特許第6421197号(P6421197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6421197除去液、これを用いた除去方法および半導体基板製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6421197
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】除去液、これを用いた除去方法および半導体基板製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/42 20060101AFI20181029BHJP
   C11D 7/34 20060101ALI20181029BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20181029BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   G03F7/42
   C11D7/34
   C11D7/50
   C11D7/32
【請求項の数】22
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-561921(P2016-561921)
(86)(22)【出願日】2015年11月25日
(86)【国際出願番号】JP2015083111
(87)【国際公開番号】WO2016084860
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-240588(P2014-240588)
(32)【優先日】2014年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-30378(P2015-30378)
(32)【優先日】2015年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】特許業務法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】村山 哲
(72)【発明者】
【氏名】水谷 篤史
(72)【発明者】
【氏名】大河原 昂広
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−089481(JP,A)
【文献】 特開2006−343604(JP,A)
【文献】 特表2007−536566(JP,A)
【文献】 特表2013−500503(JP,A)
【文献】 特開平07−120937(JP,A)
【文献】 特開2008−084883(JP,A)
【文献】 特開平02−228359(JP,A)
【文献】 特開2013−174779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00;G03F7/004−7/18;7/26−7/42
H01L21/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、および有機溶媒を含有し、
前記カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物が、1,2,4−トリアゾール化合物またはテトラゾール化合物である除去液。
【請求項2】
レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、および有機溶媒を含有し、
前記カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物が、下記式(1)または(2)で表される化合物であり、
前記有機溶媒が、スルホキシド化合物であって、かつ、含有量が90質量%以上である除去液。
【化1】
式(1)、(2)において、R11、R12、R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基またはアミノ基もしくはその塩を含有する基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、、アリール基、アラルキル基を表す。ここで、R11とR12、R12とR、R22とRは互いに連結して環を形成していてもよい。
ただし、式(1)中、R11、R12およびRのいずれかはカルボキシル基もしくはその塩を含有する基であり、式(2)中、R21、R22およびRのいずれかは、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基である。
【請求項3】
レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、および有機溶媒を含有し、
前記第四級アンモニウム化合物が、水酸化テトラメチルアンモニウムと水酸化テトラブチルアンモニウムの混合物である除去液。
【請求項4】
レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、および有機溶媒を含有し、かつ、
アルコキシシラン化合物および水を含有する除去液。
【請求項5】
記環状化合物が芳香族複素環化合物である請求項3または4に記載の除去液。
【請求項6】
記環状化合物がテトラゾール−5−酢酸、ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、または3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボン酸である請求項に記載の除去液。
【請求項7】
記第四級アンモニウム化合物が水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、またはこの両者の組合せである請求項1、2または4のいずれか1項に記載の除去液。
【請求項8】
記有機溶媒が極性非プロトン性の有機溶媒である請求項1、3または4のいずれか1項に記載の除去液。
【請求項9】
記有機溶媒がジメチルスルホキシドである請求項1〜のいずれか1項に記載の除去液。
【請求項10】
記有機溶媒の含有率が70質量%以上99.5質量%以下である請求項1、3または4のいずれか1項に記載の除去液。
【請求項11】
アルコキシシラン化合物を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の除去液。
【請求項12】
水を含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の除去液。
【請求項13】
レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
ジメチルスルホキシド、水酸化テトラメチルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムを含有する除去液。
【請求項14】
記ジメチルスルホキシドを80質量%以上99質量%以下、記水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化テトラブチルアンモニウムを合計で0.1質量%以上10質量%以下含有する請求項13に記載の除去液。
【請求項15】
水を含有し、その水の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である請求項13または14に記載の除去液。
【請求項16】
水酸化テトラブチルアンモニウムの含有率を水酸化テトラメチルアンモニウムの含有率で除した値が5以上である請求項1315のいずれか1項に記載の除去液。
【請求項17】
記レジストが樹脂製の永久膜である請求項1〜16のいずれか1項に記載の除去液。
【請求項18】
記レジストがTSV作成用のレジストである請求項1〜16のいずれか1項に記載の除去液。
【請求項19】
除去液をレジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種に適用してこのレジストおよびエッチング残渣の少なくとも1種を除去する除去方法であって、
記除去液が、請求項1〜16のいずれか1項に記載の除去液である除去方法。
【請求項20】
記レジストが、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、重合開始剤、および着色剤を含む着色硬化性樹脂組成物の硬化物である請求項19に記載の除去方法。
【請求項21】
除去液をレジストに40℃以上100℃以下で適用する請求項19または20に記載の除去方法。
【請求項22】
請求項1921のいずれか1項に記載の除去方法を介して、半導体基板製品を製造する半導体基板製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去液、これを用いた除去方法および半導体基板製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造工程には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程などの様々な工程が含まれている。そこでは、各工程の終了後、あるいは次の工程に移る前に、有機物を処理する工程が含まれる。例えば、基板表面に残存したレジストを剥離・除去する処理が実施される。有機残渣や残存レジストの剥離液としては、例えば、濃硫酸と過酸化水素の混合溶液(SPM:Sulfuric Acid Hydrogen Peroxide Mixture)やアンモニアと過酸化水素の混合溶液(APM:Ammonia−peroxide mixture)などが採用されている(特許文献1〜3参照)。こうした強酸・強アルカリとは異なるものとしては、アミンと有機溶媒と共溶媒とを用いたものを開示した例がある(特許文献4参照)。また、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムと水溶性有機溶剤と第9族もしくは第11族の金属の腐食防止剤とを配合した洗浄剤を開示したものがある(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−268308号公報
【特許文献2】特開2005−189660号公報
【特許文献3】特開2012−049391号公報
【特許文献4】特表2013−500503号公報
【特許文献5】特開2007−119783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した半導体基板の加工に必要なレジストの除去のほかに、半導体基板に樹脂の永久膜を形成した後に、これを除去するニーズがある。例えば、固体撮像素子や画像表示素子の製造において、半導体基板の上に微細に加工されたカラーフィルターや透明絶縁膜、樹脂製のレンズが形成されることがある。この一部に製造上の欠損等がある場合、基板の全体からこれらの樹脂を洗い流し、再生して加工し直すことが考慮される。
あるいは、Si貫通電極(Through−silicon via、以下、単に「TSV」と称する。)の加工において、そのエッチングの後にレジストを除去することがある。このとき、TSVにおいては、単にレジストを除去すればよいのではなく、開口部が狭く、深さのあるビアホールに入り込んだレジスト残渣やエッチング残渣(以下、こらのレジストに由来する残渣を単に「残渣」と称することもある。)が残留することがある。したがって、基板表面のレジストの除去はもとより、ビアホール内の残渣も的確に除去することが望まれる。
一方、レジスト等の剥離や除去の際には、半導体基板に形成された電極材料などが露出していることが多い。できれば、このような電極材料などは腐食させずに、レジストを優先的に剥離することが望ましい。
