(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配管は、ポリエチレン管、又は前記ポリエチレン管に鋼帯とポリアリレート繊維とアラミド繊維との少なくとも1種を巻き付けて形成される補強帯状体を有するポリエチレン管であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の送水用断熱配管。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示されているような消火配管は、多くの場合、大規模プラントや原子力発電所などの大規模設備の消火用に用いられる。このような大規模設備においては、多くの場合に、配管が複雑に入り組んでいることから、簡便に施工が可能な施工方法と、これに用いられる構造を有する配水用ポリエチレン管の構造の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、簡便に施工可能で、耐火性能と断熱性能が良好な送水用断熱配管、及び当該送水用断熱配管の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る送水用断熱配管は、配管と、前記配管の外周側に設けられた断熱
部材と、前記断熱部材を被覆して、
前記断熱部材が内部に配置
される袋状樹脂部材である樹脂フィルムと、
前記袋状樹脂部材に被覆された前記断熱
部材の外周側に設けられた金属管と、を備え、前記断熱
部材は、
複数のシート
状断熱材
の積層体で
あり、前記シート状断熱材の両端部の突き合わせ部が円周方向の異なる位置に配置され、複数枚のシート状断熱材が配管の外周に巻付けられ、前記シート状断熱材の両端部の突き合わせ部の隙間からの熱侵入を緩和することができるように、前記各シート状断熱材の内周部の周長は、内周部の巻き付けに必要な長さよりも僅かに長く設定され、前記シート状断熱材の突き合わせ部が押し込まれることにより、前記シート状断熱材の両端部が断熱部材の長さ方向に圧縮されることで、圧縮部近傍の断熱材が僅かに高密度化することが可能なことを特徴とする。
【0008】
また、前記断熱部材は、5枚または6枚のシート状断熱材の突き合わせ部が円周方向の異なる位置に配置され、前記シート状断熱材の配置がシート状断熱材の枚数に応じて、それぞれ円周方向に所定の間隔で離間して配管に巻付けられていてもよい。上記構成によれば、
シート状断熱材の表面が樹脂フィルム層により被覆されているため、樹脂フィルム層を減圧するなどして容易に
シート状断熱材を圧縮して、配管と金属管との間に隙間なく充填することができ、耐火性能と断熱性能との両方を高めることができる。
【0009】
また、前記
袋状樹脂部材の内部に配置される断熱
部材は、水分を吸収
しても耐火性能が維持されるが、上述の通り、樹脂フィルム層により防水されているので、水分による断熱性能の低下を防止することができる。
【0010】
本発明では、断熱部材とは、袋状樹脂部材の内部に配置され、前記袋状樹脂部材により被覆された状態の複数のシート状断熱材の積層体を意味する。
【0011】
また、本発明に係る送水用断熱配管において、前記
断熱部材に用いる断熱材
料は、セラミックファイバー、生体溶解性ファイバー、ロックウール、シリカエアロジェルを含浸させたグラスウール、及びグラスウールのうちの少なくとも1種からなることが好ましい。袋状樹脂部材としては、透湿性の低い樹脂部材を使用するか、あるいはアルミニウム箔をラミネートした袋状樹脂部材またはアルミニウムを蒸着した袋状樹脂部材を用いてもよい。
【0012】
また、本発明に係る送水用断熱配管において、前記
断熱部材に用いる断熱材
料は、ロックウール、シリカエアロジェルを含浸させたグラスウール、及びグラスウールの少なくとも1種を、前記配管側に配置した第1断熱層と、セラミックファイバー及び生体溶解性ファイバーの少なくとも1種を、前記金属管側に配置した第2断熱層と、を有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る送水用断熱配管において、前記
断熱部材に用いる断熱材
