特許第6421211号(P6421211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6421211
(24)【登録日】2018年10月19日
(45)【発行日】2018年11月7日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20181029BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20181029BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20181029BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20181029BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20181029BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20181029BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20181029BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   C09K11/06 690
   C09K11/06 660
   C07D403/14
   C07D209/86
   H05B33/12 C
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】12
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2017-83797(P2017-83797)
(22)【出願日】2017年4月20日
(62)【分割の表示】特願2012-264652(P2012-264652)の分割
【原出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2017-195373(P2017-195373A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 博之
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−027092(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0112404(US,A1)
【文献】 特開2004−311420(JP,A)
【文献】 特開2006−173050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 51/50 − 56
C07D 209/86
C07D 403/14
C09K 11/06
G09F 9/30
H01L 27/32
H05B 33/12
DB名 CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第一ホスト材料が、アミン誘導体であり、
前記第二ホスト材料が、含窒素六員環複素環基を含む化合物であり、
前記第一ホスト材料、前記第二ホスト材料および前記第三ホスト材料は、下記式(N−4)を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
μ(e)H2≧μ(e)H3>μ(e)H1 (N−4)
ただし、前記式(N−4)において、μ(e)H1は前記第一ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。
【請求項2】
陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み、
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第二ホスト材料が、含窒素六員環複素環基を含む化合物であり、
前記第三ホスト材料が、下記式(130)で表される骨格を有する化合物であり、
前記第一ホスト材料、前記第二ホスト材料および前記第三ホスト材料は、下記式(N−4)を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
μ(e)H2≧μ(e)H3>μ(e)H1 (N−4)
ただし、前記式(N−4)において、μ(e)H1は前記第一ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。
【化1】
(式(130)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、NR130またはCR131132を表す。
130〜R132は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。R131およびR132の一部が結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項3】
請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第三ホスト材料が、下記式(16)で表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】
(式(16)中、
10は、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、またはこれらの基が互いに2〜5個連結した基を表す。
、Xは、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。
〜Yは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。なお、隣接するY〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成してもよい。
p、qは、4である。
r、sは、3である。
およびBは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。)
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第二ホスト材料が、カルバゾール骨格を有する化合物であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第二ホスト材料が、下記式(21)〜(26)のいずれかで表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3】
(式(21)〜(26)中、R101〜R105は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環基、又はアルキル基を表す。)
【請求項6】
請求項2、請求項3又は請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
「置換もしくは無置換の」という場合における置換基が、芳香族炭化水素基、複素環基、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、又はカルボキシ基であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一ドーパント材料は、570nm以上の発光ピークを示し、
前記第二ドーパント材料は、570nm未満の発光ピークを示すことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第一発光層が、前記第二発光層よりも陽極側に設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み、
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第一ホスト材料が、アミン誘導体であり、
前記第一ホスト材料、前記第二ホスト材料および前記第三ホスト材料は、下記式(N−4)を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
μ(e)H2≧μ(e)H3>μ(e)H1 (N−4)
ただし、前記式(N−4)において、μ(e)H1は前記第一ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。
【請求項10】
陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み、
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第三ホスト材料が、下記式(130)で表される骨格を有する化合物であり、
前記第一ホスト材料、前記第二ホスト材料および前記第三ホスト材料は、下記式(N−4)を満たすことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
μ(e)H2≧μ(e)H3>μ(e)H1 (N−4)
ただし、前記式(N−4)において、μ(e)H1は前記第一ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。
【化4】
(式(130)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、NR130またはCR131132を表す。
130〜R132は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。R131およびR132の一部が結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項11】
請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第三ホスト材料が、下記式(16)で表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化5】
(式(16)中、
10は、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、またはこれらの基が互いに2〜5個連結した基を表す。
、Xは、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。
〜Yは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。なお、隣接するY〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成してもよい。
p、qは、4である。
r、sは、3である。
およびBは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。)
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
