(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分子篩炭素が充填された2基以上の吸着塔に窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスを加圧下で供給し、各吸着塔が吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を繰り返し、窒素ガスを製品ガスとして分離する窒素ガス分離方法であって、
吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔の塔中間部からガスを導出して、脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔へガスを移動させるとともに、前記均圧工程開始から遅れて、前記吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口付近としての原料ガス入口または吸着塔における吸着塔容積の原料ガス入口側に近い20%までの範囲からガスの一部を放出し、
前記均圧工程が終了する前に、前記原料ガス入口付近としての原料ガス入口または吸着塔における吸着塔容積の原料ガス入口側に近い20%までの範囲からの前記ガスの放出を停止する窒素ガス分離方法。
吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔の製品ガス出口から、脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔の製品ガス出口への連通を追加して、吸着工程が終了した吸着塔のガスを脱着工程が終了した吸着塔へ移動させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒素ガス分離方法。
前記吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔の塔中間部からガスを導出して、該ガスを脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔へ移動させる際に、前記吸着工程が終了した吸着塔の塔中間部から導出されたガスを分流して、前記脱着工程が終了した吸着塔の塔中間部と原料ガス入口又はその付近とから当該吸着塔にガスを導入する、請求項1または2に記載の窒素ガス分離方法。
吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔の製品ガス出口から、脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔の製品ガス出口への連通を追加して、吸着工程が終了した吸着塔のガスを脱着工程が終了した吸着塔へ移動させる、請求項5に記載の窒素ガス分離方法。
前記均圧工程において、吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口付近からガスの一部を放出するガス放出率を2〜27%の範囲とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の窒素ガス分離方法。
前記第1吸着塔との接続端が前記中間部連通ラインの接続端よりも原料入口に近い位置にあり、前記第2吸着塔との接続端が前記中間部連通ラインの接続端よりも原料入口に近い位置にある下側連通ラインが設けられ、
前記制御部は、前記均圧制御に際し、前記中間部連通ラインの前記バルブを開放するとともに、前記下側連通ラインのバルブを開放する制御を行う請求項9に記載の窒素ガス分離装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図6に示されるように、特許文献1では、均圧工程において、吸着工程が終了した吸着塔と脱着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口を相互に連通しているため、吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口付近にある酸素濃度が高いガスは、脱着工程が終了した吸着塔に移動しながら、その一部が系外に放出される。従って、この方法では、酸素濃度の高いガスも脱着工程が終了した吸着塔に回収されるため、吸着塔から取出される製品ガスの窒素純度が低下するという問題があり、酸素濃度が高いガスを系外に放出する効果を活かしきれていなかった。
【0006】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、均圧工程において、酸素濃度の高いガス以外のガスを脱着工程が終了した吸着塔に回収することにより、高純度の窒素ガスを得る方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが鋭意研究した結果、吸着工程が終了した吸着塔のガスの一部を放出する手段と、吸着工程が終了した吸着塔のガスを脱着工程が終了した吸着塔へ移動させる手段をそれぞれ独立させることにより、酸素濃度の高いガスを脱着工程が終了した吸着塔に回収しないという、従来技術では不可能であった方法を見出して本発明を完成させた。
【0008】