料は、前記配管に最も近い側に、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、及び発泡プラスチック保温材の少なくとも1種からなる断熱層を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る送水用断熱配管において、前記樹脂フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミドの少なくとも1種の熱可塑樹脂からなる樹脂フィルム、又は前記樹脂フィルムにアルミニウムを積層したフィルムからなることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る送水用断熱配管において、前記配管は、ポリエチレン管、又は前記ポリエチレン管に鋼帯とポリアリレート繊維とアラミド繊維との少なくとも1種を巻き付けて形成される補強帯状体を有するポリエチレン管であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る送水用断熱配管において、前記金属管は、スパイラルダクト鋼管又はシームレス鋼管であることが好ましい。ここで、前記スパイラルダクト鋼管は、金属管に形成されたハゼ部から管内への水の侵入を防止するために、ハゼ部にパッキンを設けて防水処理をするか、あるいはハゼ部の外周に防水テープを巻くことで防水処理をすることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る送水用断熱配管の施工方法は、断熱
部材が
内部に圧縮状態で
配置された樹脂フィルムからなる袋状樹脂部材により被覆された複数のシート状断熱材の積層体が配管に巻き付けられた筒状部材を、準備する第1工程と、前記筒状部材を金属管の内部に挿入する第2工程と、前記第2工程終了後に、前記袋状樹脂部材
の内部の前記断熱部材を圧縮状態から解放させて、前記断熱
部材を
前記袋状樹脂部材を介して前記配管と前記金属管との間に充満させる第3工程と、を有す
る送水用断熱配管の施工方法
であって、前記第1工程において、それぞれの前記シート状断熱材の両端部の突き合わせ部を円周方向の異なる位置に所定距離ずらして配置することで、シート状断熱材の両端部の突き合わせ部の隙間からの熱侵入を緩和することができるシート状断熱材の内周部の周長を内周部の巻き付けに必要な長さよりも僅かに長く設定し、シート状断熱材の突き合わせ部を押し込んでシート状断熱材の両端部を断熱シート部材の長さ方向に圧縮して、圧縮部近傍の断熱材を高密度化させることを特徴とする送水用断熱配管の施工方法である。
【0018】
また、前記断熱部材は、5枚または6枚のシート状断熱材の突き合わせ部が円周方向の異なる位置に、シート状断熱材の枚数に応じて、所定の間隔で離間して配置されるように配管に巻付けられていてもよい。上記構成によれば、断熱
部材を構成する
シート状断熱材の表面が袋状の樹脂フィルム層で被覆
されているため、袋状樹脂部材
の内部を減圧するなどして容易に断熱
部材を圧縮して、配管と金属管との間に断熱
部材を隙間なく充填することができ、耐火性能と断熱性能との両方を高めることができる。
【0019】
また、断熱
部材は、水分を吸収しても耐火性能が維持されるが、吸水により断熱性能が低下するので、上述の通り、樹脂フィルム層により防水されていることから、水分による断熱性能の低下を防止することができる。ここで、袋状樹脂部材として透湿性の低い樹脂部材を使用するか、あるいはアルミニウム箔をラミネートした袋状樹脂部材またはアルミニウムを蒸着した袋状樹脂部材を用いれば、吸湿による断熱性能の低下を防止することができる。
【0020】
また、本発明に係る送水用断熱配管の施工方法において、前記第1工程は、前記断熱
部材が挿入された前記袋状樹脂部材
の内部を減圧して前記断熱部材を圧縮する工程と、前記断熱
部材を圧縮した後に、前記袋状樹脂部材を前記配管に巻きつけて、前記筒状部材を準備する工程と、記断熱
部材が挿入された前記袋状樹脂部材
の内部を減圧して前記断熱部材を圧縮する工程と、
前記断熱部材を圧縮した後に、前記袋状樹脂部材を前記配管に巻きつけて、前記筒状部材を準備する工程と、を有することが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る送水用断熱配管の施工方法において、前記第1工程は、前記断熱
部材が装入された前記袋状樹脂部材を前記配管に巻きつける工程と、前記袋状樹脂部材を前記配管に巻きつけた後に、前記袋状樹脂部材の内部を減圧して前記断熱部材を圧縮して、前記筒状部材を準備する工程と、
を有することが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る送水用断熱配管の施工方法において、前記第1工程では、前記袋状樹脂部材を外部から押し潰すことで前記断熱
部材を圧縮することが好ましい。
【0023】
また、本発明に係る送水用断熱配管の施工方法においては、 前記第1工程では、前記袋状樹脂部材