「置換もしくは無置換の」という場合における置換基が、芳香族炭化水素基、複素環基、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、又はカルボキシ基であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物質を使用した有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略記する場合がある。)は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般に有機EL素子は、発光層および該発光層を挟んだ一対の対向電極から構成されている。両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。さらに、この電子が発光層において正孔と再結合し、励起状態を生成し、励起状態が基底状態に戻る際にエネルギーを光として放出する。
【0003】
従来の有機EL素子は、無機発光ダイオードに比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低かった。また、特性劣化も著しかった。最近の有機EL素子は徐々に改良されているが、さらなる低電圧化、高発光効率化、長寿命化、色再現性の向上等が要求されている。
【0004】
特許文献1に記載の有機EL素子は、第一発光層と第二発光層とを備え、第一発光層に含まれる第一のホスト材料は、アミン誘導体であり、第二発光層に含まれる第二のホスト材料は、モノアジン誘導体、ジアジン誘導体、およびトリアジン誘導体のいずれかである。特許文献1に記載の有機EL素子は、2つの発光層がそれぞれバランス良く発光し、その結果、低電圧で駆動し、発光効率が良好な有機EL素子となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/148909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の有機EL素子は、2つの発光層をそれぞれバランス良く発光させるものであり、2つの発光層の発光の強度を相対的に調整して、全体の発光色を所望の色度に調整することは記載されていない。色度を変更する方法としては、各発光層の膜厚を変更することや、各発光層のドーパント濃度を変更することが考えられる。しかしながら、例えば、発光層の膜厚を薄くすると、有機EL素子の寿命が短くなるという問題がある。一方、発光層の膜厚を厚くすると、有機EL素子の駆動電圧が高くなるという問題がある。また、例えば、ドーパント濃度を高くすると、濃度消光を生じて、発光効率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、発光させたときの色度を調整し易い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み、
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第一ホスト材料が、アミン誘導体であり、
前記第二ホスト材料が、含窒素六員環複素環基を含む化合物であり、
前記第一ホスト材料、前記第二ホスト材料および前記第三ホスト材料は、下記式(N−4)を満たすことを特徴とする。
μ(e)H2≧μ(e)H3>μ(e)H1 (N−4)
ただし、前記式(N−4)において、μ(e)H1は前記第一ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み、
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第二ホスト材料が、含窒素六員環複素環基を含む化合物であり、
前記第三ホスト材料が、下記式(130)で表される骨格を有する化合物であり、
前記第一ホスト材料、前記第二ホスト材料および前記第三ホスト材料は、下記式(N−4)を満たすことを特徴とする。
μ(e)H2≧μ(e)H3>μ(e)H1 (N−4)
ただし、前記式(N−4)において、μ(e)H1は前記第一ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。
【0009】
【化1】
【0010】
(式(130)中、Xは、酸素原子、硫黄原子、NR130またはCR131132を表す。
130〜R132は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。R131およびR132の一部が結合して環構造を形成していてもよい。)
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第三ホスト材料が、下記式(16)で表されることが好ましい。
【0011】
【化2】
【0012】
(式(16)中、
10は、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、またはこれらの基が互いに2〜5個連結した基を表す。
、Xは、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。
〜Yは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。なお、隣接するY〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成してもよい。
p、qは、4である。
r、sは、3である。
およびBは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基を表す。)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第二ホスト材料が、カルバゾール骨格を有する化合物であることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第二ホスト材料が、下記式(21)〜(26)のいずれかで表されることが好ましい。
【0013】
【化3】
【0014】
(式(21)〜(26)中、R101〜R105は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環基、又はアルキル基を表す。)
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基が、芳香族炭化水素基、複素環基、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、又はカルボキシ基であることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第一ドーパント材料は、570nm以上の発光ピークを示し、前記第二ドーパント材料は、570nm未満の発光ピークを示すことが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第一発光層が、前記第二発光層よりも陽極側に設けられていることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み、
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第一ホスト材料が、アミン誘導体であり、
前記第一ホスト材料、前記第二ホスト材料および前記第三ホスト材料は、前記式(N−4)を満たすことを特徴とする。
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記第一発光層は、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料を含み、
前記第二発光層は、第二ホスト材料と第三ホスト材料と、第二ドーパント材料を含み、
前記第三ホスト材料が、前記式(130)で表される骨格を有する化合物であり、
前記第一ホスト材料、前記第二ホスト材料および前記第三ホスト材料は、前記式(N−4)を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、発光させたときの色度を調整し易い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る第一実施形態における有機EL素子の一例の概略構成を示す図。
図2】本発明に係る第二実施形態における有機EL素子の一例の概略構成を示す図。
図3】本発明に係る第三実施形態における有機EL素子の一例の概略構成を示す図。
図4】本発明の変形例に係る有機EL素子の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(有機EL素子の素子構成)
以下、本発明に係る有機EL素子の素子構成について説明する。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機化合物層を備える。この有機化合物層は、有機化合物で構成される複数の層を有する。有機化合物層は、無機化合物を含んでいてもよい。
有機化合物層は、少なくとも第一発光層、及び第二発光層を含む複数の発光層を有する。第二発光層に対して第三発光層が隣接してもよい。
その他、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔障壁層、電子障壁層、スペース層等の公知の有機EL素子で採用される層を有していてもよい。
【0018】
本発明の有機EL素子の素子構成としては、
(a)陽極/第一発光層/第二発光層/陰極
(b)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/陰極
(c)陽極/第一発光層/第二発光層/電子注入・輸送層/陰極
(d)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/電子注入・輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/障壁層/第二発光層/電子注入・輸送層/陰極
(f)陽極/第一発光層/第二発光層/第三発光層/陰極
(g)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/第三発光層/陰極
(h)陽極/第三発光層/第一発光層/第二発光層/電子注入・輸送層/陰極
(i)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/第三発光層/電子注入・輸送層/陰極
(j)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/障壁層/電子注入・輸送層/陰極
(k)陽極/正孔注入・輸送層/第一発光層/第二発光層/障壁層/第三発光層/電子注入・輸送層/陰極
などの構造を挙げることができる。
【0019】
上記の中で(d),(e),(i),(k)の構成が好ましく用いられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
なお、上記「発光層」とは、一般的にドーピングシステムが採用されており、ホスト材料とドーパント材料を含む有機層である。ホスト材料は、一般的に電子と正孔の再結合を促し、再結合により生じた励起エネルギーをドーパント材料に伝達させる。ドーパント材料としては、量子収率の高い化合物が好まれ、ホスト材料から励起エネルギーを受け取ったドーパント材料は、高い発光性能を示す。