【0005】
本発明は、各種のレジストおよび残渣の少なくとも一種(以下、レジスト等と呼ぶ)の除去に適した除去液、これを用いた除去方法および半導体基板製品の製造方法の提供を目的とする。上記のレジスト等の剥離ないし除去に際して、要求に応じて、アルミニウムなどの電極材料の損傷を抑制することができる除去液、これを用いた除去方法および半導体基板製品の製造方法の提供を目的とする。さらに、必要により、カラーフィルター材料などの永久膜やTSV作成用のレジストおよび残渣の剥離や除去にも適用できる除去液、これを用いた除去方法および半導体基板製品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は以下の手段により解決された。
(1)レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、および有機溶媒を含有し、
上記カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物が、1,2,4−トリアゾール化合物またはテトラゾール化合物である除去液。
(2)レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、および有機溶媒を含有し、
上記カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物が、下記式(1)または(2)で表される化合物であり、
上記有機溶媒が、スルホキシド化合物であって、かつ、含有量が90質量%以上である除去液。
【化1-1】
式(1)、(2)において、R11、R12、R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、、アリール基、アラルキル基、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基またはアミノ基もしくはその塩を含有する基を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、、アリール基、アラルキル基を表す。ここで、R11とR12、R12とR、R22とRは互いに連結して環を形成していてもよい。
ただし、式(1)中、R11、R12およびRのいずれかはカルボキシル基もしくはその塩を含有する基であり、式(2)中、R21、R22およびRのいずれかは、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基である。
(3)レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、および有機溶媒を含有し、
上記第四級アンモニウム化合物が、水酸化テトラメチルアンモニウムと水酸化テトラブチルアンモニウムの混合物である除去液。
(4)レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、および有機溶媒を含有し、かつ、
アルコキシシラン化合物および水を含有する除去液。

)上記環状化合物が芳香族複素環化合物である(または(4)に記載の除去液。
)上記環状化合物がテトラゾール−5−酢酸、ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、または3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボン酸である(5)に記載の除去液。
)上記第四級アンモニウム化合物が水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、またはこの両者の組合せである(1)、(2)または)のいずれか1つに記載の除去液。
)上記有機溶媒が極性非プロトン性の有機溶媒である(1)、(3)または)のいずれか1つに記載の除去液。
)上記有機溶媒がジメチルスルホキシドである(1)〜()のいずれか1つに記載の除去液。
10)上記有機溶媒の含有率が70質量%以上99.5質量%以下である(1)、(3)または)のいずれか1つに記載の除去液。
11)アルコキシシラン化合物を含有する(1)〜()のいずれか1つに記載の除去液。
12)水を含有する(1)〜()のいずれか1つに記載の除去液。
13)レジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種を除去する除去液であって、
ジメチルスルホキシド、水酸化テトラメチルアンモニウム、および水酸化テトラブチルアンモニウムを含有する除去液。
14)上記ジメチルスルホキシドを80質量%以上99質量%以下、上記水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化テトラブチルアンモニウムを合計で0.1質量%以上10質量%以下含有する(13)に記載の除去液。
15)水を含有し、その水の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である(13)または(14)に記載の除去液。
16)水酸化テトラブチルアンモニウムの含有率を水酸化テトラメチルアンモニウムの含有率で除した値が5以上である(13)〜(15)のいずれか1つに記載の除去液。
17)上記レジストが樹脂製の永久膜である(1)〜(16)のいずれか1つに記載の除去液。
18)上記レジストがTSV作成用のレジストである(1)〜(16)のいずれか1つに記載の除去液。
19)除去液をレジストおよびエッチング残渣の少なくとも一種に適用してこのレジストおよびエッチング残渣の少なくとも1種を除去する除去方法であって、
上記除去液が、(1)〜(16)のいずれか1つに記載の除去液である除去方法。
20)上記レジストが、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、重合開始剤、および着色剤を含む着色硬化性樹脂組成物の硬化物である(19)に記載の除去方法。
21)除去液をレジストに40℃以上100℃以下で適用する(19)または(20)に記載の除去方法。
22) (19)〜(21)のいずれか1つに記載の除去方法を介して、半導体基板製品を製造する半導体基板製品の製造方法。
【0007】
本明細書における基(原子群)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。このことは、各化合物についても同義である。
また、本明細書中における「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線または放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
また、本明細書において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
また、本明細書において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本明細書における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、特に断らない限り、分子量が2,000以下の化合物をいう。本明細書において、重合性化合物とは、重合性官能基を有する化合物のことをいい、単量体であっても、ポリマーであってもよい。重合性官能基とは、重合反応に関与する基を言う。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
本明細書において、化学式中のMeはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。
【発明の効果】
【0008】
本発明の除去液は、各種のレジスト等の除去に適合し、優れたレジスト等の剥離・除去性を発揮する。上記のレジスト等の剥離・除去に際して、要求に応じて、アルミニウムなどの電極材料の損傷を抑制することができる。さらに、必要により、カラーフィルター材料などの永久膜やTSV作成用のレジストや残渣の剥離や除去にも適用することができ、その優れた特性を発揮する。
本発明の除去方法および半導体基板製品の製造方法においては、上記の除去液を用いており、これに由来する上述した優れた効果を発揮する。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例で用いた試験基板を模式的に示す側面図である。(a)は剥離処理前、(b)剥離処理後の状態を示す。
図2図2は、実施例で用いた別の試験基板(TSV基板)を模式的に示す側面図である。(a)は剥離処理前、(b)剥離処理後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の除去液は、第四級アンモニウム化合物および有機溶媒を含有する。その第一の実施形態においては、さらにカルボキシル基またはその塩を有する環状化合物を含有する。第二の実施形態においては、有機溶媒としてジメチルスルホキシドを含有する。以下に、本発明の好ましい実施形態を中心に本発明について詳細に説明する。
なお、以下、「カルボキシル基の塩」は「カルボキシル基の塩を含有する基」に含まれる。
【0011】
<除去液>
(第四級アンモニウム化合物)
本発明の第一実施形態において用いられる第四級アンモニウム化合物は特に限定されないが、第四級アンモニウムの水酸化物であることが好ましい。水酸化第四級アンモニウムとしては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム(TPAH)、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)、水酸化トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム(コリン)、水酸化メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化テトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム(BTMAH)などが挙げられる。これらの中でも、TMAH、TEAH、TPAH、TBAH、コリンがより好ましく、TMAH、TBAHが特に好ましい。対アニオンを除いた炭素数でいうと、炭素数4〜36の水酸化第四級アンモニウム化合物が好ましく、炭素数4〜24の水酸化第四級アンモニウム化合物がより好ましい。
【0012】
第四級アンモニウム化合物の対イオン(アニオン)は特に限定されず、上記のとおり水酸化物イオンでもよいが、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選定して組み合わせることができる。例えば、第四級アンモニウムのハロゲン化物(塩化物、フッ化物、臭化物)や、カルボン酸、リン酸、硫酸、ホスホン酸、硝酸などの、各種の酸アニオンを対イオンとするものでもよい。あるいは、上記の酸を官能基としてもつ化合物のアニオンも挙げられる。その他、後述するカルボキシル基またはその塩を有する特定環状化合物を対アニオンとしてもよい。
【0013】
