセチン、セタノールなど);甘味剤(ショ糖、マンニトール、D−ソルビトール、キシリトール、アスパルテームなどの天然または合成甘味剤);着香剤(メントールなど);吸着剤、防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0027】
また、コーティングされた製剤(例えば、コーティング錠)に使用するコーティング基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポビドン、コポリビドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体、マクロゴールなどの水溶性基剤、エチルセルロースなどの水不溶性基剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸コポリマー、カルボキシビニルポリマーなどの腸溶性基剤、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、ポリビニルアセタートジエチルアミノアセテートなどの胃溶性基剤、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、セラック、マクロゴール類、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウムなどが例示できる。
【0028】
本発明の薬剤中の上記担体成分および添加剤の含有量は、剤形、投与経路などに応じて適宜選択することができる。
【0029】
固形製剤は慣用の方法で製造できる。本発明における活性成分(
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩)と担体成分とを混合して粉剤を調製してもよく、通常、活性成分と担体成分とを造粒し、必要により造粒物を整粒して粒剤(細粒剤または顆粒剤)を調製するか、または造粒物を含む混合物(特に、造粒物と担体成分との混合物)を打錠することにより裸錠を調製できる。カプセル剤は前記粒剤をカプセルに充填することにより調製できる。
【0030】
造粒は、慣用の方法、例えば、撹拌造粒法、流動層造粒法、押出造粒法、乾式造粒法などで行うことができる。好ましい造粒法は流動層造粒法である。造粒においては、活性成分と担体成分とを、結合剤を含む溶液を用いて造粒する場合が多く、例えば、活性成分と担体成分との流動層に結合剤を含む溶液を噴霧することにより造粒できる。コーティングを有する製剤は、フィルムコーティング機を用いて、コーティング基剤を含有するコーティング剤を未コーティング製剤(素顆粒、素錠など)に噴霧することにより得ることができる。
【0031】
経口液剤等の液状製剤において、担体成分としては、水性媒体(精製水、エタノール含有精製水など)、アルコール類(エタノール、グリセリンなど)、水溶性高分子などが利用できる。担体成分としては、精製水、エタノール含有精製水などを用いる場合が多い。半固形製剤の担体成分としては、油性基剤(植物油などの脂質、ワセリン、流動パラフィンなど)、親水性基剤(乳剤性基剤)などが利用できる。また、添加剤としては、崩壊助剤、抗酸化剤または酸化防止剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤、懸濁剤、溶解補助剤、増粘剤、pH調整剤または緩衝剤、防腐剤または保存剤(パラベン類など)、殺菌剤または抗菌剤、帯電防止剤、矯味剤またはマスキング剤(例えば、甘味剤など)、清涼化剤、着色剤、矯臭剤または香料などが挙げられる。
【0032】
液状製剤は、各成分を担体成分に溶解または分散させ、必要により濾過または滅菌処理し、所定の容器に充填することにより調製できる。半固形製剤も慣用の方法、例えば、各成分と担体成分とを混合し、必要により滅菌処理し、所定の容器に充填したり、基材に塗布することにより調製できる。
【0033】
本発明の薬剤は、動物(哺乳類(ヒト、犬、猫、豚、馬、牛、ウサギ、ラット)、鳥類など)に適用でき、特にヒト(特に、健常者または高齢者)に投与するのに適している。
【0034】
本発明の薬剤の投与量は、所望の効果、年齢、性別、体重、投与経路などに応じて選択できるが、例えば、
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩として、1日当たり、例えば、1〜3000mg、好ましくは2〜1500mg、さらに好ましくは2〜1000mg程度であってもよい。
【0035】
本発明の薬剤は、1日当たり1回または複数回(例えば、2〜6回)に分けて投与できる。
【0036】
また、本発明は、
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩を動物に投与することを含む、活動意欲を向上させる方法を提供する。
本発明は、活動意欲を向上させるための、
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩の使用を提供する。
本発明は、活動意欲を向上させるための医薬の製造における、
フルスルチアミンまたはフルスルチアミン塩酸塩の使用を提供する。
上述した本発明の薬剤に関する技術的事項は、これらの態様に対しても同様に適用される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実施例1
自発活動量の測定