の内部を減圧後に、前記袋状樹脂部材が有する開口部を閉塞することで、圧縮された断熱
部材
を袋状樹脂部材の内部に密閉し、前記第3工程では、前記袋状樹脂部材が有する開口部を開放することで、前記袋状樹脂部材の密閉状態を開封して、前記断熱
部材を
前記袋状樹脂部材を介して前記配管と金属管との間に充満させることが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る送水用断熱配管の施工方法においては、前記第1工程では、前記袋状樹脂部材
の内部を脱気して減圧することで、前記断熱
部材を厚さ方向に圧縮し、前記第3工程では、前記袋状樹脂部材の開口部からの脱気を中止して、開口部から空気を導入することで、前記袋状樹脂部材の内部を大気圧、あるいは大気圧未満の所定圧力に復圧させ
ることで、前記圧縮された断熱
部材を厚さ方向に膨張させて、前記断熱
部材の密度を減圧前の断熱材密度より高密度化することが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る送水用断熱配管の施工方法においては、前記第1工程では袋状樹脂部材内を脱気しながら減圧して、前記袋状樹脂部材の減圧状態を保持することで、前記断熱部材を厚さ方向に圧縮した前記筒状部材を金属管の内部に挿入し、前記第3工程では、前記袋状樹脂部材の開口部からの脱気を中止して、開口部から空気を導入することで、前記袋状樹脂部材の内部を大気圧、あるいは大気圧未満の所定圧力に復圧させて、前記圧縮された断熱部材を厚さ方向に膨張させ、前記断熱部材の密度を減圧前の断熱材密度より高密度化することが好ましい。
【0026】
また、本発明に係る送水用断熱配管の施工方法においては、前記第2工程終了後に、前記袋状樹脂部材の密閉状態のまま、前記袋状樹脂部材のガス透過性を利用して、前記袋状樹脂部材の内部に空気を浸透させて、前記配管と前記金属管との間の前記袋状樹脂部材の内部に配置された断熱部材に空気を充満させる第3工程と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡便に施工可能で、耐火性能と断熱性能が良好な送水用断熱配管、及び当該送水用断熱配管の施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態(以下、本実施形態という。)について具体例を示して説明する。本実施形態は、配管が
内部に断熱部材を有する袋状樹脂部材で被覆された送水用断熱配管、及びこの送水用断熱配管の施工方法に関する。
【0030】
図1は、本実施形態に係る送水用断熱配管1の断面図である。送水用断熱配管1は、
図1に示すように、配管10と、配管10の外周側に設けられた断熱
部材20と断熱
部材20の外周側に設けられた金属管40と、を備える。
【0031】
配管10は、ポリエチレン管などの熱可塑性の樹脂管であって、所定の配水経路に沿って配置されるものである。具体的に、配管10の材料としては、ポリエチレン管を用いたり、或いは、このポリエチレン管に鋼帯とポリアリレート繊維とアラミド繊維との少なくとも1種を巻き付けて形成される補強帯状体を有するポリエチレン管を用いたりすることが好ましい。
【0032】
断熱
部材20は、シート状の断熱
部材であって、好ましくは、JISA1304(建築構造部分の耐火試験方法)の標準曲線に準じた30分加熱に対して耐火性能を満足するよう断熱材密度や厚さを適宜調整して用いることができる部材である。具体的には、断熱
部材20
に用いる断熱材料としては、例えば、セラミックファイバー、生体溶解性ファイバー、ロックウール、シリカエアロジェルを含浸させたグラスウール、及びグラスウールなどの、断熱性能および耐火性能の高い材料が用いられる。さらに具体的には、後述するように、断熱
部材20
に用いる断熱材料は、ロックウール、シリカエアロジェルを含浸させたグラスウール、及びグラスウールの少なくとも1種を、配管10側に配置した第1断熱層とし、セラミックファイバー及び生体溶解性ファイバーの少なくとも1種を、金属管40側に配置した第2断熱層とすることが好ましい。さらに、上記第1及び第2断熱層に加えて、断熱
部材20は、配管10に最も近い側に、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、及び発泡プラスチック保温材の少なくとも1種からなる
断熱材料を含む断熱層を有することができる。
【0033】
また、断熱
部材20は、
図1に示すように、樹脂フィルム30の層間に配置され、断熱