本発明の第一実施形態において、第四級アンモニウム化合物の含有率は、除去液中、0.1質量%以上含有させることが好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、2質量%以上が特に好ましい。上限としては、20質量%以下含有させることが特に好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。なかでも、TMAHを用いた除去液においては、TMAHの含有率を細かく調節することが好ましく、その下限として0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。第四級アンモニウム化合物の含有率を上記の範囲とすることで、好適なレジスト等の剥離・除去性と電極材料(アルミニウム等)の保護性が両立されるため好ましい。第一実施形態においては、第四級アンモニウム化合物を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明の第二実施形態においては、第四級アンモニウム化合物として、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)と水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)とを用いる。これ以外の第四級アンモニウム化合物を用いることは妨げられないが、上記の2種のみを第四級アンモニウム化合物として用いることが本実施形態においては好ましい。
【0015】
TMAHとTBAHとの合計の含有率は、除去液中での好ましい範囲として、上記第一実施形態と同じである。TMAHとTBAHとの比率は、TBAHの量をTMAHの量で除した値(TBAH/TMAH)で3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましく、10以上であることが特に好ましい。上限としては、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましく、20以下であることがさらに好ましく、15以下であることが特に好ましい。なお、TMAHとTBAHとの比率は、上記第一実施形態においても好ましい範囲として同義となる。TMAHとTBAHとを上記の比率に設定することにより、高いレジスト等の剥離・除去効果を維持しながら、特に良好な電極材料(アルミニウム等)の損傷の防止性を発揮することができる。この理由は定かではないが、これらの化合物のもつ親・疎水性のバランスが好適化され、電極材料(アルミニウム等)の表面に効果的な保護膜を形成することが予想される。
【0016】
(有機溶媒)
本発明の第一実施形態に適用される有機溶媒は、特に限定されないが、極性非プロトン性溶媒であることが好ましい。このような有機溶媒としては、ハロゲン化炭化水素化合物、アルコール化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホキシド化合物などが挙げられる。代表的なものを下記に例示するが、なかでも、スルホキシド化合物からなる有機溶媒が好ましく、ジメチルスルホキシドが特に好ましい。なお、本発明の第二実施形態においては、有機溶媒として、ジメチルスルホキシドを用いる。
・アルコール化合物
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなど
・エーテル化合物(水酸基含有エーテル化合物を含む)
ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)など
・エステル化合物
酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど
・ケトン化合物
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンなど
・ニトリル化合物
アセトニトリルなど
・アミド化合物
N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなど
・スルホキシド化合物
ジメチルスルホキシドなど
【0017】
除去液中の有機溶媒の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上含有させることが特に好ましい。上限としては、99.8質量%以下が好ましく、99.5質量%以下がより好ましく、99質量%以下がさらに好ましく、98質量%以下がさらに好ましく、97質量%以下が特に好ましい。有機溶媒を上記の範囲とすることで、電極材料(アルミニウム等)の保護性を維持しながら、レジスト等の高い除去性を発揮することができるため好ましい。上記有機溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、その併用割合は特に限定されないが、合計使用量は、2種以上の総和として上記濃度範囲とすることが好ましい。
【0018】
(特定環状化合物)
本発明の第一実施形態においては、カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物(以下、特定環状化合物と呼ぶことがある)を用いる。特定環状化合物の環状構造部は、複素環であっても炭化水素環であってもよい。あるいは、芳香族環であっても、非芳香族環(脂肪族環)であってもよい。特定環状化合物は、なかでも、カルボキシル基またはその塩を有し複素環を含む化合物(以下、特定複素環化合物と呼ぶことがある)であることが好ましい。特定環状化合物が複素環を含むとき、その母核をなす複素環化合物としては、脂肪族複素環化合物であっても芳香族複素環化合物であってもよいが、芳香族複素環化合物であるこが好ましい。複素環化合物としては、5〜7員環の骨格をもつ化合物であることが好ましく、5または6員環の骨格をもつ化合物であることがより好ましい。したがって、5または6員環の芳香族複素環化合物が特に好ましい。このとき、複素環化合物は単環であっても、複環であってもよい。したがって、5または6員環の骨格をもつ化合物は、さらに、ベンゼン環等を伴った複環構造であってもよく、それらの複環の化合物も5または6員環の骨格をもつ化合物に包含される。具体的には、インドールやカルバゾール、プリンなどもこれに含まれる。
【0019】
上記特定複素環化合物の母核をなす複素環化合物は、なかでも、5員のアゾール化合物であることが好ましい。5員のアゾール化合物としては、ピロール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ピラゾール、イミダゾール、テトラゾールが挙げられる。
【0020】
特定複素環化合物はなかでも、下記式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【0021】
【化1-2】
【0022】
11、R12、R21、R22、R31、R41、R42、R43、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましい)、アルキニル基、(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜15がより好ましく、7〜11が特に好ましい)、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、またはアミノ基(炭素数0〜6が好ましく、0〜3がより好ましい)もしくはその塩を含有する基(アンモニオ基)である。カルボキシル基もしくはその塩を含有する基またはアミノ基もしくはその塩を含有する基が連結基を有するとき、その連結基はアルキレン基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニレン基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましい)、O、CO、NR、S、またはその組合せに係る基であることが好ましい。連結基を構成する原子の数は水素原子を除いて、1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。連結基の連結原子数は6以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。下限としては、1以上である。上記連結原子数とは所定の構造部間を結ぶ経路に位置し連結に関与する最少の原子数を言う。たとえば、−CH−C(=O)−O−の場合、連結基を構成する原子の数は6となるが、連結原子数は3となる。なお、ここで定義される連結基を連結基Lと呼ぶ。
【0023】
11、R12、R21、R22、R31、R41、R42、R43、R51、R52、R53、R54、R61、R62、R63が、水素原子、カルボキシル基またはアミノ基以外の基であるとき、任意の置換基Tを有していてもよい。任意の置換基Tとしては、カルボキシル基、アミノ基(炭素数0〜6が好ましく、0〜3がより好ましい)、ヒドロキシル基等が挙げられる。上記連結基Lのうち、O,S,CO以外の連結基についても、同様に、置換基Tを有していてもよい。
【0024】
は、水素原子、アルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましい)、アルキニル基、(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜15がより好ましく、7〜11が特に好ましい)である。Rは、上記任意の置換基Tを有していてもよい。
【0025】
式(1)〜(6)のいずれかで表される化合物はカルボキシル基もしくはその塩を分子内に1つ以上有する。その上限は各化合物において分子内に置換可能な数となるが、分子内のカルボキシル基もしくはその塩の数は、1〜4個が好ましく、1または2個がより好ましい。各式について具体的に示すと下記のとおりである。
式(1)中、R11、R12、およびRのいずれかはカルボキシル基もしくはその塩を含有する基である。なかでも、R11およびR12のいずれかがカルボキシル基もしくはその塩を含有する基であることが好ましい。
式(2)中、R21、R22、およびRのいずれかは、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基である。なかでも、R21およびR22のいずれかがカルボキシル基もしくはその塩を含有する基であることが好ましい。
式(3)中、R31およびRのいずれかは、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基である。なかでも、R31がカルボキシル基もしくはその塩を含有する基であることが好ましい。
式(4)中、R41、R42、R43、およびRのいずれかは、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基である。なかでも、R41、R42、およびR43のいずれかがカルボキシル基もしくはその塩を含有する基であることが好ましい。
式(5)中、R51、R52、R53、R54、およびRのいずれかは、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基である。なかでも、R51、R52、R53、およびR54のいずれかがカルボキシル基もしくはその塩を含有する基であることが好ましい。
式(6)中、R61、R62、R63、およびRのいずれかは、カルボキシル基もしくはその塩を含有する基である。なかでも、R61、R62、およびR63のいずれかがカルボキシル基もしくはその塩を含有する基であることが好ましい。
【0026】
11とR12、R12とR、R22とR、R41とR、R41とR42、R42とR43、R51とR、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R54とR、R61とR、R61とR62、R63とRは互いに連結して環を形成していてもよい。形成される環としては、5員環または6員環が好ましい。具体的には、ベンゼン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、シクロブタン環、シクロプロパン環などが挙げられる。形成された環には、さらに、R11の選択肢にある基が任意に置換していてもよい。
【0027】
上記式(1)、(4)、(5)および(6)のいずれかで表される化合物がベンゼン環を伴った複環となった例を下記に示しておく。式中、同一の符号で示した置換基は同じ意味を有する。