11週齢のWistar系雄ラットにフルスルチアミン塩酸塩を、10、25または50 mg/kgで腹腔内投与し、対照群には生理食塩水を投与した。これらのラットを運動に対する動機付けのある環境(輪回し運動装置)に配置し、投与後120分間の活動量を測定した。活動量はラットが回転ケージで自発走行した距離(m)を測定した。その結果、フルスルチアミン塩酸塩投与群において自発活動量が増加した(
図1)。
11週齢のWistar系雄ラットにフルスルチアミン塩酸塩を50 mg/kgで腹腔内投与し、対照群には生理食塩水を投与した。これらのラットを運動に対する動機付けのない環境(オープンフィールド)に配置し、投与後120分間の活動量を測定した。活動量はラットが移動した距離(m)を測定した(ビームセンサー式自発運動量測定装置(Panlab Harvard Apparatus社製)を用いて測定)。その結果、フルスルチアミン塩酸塩投与群において活動量が有意に増加した(
図2)。
【0039】
実施例2
脳内モノアミン代謝活性の解析
11週齢のWistar系雄ラットにフルスルチアミン塩酸塩を、10、25または50 mg/kgで腹腔内投与した。対照群には生理食塩水を投与し、これらのラットを輪回し運動装置に配置した。投与後120分間の活動をさせた直後に脳を摘出し、視床下部および脳幹におけるモノアミン濃度を、以下の手順に従い測定した:測定までの間マイナス80℃で保存した脳を測定前にホモジナイズ溶液(亜硫酸水素Naおよび1EDTA・Na含有0.05M過塩素酸溶液)中でホモジナイズし、12,000rpmで5分、遠心分離にかけ、得られた上澄みをろ過した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で内部標準法を用いて測定した。HPLC条件は下記の通りである:
データ処理ソフト:Chromeleon
移動相:緩衝液 0.05Mリン酸二ナトリウム, 0.05Mクエン酸, 790mg/LSHS, 37.2mg/L EDTA・2Na
カラム:Thermo scientific社、Product No. 059148(C18 5μm、150×4.6mm内径)
カラム温度:25℃
流速:1.0ml/min
検出器:ESA Coulochem II Multi-Electrode Detector
(設定電位:Model 5011高感度セル E1 = -50mV, E2 = 500mV, Model 5020ガードセル 550mV、感度:R1 = 5μA, R2 = 5μA)。
その結果、フルスルチアミン塩酸塩投与群において、視床下部および脳幹においてドーパミンの代謝活性(ドーパミン代謝産物(DOPAC)/ドーパミン(DA))が有意に高まっていた(
図3)。
11週齢のWistar系雄ラットにフルスルチアミン塩酸塩を50 mg/kgで腹腔内投与した。対照群には生理食塩水を投与し、これらのラットをオープンフィールドに配置した。投与後120分間の活動をさせた直後に脳を摘出し、脳幹および皮質におけるモノアミン濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した。その結果、フルスルチアミン塩酸塩投与群において、皮質および脳幹においてドーパミンの代謝活性が有意に高まっていた(
図4)。
【0040】
実施例3
脳内モノアミン代謝活性と自発活動量の関係性の解析
11週齢のWistar系雄ラットにフルスルチアミン塩酸塩を50 mg/kgで腹腔内投与し、対照群には生理食塩水を投与した。これらのラットをオープンフィールドに配置し、投与後60分間の活動量を測定した。自発活動量はラットが移動した距離(m)をビームセンサー式自発運動量測定装置(Panlab Harvard Apparatus社製)を用いて測定した。その結果、フルスルチアミン塩酸塩投与群と対照群で活動量に有意な差はなかった(
図5)。
実施例1の結果より、投与後120分間の自発活動量ではフルスルチアミン塩酸塩投与群と対照群で測定値に有意差が得られている。投与群の自発活動量の差がどの時点から生じるかを確認するために、2分ごとの自発活動量を測定し比較した。測定にはビームセンサー式自発運動量測定装置(Panlab Harvard Apparatus社製)およびActitrackトラッキングソフトウェア(Panlab Harvard Apparatus社)を用い、ソフトウェアの取扱い説明書のとおりセンサーに反応したすべての行動を「Active.」とカウントし、カウント数を自発活動量とした。その結果、フルスルチアミン塩酸塩投与群において、投与58分後に活動量が対照群と比較して有意に増加した(
図6)。
投与群の脳内モノアミン代謝の上昇に関連して活動量が増加していることを確認するため、投与後60分時点での脳内モノアミン濃度を測定した。投与後60分地点で脳を摘出し、実施例2と同様の手順を用いて、脳幹、線条体および中隔におけるモノアミン濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した。フルスルチアミン塩酸塩投与群を対照群と比較すると、脳幹、線条体および中隔においてドーパミンの代謝活性が有意に上昇していた(
図7)。
実施例1、2および3の結果より、フルスルチアミン塩酸塩を投与したラットでは自発活動量増加に先立って脳内ドーパミン代謝活性が有意に高まり、その結果として運動に対する動機付けの有無に関わらず自発活動量が増加したと考えられる。