従って、上記課題を解決するため、本発明は以下の方法及び装置を有する。
【0009】
本発明は、分子篩炭素が充填された2基以上の吸着塔に窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスを加圧下で供給し、各吸着塔が吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を繰り返し、窒素ガスを製品ガスとして分離する窒素ガス分離方法であって、吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔の塔中間部からガスを導出して、脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔へガスを移動させるとともに、前記均圧工程開始から遅れて、前記吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口付近としての原料ガス入口または吸着塔における吸着塔容積の原料ガス入口側に近い20%までの範囲からガスの一部を放出
し、前記均圧工程が終了する前に、前記原料ガス入口付近としての原料ガス入口または吸着塔における吸着塔容積の原料ガス入口側に近い20%までの範囲からの前記ガスの放出を停止する窒素ガス分離方法である。
【0010】
前記窒素ガス分離方法において、前記吸着工程が終了した吸着塔のガスの一部を放出する原料ガス入口付近が原料ガス入口でもよい。
【0011】
前記窒素ガス分離方法において、吸着工程が終了した吸着塔の塔中間部から脱着工程が終了した吸着塔にガスを移動させる連通ラインを2ライン以上有し、前記2以上の連通ラインを通して、吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔から導出されたガスが、脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔に流入した際に、ガス濃度の分布が上下で逆転しないように該吸着塔にガスを移動させてもよい。
【0012】
この方法では、均圧工程において、吸着工程が終了した吸着塔から導出されたガスが、脱着工程が終了した吸着塔に流入した際に、ガス濃度の分布が上下で逆転しない。このため、その次の吸着工程では、吸着塔内において上側ほど酸素ガス濃度が低い分布となる。したがって、吸着工程において、吸着塔から排出される窒素ガス濃度をより高くすることができる。
【0013】
前記窒素ガス分離方法において、吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔の製品ガス出口から、脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔の製品ガス出口への連通を追加して、吸着工程が終了した吸着塔のガスを脱着工程が終了した吸着塔へ移動させてもよい。
【0014】
上記の窒素ガス分離方法によれば、均圧工程において、酸素濃度の高いガス以外を脱着工程が終了した吸着塔に回収できるため、製品ガスの窒素が高純度となり、窒素ガス分離方法を用いた窒素ガス分離装置の性能向上が達成される。よって、従来よりもエネルギー効率が高く、小型化された窒素ガス分離装置を提供することができる。
【0015】
但し、上記方法による窒素ガス分離装置は、吸着塔に連通する配管が増加し、吸着塔への配管施工が困難になるだけでなく、装置のコストアップになる。従って、上記構成よりも簡素な配管構造についても検討し、従来よりも高性能な窒素ガス分離装置となる分離方法についても見出した。
【0016】
簡素な配管構造の窒素ガス分離装置とするため、本発明は以下の方法を有する。
【0017】
前記吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔の塔中間部からガスを導出して、該ガスを脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔へ移動させる際に、前記吸着工程が終了した吸着塔の塔中間部から導出されたガスを分流して、前記脱着工程が終了した吸着塔の塔中間部と原料ガス入口又はその付近とから当該吸着塔にガスを導入してもよい。
【0018】
前記窒素ガス分離方法において、吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔の製品ガス出口から、脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔の製品ガス出口への連通を追加して、吸着工程が終了した吸着塔のガスを脱着工程が終了した吸着塔へ移動させてもよい。
【0019】
上記の簡素な配管構造の窒素ガス分離装置となる窒素ガス分離方法でも、均圧工程において、酸素濃度の高いガス以外を脱着工程が終了した吸着塔に回収できるため、従来よりも高性能な窒素ガス分離装置を提供することができる。
【0020】
上記均圧工程において、吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口付近からガスの一部を放出するガス放出率を2〜27%の範囲とすることが好ましい。ここで、ガス放出率とは、均圧工程において、吸着工程が終了した吸着塔から脱着工程が終了した吸着塔へ移動させるガス量に対する、吸着工程が終了した吸着塔から一部放出されるガス量の比率である