【0028】
【化2】
【0029】
17、R47、R57、R58、R67は、それぞれ、R11と同じ選択肢を持つ基である。nは0〜4の整数である。このとき、各式の化合物はカルボキシル基もしくはその塩を分子内に1つ以上有する。その上限は各化合物において分子内に置換可能な数となるが、カルボキシル基もしくはその塩の数は、1〜4個が好ましく、1または2個がより好ましい。なかでも、式(1a)については、R17のうちの少なくとも1つがカルボキシル基もしくはその塩であることが好ましい。式(4a)については、R47およびR41のうちの少なくとも1つがカルボキシル基もしくはその塩であることが好ましい。式(5a)については、R57、R51、およびR52のうちの少なくとも1つがカルボキシル基もしくはその塩であることが好ましい。式(5b)については、R51、R54、およびR58のうちの少なくとも1つがカルボキシル基もしくはその塩であることが好ましい。式(6a)については、R63およびR67のうちの少なくとも1つがカルボキシル基もしくはその塩であることが好ましい。
【0030】
特定環状化合物の具体例としては、テトラゾール−5−酢酸、ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、または3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボン酸などが挙げられる。
【0031】
特定環状化合物の含有率は、除去液中、下限としては、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が特に好ましい。上限としては、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。特定環状化合物をこの範囲で除去液に適用することで、十分なレジスト等の除去・剥離性を達成しつつ、Al等の電極材料の腐食を効果的に防止できる点で好ましい。特定環状化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(水)
本発明の除去液には水を含有させてもよい。適用される水は、特に限定されないが、本発明の効果を損ねない範囲で溶解成分を含む水性媒体であってもよい。あるいは不可避的な微量混合成分を含んでいてもよい。なかでも、蒸留水やイオン交換水、あるいは超純水といった浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に使用される超純水を用いることが特に好ましい。水の量は、除去液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。下限値としては、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.4質量%以上が特に好ましい。本発明において水は実質的に含有しないことが好ましいが、上記下限値以上で含有することが好ましい。これは、水の存在により電極の腐食性が高まるためその濃度が低減されることが好ましいが、第四級アンモニウム化合物のもつレジスト等の除去・剥離性を効果的に発揮させるために微量は含まれることが好ましい。
【0033】
(シラン化合物)
本発明に係る除去液は、シラン化合物を含有していてもよい。シラン化合物は、化合物中にケイ素原子を有する化合物を広く意味する。シラン化合物は、分子量が80以上が好ましく、100以上がより好ましい。上限は、1000以下が好ましく、500以下がより好ましい。シラン化合物としては、分子中にアルコキシ基を有するアルコキシシラン化合物が好ましい。なかでも、下記式(S1)で表される化合物がより好ましい。
【0034】

(RSi(OR4−a (S1)

およびRはそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表す。炭化水素基はアルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましい)、アルキニル基(炭素数2〜12が好ましく、2〜6がより好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜15がより好ましく、7〜11が特に好ましい)が好ましく、アルキル基、アリール基、またはアルケニル基がより好ましい。
aは0、1または2である。
【0035】
シラン化合物の含有率は、除去液中、下限としては、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が特に好ましい。上限としては、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。シラン化合物をこの範囲で除去液に適用することで、十分なレジスト等の除去・剥離性を達成しつつ、Al等の電極材料の腐食を効果的に防止できる点で好ましい。シラン化合物は、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(その他の添加剤)
本発明の除去液には、本発明の効果を奏する範囲で、その他の添加剤を含有させることを妨げるものではない。例えば、pH調整剤や界面活性剤、消泡剤、上記特定環状化合物以外の有機酸などを適宜添加してもよい。
【0037】
本発明の除去液は、その実施形態として、実質的に、(Ia)カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、有機溶媒、および水のみからなること、または、(Ib)カルボキシル基またはその塩を有する環状化合物、第四級アンモニウム化合物、有機溶媒、シラン化合物、および水のみからなることが好ましい。あるいは、実質的に、(IIa)ジメチルスルホキシド、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、および水のみからなること、または、(IIa)ジメチルスルホキシド、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、シラン化合物、および水のみからなることが好ましい。ここで「実質的に」としたのは、本発明の効果を奏する範囲で不可避不純物や微量混合物を含有していてもよい意味である。
【0038】
<容器>
本発明の除去液は、(キットであるか否かに関わらず)対腐食性等が問題とならない限り、任意の容器に充填して保管、運搬、そして使用することができる。また、半導体用途向けに、容器のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないものが好ましい。使用可能な容器としては、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル(商品名)」シリーズ、コダマ樹脂工業(株)製の「ピュアボトル(商品名)」などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。この容器ないしその収容部の内壁は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂とは異なる樹脂、又は、防錆・金属溶出防止処理が施された金属から形成されることが好ましい。このような容器保存については、その好ましい実施形態について、後記のレジストの保存についても同じである。
【0039】
<フィルタリング>
本発明の除去液は、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタで濾過することが好ましい。従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等によるフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)及びナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.1〜7.0μm程度が適しており、好ましくは0.2〜2.5μm程度、より好ましくは0.2〜1.5μm程度、さらに好ましくは0.3〜0.7μmである。この範囲とすることにより、ろ過詰まりを抑えつつ、除去液に含まれる不純物や凝集物など、微細な異物を確実に除去することが可能となる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせても良い。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合は1回目のフィルタリングの孔径より2回目以降の孔径が同じ、もしくは大きい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。第2のフィルタの孔径は、0.2〜10.0μm程度が適しており、好ましくは0.2〜7.0μm程度、さらに好ましくは0.3〜6.0μm程度である。この範囲とすることにより、混合液に含有されている成分粒子を残存させたまま、除去液に混入している異物を除去することができる。
例えば、第1のフィルタでのフィルタリングを行った後、除去液に他の成分を混合した後で、第2のフィルタリングを行ってもよい。
【0040】
<メタル濃度等>
本発明の除去液は、含まれ得るメタル(Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素)の濃度がいずれも5ppm以下であることが好ましい。このようなメタル濃度の低減については、その好ましい実施形態について、後記のレジスト(着色硬化性樹脂組成物)についても同じである。また、除去液やレジストにおいて、平均粒径0.5μm以上の粗大粒(パーティクル)子数が100個/cm以下の範囲にあることが好ましく、50個/cm以下の範囲にあることが好ましい。
【0041】
<除去方法>
除去液の適用の仕方は特に限定されないが、除去液を流路に流通させ、除去液を吐出口から吐出ないし噴射し、半導体基板と接触させることが好ましい。具体例で説明すると、調製された除去液が導入口より導入され、吐出口に移行してそこから噴射され、処理容器(処理槽)内の半導体基板の上面に適用される。この実施形態では、除去液が流路を介して吐出口に移行するようにされている。流路は薬液を再利用するための返戻経路を示している。半導体基板は回転テーブル上にあり、回転駆動部によって回転テーブルとともに回転されることが好ましい。
【0042】
本発明においては、枚葉式装置を用いることが好ましい。具体的に枚葉式装置は、処理槽を有し、その処理槽で上記半導体基板を搬送もしくは回転させ、その処理槽内に上除去液を付与(吐出、噴射、流下、滴下等)して、半導体基板に上記除去液を接触させるものであることが好ましい。枚葉式装置のメリットとしては、(i)常に新鮮な除去液が供給されるので、再現性がよい、(ii)面内の均一処理性が高いといったことが挙げられる。枚葉式装置はその処理槽にノズルを具備することが好ましく、このノズルを半導体基板の面方向にスイングさせて除去液を半導体基板に吐出する方法が好ましい。このようにすることにより、液の劣化が防止でき好ましい。
【0043】
処理温度は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上が特に好ましい。上限としては、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましい。