また、上記「正孔注入・輸送層」は「正孔注入層および正孔輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味し、「電子注入・輸送層」は「電子注入層および電子輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味する。ここで、正孔注入層および正孔輸送層を有する場合には、陽極側に正孔注入層が設けられていることが好ましい。また、電子注入層および電子輸送層を有する場合には、陰極側に電子注入層が設けられていることが好ましい。
また、本発明において電子輸送層といった場合には、発光層と陰極との間に存在する電子注入輸送層のうち、最も電子移動度の高い有機層をいう。電子注入輸送層が一層で構成されている場合には、当該層が電子輸送層である。また、燐光素子においては、構成(i)に示すように発光層で生成された励起エネルギーの拡散を防ぐ目的で必ずしも電子移動度が高くない障壁層を発光層と電子輸送層との間に採用することがあり、発光層に隣接する有機層が電子輸送層に必ずしも該当しない。
【0020】
[第一実施形態]
図1に、本発明の第一実施形態における有機EL素子の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1は、透光性の基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された発光ユニット5を備え、発光ユニット5は、陽極3側から順に正孔輸送層6、第一発光層51、第二発光層52、及び電子輸送層7を備える。
【0021】
(発光層)
本実施形態の有機EL素子1において、第一発光層51は、第一ホスト材料および第一ドーパント材料を含んでいる。第二発光層52は、第二ホスト材料、第三ホスト材料および第二ドーパント材料を含んでいる。
【0022】
<第一発光層>
〔第一ホスト材料〕
第一ホスト材料は、モノアミン化合物、ジアミン化合物、トリアミン化合物、テトラミン化合物、カルバゾール基で置換されたアミン化合物などのアミン誘導体、および縮合芳香族環を有する化合物から選ばれることが好ましい。中でも、カルバゾール基で置換されたアミン化合物または縮合芳香族環を有する化合物が好ましい。
アミン誘導体としては、下記式(1)〜(7)で示される化合物が好ましい。
【0023】
【化1】
【0024】
【化2】
【0025】
式(1)中、Ar〜Arは、それぞれ置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、又は、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40の芳香族複素環基である。
この芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、9,9’−ジメチルフルオレン基、フェナントレン基などが挙げられる。
芳香族複素環基としては、チオフェンの一価残基、ベンゾチオフェンの一価残基、ジベンゾチオフェンの一価残基、フランの一価残基、ベンゾフランの一価残基、ジベンゾフランの一価残基などが挙げられる。
式(2)〜(7)中、Ar〜Ar16は、それぞれ置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40の芳香族複素環基である。置換基として芳香族アミノ基を有し、さらに置換基を有していてもよい環形成炭素数8〜40の芳香族炭化水素基、及び、置換基として芳香族複素環基を有し、さらに置換基を有していてもよい環形成原子数8〜40の芳香族炭化水素基のいずれかであっても好ましい。
式(1)〜(7)中、r1,r6〜r8,r11,r12,r19,r20,r23は、1〜4の整数を表し、r9,r10,r13〜r15,r18,r21,r22は1〜3の整数を表す。
そして、式(1)〜(7)中、Ar〜Ar16は、ラダー型フラン基でも良い。
また、式(1)〜(7)中、ArとAr、ArとAr、ArとAr、ArとAr、Ar10とAr11、Ar12とAr13、Ar15とAr16は互いに結合し、環を形成しても良い。
式(2)、(4)、(6)、(7)中、L〜Lは、単結合または炭素数1〜30の連結基である。
ここで、例えば、Lが単結合の場合とは、N原子とフェニレン環が直接結合した構造である。
【0026】
式(1)〜(7)中、R〜R23は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜40のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜40の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基置換もしくは無置換の炭素数7〜20のアラルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜40のアルケニル基、置換もしくは無置換の1〜40のアルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜60のアラルキルアミノ基、置換もしくは無置換の炭素数3〜20のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数8〜40のアリールシリル基、置換もしくは無置換の炭素数8〜40のアラルキルシリル基、及び置換もしくは無置換の炭素数1〜40のハロゲン化アルキル基のうちのいずれかである。
式(4)、(6)、(7)中、X〜Xは、それぞれ硫黄原子、酸素原子、及びモノ芳香族炭化水素基により置換されたN原子のうちのいずれかである。
式(1)において、Ar及びArに直接結合するN原子に直接結合されるフェニレン基は、さらに、ArまたはArと直接結合されていてもよい。また、式(1)において、Ar及びArに直接結合するN原子に直接結合されるフェニレン基は、さらに、ArまたはArと直接結合されていてもよい。
そして、式(1)において、Ar及びArは環形成炭素数6〜40の縮合芳香族炭化水素であることが好ましい。Ar及びArはさらに、ナフチル基であることが好ましい。
式(2)において、Ar及びArに直接結合するN原子にLを介して結合されるフェニレン基は、さらにArまたはArと直接結合されていてもよい。
【0027】
なお、本発明において、「環形成炭素」とは飽和環、不飽和環、又は芳香環を構成する炭素原子を意味する。「環形成原子」とはヘテロ環(飽和環、不飽和環、および芳香環を含む)を構成する炭素原子およびヘテロ原子を意味する。
また、「芳香族炭化水素基」には、特に指定しない限り、非縮合芳香族炭化水素基だけでなく、縮合芳香族炭化水素基も含む。「芳香族複素環基」には、特に指定しない限り、非縮合芳香族複素環基だけでなく、縮合芳香族複素環基も含む。
【0028】
また、「置換もしくは無置換の」という場合における置換基としては、上述のような芳香族炭化水素基、複素環基、アルキル基(直鎖または分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、シアノ基に加え、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基等が挙げられる。ここで挙げた置換基の中では、芳香族炭化水素基、複素環基、アルキル基、ハロゲン原子、アルキルシリル基、アリールシリル基、シアノ基が好ましく、さらには、各置換基の説明において好ましいとした具体的な置換基が好ましい。また、これらの置換基は、さらに上述の置換基により置換されていてもよい。
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは、水素原子が置換したことを意味する。
以下に説明する化合物またはその部分構造において、「置換もしくは無置換の」という場合についても、上記と同様である。
本発明において、水素原子とは、中性子数が異なる同位体、すなわち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、三重水素(tritium)、を包含する。
【0029】
上記一般式(1)〜(7)で表されるアミン誘導体の中でも、一般式(2)〜(4)および(6)〜(7)で表されるアミン誘導体が好ましく、カルバゾリル基を有する化合物が好ましい。アミン誘導体としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0030】
【化3】
【0031】
【化4】
【0032】
【化5】
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
縮合芳香族環を有する化合物としては、置換または無置換の縮合芳香族環と置換または無置換の芳香族環とが連結した化合物が挙げられる。
このような縮合芳香族環を有する化合物としては、例えば、下記式(10A)、(10B)及び(10C)で表される多環芳香族化合物からなる群から選ばれる化合物が好ましい。
【0037】
Ra−Ar101−Rb ・・・(10A)
Ra−Ar101−Ar102−Rb ・・・(10B)
Ra−Ar101−Ar102−Ar103−Rb ・・・(10C)
【0038】
前記一般式(10A)〜(10C)において、Ar101,Ar102,Ar103,Ra及びRbは置換もしくは無置換の環形成炭素数6から60の芳香族炭化水素基である。
【0039】
中でも、Ar101,Ar102,Ar103,Ra及びRbは
置換もしくは無置換のベンゼン環、
置換もしくは無置換のナフタレン環、
置換もしくは無置換のクリセン環、
置換もしくは無置換のフルオランテン環、
置換もしくは無置換のフェナントレン環、
置換もしくは無置換のベンゾフェナントレン環、
置換もしくは無置換のジベンゾフェナントレン環、
置換もしくは無置換のトリフェニレン環、
置換もしくは無置換のベンゾ[a]トリフェニレン環、
置換もしくは無置換のベンゾクリセン環、
置換もしくは無置換のベンゾ[b]フルオランテン環、
置換もしくは無置換のフルオレン環、及び、
置換もしくは無置換のピセン環から選択される多環芳香族骨格部を表すことが好ましい。
さらにRa及びRbの置換基は芳香族炭化水素基ではないものが好ましく、Ar101,Ar102,Ar103,Ra及びRbが同時に置換もしくは無置換のベンゼン環でないものが好ましい。
【0040】
さらに、前記一般式(10A)から(10C)において、RaおよびRbのいずれか一方または両方は、置換もしくは無置換のフェナントレン環、置換もしくは無置換のベンゾ[c]フェナントレン環、置換もしくは無置換のトリフェニレン環、および置換もしくは無置換のフルオランテン環からなる群から選ばれることが好ましい。
【0041】
また、縮合芳香族環を有する化合物としては、置換または無置換の縮合芳香族環と置換または無置換の縮合芳香族複素環とが連結した化合物でもよい。
縮合芳香族複素環としては、例えば、カルバゾール環およびジベンゾフラン環が挙げられる。
【0042】
縮合芳香族環を有する化合物の具体例としては、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
【0043】
【化9】
【0044】