部材20の内層20aおよび外層20bが樹脂フィルム30により被覆されている。ここで、断熱
部材20を構成する複数枚(
図1の例では6枚)の
シート状断熱材200の両端部の突き合わせ部の配置は、
シート状断熱材200毎に所定間隔でずらして配置することが望ましい。このように
シート状断熱材200の両端部の突き合わせ部を配置することで、
シート状断熱材200の両端部の突き合わせ部の隙間からの熱侵入を、前記突き合わせ部の隙間を円周方向の同一位置に設けた場合よりも緩和することができる。また、
各シート状断熱材200の長さは、各
シート状断熱材200を配管に巻き付けた時に、各
シート状断熱材200の両端部の突き合わせ部に隙間ができないように、配管に巻き付け時の外周部の計算上の周長に合わせて設計するか、あるいは僅かに大きめの長さとする必要がある。このように、各
シート状断熱材200の長さを設計することで、各
シート状断熱材200の突き合わせ部の隙間の形成を防止することが可能となる。なお、この際に、各
シート状断熱材200の長さを巻き付け時の外周部の周長に一致させるか、外周部の周長より僅かに大きくするのは、内周部の周長に略一致させると各
シート状断熱材200の突き合わせ部に隙間ができ、前記突き合わせ部からの熱浸入が起こり易くなるためである。この時、各
シート状断熱材200の内周部の周長は、内周部の巻き付けに必要な長さよりも僅かに長くなるが、各
シート状断熱材200の突き合わせ部を押し込むことで、
シート状断熱材200の両端部が
シート状断熱材200の長さ方向に圧縮され、圧縮部近傍の断熱材が僅かに高密度化することで、各
シート状断熱材200の内周部に生じる余長を吸収することができる。
【0034】
樹脂フィルム30は、袋
状樹脂部材であって、具体的には後述するように、大気圧以下の所定圧力に保持されていることが好ましい。また、樹脂フィルム30の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミドの少なくとも1種の熱可塑樹脂からなるフィルムを用いることができる。具体的には、内層にポリエチレン、外層にポリアミドを配置した2層の袋状樹脂部材を用いることができる。また、樹脂フィルム30としては、透湿性の低い樹脂部材を使用するか、あるいはアルミニウム箔をラミネートした袋状樹脂部材またはアルミニウムを蒸着した袋状樹脂部材を用いてもよい。ここで、樹脂フィルム30は、耐久性を確保するため、フィルム厚さが0.05mm以上であることが好ましい。
【0035】
金属管40は、耐火性能を実現するため、上述したように
断熱部材20の外周側に設けられる金属製の管状体である。金属管40は、スパイラルダクト又はシームレス鋼管から構成されることが好ましい。
【0036】
次に、以上のような構成からなる送水用断熱配管1の具体的な施工方法について説明する。
【0037】
まず、
図2(A)に示すように、断熱
部材20を袋状の樹脂フィルム30で密閉にする、言い換えれば袋とじ(袋状の樹脂フィルム30の開口部分30aを閉じる)にする。本工程においては、断熱
部材20は、例えば
図2(B)に示すように6枚の断熱シート21〜26を用いる。後述の巻き付け工程から明らかなように、
シート状断熱材21〜26は、同一の形状であって、長手方向に少しずらす、特に
図2(B)に示すように、
シート状断熱材21、22、23、24、25、26の順番に、長手方向に1/6ずらして積層することが好ましい。
【0038】
なお、
図2(B)は、袋樹脂部材(樹脂フィルム30)を密閉する工程において、
シート状断熱材21〜26を配管10の外周に円周方向に間隔をずらして積層して巻き付けるため、
シート状断熱材21〜26の配置例を示した図である。言い換えれば、
図2(B)は、配管10に巻き付ける前の密閉時の袋樹脂部材(樹脂フィルム30)中の
断熱部材20を構成する各
シート状断熱材21〜26であって、各
シート状断熱材21〜26の両端部が当接する突き合わせ部の隙間の配置を所定間隔でずらした配置を示している。このように、
シート状断熱材の円周方向の両端部が当接する突き合わせ部の隙間の配置を、
シート状断熱材の積層枚数に合わせて各層毎に円周方向に等角度になるようにずらすことができる。具体的には、6枚の
シート状断熱材21〜26を配管10に巻き付ける場合に、60°間隔で各
シート状断熱材21〜26の突き合わせ部を配置する断熱材の構造が得られる。この場合、
シート状断熱材巻き付け時の各層毎の周長の増加に対応するように、積層する各
シート状断熱材21〜26の長さは内層から外層に向かって順にシート厚さの2倍ずつ増加させる必要がある。このように
