【文献】
Yoh'ichi TOHKURA, et al.,Spectral Smoothing Technique in PARCOR Speech Analysis-Synthesis,IEEE Transactions on Acoustics, Speech and Signal Processing,1978年12月,Vol.26, No.6,p.587-596
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、線形予測分析装置及び方法の各実施形態を説明する。
【0021】
[第一実施形態]
第一実施形態の線形予測分析装置2は、
図1に示すように、自己相関計算部21、係数決定部24、係数乗算部22及び予測係数計算部23を例えば備えている。自己相関計算部21、係数乗算部22及び予測係数計算部23の動作は、従来の線形予測分析装置1の自己相関計算部11、係数乗算部12及び予測係数計算部13における動作とそれぞれ同じである。
【0022】
線形予測分析装置2には、所定時間区間であるフレームごとの時間領域のディジタル音声信号やディジタル音響信号や心電図、脳波、脳磁図、地震波等のディジタル信号である入力信号X
O(n)が入力される。入力信号は、入力時系列信号である。現フレームの入力信号をX
O(n)(n=0,1,…,N-1)とする。nは入力信号における各サンプルのサンプル番号を表し、Nは所定の正の整数である。ここで、現フレームの1つ前のフレームの入力信号はX
O(n)(n=-N,-N+1,…, -1)であり、現フレームの1つ後のフレームの入力信号はX
O(n)(n=N,N+1,…, 2N-1)である。以下では、入力信号X
O(n)がディジタル音声信号やディジタル音響信号である場合について説明する。入力信号X
O(n) (n=0,1,…,N-1)は、収音された信号そのものであってもよいし、分析のためにサンプリングレートが変換された信号でもよいし、プリエンファシス処理された信号でもよいし、窓かけされた信号でもよい。
【0023】
また、線形予測分析装置2には、フレームごとのディジタル音声信号やディジタル音響信号の基本周波数についての情報とピッチゲインについての情報も入力される。基本周波数についての情報は、線形予測分析装置2外にある基本周波数計算部930で求められる。ピッチゲインについての情報は、線形予測分析装置2外にあるピッチゲイン計算部950で求められる。
【0024】
ピッチゲインは、フレームごとの入力信号の周期性の強さのことである。ピッチゲインは、例えば、入力信号やその線形予測残差信号ついてのピッチ周期分だけ時間差がある信号間の正規化された相関である。
【0025】
[基本周波数計算部930]
基本周波数計算部930は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から基本周波数Pを求める。基本周波数計算部930は、例えば、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)の全部または一部を含む信号区間のディジタル音声信号やディジタル音響信号の基本周波数Pを求め、基本周波数Pを特定可能な情報を基本周波数についての情報として出力する。基本周波数を求める方法としては、様々な公知の方法が存在するので、公知の何れの方法を用いてもよい。また、求めた基本周波数Pを符号化して基本周波数符号を得る構成とし、基本周波数符号を基本周波数についての情報として出力してもよい。さらに基本周波数符号に対応する基本周波数の量子化値^Pを得る構成とし、基本周波数の量子化値^Pを基本周波数についての情報として出力してもよい。以下、基本周波数計算部930の具体例について説明する。
【0026】
<基本周波数計算部930の具体例1>
基本周波数計算部930の具体例1は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)が複数個のサブフレームで構成されている場合、かつ、同一のフレームについては線形予測分析装置2よりも先に基本周波数計算部930が動作される場合、の例である。基本周波数計算部930は、まず、2以上の整数であるM個のサブフレームであるX
Os1(n) (n=0, 1, …, N/M-1), …, X
OsM(n)(n= (M-1)N/M, (M-1)N/M+1, …, N-1)のそれぞれの基本周波数であるP
s1, …, P
sMを求める。NはMで割り切れるとする。基本周波数計算部930は、現フレームを構成するM個のサブフレームの基本周波数であるP
s1, …, P
sMのうちの最大値max(P
s1, …, P
sM)を特定可能な情報を基本周波数についての情報として出力する。
【0027】
<基本周波数計算部930の具体例2>
基本周波数計算部930の具体例2は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)と1つ後のフレームの一部の入力信号X
O(n) (n=N, N+1, …, N+Nn-1) (ただし、Nnは、Nn<Nという関係を満たす所定の正の整数。)とで、先読み部分を含む信号区間が現フレームの信号区間として構成されている場合であり、かつ、同一のフレームについては線形予測分析装置2よりも後に基本周波数計算部930が動作される場合、の例である。基本周波数計算部930は、現フレームの信号区間について、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)と1つ後のフレームの一部の入力信号X
O(n) (n=N, N+1, …, N+Nn-1)のそれぞれの基本周波数であるP
now, P
nextを求め、基本周波数P
nextを基本周波数計算部930に記憶する。基本周波数計算部930は、また、1つ前のフレームの信号区間について求めて基本周波数計算部930に記憶されていた基本周波数P
next、すなわち、1つ前のフレームの信号区間のうちの現フレームの一部の入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, Nn-1)について求めた基本周波数、を特定可能な情報を基本周波数についての情報として出力する。なお、具体例1と同様に、現フレームについては複数のサブフレームごとの基本周波数を求めてもよい。
【0028】
<基本周波数計算部930の具体例3>
基本周波数計算部930の具体例3は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)そのものが現フレームの信号区間として構成されている場合であり、かつ、同一のフレームについては線形予測分析装置2よりも後に基本周波数計算部930が動作される場合、の例である。基本周波数計算部930は、現フレームの信号区間である現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)の基本周波数Pを求め、基本周波数Pを基本周波数計算部930に記憶する。基本周波数計算部930は、また、1つ前のフレームの信号区間、すなわち、1つ前のフレームの入力信号X
O(n) (n=-N, -N+1, …, -1)について求めて基本周波数計算部930に記憶されていた基本周波数Pを特定可能な情報を基本周波数についての情報として出力する。
【0029】
[ピッチゲイン計算部950]
ピッチゲイン計算部950は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部からピッチゲインGを求める。ピッチゲイン計算部950は、例えば、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)の全部または一部を含む信号区間のディジタル音声信号やディジタル音響信号のピッチゲインGを求め、ピッチゲインGを特定可能な情報をピッチゲインについての情報として出力する。ピッチゲインを求める方法としては、様々な公知の方法が存在するので、公知の何れの方法を用いてもよい。また、求めたピッチゲインGを符号化してピッチゲイン符号を得る構成とし、ピッチゲイン符号をピッチゲインについての情報として出力してもよい。さらにピッチゲイン符号に対応するピッチゲインの量子化値^Gを得る構成とし、ピッチゲインの量子化値^Gをピッチゲインについての情報として出力してもよい。以下、ピッチゲイン計算部950の具体例について説明する。
【0030】
<ピッチゲイン計算部950の具体例1>
ピッチゲイン計算部950の具体例1は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)が複数個のサブフレームで構成されている場合、かつ、同一のフレームについては線形予測分析装置2よりも先にピッチゲイン計算部950が動作される場合、の例である。ピッチゲイン計算部950は、まず、2以上の整数であるM個のサブフレームであるX
Os1(n) (n=0, 1, …, N/M-1), …, X
OsM(n)(n= (M-1)N/M, (M-1)N/M+1, …, N-1)のそれぞれのピッチゲインであるG
s1,…,G
sMを求める。NはMで割り切れるとする。ピッチゲイン計算部950は、現フレームを構成するM個のサブフレームのピッチゲインであるG
s1,…, G
sMのうちの最大値max(G
s1,…,G
sM)を特定可能な情報をピッチゲインについての情報として出力する。
【0031】
<ピッチゲイン計算部950の具体例2>
ピッチゲイン計算部950の具体例2は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)と1つ後のフレームの一部の入力信号X
O(n) (n=N, N+1, …, N+Nn-1)とで、先読み部分を含む信号区間が現フレームの信号区間として構成されている場合であり、かつ、同一のフレームについては線形予測分析装置2よりも後にピッチゲイン計算部950が動作される場合、の例である。ピッチゲイン計算部950は、現フレームの信号区間について、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)と1つ後のフレームの一部の入力信号X
O(n) (n=N, N+1, …, N+Nn-1)のそれぞれのピッチゲインであるG
now, G
nextを求め、ピッチゲインG
nextをピッチゲイン計算部950に記憶する。ピッチゲイン計算部950は、また、1つ前のフレームの信号区間について求めてピッチゲイン計算部950に記憶されていたピッチゲインG
next、すなわち、1つ前のフレームの信号区間のうちの現フレームの一部の入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, Nn-1)について求めたピッチゲイン、を特定可能な情報をピッチゲインについての情報として出力する。なお、具体例1と同様に、現フレームについては複数のサブフレームごとのピッチゲインを求めてもよい。
【0032】
<ピッチゲイン計算部950の具体例3>
ピッチゲイン計算部950の具体例3は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)そのものが現フレームの信号区間として構成されている場合であり、かつ、線形予測分析装置2よりも後にピッチゲイン計算部950が動作される場合、の例である。ピッチゲイン計算部950は、現フレームの信号区間である現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)のピッチゲインGを求め、ピッチゲインGをピッチゲイン計算部950に記憶する。ピッチゲイン計算部950は、また、1つ前のフレームの信号区間、すなわち、1つ前のフレームの入力信号X
O(n) (n=-N, -N+1, …, -1)について求めてピッチゲイン計算部950に記憶されていたピッチゲインGを特定可能な情報をピッチゲインについての情報として出力する。
【0033】
以下、線形予測分析装置2の動作について説明する。
図2は、線形予測分析装置2による線形予測分析方法のフローチャートである。
【0034】
[自己相関計算部21]
自己相関計算部21は、入力されたNサンプルのフレーム毎の時間領域のディジタル音声信号やディジタル音響信号である入力信号X
O(n)(n=0,1,…,N-1)から自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)を計算する(ステップS1)。P
maxは、予測係数計算部23が求める線形予測係数に変換可能な係数の最大次数であり、N未満の所定の正の整数である。計算された自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)は、係数乗算部22に提供される。
【0035】
自己相関計算部21は、入力信号X
O(n)を用いて、例えば式(14A)により定義される自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)を計算して出力する。すなわち、現在のフレームの入力時系列信号X
O(n)とiサンプルだけ過去の入力時系列信号X
O(n-i)との自己相関R
O(i)を計算する。
【数4】
【0036】
または、自己相関計算部21は、入力信号X
O(n)を用いて、例えば式(14B)により自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)を計算する。すなわち、現在のフレームの入力時系列信号X
O(n)とiサンプルだけ未来の入力時系列信号X
O(n+i)との自己相関R
O(i)を計算する。
【数5】
【0037】
または、自己相関計算部21は、入力信号X
O(n)に対応するパワースペクトルを求めてからWiener-Khinchinの定理に従って自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)を計算してもよい。また、何れの方法においても、入力信号X
O(n) (n=-Np, -Np+1,…, -1, 0,1,…,N-1, N,…, N-1+Nn)というように前後のフレームの入力信号の一部も用いて自己相関R
O(i)を計算してもよい。ここで、Np,Nnはそれぞれ、Np<N, Nn<Nという関係を満たす所定の正の整数である。もしくは、MDCT系列をパワースペクトルの近似として代用し、近似されたパワースペクトルから自己相関を求めてもよい。このように自己相関の算出方法は世の中で使われている公知技術の何れかを用いればよい。
【0038】
[係数決定部24]
係数決定部24は、入力された基本周波数についての情報及び入力されたピッチゲインについての情報を用いて、係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)を決定する(ステップS4)。係数w
O(i)は、自己相関R
O(i)を変形するための係数である。係数w
O(i)は、信号処理の分野においては、ラグ窓w
O(i)又はラグ窓係数w
O(i)とも呼ばれているものである。係数w
O(i)は正の値であるので、係数w
O(i)が所定の値よりも大きい/小さいことを、係数w
O(i)の大きさが所定の値よりも大きい/小さいと表現することがある。また、w
O(i)の大きさとは、そのw
O(i)の値を意味するものとする。
【0039】
係数決定部24に入力される基本周波数についての情報は、現フレームの入力信号および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から求まった基本周波数を特定する情報である。すなわち、係数w
O(i)の決定に用いる基本周波数は、現フレームの入力信号および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から求まった基本周波数である。
【0040】
係数決定部24に入力されるピッチゲインについての情報は、現フレームの入力信号および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から求まったピッチゲインを特定する情報である。すなわち、係数w
O(i)の決定に用いるピッチゲインは、現フレームの入力信号および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から求まったピッチゲインである。
【0041】
基本周波数についての情報に対応する基本周波数、及び、ピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインは、同じフレームにおける入力信号から計算されたものであってもよいし、異なるフレームにおける入力信号から計算されたものであってもよい。
【0042】
係数決定部24は、0次からP
max次の全てまたは一部の次数について、基本周波数についての情報に対応する基本周波数及びピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインの取り得る範囲のうち全てまたは一部で、基本周波数についての情報に対応する基本周波数が大きいほど小さいことがあり、ピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインが大きいほど小さいことがある値を係数w
O(0), w
O(1), …, w
O(P
max)として決定する。また、係数決定部24は、基本周波数の代わりに基本周波数と正の相関関係にある値を用いて、及び/又は、ピッチゲインの代わりにピッチゲインと正の相関関係にある値を用いて、このような係数w
O(0), w
O(1), …, w
O(P
max)として決定してもよい。
【0043】
すなわち、係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)は、少なくとも一部の予測次数iに対して、その次数iに対応する係数w
O(i)の大きさが、現フレームの入力信号X
O(n)の全部または一部を含む信号区間の基本周波数と正の相関関係にある値の増加とともに単調減少する関係にある場合とピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少する関係にある場合とが含まれているように決定される。言い換えれば、後述するように、次数iによっては、係数w
O(i)の大きさが基本周波数の増加とともに単調減少しない場合、及び/又は、ピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少しない場合が含まれていてもよい。
【0044】
また、基本周波数と正の相関関係にある値の取り得る範囲には、係数w
O(i)の大きさが基本周波数と正の相関関係にある値の増加に関わらず一定の範囲があってもよいが、その他の範囲では係数w
O(i)の大きさが基本周波数と正の相関関係にある値の増加とともに単調減少するものとする。さらに、ピッチゲインと正の相関関係にある値の取り得る範囲には、係数w
O(i)の大きさがピッチゲインと正の相関関係にある値の増加に関わらず一定の範囲があってもよいが、その他の範囲では係数w
O(i)の大きさがピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少するものとする。
【0045】