また、第一ホスト材料の三重項エネルギー(Eg(T))は、2.4eV以上であることが好ましく、2.5eV以上であることがさらに好ましい。第一ホスト材料の三重項エネルギーを2.4eV以上とすることにより、第一ホスト材料の三重項エネルギーを第一ドーパント材料の三重項エネルギーよりも大きな値とすることができる。これにより、第一ドーパント材料の三重項エネルギーが第一ホスト材料などに拡散することを抑制でき、発光効率等を向上させることができる。
一方、第一ホスト材料の三重項エネルギー(Eg(T))は、第一発光層51に隣接する正孔輸送層6の正孔輸送材料の三重項エネルギー(Eg(T))より小さいことが好ましい。これにより、第一発光層51に隣接する正孔輸送層6に三重項エネルギーが拡散することを避けることができ、発光効率等を向上させることができる。
なお、本発明において、三重項エネルギーとは、最低励起三重項状態と基底状態とのエネルギー差をいう。
【0045】
さらに、第一ホスト材料のIp(イオン化ポテンシャル)と、第一発光層51に隣接する正孔輸送層6の材料のIpとの差を、0.2eV以下とすることが好ましく、0.15eV以下とすることがさらに好ましく、0.10eV以下とすることが特に好ましい。第一ホスト材料と正孔輸送層6の材料とのIpの差を0.2eV以下とすることにより、正孔輸送層6から第一発光層51に流れる正孔の輸送性が良好となるため、第一発光層51及び第二発光層52に流入する正孔を多くすることができる。
【0046】
〔第一ドーパント材料〕
第一ドーパント材料は、燐光発光性材料であり、金属錯体であることが好ましく、当該金属錯体は、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、及び白金(Pt)のうちの少なくともいずれかの金属を含むことが好ましい。当該金属錯体は、さらに好ましくは、式(20)で示すオルトメタル化錯体である。
【0047】
【化10】
【0048】
式(20)中、A31は、A32及びQと結合する環であり、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基又は置換もしくは無置換の芳香族複素環基である。
ここで、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が好ましい。
芳香族複素環基としては、チエニル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が好ましい。
芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基に置換される置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ハロアルキル基、シアノ基等が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子等が好ましい。
炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が好ましい。
アルケニル基としては、ビニル基等が好ましい。
炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が好ましい。
炭素数1〜30のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が好ましい。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が好ましい。
ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が好ましい。
アシル基としては、アセチル基等が好ましい。
ハロアルキル基としては、トリフルオロメチル基等が好ましい。
32は、A31に結合する芳香族複素環基であり、芳香族複素環基を形成する原子として窒素を含み置換基を有していてもよい。
芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジン基、トリアジン基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリン基、フェナントリジン基等が好ましい。
32に置換される置換基としては、A31に置換される置換基と同様である。
31を含む環とA32を含む環は、さらに環の他の部位同士で結合して環構造を結合して、一つの縮合環や不飽和構造を有する環を形成してもよい。このような縮合環としては、例えば、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
Qは、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、及び白金(Pt)のうちのいずれかである。
Lは、2座型の配位子である。2座型の配位子としては、アセチルアセトナート等のβ−ジケト型の配位子又はピロメリット酸等が好ましい。
式(20)中、m及びnは整数を表し、Qが2価金属の場合は、n=2かつm=0であり、Qが3価金属の場合は、n=3かつm=0、又はn=2かつm=1である。
【0049】
式(20)で示されるオルトメタル化錯体としては、例えば、以下の化合物が例示できる。
【0050】
【化11】
【0051】
【化12】
【0052】
【化13】
【0053】
【化14】
【0054】
【化15】
【0055】
【化16】
【0056】
本実施形態において、第一ドーパント材料は、570nm以上の発光ピークを示すことが好ましい。ここで、570nm以上の発光ピークを示す発光色としては、例えば、赤色である。具体的には、上記(K−15)〜(K−22)、Ir(pq)(acac)、およびIr(tpiq)(acac)が好ましい。
【0057】
<第二発光層>
第二発光層は、第二ホスト材料と、第三ホスト材料と、第二ドーパント材料とを含む。
【0058】
〔第一ホスト材料と第二ホスト材料との関係〕
第一発光層と第二発光層の両方から発光を得るためには、第二発光層の第二ホスト材料に電子輸送性のホスト材料を用いることが好ましい。
また、第二ホスト材料は、第一ホスト材料よりもアフィニティとイオン化ポテンシャルとが大きいことが好ましい。第二ホスト材料が、第一ホスト材料よりもアフィニティが大きい場合、そのアフィニティの差分により、第一発光層51を電子障壁層として機能させることができる。第二ホスト材料が、第一ホスト材料よりもイオン化ポテンシャルが大きい場合、そのイオン化ポテンシャルの差分により、第二発光層52を正孔障壁層としても機能させることができる。
その結果、第一発光層51と第二発光層52との界面付近で励起子を良好に生成させることができ、輝度を上昇させたとしても色ずれを抑制することができる。
【0059】
なお、アフィニティ(Af、electron affinity/電子親和力)とは、ホスト材料の分
子に電子を一つ与えた時に放出または吸収されるエネルギーをいい、放出の場合は正、吸収の場合は負と定義する。
アフィニティは、イオン化ポテンシャル(Ip)と一重項エネルギー(Eg(S):最低励起一重項状態と基底状態とのエネルギー差)とにより次のように規定する。
Af=Ip−Eg(S)
ここで、イオン化ポテンシャル(Ip)は、ホスト材料の化合物から電子を取り去ってイオン化するために要するエネルギーを意味し、例えば、紫外線光電子分光分析装置(AC−3、理研(株)計器)で測定した値である。
一重項エネルギー(Eg(S))は、伝導レベルと価電子レベルとの光学エネルギー差をいい、例えば、各ホスト材料のトルエン希薄溶液の吸収スペクトルの長波長側接線とベースライン(吸収ゼロ)との交点の波長値をエネルギーに換算して求める。
【0060】
〔第二ホスト材料と第三ホスト材料との関係〕
第二ホスト材料と第三ホスト材料とは、下記式(N−1)を満たし、かつ下記式(N−2)および(N−3)の少なくともいずれかを満たすことが好ましい。
AfH2≧AfH3 (N−1)
μ(e)H2>μ(e)H3 (N−2)
Eg(S)H2<Eg(S)H3 (N−3)
ただし、前記式(N−1)において、AfH2は前記第二ホスト材料のアフィニティであり、AfH3は前記第三ホスト材料のアフィニティである。また、前記式(N−2)において、μ(e)H2は前記第二ホスト材料の電子移動度であり、μ(e)H3は前記第三ホスト材料の電子移動度である。前記式(N−3)において、Eg(S)H2は前記第二ホスト材料の一重項エネルギーであり、Eg(S)H3は前記第三ホスト材料の一重項エネルギーである。
【0061】
有機EL素子を所望の色度とするためには、第一発光層と第二発光層とから発光を得ながら、第一発光層と第二発光層の発光強度を調整すればよい。
例えば、第一発光層の発光強度を低下させ、第二発光層の強度を増加させるためには、正孔と電子との再結合領域を第二発光層側に移動させる必要がある。再結合領域の第二発光層側への移動は、第二発光層の電子注入を弱めることにより可能となる。
本実施形態の第二発光層において、第三ホスト材料のアフィニティAfH3は、前記式(N−1)に示すように、第二ホスト材料のアフィニティAfH2以下であることが好ましい。すなわち、第三ホスト材料は、第二ホスト材料に対して電子注入を抑制することが好ましい。
【0062】
再結合領域の第二発光層側への移動は、第二発光層の電子輸送性を弱めることによっても可能となる。第二発光層の電子輸送性を弱めるためには、第二発光層に第二ホスト材料よりも電子移動度の低い第三ホスト材料、すなわち前記式(N−2)を満たす第三ホスト材料を適度に加えればよい。このように、前記式(N−1)を満たし、かつ前記式(N−2)を満たす第三ホスト材料を第二発光層に加えることにより、各発光層の膜厚の変更やドーパント濃度の変更を行うことなく、各層の発光強度を調整でき、所望の色度の有機EL素子を得ることができる。
【0063】
また、第二発光層に、第二ホスト材料よりも一重項エネルギーが大きく、キャリアへの障壁が大きい第三ホスト材料、すなわち前記式(N−3)を満たす第三ホスト材料を適度に加えることでも再結合領域を第二発光層側に移動することができる。このように、前記式(N−1)を満たし、かつ前記式(N−3)を満たす第三ホスト材料を第二発光層に加えることにより、各発光層の膜厚の変更やドーパント濃度の変更を行うことなく、各層の発光強度を調整でき、所望の色度の有機EL素子を得ることができる。
【0064】
さらに、第二ホスト材料の一重項エネルギーEg(S)H2と、第三ホスト材料の一重項エネルギーEg(S)H3とは、下記式(N−31)を満たすことが好ましい。
ΔEg(S)=Eg(S)H3−Eg(S)H2>0.2〔eV〕 (N−31)
また、第二ホスト材料の電子移動度μ(e)H2と、第三ホスト材料の電子移動度μ(e)H3とは、下記式(N−21)を満たすことが好ましい。
Δμ(e)=μ(e)H2/μ(e)H3>10cm/Vs (N−21)
【0065】
さらに、第二発光層において、第三ホスト材料が多ければ、第三ホスト材料流れる電子が多くなり、第二ホスト材料の電子輸送性が弱くなる。すなわち、第二ホスト材料の電子輸送性は、第三ホスト材料の濃度により、影響を受けるため、第二ホスト材料と第三ホスト材料の合計質量に対する第三ホスト材料の質量(第三ホスト材料の濃度)を変更することにより、第二ホスト材料の電子輸送性を変更することができ、これにより、有機EL素子の色度を調整することができる。
【0066】
なお、移動度の測定方法としては、Time of Flight法等幾つかの方法が知られているが、本発明ではインピーダンス分光法で決定される移動度をいう。