シート状断熱材21〜26の両端部の突き合わせ部を所定間隔でずらして設けることで、送水用断熱配管1が加熱された時に、
シート状断熱材21〜26の長手方向の両端部の突き合わせ部の隙間からの熱侵入を最も効率的に防止できる。
【0039】
なお、断熱
部材20を構成する各層(本例では6層)については、各層を構成する
シート状断熱材が必ずしも1枚のシート部材である場合に限らず、任意の枚数のシート部材を長手方向につなぎ合わせたものであってもよい。例えば
図2(B)に示す例では、最外層の
シート状断熱材26は、最内層の
シート状断熱材21と比べて長くなるため、2枚のシート部材から構成されてもよい。このように任意の枚数のシート部材をつなぎ合わせることで、各層専用の長さのシートを用意しなくてもよく、また、任意の口径の配管に対して容易に隙間無く断熱材を巻き付けることができる。ここで、本実施形態における「つなぎ合わせる」とは、必ずしも接着材などで接合することに限らず、付き合わせて配置してもよい。このため、
シート状断熱材26として任意枚数のシート部材を長手方向につなぎ合わせて使用する場合に、隣接する層間の
シート状断熱材の突き合わせ部(つなぎ合わせ部を含む)の配置が円周方向の同一位置とならないようにする必要がある。
【0040】
図3は、袋状樹脂部材
30(樹脂フィル
ム)を圧縮する工程の説明図である。続いて、
図3に示すように、袋状
樹脂部材30で断熱
部材20を密閉した状態で、袋
状樹脂
部材30の内部を減圧することにより、断熱
部材20を圧縮する。具体的に、樹脂フィル
ムからなる袋状樹脂部材
30に設けられた開口部35に、吸引装置50のノズル55を挿入し、ノズル55により袋状の樹脂フィルム30内部の空気を吸引すること、すなわち、
袋状樹脂
部材30内を脱気することで減圧して断熱
部材20を圧縮する。
【0041】
続いて、
図4に示すように、断熱
部材20の長手方向の端部から延びた樹脂フィルム30、すなわち
シート状断熱材21の
シート状断熱材22が重畳していない側の短辺21aから延びた樹脂フィルム30と、配管10とをテープ36で貼り合わせる。そして配管10を回転させることで、配管10に
シート状断熱材21、22、23、24、25、26の順番で巻き付ける。
【0042】
ここで、配管10に巻き付けたときの
シート状断熱材21〜26の断面構造を
図5に示す。
図5に示すように、
シート状断熱材21〜26の順番に、円周方向に60°ずつずらしながら最内周から最外周に亘って巻き付けられることとなる。これは、上述したように、
シート状断熱材21、22、23、24、25、26の順番に、長手方向の両端部が当接する突き合わせ部の隙間211、221、231,241,251,261を、
図5に示すように各層毎に60°ずつずらして配管10の外周に円周方向に円周の(1/6)分割した位置に配置されるように積層しているためである。
図5では、6層の
シート状断熱材を巻き付けた場合を示したが、配管に対する
シート状断熱材の巻き付け層数は、6層に限らず5層としてもよく、例えば、各層の
シート状断熱材を
突き合わせや接着を行わずに、1枚で形成して5層の
シート状断熱材を巻き付けた場合には、各層の断熱シートの両端部の突き合わせ部の配置間隔は、72°間隔となる。このように、
シート状断熱材の突き合わせ部の配置間隔は、断熱材の種類や被覆厚さなどにより適宜変更することができる。
【0043】
なお、複数枚の断熱シートを厚さ方向に重畳させずに配管に巻き付けたり、層厚の1枚の断熱シートを配管に巻き付けることで、断熱層を形成してもよいが、次の理由から、
シート状断熱材21、22、23、24、25、26の順番に、長手方向に
シート状断熱材の長さの(1/6)ずつずらして積層することが好ましい。ここで、複数枚の
シート状断熱材を重畳させる場合であっても、
シート状断熱材21、22、23の3枚をこの順番に重畳させて袋状樹脂部材に詰めて配管10に巻き付けて減圧後密閉して、さらに、
シート状断熱材24、25、26の3枚をこの順番に重畳させて袋状樹脂部材に詰めて配管10に巻き付け減圧後密閉して使用してもよい。このように、複数の袋状樹脂部材に断熱材を別々に詰めることで、断熱材の密度を、それぞれの袋状樹脂部材によって異なるものとすることができる。
【0044】
また、
シート状断熱材21〜26を巻き付けた場合には、合計6枚の断熱材を厚さ方向に重畳させずに6重に巻き付けた場合に比べて、断熱部材20の厚みにムラが生じることなく、断熱部材20を配管10に巻き付けることができる。つまり、径方向の厚みにムラが生じないので、金属管40に対して配管10が偏心することを防止することができる。