係数決定部24は、例えば、入力された基本周波数についての情報及び入力されたピッチゲインにそれぞれ対応する基本周波数及びピッチゲインの重み付き和についての単調非増加関数を用いて、係数w
O(i)を決定する。例えば、以下の式(1)により係数w
O(i)を決定する。以下の式(1)において、f(G)はピッチゲインGと正の相関関係にある周波数を求める関数であり、Hは基本周波数Pとf(G)にそれぞれ重みδとεをかけて足したもの、すなわち、H=δ×P+ε×f(G)である。なお、重み係数δ及びεは正の数とする。すなわち、Hは、基本周波数及びピッチゲインの重み付き和を意味する。
【数6】
【0046】
または、0より大きい予め定めた値であるαを用いた、以下の式(2)により係数w
O(i)を決定してもよい。αは、係数w
O(i)をラグ窓としてとらえたときのラグ窓の幅、言い換えればラグ窓の強さを調整するための値である。予め定めるαは、例えば、複数のαの候補値について線形予測分析装置2を含む符号化装置とその符号化装置に対応する復号装置とで音声信号や音響信号を符号化復号して、復号音声信号や復号音響信号の主観品質や客観品質が良好である候補値をαとして選択することにより定めればよい。
【数7】
【0047】
または、基本周波数PとピッチゲインGの双方についての予め定めた関数f(P, G)を用いた以下の式(2A)により係数w
O(i)を決定してもよい。関数f(P, G)は、基本周波数Pと正の相関関係となり、かつ、ピッチゲインGと正の相関関係となる関数である。言い換えれば、関数f(P, G)は、基本周波数Pに対して単調非減少となり、かつ、ピッチゲインGに対して単調非減少となる関数である。例えば、関数f
P(P)をf
P(P)=α
P×P+β
P(α
Pは正の数、β
Pは任意の数)、f
P(P)=α
P×P
2+β
P×P+γ
P(α
Pは正の数、β
P、γ
Pは任意の数)などとし、関数f
G(G)をf
G(G)=α
G×G+β
G(α
Gは正の数、β
Gは任意の数)、f
G(G)=α
G×G
2+β
G×G+γ
G(α
Gは正の数、β
G、γ
Gは任意の数)などとしたとき、関数f(P, G)はf(P, G)=δ×f
P(P)+ε×f
G(G)などである。
【数8】
【0048】
また、基本周波数P及びピッチゲインGを用いて係数w
O(i)を決定する式は、上述の式(1),(2),(2A)に限らず、基本周波数と正の相関関係にある値の増加に対して単調非増加の関係とピッチゲインと正の相関関係にある値の増加に対して単調非増加の関係とを記述できるものであれば他の式であってもよい。例えば、係数w
O(i)を、以下の(3)から(6)の何れかの式により決定してもよい。以下の(3)から(6)の式において、aを基本周波数及びピッチゲインの重み付き和に依存して決まる実数とし、mを基本周波数及びピッチゲインの重み付き和に依存して決まる自然数とする。例えば、aを基本周波数及びピッチゲインの重み付き和と負の相関関係にある値とし、mを基本周波数及びピッチゲインの重み付き和と負の相関関係にある値とする。τはサンプリング周期である。
【数9】
【0049】
式(3)はBartlett windowと呼ばれる形式の窓関数であり、式(4)は二項係数により定義されるBinomial windowと呼ばれる形式の窓関数であり、式(5)はTriangular in frequency domain windowと呼ばれる形式の窓関数であり、式(6)はRectangular in frequency domain windowと呼ばれる形式の窓関数である。
【0050】
式(1)から式(6)のいずれの例においても、基本周波数及びピッチゲインの重み付き和Hが小さいときの係数w
o(i)の値は、Hが大きいときの係数w
o(i)よりも大きいことがわかる。
【0051】
なお、0≦i≦P
maxの各iではなく、少なくとも一部の次数iについてのみ、係数w
O(i)が基本周波数と正の相関関係にある値の増加とともに単調減少したり、ピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少してもよい。言い換えれば、次数iによっては、係数w
O(i)の大きさが基本周波数と正の相関関係にある値の増加とともに単調減少しなくてもよく、ピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少しなくてもよい。
【0052】
例えば、i=0の場合は、上述の式(1)から式(6)の何れかを用いて係数w
O(0)の値を決定してもよいし、ITU-T G.718等でも用いられているようなw
O(0)=1.0001,w
O(0)=1.003といった、基本周波数と正の相関関係にある値やピッチゲインと正の相関関係にある値には依存しない、経験的に得られた固定値を用いてもよい。すなわち、1≦i≦P
maxの各iについては、係数w
O(i)は基本周波数と正の相関関係にある値やピッチゲインと正の相関関係にある値が大きいほど小さな値を取るが、i=0の係数についてはこの限りではなく固定値を用いてもよい。
【0053】
また、基本周波数及びピッチゲインの重み付き和に限らず、基本周波数とピッチゲインとを乗じた値など、基本周波数及びピッチゲインの両方に対して正の相関関係にある値を用いてもよい。要するに、基本周波数とピッチゲインの両方に基づいて、基本周波数が大きいほど係数w
O(i)が小さいか、ピッチゲインが大きいほど係数w
O(i)が小さいかの少なくとも何れかとなるような係数w
O(i)を用いればよい。
【0054】
[係数乗算部22]
係数乗算部22は、係数決定部24で決定した係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)と、自己相関計算部21で求めた自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)とを同じiごとに乗じることにより、変形自己相関R'
O(i) (i=0,1,…,P
max)を求める(ステップS2)。すなわち、係数乗算部22は、以下の式(7)により自己相関R'
O(i)を計算する。計算された自己相関R'
O(i)は、予測係数計算部23に提供される。
【数10】
【0055】
[予測係数計算部23]
予測係数計算部23は、係数乗算部22から出力された変形自己相関R'
O(i)を用いて線形予測係数に変換可能な係数を求める(ステップS3)。
【0056】
例えば、予測係数計算部23は、変形自己相関R'
O(i)を用いて、Levinson-Durbin法などにより、1次から予め定めた予測次数であるP
max次までのPARCOR係数K
O(1),K
O(2),…,K
O(P
max)や線形予測係数a
O(1),a
O(2),…,a
O(P
max)を計算して出力する。
【0057】
第一実施形態の線形予測分析装置2によれば、基本周波数及びピッチゲインと正の相関関係にある値に応じて、少なくとも一部の予測次数iに対して、その次数iに対応する係数w
O(i)の大きさが、現フレームの入力信号X
O(n)の全部または一部を含む信号区間の基本周波数と正の相関関係にある値の増加とともに単調減少する関係にある場合とピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少する関係にある場合とが含まれている係数w
O(i)を自己相関に乗算して変形自己相関を求めて線形予測係数に変換可能な係数を求めることにより、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが高いときであってもピッチ成分に起因するスペクトルのピークの発生を抑えた線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、かつ、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが低いときであってもスペクトル包絡を表現可能な線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、従来よりも高い分析精度を実現することができる。したがって、第一実施形態の線形予測分析装置2を含む符号化装置とその符号化装置に対応する復号装置とで音声信号や音響信号を符号化復号して得られる復号音声信号や復号音響信号の品質は、従来の線形予測分析装置を含む符号化装置とその符号化装置に対応する復号装置とで音声信号や音響信号を符号化復号して得られる復号音声信号や復号音響信号の品質よりも、良い。
【0058】
<第一実施形態の変形例>
第一実施形態の変形例は、係数決定部24が、基本周波数及びピッチゲインと正の相関関係にある値ではなく、基本周波数と負の相関関係にある値、及び、ピッチゲインと正の相関関係にある値に基づいて係数w
O(i)を決定するものである。
【0059】
基本周波数と負の相関関係にある値とは、例えば周期、周期の推定値又は周期の量子化値である。例えば、周期T、基本周波数P、サンプリング周波数f
sとすると、T=f
s/Pとなるため、周期は基本周波数と負の相関関係にあるものである。基本周波数と負の相関関係にある値、及び、ピッチゲインと正の相関関係にある値に基づいて係数w
O(i)を決定する例を第一実施形態の変形例として説明する。
【0060】
第一実施形態の変形例の線形予測分析装置2の機能構成と線形予測分析装置2による線形予測分析方法のフローチャートは、第一実施形態と同じ
図1と
図2である。第一実施形態の変形例の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なる部分以外は、第一実施形態の線形予測分析装置2と同じである。
【0061】
線形予測分析装置2には、フレームごとのディジタル音声信号やディジタル音響信号の周期についての情報も入力される。周期についての情報は、線形予測分析装置2外にある周期計算部940で求められる。
【0062】
[周期計算部940]
周期計算部940は、現フレームの入力信号X
Oおよび/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から周期Tを求める。周期計算部940は、例えば、現フレームの入力信号X
O(n)の全部または一部を含む信号区間のディジタル音声信号やディジタル音響信号の周期Tを求め、周期Tを特定可能な情報を周期についての情報として出力する。周期を求める方法としては、様々な公知の方法が存在するので、公知の何れの方法を用いてもよい。また、求めた周期Tを符号化して周期符号を得る構成とし、周期符号を周期についての情報として出力してもよい。さらに周期符号に対応する周期の量子化値^Tを得る構成とし、周期の量子化値^Tを周期についての情報として出力してもよい。以下、周期計算部940の具体例について説明する。
【0063】
<周期計算部940の具体例1>
周期計算部940の具体例1は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)が複数個のサブフレームで構成されている場合、かつ、同一のフレームについては線形予測分析装置2よりも先に周期計算部940が動作される場合、の例である。周期計算部940は、まず、2以上の整数であるM個のサブフレームであるX
Os1(n) (n=0, 1, …, N/M-1), …, X
OsM(n)(n= (M-1)N/M, (M-1)N/M+1, …, N-1)のそれぞれの周期であるT
s1, …, T
sMを求める。NはMで割り切れるとする。周期計算部940は、現フレームを構成するM個のサブフレームの周期であるT
s1, …, T
sMのうちの最小値min(T
s1, …, T
sM)を特定可能な情報を周期についての情報として出力する。
【0064】
<周期計算部940の具体例2>
周期計算部940の具体例2は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)と1つ後のフレームの一部の入力信号X
O(n) (n=N, N+1, …, N+Nn-1)(ただし、Nnは、Nn<Nという関係を満たす所定の正の整数。)とで、先読み部分を含む信号区間が現フレームの信号区間として構成されている場合であり、かつ、同一のフレームについては線形予測分析装置2よりも後に周期計算部940が動作される場合、の例である。周期計算部940は、現フレームの信号区間について、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)と1つ後のフレームの一部の入力信号X
O(n) (n=N, N+1, …, N+Nn-1)のそれぞれの周期であるT
now, T
nextを求め、周期T
nextを周期計算部940に記憶する。周期計算部940は、また、1つ前のフレームの信号区間について求めて周期計算部940に記憶されていた周期T
next、すなわち、1つ前のフレームの信号区間のうちの現フレームの一部の入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, Nn-1)について求めた周期、を特定可能な情報を周期についての情報として出力する。なお、具体例1と同様に、現フレームについては複数のサブフレームごとの周期を求めてもよい。
【0065】
<周期計算部940の具体例3>
周期計算部940の具体例3は、現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)そのものが現フレームの信号区間として構成されている場合であり、かつ、同一のフレームについては線形予測分析装置2よりも後に周期計算部940が動作される場合、の例である。周期計算部940は、現フレームの信号区間である現フレームの入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, N-1)の周期Tを求め、周期Tを周期計算部940に記憶する。周期計算部940は、また、1つ前のフレームの信号区間、すなわち、1つ前のフレームの入力信号X
O(n) (n=-N, -N+1, …, -1)について求めて周期計算部940に記憶されていた周期Tを特定可能な情報を周期についての情報として出力する。
【0066】
また、第一実施形態と同様に、線形予測分析装置2には、ピッチゲインについての情報も入力される。ピッチゲインについての情報は、第一実施形態と同様に、線形予測分析装置2外にあるピッチゲイン計算部950で求められる。
【0067】
以下、第一実施形態の変形例の線形予測分析装置2の動作のうち、第一実施形態の線形予測分析装置2と異なる部分である係数決定部24の処理について説明する。
【0068】
[変形例の係数決定部24]
第一実施形態の変形例の線形予測分析装置2の係数決定部24は、入力された周期についての情報及び入力されたピッチゲインについての情報を用いて、係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)を決定する(ステップS4)。
【0069】
係数決定部24に入力される周期についての情報は、現フレームの入力信号および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から求まった周期を特定する情報である。すなわち、係数w
O(i)の決定に用いる周期は、現フレームの入力信号および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から求まった周期である。
【0070】
係数決定部24に入力されるピッチゲインについての情報は、現フレームの入力信号および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から求まったピッチゲインを特定する情報である。すなわち、係数w
O(i)の決定に用いるピッチゲインは、現フレームの入力信号および/または現フレームの近傍のフレームの入力信号の全部または一部から求まったピッチゲインである。
【0071】
周期についての情報に対応する周期、及び、ピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインは、同じフレームにおける入力信号から計算されたものであってもよいし、異なるフレームにおける入力信号から計算されたものであってもよい。
【0072】
係数決定部24は、0次からP
max次の全てまたは一部の次数について、周期についての情報に対応する周期及びピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインの取り得る範囲のうち全てまたは一部で、周期についての情報に対応する周期が大きいほど大きいことがあり、ピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインが大きいほど小さいことがある値を係数w
O(0), w
O(1), …, w
O(P
max)として決定する。また、係数決定部24は、周期の代わりに周期と正の相関関係にある値を用いて、及び/又は、ピッチゲインの代わりにピッチゲインと正の相関関係にある値を用いて、このような係数w
O(0), w
O(1), …, w
O(P
max)として決定してもよい。
【0073】
すなわち、係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)は、少なくとも一部の予測次数iに対して、その次数iに対応する係数w
O(i)の大きさが、現フレームの入力信号X
O(n)の全部または一部を含む信号区間の基本周波数と負の相関関係にある値の増加とともに単調増加する関係にある場合と、現フレームの入力信号X
O(n)の全部または一部を含む信号区間のピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少する関係にある場合とが含まれているように決定する。
【0074】
言い換えれば、次数iによっては、係数w
O(i)の大きさが基本周波数と負の相関関係にある値の増加とともに単調増加しない場合、及び/又は、ピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少しない場合が含まれていてもよい。
【0075】
また、基本周波数と負の相関関係にある値の取り得る範囲には、係数w
O(i)の大きさが基本周波数と負の相関関係にある値の増加に関わらず一定の範囲があってもよいが、その他の範囲では係数w
O(i)の大きさが基本周波数と負の相関関係にある値の増加とともに単調増加するものとする。さらに、ピッチゲインと正の相関関係にある値の取り得る範囲には、係数w
O(i)の大きさがピッチゲインと正の相関関係にある値の増加に関わらず一定の範囲があってもよいが、その他の範囲では係数w
O(i)の大きさがピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少するものとする。
【0076】
係数決定部24は、例えば、上述の式(1)や式(2)におけるHを、以下のH´に置き換えたこれらの式により係数w
O(i)を決定する。
【0077】
H´= ζ×f
s/T +ε×F(G)
ここで、ζ及びεは、重み係数であり、正の数とする。つまり、Tが大きいほどH´の値は小さく、F(G)が大きいほどH´の値は大きくなる。
【0078】
または、周期TとピッチゲインGの双方についての予め定めた関数f(T, G)を用いた、以下の式(2B)により係数w