なお、処理温度とは枚葉式装置においては、以下の条件で測定する。株式会社堀場製作所製の放射温度計IT−550F(商品名)を上記枚葉式装置内のウェハ上30cmの高さに固定する。ウェハ中心から2cm外側のウェハ表面上に温度計を向け、薬液を流しながら温度を計測する。温度は、放射温度計からデジタル出力し、パソコンで連続的に記録する。このうち温度が安定した10秒間の温度を平均した値をウェハ上の温度とした。保存温度あるいはバッチ処理で管理する場合にはそのタンク内の温度を所定時間(例えば1分間)安定するまで保持して設定することができる。循環系で管理する場合には、循環流路内の温度で所定時間(例えば1分間)安定するまで保持して設定してもよい。
【0044】
枚葉式の場合の除去液の供給速度は特に限定されないが、0.05〜5L/minとすることが好ましく、0.1〜3L/minとすることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、処理の面内の均一性を一層良好に確保し、一方、連続処理時に安定した性能を確保でき好ましい。半導体基板を回転させるときには、その大きさ等にもよるが、上記と同様の観点から、50〜1000rpmで回転させることが好ましい。吐出口(ノズル)の移動速度は特に限定されないが、0.1cm/s以上であることが好ましく、1cm/s以上であることがより好ましい。一方、その上限としては、30cm/s以下であることが好ましく、15cm/s以下であることがより好ましい。移動軌跡線は直線でも曲線(例えば円弧状)でもよい。いずれの場合にも移動速度は実際の軌跡線の距離とその移動に費やされた時間から算出することができる。基板1枚の処理に要する時間は10〜1200秒の範囲であることが好ましい。
【0045】
<レジスト>
(パターニング用のレジスト)
本発明の除去液で剥離されるレジストは特に限定されず、通常のレジスト材料を対象に使用することができる。例えば、ポジ型、ネガ型、およびポジ−ネガ兼用型のフォトレジストが挙げられる。ポジ型レジストの具体例は、ケイ皮酸ビニール系、環化ポリイソブチレン系、アゾ−ノボラック樹脂系、ジアゾケトン−ノボラック樹脂系などが挙げられる。また、ネガ型レジストの具体例は、アジド−環化ポリイソプレン系、アジド−フェノール樹脂系、クロロメチルポリスチレン系などが挙げられる。更に、ポジ−ネガ兼用型レジストの具体例は、ポリ(p−ブトキシカルボニルオキシスチレン)系などが挙げられる。ポジ型レジストとしては、ノボラック系樹脂及びポリヒドロキシスチレン系樹脂の少なくとも一方の樹脂を含むポジ型レジストが挙げられる。その他、レジストの例として、特許5222804、特許5244740、特許5244933、特許5286236、特許5210755、特許5277128、特許5303604、特許5216892、特許5531139、特許5531078、特許5155803号の各公報に開示されたものを参照することができ、本明細書に引用して取り込む。
【0046】
(カラーフィルター用のレジスト)
本発明の除去液は、カラーフィルターやマイクロレンズ、絶縁膜などの、各種の素子に組み込まれる樹脂製の永久膜に適用して、その剥離に用いることができる。本明細書においては、これらの永久膜も「レジスト」の語に含まれるものとする。
カラーレジストとして具体的には、富士フイルム株式会社製、RGB 5000 series/6000 series(商品名)、CMY 3000series(商品名)を好適に用いることができる。また、特許5274680、特許5283747、特許05334624、特許05339781、特許05340102、特許05344843、特許5355069、特許5367060、特許5371313、特許5371449、特許5374189、特許5398586、特許5448352、特許5448416号の各公報に開示されたものを参照することができ、本明細書に引用して取り込む。
以下に、カラーフィルターの形成材料と形成方法について、その一実施形態の詳細について説明する。
【0047】
本実施形態に係るカラーフィルターの各画素は、下記の着色硬化性樹脂組成物(以下、単に「組成物」と称することもある。)を硬化して形成することができる。着色硬化性樹脂組成物としては、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、重合開始剤、および着色剤を含有するものが挙げられる。
【0048】
・アルカリ可溶性樹脂
アルカリ可溶性樹脂としては、分子中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するものが好ましい。耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸性基ともいう)としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられる。溶媒に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましいものとして挙げられる。これら酸性基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
アルカリ可溶性樹脂としては、主鎖もしくは側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。具体的には、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック型樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂等、並びに側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他の単量体との共重合体が好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、(イソ)ペンチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマーとして、jN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。
アルカリ可溶性樹脂としては、重合性基を有することも好ましい。重合性基としては、エチレン性不飽和結合性基が例示される。具体的には、(メタ)アクリロイル基およびビニル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がさらに好ましい。アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドのいずれか1種以上由来の繰り返し単位を有するビニル重合体が好ましい。
【0049】
重合性のアルカリ可溶性樹脂の合成は、特開2003−262958号公報の段落番号0027〜0057に記載の合成方法に基づいて行なうことができる。この中では、同公報中の合成方法1)によるのが好ましい。その例示化合物としては、上記特開2003−262958号公報の段落番号0058〜0061に記載の化合物を参照することができ、本明細書に取り込む。特定構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂の具体的な化合物例としては、下記化合物(樹脂)を挙げることができる。下記化合物P−1において、MMAはメチルメタアクリレート成分を表し、AAはアクリル酸成分を表す。
【0050】
【化3】
【0051】
アルカリ可溶性樹脂は下記式の重合体であることも好ましい。
【0052】
【化4】
【0053】
X1は単結合または連結基を表す。連結基の例としては上記の連結基Lが挙げられる。なかでも単結合が好ましい。
X1、RY1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、またはシアノ基であり、水素原子またはメチル基が好ましい。
は、酸性基である。その好ましいものは、上記と同義である。
Y2は、置換基を表し、中でも、アルキル基(炭素数1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい)、アリール基(炭素数6〜22が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10が特に好ましい)、アラルキル基(炭素数7〜23が好ましく、7〜15がより好ましく、7〜11が特に好ましい)が好ましい。これらの基はさらに置換基を有してもよく、さらなる置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
nx、nyはモル分率であり、nx+nyは1未満でもよいが(他の繰り返し単位を有してよいという意味)、1であることが好ましい。nxは下限としては、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上が特に好ましい。上限としては、0.7以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.5以下が特に好ましい。nyは下限としては0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.6以上が特に好ましい。上限としては、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。
【0054】
アルカリ可溶性樹脂は23℃で0.1質量%以上の濃度の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に可溶であるものが好ましい。さらに1質量%以上のTMAH水溶液に可溶であること、さらに2質量%以上のTMAH水溶液に可溶であることが好ましい。
【0055】
アルカリ可溶性樹脂の酸価としては好ましくは30〜200mgKOH/g、さらに好ましくは70〜120mgKOH/gである。このような範囲とすることにより、未露光部の現像残渣を効果的に低減できる。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、2,000〜50,000が好ましく、7,000〜20,000が特に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の含有率としては、組成物の全固形分に対して、10〜50質量%が好ましく、より好ましくは15〜40質量%であり、特に好ましくは20〜35質量%である。可溶性樹脂は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
・重合性化合物
重合性化合物は、分子内に重合性基を有する化合物であればよいが、なかでもエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(以下、「特定モノマー」ということがある)が好ましい。特定モノマーは、多官能のモノマーであることが好ましい。特定モノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特定モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。これらの具体的な化合物としては、特開2009−288705号公報の段落番号0095〜0108に記載されている化合物を本実施形態においても好適に用いることができる。特定モノマーは、さらに、下記式(MO−1)〜(MO−6)で表されるものであることが好ましい。
【0057】
【化5】
【0058】
式中、nは、それぞれ、0〜14であり、mは、それぞれ、1〜8である。一分子内に複数存在するR、TおよびZは、それぞれ、同一であっても、異なっていてもよい。Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。Rのうち少なくとも1つは、重合性基である。
【0059】
nは0〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