【0045】
さらに、層厚の1枚の断熱シートを断熱材として配管に巻き付けた場合には、
シート状断熱材の長手方向の両端部に隙間が生じ、当該隙間が熱の伝達経路となることから断熱性能が低下してしまう。これに対して
シート状断熱材21〜26を巻き付けた場合には、個々の
シート状断熱材21〜26の長手方向の両端部に隙間が生じうるが、最外周(
断熱シート26)を除いた
シート状状断熱材で覆われるため、断熱性能の低下を抑制することができる。ここで、断熱シートは、
図1のように
シート状断熱材200各層を所定間隔でずらして配置することもできるが、より望ましくは、
図6に示すように各層の
シート状断熱材21〜26の配置間隔を最大化するために、
シート状断熱材21〜26をそれぞれ60°ずつずらして配置するのが望ましい。このようにすることで、
シート状断熱材21〜26の各層の長手方向の両端部の隙間が最も離隔した位置に設けることができるので、
シート状断熱材21〜26の両端部の隙間からの熱侵入をより効果的に防止することができる。
【0046】
続いて、
図6に示すように、
袋状樹脂部材30の内部に配置された断熱部材20を配管10に巻き付けた筒状部材を金属管40の内部に挿入し、袋状の樹脂フィルム30に装入された
断熱部材20を圧縮状態から解放させて、
袋状樹脂部材30に被覆された断熱部材20を配管10と金属管40との間に充満させる。金属管40は、互いに隣接する金属管体のハゼ部45、45を接続して形成された金属製の管状体である。
図6は、ハゼ部45が管軸方向に対して螺旋状に設けた例を示している。ここで、ハゼ部45から管内への水の侵入を防止するために、ハゼ部45にパッキンを設けて防水処理をするか、あるいはハゼ部45の外周に防水テープを巻くことで防水処理をすることが好ましい。なお、金属管40としては、ハゼ部45を管軸方向に対して垂直に短尺で設けた金属管やシームレス鋼管を用いることもできる。なお、外管にスパイラルダクト鋼管を用いると、ハゼ部45により、金属管40の長手方向にリブが形成され、管の断面が補強されることから、金属管40が薄肉高剛性のものを得ることができる。なお、金属管40の耐食性を向上させるためには、金属管40の表面に亜鉛メッキを施した亜鉛めっき鋼板を金属管40の素材として用いることが望ましい。
【0047】
具体的には、
袋状樹脂部材30に被覆された断熱部材20を配管10と金属管40との間に充満させるため、袋状の樹脂フィルム30
の内部を減圧後に、袋状の樹脂フィルム30が有する開口部35を開放することで、袋状の樹脂フィルム30の密閉状態を開封する。すなわち、袋状の樹脂フィルム30の開口部35からの脱気を中止して、開口部35から空気を導入することで、袋状の樹脂フィルム30の内部を大気圧、あるいは大気圧未満の所定圧力に復圧させることで、圧縮された
袋状樹脂部材に被覆された断熱
部材20を厚さ方向に膨張させて、断熱
部材20の密度を減圧前より高密度化する。より具体的には、耐火材は、減圧前に比べて圧縮率が5%〜80%の範囲となるように圧縮することが好ましい。これは、減圧前に比べて圧縮率が80%を超えて圧縮しすぎると、繊維が破断するなどして断熱性能ないし耐火性能が損なわれてしまうことがあり、5%以下の圧縮率であると、復圧時の断熱材の膨張量が不安定になるからである。このようにして圧縮率が5%〜80%の範囲となるように圧縮することにより、後述の工程で
袋状樹脂部材に被覆された断熱
部材20を配管10と金属管40との間に高密度に充填でき、さらに外圧強度の向上も図ることができる。また、
袋状樹脂部材に被覆された断熱
部材20の密度は、送水用断熱配管1の外径や断熱性能の設計に合わせて適宜調整することができる。
【0048】
具体的に
袋状樹脂部材30に被覆された断熱
部材20を配管10と金属管40との間に充満させるには、樹脂フィルム30の開口部35からの脱気を中止して開口部35から空気を導入する場合に限定されない。例えばガス透過性を有する樹脂フィルムを用いれば、開口部がなくても、時間の経過により
樹脂フィルムを介して断熱
部材を配管と金属管との間に充満することができる。具体的には、断熱
部材を配管に巻き付けた筒状部材を金属管の内部に挿入してから所定の時間が経過すれば、樹脂フィルムのガス透過性により空気が導入され減圧状態が解放することで、断熱