O(i)を決定してもよい。関数f(T, G)は、周期Tと負の相関関係となり、かつ、ピッチゲインGと正の相関関係となる関数である。言い換えれば、関数f(T, G)は、周期Tに対して単調非増加となり、かつ、ピッチゲインGに対して単調非減少となる関数である。例えば、関数f
T(T)をf
T(T)=α
T×T+β
T(α
Tは正の数、β
Tは任意の数)、f
T(T)=α
T×T
2+β
T×T+γ
T(α
Tは正の数、β
T、γ
Tは任意の数)などとし、関数f
G(G)をf
G(G)=α
G×G+β
G(α
Gは正の数、β
Gは任意の数)、f
G(G)=α
G×G
2+β
G×G+γ
G(α
Gは正の数、β
G、γ
Gは任意の数)などとしたとき、関数f(T, G)はf(T, G)=ζ×f
s/f
T(T) +ε×f
G(G)などである。
【数11】
【0079】
なお、0≦i≦P
maxの各iではなく、少なくとも一部の次数iについてのみ、係数w
O(i)が基本周波数と負の相関関係にある値の増加とともに単調増加したり、ピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少してもよい。言い換えれば、次数iによっては、係数w
O(i)の大きさが基本周波数と負の相関関係にある値の増加とともに単調増加しなくてもよく、ピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少しなくてもよい。
【0080】
例えば、i=0の場合は、上述の式(1)、式(2)、式(2B)を用いて係数w
O(0)の値を決定してもよいし、ITU-T G.718等でも用いられているようなw
O(0)=1.0001,w
O(0)=1.003といった、基本周波数と負の相関関係にある値やピッチゲインと正の相関関係にある値には依存しない、経験的に得られた固定値を用いてもよい。すなわち、1≦i≦P
maxの各iについては、係数w
O(i)は基本周波数と負の相関関係にある値が大きいほど大きな値を取り、ピッチゲインと正の相関関係にある値が大きいほど小さな値を取るが、i=0の係数についてはこの限りではなく固定値を用いてもよい。
【0081】
要するに、周期とピッチゲインの両方に基づいて、周期が大きいほど係数w
O(i)が大きいか、ピッチゲインが大きいほど係数w
O(i)が小さいかの少なくとも何れかとなるような係数w
O(i)を用いればよい。
【0082】
第一実施形態の変形例の線形予測分析装置2によれば、基本周波数と負の相関関係にある値及びピッチゲインと正の相関関係にある値に応じて、少なくとも一部の予測次数iに対して、その次数iに対応する係数w
O(i)の大きさが、現フレームの入力信号X
O(n)の全部または一部を含む信号区間の基本周波数と負の相関関係にある値の増加とともに単調増加する場合と同信号区間のピッチゲインと正の相関関係にある値の増加とともに単調減少する関係にある場合とが含まれている係数w
O(i)を自己相関関数に乗算して変形自己相関関数を求めて線形予測係数に変換可能な係数を求めることにより、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが高いときであってもピッチ成分に起因するスペクトルのピークの発生を抑えた線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、かつ、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが低いときであってもスペクトル包絡を表現可能な線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、従来よりも分析精度の高い線形予測を実現することができる。したがって、第一実施形態の変形例の線形予測分析装置2を含む符号化装置とその符号化装置に対応する復号装置とで音声信号や音響信号を符号化復号して得られる復号音声信号や復号音響信号の品質は、従来の線形予測分析装置を含む符号化装置とその符号化装置に対応する復号装置とで音声信号や音響信号を符号化復号して得られる復号音声信号や復号音響信号の品質よりも、良い。
【0083】
[第二実施形態]
第二実施形態は、現在又は過去のフレームにおける入力信号の基本周波数と正又は負の相関関係にある値と所定の閾値とを比較し、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の閾値とを比較し、それらの比較結果に応じて係数w
O(i)を決定するものである。第二実施形態は、係数決定部24における係数w
O(i)の決定方法のみが第一実施形態と異なり、他の点については第一実施形態と同様である。以下、第一実施形態と異なる部分を中心に説明し、第一実施形態と同様の部分については重複説明を省略する。
【0084】
ここではまず、基本周波数と正の相関関係にある値と所定の閾値とを比較し、その後、ピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の閾値と比較し、それらの比較結果に応じて係数w
O(i)を決定する例について説明し、基本周波数と負の相関関係にある値と所定の閾値とを比較し、その後、ピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の閾値と比較し、その比較結果に応じて係数w
O(i)を決定する例は第二実施形態の第一変形例で説明する。
【0085】
第二実施形態の線形予測分析装置2の機能構成と線形予測分析装置2による線形予測分析方法のフローチャートは、第一実施形態と同じ
図1と
図2である。第二実施形態の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なる部分以外は、第一実施形態の線形予測分析装置2と同じである。
【0086】
第二実施形態の係数決定部24の処理の流れの例を
図3に示す。第二実施形態の係数決定部24は、
図3の各ステップS41A、ステップS42、ステップS43、ステップS44、ステップS45の処理を例えば行う。
【0087】
係数決定部24は、入力された基本周波数についての情報に対応する基本周波数と正の相関関係にある値と所定の第一閾値とを比較し(ステップS41A)、また、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の第二閾値とを比較する(ステップS42)。
【0088】
入力された基本周波数についての情報に対応する基本周波数と正の相関関係にある値とは、例えば、入力された基本周波数についての情報に対応する基本周波数そのものである。また、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値とは、例えば、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインそのものである。
【0089】
係数決定部24は、基本周波数と正の相関関係にある値が所定の第一閾値以上である場合には基本周波数が高いと判断し、そうでない場合には基本周波数が低いと判断する。また、係数決定部24は、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第二閾値以上である場合にはピッチゲインが大きいと判断し、そうでない場合にはピッチゲインが小さいと判断する。
【0090】
そして、係数決定部24は、基本周波数が高く、かつ、ピッチゲインが大きいと判断された場合には、予め定めた規則により係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする(ステップS43)。また、基本周波数が高く、かつ、ピッチゲインが小さいと判断された場合、または、基本周波数が低く、かつ、ピッチゲインが大きいと判断された場合には、予め定めた規則により係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする(ステップS44)。また、基本周波数が低く、かつ、ピッチゲインが小さいと判断された場合には、予め定めた規則により係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする(ステップS45)。
【0091】
ここで、w
h(i),w
m(i),w
l(i)は、少なくとも一部の各iについてw
h(i)<w
m(i)<w
l(i)という関係を満たすよう決定する。ここで、少なくとも一部の各iとは、例えば0以外のi(つまり、1≦i≦P
max)のことである。または、w
h(i), w
m(i), w
l(i)は、少なくとも一部の各iについてw
h(i)<w
m(i)≦w
l(i)、それ以外のiのうちの少なくとも一部の各iについてw
h(i)≦w
m(i)<w
l(i)、残り少なくとも一部の各iについてw
h(i)≦w
m(i)≦w
l(i)という関係を満たすよう決定する。w
h(i),w
m(i),w
l(i)のそれぞれは、iが大きくなるにつれてそれぞれw
h(i),w
m(i),w
l(i)の値が小さくなるように決定される。例えば、w
h(i), w
m(i), w
l(i)は、基本周波数がP1でありピッチゲインがG1であるときのHであるH1=δ×P1+ε×f(G1)が式(1)のHであるときのw
O(i)をw
h(i)として求め、基本周波数がP2(ただしP1>P2)でありピッチゲインがG2(ただしG1>G2)であるときのHであるH2=δ×P2+ε×f(G2)が式(1)のHであるときのw
O(i)をw
m(i)として求め、基本周波数がP3(ただしP2>P3)でありピッチゲインがG3(ただしG2>G3)であるときのHであるH3=δ×P3+ε×f(G3)が式(1)のHであるときのw
O(i)をw
l(i)として求めるという予め定めた規則により求める。
【0092】
なお、これらの何れかの規則により予め求めたw
h(i), w
m(i), w
l(i)をテーブルに記憶しておき、基本周波数と正の相関関係にある値と所定の閾値との比較及びピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の閾値との比較によりw
h(i), w
m(i), w
l(i)の何れかをテーブルから選択する構成としてもよい。なお、w
h(i)とw
l(i)を用いて、その間の係数w
m(i)を決定しても良い。すなわち、w
m(i)=β'×w
h(i)+(1-β')×w
l(i)によりw
m(i)を決定しても良い。ここでβ'は、0≦β'≦1であり、基本周波数PやピッチゲインGが大きい値であるほどβ'の値も大きくなり、基本周波数PやピッチゲインGが小さい値であるほどβ'の値も小さくなる関数β'=c(P,G)により、基本周波数P及びピッチゲインGから求める値である。このようにw
m(i)を求めることにより、係数決定部24にはw
h(i) (i=0,1,…,Pmax)を記憶したテーブルとw
l(i) (i=0,1,…,Pmax)を記憶したテーブルの2つのテーブルだけを記憶しておくことで、基本周波数Pが高くかつピッチゲインGが小さいと判断された場合や基本周波数Pが低くかつピッチゲインGが大きいと判断された場合のうちの基本周波数が高いときやピッチゲインが大きいときにはw
h(i)に近い係数を得ることができ、逆に基本周波数が高くかつピッチゲインが小さいと判断された場合や基本周波数が低くかつピッチゲインが大きいと判断された場合のうちの基本周波数が低いときやピッチゲインが小さいときにはw
l(i)に近い係数を得ることができる。
【0093】
なお、i=0の係数w
h(0), w
m(0), w
l(0)については、w
h(0)≦w
m(0)≦w
l(0)の関係を満たしていることは必須ではなく、w
h(0)>w
m(0)または/およびw
m(0)>w
l(0)の関係を満たす値を用いてもよい。
【0094】
第二実施形態によっても、第一実施形態と同様に、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが高いときであってもピッチ成分に起因するスペクトルのピークの発生を抑えた線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、かつ、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが小さいときであってもスペクトル包絡を表現可能な線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、従来よりも分析精度の高い線形予測を実現することができる。
【0095】
なお、上述の説明では、係数の種類は、係数w
h(i), w
m(i), w
l(i)の3個であったが、係数の種類は2個でもよい。例えば、2種類の係数w
h(i), w
l(i)のみを用いてもよい。言い換えれば、上述の説明において、w
m(i)が、w
h(i)又はw
l(i)と等しくてもよい。
【0096】
例えば、係数決定部24は、基本周波数が高く、かつ、ピッチゲインが大きいと判断された場合は係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。それ以外の場合は係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。
【0097】
係数決定部24は、基本周波数が低く、かつ、ピッチゲインが小さいと判断された場合は係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とし、それ以外の場合は係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)としてもよい。その他の処理については、上述の説明と同様である。
【0098】
<第二実施形態の第一変形例>
第二実施形態の第一変形例は、基本周波数と正の相関関係にある値ではなく、基本周波数と負の相関関係にある値と所定の閾値とを比較し、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の閾値とを比較し、それらの比較結果に応じて係数w
O(i)を決定するものである。第二実施形態の第一変形例において基本周波数と負の相関関係にある値と比較される所定の閾値は、第二実施形態において基本周波数と正の相関関係にある値と比較される所定の閾値とは異なる。
【0099】
第二実施形態の第一変形例の線形予測分析装置2の機能構成とフローチャートは、第一実施形態の変形例と同じ
図1と
図2である。第二実施形態の第一変形例の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なる部分以外は、第一実施形態の変形例の線形予測分析装置2と同じである。
【0100】
第二実施形態の第一変形例の係数決定部24の処理の流れの例を
図4に示す。第二実施形態の第一変形例の係数決定部24は、
図4の各ステップS41B、ステップS42、ステップS43、ステップS44、ステップS45の処理を例えば行う。
【0101】
係数決定部24は、入力された周期についての情報に対応する基本周波数と負の相関関係にある値と所定の第三閾値とを比較し(ステップS41B)、また、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の第四閾値とを比較する(ステップS42)。
【0102】
入力された周期についての情報に対応する基本周波数と負の相関関係にある値とは、例えば、入力された周期についての情報に対応する周期そのものである。また、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値とは、例えば、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインそのものである。
【0103】
係数決定部24は、基本周波数と負の相関関係にある値が所定の第三閾値以下である場合には周期が短いと判断し、そうでない場合は周期が長いと判断する。また、係数決定部24は、ピッチゲインが所定の第四閾値以上の場合にはピッチゲインが大きいと判断し、そうでない場合はピッチゲインが小さいと判断する。
【0104】
そして、係数決定部24は、周期が短く、かつ、ピッチゲインが大きいと判断された場合には、予め定めた規則により係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする(ステップS43)。また、周期が短く、かつ、ピッチゲインが小さいと判断された場合、または、周期が長く、かつ、ピッチゲインが大きいと判断された場合には、予め定めた規則により係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする(ステップS44)。また、周期が長く、かつ、ピッチゲインが小さいと判断された場合には、予め定めた規則により係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする(ステップS45)。
【0105】
ここで、w
h(i), w
m(i), w
l(i)は、少なくとも一部の各iについてw
h(i)<w
m(i)<w
l(i)という関係を満たすよう決定する。ここで、少なくとも一部の各iとは、例えば0以外のi(つまり、1≦i≦P
max)のことである。または、w
h(i), w
m(i), w
l(i)は、少なくとも一部の各iについてw
h(i)<w
m(i)≦w
l(i)、それ以外のiのうちの少なくとも一部の各iについてw
h(i)≦w
m(i)<w
l(i)、残り少なくとも一部の各iについてw
h(i)≦w
m(i) ≦w
l(i)という関係を満たすよう決定する。w
h(i),w
m(i),w
l(i)のそれぞれは、iが大きくなるにつれてそれぞれw
h(i),w
m(i),w
l(i)の値が小さくなるように決定される。
【0106】
例えば、w
h(i), w
m(i), w
l(i)は、周期がT1でありピッチゲインがG1であるときのH´であるH1´=ζ×f
s/T1+ε×f(G1)が式(1)のHであるときのw
O(i)をw
h(i)として求め、周期がT2(ただしT1<T2)でありピッチゲインがG2(ただしG1>G2)であるときのH´であるH2´=ζ×f
s/T2+ε×f(G2)が式(1)のHであるときのw
O(i)をw
m(i)として求め、周期がT3(ただしT2<T3)でありピッチゲインがG3(ただしG2>G3)であるときのH´であるH3´=ζ×f
s/T3+ε×f(G3)が式(1)のHであるときのw
O(i)をw
l(i)として求めるという予め定めた規則により求める。
【0107】
なお、これらの何れかの規則により予め求めたw
h(i), w
m(i), w
l(i)をテーブルに記憶しておき、基本周波数と負の相関関係にある値と所定の閾値との比較及びピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の閾値との比較によりw
h(i), w
m(i), w
l(i)の何れかをテーブルから選択する構成としてもよい。なお、w
h(i)とw
l(i)を用いて、その間の係数w
m(i)を決定しても良い。すなわち、w
m(i)=(1-β)×w
h(i)+β×w
l(i)によりw