mは1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
上記式(MO−1)〜(MO−6)のいずれかで表される重合性化合物の具体例としては、特開2007−269779号公報の段落番号0248〜0251に記載されている化合物を本実施形態においても好適に用いることができる。
【0060】
中でも、重合性化合物等としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D−330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D−320;日本化薬株式会社製)ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D−310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA;日本化薬株式会社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造や、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としては M−460;東亜合成製)(いずれも商品名)が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
重合性化合物の分子量は特に限定されないが、300以上1500以下であることが好ましく、400以上700以下であることがより好ましい。
組成物中の全固形分に対して、重合性化合物の含有率は、1質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、3質量%〜40質量%の範囲であることがより好ましく、5質量%〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。この範囲内であると、屈折率や透明性を過度に低下させることなく、硬化性が良好で好ましい。重合性化合物は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
・重合開始剤
重合開始剤としては、熱重合開始剤でも光重合開始剤でもよいが、光重合性開始剤が好ましい。例えば、有機ハロゲン化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシム化合物、オニウム塩化合物、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体化合物、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物、α−アミノアルキルフェノン化合物、安息香酸エステル化合物が挙げられる。
これらの具体例として、特開2010−106268号公報段落[0135](対応する米国特許出願公開第2011/0124824号明細書の[0163])以降の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0062】
本発明においてはオキシム化合物を用いることが好ましい。なかでも、IRGACURE OXE01(下式)、IRGACURE OXE02(下式)などの市販品(いずれも商品名、BASF社製)を好適に使用することができる。また、下記化学式(A)で表されるNCl-831(商品名 ADEKA社製)および下記化学式(B)で表される化合物も好ましい。これらオキシム化合物は2種以上併用しても良い。
【0063】
【化6】
【0064】
【化7】
【0065】
重合開始剤は、組成物の固形分中、0.1〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲、特に好ましくは1〜8質量%の範囲である。重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0066】
・着色剤
着色剤は特に限定されるものではなく、種々の染料や顔料を用いることができる。例えば、カラーフィルターの色画素を形成する赤色、マゼンタ色、黄色、青色、シアン色および緑色等の有彩色系の着色剤(有彩色着色剤)、及びブラックマトリクス形成用に一般に用いられている黒色系の着色剤(黒色着色剤)のいずれをも用いることができる。本実施形態では、着色剤が、赤色、マゼンタ色、黄色、青色、シアン色および緑色から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン、銀等の金属酸化物、及び上記金属の複合酸化物を挙げることができる。チタンの窒化物、銀錫化合物、銀化合物なども使用することができる。
有機顔料としては、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、アントラキノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾロン顔料、ジスアゾ顔料、アゾ顔料、インダントロン顔料、フタロシアニン顔料、トリアリールカルボニウム顔料、ジオキサジン顔料、アミノアントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、ピラントロン顔料、またはイソビオラントロン顔料が挙げられる。
染料としては、例えば、トリアリールメタン系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、アゾメチン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。
【0067】
有彩色着色剤の例として、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等
C.I.ピグメントオレンジ 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等
C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279
C.I.ピグメントグリーン 7,10,36,37,58,59
C.I.ピグメントバイオレット 1,19,23,27,32,37,42
C.I.ピグメントブルー 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80
これら有彩色着色剤は、単独若しくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。
黒色着色剤の例として、各種公知の黒色顔料を用いることができる。特に、少量で高い光学濃度を実現できる観点から、カーボンブラック、チタンブラック、酸化チタン、酸化鉄、酸化マンガン、グラファイト等が好ましく、なかでも、カーボンブラック、チタンブラックのうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、特に露光による硬化効率に関わる開始剤の光吸収波長領域の吸収が少ない観点からチタンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、市販品である、C.I.ピグメントブラック 1等の有機顔料C.I.ピグメントブラック 7等の無機顔料があげられるがこれらに限定されるものではない。また、黒色着色剤は単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。なお、有彩色着色剤と併用しても良い。
【0068】
上記着色剤が粒子状の場合、その平均一次粒子径は、5nm以上が好ましく、30nm以上が特に好ましい。上限としては、1μm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。
本明細書でいう「平均粒子径」とは、特に断らない限り、一次粒子が集合した二次粒子についての平均粒子径を意味する。上記粒径の測定は、動的光散乱式粒径分布測定装置(日機装製 ナノトラック(Nanotrac) Wave−EX150[商品名])、株式会社堀場製作所社製 LB−500[商品名])を用いて行う。手順は以下のとおりである。試料分散物を20mlサンプル瓶に分取し、不溶性の溶媒(例えば水)により固形成分濃度が0.2質量%になるように希釈する。温度25℃で2mlの測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、得られた「数平均」を平均粒子径とした。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照することができる。
【0069】
着色剤の含有率としては、組成物の固形分中、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。上限については特に制限はないが、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下である。本発明の除去液によれば、このように組成物が多量に着色剤を含有していても、十分にレジストを剥離することができる。
【0070】
・分散剤
着色硬化性樹脂組成物には分散剤を含有させてもよい。分散剤としては、高分子分散剤(例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、BYK2001」、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(ブロック共重合体)、4400、4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル社製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」等(いずれも商品名)が挙げられる。
【0071】
分散剤の濃度としては、着色剤1質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、3〜100質量部がより好ましく、5〜80質量部がさらに好ましい。また、組成物の全固形分に対し(全固形分中)、5〜30質量%であることが好ましい。これらの分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
・界面活性剤
着色硬化性樹脂組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。界面活性剤の添加量は配合する場合、組成物の固形分全質量に対して(全固形分質量中)、1質量%〜40質量%の範囲であることが好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。
【0073】
着色硬化性樹脂組成物は、その他の成分を適宜含有させることもできる。その他の成分としては、溶剤(上記「有機溶媒」の項で述べたものなどを適宜使用することができる)、紫外線吸収剤、密着性向上剤、増感色素、共増感剤、希釈剤、可塑剤、感脂化剤などが挙げられる。
【0074】
・カラーフィルターの形成
着色硬化性樹脂組成物の調製およびその硬化膜の形成については一般的な方法によればよいが、以下では、着色硬化性樹脂組成物を用いたカラーフィルターの形成を例にさらに詳述する。カラーフィルターを形成する際の支持体としては、例えば、基板(例えば、シリコン基板)上にCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)等の撮像素子(受光素子)が設けられた固体撮像素子用基板を用いることができる。着色パターンは、固体撮像素子用基板の撮像素子形成面側(おもて面)に形成されてもよいし、撮像素子非形成面側(裏面)に形成されてもよい。固体撮像素子用基板における各撮像素子間や、固体撮像素子用基板の裏面には、遮光膜が設けられていてもよい。また、支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。支持体上への着色硬化性樹脂組成物の適用方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