。
【0021】
また、本発明は、分子篩炭素が充填された第1吸着塔と、分子篩炭素が充填された第2吸着塔と、前記第1吸着塔及び第2吸着塔において吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を繰り返し行うための制御を行う制御部と、を有し、原料ガスから窒素ガスを製品ガスとして分離する窒素ガス分離装置であって、前記制御部は、前記第1吸着塔及び前記第2吸着塔のうち吸着工程が終了した吸着塔での均圧工程において当該吸着塔における塔中間部からガスを導出して、脱着工程が終了して均圧工程にある吸着塔へガスを移動させるとともに、前記均圧工程開始から遅れて、前記吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口付近としての原料ガス入口または吸着塔における吸着塔容積の原料ガス入口側に近い20%までの範囲からガスの一部を放出
し、前記均圧工程が終了する前に、前記原料ガス入口付近としての原料ガス入口または吸着塔における吸着塔容積の原料ガス入口側に近い20%までの範囲からの前記ガスの放出を停止する均圧制御を行う窒素ガス分離装置である。
【0022】
前記窒素ガス分離装置によれば、均圧工程において、吸着塔の塔中間部からガスを抜くため、酸素濃度の高いガス以外を脱着工程が終了した吸着塔に回収することができる。このため、製品ガスの窒素が高純度となり、窒素ガス分離方法を用いた窒素ガス分離装置の性能向上が達成される。よって、従来の分離装置よりもエネルギー効率が高く、またより小型の分離装置とすることができる。
【0023】
前記窒素ガス分離装置において、バルブが設けられ、前記第1吸着塔の塔中間部と前記第2吸着塔の塔中間部とを接続する中間部連通ラインと、バルブが設けられ、前記第1吸着塔の原料ガス入口又はその付近に接続された第1ガス放出路と、バルブが設けられ、前記第2吸着塔の原料ガス入口又はその付近に接続された第2ガス放出路と、を備えてもよい。この場合、前記制御部は、前記均圧制御に際し、前記中間部連通ラインの前記バルブを開放するとともに、前記第1ガス放出路及び前記第2ガス放出路のうち前記吸着工程が終了した吸着塔に接続されたガス放出路のバルブを開放する制御を行ってもよい。
【0024】
この装置では、均圧工程において、酸素ガス濃度の高いガスをガス放出路から確実に排出することができる。
【0025】
また、前記窒素ガス分離装置において、前記中間部連通ラインから分岐する分岐ラインが設けられていてもよい。この場合、前記分岐ラインは、バルブを有し前記第1吸着塔の原料ガス入口又はその付近にガスを導入する第1導入ラインと、バルブを有し前記第2吸着塔の原料ガス入口又はその付近にガスを導入する第2導入ラインとを含んでいてもよい。また、前記制御部は、前記均圧制御に際し、前記中間部連通ラインの前記バルブを開放するとともに、前記第1導入ライン及び前記第2導入ラインのうち前記脱着工程が終了した吸着塔に接続されたラインのバルブを開放する制御を行ってもよい。
【0026】
この窒素ガス分離装置では、中間部連通ラインから分岐する分岐ラインが設けられるため、第1吸着塔からガスを導出させるラインと第2吸着塔から導出させるラインを別個に設ける必要がない。このため、配管構成の簡素化を図ることができる。この分離装置では、吸着工程が終了した吸着塔から脱着工程が終了した吸着塔へガスを移動させる際に、吸着工程が終了した吸着塔の塔中間部から導出されたガスは、分岐ラインによって分流される。そして、脱着工程が終了した吸着塔においては、当該吸着塔の塔中間部と原料ガス入口又はその付近とからガスが導入される。
【0027】
また、前記窒素ガス分離装置において、前記第1吸着塔との接続端が前記中間部連通ラインの接続端よりも原料入口に近い位置にあり、前記第2吸着塔との接続端が前記中間部連通ラインの接続端よりも原料入口に近い位置にある下側連通ラインが設けられていてもよい。この場合、前記制御部は、前記均圧制御に際し、前記中間部連通ラインの前記バルブを開放するとともに、前記下側連通ラインのバルブを開放する制御を行ってもよい。
【0028】
この窒素ガス分離装置では、第1吸着塔におけるガス濃度の分布が上下に逆転しないように第2吸着塔にガスを移動させることができ、また第2吸着塔におけるガス濃度分布が上下に逆転しないように第1吸着塔にガスを移動させることができる
。
【0029】
上記均圧工程において、吸着工程が終了した吸着塔の塔中間部とは、吸着塔容積の原料ガス入口側に近い20%と製品ガス出口側に近い20%を除いた範囲となる、吸着塔胴体の連通箇所である。脱着工程が終了した吸着塔の塔中間部とは、吸着塔容積の原料ガス入口側に近い20%と製品ガス出口側に近い20%を除いた範囲となる、吸着塔胴体の連通箇所である。また、吸着工程が終了した吸着塔のガスの一部を放出する原料ガス入口付近とは、原料ガス入口または吸着塔容積の原料ガス入口側に近い20%までの範囲となる、吸着塔胴体の放出箇所である。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明の窒素ガス分離方法及び装置によれば、高純度の窒素ガスを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態を用いた窒素ガス分離装置の概略図である。