m(i)を決定しても良い。ここでβは、0≦β≦1であり、かつ、周期Tが長いときやピッチゲインGが小さいときほどβの値が大きくなり、周期Tが短いときやピッチゲインGが大きいときほどβの値が小さくなる関数β=b(T,G)により、周期T及びピッチゲインGから求める値である。このようにw
m(i)を求めれば、係数決定部24にはw
h(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルとw
l(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルの2つのテーブルだけを記憶しておくことで、周期が短くかつピッチゲインが小さいと判断された場合や周期が長くかつピッチゲインが大きいと判断された場合のうちの周期が短いときやピッチゲインが大きいときにはw
h(i)に近い係数を得ることができ、逆に周期が短くかつピッチゲインが小さいと判断された場合や周期が長くかつピッチゲインが大きいと判断された場合のうちの周期が長いときやピッチゲインが小さいときにはw
l(i)に近い係数を得ることができる。
【0108】
なお、i=0の係数w
h(0), w
m(0), w
l(0)については、w
h(0)≦w
m(0)≦w
l(0)の関係を満たしていることは必須ではなく、w
h(0)>w
m(0)または/およびw
m(0)>w
l(0)の関係を満たす値を用いてもよい。
【0109】
第二実施形態の第一変形例によっても、第一実施形態の変形例と同様に、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが高いときであってもピッチ成分に起因するスペクトルのピークの発生を抑えた線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、かつ、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが小さいときであってもスペクトル包絡を表現可能な線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、従来よりも分析精度の高い線形予測を実現することができる。
【0110】
なお、上述の説明では、3種類の係数w
h(i), w
m(i), w
l(i)を用いたが、係数の種類は2個でもよい。例えば、2種類の係数w
h(i), w
l(i)のみを用いてもよい。言い換えれば、上述の説明において、w
m(i)が、w
h(i)又はw
l(i)と等しくてもよい。
【0111】
例えば、係数決定部24は、周期が短く、かつ、ピッチゲインが大きいと判断された場合は係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。それ以外の場合は係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。
【0112】
係数決定部24は、周期が長く、かつ、ピッチゲインが小さいと判断された場合は係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とし、それ以外の場合は係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)としてもよい。その他の処理については、上述の説明と同様である。
【0113】
<第二実施形態の第二変形例>
上述の第二実施形態では、基本周波数と正の相関関係にある値を1個の閾値と比較し、また、ピッチゲインと正の相関関係にある値を1個の閾値と比較することにより係数w
O(i)を決定したが、第二実施形態の第二変形例は、これらの値のそれぞれを2個以上の閾値と比較することにより係数w
O(i)を決定するものである。以下、基本周波数と正の相関関係にある値を2個の閾値fth1',fth2'と比較し、ピッチゲインと正の相関関係にある値を2個の閾値gth1,gth2と比較することにより係数w
O(i)を決定する方法を例に挙げて説明する。
【0114】
閾値fth1',fth2'は、0<fth1'<fth2'という関係を満たし、閾値gth1, gth2は、0<gth1<gth2という関係を満たすとする。
【0115】
係数決定部24は、入力された基本周波数についての情報に対応する基本周波数と正の相関関係にある値と閾値fth1',fth2'とを比較し、また、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値と閾値gth1, gth2とを比較する。
【0116】
入力された基本周波数についての情報に対応する基本周波数と正の相関関係にある値とは、例えば、入力された基本周波数についての情報に対応する基本周波数そのものである。また、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値とは、例えば、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインそのものである。
【0117】
係数決定部24は、基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth2'より大きい場合には、基本周波数が高いと判断し、基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'よりも大きく閾値fth2'以下の場合には、基本周波数が中程度と判断し、基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'以下の場合には、基本周波数が低いと判断する。また、係数決定部24は、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2よりも大きい場合には、ピッチゲインが大きいと判断し、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下の場合にはピッチゲインが中程度と判断し、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合にはピッチゲインが小さいと判断する。
【0118】
そして、係数決定部24は、基本周波数が低い場合は、ピッチゲインの大きさに関わらず、予め定めた規則により係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。また、基本周波数が中程度で、かつ、ピッチゲインが小さい場合には、予め定めた規則により係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。また、基本周波数が中程度で、かつ、ピッチゲインが大きい又は中程度の場合には、予め定めた規則により係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。また、基本周波数が高く、ピッチゲインが小さい又は中程度の場合には、予め定めた規則により係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。また、基本周波数が高く、ピッチゲインが大きい場合には、予め定めた規則により係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。
【0119】
ここで、w
h(i), w
m(i), w
l(i)は、少なくとも一部の各iについてw
h(i)<w
m(i)<w
l(i)という関係を満たすよう決定する。ここで、少なくとも一部の各iとは、例えば0以外のi(つまり、1≦i≦P
max)のことである。または、w
h(i), w
m(i), w
l(i)は、少なくとも一部の各iについてw
h(i)<w
m(i)≦w
l(i)、それ以外のiのうちの少なくとも一部の各iについてw
h(i)≦w
m(i)<w
l(i)、残り少なくとも一部の各iについてw
h(i)≦w
m(i) ≦w
l(i)という関係を満たすよう決定する。w
h(i), w
m(i), w
l(i)のそれぞれは、iが大きくなるにつれてそれぞれw
h(i), w
m(i), w
l(i)の値が小さくなるように決定される。
【0120】
なお、i=0の係数w
h(0), w
m(0), w
l(0)については、w
h(0)≦w
m(0)≦w
l(0)の関係を満たしていることは必須ではなく、w
h(0)>w
m(0)または/およびw
m(0)>w
l(0)の関係を満たす値を用いてもよい。
【0121】
以上の関係をまとめた図を、
図5に示す。なお、この例では、基本周波数が低い場合はピッチゲインの大きさに関わらず同じ係数を選択する例を示しているが、これに限らず、基本周波数が低い場合に、ピッチゲインが小さいほど係数が大きくなるように係数を決定してもよい。要するに、ピッチゲインが取り得る値の範囲を構成する3個の範囲の少なくとも2個の範囲について、少なくとも一部の各iについて、基本周波数が低い場合に決定される係数が基本周波数が高い場合に決定される係数よりも大きい場合が含まれ、かつ、基本周波数が取り得る値の範囲を構成する3個の範囲の少なくとも2個の範囲について、ピッチゲインが小さいときに決定される係数がピッチゲインが大きいときに決定される係数よりも大きい場合が含まれる。
【0122】
なお、これらの何れかの規則により予め求めたw
h(i), w
m(i), w
l(i)をテーブルに記憶しておき、基本周波数と正の相関関係にある値と所定の閾値との比較及びピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の閾値との比較によりw
h(i), w
m(i), w
l(i)の何れかをテーブルから選択する構成としてもよい。なお、w
h(i)とw
l(i)を用いて、その間の係数w
m(i)を決定しても良い。すなわち、w
m(i)=β'×w
h(i)+(1-β')×w
l(i)によりw
m(i)を決定しても良い。ここで、β'は0≦β'≦1であり、基本周波数PやピッチゲインGが大きい値であるほどβ'の値も大きくなり、基本周波数PやピッチゲインGが小さい値であるほどβ'の値も小さくなる関数β'=c(P,G)により、基本周波数P及びピッチゲインGから求める値である。このように、w
m(i)を求めることにより、係数決定部24にはw
h(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルとw
l(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルの2つのテーブルだけを記憶しておくことで、基本周波数Pが中程度かつピッチゲインGが大きい又は中程度の場合や基本周波数Pが高くかつピッチゲインGが小さい又は中程度の場合のうちの基本周波数Pが高くピッチゲインGが大きいときにはw
h(i)に近い係数を得ることができ、逆に基本周波数Pが中程度かつピッチゲインGが大きい又は中程度の場合や基本周波数Pが高くかつピッチゲインGが小さい又は中程度の場合のうちの基本周波数Pが低くピッチゲインGが小さいときにはw
l(i)に近い係数を得ることができる。
【0123】
第二実施形態の第二変形例によっても、第二実施形態と同様に、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが高いときであってもピッチ成分に起因するスペクトルのピークの発生を抑えた線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、かつ、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが低いときであってもスペクトル包絡を表現可能な線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、従来よりも分析精度の高い線形予測を実現することができる。
【0124】
<第二実施形態の第三変形例>
上述の第二実施形態の第一変形例では、基本周波数と負の相関関係にある値を1個の閾値と比較し、また、ピッチゲインと正の相関関係にある値を1個の閾値と比較することにより係数w
O(i)を決定したが、第二実施形態の第三変形例はこれらの値のそれぞれを2個以上の閾値を用いて係数w
O(i)を決定するものである。以下、これらの値のそれぞれを2個の閾値fth1,fth2,gth1,gth2を用いて係数を決定する方法を例に挙げて説明する。
【0125】
第二実施形態の第三変形例の線形予測分析装置2の機能構成とフローチャートは、第二実施形態の第一変形例と同じ
図1と
図2である。第二実施形態の第三変形例の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なる部分以外は、第二実施形態の第一変形例の線形予測分析装置2と同じである。
【0126】
閾値fth1,fth2は、0<fth1<fth2という関係を満たし、閾値gth1, gth2は、0<gth1<gth2という関係を満たすとする。
【0127】
係数決定部24は、入力された周期についての情報に対応する基本周波数と負の相関関係にある値と、閾値fth1,fth2とを比較し、また、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値と閾値gth1, gth2とを比較する。
【0128】
入力された周期についての情報に対応する基本周波数と負の相関関係にある値とは、例えば、入力された周期についての情報に対応する周期そのものである。また、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値とは、例えば、入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインそのものである。
【0129】
係数決定部24は、基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1未満の場合には、周期が短いと判断し、基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1以上、かつ、閾値fth2未満の場合には周期の長さが中程度と判断し、基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth2以上の場合には周期が長いと判断する。また、係数決定部24は、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合には、ピッチゲインが大きいと判断し、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下の場合にはピッチゲインが中程度と判断し、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合にはピッチゲインが小さいと判断する。
【0130】
そして、係数決定部24は、周期が長い場合は、ピッチゲインの大きさに関わらず、予め定めた規則により係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。また、周期の長さが中程度で、かつ、ピッチゲインが小さい場合には、予め定めた規則により係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
l(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。また、周期の長さが中程度で、かつ、ピッチゲインが大きい又は中程度の場合には、予め定めた規則により係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。また、周期が短く、ピッチゲインが小さい又は中程度の場合には、予め定めた規則により係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
m(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。また、周期が短く、ピッチゲインが大きい場合には、予め定めた規則により係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、この決定された係数w
h(i) (i=0,1,…,P
max)をw
O(i) (i=0,1,…,P
max)とする。
【0131】
ここで、w
h(i), w
m(i), w
l(i)は、少なくとも一部の各iについてw
h(i)<w
m(i)<w
l(i)という関係を満たすよう決定する。ここで、少なくとも一部の各iとは、例えば0以外のi(つまり、1≦i≦P
max)のことである。または、w
h(i), w
m(i), w
l(i)は、少なくとも一部の各iについてw
h(i)<w
m(i)≦w
l(i)、それ以外のiのうちの少なくとも一部の各iについてw
h(i)≦w
m(i)<w
l(i)、残り少なくとも一部の各iについてw
h(i)≦w
m(i) ≦w
l(i)という関係を満たすよう決定する。w
h(i), w
m(i), w
l(i)のそれぞれは、iが大きくなるにつれてそれぞれw
h(i), w
m(i), w
l(i)の値が小さくなるように決定される。
【0132】
なお、i=0の係数w
h(0), w
m(0), w
l(0)については、w
h(0)≦w
m(0)≦w
l(0)の関係を満たしていることは必須ではなく、w
h(0)>w
m(0)または/およびw
m(0)>w
l(0)の関係を満たす値を用いてもよい。
【0133】
なお、これらの何れかの規則により予め求めたw
h(i), w
m(i), w
l(i)をテーブルに記憶しておき、基本周波数と負の相関関係にある値と所定の閾値との比較及びピッチゲインと正の相関関係にある値と所定の閾値との比較によりw
h(i), w
m(i), w
l(i)の何れかをテーブルから選択する構成としてもよい。なお、w
h(i)とw
l(i)を用いて、その間の係数w
m(i)を決定しても良い。すなわち、w
m(i)=(1-β)×w
h(i)+β×w
l(i)によりw
m(i)を決定しても良い。ここで、βは0≦β≦1であり、周期Tが長いときやピッチゲインGが小さいときほどβの値が大きくなり、周期Tが短いときやピッチゲインGが大きいときほどβの値が小さくなる関数β=b(T,G)により、周期T及びピッチゲインGから求める値である。このように、w
m(i)を求めることにより、係数決定部24にはw
h(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルとw
l(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルの2つのテーブルだけを記憶しておくことで、周期Tが中程度かつピッチゲインGが大きい又は中程度の場合や周期Tが短くかつピッチゲインGが小さい又は中程度の場合のうちの周期Tが短くピッチゲインGが大きいときにはw
h(i)に近い係数を得ることができ、逆に周期Tが中程度かつピッチゲインGが大きい又は中程度の場合や周期Tが短くかつピッチゲインGが小さい又は中程度の場合のうちの周期Tが長くピッチゲインGが小さいときにはw
l(i)に近い係数を得ることができる。
【0134】
以上の関係をまとめた図を、