【0067】
インピーダンス分光法による移動度測定について説明する。陽極、陰極で好ましくは厚さ100nm〜200nm程度の移動度測定の対象となる材料を挟み、バイアスDC電圧を印加しながら100mV以下の微小交流電圧を印加する。このときに流れる交流電流値(絶対値と位相)を測定する。交流電圧の周波数を変えながら本測定を行い、電流値と電圧値とから、複素インピーダンス(Z)を算出する。このときモジュラスM=iωZ(i:虚数単位、ω:角周波数)の虚数部(ImM)の周波数依存性を求め、ImMが最大値となる周波数ωの逆数を、測定対象材料の層内を伝導する電子の応答時間と定義する。そして以下の式により移動度を算出する。
移動度=(測定対象材料層の膜厚)/(応答時間×電圧)
【0068】
〔第一ホスト材料、第二ホスト材料および第三ホスト材料の関係〕
第一発光層の第一ホスト材料の電子移動度μ(e)H1に対し、第二ホスト材料の電子移動度μ(e)H2および第三ホスト材料の電子移動度μ(e)H3は、下記式(N−4)を満たすことが好ましい。
μ(e)H2≧μ(e)H3>μ(e)H1 (N−4)
【0069】
上述したように、第一発光層と第二発光層とから発光を得るためには、第一発光層に正孔輸送性のホスト材料を用い、第二発光層に電子輸送性のホスト材料を用いることが好ましい。そして、この有機EL素子において、例えば、第一発光層の発光強度を低下させ、第二発光層の発光強度を増加させるためには、第一ホスト材料よりも電子移動度が高く、かつ第二ホスト材料よりも電子移動度が低い第三ホスト材料を用いて、第二発光層の電子輸送性を弱めればよい。
【0070】
また、第一ホスト材料の正孔移動度μ(h)H1が10−6cm/Vs以上のとき、第一ホスト材料のイオン化ポテンシャルIpH1と第三ホスト材料のイオン化ポテンシャルIpH3は下記式(N−5)を満たすことが好ましい。
IpH1<IpH3 (N−5)
この場合、第一ホスト材料の正孔輸送性が高いため、第三ホスト材料に要求される性能は正孔輸送能の制御と考えられる。一方で、第二ホスト材料に対しては正孔輸送性を有することが望ましい。
正孔移動度μ(h)H1が10−6cm/Vs以上である第一ホスト材料としては、例えば、前述したアミン誘導体が挙げられる。
【0071】
また、第一ホスト材料の正孔移動度μ(h)H1が10−6cm/Vsより小さいとき、第一ホスト材料のアフィニティAfH1と第三ホスト材料のアフィニティAfH3は下記式(N−6)を満たすことが好ましい。
AfH1>AfH3 (N−6)
この場合、第三ホスト材料に要求される性能は、第二ホスト材料から第一ホスト材料への電子を制御することにある。このため、第三ホスト材料は、電子ブロック性、すなわち、アフィニティの小さい化合物が望ましい。
正孔移動度μ(h)H1が10−6cm/Vsより小さい第一ホスト材料としては、例えば、前述した縮合芳香族環を有する化合物が挙げられる。
【0072】
〔第二ホスト材料〕
本実施形態において、第二ホスト材料は、アジン誘導体であることが好ましい。アジン誘導体とは、環を形成する原子として1個以上の窒素原子を含む六員環を含む化合物(含窒素六員環複素環基、ともいう)であり、モノアジン誘導体、ジアジン誘導体、及びトリアジン誘導体のうちのいずれかであることが好ましい。
第二ホスト材料がモノアジン誘導体、ジアジン誘導体、及びトリアジン誘導体のうちのいずれかであるため、電子輸送層7から第一発光層51への電子輸送性が優れる。
第二ホスト材料としては、例えば、式(21)〜(26)で示される化合物であることが好ましい。
【0073】
【化17】
【0074】
式(21)〜(26)中、R101〜R105は、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環基、及びアルキル基のうちのいずれかである。
芳香族炭化水素基に置換される置換基としては、環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数5〜30の複素環基、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。
複素環基に置換される置換基としては、環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、炭素数5〜30の複素環基、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい
【0075】
また、第二ホスト材料は、それぞれカルバゾール骨格を有する化合物であることが好ましい。カルバゾール骨格を有する第二ホスト材料により、さらに、色ずれが生じることがなく、また耐久性にも優れた有機EL素子1とすることができる。
【0076】
カルバゾール骨格を有する第二ホスト材料として、例えば、下記一般式(BL−9)又は(BL−10)で表される化合物(カルバゾールアジン系化合物)が挙げられる。
【0077】
【化18】
【0078】
式(BL−9)中、Czは、置換基を有してもよいカルバゾリル基、又は置換基を有してもよいアザカルバゾリル基である。Aは、モノアジン誘導体、ジアジン誘導体、及びトリアジン誘導体のうちのいずれかの基である。mは1〜3の整数である。
【0079】
【化19】
【0080】
式(BL−10)中、Czは、置換基を有してもよいカルバゾリル基、又は置換基を有してもよいアザカルバゾリル基である。Aは、モノアジン誘導体、ジアジン誘導体、及びトリアジン誘導体のうちのいずれかの基である。nは1〜3の整数である。
カルバゾール骨格を有する第二ホスト材料としては、例えば、下記式(27)または(28)で示される化合物であることが好ましい。
【0081】
【化20】
【0082】
式(27)中、HAr31は、置換もしくは無置換の含窒素6員環複素環基である。mは、1〜4の整数のうちのいずれかであり、好ましくは、1〜3の整数のうちのいずれかであり、さらに好ましくは、1又は2である。nは、1〜4の整数のうちのいずれかである。R31は、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基である。R31が置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基である場合、R31同士が結合してベンゼン環が縮合した縮合環構造でも良い。
【0083】
【化21】
【0084】
式(28)中、HAr32は、置換もしくは無置換の含窒素6員環複素環基である。mは、1〜4の整数のうちのいずれかであり、好ましくは、1〜3の整数のうちのいずれかであり、さらに好ましくは、1又は2である。nは、1〜4の整数のうちのいずれかである。R32は、置換もしくは無置換のアルキル基又は芳香族炭化水素基である。R32が置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基である場合、R32同士が結合してベンゼン環が縮合した縮合環構造でも良い。
【0085】
上記一般式(27)または(28)で表されるカルバゾール骨格を有する第二ホスト材料としては、下記式(8)〜(12A)または(29)〜(32)で示される化合物であることが好ましい。
【0086】
【化22】
【0087】
【化23】
【0088】
式(8)〜(11)中、Ar101〜Ar104は、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、及び置換もしくは無置換の環形成原子数5〜60の複素環基のうちのいずれかである。ただし、式(8A)、(9A)、(11A)では、Ar101〜Ar103の全てが水素原子である場合はなく、式(10A)では、Ar101〜Ar104の全てが水素原子である場合はない。
110及びR111は、上記Rと同様である。
n1およびn2は、1〜4の整数のうちのいずれかであり、mは、1〜4の整数のうちのいずれかである。mは、好ましくは、1〜3の整数のうちのいずれかであり、さらに、好ましくは、1又は2である。なお、n2とmの和(n2+m)は、2≦(n2+m)≦5の関係である。
式(12)、(12A)中、Xは、N原子又はCHであり、N原子の数は1〜4である。
式(12)中、R121〜R128は、それぞれ水素原子、芳香族炭化水素基、アルキル基、及び式(12A)の骨格が連結されている構造のいずれかである。
121〜R128に式(12A)の骨格が連結されている構造は、R121とR122、R122とR123、R123とR124、R125とR126、R126とR127、及びR127とR128のうちの少なくともいずれかが式(12A)の骨格に結合した構造である。
式(12A)中、R129は、水素原子、芳香族炭化水素基、及びアルキル基のうちのいずれかである。
【0089】
【化24】
【0090】
式(29)〜(32)中、Ar101〜Ar104,R110,R111,n1,n2,mは、式(8)〜(11)中のものと同様である。
【0091】
式(29)〜(32)の第二ホスト材料としては、例えば、以下の化合物が好ましい。
【0092】
【化25】
【0093】
また、第二ホスト材料は、下記式(13)で示される化合物でもよい。
【0094】
【化26】
【0095】
式(13)中、Aは、置換もしくは無置換の含窒素六員環複素環基である。
は、置換もしくは無置換の環形成炭素数が6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の含窒素複素環基である。
10は、単結合または連結基である。
連結基としては、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、または
これらの基が互いに2〜5個連結した基のいずれかから誘導される基である。
なお、互いに結合した基は、互いに同一、または異なる。
,Xは、互いに独立して、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または、置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基のいずかである。
なお、Xが単結合の場合とは、Xに隣接する「A」と「N」とが直接結合している場合であり、Xが単結合の場合とは、Xに隣接する「A」と「N」とが直接結合している場合である。
〜Yは、それぞれ互いに独立して、水素原子、フッ素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のハロアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキルシリル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリールシリル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基のいずれかである。なお、隣接するY〜Y同士が互いに結合を形成し、環構造を形成しても良い。
p,qはそれぞれ1〜4の整数のうちのいずれかであり、r,sはそれぞれ1〜3の整数のうちのいずれかである。
なお、p,qがそれぞれ2〜4の整数のうちのいずれか、r,sが2又は3の整数のいずれかの場合、複数のY〜Yはそれぞれ同一でも異なっても良い。