図1に示されるように、本実施形態の窒素ガス分離装置10は吸着塔(第1吸着塔)1Aと、吸着塔(第2吸着塔)1Bと、製品槽2と、バルブCV1〜CV13とを備え、各構成要素は配管によって接続されている。バルブCV1〜CV13は、それぞれ独立に制御される開閉バルブ(たとえば電磁弁)である。
【0034】
具体的には、バルブCV1およびCV3は、それぞれ吸着塔1Aおよび吸着塔1Bに供給される原料ガスが通過する配管経路である原料ガス供給路L1を開閉する入口弁である。バルブCV2およびCV4は、それぞれ吸着塔1Aおよび吸着塔1Bから放出されるガスが通過する配管経路であるガス放出路L2を開閉する放出弁である。バルブCV5およびCV6は、それぞれ吸着塔1Aおよび吸着塔1Bから取り出される製品ガスが通過する配管経路である製品ガス排出路L3を開閉する出口弁である。製品ガス排出路L3には、製品槽2が設けられている。バルブCV9〜CV13は、吸着塔1Aと吸着塔1Bの間を移動するガスが通過する配管経路を開閉する均圧弁である。バルブCV7およびCV8は、それぞれ吸着塔1Aおよび吸着塔1Bから一部放出されるガスが通過する配管経路であるガス放出路L7,L8を開閉する放出弁である。ガス放出路L7,L8は、一端が吸着塔1A,1Bの原料ガス入口に繋がる入口ラインL1A,L1Bにそれぞれ接続されている。入口ラインL1A,L1Bの他端には、ガス供給路L1及びガス放出路L2が接続されている。バルブCV9が設けられた配管経路である出口連通ラインL9は、その一端が吸着塔1Aの製品ガス出口に接続され、他端が吸着塔1Bの製品ガス出口に接続されている。バルブCV10が設けられた配管経路である連通ライン(中間部連通ライン)L10は、その一端が吸着塔1Aの塔中間部に接続され、他端が吸着塔1Bの塔中間部に接続されている。連通ラインL10の前記一端は、前記他端と同じ高さ又は前記他端よりも高い位置となっている。バルブCV11が設けられた配管経路である連通ライン(中間部連通ライン)L11は、その一端が吸着塔1Aの塔中間部に接続され、他端が吸着塔1Bの塔中間部に接続されている。連通ラインL11の前記一端は、前記他端と同じ高さ又は前記他端よりも低い位置となっている。バルブCV12が設けられた配管経路である連通ラインL12は、その一端が吸着塔1Aの塔中間部に接続され、他端が吸着塔1Bの原料ガス入口又はその付近に接続されている。連通ラインL12は、吸着塔1Aとの接続端が連通ラインL10の接続端よりも原料入口に近い位置にあり、吸着塔1Bとの接続端が連通ラインL10の接続端よりも原料入口に近い位置にある下側連通ラインとして機能する。バルブCV13が設けられた配管経路である連通ラインL13は、その一端が吸着塔1Bの塔中間部に接続され、他端が吸着塔1Aの原料ガス入口又はその付近に接続されている。連通ラインL13は、吸着塔1Aとの接続端が連通ラインL11の接続端よりも原料入口に近い位置にあり、吸着塔1Bとの接続端が連通ラインL11の接続端よりも原料入口に近い位置にある下側連通ラインとして機能する。これらバルブCV1〜CV13は、タイマー設定された制御装置(制御部)20により電気的に開閉を制御することができる。
【0035】
吸着塔1Aおよび吸着塔1Bには、それぞれ酸素ガスを吸着する分子篩炭素が充填されている。分子篩炭素とは、多数の細孔を備える木炭、石炭、コークス、やし殻、樹脂、ピッチなどの原料を高温で炭化し、細孔径を約3〜5Åに調整した木質系、石炭系、樹脂系、ピッチ系などの吸着剤である。このような分子篩炭素は、窒素ガスよりも酸素ガスを吸着しやすい性質を有しており、空気等の窒素ガスと酸素ガスとを含む混合気体から、酸素ガスを選択的に吸着する性質を有する。また、分子篩炭素は、高圧条件下において酸素ガスの吸着能が増大する。そのため、分子篩炭素は、吸着塔内を加圧することにより酸素ガスを多く吸着することができ、その後、吸着塔内を減圧することにより酸素ガスを脱着させることができる。このような分子篩炭素の具体例としては、たとえばクラレケミカル(株)製の商品名GN−UC−H、GN−UC−S、1.5GN−H、1.5GN−Sなどが挙げられる。窒素ガス分離装置10では、吸着塔1Aおよび吸着塔1Bにより酸素ガスの吸着および脱着を交互に繰り返し、原料ガスから窒素ガスを分離濃縮して製品ガスを調製する。
【0036】
図1に加えて
図2を参照し、窒素ガス分離装置10を動作させることによって、原料ガスから窒素ガスを分離濃縮する窒素ガス分離方法におけるガスの流れを具体的に説明する。
図2は、原料ガスから窒素ガスを分離する工程を示すフロー図である。それぞれの吸着塔1A,1Bにおいて、吸着工程、均圧工程(第1均圧工程)、脱着工程、均圧工程(第2均圧工程)を1サイクルとする工程を繰り返し、窒素ガスを製品ガスとして分離する。その際、一方の吸着塔が吸着工程に付されている間、他方の吸着塔は、脱着工程に付されるよう上記した各バルブが制御装置20により制御される。
【0037】
具体的には、