図6に示す。なお、この例では、周期が長い場合はピッチゲインの大きさに関わらず同じ係数を選択する例を示しているが、これに限らず、周期が長い場合に、ピッチゲインが小さいほど係数が大きくなるように係数を決定してもよい。要するに、ピッチゲインが取り得る値の範囲を構成する3個の範囲の少なくとも2個の範囲について、少なくとも一部の各iについて、周期が長い場合に決定される係数が周期が短い場合に決定される係数よりも大きい場合が含まれ、かつ、周期が取り得る値の範囲を構成する3個の範囲の少なくとも2個の周期の範囲について、ピッチゲインが小さいときに決定される係数がピッチゲインが大きいときに決定される係数よりも大きい場合が含まれる。
【0135】
第二実施形態の第三変形例によっても、第二実施形態の第一変形例と同様に、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが高いときであってもピッチ成分に起因するスペクトルのピークの発生を抑えた線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、かつ、入力信号の基本周波数及びピッチゲインが低いときであってもスペクトル包絡を表現可能な線形予測係数に変換可能な係数を求めることができ、従来よりも分析精度の高い線形予測を実現することができる。
【0136】
[第三実施形態]
第三実施形態は、複数個の係数テーブルを用いて係数w
O(i)を決定するものである。第三実施形態は、係数決定部24における係数w
O(i)の決定方法のみが第一実施形態と異なり、他の点については第一実施形態と同様である。以下、第一実施形態と異なる部分を中心に説明し、第一実施形態と同様の部分については重複説明を省略する。
【0137】
第三実施形態の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なり、
図7に例示するように、係数テーブル記憶部25を更に備えている以外は、第一実施形態の線形予測分析装置2と同じである。係数テーブル記憶部25には、2個以上の係数テーブルが記憶されている。以下では、まず係数テーブル記憶部25に3個以上の係数テーブルが記憶されている例について説明する。
【0138】
第三実施形態の係数決定部24の処理の流れの例を
図8に示す。第三実施形態の係数決定部24は、
図8のステップS46、ステップS47の処理を例えば行う。
【0139】
まず、係数決定部24は、入力された基本周波数についての情報に対応する基本周波数と正の相関関係にある値及び入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値を用いて、係数テーブル記憶部25に記憶された3個以上の係数テーブルから、その基本周波数と正の相関関係にある値とそのピッチゲインと正の相関関係にある値とに応じた1個の係数テーブルtを選択する(ステップS46)。例えば、基本周波数についての情報に対応する基本周波数と正の相関関係にある値は、基本周波数についての情報に対応する基本周波数であり、ピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値は、ピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインである。
【0140】
例えば、係数テーブル記憶部25に、異なる3個の係数テーブルt0, t1, t2が記憶されており、係数テーブルt0には係数w
t0(i) (i=0,1,…,P
max)が格納されており、係数テーブルt1には係数w
t1(i) (i=0,1,…,P
max)、係数テーブルt2には係数w
t2(i) (i=0,1,…,P
max)が格納されているとする。3個の係数テーブルt0, t1, t2のそれぞれには、少なくとも一部の各iについてw
t0(i)<w
t1(i)≦w
t2(i)であり、それ以外のiのうちの少なくとも一部の各iについてw
t0(i)≦w
t1(i)<w
t2(i)であり、残りの各iについてw
t0(i)≦w
t1(i)≦w
t2(i)となるように定められた係数w
t0(i) (i=0,1,…,P
max)と係数w
t1(i) (i=0,1,…,P
max) と係数w
t2(i) (i=0,1,…,P
max)が格納されているとする。
【0141】
このとき、係数決定部24は、基本周波数と正の相関関係にある値が所定の第一閾値以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第二閾値以上であれば係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択し、基本周波数と正の相関関係にある値が所定の第一閾値より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第二閾値以上である場合、又は、基本周波数と正の相関関係にある値が所定の第一閾値以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第二閾値より小さい場合には係数テーブルt1を係数テーブルtとして選択し、基本周波数と正の相関関係にある値が所定の第一閾値より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第二閾値より小さい場合には係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択する。
【0142】
すなわち、基本周波数と正の相関関係にある値が所定の第一閾値以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第二閾値以上である場合、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが大きいと判断された場合には、各iについての係数が最も小さいの係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択し、基本周波数と正の相関関係にある値が所定の第一閾値より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第二閾値より小さい場合、すなわち、基本周波数が低くピッチゲインが小さいと判断された場合には、各iについての係数が最も大きい係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択する。
【0143】
言い換えれば、係数テーブル記憶部25に記憶されている3個の係数テーブルの中の、基本周波数と正の相関関係にある値が第一値であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が第三値である場合に係数決定部24により選択される係数テーブルt0を第一係数テーブルt0とし、係数テーブル記憶部25に記憶されている3個の係数テーブルの中の、基本周波数と正の相関関係にある値が第一値よりも小さい第二値であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が第三値よりも小さい第四値である場合に係数決定部24により選択される係数テーブルt2を第二係数テーブルt2として、少なくとも一部の各次数iに対して、第二係数テーブルt2における各次数iに対応する係数の大きさは、第一係数テーブルt0における各次数iに対応する係数の大きさよりも大きい。ここで、第二値<所定の第一閾値≦第一値であり、第四値<所定の第二閾値≦第三値であるとする。
【0144】
また、第一係数テーブルt0及び第二係数テーブルt2が選択されない場合に選択される係数テーブルである係数テーブルt1を第三係数テーブルt1として、少なくとも一部の各次数iに対して、第三係数テーブルt1における前記各次数iに対応する係数は、第一係数テーブルt0における各次数iに対応する係数よりも大きく、かつ、第二係数テーブルt2における各次数iに対応する係数よりも小さい。
【0145】
そして、係数決定部24は、その選択された係数テーブルtに格納された各次数iの係数w
t(i)を係数w
O(i)とする(ステップS47)。すなわち、w
O(i)=w
t(i)とする。言い換えれば、係数決定部24は、選択された係数テーブルtから各次数iに対応する係数w
t(i)の大きさを取得し、取得された各次数iに対応する大きさの係数w
t(i)をw
O(i)とする。
【0146】
第三実施形態では、第一実施形態及び第二実施形態とは異なり、基本周波数及びピッチゲインと正の相関関係にある式に基づいて係数w
O(i)を計算する必要がないため、より少ない演算処理量でを行うことができる。
【0147】
なお、係数テーブル記憶部25に記憶されている係数テーブルの個数は2個でもよい。
【0148】
例えば、係数テーブル記憶部25に2個の係数テーブルt0, t2が記憶されているとする。この場合、係数決定部24は、以下のようにして、これらの2個の係数テーブルt0, t2に基づいて係数w
O(i)を決定する。
【0149】
例えば、係数決定部24は、基本周波数と正の相関関係にある値が所定の第一閾値以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第二閾値以上である場合、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが大きいと判断された場合には、係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択する。それ以外の場合は係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択する。
【0150】
係数決定部24は、基本周波数と正の相関関係にある値が所定の第一閾値より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第二閾値より小さい場合、すなわち、基本周波数が低くピッチゲインが小さいと判断された場合には、係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択し、それ以外の場合は係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択してもよい。
【0151】
この係数テーブル記憶部25に2個の係数テーブルt0, t2が記憶されいる場合においても、基本周波数と正の相関関係にある値が第一値であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が第三値である場合に係数決定部24により選択される係数テーブルt0である第一係数テーブルt0における各次数iに対応する係数の大きさよりも、基本周波数と正の相関関係にある値が第一値よりも小さい第二値であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が第三値よりも小さい第四値である場合に係数決定部24により選択される係数テーブルt2である第二係数テーブルt2における各次数iに対応する係数の大きさは、大きいと言える。ここで、第二値<所定の第一閾値≦第一値であり、第四値<所定の第二閾値≦第三値であるとする。
【0152】
<第三実施形態の第一変形例>
第三実施形態の第一変形例は、係数決定部24は、入力された基本周波数と負の相関関係にある値及びピッチゲインと正の相関関係にある値を用いて、係数テーブル記憶部25に記憶された2個以上の係数テーブルから、その入力された基本周波数と負の相関関係にある値及びピッチゲインと正の相関関係にある値に応じた1個の係数テーブルtを選択するものである。
【0153】
第三実施形態の第一変形例の線形予測分析装置2の機能構成とフローチャートは、第三実施形態と同じ
図7と
図8である。第三実施形態の第一変形例の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なる部分以外は、第三実施形態の線形予測分析装置2と同じである。
【0154】
以下では、まず係数テーブル記憶部25に記憶されている3個の係数テーブルt0, t1, t2の中から1個の係数テーブルtを選択する例について説明する。
【0155】
まず、係数決定部24は、入力された周期についての情報に対応する基本周波数と負の相関関係にある値及び入力されたピッチゲインについての情報に対応するピッチゲインと正の相関関係にある値を用いて、係数テーブル記憶部25に記憶された3個の係数テーブルから、その基本周波数と負の相関関係にある値とそのピッチゲインと正の相関関係にある値とに応じた1個の係数テーブルtを選択する(ステップS46)。この場合、係数決定部24は、基本周波数と負の相関関係にある値が所定の第三閾値以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第四閾値未満であれば係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択し、基本周波数と負の相関関係にある値が所定の第三閾値より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第四閾値未満の場合、又は、基本周波数と負の相関関係にある値が所定の第三閾値以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第四閾値以上である場合には係数テーブルt1を係数テーブルtとして選択し、基本周波数と負の相関関係にある値が所定の第三閾値より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第四閾値以上である場合には係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択する。
【0156】
すなわち、基本周波数と負の相関関係にある値が所定の第三閾値未満であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第四閾値以上である場合、すなわち、周期が短くピッチゲインが大きいと判断された場合には、各iについての係数が最も小さい係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択し、基本周波数と負の相関関係にある値が所定の第三閾値以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第四閾値より小さい場合、すなわち周期が長くピッチゲインが小さいと判断された場合には、各iについての係数が最も大きい係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択する。
【0157】
言い換えれば、係数テーブル記憶部25に記憶されている3個の係数テーブルの中の、基本周波数と負の相関関係にある値が第一値であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が第三値である場合に係数決定部24により選択される係数テーブルt0を第一係数テーブルt0とし、係数テーブル記憶部25に記憶されている3個の係数テーブルの中の、基本周波数と負の相関関係にある値が第一値よりも大きい第二値であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が第三値よりも小さい第四値である場合に係数決定部24により選択される係数テーブルt2を第二係数テーブルt2として、少なくとも一部の各次数iに対して、第二係数テーブルt2における各次数iに対応する係数の大きさは、第一係数テーブルt0における各次数iに対応する係数の大きさよりも大きい。ここで、第一値<所定の第三閾値≦第二値であり、第四値<所定の第四閾値≦第三値であるとする。
【0158】
また、第一係数テーブルt0及び第二係数テーブルt2が選択されない場合に選択される係数テーブルである係数テーブルt1を第三係数テーブルとして、少なくとも一部の各次数iに対して、第三係数テーブルt1における前記各次数iに対応する係数は、第一係数テーブルt0における各次数iに対応する係数よりも大きく、かつ、第二係数テーブルt2における各次数iに対応する係数よりも小さい。
【0159】
第三実施形態の第一変形例は、第一実施形態の変形例及び第二実施形態の第一変形例とは異なり、基本周波数と負の相関関係にあり、ピッチゲインと正の相関関係にある式に基づいて係数w
O(i)を計算する必要がないため、より少ない演算処理量でを行うことができる。
【0160】
第三実施形態の第一変形例においても、係数テーブル記憶部25に記憶されている係数テーブルの個数は2個でもよい。
【0161】
例えば、係数テーブル記憶部25に2個の係数テーブルt0, t2が記憶されているとする。この場合、係数決定部24は、以下のようにして、これらの2個の係数テーブルt0,t2に基づいて係数w
O(i)を決定する。
【0162】
例えば、係数決定部24は、基本周波数と負の相関関係にある値が所定の第三閾値より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第四閾値以上である場合、すなわち、周期が短くピッチゲインが大きいと判断された場合には、係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択する。それ以外の場合は係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択する。
【0163】
係数決定部24は、基本周波数と負の相関関係にある値が所定の第三閾値以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が所定の第四閾値より小さい場合、すなわち、周期が長くピッチゲインが小さいと判断された場合には、係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択し、それ以外の場合は係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択してもよい。
【0164】
この係数テーブル記憶部25に2個の係数テーブルt0, t2が記憶されいる場合においても、基本周波数と負の相関関係にある値が第一値であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が第三値である場合に係数決定部24により選択される係数テーブルt0である第一係数テーブルt0における各次数iに対応する係数の大きさよりも、基本周波数と負の相関関係にある値が第一値よりも大きい第二値であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が第三値よりも小さい第四値である場合に係数決定部24により選択される係数テーブルt2である第二係数テーブルt2における各次数iに対応する係数の大きさは、大きいと言える。ここで、第一値<所定の第三閾値≦第二値であり、第四値<所定の第四閾値≦第三値であるとする。
【0165】
<第三実施形態の第二変形例>
第三実施形態では、基本周波数と正の相関関係にある値を1個の閾値と比較し、また、ピッチゲインと正の相関関係にある値を1個の閾値と比較することにより係数テーブルを決定したが、第三実施形態の第二変形例はこれらの値のそれぞれを2個以上の閾値と比較し、これらの比較結果に応じて係数w
O(i)を決定するものである。
【0166】
第三実施形態の第二変形例の線形予測分析装置2の機能構成とフローチャートは、第三実施形態と同じ