,A,X,X,及びY〜Yのうちの少なくともいずれかは、モノアジン誘導体、ジアジン誘導体、及びトリアジン誘導体のうちのいずれかから誘導される基である。
【0096】
ここで、上記式(13)は、下記式(13A)であることが好ましい。
【0097】
【化27】
【0098】
式(13A)において、A,A,L10,X,X,Y〜Y,p,q,r,sは前記式(13)と同義である。
【0099】
また、上記式(13)は、下記式(13C)であることが好ましい。
【0100】
【化28】
【0101】
式(13C)において、A,A,L10,X,X,Y〜Y,p,q,r,sは前記式(13)と同義である。
【0102】
また、上記式(13)は、下記式(13D)であることが好ましい。
【0103】
【化29】
【0104】
式(13D)において、A,A、X,X,Y〜Y,p,q,r,sは前記式(13)と同義である。
【0105】
式(13A)の第二ホスト材料としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。なお、式(13A)の第二ホスト材料の化合物には、下記式(13B)の第二ホスト材料の例示化合物も含まれる。
【0106】
【化30】
【0107】
【化31】
【0108】
【化32】
【0109】
【化33】
【0110】
【化34】
【0111】
【化35】
【0112】
【化36】
【0113】
【化37】
【0114】
【化38】
【0115】
【化39】
【0116】
【化40】
【0117】
【化41】
【0118】
【化42】
【0119】
【化43】
【0120】
また、第二ホスト材料は、下記式(14)又は式(15)で示される化合物でもよい。
【0121】
【化44】
【0122】
式(14)、(15)中、Xは、CH又はN原子を示し、Xのうち少なくとも一つは、N原子である。Ar21〜Ar23は、互いに独立して縮合環構造でない置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基又は複素環基である。
Ar22又はAr23はXを含む環と縮合環を形成してもよい。
【0123】
第二ホスト材料として、特に好ましい化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0124】
【化45】
【0125】
〔第三ホスト材料〕
本実施形態の第三ホスト材料としては、前述した第二ホスト材料との関係を満たすもの、すなわち式(N−1)を満たし、かつ、式(N−2)または(N−3)の少なくともいずれかを満たすものであればよい。例えば、第一ホスト材料で説明した材料や第二ホスト材料で説明した材料のうち、前述した第二ホスト材料との関係を満たすものを挙げることができる。第三ホスト材料は、分子内に五員環構造を含む化合物が好ましい。また、下記一般式(130)で表される骨格を有する化合物でも好ましい。
【0126】
【化46】
【0127】
前記一般式(130)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、NR130、またはCR131132を表す。
130〜R132は、互いに独立して置換もしくは無置換の環形成炭素数が6〜30の芳香族炭化水素基、または置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。R131およびR132の一部が結合して環構造を形成していてもよい。
【0128】
第三ホスト材料としては、上記式(130)で表される骨格を有する化合物がより好ましく、さらに好ましくは、カルバゾリル基を有する化合物である。特に好ましくは、2つのカルバゾリル基が直接結合したビスカルバゾール誘導体である。第三ホスト材料として好ましいビスカルバゾール誘導体は、下記一般式(16)で表される。
【0129】
【化47】
【0130】
前記一般式(16)において、L10,X,X,Y〜Y,p,q,r,sは前記一般式(13)と同義である。BおよびBは、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。
【0131】
第三ホスト材料として、好ましい化合物としては、例えば以下に示す化合物が挙げられる。
【0132】
【化48】
【0133】
なお、本実施形態の第二発光層において、上記第二ホスト材料と第三ホスト材料との比率は、質量比で99:1〜1:99であることが好ましく、90:10〜10:90であることがより好ましく、80:20〜20:80であることがさらに好ましい。また、第二ホスト材料および第三ホスト材料(すなわち、第二発光層におけるホスト材料の合計)と第二ドーパント材料との比率は、質量比で99:1〜50:50であることが好ましい。
【0134】
〔第二ドーパント材料〕
本実施形態の第二ドーパント材料は、燐光発光性の金属錯体が好ましい。本実施形態の第二ドーパント材料としては、上記第一ドーパント材料で説明したものと同様のものを用いることができる。具体的には、上記(K−1)〜(K−10)、(K−12)〜(K−14)、(K−23)〜(K−26)、およびIr(Ph−ppy)が好ましい。
第二ドーパント材料としては、570nm未満の発光ピークを示すことが好ましく、565nm以下の発光ピークを示すことがさらに好ましい。570nm未満の発光ピークを示す発光色としては、例えば、緑色である。
【0135】
(基板)
本実施形態の有機EL素子1は、透光性の基板2上に作製する。この透光性の基板2は、有機EL素子を構成する陽極、有機化合物層、陰極等を支持する基板であり、400nm以上700nm以下の可視領域の光の透過率が50%以上で平滑な基板が好ましい。
透光性の基板としては、ガラス板やポリマー板などが挙げられる。
ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英などを原料として用いてなるものを挙げられる。
またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォンなどを原料として用いてなるものを挙げることができる。
【0136】
(陽極および陰極)
有機EL素子の陽極は、正孔を発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。
陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅などが挙げられる。
発光層からの発光を陽極側から取り出す場合、陽極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□(Ω/sq。オーム・パー・スクウェア。)以下が好ましい。陽極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm以上1μm以下、好ましくは10nm以上200nm以下の範囲で選択される。
【0137】
陰極としては、発光層に電子を注入する目的で、仕事関数の小さい材料が好ましい。
陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金などが使用できる。
陰極も、陽極と同様に、蒸着法などの方法で、例えば、電子輸送層や電子注入層上に薄膜を形成できる。また、陰極側から、発光層からの発光を取り出す態様を採用することもできる。発光層からの発光を陰極側から取り出す場合、陰極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。
陰極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。
陰極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm以上1μm以下、好ましくは50nm以上200nm以下の範囲で選択される。
【0138】
(正孔注入・輸送層)
正孔注入・輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが小さい化合物が用いられる。
正孔注入・輸送層を形成する材料としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、例えば、芳香族アミン化合物が好適に用いられる。
【0139】
(電子注入・輸送層)
電子注入・輸送層は、発光層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きい化合物が用いられる。
電子注入・輸送層に用いられる化合物としては、例えば、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましく用いられ、特に含窒素環誘導体が好ましい。含窒素環誘導体としては、含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する複素環化合物が好ましい。
【0140】
本実施形態の有機EL素子において、第一発光層51および第二発光層52以外の有機化合物層には、上述の例示した化合物以外に、従来の有機EL素子において使用される材料の中から任意の化合物を選択して用いることができる。
【0141】
(層形成方法)
本実施形態の有機EL素子の各層の形成方法としては、上記で特に言及した以外には制限されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ法、イオンプレーティング法などの乾式成膜法や、スピンコーティング法、ディッピング法、フローコーティング法、インクジェット法などの湿式成膜法などの公知の方法を採用することができる。
【0142】
(有機EL素子の製造方法)
本発明の有機EL素子、すなわち、色度の調整をし易い有機EL素子を製造するにあたっては、上述したように、まず、陽極と陰極との間に、少なくとも第一発光層及び第二発光層を設け、第一発光層には、第一ホスト材料と、第一ドーパント材料とを成膜し、第二発光層には、第二ホスト材料と、上記式(N−1)を満たし、かつ、上記式(N−2)および(N−3)の少なくともいずれかを満たす第三ホスト材料と、第二ドーパント材料とを成膜すればよい。この際、第二発光層における第二ホスト材料と第三ホスト材料との合計質量に対する第三ホスト材料の濃度は、所望する有機EL素子の色度により決定すればよい。
【0143】
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態における有機EL素子について説明する。
図2に示すように、第二実施形態の有機EL素子1Aは、発光ユニット5Aにおいて、第二発光層52と電子輸送層7との間に、電荷障壁層8及び第三発光層53をさらに備えた点が第一実施形態と異なる。
電荷障壁層8は、第二発光層52の陰極4側に連続して形成されている。第三発光層53は、電荷障壁層8及び電子輸送層7間に連続して形成されている。
電荷障壁層8とは、隣接する第二発光層52及び第三発光層53間でHOMOレベル、LUMOレベルのエネルギー障壁を設けることにより、第二発光層52及び第三発光層53への電荷(正孔又は電子)注入を調整し、第二発光層52及び第三発光層53に注入される電荷のバランスを調整するための層である。
第三発光層53は、例えば、青色の蛍光発光を示す層であり、ピーク波長は450〜500nmである。第三発光層53は、第四ホスト材料と、第四ドーパント材料とを含有する。