図2に示されるように、吸着塔1Aが吸着工程に付されている間、吸着塔1Bは脱着工程に付される((i)の工程)。また、吸着塔1Aが第1均圧工程に付されている間、吸着塔1Bは第2均圧工程に付され((ii)の工程)、吸着塔1Aが脱着工程に付されている間、吸着塔1Bは吸着工程に付され((iii)の工程)、吸着塔1Aが第2均圧工程に付されている間、吸着塔1Bは第1均圧工程に付される((iv)の工程)。以下、それぞれの工程について詳細に説明する。
【0038】
<(i)の工程>
(i)の工程は、吸着塔1Aが吸着工程に付され、吸着塔1Bが脱着工程に付される工程である。具体的には、(i)の工程では、バルブCV2、バルブCV3およびバルブCV6〜CV13が閉止され、バルブCV1、バルブCV4およびバルブCV5が開放される。そのため、窒素ガス分離装置10に供給される原料ガスは、吸着塔1Aに供給される。吸着塔1Aでは、供給された原料ガスのうち、酸素ガスが吸着され、分離された窒素ガスが製品槽2に送られる。吸着塔1A内では、ガスが上に向かうにつれて酸素ガスが次第に吸着されるため、上側ほど窒素ガス濃度が高くなる濃度分布となる。そして、所定の窒素ガス濃度となった製品ガスが製品ガス排出路L3を通して製品槽2に送られる。製品槽2は、分離された窒素ガスを製品ガスとして適宜貯留する一次貯留空間を有する箱体である。一方、吸着塔1Bのガスは原料入口から導出されて入口ラインL1B及びガス放出路L2を通して窒素ガス分離装置10の外部(通常は大気中)に放出され、吸着した酸素ガスを脱着して分子篩炭素が再生される。
【0039】
<(ii)の工程>
(ii)の工程は、吸着塔1Aが第1均圧工程に付され、吸着塔1Bが第2均圧工程に付される工程である。具体的には、(ii)の工程では、制御装置20は、バルブCV1〜CV6、バルブCV8、バルブCV11およびバルブCV13を閉止し、バルブCV7、バルブCV9、バルブCV10およびバルブCV12を開放する均圧制御を行う。そのため、吸着塔1Aの製品ガス出口と吸着塔1Bの製品ガス出口がバルブCV9を介して連通する出口連通ラインL9と、吸着塔1Aの塔中間部と吸着塔1Bの塔中間部がバルブCV10を介して連通する連通ライン(中間部連通ライン)L10と、吸着塔1Aの塔中間部と吸着塔1Bの原料ガス入口又はその付近がバルブCV12を介して連通する連通ライン(第1連通ライン)L12とにより、吸着塔1Aのガスが吸着塔1Bに移動する。つまり、第1実施形態では、吸着工程が終了した吸着塔1Aの塔中間部から脱着工程が終了した吸着塔1Bにガスを移動させる連通ラインが2つ以上設けられている。
【0040】
吸着塔1Aの塔中間部から流れ出たガスは、連通ラインL10を通して吸着塔1Bの塔中間部に導入される。また、吸着塔1Aの塔中間部から流れ出たガスは、連通ラインL12を通して吸着塔1Bの原料入口又はその付近に導入される。連通ラインL10,L12の流入端及び流出端の位置関係を比較すると、連通ライL10の流入端が連通ラインL12の流入端よりも高い位置で吸着塔1Aに接続されており、連通ラインL10の流出端が連通ラインL12の流出端よりも高い位置で吸着塔1Bに接続されている。言い換えると、吸着塔1Aに対する連通ラインL10及び連通ラインL12の接続位置の上下関係が、吸着塔1Bに対する連通ラインL10及び連通ラインL12の接続位置の上下関係と一致している。このため、
図3に示すように、吸着塔1A内でより窒素ガス濃度が高くなっているガス(
図3中のG1)が、吸着塔1B内のより上側(製品ガス排出口に近い側)に導入され、また、吸着塔1A内でより窒素ガス濃度が低くなっているガス(
図3中のG3)が、吸着塔1B内のより下側(製品ガス排出口に遠い側)に導入される。このため、吸着塔1B内でも、上側の方がより窒素ガス濃度が高くなる傾向が維持される。すなわち、(ii)の工程では、吸着工程が終了した吸着塔1Aから導出されたガスが脱着工程が終了した吸着塔1Bに流入した際に、濃度分布が上下で逆転しないように該吸着塔1Bにガスが移動する。したがって、次の(iii)の工程(吸着塔1Bにおける吸着工程)において、吸着塔1Bから排出される製品ガスの窒素ガス濃度をより高くすることができる。
【0041】
さらに、制御装置20は、均圧制御においてバルブCV7を開放する制御を行う。吸着塔1Aの一部ガスは、吸着塔1Aの原料ガス入口から入口ラインL1A及びバルブCV7のあるガス放出路L7を介して、窒素ガス分離装置10の外部(通常は大気中)に放出される。すなわち、吸着塔1Aに対する接続個所が連通ラインL10,L12とは別個のラインである入口ラインL1A及びガス放出路L7を通して一部のガス(酸素ガス濃度の高いガス:
図3中のG4)を外部に放出している。このため、
図3にも示すように、酸素ガス濃度の高いガスが、吸着塔1Bに導入されることを防止することができる。
【0042】
なお、(ii)の工程において、バルブCV9を閉鎖しておくことも可能である。この場合、連通ラインL10及び連通ラインL12を通して、吸着塔1Aの塔中間部からガスが流出して吸着塔1Bに導入される。
【0043】
<(iii)の工程>