図7と
図8である。第三実施形態の第二変形例の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なる部分以外は、第三実施形態の線形予測分析装置2と同じである。
【0167】
係数テーブル記憶部25には、係数テーブルt0, t1, t2が記憶されている。3個の係数テーブルt0, t1, t2には、少なくとも一部のiについてw
t0(i)<w
t1(i)≦w
t2(i)であり、それ以外のiのうちの少なくとも一部の各iについてw
t0(i)≦w
t1(i)<w
t2(i)であり、残りの各iについてw
t0(i)≦w
t1(i)≦w
t2(i)であるように定められた係数w
t0(i) (i=0,1,…,P
max)、係数w
t1(i) (i=0,1,…,P
max)、係数w
t2(i) (i=0,1,…,P
max)がそれぞれ格納されている。ただし、i=0の係数w
t0(0), w
t1(0), w
t2(0)については、w
t0(0)≦w
t1(0)≦w
t2(0)の関係を満たしていることは必須ではなく、w
t0(0)>w
t1(0)または/およびw
t1(0)>w
t2(0)の関係にある値であってもよい。
【0168】
ここで、0<fth1'<fth2'という関係を満たす閾値fth1',fth2'と、0<gth1<gth2という関係を満たす閾値gth1, gth2とが定められているとする。
【0169】
係数決定部24は、基本周波数と正の相関関係にある値が取り得る範囲を構成する3つの範囲の少なくとも2つの範囲について、ピッチゲインと正の相関関係にある値が小さいときに決定される係数がピッチゲインと正の相関関係にある値が大きいときに決定される係数よりも大きい場合が含まれ、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が取り得る範囲を構成する3つの範囲の少なくとも2つの範囲について、基本周波数と正の相関関係にある値が小さいときに決定される係数が基本周波数と正の相関関係にある値が大きいときに決定される係数よりも大きい場合が含まれるように、係数テーブル記憶部25に記憶された係数テーブルを選択して、選択された係数テーブルに格納されている係数を係数w
O(i)として得る。
【0170】
基本周波数と正の相関関係にある値が取り得る範囲を構成する3つの範囲とは、例えば、基本周波数と正の相関関係にある値>fth2'の範囲(すなわち、基本周波数と正の相関関係にある値が大きい範囲)、fth1'<基本周波数と正の相関関係にある値≦fth2'の範囲(すなわち、基本周波数と正の相関関係にある値が中程度の範囲)、fth1'≧基本周波数と正の相関関係にある値の範囲(すなわち、基本周波数と正の相関関係にある値が小さい範囲)、の3つの範囲のことである。
【0171】
また、ピッチゲインと正の相関関係にある値が取り得る範囲を構成する3つの範囲とは、例えば、ピッチゲインと正の相関関係にある値≦gth1の範囲(すなわち、ピッチゲインと正の相関関係にある値が小さい範囲)、gth1<ピッチゲインと正の相関関係にある値≦gth2の範囲(すなわち、ピッチゲインと正の相関関係にある値が中程度の範囲)、gth2<ピッチゲインと正の相関関係にある値の範囲(すなわち、ピッチゲインと正の相関関係にある値が大きい範囲)、の3つの範囲のことである。
【0172】
係数決定部24は、例えば、
(1) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth2'より大きく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが大きいと判断された場合には、係数テーブルt0の各係数w
t0(i)が係数w
O(i)として選択され、
(2) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth2'より大きく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが中程度と判断された場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(3) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth2'より大きく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが小さいと判断された場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(4) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'よりも大きく閾値fth2'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、基本周波数が中程度でありピッチゲインが大きいと判断された場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(5) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'よりも大きく閾値fth2'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、基本周波数が中程度でありピッチゲインが中程度と判断された場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(6) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'よりも大きく閾値fth2'以下であり、かつ、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、基本周波数が中程度でありピッチゲインが小さいと判断された場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(7) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、基本周波数が低くピッチゲインが大きいと判断された場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(8) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、基本周波数が低くピッチゲインが中程度と判断された場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(9) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、基本周波数が低くピッチゲインが小さいと判断された場合には、係数テーブルt2の各係数w
t2(i)が係数w
O(i)として選択されるように、係数テーブル記憶部25に記憶された係数テーブルから係数w
O(i)を選択する。
【0173】
言い換えれば、(1)の場合には係数決定部24により係数テーブルt0から係数が取得され、(9)の場合には係数決定部24により係数テーブルt2から係数が取得され、(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8)の場合には係数決定部24により係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルから係数が取得される。
【0174】
また、(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8)の少なくとも1つの場合には係数決定部24により係数テーブルt1から係数が取得される。
【0175】
さらに、k=1,2,…,9として、(k)の場合に前記係数決定ステップで係数が取得される係数テーブルtj
kの番号をj
kとして、j
1≦j
2≦j
3であり、j
4≦j
5≦j
6であり、j
7≦j
8≦j
9であり、j
1≦j
4≦j
7であり、j
2≦j
5≦j
8であり、j
3≦j
6≦j
9である。
【0176】
<第三実施形態の第二変形例の具体例>
以下、第三実施形態の第二変形例の具体例について説明する。
【0177】
線形予測分析装置2には、ハイパスフィルタを通り、12.8 kHzにサンプリング変換され、プリエンファシス処理をされた1フレームあたりNサンプルのディジタル音響信号である入力信号X
O(n) (n=0,1,…,N-1)と、基本周波数についての情報として現フレームの一部の入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, Nn)(ただし、Nnは、Nn<Nという関係を満たす所定の正の整数。)について基本周波数計算部930で求めた基本周波数Pと、ピッチゲインについての情報として現フレームの一部の入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, Nn)についてピッチゲイン計算部950で求めたピッチゲインGとが入力される。
【0178】
自己相関計算部21は、入力信号X
O(n)から自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)を下記の式(8)で求める。
【数12】
【0179】
係数テーブル記憶部25には、係数テーブルt0と、係数テーブルt1と、係数テーブルt2とが記憶されているものとする。
【0180】
係数テーブルt0は、式(13)の従来法のf
0=60Hzと同様の係数テーブルであり、各次数の係数w
tO(i)が次のように定められている。
【0181】
w
t0(i)=[1.0001, 0.999566371, 0.998266613, 0.996104103, 0.993084457, 0.989215493, 0.984507263, 0.978971839, 0.972623467, 0.96547842, 0.957554817, 0.948872864, 0.939454317, 0.929322779, 0.918503404, 0.907022834, 0.894909143]
係数テーブルt1には、式(13)の従来法のf
0=40Hzのテーブルであり、各次数の係数w
t1(i)が次のように定められている。
【0182】
w
t1(i)=[ 1.0001, 0.999807253, 0.99922923, 0.99826661, 0.99692050, 0.99519245, 0.99308446, 0.99059895, 0.98773878, 0.98450724, 0.98090803, 0.97694527, 0.97262346, 0.96794752, 0.96292276, 0.95755484, 0.95184981]
係数テーブルt2には、式(13)の従来法のf
0=20Hzのテーブルであり、各次数の係数w
t2(i)が次のように定められている。
【0183】
w
t2(i)=[ 1.0001, 0.99995181, 0.99980725, 0.99956637, 0.99922923, 0.99879594, 0.99826661, 0.99764141, 0.99692050, 0.99610410, 0.99519245, 0.99418581, 0.99308446, 0.99188872, 0.99059895, 0.98921550, 0.98773878]
ここで、上述のw
tO(i), w
t1(i), w
t2(i)のリストは、P
max=16として、i=0,1,2,…,16の順に左からiに対応する係数の大きさを並べたものである。すなわち上述の例では、例えばw
t0(0)=1.001であり、w
t0(3)=0.996104103である。
【0184】
図9に係数テーブルt0, t1, t2の係数w
t0(i), w
t1(i), w
t2(i)の大きさをグラフで表す。
図9のグラフの点線は係数テーブルt0の係数w
t0(i)の大きさを表し、
図9のグラフの一点鎖線は係数テーブルt1の係数w
t1(i)の大きさを表し、
図9のグラフの実線は係数テーブルt2の係数w
t2(i)の大きさを表す。
図9のグラフの横軸は次数iを意味し、
図9のグラフの縦軸は係数の大きさを表す。このグラフからも分かるように、各係数テーブル内では、iの値が大きくなるにしたがって、係数の大きさが単調減少する関係にある。また、同じiの値に対応する異なる係数テーブルの係数の大きさを比較すると、i≧1に対して、w
t0(i)<w
t1(i)<w
t2(i)の関係を満たしている。係数テーブル記憶部25に記憶される複数の係数テーブルは、このような関係を持つものであれば、上述の例に限らない。
【0185】
また、非特許文献1や非特許文献2に記載されているように、i=0の係数だけ特別扱いをして、w
t0(0)=w
t1(0)=w
t2(0)=1.0001やw
t0(0)=w
t1(0)=w
t2(0)=1.003という経験的な値を用いてもよい。なお、i=0についてはw
t0(i)<w
t1(i)<w
t2(i)の関係を満たしている必要はなく、また、w
t0(0),w
t1(0),w
t2(0)が必ずしも同じ値でなくともよい。例えば、w
t0(0)=1.0001, w
t1(0)=1.0, w
t2(0)=1.0のように、i=0に関してのみw
t0(0), w
t1(0), w
t2(0)のうちの2つ以上の値の大小関係がw
t0(i)<w
t1(i)<w
t2(i)の関係を満たさなくてもよい。
【0186】
本具体例では、閾値fth1'は80であり、閾値fth2'は160であり、閾値gth1は0.3であり、閾値gth2は0.6である。
【0187】
係数決定部24には、基本周波数PとピッチゲインGとが入力される。
【0188】
係数決定部24は、基本周波数が閾値fth1'=80Hz以下の場合には、すなわち基本周波数が低い場合には、係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択する。
【0189】
また、係数決定部24は、基本周波数が閾値fth1'=80Hzより大きくかつfth2'=160Hz以下、かつ、ピッチゲインが閾値gth1=0.3以下の場合には、すなわち、基本周波数が中程度でありピッチゲインが小さい場合には、係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択する。
【0190】
また、係数決定部24は、基本周波数が閾値fth1'=80Hzより大きくかつfth2'=160Hz以下、かつ、ピッチゲインが閾値gth1=0.3より大きい場合には、すなわち、基本周波数が中程度でありピッチゲインが大きい又は中程度である場合には、係数テーブルt1を係数テーブルtとして選択する。
【0191】
また、係数決定部24は、基本周波数が閾値fth2'=160Hzより大きく、かつ、ピッチゲインが閾値gth2=0.6以下の場合には、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが中程度又は小さい場合には、係数テーブルt1を係数テーブルtとして選択する。
【0192】
さらに、係数決定部24は、基本周波数が閾値fth2'=160Hzより大きく、かつ、ピッチゲインが閾値gth1=0.6より大きい場合には、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが大きい場合には、係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択する。
【0193】
基本周波数及びピッチゲインと選択されるテーブルとの関係を
図10に示す。
【0194】
そして、係数決定部24は、その選択された係数テーブルtの各係数w
t(i)を係数w
O(i)とする。すなわち、w
O(i)=w
t(i)とする。言い換えれば、係数決定部24は、選択された係数テーブルtから各次数iに対応する係数w
t(i)の大きさを取得し、取得された各次数iに対応する係数w
t(i)をw
O(i)とする。
【0195】
その後、係数決定部24は、第一実施形態と同様にして、係数w
O(i)を自己相関R
O(i)に乗じることにより、変形自己相関R'
O(i)を求める。
【0196】
<第三実施形態の第三変形例>
第三実施形態の第一変形例では、基本周波数と負の相関関係にある値を1個の閾値と比較し、また、ピッチゲインと正の相関関係にある値を1個の閾値と比較することにより係数テーブルを決定したが、第三実施形態の第三変形例はこれらの値のそれぞれを2個以上の閾値と比較し、これらの比較結果に応じて係数w
O(i)を決定するものである。
【0197】
第三実施形態の第三変形例の線形予測分析装置2の機能構成とフローチャートは、第三実施形態と同じ
図7と
図8である。第三実施形態の第三変形例の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なる部分以外は、第三実施形態の線形予測分析装置2と同じである。
【0198】
係数テーブル記憶部25には、係数テーブルt0, t1, t2が記憶されている。3個の係数テーブルt0, t1, t2には、少なくとも一部のiについてw
t0(i)<w
t1(i)≦w
t2(i)であり、それ以外のiのうちの少なくとも一部の各iについてw
t0(i)≦w
t1(i)<w
t2(i)であり、残りの各iについてw
t0(i)≦w
t1(i)≦w
t2(i)であるように定められた係数w
t0(i) (i=0,1,…,P
max)、係数w
t1(i) (i=0,1,…,P
max)、係数w
t2(i) (i=0,1,…,P
max)がそれぞれ格納されている。ただし、i=0の係数w
t0(0), w
t1(0), w
t2(0)については、w
t0(0)≦w
t1(0)≦w
t2(0)の関係を満たしていることは必須ではなく、w
t0(0)>w
t1(0)または/およびw
t1(0)>w
t2(0)の関係にある値であってもよい。
【0199】
ここで、0<fth1<fth2という関係を満たす閾値fth1,fth2と、0<gth1<gth2という関係を満たす閾値gth1, gth2とが定められているとする。
【0200】
係数決定部24は、周期又は周期の量子化値又は基本周波数と負の相関関係にある値が取り得る範囲を構成する3つの範囲の少なくとも2つの範囲について、ピッチゲインと正の相関関係にある値が小さいときに決定される係数がピッチゲインと正の相関関係にある値が大きいときに決定される係数よりも大きい場合が含まれ、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が取り得る範囲を構成する3つの範囲の少なくとも2つの範囲について、周期又は周期の量子化値又は基本周波数と負の相関関係にある値が大きいときに決定される係数が周期又は周期の量子化値又は基本周波数と負の相関関係にある値が小さいときに決定される係数よりも大きい場合が含まれるように、係数テーブル記憶部25に記憶された係数テーブルを選択して、選択された係数テーブルに格納されている係数を係数w
O(i)として得る。
【0201】