【0075】
支持体上に塗布された着色硬化性樹脂組成物層の乾燥(プリベーク)は、ホットプレート、オーブン等で50℃〜140℃の温度で10秒〜300秒で行うことができる。
【0076】
露光工程では、着色硬化性樹脂組成物層形成工程において形成された着色硬化性樹脂組成物層を、例えば、ステッパー等の露光装置を用い、所定のマスクパターンを有するマスクを介してパターン露光する。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく(特に好ましくはi線)用いられる。照射量(露光量)は30〜1500mJ/cmが好ましく、50〜1000mJ/cmがより好ましく、80〜500mJ/cmが最も好ましい。
【0077】
次いでアルカリ現像処理等の現像を行うことにより、露光工程における光未照射部分の着色硬化性樹脂組成物がアルカリ水溶液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液としては、下地の撮像素子や回路などにダメージを起しにくい、有機アルカリ現像液が望ましい。現像温度としては通常20℃〜30℃であり、現像時間は、例えば、20秒〜90秒である。より残渣を除去するため、近年では120秒〜180秒実施する場合もある。さらには、より残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返す場合もある。
本発明において好ましく適用できるカラーフィルターの製造方法や材料としては、特開2014−199272、特開2013−064999、特開2013−064998、特開2013−064993、特開2013−054081、特開2013−040240、特開2012−136669、特開2012−012498、特開2011−252046、特開2011−252045、特開2011−252044、特開2011−162781、特開2011−144299、特開2011−144298、特開2011−127044、特開2011−127043、特開2011−084726、特開2010−244028、特開2010−159409、特開2010−155983、特開2010−085979、特開2010−084135、特開2009−244320、特開2006−058821、特開2004−117856などの記載を参照することができ、本明細書に引用して取り込む。
【0078】
次いで、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。このとき、多色の着色パターンを形成することが好ましく、各色に上記工程を順次繰り返して硬化皮膜を製造することができる。これによりカラーフィルターが得られる。ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。その加熱温度は、250℃以下が好ましく、240℃以下がより好ましく、230℃以下がさらに好ましく、220℃以下が特に好ましい。下限は特にないが、効率的かつ効果的な処理を考慮すると、50℃以上の熱硬化処理を行うことが好ましく、100℃以上がより好ましい。上記の加熱によるポストベークに変え、UV(紫外線)照射によってカラーフィルターの画素を硬化させてもよい。
【0079】
硬化膜(カラーフィルター)の膜厚は、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。上限としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、4μm以下がさらに好ましく、3μm以下が特に好ましい。着色パターン(着色画素)のサイズ(パターン幅)としては、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。下限としては、0.1μm以上が実際的である。この程度の膜厚がカラーフィルターとして一般的であり、本発明の除去液によれば、上記のようなカラーフィルターに対しても十分な剥離効果が得られる。
【0080】
<TSV>
本発明の好ましい実施形態に係る除去液はTSV作成用(TSVの穴を掘る用)のレジストの剥離にも効果を発揮する。TSVを加工した後に基板表面に残るレジストを剥離することはもとより、狭小なTSV(ビアホール)の内部に残留したレジスト残渣やエッチング残渣なども効果的に除去することができる。
TSVに代表されるような三次元(3D)技術やその構造物はIC技術のなかで益々重要になってきている。システムの性能をさらに向上させ、そのサイズを小さくする可能性に富んでいるからである。こうした3Dアプリケーションには、フォトレジストが適用される。例えば、TSVのパターニングやめっきとバンプとの組合せの加工などである(3次元積層集積回:3D−SIC、三次元ウェハレベルパケージング:3D−WLP)。
3D−WLP TSVには、通常、数μmの厚さのポジ型のフォトレジストが適用される。シリコンのドライエッチングとフォトレジストのウエットエッチング(剥離)が一般に行われる。銅のめっきとマイクロバンプのアプリケーションには、ネガ型のフォトレジストも適用される。
【0081】
しばしば、エッチングやプラズマアッシングでダメージを受けたフォトレジスト、すなわちポストエッチング残渣(PER)の除去が困難となる。そのようなPERを除去するために、さらなる物理的な処理が必要になることもある。
【0082】
本発明の好ましい実施形態に係る除去液によれば、上述したTSV等に適用されるポジ型のレジストやネガ型のレジストの剥離に好適に利用することができる。また、PERの除去にも効果を奏することが好ましい。一方で、シリコンウェハ(ブランケットウェハ)や、アルミニウム等の電極材料は損傷せず良好な状態で維持することが好ましい。本発明の好ましい実施形態に係る除去液によれば、その両者を同時に達成することもでき好ましい。
【0083】
ネガ型レジストとしては、前述のカラーフィルター用のレジストの配合が参考になる。例えば、光重合開始剤、光硬化材料(単官能または多官能のモノマー、オリゴマー、または架橋基含有ポリマー)を含み、バインダー、フィラー、増感剤、重合禁止剤、染料、顔料、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、架橋剤、密着改良剤、溶媒などの添加剤を任意に含むことができる。光重合開始剤としては、光ラジカル重合の光開始剤として公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。前記光重合開始剤の種類に特に制限はないが、例えば、アルキルフェノン系化合物(例えば、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシアルキルフェノン化合物及びα−アミノアルキルフェノン化合物など)、オキシム系化合物(例えば、オキシムエステル系化合物)などを使用することができる。また、光重合開始剤は、単独で用いても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポジ型レジストとしては、例えば、光酸発生剤、硬化剤を含み、バインダー、フィラー、増感剤、重合禁止剤、染料、顔料、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、架橋剤、密着改良剤、溶媒などの添加剤を任意に含むことができる。
【0084】
本発明の除去液の効果が好適に発揮される観点から、TSVの開口部の幅は15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。下限値としては、1μm以上であることが実際的である。TSVのビアホールのアスペクト比(深さ/開口幅)は5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることが特に好ましい。上限値としては、30以下であることが実際的である。
【0085】
<電極材料>
電極材料は特に限定されないが、汎用されているものとして銅またはアルミニウム等が挙げられる。電極材料(アルミニウム等)のエッチングレート[R1]は、特に限定されないが、除去液の付与により過度に除去されないことが好ましい。具体的には、500Å/min以下であることが好ましく、200Å/min以下であることがより好ましく、100Å/min以下であることが特に好ましい。下限は特にないが、測定限界を考慮すると1Å/min以上であることが実際的である。本明細書において、エッチング速度は特に断らない限り、後記実施例で測定した条件によるものとする。
【0086】
<半導体基板製品の製造>
半導体基板におけるウェハサイズは特に限定されないが、直径8インチ、直径12インチ、または直径14インチのものを好適に使用することができる(1インチ=25.4mm)。半導体素子の製造工程には、上述のように、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程などの様々な工程が適用される。本発明においては、適宜定法により、半導体基板製品ないし半導体素子を製造することができる。そのなかで、基板のパターニングのために適用したレジスト等を剥離・除去するために、本発明の除去液を適用することが好ましい。
あるいは、本発明の除去液を、半導体基板に樹脂の永久膜を形成した後に、これを除去するために用いてもよい。例えば、製造仕掛かり中の半導体基板製品に修復が必要な部分が発見された場合など、この部材を洗い流し、基板を再生することが考えられる。本発明によれば、このような基板の再生に好適に対応することができる。永久膜としては、例えば、上述したカラーフィルターや、透明絶縁膜、樹脂製のレンズ(マイクロレンズアレイ)などが挙げられる。このような永久膜は、レジスト膜とは異なり、現像によっても溶けずに残り、加工後に剥離・除去されることが想定されておらず、その剥離は困難となることが予想される。
【0087】
これに対し、本発明の一実施形態に係る除去液においては、永久膜の剥離・除去に特に高い効果を発揮する。なかでもカラーフィルターの剥離・除去に適用することが、特に顕著な効果が発揮されるため好ましい。この理由は不明な点を含むが、カラーフィルターは色材など、通常のレジストにはない含有成分もあり、剥離が難しくなることが予想される。これに対して、本発明に係る成分を配合した除去液がその相互作用により高い効果を発揮し、レジスト(カラーフィルター)の剥離性と電極材料(アルミニウム等)の損傷抑制性との両立を果たしたものと解される。
【0088】
本明細書において、半導体基板とは、ウェハのみではなくそこに回路構造が施された基板構造体全体を含む意味で用いる。半導体基板部材とは、上記で定義される半導体基板を構成する部材を指し1つの材料からなっていても複数の材料からなっていてもよい。なお、加工済みの半導体基板を半導体基板製品として区別して呼ぶことがあり、必要によってはさらに区別して、これに加工を加えダイシングして取り出したチップ及びその加工製品を半導体素子という。すなわち、広義には半導体素子やこれを組み込んだ半導体製品は半導体基板製品に属するものである。
【0089】
本明細書において「準備」というときには、特定の材料を合成ないし調合等して備えることのほか、購入等により所定の物を調達することを含む意味である。また、本明細書においては、半導体基板の各材料を処理するよう除去液を用いることを「適用」と称するが、その実施態様は特に限定されない。例えば、除去液と基板とを接触させることを広く含み、具体的には、バッチ式のもので浸漬して処理しても、枚葉式のもので吐出により処理してもよい。