部材を配管と金属管との間に空気を充満することができる。ガス透過性が大きい樹脂としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチエン等を用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリスチレン(PS)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)等を用いる。
【0049】
以上のようにして、上記
図2〜
図6を用いて説明した方法により施工される送水用断熱配管1は、断熱材の表面が樹脂フィルム層により被覆されているため、樹脂フィルム層を減圧するなどして容易に断熱
部材を圧縮して、配管と金属管との間に隙間なく充填することができ、耐火性能と断熱性能とをともに高めることができる。
【0050】
また、
袋状樹脂部材の内部に配置される断熱
部材は、水分を吸収しても耐火性能が維持されるが、吸水により断熱性能が低下するので、上述の通り、樹脂フィルム層により防水されていることから、水分による断熱性能の低下を防止することができる。ここで、袋状樹脂部材として透湿性の低い樹脂部材を使用するか、あるいはアルミニウム箔をラミネートした袋状樹脂部材またはアルミニウムを蒸着した袋状樹脂部材を用いれば、吸湿による断熱性能の低下を防止することができる。
【0051】
また、配管10に近い側の
断熱部材については、配管10から離れた金属管40に近い側の
断熱部材に比べて耐熱温度が低い材料を用いても、断熱
部材20全体としての耐熱性能が大きく低下することはないことから、耐熱温度によらず熱伝導率が低い材料を用いることが好ましい。一方、金属管40に近い側の断熱
部材は、配管10に近い側の断熱
部材に比べて熱伝導率が高くても、耐熱温度が高い材料を用いることが好ましい。
【0052】
例えば、配管10の最も近い側に設けられる
シート状断熱材21、22については、
シート状断熱材23〜26と比較して、耐熱温度が低いが熱伝導率が低い材料、具体的にはポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、及び発泡プラスチック保温材の少なくとも1種の材料を用いる。
シート状断熱材21、22の次に配管10に近い側のシート状断熱材23、24については、
シート状断熱材25、26と比較して、耐熱温度が低いが熱伝導率が低い材料、具体的には、ロックウール、シリカエアロジェルを含浸させたグラスウール、及びグラスウールの少なくとも1種の材料を用いる。配管10から離れた金属管40に近い側に設けられる
シート状断熱材25、26については、セラミックファイバー及び生体溶解性ファイバーの少なくとも1種の材料を用いる。
【0053】
このようにして、送水用断熱配管1では、上述したように、異なる材料からなる断熱
部材を組み合わせることで、耐熱性能と断熱性能の両方を維持しながら、例えば
シート状断熱材21、22のシート厚みを薄くできる。つまり、耐熱性能と断熱性能の両方を維持しながら、断熱
部材20全体の厚みを薄くすることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、上記
図2〜
図6を用いて説明した方法に限らず、種々の変更が可能である。例えば、袋状の樹脂フィルム30を配管10に巻きつけた後に、袋状の樹脂フィルム30
の内部を減圧して
袋状樹脂部材の内部の断熱
部材20を圧縮して筒状部材を準備してもよい。
【0055】
また、断熱
部材20を圧縮する工程については、袋状の樹脂フィルム30
の内部を減圧する場合に限らず、袋
状の樹脂フィルム30を外部から押し潰すことで断熱部材20を圧縮してもよい。
【0056】
また、断熱
部材20を配管10に巻き付けた筒状部材を金属管40の内部に挿入する場合に限らず、金属管として、例えば、
図7に示すように、フランジ付きの断面半円形の分割管状体51、52を用いてもよい。つまり、断熱
部材20を
内部に含む袋状樹脂部材30を配管10に巻き付けた筒状部材を、上下方向からそれぞれ分割管状体51、52で挟み込む。そして、分割管状体51のフランジ部511と分割管状体52のフランジ部512とを突き合わせた状態で、ボルトとナットからなる締結部材60で締結してもよい。このようにして分割管状体51、52を用いることで、例えば収縮させた
袋状樹脂部材30の内部の断熱
部材20が膨張し始めても確実に挟み込むことができる。
【0057】
さらに、断熱
部材20は、配管10と金属管40との間に設けられていれば、
袋状樹脂部材30の他に、他の部材が介在していてもよい。例えば断熱
部材20と配管10との間、或いは断熱
部材20と金属管40との間に、衝撃吸収材を設けてもよい。