ここで、周期又は周期の量子化値又は基本周波数と負の相関関係にある値が取り得る範囲を構成する3つの範囲とは、例えば、基本周波数と負の相関関係にある値<fth1の範囲(すなわち、周期又は周期の量子化値又は基本周波数と負の相関関係にある値が小さい範囲)、fth1≦基本周波数と負の相関関係にある値<fth2の範囲(すなわち、周期又は周期の量子化値又は基本周波数と負の相関関係にある値が中程度の範囲)、fth2≦基本周波数と負の相関関係にある値の範囲(すなわち、周期又は周期の量子化値又は基本周波数と負の相関関係にある値が大きい範囲)、の3つの範囲のことである。
【0202】
また、ピッチゲインと正の相関関係にある値が取り得る範囲を構成する3つの範囲とは、例えば、ピッチゲインと正の相関関係にある値≦gth1の範囲(すなわち、ピッチゲインと正の相関関係にある値が小さい範囲)、gth1<ピッチゲインと正の相関関係にある値≦gth2の範囲(すなわち、ピッチゲインと正の相関関係にある値が中程度の範囲)、gth2<ピッチゲインと正の相関関係にある値の範囲(すなわち、ピッチゲインと正の相関関係にある値が大きい範囲)、の3つの範囲のことである。
【0203】
係数決定部24は、例えば、
(1) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、周期が短くピッチゲインが大きい場合には、係数テーブルt0の各係数w
t0(i)が係数w
O(i)として選択され、
(2) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、周期が短くピッチゲインが中程度である場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(3) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、周期が短くピッチゲインが小さい場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(4) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1以上であり閾値fth2より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、周期が中程度でありピッチゲインが大きい場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(5) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1以上であり閾値fth2より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、周期が中程度でありピッチゲインが中程度である場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(6) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1以上であり閾値fth2より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、周期が中程度でありピッチゲインが小さい場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(7) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth2以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、周期が長くピッチゲインが大きい場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(8) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth2以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、周期が長くピッチゲインが中程度である場合には、係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択され、
(9) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth2以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、周期が長くピッチゲインが小さい場合には、係数テーブルt2の各係数w
t2(i)が係数w
O(i)として選択されるように、係数テーブル記憶部25に記憶された係数テーブルから係数w
O(i)を選択する。
【0204】
言い換えれば、(1)の場合には係数決定部24により係数テーブルt0から係数が取得され、(9)の場合には係数決定部24により係数テーブルt2から係数が取得され、(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8)の場合には係数決定部24により係数テーブルt0,t1,t2の何れかの係数テーブルから係数が取得される。
【0205】
また、(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8)の少なくとも1つの場合には係数決定部24により係数テーブルt1から係数が取得される。
【0206】
さらに、k=1,2,…,9として、(k)の場合に前記係数決定ステップで係数が取得される係数テーブルtj
kの番号をj
kとして、j
1≦j
2≦j
3であり、j
4≦j
5≦j
6であり、j
7≦j
8≦j
9であり、j
1≦j
4≦j
7であり、j
2≦j
5≦j
8であり、j
3≦j
6≦j
9である。
【0207】
<第三実施形態の第三変形例の具体例>
以下、第三実施形態の第三変形例の具体例について説明する。ここでは、第三実施形
態の第二変形例の具体例と異なる部分を中心に説明する。
【0208】
線形予測分析装置2には、ハイパスフィルタを通り、12.8 kHzにサンプリング変換され、プリエンファシス処理をされた1フレームあたりNサンプルのディジタル音響信号である入力信号X
O(n) (n=0,1,…,N-1)と、周期についての情報として現フレームの一部の入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, Nn)(ただし、Nnは、Nn<Nという関係を満たす所定の正の整数。)について周期計算部940で求めた周期Tと、ピッチゲインについての情報として現フレームの一部の入力信号X
O(n) (n=0, 1, …, Nn)についてピッチゲイン計算部950で求めたピッチゲインGとが入力される。
【0209】
本具体例では、閾値fth1は80であり、閾値fth2は160であり、閾値gth1は0.3であり、閾値gth2は0.6である。
【0210】
係数決定部24には、周期TとピッチゲインGとが入力される。
【0211】
係数決定部24は、周期Tが閾値fth1=80より小さく、かつ、ピッチゲインGが閾値gth2=0.6より大きい場合には、すなわち、周期が短くピッチゲインが大きい場合には、係数テーブルt0を係数テーブルtとして選択する。
【0212】
また、係数決定部24は、周期Tが閾値fth1=80より小さく、かつ、ピッチゲインGが閾値gth2=0.6以下の場合には、すなわち、周期が短くピッチゲインが中程度又は小さい場合には、係数テーブルt1を係数テーブルtとして選択する。
【0213】
また、係数決定部24は、周期Tが閾値fth1=80以上かつfth2=160未満、かつ、ピッチゲインGが閾値gth1=0.3より大きい場合には、すなわち、周期が中程度でありピッチゲインが大きい又は中程度である場合には、係数テーブルt1を係数テーブルtとして選択する。
【0214】
また、係数決定部24は、周期Tが閾値fth1=80以上かつfth2=160未満、かつ、ピッチゲインGが閾値gth1=0.3以下の場合には、すなわち、周期が中程度でありピッチゲインが小さい場合には、係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択する。
【0215】
さらに係数決定部24は、周期Tが閾値fth2=160以上の場合には、すなわち周期が長い場合には、係数テーブルt2を係数テーブルtとして選択する。
【0216】
<第三実施形態の第四変形例>
第三実施形態では複数個の係数テーブルのうち何れか1つのテーブルに記憶された係数を係数w
O(i)として決定したが、第三実施形態の第四変形例はこれに加えて複数個の係数テーブルに記憶された係数に基づく演算処理により係数w
O(i)を決定する場合を含む。
【0217】
第三実施形態の第四変形例の線形予測分析装置2の機能構成とフローチャートは、第三実施形態と同じ
図7と
図8である。第三実施形態の第四変形例の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なり、係数テーブル記憶部25に記憶されている係数テーブルが異なる部分以外は、第三実施形態の線形予測分析装置2と同じである。
【0218】
係数テーブル記憶部25には、係数テーブルt0とt2のみが記憶されており、係数テーブルt0には係数w
t0(i) (i=0,1,…,P
max)が格納されており、係数テーブルt2には係数w
t2(i) (i=0,1,…,P
max)が格納されている。2個の係数テーブルt0, t2のそれぞれには、少なくとも一部の各iについてw
t0(i)<w
t2(i)であり、残りの各iについてw
t0(i)≦w
t2(i)となるように定められた係数w
t0(i) (i=0,1,…,P
max)と係数w
t2(i) (i=0,1,…,P
max)が格納されている。ただし、i=0の係数w
t0(0), w
t2(0)については、w
t0(0)≦w
t2(0)の関係を満たしていることは必須ではなく、w
t0(0)>w
t2(0)の関係にある値であってもよい。
【0219】
ここで、0<fth1'<fth2'という関係を満たす閾値fth1',fth2'と、0<gth1<gth2という関係を満たす閾値gth1, gth2とが定められているとする。
【0220】
係数決定部24は、例えば、
(1) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth2'より大きく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが大きいと判断された場合には、係数テーブルt0の各係数w
t0(i)が係数w
O(i)として選択され、
(2) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth2'より大きく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが中程度と判断された場合には、係数テーブルt0,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(3) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth2'より大きく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、基本周波数が高くピッチゲインが小さいと判断された場合には、係数テーブルt0,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(4) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'よりも大きく閾値fth2'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、基本周波数が中程度でありピッチゲインが大きいと判断された場合には、係数テーブルt0,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(5) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'よりも大きく閾値fth2'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、基本周波数が中程度でありピッチゲインが中程度と判断された場合には、係数テーブルt0,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(6) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'よりも大きく閾値fth2'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、基本周波数が中程度でありピッチゲインが小さいと判断された場合には、係数テーブルt0,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(7) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、基本周波数が低くピッチゲインが大きいと判断された場合には、係数テーブルt0,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(8) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、基本周波数が低くピッチゲインが中程度と判断された場合には、係数テーブルt0,t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(9) 基本周波数と正の相関関係にある値が閾値fth1'以下であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、基本周波数が低くピッチゲインが小さいと判断された場合には、係数テーブルt2の各係数w
t2(i)が係数w
O(i)として選択されるように、係数テーブル記憶部25に記憶された係数テーブルから係数w
O(i)を選択し、または、求める。
【0221】
言い換えれば、(1)の場合には係数決定部24により係数テーブルt0から係数が取得され、(9)の場合には係数決定部24により係数テーブルt2から係数が取得され、(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8)の場合には係数決定部24により係数テーブルt0, t2の何れかの係数テーブルから係数が取得されるか、係数テーブルt0とt2から取得した各係数から係数が求められ、また、(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8)の少なくとも1つの場合には係数決定部24により係数テーブルt0とt2から取得した各係数から係数が求められる。
【0222】
さらに、k=1,2,…,9として、(k)の場合に前記係数決定ステップで係数が取得される係数テーブルtj
kの番号をj
kとして、j
1≦j
2≦j
3であり、j
4≦j
5≦j
6であり、j
7≦j
8≦j
9であり、j
1≦j
4≦j
7であり、j
2≦j
5≦j
8であり、j
3≦j
6≦j
9である。
【0223】
係数テーブルt0とt2から取得した各係数からの係数を求める方法としては、例えば、係数テーブルt0の各係数w
t0(i)と係数テーブルt2の各係数w
t2(i)とを用いて、w
O(i)=β'×w
t0(i)+(1-β')×w
t2(i)により係数w
O(i)を決定する方法がある。
【0224】
ここで、β'は0≦β'≦1であり、基本周波数Pが高くピッチゲインGが大きいほどβ'の値も大きくなり、基本周波数Pが小さくピッチゲインGが小さいほどβ'の値も小さくなる関数β'=c(P,G)により、基本周波数P及びピッチゲインGから求める値である。
【0225】
このように、w
0(i)を求めることにより、係数決定部24にはw
t0(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルとw
t2(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルの2つのテーブルだけを記憶しておくことで、係数テーブルt0とt2から取得した各係数から係数を得る場合のうちの基本周波数Pが高くピッチゲインGが大きいときにはw
h(i)に近い係数を得ることができ、逆に係数テーブルt0とt2から取得した各係数から係数を得る場合のうちの基本周波数Pが低くピッチゲインGが小さいときにはw
l(i)に近い係数を得ることができる。
【0226】
<第三実施形態の第五変形例>
第三実施形態では複数個の係数テーブルのうち何れか1つのテーブルに記憶された係数を係数w
O(i)として決定したが、第三実施形態の第五変形例はこれに加えて複数個の係数テーブルに記憶された係数に基づく演算処理により係数w
O(i)を決定する場合を含む。
【0227】
第三実施形態の第五変形例の線形予測分析装置2の機能構成とフローチャートは、第三実施形態と同じ
図7と
図8である。第三実施形態の第五変形例の線形予測分析装置2は、係数決定部24の処理が異なり、係数テーブル記憶部25に記憶されている係数テーブルが異なる部分以外は、第三実施形態の線形予測分析装置2と同じである。
【0228】
係数テーブル記憶部25には、係数テーブルt0とt2のみが記憶されており、係数テーブルt0には係数w
t0(i) (i=0,1,…,P
max)が格納されており、係数テーブルt2には係数w
t2(i) (i=0,1,…,P
max)が格納されている。2個の係数テーブルt0,t2のそれぞれには、少なくとも一部の各iについてw
t0(i)<w
t2(i)であり、残りの各iについてw
t0(i)≦w
t2(i)となるように定められた係数w
t0(i) (i=0,1,…,P
max)と係数w
t2(i) (i=0,1,…,P
max)が格納されている。
【0229】
ここで、0<fth1<fth2という関係を満たす閾値fth1,fth2と、0<gth1<gth2という関係を満たす閾値gth1, gth2とが定められているとする。
【0230】
係数決定部24は、例えば、
(1) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、周期が短くピッチゲインが大きい場合には、係数テーブルt0の各係数w
t0(i)が係数w
O(i)として選択され、