(iii)の工程は、吸着塔1Aが脱着工程に付され、吸着塔1Bが吸着工程に付される工程である。具体的には、(iii)の工程では、バルブCV1、バルブCV4、バルブCV5およびバルブCV7〜CV13が閉止され、バルブCV2、バルブCV3およびバルブCV6が開放される。そのため、窒素ガス分離装置10に供給される原料ガスは、吸着塔1Bに供給される。吸着塔1Bでは、供給された原料ガスのうち、酸素ガスが吸着され、分離された窒素ガスが製品槽2に送られる。吸着塔1B内では、ガスが上に向かうにつれて酸素ガスが次第に吸着されるため、上側ほど窒素ガス濃度が高くなる。そして、所定の窒素ガス濃度となった製品ガスが製品ガス排出路L3を通して製品槽2に送られる。一方、吸着塔1Aのガスは原料入口から導出されて入口ラインL1A及びガス放出路L2を通して窒素ガス分離装置10の外部(通常は大気中)に放出され、吸着した酸素ガスを脱着して分子篩炭素が再生される。
【0044】
<(iv)の工程>
(iv)の工程は、吸着塔1Aが第2均圧工程に付され、吸着塔1Bが第1均圧工程に付される工程である。具体的には、(iv)の工程では、バルブCV1〜CV6、バルブCV7、バルブCV10およびバルブCV12が閉止され、バルブCV8、バルブCV9、バルブCV11およびバルブCV13が開放される。そのため、吸着塔1Aの製品ガス出口と吸着塔1Bの製品ガス出口がバルブCV9を介して連通する出口連通ラインL9と、吸着塔1Aの塔中間部と吸着塔1Bの塔中間部がバルブCV11を介して連通する連通ライン(中間部連通ライン)L11と、吸着塔1Bの塔中間部と吸着塔1Aの原料ガス入口又はその付近がバルブCV13を介して連通する連通ライン(第2連通ライン)L13とにより、吸着塔1Bのガスが吸着塔1Aに移動する。
【0045】
(iv)の工程でも、吸着工程の終了した吸着塔での窒素ガス濃度分布の上下関係が逆転しないように、脱着工程の終了した吸着塔にガスが導入される点において(ii)の均圧工程と同様となっている。すなわち、連通ラインL11の流入端が連通ラインL13の流入端よりも高い位置で吸着塔1Bに接続されており、連通ラインL11の流出端が連通ラインL13の流出端よりも高い位置で吸着塔1Aに接続されている。言い換えると、吸着塔1Bに対する連通ラインL11及び連通ラインL13の接続位置の上下関係が、吸着塔1Aに対する連通ラインL11及び連通ラインL13の接続位置の上下関係と一致している。このため、
図4に示すように、吸着塔1B内でより窒素ガス濃度が高くなっているガス(
図4中のG5)が、吸着塔1A内のより上側(製品ガス排出口に近い側)に導入され、また、吸着塔1B内でより窒素ガス濃度が低くなっているガス(
図4中のG7)が、吸着塔1A内のより下側(製品ガス排出口に遠い側)に導入される。このため、吸着塔1A内でも、上側の方がより窒素ガス濃度が高くなる傾向が維持される。したがって、次の(i)の工程(吸着塔1Aにおける吸着工程)において、吸着塔1Aから排出される製品ガスの窒素ガス濃度をより高くすることができる。さらに、吸着塔1Bの一部ガスは、吸着塔1Bの原料ガス入口から入口ラインL1B及びバルブCV8のあるガス放出路L8を介して、窒素ガス分離装置10の外部(通常は大気中)に放出される。すなわち、吸着塔1Bに対する接続個所が連通ラインL11,L13とは別個のラインである入口ラインL1B及びガス放出路L8を通して一部のガス(酸素ガス濃度の高いガス:
図4中のG8)を外部に放出している。このため、
図4にも示すように、酸素ガス濃度の高いガスが、吸着塔1Aに導入されることを防止することができる。
【0046】
なお、(iv)の均圧工程において、バルブCV9を閉鎖しておくことも可能である。この場合、連通ラインL11及び連通ラインL13を通して、吸着塔1Bの塔中間部からガスが流出して吸着塔1Aに導入される。
【0047】
また、(ii)と(iv)の工程では、通常の場合、均圧工程の開始から終了まで、吸着工程が終了した吸着塔のガスの一部を放出する。但し、製品ガスに要求される窒素ガス純度や、吸着工程が終了した吸着塔と脱着工程が終了した吸着塔を連通する箇所により、均圧工程開始から遅れてガスを放出したり、均圧工程が終了する前にガスの放出を停止するように調整する場合がある。また、均圧工程開始からのガス放出に遅れて、吸着工程が終了した吸着塔から脱着工程が終了した吸着塔にガスを移動する場合もある。
【0048】
なお、1サイクルは、たとえば、62〜260秒で実施することができる。この場合、吸着塔1Aの吸着工程((i)の工程)を30〜120秒で行い、第1均圧工程((ii)の工程)を1〜10秒で行い、脱着工程((iii)の工程)を30〜120秒で行い、第2均圧工程((iv)の工程)を1〜10秒で行うことができる。
【0049】
以上の(i)〜(iv)の工程を1サイクルとして、吸着塔1Aと吸着塔1Bとにおいて酸素ガスの吸着および脱着が交互に繰り返され、原料ガスから窒素ガスが高純度に分離濃縮された製品ガスが調製される。
【0050】
本実施形態の窒素ガス分離方法によれば、従来よりもエネルギー効率が高く、小型化された窒素ガス分離装置を提供することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、簡素な配管構造となる本発明の第2実施形態に係る窒素ガス分離装置について、図面を参照しながら説明する。
図5は、本発明の一実施形態を用いた窒素ガス分離装置の概略図である。
【0052】
図5に示されるように、第2実施形態の窒素ガス分離装置11は、第1の実施形態の窒素ガス分離装置10におけるバルブCV10〜CV13に代えてバルブCV14〜CV17が設けられる点、及び連通ラインの構成が異なっている点以外は、第1の実施形態の窒素ガス分離装置10と同様の構成である。そのため、重複する構成については同一の参照符号を付して説明を適宜省略する。