第四ホスト材料としては、例えば、アントラセン中心骨格を有する下記式(41)に示す構造を有する化合物が挙げられる。
【0144】
【化49】
【0145】
式(41)中、A41及びA42は、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜20の芳香族環から誘導される基である。
41〜R48は、それぞれ、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のヘテロ芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、及びヒドロキシル基のうちのいずれかである。
【0146】
41及びA42の芳香族環に置換される置換基としては、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、及びヒドロキシル基のうちのいずれかが挙げられる。
【0147】
第四ドーパント材料としては、例えば、アリールアミン化合物、スチリルアミン化合物、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレン及び蛍光色素等が挙げられる。
【0148】
有機EL素子1Aにおいて、例えば、第一発光層51に赤色に発光する第一ドーパント材料を用い第二発光層52に緑色に発光する第二ドーパント材料を用いる。この場合、これらの発光層51,52に加えて、青色に発光する第三発光層53を備えるため、素子全体として白色発光させることができる。
従って、有機EL素子1Aは、照明やバックライトなどの面光源として好適に利用できる。
【0149】
〔第三実施形態〕
本発明の有機EL素子は、発光ユニットを少なくとも2つ有するタンデム素子構成とすることができる。このようなタンデム素子構成では、2つの発光ユニットの間に中間層が介在する。
中間層は、発光ユニットに電子又は正孔を注入する供給源となる層であり、中間導電層又は電荷発生層から構成される。一対の電極から注入される電荷に加えて、中間層から供給される電荷が発光ユニット内に注入されることになるので、中間層を設けることによって、注入した電流に対する発光効率(電流効率)が向上する。
【0150】
本発明では、2以上の発光ユニットのうち少なくとも1つが少なくとも正孔輸送層と、本発明における第一発光層及び第二発光層と、電子輸送層とを備える。なお、2以上の発光ユニットのうち本発明における第一発光層と第二発光層を含む発光ユニット以外の発光ユニットは、少なくとも1つの発光層を有せば、どのようなものであってもよい。
本発明の有機EL素子の具体例を以下に示す。
(14)陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/陰極
(15)陽極/第一発光ユニット/中間層/第二発光ユニット/中間層/第三発光ユニット/陰極
【0151】
図3に第三実施形態に係る有機EL素子の一例を示す。
有機EL素子1Bは、陽極3と、第一発光ユニット5B1と、中間層9と、第二発光ユニット5B2と、陰極4とを順に備える。
第一発光ユニット5B1は、陽極3から順に、正孔輸送帯域6と、第三発光層53と、電子輸送帯域7とを備える。
正孔輸送帯域6は、第一正孔注入層61と、第一正孔輸送層62とを備える。
第三発光層53は、ホスト材料と、主ピーク波長が550nm以下の蛍光発光を示すドーパント材料とを含む。
電子輸送帯域7は、第三発光層53に隣接した障壁層71と、第一電子輸送層72を有する。
第二発光ユニット5B2は、第一実施形態の発光ユニットと同様であり、陽極3側から順に第二正孔輸送層63と、第一発光層51と、第二発光層52と、第二電子輸送層73とを備える。
第三発光層53のドーパント材料の3重項エネルギー(ETd)は、ホスト材料の3重項エネルギー(ETh)より大きく、障壁層71の三重項エネルギー(ETb)は、EThよりも大きいことが好ましい。3重項励起子が第三発光層53内に閉じ込められ、TTF現象(二つの3重項励起子の衝突融合により1重項励起子が生成する現象)を効率的に起こして蛍光素子の高効率を奏することが可能となる。
ここで、障壁層71は、三重項エネルギーに対する障壁機能を有する層をいう。従って、正孔障壁層や電荷障壁層とはその機能が異なるものである。
なお、3重項エネルギーは市販の装置F−4500(日立社製)を用いて測定できる。三重項エネルギーEの換算式は以下の通りである。
換算式 E(eV)=1239.85/λedge
「λedge」とは、縦軸に燐光強度、横軸に波長をとって、燐光スペクトルを表したときに、燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸の交点の波長値を意味する(単位:nm)。
中間層9としては、金属、金属酸化物、金属酸化物の混合物、複合酸化物、電子受容性有機化合物が挙げられる。金属としては、Mg、Al、MgやAgの共蒸着膜等が好ましい。金属酸化物としては、ZnO、WO、MoO、MoOが挙げられる。金属酸化物の混合物としては、ITOやIZO、ZnO:Al等が挙げられる。電子受容性有機化合物としては、CN基を置換基に持つ有機化合物が挙げられる。CN基を含む有機化合物としては、トリフェニレン誘導体やテトラシアノキノジメタン誘導体、インデノフルオレン誘導体等が好ましい。トリフェニレン誘導体としては、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン(HAT)が好ましい。テトラシアノキノジメタン誘導体としてはテトラフルオロキノジメタン、ジシアノキノジメタンが好ましい。インデノフルオレン誘導体としては国際公開第2009/011327号、国際公開第2009/069717号又は国際公開第2010/064655号に示されるような化合物が好ましい。なお、電子受容性物質は単独物質でも、他の有機化合物と混合されたものでもよい。
本発明のタンデム素子構成における、電子輸送帯域、ホスト材料、ドーパント材料、障壁層に使用できる化合物の具体例として、特許出願番号PCT/JP2010/003431の公報に記載の化合物が挙げられる。正孔輸送帯域に使用できる化合物としては、第一実施形態の正孔輸送層の材料と同様のものが挙げられる。
また、中間層9が電荷発生層の場合、第三発光層53が電荷発生層から電子を容易に受け取れるようにするため、電子輸送帯域7における電荷発生層界面近傍にアルカリ金属で代表されるドナーをドープすることが好ましい。ドナーとしては、ドナー性金属、ドナー性金属化合物及びドナー性金属錯体のうち少なくとも一種を選ぶことができる。このようなドナー性金属、ドナー性金属化合物及びドナー性金属錯体に使用できる化合物の具体例として、特許出願番号PCT/JP2010/003434の公報に記載の化合物が挙げられる。
【0152】
[実施形態の変形例]
なお、本発明は、上記の説明に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更は本発明に含まれる。
第一実施形態、第二実施形態では、陽極に連続して正孔輸送層を形成する構成を示したが、陽極及び正孔輸送層間に正孔注入層をさらに形成してもよい。
このような正孔注入層の材料としては、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物またはスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、特に、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン(HAT)などの芳香族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンを用いる場合、陽極と正孔輸送層との密着性を向上させて、耐久性を向上させることができる。
さらに、陽極と第一発光層との間に、正孔注入層と正孔輸送層とを設けることで、陽極から第一発光層に直接正孔を輸送する場合と比較し、正孔輸送性を向上させることができる。
すなわち、正孔注入層と正孔輸送層とを設けることにより、陽極と正孔注入層とのイオン化ポテンシャルのエネルギー差、正孔注入層と正孔輸送層とのイオン化ポテンシャルのエネルギー差、正孔輸送層と第一発光層とのイオン化ポテンシャルのエネルギー差をそれぞれ小さくすることができる。これにより、正孔が各層に移動する際のエネルギー障壁を小さくできるので、正孔輸送性が向上し、さらに発光効率等を向上させることができる。
また、第一実施形態〜第三実施形態では、陰極に連続して電子輸送層を形成する構成を示したが、陰極及び電子輸送層間に電子注入層をさらに形成してもよい。
そして、第三実施形態では、2つの発光ユニットを形成する構成を示したが、発光ユニットを3つ以上形成してもよい。その場合、各発光ユニット間に電荷発生層を設けてもよい。
また、第三実施形態の有機EL素子1Bは、図4に示す有機EL素子1Cとしてもよい。有機EL素子1Cは、陽極3と、第二発光ユニット5B2と、中間層9と、第一発光ユニット5B1と、陰極4とを順に備える。すなわち、第二発光ユニット5B2が陽極3側に設けられ、第一発光ユニット5B1が陰極4側に設けられている点で、有機EL素子1Bと異なっている。
また、第一実施形態〜第三実施形態の有機EL素子は、照明やバックライトなどの面光源の他、ディスプレイとして利用してもよい。
【0153】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例】
【0154】
以下、本発明に係る実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
使用した化合物は、以下の通りである。
【0155】
【化50】
【0156】
<化合物の合成>
・合成例1(化合物H3の合成)
・合成例1−1−1(中間体1−1の合成)
【0157】
【化51】
【0158】
アルゴン気流下、1000mLのナスフラスコに、カルバゾール(56g、334mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(250mL)を加えて氷浴中(塩化ナトリウム添加)にて−7℃まで冷却し、N−ブロモスクシンイミド(119g、668mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(200mL)溶液を滴下して、−7℃にて4時間撹拌した。
反応液に上水を加えて室温まで昇温した後、析出した固体をろ過して取り出した。トルエンにて、得られた固体の再結晶を繰り返すことによって、中間体1−1(71g、収率65%)を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体1と同定した。
【0159】
・合成例1−1−2(中間体1−2の合成)
【0160】
【化52】
【0161】
アルゴン気流下、2000mLのナスフラスコに、中間体1−1(33g、102mmol)、フェニルボロン酸(27g、221mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(7.0g、6.1mmol)、1,2−ジメトキシエタン(600mL)、2M炭酸ナトリウム水溶液(200mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残差をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体1−2(19g、収率58%)を得た。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体1−2と同定した。