(2) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、周期が短くピッチゲインが中程度である場合には、係数テーブルt0, t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(3) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、周期が短くピッチゲインが小さい場合には、係数テーブルt0, t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(4) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1以上であり閾値fth2より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、周期が中程度でありピッチゲインが大きい場合には、係数テーブルt0, t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(5) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1以上であり閾値fth2より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、周期が中程度でありピッチゲインが中程度である場合には、係数テーブルt0, t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(6) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth1以上であり閾値fth2より小さく、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、周期が中程度でありピッチゲインが小さい場合には、係数テーブルt0, t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(7) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth2以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth2より大きい場合、すなわち、周期が長くピッチゲインが大きい場合には、係数テーブルt0, t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(8) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth2以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1よりも大きく閾値gth2以下である場合、すなわち、周期が長くピッチゲインが中程度である場合には、係数テーブルt0, t2の何れかの係数テーブルの各係数が係数w
O(i)として選択されるか、係数テーブルt0とt2の各係数から求まる係数が係数w
O(i)とされ、
(9) 基本周波数と負の相関関係にある値が閾値fth2以上であり、かつ、ピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値gth1以下の場合、すなわち、周期が長くピッチゲインが小さい場合には、係数テーブルt2の各係数w
t2(i)が係数w
O(i)として選択されるように、係数テーブル記憶部25に記憶された係数テーブルから係数w
O(i)を選択し、または、求める。
【0231】
言い換えれば、(1)の場合には係数決定部24により係数テーブルt0から係数が取得され、(9)の場合には係数決定部24により係数テーブルt2から係数が取得され、(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8)の場合には係数決定部24により係数テーブルt0, t2の何れかの係数テーブルから係数が取得されるか、係数テーブルt0とt2から取得した各係数から係数が求められ、
また、(2),(3),(4),(5),(6),(7),(8)の少なくとも1つの場合には係数決定部24により係数テーブルt0とt2から取得した各係数から係数が求められる。
【0232】
さらに、k=1,2,…,9として、(k)の場合に前記係数決定ステップで係数が取得される係数テーブルtj
kの番号をj
kとして、j
1≦j
2≦j
3であり、j
4≦j
5≦j
6であり、j
7≦j
8≦j
9であり、j
1≦j
4≦j
7であり、j
2≦j
5≦j
8であり、j
3≦j
6≦j
9である。
【0233】
係数テーブルt0とt2から取得した各係数からの係数を求める方法としては、例えば、係数テーブルt0の各係数w
t0(i)と係数テーブルt2の各係数w
t2(i)とを用いて、w
O(i)=(1-β)×w
t0(i)+β×w
t2(i)により係数w
O(i)を決定する方法がある。
【0234】
ここで、βは0≦β≦1であり、周期Tが長くピッチゲインGが小さいほどβの値が大きくなり、周期Tが短くピッチゲインGが大きいほどβの値が小さくなる関数β=b(T,G)により、周期T及びピッチゲインGから求める値である。
【0235】
このように、w
O (i)を求めることにより、係数決定部24にはw
t0(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルとw
t2(i) (i=0,1,…,P
max)を記憶したテーブルの2つのテーブルだけを記憶しておくことで、係数テーブルt0とt2から取得した各係数から係数を得る場合のうちの周期Tが短くピッチゲインGが大きいときにはw
h(i)に近い係数を得ることができ、逆に係数テーブルt0とt2から取得した各係数から係数を得る場合のうちの周期Tが長くピッチゲインGが小さいときにはw
l(i)に近い係数を得ることができる。
【0236】
[第一実施形態から第三実施形態に共通の変形例]
図11及び
図12に示すように、上述の全ての実施形態及び変形例において、係数乗算部22を含まず、予測係数計算部23において係数w
O(i)と自己相関R
O(i)とを用いて線形予測分析を行ってもよい。
図11と
図12は、それぞれ
図1と
図7に対応する線形予測分析装置2の構成例である。この場合は、予測係数計算部23は、
図13に示すように、係数w
O(i)と自己相関R
O(i)とが乗算されたものである変形自己相関R'
O(i)ではなく、係数w
O(i)と自己相関R
O(i)とを直接用いて線形予測分析を行う(ステップS5)。
【0237】
[第四実施形態]
第四実施形態は、入力信号X
O(n)に対して従来の線形予測分析装置を用いて線形予測分析を行い、その線形予測分析の結果を用いて基本周波数計算部及びピッチゲイン計算部でそれぞれ基本周波数及びピッチゲインを得て、得られた基本周波数及びピッチゲインに基づく係数w
O(i)を用いて本発明の線形予測分析装置により線形予測係数に変換可能な係数を求めるものである。
【0238】
第四実施形態の線形予測分析装置3は、
図14に示すように、第一線形予測分析部31、線形予測残差計算部32、基本周波数計算部33、ピッチゲイン計算部36、第二線形予測分析部34を例えば備えている。
【0239】
[第一線形予測分析部31]
第一線形予測分析部31は、従来の線形予測分析装置1と同じ動作をする。すなわち、第一線形予測分析部31は、入力信号X
O(n)から自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)を求め、自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)と予め定めた係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)とを同じiごとに乗じることにより変形自己相関R'
O(i) (i=0,1,…,P
max)を求め、変形自己相関R'
O(i) (i=0,1,…,P
max)から1次から予め定めた最大次数であるP
max次までの線形予測係数に変換可能な係数を求める。
【0240】
[線形予測残差計算部32]
線形予測残差計算部32は、入力信号X
O(n)に対して、1次からP
max次までの線形予測係数に変換可能な係数に基づく線形予測や線形予測と等価なまたは類似したフィルタリング処理を行って線形予測残差信号X
R(n)を求める。フィルタリング処理は重み付け処理とも言えるので、線形予測残差信号X
R(n)は重み付け入力信号であるともいえる。
【0241】
[基本周波数計算部33]
基本周波数計算部33は、線形予測残差信号X
R(n)の基本周波数Pを求め、基本周波数についての情報を出力する。基本周波数を求める方法としては、様々な公知の方法が存在するので、公知の何れの方法を用いてもよい。基本周波数計算部33は、例えば、現フレームの線形予測残差信号X
R (n) (n=0, 1, …, N-1)を構成する複数個のサブフレームのそれぞれについて基本周波数を求める。すなわち、2以上の整数であるM個のサブフレームであるX
Rs1(n) (n=0, 1, …, N/M-1), …, X
RsM(n) (n= (M-1)N/M, (M-1)N/M+1, …, N-1)のそれぞれの基本周波数であるP
s1, …, P
sMを求める。NはMで割り切れるとする。基本周波数計算部33は、次に、現フレームを構成するM個のサブフレームの基本周波数であるP
s1, …, P
sMのうちの最大値max(P
s1, …, P
sM)を特定可能な情報を基本周波数についての情報として出力する。
【0242】
[ピッチゲイン計算部36]
ピッチゲイン計算部36は、線形予測残差信号X
R(n)のピッチゲインGを求め、ピッチゲインについての情報を出力する。ピッチゲインを求める方法としては、様々な公知の方法が存在するので、公知の何れの方法を用いてもよい。ピッチゲイン計算部36は、例えば、現フレームの線形予測残差信号X
R (n) (n=0, 1, …, N-1)を構成する複数個のサブフレームのそれぞれについてピッチゲインを求める。すなわち、2以上の整数であるM個のサブフレームであるX
Rs1(n) (n=0, 1, …, N/M-1), …, X
RsM(n) (n= (M-1)N/M, (M-1)N/M+1, …, N-1)のそれぞれのピッチゲインであるG
s1, …, G
sMを求める。NはMで割り切れるとする。ピッチゲイン計算部36は、次に、現フレームを構成するM個のサブフレームのピッチゲインであるG
s1, …, G
sMのうちの最大値max(G
s1, …, G
sM)を特定可能な情報をピッチゲインについての情報として出力する。
【0243】
[第二線形予測分析部34]
第二線形予測分析部34は、本発明の第一実施形態の線形予測分析装置2、第二実施形態の線形予測分析装置2、第二実施形態の第二変形例の線形予測分析装置2、第三実施形態の線形予測分析装置2、第三実施形態の第二変形例の線形予測分析装置2、第三実施形態の第四変形例の線形予測分析装置2、第一実施形態から第三実施形態に共通の変形例の線形予測分析装置2、の何れかと同じ動作をする。すなわち、第二線形予測分析部34は、入力信号X
O(n)から自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)を求め、基本周波数計算部33が出力した基本周波数についての情報及びピッチゲイン計算部36が出力したピッチゲインについての情報に基づいて係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)と決定した係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)とを用いて1次から予め定めた最大次数であるP
max次までの線形予測係数に変換可能な係数を求める。
【0244】
<第四実施形態の変形例>
第四実施形態の変形例は、入力信号X
O(n)に対して従来の線形予測分析装置を用いて線形予測分析を行い、その線形予測分析の結果を用いて周期計算部及びピッチゲイン計算部でそれぞれ周期及びピッチゲインを得て、得られた周期及びピッチゲインに基づく係数w
O(i)を用いて本発明の線形予測分析装置により線形予測係数に変換可能な係数を求めるものである。
【0245】
第四実施形態の変形例の線形予測分析装置3は、
図15に示すように、第一線形予測分析部31、線形予測残差計算部32、周期計算部35、ピッチゲイン計算部36、第二線形予測分析部34を例えば備えている。第四実施形態の変形例の線形予測分析装置3の第一線形予測分析部31と線形予測残差計算部32はそれぞれ、第四実施形態の線形予測分析装置3と同様である。以下、第四実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0246】
[周期計算部35]
周期計算部35は、線形予測残差信号X
R(n)の周期Tを求め、周期についての情報を出力する。周期を求める方法としては、様々な公知の方法が存在するので、公知の何れの方法を用いてもよい。周期計算部35は、例えば、現フレームの線形予測残差信号X
R (n) (n=0, 1, …, N-1)を構成する複数個のサブフレームのそれぞれについて周期を求める。すなわち、2以上の整数であるM個のサブフレームであるX
Rs1(n) (n=0, 1, …, N/M-1), …, X
RsM(n)(n= (M-1)N/M, (M-1)N/M+1, …, N-1)のそれぞれの周期であるT
s1, …, T
sMを求める。NはMで割り切れるとする。周期計算部35は、次に、現フレームを構成するM個のサブフレームの周期であるT
s1, …, T
sMのうちの最小値min(T
s1 …, T
sM)を特定可能な情報を周期についての情報として出力する。
【0247】
[変形例の第二線形予測分析部34]
第四実施形態の変形例の第二線形予測分析部34は、本発明の第一実施形態の変形例の線形予測分析装置2、第二実施形態の第一変形例の線形予測分析装置2、第二実施形態の第三変形例の線形予測分析装置2、第三実施形態の第一変形例の線形予測分析装置2、第三実施形態の第三変形例の線形予測分析装置2、第三実施形態の第五変形例の線形予測分析装置2、第一実施形態から第三実施形態に共通の変形例の線形予測分析装置2、の何れかと同じ動作をする。すなわち、第二線形予測分析部34は、入力信号X
O(n)から自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)を求め、周期計算部35が出力した周期についての情報及びピッチゲイン計算部36が出力したピッチゲインについての情報に基づいて係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)を決定し、自己相関R
O(i) (i=0,1,…,P
max)と決定した係数w
O(i) (i=0,1,…,P
max)とを用いて1次から予め定めた最大次数であるP
max次までの線形予測係数に変換可能な係数を求める。
【0248】
<基本周波数と正の相関関係にある値について>
第一実施形態において基本周波数計算部930の具体例2として説明した通り、基本周波数と正の相関関係にある値として、前のフレームの信号処理においてLook-aheadとも呼ばれる先読みして利用するサンプル部分のうち現フレームのサンプルに対応する部分の基本周波数を用いてもよい。
【0249】
また、基本周波数と正の相関関係にある値として、基本周波数の推定値を用いてもよい。例えば、過去の複数フレームの基本周波数から予測される現在のフレームについての基本周波数の推定値や、過去の複数フレームについての基本周波数の平均値や最小値や最大値を、基本周波数の推定値として用いてもよい。また、複数サブフレームについての基本周波数の平均値や最小値や最大値を、基本周波数の推定値として用いてもよい。
【0250】
また、基本周波数と正の相関関係にある値として、基本周波数の量子化値を用いてもよい。すなわち、量子化前の基本周波数を用いてもよいし、量子化後の基本周波数を用いてもよい。
【0251】
さらに、基本周波数と正の相関関係にある値として、ステレオなどの複数チャネルの場合には何れか分析済みのチャネルについての基本周波数を用いてもよい。
【0252】
<基本周波数と負の相関関係にある値について>
第一実施形態において周期計算部940の具体例2として説明した通り、基本周波数と負の相関関係にある値として、前のフレームの信号処理においてLook-aheadとも呼ばれる先読みして利用するサンプル部分のうち現フレームのサンプルに対応する部分の周期Tを用いてもよい。
【0253】
また、基本周波数と負の相関関係にある値として、周期Tの推定値を用いてもよい。例えば、過去の複数フレームの基本周波数から予測される現在のフレームについての周期Tの推定値や、過去の複数フレームについての周期Tの平均値や最小値や最大値を、周期Tの推定値として用いてもよい。また、複数サブフレームについての周期Tの平均値や最小値や最大値を、周期Tの推定値として用いてもよい。もしくは過去の複数フレームの基本周波数およびLook-aheadとも呼ばれる先読みして利用するサンプル部分のうち現フレームのサンプルに対応する部分により予測される現フレームについての周期Tの推定値を用いてもよいし、同様に、過去の複数フレームの基本周波数およびLook-aheadとも呼ばれる先読みして利用するサンプル部分のうち現フレームのサンプルに対応する部分についての平均値や最小値や最大値を推定値として用いてもよい。
【0254】
また、基本周波数と負の相関関係にある値として、周期Tの量子化値を用いてもよい。すなわち、量子化前の周期Tを用いてもよいし、量子化後の周期Tを用いてもよい。
【0255】
さらに、基本周波数と負の相関関係にある値として、ステレオなどの複数チャネルの場合には何れか分析済みのチャネルについての周期Tを用いてもよい。
【0256】
<ピッチゲインと正の相関関係にある値について>
第一実施形態においてピッチゲイン計算部950の具体例2として説明した通り、ピッチゲインと正の相関関係にある値として、前のフレームの信号処理においてLook-aheadとも呼ばれる先読みして利用するサンプル部分のうち現フレームのサンプルに対応する部分のピッチゲインを用いてもよい。
【0257】
なお、上記の各実施形態及び各変形例の基本周波数と正の相関関係にある値や基本周波数と負の相関関係にある値やピッチゲインと正の相関関係にある値と閾値との比較においては、基本周波数と正の相関関係にある値や基本周波数と負の相関関係にある値やピッチゲインと正の相関関係にある値が閾値と同じ値である場合には、閾値を境として隣接する二つの場合の何れか一方に場合分けされるように設定すればよい。すなわち、ある閾値以上の場合としているところを当該閾値より大きい場合とするとともに、当該閾値より小さい場合としているところを当該閾値以下の場合としてもよい。また、ある閾値より大きい場合としているところを当該閾値以上の場合とするとともに、当該閾値以下の場合としているところを当該閾値より小さい場合としてもよい。
【0258】
上記装置及び方法において説明した処理は、記載の順にしたがって時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。
【0259】
また、線形予測分析方法における各ステップをコンピュータによって実現する場合、線形予測分析方法が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、その各ステップがコンピュータ上で実現される。
【0260】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0261】
また、各処理手段は、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより構成することにしてもよいし、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。
【0262】
その他、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。