【0053】
バルブCV14〜CV17は、吸着塔1Aと吸着塔1Bの間を移動するガスが通過する配管経路を開閉する均圧弁である。バルブCV14,CV15,CV16,CV17が設けられた配管経路である連通ラインは、ライン(中間部連通ライン)L14と、ラインL14から分岐する分岐ラインとを有する。分岐ラインは、ライン(接続ライン)L21と、ライン(第1導入ライン)L16と、ライン(第2導入ライン)L17と、を有する。分岐ラインは、中間部連通ラインを流れるガスを吸着塔1A,1Bの原料ガス入口に導くラインである。
【0054】
ラインL14は、一端が吸着塔1Aの塔中間部に接続され、他端が吸着塔1Bの塔中間部に接続されている。ラインL14には、バルブCV14及びバルブCV15が設けられている。
【0055】
第1導入ラインL16は、一端が入口ラインL1Aに接続され、他端がラインL21に接続されている。ラインL16には、バルブCV16が設けられている。第2導入ラインL17は、一端が入口ラインL1Bに接続され、他端がラインL21に接続されている。ラインL17には、バルブCV17が設けられている。
【0056】
ラインL21は、一端がラインL14におけるバルブCV14とバルブCV15との間の部位に接続され、他端が第1導入ラインL16及び第2導入ラインL17に接続されている。なお、
図5の形態では、第1導入ラインL16及び第2導入ラインL17がライン(接続ライン)L21を介してライン(中間部連通ライン)L14に接続される構成に限られない。例えば、第1導入ラインL16及び第2導入ラインL17がライン(中間部連通ライン)L14に直接接続されていてもよい。
【0057】
第2実施形態の窒素ガス分離装置11は、第1実施形態の窒素ガス分離装置10よりも配管構成を簡素化することができる。
【0058】
第1の実施形態の窒素ガス分離装置10と本実施形態の窒素ガス分離装置11において、ガスの流れが異なる、(ii)の工程および(iv)の工程についてのみ、
図5に加えて
図2を参照し、具体的に説明する。
【0059】
<(ii)の工程>
(ii)の工程は、吸着塔1Aが、吸着塔1Aからガスを導出する第1均圧工程に付され、吸着塔1Bが、吸着塔1Aから導出されたガスを導入する第2均圧工程に付される工程である。具体的には、(ii)の工程では、バルブCV1〜CV6、バルブCV8およびバルブCV16が閉止され、バルブCV7、バルブCV9、バルブCV14、バルブCV15およびバルブCV17が開放される。そのため、吸着塔1Aの製品ガス出口と吸着塔1Bの製品ガス出口がバルブCV9を介して連通する出口連通ラインL9と、バルブCV14、バルブCV15およびバルブCV17を介して吸着塔1Aの塔中間部から吸着塔1Bの塔中間部と原料ガス入口の2箇所に分岐して連通するラインL14,L21,L17により、吸着工程の終了した吸着塔1Aのガスが、脱着工程の終了した吸着塔1Bに移動する。さらに、吸着塔1Aの一部ガスは、吸着塔1Aの原料ガス入口からバルブCV7のあるガス放出路L7を介して、窒素ガス分離装置11の外部(通常は大気中)に放出される。
【0060】
<(iv)の工程>
(iv)の工程は、吸着塔1Aが、吸着塔1Bから導出されたガスを導入する第2均圧工程に付され、吸着塔1Bが、吸着塔1B内のガスを導出する第1均圧工程に付される工程である。具体的には、(iv)の工程では、制御装置20は、バルブCV1〜7、バルブCV17を閉止し、バルブCV8、バルブCV9、バルブCV14、バルブCV15およびバルブCV16を開放する均圧制御を行う。そのため、吸着塔1Aの製品ガス出口と吸着塔1Bの製品ガス出口がバルブCV9を介して連通する出口連通ラインL9と、バルブCV14、バルブCV15およびバルブCV16を介して吸着塔1Bの塔中間部から吸着塔1Aの塔中間部と原料ガス入口の2箇所に分岐して連通するラインL14,L21,L16により、吸着塔1Bのガスが吸着塔1Aに移動する。さらに、制御装置20は、均圧制御においてバルブCV8を開放する制御を行う。吸着塔1Bの一部ガスは、吸着塔1Bの原料ガス入口からバルブCV8のあるガス放出路L8を介して、窒素ガス分離装置11の外部(通常は大気中)に放出される。
【0061】
以上の(i)〜(iv)の工程を1サイクルとして、吸着塔1Aと吸着塔1Bとにおいて酸素ガスの吸着および脱着が交互に繰り返され、原料ガスから窒素ガスが分離濃縮された製品ガスが調製される。
【0062】
本実施形態の窒素ガス分離方法によれば、従来よりも高性能な窒素ガス分離装置を提供することができる。
【0063】
また、均圧工程において、吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口付近からガスの一部を放出する場合、製品ガスの窒素純度を高める手段として、ガス放出率を特定の範囲に設定することが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0065】