なお、本明細書において方法の発明に係る各工程は、本発明の効果を奏する範囲で適宜その順序を入れ替えて適用することが許容されるものである。また、同様に、各工程の間に別の工程を適宜介在させることを妨げるものではない。
【実施例】
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中で処方や配合量として示した%および部は特に断らない限り質量基準である。
【0091】
(実施例1・比較例1)
<Green顔料分散液の調製>
顔料としてC.I.ピグメント・グリーン36とC.I.ピグメント・イエロー139との100/55(質量比)混合物12.6部と、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)5.2部と、分散樹脂としてベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(酸価134mgKOH/g、Mw=30,000)を2.7部と、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート78.3部とからなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、Green顔料分散液を調製した。
【0092】
<Red顔料分散液の調製>
顔料としてとC.I.ピグメントレッド254 12.1部と、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)10.4部と、分散樹脂としてベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(酸価134mgKOH/g、Mw=30,000)を3.8部と、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート73.7部とからなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、Red顔料分散液を調製した。
【0093】
<Blue顔料分散液の調製>
顔料としてC.I.ピグメント・ブルー15:6とC.I.ピグメント・バイオレット23との100/25(質量比)混合物14部と、分散剤としてBYK2001(Disperbyk:ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%)4.7部と、分散樹脂としてベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(酸価134mgKOH/g、Mw=30,000)を3.5部と、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート77.8部とからなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、Blue顔料分散液を調製した。
【0094】
<着色硬化性樹脂組成物の調製>
上記の各顔料分散液を用い、下記組成となるように混合、撹拌して着色感光性樹脂組成物を調製した。
【0095】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
上記各顔料分散液 83.3部
上記樹脂P−1 2.05部
重合開始剤 1.2部
DPHA 1.4部
M−305 1.4部
p−メトキシフェノール 0.001部
PGMEA 7.4部
下記含フッ素ポリマー型界面活性剤
(PGMEAの0.2%溶液で適用した) 4.2部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
重合開始剤:BASF社製 IRGACURE OXE01[商品名]
DPHA:日本化薬社製 KARAYAD DPHA[商品名]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
M−305[商品名]:東亞合成社製 トリアクリレートおよび
ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
含フッ素ポリマー型界面活性剤:下記化学式で表される化合物の混合物
【0096】
【化8】
【0097】
<カラーフィルター(CF)の形成>
上記において調製された各着色感光性組成物を、あらかじめヘキサメチルジシラザンを噴霧した8インチのシリコンウェハの上に塗布し、光硬化性の塗布膜を形成した。この塗布膜の乾燥膜厚が1.0μmになるように、100℃のホットプレートを用いて180秒間加熱処理(プリベーク)を行った。次いで、ステッパー露光装置FPA−3000i5+(商品名、Canon(株)製)を使用して、i線を、365nmの波長で1.0μm四方のベイヤーパターンマスクを通して50〜1000mJ/cmにて照射した(50mJ/cmずつ露光量を変化)。その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウェハをスピン・シャワー現像機(DW−30型;商品名、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置した。CD−2000(商品名、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の40%希釈液を用いて23℃で180秒間パドル現像を行ない、シリコンウェハに着色パターンを形成した。
【0098】
着色パターンが形成されたシリコンウェハを真空チャック方式で上記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウェハを回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥した。次に、200℃のホットプレートにて5分間加熱し、パターンが形成されたカラーフィルターを得た。
【0099】
<アルミニウム電極の作製>
別のシリコンウェハにアルミニウム(Al)電極をCVD法により形成した。Al電極の厚さは約0.5μmであった。
【0100】
<CF剥離試験の実施>
上記カラーフィルターを配置したウェハおよびAlのブランケットウェハを1×2cmにカットしテストウェハを得た。下記組成の薬液を作成し、ビーカーに攪拌子と薬液を入れ、回転数250rpmにて薬液を攪拌させながら70℃まで加温した。その後、上記テストウェハを5分間浸漬した。浸漬後、イオン交換水(DIW)を二流体ノズルより噴出させ、30秒間リンス処理した。なお、テストウェハの側面模式図は図1のとおりであった。図1(a)が剥離処理前であり、図1(b)が剥離処理後である。
【0101】
<レジストの剥離性評価[CF剥離性]>
上記のRGBのカラーフィルターを配設したウェハを光学顕微鏡(倍率50倍)にて観察し、カラーフィルター層の剥離性を観察した。カラーフィルター(CF)の剥離性については、下記のように区分して評価した。
A: 光学顕微鏡で残留物が確認できず、100%除去された状態
B: 光学顕微鏡で残留物が確認でき、50%超100%未満除去された状態
C: 光学顕微鏡で残留物が確認でき、50%以上残存している状態
【0102】
<Al層の剥離性の評価[Al EV]>
上記CF剥離試験の条件で、Alのテストウェハを処理した。その処理の前後で、4端子型電流計(国際電気アルファ社製、商品名VR200)を用い、Al層の電流値より膜厚を算出した。下表には膜厚の減少量を記載した。
【0103】
<経時変化の評価>
薬液を室温(25℃)下で1週間静置した。その後、目視で薬液の色の変化を確認した。
A:経時変化の見られなかったもの
B:経時変化の見られたもの
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
配合:質量部
Al EV:アルミニウム層のエッチング量(減少した厚さ)
DMSO:ジメチルスルホキシド
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
TBAH:水酸化テトラブチルアンモニウム
TMS:テトラメトキシシラン
TA: 第四級アンモニウム化合物
1Å=0.1nm
上記の実施例に関しては、試料液の調製後および着色硬化性樹脂組成物を調製後のそれぞれについて、全て日本ポール製DFA4201NXEY(商品名、0.45μmナイロンフィルター)を用いてろ過を行った。
【0107】
以上の結果から、本発明の第一の実施形態に係る除去液および第二の実施形態に係る除去液によれば、いずれも、良好なカラーフィルター(レジスト永久膜)の剥離を実現し、一方で、電極材料(アルミニウム)の損傷防止性を発揮することが分かる。
【0108】
上記の着色硬化性樹脂組成物を、富士フイルム株式会社製、RGB 5000 series/6000 series(商品名)およびCMY 3000series(商品名)にそれぞれ代えて、同様にカラーフィルターの層を有するテストウェハを作製した。このテストウェハを用いて、上記の剥離試験を行った。その結果、いずれに対しても、良好な剥離性を示すことを確認した。
【0109】
(実施例2・比較例2)
<TSV基板の作成>
所定のシリコン基板に対し、フッ素系ガスを用いて開口径(直径)5μm、深さ50μmであるアスペクト比10:1のTSVを形成した(図2参照)。Si層、SiO層(ハードマスク:厚さ500nm)、ポジ型のフォトレジスト(PR:厚さ3.5μm)の3層の構成とした。
<アルミニウム基板>
一方、アルミニウムへの損傷の評価には、市販のアルミニウムウェハ(Advanced Materials社製)を用いた。膜厚は5000Åであった。
【0110】
<TSV洗浄試験の実施>
上記ウェハを枚葉装置(イーティーシステムエンジニアリング株式会社製 商品名ウエハスピン洗浄装置)を用いて処理した。
薬液処理: 3分/70℃
流速: 1.5L/min
回転数: 10rpm、DIW(蒸留水)
メガソニックリンス: 1分
スピン乾燥: 25℃ 1分
【0111】
<洗浄能評価>
上記のTSVウェハを走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ウェハの表面及びTSV内部に対する洗浄能を評価した。
A: ウェハ表面またはTSV内部に残留物が確認できず、100%除去された状態
B: ウェハ表面またはTSV内部に残留物が確認でき、50%超100%未満除去された状態
C: ウェハ表面またはTSV内部に残留物が確認でき、50%以上残存している状態
【0112】
<Alのダメージ評価[Al EV]>
上記条件でAlウェハを、実施例1と同様に処理した。その処理の前後で、4端子型電流計(国際電気アルファ社製、商品名VR200)を用い、Al層の電流値より膜厚を算出した。下表には膜厚の減少量を記載した。
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
表の注記は表1と同じ
【0116】
上記の結果より本発明の除去液によれば、TSV作成用のレジストの剥離に効果を発揮しTSV(ビアホール)内部の残渣の除去も効果的に行うことができることが分かる。
【0117】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0118】
本願は、2014年11月27日に日本国で特許出願された特願2014−240588及び2015年2月19日に日本国で特許出願された特願2015−030378に基づく優先権を主張するものであり、これらはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
図1
図2