【0162】
・合成例1−1−3(中間体1−3の合成)
【0163】
【化53】
【0164】
中間体1−2の合成において、中間体1−1の代わりに2,4,6−トリクロロピリミジンを用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体1−3と同定した。
【0165】
・合成例1−1−4(中間体1−4の合成)
【0166】
【化54】
【0167】
中間体1−2の合成において、中間体1−1の代わりに中間体1−3を用い、フェニルボロン酸の代わりに4’−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ビフェニル−4−カルボニトリルを用いて同様の方法で合成した。FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)の分析により、中間体1−4と同定した。
【0168】
・合成例1−1−5(化合物H3の合成)
【0169】
【化55】
【0170】
アルゴン気流下、中間体1−2(2.3g、7.2mmol)、中間体1−4(3.2g、8.6mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.26g、0.29mmol)、トリ−t−ブチルホスホニウムテトラフルオロほう酸塩(0.21g、0.72mmol)、t−ブトキシナトリウム(1.4g、14mmol)、無水キシレン(40mL)を順次加えて8時間加熱還流した。
室温まで反応液を冷却した後、有機層を分離し、有機溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3.6gの黄白色固体(H3)を得た。
得られた化合物について、FD−MS(フィールドディソープションマススペクトル)、トルエン溶液中の蛍光発光極大波長FL(PhMe, λex=325nm);λmaxを以下に示す。
FDMS, calcd for C47H30N4=650, found m/z=650 (M+)
FL(PhMe, λex=325nm);λmax, 471nm
【0171】
<化合物の評価>
まず、本実施例で使用した化合物H1,H2,H3の物性を測定した。測定方法および算出方法を以下に示すとともに、測定結果および算出結果を表1に示す。
【0172】
・イオン化ポテンシャル
大気下光電子分光装置(理研計器(株)社製:AC−1)を用いて測定した。具体的には、材料に光を照射し、その際に電荷分離によって生じる電子量を測定することにより測定した。
【0173】
・一重項エネルギーEg(S)
測定対象化合物を石英基板上に蒸着して試料を作製し、常温(300K)でこの試料の吸収スペクトルを測定した。試料の膜厚は100nmとした。吸収スペクトルは、縦軸を吸光度、横軸を波長とした。この吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をEgSとした。
換算式:Eg(S)[eV]=1239.85/λedge
吸収スペクトルの測定には、(株)日立製の分光光度計U3310を用いた。
【0174】
なお、吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線は以下のように引いた。吸収スペクトルの極大値のうち、最も長波長側の極大値から長波長方向にスペクトル曲線上を移動する際に、曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち下がるにつれ(つまり縦軸の値が減少するにつれ)、傾きが減少しその後増加することを繰り返す。傾きの値が最も長波長側(ただし、吸光度が0.1以下となる場合は除く)で極小値をとる点において引いた接線を当該吸収スペクトルの長波長側の立ち下がりに対する接線とする。
なお、吸光度の値が0.2以下の極大点は、上記最も長波長側の極大値には含めなかった。
【0175】
・三重項エネルギーEg(T)
各化合物を、公知の燐光測定法(例えば、「光化学の世界」(日本化学会編・1993)50頁付近の記載の方法)により測定した。具体的には、各化合物を溶媒に溶解(試料10[μmol/リットル]、EPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:2(容積比)、各溶媒は分光用グレード)し、燐光測定用試料とした。石英セルへ入れた燐光測定用試料を77[K]に冷却し、励起光を燐光測定用試料に照射し、波長を変えながら燐光強度を測定した。燐光スペクトルは、縦軸を燐光強度、横軸を波長とした。
この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をEgTとした。
換算式:Eg(T)[eV]=1239.85/λedge
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF−4500形分光蛍光光度計本体と低温測定用オプション備品を用いた。なお、測定装置はこの限りではなく、冷却装置及び低温用容器と、励起光源と、受光装置とを組み合わせることにより、測定してもよい。
【0176】
・アフィニティAf
イオン化ポテンシャルIpと一重項エネルギーEg(S)の測定値から算出した。算出式は、次のとおりである。
Af=Ip−Eg(S)
一重項エネルギーEg(S)は、ベンゼン中の吸収スペクトルの吸収端から測定した。具体的には、市販の可視・紫外分光光度計を用いて、吸収スペクトルを測定し、そのスペクトルが立ち上がり始める波長から算出した。
【0177】
・電子移動度μ(e)および正孔移動度μ(h)
インピーダンス分光法を用いて移動度評価を行った。以下のような単キャリアデバイスを作製し、100mVの交流電圧を乗せたDC電圧を印加し複素モジュラスを測定した。モジュラスの虚部が最大となる周波数をfmax(Hz)としたとき、応答時間T(秒)をT=1/2/π/fmaxとして算出し、この値を用いて移動度の電界強度依存性を決定した。以下に、正孔移動度μ(h)および電子移動度μ(e)の測定に用いた単キャリアデバイスをそれぞれ記載する。
【0178】
μ(h):Al/測定対象化合物(150)/ET(5)/LiF(1)/Al
μ(e):ITO/HT(5)/測定対象化合物(100)/Al
(括弧内の数値は膜厚。単位:nm)。
【0179】
【表1】
【0180】
・実施例1
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極(陽極)付きガラス基板(ジオマテック(株)社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
まず、洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして、抵抗加熱蒸着により化合物HIを積層した。これにより、厚さ20nmの陽極に隣接する正孔注入層を形成した。
この正孔注入層上に、抵抗加熱蒸着により化合物HTを積層した。これにより、厚さ30nmの正孔輸送層を形成した。
この正孔輸送層上に、第一ホスト材料としての化合物H1と、第一ドーパント材料としての化合物D1とを抵抗加熱で共蒸着した。これにより、赤発光を示す厚さ10nmの第一発光層を形成した。尚、化合物D1の濃度は、8質量%とした。
さらにこの第一発光層の上に、第二ホスト材料としての化合物H2と、第三ホスト材料としての化合物H3、第二ドーパント材料としての化合物D2とを抵抗加熱で共蒸着した。これにより、緑発光を示す厚さ30nmの第二発光層を形成した。尚、化合物D2の濃度は、15質量%とした。また、第二発光層における第二ホスト材料と第三ホスト材料との合計質量に対する第三ホスト材料の質量(濃度)は、5質量%とした。
この緑色発光層上に、抵抗加熱蒸着により化合物ETを積層した。これにより、厚さ35nmの電子輸送層を形成した。
さらに、電子輸送層上に、LiFを蒸着し、厚さ1nmの電子注入層を形成した。さらに、電子注入層上に、金属Alを蒸着し、厚さ80nmの陰極を形成した。
【0181】
・実施例2〜4および比較例1〜3
実施例2〜4および比較例1〜3は、実施例1において、第一発光層の膜厚、第二発光層の膜厚、第三ホスト材料、第三ホスト材料の濃度等を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0182】
【表2】
【0183】
〔有機EL素子の評価〕
実施例1〜4および比較例1〜3において作製した有機EL素子において、電流密度を3.00mA/cmとした場合の駆動電圧、CIE1931色度、電流効率L/J、電力効率η、及び寿命LT90の評価を行った。結果を表3に示す。
【0184】
・駆動電圧
電流密度が3.00mA/cmとなるようにITOとAlとの間に通電したときの電圧(単位:V)を計測した。
【0185】
・CIE1931色度
電流密度が3.00mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時のCIE1931色度座標(x、y)を分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)で計測した。
・電流効率L/J、及び電力効率η
電流密度が3.00mA/cmとなるように素子に電圧を印加した時の分光放射輝度スペクトルを上記分光放射輝度計で計測し、得られた分光放射輝度スペクトルから、電流効率(単位:cd/A)、及び電力効率η(単位:lm/W)を算出した。
・寿命LT90
電流密度が50mA/cmとなるように素子に電圧を印加し、初期輝度に対して輝度が90%となるまでの時間(単位:hr)を測定した。
【0186】
【表3】
【0187】
表2および表3から分かるように、第二発光層に第三ホスト材料H3を含む実施例1〜4では、第一発光層および第二発光層の膜厚を変更することなく、第三ホスト材料H3の濃度を変更するだけで、色度CIEを変更することができる。これに対し、第二発光層に第三ホスト材料H3を含まない比較例1〜3では、膜厚を変更することにより色度CIEを変更する。しかしながら、比較例1に比べて、第二発光層の膜厚を厚くした比較例2では、比較例1に比べて電圧が大きく上昇している。また比較例1に比べて、第一発光層の膜厚を薄くした比較例3では、膜厚を半分にしたにも関わらず、色度CIEに変化が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明の有機EL素子は、表示装置や照明装置における発光素子として利用できる。
【符号の説明】
【0189】
1,1A,1B,1C 有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)
2 基板
3 陽極
4 陰極
51 第一発光層(発光層)
52 第二発光層
6 正孔輸送層(正孔輸送帯域)
61 第一正孔注入層
62 第一正孔輸送層
63 第二正孔輸送層
7 電子輸送層(電子輸送帯域)
72 第一電子輸送層
73 第二電子輸送層
図1
図2
図3
図4