すべての実施例と比較例の共通条件として、吸着塔に充填する分子篩炭素はクラレケミカル(株)製のGN−UC−Hを使用した。1リットルの分子篩炭素を充填した2本の吸着塔により構成される窒素ガス分離装置を使用し、0.70MPaGに加圧した空気を原料ガスとして、両吸着塔で吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を1サイクルとして繰り返し、窒素ガスを製品ガスとして分離した。その際の両吸着塔における1サイクル時間は106秒とした。内訳は、吸着工程に50秒、均圧工程に3秒、脱着工程に50秒および均圧工程に3秒とした。吸着工程における吸着塔の到達圧力は0.64MPaGとし、製品ガスは2.3NL/minで一定とした。
【0066】
(実施例1〜5)
図1に示されるような、2本の吸着塔により構成される窒素ガス分離装置を使用し、ガスの放出量を調整した結果を表1の実施例1〜5に示す。実施例1〜5の各連通ライン接続条件として、連通ラインL10は、その一端が吸着塔1Aの原料ガス入口側から60%の位置(原料入口よりも製品ガス出口に近い位置)に接続され、他端が吸着塔1Bの原料ガス入口側から40%の位置(製品ガス出口よりも原料入口に近い位置)に接続されている。連通ラインL11は、その一端が吸着塔1Aの原料ガス入口側から40%の位置(製品ガス出口よりも原料入口に近い位置)に接続され、他端が吸着塔1Bの原料ガス入口側から60%の位置(原料入口よりも製品ガス出口に近い位置)に接続されている。連通ラインL12は、その一端が吸着塔1Aの原料ガス入口側から30%の位置(連通ラインL10,L11の接続個所よりも原料入口に近い位置)に接続され、他端が吸着塔1Bの原料ガス入口側から10%の位置(連通ラインL13の接続個所よりも原料入口に近い位置)に接続されている。連通ラインL13は、その一端が吸着塔1Aの原料ガス入口側から10%の位置(連通ラインL12の接続個所よりも原料入口に近い位置)に接続され、他端が吸着塔1Bの原料ガス入口側から30%の位置(連通ラインL10,L11の接続個所よりも原料入口に近い位置)に接続されている。
【0067】
(実施例6)
図5に示されるような、2本の吸着塔により構成される窒素ガス分離装置を使用し、ガスの放出量を実施例1と同じになるように調整した結果を表1の実施例6に示す。実施例6のライン14は、その一端が吸着塔1Aの原料ガス入口側から50%の位置(原料ガス入口と製品ガス出口との間の中央位置)に接続され、他端が吸着塔1Bの原料ガス入口側から50%の位置(原料ガス入口と製品ガス出口との間の中央位置)に接続されている。
【0068】
(比較例1)
特許文献1で提案されている
図6に示されるような、2本の吸着塔により構成される窒素ガス分離装置を使用し、ガスの放出量を実施例1と同じになるように調整した結果を表1の比較例1に示す。
【0069】
(比較例2)
実施例1の均圧工程において、吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口付近からガスの一部を放出しない場合の結果を表1の比較例2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示されるように、実施例1を比較例1,2と比較すると、実施例1は製品ガス中の酸素濃度が低く、製品ガスの窒素が高純度となった。また、簡素な配管構造を可能とする窒素ガス分離方法を用いた実施例6についても、比較例1,2よりも製品ガス中の酸素濃度が低く、製品ガスの窒素が高純度となった。
【0072】
また、実施例1〜5で、ガスの放出量を調整した結果、ガスの放出率を3〜22%にすると、製品ガス中の酸素濃度がより低くなることが判った。
【0073】
なお、前記第1実施形態では、4つの連通ラインL10〜L13を有する構成としたが、これに限られない。例えば、連通ラインL11及び連通ラインL13の一方を削除してもよい。また、連通ラインL10及び連通ラインL12の一方を削除してもよい。
【0074】
前記実施形態では、2つの吸着塔1A,1Bを備えた構成としたが、これに限られない。例えば、3つ以上の吸着塔を備えた構成としてもよい。この場合、均圧工程において、吸着工程が終了した1又は複数の吸着塔における塔中間部から、脱着工程が終了した1又は複数の吸着塔へガスを移動させるとともに、前記吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口付近からガスの一部を放出する。
【0075】
前記第2実施形態では、連通ラインに、ライン(中間部連通ライン)L14と、ライン(接続ライン)L21と、ライン(第1導入ライン)L16と、ライン(第2導入ライン)L17とが含まれる構成としたが、これに限られない。例えば、
図7に示すように、連通ラインには、ライン(中間部連通ライン)L14のみが含まれる構成としてもよい。この場合、ラインL14には、1つのバルブCV14が設けられればよい。この構成では、吸着塔1Aにおいて吸着工程が終了した後の均圧工程では、バルブCV14及びバルブCV7が開放されるとともに、その他のバルブが閉じられる。一方、吸着塔1Bにおいて吸着工程が終了した後の均圧工程では、バルブCV14及びバルブCV8が開放されるとともに、その他のバルブが閉じられる。この構成でも、吸着工程が終了した吸着塔の塔中間部から、脱着工程が終了した吸着塔の塔中間部にガスを移動させつつ、吸着工程が終了した吸着塔の原料ガス入口からガスの一部を放出することができる。